説明

IGCCシステムにおけるガス化リアクターおよびガスタービンサイクル

【課題】小型で炭素変換効率の良い統合型ガス化組み合わせサイクルシステムを提供する。
【解決手段】統合型ガス化組み合わせサイクルシステムであって、ガス化リアクターおよび上記ガス化リアクターに連結されたガスタービンを備え、上記ガス化リアクターが、還元反応チャンバー、上記還元反応チャンバー中に供給原料を導入するための供給原料入口、上記ガスタービンによって生成される排気ガスを上記還元反応チャンバー中に導入するためのガス入口、および上記還元反応チャンバー中の上記供給原料と上記排気ガスとの反応によって発生される合成ガスを放出するためのガス出口を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2006年9月11日に出願された大韓民国出願第10−2006−0087447、および2007年3月26日に出願された米国出願第11/691,401号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、統合型ガス化組み合わせサイクルシステム、そしてより詳細には、タービンエンジンがガス化反応を駆動する統合型ガス化組み合わせサイクルシステムを扱う。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
従来の統合型ガス化組み合わせサイクル(「IGCC」)電力プラントは、先行技術で周知である。従来のIGCC電力プラントの例の部分は、例示の目的のために図1に示される。一般に、IGCCでは、石炭が、従来のガス化装置10中でガス化され、そして冷却かつ洗浄された得られる合成ガスは、燃焼タービン16を駆動し、電気を生成する。詳細には、合成ガスがタービン16中で燃焼されるとき、その産物であるスチームと二酸化炭素ガスは約2000℃の温度に到達し、そして排気ガスが冷却するとき、熱エネルギーが、電気を発生するタービン16を通じて仕事に変換される。燃焼タービン16の排気ガスはまた、ボイラー18を加熱するために用いられ得、スチームエンジン20を動作し、これが電気をさらに生成する。このシステムの排気スチームおよび排熱の残りは、石炭エネルギーのそのガス化からの最も効率的な使用を行うために、スペース加熱のために用いられるべき熱水タンク中に回収される。
【0004】
今日知られるような従来の石炭ガス化技術は、1934年のLurgi石炭ガス化装置からの起源をもつ。このガス化装置では、スチーム改質反応および乾燥改質反応としてもまたそれぞれ知れられる、以下の石炭ガス反応が生じる:
C+HO→CO+H
C+CO→2CO
ここで、炭素(C)は合成ガスに改質され、これは、一酸化炭素(CO)および水素ガス(H)を含む。これらの反応は、化学的には還元的および吸熱的である。従って、これらの改質反応が進行するために、炭素の燃焼反応(すなわち、C+O→CO)に匹敵する熱エネルギーが吸収される必要がある。
【0005】
この必要な熱は、以下の様式で提供される。ガス化装置は、供給原料の石炭の一部を空気または酸素ガスで燃焼し、そしてこの燃焼の得られる熱を用いて、ガス化装置温度を改質反応が生じるために十分高く維持する。石炭の粉末化形態は、空気または酸素(O)ガスで燃焼され、そしてガス化装置温度は約1000℃まで高められ、そして次に、空気またはOガスは遮断され、そして超高温のスチームがガス化装置中に注入される。しかし、いくつかの改質反応が進行するにつれて、このガス化装置の温度は低下する。空気または酸素ガスは、この温度を開始レベルまで戻して高めるために再び入れられなければならない。このプロセスは、必要な温度を維持するために繰り返されることが必要である。このシステムは、長年に亘りいくつかの小さな改変とともに石炭を合成ガスに改質するある程度の成功を収めたが、これはむしろ扱いにくいシステムであり、そしてLurgiのガス化装置に固有のいくつかの制限がある。
【0006】
第1に、ガス化装置中で到達される温度は石炭燃焼反応によって制限され、すなわち、石炭が空気で燃焼されるとき、それは900℃までに制限され、そしてOガスが用いられるとき1200℃よりわずかに低い。出願人は、しかし、大部分の炭素改質が、以下に論議されるように、温度が1200℃を超えるまで生じないことを観察した。
【0007】
第2に、市販の石炭は、SiO、Al、Fe、CuOなどの種々の混合物から作製される相当量のスラグを含む。これら混合物は、室温では固体形態であるが、約1000℃では柔らかくなり、そして約1300〜1400℃で流体になる。この流体、非流体点は、しかし、石炭の性質およびそれが採掘される場所に基づき多いに変動する。石炭流体温度を超える温度では、流体石炭スラグは、ガス化装置の内側に集まる。この流体スラグは、ガス化装置の内壁を構成するキャスタブルを急速に腐食し、これは、キャスタブルの頻繁なスケーリングを必要とし、ガス化装置のより長い停止時間を生じる。さらに、キャスタブルのむらのある腐食した内壁は、このガス化装置内の不均一温度分布を付加する。
【0008】
第1の制限は、大熱容量のガス化装置に有利に働き、そして第2の制限は、ガス化装置が大きいことを要求し、その結果、大量のスラグがスケーリングの間に蓄積され得、スケーリングの量および必要な停止時間を減少する。従って、長年に亘り、従来のガス化装置のサイズは、より大きくなってきている。ここで、国際石油資本によって商業的に市販されているガス化装置は、3階建てビルほどの高さで立つ。最近、いくつかの従来の石炭ガス化装置は、操作温度を1450℃まで高めるために、圧縮Oガスとともに加熱オイルの高圧噴霧により改修されている。しかし、このシステムで均一温度分布および温度制御を達成することは困難である。このような不均一温度分布の下では、2つの競合する反応である燃焼および改質は、同じスペースで同時に進行する。それ故、改質効率を最大にするあらゆる努力は、非常に骨の折れる課題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの理由のため、IGCCで用いられる従来のLurgiガス化装置では、ガス化装置リアクター内の石炭の部分的燃焼は、このリアクター温度を、改質反応が進行するために必要なレベルまでもたらすには十分ではない。加熱オイルのような、さらなる燃料が、この操作温度を高めるために必要であり得る。しかし、上記で論議されたように、このようなリアクター内で均一温度分布を制御および維持することは困難である。
【0010】
本発明はこれらの欠陥およびその他の欠陥を取り扱う。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の簡単な要旨)
1つの局面では、本発明は、統合型ガス化組み合わせサイクルシステムであることを特徴とし、これは、ガス化リアクター、およびこのガス化リアクターに連結されたガスタービンを含む。このガス化リアクターは、還元反応チャンバー、この還元反応チャンバー中に供給原料を導入するための供給原料入口、上記ガスタービンによって生成される排気ガスをこの還元反応チャンバー中に導入するためのガス入口、およびこの還元反応チャンバー中の供給原料と排気ガスとの反応によって生成セされる合成ガスを放出するためのガス出口を備える。例えば、上記排気ガスを放出するためのガスタービンの排気パイプが、上記還元反応チャンバーの下部セクションに連結され得る。
【0012】
上記ガスタービンによって生成される排気ガスはスチームであり、ここで、水素ガスおよび酸素ガスがこのガスタービンに提供される。ガスタービンによって発生される排気ガスはスチームおよび二酸化炭素であり、ここで、合成ガスおよび酸素ガスがガスタービンに提供される。この排気ガスは、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーを提供する。
【0013】
1つの実施形態では、上記ガス化リアクターは、酸化反応リアクターをさらに含む。この酸化反応チャンバーでは、水素ガスおよび酸素ガスが反応し得、スチームを生成する。あるいは、上記酸化反応チャンバーは、合成ガスバーナーであり得、ここで、合成ガスおよび酸素ガスが反応し、スチームおよび二酸化炭素を生成する。合成ガスバーナーのような酸化反応チャンバーによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素は、還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーを提供する。好ましい実施形態では、上記ガスタービンからのこのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素は、上記還元反応チャンバーのための熱エネルギーの第1の供給源を提供し、そして上記合成ガスバーナーからのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素は、上記還元反応チャンバーのための熱エネルギーの第2の供給源を提供する。
【0014】
1つの実施形態では、上記酸化反応チャンバーまたは合成ガスバーナーは、上記還元反応チャンバーに実質的に直交して位置決めされ、未反応酸素が還元反応チャンバー中に入ることを最小にする。
【0015】
1つの実施形態では、合成ガスバーナーのような酸化反応チャンバーは、上記供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、この供給原料を、スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝し、前記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する。
【0016】
別の局面では、本発明は、ガス化の方法であることを特徴にする。この方法によれば、ガス化リアクターおよびこのガス化リアクターに連結されたガスタービンが提供される。炭素材料を含む供給原料が、ガス化リアクターの還元反応チャンバー中に導入される。1つの実施形態では、酸素および水素ガスが上記ガスタービン中に導入され、そしてこのガスタービンによって発生されたスチームが、上記還元反応チャンバーに入り、炭素材料と反応し、合成ガスを生成する。別の実施形態では、酸素および合成ガスが上記ガスタービン中に導入され、そしてこのガスタービンによって発生されるスチームおよび二酸化炭素が還元反応チャンバーに入り、炭素材料と反応し、合成ガスを生成する。このガスタービンによって発生されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、約1500℃と約1700℃との間の温度で還元反応チャンバーに入り得る。このガスタービンによって発生されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素は、還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーを提供する。
【0017】
1つの実施形態では、上記ガス化リアクターはまた、酸化反応チャンバーを含む。酸素および水素ガスは、この酸化反応チャンバー中で反応しスチームを生成し、これは、還元反応チャンバーに入り、この還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーを提供し、そして炭素材料と反応し、合成ガスを生成する。別の実施形態では、上記酸化反応チャンバーは合成ガスバーナーであり、ここで、酸素および合成ガスが反応し、スチームおよび二酸化炭素を生成し、これらは還元反応チャンバーに入り、この還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーを提供し、そして炭素材料と反応して合成ガスを生成する。
【0018】
好ましい実施形態では、酸素は、合成ガスバーナーのような酸化反応チャンバー中で実質的に完全に消費され、そして酸素は、上記ガスタービン中で実質的に完全に消費される。
【0019】
別の実施形態では、上記供給原料入口を通って導入された供給原料材料は、合成ガスバーナーのような酸化反応チャンバーによって発生されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝され、この供給原料材料が、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成することを可能にする。
【0020】
上記供給原料材料がまた非炭素成分を含む1つの実施形態では、上記還元反応チャンバーの温度は、約1200℃とこの非炭素成分の非流体点との間に維持される。例えば、この供給原料材料が、スラグである非炭素成分を含む石炭である場合、このスラグの非流体点は、約1300℃と1400℃との間である。従って、上記還元反応チャンバーの温度は、1200℃と1300℃との間に維持されるべきである。
【0021】
別の実施形態では、上記石炭中のスラグは、還元反応チャンバーの下部セクション近傍に提供される非流体スラグコレクターを通じて回収される。
【0022】
なお、別の実施形態では、上記供給原料材料は石炭粉末であり、これは、上記還元反応チャンバー中に噴霧される。例えば、この石炭粉末は、約900℃の温度で圧縮二酸化炭素を用いて上記還元反応チャンバー中に噴霧され得る。
【0023】
別の実施形態では、上記還元反応チャンバーによって生成される合成ガスの少なくとも一部分は、上記ガスタービンおよび/または合成ガスバーナーのような酸化反応チャンバー中にリサイクルされる。
【0024】
より特定すれば、本発明は、以下の項目に関し得る。
(項目1)統合型ガス化組み合わせサイクルシステムであって:
(i)ガス化リアクター;および
(ii)上記ガス化リアクターに連結されたガスタービン、を備え、
ここで、上記ガス化リアクターが、還元反応チャンバー、上記還元反応チャンバー中に供給原料を導入するための供給原料入口、上記ガスタービンによって生成される排気ガスを上記還元反応チャンバー中に導入するためのガス入口、および上記還元反応チャンバー中の上記供給原料と上記排気ガスとの反応によって発生される合成ガスを放出するためのガス出口を備える、システム。
(項目2)上記排気ガスが、スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を含む、項目1に記載のスチーム。
(項目3)上記排気ガスが、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供する、項目2に記載のシステム。
(項目4)上記ガス化リアクターが、水素ガスをスチームに、または合成ガスをスチームおよび二酸化炭素に変換し、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供する酸化反応チャンバーをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目5)上記酸化反応チャンバーが合成ガスバーナーを備え、そして上記ガスタービンからのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーの一次供給源を提供し、そして上記合成ガスバーナーからのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーの二次供給源を提供する、項目4に記載のシステム。
(項目6)上記合成ガスバーナーが、上記還元反応チャンバーと実質的に直交して位置決めされる、項目5に記載のシステム。
(項目7)上記合成ガスバーナーが、上記供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、上記供給原料を、スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝し、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する、項目5に記載のシステム。
(項目8)上記供給原料入口が、石炭粉末入口を備える、項目1に記載のシステム。
(項目9)上記還元反応チャンバーが、上記還元反応チャンバーの下側端部に配置された非流体スラグコレクターをさらに備える、項目7に記載のシステム。
(項目10)上記ガスタービンが、上記排気ガスを放出するための排気ガス出口を備え、そして上記排気ガス出口が上記還元反応チャンバーの下部セクションに連結される、項目1に記載のシステム。
(項目11)上記供給原料入口および上記酸化反応チャンバーが、上記還元反応チャンバーの上部セクションの近傍に配置される、項目10に記載のシステム。
(項目12)ガス化の方法であって:
(i)ガス化リアクターおよび上記ガス化リアクターに連結されたガスタービンを提供する工程;
(ii)炭素材料を含む供給原料を、上記ガス化リアクターの還元反応チャンバー中に導入する工程;
(iii)酸素および水素ガス、または合成ガスを上記ガスタービン中に導入する工程;および
(iv)上記ガスタービンによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を上記還元反応チャンバーに侵入させ、上記炭素材料と反応させ、合成ガスを生成する工程、を包含する、方法。
(項目13)上記ガスタービンによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、約1500℃と約1700℃との間の温度で上記還元反応チャンバーに入る、項目12に記載の方法。
(項目14)上記ガスタービンによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、上記還元反応チャンバーに入り、そして上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして上記炭素材料と反応し合成ガスを生成する、項目12に記載の方法。
(項目15)上記ガス化リアクターが酸化反応チャンバーを備え、そしてさらに:
(v)上記酸化反応チャンバー中で酸素および水素ガスを反応させ、それによってスチームを生成する工程;および
(vi)上記酸化反応チャンバーによって発生されたスチームを、上記還元反応チャンバーに侵入させ、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして上記炭素材料と反応し、合成ガスを生成する工程、を包含する、項目12に記載の方法。
(項目16)上記酸化反応チャンバーが合成ガスバーナーを備え、上記工程(v)が上記酸化反応チャンバー中で酸素および合成ガスを反応させ、それによって、スチームおよび二酸化炭素を生成することを包含し、そして上記工程(vi)が上記酸化反応チャンバーによって発生されるスチームおよび二酸化炭素を上記還元反応チャンバーに侵入させ、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして上記炭素材料と反応し、合成ガスを生成することを包含する、項目15に記載の方法。
(項目17)酸素が、上記工程(v)で実質的に完全に消費される、項目15に記載の方法。
(項目18)酸素が、上記工程(iii)で実質的に完全に消費される、項目12に記載の方法。
(項目19)上記合成ガスバーナーが上記ガス化リアクターの供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、そしてさらに、上記供給原料入口を通って導入された供給原料を、上記合成ガスバーナーによって発生されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝す工程を包含し、上記供給原料が、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成することを可能にする、項目16に記載の方法。
(項目20)上記供給原料が非炭素成分をさらに含み、そしてさらに、上記還元反応チャンバーの温度を約1200℃と上記非炭素成分の非流体点との間に維持する工程を包含する、項目12に記載の方法。
(項目21)上記供給原料が石炭を含み、ここで、上記非炭素成分がスラグであり、そして上記スラグの非流体点が約1300℃と1400℃との間である、項目20に記載の方法。
(項目22)上記供給原料が石炭粉末を含み、そして上記工程(ii)が上記石炭粉末を上記還元反応チャンバー中に噴霧することを包含する、項目12に記載の方法。
(項目23)上記石炭粉末が、約900℃の温度で圧縮二酸化炭素を用いて上記還元反応チャンバー中に噴霧される、項目22に記載の方法。
(項目24)上記還元反応チャンバーの下部セクションの近傍に提供された非流体スラグコレクターを通じて上記スラグを回収する工程をさらに包含する、項目21に記載の方法。
(項目25)上記還元反応チャンバーによって生成される合成ガスの少なくとも一部分が、上記ガスタービン中にリサイクルされる、項目12に記載の方法。
(項目26)上記還元反応チャンバーによって生成される合成ガスの少なくとも一部分が、上記合成ガスバーナー中にリサイクルされる、項目16に記載の方法。
(項目27)炭素材料をガス化する方法であって、上記炭素材料が炭素成分および固体の非炭素成分を含み:
(i)上記炭素材料をガス化リアクターの還元反応チャンバー中に導入する工程であって、ここで、上記還元反応チャンバーが約1200℃から上記固体の非炭素成分の流体点未満の温度まで維持される工程;
(ii)上記ガス化リアクターの酸化反応チャンバー中で酸素ガスと水素ガスまたは合成ガスとを反応し、それによってスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を生成する工程;および
(iii)上記スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を上記還元反応チャンバーに侵入させる工程であって、そして少なくとも1200℃の上記還元反応チャンバーの温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして上記炭素成分と反応し、合成ガスを生成する工程、を包含する、方法。
(項目28)上記炭素材料が石炭であり、そして上記固体の非炭素成分が石炭スラグである、項目27に記載の方法。
(項目29)上記固体の非炭素成分が、約1300℃を超える流体点を有する、項目28に記載の方法。
(項目30)上記スラグが、非流体スラグコレクター中に非流体として回収される、項目28に記載の方法。
(項目31)ガス化リアクターであって:
(i)上部セクションおよび下部セクションを有する還元反応チャンバー;
(ii)供給原料を上記還元反応チャンバー中に導入するための上記上部セクションの近傍に提供される供給原料入口;
(iii)各々が、水素ガスをスチームに、または合成ガスをスチームおよび二酸化炭素に変換するため、ならびにスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を上記還元反応チャンバーに提供するための第1の酸化反応チャンバーおよび第2の酸化反応チャンバー;および
(iv)上記還元反応チャンバー中の上記供給原料と、上記スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素との反応により生成される合成ガスを放出するためのガス出口、を備える、ガス化リアクター。
(項目32)上記第1の酸化反応チャンバーが、上記第1の酸化反応チャンバーによって提供されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素のための上記還元反応チャンバーに対して位置決めされ、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして上記第2の酸化反応チャンバーが上記供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、上記供給原料を、上記第2の酸化反応チャンバーによって提供されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に曝し、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する、項目31に記載のガス化リアクター。
(項目33)上記供給原料が石炭であり、そして上記還元反応チャンバーの下部セクションの近傍に配置された非流体スラグコレクターをさらに備える、項目31に記載のガス化リアクター。
(項目34)上記第1の酸化反応チャンバーが第1の合成ガスバーナーであり、そして上記第2の酸化反応チャンバーが第2の合成ガスバーナーである、項目31に記載のガス化リアクター。
(項目35)上記第1の酸化反応チャンバーおよび上記第2の酸化反応チャンバーが、上記還元反応チャンバーに実質的に直交している、項目31に記載のガス化リアクター。
(項目36)ガス化リアクターであって:
(i)還元反応チャンバー;
(ii)供給原料を上記還元反応チャンバー中に導入するための供給原料入口;
(iii)水素ガスをスチームに、または合成ガスをスチームおよび二酸化炭素に変換するため、およびスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を上記還元反応チャンバーに提供するための酸化反応チャンバー;ならびに
(iv)上記還元反応チャンバー中の上記供給原料と、上記スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素との反応により生成される合成ガスを放出するためのガス出口を備え、
ここで、上記酸化反応チャンバーが、上記供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、上記供給原料を、上記酸化反応チャンバー内で変換されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝し、上記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する、ガス化リアクター。
【発明の効果】
【0025】
(要約)
本発明は、IGCCにおけるガス化リアクターおよびガスタービンサイクルを特徴とする。ガスタービンはガス化リアクターに連結され、そしてガス化反応を駆動する。このガス化リアクターは、還元反応チャンバー、供給原料をこの還元反応チャンバー中に導入するための供給原料入口、上記タービンによって発生された排気ガスを上記還元反応チャンバー中に導入するためのガス入口、および上記還元反応チャンバー中の上記供給原料と排気ガスとの還元反応によって生成された合成ガスを放出するためのガス出口を含む。上記還元反応チャンバー中の温度は、1200℃を超え、かつ上記供給原料中に含まれる石炭中のスラグのような非炭素成分の非流体点未満に維持される。ガス化装置内の円滑かつ均一な温度制御は、高効率の炭素改質および高品質の合成ガスを提供する。本発明のガス化装置は、従来のガス化装置のほんの1/10のサイズであり得、そして本発明のガス化装置の建築および運転のコストもまた、実質的により低いであろう。本発明のガス化装置は、例えば、約500mmの内径および約2000mmの高さを有し得る。本発明はまた、1200℃でほぼ100%の炭素変換効率に接近する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
以下の説明は、本発明の特定の実施形態を示すことを意味し、そして本発明の範囲を制限することは意味しない。
【0027】
本出願人は、900℃の温度を生じる空気との、または1200℃よりわずかに低い温度を生じる酸素との石炭の部分的燃焼は、石炭の改質のためには不十分であることを観察した。図2に示されるように、出願人はリアクター温度に対する合成ガス生成量を測定し、そして炭素改質は1200℃を超える温度で生じ、そして1200℃未満では改質がほとんど生じないことを学んだ。従来のLurgiガス化装置は、Oガスが石炭粉末を燃焼するために用いられるときでさえ、1200℃の温度に到達し得ない。散発的なスポット温度は1200℃に到達し得るが、このガス化装置は全体として到達しない。本発明は、1200℃を超える温度で作動する、IGCCシステム中のガス化リアクターおよびガスタービンであることを特徴とする。
【0028】
図3を参照して、本発明は、IGCCにおける使用のための、ガス化リアクター100、およびこのガス化リアクター100に連結されたカズタービン106を特徴とする。
【0029】
このガス化リアクター100は、還元反応チャンバー102、供給原料材料をこの還元反応チャンバー102中に導入するための供給原料入口114、ガスタービン106によって発生された排気ガスを還元反応チャンバー102中に導入するためのガス入口103、および上記還元反応チャンバー102中の上記供給原料材料と排気ガスの反応によって生成される合成ガスの放出のためのガス出口116を備える。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、このガス化リアクター100は、内側ライニング108および外側ケーシング112を含む。この内側ライニング108は、1200℃を超える温度で実質的に物理的かつ化学的に安定である任意の材料から構築され得る。この内側ライニング108は、例えば、セラミックであり得る。より詳細な実施形態では、この内側ライニング108は、酸化アルミニウムから作製され得る。上記外側ケーシング112は、金属、または類似の強度および熱耐性性質をもつ任意のその他の材料から作製され得る。特定の実施形態では、この外側ケーシング112は、低炭素スチールから作製される。このガス化リアクター100は、内側ライニング108と外側ケーシング112との間に配置される隔離層110をさらに含む。この隔離層110は、キャスタブルから作製され得る。特定の実施形態では、この隔離層110は、キャスタブルとロックウールとのコンポジットから作製される。別の実施形態では、この隔離層110は、約100℃より低く、リアクター100の外壁の温度を維持するに十分な厚みを有する。例えば、この隔離層110の厚みは、約100mmから約150mmまでの範囲であり得る。上記に提供される例にかかわらず、当業者は、材料選択および詳細な寸法を含む、ガス化リアクター100の詳細な構成が変動し得ることを認識する。
【0031】
供給原料入口114は、還元反応チャンバー102の上部セクションの近傍に、この還元反応チャンバー102中に導入された供給原料材料がこのチャンバー102内に入るとき、それが改質するために十分な時間を有するように位置決めされる。1つの実施形態では、この供給原料入口114は、上記供給原料材料を還元反応チャンバー102中に噴霧し得る噴霧器である。例えば、圧縮された、予備加熱COが石炭粉末をこの還元反応チャンバー102中に噴霧するために用いられ得る。ガス出口116は、還元反応チャンバー102の上部端部の近傍に、この還元反応チャンバー102内で生成された合成ガスが、この還元反応チャンバー102から最適に放出されるように位置決めされる。
【0032】
1つの実施形態では、この還元反応チャンバー102は、酸化反応チャンバーまたは合成ガスバーナー104をさらに含む。この合成ガスバーナー104は、酸素のための1つ以上の入口122、124、および水素ガスまたは水素ガスおよび一酸化炭素を含む合成ガスのための入口120を含む。以下により詳細に記載されるように、この合成ガスバーナー104は、少なくとも1200℃の還元反応チャンバー102の温度を維持するために必要な熱エネルギーを運ぶために十分なスチーム、またはスチームおよびCOを生成する。本発明の好ましい実施形態では、酸素ガス入口122、124は、合成ガス入口120の各々の側に提供される。別の実施形態では、これら酸素ガス入口122、124は、合成ガス入口120に対して所定の角度で位置決めされ、酸素ガスを合成ガスバーナー104中に、合成ガス入口120を通って導入された水素または合成ガスに対して所定の角度で導入する。これは、酸素ガスと、水素または合成ガスとを合流させ、そしてより効率的に反応することを可能にする。パイロット灯または点火プラグが、点火穴126を通って導入され、合成ガスバーナー104内の酸素と水素または合成ガスとを点火し、還元反応チャンバー102を充填する超高温のスチームおよび二酸化炭素(CO)ガスを生成する。
【0033】
好ましい実施形態では、合成ガスバーナー104は、還元反応チャンバー102に対して実質的に直交して位置決めされ、以下にさらに論議されるように、未反応酸素の還元反応チャンバー中への侵入を防ぐ。好ましい実施形態では、この合成ガスバーナー104はまた、上記供給原料入口114の十分近傍、そして特にこの供給原料入口114の真下に位置決めされる。供給原料入口114に対する合成ガスバーナー104のこの位置は、合成ガスバーナー104の排気ガスが噴霧された供給原料材料を所望の1200℃の反応温度まで即座に加熱することを可能にする。この温度では、新たに噴霧された供給原料材料は、還元反応チャンバー102中の排気ガスと迅速に反応し、高い反応効率を維持する。供給原料入口114に対する合成ガスバーナー104の正確な位置は、ガス化リアクター100中で用いられる特定のタイプの供給原料材料、および合成ガスバーナー104の操作温度に基づいて変動する。一般に、合成ガスバーナー104は、供給原料入口114に実施可能である限りできるだけ緊密に位置決めされ炭素材料の最適還元を可能にすることが好ましい。
【0034】
還元反応チャンバー103は、還元反応チャンバー102の底部に配置された非流体スラグコレクター118をさらに含む。この非流体スラグコレクター118は、ガス化プロセスの間に還元反応チャンバー102中に蓄積する供給原料中に含まれる非炭素成分の非流体形態を収集する。以下に詳細に論議されるように、本発明のガス化リアクター100は、この非炭素成分の流体点未満の温度で作動し、このような成分の非流体形態の回収を増大する。
【0035】
還元反応チャンバー102は、ガスタービン106に連結され、スチーム、またはスチームおよびCOを含む排気ガスを還元反応チャンバー102中に導入する。ガスタービンの構造および構成要素、そして特にIGCCで用いられるそれらは、当業者に周知である。このガスタービン106は、還元反応チャンバー102の下部セクションに、例えば、このタービン106の排気ガス出口を還元反応チャンバーのガス入口100に連結することによって連結され得る。
【0036】
本発明のIGCCは、以下の様式で作動する。
【0037】
酸素および水素ガス、または合成ガスのような水素を含むガスのその他の混合物が、ガスタービン106を稼動するために提供され、その作動は当業者に周知である。合成ガスが用いられるとき、この合成ガスは、ガス化リアクター100からの合成ガス生成量の少なくとも一部分をリサイクルすることにより得られ得る。ガスタービン106は、酸素入口128を経由して酸素を受容し、そして合成ガス入口130を経由して、水素または合成ガスのような水素ガス混合物を受容する。この酸素は水素と反応しスチームを生成するか、またはこの酸素は合成ガスと反応し、以下のようにスチームと二酸化炭素を生成する:
+1/2O→H
CO+1/2O→CO
これらは発熱反応であり、1800℃〜2000℃の範囲の温度でスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を含む超高温ガスを生成する。このガスが冷えるとき、熱エネルギーは、電気を生成するタービンを通じて仕事に転換されるが、この排気ガスのある部分は還元反応チャンバー102中に導入される。還元反応チャンバー102中に導入された排気ガスは、約1500℃〜1700℃の温度であり得る。還元反応チャンバー102中に導入されたこの排気ガスは、還元反応が生じるために1200℃であるべき還元反応チャンバーの温度を維持するために必要な熱エネルギーを輸送する。これは、還元反応チャンバー102のための熱エネルギーの第1の供給源である。この排気ガスはまた、供給原料中の炭素材料をガス化する。還元反応チャンバー中に導入される排気ガスの温度は、ガスタービン106によって実施される仕事およびそれによって生成される電気の量に比例し、生成される仕事および電気が多いほど、より低い温度の排気ガスを生じる。現在の実施形態では、生成する最大の電気の必要性を、ガス化反応が生じることを可能にするのに十分な高温に還元反応チャンバーの温度を維持する必要性とバランスすることが重要である。ガスタービン106中に導入される水素または合成ガスに対する酸素ガスの比率を制御することによって、還元反応チャンバー102中への任意の未反応酸素の侵入を防ぐこともまた重要である。
【0038】
合成ガスバーナー104はまた、超高温スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を提供し、還元反応チャンバー102中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーを提供する。これは、代表的には、還元反応チャンバー102のための熱エネルギーの第2の供給源である。
【0039】
最初に、合成ガスバーナー104は、いかなる予備加熱も必要としない。水素ガスまたは合成ガスは、合成ガス入口120を通って合成ガスバーナー104中に導入される。この合成ガス中の水素および一酸化炭素の混合の比率は、1.0〜0で変動し得る。この混合比は、合成ガスのメタノールまたはジメチルエーテル(DME)への液化のプロセスにとって重要な因子である。合成ガスバーナー104およびガスタービン106中にフィードバックされる、合成ガス中の水素/一酸化炭素ガス濃度の比率における小さな変化は、還元反応チャンバー102における還元反応、および生成される合成ガスの組成に反映される。最初、水素ガスまたは合成ガスは、貯蔵タンクからであり得る。あるいは、この合成ガスは、ガス化リアクター100によって生成される合成ガスの少なくとも一部分をリサイクルすることによって得られ得る。石炭ガス化のいくつかの実施形態では、ガス化リアクター100によって生成される合成ガスのほぼ30%が、合成ガスバーナー104を通ってリサイクルされ得、ガス化リアクター100の温度を維持し、そしてその作動を継続する。酸素は、1つ以上の酸素入口122、124を通って合成ガスバーナー104中に導入される。合成ガスは、点火穴126を通ってパイロット灯を導入することにより点火される。ガス化リアクター100の温度は、合成ガスの点火とともに突然上昇する。ガス化リアクター100の温度は、このステージで過剰の酸素が検出されないことを確実にするために、合成ガス出口116で酸素検出器をモニターしながら、酸素取り込みを調節することによって制御される。スチームおよびCOの温度は、1800℃〜2000℃の範囲であり得る。還元反応チャンバー102は、10〜15分以内に約1000℃の温度まで上昇される。このようにして、ガス化リアクター100の温度が1200℃に到達するとき、ガス化リアクター100は、合成ガスと酸素との反応から生成されるCOとスチームで充填されるようになる。加熱の終わりに、酸素ガスはまず遮断され、そして次に合成ガスが遮断され、温度を低下させる。
【0040】
合成ガスバーナー104は還元反応チャンバー202に実質的に直交し、そして高度に効率的であり、そして合成ガスバーナー104中に導入されるOの量は制御可能であるので、合成ガスバーナー104中に導入されたOのすべては、合成ガスバーナー104内で完全に消費され得る。それ故、いくつかの実施形態では、還元反応チャンバー102に入るOは実質的にない。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、合成ガスバーナー204およびガスタービン106中に導入されるOガスの量を変動することにより、ガス化リアクター100の温度を制御することは、Oガスが還元反応チャンバー中に直接導入される従来のガス化リアクターに対していくつかのさらなる利点を有する。第1に、燃焼は酸化反応であるため、還元反応チャンバー中にOを導入すること、およびそれを消費することは、炭素ガス化/改質の還元反応と直接競合する。従って、炭素ガス化/改質は中和される。この問題は、還元反応チャンバー中よりはむしろ、合成ガスバーナー104およびガスタービン106中のOを点火することによって避けられる。さらに、主要な酸素添加汚染物質は、Oが標準的な還元反応チャンバー102で反応されるときに生成される。これらの汚染物質は、合成ガスバーナー104およびガスタービン106中でOを完全に反応することによってなくされる。最後に、従来のガス化リアクターで見出される炭素燃焼の散発的な突発および生じる不均一なリアクター温度は、還元反応チャンバーではなく、合成ガスバーナー104およびガスタービン106中にOが導入され、そして完全に消費されるときなくされる。
【0042】
還元反応チャンバー102の温度が1200℃を超えて維持される間に、炭素材料を含む供給原料材料が供給原料入口114を通って還元反応チャンバー102中に導入される。本明細書で用いられるとき、炭素材料は、1200℃を超える温度で合成ガスに改質する炭素元素または炭素原子を含む材料を意味する。炭素材料は、いくつかの事例では、炭素成分および非炭素成分からなる。例えば、上記供給原料材料は、非炭素成分が、SiO、Al、Fe、CuOなどの種々の混合物を含むスラグである石炭であり得る。あるいは、上記供給原料材料は、オイル、オイルエマルジョン、オイルおよび砂混合物、およびタイヤ、プラスチック、病院廃棄物、および毒性産業廃棄物のような廃棄産物のようなその他のタイプの材料を含み得る。この事実に基づいて、本発明の方法は、この供給原料材料として石炭粉末に関して説明され得る。しかし、本発明は、その他のタイプの炭素材料の改質に適用可能である。
【0043】
供給原料入口114は、石炭粉末を、圧縮および予備加熱されたCOガスを用いて還元反応チャンバー102中に噴霧する。1つの実施形態では、このCOガスは、粉末化石炭を噴霧する前に約900℃の温度に予備加熱される。好ましい実施形態では、合成ガスバーナー104は、供給原料入口114の真下に、上記供給原料材料が合成ガスバーナー104によって生成される超高温のスチーム、またはスチームおよびCOに迅速に曝されるように位置され、その結果、炭素材料の温度は、1200℃まで迅速にもたらされる。
【0044】
しかし、最初に、還元反応チャンバー102の温度が1200℃に到達する前に、多くのブラックスモーク(遊離の炭素)が観察され始める。最終的に、合成ガスバーナー104およびガスタービン106は、還元反応チャンバー102の温度を少なくとも1200℃に維持するに十分な熱エネルギーを輸送するスチームおよびCOを提供する。この温度が1200℃に到達するとき、突然ブラックスモークが消え、そしてガス出口119で一酸化炭素が検出され始める。
【0045】
石炭、または化石燃料(−CH2−)のような炭素材料の炭素原子は、還元反応チャンバー102中で以下のガス化反応を受ける:
C+HO→C+H
C+CO→2CO
(−CH−)+HO→CO+2H
(−CH−)+CO→2CO+H
還元反応チャンバー102中の高温は、これらの反応が触媒を使用せずに起こることを許容する。これらの反応によって生成された合成ガスは、合成ガス出口116を経由して還元反応チャンバー102を出る。合成ガス生成量は加速され、そして再生し、これは、図2に示される。この合成ガスは、上記のように、ガスタービン106または合成ガスバーナー104に再び向けられ得る。
【0046】
本発明では、還元反応チャンバー102の温度が供給原料材料中に含まれる非炭素材料の流体温度を超えて上昇しないことを確実にするのがまた重要である。石炭については、スラグの流体温度は約1300℃と1400℃との間である。従って、反応温度が1200℃を超え、かつ約1300℃未満で均一に維持される場合、固形スラグは、還元反応チャンバー102の内部表面に固着するよりはむしろ、非流体スラグコレクター118中にこの還元反応チャンバー102の底部で蓄積する。この流体温度は、材料に特異的であり、そしてそれ故、この反応に対する上限温度は、供給原料材料中に存在する非炭素成分のタイプに基づき調節される必要がある。一般に、しかし、石炭ガス化リアクター100の温度は、少なくとも1200℃でかつ1300℃より低くあるべきである。
【0047】
本発明は、IGCCのための統合型の効率的なガス化装置を提供し、ここで、合成ガスタービンエンジンの排気ガスが、石炭ガス化の還元反応を駆動する。ガス化装置内の円滑かつ均一な温度制御は、高効率の炭素改質および高品質の合成ガスを提供する。本発明のガス化装置は、従来のガス化装置のほんの1/10のサイズであり得、そして本発明のガス化装置の建築および運転のコストもまた、実質的により低いであろう。本発明のガス化装置は、例えば、約500mmの内径および約2000mmの高さを有し得る。本発明はまた、1200℃でほぼ100%の炭素変換効率に接近する。
【0048】
図4は、本発明のガス化リアクターの別の実施形態を示す。このガス化リアクター200は、図3に示されるガス化リアクター100と類似するが、ガス化リアクター100のガスタービン106が、合成ガスバーナーのような別の酸化反応チャンバー206で置換されている。この酸化反応チャンバー206は、1800℃〜2000℃の範囲の温度で、酸素を水素ガスまたは合成ガスと反応させ、熱スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を生成する。合成ガスバーナー206によって生成されたこのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素は、還元反応のための熱の第1の供給源を提供し、そして合成ガスバーナー204によって生成されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素は、還元反応のための熱の第2の供給源を提供する。ガス化リアクター200によって生成された合成ガスはリサイクルされ得、そして両方の合成ガスバーナー204、206に提供される。ガス化リアクター200のその他の特徴は、ガス化リアクター100の特徴と類似している。
【0049】
特許法令に従って、種々の実施形態および実施例の説明を提供してきたが、本発明の範囲は、それらに、またはそれによって制限されるべきではない。本発明の改変および変更は、本発明の範囲および思想から逸脱することなく当業者に明らかである。
【0050】
従って、本発明の範囲は、例示によって提示された特定の例によるよりむしろ、添付の請求項によって規定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
統合型ガス化組み合わせサイクルシステム、例えば、タービンエンジンがガス化反応を駆動する統合型ガス化組み合わせサイクルシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明、その目的および利点のより完全な理解のために、添付の図面と組み合わせて上記の説明への参照がなされる。
【図1】図1は、従来の統合型ガス化組み合わせサイクルの部分を示す。
【図2】図2は、ガス化リアクター温度に対する合成ガス生成速度のグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施形態による改良された統合型ガス化組み合わせサイクルを示す。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態によるガス化リアクターを示す。
【符号の説明】
【0053】
10 ガス化装置
16、106 ガスタービン
18 ボイラー
20 スチームエンジン
100、200 ガス化リアクター
102、202 還元反応チャンバー
103 ガス入口
104、204 ガスバーナー
108、208 内側ライニング
110、210 隔離層
114、214 供給原料入口
116、216 ガス出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合型ガス化組み合わせサイクルシステムであって:
(i)ガス化リアクター;および
(ii)該ガス化リアクターに連結されたガスタービン、を備え、
ここで、該ガス化リアクターが、還元反応チャンバー、該還元反応チャンバー中に供給原料を導入するための供給原料入口、該ガスタービンによって生成される排気ガスを該還元反応チャンバー中に導入するためのガス入口、および該還元反応チャンバー中の該供給原料と該排気ガスとの反応によって発生される合成ガスを放出するためのガス出口を備える、システム。
【請求項2】
前記排気ガスが、スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を含む、請求項1に記載のスチーム。
【請求項3】
前記排気ガスが、前記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガス化リアクターが、水素ガスをスチームに、または合成ガスをスチームおよび二酸化炭素に変換し、前記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供する酸化反応チャンバーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記酸化反応チャンバーが合成ガスバーナーを備え、そして前記ガスタービンからのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、前記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するに十分な熱エネルギーの一次供給源を提供し、そして該合成ガスバーナーからのスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーの二次供給源を提供する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記合成ガスバーナーが、前記還元反応チャンバーと実質的に直交して位置決めされる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記合成ガスバーナーが、前記供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、該供給原料を、スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝し、前記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記供給原料入口が、石炭粉末入口を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記還元反応チャンバーが、該還元反応チャンバーの下側端部に配置された非流体スラグコレクターをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガスタービンが、前記排気ガスを放出するための排気ガス出口を備え、そして該排気ガス出口が前記還元反応チャンバーの下部セクションに連結される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記供給原料入口および前記酸化反応チャンバーが、前記還元反応チャンバーの上部セクションの近傍に配置される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
ガス化の方法であって:
(i)ガス化リアクターおよび該ガス化リアクターに連結されたガスタービンを提供する工程;
(ii)炭素材料を含む供給原料を、該ガス化リアクターの還元反応チャンバー中に導入する工程;
(iii)酸素および水素ガス、または合成ガスを該ガスタービン中に導入する工程;および
(iv)該ガスタービンによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を該還元反応チャンバーに侵入させ、該炭素材料と反応させ、合成ガスを生成する工程、を包含する、方法。
【請求項13】
前記ガスタービンによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、約1500℃と約1700℃との間の温度で前記還元反応チャンバーに入る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ガスタービンによって発生されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素が、前記還元反応チャンバーに入り、そして該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして該炭素材料と反応し合成ガスを生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス化リアクターが酸化反応チャンバーを備え、そしてさらに:
(v)該酸化反応チャンバー中で酸素および水素ガスを反応させ、それによってスチームを生成する工程;および
(vi)該酸化反応チャンバーによって発生されたスチームを、前記還元反応チャンバーに侵入させ、該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして前記炭素材料と反応し、合成ガスを生成する工程、を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化反応チャンバーが合成ガスバーナーを備え、前記工程(v)が前記酸化反応チャンバー中で酸素および合成ガスを反応させ、それによって、スチームおよび二酸化炭素を生成することを包含し、そして前記工程(vi)が該酸化反応チャンバーによって発生されるスチームおよび二酸化炭素を前記還元反応チャンバーに侵入させ、該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして前記炭素材料と反応し、合成ガスを生成することを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
酸素が、前記工程(v)で実質的に完全に消費される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
酸素が、前記工程(iii)で実質的に完全に消費される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記合成ガスバーナーが前記ガス化リアクターの供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、そしてさらに、該供給原料入口を通って導入された供給原料を、前記合成ガスバーナーによって発生されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝す工程を包含し、該供給原料が、前記還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成することを可能にする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記供給原料が非炭素成分をさらに含み、そしてさらに、前記還元反応チャンバーの温度を約1200℃と該非炭素成分の非流体点との間に維持する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記供給原料が石炭を含み、ここで、前記非炭素成分がスラグであり、そして該スラグの非流体点が約1300℃と1400℃との間である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記供給原料が石炭粉末を含み、そして前記工程(ii)が該石炭粉末を前記還元反応チャンバー中に噴霧することを包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記石炭粉末が、約900℃の温度で圧縮二酸化炭素を用いて前記還元反応チャンバー中に噴霧される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記還元反応チャンバーの下部セクションの近傍に提供された非流体スラグコレクターを通じて前記スラグを回収する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記還元反応チャンバーによって生成される合成ガスの少なくとも一部分が、前記ガスタービン中にリサイクルされる、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記還元反応チャンバーによって生成される合成ガスの少なくとも一部分が、前記合成ガスバーナー中にリサイクルされる、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
炭素材料をガス化する方法であって、該炭素材料が炭素成分および固体の非炭素成分を含み:
(i)該炭素材料をガス化リアクターの還元反応チャンバー中に導入する工程であって、ここで、該還元反応チャンバーが約1200℃から該固体の非炭素成分の流体点未満の温度まで維持される工程;
(ii)該ガス化リアクターの酸化反応チャンバー中で酸素ガスと水素ガスまたは合成ガスとを反応し、それによってスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を生成する工程;および
(iii)該スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を該還元反応チャンバーに侵入させる工程であって、そして少なくとも1200℃の該還元反応チャンバーの温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして該炭素成分と反応し、合成ガスを生成する工程、を包含する、方法。
【請求項28】
前記炭素材料が石炭であり、そして前記固体の非炭素成分が石炭スラグである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記固体の非炭素成分が、約1300℃を超える流体点を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記スラグが、非流体スラグコレクター中に非流体として回収される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ガス化リアクターであって:
(i)上部セクションおよび下部セクションを有する還元反応チャンバー;
(ii)供給原料を該還元反応チャンバー中に導入するための該上部セクションの近傍に提供される供給原料入口;
(iii)各々が、水素ガスをスチームに、または合成ガスをスチームおよび二酸化炭素に変換するため、ならびにスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を該還元反応チャンバーに提供するための第1の酸化反応チャンバーおよび第2の酸化反応チャンバー;および
(iv)該還元反応チャンバー中の該供給原料と、該スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素との反応により生成される合成ガスを放出するためのガス出口、を備える、ガス化リアクター。
【請求項32】
前記第1の酸化反応チャンバーが、該第1の酸化反応チャンバーによって提供されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素のための前記還元反応チャンバーに対して位置決めされ、該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を維持するのに十分な熱エネルギーを提供し、そして前記第2の酸化反応チャンバーが前記供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、該供給原料を、該第2の酸化反応チャンバーによって提供されるスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に曝し、該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する、請求項31に記載のガス化リアクター。
【請求項33】
前記供給原料が石炭であり、そして前記還元反応チャンバーの下部セクションの近傍に配置された非流体スラグコレクターをさらに備える、請求項31に記載のガス化リアクター。
【請求項34】
前記第1の酸化反応チャンバーが第1の合成ガスバーナーであり、そして前記第2の酸化反応チャンバーが第2の合成ガスバーナーである、請求項31に記載のガス化リアクター。
【請求項35】
前記第1の酸化反応チャンバーおよび前記第2の酸化反応チャンバーが、前記還元反応チャンバーに実質的に直交している、請求項31に記載のガス化リアクター。
【請求項36】
ガス化リアクターであって:
(i)還元反応チャンバー;
(ii)供給原料を該還元反応チャンバー中に導入するための供給原料入口;
(iii)水素ガスをスチームに、または合成ガスをスチームおよび二酸化炭素に変換するため、およびスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素を該還元反応チャンバーに提供するための酸化反応チャンバー;ならびに
(iv)該還元反応チャンバー中の該供給原料と、該スチーム、またはスチームおよび二酸化炭素との反応により生成される合成ガスを放出するためのガス出口を備え、
ここで、該酸化反応チャンバーが、該供給原料入口の十分近傍に位置決めされ、該供給原料を、該酸化反応チャンバー内で変換されたスチーム、またはスチームおよび二酸化炭素に迅速に曝し、該還元反応チャンバー中で少なくとも1200℃の温度を迅速に達成する、ガス化リアクター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−69768(P2008−69768A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143776(P2007−143776)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(505131463)
【氏名又は名称原語表記】KIM Hyun Yong