説明

ICタグ付インレット及びそれを使用したICタグ付書籍

【課題】対象物に対して粘着剤によって装着することができるICタグ付インレット及びそのICタグ付インレットのICタグのメモリ内に書き込んだ印字用データに紐付けされた所定の電子データをICタグ故障時のICタグ内データのバックアップ用、あるいはそのICタグシステム運用時にICダグに格納されている電子データの全部又は一部を目視にて確認できるように可視情報用として印字可能な被印字領域を備えるようにした。
【解決手段】熱レーザー印字適性のある用紙又は合成樹脂層フィルムからなるインレット本体1の裏面に、ICチップ2と該ICチップを動作させるアンテナ層3とからなる印字用データを格納するICタグを配置したICタグ付きインレットであって、ICタグメモリ内の印字用データ又はそのデータに紐付けされた電子データの全部又は一部をレーザー印字可能な被印字領域6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対して粘着剤によって装着することができるICタグ付インレットにおいて、ICタグのメモリ内の所定の電子データを、目視にて確認できるように可視情報として印字出力可能な印字用領域を備えたICタグ付インレット及びそれを使用したICタグ付書籍に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子データを目視にて確認可能な可視情報として熱レーザー光により印字するマーキングシートとして、特許文献1があり、光透過性シートの裏面にエネルギー吸収剤(感熱発色材)を分散した接着剤層(粘着剤層)を備え、前記光透過性シート側からレーザー光線を照射して印字するラベル、枚葉シート等のレーザーマーキング用シートがある。
【0003】
また特許文献2として、電子データを目視にて確認可能な可視情報を、熱レーザー光により受像層等に印字することができるICチップ付きマーキングシートがあり、また特許文献3として、リライト可能なサーマル層(感熱発色層)を有し、熱レーザー光により、そのマーキングシートのサーマル層に可視情報を印字することができるICタグ付きリライト型レーザーマーキング用シートがある。
【0004】
このようなICタグ(チップ)付きの個々のインレットやラベル等のレーザーマーキング用シートの表面に、そのICタグ内に収容されている電子データに基づいて可視情報を印字するICタグ印字システムにおいて、それら個々のインレットやラベル等に備える各々ICタグの一つ一つに固有のデータを格納する際に、ICタグ故障時のICタグ内データのバックアップ用として、あるいはそのシステム運用時にICダグに格納されているデータを目視にて確認するために、ICタグ内のデータの全て、あるいは一部の固有データを、そのICタグの付いたインレットやラベル等のレーザーマーキング用シート表面に、レーザー光を用いて印字する必要がある。
【0005】
また、例えばICタグを生産物や製品等の対象物へ装着する場合は、コストや生産能力の点から粘着剤を採用する場合が多いが、この場合、各ICタグへの印字方法として、そのICタグに印字可能な被印字層(例えば用紙等のマーキング用シート)を設けてICタグ付きマーキング用シート(インレット、ラベル等)を積層構成し、そのシート表面に熱転写インクリボン等を使用して印字するものである。
【0006】
例えば特許文献2のように、プリンタによるICタグへの印字が可能なように、そのICタグに用紙面(ラベル)等の被印字面を有するようにしたことにより、ICタグへの印字を実現している。
【0007】
しかしながら本来ICタグの機能としては、ICチップとアンテナで構成されたICタグ本体を積層保持したインレット(ICタグと同程度の面積のシート)で十分であるが、ICタグに対して印字するためには、マーキング用シートとして印字表現が可能な、ICタグの占有面積よりも大きな面積のインレットやラベル等のシートが必要であり、印字可能なICタグを製造する製造コストを上げる要因となっていた。
【0008】
また、特許文献3のように、レーザー光による印字方法においても、リライト(書き換え)可能なサーマル印字のためのリライトサーマル層を設ける必要がある場合には、ICタグ付きマーキング用シートにリライトサーマル層の積層構成が、ICタグのコストを上
げる要因となっており、特許文献1のように、レーザー光による発色専用のエネルギー吸収剤(感熱発色材)を分散した接着剤を使用することも、ICタグのコストを上げる要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−144082号公報
【特許文献2】特開2009−223847号公報
【特許文献3】特開2008−146030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、対象物に対して粘着剤によって装着することができるICタグ付インレット及びそのICタグ付インレットを使用した書籍において、そのICタグのメモリ内に書き込んだデータに紐付けされた所定の電子データを、ICタグ故障時のICタグ内データのバックアップ用として、あるいはそのICタグシステム運用時にICダグに格納されている電子データの全部又は一部を目視にて確認できるように、可視情報として印字可能な被印字領域を備えるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する手段として、本発明の請求項1に係る発明は、熱レーザー印字適性のある合成樹脂層を表面に有するフィルムからなるインレット本体の裏面に、ICチップと該ICチップを動作させるアンテナ層とからなる印字用データを格納するICタグを配置したICタグ付きインレットであって、前記インレット本体に、ICタグのメモリ内に格納されている印字用データ又はそのデータに紐付けされた電子データの全部又は一部を、該ICタグ格納データのバックアップ用データ又はICタグ格納データの確認用可視データとしてレーザー印字可能な被印字領域を備えることを特徴とするICタグ付インレットである。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る印字用データを格納するICタグ付インレットにおいて、前記インレット本体が、熱レーザー印字適性のある前記合成樹脂層による単層構成、又は熱レーザー印字適性のある前記合成樹脂層と基材層との積層構成であることを特徴とするICタグ付インレットである。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る印字用データを格納するICタグ付インレットにおいて、前記インレット本体のICタグを配置した裏面側に、粘着剤層を介して剥離シートを積層したことを特徴とするICタグ付インレットである。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1又は2に係る印字用データを格納するICタグ付インレットにおいて、前記インレット本体は、前記ICタグを配置した裏面に第1粘着剤層と補強用基材層と第2粘着剤層とをこの順に備え、前記第2粘着剤層を介して剥離シートを積層したことを特徴とするICタグ付インレットである。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれか1項に係る印字用データを格納するICタグ付インレットが、書籍本体の表紙、裏表紙、背部、見返し頁等の一部領域に粘着剤層を介して装着されていることを特徴とするICタグ付書籍である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のICタグ付インレットは、書籍に対してインレットを粘着剤によって装着することができると共に、そのインレット本体に備える合成樹脂層は、熱レーザー(ビーム光
)によって印字可能であるため、インレット本体に付帯するICタグのメモリ内に書き込んだ電子データや、そのデータに紐付けされた所定の電子データを、ICタグ故障時に、そのICタグ内データのバックアップ用として、その電子データの全部又は一部を、前記インレットの被印字領域内に可視データとして印字出力することができる。
【0017】
ICタグ付インレットを装着した個々の書籍(又は台紙を介して装着した書籍)の固有情報(書籍タイトル、著者等)や、その書籍に関する情報(価格、書籍掲載文章、その掲載内容説明等)を可視情報として印字出力が可能となる。
【0018】
また、そのICタグ付きインレットを用いたICタグシステム運用時においては、ICダグに格納されている前記電子データの全部又は一部を、インレット本体の被印字領域内に可視情報として印字出力することができるため、被印字領域内に印字出力された可視データをバックアップ用データとして保存したり、目視にて確認することができ、ICタグシステムのトラブル時におけるシステム運用の再開や立ち上げに有効な効果を発揮できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明のICタグ付インレットの一実施例を示す積層側断面図、(b)はその平面図。
【図2】(a)〜(d)は本発明のICタグ付インレットの各種の積層側断面図。
【図3】(a)は本発明のICタグ付インレットのICタグ格納データを可視データとしてレーザー印字するための印字領域を説明する平面図、(b)はその印字領域に可視データをレーザー印字した状態を示す平面図。
【図4】本発明のICタグ付インレットのICタグに格納された電子データの情報内容の一例を説明する情報分類表。
【図5】本発明のICタグ付インレットを装着した書籍の一実施例を説明する平面図。
【図6】従来のICタグ付インレットと、それを装着した書籍を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のICタグ付インレットを、その実施の形態に沿って以下に詳細に説明すれば、図1(a)は、本発明のICタグ付インレットの一実施例を示す積層側断面図、(b)はその平面図であり、熱レーザー(ビーム光)による印字適性のある合成樹脂層を表面に有するインレット本体1と、該インレット本体1の裏面に、ICチップ2と該ICチップ2に対する動作信号を電波信号として受信するアンテナ層3とからなるICタグが固定配置されている。
【0021】
前記インレット本体1の平面形状は、本発明においては、特に限定されるものではないが、例えば、図1(b)に示すように長方形状、又は正方形状等の矩形状でもよいし、多角形状、円形状、長円形状、楕円形状などであってもよい。
【0022】
前記ICタグのICチップ2に搭載するメモリ内には、電子データ、又はその電子データに紐付けされた電子データが格納されていて、前記インレット本体1には、図1(b)に示すように、前記ICチップ2のメモリ内に格納されているデータ、又はそのデータに紐付けされた電子データの全部又は一部を、該ICタグ格納データのバックアップ用デー
タ又はICタグ格納データの確認用可視データとしてレーザー印字可能な被印字領域6を備えている。
【0023】
前記ICタグ付インレットのインレット本体1は、図1(a)に示すように、該インレット本体1のICタグを配置した裏面側に、粘着剤層4を介して剥離シート5が積層されている。
【0024】
前記粘着剤層4は、単一層であってもいし、図1(b)に示すように、第1粘着剤層と補強用基材層(紙、プラスチックフィルム等のシート)と、第2粘着剤層とを、この順に備え、前記第2粘着剤層を介して剥離シート(粘着剤層に剥離可能に仮貼着されたセパレータ)を積層したものでもよい。
【0025】
図2は、本発明のICタグ付インレットの各種積層例及びレーザー印字される印字部を示す積層断面図であり、図2(a)は、熱レーザー(ビーム光)による印字適性のある合成樹脂層(単層構成)であるインレット本体1と、該インレット本体1の裏面に配置したICチップ2(マイクロCPU、メモリ等のIC回路)及びアンテナ層3(アルミニウムパターン層)からなるICタグとが配置され、該インレット本体1の印字適性のある合成樹脂層である被印字領域6内の印字部1a(丸印内)に、熱レーザーにより可視データが印字される。
【0026】
図2(b)は、図2(a)に示した前記ICタグ付インレットのICチップ2及びアンテナ層3からなるICタグが配置されたインレット本体1の裏面側に、該ICタグを保護するための保護層7(保護基材層)を積層したものであり、該インレット本体1の印字適性のある合成樹脂層である被印字領域6内の印字部1a(丸印内)に、熱レーザーにより可視データが印字される。
【0027】
図2(c)は、インレット本体1の表面にICチップ2及びアンテナ層3からなるICタグを配置した例であり、該インレット本体1の印字適性のある合成樹脂層である被印字領域6内の印字部1a(丸印内)に、熱レーザーにより可視データが印字される。
【0028】
図2(d)は、図2(c)に示したICタグ付インレットのICチップ2及びアンテナ層3からなるICタグが配置されたインレット本体1の表面側に、該ICタグを保護するための保護層7(保護基材層)を積層したものであり、該インレット本体1の印字適性のある合成樹脂層である被印字領域6内の印字部1a(丸印内)に、熱レーザーにより可視データが印字される。
【0029】
図3(a)は本発明のICタグ付インレットのICタグ格納データを可視データとしてレーザー印字するための印字領域を説明する平面図、(b)はその印字領域に可視データをレーザー印字した状態を示す平面図であり、図3(a)に示すように、ICチップ2及びアンテナ層3によるICタグの配置部分を除外する被印字領域6内に、図3(b)に示すように、そのICタグ付インレットに付帯するICチップ2のICメモリ内に格納されている電子データ(全部又はその一部)を、外部読み出し(又は読み出し/書き込み)手段からの信号をアンテナ3にて受信して、固定情報8、ICタグ内電子データに紐付けされたデータ9(数値、文字等)として読み出し、熱レーザー印字手段により印字するものである。
【0030】
本発明のICタグ付インレットに対するレーザーによる印字は、インレットが個片の各インレットを1単位として多単位のインレットが多面付けされた長尺状のインレットを、各個片のインレットとして個片化(1単位の個片にカッティング)する前において、長尺状のインレット基材にICタグが多面付けされた状態(長尺状のインレットの状態)で行
っても良いし、あるいは、粘着剤層4を用いて台紙11などに個々のインレット本体が取り付けられた状態にて行ってもよい。
【0031】
図4は、本発明のICタグ付インレットのICタグに、タグ書き込み/読み出し手段を用いて書き込み格納された電子データの情報内容の一例を説明する情報内容の分岐表であり、各ICタグのICチップ2のICメモリ内には、当該ICタグ付インレットを添付(装着)する書籍に共通して付与する番号(例えば書籍名、ISBN等の書籍を識別する番号)と、書籍毎の固有番号(シリアルナンバー1、2、3、・・・)が、電子データとして書き込み収録されている。
【0032】
図5は、本発明のICタグ付インレットを装着した書籍の一実施例を説明する平面図であり、その書籍タイトル14aや、文章、説明文、挿絵等の所定の掲載内容14を備える書籍本体の表紙や裏表紙の表面11又は内面、背表紙の表面11、見返し頁面等の頁面11(又は当該書籍本体面に貼着する台紙面)には、本発明のICタグ付インレットAが、剥離可能に仮貼着されている剥離シート5を剥離した粘着剤層4により貼着されて、書籍本体11に装着されている。
【0033】
本発明のICタグ付きインレットAを台紙に貼り付け、これを書籍に挿入して用いる場合、書籍の固有情報は個々のインレットに対応してレーザー印字し、台紙には予め、書籍に依らない個々のインレットに共通する共通情報のみを印字(通常のオフセット方式、グラビア方式等の多数複製方式にて印刷)すれば、台紙を印刷により安価に製造することができる。
【0034】
本発明のICタグ付インレットのインレット本体1は、紙製、あるいは熱可塑性、熱硬化性の合成樹脂製シート、あるいはそれらの積層シートであって、この紙製や合成樹脂製のシート印字体からなるインレット本体1の被印字領域6面に、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー等の熱レーザービームを備えたレーザーサーマルを用いて、被印字領域6のシート印字体表面を、熱レーザービームをX−Y方向に走査させ、レーザービームの照射された印字体表面を焼結・焦結による炭化(黒化)させて、あるいは合成樹脂製シートであれば溶融化(粗面化、光拡散化)させて、その変色(黒化、白化)により印字を行うものである。
【0035】
インレット本体1として使用するシート印字体が紙製シートの場合は、その材質を特に限定するものではないが、使用するシート印字体が熱可塑性や熱硬化性の合成樹脂製シートの場合には、熱可塑性の合成樹脂製シート、例えばポリエチレンテレフタレートが適当である。
【符号の説明】
【0036】
A…ICタグ付きインレット
1…インレット本体
2…ICチップ
3…アンテナ層
4…粘着剤層
5…剥離シート
6…被印字領域
11…書籍本体面(又は書籍本体に貼着する台紙面)
12…シリアルナンバー
13…バーコード
14…書籍タイトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱レーザー印字適性のある合成樹脂層を表面に有するフィルムからなるインレット本体の裏面に、ICチップと該ICチップを動作させるアンテナ層とからなる印字用データを格納するICタグを配置したICタグ付きインレットであって、前記インレット本体に、ICタグのメモリ内に格納されている印字用データ又はそのデータに紐付けされた電子データの全部又は一部を、該ICタグ格納データのバックアップ用データ又はICタグ格納データの確認用可視データとしてレーザー印字可能な被印字領域を備えることを特徴とするICタグ付インレット。
【請求項2】
前記インレット本体が、熱レーザー印字適性のある前記合成樹脂層による単層構成、又は熱レーザー印字適性のある前記合成樹脂層と基材層との積層構成であることを特徴とする請求項1記載のICタグ付インレット。
【請求項3】
前記インレット本体のICタグを配置した裏面側に、粘着剤層を介して剥離シートを積層したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のICタグ付インレット。
【請求項4】
前記インレット本体は、前記ICタグを配置した裏面側に、前記粘着剤層として、第1粘着剤層と補強用基材層と第2粘着剤層とをこの順に備え、前記第2粘着剤層を介して剥離シートを積層したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のICタグ付インレット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のICタグ付インレットが、書籍本体の表紙、裏表紙、背部、見返し頁等の一部領域に、粘着剤層を介して装着されていることを特徴とするICタグ付書籍。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−113402(P2012−113402A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259978(P2010−259978)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】