説明

ICP発光分光分析装置

【課題】ICP発光分光分析装置において分析性能の大幅な低下を招くことなく定性分析の迅速化を達成可能とする。
【解決手段】シーケンシャル型分光器を具備するICP発光分光分析装置において、従来と同様のスリット幅を有する第1スリット開口と、その10倍以上のスリット幅を有する第2スリット開口とが波長分散方向に離間して設けられた出口スリット38と、出口スリット38を波長分散方向に移動させるスリット駆動手段と、スリット駆動手段を制御することにより、前記スリット開口の何れかを波長分散素子34から光検出器41に至る光の光軸90上に切替配置するスリット切替制御手段60とを設け、操作者から高速定性分析が指定されたときに、前記高速定性分析用スリット開口が光軸90上に配置されるよう前記スリット切替制御手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICP発光分光分析装置は、試料を高温のプラズマで励起発光させ、得られたスペクトル線から試料に含まれる成分の分析を行う装置である。このようなICP発光分光分析装置は、発光部、分光部、検出部、データ処理部等を備えており、発光部において高周波誘導によってプラズマ炎が生成され、該プラズマ炎中に霧化された試料が導入される。該試料に含まれる原子はプラズマの熱エネルギーによって励起されて発光し、その光が分光部に導入されて分光される。分光された光は検出部で検出され、その検出信号がデータ処理部に送られる。データ処理部では該検出信号を基に所定の演算が行われ、得られた原子スペクトルの波長及び強度から試料に含まれる元素の定量・定性分析が行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ICP発光分光分析装置では、上記分光部としてツェルニ・ターナ型と呼ばれる光路構成を持つシーケンシャル型分光器が利用されることがある。図6は、従来のツェルニ・ターナ型分光器を用いた光学系の構成の一例である。光源(つまりICPトーチ)10から発した光はレンズ31で集光されて入口スリット32に照射される。入口スリット32を通過して分光部30の内部に導入された光は、第1凹面鏡33で反射されて平面回折格子34に送られる。平面回折格子34で波長分散された光は、第2凹面鏡35で反射されて出口スリット36上に投影される。この分散光のうち、出口スリット36のスリット開口を通過した特定波長の光のみが分光部30の外部へと取り出される。平面回折格子34の表面中心を通る軸を中心として回折格子34を回転させると(図6中の矢印M)、出口スリット36を通過して検出器41に到達する光の波長が変化するから、これにより波長走査を行って、発光部で生成される光の波長強度分布を測定することができる。
【0004】
なお、出口スリット36を波長分散方向に往復動(図6の矢印S)させると、平面回折格子34を回転させたときと同様に、出口スリット36のスリット開口を通過する波長が変化するから、これにより波長走査を行うこともできる。一般に、波長走査のために両者を併用する場合、平面回折格子34の回転によって広い波長範囲の走査を比較的ラフに行い、出口スリット36の往復動によって特定の波長近傍の走査を細密に行うようにしている。
【0005】
こうしたICP発光分光分析装置において、従来、上記の入口スリット32及び出口スリット36として、それぞれ通常分析用と高分解能分析用の2種類のスリット開口を備え、両者を切り換えて使用できる機能を備えたものが知られている。上記通常分析用のスリット開口としては、例えば、入口側:20μm、出口側:30μmのような一般的な幅のものが用いられ、高分解能分析用のスリット開口としては、例えば、入口側:10μm、出口側:15μmのように上記通常分析用のスリット開口よりも幅狭のものが用いられる。この例では、高分解能分析用スリット開口の幅が通常分析用スリット開口の半分となっているため、波長分解能は2倍向上することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-258633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ICP発光分光分析においては、元素の発光スペクトル線の数が非常に多いため、目的元素のスペクトル線にそれに近い波長を有する共存元素のスペクトル線が重なってしまい(つまり分光干渉の影響を受け)、目的元素のスペクトル強度が実際よりも見かけ上大きくなってしまうような場合がある。そのため、シーケンシャル型のICP発光分光分析装置を用いて試料中の目的元素を定量しようとする場合には、定量分析に先立って条件検討のための定性分析を行い、分光干渉の影響が少なく目的元素の定量に適した波長を決定する必要がある。
【0008】
具体的には、まず測定可能な全元素を対象に波長走査を行って試料中の主成分元素を特定する(以下、これを全波長定性分析と呼ぶ)。続いて、前記目的元素を対象にそれぞれ複数の波長位置で測定を行い、目的元素の各スペクトル線に対する主成分元素の分光干渉の影響を検討する(以下、これを複数波長定性分析と呼ぶ)。そして、分光干渉の影響が少なかったスペクトル線の位置を目的元素の定量用波長として決定する。
【0009】
しかしながら、一般にICP発光分光分析装置では、測定対象とする元素の種類が多く波長範囲がきわめて広い(例えば160nm〜850nm)。一般に、上記のような全波長定性分析では、この広い波長範囲の全域を走査するように回折格子を回動させるため、例えば定量分析と同等のS/N比を達成しようとすると膨大な測定時間が必要となる。一方、回折格子を高速で駆動して各波長位置におけるサンプリング時間を短くすれば測定時間を短縮することができるが、S/N比や分析精度が極端に低下するため有効な手段とはいえない。
【0010】
また、上記のようなスリット切替機能を備えた従来のICP発光分光分析装置では、一般に、図7のように一つのスリット板36に高分解能分析用のスリット開口36aと通常分析用のスリット開口36bを上下に並べて配置し、スリット板36を上下駆動することによってスリットの切替を行っている。そのため、出口スリット36については、波長走査のためにスリット板36を左右(即ち波長分散方向)に駆動する機構と、スリット切替のためにスリット板36を上下(即ち波長分散方向と直交する方向)に駆動する機構との2つのスリット駆動機構を設けることが必要になる。これにより、装置構造が複雑化し、装置の大型化や製造コストの増大を招くという問題があった。
【0011】
また、このようなスリットを上下駆動させる機構では、一般に水平方向の位置精度が低くなるため、切替によるスリット位置の再現性が定量分析に必要な精度(1μm以下)を満たすことが困難である。上述のような一連の全波長定性分析、複数波長定性分析、及び定量分析では、分析間でスリット開口の位置にずれが生じると分析結果の正確性に悪影響がある。そのため、従来は、スリット切替機能を備えたICP発光分光分析装置であっても、上記のような一連の分析では一貫して同一のスリット開口を使用する必要があった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、ICP発光分光分析装置において分析性能の大幅な低下を招くことなく定性分析の迅速化を達成可能とすること、及び高精度なスリット切替を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明に係るICP発光分光分析装置は、
入口スリットと、該入口スリットを通して入射した光を波長分散させる波長分散素子と、分散光のうちの特定波長の光を外部へ取り出す出口スリットとを含むシーケンシャル型分光器を具備するICP発光分光分析装置において、
a)幅の異なる複数のスリット開口が波長分散方向に所定間隔離間して設けられた出口スリットと、
b)前記出口スリットの外側に配設された光検出器と、
c)前記波長分散素子を回転させる波長分散素子駆動手段と、
d)前記出口スリットを波長分散方向に移動させるスリット駆動手段と、
e)前記スリット駆動手段を制御することにより、前記波長分散素子から光検出器に至る光の光軸上に前記複数のスリット開口の何れかを切替配置するスリット切替制御手段と、
を有し、
前記複数のスリット開口の少なくとも1つが、波長分解能が0.1nm〜1.0nmとなる開口幅を有する高速定性分析用スリット開口であって、
前記スリット切替制御手段が、操作者から高速定性分析が指定されたときに、前記高速定性分析用スリット開口が前記光軸上に配置されるよう前記スリット駆動手段を制御することを特徴としている。
【0014】
ICP発光分光分析装置の分光部における波長分解能Δλは、以下の式(1)で求められる。
Δλ=D×w …(1)
但し、Dは逆線分散、wは出口スリットの開口幅である。なお、逆線分散Dは、出口スリット面上での単位長さ当たりの波長差であり、以下の式(2)で求められる。
D=cosβ/(N×m×f) …(2)
但し、βは回折角度、Nは回折格子の刻線数、mは回折次数、fは分光器の焦点距離である。
【0015】
従来、一般的に出口スリットの開口幅は、上記の式(1)で表される波長分解能Δλが0.01nm程度になるよう設定されており、開口幅が大きいものでも、波長分解能がせいぜい0.05nm程度以下になるよう設定されていた。これに対し、本願発明は高速定性分析専用のスリット開口として、従来の一般的なスリット開口の10倍以上の幅を有するスリット開口を出口スリット上に設けたものである。前記出口スリットには、この高速定性分析用スリット開口を含む複数のスリット開口が設けられており、これら複数のスリット開口を適宜切り替えて使用することができる。上記の高速定性分析用スリット開口によれば、従来のスリット開口に比べて一度に取り込むことのできる光量及び波長範囲が大幅に拡大されるため、波長走査に要する時間を短縮して迅速な定性分析を行うことが可能となる。なお、上記のような高速定性分析では、従来よりもスリット幅を広げたことにより波長分解能が低下するが、上述の全元素定性分析のような試料中の元素を同定するための定性分析では、必要とされる波長分解能が定量分析に比べて低いため特に支障はない。
【0016】
なお、本発明に係るICP発光分光分析装置は、出口スリットの移動による波長走査と出口スリットの切り替えとを同一の駆動機構によって行う構成とすることが望ましい。
即ち、本発明に係るICP発光分光分析装置は、
f)前記光軸上に配置されたスリット開口を通過する光の波長が変化するように前記スリット駆動手段を制御するスリット走査制御手段、
を更に有するものとすることが望ましい。
【0017】
波長走査のためのスリット駆動機構は、従来より出口スリットを波長分散方向に精密に移動させるために用いられているものであるため、この駆動機構をスリットの切り替えにも利用する構成とすることで、大幅な製造コストの増大を招来することなく高精度なスリット切替を行うことが可能となる。従って、例えば上述のような一連の分析において、高速定性分析用スリット開口を用いて全元素定性分析を行い、その後、より幅の狭いスリット開口に切り替えて、同一試料に対する複数波長定性分析及び定量分析を行うといったことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係るICP発光分光分析装置によれば、分析性能の大幅な低下を招くことなく定性分析の迅速化を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係るICP発光分光分析装置の全体構成図。
【図2】同実施例のICP発光分光分析装置における駆動系及び制御系の要部の構成図。
【図3】同実施例における出口スリットの正面図。
【図4】同実施例における出口スリット付近の平面図であり、(a)は高速定性分析時の状態を、(b)は他の分析時の状態を示す。
【図5】本実施例における出口スリットの正面図であり、(a)は高速定性分析時の状態を、(b)は他の分析時の状態を示す。
【図6】従来のICP発光分光分析装置における分光部の概略構成を示す平面図。
【図7】従来のICP発光分光分析装置における出口スリットの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるICP発光分光分析装置の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は本実施形態のICP発光分光分析装置の概略構成を示す平面図である。なお、図6に示した構成と同一又は対応する部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
本実施例のICP発光分光分析装置は、発光部10、オートサンプラ20、分光部30、検出部40、データ処理部50、及び制御部60から成り、オートサンプラ20から供給された試料溶液は、ネブライザ(図示略)で霧化された後、発光部10に導入されプラズマ炎によって励起される。このとき発生した光は、集光レンズ31によって集光されて分光部30に入り、入口スリット32に照射される。
【0022】
分光部30内で分光され、出口スリット38を通過した光は、検出部40の検出器41によって検出され、その検出信号がデータ処理部50に送られる。データ処理部50は該検出信号をデジタルデータに変換し、所定のアルゴリズムに従って演算処理することにより、試料の定性分析や定量分析を実行する。上記各部の動作は制御部60によって制御されており、制御部60とデータ処理部50の機能の多くは汎用コンピュータ70で所定のコンピュータプログラムを実行することによって達成される。更に、汎用コンピュータ70には、操作者が分析条件等を入力するためのキーボード等から成る入力部71と、測定結果等を表示するためのディスプレイ等から成る表示部72が接続される。
【0023】
本実施形態に係るICP発光分光分析装置の特徴は、分光部30の出口スリット38上に、従来の一般的な開口幅(例えば30μm)を有する第1スリット開口38aとその10倍以上の開口幅(例えば500μm)を有する第2スリット開口38bとが波長分散方向に並べて配置され(図3)、これらを適宜切り替えて使用できる点にある。なお、本実施形態における分光部30の逆線分散は0.22nm/mmであり、第1スリット開口38aを用いた場合の分解能は0.0066nm、第2スリット開口38bを用いた場合の分解能は0.11nmとなる。
【0024】
出口スリット38の前方には、マスク37が設けられている。図4、5に示すように、第1スリット開口38aの使用時には、マスク37によって第2スリット開口38bへの光の入射が遮られ(即ち、第2スリット開口38bが無効化され)、第2スリット開口38bの使用時には、マスク37によって第1スリット開口38aへの光の入射が遮られる(即ち、第1スリット開口38aが無効化される)。
【0025】
図2は、本実施例に係るICP発光分光分析装置の駆動系及び制御系の要部の構成図である。分光部30は、平面回折格子34を回転駆動するための回折格子駆動モータ81と、出口スリット38を往復駆動するための出口スリット駆動モータ82を備えている。制御部60は、CPUやメモリを含んで構成されており、主制御部61、波長走査制御部62、及びスリット切替制御部63を機能的に含んでいる。
【0026】
本実施例では、図3に示すように、波長走査時の出口スリット38の移動方向とスリット切替時の出口スリット38の移動方向とが一致しており、こうした波長走査及びスリット切替は、共に出口スリット駆動モータ82を利用して行われる。即ち、波長走査制御部62は、主制御部61の制御の下に、回折格子駆動モータ81及び出口スリット駆動モータ82を制御して波長走査を行う。一方、スリット切替制御部63は、主制御部61の制御の下に、出口スリット駆動モータ82を制御することにより、スリットの切り替えを行う。
【0027】
なお、モータ81、82は、ステッピングモータであって、それぞれ波長走査制御部62又はスリット切替制御部63から与えられる駆動パルス信号の数に応じた角度だけ回転する。回折格子駆動モータ81と平面回折格子34との間には、サインバー機構などを用いた減速機構が設けられており、モータ81の回転角度に応じた角度だけ平面回折格子を回動させる。出口スリット38の駆動機構は、回転−直線運動変換機構などを含み、モータ82の回転角度に応じた距離だけ出口スリット38を移動させる。
【0028】
本実施形態のICP発光分光分析装置の動作は次の通りである。まず、操作者がオートサンプラ20に試料をセットし、入力部71から分析モードや分析条件等の設定を行う。本実施例に係るICP発光分光分析装置では、分析モードとして、従来の定性分析や定量分析などに加えて、高速定性分析を選択できるようになっている。ここで、操作者が高速定性分析を選択して分析の実行を指示すると、主制御部61は、光路上に現在置かれているスリット開口の種類を確認し、それが第2スリット開口38bでなかった場合には、スリット切替制御部63にスリット開口の切替を指示する。この指示を受けたスリット切替制御部63は、出口スリット駆動モータ82を制御して出口スリット38を移動させ、第2スリット開口38bを光路上に配置させる。スリットの切り替えと同期して、発光部10のプラズマトーチにオートサンプラ20から試料が導入され、励起発光された試料からの発光光が分光部30に導入される。
【0029】
分光部30では、前記の励起発光光が平面回折格子34によって波長分散され、出口スリット38へ送られる。出口スリット38の直前にはマスク37が設置されている。高速定性分析では、図4(a)及び図5(a)に示すように、マスク37の窓(開口部)と第2スリット開口38bが光軸90上で前後に並ぶため、第2スリット開口38b上に投影された光のみが検出器41に到達できることとなる。一方、このとき第1スリット開口38aは、マスク37に隠れて無効となる。なお、マスク37は出口スリット38の後方に設けてもよい。
【0030】
そして、主制御部61の制御の下に、波長走査制御部62が回折格子駆動モータ81を制御し、平面回折格子34を回動させて波長走査を行う。なお、高速定性分析では、出口スリット38の位置は固定とし、平面回折格子34による波長走査のみを行う。
【0031】
上述の通り、第2スリット開口38bは、第1スリット開口38aのような一般的な幅のスリット開口と比較して、10倍以上の開口幅を有するため、一度に取り込まれる波長範囲も従来の10倍以上となる。そのため、波長走査に要する時間が1/10以下で済むこととなる。更に、第2スリット開口38bでは、一度に取り込まれる光量も従来の10倍以上となるため、高いS/N比を達成することができる。また、サンプリング時間を1/10としても従来とほぼ同等のS/N比が得られることとなるため、従来のS/N比を維持しつつ波長走査の時間を従来の約1/100程度まで短縮することも可能である。
【0032】
以上の波長走査が完了すると、検出器41から出力された検出信号に基づき、データ処理部50にて定性分析のための所定のデータ処理が実行され、試料中の元素が同定される。
【0033】
以上のような高速定性分析は、上述した全元素定性分析のような元素同定のための定性分析において好適に適用することができる。一方、上記の複数波長定性分析や定量分析のような比較的高い波長分解能が求められる分析では、第1スリット開口38aを用いて従来と同様の定性分析(以下、通常定性分析と呼ぶ)又は定量分析を行うことが望ましい。
【0034】
本実施例に係るICP発光分光分析装置において、上述の分析モードの選択時に、操作者が高速定性分析以外の分析モード(例えば、通常定性分析や定量分析)を選択した場合には、第1スリット開口38aが光軸90上に配置される。この場合、図4(b)に示すように、マスク37の窓と第1スリット開口38aが光軸90上で前後に並ぶため、第1スリット開口38a上に投影された光のみが検出器41に到達することとなる。一方、第2スリット開口38bは、マスク37に隠れて無効となる。通常定性分析及び定量分析では、平面回折格子34を回動させて、予め設定された目的波長の光が第1スリット開口38aに照射されるようにした上で、図5(b)に示すように、第1スリット開口38aをマスク37の窓の範囲内で移動させることにより、前記目的波長の前後における波長走査を行う。
【0035】
なお本実施例では、上記のようにスリット切替時の出口スリット38の移動方向を波長走査時における出口スリット38の移動方向と同一とし、更に、波長走査のためのスリット駆動機構をスリットの切替にも利用する構成としたため、スリット切替時における波長走査方向のスリット位置再現性が向上する。そのため、本実施例に係るICP発光分光分析装置によれば、同一試料を対象とした一連の全元素定性分析、複数波長定性分析、及び定量分析において、異なるスリット開口を使用しても分析結果に悪影響が及ぶことがない。
【符号の説明】
【0036】
10…発光部
20…オートサンプラ
30…分光部
31…レンズ
32…入口スリット
33…第1凹面鏡
34…平面回折格子
35…第2凹面鏡
37…マスク
36、38…出口スリット
38a…第1スリット開口
38b…第2スリット開口
40…検出部
41…検出器
50…データ処理部
60…制御部
61…主制御部
62…波長走査制御部
63…スリット切替制御部
81…回折格子駆動モータ
82…出口スリット駆動モータ
90…光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口スリットと、該入口スリットを通して入射した光を波長分散させる波長分散素子と、分散光のうちの特定波長の光を外部へ取り出す出口スリットとを含むシーケンシャル型分光器を具備するICP発光分光分析装置において、
a)幅の異なる複数のスリット開口が波長分散方向に所定間隔離間して設けられた出口スリットと、
b)前記出口スリットの外側に配設された光検出器と、
c)前記波長分散素子を回転させる波長分散素子駆動手段と、
d)前記出口スリットを波長分散方向に移動させるスリット駆動手段と、
e)前記スリット駆動手段を制御することにより、前記波長分散素子から光検出器に至る光の光軸上に前記複数のスリット開口の何れかを切替配置するスリット切替制御手段と、
を有し、
前記複数のスリット開口の少なくとも1つが、波長分解能が0.1nm〜1.0nmとなる開口幅を有する高速定性分析用スリット開口であって、
前記スリット切替制御手段が、操作者から高速定性分析が指定されたときに、前記高速定性分析用スリット開口が前記光軸上に配置されるよう前記スリット駆動手段を制御することを特徴とするICP発光分光分析装置。
【請求項2】
更に、
f)前記光軸上に配置されたスリット開口を通過する光の波長が変化するように前記スリット駆動手段を制御するスリット走査制御手段、
を有することを特徴とする請求項1に記載のICP発光分光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−122888(P2011−122888A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279590(P2009−279590)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】