IDカード、及びその製造方法
【課題】 IDカード表面に熱転写方式により設けられる保護層の転写性を良好にする。
【解決手段】 矩形のカード基材と、カード基材上に設けられた情報記録層と、カード基材の端部からカード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部にオフセット印刷された、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層と、情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に熱転写された保護層とを具備するIDカード。
【解決手段】 矩形のカード基材と、カード基材上に設けられた情報記録層と、カード基材の端部からカード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部にオフセット印刷された、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層と、情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に熱転写された保護層とを具備するIDカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、IDカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車運転免許証や従業員証等、資格所有者本人の確認が必要なIDカード類に、熱溶融転写型記録を用いて氏名・住所・生年月日等の個人文字情報、パターン情報または、顔写真を記録したプラスチックIDカードが実用されている。
【0003】
このようなIDカードの製造においては、一般的にカードサイズよりも大きい大判シートを複数層用いて熱プレスを施し、カードの厚さを整えた後、カードの型を用いて打ち抜きプレス機により打ち抜き、カードを形成することができる。
【0004】
その後、罫線、共通模様などの共通情報を印刷したプラスチックカードに、各カード個別の写真情報、文字情報、パターン情報を記録し、更に、カード全体を破損や偽造から防護するために、最表面に、透明な保護層を形成する。
【0005】
この保護層を熱転写方式により形成する際に、IDカード製造時に発生するバリやダレなどのカード端面及び側面の形状に起因する転写欠けが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−345350号公報
【特許文献2】特開2010−76391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、IDカード表面に熱転写方式により設けられる保護層の転写性を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、矩形のカード基材と、
カード基材上に設けられた情報記録層と、
該カード基材の端部から該カード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部にオフセット印刷された、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層と、
該情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に熱転写された保護層とを具備するIDカードが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態のIDカードの一例を表す正面図である。
【図2】実施形態のIDカードの一例を表す断面図である。
【図3】実施形態のIDカードの他の一例を表す断面図である。
【図4】実施形態のIDカードの製造の一例を表すフローである。
【図5】実施形態に用いられるオフセット印刷機の例を表す図である
【図6】実施形態に用いられる原版の一例を表す図である。
【図7】実施形態のIDカードの製造工程の一例表す図である。
【図8】実施形態に用いられる原版の他の一例を表す図である。
【図9】実施形態のIDカードの製造工程の他の一例表す図である。
【図10】実施形態に用いられる原版のさらに他の一例を表す図である。
【図11】実施形態に用いられる原版のさらにまた他の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に、実施形態のIDカードの一例を表す正面図を示す。
【0012】
図2に、図1のX−X断面を表す模式図を示す。
【0013】
図1に示すように、実施形態にかかるIDカード10は、ポリビニルブチラール樹脂をイソシアネート化合物で硬化させた受像層12で被覆された、四隅に丸み形状を持つ矩形のカード基材と、カード基材上には昇華型インクにより形成された人物画像層、熱転写型黒インクなどの情報記録層14が設けられている。
【0014】
図2に示すように、受像層12で被覆されたカード基材11の端部からカード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部として、カード基材11の端面上に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する無色透明の紫外線(UV)硬化型インキ層13がオフセット印刷されている。さらに、情報記録層及びUV硬化型インキ層を介して受像層12で被覆されたカード基材11上に保護層15が熱転写されている。紫外線(UV)硬化型インキ層13を設けることにより、IDカードの製造時に発生するバリやダレなどのカード表面及び側面の形状に起因する保護層の転写欠けが発生し難くなる。
【0015】
カード基材として、例えば縦54mm×横86mm×厚さ0.78mmのPET製カード基材を用いることが出来る。
【0016】
このとき、周縁領域の幅は、0.1mmないし10mmにすることができる。
【0017】
例えば0.1mm未満というようなカードの端部からの距離が短い場合には、保護層の転写欠けを防止する効果が低下し得る。
【0018】
カード端部からある程度の距離、例えば10mmを超えると、情報記録層等を印刷するための有効領域が狭くなり、かつ情報記録層等の印刷品質が低下する傾向がある。
【0019】
また、図3に、実施形態のIDカードの他の一例の断面を表す模式図を示す。
【0020】
図示するように、このIDカードは、カード基材11の端面上のみならず、カード基材11側面に亘り、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する無色透明の紫外線(UV)硬化型インキ層がオフセット印刷されていること以外は、図2と同様の構成を有する。
【0021】
このような構成を有することにより、図2に示す構成のIDカードと比較して、IDカードの製造時に発生するバリやダレなどのカード表面及び側面の形状に起因する保護層の転写欠けが、さらに発生し難くなるという利点がある。
【0022】
図4に、実施形態にかかるIDカードの製造方法の一例を表すフローを示す。
【0023】
図示するように、このIDカードの製造方法では、まず、矩形のカード基材上に、情報記録層を形成する(ブロック1)、カード基材の端部からカード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層をオフセット印刷により形成d(ブロック2)、情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介してカード基材上に保護層を熱転写する(ブロック3)。
【0024】
実施形態に使用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般に熱溶融転写型リボンインキ及びUV硬化オフセットインキ中のオリゴマーやモノマーとの親和性が良く、且つ、UV硬化オフセットインキ中に含有されるUV反応開始剤と共存状態でUV照射を行っても重合反応を起さず、また、UV硬化性オリゴマー、モノマーの重合反応を阻害もしない。
このためUV照射によりUV硬化オフセットインキ中に含有されるUV硬化性オリゴマー、モノマーが十分に硬化しても、UV硬化オリゴマーやモノマーにより形成される3次元網目構造の中にビスフェノールA型エポキシ樹脂はそのままの状態で残ることになる。
IDカード表面上に保護膜を熱圧着、熱溶融し硬化したUV硬化型オフセットインキパターンに接触するとき、それぞれの溶融物が、硬化したUV硬化型オフセットインキパターン中に分布するビスフェノールA型エポキシ樹脂と相溶することにより、高い接着性が得られる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては基本液状タイプ、基本固体タイプがあるが、実施形態に使用するためには、ベースとなるUV硬化型オフセットインキへの常温での均一混合が必要なため常温粘度で9〜150ポイズの基本液状タイプが望ましい。
これ以下の粘度域のではUV硬化オフセットインキのUV硬化後の基材に対する接着強度の低下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の浸みだしのある場合がある。含有希釈剤が有る場合には更にこの傾向が顕著になる。
【0025】
また、基本固形タイプを使用する場合は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びベースとなるUV硬化型オフセットインキの両者をビスフェノールA型エポキシ樹脂の溶融温度まで上昇させた後に混合する必要がある。
なお、上記基本液状タイプであってもかなりの高い粘度のため、ベースとなるUV硬化型オフセットインキとの混合性があまり良くない。このため、更に、寒天状のもので、シリコーンなどの離型性をもった(コンパウンド)(腰切り剤)またはモノマーからなる(レジューサ)(希釈剤)の添加を行なうことにより高い均一混合性が得られる。コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)の添加量は通常の推奨範囲内での使用が望ましい。
このとき、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一旦、コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)と混合させ、粘度を低下させた後、ベースとなるUV硬化型オフセットインキと混合させることが混合均一性を更に向上させることとなる。
インキの混合方法は、極少量の場合はヘラで練る方法で良いが、通常の量では攪拌羽根による混合、または容器を回転(時公転)させる方式が有効である。
上記UV硬化型オフセットインキとしては、例えば T&K TOKA製のUV VECTAカートン シリーズ、UV Lカートン シリーズ、UV VECTAカートン ハイブラック、UV L SW 墨 シリーズ、UV EP シリーズ、UV OFS−LED シリーズ、UV VNL−LED シリーズ、UV BF シリーズ、UV 161 シリーズ、UV 161 ハイコンクブラック、UV 161 静電防止 OPニス S、UV 161 墨 S−MP、UV VNL シリーズ、UV VNL RICEシリーズ、UV VP シリーズ、UV STP シリーズ、UV STP シリーズ、No.2 UV SOYA シリーズ、No.2 UV SOYA−RNC、UV SOYA HY−BD シリーズ、UV SOYA−NVR、UV RNC シリーズ、No.2 UV SOYA−RNC、UV フラッシュリード 墨、UV フラッシュライト対応 墨 シリーズ、UV NVR シリーズ、UV NVR No.2 シリーズ、UV SOYA−NVR、UV フラッシュライト対応 墨 シリーズ、UV OLSD シリーズ、UV 171 シリーズ、UV 171 CT 各色 M−NW、UV S シリーズ、UV CM シリーズ、UV KS シリーズ、UV CM マーク墨 S−2、UV SA シリーズ、UV KS NS シリーズ、UV KFI シリーズ、UV フレキソ 500 シリーズ、UV LS−Nフレキソ PHA−LO シリーズ、UV LSフレキソ PHA−LO3 シリーズ、UV フレキソ PHA シリーズ、UV フレキソ ゴールド & シルバー 500S、UV ロータリースクリーン シリーズ、UV ゴールド MG、UV ゴールド TK-SO、UV No.3 シルバー、UV シルバー TK-SO、UV ウルトラパール、UV 蛍光 P シリーズ、UV 蛍光−SE シリーズや、東洋インキ製のF非吸収原反用 FD TC OPニス、FD O ニュー 各色 HF1、フレキソ印刷用 FD FLシリーズ、フォーム印刷用 FD フォーム X各色、シール印刷用 FD S 多色 OPニス TK、FD S 各色 TK、カルトン印刷用 FD OLP 多色OPニス M1、FD カルトン ACE OPニス、FD カルトン ACE マットOPニス、FD カルトン X各色、FD カルトン ACE SOY 各色、カルトン印刷/薄紙枚葉印刷用 FD HBエコーSOY各色、FD HBアクワレスSOY各色、FD O ウェットOPニス K1や、DIC製のダイキュア アビリオ、ダイキュア アビリオ LED、ダイキュア アビリオ KHB、ダイキュア アビリオ SE、ダイキュア RT−8、ダイキュア RTX、ダイキュア ハイブライト、ダイキュア ハイブライトYP等を使用することが出来る。具体的には、例えばT&K TOKA製 UV161インキ等を好ましく使用することができる。
【0026】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量は、UV硬化型オフセットインキ全重量の好ましくは10ないし60重量%、さらに好ましく20〜50重量%である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が10重量%未満であると、熱溶融性インクとの接着性が向上せず、60重量%を超えると、UV硬化型オフセットインキ自体の硬化性が不十分となる傾向がある。
【0027】
UV硬化型オフセット印刷インキにビスフェノールA型エポキシ樹脂を添加する方法としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を予めコンパウンドインキ(腰切り剤)またはレジューサ(希釈剤)と混合後、UV硬化型インキと混合することができる。
【0028】
実施形態においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂はベースとなるUV硬化型オフセットインキに常温で均一混合することが望まれる。
【0029】
市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂には、基本液状タイプ及び基本固体タイプがある。常温で均一に混合させるためには、常温粘度で9ないし150ポイズの基本液状タイプが実施形態に好適に使用できる。9ポイズ未満の粘度域ではUV硬化オフセットインキのUV硬化後の基材に対する接着強度の低下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の浸みだしが発生する傾向がある。インキ中に希釈剤を含有する場合には更に浸みだしが顕著になる傾向がある。
【0030】
また、150ポイズを超えるものを用いると、インキとしての粘度が高すぎることにより印刷が困難となる傾向がある。基本固形タイプを使用する場合は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びベースとなるUV硬化型オフセットインキの両者をビスフェノールA型エポキシ樹脂の溶融温度まで上昇させた後に混合する必要があり、取り扱いが困難となる傾向がある。
【0031】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、たとえ上記基本液状タイプであっても、かなりの高い粘度であるため、ベースとなるUV硬化型オフセットインキとの混合性があまり良好ではない。このため、UV硬化型オフセットインキに、更にコンパウンド(腰切り剤)またはレジューサの添加を行うことにより高い均一混合性が得られる。
【0032】
コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)の添加量は、UV硬化型オフセットインキ全重量に対し、コンパウンドインキは1%ないし20%、レジューサは1%ないし7%であることが望ましい。
【0033】
また、このとき、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一旦、コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)と混合させ、粘度を低下させた後、ベースとなるUV硬化型オフセットインキに混合すると、混合均一性を更に向上させることができる。
【0034】
また、レジューサとしては、モノマー等の低粘度の液体を添加することが出来る。具体的には、アクリルモノマー、オリゴマーであるT&K TOKA製 UV DGレジューサ、UV161レジューサ、UV TNSレジューサ、東洋インキ製 FDレジューサAP、FDレジューサOP、及びFDレジューサG等を用いることができる。
【0035】
インキの混合方法は、極少量の場合はヘラで練る方法で良いが、通常の量では撹拌羽根による混合、または容器を回転させる方式等が有効である。
【0036】
保護層の形成方法としては、支持シート上に形成された保護層を熱圧接により印刷物上に転写する方法が挙げられる。
【0037】
保護層としては、好ましくはUV硬化型樹脂を含むUV硬化型保護膜が使用される。UV硬化型樹脂としては、エポキシ系UV硬化型樹脂、あるいはアクリル系UV硬化型樹脂が使用できる。
【0038】
UV硬化型保護層に使用可能なUV硬化型樹脂化合物としては、例えば3官能以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。3官能以上の紫外線硬化型樹脂化合物は、複数のものを組み合わせて使用しても良いし、混合物であっても良い。
【0039】
保護層は、使用されるUV硬化型オフセットインキを考慮して選択することが出来る。
【0040】
例えば、UV硬化型オフセットインキとして、アクリルモノマー、オリゴマーを使用する場合には、保護層としても、同様のアクリルモノマー、オリゴマーを選択することが出来る。このような組合せを用いると、より親和性を上げ、保護層の転写性を安定して上げることができる。
【0041】
UV硬化型保護層を形成するための組成物中には、光反応開始剤、バインダー樹脂、及び微粒子等を添加することができる。
【0042】
光反応開始剤の例として、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0043】
バインダー樹脂としては、紫外線硬化性化合物組成物と相溶しても非相溶でもよく、膜を形成し得る種々の樹脂を用いることができる。このようなバインダー樹脂として、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ボリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
【0044】
この保護層は、例えばバインダー樹脂と紫外線硬化性化合物組成物とを溶剤中に溶解または分散させて塗布液を調製し、支持体シートの片面にこれを塗布し、乾燥することにより形成することができる。保護層の乾燥膜厚は1〜50μmが好ましい。
【0045】
また、微粒子としては、ポリエチレン、シリコーン粒子、アクリル、ナイロン、ガラスビーズ等が挙げられ、粒径は1〜50μmの範囲が好ましい。
【0046】
保護層の形成方法としては、転写型紫外線硬化膜を熱転写後、紫外線硬化させる方法を使用し得る。
【0047】
実施形態では、UV硬化型インキ層の形成のために、オフセット印刷機を用いることが出来る。
【0048】
図5に、実施形態に使用可能なオフセット印刷機の一例の構造を表す概略図を示す。
【0049】
図示するように、このオフセット印刷機30は、インキを収容するインキ壺31、インキ壺3の下流に設けられた、インキを練るための複数のインキ練りローラ32、インキを版胴34に着肉させるために設けられた複数のインキ着肉ローラ33、版胴34、ブランケット胴35,基材36を介して対向して設けられる圧胴37を有する。
【0050】
オフセット印刷機30では、インキ壺31のインクが、版胴34からブランケット胴35へ転写され、圧胴37によりブランケット胴35と基材36を圧接せしめ、印刷を行う。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示し、実施形態を具体的に説明する。
【0052】
実施例1
IDカード基材として、打ち抜き時のバリ・ダレが20〜50μm程度ある、かつ、カード片側の表面全体に受像層(イソシアネートで硬化させたポリビニルブチラール樹脂)のある54.0mm×86.0mmの大きさのPETカードを準備した。
【0053】
以下の組成を有するUV硬化型オフセットインキを撹拌容器にいれ、スリーワンモーターを用い撹拌羽根で混合を行い、UV硬化型オフセットインキを作成した。
【0054】
UV硬化型オフセットインキ組成1
着色材:T&K TOKA製 UV161青インキ 70重量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:
油化シェルエポキシ製 エピコート825
(25℃粘度40〜60ポイズ) 20重量部
腰切り剤:UV補助剤)(T&K TOKA製 NO.2コンテックス)
10重量部
得られたUV硬化型オフセットインキを枚葉のオフセット印刷機に適用した。
【0055】
オフセット印刷機に使用した原版を表す模式図を図6に示す。
【0056】
この原版を用い、カード基材の全周囲、カード端面から0.3mmに印刷し、UV硬化型オフセットインキ層を形成した。
【0057】
その後、得られたUV硬化オフセットインキ層に、1.5kWのUV照射ランプを用い、120W/cmの強度で1ないし5秒の条件で紫外線照射を行い、オフセット印刷カードを作成した。
【0058】
得られたIDカード表面に昇華型インクリボンを用い、サーマルヘッドによりフルカラーの人物画像を形成した。次に、転写型熱溶融性黒インクリボンを用い、サーマルヘッドにより文字情報を形成した。
【0059】
次に、下記組成の塗布液を準備し、バーコーターにて12μmPET支持体上に塗布し、140℃で2分間加熱乾燥することにより、膜厚が10μmの紫外線硬化型保護膜を有する保護膜転写シート(以下、保護膜リボン)を作成した。
【0060】
紫外線硬化型保護層塗布液組成
ポリアクリル系バインダー樹脂:ダイヤナールBR87 …100重量部
紫外線硬化型化合物:ペンタエリスリトールトリアクリレート …60重量部
光反応開始剤:イルガキュア651…10重量部
ポリエチレン微粒子・フロービーズCL2080 …10重量部
人物画像及び文字情報を形成した上記IDカード、及び、保護膜リボンを準備し、以下条件の転写装置において保護膜を人物画像及び文字情報を形成した面に熱転写し、IDカード上に保護層を形成し、最終形態の完成カード(IDカード)を得た。
【0061】
転写装置
ヒートローラ温度:160℃
搬送速度:21mm/sec
押厚:16kg/cm2
転写後の紫外線照射量:強度120W/cmを5秒間
カードの搬送方向:短辺(カード横)搬送
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0062】
得られた結果を、下記表1に示す。
【0063】
実施例2
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から0.5mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0064】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0065】
得られた結果を下記表1に示す。
【0066】
実施例3
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から1.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0067】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0068】
得られた結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から5.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0070】
図7に、印刷されたUV硬化型オフセットインキ層13aの様子を表す模式図を示す。
【0071】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0072】
得られた結果を表1に示す。
【0073】
実施例5
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から10.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0074】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0075】
得られた結果を表1に示す。
【0076】
実施例6
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更した。
【0077】
図8に、使用した原版を表す模式図を示す。
【0078】
図示するような原版を用いてカード基材のカード上下辺端面から0.3mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0079】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0080】
得られた結果を表1に示す。
【0081】
実施例7
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から0.5mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0082】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0083】
得られた結果を下記表1に示す。
【0084】
実施例8
上記実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から1.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0085】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0086】
得られた結果を表1に示す。
【0087】
実施例9
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から5.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0088】
図9に、UV硬化型オフセットインキ層13bが印刷された様子を表す模式図を示す。
【0089】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0090】
得られた結果を下記表1に示す。
【0091】
実施例10
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から10.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0092】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0093】
得られた結果を表1に示す。
【0094】
実施例11〜20
実施例1〜10に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用る原版を変更し、外側に0.3mm印刷領域を増やすことにより、上記実施例1〜10の印刷領域に更に加えてカード基材の側面0.3mmについてもUV硬化型オフセットインキ層を形成して、完成カード(IDカード)を得た。
【0095】
図10に、実施例11に使用される原版を表す模式図を示す。
【0096】
また、図11に、実施例16に使用される原版を表す模式図を示す。
【0097】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0098】
得られた結果を表1に示す。
【0099】
比較例1
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷を実施しない以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0100】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けがあった。
【0101】
得られた結果を表1に示す。
【0102】
比較例2
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷を実施しないこと、及び、転写装置のヒートローラ温度を170℃に設定して保護層を形成すること以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0103】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けがあった。
【0104】
得られた結果を表1に示す。
【0105】
比較例3
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷を実施しないこと、及び、転写装置のヒートローラ温度を180℃に設定して保護層を形成すること以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0106】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けがあった。
【0107】
得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0108】
表1から明らかなように、バリ、ダレなどの多いIDカードにおいて、IDカード基材上のカード端面の一部ないしは全周囲において、端面から0.1mm以上10.00mm以内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有するUV硬化型インキにより印刷された無色透明のUV硬化型インキ層を具備する実施例に示す完成カード(IDカード)はいずれも、保護膜の転写性は良好であった(転写欠けは無かった)。
【0109】
しかしながら、バリ、ダレなどの多いIDカードにおいて、IDカード基材上のカード端面の一部ないしは全周囲にビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有するUV硬化型インキにより印刷された無色透明のUV硬化型インキ層を具備しなかった比較例に示す完成カード(IDカード)はいずれも、保護膜の転写欠けが確認された。
【0110】
実施形態を用いるとバリ、ダレなどの多いIDカードにおいても、(紫外線硬化型)転写膜の熱転写性において、その安定した転写性を得られる。
【0111】
実施形態のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
10…IDカード、11…カード基材、12…受像層、13…UV硬化型インキ層、14…情報記録層、15…保護層
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、IDカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車運転免許証や従業員証等、資格所有者本人の確認が必要なIDカード類に、熱溶融転写型記録を用いて氏名・住所・生年月日等の個人文字情報、パターン情報または、顔写真を記録したプラスチックIDカードが実用されている。
【0003】
このようなIDカードの製造においては、一般的にカードサイズよりも大きい大判シートを複数層用いて熱プレスを施し、カードの厚さを整えた後、カードの型を用いて打ち抜きプレス機により打ち抜き、カードを形成することができる。
【0004】
その後、罫線、共通模様などの共通情報を印刷したプラスチックカードに、各カード個別の写真情報、文字情報、パターン情報を記録し、更に、カード全体を破損や偽造から防護するために、最表面に、透明な保護層を形成する。
【0005】
この保護層を熱転写方式により形成する際に、IDカード製造時に発生するバリやダレなどのカード端面及び側面の形状に起因する転写欠けが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−345350号公報
【特許文献2】特開2010−76391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、IDカード表面に熱転写方式により設けられる保護層の転写性を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、矩形のカード基材と、
カード基材上に設けられた情報記録層と、
該カード基材の端部から該カード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部にオフセット印刷された、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層と、
該情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に熱転写された保護層とを具備するIDカードが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態のIDカードの一例を表す正面図である。
【図2】実施形態のIDカードの一例を表す断面図である。
【図3】実施形態のIDカードの他の一例を表す断面図である。
【図4】実施形態のIDカードの製造の一例を表すフローである。
【図5】実施形態に用いられるオフセット印刷機の例を表す図である
【図6】実施形態に用いられる原版の一例を表す図である。
【図7】実施形態のIDカードの製造工程の一例表す図である。
【図8】実施形態に用いられる原版の他の一例を表す図である。
【図9】実施形態のIDカードの製造工程の他の一例表す図である。
【図10】実施形態に用いられる原版のさらに他の一例を表す図である。
【図11】実施形態に用いられる原版のさらにまた他の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に、実施形態のIDカードの一例を表す正面図を示す。
【0012】
図2に、図1のX−X断面を表す模式図を示す。
【0013】
図1に示すように、実施形態にかかるIDカード10は、ポリビニルブチラール樹脂をイソシアネート化合物で硬化させた受像層12で被覆された、四隅に丸み形状を持つ矩形のカード基材と、カード基材上には昇華型インクにより形成された人物画像層、熱転写型黒インクなどの情報記録層14が設けられている。
【0014】
図2に示すように、受像層12で被覆されたカード基材11の端部からカード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部として、カード基材11の端面上に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する無色透明の紫外線(UV)硬化型インキ層13がオフセット印刷されている。さらに、情報記録層及びUV硬化型インキ層を介して受像層12で被覆されたカード基材11上に保護層15が熱転写されている。紫外線(UV)硬化型インキ層13を設けることにより、IDカードの製造時に発生するバリやダレなどのカード表面及び側面の形状に起因する保護層の転写欠けが発生し難くなる。
【0015】
カード基材として、例えば縦54mm×横86mm×厚さ0.78mmのPET製カード基材を用いることが出来る。
【0016】
このとき、周縁領域の幅は、0.1mmないし10mmにすることができる。
【0017】
例えば0.1mm未満というようなカードの端部からの距離が短い場合には、保護層の転写欠けを防止する効果が低下し得る。
【0018】
カード端部からある程度の距離、例えば10mmを超えると、情報記録層等を印刷するための有効領域が狭くなり、かつ情報記録層等の印刷品質が低下する傾向がある。
【0019】
また、図3に、実施形態のIDカードの他の一例の断面を表す模式図を示す。
【0020】
図示するように、このIDカードは、カード基材11の端面上のみならず、カード基材11側面に亘り、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する無色透明の紫外線(UV)硬化型インキ層がオフセット印刷されていること以外は、図2と同様の構成を有する。
【0021】
このような構成を有することにより、図2に示す構成のIDカードと比較して、IDカードの製造時に発生するバリやダレなどのカード表面及び側面の形状に起因する保護層の転写欠けが、さらに発生し難くなるという利点がある。
【0022】
図4に、実施形態にかかるIDカードの製造方法の一例を表すフローを示す。
【0023】
図示するように、このIDカードの製造方法では、まず、矩形のカード基材上に、情報記録層を形成する(ブロック1)、カード基材の端部からカード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層をオフセット印刷により形成d(ブロック2)、情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介してカード基材上に保護層を熱転写する(ブロック3)。
【0024】
実施形態に使用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般に熱溶融転写型リボンインキ及びUV硬化オフセットインキ中のオリゴマーやモノマーとの親和性が良く、且つ、UV硬化オフセットインキ中に含有されるUV反応開始剤と共存状態でUV照射を行っても重合反応を起さず、また、UV硬化性オリゴマー、モノマーの重合反応を阻害もしない。
このためUV照射によりUV硬化オフセットインキ中に含有されるUV硬化性オリゴマー、モノマーが十分に硬化しても、UV硬化オリゴマーやモノマーにより形成される3次元網目構造の中にビスフェノールA型エポキシ樹脂はそのままの状態で残ることになる。
IDカード表面上に保護膜を熱圧着、熱溶融し硬化したUV硬化型オフセットインキパターンに接触するとき、それぞれの溶融物が、硬化したUV硬化型オフセットインキパターン中に分布するビスフェノールA型エポキシ樹脂と相溶することにより、高い接着性が得られる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては基本液状タイプ、基本固体タイプがあるが、実施形態に使用するためには、ベースとなるUV硬化型オフセットインキへの常温での均一混合が必要なため常温粘度で9〜150ポイズの基本液状タイプが望ましい。
これ以下の粘度域のではUV硬化オフセットインキのUV硬化後の基材に対する接着強度の低下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の浸みだしのある場合がある。含有希釈剤が有る場合には更にこの傾向が顕著になる。
【0025】
また、基本固形タイプを使用する場合は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びベースとなるUV硬化型オフセットインキの両者をビスフェノールA型エポキシ樹脂の溶融温度まで上昇させた後に混合する必要がある。
なお、上記基本液状タイプであってもかなりの高い粘度のため、ベースとなるUV硬化型オフセットインキとの混合性があまり良くない。このため、更に、寒天状のもので、シリコーンなどの離型性をもった(コンパウンド)(腰切り剤)またはモノマーからなる(レジューサ)(希釈剤)の添加を行なうことにより高い均一混合性が得られる。コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)の添加量は通常の推奨範囲内での使用が望ましい。
このとき、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一旦、コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)と混合させ、粘度を低下させた後、ベースとなるUV硬化型オフセットインキと混合させることが混合均一性を更に向上させることとなる。
インキの混合方法は、極少量の場合はヘラで練る方法で良いが、通常の量では攪拌羽根による混合、または容器を回転(時公転)させる方式が有効である。
上記UV硬化型オフセットインキとしては、例えば T&K TOKA製のUV VECTAカートン シリーズ、UV Lカートン シリーズ、UV VECTAカートン ハイブラック、UV L SW 墨 シリーズ、UV EP シリーズ、UV OFS−LED シリーズ、UV VNL−LED シリーズ、UV BF シリーズ、UV 161 シリーズ、UV 161 ハイコンクブラック、UV 161 静電防止 OPニス S、UV 161 墨 S−MP、UV VNL シリーズ、UV VNL RICEシリーズ、UV VP シリーズ、UV STP シリーズ、UV STP シリーズ、No.2 UV SOYA シリーズ、No.2 UV SOYA−RNC、UV SOYA HY−BD シリーズ、UV SOYA−NVR、UV RNC シリーズ、No.2 UV SOYA−RNC、UV フラッシュリード 墨、UV フラッシュライト対応 墨 シリーズ、UV NVR シリーズ、UV NVR No.2 シリーズ、UV SOYA−NVR、UV フラッシュライト対応 墨 シリーズ、UV OLSD シリーズ、UV 171 シリーズ、UV 171 CT 各色 M−NW、UV S シリーズ、UV CM シリーズ、UV KS シリーズ、UV CM マーク墨 S−2、UV SA シリーズ、UV KS NS シリーズ、UV KFI シリーズ、UV フレキソ 500 シリーズ、UV LS−Nフレキソ PHA−LO シリーズ、UV LSフレキソ PHA−LO3 シリーズ、UV フレキソ PHA シリーズ、UV フレキソ ゴールド & シルバー 500S、UV ロータリースクリーン シリーズ、UV ゴールド MG、UV ゴールド TK-SO、UV No.3 シルバー、UV シルバー TK-SO、UV ウルトラパール、UV 蛍光 P シリーズ、UV 蛍光−SE シリーズや、東洋インキ製のF非吸収原反用 FD TC OPニス、FD O ニュー 各色 HF1、フレキソ印刷用 FD FLシリーズ、フォーム印刷用 FD フォーム X各色、シール印刷用 FD S 多色 OPニス TK、FD S 各色 TK、カルトン印刷用 FD OLP 多色OPニス M1、FD カルトン ACE OPニス、FD カルトン ACE マットOPニス、FD カルトン X各色、FD カルトン ACE SOY 各色、カルトン印刷/薄紙枚葉印刷用 FD HBエコーSOY各色、FD HBアクワレスSOY各色、FD O ウェットOPニス K1や、DIC製のダイキュア アビリオ、ダイキュア アビリオ LED、ダイキュア アビリオ KHB、ダイキュア アビリオ SE、ダイキュア RT−8、ダイキュア RTX、ダイキュア ハイブライト、ダイキュア ハイブライトYP等を使用することが出来る。具体的には、例えばT&K TOKA製 UV161インキ等を好ましく使用することができる。
【0026】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量は、UV硬化型オフセットインキ全重量の好ましくは10ないし60重量%、さらに好ましく20〜50重量%である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が10重量%未満であると、熱溶融性インクとの接着性が向上せず、60重量%を超えると、UV硬化型オフセットインキ自体の硬化性が不十分となる傾向がある。
【0027】
UV硬化型オフセット印刷インキにビスフェノールA型エポキシ樹脂を添加する方法としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を予めコンパウンドインキ(腰切り剤)またはレジューサ(希釈剤)と混合後、UV硬化型インキと混合することができる。
【0028】
実施形態においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂はベースとなるUV硬化型オフセットインキに常温で均一混合することが望まれる。
【0029】
市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂には、基本液状タイプ及び基本固体タイプがある。常温で均一に混合させるためには、常温粘度で9ないし150ポイズの基本液状タイプが実施形態に好適に使用できる。9ポイズ未満の粘度域ではUV硬化オフセットインキのUV硬化後の基材に対する接着強度の低下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の浸みだしが発生する傾向がある。インキ中に希釈剤を含有する場合には更に浸みだしが顕著になる傾向がある。
【0030】
また、150ポイズを超えるものを用いると、インキとしての粘度が高すぎることにより印刷が困難となる傾向がある。基本固形タイプを使用する場合は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びベースとなるUV硬化型オフセットインキの両者をビスフェノールA型エポキシ樹脂の溶融温度まで上昇させた後に混合する必要があり、取り扱いが困難となる傾向がある。
【0031】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、たとえ上記基本液状タイプであっても、かなりの高い粘度であるため、ベースとなるUV硬化型オフセットインキとの混合性があまり良好ではない。このため、UV硬化型オフセットインキに、更にコンパウンド(腰切り剤)またはレジューサの添加を行うことにより高い均一混合性が得られる。
【0032】
コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)の添加量は、UV硬化型オフセットインキ全重量に対し、コンパウンドインキは1%ないし20%、レジューサは1%ないし7%であることが望ましい。
【0033】
また、このとき、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一旦、コンパウンドインキ(腰切り剤)又はレジューサ(希釈剤)と混合させ、粘度を低下させた後、ベースとなるUV硬化型オフセットインキに混合すると、混合均一性を更に向上させることができる。
【0034】
また、レジューサとしては、モノマー等の低粘度の液体を添加することが出来る。具体的には、アクリルモノマー、オリゴマーであるT&K TOKA製 UV DGレジューサ、UV161レジューサ、UV TNSレジューサ、東洋インキ製 FDレジューサAP、FDレジューサOP、及びFDレジューサG等を用いることができる。
【0035】
インキの混合方法は、極少量の場合はヘラで練る方法で良いが、通常の量では撹拌羽根による混合、または容器を回転させる方式等が有効である。
【0036】
保護層の形成方法としては、支持シート上に形成された保護層を熱圧接により印刷物上に転写する方法が挙げられる。
【0037】
保護層としては、好ましくはUV硬化型樹脂を含むUV硬化型保護膜が使用される。UV硬化型樹脂としては、エポキシ系UV硬化型樹脂、あるいはアクリル系UV硬化型樹脂が使用できる。
【0038】
UV硬化型保護層に使用可能なUV硬化型樹脂化合物としては、例えば3官能以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルがあげられる。3官能以上の紫外線硬化型樹脂化合物は、複数のものを組み合わせて使用しても良いし、混合物であっても良い。
【0039】
保護層は、使用されるUV硬化型オフセットインキを考慮して選択することが出来る。
【0040】
例えば、UV硬化型オフセットインキとして、アクリルモノマー、オリゴマーを使用する場合には、保護層としても、同様のアクリルモノマー、オリゴマーを選択することが出来る。このような組合せを用いると、より親和性を上げ、保護層の転写性を安定して上げることができる。
【0041】
UV硬化型保護層を形成するための組成物中には、光反応開始剤、バインダー樹脂、及び微粒子等を添加することができる。
【0042】
光反応開始剤の例として、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
【0043】
バインダー樹脂としては、紫外線硬化性化合物組成物と相溶しても非相溶でもよく、膜を形成し得る種々の樹脂を用いることができる。このようなバインダー樹脂として、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ボリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
【0044】
この保護層は、例えばバインダー樹脂と紫外線硬化性化合物組成物とを溶剤中に溶解または分散させて塗布液を調製し、支持体シートの片面にこれを塗布し、乾燥することにより形成することができる。保護層の乾燥膜厚は1〜50μmが好ましい。
【0045】
また、微粒子としては、ポリエチレン、シリコーン粒子、アクリル、ナイロン、ガラスビーズ等が挙げられ、粒径は1〜50μmの範囲が好ましい。
【0046】
保護層の形成方法としては、転写型紫外線硬化膜を熱転写後、紫外線硬化させる方法を使用し得る。
【0047】
実施形態では、UV硬化型インキ層の形成のために、オフセット印刷機を用いることが出来る。
【0048】
図5に、実施形態に使用可能なオフセット印刷機の一例の構造を表す概略図を示す。
【0049】
図示するように、このオフセット印刷機30は、インキを収容するインキ壺31、インキ壺3の下流に設けられた、インキを練るための複数のインキ練りローラ32、インキを版胴34に着肉させるために設けられた複数のインキ着肉ローラ33、版胴34、ブランケット胴35,基材36を介して対向して設けられる圧胴37を有する。
【0050】
オフセット印刷機30では、インキ壺31のインクが、版胴34からブランケット胴35へ転写され、圧胴37によりブランケット胴35と基材36を圧接せしめ、印刷を行う。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示し、実施形態を具体的に説明する。
【0052】
実施例1
IDカード基材として、打ち抜き時のバリ・ダレが20〜50μm程度ある、かつ、カード片側の表面全体に受像層(イソシアネートで硬化させたポリビニルブチラール樹脂)のある54.0mm×86.0mmの大きさのPETカードを準備した。
【0053】
以下の組成を有するUV硬化型オフセットインキを撹拌容器にいれ、スリーワンモーターを用い撹拌羽根で混合を行い、UV硬化型オフセットインキを作成した。
【0054】
UV硬化型オフセットインキ組成1
着色材:T&K TOKA製 UV161青インキ 70重量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:
油化シェルエポキシ製 エピコート825
(25℃粘度40〜60ポイズ) 20重量部
腰切り剤:UV補助剤)(T&K TOKA製 NO.2コンテックス)
10重量部
得られたUV硬化型オフセットインキを枚葉のオフセット印刷機に適用した。
【0055】
オフセット印刷機に使用した原版を表す模式図を図6に示す。
【0056】
この原版を用い、カード基材の全周囲、カード端面から0.3mmに印刷し、UV硬化型オフセットインキ層を形成した。
【0057】
その後、得られたUV硬化オフセットインキ層に、1.5kWのUV照射ランプを用い、120W/cmの強度で1ないし5秒の条件で紫外線照射を行い、オフセット印刷カードを作成した。
【0058】
得られたIDカード表面に昇華型インクリボンを用い、サーマルヘッドによりフルカラーの人物画像を形成した。次に、転写型熱溶融性黒インクリボンを用い、サーマルヘッドにより文字情報を形成した。
【0059】
次に、下記組成の塗布液を準備し、バーコーターにて12μmPET支持体上に塗布し、140℃で2分間加熱乾燥することにより、膜厚が10μmの紫外線硬化型保護膜を有する保護膜転写シート(以下、保護膜リボン)を作成した。
【0060】
紫外線硬化型保護層塗布液組成
ポリアクリル系バインダー樹脂:ダイヤナールBR87 …100重量部
紫外線硬化型化合物:ペンタエリスリトールトリアクリレート …60重量部
光反応開始剤:イルガキュア651…10重量部
ポリエチレン微粒子・フロービーズCL2080 …10重量部
人物画像及び文字情報を形成した上記IDカード、及び、保護膜リボンを準備し、以下条件の転写装置において保護膜を人物画像及び文字情報を形成した面に熱転写し、IDカード上に保護層を形成し、最終形態の完成カード(IDカード)を得た。
【0061】
転写装置
ヒートローラ温度:160℃
搬送速度:21mm/sec
押厚:16kg/cm2
転写後の紫外線照射量:強度120W/cmを5秒間
カードの搬送方向:短辺(カード横)搬送
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0062】
得られた結果を、下記表1に示す。
【0063】
実施例2
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から0.5mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0064】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0065】
得られた結果を下記表1に示す。
【0066】
実施例3
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から1.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0067】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0068】
得られた結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から5.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0070】
図7に、印刷されたUV硬化型オフセットインキ層13aの様子を表す模式図を示す。
【0071】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0072】
得られた結果を表1に示す。
【0073】
実施例5
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材の全周囲、カード端面から10.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0074】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0075】
得られた結果を表1に示す。
【0076】
実施例6
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更した。
【0077】
図8に、使用した原版を表す模式図を示す。
【0078】
図示するような原版を用いてカード基材のカード上下辺端面から0.3mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0079】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0080】
得られた結果を表1に示す。
【0081】
実施例7
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から0.5mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0082】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0083】
得られた結果を下記表1に示す。
【0084】
実施例8
上記実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から1.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0085】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0086】
得られた結果を表1に示す。
【0087】
実施例9
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から5.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0088】
図9に、UV硬化型オフセットインキ層13bが印刷された様子を表す模式図を示す。
【0089】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0090】
得られた結果を下記表1に示す。
【0091】
実施例10
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用する原版を変更することにより、カード基材のカード上下辺端面から10.0mmにUV硬化型オフセットインキ層を印刷する以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0092】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0093】
得られた結果を表1に示す。
【0094】
実施例11〜20
実施例1〜10に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷時に使用る原版を変更し、外側に0.3mm印刷領域を増やすことにより、上記実施例1〜10の印刷領域に更に加えてカード基材の側面0.3mmについてもUV硬化型オフセットインキ層を形成して、完成カード(IDカード)を得た。
【0095】
図10に、実施例11に使用される原版を表す模式図を示す。
【0096】
また、図11に、実施例16に使用される原版を表す模式図を示す。
【0097】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けは見られなかった。
【0098】
得られた結果を表1に示す。
【0099】
比較例1
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷を実施しない以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0100】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けがあった。
【0101】
得られた結果を表1に示す。
【0102】
比較例2
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷を実施しないこと、及び、転写装置のヒートローラ温度を170℃に設定して保護層を形成すること以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0103】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けがあった。
【0104】
得られた結果を表1に示す。
【0105】
比較例3
実施例1に記載のUV硬化型オフセットインキを用いたオフセット印刷を実施しないこと、及び、転写装置のヒートローラ温度を180℃に設定して保護層を形成すること以外は、実施例1と同様にして、完成カード(IDカード)を得た。
【0106】
得られた完成カード(IDカード)について、転写層の転写欠けの有無を目視確認したところ、転写欠けがあった。
【0107】
得られた結果を表1に示す。
【表1】
【0108】
表1から明らかなように、バリ、ダレなどの多いIDカードにおいて、IDカード基材上のカード端面の一部ないしは全周囲において、端面から0.1mm以上10.00mm以内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有するUV硬化型インキにより印刷された無色透明のUV硬化型インキ層を具備する実施例に示す完成カード(IDカード)はいずれも、保護膜の転写性は良好であった(転写欠けは無かった)。
【0109】
しかしながら、バリ、ダレなどの多いIDカードにおいて、IDカード基材上のカード端面の一部ないしは全周囲にビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有するUV硬化型インキにより印刷された無色透明のUV硬化型インキ層を具備しなかった比較例に示す完成カード(IDカード)はいずれも、保護膜の転写欠けが確認された。
【0110】
実施形態を用いるとバリ、ダレなどの多いIDカードにおいても、(紫外線硬化型)転写膜の熱転写性において、その安定した転写性を得られる。
【0111】
実施形態のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
10…IDカード、11…カード基材、12…受像層、13…UV硬化型インキ層、14…情報記録層、15…保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のカード基材と、
カード基材上に設けられた情報記録層と、
該カード基材の端部から該カード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部にオフセット印刷された、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層と、
該情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に熱転写された保護層とを具備するIDカード。
【請求項2】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、紫外線硬化型インキ全重量に対し、10ないし60重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載ののIDカード。
【請求項3】
矩形のカード基材上に、情報記録層を形成する工程、
該カード基材の端部から該カード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層をオフセット印刷する工程、
情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に保護層を熱転写する工程を具備するIDカードの製造方法。
【請求項4】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、紫外線硬化型インキ全重量に対し、10ないし60重量%含まれることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項1】
矩形のカード基材と、
カード基材上に設けられた情報記録層と、
該カード基材の端部から該カード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部にオフセット印刷された、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層と、
該情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に熱転写された保護層とを具備するIDカード。
【請求項2】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、紫外線硬化型インキ全重量に対し、10ないし60重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載ののIDカード。
【請求項3】
矩形のカード基材上に、情報記録層を形成する工程、
該カード基材の端部から該カード基材の隣接する二辺の合計の長さの1/1400ないし1/14の幅以内の周縁領域の少なくとも1部に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する紫外線硬化型インキ層をオフセット印刷する工程、
情報記録層及び紫外線硬化型インキ層を介して該カード基材上に保護層を熱転写する工程を具備するIDカードの製造方法。
【請求項4】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、紫外線硬化型インキ全重量に対し、10ないし60重量%含まれることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−61773(P2012−61773A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208633(P2010−208633)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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