説明

ICタグ付き本

【課題】用紙に含まれた水分の影響による読取り率の低下を招かず、しかも価格的な観点から実使用が可能なICタグ付き本を提供すること。
【解決手段】表紙の表紙部又は中身の所定ページにICタグ用インレットが貼り付けられており、そのICタグ用インレット10が貼り付けられる貼着領域3に、本を構成する用紙の一部又は全てを貫通する複数の孔4が設けられている構成とする。これらの孔4が電磁波の通り道となることから、用紙に含まれた水分の影響による読取り率の低下が防止される。しかも、大量生産による安価なICタグ用インレットを使用し、これを本を構成する用紙に貼着するだけであるので、コスト的に見ても実使用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍、雑誌等のいわゆる本の技術分野に属し、詳しくは、パッシブ型のICタグを取り付けたICタグ付き本に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外部処理装置との通信を非接触で行うICタグが一般に広く知られるようになってきた。このICタグは、情報を発信するために電池を内蔵しているアクティブ型と、電池を内蔵せずに受けた電波で電力を得て発信するパッシブ型に分類される。このうちパッシブ型のICタグは、リーダライタが電波を使って電力を送り込み、その電力でICが起動するもので、その電波には指示や要求も載っており、リーダライタから電力と命令を同時に受け取るようになっている。そして、ICタグはその指示に対する答えを搬送波と呼ばれる電波に載せて送り出す。電波の到達距離は最大で数メートルと短いが、小型かつ軽量で、アクティブ型に比べると非常に安価に製造できる。そのため、今後はパッシブ型のICタグが多くの商品などに搭載されることが期待されている。
【0003】
このパッシブ型のICタグは、ICチップとアンテナを備えていさえすればどんな形状であってもよい。例えば、円盤型、円筒型、カード型、箱型などがあるが、いずれも長い方向で数センチほどの大きさである。また、研究開発が進み、価格についても安価になることが見えてきたことから、様々な商品にICタグをつけて物流過程、保管時等における情報管理を可能にすることが提案されている。例えば、書籍、雑誌等の本にICタグを付けることにより、万引き防止機能を付与するのみならず、流通過程において必要な情報の管理を行うようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2003−63655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されている書籍、雑誌等の本は、背部の表紙内側にICタグを備えた構造をしており、ICタグが外部から見えないという利点を有している。しかしながら、本の背側の所定位置にICタグをセットする必要があるので作製が非常に簡単であるとは言いがたい。また、流通時においては、本の背側に外力が掛かる場合が多々あり、ICタグの信頼性が損なわれる恐れがないわけでなはい。
【0005】
そこで、ICタグの取付け位置がどこであっても、取扱い時における破損の恐れが完全に解消されないならば、表紙部や中身の所定ページにICタグを貼着する方が作製上も比較的簡単であって好ましい。ところが、本に用いる用紙は水分を含んでいるため、その水分によって周波数の高いICタグの読取り率が低下する恐れがある。すわなち、周波数の高いICタグは、通信距離を長くでき、アンテナを短くできるため、小型化が可能ではあるが、電磁波が水分の影響を受けて通信ができないという弱点がある。
【0006】
一方、パッシブ型のICタグは、小型化・低価格化に向けての研究開発が行われており、最近では、極小のICチップに外部アンテナを装着し、テープ状にした印刷アンテナインレット型のICタグ用インレットが供給されている。そして、このICタグ用インレットを用いてタグ化することで、各種用途に応じた形態のICタグを製造することができるようになっており、ICタグの普及を図る上においてこの小さくて安価なICタグ用インレットを利用することが望ましいという背景がある。ところが、このICタグ用インレットは、使用周波数が高いため、上記したように本の表紙部や中身の所定ページに貼り付けると、用紙に含まれる水分の影響を受けて読取り精度が低下するという問題を生じる。
【0007】
本発明は、上記のような問題点や事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、用紙に含まれた水分の影響による読取り率の低下を招かず、しかも価格的な観点から実使用が可能なICタグ付き本を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のICタグ付き本は、表紙の表紙部又は中身の所定ページにICタグ用インレットが貼り付けられており、そのICタグ用インレットが貼り付けられる貼着領域に、本を構成する用紙の一部又は全てを貫通する複数の孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
そして、貼着領域の周囲にも、本を構成する用紙の一部又は全てを貫通する複数の孔が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のICタグ付き本は、表紙部又は所定ページにICタグ用インレットが貼り付けられてはいるが、その貼着領域には用紙の一部又は全てを貫通する複数の孔が設けられているので、これらの孔が電磁波の通り道となることから、用紙に含まれた水分の影響による読取り率の低下が防止される。しかも、大量生産による安価なICタグ用インレットを使用し、これを本を構成する用紙に貼着するだけであるので、コスト的に見ても実使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、具体例を挙げて本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は本発明に係るICタグ付き本の一例を開いた状態で示す斜視図、図2は図1の要部を示す拡大図である。
【0013】
このICタグ付き本Bは、無線綴じ方式の本に適用したものであって、本文1とその背部に糊付けされた表紙2とからなり、1ページ目の背寄りの位置に帯状のICタグ用インレット10が天地方向に貼り付けられている。そして、図3にICタグ用インレット10を離した状態で示すように、ICタグ用インレット10が貼り付けられる貼着領域3には、複数の孔4が用紙の全てを貫通する状態で設けられている。さらに、表紙2における両方の表紙部2aにも同じ位置に孔4が設けられている。
【0014】
ICタグ用インレット10は、0.01〜0.5mm角の小さなICチップ11(例えばミューチップ)を用い、これに長さ50〜60mmの外部アンテナ12を装着して幅が約1mmのテープ状としたものであり、ICチップ11はPETフィルム等の絶縁性のベースフィルム13上に載置接合され、外部アンテナ12はそのベースフィルム13上に印刷により形成される。またICチップ11は表面及び側面が樹脂封止された状態で外部アンテナ12に接続される。外部アンテナ12の略中央部には、その一端が外部アンテナ12の外縁に達するL字状のスリット14が形成されており、このスリット14の途中に樹脂封止されたICチップ11が実装されている。また、ベースフィルム13にはICチップ11や外部アンテナ12を保護するためのカバーフィルムが必要に応じてラミネートされる。この外部アンテナ12付きのICチップ11は、アンテナ内蔵型のICチップを用いたものよりは通信距離が長く、広い範囲で用いることができるものであり、本発明で使用できるものとして色々の種類がある。このようなICタグ用インレット10は、印刷技術によりアンテナを作製することと、超音波接合技術により安価なフィルム素材を利用することで、大量生産でき、安価に供給することができる。このテープ状のICタグ用インレットをロール状に巻き取った状態とし、順次繰り出しながら裁断しつつ、本を構成する用紙の所定位置に一個一個の帯状のICタグ用インレット10を貼り付けるようにするのである。
【0015】
図1に示すICタグ付き本Bは、既存の無線綴じ機により製造される。無線綴じ機では、丁合された折丁をジョギングにより突き揃えた後、背の部分を2〜4mm切断し、ミーリング(切り削り)及びラフニング(荒び出し)により切断面を引っ掻いて足掛かりを付ける。続いて表紙のくるみ工程に移り、足掛かりを付けた背部にホットメルトを塗布して表紙付けを行う。この表紙付けの後、仕上げ断裁を経て無線綴じ本が作製される。
【0016】
このように製本した後、本文1と表紙2の全てを貫通するようにして、ICタグ用インレット10を貼り付ける領域に複数の孔4を打ち抜く。電磁波の通過を考慮すると、打ち抜いて形成する孔4のサイズは1mm以上が必要である。そして、表紙部2aを開いて1ページ目の背寄りにある貼着領域3にICタグ用インレット10を貼り付ける。このように、孔4を覆ってICタグ用インレット10を貼り付けることで、ICタグ用インレット10は孔4により外部と繋がった状態になり、リーダ/ライタの電磁波が直に届くようになる。
【0017】
図4は図1に示すICタグ付き本の変形例を図2に対応して示す拡大図であり、この図に示す例では、ICタグ用インレット10が貼り付けられる貼着領域に加え、その貼着領域の周囲にも複数の孔4を用紙の全てを貫通する状態で設けている。このように、貼着領域の周囲にも孔を設けることで、電磁波の通りが一層よくなる。
【0018】
以上、具体例を挙げて本発明を説明したが、本発明によるICタグ付き本は、上記の例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0019】
例えば、上記の説明では、無線綴じ方式の本に適用した例を挙げたが、本発明は、中綴じ、アジロ綴じ、かがり綴じ、或いは並製本、上製本と種々ある製本様式を問わず、いかなる製本様式の本についても適用できる。
【0020】
また、上記の説明では、本文と表紙の全ての用紙を貫通して孔を設けたが、本のデザインの都合上から、本文だけに孔を設けるようにしてもよい。この場合は、折丁を突き揃えた段階で孔を空けるようにする。また、本文の一部だけを貫通する孔を設けてもよく、この場合は折丁の段階で孔を空けるようにする。ただ、表紙も含めて用紙の全てを貫通する孔の方が、電磁波の通過しやすさの点で好ましいことは言うまでもない。また、用紙の全てを貫通する孔を設ける場合でも、必ずしも製本後に貫通孔を空ける必要はなく、折丁や表紙のそれぞれに孔を空けてから製本するようにしても構わない。
【0021】
また、上記の説明では、本文の1ページ目の背寄りの位置にICタグ用インレットを貼着したが、表紙の表紙部に貼着するようにしてもよい。この場合、表紙部の外面側よりも内面側の方が、ICタグ用インレットが隠れる点で好ましい。また、本文の1ページ目に限らず、所望により任意のページに貼着してもよい。
【0022】
また、上記の説明では、ICタグ用インレットを天地方向に貼り付けたが、横方向に貼り付けるようにしてもよい。ただ、本を手でめくる時は横方向に曲がるので、天地方向の方がICタグ用インレットに力が掛からないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るICタグ付き本の一例を開いた状態で示す斜視図である。
【図2】図1の要部を示す拡大図である。
【図3】ICタグ用インレットを離した状態で示す要部拡大図である。
【図4】図1に示すICタグ付き本の変形例を図2に対応して示す拡大図である。
【符号の説明】
【0024】
B ICタグ付き本
1 本文
2 表紙
2a 表紙部
3 貼着領域
4 孔
10 ICタグ用インレット
11 ICチップ
12 外部アンテナ
13 ベースフィルム
14 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表紙の表紙部又は中身の所定ページにICタグ用インレットが貼り付けられており、そのICタグ用インレットが貼り付けられる貼着領域に、本を構成する用紙の一部又は全てを貫通する複数の孔が設けられていることを特徴とするICタグ付き本。
【請求項2】
貼着領域の周囲にも、本を構成する用紙の一部又は全てを貫通する複数の孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のICタグ付き本。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−297768(P2006−297768A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123395(P2005−123395)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】