説明

IL−17BRに対する抗体

本発明は、インターロイキン−17受容体Bに結合する抗体D9.2およびD9.2に基づく抗体分子を提供する。これらは療法、例えば喘息、潰瘍性結腸炎またはクローン病の処置において有用である可能性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン17B受容体(IL−17BR)に向けられた抗体(その結合断片を含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息は一般的な気道の慢性炎症性障害である。苦しんでいる人の数はここ数十年にわたって劇的に増大しており、世界保健機関は世界中で約3億人の人々が喘息で苦しんでいると見積もっている。アレルギー性喘息は、様々な誘発性刺激により誘導される制御不能の気道の反応性亢進(AHR)により特性付けられ、肺の中への2型炎症性浸潤と関係している。
【0003】
炎症性腸疾患(IBD)は結腸(大腸としても知られている)の粘膜層を冒す慢性の炎症であり、それは2種類の疾患状態:潰瘍性結腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含む。IBDの処置に関して一般に行われる療法には、抗生物質またはステロイド由来の薬物または抗TNF−α薬剤のいずれかが含まれる;しかし、これらは現在患者において臨床的寛解を誘導する、または維持するのに成功していない(Hanauer et al., 2008)。UCはTh2に仲介される疾患であると考えられており、代表的なマウスモデルは腸の炎症の発達において2型サイトカイン類が関わっていることを示している(Heller et al., 2002)。
【0004】
IL−25R、IL−17BR、IL−17RBまたはIL−17RH1として様々な名前で知られているインターロイキン17B受容体は、発現配列タグデータベース中でIL−17A受容体(IL−17RA)に対するそれの相同性により最初に同定された(Tian et al., 2000)。その後IL−17BRはIL−17BおよびIL−25の両方に結合することが示された(Lee et al., 2001; Shi et al., 2000; Tian et al., 2000)。IL−25はIL−17BRに対してIL−17B(7.6 nM)よりも強い親和性(1.4 nM)で結合する。
【0005】
IL−17サイトカインファミリー(IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17DおよびIL−17F−1型炎症と関係する)のメンバーであるIL−25は、それの産生が脾腫、IgG1およびIgEの上昇した血清レベルならびに好酸球性浸潤、増大した粘液分泌および上皮細胞過形成を含む肺および消化管における病的変化と関係する2型サイトカインの発現を誘導する点で他のIL−17ファミリーのメンバーと著しく異なっている(Fort et al., 2001; Lee et al., 2001; Moseley et al., 2003; Pan et al., 2001)。IL−25の遺伝的除去またはブロッキング抗IL−25抗体の使用は、蠕虫感染からの保護におけるIL−25の重要性を明確に示した(Fallon et al., 2006; Owyang et al., 2006)が、喘息に特有の応答の制御における重要な役割も示した(Ballantyne et al., 2007)。IL−25はこれらの応答を、最初に自然免疫非B/非T(NBNT)細胞からの(Fallon et al., 2006; Fort et al., 2001)、続いて適応T細胞応答からの(Angkasekwinai et al., 2007; Wang et al., 2007)2型サイトカイン類、例えばIL−13の放出を誘導する能力により刺激するようである。
【0006】
il17brのメッセージ(message)は肺、脳、膵臓、腎臓、甲状腺および好酸球からのライブラリーにおいて同定されている(Lee et al., 2001; Shi et al., 2000)。肺平滑筋細胞における発現は免疫学的に制御されているようである(Lajoie-Kadoch et al., 2006)。
【0007】
喘息における役割と一致して、IL−25のmRNAまたはタンパク質は、肺胞マクロファージ、マスト細胞、好酸球、および好塩基球を含む肺において見つかるいくつかの細胞型から検出されている(Wang et al., 2007)。より最近には、アレルゲンに刺激されたヒトおよびマウスの肺上皮細胞によるIL−25の産生は、アレルギー性の肺の応答を調節するIL−25に関する可能性のある役割を支持していた(Angkasekwinai et al., 2007)。加えて、IL−25は肺線維芽細胞からの炎症性サイトカインおよびケモカインの産生ならびに気道平滑筋細胞からの細胞外マトリックスの構成要素を誘導することが報告されている。さらに、最近の研究は、喘息患者からの生検組織においてIL−25およびIL−17BRに関する転写産物が有意に上方制御されており、好酸球性浸潤と関係していることを示した(Wang et al., 2007)。IL−25に対して向けられたブロッキングモノクローナル抗体を用いたOVA感作マウスの処置は、結果としてOVA負荷およびメタコリン投与に応答するAHRの減少および気管支肺胞洗浄におけるより低いIL−13濃度をもたらす。
【0008】
最近、Rickelら(J Immunol 181, 4299-4310 (2008))は、ヒトの初代細胞に基づくアッセイにおいて、ヒトIL−17RAに対するブロッキングモノクローナル抗体を用いてIL−25の活性を妨げた。これはIL−25の活性がIL−17BRおよびIL−17RA両方を必要とすることを示した。しかし、IL−17AおよびIL−17FはIL−17RAおよびIL−17RCを含むヘテロマー的複合体を通してシグナル伝達していることも報告されている。
【0009】
Rickelらは、アレルギー性喘息のマウスモデルにおけるIL−25に誘導される肺の炎症をブロックする、マウスIL−17BRと反応する抗体も記述している。今までに、ヒトIL−17BRと反応する抗体は報告されていない。
【0010】
IBDにおける役割と一致して、マウスにおける慢性結腸炎の実験モデルにおいて、Th1型の応答からTh2型の応答への切り替えと関係してIL−25の産生が観察されており(Fichtner-Feigl et al,. 2008)、マウスの胃腸管全体にわたってIL−25のmRNAの高い発現が見付かった(Fort et al., 2001)。さらに、ヒトにおいてIL−25遺伝子は14番染色体上のクローン病感受性領域内に位置しているが、それがその病気と関係している可能性はまだ調べられていない(Buning et al,. 2003)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hanauer et al., 2008
【非特許文献2】Heller et al., 2002
【非特許文献3】Tian et al., 2000
【非特許文献4】Lee et al., 2001
【非特許文献5】Shi et al., 2000
【非特許文献6】Fort et al., 2001
【非特許文献7】Moseley et al., 2003
【非特許文献8】Pan et al., 2001
【非特許文献9】Fallon et al., 2006
【非特許文献10】Owyang et al., 2006
【非特許文献11】Ballantyne et al., 2007
【非特許文献12】Angkasekwinai et al., 2007
【非特許文献13】Wang et al., 2007
【非特許文献14】Lajoie-Kadoch et al., 2006
【非特許文献15】J Immunol 181, 4299-4310 (2008)
【非特許文献16】Fichtner-Feigl et al,. 2008
【非特許文献17】Buning et al,. 2003
【発明の概要】
【0012】
本発明者は、IL−17BRに対して高い親和性および特異性で結合する抗体分子を同定した。
本明細書で記述される抗体分子は、インビボでのIL−25の生理活性を妨害する、ならびに気道炎症、AHR、および結腸の炎症を防ぐのに有用である可能性がある。
【0013】
抗原で負荷をかけたマウスにおいて、本明細書で記述される抗体分子の投与は、抗原負荷の非存在下で、または抗原で負荷をかけたIL−17BR欠損マウスにおいて見られるレベルおよび数に類似したレベルおよび数までIL−13およびIL−5のレベルを低減させ(その両方が喘息の制御における重要なサイトカインである)、肺におけるIL−13産生細胞の数を低減させることが示されている。本明細書で記述される抗体分子は、気道の反応性亢進も著しく低減させることができる。さらに、本明細書で記述される抗体分子は、疾患と関係するガンマ/デルタT細胞の増殖(expansion)をインビボで低減させることができる。これは、本明細書で記述される抗体分子が、喘息の発現において不可欠であることが知られている2つの経路であるIL−13の産生およびガンマ/デルタT細胞の応答性を阻害することを示している。
【0014】
上記の抗原で負荷をかけたマウスは、喘息の実験モデルにおいてOVA(オボアルブミン)抗原で負荷をかけた。IBDの実験モデルにおいてOXA(オキサゾロン)抗原で負荷をかけたマウスにおいて、本明細書で記述される抗体分子の投与は、IBDの死亡率および臨床徴候、例えば体重の減少ならびに炎症および出血の結果もたらされる結腸の短縮を低減することが示されている。
【0015】
本明細書で記述される抗体分子はマウスおよびヒトのIL−17BR両方と交差反応することができ、ヒトIL−25のヒトIL−17BRへの結合を阻害することができる。従って、抗体分子はインビボでその作用の機構を調べるためにマウスモデルにおいて用いることができる。さらに、本明細書で記述される抗体分子はヒト細胞においてIL−25/IL−17BR複合体の生物学的作用を妨害することができる。従って、本明細書で記述される抗体分子は疾患、例えば喘息の処置に有用である可能性を有する。
【0016】
本発明の1観点は、IL−17BRに結合し、SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含む抗体分子を提供する。
好ましくは、抗体分子はIL−17BRのIL−25への結合を妨害し、IL−25に仲介されるAHR;IL−13の産生;IL−25に仲介されるIL−5の産生;IL−25に仲介されるIL−8の産生;ならびにガンマ/デルタT細胞の増殖および浸潤の少なくとも1種類を低減または阻害する。
【0017】
抗体分子は、SEQ ID NO:7のVH CDR3をSEQ ID NO:5のCDR1およびSEQ ID NO:6のCDR2と一緒に含むVHドメインを含んでいてよい。
【0018】
VHドメインはVLドメイン、例えばSEQ ID NO:8のCDR1、SEQ ID NO:9のCDR2およびSEQ ID NO:10のCDR3を有するVLドメインと対をなしていてよい。一部の態様において、VHドメインはSEQ ID NO:4のVLドメインと対をなしていてよい。
【0019】
一部の態様において、抗体分子はSEQ ID NO:5のVH CDR1、SEQ ID NO:6のVH CDR2およびSEQ ID NO:7のVH CDR3を含むVHドメインならびにSEQ ID NO:8のVL CDR1、SEQ ID NO:9のVL CDR2およびSEQ ID NO:10のVL CDR3を含むVLドメインを含んでいてよい。
【0020】
VHドメインはさらに、ヒトまたは非ヒトのフレームワーク領域、例えばSEQ ID NO:2で示したフレームワーク領域を含んでいてよい。一部の態様において、抗体分子はSEQ ID NO:2のVHドメインを含んでいてよい。
【0021】
VLドメインはさらに、ヒトまたは非ヒトのフレームワーク領域、例えばSEQ ID NO:4で示したフレームワーク領域を含んでいてよい。一部の態様において、抗体分子はSEQ ID NO:4のVLドメインを含んでいてよい。
【0022】
一部の態様において、抗体分子はSEQ ID NO:2のVHドメインおよびSEQ ID NO:4のVLドメインを含んでいてよい。
本発明の観点は、本明細書で記述される抗体分子をコードする単離された核酸、その核酸を含むベクターおよび宿主細胞中でその核酸を発現させて本発明の抗体分子を生成する方法も提供する。
【0023】
本発明はさらに、例えば、疾患、例えばIL−25に仲介される疾患、例えばアレルギー、喘息および結腸炎の処置のための医薬組成物の形での本発明の抗体分子の使用を提供する。
【0024】
本発明のこれらの、およびさらなる観点を、下記でさらに詳細に、付随する実施例に関連して記述する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、抗IL−17BRクローンD9.2がELISAによるヒトおよびマウスのIL−17BRとの結合に関して交差反応性であることを示す。棒は培地(白い棒)またはD9.2抗体クローン(黒い棒)の固定化されたマウスIL−17BR−Fc、ヒトIL−17BR−FcまたはヒトIgG対照への結合を示す。
【図2】図2は、D9.2が形質移入したCOS7細胞上およびマウスの初代細胞上のIL−17BRに結合することを示す。マウス(a)またはヒト(b)のIL−17BR発現ベクターで形質移入したCOS7細胞は、D9.2により認識されるIL−17BRを発現する。細胞を1μg/mlのD9.2と共に20分間インキュベートし、次いで洗浄した。20分間のインキュベートの後にD9.2の結合をFACSにより抗マウスIgG FITCを0.5μg/mlで用いて検出した。(c)インビトロで分化したTh2細胞はIL−17BRを発現し、D9.2はそれに結合する。Th1細胞では発現は低い、または無い。(d)400ngのIL−25の、3回の連続した毎日の腹腔内投与の後、野生型(d,e)の腸間膜(mysenteric)リンパ節にIl−17BRを発現する非B非T(NBNT)細胞の集団が出現するが、IL−17BRノックアウト(d,f)マウスでは出現しない。この集団はD9.2により認識され、IL−13を産生する。
【図3】図3は、D9.2はIL−17BRに結合するがマウスまたはヒトのIL−17RA、IL−17RC、またはIL−17RDとは交差反応しないことを示す。簡潔には、ELISAプレートを2μg/mlのIL−17Rファミリーのメンバー:IL−17RA、IL−17BR、IL−17RCもしくはIL−17RD、またはIL−13Rα対照でコートし、4℃で一夜インキュベートし、PBS/0.05% tweenで洗浄し、PBS/10%FCS中で室温で4時間ブロッキングした。ビオチン化D9.2の結合を、ストレプトアビジン−HRPおよびELISA現像溶液を用いて405nmにおける吸光度を測定して検出した。
【図4】図4は、マウスのモノクローナル抗体D9.2はヒトIL−25のヒトIL−25受容体への結合を阻害するが、他のマウスモノクローナル抗IL−17BR抗体(3b9、2c1、5h9、7e1、10c6、10e6)は阻害しないことを示す。それぞれの精製されたマウスモノクローナル抗体をhIL17Br/Fc(100ng/ml)中で希釈(×100)して100ng/mlのhIL17Br/Fc溶液中で1μg/mlの終濃度にした。簡潔には、[抗体×hIL17Br/Fc]混合物をヒトIL−25でコートしたプレートに添加し、1時間30分インキュベートし、3回洗浄した。抗hIgG(Fc)−HRPコンジュゲート(Serotec)をプレートに添加し、室温で45分間インキュベートし、3回洗浄し、TMBで現像した。1M HCLで反応を止めた。450nmにおいて光学密度を読み、全ての読みから試薬ブランクの読みを引いた。
【図5】図5は、D9.2抗体がNBNT細胞およびCD4+(Tおよび/またはNKT)細胞のIL−13の産生をインビトロで妨害することを示す。(a)NBNT細胞。簡潔には、腸間膜(mysenteric)リンパ節を未処置の(naive)BALB/cマウスから切り取り、CD3+およびCD19+細胞を激減させる。NBNT細胞を丸底96ウェルプレート上に3×10細胞/ウェルで蒔き、RPMI10%のみ(培地)または10ng/ml IL−25を加えたRPMI10%FCS(IL−25)中で72時間培養した。ウェルにD9.2を最大濃度2μg/mlから系列希釈で添加し、1.5時間インキュベートした後、ウェルに10ng/ml IL−25を添加した。次いでプレートを37℃で72時間インキュベートした後、上清をELISAによりIL−13含有量に関して試験した。(b)CD4+(Tおよび/またはNKT)細胞。未処置の野生型BALB/cマウスから脾臓を取り出し、単一細胞懸濁液を調製した。単離されたCD4+細胞を96ウェルプレートにおいて1×10細胞/mlで、RPMI単独、または1μg/mlのD9.2有りもしくは無しで10ng/ml IL−25を補ったRPMIのどちらかの中で培養した。細胞を72時間培養した後、ELISAによるIL−13タンパク質レベルの分析のために上清を得た。
【図6】図6は、D9.2がIL−25に誘導されるマウス腎癌(RENCA)細胞株からのKC(マウスのIL−8)の産生を用量依存的様式で阻害することを示す。IL−25(100ng/ml)を様々な濃度のD9.2またはIgG1対照抗体と共に室温で30〜60分間前インキュベートした後、細胞に添加した。IL−25/D9.2混合物の添加の直前に、TNF−α(10ng/ml)をRENCA細胞で覆われたプレートに添加した。抗体無しの対照試料は、100ng/mlのIL−25および10ng/mlのTNF−α(IL−25+TNF−α)または培地のみの対照(Media)と共に24時間インキュベートした後、細胞に添加した。ELISAによるKCの放出の決定を、刺激の24時間後に実施した。
【図7】図7は、D9.2がIL−25に誘導されるヒト腎癌(TK−10)細胞株からのIL−8の産生を用量依存的様式で阻害することを示す。IL−25(100ng/ml)を様々な濃度のD9.2またはIgG1対照抗体と共に室温で30〜60分間前インキュベートした。IL−25/D9.2混合物の添加の直前に、TNF−α(10ng/ml)をTK−10細胞で覆われたプレートに添加した。抗体無しの対照試料は、100ng/mlのIL−25および10ng/mlのTNF−α(IL−25+TNF−α)または培地のみの対照(Media)と共に24時間インキュベートした後、細胞に添加した。ELISAによるIL−8の放出の決定を、刺激の24時間後に実施した。
【図8】図8は、D9.2がIL−25応答をインビボで妨害することを示す。(a)オボアルブミン(OVA)で感作し、負荷をかけたマウスからの縦隔リンパ節細胞は、インビトロでOVAで再刺激した際にIL−13を産生する。OVA負荷の前のD9.2の投与はIL−13応答を、IL−17BR KOマウスのIL−13応答と同程度のレベルまで低減する。(b)OVAで感作し、負荷をかけたマウスからの縦隔リンパ節細胞は、インビトロでOVAで再刺激した際にIL−5を産生する。OVA負荷の前のD9.2の投与はIL−5応答を、IL−17BR KOマウスのIL−5応答と同程度のレベルまで低減する。(c)D9.2処置は、OVAで感作し、負荷をかけたマウスの肺におけるIL−13産生細胞の数を低減した。IL−13の細胞内サイトカイン染色は、OVAで感作し、負荷をかけたマウスにおけるIL−13産生細胞の集団を明らかに見えるようにし、それはIL−17BR KOマウスには存在せず、OVA負荷の前に抗IL−17BR抗体D9.2で処置した動物では低減している。(d)OVAで感作し、負荷をかけたマウスの脾臓中のガンマ−デルタT細胞の数は、IL−17BR KOマウスにおいて、およびOVA負荷の前にD9.2を与えられたマウスにおいて低減している。(e)D9.2処置は、OVAで感作し、負荷をかけたマウスにおいてAHRを低減する。
【図9】図9は、D9.2がIBDのマウスモデルにおいてインビボでIL−25応答を妨害することを示す。(a)オキサゾロンで負荷をかけた動物の生存の百分率は、エタノールのみを与えられた対照よりも低い。感作および負荷の前のD9.2の投与は死亡率を低減する。(b)それぞれの動物の全体的な外観およびふるまいと組み合わせた体重の減少に基づいて、臨床スコアを算出する。D9.2の投与は結果としてアイソタイプ抗体を与えられたマウスと比較して臨床スコアの向上をもたらす。(c)IBDマウスでは対照と比較して結腸の長さが低減している。D9.2の投与は、IBDの動物におけるこの低減に対して保護する。
【0026】
配列:
本発明の抗体分子を、さらに本明細書において下記の配列識別番号を参照して記述する:
SEQ ID NO:1 D9.2 VHをコードするヌクレオチド配列
SEQ ID NO:2 D9.2 VHのアミノ酸配列
SEQ ID NO:3 D9.2 VLをコードするヌクレオチド配列
SEQ ID NO:4 D9.2 VLのアミノ酸配列
SEQ ID NO:5 D9.2 VH CDR1のアミノ酸配列
SEQ ID NO:6 D9.2 VH CDR2のアミノ酸配列
SEQ ID NO:7 D9.2 VH CDR3のアミノ酸配列
SEQ ID NO:8 D9.2 VL CDR1のアミノ酸配列
SEQ ID NO:9 D9.2 VL CDR2のアミノ酸配列
SEQ ID NO:10 D9.2 VL CDR3のアミノ酸配列
添付の配列リストにおいてさらなる配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この出願は抗原−抗体型の反応に関係している。
一般に、抗体の重鎖可変領域(VHドメイン)は抗体の抗原への結合において重要な役割を果たす。VHドメインのCDR3領域はCDR1およびCDR2領域よりも多様であることが分かっており、従ってほとんどの抗体において抗体の標的への特異性を提供する。従って、本発明の抗体分子はD9.2抗体のVH CDR3領域の周辺に基づいている。一部の好ましい態様において、本発明の抗体分子はD9.2抗体のVH領域の3種類のCDRを全て含む。
【0028】
本発明のCDRを含む抗体分子の構造は、一般に抗体分子の重鎖もしくは軽鎖配列またはそれらの実質的な部分からなると考えられ、ここでCDRは再編成された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然型のVHおよびVL抗体の可変ドメインのCDRに対応する位置に位置している。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabat, E.A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest. 第4版. US Department of Health and Human Services. 1987およびそれらの最新版への参照により決定されてよい。いくつかの学術的な、および商業的なオンラインリソースが、このデータベースを検索するのに利用可能である。例えば、Martin, A.C.R. コンピューターによるKabat抗体配列データベースへのアクセス PROTEINS: Structure, Function and Genetics, 25 (1996), 130-133および現在http://www.bioinf.org.uk/abs/simkab.htmlのウェブアドレスにある関係するオンラインリソースを参照。
【0029】
一般に、抗体分子は抗体抗原結合ドメインを提供するためにVLドメインと対をなしたVHドメインを含むが、一部の態様において、抗原と結合するためにVHドメインのみを用いてよい。例えば、D9.2 VHドメイン(SEQ ID NO:2)はD9.2 VLドメイン(SEQ ID NO:4)と、D9.2のVHおよびVLドメインの両方を含む抗体抗原結合部位が形成されるように対をなしてよい。あるいは、D9.2 VHドメインはD9.2 VLドメイン以外のVLドメインと対をなしてよい。
【0030】
軽鎖の混成(promiscuity)は、本明細書でさらに論じるように、当技術において十分に確立されている。
本明細書で記述される抗体分子はヒトのIL−17BRおよび/またはマウスのIL−17BRと結合してよい。例えば、抗体分子はヒトのIL−17BRと結合し、マウスのIL−17BRには結合を示さない、または実質的に結合を示さなくてよい。あるいは、本発明の抗体分子はマウスのIL−17BRと結合し、ヒトのIL−17BRには結合を示さない、または実質的に結合を示さなくてよい。
【0031】
好ましくは、本発明の抗体分子はヒトおよびマウスのIL−17BR両方と交差反応する。例えば、交差反応性抗体分子はヒトのIL−17BRおよびIL−17BR両方と結合する。
【0032】
本明細書で記述される抗体分子はIL−17BRと、D9.2の親和性に実質的に類似した親和性、例えばD9.2の結合親和性の90%〜110%で結合することができる。抗体分子は一般にIL−17BRに特異的であろう。言い換えれば、抗体分子はIL−17BRに結合するがIL−17Rファミリーの他のメンバーには結合を示さない、または実質的に結合を示さなくてよい。好ましくは、IL−17BRに特異的な抗体分子はIL−17BRに結合するが、IL−17RA、IL−17RCおよび/またはIL−17RDには結合を示さない、または実質的に結合を示さない。
【0033】
典型的には、特異性は一群の抗体を用いたELISAのような結合アッセイを用いて決定することができる。
本明細書で記述される抗体分子のIL−17BRとの結合は、組み換えIL−17BRとの競合により無効にされて(abolished)よい。
【0034】
本明細書で記述される様々な抗体分子の結合親和性および中和能力は、型にはまった技法を用いて適切な条件下で比較することができる。
抗体分子は、必要とされるIL−17BRに対する特異性および/または結合を有する抗体抗原結合部位を有するあらゆる結合メンバーまたは物質を含む。抗体分子の例には、天然のものまたは完全にもしくは部分的に合成によるものを問わず、以下のものが含まれる:免疫グロブリンのアイソタイプおよびそれらのアイソタイプのサブクラス;抗体断片、例えばFab、Fab’、Fab’−SH、scFv、Fv、dAbおよびFd;設計された(engineered)抗体分子、例えばFab、Fab、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)およびミニボディ(minibodies);ならびに抗体抗原結合部位を含むあらゆる他のポリペプチド。従って、別のポリペプチドに融合した抗原結合ドメインまたは均等物を含むキメラ分子も含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現はEP−A−0120694およびEP−A−0125023において記述されている。
【0035】
抗体分子の例には以下のものが含まれる:(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward, E. S. et al., Nature 341, 544-546 (1989));(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの結合したFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片(vii)2つのドメインを結合させて抗原結合部位を形成するペプチドリンカーによりVHドメインおよびVLドメインが結合している単鎖Fv分子(scFv)(Bird et al, Science, 242, 423-426, 1988;Huston et al, PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988);(viii)二重特異性(bispecific)単鎖Fvダイマー(PCT/US92/09965)ならびに(ix)遺伝子融合により構築される多価もしくは多重特異性(multispecific)断片である“ダイアボディ”(WO94/13804;P. Holliger et al, Proc. Natl. Acad. Sci . USA 90 6444-6448, 1993)。Fv、scFvまたはダイアボディ分子は、VHおよびVLドメインを結合するジスルフィド架橋の組み込みにより安定化することができる(Y. Reiter et al, Nature Biotech, 14, 1239-1245, 1996)。CH3ドメインに結合されたscFvを含むミニボディを作ることもできる(S. Hu et al, Cancer Res., 56, 3055-3061, 1996)。抗体分子ならびにそれらの構築および使用のための方法がHolliger & Hudson, Nature Biotechnology 23(9):1126-1136 (2005)に記述されている。
【0036】
二重特異性抗体分子が用いられる場合、これらは様々な方法(Holliger, P. and Winter G. Current Opinion Biotechnol. 4, 446-449 (1993))で製造することができる、例えば化学的に、もしくはハイブリッドハイブリドーマから調製することができる、または上記で言及した二重特異性抗体断片のいずれかであってよい、従来の二重特異性抗体であることができる。ダイアボディおよびscFvは、抗イディオタイプ反応の作用を低減させる可能性がある可変ドメインのみを用いて、Fc領域無しで構築することができる。
【0037】
二重特異性完全抗体とは対照的に、二重特異性ダイアボディも、それらは容易に構築して大腸菌において発現させることができるため、特に有用である。適切な結合特異性を有するダイアボディ(および抗体断片のような多くの他のポリペプチド)は、ファージディスプレイ(WO94/13804)を用いてライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディの一本の腕が、例えば特異性がIL−217BRに対して向けられて一定に保たれる場合、他の腕が変更されたライブラリーを作製することができ、適切な特異性を有する抗体を選択することができる。ノブを穴に入れる(knobs−into−holes)設計により二重特異性完全抗体を作製することができる(J. B. B. Ridgeway et al, Protein Eng., 9, 616-621, 1996)。
【0038】
モノクローナル抗体および他の抗体を得ること、ならびに組み替えDNA技術の技法を用いて元の抗体の特異性を保持する他の抗体分子またはキメラ分子を生み出すことが可能である。そのような技法は、抗体の免疫グロブリン可変領域、または相補鎖決定領域(CDR)をコードするDNAを異なる免疫グロブリンの定常領域、または定常領域+フレームワーク領域に導入することを含んでいてよい。例えば、EP−A−184187、GB 2188638AまたはEP−A−239400を参照。
【0039】
好ましくは、CDR領域はヒトのフレームワーク領域の中に移植される。ヒトのフレームワーク領域は、多くの方法により、例えばマウスのフレームワーク領域またはマウスのV領域の配列を既知のヒトのフレームワークまたはV領域の配列と比較して、それが有するアミノ酸の類似性または同一性の程度が最大である、または最大であるものの1つであるヒトのフレームワーク領域を選択することにより選択することができる。結果として得られるCDR移植抗体をさらに最適化するために、天然のヒトの配列のフレームワーク領域への改変を行うことができる。
【0040】
一対のVHおよびVLドメインを含む抗体分子が好ましいが、VHまたはVLドメイン配列のどちらかに基づく単一結合ドメインを用いてもよい。単一免疫グロブリンドメイン、特にVHドメインは特異的様式で標的抗原に結合することができることが知られている。
【0041】
単鎖結合ドメインのどちらの場合においても、本明細書の下記においてさらに論じるように、これらのドメインを用いて、IL−17BRに結合することができる2ドメイン抗体分子を形成することができる相補的なドメインをスクリーニングすることができる。
【0042】
抗体分子はさらに、抗体の定常領域またはその一部を含んでいてよい。例えば、VLドメインは、そのC末端において、ヒトCκまたはCλ鎖、好ましくはCλ鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに結合していてよい。同様に、VHドメインに基づく抗体分子は、そのC末端において、いずれかの抗体アイソタイプ、例えばIgG、IgA、IgEおよびIgMならびにアイソタイプサブクラスのいずれか、特にIgG1およびIgG4に由来する免疫グロブリン重鎖の全部または一部に結合していてよい。IgG4が好ましい。Fc領域、例えばWO99/58572において開示されているようなΔnabおよびΔnacを用いてもよい。
【0043】
本発明の抗体分子のフレームワーク領域は、1個以上のグリコシル化部位を含むグリコシル化配列も含んでいてよい。抗体が発現される宿主細胞に依存して、グリコシル化のパターンは異なっていてよい。従って、グリコシル化部位をコードする核酸構築物を改変して部位を除去してよく、あるいはそのような部位をタンパク質中に導入してよい。例えば、真核生物タンパク質中のNグリコシル化部位は、アミノ酸の3つ組Asn−X−Y(ここで、XはPro以外のいずれかのアミノ酸であり、YはSerまたはThrである)を特徴とする。これらの3つ組をコードするヌクレオチド配列への適切な置換、付加または欠失は、結果としてAsn側鎖における炭水化物残基の結合の阻止をもたらすであろう。例えばAsnが異なるアミノ酸で置き換えられるように選択された単一ヌクレオチドの変更は、Nグリコシル化部位を不活性化するのに十分である。タンパク質中のNグリコシル化部位を不活性化するための既知の手順には、米国特許第5,071,972号およびEP276,846において記述されている手順が含まれる。
【0044】
用語“抗原結合ドメイン”は、抗原の一部または全部に特異的に結合し、それに相補的である領域を含む抗体分子の一部を記述する。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分のみに結合することができ、その部分はエピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、1個以上の抗体可変ドメイン(例えばVHドメインからなるいわゆるFd抗体断片)により提供されてよい。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)またはその少なくとも実質的な部分および抗体重鎖可変領域(VH)またはその少なくとも実質的な部分を含む。
【0045】
免疫グロブリン可変ドメインの実質的な部分は、少なくとも3個のCDR領域を、それらの介在するフレームワーク領域と一緒に含むであろう。好ましくは、部分は第1および第4フレームワーク領域のどちらかまたは両方の少なくとも約50%も含み、その50%は第1フレームワーク領域のC末端の50%および第4フレームワーク領域のN末端の50%であろう。可変ドメインの実質的な部分のN末端またはC末端における追加の残基は、通常天然型の可変ドメイン領域と関係しない残基であってよい。例えば、組み替えDNAの技法により作製される抗体分子の構築は、クローニングまたは他の操作工程を容易にするために導入されたリンカーによりコードされるNまたはC末端残基の導入を結果としてもたらしてよい。他の操作工程には、本発明の可変ドメインを、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えばダイアボディの生成において)、または下記でさらに詳細に論じるようなタンパク質標識を含むさらなるタンパク質配列に結合させるためのリンカーの導入が含まれる。
【0046】
抗体分子および抗体分子をコードする核酸は、一般には、それらが天然において関係している物質、例えばそれらがそれらの天然の環境、またはそのような調製がインビトロもしくはインビボで行われる組み換えDNA技術による場合にそれらが調製される環境(例えば細胞培養)において一緒に見付かる他のポリペプチドまたは核酸を含まずに、または実質的に含まずに単離されるであろう。
【0047】
抗体分子および核酸は、希釈剤またはアジュバントとともに配合されてよく、さらに実用目的のために単離されてよい−例えば、免疫アッセイでの使用のためにマイクロタイタープレートをコートするために用いられる場合、その分子は通常はゼラチンもしくは他のキャリヤーと混合されると考えられ、または診断もしくは療法において用いられる場合、医薬的に許容できるキャリヤーもしくは希釈剤と混合されるであろう。抗体分子は、天然にもしくは異種真核細胞(例えばCHOまたはNS0(ECACC 85110503)細胞)の系のどちらかによりグリコシル化されていてよく、またはそれらは(例えば原核細胞における発現により生成される場合)グリコシル化されていなくてよい。
【0048】
抗体配列に加えて、本明細書で記述される抗体分子は、例えばペプチドもしくはポリペプチド、例えば折りたたまれたドメインを形成する、または分子に抗原と結合する能力に加えて別の機能的特徴を与えるための他のアミノ酸を含んでいてよい。
【0049】
一部の態様において、抗体分子は検出可能な、もしくは機能的な標識を有していてよく、またはそれは毒素もしくは酵素に(例えばペプチジル結合またはリンカーを介して)コンジュゲートしていてよい。
【0050】
標識はシグナルを生じる、または誘導されて生じることができるあらゆる分子であることができ、それには蛍光物質(fluorescers)、放射性標識、酵素、化学発光物質(chemiluminescers)または光感作物質が含まれるが、それらに限定されない。従って、結合は蛍光もしくは発光、放射活性、酵素活性または光吸収により検出および/または測定することができる。
【0051】
適切な標識には、131Iまたは99Tcのような放射性標識が含まれ、それは抗体画像化の技術において既知である従来の化学を用いて抗体分子に結合させることができる。標識には酵素標識、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(“G6PDH”)、アルファ−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼも含まれる。標識には蛍光標識または蛍光物質、例えばフルオレセインおよびその誘導体、蛍光色素、ローダミン化合物および誘導体ならびにGFP(GFPは“緑色蛍光タンパク質”を表す)が含まれる。標識にはさらに、特異的な同属の検出可能な部分、例えば標識されたアビジンへの結合を介して検出することができるビオチンのような化学的部分が含まれる。
【0052】
追加の特徴がポリペプチドドメインまたは標識である場合、その抗体分子は組み替えの技法により、すなわち抗体分子およびさらなるドメインの融合体をコードする核酸の発現により生成することができる。
【0053】
IL−17BRと反応する抗体分子には、本明細書で述べたVHおよびVLドメインならびにCDRの変形が含まれてよい。変形は配列変更または変異およびスクリーニングの方法により得ることができる。
【0054】
本発明に従う抗体分子は、IL−17BRへの結合に関して、IL−17BRに結合し、かつ本明細書で開示したVHおよび/またはVLドメインを含むあらゆる抗体分子、より好ましくはSEQ ID NO:2のVHドメインおよびSEQ ID NO:4のVLドメインを含む抗体分子と競合する抗体分子であってもよい。従って、本発明のさらなる観点は、IL−17BRへの結合に関してD9.2と競合するヒト抗体抗原結合部位を含む抗体分子を提供する。抗体分子間の競合は、例えばELISAを用いて、および/または特異的なレポーター分子をある抗体分子にタグ付けし(それは他のタグ付けされていない抗体分子(単数または複数)の存在下で検出され得る)、同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する抗体分子(単数または複数)の同定を可能にすることにより、インビトロで容易にアッセイすることができる。
【0055】
IL−17BRへの結合に関してD9.2と競合することができる、IL−17BRに対する抗体分子を得るために、様々な方法が当技術において利用可能である。
論じたように、本明細書において開示されている可変ドメインのアミノ酸配列の変形を用いることができる。個々の変形は1個以上のアミノ酸配列の変更(アミノ酸残基の付加、削除、置換および/または挿入)を含んでいてよく、それは約20個未満の変更、約15個未満の変更、約10個未満の変更または約5個未満の変更、4、3、2または1個の変更であってよい。変更は1個以上のフレームワーク領域および/または1個以上CDR中でなされてよい。
【0056】
実質的に本明細書で述べられている通りであるCDRアミノ酸配列は、ヒト可変ドメインまたはその実質的な部分中でCDRとして保持されていてよい。例えば、実質的に本明細書で述べられている通りであるVH CDR3配列は、ヒト重鎖可変ドメインまたはその実質的な部分中でVH CDR3として保持されていてよい。
【0057】
本発明の別の観点は、IL−17BRに結合し、かつ実質的にSEQ ID NO:7で述べられている通りであるVH CDR3を含む抗体VHドメインを含む抗体分子を提供する。
【0058】
抗体分子は、それぞれ実質的にSEQ ID NO:5、6および7で述べられている通りであるVH CDR1、CDR2およびCDR3を含むVHドメインを含んでいてよい。
【0059】
VHドメインはVLドメイン、例えばそれぞれ実質的にSEQ ID NO:8、9および10で述べられている通りであるCDR1、CDR2およびCDR3を有するVLドメインと対をなしてよい。
【0060】
一部の態様において、抗体分子はそれぞれ実質的にSEQ ID NO:5、6および7で述べられている通りであるVH CDR1、CDR2およびCDR3を含むVHドメイン;ならびにそれぞれ実質的にSEQ ID NO:8、9および10で述べられている通りであるCDR1、CDR2およびCDR3を有するVLドメインを含んでいてよい。
【0061】
VHおよびVLドメインはヒトまたは非ヒトのフレームワーク領域、例えばそれぞれ実質的にSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4のフレームワーク領域で述べられている通りであるフレームワーク領域を有していてよい。
【0062】
一部の態様において、抗体分子はそれぞれ実質的にSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:4で述べられている通りであるVHおよびVLドメイン配列を含んでいてよい。
【0063】
“実質的に述べられている通り”により、本発明の関係のあるCDRまたはVHもしくはVLドメインが、配列が本明細書で述べられている明記された領域と同一であるか、または高度に類似しているかのどちらかであろうことを意味する。“高度に類似している”により、1から5個まで、好ましくは1から4個まで、例えば1から3個まで、または1もしく2個、または3もしくは4個のアミノ酸置換がCDRおよび/またはVHもしくはVLドメイン中でなされてよいことを意図する。
【0064】
抗体分子の配列の変形は、D9.2 VHおよび/またはVL遺伝子の一方または両方のランダム突然変異生成を実施して可変ドメイン全体の内部に変異を生じさせることにより生成することができる。そのような技法は、エラープローンPCRを用いたGramら(1992, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89:3576-3580)により記述されている。
【0065】
用いることができる別の方法は、VHまたはVL遺伝子のCDR領域に突然変異生成を誘導することである。そのような技法は、Barbasら(1994, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 91:3809-3813)およびSchierら(1996, J. Mol. Biol. 263:551-567)により開示されている。
【0066】
上記の全ての技法はそういうものとして当技術で既知であり、それら自体は本発明の部分を形成しない。当業者はそのような技法を用いて当技術の型にはまった方法論を用いて本明細書で記述したような抗体分子を提供することができるであろう。
【0067】
従って、本発明の別の観点は、以下の:
SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:4のCDR配列の1個以上(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個または6個全て)を有する抗体分子をコードする出発核酸を提供し;
CDR配列(単数または複数)を変更するために前記の核酸を改変し;
前記の改変された抗体分子を発現させ;そして
前記の改変された抗体分子をIL−17BRに対する結合に関して試験する
ことを含む、IL−17BRに対する抗体分子を得るための方法を提供する。
【0068】
好ましくは、修飾は、結合親和性の多様性を有する改変された配列のレパートリーを提供するために、複数の出発核酸分子に対して実施されるであろう。
出発核酸は好ましくは、SEQ ID NO:2それ自体の形または別のフレームワーク配列中に保持された形のどちらかで、SEQ ID NO:2の3個の重鎖CDR全てを含む。
【0069】
改変は単一のCDR、例えばCDR3において行われてよく、または改変は2個もしくは3個のCDR領域に対して同時に行われてよい。
本発明で用いられる可変ドメインはあらゆる生殖細胞系もしくは再編成されたヒト可変ドメインから得られてよく、または既知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインであってよい。本発明で記述されるCDR配列(例えばCDR3)は、組み換えDNA技術を用いてCDR(特にCDR3)を欠く可変ドメインのレパートリーの中に導入することができる。
【0070】
例えば、Marksら(Bio/Technology, 1992, 10:779-783)は、可変ドメイン領域の5’末端において、または5’末端に隣接して方向づけられたコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第3フレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと合わせて用いて、CDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーを提供する、抗体可変ドメインのレパートリーを生成する方法を記述している。Marksらはさらに、このレパートリーをどのようにして特定の抗体のCDR3と組み合わせることができるかを記述している。類似の技法を用いて、本発明のCDR3由来配列を、CDR3を欠くVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルして、シャッフルされた完全なVHまたはVLドメインを同種のVLまたはVHドメインと組み合わせて、本明細書で記述される抗体分子を提供することができる。次いで、レパートリーを適切な宿主系、例えばWO92/01047のファージディスプレイ系で提示し、適切な抗体分子が選択されるようにすることができる。レパートリーは、10個以上の個々のメンバー、例えば10から10または1010個までのメンバーのいずれかで構成されていてよい。
【0071】
類似のシャッフルまたは組み合わせの技法がStemmer(Nature, 1994, 370:389-391)によっても開示されており、βラクタマーゼ遺伝子に関する技術を記述しているが、そのアプローチを抗体の生成に関して用いることができることを認めている。
【0072】
従って、本発明のさらなる観点はIL−17BRに特異的な抗体分子を調製する方法を提供し、方法は以下の:
(a)置き換えられるCDR3を含むか、またはCDR3をコードする領域を欠いているかのどちらかであるVHドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供し;
(b)前記のレパートリーを、実質的にSEQ ID NO:7で述べられている通りのアミノ酸配列をコードするドナー核酸と、前記のドナー核酸がレパートリー中のCDR3領域の中に挿入されるように組み合わせて、VHドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供し;
(c)前記の生成物レパートリーの核酸を発現させ;
(d)IL−17BRに特異的な抗体分子を選択し;そして
(e)前記の抗体分子またはそれをコードする核酸を回収する
ことを含む。
【0073】
生成物レパートリーは、同じベクターまたは異なるベクターからVLドメインと共発現させることができる。VLドメインは本明細書で記述されるVLドメイン、例えばSEQ ID NO:4のVLドメインであってよく、または鎖のシャッフルに関して下記で記述されるように1個以上の異なるVLドメインであってよい。
【0074】
実質的にSEQ ID NO:10で述べられている通りのVL CDR3を、置き換えられるCDR3を含むか、またはCDR3をコードする領域を欠いているかのどちらかであるVLドメインをコードする核酸のレパートリーと組み合わせる類似の方法を用いてもよい。上記の方法に関して、VL生成物レパートリーは同じベクターまたは異なるベクターからVHドメインと共発現させることができる。VHドメインは本明細書で記述されるVHドメイン、例えばSEQ ID NO:2のVHドメインであってよく、または鎖のシャッフルに関して下記で記述されるように1個以上の異なるVHドメインであってよい。
【0075】
同様に、3個のCDRの1個以上または全てをVHまたはVLドメインのレパートリーの中に移植し、次いでそれをIL−17BRに特異的な抗体分子(単数または複数)に関してスクリーニングすることができる。
【0076】
この方式で得られた抗体分子は、本発明のさらなる観点を形成する。
本発明の別の観点は、IL−17BRに関する抗体抗原結合ドメインを得るための方法であって、本明細書で記述される抗体分子のVHドメイン(上記で論じたような変形を含む)を1種類以上のVLドメインと組み合わせ、VH/VLの組み合わせ(単数または複数)をIL−17BRに関する抗体抗原結合ドメインに関して試験することを含む方法を提供する。
【0077】
前記のVLドメインは、実質的に本明細書で述べられている通りであるアミノ酸配列を有していてよい。例えば、VLドメインは実質的にSEQ ID NO:4で述べられている通りであってよい。
【0078】
本明細書で開示されているVLドメインの1個以上の配列の変形を1個以上のVHドメインと組み合わせる類似の方法を用いてもよい。
これは、WO92/01047において開示されているようないわゆる階層的二重組み合わせアプローチ(hierarchical dual combinatorial approach)を用いるファージディスプレイスクリーニング法により達成することができ、ここで、HまたはL鎖のクローンのどちらかを含む個々のコロニーを用いて他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全ライブラリーを感染させ、得られた二本鎖抗体分子を、ファージディスプレイの技法、例えば参考文献において記述されている技法に従って選択する。
【0079】
本発明の別の観点は、IL−17BRに関する抗体分子の選択のための方法を提供し、方法は以下の:
(a)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを提供し;
(b)前記のVHドメインを複数の抗体VLドメインと組み合わせて抗体分子を提供し;
(c)前記の抗体分子をIL−17BRへの結合に関してスクリーニングし;そして
(d)IL−17BRに結合する抗体分子を選択する
ことを含む。
【0080】
そのような方法において、VHおよびVLドメインは組み替えDNAにより、特にファージまたはファージミドDNAにより発現されるタンパク質の形で提供されてよい。
複数のVLドメインは、10個以上の個々のドメイン、例えば10から10または1010個までのドメインのいずれかであってよい。
【0081】
IL−17BRは当技術においてIL−25R、IL−17RBまたはIL−17RH1とも呼ばれ、商業的な供給源(例えばR&D Systems、米国ミネソタ州)からFc融合タンパク質として入手可能であり、またはそれは当技術において入手可能なIL−17BRの配列への参照によりクローニングもしくは合成することができる。
【0082】
マウスのIL−17BR(遺伝子ID:核酸:NM_019583.3 GI:142368701;NP_062529.2 GI:83025064)は、Tian et al., 2000 (下記の参考文献11)により記述されている。ヒトのIL−17BR(遺伝子ID:55540、核酸:NM_018725.3 GI:112382255;タンパク質 NP_061195.2 GI:27477074)はShi, Y., et al., 2000 (下記の参考文献10)により記述されている。
【0083】
抗体の産生または免疫アッセイにおける使用に関して、組み換えIL−17BRの断片、特に細胞外ドメインを含む断片を用いることができる。
さらなる観点において、本発明は、上記のような抗体分子、VHドメイン、またはVLドメイン、例えばそれぞれSEQ ID NO:2および4のVHまたはVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸、ならびに上記のような抗体分子、VHドメイン、またはVLドメインを調製する方法であって、前記の核酸を前記の抗体分子、VHドメイン、またはVLドメインの生成をもたらすための条件の下で発現させ、それを回収することを含む方法を提供する。
【0084】
本発明の別の観点は、本明細書で開示されるVH CDRまたはVL CDR配列、特にSEQ ID NO:5、6および7から選択されるVH CDR、SEQ ID NO:8、9および10から選択されるVL CDR、最も好ましくはD9.2のVH CDR3(SEQ ID NO:7)をコードする核酸、通常は単離された核酸を提供する。
【0085】
本発明の核酸は、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:3の配列もしくはその関連する部分(例えばCDRをコードする領域)、または例えば部位指定突然変異生成により本発明の他のVHおよびVLドメインをコードするように改変されたこれらの配列の変形を含んでいてよい。しかし、コドン使用頻度は、例えば、望まれる宿主細胞中での配列の発現を最適化するために変更されてよい。
【0086】
本発明の別の観点は、本発明の抗体分子をコードする単離された核酸を提供する。核酸にはDNAおよびRNAが含まれる。好ましい観点において、本発明は上記で定めたような本発明のCDRまたはVHもしくはVLドメインをコードする核酸を提供する。
【0087】
本発明に従う核酸はDNAまたはRNAを含んでよく、完全に、または部分的に合成によるものであってよい。本明細書で述べられる核酸配列への参照は、文脈が別のことを要求しない限り、明記された配列を有するDNA分子を含み、TをUで置き換えた明記された配列を有するRNA分子を含む。
【0088】
本発明の観点は、少なくとも1種類の上記の核酸を含む、例えばプラスミド、ウイルス、例えばファージ、またはファージミド、コスミド、転写もしくは発現カセットの形のベクターも提供する。
【0089】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および必要に応じて他の配列を含む適切な調節配列を含む適切なベクターを選択または構築することができる。さらなる詳細に関して、例えばMolecular Cloning: a Laboratory Manual:第2版、Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。
【0090】
ベクターには、インビボでヒト細胞に感染することができるウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、レトロウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクターも含まれる。そのようなベクターは、本発明の抗体分子をヒトまたは動物の対象の細胞中で発現させて、抗体分子の産生および前記の対象への送達を提供するために有用である可能性がある。
【0091】
本発明の抗体分子をコードする核酸配列は、1観点において、宿主細胞中で抗体分子の発現をもたらすためのプロモーターに操作できるように(operably)連結されるであろう。配列は、宿主細胞中での、および/または宿主細胞からの抗体分子の発現および/または分泌を促進するためのリーダー配列をその5’末端に含んでいてよい。当技術において、数多くの適当なリーダー配列がそういうものとして既知であり、当業者は宿主細胞を考慮してそれを選択することができる。
【0092】
例えば核酸構築物の調製、突然変異生成、配列決定、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作のための多くの既知の技法およびプロトコルが、Current Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubel et al.編、John Wiley & Sons, 1992において詳細に記述されている。SambrookらおよびAusubelらの開示を本明細書に援用する。
【0093】
別の観点は、本発明の核酸(例えばベクターの形の核酸配列)で形質転換された宿主細胞を提供する。
核酸は宿主細胞のゲノム(例えば染色体)の中に組み込まれてよい。組み込みは、ゲノムとの組換えを促進する配列を標準的な技法に従って含ませることにより促進することができる。
【0094】
別の観点は、本明細書で記述される抗体分子の生成の方法であって、コードしている核酸から発現を引き起こすことを含む方法を提供する。そのような方法は、前記の抗体分子の産生のための条件の下で宿主細胞を培養することを含んでいてよい。
【0095】
発現による生成の後、VHもしくはVLドメインまたは抗体分子をいずれかの適切な技法を用いて単離および/または精製することができ、その後必要に応じて使用される。生成の方法は、生成物の単離および/または精製の工程を含んでいてよい。
【0096】
生成物の精製の後、抗体分子を、例えばタンパク質の安定性または生物学的半減期を変化させる、例えば増大させる保護基を導入するために、物理的または化学的手段により修飾することができる。例えば、そのような効果を得るためのタンパク質のPEG化は当技術においてそういうものとして知られており、本発明の抗体分子はPEG化された形であってよい。
【0097】
生成の方法は、生成物を少なくとも1種類の追加の構成要素、例えば医薬的に許容できる賦形剤を含む組成物中に配合することを含んでいてよい。
本発明は、上記の1個または核酸またはベクターを含む組み換え宿主細胞も提供する。
【0098】
様々な異なる宿主細胞における抗体分子のクローニングおよび発現ための系は周知である。適当な宿主細胞には、細菌、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドの発現のために当技術において利用可能な哺乳類細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス黒色腫細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞および多くの他のものが含まれる。一般的に好ましい細菌宿主は大腸菌である。
【0099】
大腸菌のような原核細胞における抗体および抗体断片の発現は、当技術において十分に確立されている。総説に関して、例えば、Plueckthun,A. Bio/Technology 9:545-551(1991)を参照。真核生物の培養細胞における発現も抗体分子の生成のための選択肢として当業者に利用可能であり、最近の総説に関して、例えばRef, M.E. (1993) Curr. Opinion Biotech. 4: 573-576; Trill J.J. et al. (1995) Curr. Opinion Biotech 6: 553-560を参照。
【0100】
本明細書で示すデータは、IL−17BRに対する抗体が喘息の重要な症状である気道の反応性亢進をインビボで予防または低減するのに有効であることを初めて示す。
本発明の別の観点は、それを必要とする対象(例えばヒト)において気道の反応性亢進を予防または低減する方法であって、対象にIL−17BRに結合する抗体分子、例えば上記の抗体分子を投与することを含む方法を提供する。本発明の別の観点は、それを必要とする対象において喘息または他のIL−25に仲介される病気を予防、低減または処置する方法であって、対象にIL−17BRに結合する抗体分子を投与することを含む方法を提供する。他のIL−25に仲介される病気にはアレルギーおよび結腸炎が含まれ、それには潰瘍性結腸炎およびクローン病が含まれる。喘息にはアレルギー性喘息が含まれる。
【0101】
従って、本発明の別の観点は、それを必要とする対象(例えばヒト)において結腸の炎症を予防または低減する方法であって、対象にIL−17BRに結合する抗体分子、例えば上記の抗体分子を投与することを含む方法を提供する。本発明の別の観点は、IBDを予防、低減または処置する方法であって、対象にIL−17BRに結合する抗体分子を投与することを含む方法を提供する。IL−25に仲介される病気には潰瘍性結腸炎およびクローン病が含まれる。他のIL−25に仲介される病気には、慢性結腸炎を含む結腸炎(結腸の炎症)が含まれる。
【0102】
上記の方法は上記の抗体分子(その組成物を含む)を用いて実施することができ、それはIL−17BRに結合してIL−17BR/IL−25結合の作用に拮抗するのに有用であり、IL−17BRが役割を果たしている様々な疾患および障害において療法的可能性を有する。その方法は、IL−17BRに結合してIL−17BR/IL−25結合の作用に拮抗する他の抗体分子(その組成物を含む)を用いて実施することもでき、それは下記で付随する実施例において記述されているように得ることができる。
【0103】
上記の抗体分子(その組成物を含む)は、ヒトまたは動物の対象における処置(予防的処置を含む)または診断の方法において用いられてよい。そのような処置または診断の方法(予防的処置を含んでよい)は、前記の対象に有効量の本発明の抗体分子を投与することを含むことができる。典型的な疾患および障害を下記でさらに論じる。
【0104】
本明細書で記述した抗体分子(その組成物を含む)のヒトまたは動物の対象への投与のための薬物の製造における使用も提供する。
療法的利益を提供するために抗IL−17BR抗体分子が用いられて良い臨床的適応症には、IL−17BR/IL−25結合が病理学的重要性を有するあらゆる病気が含まれる。従って、一般に、本明細書で記述される抗体分子は、例えば望ましくないTh2応答または2型応答と関係するあらゆるIL−25に仲介される病気の処置において用いられてよい。一部の態様において、本発明の抗体分子はアレルギーおよび喘息、特に喘息の処置のために用いられてよい。一部の態様において、本発明の抗体分子はIBDの処置、特にUCおよび/またはCDの処置のために用いられてよい。
【0105】
抗IL−17BR処置は注射(例えば静脈内)または局所的送達方法により与えられてよい。抗IL−17BRは遺伝子に仲介される技術により送達されてよい。代替的な配合ストラテジーは、経口または坐剤経路に適した製剤を提供することができる。投与の経路は、処置の物理化学的特性により、有効性を最適化する、または副作用を最小限にするような疾患に関する特別な考慮により決定されてよい。
【0106】
提供される組成物は個体に投与されてよい。投与は好ましくは“療法上有効量”であり、これは患者に利益を示すのに十分である。そのような利益は、少なくとも1種類の症状の少なくとも改善である可能性がある。投与される実際の量ならびに投与の速度および時間推移は、処置されている対象の性質および重症度に依存するであろう。処置の処方、例えば投与量等の決定は、一般的な開業医および他の医師の責任の範囲内である。抗体の適切な用量は当技術において周知である;Ledermann J.A. et al. (1991) Int. J. Cancer 47: 659-664; Bagshawe K.D. et al. (1991) Antibody, Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4: 915-922を参照。
【0107】
正確な用量は、抗体が診断のためのものか処置のためのものか、処置される領域の大きさおよび位置、抗体の正確な性質(例えば、完全抗体、断片またはダイアボディ)、ならびに抗体に結合されたいずれかの検出可能な標識または他の分子の性質を含む多くの要因に依存するであろう。典型的な抗体の用量は0.5mg〜1.0gの範囲内であると考えられ、これはボーラスとして、または必要とされる用量を達成するために必要に応じて数時間にわたる注入として静脈内に投与されてよい。他の投与の方式には、類似した総累積用量を達成するための数時間にわたる静脈内注入が含まれる。これは成人患者の単独処置のための用量であり、それは小児および幼児に関しては比例的に調節されてよく、他の抗体形式に関しても分子量に比例して調節されてよい。処置は医師の自由裁量で毎日、週2回、週1回または月1回の間隔で繰り返されてよい。
【0108】
さらなる投与の方式では体内留置用デバイスのプレコーティングまたはその中への組み込みが用いられ、そのための抗体の最適量は適切な実験により決定されるであろう。
一部の態様における抗体分子はF(ab)またはscFvのような単量体断片であってよい。そのような抗体断片は、半減期が比較的短い、および受容体のクラスター化により引き起こされる可能性のある血小板活性化の危険性がより低いという利点を有する可能性がある。血小板活性化を引き起こすクラスター化は、例えばIL−17BR分子またはFcγRIIを有するIL−17BR分子のどちらかのクラスター化である可能性がある。
【0109】
完全抗体が用いられる場合、それは好ましくは血小板を活性化および/または破壊できない形である。IgG4アイソタイプあるいはIgG1バックボーン由来の“デザイナー”アイソタイプ(新規のFc遺伝子構築物 WO99/58572,Clark,Armour,Williamson)が好ましい選択肢である。F(ab’)のようなより小さな抗体断片を用いてもよい。加えて、二重エピトープ特異性(例えば、scFv D9.2により認識されるエピトープに関する)を有する完全抗体または断片(例えば、F(ab’)またはダイアボディ)を用いてもよい。そのような態様は受容体のクラスター化を促進する可能性があるが、個々の受容体に対する高い結合速度(association rate)はこの問題を排除することができる。
【0110】
本明細書で記述される抗体分子は通常は医薬組成物の形で投与されると考えられ、それは抗体分子に加えて少なくとも1種類の構成要素を含んでいてよい。
従って、本発明に従う、および本発明に従う使用のための医薬組成物は、有効成分に加えて、医薬的に許容できる賦形剤、キャリヤー、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の物質を含んでいてよい。そのような物質は非毒性であるべきであり、有効成分の有効性を妨げるべきでは無い。キャリヤーまたは他の物質の正確な性質は投与経路に依存すると考えられ、それは経口であってよく、または注射、例えば静脈内注射によるものであってよい。
【0111】
抗体分子の療法的配合物は、望まれる程度の純度を有する抗体分子を任意の生理学的に許容できるキャリヤー、賦形剤、または安定剤(例えば“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”、第20版、2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)と混合することにより、凍結乾燥された粉末または水溶液の形で貯蔵用に調製することができる。許容できるキャリヤー、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度において受容者に対して非毒性であり、以下のものを含む:緩衝剤、例えばホスフェート、シトレートおよび他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン;グルコース、マンノース、またはデキストリン類を含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール類、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばTween、Pluronicsまたはポリエチレングリコール(PEG)。
【0112】
インビボ投与に用いられる抗体分子に関して、それは無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後での滅菌濾過膜を通す濾過により容易に成し遂げられる。抗体分子は通常は凍結乾燥された形で、または溶液で保管されるであろう。
【0113】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形であってよい。錠剤は、固体のキャリヤー、例えばゼラチンまたは補助剤を含んでいてよい。液体の医薬組成物は、一般に液体のキャリヤー、例えば水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水溶液、デキストロースもしくは他の糖類の溶液またはグリコール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含まれていてよい。
【0114】
静脈内注射、または苦痛のある部位における注射に関して、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口で許容できる水溶液の形であろう。当業者は、例えば等張性ビヒクル、例えば塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、乳酸加リンゲル注射剤を用いて適当な溶液を調製する能力が十分にある。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤が必要に応じて含まれてよい。
【0115】
本発明の抗体分子は単独で、または他の処置との組み合わせで、処置される病気に応じて同時または順次のどちらかで投与されてよい。他の処置には、適切な用量の鎮痛薬、例えば非ステロイド系抗炎症薬(例えばアスピリン、パラセタモール、イブプロフェンもしくはケトプロフェン)もしくはアヘン剤、例えばモルヒネの投与;制吐剤の投与;または喘息に対して有効な少なくとも1種類の他の化合物、一般には気道の弛緩をもたらす、もしくは粘液の排除を増進する気管支拡張剤、例えばベータ作動薬(例えばサルブタモール、サルメテロール(salmeterol))、クロモグリク酸二ナトリウム、ステロイド類もしくはPDEIVの阻害剤の投与が含まれてよい。
【0116】
本発明の別の観点は、本明細書で提供される抗体分子のIL−17BRへの結合を引き起こす、またはそれを可能にすることを含む方法を提供する。記載したように、そのような結合は、例えば、抗体分子、または抗体分子をコードする核酸の投与後にインビボで起こる可能性があり、またはそれは例えばELISA、ウエスタンブロッティング、免疫細胞化学、免疫沈降もしくは親和性クロマトグラフィーにおいてインビトロで起こる可能性がある。
【0117】
IL−17BRへの抗体分子の結合の量を測定することができる。定量は試験試料中の抗原の量と関連づけられる可能性があり、それは診断上重要である可能性がある。
試料に対する抗体分子の反応性は、あらゆる適切な手段により決定されてよい。放射免疫アッセイ(RIA)は1つの可能性である。放射性標識された抗原を標識されていない抗原(試験試料)と混合し、抗体分子に結合させる。結合した抗原を結合していない抗原から物理的に分離し、抗体に結合した放射性抗原の量を測定する。試験試料中に存在する抗原が多ければ多いほど、抗体分子に結合する放射性抗原は少なくなるであろう。レポーター分子に連結された抗原またはアナログを用いて、非放射性抗原での競合的結合アッセイを用いることもできる。レポーター分子は、スペクトル的に孤立した吸収または発光特性を有する蛍光色素、リン光体(phosphor)またはレーザー色素であってよい。適当な蛍光色素には、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリンおよびTexas Redが含まれる。適当な色原体色素には、ジアミノベンジジンが含まれる。
【0118】
他のレポーターには、視覚的に観察される、電気的に検出またはそうでなければ記録される検出可能なシグナルを直接または間接的に生じさせることができる、高分子コロイド状粒子または粒子性物質、例えば着色された、磁性または常磁性であるラテックスビーズ、および生物学的に、または化学的に活性な薬剤が含まれる。これらの分子は、例えば色を発するもしくは変化させる、または電気的特性の変化を引き起こす反応を触媒する酵素であってよい。それらは、エネルギー状態間の電子遷移が結果として特徴的なスペクトル吸光または発光をもたらすように分子的に励起可能であってよい。それらにはバイオセンサーと共に用いられる化学成分が含まれてよい。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出系を用いてもよい。
【0119】
個々の抗体−レポーターコンジュゲートにより生成されるシグナルは、(正常および試験)試料中の関係のある抗体結合の定量可能な絶対的または相対的データを得るために用いることができる。
【0120】
本発明は、競合アッセイにおいて抗原レベルを測定するための上記の抗体分子の使用、すなわち、競合アッセイにおいて本明細書で提供される抗体分子を用いることにより試料中の抗原のレベルを測定する方法も提供する。これは、結合した抗原の結合していない抗原からの物理的分離が必要とされない場合であってよい。結合すると物理的または光学的変化が起こるような抗体分子へのレポーター分子の連結は1つの可能性である。レポーター分子は、検出可能な、好ましくは測定可能なシグナルを直接または間接的に生成することができる。レポーター分子の連結は、直接または間接的、例えばペプチド結合を介して共有結合的、または非共有結合的であってよい。ペプチド結合を介した連結は、抗体およびレポーター分子をコードする遺伝子融合物の組み換え発現の結果であってよい。
【0121】
本発明は、例えばバイオセンサー系において本明細書で記述される抗体分子を用いることにより抗原のレベルを直接測定することも提供する。
結合を決定する方式は本発明の特徴では無く、当業者は彼らの好みおよび一般的知識に従って適切な方式を選択することができる。
【0122】
本発明はさらに、IL−17BRへの結合に関して、抗原に結合し、かつ実質的に本明細書で述べられている通りであるアミノ酸を有するCDRを含むVHおよび/またはVLドメインまたは実質的に本明細書で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するVHおよび/またはVLドメインを含むあらゆる抗体分子と競合する抗体分子に及ぶ。抗体分子間の競合は、例えば特定のレポーター分子を他のタグ付けされていない抗体分子(単数または複数)の存在下で検出され得る1つの抗体分子にタグ付けし、同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する抗体分子の同定を可能にすることにより、インビトロで容易にアッセイすることができる。競合は、例えば、ELISAまたはフローサイトメトリーを用いて決定することができる。
【0123】
競合反応は1種類以上の追加の、または向上した特性を有している可能性のある1種類以上の抗体分子、例えばD9.2の誘導体を選択するために用いることができる。これは、IL−17BRがそのミニリガンドからではなく抗体分子から溶出されること以外は、本発明に従うD9.2に関する選択方法に類似している。これは、親と直接競合するより大きな割合の娘抗体分子をもたらすはずであるため、重要である可能性がある。実際、選択されるそのような娘抗体分子は親よりも大きな抗原への親和性を有している可能性がある(ファージ1個あたり1個より多くの抗体分子の提示の結果もたらされる可能性のある結合活性(avidity)の増強が可能になる)。向上した親和性を有する“娘”ファージ抗体分子に関する現在の選択方法には、以下のことが含まれる:
元の親抗体の解離定数よりも低い(標識された)標的抗原の濃度の使用;
Hawkins et al. (1992)において示されたような、競合相手としての過剰量の標識されていない標的抗原の使用。しかし、それらは、“向上した”抗体が親と同じエピトープを置き換え/占有するに違いないことを必ずしも明確に示さない。溶出工程の組み込みは、親と置き換わるより高い割合の娘抗体分子をもたらすはずである。この方法で選択された娘抗体分子は、親抗体分子に非常に類似したエピトープに結合するが、より大きな親和性を有する可能性がある。
【0124】
競合に関する試験において、IL−17BRのペプチド断片、特に目的のエピトープを含むペプチドを用いることができる。どちらかの末端にエピトープ配列に加えて1個以上のアミノ酸を有するペプチドを用いることができる。そのようなペプチドは“本質的に特定の配列からなる”と言われてよい。本発明に従う抗体分子は、それらのIL−17BRへの結合が、所与の配列を有する、または含むペプチドにより阻害されるようなものであってよい。これに関する試験において、どちらかの配列に加えて1個以上のアミノ酸を有するペプチドを用いることができる。
【0125】
特定のペプチドに結合する抗体分子は、例えばペプチド(単数または複数)を用いたパニング(panning)によりファージディスプレイライブラリーから単離することができる。
【0126】
本発明の様々なさらなる観点および態様は、本開示を考慮して、当業者には明らかであろう。この明細書中で言及された全ての文書をそのまま本明細書に援用する。
“および/または”は、本明細書で用いられる場合、2つの明記された特徴または構成要素のそれぞれの、他方を含む、または含まない、具体的な開示として受け取られるべきである。例えば“Aおよび/またはB”は、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示として、まさにあたかも本明細書においてそれぞれを個別に述べたかのように受け取られるべきである。
【0127】
文脈が別途指示しない限り、上記で述べた特徴の記述および定義は本発明のあらゆる特定の観点または態様に限定されず、記述されている全ての観点および態様に等しく適用される。
【0128】
本発明の特定の観点および態様は、ここで実施例として、上記の図と関連して説明されるであろう。
【実施例】
【0129】
材料および方法
ELISAによる上清のスクリーニング
96ウェルイムノプレート(Nunc)を、50μl/ウェルの0.1M NaHCO中1μg/mlのマウスまたはヒトのIL−17Br−Fc融合タンパク質で、4℃において一夜または室温でにおいて3時間コートした。次の日に、ウェルをPBS 0.05% tweenで5回洗浄し、次いでPBS 10% FCS中で室温において4時間ブロッキングした。その同じ4時間の期間の間に、ハイブリドーマ細胞培養からの上清を50μg/ml hIgGと共に保温した。これは、融合タンパク質のFc部分に対して産生された上清中のあらゆる抗体をブロッキングするためのものであった。それぞれの試料中の抗Fc抗体の量の指標を与えるために、この処置を受けなかった上清もELISAに含められた。
【0130】
4時間のブロッキングの工程の後、イムノプレートをPBS 0.05% tweenで5回洗浄し、上清を50μl/ウェルでそのまま(neat)添加した。上清を4℃で一夜または室温で3時間プレート上でそのままにした後、ウェルをPBS 0.05% tweenで5回洗浄した。50μlのPBS 10% FCS中0.5μg/ml抗マウス免疫グロブリン−HRP(DAKO)をそれぞれのウェルに添加し、室温で1時間そのままにした後、PBS 0.05% tweenでの最後の8回の洗浄を行った。結合した抗体をELISA現像溶液で検出し、A405をTecanイムノプレートリーダー上で記録した。
【0131】
融合タンパク質のFc部分に対して産生された抗体をIL−17BRに対して誘導された抗体から識別するため、対照のプレートを上記のプロトコルに従ってhIgGでコートし、上清を添加した。hIgGでコートされたプレート上で高いA405を与えた試料は、さらなる試験に関して考慮されなかった。
【0132】
形質移入されたCOS7細胞のフローサイトメトリーによるスクリーニング
マウスおよびヒトのIL−17BR遺伝子に関するcDNAをpME18S発現ベクターの中に別々にクローニングし、これをそれぞれmIL17BR−pME18SおよびhIL17BR−pME18Sと名付けた。
【0133】
DMEM 10%FCS中の2×10個のCOS7細胞を10cmディッシュ上に蒔き、37℃で一夜培養した。次の日に、4μgのmIL17BR−pME18SまたはhIL17BR−pME18Sを500μlの血清を含まないOptimem中の10μlのlipofectamineと混合し、室温で30分間インキュベートした後、蒔かれた細胞の上に添加した。次いで細胞を37℃で6時間インキュベートした後新しい培地を添加した。形質移入の48時間後にFACS分析のために細胞を回収した。
【0134】
FACS分析のため、形質移入された、または形質移入されていない細胞を、PBS 2%FCS中の様々な濃度の候補の抗IL17BR抗体と共に30分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄した後、PBS 2%FCS中2μg/mlの抗マウスIgG FITC(BD Pharmingen)と共にさらに30分間インキュベートした。最後に、細胞をPBS 2%FCS中で2回洗浄し、IL−17Brの発現に関してBecton Dickinson FACScalibur機械上で分析した。
【0135】
D9.2の交差反応性
ELISAプレートを、2μg/mlのIL−17RファミリーのメンバーであるIL−17RA、IL−17BR、IL−17RC、もしくはIL−17RD、またはIL−13Rα対照(R&D Systems)で、4℃において一夜コートした後、PBS/0.05% tweenで洗浄し、PBS/10%FCSで室温において4時間ブロッキングした。ビオチン化D9.2をPBS/10%FCS中1μg/mlで添加し、4℃において一夜インキュベートした。次いでプレートを洗浄した後、ストレプトアビジン−HRPを添加し、室温で1時間インキュベートした。次いでプレートを最後に洗浄した後、ELISA現像溶液を添加し、405nmにおける吸光度を測定した。
【0136】
マウスモノクローナル抗体−ヒトIL−17BR結合アッセイ
ヒトIL−25(hIL17e)(R&D sys)をNunc Maxisorpマイクロウェルプレート上に0.5μg/mlでコートし、室温で1時間30分インキュベートした。プレートを3回洗浄し、次いでTris/1% BSAで1時間ブロッキングした。hIL17Br/Fcキメラ(R&D sys)を100ng/mlに希釈した。それぞれの精製されたマウスモノクローナル抗体をhIL17Br/Fc(100ng/ml)中で希釈し(×100)、100ng/mlのhIL17Br/Fc溶液中で1μg/mlの終濃度にした。[抗体×hIL17Br/Fc]混合物を室温で1時間30分インキュベートした。[抗体×hIL17Br/Fc]混合物をhIL17eでコートされたプレートに添加して1時間30分インキュベートした後、3回洗浄した。抗hIgG(Fc)−HRPコンジュゲート(Serotec)をプレートに添加し、室温で45分間インキュベートした後、3回洗浄し、TMBで現像した。反応を1M HCLで止めた。光学密度を450nmにおいて読み、全ての読みから試薬ブランクの読みを引いた。
【0137】
IL−17BR/IL25阻害アッセイ
腸間膜(Mysenteric)リンパ節を未処置のBALB/cマウスから取り出し、70μmのセルストレーナーを通過させて単一細胞懸濁液を得た。細胞をPBS 2%FCS中で洗浄し、次いでT細胞およびB細胞を激減させた。これは、細胞を5μg/mlのビオチン化抗CD19および抗CD3抗体と共に氷上で30分間インキュベートし、次いで抗ビオチンDynabeads(Invitrogen)と共に細胞あたりビーズ4個の濃度で4℃で20分間インキュベートすることにより達成された。次いで混合物を洗浄した後、磁石の上を通過させて標識されたTおよびB細胞を標識されていない非B非T(NBNT)細胞画分から分離した。NBNT画分の純度をFACSにより試験し、B220、CD4およびCD8に関して染色した。
【0138】
次いでNBNT細胞を丸底96ウェルプレート上に3×10細胞/ウェルで蒔き、RPMI10%のみまたは10ng/ml IL−25を含むRPMI 10%FCS中で72時間培養した。候補のIL−17BRブロッキング抗体をウェルに最大濃度2μg/mlから系列希釈で添加し、1.5時間インキュベートした後、ウェルに10ng/ml IL−25を添加した。次いでプレートを37℃で72時間保温した後、上清を集め、Quantikine ELISA(R&D Systems)によりIL−13タンパク質含有量に関して試験した。
【0139】
CD4+(Tおよび/またはNKT)細胞に関して、未処置の野生型BALB/cマウスから脾臓を取り出し、単一細胞懸濁液を調製した。赤血球溶解を行った後、細胞をMACS緩衝液(Miltenyi Biotec)中で洗浄した。CD4+細胞の単離を、CD4 MicroBeads(Miltenyi Biotec)を用いた正の選択により、製造業者の説明書に従って実施した。次いでCD4+細胞を96ウェルプレートにおいて1×10細胞/mlで、RPMI単独、または1μg/mlのD9.2有りもしくは無しで10ng/ml IL−25を補ったRPMIのどちらかの中で培養した。細胞を72時間培養し、次いでQuantikine ELISA(R&D Systems)によるIL−13タンパク質レベルの分析のために上清を得た。
【0140】
腎癌細胞株のバイオアッセイ
ヒトTK−10腎癌細胞を国立癌研究所(NCI)から得た。RENCA細胞をCentocor R&Dの細胞生物学部門から得た。両方の細胞株を、10% FCSを含むDMEM増殖培地中で、37℃、5%COにおいて加湿した雰囲気中で維持した。細胞を96ウェル平底組織培養処理プレートにおいて完全増殖培地100μlの総体積中で2.5×10細胞/ウェルの密度で蒔いた。一夜培養した後、細胞を1×PBSで洗浄し、次いでOptiMEM減少血清培地中で100ng/mlのIL−25および10ng/mlのTNF−α、または培地のみの対照と共に24時間培養した。細胞上清をIL−25刺激の20〜24時間後に集め、その後のKCに関するマウスQuantikine ELISAまたはIL−8に関するヒトQuantikine ELISA(R&D Systems)を用いた可溶性KC/IL−8の放出の分析のために−20℃で保管した。
【0141】
D9.2またはIgG1対照を、IL−25に仲介されるIL−8(KC)の放出を妨げる能力に関して試験した。阻害実験に関して、一定量のIL−25(100ng/ml)を異なる濃度のD9.2または抗c−mycマウスIgG1(クローン9E10.2)対照抗体と共に室温で30〜60分間前インキュベートした後、それぞれの細胞に添加した。TNF−α(10ng/ml)を、IL−25タンパク質/D9.2の添加の直前に細胞に添加した。IL−8(KC)の放出の決定を、上記のように刺激の24時間後に実施した。
【0142】
マウス
アレルギー性喘息の実験モデルにおける使用のためのBALB/cマウスはHarlan UKから得て、IBDの実験モデルにおける使用のためのBALB/cマウスはCharles Riverから得た。マウスはSABU/CBS/Ares−MRCまたは国立心臓・肺研究所の施設で特定病原体除去環境において維持された。この報告で概説されている全ての動物実験は、英国内務省の認可を得て行われた。
【0143】
感作およびアレルゲンへの曝露
アレルギー性喘息の実験モデルに関して、BALB/cマウスの野生型マウスまたはBALB/cバックグラウンドでのIL−17BRノックアウトマウスを、0日目および12日目において、ミョウバンと複合体化したOVA(20μg/注入)または1:1 PBS:ミョウバン(対照)の腹腔内投与により感作した。19、20、21日目に、1日あたり20分間のPBSまたは1%OVAのエアロゾル投与を行った。22日目に動物を屠殺し、組織を収集した。
【0144】
IBDの実験モデルに関して、BALB/cマウスを0日目においてオキサゾロン(OXA)の100%エタノール中における4%(w/v)溶液またはエタノールのみ(対照)の皮膚適用により感作した。オキサゾロンの50%エタノール中における3%(w/v)溶液または50%エタノールのみ(対照)の直腸内投与を7日目に実施した。9日目に動物を屠殺し、組織を収集した。
【0145】
抗IL−17BR抗体の投与
アレルギー性喘息の実験モデルにおいて、抗体処置を受けるマウスに関して、PBS中250μgのD9.2または抗c−mycマウスIgG1対照抗体(クローン9E10.2)の腹腔内注入を、それぞれの噴霧の2時間前に与えた。それぞれのマウスは3用量の抗体を与えられた。
【0146】
IBDの実験モデルにおいて、抗体処置を受けるマウスに関して、PBS中500μgのD9.2または抗KLHマウスIgG1対照抗体の腹腔内注入を、感作の24時間前(−1日目)および負荷の24時間前(6日目)に与えた。従って、それぞれのマウスは2用量の抗体を与えられた。
【0147】
AHRの評価
図8(e)に関して、マウスを低エンドトキシンオボアルブミンの腹腔内(i.p.)投与により感作し、6日間毎日エアロゾル化したPBS(対照)またはOVAを用いた噴霧により負荷をかけた。
【0148】
D9.2抗体処置を受けたマウスは、PBS中250μgのD9.2または抗c−mycマウスIgG1対照抗体(クローン9E10.2)の腹腔内注入を、最後の3回の噴霧のそれぞれの2時間前に与えられた。最後のエアロゾル負荷の24時間後に、拘束全身プレチスモグラフ(EMMS,UK)を用いてAHRを評価した。動物に麻酔をかけ、気管開口し(tracheostomised)、175呼吸/分の速度で、200μl/1拍の一回呼吸量で人工呼吸した(MiniVent 845人工呼吸器、EMMS,UK)。安定なベースライン肺抵抗を3分間記録した後、増大する濃度の塩化アセチル−β−メチルコリン(メタコリン)(Sigma−Aldrich)を超音波噴霧器を用いてエアロゾルにより10秒間投与し、肺抵抗を3分間の期間記録した。eDaqソフトウェアを用いて気道抵抗、コンプライアンス、および標準的な肺のパラメーターを分析した。
【0149】
縦隔リンパ節の再刺激
PBSまたはOVAで処理されたマウスからの縦隔リンパ節を70μmのセルストレーナーを押し通して単一細胞懸濁液を得た。細胞を計数し、丸底96ウェルプレート上に3×10細胞/ウェルで蒔いた。細胞をRPMI 10%FCS単独中で、または100μg/ml OVAの存在下で72時間培養した。次いで上清を集め、IL−13濃度に関してQuantikine ELISAキット(R&D Systems)を用いてアッセイした。
【0150】
IBDの評価
図9に関して、マウスを0日目においてオキサゾロンのエタノール中における溶液の皮膚適用により感作し、7日目にオキサゾロンのエタノール中における溶液で負荷をかけた。対照はエタノールのみを与えられた。抗体処置を受けたマウスは、D9.2または抗KLHマウスIgG1抗体(対照)の腹腔内注入を、−1日目および6日目に与えられた。9日目において動物を屠殺し、組織を収集した。(図9(a)および9(b)において、7、8および9日目はそれぞれ0、1および2日目と番号を付けられている)。
【0151】
7、8および9日目にマウスの体重を量り、それぞれの動物に0から3までの臨床スコアを割り当てるために、Wang et al., 2004において記述されている方法に基づいてそれらの全体的な外観および行動を評価し、7日目の臨床スコアを0と設定した(図9b)。9日目においてマウスを屠殺し、それぞれのマウスの結腸を回収し、詳しく調べ、測定した(図9(c))。
【0152】
実施例1:IL−17BRに対する抗体の生成
我々は初めに、マウスをヒトIL−17BRのアミノ酸配列に由来する合成ペプチドで免疫することにより抗体を生成することを試みた。モノクローナル抗ペプチド抗体が生成されたにも関わらず、我々は成熟したヒトIL−17BRタンパク質を認識するであろう抗体を生成できなかった。次に我々は、野生型のマウスを免疫することによりヒトIL−17BRタンパク質の融合タンパク質に対する抗体を生成することを試みた。多数の免疫処置およびハイブリドーマ融合にも関わらず、我々はIL−17BRに対する高親和性交代を生成できなかった。
【0153】
マウスもある形のIL−17BRを発現しており、我々は我々が有用な抗体を産生させることができないのはマウスおよびヒトのIL−17BR分子の間での新規のエピトープの欠如により抑制されているのかどうかを仮定した。我々は、もはやIL−17BRを発現しないであろうIL−17BR欠損マウス系列を生成した。IL−17BR欠損マウスは、オルタナティブスプライシングした変種を含むあらゆる形のIL−17BRを除去するように設計された。ヒトおよびマウスのIL−17BRの間で結合面が高い程度で保存されていることは野生型のマウスにおいてブロッキング抗体を産生させる可能性を低減させる可能性があり、従って内在性のIL−17BRを除去することは、IL−17BRのリガンド結合部位に対する抗体の開発を促進する可能性がある。この戦略は、マウスおよびヒト両方のIL−25の結合を妨害するであろうIL−17BRに対する抗体を産生させる可能性も増大させた。交差反応性抗体は疾患のマウスモデルにおいて有効性を試験することができるため、これは有用である。
【0154】
IL−17BR欠損動物の生成および特性付けの後、IL−17BR−Fc融合タンパク質による免疫処理を実施した。この戦略は野生型のマウスを用いるよりも上手くいくことが判明したが、まだ候補抗体を同定するために多数のハイブリドーマをスクリーニングする必要があった。
【0155】
マウスIL−17BR−Fc融合タンパク質に対して免疫されたil17br−/−マウスにおいて生成された抗体の大きな集団を、ヒトおよびマウスのIL−17BRに対する結合に関してELISAによりスクリーニングした。同定された抗IL−17BR抗体の1つ(D9.2)は、ELISAによりマウスおよびヒトのIL−17BR両方に(図1)、ならびにマウスIL−17BR cDNAまたはヒトIL−17BR cDNAを形質移入したCOS細胞上で発現された天然型のマウスおよびヒトのIL−17BRタンパク質両方に(図2)十分に結合した。
【0156】
実施例2:D9.2のインビトロ試験
D9.2の特異性を、D9.2と他のIL−17受容体ファミリーのメンバーとの相互作用をアッセイすることにより試験した。D9.2はIL−17A受容体(IL−17RA)、IL−17C受容体(IL−17RC)またはIL−17D受容体(IL−17RD)と交差反応しなかった(図3)。
【0157】
スクリーニングはIL−17BRと結合するいくつかの抗体を同定したが、D9.2のみがヒトIL−25とヒトIL−17BRの間の相互作用を阻害することができた(図4)。
【0158】
D9.2を、それのIL−25の生物学的活性を阻害する能力に関して試験した。IL−25は2型サイトカイン類、例えばIL−13の放出を、最初に自然免疫非B/非T(NBNT)細胞から(Fallon et al., 2006; Fort et al., 2001)、およびT細胞から(Angkasekwinai et al., 2007)誘導する。さらに、ヒトTK−10(腎癌細胞株)およびマウス腎癌(RENCA)細胞株は共に、TNF−αおよびIL−25による刺激に応答してケモカインIL−8(マウスではKCとして知られている)を分泌する(Sayers et al., 1990)。
【0159】
インビトロのバイオアッセイにおいて、D9.2はIL−17BR/IL−25結合により引き起こされる生理活性−すなわちマウス初代NBNT細胞(図5a)およびCD4+T/NKT細胞(図5b)によるIL−25依存性のIL−13の産生を阻害した。
【0160】
さらに、D9.2はIL−25に刺激されたマウスRENCA細胞からのKCの産生をインビトロで阻害した(図6)。
意味深いことに、D9.2はヒトIL−25の生物学的活性も阻害することができた。D9.2はヒトTK−10細胞によるIL−25依存性のIL−8の分泌を用量依存的様式で阻害した(図7)。
【0161】
これらの特性の組み合わせを、喘息の処置における有用性を実証するために、インビボの系においてさらに調べた。追加の実験はIBDの処置における有効性を実証する。
実施例3:アレルギー性喘息の実験モデル
BALB/cマウスをまず抗原OVAで感作した後、エアロゾル化したOVAで負荷をかけた。感作し、負荷をかけたBALB/cマウスは特徴的な喘息の表現型を発現する。これは、PBSで負荷をかけた対照BALB/cマウスと比較した、誘発剤メタコリンへの曝露の後のAHRの増大、気道の好酸球浸潤、杯状細胞過形成および血清IgEの分泌を特徴とする。
【0162】
このモデルを用いて、BALB/cマウスを負荷をかける時期においてアイソタイプ対照である抗−c−myc IgG1(クローン9E10.2)または抗IL−17BRクローンD9.2のどちらかで処置した。意味深いことに、D9.2の投与は抗原負荷の後に産生されるIL−13および抗原再刺激の後に産生されるIL−5のレベルを、抗原負荷の非存在下で、またはIL−17BR欠損マウスにおいて見られるレベルに類似したレベルまで低減した(図8aおよびb)。抗原で負荷をかけたマウスの肺におけるIL−13産生細胞の数も、そのようなレベルまで低減した(図8c)。同様に、ガンマ/デルタT細胞の疾患に関連する増殖も、D9.2を用いた処置の後に妨げられていたことが分かった(図8d)。Jinら(2007, J Immunol.)は、ガンマ/デルタT細胞が存在しないことはAHRを発現できないことをもたらすことを示し、これは抗IL−17BR抗体が喘息の発現において不可欠であることが知られている2種類の経路−IL−13の産生およびガンマ/デルタT細胞の反応性を阻害することができることを示唆している。さらに、D9.2を用いた処置は、ヒトの喘息の重要な特徴である気道の反応性亢進を、喘息のマウスモデルにおいて低減した。
【0163】
実施例4:炎症性腸疾患(IBD)の実験モデル
BALB/cマウスをまずハプテンオキサゾロン(OXA)で感作した後、同じ化学物質の直腸内注入により負荷をかけた。感作し、負荷をかけたマウスは、(エタノールのみの対照と比較して)体重の減少、糞便中の血を伴う結腸の短縮および大腸における炎症を特徴とする、特徴的なIBDの表現型を発現する。
【0164】
このモデルを用いて、BALB/cマウスをOXAを用いた感作および負荷両方の前にアイソタイプ対照である抗KLH IgG1または抗IL−17BR(クローンD9.2)のどちらかで処置した。D9.2の投与は動物の疾患指数を低減させ、これは結果としてより低い死亡率(図9(a))および臨床スコアの向上、すなわち体重の減少ならびに動物の行動および外観において示されるIBDの臨床徴候の低減(図9(b))をもたらした。さらに、D9.2は炎症および出血の結果もたらされる結腸の短縮に対して保護し(図9(c))、D9.2で処置されたマウスの結腸は抗KLH対照抗体を与えられたマウスと比較してより少ない炎症および出血を示した。
【0165】
実施例5:D9.2のクローニングおよび配列決定
D9.2から免疫グロブリン配列をクローニングするため、D9.2細胞クローンからRNAを単離し、逆転写反応によりcDNAを調製した。
【0166】
免疫グロブリン重鎖(IgH)cDNAを、保存された5’VH領域のプライマーであるMHV2(SEQ ID NO:11)をIgG1定常領域のプライマーであるMHCG1(SEQ ID NO:12)と組み合わせて用いるPCRにより増幅した。
【0167】
同様に、免疫グロブリン軽鎖(IgK)を、保存された5’IgK領域のプライマーであるMKV3(SEQ ID NO:13)をカッパ定常領域のプライマーであるMKC(SEQ ID NO:14)と組み合わせて用いて増幅した。
【0168】
PCR反応全体を通して、耐熱性ポリメラーゼPhusion(NEB F−531L)を用いた。
D9.2のVH2+MHCG1による増幅産物をpCRII(登録商標)Blunt−TOPO(登録商標)ベクターの中に、TOPO−blunt cloning(登録商標)キット(Cat 45−0245)を用いて直接ライゲーションし、軽鎖の増幅反応の増幅産物も同様にした。ライゲーションされたpCRII−bluntベクター構築物で形質転換した大腸菌TOP10細菌を、LB−アンピシリン−XGal寒天プレート上で、白いコロニーを選んで寒天の格子の上に移し、PCRスクリーニング混合物の中に入れることによりクローニングした。クローニングされたプラスミド挿入断片をPCRで増幅した。増幅産物をゲル電気泳動し、予想された産物を同定した。正しい大きさのPCR増幅産物を生成するそれぞれのクローンの一夜培養物(5ml)をQIAprep Spin Miniprep Kit Protocol(cat 27106)を用いて処理し、DNAプラスミドのミニプレップを生成した。それぞれの選択されたプラスミドを、M13順方向および逆方向プライマーを用いて両方向で配列決定した。
【0169】
RT−PCR、クローニング、およびDNA配列分析の完全なサイクルを繰り返して、それぞれの免疫グロブリン鎖に関する2つの完全に独立した配列情報のセットを得た。
VHおよびVカッパ遺伝子の完全な推測されたヌクレオチド配列を、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:3として示す。これらの配列はそれぞれの可変遺伝子分節の開始部分においてリーダー配列を含んでおり、それは新しく合成された抗体鎖を小胞体の中に輸送するために用いられるシグナル配列をコードしている;それらは最終的な重鎖および軽鎖には存在しない。
【0170】
免疫学および分子生物学の試薬
【0171】
【表1】

【0172】
略語
AHR 気道反応性亢進
℃ 摂氏温度
bp 塩基対
CD クローン病
CDR 相補性決定領域
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DNA デオキシリボ核酸
ELISA 酵素結合免疫吸着検査法
FACS 蛍光活性化細胞選別
FCS ウシ胎児血清
g グラム
hr 時間
HRP ホースラディッシュペルオキシダーゼ
IBD 炎症性腸疾患
Ig 免疫グロブリン
i.p. 腹腔内
KLH キーホールリンペットヘモシニアン
mAb モノクローナル抗体
min 分
NBNT マウス腸間膜リンパ節から単離された非B/非T細胞
nm ナノメートル
OD 光学密度
OVA オボアルブミン
OXA オキサゾロン
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RENCA 腎癌
RH 組み換え重鎖
RK 組み換えカッパ鎖
TMB 3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン
UC 潰瘍性結腸炎
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VL 免疫グロブリン軽鎖可変領域
VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
配列
SEQ ID NO:1 D9.2 VHをコードするヌクレオチド配列
【0173】
【化1】

【0174】
SEQ ID NO:2 D9.2 VHのアミノ酸配列
【0175】
【化2】

【0176】
SEQ ID NO:3 D9.2 VLをコードするヌクレオチド配列
【0177】
【化3】

【0178】
SEQ ID NO:4 D9.2 VLのアミノ酸配列
【0179】
【化4】

【0180】
SEQ ID NO:5 D9.2 VH CDR1のアミノ酸配列
【0181】
【化5】

【0182】
SEQ ID NO:6 D9.2 VH CDR2のアミノ酸配列
【0183】
【化6】

【0184】
SEQ ID NO:7 D9.2 VH CDR3のアミノ酸配列
【0185】
【化7】

【0186】
SEQ ID NO:8 D9.2 VL CDR1のアミノ酸配列
【0187】
【化8】

【0188】
SEQ ID NO:9 D9.2 VL CDR2のアミノ酸配列
【0189】
【化9】

【0190】
SEQ ID NO:10 D9.2 VL CDR3のアミノ酸配列
【0191】
【化10】

【0192】
SEQ ID NO:11 MHV2プライマーの配列
【0193】
【化11】

【0194】
SEQ ID NO:12 MHCG1プライマーの配列
【0195】
【化12】

【0196】
SEQ ID NO:13 MKV3プライマーの配列
【0197】
【化13】

【0198】
SEQ ID NO:14 MKCプライマーの配列
【0199】
【化14】

【0200】
参考文献
【0201】
【化15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−17BRに結合し、かつ実質的にSEQ ID NO:7で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含む抗体分子。
【請求項2】
VHドメインがさらに実質的にSEQ ID NO:5で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するCDR1および実質的にSEQ ID NO:6で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するCDR2を含む、請求項1に記載の抗体分子。
【請求項3】
VHドメインがヒトのフレームワーク領域を含む、請求項1または2に記載の抗体分子。
【請求項4】
VHドメインがSEQ ID NO:2を含む、請求項1または2に記載の抗体分子。
【請求項5】
さらに実質的にSEQ ID NO:8で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するCDR1、実質的にSEQ ID NO:9で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するCDR2および実質的にSEQ ID NO:10で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するCDR3を有するVLドメインを含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項6】
VLドメインがヒトのフレームワーク領域を含む、請求項5に記載の抗体分子。
【請求項7】
VLドメインがSEQ ID NO:4を含む、請求項5に記載の抗体分子。
【請求項8】
以下のもの:
SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVHドメイン;ならびに、
SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVLドメイン
を含む、前記の請求項のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項9】
Fab、F(ab’)、scFv抗体断片である、前記の請求項のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項10】
抗体定常領域を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体分子。
【請求項11】
定常領域がIgG1またはIgG4の定常領域である、請求項10に記載の抗体分子。
【請求項12】
完全抗体を含む、請求項10に記載の抗体分子。
【請求項13】
前記の請求項のいずれか1項に記載の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項14】
前記の請求項のいずれか1項に記載の抗体分子の発現のための発現ベクターであって、発現ベクターがプロモーターに操作できるように連結された請求項13に記載の核酸を含む、前記発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載の発現ベクターを保持する宿主細胞。
【請求項16】
抗体分子を生成する方法であって、その方法が請求項15に記載の宿主細胞を前記の抗体分子の産生のための条件の下で培養することを含む、前記方法。
【請求項17】
さらに前記の抗体分子を単離することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに抗体分子を少なくとも1種類の追加の構成要素を含む組成物の中に配合することを含む、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体分子および医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項20】
凍結乾燥された粉末の形である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
喘息の処置または予防のための方法であって、前記の方法が処置を必要とする対象に有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体分子または請求項19に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
喘息の処置または予防における使用のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体分子または請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
炎症性腸疾患の処置または予防のための方法であって、前記の方法が処置を必要とする対象に有効量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体分子または請求項19に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
炎症性腸疾患が潰瘍性結腸炎またはクローン病である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
炎症性腸疾患の処置または予防における使用のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体分子または請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
炎症性腸疾患が潰瘍性結腸炎またはクローン病である、請求項25に記載の使用のための抗体分子。
【請求項27】
IL−17BRに対する抗体分子を生成する方法であって、以下の:
(a)実質的にSEQ ID NO:7で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを提供し;
(b)前記のVHドメインを複数の抗体VLドメインと組み合わせて抗体分子を提供し;
(c)前記の抗体分子をIL−17BRへの結合に関してスクリーニングし;そして
(d)IL−17BRに結合する抗体分子を選択する
ことを含む、前記方法。
【請求項28】
VHドメインが請求項2〜4のいずれか1項において定義されている通りである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
IL−17BRに対する抗体分子を生成する方法であって、以下の:
(a)置き換えられるCDR3を含むか、またはCDR3をコードする領域を欠いているかのどちらかであるVHドメインをコードする核酸の出発レパートリーを提供し;
(b)前記のレパートリーを、実質的にSEQ ID NO:7で述べられている通りであるアミノ酸配列を有するVH CDR3をコードするドナー核酸と、前記のドナー核酸がレパートリー中のCDR3領域の中に挿入されるように組み合わせて、VHドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供し;
(c)前記の生成物レパートリーの核酸を発現させ;
(d)IL−17BRに特異的な抗体分子を選択し;そして
(e)前記の抗体分子またはそれをコードする核酸を回収する
ことを含む、前記方法。
【請求項30】
前記の生成物レパートリーをVLドメインと共発現させる、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−522531(P2012−522531A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504066(P2012−504066)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000639
【国際公開番号】WO2010/116123
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】