ICタグ読取装置
【課題】反射波の影響を抑えると共に、電波の伝播領域を制御してICタグを読み取る領域を制限するICタグ読取装置を提供することを目的とする。
【解決手段】RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ8を配設した。さらに、RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3を、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設けた。かつ、通路部13を挟んで他側に電波吸収側壁1を配設した。そして、RFIDアンテナ8から放射される円偏波の半値角が一対の電波吸収前壁2・後壁3によって狭められた制御後半値角を、40°以下とした。
【解決手段】RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ8を配設した。さらに、RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3を、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設けた。かつ、通路部13を挟んで他側に電波吸収側壁1を配設した。そして、RFIDアンテナ8から放射される円偏波の半値角が一対の電波吸収前壁2・後壁3によって狭められた制御後半値角を、40°以下とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグ読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、数cm程度のICチップを埋め込んだタグに情報を記憶させ、電磁波又は電磁界を介して非接触で情報を読み取るシステム(RFID)が、バーコードに換わる次世代の識別技術として使用され、読取を行うためのICタグ読取装置が従来より知られている(例えば、特許文献1、2参照)。そして、物流における物品のトレーサビリティ管理、図書館における蔵書管理その他の様々な分野での応用が期待されている。
【特許文献1】特開2005−267077公報
【特許文献2】特開2006− 20083公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のUHF帯( 800MHz〜 960MHz)用ICタグ読取装置は、通信距離を大きく確保できる点が大きな利点の一つであるが、その反面、通信領域が広いために、読取を所望しない場所に存在するICタグの情報まで読み取ってしまうという問題や、隣接する同種システム間の干渉により正しくICタグの情報を読み出せないという問題や、さらに、様々な周辺構造物からの反射波と送受信アンテナからの直接波が合成し、特に弱め合うポイント(Null点)ではICタグが無応答となるという問題があった。これらの問題から、電磁環境を如何に制御するかが課題となっていた。
【0004】
そこで、本発明は、反射波の影響を抑えると共に、電波の伝播領域を制御してICタグを読み取る領域を制限するICタグ読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグを付設した被識別体が通過する通路部の一側に、上記RFIDタグに記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナを配設し、さらに、該RFIDアンテナから放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁・電波吸収後壁を、該RFIDアンテナの前縁・後縁近傍から上記通路部側へ突出状として設け、かつ、上記通路部を挟んで他側に電波吸収側壁を配設したものである。なお、通路部の上部若しくは天井部にRFIDアンテナを配設することも望ましい。
【0006】
また、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグを付設した被識別体が通過する通路部の両側に夫々、上記RFIDタグに記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナを配設し、さらに、各該RFIDアンテナから放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁・電波吸収後壁を、該RFIDアンテナの前縁・後縁近傍から上記通路部側へ突出状として設け、かつ、上記通路部を挟んで各該RFIDアンテナの反対側に電波吸収側壁を配設したものである。なお、通路部の上部若しくは天井部にRFIDアンテナを配設することも望ましい。
【0007】
また、上記RFIDアンテナから放射される電波の半値角が一対の上記電波吸収前壁・後壁によって狭められた制御後半値角を、40°以下とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係るICタグ読取装置は、通路部の一側に設けたRFIDアンテナから放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁・電波吸収後壁を、RFIDアンテナの前縁・後縁近傍から通路部側へ突出状として設け、かつ、通路部を挟んで他側に電波吸収側壁を配設したので、簡易な構成でありながら、放射した電波を制御(ゾーンコントロール)でき、所望しない場所にあるタグ情報の読み取りを防ぐことができる。また、隣接する別のアンテナから放射した電波との干渉も防がれる。さらに、読取可能領域にNull点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れを防ぐことができる。よって、通信領域が大きなFRIDシステムにおける物流において、識別を所望する物品(被識別体)の正確な管理を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1〜図5は本発明に係るICタグ読取装置の実施の一形態を示し、このICタグ読取装置は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るUHF帯( 800MHz〜 960MHz)用のRFIDアンテナ8が配設されている。RFIDアンテナ8は、その電波放射面28が通路部13の向き(被識別体10の通路方向12)と平面視で平行状となると共に、その給電点18が床面から所定(例えば、1300mm)の高さ位置となるように図示省略の保持部材によって保持される。
【0010】
上述のように、RFIDアンテナ8は電波を送受信するUHF帯R/W用であり、従来のRFIDシステム( 13.56MHz帯、2.45GHz帯等)に比べて遠方まで伝播可能という特性を有し、通信距離をより長く確保できるものである。RFIDアンテナ8の筐体11は、長辺が 700mm〜 730mmで、短辺が 300mm〜 330mmで、厚さが35mm〜45mmの矩形平板状を有し、アルミニウムケースと塩ビカバーを有する。給電点18廻りに斜線で描いた円形の範囲は電波放射範囲であり、給電点18はこの範囲の中心点よりも僅かに下方に位置する。
【0011】
また、通路部13の(下方)床面には、放射電波の床面による反射を防ぐ電波吸収床部材15を設置しても良い。また、通路部13の(上方)天井側には、電波の漏れを防ぐ電波吸収天井部材16を設置しても良い。
【0012】
そして、図1,図2,図4,図5において、本発明の装置は、RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視のビーム領域6の半値角θを狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3が、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設けられる。
具体的には、電波吸収前壁2・後壁3は矩形平板状を有すると共に、前壁2・後壁3は、RFIDアンテナ8を前後中央位置に挟んだ状態で、かつ、RFIDアンテナ8に直交状(通路方向12に直交状)として、設けられる。前壁2と後壁3の夫々の(通路部13側)縦辺部20,30は、通路部13側へ同じ位置まで突出している。
なお、本発明においては、RFIDアンテナ8から通路部13を見た場合の左側を前側とし、右側を後側とする。
【0013】
また、RFIDアンテナ8の給電点18は、前後方向中央に設けられている場合、即ち、前壁2と給電点18との前後方向寸法W1 と、後壁3と給電点18との前後方向寸法W2 とが同じ大きさに設定されている場合(図2〜図5参照)と、W1 <W2 (図12〜図15参照)や、W2 <W1 となるように設定される場合がある。なお、実施例のRFIDアンテナ8は、一点の給電点18において電波の送信・受信を行うものであるが、送信ポイントと受信ポイントが分離した位置に設けられたアンテナを用いてもよく、送信ポイントが本発明の給電点18に相当する(図示省略)。
【0014】
そして、θは、前壁2・後壁3が設けられていない場合にRFIDアンテナ8から放射される電波の半値角であり、6は、半値角θを成すビーム領域である。ビーム領域6が、RFIDアンテナ8の電波放射面28に対する法線よりも僅かに前側へ傾いているのはアンテナの放射特性による。
そして、θcは、RFIDアンテナ8から放射される電波の半値角θが前壁2・後壁3によって狭められた(ゾーンコントロールされた)制御後半値角であり、20°〜40°となるように設定される。ゾーンコントロールされた制御領域9を点々で示した。
制御後半値角θcが40°を超過すると、電波が拡がり過ぎるため、読取対象外の範囲にあるタグの情報まで読んでしまう虞れがある。
一方、制御後半値角θcに下限をもたせることにより、電波の拡がりを一定量保つことができ、ゲートを通るRFIDタグの読み取り領域(距離、通過時間)を長く確保できることから、読取漏れを確実に防ぐことができる。この観点からは、制御後半値角θcは、20°以上とすることがより好ましい。
なお、半値角は、一番強く電波が出て行く点を基準として、これが電力で半分の値(最大電力から3dBを引いた値)になる点でつくる角度であり、ビームの鋭さを表す。
【0015】
また、前壁2・後壁3の突出寸法Lは、制御後半値角θcが上記の範囲を満たす条件の下で、電気長にて 0.5×λ〜3×λ(λは電波の波長を示す)に設定され、かつ、前壁2・後壁3とRFIDアンテナ8の前端縁・後端縁との間隔寸法は、同様の条件の下で、 0.5×λ以下(0は当接した状態)に設定される。アンテナ8の前端縁と前壁2、及び、アンテナ8の後端縁と後壁3とは、夫々間隙を有するように設けられる場合(図1〜図5参照)と、隙間無く(当接状に)設けられる場合(図12〜図14参照)がある。例えば、 953MHZの場合、Lが 150mmのとき約0.48×λで表される。
【0016】
電波吸収前壁2・後壁3は、例えば、ポリカーボネート、粘着材、Ag膜、PET、空隙部(を有する部材)、PET、ITO膜、粘着材、ポリカーボネートを順次積層して形成される。
【0017】
さらに、図1,図2,図4において、本発明の装置は、RFIDアンテナ8から通路部13を挟んで他側に設けられた平板形状の電波吸収側壁1を具備する。電波吸収側壁1は、RFIDアンテナ8の電波放射面28と平行状に立設されている。この側壁1の上下端辺と、電波吸収天井部材16・床部材15の他端辺とを夫々隙間無く連結することで、電波の漏れが防がれる。
また、電波吸収側壁1の前後方向の長さ寸法Pは、前壁2・後壁3が設けられた状態において制御後半値角θcのビーム領域6に対応するように形成される。即ち、RFIDアンテナ8と側壁1との距離をXとすると、P≧2Xtan(θc/2)の式を満たすように形成される。そして、側壁1は、ビーム領域6内の電波を漏れなく受けることができるように設置される。
【0018】
図6〜図8は他の実施例を示し、図1〜図5の装置との相違点は、RFIDアンテナ8から放射されるビーム領域6の上方領域や下方領域を狭める電波吸収上壁4や下壁5が設けられた点である。
図6は、アンテナ8の上方に、RFIDアンテナ8から通路部13側へ突出状として水平状の電波吸収上壁4が、設けられる。上壁4は、その(通路部13側)縦辺部40が前壁2・後壁3の縦辺部20,30と同じ位置まで通路部13側へ突出している。図7は、アンテナ8の下方に、RFIDアンテナ8から通路部13側へ突出状として水平状の電波吸収下壁5が、設けられる。下壁5は、その(通路部13側)縦辺部50が前壁2・後壁3の縦辺部20,30と同じ位置まで通路部13側へ突出している。図8では、電波吸収上壁4及び下壁5が、図6,図7で説明したと同じ構成で設けられている。
上壁4と下壁5を設けることで、電波の垂直成分が上方・下方へ拡がる角度を制御でき、一層、他のタグの読取防止や、他の同種システムとの干渉防止も図り得る。
【0019】
図9〜図11は、前壁2・後壁3の別の実施例を示す。図9では、前壁2・後壁3は、両者の間隔が通路部13側へテーパ状に狭くなる平面視ハの字状に設けられている。図10の装置は、前壁2・後壁3は、両者の間隔が通路部13側へテーパ状に拡がる平面視ハの字状に設けられている。また、図11の装置は、平行な前壁2・後壁3の縦辺部20,30が、夫々前後方向内側に小さく折曲られている。図9〜図11の実施例においても、図6〜図8で説明した上壁4や下壁5を組み合わせて設けてもよい。
【0020】
図19は本発明のICタグ読取装置の他の実施の形態を示し、図1,図2,図4の装置との相違点は、通路部13の両側に夫々、RFIDアンテナ8を配設し、かつ、通路部13を挟んで各RFIDアンテナ8の反対側に電波吸収側壁1を配設した点である。一側・他側のRFIDアンテナ8A,8Bは、夫々の電波放射面28,28が平行かつ対向状になるように、同じ高さ位置に設けられる。また、各側板1は、各RFIDアンテナ8の裏側(通路部13から見て反対側)近傍に立設され、一側に設けた電波吸収側壁1Aと、他側に設けた電波吸収側壁1Bは、図1〜図4で説明した側壁1と同様の形状を有し、かつ、相互に平行に立設されている。また、一側・他側の夫々において、RFIDアンテナ8と前壁2・後壁3の位置関係は、図1〜図5で説明した構成と同じである。なお、図19の天井部材16の下面又は下方に、RFIDアンテナを追加して配置することも望ましい(図示省略)。
【0021】
そして、一側のRFIDアンテナ8Aと他側のRFIDアンテナ8Bは、時間帯をずらして交互に送受信を行う。よって、例えば、大きな被識別体10の一側や他側に偏ってRFIDタグ7が付されていても、どちらかのRFIDアンテナ8がタグ情報を読み取ることができる。また、RFIDタグ7を付した多数の被識別体10…が台車に積まれている場合にも、全てのRFIDタグ7…を漏れなく、どちらかのRFIDアンテナ8が確実に読み取る。
【0022】
次に、RFIDアンテナ8の電波を実際に測定してその結果について考察する。
先ず、図1,図2の装置にて、設置位置等の条件を様々に変化させてRFIDアンテナ8の周囲の電波環境(電界分布)を測定した結果を図12〜図15に示した。また、前壁2・後壁3を省略して測定した(従来例の)結果を図16に示し、さらに、別の従来の装置の測定結果を図17に示した。23で示した枠内は、RFIDアンテナ8の周囲のうち、後述の図示省略の受信アンテナによって測定した平面視における測定範囲である。測定範囲23に沿って付された数字は、側壁1の前後方向中心の基準点Oから、RFIDアンテナ8側と、前側への位置(座標)である。受信アンテナを測定範囲23内で移動させながら多数の箇所で測定を行う。
【0023】
電波吸収前壁2・後壁3は共に、縦寸法が2000mm、横寸法が1000mm、厚さ寸法80mm(そのうち空隙が73mm)である(なお、図1は、前壁2・後壁3の一部のみ図示されている。)。また、RFIDアンテナ8と電波吸収側壁1の距離Xを3000mmとした。また、RFIDアンテナ8の給電点18は、床面から1300mmの高さ位置に設定した。給電点18は、前後中央よりも前寄りに設けられている。
また、RFIDアンテナ8の測定周波数は 953MHzである。測定範囲23に設置する測定用の受信アンテナは垂直偏波のダイポールアンテナであり、測定の高さ位置を1300mmとした。
【0024】
そして、図12、図13、図14は、装置の突出寸法Lを 300mm、 500mm、 750mmに設定した場合の夫々の電界分布を示す。また、図16は、前壁2・後壁3を設けずに測定を行ったときの電界分布を示す。24で示した無地の領域は、電界強度が一定値未満であってRFIDタグ7の情報を読み取れない読取不可領域を示す。そして、網掛けにて示した領域22は、電界強度が一定値以上であってRFIDタグ7の情報を読み取ることのできる読取可能領域を示し、網掛けを密に示した領域ほど強く読み取ることができる。
図16における読取可能領域22が、広範囲であるのに対して、図12〜図14においては、前壁2・後壁3によりゾーンコントロールされて狭くなった読取可能領域22が測定された。また、突出寸法Lが大きくなるに従って、より大きく狭められていくことが分かる。なお、測定範囲23よりも後側における範囲の測定は省略したが、省略した範囲においても読取可能領域はゾーンコントロールされている。
【0025】
図15は、Lを 500mmとし、かつ、前壁2と後壁3の間隔を、図12〜図14の装置に対して約2倍に設定した場合の電界分布を示し、この図15によれば、読取可能領域22が広範囲に拡がり過ぎているため、所望しない場所のタグ情報も読み取ってしまい、適切なゾーンコントロールではない。
【0026】
また、図17は、図1の装置において前壁2・後壁3を設けず、かつ、電波吸収側壁1に替えて電波反射側壁14を設けた場合の電界分布を示す。この図17によれば、RFIDアンテナ8からの直接波と、電波反射側壁14からの反射波とが合成し、読取可能領域22内に、特に弱め合うポイントで複数のNull点17…が生じてしまい、タグが無応答となるという問題がある。
また、図示省略するが、従来では、RFIDアンテナを電波遮蔽材で覆う対策が採られていたが、遮蔽材による反射波の到達経路を予測することが困難であった。
【0027】
また、図18は、図12,図13,図14,図16の測定で、RFIDアンテナ8(給電点18)から一定距離の箇所で測定した電界強度の変位を示す。横軸は、給電点18を通るRFIDアンテナ8に立てた法線を基準として計測した前後方向への角度を示し、プラス側が後側への角度、マイナス側が前側への角度を示す。また、縦軸は電界強度を示す。そして、電界強度の最強点から3dB低い電界強度を成す電波の半値角は、図18のグラフからも明らかなように、前壁2・後壁3が設けられない(図16に対応する)場合の半値角θが最も大きく、そして、突出寸法Lが大きくなるに従って(図12,図13,図14の順に)、制御後半値角θcが小さくなる。
【0028】
本発明において使用するUHF帯のRFIDの電波は、遠方まで伝播するという特性を有しているが、以上の測定結果から、RFIDアンテナ8が放射した電波を効果的にゾーンコントロールできるので、所望しない場所のタグの情報を読み取ることがない。また、別のアンテナからの電波と干渉も防がれ、正確にタグの情報を読み取ることができる。また、Null点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れが防がれる。
【0029】
なお、図19の装置においての実験結果は省略したが、一側のアンテナ8Aと他側のアンテナ8Bの内の一方が送受信(ON)の時、他方はOFF状態として、両者を交互にON−OFFさせる。そして、各アンテナ8から放射された電波は、図12〜図14での説明と同様のゾーンコントロールが行われて、図1の装置と同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、従来のように電波反射体を用いた場合には、送信アンテナが例えばパラボラやホーンアンテナなどの指向性の高いアンテナを構成することとなり、アンテナ利得が増加する。本発明によれば、送信アンテナの利得に影響を与えないため、UHF帯で電波の強さとして規制されているEIRP(実効放射電力:アンテナ利得と送信出力の積)値を変化させることなくゾーンコントロールを行うことができる利点がある。
【0031】
以上のように、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ8を配設し、さらに、RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視の半値角θを狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3を、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設け、かつ、通路部13を挟んで他側に電波吸収側壁1を配設したので、簡易な構成でありながら、放射した電波を制御(ゾーンコントロール)でき、所望しない場所にあるタグ情報の読み取りを防ぐことができる。また、隣接する別のアンテナから放射した電波との干渉も防がれる。さらに、放射領域にNull点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れを防ぐことができる。よって、通信領域が大きなFRIDシステムにおける物流において、識別を所望する物品(被識別体10)のみを確実に識別し、管理することができる。また、RFIDアンテナ8は、そのアンテナ利得を増加させずに指向性が高まり技術的に合理的である。
【0032】
また、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の両側に夫々、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ8,8を配設し、さらに、各RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視の半値角θを狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3を、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設け、かつ、通路部13を挟んで各RFIDアンテナ8の反対側に電波吸収側壁1を配設したので、簡易な構成でありながら、放射した電波を制御(ゾーンコントロール)でき、所望しない場所にあるタグ情報の読み取りを防ぐことができる。また、隣接する別のアンテナから放射した電波との干渉も防がれる。さらに、放射領域にNull点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れを防ぐことができる。このように、通信領域が大きなFRIDシステムにおける物流において、識別を所望する物品(被識別体10)のみを確実に識別して、管理できる。
さらに、一側のRFIDアンテナ8Aと他側のRFIDアンテナ8Bを、時間帯をずらして交互に送受信することで、例えば、大きな被識別体10の一側や他側に偏ってRFIDタグ7が付されていても、どちらかのRFIDアンテナ8が確実に読み取ることができる。また、RFIDタグ7を付した多数の被識別体10…が台車に積まれている場合にも、どちらかのRFIDアンテナ8が、全てのRFIDタグ7…を漏れなく確実に読み取ることができる。さらに、RFIDアンテナ8は、そのアンテナ利得を増加させずに指向性が高まり技術的に合理的である。
【0033】
また、RFIDアンテナ8から放射される電波の半値角θが一対の電波吸収前壁2・後壁3によって狭められた制御後半値角θcを、40°以下(好ましくは20°〜40°)としたので、読取対象外の範囲にあるタグの情報まで読み取ってしまうのを防ぐことができる。また、電波の届く範囲が狭くなり過ぎないので、ゲート(通路部13)を通る際のタグ情報の読取漏れを確実に防ぐことができる。これらのように、物流における被識別体10の管理を確実に行うことができる。しかも、電波吸収側壁1の前後方向寸法を抑えることができるので、設置スペースを多く必要とせず、材料コストも最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るICタグ読取装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】平面図である。
【図3】RFIDアンテナを示す正面図である。
【図4】説明用平面図である。
【図5】要部正面図である。
【図6】他の実施例を示す要部正面図である。
【図7】別の実施例を示す要部正面図である。
【図8】さらに別の実施例を示す要部正面図である。
【図9】他の実施例を示す要部平面図である。
【図10】別の実施例を示す要部平面図である。
【図11】さらに別の実施例を示す要部平面図である。
【図12】電界分布を示す説明用平面図である。
【図13】電界分布を示す説明用平面図である。
【図14】電界分布を示す説明用平面図である。
【図15】電界分布を示す説明用平面図である。
【図16】電界分布を示す説明用平面図である。
【図17】電界分布を示す説明用平面図である。
【図18】電界強度の測定結果を示すグラフである。
【図19】本発明に係るICタグ読取装置の他の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 電波吸収側壁
2 電波吸収前壁
3 電波吸収後壁
7 RFIDタグ
8 RFIDアンテナ
10 被識別体
13 通路部
θ 半値角
θc 制御後半値角
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグ読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、数cm程度のICチップを埋め込んだタグに情報を記憶させ、電磁波又は電磁界を介して非接触で情報を読み取るシステム(RFID)が、バーコードに換わる次世代の識別技術として使用され、読取を行うためのICタグ読取装置が従来より知られている(例えば、特許文献1、2参照)。そして、物流における物品のトレーサビリティ管理、図書館における蔵書管理その他の様々な分野での応用が期待されている。
【特許文献1】特開2005−267077公報
【特許文献2】特開2006− 20083公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のUHF帯( 800MHz〜 960MHz)用ICタグ読取装置は、通信距離を大きく確保できる点が大きな利点の一つであるが、その反面、通信領域が広いために、読取を所望しない場所に存在するICタグの情報まで読み取ってしまうという問題や、隣接する同種システム間の干渉により正しくICタグの情報を読み出せないという問題や、さらに、様々な周辺構造物からの反射波と送受信アンテナからの直接波が合成し、特に弱め合うポイント(Null点)ではICタグが無応答となるという問題があった。これらの問題から、電磁環境を如何に制御するかが課題となっていた。
【0004】
そこで、本発明は、反射波の影響を抑えると共に、電波の伝播領域を制御してICタグを読み取る領域を制限するICタグ読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグを付設した被識別体が通過する通路部の一側に、上記RFIDタグに記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナを配設し、さらに、該RFIDアンテナから放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁・電波吸収後壁を、該RFIDアンテナの前縁・後縁近傍から上記通路部側へ突出状として設け、かつ、上記通路部を挟んで他側に電波吸収側壁を配設したものである。なお、通路部の上部若しくは天井部にRFIDアンテナを配設することも望ましい。
【0006】
また、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグを付設した被識別体が通過する通路部の両側に夫々、上記RFIDタグに記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナを配設し、さらに、各該RFIDアンテナから放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁・電波吸収後壁を、該RFIDアンテナの前縁・後縁近傍から上記通路部側へ突出状として設け、かつ、上記通路部を挟んで各該RFIDアンテナの反対側に電波吸収側壁を配設したものである。なお、通路部の上部若しくは天井部にRFIDアンテナを配設することも望ましい。
【0007】
また、上記RFIDアンテナから放射される電波の半値角が一対の上記電波吸収前壁・後壁によって狭められた制御後半値角を、40°以下とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係るICタグ読取装置は、通路部の一側に設けたRFIDアンテナから放射される電波の平面視の半値角を狭める鉛直状電波吸収前壁・電波吸収後壁を、RFIDアンテナの前縁・後縁近傍から通路部側へ突出状として設け、かつ、通路部を挟んで他側に電波吸収側壁を配設したので、簡易な構成でありながら、放射した電波を制御(ゾーンコントロール)でき、所望しない場所にあるタグ情報の読み取りを防ぐことができる。また、隣接する別のアンテナから放射した電波との干渉も防がれる。さらに、読取可能領域にNull点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れを防ぐことができる。よって、通信領域が大きなFRIDシステムにおける物流において、識別を所望する物品(被識別体)の正確な管理を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1〜図5は本発明に係るICタグ読取装置の実施の一形態を示し、このICタグ読取装置は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るUHF帯( 800MHz〜 960MHz)用のRFIDアンテナ8が配設されている。RFIDアンテナ8は、その電波放射面28が通路部13の向き(被識別体10の通路方向12)と平面視で平行状となると共に、その給電点18が床面から所定(例えば、1300mm)の高さ位置となるように図示省略の保持部材によって保持される。
【0010】
上述のように、RFIDアンテナ8は電波を送受信するUHF帯R/W用であり、従来のRFIDシステム( 13.56MHz帯、2.45GHz帯等)に比べて遠方まで伝播可能という特性を有し、通信距離をより長く確保できるものである。RFIDアンテナ8の筐体11は、長辺が 700mm〜 730mmで、短辺が 300mm〜 330mmで、厚さが35mm〜45mmの矩形平板状を有し、アルミニウムケースと塩ビカバーを有する。給電点18廻りに斜線で描いた円形の範囲は電波放射範囲であり、給電点18はこの範囲の中心点よりも僅かに下方に位置する。
【0011】
また、通路部13の(下方)床面には、放射電波の床面による反射を防ぐ電波吸収床部材15を設置しても良い。また、通路部13の(上方)天井側には、電波の漏れを防ぐ電波吸収天井部材16を設置しても良い。
【0012】
そして、図1,図2,図4,図5において、本発明の装置は、RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視のビーム領域6の半値角θを狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3が、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設けられる。
具体的には、電波吸収前壁2・後壁3は矩形平板状を有すると共に、前壁2・後壁3は、RFIDアンテナ8を前後中央位置に挟んだ状態で、かつ、RFIDアンテナ8に直交状(通路方向12に直交状)として、設けられる。前壁2と後壁3の夫々の(通路部13側)縦辺部20,30は、通路部13側へ同じ位置まで突出している。
なお、本発明においては、RFIDアンテナ8から通路部13を見た場合の左側を前側とし、右側を後側とする。
【0013】
また、RFIDアンテナ8の給電点18は、前後方向中央に設けられている場合、即ち、前壁2と給電点18との前後方向寸法W1 と、後壁3と給電点18との前後方向寸法W2 とが同じ大きさに設定されている場合(図2〜図5参照)と、W1 <W2 (図12〜図15参照)や、W2 <W1 となるように設定される場合がある。なお、実施例のRFIDアンテナ8は、一点の給電点18において電波の送信・受信を行うものであるが、送信ポイントと受信ポイントが分離した位置に設けられたアンテナを用いてもよく、送信ポイントが本発明の給電点18に相当する(図示省略)。
【0014】
そして、θは、前壁2・後壁3が設けられていない場合にRFIDアンテナ8から放射される電波の半値角であり、6は、半値角θを成すビーム領域である。ビーム領域6が、RFIDアンテナ8の電波放射面28に対する法線よりも僅かに前側へ傾いているのはアンテナの放射特性による。
そして、θcは、RFIDアンテナ8から放射される電波の半値角θが前壁2・後壁3によって狭められた(ゾーンコントロールされた)制御後半値角であり、20°〜40°となるように設定される。ゾーンコントロールされた制御領域9を点々で示した。
制御後半値角θcが40°を超過すると、電波が拡がり過ぎるため、読取対象外の範囲にあるタグの情報まで読んでしまう虞れがある。
一方、制御後半値角θcに下限をもたせることにより、電波の拡がりを一定量保つことができ、ゲートを通るRFIDタグの読み取り領域(距離、通過時間)を長く確保できることから、読取漏れを確実に防ぐことができる。この観点からは、制御後半値角θcは、20°以上とすることがより好ましい。
なお、半値角は、一番強く電波が出て行く点を基準として、これが電力で半分の値(最大電力から3dBを引いた値)になる点でつくる角度であり、ビームの鋭さを表す。
【0015】
また、前壁2・後壁3の突出寸法Lは、制御後半値角θcが上記の範囲を満たす条件の下で、電気長にて 0.5×λ〜3×λ(λは電波の波長を示す)に設定され、かつ、前壁2・後壁3とRFIDアンテナ8の前端縁・後端縁との間隔寸法は、同様の条件の下で、 0.5×λ以下(0は当接した状態)に設定される。アンテナ8の前端縁と前壁2、及び、アンテナ8の後端縁と後壁3とは、夫々間隙を有するように設けられる場合(図1〜図5参照)と、隙間無く(当接状に)設けられる場合(図12〜図14参照)がある。例えば、 953MHZの場合、Lが 150mmのとき約0.48×λで表される。
【0016】
電波吸収前壁2・後壁3は、例えば、ポリカーボネート、粘着材、Ag膜、PET、空隙部(を有する部材)、PET、ITO膜、粘着材、ポリカーボネートを順次積層して形成される。
【0017】
さらに、図1,図2,図4において、本発明の装置は、RFIDアンテナ8から通路部13を挟んで他側に設けられた平板形状の電波吸収側壁1を具備する。電波吸収側壁1は、RFIDアンテナ8の電波放射面28と平行状に立設されている。この側壁1の上下端辺と、電波吸収天井部材16・床部材15の他端辺とを夫々隙間無く連結することで、電波の漏れが防がれる。
また、電波吸収側壁1の前後方向の長さ寸法Pは、前壁2・後壁3が設けられた状態において制御後半値角θcのビーム領域6に対応するように形成される。即ち、RFIDアンテナ8と側壁1との距離をXとすると、P≧2Xtan(θc/2)の式を満たすように形成される。そして、側壁1は、ビーム領域6内の電波を漏れなく受けることができるように設置される。
【0018】
図6〜図8は他の実施例を示し、図1〜図5の装置との相違点は、RFIDアンテナ8から放射されるビーム領域6の上方領域や下方領域を狭める電波吸収上壁4や下壁5が設けられた点である。
図6は、アンテナ8の上方に、RFIDアンテナ8から通路部13側へ突出状として水平状の電波吸収上壁4が、設けられる。上壁4は、その(通路部13側)縦辺部40が前壁2・後壁3の縦辺部20,30と同じ位置まで通路部13側へ突出している。図7は、アンテナ8の下方に、RFIDアンテナ8から通路部13側へ突出状として水平状の電波吸収下壁5が、設けられる。下壁5は、その(通路部13側)縦辺部50が前壁2・後壁3の縦辺部20,30と同じ位置まで通路部13側へ突出している。図8では、電波吸収上壁4及び下壁5が、図6,図7で説明したと同じ構成で設けられている。
上壁4と下壁5を設けることで、電波の垂直成分が上方・下方へ拡がる角度を制御でき、一層、他のタグの読取防止や、他の同種システムとの干渉防止も図り得る。
【0019】
図9〜図11は、前壁2・後壁3の別の実施例を示す。図9では、前壁2・後壁3は、両者の間隔が通路部13側へテーパ状に狭くなる平面視ハの字状に設けられている。図10の装置は、前壁2・後壁3は、両者の間隔が通路部13側へテーパ状に拡がる平面視ハの字状に設けられている。また、図11の装置は、平行な前壁2・後壁3の縦辺部20,30が、夫々前後方向内側に小さく折曲られている。図9〜図11の実施例においても、図6〜図8で説明した上壁4や下壁5を組み合わせて設けてもよい。
【0020】
図19は本発明のICタグ読取装置の他の実施の形態を示し、図1,図2,図4の装置との相違点は、通路部13の両側に夫々、RFIDアンテナ8を配設し、かつ、通路部13を挟んで各RFIDアンテナ8の反対側に電波吸収側壁1を配設した点である。一側・他側のRFIDアンテナ8A,8Bは、夫々の電波放射面28,28が平行かつ対向状になるように、同じ高さ位置に設けられる。また、各側板1は、各RFIDアンテナ8の裏側(通路部13から見て反対側)近傍に立設され、一側に設けた電波吸収側壁1Aと、他側に設けた電波吸収側壁1Bは、図1〜図4で説明した側壁1と同様の形状を有し、かつ、相互に平行に立設されている。また、一側・他側の夫々において、RFIDアンテナ8と前壁2・後壁3の位置関係は、図1〜図5で説明した構成と同じである。なお、図19の天井部材16の下面又は下方に、RFIDアンテナを追加して配置することも望ましい(図示省略)。
【0021】
そして、一側のRFIDアンテナ8Aと他側のRFIDアンテナ8Bは、時間帯をずらして交互に送受信を行う。よって、例えば、大きな被識別体10の一側や他側に偏ってRFIDタグ7が付されていても、どちらかのRFIDアンテナ8がタグ情報を読み取ることができる。また、RFIDタグ7を付した多数の被識別体10…が台車に積まれている場合にも、全てのRFIDタグ7…を漏れなく、どちらかのRFIDアンテナ8が確実に読み取る。
【0022】
次に、RFIDアンテナ8の電波を実際に測定してその結果について考察する。
先ず、図1,図2の装置にて、設置位置等の条件を様々に変化させてRFIDアンテナ8の周囲の電波環境(電界分布)を測定した結果を図12〜図15に示した。また、前壁2・後壁3を省略して測定した(従来例の)結果を図16に示し、さらに、別の従来の装置の測定結果を図17に示した。23で示した枠内は、RFIDアンテナ8の周囲のうち、後述の図示省略の受信アンテナによって測定した平面視における測定範囲である。測定範囲23に沿って付された数字は、側壁1の前後方向中心の基準点Oから、RFIDアンテナ8側と、前側への位置(座標)である。受信アンテナを測定範囲23内で移動させながら多数の箇所で測定を行う。
【0023】
電波吸収前壁2・後壁3は共に、縦寸法が2000mm、横寸法が1000mm、厚さ寸法80mm(そのうち空隙が73mm)である(なお、図1は、前壁2・後壁3の一部のみ図示されている。)。また、RFIDアンテナ8と電波吸収側壁1の距離Xを3000mmとした。また、RFIDアンテナ8の給電点18は、床面から1300mmの高さ位置に設定した。給電点18は、前後中央よりも前寄りに設けられている。
また、RFIDアンテナ8の測定周波数は 953MHzである。測定範囲23に設置する測定用の受信アンテナは垂直偏波のダイポールアンテナであり、測定の高さ位置を1300mmとした。
【0024】
そして、図12、図13、図14は、装置の突出寸法Lを 300mm、 500mm、 750mmに設定した場合の夫々の電界分布を示す。また、図16は、前壁2・後壁3を設けずに測定を行ったときの電界分布を示す。24で示した無地の領域は、電界強度が一定値未満であってRFIDタグ7の情報を読み取れない読取不可領域を示す。そして、網掛けにて示した領域22は、電界強度が一定値以上であってRFIDタグ7の情報を読み取ることのできる読取可能領域を示し、網掛けを密に示した領域ほど強く読み取ることができる。
図16における読取可能領域22が、広範囲であるのに対して、図12〜図14においては、前壁2・後壁3によりゾーンコントロールされて狭くなった読取可能領域22が測定された。また、突出寸法Lが大きくなるに従って、より大きく狭められていくことが分かる。なお、測定範囲23よりも後側における範囲の測定は省略したが、省略した範囲においても読取可能領域はゾーンコントロールされている。
【0025】
図15は、Lを 500mmとし、かつ、前壁2と後壁3の間隔を、図12〜図14の装置に対して約2倍に設定した場合の電界分布を示し、この図15によれば、読取可能領域22が広範囲に拡がり過ぎているため、所望しない場所のタグ情報も読み取ってしまい、適切なゾーンコントロールではない。
【0026】
また、図17は、図1の装置において前壁2・後壁3を設けず、かつ、電波吸収側壁1に替えて電波反射側壁14を設けた場合の電界分布を示す。この図17によれば、RFIDアンテナ8からの直接波と、電波反射側壁14からの反射波とが合成し、読取可能領域22内に、特に弱め合うポイントで複数のNull点17…が生じてしまい、タグが無応答となるという問題がある。
また、図示省略するが、従来では、RFIDアンテナを電波遮蔽材で覆う対策が採られていたが、遮蔽材による反射波の到達経路を予測することが困難であった。
【0027】
また、図18は、図12,図13,図14,図16の測定で、RFIDアンテナ8(給電点18)から一定距離の箇所で測定した電界強度の変位を示す。横軸は、給電点18を通るRFIDアンテナ8に立てた法線を基準として計測した前後方向への角度を示し、プラス側が後側への角度、マイナス側が前側への角度を示す。また、縦軸は電界強度を示す。そして、電界強度の最強点から3dB低い電界強度を成す電波の半値角は、図18のグラフからも明らかなように、前壁2・後壁3が設けられない(図16に対応する)場合の半値角θが最も大きく、そして、突出寸法Lが大きくなるに従って(図12,図13,図14の順に)、制御後半値角θcが小さくなる。
【0028】
本発明において使用するUHF帯のRFIDの電波は、遠方まで伝播するという特性を有しているが、以上の測定結果から、RFIDアンテナ8が放射した電波を効果的にゾーンコントロールできるので、所望しない場所のタグの情報を読み取ることがない。また、別のアンテナからの電波と干渉も防がれ、正確にタグの情報を読み取ることができる。また、Null点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れが防がれる。
【0029】
なお、図19の装置においての実験結果は省略したが、一側のアンテナ8Aと他側のアンテナ8Bの内の一方が送受信(ON)の時、他方はOFF状態として、両者を交互にON−OFFさせる。そして、各アンテナ8から放射された電波は、図12〜図14での説明と同様のゾーンコントロールが行われて、図1の装置と同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、従来のように電波反射体を用いた場合には、送信アンテナが例えばパラボラやホーンアンテナなどの指向性の高いアンテナを構成することとなり、アンテナ利得が増加する。本発明によれば、送信アンテナの利得に影響を与えないため、UHF帯で電波の強さとして規制されているEIRP(実効放射電力:アンテナ利得と送信出力の積)値を変化させることなくゾーンコントロールを行うことができる利点がある。
【0031】
以上のように、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ8を配設し、さらに、RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視の半値角θを狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3を、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設け、かつ、通路部13を挟んで他側に電波吸収側壁1を配設したので、簡易な構成でありながら、放射した電波を制御(ゾーンコントロール)でき、所望しない場所にあるタグ情報の読み取りを防ぐことができる。また、隣接する別のアンテナから放射した電波との干渉も防がれる。さらに、放射領域にNull点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れを防ぐことができる。よって、通信領域が大きなFRIDシステムにおける物流において、識別を所望する物品(被識別体10)のみを確実に識別し、管理することができる。また、RFIDアンテナ8は、そのアンテナ利得を増加させずに指向性が高まり技術的に合理的である。
【0032】
また、本発明に係るICタグ読取装置は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の両側に夫々、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ8,8を配設し、さらに、各RFIDアンテナ8から放射される電波の平面視の半値角θを狭める鉛直状電波吸収前壁2・電波吸収後壁3を、RFIDアンテナ8の前縁・後縁近傍から通路部13側へ突出状として設け、かつ、通路部13を挟んで各RFIDアンテナ8の反対側に電波吸収側壁1を配設したので、簡易な構成でありながら、放射した電波を制御(ゾーンコントロール)でき、所望しない場所にあるタグ情報の読み取りを防ぐことができる。また、隣接する別のアンテナから放射した電波との干渉も防がれる。さらに、放射領域にNull点が発生することもないので、タグ情報の読取漏れを防ぐことができる。このように、通信領域が大きなFRIDシステムにおける物流において、識別を所望する物品(被識別体10)のみを確実に識別して、管理できる。
さらに、一側のRFIDアンテナ8Aと他側のRFIDアンテナ8Bを、時間帯をずらして交互に送受信することで、例えば、大きな被識別体10の一側や他側に偏ってRFIDタグ7が付されていても、どちらかのRFIDアンテナ8が確実に読み取ることができる。また、RFIDタグ7を付した多数の被識別体10…が台車に積まれている場合にも、どちらかのRFIDアンテナ8が、全てのRFIDタグ7…を漏れなく確実に読み取ることができる。さらに、RFIDアンテナ8は、そのアンテナ利得を増加させずに指向性が高まり技術的に合理的である。
【0033】
また、RFIDアンテナ8から放射される電波の半値角θが一対の電波吸収前壁2・後壁3によって狭められた制御後半値角θcを、40°以下(好ましくは20°〜40°)としたので、読取対象外の範囲にあるタグの情報まで読み取ってしまうのを防ぐことができる。また、電波の届く範囲が狭くなり過ぎないので、ゲート(通路部13)を通る際のタグ情報の読取漏れを確実に防ぐことができる。これらのように、物流における被識別体10の管理を確実に行うことができる。しかも、電波吸収側壁1の前後方向寸法を抑えることができるので、設置スペースを多く必要とせず、材料コストも最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るICタグ読取装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】平面図である。
【図3】RFIDアンテナを示す正面図である。
【図4】説明用平面図である。
【図5】要部正面図である。
【図6】他の実施例を示す要部正面図である。
【図7】別の実施例を示す要部正面図である。
【図8】さらに別の実施例を示す要部正面図である。
【図9】他の実施例を示す要部平面図である。
【図10】別の実施例を示す要部平面図である。
【図11】さらに別の実施例を示す要部平面図である。
【図12】電界分布を示す説明用平面図である。
【図13】電界分布を示す説明用平面図である。
【図14】電界分布を示す説明用平面図である。
【図15】電界分布を示す説明用平面図である。
【図16】電界分布を示す説明用平面図である。
【図17】電界分布を示す説明用平面図である。
【図18】電界強度の測定結果を示すグラフである。
【図19】本発明に係るICタグ読取装置の他の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 電波吸収側壁
2 電波吸収前壁
3 電波吸収後壁
7 RFIDタグ
8 RFIDアンテナ
10 被識別体
13 通路部
θ 半値角
θc 制御後半値角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグ(7)を付設した被識別体(10)が通過する通路部(13)の一側に、上記RFIDタグ(7)に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ(8)を配設し、さらに、該RFIDアンテナ(8)から放射される電波の平面視の半値角(θ)を狭める鉛直状電波吸収前壁(2)・電波吸収後壁(3)を、該RFIDアンテナ(8)の前縁・後縁近傍から上記通路部(13)側へ突出状として設け、かつ、上記通路部(13)を挟んで他側に電波吸収側壁(1)を配設したことを特徴とするICタグ読取装置。
【請求項2】
RFIDタグ(7)を付設した被識別体(10)が通過する通路部(13)の両側に夫々、上記RFIDタグ(7)に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ(8)を配設し、さらに、各該RFIDアンテナ(8)から放射される電波の平面視の半値角(θ)を狭める鉛直状電波吸収前壁(2)・電波吸収後壁(3)を、該RFIDアンテナ(8)の前縁・後縁近傍から上記通路部(13)側へ突出状として設け、かつ、上記通路部(13)を挟んで各該RFIDアンテナ(8)の反対側に電波吸収側壁(1)を配設したことを特徴とするICタグ読取装置。
【請求項3】
上記RFIDアンテナ(8)から放射される電波の半値角(θ)が一対の上記電波吸収前壁(2)・後壁(3)によって狭められた制御後半値角(θc)を、40°以下とした請求項1又は2記載のICタグ読取装置。
【請求項1】
RFIDタグ(7)を付設した被識別体(10)が通過する通路部(13)の一側に、上記RFIDタグ(7)に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ(8)を配設し、さらに、該RFIDアンテナ(8)から放射される電波の平面視の半値角(θ)を狭める鉛直状電波吸収前壁(2)・電波吸収後壁(3)を、該RFIDアンテナ(8)の前縁・後縁近傍から上記通路部(13)側へ突出状として設け、かつ、上記通路部(13)を挟んで他側に電波吸収側壁(1)を配設したことを特徴とするICタグ読取装置。
【請求項2】
RFIDタグ(7)を付設した被識別体(10)が通過する通路部(13)の両側に夫々、上記RFIDタグ(7)に記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナ(8)を配設し、さらに、各該RFIDアンテナ(8)から放射される電波の平面視の半値角(θ)を狭める鉛直状電波吸収前壁(2)・電波吸収後壁(3)を、該RFIDアンテナ(8)の前縁・後縁近傍から上記通路部(13)側へ突出状として設け、かつ、上記通路部(13)を挟んで各該RFIDアンテナ(8)の反対側に電波吸収側壁(1)を配設したことを特徴とするICタグ読取装置。
【請求項3】
上記RFIDアンテナ(8)から放射される電波の半値角(θ)が一対の上記電波吸収前壁(2)・後壁(3)によって狭められた制御後半値角(θc)を、40°以下とした請求項1又は2記載のICタグ読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図18】
【図19】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図18】
【図19】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−140216(P2008−140216A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326708(P2006−326708)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(593022076)佐川印刷株式会社 (18)
【出願人】(594095028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(593022076)佐川印刷株式会社 (18)
【出願人】(594095028)
【Fターム(参考)】
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