説明

ICタグホルダ

【課題】ICタグの無線性能への影響を従来より低減させることが可能であると共に、ICタグを容易に装着することが可能なICタグホルダを提供する。
【解決手段】本発明のICタグホルダ10の構成によれば、ICタグ90を前後方向Zで挟持する部材が、タグ収容枠11の対向辺間に差し渡されたフロント支柱14及びリア支柱15で構成されているので、従来のICタグホルダのようにICタグの後面全体に対して密着するものより、ICタグ90との密着部分を減らすことができ、無線性能への影響を従来より低減させることが可能になる。また、ICタグ90をタグ挿入孔20に挿入するだけでICタグ90がタグ収容枠11内に抜け止め状態に装着されるのでICタグ90の装着作業を従来より容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード形のICタグを保持しかつ、そのICタグにて管理される管理対象物に取り付け可能なICタグホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のICタグホルダとして、図17に示すように四角形に陥没したカード収容凹部2の開口縁に複数の係止突起3を備えた構造のものが知られている。このものでは、ICタグ4の4辺をカード収容凹部2の奥壁2Aと係止突起3との間に挟んだ状態にして、ICタグ4がICタグホルダに保持されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−254983号公報(段落[0018]〜[0020]、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のICタグホルダは、カード収容凹部2の奥壁2Aのうち一部の孔等を除いた全体がICタグ4の後面全体に密着する構成であったため、ICタグ4の無線性能が低下する事態が生じ得た。また、ICタグ4をカード収容凹部2内に装着する作業が困難であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ICタグの無線性能への影響を従来より低減させることが可能であると共に、ICタグを容易に装着することが可能なICタグホルダの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るICタグホルダは、カード形のICタグを四方から囲むと共にICタグの前面及び後面を前後方向で露出した状態にして収容可能なタグ収容枠と、ICタグにて管理される管理対象物にタグ収容枠を取り付けるための取付部と、タグ収容枠の一辺に貫通形成されてその一辺の長手方向に延び、ICタグをタグ収容枠の側方からタグ収容枠内に挿入可能とするためのタグ挿入孔と、タグ挿入孔の内側に形成され、ICタグをタグ挿入孔に挿入したときに、そのタグ挿入孔の奥側に進むに従ってICタグを挿入方向と直交する方向で湾曲した形状に弾性変形させる変形ガイドと、タグ収容枠内に収容したICタグを、タグ挿入孔側に逆戻り不能に弾性復元させた状態で前後方向から挟持する複数のタグ前後保持部材とを備え、複数のタグ前後保持部材は、タグ収容枠の対向辺間に差し渡された支柱、又は、タグ収容枠から内側に張り出してICタグの縁部のみに対向するタグ縁部対向突壁の何れか又はそれらの両方で構成されたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のICタグホルダにおいて、タグ挿入孔の内面のうち前後方向で対向した第1と第2の挿入孔内面によって変形ガイドが構成され、第1の挿入孔内面は、ICタグの挿入方向と直交する方向で円弧状に湾曲しかつICタグの挿入方向と並行になった円弧面であり、第2の挿入孔内面は、ICタグの挿入方向の奥側に位置した奥側縁部が第1の挿入孔内面と並行になって湾曲する一方、ICタグの挿入方向の手前側に位置した手前側縁部が直線状に延びて、それら奥側縁部と手前側縁部との間で三次元的に捻れた捻れ曲面であるところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のICタグホルダにおいて、タグ収容枠のうちタグ挿入孔を有する枠構成壁のうち長手方向の中央部を内側に湾曲させることで、枠構成壁の外面にタグ押圧凹部を陥没形成する一方、枠構成壁の内面に湾曲挟持部を突出形成してその湾曲挟持部でタグ縁部対向突壁を構成し、ICタグがタグ挿入孔を通してタグ収容枠の奥部に突き当たるまで挿入された状態で、ICタグのうち挿入方向と直交する方向の両端部は、タグ挿入孔を通過して弾性復元する一方、ICタグの中央部のみが湾曲挟持部においてタグ挿入孔内に留まってその湾曲挟持部により前後方向から挟持されるように構成したところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のICタグホルダにおいて、ICタグホルダは、管理対象物に備えられて互いに対向した1対のホルダ取付壁の間に受容され、取付部は、ICタグホルダを1対のホルダ取付壁の間に受容する過程で弾性変形した後、弾性復元して1対のホルダ取付壁に係止する弾性係止部材で構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載のICタグホルダにおいて、タグ挿入孔は、ICタグホルダを1対のホルダ取付壁の間に受容した状態で管理対象物の壁面に覆われる位置に配置されたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1のICタグホルダでは、ICタグをタグ収容枠内に収容するためにタグ挿入孔に挿入すると、そのICタグがタグ挿入孔内の変形ガイドによって挿入方向と直交する方向で湾曲した形状に弾性変形される。そして、ICタグがタグ収容枠内に収容されると、タグ挿入孔側に逆戻り不能に弾性復元した状態になり、複数のタグ前後保持部材により前後方向(ICタグの厚さ方向)で挟持される。これらにより、タグ収容枠内の縦、横、前後の全ての方向でICタグの移動が規制される。ここで、ICタグを前後方向で挟持する複数のタグ前後保持部材は、タグ収容枠の対向辺間に差し渡された支柱、又は、タグ収容枠から内側に張り出してICタグの縁部のみに対向するタグ縁部対向突壁の何れか又はそれらの両方で構成されているので、従来のICタグホルダのようにICタグの後面全体に密着するものより、ICタグに対する密着部分を減らすことができ、無線性能への影響を従来より低減させることが可能になる。しかも、ICタグをタグ挿入孔に挿入するだけで、ICタグがタグ収容枠内に抜け止め状態に装着されるのでICタグの装着作業を従来より容易に行うことができる。
【0011】
[請求項2の発明]
請求項2の構成では、ICタグをタグ挿入孔に押し込むと、ICタグが、第2の挿入孔内面に摺接してその第2の挿入孔内面の手前側縁部に対応した平坦形状から奥側縁部に対応した湾曲形状へと変形される。このように本発明によれば、ICタグが第2の挿入孔内面に摺接して案内され、スムーズにICタグをタグ収容枠内に装着することができる。
【0012】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、ICタグをタグ挿入孔に押し込んでいくと、途中でICタグの挿入方向の後端部がタグ挿入孔を有する枠構成壁の外面と面一状態になる。ここで、本発明では枠構成壁の外面にタグ押圧凹部が陥没形成されているので、そのタグ押圧凹部の奥部までICタグを押し込むことができる。そして、ICタグがタグ挿入孔を通してタグ収容枠の奥部に突き当たった状態になると、ICタグのうち挿入方向と直交する方向の両端部がタグ挿入孔を通過して弾性復元し、これによりICタグがタグ挿入孔に逆戻り不能な状態になる。この状態でICタグのうち挿入方向と直交する方向の中央部のみが、枠構成壁の内面から突出した湾曲挟持部でタグ挿入孔内に留まり、その湾曲挟持部により前後方向から挟持され、タグ収容枠内で安定する。
【0013】
[請求項4の発明]
請求項4の構成によれば、ICタグホルダを管理対象物における1対のホルダ取付壁の間に押し込むだけで、弾性係止部材が弾性変形を乗り越えてホルダ取付壁に係止し、ICタグホルダが管理対象物に取り付けられる。
【0014】
[請求項5の発明]
請求項5の構成によれば、タグ挿入孔が、ICタグホルダを1対のホルダ取付壁の間に受容した状態で管理対象物の壁面に覆われるのでタグ挿入孔からのICタグの離脱を確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態のICタグ90は、図1(A)に示されており、RFID(Radio Frequency Identification)とも呼ばれ、情報と共に電力を無線で受け、それに対して情報を無線返信する。その無線の周波数帯域は、例えば、860〜960[Mhz]のUHF帯域が使用されている。また、このICタグ90は、可撓性に富んだ四角形のフィルム回路基盤91に、例えば、コイルアンテナ92とICチップ93と実装して樹脂フィルム94でラミネートしてなり、全体が横長のカード形状になっている。
【0016】
本実施形態のICタグホルダ10は、ICタグ90を四方から囲むことが可能な横長のタグ収容枠11を備えている。タグ収容枠11は、均一幅の帯状板11Aを長方形に屈曲させた形状になっており、帯状板11Aの幅、即ち、タグ収容枠11の厚さW1は、ICタグホルダ10の厚さt1に比べて十分に大きくなっている。以下、ICタグ90及びタグ収容枠11において、長手方向でもある横方向を「横方向X」、短手方向でもある縦方向を「縦方向Y」、厚さ方向でもある前後方向を「前後方向Z」と呼ぶこととする。
【0017】
図2(B)に示すように、タグ収容枠11の左右両辺を構成する短辺側枠構成壁12S,12Sには、内面の後端縁から内方突壁18,18が内側に突出形成されている。そして、それら内方突壁18,18と短辺側枠構成壁12S,12Sとの間で面一になった後端面から後方に本発明の「取付部」に相当する圧入係止突起19,19が突出している。各圧入係止突起19は、円柱体19Aの先端に円錐台状のヘッド部19Bを備えてなり、そのヘッド部19Bの大径側端部が円柱体19Aの側方に張り出している。
【0018】
図1(A)に示すように、タグ収容枠11のうち一方の長辺を構成する長辺側枠構成壁12Uには、本発明に係るタグ挿入孔20が形成されている。タグ挿入孔20は、長辺側枠構成壁12Uにおける長手方向の略全体に亘って延び、タグ収容枠11の内外に貫通している。そして、このタグ挿入孔20を通してICタグ90をタグ収容枠11の側方から内部に挿入することができる(図1(B)参照)。
【0019】
図3(A)及び図3(B)に示すように、タグ挿入孔20の内部では、本発明に係る第1と第2の挿入孔内面21,22が前後方向Zで対向している。第1と第2の挿入孔内面21,22のうち後ろ側に配置された第1の挿入孔内面21は、ICタグ90の挿入方向と直交する方向で円弧状に湾曲しかつ、前側(第2の挿入孔内面22側)に膨らんでいる。そして、第1の挿入孔内面21全体が、図5(A)に示すように、縦方向Y、即ち、ICタグ90の挿入方向と並行な円弧面になっている。なお、図5(A)は、図3(B)のA−A切断面におけるICタグホルダ10の断面図であり、図5(B)は、図3(B)のB−B切断面におけるICタグホルダ10の断面図である。
【0020】
これに対し、前側に配置された第2の挿入孔内面22は、ICタグ90の挿入方向の奥側の奥側縁部22Aが、図3(A)及び図3(B)に示すように、第1の挿入孔内面21と並行になって湾曲する一方、挿入方向の手前側の手前側縁部22Bが横方向Xと並行な直線状をなしている。そして、第2の挿入孔内面22全体が、奥側縁部22Aと手前側縁部22Bとの間で三次元的に捻れた捻れ曲面になっている。これにより、図1(A)に示すように、自然状態で平坦形状になったICタグ90がタグ挿入孔20に挿入されると、図1(B)及び図3(B)に示したように湾曲形状へと弾性変形される。
【0021】
図1(A)に示すように、タグ収容枠11のうち1対の長辺を構成する長辺側枠構成壁12U,12Dの間には、本発明の「タグ前後保持部材」としてのフロント支柱14とリア支柱15とが複数本ずつ差し渡されている。それらのうちフロント支柱14は、タグ収容枠11の前端寄り位置に配置されて、横方向Xに複数並べられている。一方、リア支柱15は、タグ収容枠11の後端寄り位置に配置されて横方向Xで対になっている。また、フロント支柱14及びリア支柱15は、共に前後方向Zより横方向Xが薄くなった板状をなしている。そして、タグ挿入孔20からタグ収容枠11内に挿入されたICタグ90が、フロント支柱14群とリア支柱15群との間に前後方向Zで挟持される。
【0022】
より具体的には、複数のフロント支柱14は、タグ収容枠11の横方向における一端寄り位置に1つと、他端寄り位置に1つと、中央部の2つの計4箇所に配置されている。また、複数のリア支柱15は、タグ収容枠11の横方向において、右側2つのフロント支柱14,14の中間位置と、左側2つのフロント支柱14,14の中間位置との2位置とにそれぞれ配置されている。
【0023】
図4(C)に示すように、リア支柱15のうちICタグ90に突き合わされる側の先端縁部は、ICタグ90に接近するに従って横幅が狭くなった先細り形状になっている。その先細り形状にするためにリア支柱15の先端縁部には、左右対称に傾斜面15S,15Sが形成されている。また、フロント支柱14のうちICタグ90に突き合わされる側の先端縁部も同様に先細り形状になっており、1対の傾斜面14S,14Sを備えている。
【0024】
全てのフロント支柱14におけるICタグ90側の先端は、前後方向Zで同一位置に配置されている。また、両リア支柱15,15の間でも、それらリア支柱15,15におけるICタグ90側の先端は、前後方向Zで同一位置に配置されている。そして、それらフロント支柱14の先端と、リア支柱15の先端との前後方向Zにおける間隔が、丁度、ICタグ90の厚さt1と一致している。これにより、ICタグ90は、フロント支柱14群とリア支柱15群とにより前後方向から挟まれた状態で平坦な形状になって保持される。
【0025】
また、図4(A)に示すように、タグ挿入孔20に対しては、中央のフロント支柱14,14の先端は、第2の挿入孔内面22の奥側縁部22Aと前後方向Zで一致した位置に配置され、両端部のフロント支柱14の先端は、タグ挿入孔20の奥側縁部22Aから前側に離れた位置に配置されている。一方、リア支柱15,15の先端は、タグ挿入孔20における第2の挿入孔内面22の奥側縁部22Aと第1の挿入孔内面21との間の中間部の奥側縁部22A寄りに位置している。そして、タグ挿入孔20から11A内に挿入されたICタグ90がリア支柱15,15の前方に乗り上がるようになっている。そのために、図5(A)に示すように、リア支柱15におけるタグ挿入孔20側の上端部には、ICタグ90を前方に案内する前方案内面15Kが形成されている。
【0026】
また、図4(B)に示すように、ICタグ90は、フロント支柱14及びリア支柱15に保持されることで、タグ収容枠11内において前後方向Zの中心部より前端寄り位置(図4(B)における下方寄り位置)に配置されるようになっている。
【0027】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。ICタグホルダ10に装着する前のICタグ90は、図1(A)に示すように、自然状態で平坦形状になっている。このICタグ90をICタグホルダ10に装着するには、そのICタグ90における一方の長辺側縁部を先頭にしてタグ挿入孔20内に押し込む。すると、そのICタグ90が、第2の挿入孔内面22に摺接し、その第2の挿入孔内面22の手前側縁部22Bに対応した平坦形状から奥側縁部22Aに対応した湾曲形状へと弾性変形する(図1(B)参照)。
【0028】
そして、ICタグ90における挿入方向の先端部がタグ収容枠11内に突入すると、リア支柱15の前方案内面15K(図5(A)参照)に案内されて、ICタグ90がリア支柱15の前側に乗り上がる。ICタグ90を更に挿入すると、ICタグ90がタグ挿入孔20を通過する。なお、その通過が困難である場合には、例えば、フロント支柱14,14の間でタグ収容枠11側からICタグ90を引けばよい。
【0029】
ICタグ90がタグ挿入孔20を通過すると、ICタグ90全体がタグ収容枠11内に収まり、図4(B)に示すように、ICタグ90が弾性復元して平坦な形状になると共に、ICタグ90がフロント支柱14群とリア支柱15群とによって前後方向Zで挟まれて位置決めされる。このとき、ICタグ90の横方向Xにおける両端部が前後方向Zでタグ挿入孔20に対してずれた位置に配置され(図5(B)参照)、ICタグ90がタグ挿入孔20に逆戻りすることが規制される。これらにより、タグ収容枠11内の縦、横、前後の全ての方向でICタグ90の移動が規制され、ICタグ90のICタグホルダ10への装着が完了する。
【0030】
次いで、ICタグホルダ10をICタグ90にて管理される管理対象物に取り付ける。その管理対象物の一例として図6に示したパレット80が挙げられる。このパレット80には、例えば1対のフォーク挿入孔82,82の間の外側面に、ICタグホルダ10を固定するためのホルダ固定溝部81が陥没形成されている。ICタグホルダ10は、ホルダ固定溝部81の奥壁81Hに備えた係止孔81A,81Aに圧入係止突起19,19を圧入することで、圧入係止突起19におけるヘッド部19Bが奥壁81Hの裏面に係止し(図4(B)参照)、ICタグホルダ10がパレット80に固定される。すると、ICタグホルダ10のタグ挿入孔20がホルダ固定溝部81の内側面に覆われ、ICタグ90の離脱が確実に防がれる。
【0031】
さて、ICタグ90がICタグホルダ10に装着されると、図2(A)及び図2(B)に示すように、タグ収容枠11の前面又は後面のうちフロント支柱14及びリア支柱15以外の部分で、ICタグ90の前面90F及び後面90Bがタグ収容枠11から露出した状態になる。そして、図4(B)に示すように、タグ収容枠11における後端面11RからICタグ90迄の距離L1だけ、ICタグ90が前後方向Zにおいて管理対象物(パレット80)の壁面から離される。
【0032】
ここで、ICタグ90は、上述したように、コイルアンテナ92を備えている。そして、そのコイルアンテナ92は、ICタグ90を前後方向Zに貫通する電磁波から情報及び電力を取得する。これに対し、本実施形態のICタグホルダ10の構成によれば、ICタグ90を前後方向Zで挟持する部材が、タグ収容枠11の対向辺間に差し渡されたフロント支柱14及びリア支柱15で構成されているので、図17に示した従来のICタグホルダのようにカード収容凹部2の奥壁2AがICタグ4の後面全体に対して密着するものより、ICタグ90との密着部分を減らすことができ、無線性能への影響を従来より低減させることが可能になる。しかも、それらフロント支柱14及びリア支柱15のうちICタグ90との対向部分は、先細り形状になっているのでICタグ90との接触面積をより一層低減させることができる。また、本実施形態のICタグホルダ10によれば、ICタグ90をタグ挿入孔20に挿入するだけでICタグ90がタグ収容枠11内に抜け止め状態に装着されるのでICタグ90の装着作業を従来より容易に行うことができる。
【0033】
[第2実施形態]
本実施形態のICタグホルダ10Wは、図7〜図10に示されており、前記第1実施形態のICタグホルダ10に対して、複数のフロント支柱14を全て排除し、それらに代えてタグ縁部対向突壁14X,14Y,14Y及び湾曲挟持部24を設けた点と、内方突壁18及び圧入係止突起19を排除し、タグ収容枠11の両短辺側枠構成壁12S,12Sにそれぞれ弾性係止部材23,23を備えた点とが異なる。
【0034】
具体的には、図7に示すように、タグ収容枠11のうちタグ挿入孔20と反対側の長辺側枠構成壁12Dの内面から内側にタグ縁部対向突壁14Xが突出している。このタグ縁部対向突壁14Xは、長辺側枠構成壁12Dの内面における前端部に配置されて横方向Xの中央部で横長に延びている。また、タグ収容枠11の各短辺側枠構成壁12Sの内面には、その前端寄り位置から内側にタグ縁部対向突壁14Yがそれぞれ突出している。また、タグ縁部対向突壁14Yの縦方向Yにおける両端部は、長辺側枠構成壁12U,12Dに繋がっている。そして、これらタグ縁部対向突壁14X,14Y,14Yが、ICタグ90における前面90Fの下縁部と両側縁部に対向し(図8参照)、ICタグ90を前方から位置決めするようになっている。
【0035】
タグ収容枠11のうちタグ挿入孔20を有した長辺側枠構成壁12Uは、その長手方向の中央部が内側に湾曲しており、これにより、長辺側枠構成壁12Uの外面には、本発明に係るタグ押圧凹部24Aが陥没形成される一方、長辺側枠構成壁12Uの内面には、湾曲挟持部24が突出形成されている。
【0036】
また、タグ収容枠11の両短辺側枠構成壁12Sにおける後寄り位置には、図7に示すように、スリットが形成されて各短辺側枠構成壁12Sの一部が縦方向Yに延びた片持ち梁23Cとして切り離され、その片持ち梁23Cの先端から外方に係止突部23Tを突出形成して弾性係止部材23が構成されている。また、図10に示すように、弾性係止部材23は、タグ収容枠11の前後方向ZのうちICタグ90が保持される部分より後ろ側にずらして配置され、タグ収容枠11のICタグ90と干渉しないようになっている。さらに、図7に示すように、弾性係止部材23の係止突部23Tのうち縦方向Yにおける一方側の面は、短辺側枠構成壁12Sの外面から徐々に側方に立ち上がった傾斜面23Aになっており、他方側の面は短辺側枠構成壁12Sの外面と直交した係止面23Bになっている。そして、その傾斜面23Aがタグ収容枠11のうちタグ挿入孔20を有する長辺側枠構成壁12U側を向いている。
【0037】
図7に示すように、ICタグホルダ10Wが取り付けられる管理対象物80W(パレット、コンテナ等)の壁面80Hには、ホルダ装着部70が形成されている。このホルダ装着部70は、平行になって縦方向Yに延びた1対のホルダ取付壁71,71と、それらホルダ取付壁71,71の一端部(図7における上端部)の間に差し渡された終端壁73とで構成されている。各ホルダ取付壁71は、管理対象物80Wの壁面80Hから直立した起立壁71Xと、その先端から直角内側に折り曲げられた前面壁71Yとからなり、断面がL字形になっている。また、各ホルダ取付壁71における起立壁71Xには、ICタグホルダ10Wに弾性係止部材23に対応して係止孔72がそれぞれ貫通形成されている。上記構成以外は、第1実施形態と同様である。
【0038】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。ICタグホルダ10Wをホルダ装着部70に取り付ける前にICタグ90をICタグホルダ10Wに装着する。そのためには、ICタグ90をタグ挿入孔20に押し込む。すると、その途中でICタグ90の挿入方向の後端部がタグ挿入孔20を有する長辺側枠構成壁12U側の外面と面一状態になる(図示せず)。ここで、本実施形態では長辺側枠構成壁12U側の外面にタグ押圧凹部24Aが陥没形成されているので、そのタグ押圧凹部24Aの奥部までICタグ90を押し込むことができる。そして、ICタグ90がタグ挿入孔20を通してタグ収容枠11の奥部(長辺側枠構成壁12Dの内面)に突き当たった状態になると、図9(A)及び(B)に示すように、ICタグ90のうち挿入方向と直交する方向の両端部がタグ挿入孔20を通過して弾性復元し、タグ挿入孔20に対して前後方向Xでずれる。これによりICタグ90がタグ挿入孔20に逆戻り不能な状態になる。この状態でICタグ90のうち挿入方向と直交する方向の中央部のみが、図9(C)に示すように、長辺側枠構成壁12U側の内面から突出した湾曲挟持部24でタグ挿入孔20内に留まり、その湾曲挟持部24により前後方向Zから挟持される。
【0039】
また、ICタグ90がタグ収容枠11内に収容された状態になると、図8に示すように、ICタグ90の前面90Fに対してその縁部のみに上記した湾曲挟持部24及びタグ縁部対向突壁14X,14Y,14Yが対向し、ICタグ90の前面90Fにおける中央部全体がタグ収容枠11の前方に開放した状態になる。これにより、タグ収容枠11にICタグ90を収容した状態でそのICタグ90の中央部に識別番号等の情報を、例えば、印字、手書き等により記入することができる。
【0040】
さて、ICタグ90を保持したICタグホルダ10Wは、タグ挿入孔20を有した側を先頭にして、ホルダ装着部70の両ホルダ取付壁71,71間に挿入される。その過程で弾性係止部材23の傾斜面23Aがホルダ取付壁71の端部に摺接して弾性係止部材23が弾性変形する。そして、ICタグホルダ10Wがホルダ装着部70の奥部まで押し込まれると、係止突部23Tが係止孔72内に突入して弾性係止部材23が弾性復元する。これにより、係止突部23Tの係止面23Bが係止孔72の内面に係止し、ICタグホルダ10Wがホルダ装着部70内に抜け止めされる。このように本実施形態によれば、ICタグホルダ10Wを管理対象物80Wにおける1対のホルダ取付壁71,71の間に押し込むだけで、弾性係止部材23が弾性変形を乗り越えてホルダ取付壁71に係止するので、ICタグホルダ10Wの管理対象物80Wに対する取付作業が容易になる。また、ICタグホルダ10Wがホルダ取付壁71,71の間に取り付けられると、タグ挿入孔20が管理対象物80Wの終端壁73によって塞がれるので、ICタグ90の保持も強固になる。
【0041】
[第3実施形態]
本実施形態のICタグホルダ10Xは、図11及び図12に示されており、前記第2実施形態のICタグホルダ10Wとは、弾性係止部材23と構造が異なる弾性係止部材30を備えた点と、タグ縁部対向突壁14Zを備えた点とが異なる。
【0042】
即ち、前記第2実施形態の弾性係止部材23が縦方向に延びた片持ち梁23Cを有していたのに対し、本実施形態の弾性係止部材30は、図11に示すように、前後方向に延びた片持ち梁30Cを有し、その先端から外方に突出した係止突部30Tの傾斜面30Aが後方を向く一方、係止面30Bが前方を向いている。
【0043】
また、タグ挿入孔20を備えた一方の長辺側枠構成壁12Uの内面から下方にタグ縁部対向突壁14Zが突出形成され、そのタグ縁部対向突壁14Zは、他方の長辺側枠構成壁12Uの内面から突出した前記タグ縁部対向突壁14Xと対称的な構造になっている。そして、湾曲挟持部24の一部がタグ縁部対向突壁14Zに連続している。
【0044】
さらに、本実施形態のホルダ装着部70は、管理対象物80Wの壁面80Hに陥没形成され、そのホルダ装着部70のうち横方向Yで対向した1対の内部対向壁75,75にそれぞれ係止孔76,76が形成されている(図11では、一方の内部対向壁75、係止孔76のみが示されている)。そして、このホルダ装着部70にICタグホルダ10Xを前後方向Zから押し込んで取り付けることができる(図12(A)及び図12(B)参照)。
【0045】
[第4実施形態]
本実施形態のICタグホルダ10Yは、図13に示されており、前記第1実施形態のICタグホルダ10とは、弾性係止部材23,23の代わりに取付支持脚16,16を備えた点が異なる。それら取付支持脚16は、図13(B)に示すように、リア支柱15から後方に延設された突壁16Tの先端部を直角曲げして当接壁16Aを設け、それら突壁16Tと当接壁16Aとの間を補強リブ16Bにて接続した構造なっている。また、当接壁16Aには、取付孔16Cが貫通形成されている。そして、管理対象物(図示せず)の壁面に当接壁16Aを当接した状態で、ネジ、リベット等によって固定される。本実施形態の構成によれば、取付支持脚16のタグ収容枠11からの突出量分だけ、ICタグ90を管理対象物の壁面からより遠くに離すことができ、ICタグ90の無線性能をへの影響をより一層低減させることが可能になる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0047】
(1)前記第1実施形態では、第1の挿入孔内面21が第2の挿入孔内面22側に膨出するように湾曲していたが、図14に示すように、第1の挿入孔内面25を第2の挿入孔内面26と反対側に膨出するように湾曲させてもよい。具体的には、図14に示したICタグホルダ10Zでは、タグ挿入孔20内の前後方向Zで対向する第1と第2の挿入孔内面25,26のうち第1の挿入孔内面25が前側に配置されると共に、第2の挿入孔内面26と反対側に膨出するように湾曲しかつ縦方向(図14の紙面と直交する方向)と並行な円弧面になっている。これに対し、第2の挿入孔内面26の奥側縁部26Aが第1の挿入孔内面25と並行に湾曲する一方、第2の挿入孔内面26の手前側縁部26Bが直線状に延び、それら奥側縁部26Aと手前側縁部26Bとの間で第2の挿入孔内面26が三次元的に捻れた形状になっている。このように構成しても第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
(2)前記第1実施形態では、第1の挿入孔内面21と第2の挿入孔内面22とによってタグ挿入孔20に挿入されたICタグ90を湾曲変形させる構成であったが、図15及び図16に示したICタグホルダ10Vのように、タグ挿入孔20内の前後方向Zで対向する孔内面20S,20Tを互いに並行な平坦面としておき、一方の孔内面20Sの横方向Xにおける両端部から他方の孔内面20Tに向けて1対の後向ガイド突起27(本発明に係る「変形ガイド」に相当する)を突出させる一方、他方の孔内面20Tの長手方向における中央部から一方の孔内面20Sに向けて1対の前向ガイド突起28(本発明に係る「変形ガイド」に相当する)と突出させてもよい。そして、図16に示すように、これら後向ガイド突起27と前向ガイド突起28とが、タグ挿入孔20の奥側に向かうに従って孔内面20S,20Tから徐々に突出する楔形状にしておけば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
(3)本発明に係るICタグホルダは、接着剤によって管理対象物に固定してもよい。
【0050】
(4)前記第2実施形態のICタグホルダ10Wでは、前側にのみタグ縁部対向突壁14X,14Y,14Yが備えられ、後ろ側にはリア支柱15,15が備えられていたが、それらリア支柱15,15に代えて後ろ側もタグ縁部対向突壁14X,14Xにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係るICタグ及びICタグホルダの斜視図
【図2】ICタグを保持した状態のICタグホルダの斜視図
【図3】ICタグホルダの平面図
【図4】ICタグホルダの平断面図
【図5】ICタグホルダの横断面図
【図6】ICタグホルダが取り付けられるパレットの斜視図
【図7】第2実施形態のICタグホルダの斜視図
【図8】そのICタグホルダが管理対象物に取り付けられた状態の斜視図
【図9】ICタグホルダの一部破断斜視図
【図10】ICタグホルダの平断面図
【図11】第3実施形態のICタグホルダの斜視図
【図12】そのICタグホルダが管理対象物に取り付けられた状態の斜視図
【図13】第4実施形態のICタグホルダの斜視図
【図14】変形例のICタグホルダの平面図
【図15】変形例のICタグホルダの平面図
【図16】変形例のICタグホルダの斜視図
【図17】従来のICタグホルダの斜視図
【符号の説明】
【0052】
10,10V〜10Z タグホルダ
11 タグ収容枠
12S 短辺側枠構成壁
12U,12D 長辺側枠構成壁
14 フロント支柱
14X〜14Z タグ縁部対向突壁
15 リア支柱
19 圧入係止突起(取付部)
20 タグ挿入孔
21,25 第1の挿入孔内面
22,26 第2の挿入孔内面
22A,26A 奥側縁部
22B,26B 手前側縁部
23,30 弾性係止部材
24 湾曲挟持部
24A タグ押圧凹部
27 後向ガイド突起(変形ガイド)
28 前向ガイド突起(変形ガイド)
30 弾性係止部材
30T 係止突部
70 ホルダ装着部
71 ホルダ取付壁
80 パレット(管理対象物)
80W 管理対象物
90 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード形のICタグを四方から囲むと共に前記ICタグの前面及び後面を前後方向で露出した状態にして収容可能なタグ収容枠と、
前記ICタグにて管理される管理対象物に前記タグ収容枠を取り付けるための取付部と、
前記タグ収容枠の一辺に貫通形成されてその一辺の長手方向に延び、前記ICタグを前記タグ収容枠の側方から前記タグ収容枠内に挿入可能とするためのタグ挿入孔と、
前記タグ挿入孔の内側に形成され、前記ICタグを前記タグ挿入孔に挿入したときに、そのタグ挿入孔の奥側に進むに従って前記ICタグを挿入方向と直交する方向で湾曲した形状に弾性変形させる変形ガイドと、
前記タグ収容枠内に収容した前記ICタグを、前記タグ挿入孔側に逆戻り不能に弾性復元させた状態で前記前後方向から挟持する複数のタグ前後保持部材とを備え、
前記複数のタグ前後保持部材は、前記タグ収容枠の対向辺間に差し渡された支柱、又は、前記タグ収容枠から内側に張り出して前記ICタグの縁部のみに対向するタグ縁部対向突壁の何れか又はそれらの両方で構成されたことを特徴とするICタグホルダ。
【請求項2】
前記タグ挿入孔の内面のうち前記前後方向で対向した第1と第2の挿入孔内面によって前記変形ガイドが構成され、
前記第1の挿入孔内面は、前記ICタグの挿入方向と直交する方向で円弧状に湾曲しかつ前記ICタグの挿入方向と並行になった円弧面であり、
前記第2の挿入孔内面は、前記ICタグの挿入方向の奥側に位置した奥側縁部が前記第1の挿入孔内面と並行になって湾曲する一方、前記ICタグの挿入方向の手前側に位置した手前側縁部が直線状に延びて、それら奥側縁部と手前側縁部との間で三次元的に捻れた捻れ曲面であることを特徴とする請求項1に記載のICタグホルダ。
【請求項3】
前記タグ収容枠のうち前記タグ挿入孔を有する枠構成壁のうち長手方向の中央部を内側に湾曲させることで、前記枠構成壁の外面にタグ押圧凹部を陥没形成する一方、前記枠構成壁の内面に湾曲挟持部を突出形成してその湾曲挟持部で前記タグ縁部対向突壁を構成し、
前記ICタグが前記タグ挿入孔を通して前記タグ収容枠の奥部に突き当たるまで挿入された状態で、前記ICタグのうち挿入方向と直交する方向の両端部が、前記タグ挿入孔を通過する一方、前記ICタグの中央部のみが前記湾曲挟持部において前記タグ挿入孔内に留まってその湾曲挟持部により前後方向から挟持されるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のICタグホルダ。
【請求項4】
前記ICタグホルダは、前記管理対象物に備えられて互いに対向した1対のホルダ取付壁の間に受容され、
前記取付部は、前記ICタグホルダを前記1対のホルダ取付壁の間に受容する過程で弾性変形した後、弾性復元して前記1対のホルダ取付壁に係止する弾性係止部材で構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のICタグホルダ。
【請求項5】
前記タグ挿入孔は、前記ICタグホルダを前記1対のホルダ取付壁の間に受容した状態で前記管理対象物の壁面に覆われる位置に配置されたことを特徴とする請求項4に記載のICタグホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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