説明

IL−15/Fc融合タンパク質を調製するための発現システム及びその使用

本発明は、インターロイキン15/Fc(IL−15/Fc)融合タンパク質に対する少なくとも1つの核酸、少なくとも1つのプロモーター、CD5リーダーに対する少なくとも1つの核酸、及び必要に応じて選択可能マーカー遺伝子に対する少なくとも1つの核酸を含む、1以上の核酸を含有する発現システム;発現システムの成分を含む核酸、及び発現システム又は核酸を含有する宿主細胞に関する。更に、本発明は、発現システムを用いたIL−15/Fc融合タンパク質の調製方法、及び宿主細胞において発現させるための発現システム、核酸、宿主細胞、又はCD5リーダーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン15/Fc(IL−15/Fc)融合タンパク質に対する少なくとも1つの核酸を含む発現システムに関するものであり、これによりIL−15/Fc融合タンパク質を調製することができる。更に、本発明は、この発現システムを用いたIL−15/Fc融合タンパク質の調製方法、及び宿主細胞においてタンパク質を発現させるための発現システム、核酸、宿主細胞、又はCD5リーダーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物における免疫イベントは、免疫ネットワークのように作用する、非常に多数の複雑な細胞性及び無細胞性相互作用に基づいている。この複雑なネットワーク内の多くのメカニズムの機能は、近年になって解明されつつある。1994年に記載されたインターロイキン15因子(Grabsteinら、1994、Science 264:965−968)を含めたサイトカインは、免疫ネットワーク内の可溶性メッセンジャーとして主要な役割を果たしている。インターロイキン15(IL−15)は、免疫モジュレーター、成長因子、ケモカイン、及び生存因子として、T細胞、単球/マクロファージ、NK細胞、及び組織の他のIL−15感受性細胞、例えばケラチノサイトその他のような免疫系細胞の増殖、分化、活性化、及び生存に対して影響を及ぼす。免疫モジュレーターとしての機能の他に、IL−15は、筋組織及び脂肪組織の代謝調節にも役割を果たす。
【0003】
典型的には、IL−15は、ヘテロ3量体インターロイキン15受容体(IL−15R)を介してエフェクター細胞に結合する。IL−15Rは、IL−15に特異的に結合するβ−サブユニット、同様にIL−2によって認識されるα−サブユニット、及び同様にIL−2、IL−4、IL−7、IL−9及びIL−15などのインターロイキンファミリーの更なるメンバーによって認識されるγ−サブユニットから成る。
【0004】
IL−15は、例えば関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全腸炎、肺サルコイドーシス、又は全身性エリテマトーデスなどの非常に多数の自己免疫疾患及び慢性炎症性疾患、並びに移植臓器、組織、及び細胞の拒絶反応において役割を果たす。IL−15は、リンパ性白血病においても役割を果たす。
【0005】
インターロイキン15は、がん患者及び免疫不全疾患の場合にはリンパ球の割合を増やすためにアゴニスト原理により、免疫系の病的活性化を伴う疾患の場合にはIL−15の作用をブロックする物質を用いることによるアンタゴニスト原理により、治療的に用いられる。これらの物質は、可溶性IL−15受容体ポリペプチド、IL−15又はIL−15受容体に対する抗体、あるいは例えばIL−15成分と免疫グロブリン成分とを含有する融合タンパク質のようなIL−15部分を有する融合タンパク質(概説はFehninger及びCaligiuri、2001、Blood 97(1):14−32)であり得る。インターロイキン−免疫グロブリン融合タンパク質は有益であることが証明されている。
【0006】
インターロイキンと免疫グロブリンとの組換え融合タンパク質は、原核細胞発現システムで調製することができる。これらの発現システムの実質的な不利益は、原核細胞で産生されたタンパク質のグリコシル化がないことであり、これは、発現産物の機能性及び安定性を損ない、したがって、発現産物の医学的有用性を制限するかもしれない。逆に、通常正しいグリコシル化を保証する、例えば哺乳動物細胞などの代替発現システムにおけるインターロイキンと免疫グロブリンとの組換え融合タンパク質の産生には、発現効率が比較的低いという問題がある(Zhengら、1999、J.Immunol.163:4041−4048)。したがって、大量の組換えIL−15/Fc融合タンパク質を十分な純度で調製可能な真核生物の発現システムを提供する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0007】
したがって、本発明の目的は、この種の改良された発現システムを提供することである。
この目的は、1以上の核酸を含有する、IL−15/Fc融合タンパク質を調製するための発現システムを提供することによって達成され、これは、
a)IL−15/Fc融合タンパク質に対する少なくとも1つの核酸、
b)少なくとも1つのプロモーター、及び
c)CD5リーダーに対する少なくとも1つの核酸、
を含み、プロモーター及びCD5リーダーに対する核酸は、IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸に機能的に連結されている。
【0008】
本発明の発現システムにより、例えば真核生物における組換えDNA技術によって、IL−15/Fc融合タンパク質を大規模で調製することが可能である。したがって、本発明は、IL−15/Fc融合タンパク質を商業目的で調製することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
組換えDNA技術は、通常、遺伝情報を例えばベクターへ移送するための技術を意味する。これらのベクターは、例えば宿主への導入により遺伝情報が更に処理されることを可能にし、遺伝情報を新たな環境で増加させ、発現させる。遺伝情報は、通常、1以上の所望の遺伝子産物に対する情報を暗号化形態で含有する核酸の形態、例えばゲノムDNA又はcDNAの形態で存在する。ベクターとして作用し得るものの例は、例えばcDNAなどの核酸が組み込まれ得るプラスミドであり、宿主細胞において増加させ、必要に応じて、例えばプロモーター、エンハンサー、又はサイレンサーなどの転写調節配列の制御下で発現させる。プラスミドは、宿主細胞における所望の発現産物の合成並びに後者の安定性及び局在に影響を及ぼす配列、又は用いるプラスミド若しくは発現産物の選択を可能にする配列を更に含有することができる。
【0010】
発現システムという用語は、本発明によれば、必要に応じて例えばリボソーム、アミノ酸、及び/又はtRNAなどの転写に必要であり得る更なる配列と組み合わせた、1以上の核酸を表し、発現システムは、好適な条件下、例えば好適な宿主細胞でIL−15/Fc融合タンパク質の発現を引き起こすことが可能である。
【0011】
好ましい態様によれば、発現システムは1以上の核酸から成る。
宿主細胞における発現を可能にするには、発現システムの核酸は、組換えDNA技術法によって調製できる1以上のベクターの部分であることができ、これは当業者に公知である(Sambrookら(編集)、1989、分子クローニング:実験室マニュアル、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク)。当業者は、本発明に関して使用できる非常に多数のベクターについて知っている。真核細胞における発現に好適なのは、例えば酵母ベクターpYES(サッカロミセス・セレビシエで発現;インビトロジェン)及びpICZ(ピキア・パストリスで発現;インビトロジェン)である。pBacPAK9(昆虫細胞で発現;クローンテック)などのバキュロウイルスベクターや、発現すべき核酸配列に加えて好適な転写調節配列を挿入できる、Rc/CMV、Rc/RSV、pcDNA、及び他のSV40由来ベクターなどの、哺乳動物細胞における異種発現に用いられる多くのベクターも使用できる。
【0012】
選択した宿主においてプラスミド複製を介在する複製起点に加えて、好適なベクターは、通常、選択可能マーカー遺伝子、及び核酸断片を挿入できる制限酵素の認識部位を含有することが好ましい。IL−15/Fc融合タンパク質をコードする核酸は、制限酵素の好適な認識部位を介してベクターに導入することができる。
【0013】
本発明の発現システムに同様に好適なウイルスベクターシステムは、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、及びヘルペスウイルスベクター若しくはパピローマウイルスベクターを含む。
【0014】
IL−15/Fc融合タンパク質をコードする核酸は、好ましくはDNA又はRNAであり、特に好ましくはゲノムDNA、cDNA、又はその組み合わせである。
IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸は、IL−15/Fc融合タンパク質をコードする。本発明によるIL−15/Fc融合タンパク質は、2つの融合部分、即ちIL−15成分とFc成分とを含有する融合タンパク質である。機能性タンパク質に加えて免疫グロブリンの融合部分を含有する組換えタンパク質は、例えばCaponら(US5,428,130号)に記載されている。
【0015】
N端の改変又は未改変IL−15部分とC端のFc部分とから成る融合タンパク質が好ましい。そのようなタンパク質は、例えばWO97/41232号及びKimら(1998、J.Immunol.160:5742−5748)に開示されている。
【0016】
融合タンパク質のIL−15部分は、例えば活性化T細胞に発現するIL−15受容体(IL−15R)への選択的結合を介在する。したがって、IL−15部分は天然IL−15でもその変異体でもよい。
【0017】
より好ましい態様では、IL−15成分は野生型IL−15である。これに関連して、IL−15は、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、又はサル、好ましくはヒトなどのあらゆる種のIL−15であり得る。さまざまなスプライス変異体及び天然変異体も含まれる。哺乳動物の核酸、特にヒト又はマウス型の核酸が特に好ましい。
【0018】
IL−15変異体には、天然IL−15と比較して、例えば1以上の欠失、挿入、又は置換、又はそれらの組み合わせなどの変異を有するIL−15成分が含まれる。しかしながら、用いるIL−15変異体は、IL−15/Fc融合タンパク質によるIL−15Rへの結合を可能にする必要がある。これは、例えば、標識IL−15、及びIL−15受容体を有する膜又は細胞を用いた放射性リガンド結合アッセイで確認することができるであろう(Carson WEら、1994、J.Exp.Med.、180(4):1395−1403)。
【0019】
好ましい態様では、変異体はIL−15のような作用を有することができ(アゴニスト作用を有するIL−15成分)、その活性レベルは、IL−15と比較して、同一でも、低下しても、増加していてもよい。アゴニスト作用を有するIL−15成分を有するIL−15/Fc融合タンパク質に使用できる試験系は、IL−15成分によるマウスCTLL−2細胞増殖の刺激である。
【0020】
成分が少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは100%、更により好ましくは150%、最も好ましくは少なくとも200%の活性を有する場合は、本発明によれば、IL−15成分はアゴニスト作用を有する。アゴニスト作用を有するIL−15成分の活性は、野生型IL−15による刺激と比較した(野生型IL−15は100%活性に相当する)、IL−15成分による反応の刺激の割合を意味する。試験では、IL−15成分単独でも融合タンパク質でも使用可能である。
【0021】
アゴニスト作用を有するIL−15成分の場合、残基を同様の特性を有する他の残基に置換する保存的アミノ酸置換が好ましい。典型的な置換は、脂肪族アミノ酸群内、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群内、酸性ラジカルを有するアミノ酸群内、アミド誘導体を有するアミノ酸群内、塩基性ラジカルを有するアミノ酸群内、又は芳香族ラジカルを有するアミノ酸内の置換である。典型的な保存的及び半保存的置換は以下の通りである。
【0022】
【表1】

【0023】
本発明の他の態様では、アンタゴニスト作用を有するIL−15成分を使用する。この種の成分は、IL−15の作用、又はIL−15のIL−15Rへの結合を阻害し、完全に又は部分的にのみ阻害することが可能である。アンタゴニスト作用を有するIL−15成分を有するIL−15/Fc融合タンパク質に使用できる試験系は、WO97/41232号に記載の試験系である(BAF−BO3細胞増殖アッセイ)。成分がIL−15介在作用又はIL−15のIL−15Rへの結合を少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも95%阻害する場合は、本発明によればIL−15成分はアンタゴニスト作用を有する。試験には、IL−15成分単独でも融合タンパク質でも使用可能である。
【0024】
アンタゴニスト作用を有するIL−15成分の場合、残基を異なる特性を有する他の残基に置換する非保存的アミノ酸置換が好ましい。これらの置換は、IL−15Rとの相互作用又はシグナル伝達に関与する分子の領域内で起こることが更に好ましい。
【0025】
好ましい態様では、使用するアンタゴニスト作用を有するIL−15成分は、WO97/41232号に記載のIL−15変異体、又は56位のアミノ酸(アスパラギン酸;AAA21551)に変異を有するIL−15成分である。インターロイキン15の149位及び/又は156位のアミノ酸に点突然変異が導入されている、特にグルタミンをアスパラギン酸に置換した(WO97/41232号を参照されたい)変異体が最も好ましい。1つの態様では、記載の変異を組み合わせることも可能である。
【0026】
1つの態様では、融合タンパク質の改変IL−15部分は、野生型IL−15、好ましくはヒト野生型IL−15(例えば全米バイオテクノロジー情報センターのデータベースの受託番号AAA21551)と、又は他の天然変異体(例えば全米バイオテクノロジー情報センターのデータベースの受託番号CAA63914及びCAA71044を有する変異体)と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
【0027】
IL−15/Fc融合タンパク質の第2の機能単位は、Fc成分である。Fc部分は、パパイン切断で調製でき、そのアミノ酸配列は高度に保存されている、免疫グロブリンの定常(c=定常)断片を意味する。Fc断片は、通常抗原に結合しない抗体断片である。本発明によるFc部分は、ヒンジ領域の他に、定常領域CH2及びCH3を含む、上で定義した通りの免疫グロブリン断片も意味することが好ましい。
【0028】
Fc成分は、抗体、例えばIgA、IgD、IgG、IgE、又はIgM、好ましくはIgM又はIgGのFc部分に由来し、より好ましくはサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のFc部分に由来する。
【0029】
本発明の具体的態様では、融合タンパク質のFc部分は、免疫グロブリンG(IgG)のFc断片であり、IgGの軽鎖及び重鎖の可変領域を欠失している。使用できるIgGの例は、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、及びIgG4である。ヒト又はマウスのIgG1が好ましい。
【0030】
抗体のFc部分全体又はその一部を本発明に使用可能である。しかしながら、Fc部分の一部は、好ましくは、IL−15/Fc融合タンパク質が免疫グロブリン成分のないIL−15成分よりも血中循環半減期が長くなるようにデザインされる必要がある。これは、1以上の実験動物に融合タンパク質とIL−15成分を投与、例えば血流に注入し、血中循環半減期を比較することによって試験することができる。より長い半減期は、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%の半減期の増加によって示される。
【0031】
Fc部分は、少なくとも1つの変異を有するFc部分でもよい。変異体Fcは、IL−15部分に関して上に記載したように、変異され得る。
1つの態様では、融合タンパク質の変異体Fc部分は、マウス又はヒトの野生型免疫グロブリン、好ましくはヒトIgG1−Fc又は天然変異体のFc部分と、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
【0032】
本発明の好ましい態様では、融合タンパク質のFc部分は天然型であるか又は保存的アミノ酸置換を有し、完全なFcR結合部位及び/又は補体結合部位を含有する。融合タンパク質のFc部分は、補体系の活性化及びFc受容体発現細胞への結合を介在することができ、したがって、融合タンパク質のIL−15部分によって認識される細胞の枯渇を生ずる。補体活性化及びFc受容体結合を介在するアミノ酸位置における変異の導入、特に非保存的アミノ酸置換は、これらの機能のスイッチを切ることを可能にする。これらの変異の例は、Fc受容体(FcR)に対する結合部位又は補体結合部位(天然ヒトIgG1の214位、356位、358位、及び/又は435位のアミノ酸、あるいは天然マウスIgG2AのLeu235、Glu318、Lys320、及び/又はLys322)のものである。これらの位置のアミノ酸置換は、通常、Fc部分の溶解機能及び補体活性化機能(WO97/41232号)を欠失させる。
【0033】
例えば発現したIL−15/Fc融合タンパク質の分子間結合、そして凝集を妨げるには、ヒトFc部分のヒンジ領域の4位のアミノ酸システイン、より好ましくはヒトIgG1のアミノ酸(ヒトIgG1の167位)がアラニンに置換されている態様が更に好ましい。
【0034】
他の好ましい態様では、Fc部分は、ヒト免疫グロブリンIgG1又はマウス免疫グロブリンIgG2AのFc部分であり、ヒンジ領域に加えて、重鎖領域CH2及びCH3を含む。
【0035】
IL−15/Fc融合タンパク質では、IL−15成分は、免疫グロブリン成分に直接又はリンカーを介して融合している。リンカーは、好ましくは25アミノ酸以下、より好ましくは15アミノ酸以下、更により好ましくは10アミノ酸以下、最も好ましくは1、2、3、4、又は5アミノ酸から成る。
【0036】
更に他の好ましい態様では、インターロイキンをコードするヒト核酸は、Fcをコードするヒト核酸、又は例えばマウス若しくはラットなどの他の種のFcをコードする核酸と同様に組み合わされる。例えば、IL−15をコードするヒト核酸は、IgG1をコードするヒト核酸、IgG2Aをコードするマウス核酸、又はラット由来IgG2Bをコードする核酸と同様に組み合わせることができる。核酸の更に可能な組み合わせは、当業者によって認識されるであろう。
【0037】
IL−15/Fc融合タンパク質に対する最も好ましい核酸は、配列番号1の979〜2014位の配列、配列番号2若しくは配列番号3の1985〜3020位の配列、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸である。IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸を含む最も好ましいベクターは、配列番号1又は配列番号2のベクターである。
【0038】
しかしながら、「IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸」という用語は、その配列が、配列番号3に示した塩基配列、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする塩基配列と少なくともおよそ60%、好ましくはおよそ75%、特に好ましくはおよそ90%、特におよそ95%同一の核酸も含み、対応のIL−15/Fc融合タンパク質はIL−15Rに結合し、免疫グロブリン成分のない対応のIL−15/Fc融合タンパク質と比較して血中循環半減期が上昇している(試験系に関しては上記を参照されたい)。
【0039】
「IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸を含むベクター」という用語は、その配列が、配列番号1及び配列番号2に示した塩基配列と少なくともおよそ60%、好ましくはおよそ75%、特に好ましくはおよそ90%、特におよそ95%同一である核酸も含み、対応のIL−15/Fc融合タンパク質はIL−15Rに結合し、免疫グロブリン成分のない対応のIL−15/Fc融合タンパク質と比較して血中半減期が上昇している(試験系に関しては、上記を参照されたい)。
【0040】
発現システムはプロモーターを更に含む。プロモーターとその機能は当業者に公知である。プロモーターは、例えばウイルス、細菌、又は真核生物由来であることができる。プロモーターは、発現すべき遺伝子の転写を構成的に制御しても、又は誘導性であってもよく、したがって遺伝子発現の特異的調節を可能にする。プロモーターは、更に細胞又は組織特異的であることができる。即ち、遺伝子産物の発現を特定細胞種に限定することができる。これらの特性を有するプロモーターは当業者に公知である。宿主細胞において発現を制御するのに特に好適なプロモーターは、例えば、酵母で発現させるためのADH2プロモーター、又は昆虫細胞で発現させるためのポリヘドリンプロモーターである。哺乳動物細胞において遺伝子産物の強力な発現を介在するプロモーターは、例えば、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、SV40(シミアンウイルス40)プロモーター、及びCMVi/e(サイトメガロウイルス極初期ポリペプチド)プロモーターなどのウイルス遺伝子のウイルスプロモーターである。本発明に関し、CMVプロモーターが好ましい。CMVプロモーターには変異も含まれ、変異配列は、天然CMVプロモーター(Kouzaridesら、1983、Mol.Biol.Med.1(1):47−58)と好ましくは95%、より好ましくは99%相同であり、及び/又は変異体の活性は、野生型プロモーターと比較して好ましくは90〜110%、より好ましくは95〜105%である。
【0041】
更に、転写調節領域は、特にCMVプロモーターを用いる場合は、1以上のイントロン、好ましくはイントロンA(Chapmanら、1991、Nucleic Acids Res.19(14):3979−3986)を含有することができる。この態様は、例えば転写因子に対する好適な結合部位を提示することにより、特に高いIL−15/Fc融合タンパク質量を達成することが可能であるという利点を有する。イントロンAには変異も含まれ、変異配列は、天然イントロン、特にイントロンA(Chapmanら、1991、Nucleic Acids Res.19(14):3979−3986)と好ましくは80%、より好ましくは90%、更により好ましくは95%相同であり、及び/又は変異体の活性は、野生型イントロン、特にイントロンAと比較して、好ましくは90〜110%、より好ましくは95〜105%である。
【0042】
本発明による発現システムの他の要素は、CD5リーダー、即ち、CD5リンパ球抗原の分泌シグナル配列(Jonesら、1986、Nature 323(6086):346−349)に対する核酸である。この分泌シグナル配列は、発現産物の宿主細胞培地への分泌を介在する。CD5リーダーに対する核酸とIL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸は、リーダーが融合タンパク質の分泌を介在できるように発現システム中に配置されている。転写及び翻訳後、CD5リーダーは、発現産物において融合タンパク質のカルボキシ末端に局在することが好ましいが、融合タンパク質のアミノ末端に局在することも等しく好ましいかもしれない。
【0043】
驚くべきことに、CD5リーダーは、CHO細胞において、匹敵するシグナル配列よりも200〜300倍高い発現産物の細胞培地への分泌を介在することが示された(実施例2、図8を参照されたい)。CD5リーダーには変異も含まれ、変異配列は、天然CD5リーダー(Jonesら、1986、Nature 323(6086):346−349)と、好ましくは80%、より好ましくは90%、更により好ましくは95%相同であり、及び/又は変異体の活性は、野生型CD5リーダーと比較して、好ましくは80〜120%、より好ましくは90〜110%、更により好ましくは95〜105%である。
【0044】
発現システムでは、プロモーター、及びCD5リーダーに対する核酸は、IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸に機能的に連結されている。機能的に連結されているとは、融合タンパク質に対する核酸に関し、その機能を発揮できるように、プロモーター、及びリーダーに対する核酸が配置されていることを意味する。プロモーターの機能は、融合タンパク質の発現を調節することである。1つの核酸上に両者が局在する場合は、プロモーターは通常融合タンパク質の5’、又は3’である。リーダーの機能は、融合タンパク質の分泌を介在することである。リーダーに対する核酸及び融合タンパク質が1つの核酸上に局在する場合は、リーダーは、通常融合タンパク質に隣接する。「機能的に連結されている」とは、プロモーター及びCD5リーダーが、融合タンパク質に関して、プロモーターが融合タンパク質の発現を調節し、CD5リーダーが融合タンパク質の分泌を引き起こすように配置されていることを意味することが好ましい。
【0045】
好ましい態様では、発現システムは、例えば発現システムでトランスフェクションされた宿主細胞がトランスフェクションされていない細胞に対して選択されることを可能にする選択可能マーカー遺伝子に対する少なくとも1つの核酸を更に含有する。マーカー遺伝子の例は、抗生物質と組み合わせて使用される耐性介在遺伝子である。マーカー遺伝子は例えば発現ベクター中に挿入され、適切にトランスフェクションされた宿主細胞に適用される抗生物質と共に使用される。真核生物宿主細胞を選択するために使用される抗生物質の公知の例は、アンピシリン、カナマイシン、ゼオシンであり、本発明の好ましい態様では、ネオマイシンであり、これらの全ては、宿主細胞が対応の耐性介在遺伝子の発現によって選択されることを可能にする。他のマーカー遺伝子は当業者に公知であり、例えば選択的遺伝子tk又はDHFRは、HAT又はアミノプテリン及びメトトレキセートなどの対応の選択剤の適用と組み合わされる。例えばオワンクラゲ由来緑色蛍光タンパク質遺伝子及びその変異体のような他の好適な選択可能マーカー遺伝子は、発現ベクターでトランスフェクションされた宿主細胞を選択剤で処理することなく光学的に選択することを可能にする。
【0046】
選択可能マーカー遺伝子としてトリプトファン合成酵素をコードする遺伝子を使用することが好ましく、対応の発現プラスミドは、選択及び発現のために、トリプトファン合成酵素欠損宿主細胞に導入される。
【0047】
更に好ましい態様では、発現システムは、通常、転写を終了させる他に、RNA転写物の安定性にも影響を及ぼすポリアデニル化シグナルの少なくとも1つの核酸も含む。その例は、SV40由来、β−グロブリン遺伝子由来、又は好ましい態様ではウシ成長ホルモン遺伝子BGH(EP173552号)由来のポリアデニル化配列である。ポリアデニル化シグナルの核酸は、融合タンパク質の発現又はその安定性を改善可能な方法における発現システムの部分である。通常、転写産物がIL−15/Fc融合タンパク質をコードする核酸とポリアデニル化シグナルとを含むように融合タンパク質に対する核酸に連結されている。
【0048】
更に他の態様では、例えば無細胞系における転写及び/又は翻訳の場合、発現システムは上記成分に加えて発現に必要な成分を含有する。この種の可能な成分の例は、転写因子、酵素(例えばペプチジルトランスフェラーゼ、アミノアシル−tRNA合成酵素、及びRNAポリメラーゼ)、及び他の細胞内タンパク質(例えばeIF4E、eFE1、及びeEF2)、並びに更なる補助物質(ATP、GTP、及びマグネシウムイオン)、好ましくはtRNA、アミノ酸、及び/又はリボソームである。
【0049】
本発明の好ましい態様では、発現システムは、成分a)〜c)、及び必要に応じてd)を含有する唯一の核酸を含み、それらの全ては上で定義されている通りである。
本発明の非常に好ましい態様では、発現システムは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の配列のいずれかの核酸、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を含有する。しかしながら、その配列が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に示した塩基配列のうちの1つ、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする塩基配列と、少なくともおよそ60%、好ましくはおよそ75%、特に好ましくはおよそ90%、特におよそ95%同一な核酸も含まれ、対応のIL−15/Fc融合タンパク質はIL−15Rに結合し、免疫グロブリン成分のない対応のIL−15/Fc融合タンパク質と比較して血中半減期が上昇している(試験系に関しては上記を参照されたい)。
【0050】
最も好ましい態様では、発現システムは、以下の成分が5’から3’へ配置されている核酸を含む:必要に応じてイントロンAを伴うCMVプロモーター、CD5リーダー、特にIL−15のアミノ酸149位及び/又は156位に点突然変異を有し、グルタミンがアスパラギン酸に置換されているIL−15から成るIL−15/Fc融合タンパク質(WO97/41232号を参照されたい)、ヒンジ領域の4位のアミノ酸システインがアラニンに置換されているヒトIgG1のFc部分、必要に応じてポリアデニル化シグナル、及び必要に応じて少なくとも1つのマーカー遺伝子。マーカー遺伝子は、特に第2の核酸に配置されていてもよい。したがって、そのような核酸も(マーカー遺伝子を伴うものも伴わないものも)本発明による核酸の好ましい態様である。
【0051】
更に、本発明は、IL−15/Fc融合タンパク質、プロモーター、CD5リーダー、必要に応じて選択可能マーカー遺伝子、及び必要に応じてポリアデニル化シグナルを含む核酸に関するものであり、全ての成分は上に記載されている。好ましい態様では、核酸は、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の配列、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を含有する。しかしながら、その配列が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3に示した塩基配列のうちの1つ、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする塩基配列と、少なくともおよそ60%、好ましくはおよそ75%、特に好ましくはおよそ90%、特におよそ95%同一である核酸も含まれ、対応のIL−15/Fc融合タンパク質はIL−15Rに結合し、免疫グロブリン成分のない対応のIL−15/Fc融合タンパク質と比較して血中半減期が上昇している(試験系に関しては、上記を参照されたい)。
【0052】
更に、本発明は、本発明による発現システム又は本発明による核酸を含有する宿主細胞に関するものである。
使用できる宿主細胞は、酵母細胞(例えばサッカロミセス・セレビシエ、ピキア・パストリス)、昆虫細胞(例えばSf9)、又は哺乳動物細胞のような真核細胞である。この種の哺乳動物細胞の例は、ヒト胚性腎細胞株HEK−293、チャイニーズハムスターの卵巣細胞から調製したCHO細胞株、及び例えばCHO−K1やCHO−DHFRのようなその誘導体、細胞株BHK、NIH3T3、HeLa、COS−1、COS−7、及びNS.1である。宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはCHO細胞又はその誘導体であり、最も好ましくはCHO−K1細胞株である。
【0053】
好ましい態様では、宿主細胞は、発現システムの核酸で安定にトランスフェクションされた細胞である。安定にトランスフェクションされた細胞の場合、発現システムは標的細胞のゲノムに組み込まれ、ゲノム中に安定に保持される。一過性トランスフェクションとは対照的に、移入遺伝子は、分解されないだけでなく、それぞれの細胞分裂で倍加し、娘細胞に継代される。したがって、後者は所望のタンパク質を調製する能力を長期間保持する。
【0054】
トランスフェクションされた細胞、特に安定にトランスフェクションされた細胞を調製する方法は当業者に公知である。宿主細胞は、例えば短時間電界を供することによる細胞膜の透過化により細胞への核酸の取り込みを可能にするエレクトロポレーションで、又はウイルスベクターによるトランスフェクション若しくは感染で形質転換できる。組換えタンパク質の一過性発現の他に、用いる発現システムは、トランスフェクションされた宿主細胞のクローン選択をも可能にすることができ、好適な発現効率を有するクローン細胞株を選択可能である。
【0055】
好ましい態様では、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3による少なくとも1つの核酸、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を含有する宿主細胞は真核哺乳動物細胞である。その配列が、記載の配列と少なくともおよそ60%、好ましくはおよそ75%、特に好ましくはおよそ90%、特におよそ95%同一の核酸も含まれ、対応のIL−15/Fc融合タンパク質はIL−15Rに結合し、免疫グロブリン成分のない対応のIL−15/Fc融合タンパク質と比較して血中半減期が上昇している(試験系に関しては、上記を参照されたい)。
【0056】
特に好ましい態様では、本発明による宿主細胞は、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3による少なくとも1つの核酸、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸で安定にトランスフェクションされた、CHO−K1株の細胞(チャイニーズハムスターの卵巣細胞のサブクローン)である。その配列が、記載の配列と少なくともおよそ60%、好ましくはおよそ75%、特に好ましくはおよそ90%、特におよそ95%同一の核酸も含まれ、対応のIL−15/Fc融合タンパク質はIL−15Rに結合し、免疫グロブリン成分のない対応のIL−15/Fc融合タンパク質と比較して血中半減期が上昇している(試験系に関しては、上記を参照されたい)。
【0057】
更に、本発明は、上で定義したようなIL−15/Fc融合タンパク質を調製する方法に関するものであり、
a)上記のような宿主細胞を準備し、
b)宿主細胞を培養し、
c)必要に応じて選択し、そして
d)発現したIL−15/Fc融合タンパク質を単離する、
ことを含む。
【0058】
使用できる宿主細胞の例は、上記細胞である。細胞は、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはCHO細胞又はその誘導体であり、最も好ましくはCHO−K1細胞株である。好適な宿主細胞は、IL−15/Fc融合タンパク質をコードする核酸で、標準法(Sambrookら、1989、上記)によりトランスフェクションすることができる。
【0059】
トランスフェクションされた宿主細胞は、接着細胞であっても懸濁培養物であってもよい。用いる宿主細胞は、接着細胞を懸濁培養に適応させるあいだの発現効率の低下を避けるため、懸濁培養中に存在することが好ましい。
【0060】
初代培養細胞及び細胞株は、標準法(Freshney、1993、動物細胞培養:実践的アプローチ、John Wiley&Sons社)により、好適な栄養培地中、塩濃度、pH、ビタミン、微量元素、選択剤、温度、通気などに関し、それぞれの場合において用いる宿主細胞の要求に対して調整され、所望の発現産物を最適に発現可能な発酵条件下で培養することができる。血清又は外来タンパク質のない、比較的高純度の発現産物を保証する栄養培地を使用することが有利である。
【0061】
選択、特にクローン選択とは、所望の特性を有する宿主細胞を段階的間引きによって増殖させる方法を意味する。クローン選択法は、発現産物の十分な発現レベル及び/又は高グリコシル化パターンと高シアリル化状態を保証する宿主細胞クローンを選択することが好ましい。グリコシル化パターン及びシアリル化状態は、とりわけ、発現産物の半減期、生体内分布、免疫原性、及び精製挙動に影響を及ぼす。グリコシル化パターン及びシアル酸の状態を決定するための好適な方法は当業者に公知であり、とりわけ、IEF(分画電気泳動)を用いる酵素的切断の組み合わせ、及びHPAEC−PAD(パルスアンペロメトリック検出を伴う高速陰イオン交換クロマトグラフィ)を含む。
【0062】
本発明の方法は、異種発現させたIL−15/Fc融合タンパク質の宿主細胞からの単離を更に含み、好ましい態様では、宿主細胞の培地からの単離を含む。組換えポリペプチドは、単離し、必要に応じて、例えば細胞溶解、分画遠心法、沈殿、ゲルろ過、親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、HPLC逆相クロマトグラフィなどを含む当業者に公知の方法にしたがい精製することができる。組換えタンパク質を精製するための好適な方法の1つの例は、不溶性マトリックスが化学処理によりリガンドに結合できる親和性クロマトグラフィである。有用なリガンドは、マトリックスに結合可能な活性化学基を有する分子であり得る。リガンドは、通常、精製すべきポリペプチドに可逆的に結合可能なように選択される。精製すべき分子は、分子のリガンドへの結合に良好な条件下、宿主細胞の予備精製培地中でマトリックスに供され、未結合分子はその後の洗浄工程によって培地から除去される。精製すべきポリペプチドは、リガンドに結合したポリペプチドを引き離す溶液を供することによって溶出させることができる。他の好適な方法は、精製すべきポリペプチドが過剰の陽電荷又は陰電荷を介してマトリックスに結合できる陰イオン交換クロマトグラフィである。本発明の方法の好ましい態様では、発現産物は、初めに細胞培地を宿主細胞から除去することによって精製され、この後に、遠心工程及び/又はろ過工程が続いて細胞残屑を除去し得る。好ましい態様では、組換えIL−15/Fc融合タンパク質は、必要に応じてゲルろ過を伴うプロテインA親和性クロマトグラフィと陰イオン交換クロマトグラフィとの組み合わせによって宿主細胞の予備精製培地から精製される。このようにして得た発現産物は、その後、BCA、光学密度測定、SDS−PAGE、ウエスタンブロット、ELISA、アミノ酸解析、アミノ末端配列決定、フィンガープリント(MALDI)、分子量測定(HPLC−ESI)などのような当業者に公知の方法で、量、同一性、及び純度に関して特徴付けることができる。
【0063】
IL−15/Fcを組成物から精製するための特に好ましい方法は、以下の工程を含む:
a)組成物を親和性クロマトグラフィカラムに供し、第1のIL−15/Fc溶出物をカラムから溶出させる;
b)工程a)の溶出物を陰イオン交換クロマトグラフィカラムに供し、第2のIL−15/Fc溶出物をカラムから溶出させる;そして
c)工程b)の溶出物をゲルろ過カラムに供し、第3のIL−15/Fc溶出物をカラムから溶出させる。
【0064】
好ましい態様では、本発明の方法は、IL−15/Fc融合タンパク質を、少なくとも10pg/(細胞×日数)、より好ましくは少なくとも15pg/(細胞×日数)の量で調製することを可能にする。
【0065】
更に好ましい態様では、精製後のタンパク質は少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%純粋である。
更に、本発明は、上で定義した通りの発現システム、核酸、又は宿主細胞の、IL−15/Fc融合タンパク質を調製するための使用に関するものであり、上記のように使用される。
【0066】
更に、本発明は、CHO細胞及びその誘導体、特にCHO−K1細胞においてタンパク質を発現させるための、上で定義した通りのCD5リーダーの使用に関する。驚くべきことに、タンパク質の発現又は細胞培養上清へのその放出は、CD5リーダーを用いると、リーダーを用いない発現と比較して200〜300倍高いことが示された。更に、CD5リーダーは、これらの細胞において、他のリーダーよりも際だって優れていることが示された(実施例2、図8を参照されたい)。タンパク質はどのタンパク質でもよい。好ましい態様では、タンパク質の発現は、CMVプロモーターによって、特にイントロンAとの組み合わせによって調節される。
【0067】
以下の実施例及び図面によって本発明を限定することなく具体的に説明する。
実施例
【実施例1】
【0068】
CHO−K1細胞におけるIL−15/Fcの産生
IL−15/Fc産生CHO−K1細胞株を作製するには、IL−15/Fcの発現構築体を形成し、その分泌特性、それが含有する断片の同一性/完全性、及び好適な耐性遺伝子に関して最適化する必要がある。
【0069】
a)出発材料
ヒトIL−15/Fc発現構築体(改変IL−15/ヒトFc)は、「ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター」の免疫部門(ハーバード大学医学部、ボストン、米国)より提供された。
【0070】
オリゴヌクレオチドはMWG−Biotech(エーバスベルク、ドイツ)から入手した。関連シグナルペプチドの配列は遺伝子ライブラリーから入手した。
制限酵素(BglII、XBaI、BamHI、SmaI、BstXI、ApaI)、リポフェクタミン2000、他の分子生物試薬(T4−DNAリガーゼ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ)、及びプラスミドpSecTagA、pcDNA3.1は、インビトロジェン(カルルスルーエ、ドイツ)又はアマシャム−ファルマシア(NheI、プロテインAセファロース、ウプサラ、スウェーデン)から入手した。
【0071】
コンピテント大腸菌XL10−Gold細胞はストラタジーン(ラ・ホーヤ、米国)から入手した。BCAキット(Pierce)はKMF Laborchemie(Sankt Augustin、ドイツ)から購入した。
【0072】
プラスミドDNA精製キット(Endofree−Maxiキット、Endofree−Gigaキット)はキアゲン(ヒルデン、ドイツ)から購入した。
抗体は、BD−ファーミンジェン(マウス抗hIL−15;カタログ番号554712;ハイデルベルグ、ドイツ)及びDianova(ヤギ抗マウスPOD;カタログ番号15−036−003;ヤギ抗ヒトPOD;カタログ番号109−036−088;ハンブルグ、ドイツ)から入手した。
【0073】
b)方法/結果
出発プラスミドは、pSecTagAベクター骨格内に、ヒトIgG1のFc部分(ヒンジ領域、及びCH2、CH3領域)に融合した改変ヒトIL−15を含む融合タンパク質のcDNAを含有する。プラスミドの構造は、本願で引用したFc部分がマウスIgg2aであること以外はKimら(J.Immunol.、160:5742−5748;1998)によって記載されたものに相当する。
【0074】
pSecTagAベクターに既に存在するIgkリーダーを、IL−15/Fc部分のインフレームクローニングによって融合タンパク質の分泌に用いた。このため、本来のIL−15配列から固有のシグナル配列を除去した。しかしながら、クローニングにより、Igkリーダー配列の3’端とIL−15コード配列の5’端とのあいだに追加の10アミノ酸を導入した。これは、タンパク質のプロセシング後も分泌タンパク質中に保持された。これらの非特異的アミノ酸を除去し、タンパク質の分泌特性を向上させるために、他の分泌タンパク質又は細胞表面タンパク質のさまざまなリーダー配列について試験した:マウスIgk(Colomaら、J.Immun.Methods 152:89−104;1992;受託番号X91670)、ヒトCD5(Jonesら、Nature 323:346−349;1986;受託番号X04391)、CD4(Hodgeら、Hum.Immunol.30:99−104;1991;受託番号M35160)、MCP−1(Yoshimuraら、Je.FEBS Lett.244:487−493;1989;受託番号M24545)、及びIL−2(Taniguchiら、Nature 302:305−310;1983;受託番号K02056)(受託番号は「全米バイオテクノロジー情報センター」に基づいている)。Igkリーダーと追加のアミノ酸を除去後、2本鎖オリゴヌクレオチドをクローニングすることによって、リーダーを記載のシグナルペプチド配列で置換した。配列決定によって同一性を確認した。続いて、得られた構築体を、リポフェクタミン2000を用いたHEK−293細胞の一過性トランスフェクションによって試験した。さまざまな構築体でトランスフェクションした細胞の細胞培養上清のタンパク質含量を、Moll及びVestweberの方法(Methods in Molecular Biology、96:77−84、1999)にしたがいプロテインA−セファロース精製後、BCAアッセイで測定した。融合タンパク質の両成分の存在を確かなものにするため、SDSゲルの銀染色、及びFc部分又はIL−15部分に対するウエスタンブロットによってタンパク質の同一性を確認した。記載の実験においてCD5リーダーは最良の結果を生じ、ベクターを更に最適化するために選択した。
【0075】
Fc部分のcDNAを、エクソン/イントロン構造を含有するゲノムDNAで置換してもタンパク質発現の向上に寄与するかどうかについて更に試験した。核のスプライス装置によって除去されるべきイントロンの存在は、核からのRNA輸送、及びRNA安定性を向上させることができる。したがって、スプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位を挿入することによって、ゲノムFc部分をIL−15cDNA配列に連結させた。得られたプラスミドをさまざまなリーダー配列で同様に改変し、上記のように試験した。しかしながら、ウエスタンブロットによるタンパク質の解析は、さまざまな望ましくないスプライス変異体が存在することを示した。したがって、cDNA型のFc部分を使用し続けることに決定した。
【0076】
その結果、得られたプラスミドはヒトCD5リーダーとcDNA−Fc部分とを含む。
改変IL−15/Fc発現構築体の配列決定は、Fc部分が、オリジナル構築体に既に存在した3つの変異を含有することを示した。これらの変異のうちの2つは、高度に保存された位置のアミノ酸に関連した。第3の変異は、分子内及び分子間のシステイン結合の形成を阻止するために意図的に挿入した、ヒンジ領域の4位のCys−Ala変異であった。
【0077】
Cys−Ala変異を保持しながら2つの望ましくない変異を除去するために、RT−PCRでFc cDNAをサブクローニングした。用いたRNA源は、VCAM−1/Fc融合タンパク質をコードする構築体でトランスフェクションしたCHO−K1細胞株である。増幅したFc cDNA断片をCD5−mutIL−15プラスミドにクローニングし、BamHI/XbaI制限処理でFc部分を除去した。
【0078】
得られたプラスミドを、異なる制限パターンに基づいて、及びその後の配列決定により再度解析し、CD5−6Ala7と称した。DNA挿入剤としてのゼオシンの使用は変異を引き起こすため、IL−15/Fcの発現カセットをオリジナルpSecTagA骨格から切り出し、SV40プロモーターの制御下でネオマイシン耐性遺伝子を含有するpcDNA3.1にクローニングした。得られたプラスミドの両方の鎖を配列決定したところ、IL−15/Fc発現カセットとの完全な一致を示した。
【0079】
CHO−K1細胞の一過性トランスフェクションと細胞培養上清のウエスタンブロット解析によって、そのタンパク質発現について構築体を再度試験した。陽性対照として、平行実験においてCD5−6Ala7プラスミドでトランスフェクションを行った。
【0080】
この目的のため、5×10細胞/ウェルの濃度で6ウェル組織培養プレートに3重に細胞を蒔いた。2μgのプラスミド及び4μlのリポフェクタミン2000をそれぞれ250μlのOptimem1培地で希釈し、トランスフェクションに用いた。2つの溶液を混合し、室温で30分間インキュベーション後、混合物をピペットに取り、組織培養プレートの培地に加えた。
【0081】
トランスフェクション後2目日に培地を除去し、ヒトIL−15部分に対するウエスタンブロットでIL−15/Fc含量を解析した:20μlの細胞培養上清を5μlの5×Laemmliバッファーと混合し、85℃で5分間インキュベーションした。次にサンプルを12%ポリアクリルアミドゲルで泳動した。次にセミドライブロッティングチャンバーを用いてゲルをブロットした。5%ミルクパウダーのPBS溶液、0.1% Tween20を含有するブロッキング溶液でブロットを一晩処理した。次にブロッキング溶液で1:1000に希釈したマウス抗ヒトIL−15モノクローナル抗体とともにブロットを4時間インキュベーションした。3回の洗浄工程(10分間、PBS、0.1% Tween20)後、ヤギ抗マウス2次抗体 ペルオキシダーゼ(希釈1:5000)とともにブロットを室温で更に2時間インキュベーションした。ブロットを再度3回洗浄し、次にLumilight溶液をブロット表面に滴下し、X線フィルムをブロットに対して感光させた。
【0082】
CD5−6Ala7でトランスフェクションした後に得たシグナルの範囲内の特定のウエスタンブロットシグナルは、3回の平行したトランスフェクション全ての細胞培養上清がIL−15/Fcをタンパク質として含有することを示した。したがって、pcDNA3.1hCD5.6Ala7プラスミド(図1〜3)は、CHO−K1細胞におけるタンパク質発現に使用できることが示された。
【0083】
c)結論
IL−15/FcプラスミドpcDNA3.1hCD5.6Ala7を調製した。これは、CMVプロモーターの制御下、ヒトIgG1−FcのcDNAに融合した改変ヒトIL−15とともにCD5リーダーを含有する発現カセットを含有する。安定な真核細胞クローンを選択するために、ネオマイシン耐性遺伝子を導入した。プラスミドを配列決定したところ、ベクター骨格に関連性のないほんのわずかな不一致(3塩基対の反復)を有するものの、関連コード領域においては100%の一致を示した。構築体の機能性をCHO−K1細胞の一過性トランスフェクションで確認した。
【実施例2】
【0084】
所望の産物に対するDNAを含有するプラスミドによる真核細胞株(例えばCHO−K1細胞)のトランスフェクションは、治療用タンパク質を作製するための標準的な方法である。それにもかかわらず、このようにして作製した安定な細胞クローンによる低レベルの生産性は広く知られた問題である。したがって、既存の細胞株の生産性を増加させるためのさまざまな戦略がある。細胞においてプラスミドコピー数を増加させる試み(例えばメトトレキセート/DHFRシステムを介して)は別として、更に発現構築体自体を改変することが可能である。強力なプロモーター(例えばCMVプロモーター)に加えて、イントロンの導入により、より良いRNA安定性と、細胞のスプライス装置によって行われる核からのより良いRNA輸送をもたらす可能性がある。それにもかかわらず、イントロン/トランス遺伝子のどの組み合わせが好適か試験しなければならない。この目的のため、CHO−K1細胞によるIL−15/Fc産生を増加させる組み合わせを発見するためにさまざまなイントロンをヒトIL−15/Fcと組み合わせた。
【0085】
a)材料
出発プラスミドとして用いたプラスミドはpcDNA3.1hCD5.6Ala7プラスミドである。図1に図示されている。その配列は配列番号1に開示されている。
【0086】
用いた試験系は、CHO−K1細胞(DSM、ブラウンシュヴァイク、ドイツ、受託番号:ACC110)、又はHEK−293細胞(Qbiogene、グリュンベルグ、ドイツ、AE80503、QBI−293A)である。大腸菌細胞(XL10−Gold、ストラタジーン、ラ・ホーヤ、米国)も用いた。標準培養条件(5%CO、37℃、湿潤環境)で細胞を培養した。CHO−K1細胞を1週間に2回、1:20の比で継代した。HEK−293細胞は1:6の比で継代した。CHO−K1細胞に用いた培地は、DMEM−F12+10%FKS+1%PEN/Strepであり、HEK−293細胞に用いた培地はDMEM+Glutamax+10%FKS+1%PEN/Strepである。Optimem1培地をトランスフェクションに用いた。全ての培地はインビトロジェン、カルルスルーエ、ドイツ(カタログ番号31331−028;32430−027;51985−018)から入手した。用いたプラスミドは、CMVプロモーター及びキメライントロン、ヒトβ−グロブリン遺伝子の5’スプライスドナー部位及びIgG重鎖の可変領域の3’スプライスアクセプター部位を含有するpCl−Neo(プロメガ)である。pMG(インビトロジェン)は、CMV由来イントロンAを含有する持続性CMVプロモーターである。pSwitch(Valentis)は、合成イントロンIVS8である。更に、以下の酵素及び制限酵素を用いた:ApaI、EcoRV、XbaI、NruI、PacI、SmaI、XhoI、T4−DNAリガーゼ、T4−DNAポリメラーゼ、仔ウシ腸由来アルカリホスファターゼ。これら及び他の分子生物試薬(リポフェクタミン2000)はインビトロジェンから入手した。NheIはアマシャム−ファルマシア(ウプサラ、スウェーデン)から入手し、プラスミド精製キットはキアゲン、ヒルデン、ドイツから入手した。エキスパンド ハイフィディリティPCRシステム(カタログ番号1 732 641)はロシュ、マンハイム、ドイツから入手した。
【0087】
b)方法
i)pcDNA3.1hCD5.6Ala7プラスミドのIL−15/Fc挿入物をNheI/ApaI消化によって単離した。最初にプラスミドをApaI制限処理によって線状にし、5’−突出末端をT4ポリメラーゼ処理で平滑末端にした。次にその後のNheI消化によってIL−15/Fc挿入物を単離した。NheI及びSmaIで消化したpcI Neoに断片を連結した。
【0088】
ii)pcDNA3.1hCD5.6Ala7のCMVプロモーターを除去し、pMG由来のイントロンAを有する拡張CMVプロモーターと置換した:pMGプラスミドをPacIで切断し、突出末端をT4ポリメラーゼ処理で平滑末端にした。次のXbaI処理後、このようにして得た1.7kb断片はCMVプロモーター+イントロンAを含有しているが、これをアガロースゲル電気泳動で精製した。NheIとその後のNruI制限消化によりCMVプロモーターをpcDNA3.hCD5.6Ala7から除去した。得られた断片を、pMG−プロモーター−イントロンと4℃で一晩連結させた。
【0089】
iii)IVS8イントロンをPCRで増幅し、pcDNA3.1hCD5.6Ala7内のCMVプロモーターの3’端とIL−15挿入物の5’端とのあいだにクローニングした。プラスミドをNheI制限消化で線状にし、その後、仔ウシ腸由来のアルカリホスファターゼで処理した。イントロンを、XbaI制限部位を含有するプライマーを用いて、エキスパンド ハイフィディリティPCRシステムにて以下の条件下でPCRにより増幅した:用いた反応混合物は、2μlのdNTPs(キアゲン、Taq coreキット、それぞれ2ミリモル/l)、25pmolのプライマー、5μlの10×バッファー、0.75μlのハイフィディリティTaqポリメラーゼ、1μl(およそ15ng)のpSwitch−XhoI/EcoRV断片から成り、最終容量50μlになるまで水を加えた。PCRプログラム(25サイクル)は以下の通りである:95℃で5分、94℃で15秒、55℃で30秒、72℃で30秒、72℃で5分。PCR産物をXbaIで切断し、0.8%アガロースゲルから溶離し、線状にしたプラスミドと連結させた。
【0090】
得られたプラスミドで大腸菌XL10 Goldを形質転換し、プラスミドをミニプレップで解析した。適切な制限パターンを示すそれぞれのプラスミドのうち、1つのクローンをその後のエンドトキシンフリープラスミド調製に用いた。
【0091】
IL−15/Fcの発現を、HEK−293細胞又はCHO−K1細胞の一過性トランスフェクション後に解析した。トランスフェクション前日に細胞を5×10細胞/ウェルの濃度で6ウェル細胞培養プレートに2重に蒔いた。Felgnerら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413−7417;1987)によるトランスフェクションのため、2μgのプラスミド及び4μlのリポフェクタミン2000をいずれも250μlのOptimem1培地で希釈した。2つの溶液を混合し、室温で30分間インキュベーションした後、混合物をピペットに取り、細胞培養プレート中の細胞培地に加えた。トランスフェクション後2日目に培地を除去し、IL−15/FcのFc部分を標的にしたELISA試験でそのIL−15/Fc含量を測定した。
【0092】
c)結果
さまざまな発現構築体でトランスフェクションしたHEK−293細胞によるIL−15/Fcの分泌は、他のベクター成分にほとんど影響されなかった。逆に、CHO−K1細胞によるIL−15/Fcの発現は、イントロンをIL−15/Fc構築体に挿入した後、200〜300倍に増加した。オリジナル構築体pcDNA3.1hCD5.6Ala7はタンパク質分泌レベルをほとんど検出できなかった(10ng/ml以下)が、イントロンの挿入により、細胞をpMG10Ala7でトランスフェクションした後のIL−15/Fcレベルはおよそ300ng/mlであった(図4〜6;配列番号2)。CHO−K1細胞におけるIL−15/Fc発現レベルを示すELISAデータを図4に示す。pMG構築体でトランスフェクションした後の発現レベルが最高であったため、安定なCHO−K1発現細胞株を作製するために後者を選択した。
【0093】
この目的のため、最初にプラスミドを1本鎖配列決定に供した。構築体の両方の鎖について、IL−15/Fcカセット、新たに挿入したCMVプロモーター、及びイントロン断片を含有する領域を配列決定した。プラスミドは、CMVプロモーターの制御下でIL−15/Fcカセットを含有していた。CMV(プラスミドMG)由来のイントロンAは、プロモーターと翻訳開始部位とのあいだに位置していた。プラスミドは、IL−15/Fc断片の下流にBGHポリA部位を含有していた;ネオマイシン耐性遺伝子はSV40プロモーターによって制御され、SV40ポリA部位も含有していた。プラスミドは、大腸菌における選択及び増幅のためのアンピシリン耐性遺伝子を含有していた。
【0094】
d)考察及び結論
安定なCHO−K1−IL−15/Fcトランスフェクタントのタンパク質収率を上昇させるために、プロモーターとIL−15/Fcカセットとのあいだにイントロンを導入することによって発現プラスミドを改変した。イントロン−トランス遺伝子−宿主細胞の組み合わせはタンパク質の発現に非常に影響を及ぼし、したがって、解析した2種の細胞におけるIL−15/Fc発現の増加に最も有効なイントロンを予測することは可能ではない。
【0095】
HEK−293細胞はイントロンの導入にほとんど影響されなかったが、CHO−K1細胞ではIL−15/Fc分泌の大きな増加が検出された。CHO−K1細胞におけるIL−15/Fcタンパク質の発現は、CMVプロモーターとpMG由来イントロンAとを含有するプラスミドを用いたところ、オリジナルのIL−15/Fc発現ベクターと比較して、1桁を越える規模で増加した。プラスミドは、予備臨床試験及び臨床試験のためのIL−15/Fcの産生、又はIL−15/Fcの工業的産生に使用できるIL−15/Fc産生細胞株の作製に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、pcDNA3.1hCD5.6Ala7発現構築体のマップを表す。
【図2】図2は、pcDNA3.1hCD5.6Ala7発現構築体の配列を表す(配列番号1)。
【図3】図3は、pcDNA3.1hCD5.6Ala7発現構築体の配列を表す(配列番号1)。
【図4】図4は、pMG10Ala7発現構築体のマップを表す。
【図5】図5は、pMG10Ala7発現構築体の配列を表す(配列番号2)。
【図6】図6は、pMG10Ala7発現構築体の配列を表す(配列番号2)。
【図7】図7Aは、CD5リーダーを有するヒト改変IL−15/Fcの核酸配列を表す(配列番号3)。図7Bは、CD5リーダーを有するヒト改変IL−15/Fcのアミノ酸配列を表す(配列番号4)。図7Cは、CD5リーダーを有するヒト改変IL−15/Fcのアミノ酸配列を表す(配列番号5)。
【図8】図8は、その都度示したリーダー配列を含有するpcDNA3.1hCD5.6Ala7プラスミドでトランスフェクションした後のCHO−K1細胞の細胞培養上清におけるIL−15/Fc含量を表す。
【図9】図9は、さまざまな発現構築体でトランスフェクションした後のCHO−K1細胞の細胞培養上清におけるIL−15/Fc含量を表す。それぞれのバーは、いずれの場合も2回の独立した実験における2回の測定の平均+SEMを表す。pcDNA3.1は、pcDNA3.1hCD5.6Ala7ベクターに相当する。pVS8−Ala7は、IL−15/Fc構築体に対する構築体を有するpSwitchプラスミド(Valentis)に相当する。pMG−Ala7は、IL−15/Fc構築体に対する構築体を有するpMGプラスミド(インビトロジェン)に相当する。pCINeo−Ala7は、IL−15/Fc構築体に対する構築体を有するpCI−Neoプラスミド(プロメガ)に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の核酸を含有する発現システムであって、
a)IL−15/Fc融合タンパク質に対する少なくとも1つの核酸、
b)少なくとも1つのプロモーター、及び
c)CD5リーダーに対する少なくとも1つの核酸、
を含み、プロモーター及びCD5リーダーに対する核酸は、IL−15/Fc融合タンパク質に対する核酸に機能的に連結されている、前記発現システム。
【請求項2】
プロモーターがCMVプロモーターである、請求項1に記載の発現システム。
【請求項3】
プロモーターが、イントロン、特にイントロンAを更に含有する転写調節ユニットの部分である、請求項1又は2に記載の発現システム。
【請求項4】
融合タンパク質のFc部分が免疫グロブリンGのFc断片である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発現システム。
【請求項5】
d)選択可能マーカー遺伝子に対する少なくとも1つの核酸を更に含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発現システム。
【請求項6】
ポリアデニル化シグナルに対する少なくとも1つの核酸を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発現システム。
【請求項7】
リボソーム、アミノ酸、及び/又はtRNAを更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発現システム。
【請求項8】
唯一の核酸を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発現システム。
【請求項9】
配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の配列を有する核酸、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発現システム。
【請求項10】
請求項1〜4の成分a)〜c)、及び場合により請求項5の成分d)を含有する核酸。
【請求項11】
配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の配列、又は配列番号4若しくは配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を含有する核酸。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の発現システム、又は請求項10若しくは11に記載の核酸を含有する宿主細胞。
【請求項13】
哺乳動物細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
CHO細胞株又はその誘導体、特にCHO−K1細胞株の細胞である、請求項12又は13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
IL−15/Fc融合タンパク質を調製する方法であって、
a)請求項12〜14のいずれか1項に記載の宿主細胞を準備し、
b)宿主細胞を培養し、
c)必要に応じて選択し、そして
d)発現したIL−15/Fc融合タンパク質を単離する、
ことを含む、前記方法。
【請求項16】
宿主細胞が、哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞株又はその誘導体、特に好ましくはCHO−K1細胞株の細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
IL−15/Fc融合タンパク質が、少なくとも10pg/(細胞×日数)の量で、好ましくは少なくとも15pg/(細胞×日数)の量で調製される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
IL−15/Fc融合タンパク質を調製するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発現システム、請求項10又は11に記載の核酸、あるいは請求項12〜14のいずれか1項に記載の宿主細胞の使用。
【請求項19】
CHO細胞又はその誘導体、特にCHO−K1細胞においてタンパク質を発現させるためのCD5リーダーの使用。
【請求項20】
タンパク質の発現が、CMVプロモーターによって、特にイントロンAとの組み合わせによって調節される、請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−535919(P2007−535919A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507747(P2007−507747)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003888
【国際公開番号】WO2005/100395
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】