説明

IL−13およびNK−T細胞に関する、結腸炎を処置および予防する方法

【課題】被験体において結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、被験体における結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法を提供し、IL−13活性を調節する有効量の物質を被験体に投与する工程を包含する(図3)。本発明はまた、被験体における結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法を提供し、この方法は、NK−T細胞活性を調節する有効量の物質を被験体に投与する工程を包含する。本発明はまた、結腸炎の炎症性応答を処置または予防する物質のスクリーニングを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、サイトカインインターロイキン−13(IL−13)の結腸炎誘導性の効果を調節することによって、結腸炎を処置または予防する方法に関する。本発明はまた、NK−T細胞の結腸炎誘導性の効果を調節することによって、結腸炎を処置または予防する方法に関する。結腸炎の炎症性応答を減少し、マウスモデルにおいて結腸炎を予防することにおいて、その有効性について物質をスクリーニングするための方法がさらに提供される。
【背景技術】
【0002】
ヒト炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)および潰瘍性結腸炎(UC)は、腸管腔における細菌抗原に対する異常な粘膜T細胞応答に起因すると考えられる(Sartor,1995)。CDにおいて、応答性のT細胞は、Th1表現型を示し、従って、大量のインターフェロン−γ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子(TNF−α)を産生する。IL−12の分泌、すなわち、Th1分化の駆動力がまた、増加する(Parronchiら、1997)。UCにおいて、応答性のT細胞はあまり定義されていない。この場合、Th1サイトカイン産生が正常または減少している一方で、いくつかのTh2サイトカイン産生(IL−5およびIL−10)は増加し、Th2応答の「signature」サイトカイン(IL−4)の産生は増加しない(Fussら、1996)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、被験体において結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法を提供し、この方法は、この被験体にNK−T細胞活性を調節する物質の有効量を投与する工程を包含する。
【0004】
被験体において結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法がまた本発明により提供され、この方法は、この被験体にIL−13活性を調節する物質の有効量を投与する工程を包含する。
【0005】
IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を減少する有効性について物質をスクリーニングする方法がまた、本発明により提供され、この方法は、以下:
a)結腸炎を有する動物を得る工程;
b)動物に対してこの物質を投与する工程;および
結腸炎の炎症性応答の減少を生じる、IL−13活性に対する影響について、この動物をアッセイし、それによって、IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を減少するのに有効な物質を同定する工程
を包含する。
【0006】
NK−T細胞活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を減少することにおける有効性について物質をスクリーニングする方法が、さらに本発明により提供され、この方法は、以下:
a)結腸炎を有する動物を得る工程;
b)動物にこの物質を投与する工程;および
c)結腸炎の炎症性応答の減少を生じるNK−T細胞活性に対する効果について動物をアッセイする工程であって、それによって、NK−T細胞活性を調節することにより結腸炎の炎症性応答を減少するのに有効な物質を同定する工程
を包含する。
【0007】
本発明はまた、IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を防止するのに有効な物質についてスクリーニングする方法も提供し、この方法は、以下:
a)結腸炎に感受性の動物に、この物質を投与する工程:
b)炎症性応答を誘導する処置に、この動物を供する工程;および
c)IL−13の分泌量についてこの動物由来の炎症性組織細胞をアッセイする工程であって、それによって、この物質の不在下にて結腸炎を有するコントロール動物におけるIL−13の量の増加と比べて、この動物の炎症性組織細胞におけるIL−13の量の減少または増加の欠失が、IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を防止するのに有効な物質を同定する、工程
を包含する。
【0008】
また、NK−T細胞活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を防止するのに有効な物質についてスクリーニングする方法も、本発明により提供され、この方法は、以下:
a)結腸炎に感受性の動物にこの物質を投与する工程;
b)炎症性応答を誘導する処置に、この動物を供する工程;および
c)NK−T細胞活性に対する効果についてこの動物をアッセイし、それによって、この物質の不在下にて結腸炎を有するコントロール動物におけるNK−T細胞活性の増加と比べて、この動物の炎症性組織細胞におけるNK−T細胞活性の減少または増加の欠失が、NK−T細胞活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を防止するのに有効な物質を同定する、工程
を包含する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体において結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法であって、該方法は、NK−T細胞活性を調節する物質の有効量を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記物質が、NK−T細胞活性を減少することによって、NK−T細胞活性を調節する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記物質が、NK−T細胞活性のレベルを維持することによって、NK−T細胞活性を調節する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記被験体がマウスである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記被験体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記結腸炎が、炎症性腸障害により引き起こされる、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記結腸炎が、潰瘍性結腸炎により引き起こされる、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記結腸炎が、オキサゾロン結腸炎である、項目1に記載の方法。
(項目9)
NK−T細胞活性を調節する前記物質が、抗体である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記抗体が抗原認識を防止する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記抗体が前記被験体におけるNK−T細胞の数を減少する、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記抗体がCD1に結合する、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記抗体がVα14Jα281に結合する、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記抗体がVα24Jα18に結合する、項目10に記載の方法。
(項目15)
被験体において結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法であって、該方法は、IL−13活性を調節する物質の有効量を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目16)
前記物質が、IL−13活性を減少することによってIL−13活性を調節する、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記物質が、IL−13活性のレベルを維持することによってIL−13活性を調節する、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記被験体がマウスである、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記被験体がヒトである、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記結腸炎が、炎症性腸障害により引き起こされる、項目15に記載の方法。
(項目21)
前記結腸炎が潰瘍性結腸炎により引き起こされる、項目15に記載の方法。
(項目22)
前記結腸炎がオキサゾロン結腸炎である、項目15に記載の方法。
(項目23)
前記物質がIL−13産生を減少する、項目15に記載の方法。
(項目24)
IL−13活性を調節する前記物質が抗体である、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記物質がIL−13Rα2−Fcである、項目15に記載の方法。
(項目26)
前記抗体がIL−13に結合する、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記抗体がIL−13Rα2に結合する、項目24に記載の方法。
(項目28)
NK−T細胞活性を調節することによって、結腸炎の炎症性応答を減少することにおける有効性について物質をスクリーニングする方法であって、以下:
a)結腸炎を有する動物を得る工程;
b)動物に該物質を投与する工程;
c)該結腸炎の炎症性応答の減少を生じる、NK−T細胞活性に対する有効性について該動物をアッセイし、それによって、NK−T細胞活性を調節することによって、結腸炎の該炎症性応答を減少するのに有効な物質を同定する工程
を包含する、方法。
(項目29)
前記動物がマウスである、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記結腸炎がオキサゾロン結腸炎である、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記動物が、該動物の結腸に、有効量のハプテン試薬を導入することによって生じる、確立された結腸炎を有する、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記ハプテン試薬が、オキサゾロン(4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン)である、項目28に記載の方法。
(項目33)
IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を減少することにおける有効性について物質をスクリーニングする方法であって、以下:
a)結腸炎を有する動物を得る工程;
b)動物に該物質を投与する工程;
c)該結腸炎の該炎症性応答の減少を生じるIL−13活性に対する効果について該動物をアッセイし、それによって、IL−13活性を調節することによって結腸炎の該炎症性応答を減少するのに有効な物質を同定する工程
を包含する、方法。
(項目34)
前記動物がマウスである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記結腸炎がオキサゾロン結腸炎である、項目33に記載の方法。
(項目36)
IL−13活性を調節することにとって、結腸炎の炎症性応答を防止することにおいて有効な物質についてスクリーニングする方法であって、以下:
a)結腸炎に感受性の動物に対して該物質を投与する工程;
b)炎症性応答を誘導する処置に、該動物を供する工程;および
c)IL−13の分泌量について、該動物由来の炎症性組織細胞をアッセイする工程であって、それによって、該物質の不在下にて、結腸炎を有するコントロール動物におけるIL−13の量の増加と比べて、該動物の該炎症性組織細胞中のIL−13の量の減少、または、増加の欠失が、IL−13活性を調節することによって、結腸炎の該炎症性応答を防止するのに有効な物質を同定する工程
を包含する、方法。
(項目37)
NK−T細胞活性を調節することによって、結腸炎の炎症性応答を防止することにおいて有効な物質についてスクリーニングする方法であって、以下:
a)結腸炎に感受性の動物に、該物質を投与する工程;
b)該動物を、炎症性応答を誘導する処置に供する工程;および
c)NK−T細胞活性に対する影響について該動物をアッセイする工程であって、それによって、該物質の不在下にて結腸炎を有するコントロール動物におけるNK−T細胞活性の増加に対して、該動物の該炎症性組織細胞におけるNK−T細胞活性の減少、または、増加の欠失が、NK−T細胞活性を調節することによって、結腸炎の該炎症性応答を防止することに有効な物質を同定する工程
を包含する、方法。
添付の図面(これらは、本明細書中に組み込まれ、本明細書の部分をなす)は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、明細書と一緒に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1A〜Fは、直腸内チャレンジの前のオキサゾロンでの前感作が、慢性的な進行性結腸炎を生じることを示す。ビヒクル(エタノール)またはオキサゾロンでの前感作および、ビヒクルまたは異なる用量のオキサゾロンでの直腸内チャレンジ後のマウスの体重減少(A)および死亡率(B)、ならびに、エタノールでの前感作およびチャレンジ後7日目のマウスの結腸からの、H.E.染色切断面の5×倍率(C)および10×倍率(E)。D+Fは、オキサゾロン前感作および1%オキサゾロンでの直腸内再チャレンジ後の効果を示す。
【図2】図2A〜Bは、オキサゾロン結腸炎を有するマウスからのリンパ球からのサイトカイン産生を示す。(A)固有層単核細胞(LPMC)、肝臓単核細胞(HMNC)、腸間膜リンパ節細胞(MLNC)または脾臓細胞(SPC)を、オキサゾロン結腸炎(灰色)またはTNBS(黒色)結腸炎の誘導後5日目に単離し、プレートに結合させた抗CD3および抗CD28で、インビトロにて48時間刺激した)。ELISAにより、上清中のサイトカイン濃度を測定した。(B)オキサゾロン結腸炎の誘導後2日目、5日目または8日目に、LPMCを単離した。LPMCを上記のように刺激し、上清中のIL−4(白色)およびIL−13(斜線)の濃度を測定した。
【図3】図3A〜Bは、IL−13の中和が、オキサゾロン結腸炎の誘導を防止することを示す。IL−13Rα2−Fc(菱形)またはコントロールタンパク質(四角)で処置したオキサゾロン結腸炎を有するマウスからの(A)体重減少および(B)死亡率。
【図4】図4A〜Dは、NK1.1リンパ球の枯渇が、TNBS結腸炎ではなく、オキサゾロン結腸炎からマウスを保護することを示す。オキサゾロン結腸炎(A+B)またはTNBS結腸炎(C+D)の誘導後、あるいは、ビヒクルの注射(エタノール;丸)後の体重減少(A+C)および死亡率(B+D)。マウスにコントロール抗体を注射した(四角)か、または、PK136でNK1.1細胞を枯渇させた(菱形)。
【図5】図5A〜Bは、CD1抗原提示と、Jα281NK−T細胞が、オキサゾロン結腸炎の誘導に必須であることを示す。(A)ビヒクル(丸)の直腸内注射後、またはCD1ブロッキング抗体(20H2;菱形)もしくはコントロール抗体(四角)のi.v.注射後のオキサゾロンのマウスの体重減少。(B)CD1KOマウス(菱形)、Jα281KOマウス(丸)および野生型マウス(四角)のオキサゾロン結腸炎誘導後の体重減少。
【図6】図6は、αGalCerに応答したサイトカイン産生を示す。LPMC(上パネル)、脾臓細胞または脾臓CD4細胞(下パネル)は、刺激しなかった(未刺激)か、あるいは、プレートに結合した抗CD3および可溶性抗CD28で刺激した(aCD3/28)か、トランスフェクトしていないL細胞およびビヒクルで刺激した(LC+Veh.)か、または、CD1でトランスフェクトしたL細胞および100ng/mlのαGalCerで刺激した(LCD1+aGC)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明およびその中に含まれる実施例、ならびに、図面ならびにその以前および以下の説明を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0011】
本発明の方法および組成物が開示され、記載される前は、他に特定されない場合、本発明は、特定の方法または特定の物質に限定されないか、または、他に特定されない場合、特定の試薬に限定されず、従って、もちろん、変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのためであり、限定することは意図されないことが理解されるべきである。
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が他にはっきりと指示しない限り、複数の対称を含む。従って、例えば、「物質(a substance)」に対する言及は、1つ以上の物質を含む、などである。
【0013】
範囲は、本明細書中で、「約」1つの特定の値から、そして/または、「約」別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または、別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。各範囲の終点が、他の終点と関連する場合、および、他の終点から独立している場合の両方において重要であることがさらに理解される。
【0014】
(処置および予防の方法)
本発明は、被験体における結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法を提供し、この方法は、被験体に、IL−13活性を調節する有効量の物質を投与する工程を包含する。
【0015】
結腸炎(例えば、潰瘍性結腸炎)に罹患している任意の動物が、この方法により処置され得る。従って、被験体は、任意の哺乳動物(好ましくはヒト)であり得、そして、マウス、ラット、ウシ、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、サル、ウマおよびチンパンジーが挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0016】
本明細書中で使用される場合、本発明の物質としては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:タンパク質、薬物、抗体、抗体フラグメント、イムノトキシン、化学物質、タンパク質フラグメントおよび毒素。これらの物質の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:抗IL−13抗体、抗NK−T細胞抗体、抗NK1.1抗体、抗CD1抗体、IL−13Rα2−Fc、IL−13Rα2、IL−13Rα、IL−13Rα2のフラグメントおよびIL−13Rαのフラグメント。IL−13Rα2およびIL−13Rαの細胞外フラグメントもまた、結腸炎の処置または予防において有効な物質として本発明により意図される。
【0017】
本発明のIL−13Rαは、ラットIL−13Rαまたはこのレセプターのフラグメントであり得、このレセプターについての配列は、登録番号AY044251によりGenBankデータベース上でアクセスされ得る。この配列番号は、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。本発明のIL−13Rαはまた、マウスIL−13Rαまたはこのレセプターのフラグメントであり得、このレセプターについての配列は、登録番号S80963によりGenBankデータベース上でアクセスされ得る。この配列は、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。本発明のIL−13Rαはまた、ヒトIL−13Rαまたはこのレセプターのフラグメントであり得、このレセプターについての配列は、登録番号U62858によりGenBankデータベース上でアクセスされ得る。この配列は、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。
【0018】
本発明のIL−13Rα2はまた、ヒトIL−13Rα2またはこのレセプターのフラグメントであり得、このレセプターについての配列は、登録番号NM_000640によりGenBankデータベース上でアクセスされ得る。この配列は、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。本発明のIL−13Rα2はまた、マウスIL−13Rα2またはこのレセプターのフラグメントであり得、このレセプターについての配列は、登録番号U65747によりGenBankデータベース上でアクセスされ得る。この配列は、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。
【0019】
本発明の抗体は、ヒトIL−13に対する抗体であり得る(Dolganovら、「Coexpression of the interleukin−13 and interleukin−4 genes correlates with their physical linkage in the cytokine gene cluster on human chromosome 5q23−31」Blood 87(8),3316−3326(1996))。ヒトIL−13の配列は、登録番号U31120によりGenBank上でアクセスされ得、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。本発明の抗体はまた、マウスIL−13に対する抗体であり得る(Brownら、「A family of small inducible proteins secreted by leukocytes are members of a new superfamily that includes leukocyte and fibroblast−derived inflammatory
agents,growth factors,and indicators of
various activation processes」J.Immunol.142(2),679−687(1989))。この配列は、登録番号NM_008355によりGenBankデータベース上でアクセスされ得、この参照により、その全体が本明細書中に援用される。
【0020】
「処置する」とは、本発明の物質の被験体への投与の際に、疾患状態(すなわち、結腸炎の炎症性応答)における改善が観察および/または検出されることを意味する。処置は、当該分野で公知の技術により検出されるように、疾患の症状の正の変化から、結腸炎の炎症性応答の完全な寛解(例えば、疾患の重篤度または強度の減少、被験体の状態の臨床的パラメーター指標の変化、不快感の軽減、または機能の増加もしくは増強)までの範囲に及び得る。本発明の方法は、確立された結腸炎を処置するのに利用され得る。当業者は、潰瘍性結腸炎または中間の結腸炎が、1つ以上の以下の組織学的特徴が検出され得る炎症状態により特徴付けられる結腸の状態:上皮細胞の減少および斑状潰瘍の存在、ムチン産生杯細胞の明白な枯渇、および、管状腺の密度の減少により特徴付けられる表在性の炎症を指すことが認識される。さらに、固有層において、細胞の浸出に関連するリンパ球および顆粒球(後者は、主に好中球、およびより少ない程度の好酸球からなる)からなる混合性の炎症性細胞の、腸管腔への浸潤が観察される。また、粘膜下レベルが、炎症性細胞をほとんど伴わずに顕著な浮腫を示し得る一方で、外側筋肉層において、当業者は、炎症の証拠をほとんど確認しないか、全く確認しない。例えば、Boirivantら、Journal of Experimental Medicine 188:1929−1939(1998)を参照のこと。臨床的症状としては、下痢、直腸脱、体重の減少、腹痛、脱水症状および巨脾腫が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0021】
「予防する」とは、本発明の物質の被験体への投与後に、被験体が結腸炎の症状(すなわち、炎症、下痢、直腸脱、体重の減少、腹痛など)を発症せず、そして/または結腸炎を発症しないことを意味する。
【0022】
本明細書中で用いる場合、IL−13活性の調節(例えば、維持、減少または阻害)とは、IL−13産生の減少、IL−13結腸炎誘導性作用の減少、IL−13を産生する細胞の減少、またはこれらの組み合わせのような変化を意味する。IL−13活性の減少または阻害は、IL−13活性の減少からIL−13活性の完全な寛解までの範囲に及び得る。IL−13活性の維持は、優位な増加または減少のない、IL−13の定常状態レベルの維持を意味する。当業者は、当該分野で公知の方法、ならびに、IL−13活性を測定および/またはモニタリングするための本明細書中の実施例に記載される方法を利用し得る。
【0023】
本発明はまた、被験体における結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法を提供し、この方法は、被験体に、NK−T細胞活性を調節(例えば、維持、減少または阻害)する物質の有効量を投与する工程を包含する。
【0024】
NK−T細胞活性の維持とは、有意に増加または減少することのない、NK−T細胞活性の定常状態レベルの維持を意味する。本明細書中で用いられる場合、NK−T細胞活性の減少または阻害は、NK−T細胞数の減少、NK−T細胞活性の減少、NK−T細胞とそのそれぞれのリガンドとの間の相互作用の減少、または、これらの組み合わせであり得る。減少は、NK−T細胞数の減少から、NK−T細胞の完全な枯渇までの範囲に及び得る。同様に、NK−T細胞の活性化の減少は、活性化されるNK−T細胞数の減少から、全てのNK−T細胞の不活性までの範囲に及び得る。当業者は、NK−T細胞を不活性化するか、または、NK−T細胞を枯渇させるために利用する物質を知っている。例えば、当業者が、NK−T細胞を枯渇させることを望む場合、抗NK1.1抗体が利用される。同様に、NK−T細胞の活性化の阻害が望ましい場合、抗CD1.1抗体が利用される。従って、NK−T細胞を枯渇させる抗体、ならびに、抗原提示を妨げる抗体が、本発明の1局面として意図される。
【0025】
また、被験体における結腸炎の炎症性応答を処置または予防する方法が本発明により意図され、この方法は、NK−T細胞活性を減少する第1の物質の有効量と、IL−13活性を減少する第2の物質の有効量とを被験体に投与する工程を包含する。この第1および第2の物質は、結腸炎の炎症性応答を処置または予防するのに有効であると決定された比または組み合わせで、一緒にか、または、別々に被験体に投与され得る。このような比または組み合わせの量の決定は、十分に当業者の範囲内である。
【0026】
本発明はまた、被験体に、別の治療剤と共に、IL−13活性を減少する物質を投与することによる、結腸炎の炎症性応答の処置または予防を意図する。他の治療剤としては、抗体(例えば、抗IL−4抗体)、サイトカインまたは免疫調節剤が挙げられ得るがこれらに限定されない。本発明はまた、被験体に、別の治療剤と共に、NK−T細胞活性を減少する物質を投与することによる、結腸炎の炎症性応答の処置または予防を意図する。
【0027】
本発明の方法において使用され得るこれらのサイトカインおよび免疫調節剤の例としては、IVIG、リンパ球抗原膜に対する抗血清因子(すなわち、抗胸腺細胞血清(ATS)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ球血清(ALS)、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗CD3、抗CD4、抗CD8)、抗TNFα、抗IFN−γ、アンチセンスSTAT4オリゴヌクレオチド、抗ICAM1、アンチセンスICAM−1オリゴヌクレオチド、抗CD40L、抗CD25(抗Tag)およびIL−10が挙げられるが、これらに限定されない。他のサイトカインおよび/または免疫調節剤は、疾患の急性エピソードを処置するためか、または、被験体の状態を非炎症性状態に維持するための両方のために、本発明の方法に従って投与され得る。
【0028】
本発明の処置方法および/または予防方法(上記の併用両方を含む)について、本明細書中に記載されるような、被験体における結腸炎の炎症性応答を処置または予防することにおける投与の効率は、当該分野で公知なように、これらの疾患についての特定の徴候、症状、および客観的な研究室の試験の評価の標準的な方法により決定され得る。例えば、適切なコントロール群との比較、および一般集団もしくは特定の個体における疾患の正常な進行の知識に基づいて、1)被験体の再発の頻度または重篤度が減少されることが示されるか、2)疾患の進行が安定化されることが示されるか、または、3)他の免疫抑制性医薬の使用の必要性が減少し、次いで、特定の処置レジメンまたは予防レジメンが有効であると考えられる。
【0029】
結腸炎の炎症性応答を防止することにおいて、任意の抗体、免疫抑制性医薬または免疫調節剤およびIL−13活性を減少する物質を用いる組み合わせ療法の効力は、当業者に公知であるように、標準的な徴候、症状および客観的な研究室の試験を長期間にわたって評価することによって決定され得る。結腸炎の発症の危険性がある被験体の決定は、この分野の臨床医に馴染みのある特定の疾患についての公知のリスクファクターの現在の知識(例えば、疾患の特に強力な家族歴)に基づいてなされる。
【0030】
上記のように、本発明の物質は、抗体であり得る。本明細書中で用いられる場合、用語「抗体」は、任意のクラスの全免疫グロブリン(すなわち、インタクトな抗体)を包含するがこれらに限定されない。ネイティブな抗体は通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、ヘテロ四量体の糖タンパク質である。代表的には、各軽鎖は、1本のジスルフィド共有結合により重鎖に連結され、一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖および軽鎖はまた、一定間隔の鎖間ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一つの端に一つの可変(V(H))ドメインと、これに続く多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一つの端に可変(V(L))ドメインを有し、そして、その他の端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列しており、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられる。任意の脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明らかに異なる型(κ(k)およびλ(l)と呼ばれる)に割り当てられ得る。その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、別のクラスに割り当てられ得る。ヒト免疫グロブリンには、5つの主要なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM。そして、これらのいくつかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2)に分けられ得る。当業者は、マウスについての類似のクラスを認識する。免疫グロブリンの別のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0031】
用語「可変」は、本明細書中で、抗体間で配列が異なる可変ドメインの特定の部分を記載するために用いられ、そして、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において用いられる。しかし、可変性は、通常は、抗体の可変ドメイン全体に等しく分配されていない。可変性は代表的には、3つのセグメント(すなわち、相補性決定領域(CDR)または軽鎖および重鎖の可変ドメインの両方における超可変領域)に集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。ネイティブな重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのFR領域(主に、3つのCDRにより接続されるβシート配置を採用し、これは、βシート構造を接続するループを形成し、いくつかの場合は、βシートの部分を形成する)を含む。各鎖におけるCDRは、FR領域により互いに近接して保持され、他の鎖からのCDRは、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immnunological Interest」、National
Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、種々のエフェクター機能(例えば、抗体の抗体依存性の細胞毒性における関与)を示す。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体またはそのフラグメント」は、二重もしくは複数の抗原またはエピトープ特異性を有するキメラ抗体およびハイブリッド抗体、ならびに、フラグメント(例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、scFvなど)(ハイブリッドフラグメントを含む)を包含する。従って、その特異的な抗原に結合する能力を保持する抗体のフラグメントが提供される。例えば、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2の結合活性を維持する抗体のフラグメントが、用語「抗体またはそのフラグメント」の意味に含まれる。このような抗体およびフラグメントは、当該分野で公知の技術により作製され得、実施例に示される方法に従って、そして抗体を産生し、特異性および活性について抗体をスクリーニングする一般的な方法で、特異性および活性についてスクリーニングされ得る(HarlowおよびLane.Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)を参照のこと)。
【0033】
また、「抗体またはそのフラグメント」の意味には、例えば、米国特許第4,704,692号(その内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるような、抗体フラグメントと抗原結合タンパク質の結合体(単鎖抗体)が含まれる。
【0034】
必要に応じて、抗体は、他の種において作製され、ヒトにおける投与のために「ヒト化」される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)、scFvまたは他の抗原結合配列)である。ヒト化抗体としては、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)のCDR由来の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、外来性(imported)のCDR配列もしくはフレームワーク配列においても見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、そして、代表的には2つの可変領域の実質的に全てを含み、ここで、全てまたは実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そして、全てまたは実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、また、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分(代表的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域)を含む(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0035】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からその中に導入された、1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば、「外来性」残基と呼ばれ、これは、代表的には、「外来性」可変ドメインから取られる。ヒト化は、げっ歯類のCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列で置換することにより、本質的に、Winterおよび共同研究者による方法に従って実施され得る(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988))。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、この抗体では、実質的にインタクト未満の可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている。実際、ヒト化抗体は、代表的には、いくつかのCDR残基、および、可能ならば、いくつかのFR残基が、げっ歯類の抗体における相同な部位由来の残基により置換されている、ヒト抗体である。
【0036】
ヒト化抗体を作製する際に使用される、ヒト可変ドメイン(軽および重の両方)の選択は、抗原性を減少させるために、非常に重要である。「ベストフィット」法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列が、公知のヒト可変ドメイン配列の完全ライブラリに対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体についてのヒトフレームワーク(FR)として受容される(Simsら、J.Immunol.,151:2296(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体について使用され得る(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.,151:2623(1993))。
【0037】
抗体が、抗原に対する高い親和性および、他の望ましい生物学的特性を保持したままヒト化されることがさらに重要である。この目的を達成するために、ヒト化抗体は、親配列、ならびに、親配列およびヒト化配列の3次元モデルを用いる種々の概念的なヒト化生成物の分析プロセスにより調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な3次元立体構造を例示し、表示するコンピュータプログラムが、利用可能である。これらディスプレイの検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の有望な役割の分析(すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析)を可能にする。このようにして、コンセンサス配列および外来性配列からFR残基が選択され得、かつ合わせられ得、その結果、所望の抗体特性(例えば、標的抗原に対する親和性の増加)が達成される。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与えることに、直接かつ主に実質的に関与する(1994年3月3日に公開されたWO 94/04679を参照のこと)。
【0038】
免疫化の際に、内因性の免疫グロブリンの産生の非存在下にて、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)が用いられ得る。例えば、キメラマウスおよび生殖系変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合性欠失が、内因性の抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されている。このような生殖系変異マウスにおけるヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイの移送は、抗原チャレンジに際して、ヒト抗体の産生を生じる(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−255(1993);Jakobovitsら、Nature,362:255−258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol.,7:33(1993)を参照のこと)。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーにおいて産生され得る(Hoogenboomら、J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.,222:581(1991))。CoteらおよびBoernerらの技術がまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)0;Boernerら.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)を参照のこと)。
【0039】
本発明は、さらに、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」とは、抗体の実質的に均質な集団から得た(すなわち、集団を含む個々の抗体が、少量で存在し得る、天然に存在する可能な変異を除いては同一である)抗体を指す。本明細書中のモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種由来の抗体の対応する配列と同一であるか、または相同であり、あるいは、特定の抗体クラスまたは抗体サブクラスに属し、一方で、鎖の残りは、別の種由来の抗体の対応する配列と同一であるか、または相同であり、あるいは、別の抗体クラスまたは抗体サブクラスに属する、「キメラ」抗体、ならびに、所望の活性を示す限りは、このような抗体のフラグメントを含む(米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)を参照のこと)。
【0040】
本発明のモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)またはHarlow and Lane.Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)により記載されるようなハイブリドーマ法を使用して調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物は、代表的に免疫化剤で免疫化され、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生または産生し得るリンパ球を引き出す。あるいは、これらのリンパ球は、インビトロで免疫化され得る。好ましくは、免疫化剤は、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαもしくはIL−13Rα2またはそのフラグメントを含む。慣習的に、モノクローナル抗体の生成は、免疫原として使用のための精製されたタンパク質またはペプチドの有用性に依存してきた。最近、DNAに基づく免疫化が、強い免疫応答を引き出し、そしてモノクローナル抗体を生成するのに利用されてきた。このアプローチにおいて、DNAに基づく免疫化が使用され、ここで、ヒトIgG1との融合タンパク質として発現されるIL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2の一部をコードするDNAが、当該分野で公知の方法に従って(例えば、Kilpatrickら、Gene gun delivered DNA−based immunizations mediate rapid production of murine monoclonal antibodies to the Flt−3 receptor.Hybridoma.1998 Dec;17(6):569−76;Kilpatrick KEら High−affinity monoclonal antibodies to PED/PEA−15 generated using 5 microg of DNA.Hybridoma.2000 Aug;19(4):297−302、これは、抗体産生の方法についてその全体において参考として援用される)、そして実施例で記載されるように、宿主動物に注入される。
【0041】
精製されたタンパク質またはDNAのいずれかを用いる免疫化への代替的なアプローチは、バキュロウイルスにおいて発現される抗原を使用することである。このシステムに対する利点としては、生成の容易さ、高レベルの発現、および哺乳動物系において見られるものと高度に類似している翻訳後の修飾が挙げられる。この系の使用は、融合タンパク質としてIL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2抗体のドメインを発現することを含む。この抗原は、シグナル配列とIL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2抗体ヌクレオチド配列の成熟タンパク質ドメインとの間の遺伝子フラグメントをインフレームで挿入することにより産生される。これは、ビリオンの表面上の外来タンパク質のディスプレイにおいて生じる。この方法は、ウイルス全体での免疫化を可能にし、標的抗原の精製の必要を除外する。
【0042】
一般に、ヒト起源の細胞が所望される場合、末梢血リンパ球(「PBL」)のいずれかがモノクローナル抗体を産生する方法において使用され、または非ヒト哺乳動物起源が所望される場合、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球が、ポリエチレングリコールのような適切な融合化剤を使用して不死化細胞株と共に融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice Academic Press,(1986)pp.59−103)。不死化細胞株は、通常、げっ歯類、ウシ、ウマ、およびヒト起源のミエローマ細胞を含む哺乳動物細胞に形質転換される。通常、ラットまたはマウスのミエローマ細胞株が、利用される。これらのハイブリドーマ細胞は、融合されない不死化細胞の増殖または生存を妨げる1つ以上の物質を好ましくは含む、適切な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠失している場合、ハイブリドーマについての培養培地は、代表的にヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含み、この物質は、HGPRT不足細胞の増殖を妨げる。好ましい不死化細胞株は、効率的に融合するものであり、選択された抗体産生細胞により抗体の安定な高レベルの発現を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である。より好ましい不死化細胞株は、マウスミエローマ株であり、これは、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.およびAmerican Type Culture Collection,Rockville,Mdから得られ得る。ヒトミエローマ細胞株およびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株がまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載された(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら,“Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications”Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。次いで、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地が、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2に対して指向されるモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により作製されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により、またはインビトロ結合アッセイ(例えば、放射性免疫学的検定(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))により、決定された。このような技術およびアッセイは、当該分野で公知であり、以下の実施例またはHarlow and Lane Antibodies,A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)にさらに記載される。
【0043】
所望されるハイブリドーマ細胞が同定された後、これらのクローンが、限界希釈またはFACS分類手順によりサブクローン化され得、そして標準的方法により増殖し得る。この目的のために適切な培養培地としては、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s MediumおよびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、これらのハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中で腹水としてインビボで増殖され得る。
【0044】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体が、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−Sepharose、プロテインG、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィー)により培養培地または腹水流体から単離または精製され得る。
【0045】
これらのモノクローナル抗体はまた、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるもの)により産生され得る。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手段を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖または軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離され得、または配列決定され得る。本発明のこれらのハイブリドーマ細胞はまた、このようなDNAの好ましい供給源として働く。一旦単離されると、DNAは、発現ベクター中に配置され得、次いで、この発現ベクターは、宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、プラスマ細胞腫細胞、またはミエローマ細胞)(これらの細胞は別の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しない)にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。DNAはまた、例えば、相同性マウス配列(米国特許第4,816,567号)の代わりにヒト重鎖および軽鎖の定常ドメインのコード配列を置換することにより、または免疫グロブリンコード配列全体もしくは非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の一部に共有結合することにより、改変され得る。必要に応じて、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに使用されるか、または本発明の抗体の抗原結合部位の可変ドメインの代わりに使用されて、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2について特異性を有する1つの抗原結合部位および異なる抗原についての特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0046】
インビトロの方法がまた、一価抗体を調製するのに適切である。抗体のフラグメント、特に、Fabフラグメントを産生する抗体の消化が、当該分野で公知の慣例技術を使用して達成され得る。例えば、消化が、パパインを使用して達成され得る。パパイン消化の実施例が、WO94/29348(1994年12月22日発行)、米国特許第4,342,566号およびHarlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)に記載されている。抗体のパパイン消化は、代表的に、2つの同一の抗原結合フラグメント(Fabフラグメントと呼ばれ、各々が単一の抗原結合部位を有する)および残渣のFcフラグメントを産生する。ペプシン処理は、F(ab’)2フラグメントと呼ばれるフラグメントを生じ、このフラグメントは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と交差結合し得る。
【0047】
抗体消化において産生されるFabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメインを含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖ドメインのカルボキシ末端にて、数個の残基の追加によりFabフラグメントと異なる。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合される2つのFab’フラグメントを含む二価フラグメントである。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab’について本明細書中での記号である。抗体フラグメントは、もともとFab’フラグメントの対として産生され、このフラグメントは、その間にヒンジシステインを有する。抗体フラグメントの他の化学結合がまた、知られている。
【0048】
抗体の単離された免疫原性特異的パラトープまたはフラグメントがまた、提供される。抗体の特異的免疫原性エピトープが、分子の化学的崩壊または機械的崩壊により、全抗体から単離され得る。このように得られた精製されたフラグメントを試験して、本明細書中で教示される方法により免疫原性および特異性が決定される。抗体の免疫反応性パラトープは、必要に応じて、直接合成される。免疫反応性フラグメントは、抗体アミノ酸配列から得られる少なくとも約2つ〜5つの連続したアミノ酸のアミノ酸配列として規定される。
【0049】
本発明の抗体を含むタンパク質を産生する1つの方法は、タンパク質化学技術により2つ以上のペプチドまたはポリペプチドを結合させることである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学のいずれかを使用して、現在利用可能な実験室装置を使用して化学的に合成され得る。(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)。当業者は、容易に本発明の抗体に対応するペプチドまたはポリペプチドが、例えば、標準的な化学反応により合成され得ることを容易に理解し得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、合成され得、そしてその合成樹脂から開裂され得ない一方、抗体の他のフラグメントは、合成され得、そして続いてこの樹脂から開裂され得、これにより他のフラグメントで機能的にブロックされる末端基を露わにする。ペプチド濃縮反応により、これら2つのフラグメントが、カルボキシル末端およびアミノ末端にて、ペプチド結合を介して共有結合され、それぞれ、抗体または抗体のフラグメントを形成する(Grant.Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.,NY.(1992);Bodansky and Trost.,Ed.(1993)Principles of Peptid Synthesis.Springer−Verlag Inc.,NY.)。あるいは、このペプチドまたはポリペプチドは、上記のようにインビボで独立して合成される。一旦単離されると、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドが結合されて、類似のペプチド濃縮反応を介して抗体またはそのフラグメントを形成し得る。
【0050】
例えば、クローン化したペプチドセグメントまたは合成ペプチドセグメントの酵素ライゲーションによって、比較的短いペプチドフラグメントが結合されて、より大きなペプチドフラグメント、ポリペプチドまたは全タンパク質ドメインを産生することを可能にする(Abrahmsenら、Biochemistry,30:4151(1991))。あるいは、合成ペプチドのネイティブな化学的ライゲーションが利用されて、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築し得る。この方法は、2工程の化学反応から成る(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science,266:776−779(1994))。第1の工程は、アミノ末端Cys残基を含む別の保護されていないペプチドセグメントを有する保護されていない合成ペプチド−α−チオエステルの化学選択的反応であり、最初の共有結合産物のようなチオエステル結合中間体を得る。反応条件の変化なしに、この中間体は、自発的な、迅速分子内反応を経て、ライゲーション部位におけるネイティブなペプチド結合を形成する。このネイティブな化学的ライゲーション法のタンパク質分子の全合成への適用が、ヒトインターロイキン8(IL−8)の調製により例示されている(Baggioliniら(1992)FEBS Lett.307:97−101;Clark−Lewisら,J.Biol.Chem.,269:16075(1994);Clark−Lewisら,Biochemistry,30:3128(1991);RajarathnamらBiochemistry 33:6623−30(1994))。
【0051】
あるいは、保護されないペプチドセグメントが、化学的に結合され、ここで、化学的ライゲーションの結果としてペプチドセグメントの間で形成された結合が、非天然の(非ペプチド)結合である(Schnolzer,MらScience,256:221(1992))。この技術が使用されて、タンパク質ドメインのアナログおよび完全生物学的活性(full biological activity)を有する大量の比較的純粋なタンパク質を合成した(deLisle Miltonら,Techniques in
Protein Chemistry IV.Academic Press,New
York,pp257−267(1992))。
【0052】
本発明はまた、生物活性を有する抗体のフラグメントを提供する。本発明のポリペプチドフラグメントは、ポリペプチドをコードする核酸をポリペプチドのポリペプチドフラグメント(例えば、アデノウイルス発現系またはバキュロウイルス発現系)を産生し得る発現系においてクローニングすることにより得られる組換えタンパク質であり得る。例えば、抗体のIL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2との相互作用と関連する生物学的効果を引き起こし得る特異的ハイブリドーマから抗体の活性ドメインを決定し得る。例えば、抗体の活性または結合特異性または親和性のいずれにも寄与しないことが見出されているアミノ酸が、それぞれの活性における損失なしに欠失され得る。例えば、種々の実施形態において、アミノ末端アミノ酸またはカルボキシ末端アミノ酸が、ネイティブのまたは改変された非免疫グロブリン分子または免疫グロブリン分子のいずれかから順次取り除かれ、そして各々の活性が、多くの利用可能なアッセイの1つでアッセイされる。別の例において、抗体のフラグメントが、改変された抗体を含み、ここで少なくとも1つのアミノ酸が、特定の位置で天然に生じるアミノ酸の代わりに使用され、そしてアミノ末端アミノ酸もしくはカルボキシ末端アミノ酸の一部または抗体の内部領域さえが、ポリペプチドフラグメントまたは他の部分(例えばビオチン)で置換され、これは改変された抗体の精製を容易にし得る。例えば、改変された抗体は、ペプチド化学または2つのポリペプチドフラグメントをコードするそれぞれの核酸を発現ベクターにクローニングすることを介して、改変された抗体がマルトース結合タンパク質に融合され、その結果、コード領域の発現がハイブリッドポリペプチドを生じる。このハイブリッドポリペプチドは、これをアミロースアフィニティーカラムに通すことによりアフィニティー精製され得、次いで、改変された抗体レセプターは、ハイブリッドポリペプチドを特異的プロテアーゼ因子Xaで開裂することによりマルトース結合領域から分離され得る(例えば、New England Biolabs Product Catalog,1996,pg.164を参照のこと)。類似の精製手順が、ハイブリッドタンパク質を同様の真核生物細胞から単離するために利用可能である。
【0053】
フラグメントとしては、他の配列に結合されたか、結合されていないかに関わらず、フラグメントの活性が改変されていない抗体または抗体フラグメントと比較して有意に変更も減少もしていない場合、特定の領域または特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換または他の選択された改変が挙げられる。これらの改変は、例えば、ジスルフィド結合し得るアミノ酸を除去または追加すること、その生物寿命を増大すること、その分泌特性を変えることなどのようないくつかの追加の特性を提供し得る。いずれの場合においても、このフラグメントは、結合活性、結合ドメインでの結合の調節などのような、生物活性特性を有しなければならない。抗体の機能的領域または活性領域は、タンパク質の特異的領域の変異誘発、続く発現されたポリペプチドの発現および試験により同定され得る。このような方法は、当業者に容易に明らかであり、そして抗原をコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る(ZollerらNucl.Acids Res.10:6487−500(1982))。
【0054】
種々の免疫アッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質、改変体、またはフラグメントと選択的に結合する抗体を選択し得る。例えば、固相ELISA免疫アッセイが、慣習的に使用され、タンパク質、タンパク質改変体、またはそのフラグメントと選択的に免疫活性である抗体を選択する。Harlow and Lane.(Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988))(選択的結合を測定するのに使用され得る免疫アッセイフォーマットおよび条件についての記載に関する)を参照のこと。モノクローナル抗体の結合アフィニティーは、例えば、Munsonら(Anal.Biochem.,107:220(1980))のScatchard分析により決定され得る。
【0055】
本発明のモノクローナル抗体またはそのフラグメント、および抗体またはそのフラグメントのIL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13RαまたはIL−13Rα2レセプター分子に対する結合を検出するための1つ以上の試薬の容器を含む抗体試薬キットがまた、提供される。これらの試薬としては、例えば、蛍光タグ、酵素タグ、または他のタグが挙げられ得る。これらの試薬はまた、酵素反応のための第2の抗体または第3の抗体または試薬を含み得、ここで酵素反応は、可視化され得る生成物を生成する。
【0056】
(抗体の投与)
本発明の本明細書中で記載される抗体は、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアで被験体に投与される。適切なキャリアおよびそれらの処方物が、Remington:The Science and Practice of Pharmacy((19th ed.)ed,A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995)に記載される。代表的には、適切な量の薬学的に受容可能な塩が、処方物中に使用されて、処方物を等張にさせる。薬学的に受容可能なキャリアの例としては、生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5〜約8であり、そしてより好ましくは約7〜約7.5である。さらなるキャリアとしては、徐放調製物(例えば、マトリックスが成形された物品の形態(例えば、フィルム、リポソーム、または微小粒子)である抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)が挙げられる。特定のキャリアが、例えば、投与の経路および投与される抗体の濃度に依存して、より好ましくあり得ることが、当業者に明らかである。
【0057】
抗体は、有効な形態で抗体の血流への送達を確実にする、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)により、直腸内にまたは注入のような他の方法により、被験体、患者または細胞に投与され得る。局所的注射または静脈内注射が、好ましい。
【0058】
有効な投薬量または抗体を投与するための計画が、経験的に決定され得、そしてこのような決定を行なうことは、当該分野の技術の範囲内である。当業者は、投与されなければならない抗体の投与量が、例えば、抗体を受ける被験体、投与の経路、使用される抗体の特定の型、および投与される他の薬物に依存して変動することを、理解する。抗体に対する適切な投薬を選択するための指針が、抗体の治療的使用についての文献(Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferroneら,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22およびpp.303−357;Smithら,Antibodies in Human Diagnostics and Therapy,Haberら,eds.,Raven Press,New York(1977)pp.365−389)に見出される。単独で使用される抗体の代表的な毎日の投薬量は、上記の因子に依存して、1日当たり約1μg/kg体重〜100mg/kg体重以上にわたり得る。
【0059】
結腸炎の炎症を処置し、阻害し、または妨げるための物質の投与に続いて、治療物質の効力が、当業者に周知の種々の方法で評価され得る。例えば、当業者は、本発明の物質が、この物質が炎症を減少し、または炎症のさらなる増大を防ぐことを観察することにより、被験体中における確立された結腸炎の炎症を処置または阻害するのに有効であることを理解する。炎症は、当該分野で公知の方法(例えば、組織生検を使用して組織損傷を評価するか、抗体アッセイを使用して被験体または患者由来のサンプル(例えば、血液に限定されない体液)中の炎症サイトカインの存在を検出する)により、または患者中のサイトカインレベルを測定することにより、測定され得る。処置の有効性はまた、結腸炎由来の炎症を有する被験体中の(例えば、結腸または末梢血中の)NK−T細胞の数を測定することにより、決定され得る。確立された結腸炎の炎症を有する被験体または患者におけるNK−T細胞またはIL−13レベルの最初の増大またはさらなる増大を阻害する、または確立された結腸炎の炎症を有する被験体または患者におけるNK−T細胞の数またはIL−13レベルの減少を生じる処置が、有効な処置である。
【0060】
本発明の物質は、炎症性腸疾患を有する危険のある、または炎症性腸疾患と新たに診断された患者または被験体に、予防として投与され得る。炎症性腸疾患と新たに診断されたが血液または他の体液中に確立された結腸炎または(結腸炎に起因する炎症を検出するための生検または他のアッセイにより測定されるような)確立された結腸炎の炎症性応答をまだ示していない被験体において、本発明の物質での有効な処置は、結腸炎症状および/または結腸炎の出現を部分的にまたは完全に阻害する。
【0061】
(送達のための核酸アプローチ)
患者自身の細胞または被験体自身の細胞が核酸を吸収し、コードされた物質(例えば、抗体または抗体フラグメント)を産生または分泌するように、本発明の物質(本発明の抗体および抗体フラグメントを含む)がまた、物質(例えば、抗体または抗体フラグメント)をコードする核酸調製物(例えば、DNAまたはRNA)として患者または被験体にインビボおよび/またはエキソビボで投与され得る。
【0062】
外来性DNAの被験体細胞への投与および取り込み(すなわち、遺伝子導入またはトランスフェクション)を包含する上に記載された方法において、本発明の核酸が、裸の(naked)DNAもしくはRNAの形態であり得るか、または核酸が、核酸を細胞に送達するためのベクター中にあり得、それにより抗体をコードするDNAフラグメントは、当業者に十分理解されるようにプロモーターの転写調節下にあり得る。このベクターは、アデノウイルスベクター(Quantum Biotechnologies,Inc.(Laval,Quebec,Canada))のような市販の調製物であり得る。核酸またはベクターの細胞への送達は、種々の機構を介し得る。1つの例として、送達は、LIPOFECTIN、LIPOFECTAMINE(GIBCO−BRL,Inc.,Gaithersburg,MD)、SUPERFECT(Qiagen,Inc.Hilden,Germany)およびTRANSFECTAM(Promega Biotech,Inc.,Madison,WI)ならびに当該分野で標準的な手段に従って開発された他のリポソームのような市販のリポソーム調製物を使用する、リポソームを介してであり得る。さらに、本発明の核酸またはベクターは、電気穿孔(このための技術は、Genetronics,Inc.(San Diego,CA)から入手可能である)によりならびにSONOPORATIONマシン(ImaRx Pharmaceutical Corp.,Tucson,AZ)の手段により、インビボで送達され得る。
【0063】
1つの例として、ベクター送達は、組換えレトロウイルスゲノムをパッケージし得るレトロウイルスベクターシステムのようなウイルスシステムを介してであり得る(例えば、Pastenら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:4486,1988;Millerら,Mol.Cell.Biol.6:2895,1986を参照のこと)。次いで、組換えレトロウイルスを使用して、細胞を感染し得、それにより感染した細胞に本発明の広範に中和した抗体(またはその活性フラグメント)をコードする核酸を送達し得る。変化した核酸を哺乳動物細胞中に導入する的確な方法は、当然、レトロウイルスベクターの使用に限定されない。他の技術が、アデノウイルスベクター(Mitaniら,Hum.Gene Ther.5:941−948,1994)、アデノ随伴ウイルス(AVV)ベクター(Goodmanら,Blood 84:1492−1500,1994)、レンチウイルスベクター(Naidiniら,Science 272:263−267,1996)および偽型(pseudotyped)レトロウイルスベクター(Agrawalら,Exper.Hematol.24:738−747,1996)の使用を包含するこの手順について広範に利用可能である。物理的形質導入技術(いくつかの例を挙げると、例えば、リポソーム送達およびレセプター媒介機構および他のエンドサイトーシス機構)がまた使用され得る。本発明は、これらのまたは他の一般に使用される遺伝子移入方法のいずれかと組み合わされて使用され得る。
【0064】
1つの例として、本発明の抗体をコードする核酸が、アデノウイルスベクター中で被験体の細胞に送達される場合、アデノウイルスのヒトへの投与のための投薬量は、注射あたり10〜10プラーク形成単位(pfu)にわたり得るが、注射あたり1012pfuまで高くあり得る(Crystal,Hum.Gene Ther.8:985−1001,1997;Alvarez and Curiel,Hum.Gene Ther.8:597−613,1997)。被験体は、単回注射を受け得、さらなる注射が必要な場合、これらの注射は、不定の期間の間そして/または処置の効果が確立されるまで、6ヶ月間隔(または当業者により決定されるような他の適切な時間間隔)で繰り返され得る。
【0065】
本発明の核酸またはベクターの非経口投与は、使用される場合、一般に注射により特徴付けられる。注射可能薬物は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の懸濁液の溶液として適切な固体形態、またはエマルジョンのいずれかのような、従来の形態で調製され得る。非経口投与のためのより最近改正されたアプローチは、一定の投薬を維持するような遅延放出システム(slow release system)または徐放システム(sustained release system)の使用を含む。例えば、米国特許第3,610,795号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。適切な処方物および治療化合物の投与の種々の経路のさらなる議論については、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995を参照のこと。
【0066】
(薬学的に受容可能なキャリア)
抗体を含む本発明の物質は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて治療に使用され得る。「薬学的に受容可能な」により、生物学的にまたは他の点で所望されないことのない材料、すなわち、材料が、いずれかの所望されない生物学的影響を引き起こさず、またはこの物質が含まれる薬学的組成物のいずれかの他の成分と有害な様式で相互作用することもなく、物質と共に被験体に投与され得ることが意味される。このキャリアは、当業者に周知である通り、活性成分のあらゆる分解を最小化し、被験体中のあらゆる有害な副作用を最小化するように、予想通りに選択される。
【0067】
薬学的キャリアは、当業者に公知である。これらは最も代表的には、ヒトへの薬物の投与のための標準的なキャリアであり、このキャリアとしては、滅菌水のような溶液、生理食塩水、および生理的pHでの緩衝溶液が挙げられる。これらの組成は、筋肉内にまたは皮下に投与され得る。他の化合物は、当業者により使用される標準的な手段に従って投与される。
【0068】
薬学的組成物としては、選択された分子に加えて、キャリア、濃化剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤などが挙げられ得る。薬学的組成物はまた、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などのような1つ以上の活性成分を含み得る。
【0069】
薬学的組成物は、局所的処置が所望されるか全身的処置が所望されるかに依存して、そして処置される領域に依存して、多くの方法で投与され得る。投与は、局部(直腸、鼻内を含む)で、経口で、吸入により、もしくは非経口で(例えば静脈内点滴により)、皮下で、腹腔内で、または筋肉内注射であり得る。開示された物質は、静脈内で、腹膜内で、筋肉内で、皮下で、腔内で、または経皮で投与され得る。
【0070】
非経口投与のための調製物としては、滅菌水性溶液、非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物オイルおよびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性キャリアとしては、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられ、これらは、生理食塩水および緩衝化媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガーオイルまたは固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補給物、電解質補給物(リンガーデキストロースに基づく)などが挙げられる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどのような、保存剤および他の付加物がまた、存在し得る。
【0071】
局所的投与のための処方物としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体および粉剤が挙げられ得る。従来の薬学的キャリア、水性(aqueous)、粉剤または油状ベース、濃化剤などが、必要であり得または所望され得る。
【0072】
経口投与のための組成物としては、粉末または顆粒、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、サシェ剤、あるいは錠剤が挙げられる。濃化剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が所望であり得る。
【0073】
いくつかの組成物は、潜在的に、薬学的に受容可能な酸または塩基の塩として投与され得、これらの塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸)および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸)と反応させることによって、または無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム)および有機塩基(例えば、モノ−、ジ−、トリアルキルおよびアリールアミンならびに置換エタノールアミン)との反応によって形成される。
【0074】
(スクリーニング方法)
IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を減少することの有効性について物質をスクリーニングする方法もまた本発明によって提供され、この方法は、以下:a)結腸炎を有する動物を得る工程;b)この物質を動物に投与する工程;および結腸炎の炎症性応答の減少を生じるIL−13活性に対する効果について動物をアッセイして、それによって、IL−13活性を調節することにより結腸炎の炎症性応答を減少することにおいて有効な物質を同定する工程を包含する。
【0075】
IL−13の結腸炎誘導の影響を減少させる物質の能力は、目的の物質の投与の前後に、結腸炎を有する動物の組織学的および臨床的発現(上記のような)を評価し、そして炎症の減少量を定量することによって決定され得る。
【0076】
結腸炎が生じる動物は、任意の動物であり得、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、サル、およびチンパンジーが挙げられ得るが、これらに限定されない。結腸炎は、当該分野で公知の任意の方法によって動物において生じ得る。例えば、結腸炎は、動物の結腸に、有効量のハプテン試薬を導入することによって生じ得る。ハプテン試薬としては、オキサゾロン(4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン)であり得るが、これに限定されない。
【0077】
本発明はまた、NK−T細胞活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を減少することの有効性について物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、以下:a)結腸炎を有する動物を得る工程;b)この物質を動物に投与する工程;およびc)結腸炎の炎症性応答の減少を生じるNK−T細胞活性に対する効果について動物をアッセイして、それによって、NK−T細胞活性を調節することにより結腸炎の炎症性応答を減少することにおいて有効な物質を同定する工程を包含する。
【0078】
NK−T細胞の結腸炎誘導の影響を減少させる物質の能力は、目的の物質の投与の前後に、結腸炎を有する動物の組織学的および臨床的発現(上記のような)を評価し、そして炎症の減少量を定量することによって決定され得る。当業者はまた、その物質が、固有層(lamina propia)細胞またはPBMにおいて決定されるように、NK−T細胞の数を減少させるか否かを決定するために、当該分野で標準的な方法および本明細書中に記載される方法によって、NK−T細胞の数を定量し得る。
【0079】
結腸炎が生じる動物は、任意の動物であり得、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、サル、およびチンパンジーが挙げられるが、これらに限定されない。結腸炎は、当該分野で公知の任意の方法によって動物において生じ得る。例えば、結腸炎は、動物の結腸に、有効量のハプテン試薬を導入することによって生じ得る。ハプテン試薬としては、オキサゾロン(4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン)であり得るが、これらに限定されない。
【0080】
本発明はまた、IL−13活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を予防することに有効な物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、以下:a)この物質を結腸炎に感受性の動物に投与する工程;b)この動物を、炎症性応答を誘導する処置に供する工程;およびc)IL−13の分泌量について、動物からの組織細胞をアッセイし、それによって、その物質の非存在下での結腸炎を有するコントロール動物におけるIL−13の量の増加と比較した、動物の炎症性組織細胞におけるIL−13の増加の減少または欠失によって、IL−13活性を調節することによる結腸炎の炎症性応答を予防することに有効な物質を同定する、工程を包含する。
【0081】
炎症性組織においてIL−13の量を測定する方法としては、ELISA、PCR、FACS分析、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応およびELISPOT、ノザンブロット、サザンブロット、およびウェスタンブロットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明はまた、NK−T細胞活性を調節することによって結腸炎の炎症性応答を予防することに有効な物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、以下:a)この物質を結腸炎に感受性の動物に投与する工程;b)この動物を、炎症性応答を誘導する処置に供する工程;およびc)NK−T細胞に対する影響について、動物をアッセイし、それによって、その物質の非存在下での結腸炎を有するコントロール動物におけるNK−T細胞活性の増加と比較した、その動物の炎症性組織細胞におけるNK−T細胞活性の増加の減少または欠失によって、NK−T細胞活性を調節することによる結腸炎の炎症性応答を予防することに有効な物質を同定する、工程を包含する。
【0083】
当業者は、炎症性組織におけるNK−T細胞を定量化するために、当該分野で標準的な方法および実施例に記載される方法を利用し得る。
【0084】
(治療用途)
本発明の物質は、有効量または有効濃度で送達され得る。物質の有効濃度または有効量は、結腸炎の炎症性応答の処置または予防を生じる濃度または量である。当業者は、当該分野で公知の方法および本明細書中で提供される方法に従って、有効濃度または有効量を決定する方法を知っている。当業者は、特定の物質のインビボ投薬(投与の濃度および時間経過を含む)を最適化するためのインビトロアッセイを利用し得る。物質の投与のための投薬量範囲は、障害の症状に影響する所望の効果を生じるように十分に大きい範囲である。投薬量は、有害な副作用(例えば、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応など)を引き起こすほど大きくあるべきではない。一般的に、投薬量は、患者の年齢、状態、性別および疾患の程度とともに変化し、そして当業者によって決定され得る。投薬量は、いずれの対抗適応(counter indication)の場合にも、個々の医師によって調節され得る。投薬量は、変動し得、一日または数日間、毎日一回以上の用量で投与され得る。
【0085】
例えば、結腸炎(例えば、潰瘍性結腸炎)によって特徴付けられる障害を有するヒトの、IL−13活性を調節する物質で処置することの効力を評価するために、以下の研究を実行し得る。プレドニゾンおよび/または障害の制御のための当該分野で公知の他の炎症調節因子(非経口または経口)を含み得る標準的な医療治療に失敗した、結腸および/または小腸下部の閉塞の活性炎症を有する患者が選択され得る。薬物効力は、結腸鏡を介してモニターされ得る。患者は、2つの異なるプロトコルに対して無作為化され得る。1つのプロトコルにおいて、被験体は、最初の投薬のままであり得、そして第2のプロトコルにおいて、被験体は、IL−13活性を調節する物質を受容した後に、徐々に減らされ得るそれらの投薬を有し得る。
【0086】
1つの実施形態において、処置は、IL−13活性および/またはNK−T細胞活性を調節する物質の、体重1kg当たり1mg〜20mgの単一投薬量からなり得る。1つの例において、IL−13に対する抗体は、結腸炎の症状が鎮静化するまで、2時間の間隔にわたって、各時間に、IL−13に対する抗体の体重1kg当たり1mg〜20mgの2時間間隔または一週間の投薬量にわたって注入される。被験体の血圧、脈拍、および温度は、2時間の注入の前にそして2時間の注入の間の30分の間隔でモニターされ得る。被験体は、差示的血小板計数を用いる完全血液計数(CBC)、SMA−18化学プロフィール、赤血球沈降速度(ESR)およびC反応性タンパク質アッセイからなる実験室評価を、1)IL−13注入の時間;2)注入の24時間後;3)注入の72時間後;4)最後の注入の2週間後;5)最後の注入の4週間後;(6)最後の注入の6週間後;および7)最後の注入の8週間後に、与えられ得る。同様に、NK−T細胞活性を調節する抗体は、同じプロトコルに従って投与され得る。
【0087】
被験体はまた、IL−13活性および/またはNK−T細胞活性を調節する物質の注入のとき、および最後の注入の2週間後、4週間後、6週間後、および8週間後に、ビデオ監視を用いて慣用的な結腸鏡検査を受け得る。さらに、被験体由来の血清サンプルは、薬物効力をモニターするために、IL−13活性および/またはNK−T細胞活性レベルについてELISAによってアッセイされ得る。また、結腸鏡検査の間に得られた組織生検サンプルは、精製、単離された固有層細胞のために培養され得、同様にアッセイされ得る。精製されたPBMはまた、単離、培養、およびアッセイされ得る。
【0088】
(開示された組成物を用いるスクリーニングによって同定された組成物/コンビナトリアルケミストリー/コンピューター支援薬物設計)
開示された組成物(例えば、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13Rα、もしくはIL−13Rα2またはそのフラグメント)は、開示された組成物の構造を同定するため、または開示された組成物と所望の方法で相互作用する可能性のあるもしくは実際の分子(例えば、低分子)を同定するためのいずれかで、任意の分子モデリング技術のための標的として使用され得る。
【0089】
モデリング技術において開示された組成物を使用する場合、標的分子の機能の阻害または刺激のような特定の所望の特性を有する分子(例えば、巨大分子)が同定される。開示された組成物を使用する場合に同定および単離される分子(例えば、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13Rα、もしくはIL−13Rα2またはそのフラグメント)もまた開示される。従って、開示された組成物(例えば、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13Rα、またはIL−13Rα2)を含む分子モデリングアプローチを使用して作製された生成物もまた本明細書中において開示されたと考えられる。
【0090】
従って、選択された分子に結合する分子を単離するための1つの方法は、合理的な設計による。これは、構造情報およびコンピュータモデリングを介して達成される。コンピュータモデリング技術は、選択された分子の三次元モデリング原子構造の可視化およびその分子と相互作用する新規な化合物の合理的な設計を可能にする。三次元構築物は、代表的に、選択された分子のX線結晶解析またはNMR画像化からのデータに依存する。分子動力学は、力場データを必要とする。コンピュータグラフィックスシステムは、新規化合物が標的分子にどのように連結するかの予測を可能にし、そして結合特異性を完全にするための化合物および標的分子の構造の実験的操作を可能にする。どの分子−化合物相互作用の予測も、小さな変化が一方または両方において成される場合に、分子力学ソフトウェアおよび計算集中コンピューター(通常、分子設計プログラムと使用者との間の使用者が使いやすい方式のインターフェースと結合される)を必要とする。
【0091】
分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation 、Waltham、MAである。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリングおよび分析を実行する。QUANTAは、相互作用構築、改変、可視化、および互いの分子の挙動の分析を可能にする。
【0092】
多くの文献が、特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングの総説を述べている:Rotivinenら,1988 Acta Pharmaceutica Fennica 97,159−166;Ripka,New Scientist
54−57(June 16,1988);McKinaly and Rossmann,1989 Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.29,111−122;Perry and Davies,QSAR:Quantitative Structure−Activity Relationships in Drug Design pp.189−193(Alan R.Liss,Inc.1989);Lewis and Dean,1989 Proc.R.Soc.Lond.236,125−140および141−162;および核酸成分についてのモデル酵素に関して、Askewら,1989 J.Am.Chem.Soc.111,1082−1090。化合物をスクリーニングし、そしてグラフィカルに示す他のコンピュータプログラムは、BioDesign,Inc.、Pasadena,CA.、Allelix,Inc、Mississauga、Ontario、Canada、およびHypercube,Inc.、Cambridge、Ontarioのような会社から入手可能である。これらは、主に、特定のタンパク質に対して特異的な薬物に対する適用のために設計されるが、これらは、一旦、DNAまたはRNAの特定の領域が同定されると、そのDNAまたはRNAの特定の領域と特異的に相互作用する分子の設計に適合され得る。
【0093】
結合を変化させ得る化合物の設計および生成に関して上記されるが、IL−13または本明細書中に記載される任意の他の分子に対する結合特異性を変化させる化合物について、公知の化合物(天然産物または合成化合物を含む)、および生物学的に活性な物質(タンパク質を含む)のライブラリをスクリーニングし得る。
【0094】
(類似の機能を有する組成物)
本明細書中に開示される化合物が、特定の機能(例えば、IL−13、CD1、CD1d、Vα14、Vα14Jα281、Vα24、Vα24Jα18、IL−13Rα、またはIL−13Rα2への結合)を有することが理解される。開示された機能を実行するための特定の構造的要件が本明細書中に開示され、そして開示された構造に関連する同じ機能を実行し得る種々の構造が存在し、そしてこれらの構造が、最終的に、同じ結果(例えば、NK−T細胞またはIL−13の産生、分泌または作用の阻害)を達成することが理解される。
【0095】
以下の実施例は、本明細書中で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法が、どのように作製および評価されるかについての完全な開示および説明を、当業者に提供するために記載され、本発明の純粋な例示であることを意図し、そして本発明者らが発明であるとみなすものの範囲を制限することを意図しない。数(例えば、量、温度など)に関する正確性を保証するための努力がなされたが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。他に示さない限り、部は、重量部であり、温度は、℃または室温であり、そして圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【実施例】
【0096】
本発明において、オキサゾロン結腸炎のマウスモデルは、Th2サイトカイン産生を研究するために利用された。オキサゾロン結腸炎のTh2モデルにおいて、結腸炎は、エタノールビヒクル中のハプテン化剤オキサゾロンの直腸内投与によって誘導される。この結腸炎において、誘導剤の初期の毒性の影響は、細菌抗原での粘膜固有層の大量出血を導き、従って、さらなる炎症を導く免疫応答の誘導を導く。後者は、Th2サイトカインの産生によって駆動される。なぜなら、この炎症は、増加したIL−4およびIL−5分泌によって特徴付けられ、そして炎症が、抗IL−4の投与によって改善され得るからである(Boirivantら,1998)。
【0097】
本発明は、オキサゾロン結腸炎が、抗CD3またはαGalCerのいずれかによって刺激される場合に大量のTh2サイトカインを産生し得るNK−T細胞によって媒介されるという、驚くべき結果を提供する。最初に、これは、IL−4分泌からなり、これは、IL−13分泌によって迅速に取って代わられる。このIL−13応答は、CD−1媒介抗原提示に応答するNK−T細胞に由来し、そしてIL−13の中和がオキサゾロン結腸炎の発生を予防するので、炎症の重要な成分であるようである。マウスにおけるオキサゾロン結腸炎とヒトにおける潰瘍性結腸炎の類似点を考慮すると、これらのデータは、ヒトの炎症性疾患の類似の処置が有効であることを示す。
【0098】
(マウスおよびインビボ処置プロトコル)
雌性C57Bl/10マウスを、国立癌研究所(National Cancer Institute;NCI、Bethesda、MD)によって管理される飼育施設から得、特殊な無菌(SPF)条件下で収容した。5週齢〜7週齢のマウスを、すべての実験用に使用した。B6x129Sv−CD1 KOマウス(Cuiら、1997;Smileyら、1997)は、Exley/Balkから受け取り、C57Bl/6−Jα281 KOマウス(Cuiら、1997)は、Taniguchi博士からの寛大な寄贈であり、Brigham and Women’s Hospital(Harvard Medical School、Boston、MA)で動物施設にて育てた。オキサゾロン(4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン)を、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から得た。マウスを前感作するために、2×2cm領域の腹部皮膚を剃毛し、100%エタノール中の200μlの3%(w/v)溶液を塗布した。前感作の5日後、マウスをイソフルラン(Baxter、Deerfield、IL)を用いる全身麻酔下で、50%エタノール中の1%オキサゾロン(150μl)または50%エタノールのみ(すなわち、ビヒクル)を用いて直腸内に再チャレンジした。直腸内注射は、ポリウレタンアンビリカルカテーテル(Sherwood、St.Louis、MO)により投与した。インビボでのIL−13の中和は、IL−13Rα2−Fcを用いて実施した。マウスに、5×200μgのコントロールタンパク質またはIL−13Rα2−FcNを、前感作の前日に開始して静脈内に与え、その後1日毎に腹腔内に与えた。NK1.1+細胞の枯渇は、前感作の48時間前および前感作の48時間後に、250μgの抗マウスNK1.1モノクローナル抗体(クローンPK136)を静脈内に注射することによって達成した。コントロールマウスに、マウスIgG2aを与えた。処置した動物由来の脾臓細胞のFACS分析は、NK細胞ならびにNK−T細胞が、完全に枯渇したことを示した。CD1分子による抗原提示は、インビボで抗マウスCD1.1(クローン20H2、A.Bendelacから寄贈)によってブロックされた。マウスに、2日毎に1mgの抗体を注射した。
【0099】
(組織学)
マウスを、結腸炎の誘導5日後に安楽死させた。この結腸を取り出し、セグメントをホルマリン中で固定した(Fisher、Fair Lawn、NJ)。パラフィン包埋した後、5μmの切片に薄切し、ヘマトキシリン/エオシンで染色した(Lerner、New Haven、CT)。
【0100】
(細胞単離およびサイトカイン生成)
脾臓細胞(SPC)、腸間膜リンパ節細胞(MLNC)または粘膜固有層細胞を、結腸炎誘導後2日目または7日目に単離した。細胞を、Current Protocols
of Immunology(Scheiffele、2002)に詳細に記載されるように単離した。簡単に述べると、LPMCを、上皮細胞を取り出した後、HBSS/2.5mM EDTA中で結腸片のインキュベーションによって単離した。単核細胞を、10%FCS、200U/mlコラーゲナーゼ(Roche、Indianapolis、IN)、10μg/ml DNAse1(Roche)および1μg/mlゲンタマイシン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を補充したISCOVES培地中で組織を消化することによって遊離させた。最終的に、白血球を、33%と66%とのPERCOLL勾配(Amersham、Piscataway、NJ)における遠心分離によって上皮細胞から分離した。MLN細胞および脾臓細胞を、ペトリ皿中で組織を粉砕し、この細胞懸濁液を40μmメッシュを通して濾過することによって単離した。脾臓細胞は、ACK溶解緩衝液で処理して、赤血球細胞を溶解させた(Biosource、Camarillo、CA)。最初に、CD3細胞を、マウスT細胞選択カラム(R&D、Minneapolis、MN)を用いて、製造者の指示書に従って単離した。精製したCD4細胞を、CD4ビーズおよびMACS小カラム(Miltenyi、Auburn、CA)を用いて、製造者の指示書に従ってポジティブ選択した。細胞を、10%FCS、20mM HEPES、5% NCTC、2mMグルタミン、50μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン、50μg/mlゲンタマイシン、50μM 2−メルカプトエタノール、および50U rhu IL−2を補充したRPM1640中で培養した。T細胞を、抗CD3(10μg/ml 2C11、Pharmingen、San Diego、CA)および可溶性抗CD28(1μg/ml クローン37.51、Pharmingen)を結合させたプレートを用いてインビトロで刺激した。αGalCerで白血球を刺激するために、抗原提示細胞としてマウスCD1でトランスフェクトした線維芽細胞株(L−929)を使用した。CD1トランスフェクトした細胞株(「LCD1」)またはトランスフェクトしていない細胞株(「LC」)は、W.Paul博士による親切な寄贈であった(ChenおよびPaul、1997)。L細胞を、マイトマイシンCで1.5時間処理し、1×10細胞/mlにて播種した。αガラクトシル−セラミド(αGalCer;Kirin、Tokyo、Japan)またはビヒクルを、100ng/mlにて添加した。リンパ球濃度は、概ね1×10細胞/mlであった。48時間の培養後、上清を収集し、さらなる分析まで−20℃で保管した。IL−4およびIL−5を、Pharmingen製のOptEIA ELISAセットを用いて測定した。IL−13を、R&D(Minneapolis、MN)製のQuantikine M ELISAキットを用いて測定した。
【0101】
(FACS分析)
細胞を、FcBlock(2.4G2)と共にインキュベーションした後、CD3(2C11)、CD4(RM4−5)、NK1.1(PK136)、Ly49C(5E6)、Ly6C(AL−21)、およびDX5に対する抗体で染色した(すべてBD Pharmingen)。表面染色を、FACScanner(Becton−Dickinson、Mansfield、MA)で分析した。散布図中に生存リンパ球をゲーティングした後、相対数をCellQuestソフトウェアを用いて算出した。
【0102】
(オキサゾロンを用いる上皮前感作および直腸内再チャレンジは、Th2サイトカイン生成と関連する慢性進行性オキサゾロン結腸炎を導く)
オキサゾロン結腸炎マウスモデルにおけるより長命な慢性炎症性応答を得るために、マウスを、直腸チャレンジの5日前に皮膚に塗布することによって3%オキサゾロンで前感作し、次いで、結腸炎を誘導するために1%オキサゾロンを直腸内に注射した。図1Aに示したように、前感作したマウスのみが、結腸炎および漸進的な体重の減少を発症したが、未処置の動物は、いずれの炎症も発症しなかった。さらに、図1Bに示したように、この事例で誘導された結腸炎は、慢性的な漸進性の衰弱および体重の減少を導き、その結果、7日〜10日後にほとんどのマウスが、最初の体重の40%を失い、瀕死の状態であった。7日目〜10日目での結腸の組織学的試験は、大量の腸壁水腫および白血球による浸潤を示した。粘膜の浅層は、小さな多核顆粒球を伴う濃密な浸潤および腸細胞の層を遮る大きな潰瘍が存在することを示す。図1D+Eに示したように、この組織病理学的な画像は、ヒトの潰瘍性結腸炎において見られるものと類似しており、このことは、同様の病理機構が、両方の炎症における組織損傷に対して寄与することを示唆している。最終的に、図2Aに示したように、粘膜固有層(LPMC)、腸間膜リンパ節(MLNC)、または脾臓(SPC)から単離し、次いで、インビトロで抗CD3/抗CD28で刺激した単核細胞は、大量のTh2サイトカイン(IL−4、IL−5、IL−13)を生成するが、IFN−γは低いレベルでしか生成しない。これに対して、TNBS結腸炎を有するマウスから単離したLPMCは、検出不可能なレベルのIL−4およびIL−5を生成し、かつIL−13は低いレベルでしか生成しないが、非常に高い量のTNFαを生成する。
【0103】
(オキサゾロン結腸炎におけるIL−13生成は、一連の浸潤の間に増加し、結腸炎の誘導のために必須である)
様々な時点で単離したLPMCによるIL−4生成は、一連のオキサゾロン結腸炎の間に徐々に減少した。対照的に、LPMC(ならびにMLMCまたは脾臓MC)によるIL−13生成は、同じ時間枠中に増加した(図2B)。この現象は、Th2細胞によって媒介された他の動物モデルにおいて観察されている(Mintyら、1997;Urbanら、1998)。オキサゾロン結腸炎におけるIL−13についての病原の役割を確立するために、IL−13を、直腸内のオキサゾロン投与時に、ヒトIgG1のFc部分と融合したIL−13Rα2(IL−13Rα2−Fc)のインビボ投与によって中和させた。IL−13レセプターのα2鎖は、IL−13に対してα1鎖より100倍高い親和性を有するが、α1鎖のみが、係合後に細胞内シグナルを伝達する。IL−13Rα2−Fc融合タンパク質が、IL−13に結合し、IL−13の同時活性をインビボで中和させることが示されている(Donaldsonら、1998)。図3に示したように、IL−13Rα2−Fcで処理したマウスを、オキサゾロン結腸炎の誘導から保護した:エタノール単独で見られるものと類似する最初の一過性の体重減少の後、これらのマウスは、3日目までに最初の体重を取り戻し、5日目には結腸の組織学はエタノール単独を与えたマウスのものと見分けがつかなかった。
【0104】
(NK1.1−ポジティブ細胞は、オキサゾロン結腸炎の誘導のために必須である)
上記で暗示したように、オキサゾロン結腸炎を有するマウスから単離した単核細胞は、抗CD3および抗CD28で刺激した場合、インビトロで増大した量のIL−13を生成する。しかし、これらの単核細胞をネガティブ選択カラムによって精製して、CD3ポジティブな細胞について富化した場合、この刺激は、非常に減少したIL−13生成を導いた(示さず)。この選択カラムは、抗マウスIgGで覆われたガラスビーズを含むため、Fcレセプター(CD16またはCD32)を発現しかつ免疫グロブリンで覆われている細胞を保持する;従って、オキサゾロン結腸炎において抗CD3で刺激したLPMCによるIL−13生成が、Fcレセプターポジティブな細胞を要することが可能であった。マスト細胞およびBリンパ球に加えて、NK細胞およびNK−T細胞はCD16を発現し(Koyasu、1994)、かつIL−13を生成することが可能である(Terabeら、2000)。後者の2つのうちのいずれかの(およびより傾向の強い)細胞型が関与するかどうかを調査するために、マウスを、オキサゾロンでチャレンジする前に、モノクローナル抗NK1.1抗体(PK136)の連続注射によってNK1.1細胞に関して枯渇させた。このような処置は、脾臓細胞のDX5染色およびNK1.1染色によって決定したように、すべてのNK細胞およびNK−T細胞を枯渇させた。図4A+Bで示したように、枯渇したマウスが体重減少もしくは結腸の浸潤の巨視的な証拠/微視的な証拠を現さなかったこと、およびオキサゾロンでの直腸内チャレンジ後に増大したTh2サイトカイン生成を現さなかったことが見出された。
【0105】
このNK1.1ポジティブな細胞についての病原の役割が、オキサゾロン結腸炎について特異的かどうかを決定するためのさらなる研究において、NK1.1を枯渇したC57Bl/10マウスを、ヒトクローン病に類似する結腸炎のTh1モデルであるTNBS結腸炎に対する感受性において、未処置のC57Bl/10マウスと比較した。図4C+Dに示したように、NK1.1+細胞の枯渇は、体重減少またはTNBS結腸炎を有するマウスの死亡率に有意に影響せず、特に、枯渇したマウスにおいてより高度な体重減少の傾向があった。これらの結果は、粘膜中にNK1.1を有する細胞が、どちらかと言えば、TNBS結腸炎におけるTh1炎症の誘導について阻害的な役割を果たし、Th1媒介性腸炎症の他のモデルにおいて以前に記載された効果(Saubermannら、2000)を果たすことを示唆する。
【0106】
(CD1抗原提示は、オキサゾロン結腸炎の誘導のために必要とされる)
上記の研究は、オキサゾロン結腸炎がNK1.1ポジティブ細胞によって媒介されることを示すが、NK1.1がNK細胞およびNK−T細胞の両方の細胞型に存在する場合に、後者の細胞がNK細胞であるかNK−T細胞であるかどうかの情報を提供しない。この問題に取り組むために、オキサゾロン結腸炎が、NK−T細胞の活性化には影響を及ぼすがNK細胞の活性化には影響しないCD1分子による抗原提示の遮断によって、影響されるかどうかを試験した。これは、モノクローナル抗CD1抗体の投与によって達成され、このモノクローナル抗CD1抗体は、NK−T細胞を枯渇することなく、かつMHCクラスIIによる抗原提示に影響を及ぼすことなく、インビボでCD1をブロックすることが示されている(Parkら、1998)。図5に示したように、直腸内オキサゾロン投与時でのこの抗体の投与は、オキサゾロン結腸炎の発症を予防した。
【0107】
図5Bに示したように、これらの結果は、CD1−KOマウスの研究に伴って確証され、それらの研究では、前感作したマウスに対するオキサゾロンの直腸内投与が、結腸炎を発症しないだけでなく、結腸のTh2応答をも発症しないことが示された。NK−T細胞の非存在にもかかわらず、CD1−KOマウスは、Th2応答を起こすことが十分に可能であることが示されている(Smileyら、1997)。従って、この結果は、CD1
KOのTh2応答を起こすことに関する内因性の失敗に帰結し得ない。
【0108】
最終的に、Jα281 KOマウスが、オキサゾロン結腸炎の誘導に対して耐性であることが見出された(図5B)。ほとんどのCD1制限NKT細胞は、正準Vα14Jα281TCRを利用するが、いくつかの結果は、他のTCRを有するNKT細胞の存在を示唆した。これらの「異型の」NKT細胞は、Jα281−KOマウス中に存在するが、浸潤応答を誘導するには不十分であることが証明された。まとめると、抗体処置したマウスおよびKOマウスからのデータは、オキサゾロン結腸炎が、CD1制限抗原によるT細胞の誘導に依存し、このT細胞が、NK1.1+Jα281+CD16+CD4+細胞であることを示す。
【0109】
(NK−T細胞は、オキサゾロン結腸炎中に増殖する)
さらなる研究において、NK−T細胞が、オキサゾロン結腸炎を有するマウスの粘膜固有層を浸潤するか否かを決定した。しかし、この目標は、NK1.1は頻繁に利用されるNK−T細胞のマーカーであるが、NK−T細胞機能を有するT細胞もまた、NK1.1ネガティブな集団において同定されているという事実によって困難な状態になる。さらに、ほとんどのNK−T細胞マーカーは、細胞活性化のレベルに依存する。従って、NK−T細胞は、活性化時にNK1.1の発現を失い(ChenおよびPaul、1997)、別のNK/NK−T細胞マーカーであるLy49Cが、活性化NK−T細胞中でアップレギュレートされる。活性化とは無関係に、様々な組織由来のNKT細胞が、TCRと一緒に機能するNK細胞の様々な代理マーカーを同時発現する。これらの制限を考慮して、一連のオキサゾロン結腸炎の間に、合計リンパ球数が粘膜固有層で(約10倍)、肝臓で(約6倍)、腸間膜リンパ節で(約50倍)そして脾臓で(約2倍)有意に拡大することを見出した。さらに、粘膜固有層および肝臓内で、他の細胞集団に関してNK−T細胞の相対数が拡大する。従って、未処置のマウスからの粘膜固有層において、7%(NK1.1)のT細胞または0.4%(Ly49C)のT細胞が、NKT細胞マーカーを同時発現する。オキサゾロン結腸炎の誘導後、21%の浸潤しているT細胞がNK1.1ポジティブであり、そして34%がLy49Cポジティブであった。肝臓では、NKT細胞の最も高いパーセンテージが見出され得、CD3ポジティブ細胞におけるNK1.1発現は、9.9%の細胞から48%の細胞まで増加するが、Ly49C発現は低い。未知の原因のために、NKT細胞は、結腸炎の誘導後でさえ腸間膜リンパ節に非存在である:この部位では、1%未満の細胞がNKT細胞として同定され得る。最終的に、未処置のマウスの脾臓において、3.1%のCD3ポジティブ細胞がNK1.1+であり、オキサゾロン結腸炎の誘導後、5.1%がNK1.1ポジティブになるが、Ly49C+細胞の数は0.6%から28%まで増加する。これらの知見を要約すると、NKT細胞機能の代理マーカーを有するT細胞は、粘膜固有層、肝臓および脾臓において拡大する。
【0110】
(CD4+NK−T細胞は、CD1抗原提示に応じてIL−13を生成する)
最終的に、CD1によって提示される抗原に応じるLPMCおよびSPCのサイトカイン生成を研究するために、これらの細胞をαGalCerで刺激し、このαGalCerは、CD1依存様式においてほとんどのNK−T細胞株を活性化することが見出されている合成糖脂質である(Kawanoら、1997)。MHCクラスII制限T細胞およびNK細胞は、αGalCerによって影響されない:従って、αGalCerでの刺激は、分離していない細胞混合物中のNKT細胞活性化を評価するための1つの方法を示す。図6に示したように、オキサゾロン結腸炎を有するマウス由来のLPMCまたはSPCが、αGalCerで刺激された場合、これらは大量のTh2サイトカイン(非常に高い量のIL−13を含む)を生成した。さらに、LPMCまたはSPCからMACSによって単離したCD4ポジティブな細胞はまた、非常に高いIL−13生成を伴ってαGalCerに対して応答した、このことは、オキサゾロン結腸炎を有するマウス由来の細胞集団中の多くのCD4+細胞が、CD1制限NK−T細胞であることを示す。
【0111】
(比較研究:クローン病および潰瘍性結腸炎)
クローン病患者を潰瘍性結腸炎患者と比較する研究において、潰瘍性結腸炎の患者の粘膜固有層細胞からの増大したIL−13生成が、クローン病の患者と比較した場合に観察された。この2つの群を比較するFACSデータはまた、クローン病の患者と比較した場合に、潰瘍性結腸炎の患者からの末梢血および粘膜固有層におけるNK−T細胞の増大した数を示す。
【0112】
この適用の全体にわたって、種々の刊行物が参照される。それらの刊行物の全体における開示、ならびにそれらの刊行物中で引用される参考文献が、本発明が属する当該技術分野の状況をより十分に記載するために、本明細書中で参考として援用される。
【0113】
(参考文献)
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10777(P2013−10777A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186893(P2012−186893)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2010−85587(P2010−85587)の分割
【原出願日】平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願人】(303020761)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (11)
【Fターム(参考)】