説明

IL6免疫治療剤

IL6/IL6受容体複合体を認識する結合ドメインポリペプチドおよびその融合タンパク質、ならびにそれらの組成物および使用方法。本開示は、結合性のポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子、ならびにそのような分子を組換えにより産生するためのベクターおよび宿主細胞、ならびに過剰増殖疾患(例えば、骨髄腫)、自己免疫疾患または炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)などの疾患または障害の少なくとも1つの症状の治療および改善を含めて、多様な診断および治療の適用において、本開示の結合性ポリペプチドまたは融合タンパク質を使用するための組成物および方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インターロイキン6(「IL6」)は、宿主免疫応答、炎症、造血および腫瘍形成を調節する多面発現性サイトカインである。IL6の生物学は、重複するが、同一ではない細胞集団に対して作動する2つの明確に異なるシグナル伝達機序を有する複数成分の分子系によって媒介される。これらは、シス−シグナル伝達(「古典的」シグナル伝達としても公知である)、およびトランス−シグナル伝達と呼ばれている。
【0002】
シス−シグナル伝達においては、IL6は、細胞表面のIL6受容体、すなわち、IL6RαまたはCD126(以前は、gp80と呼ばれていた)と呼ばれている、IL6Rのリガンド結合部分に結合する。それに続いて、細胞に結合しているIL6/IL6Rα複合体が、リガンド結合性ではないが、シグナル伝達性である膜タンパク質gp130(IL6ST、IL6RβまたはCD130としても公知である)に結合し、これによって、gp130の二量体化およびシグナル伝達の開始が誘導される。したがって、シス−シグナル伝達は、細胞表面IL6Rαを発現するサブセットの細胞型に制限され、こうした細胞型は一般に、例えば、マイトジェンにより活性化されたB細胞、T細胞のサブセット、末梢単核球および特定の腫瘍に限定される。細胞表面に生じた三元複合体は、IL6:IL6Rα:gp130=2:2:2の比で非常に安定な六量体に集合する(Boulangerら(2003年)Science 300巻:2101頁)。
【0003】
トランス−シグナル伝達においては、可溶性IL6Rα(「sIL6Rα」)が、IL6と複合体を形成し、生じた循環sIL6xR複合体が、任意のgp130発現細胞(しかし、IL6Rαも発現している細胞ではない、Tagaら(1989年)Cell 58巻:573頁)に結合し、これを活性化することができる。ヒト身体の多く、おそらく全てまたはほとんど全ての細胞が、gp130を発現する。gp130が偏在性であることから、トランス−シグナル伝達は、多くの細胞型に影響を及ぼし、それによって、時には疾患を引き起こす恐れがある。
【0004】
また、膜タンパク質gp130は、可溶性の形態(「sgp130」)をとっても存在し、これは、循環中のsIL6xR複合体に結合することができる。しかし、sIL6xR複合体は、膜および可溶性のgp130に等しく結合する(Jonesら、(2005年)J. Interferon Cytokine Res. 25巻:241頁を参照されたい)。したがって、モル過剰量のsgp130は、(利用可能な循環中のsIL6xR複合体の量を低下させることによって)トランス−シグナル伝達を阻害することができる。このモル過剰量のsgp130が、シス−シグナル伝達に顕著な影響を及ぼすことはない。これは、細胞に結合しているIL6/IL6Rα複合体に対しては、sgp130の親和性が、細胞表面のgp130と比較して数桁低いからである(例えば、Jostockら(2001年)Eur. J. Biochem. 268巻:160頁を参照されたい)。したがって、spg130は、IL6の活性を阻害するのに有用であり得ることが示唆されている(例えば、Jostockら(2001年)Eur. J. Biochem. 268巻:160頁を参照されたい)。しかし、IL6に加えて、gp130は、gp130サイトカインファミリーに対する一般的なシグナル伝達タンパク質である。これらには、白血病抑制因子(LIE)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、ニューロポイエチン(NP)、カルジオトロフィン(cardiotropin)様サイトカイン(CLC)、オンコスタチンM(OSM)、IL−27、IL−31およびカルジオトロフィン−1(CT−1)が含まれる。したがって、sgp130は、トランス−シグナル伝達を阻害することができるが、そのような化合物の患者への投与は、いくつかの意図しない有害作用を生じる恐れがある。
【0005】
IL6産生の増加が、アルツハイマー病、自己免疫(例えば、関節リウマチ、SLE)、炎症、心筋梗塞、パジェット病、骨粗鬆症、固形腫瘍(例えば、結腸癌、RCC、前立腺癌および膀胱癌)、特定の神経学的癌、ならびにキャッスルマン病、いくつかのリンパ腫サブタイプ、CLLおよび特に多発性骨髄腫などのB細胞悪性疾患を含めた、種々の疾患プロセスに関係付けられている。場合によっては、IL−6は、増殖経路に関係付けられている。これは、IL−6が、ヘパリン結合性の上皮増殖因子および肝細胞増殖因子などのその他の因子と共に作用することによる。
【0006】
いくつかのIL6およびIL6Rαの抗体アンタゴニストが公知である。例えば、IL6については、Wayら(特許文献1)が、IL6またはsIL6xR複合体のgp130への結合を立体的に遮断する、IL6に対する抗体を開示している(また、特許文献2も参照されたい)。例えば、IL6Rαについては、Kishimoto(特許文献3)が、IL6の活性を阻害する、IL6Rαに対する抗体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0178098号明細書
【特許文献2】米国特許第7,291,721号明細書
【特許文献3】米国特許第5,670,373号明細書
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1A〜Cは、ELISAにより測定されるように、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性(Xceptor(商標))融合タンパク質が、ハイパーIL6と特異的に結合し、これら多重特異性融合タンパク質が、IL6およびIL6R単独よりもハイパーIL6と優先的に結合することを示す図である。試験した2種の融合タンパク質だけがIL6と結合し、sIL6Rとは1つも結合しなかった。
【図1B】図1A〜Cは、ELISAにより測定されるように、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性(Xceptor(商標))融合タンパク質が、ハイパーIL6と特異的に結合し、これら多重特異性融合タンパク質が、IL6およびIL6R単独よりもハイパーIL6と優先的に結合することを示す図である。試験した2種の融合タンパク質だけがIL6と結合し、sIL6Rとは1つも結合しなかった。
【図1C】図1A〜Cは、ELISAにより測定されるように、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性(Xceptor(商標))融合タンパク質が、ハイパーIL6と特異的に結合し、これら多重特異性融合タンパク質が、IL6およびIL6R単独よりもハイパーIL6と優先的に結合することを示す図である。試験した2種の融合タンパク質だけがIL6と結合し、sIL6Rとは1つも結合しなかった。
【図2】図2は、ELISAにより測定されるように、様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つと融合したTNFR外部ドメインを含有する多重特異性融合タンパク質が、TNF−αと結合することを示す図である。
【図3】図3は、ELISAにより測定されるように、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性融合タンパク質が、ハイパーIL6およびTNF−αと同時に結合できることを示す図である。
【図4】図4は、ELISAにより測定されるように、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性融合タンパク質が、gp130をハイパーIL6との結合からブロックすることを示す図である。
【図5A】図5Aおよび5Bは、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性融合タンパク質が、TF−1細胞の、(A)IL6誘導性増殖または(B)ハイパーIL6誘導性増殖をブロックすることを示す図である。
【図5B】図5Aおよび5Bは、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性融合タンパク質が、TF−1細胞の、(A)IL6誘導性増殖または(B)ハイパーIL6誘導性増殖をブロックすることを示す図である。
【図6】図6は、ELISAにより測定されるように、TNFR外部ドメインと融合した様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つを含有する多重特異性融合タンパク質が、TNF−αをTNFRとの結合からブロックすることを示す図である。
【図7】図7は、様々な異なるハイパーIL6結合ドメインの1つと融合したTNFR外部ドメインを含有する多重特異性融合タンパク質が、L929細胞のTNF−α誘導性死滅をブロックすることを示す図である。
【図8】図8は、ELISAにより測定した、様々な異なるハイパーIL6結合ドメイン(TRU(S6)−1004、1007、1008、1013、1018、1019、1029および1038と称される)の1つを含有する小モジュラー免疫薬(SMIP(商標))融合タンパク質が、ハイパーIL6と結合することを示す図である。
【図9】図9は、ELISAにより測定した、TRU(S6)−1063−TRU(S6)−1066と称されるSMIP融合タンパク質が、ハイパーIL6と結合することを示す図である。
【図10】図10は、Biacore(登録商標)により測定した、SMIP融合タンパク質TRU(S6)−1002が、IL6:sIL6R複合体と結合することを示す図である。
【図11】図11AおよびBは、本明細書に開示した、抗IL6結合ドメインの結合部位に関する研究の結果を示す図である。
【図12】図12は、IL6結合ドメインと融合したTNFR外部ドメインを含有する多重特異性融合タンパク質が、HepG2細胞と結合しなかったことを示す図である。
【図13】図13は、IL6結合ドメインと融合したTNFR外部ドメインを含有する多重特異性融合タンパク質が、マウスにおけるHIL6−誘導性SAA応答をブロックしたことを示す図である。
【図14】図14は、IL6結合ドメインと融合したTNFR外部ドメインを含有する多重特異性融合タンパク質が、マウスにおけるHIL6誘導性sgp130応答をブロックしたことを示す図である。
【図15】図15AおよびBは、IL6結合ドメインと融合したTNFR外部ドメインを含有する多重特異性融合タンパク質の、それぞれ投与2時間後および24時間後の、マウスにおけるTNFα誘導性SAA応答をブロックする能力に関する研究の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は一般に、膜または可溶性のIL6受容体(IL6Rα)とのIL6の複合体に特異的な結合領域または結合ドメインを含有するポリペプチドを提供する(本明細書では、この複合体を、膜IL6Rαまたは可溶性IL6Rα(sIL6Rα)のいずれかに言及する場合には、IL6xRと呼び、sIL6RαとのIL6の複合体のみを指す場合には、sIL6xRを使用する)。この結合領域または結合ドメインは、例えば、sIL6xRとの結合について膜gp130と競合するか、sIL6xRとの可溶性gp130の結合を増大させるか、IL6もしくはIL6Rα単独のいずれかに対するよりも高い親和性をIL6xR複合体に対して示すか、またはこれらの特性の任意の組合せを示すことによって、IL6のシス−シグナル伝達よりも、IL6のトランス−シグナル伝達を優先的に阻害する。また、IL6xRに特異的な結合ドメインは、特定の実施形態では、IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害しない。その他の実施形態では、small modular immunopharmaceutical(SMIP(商標))タンパク質またはリバースSMIP分子(本明細書では、PIMS分子と呼ぶ)などにおいて見出されるように、IL6xR複合体に特異的なそのようなポリペプチド結合ドメインはさらに、融合タンパク質の一部であってもよく、この場合、このポリペプチド結合ドメインは、二量体化ドメイン(例えば、免疫グロブリン定常領域またはそのサブ領域、例として、IgGのCH2ドメインおよびCH3ドメイン)のアミノ末端またはカルボキシ末端と融合している。また、本開示は、単一特異性である(かつ多価である)かまたは多重特異性である複数の結合ドメインを有する融合タンパク質も提供する。例えば、単一特異性の多価の融合タンパク質は、同じ標的、例として、本明細書に記載するIL6xR複合体に特異的な、少なくとも2つの結合ドメインを有することができる。本明細書に記載するIL6xRに特異的な結合ドメインを有する例示的な多重特異性融合タンパク質は、IL6xR以外の標的、例として、TNFαまたはTGFβに特異的な、少なくとも1つの追加の結合領域または結合ドメインを含有することができる。
【0010】
さらに、本開示は、そのような結合性のポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子、ならびにそのような分子を組換えにより産生するためのベクターおよび宿主細胞、ならびに過剰増殖疾患(例えば、骨髄腫)、自己免疫疾患または炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)などの疾患または障害の少なくとも1つの症状の治療および改善を含めて、多様な診断および治療の適用において、本開示の結合性ポリペプチドまたは融合タンパク質を使用するための組成物および方法も提供する。また、本開示の化合物および組成物は、IL6および関連分子の生物学的活性を研究するためのin vitroアッセイおよび細胞に基づくアッセイのための研究ツールとしても有用である。
【0011】
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書において使用しようとする特定の用語の定義を提供することによって、本開示の理解を助けることができる。追加の定義も、本開示の全体を通して記載する。
【0012】
本記載においては、任意の濃度の範囲、パーセントの範囲、割合の範囲、または整数の範囲は、別段の記載がない限り、列挙する範囲に属する任意の整数値、および適宜、その分数(例として、ある整数の10分の1および100分の1)を含むと理解されたい。また、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さなどの任意の物理的特性に関する、本明細書に列挙する任意の数の範囲は、別段の記載がない限り、列挙する範囲に属する任意の整数を含むと理解されたい。本明細書で使用する場合、「約(about)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」は、別段の記載がない限り、表示する範囲、値または構造の±20%を意味する。本明細書で使用する場合、用語「含む(include)」と「含む(comprise)」とは、同義語として使用する。本明細書で使用する場合、用語「a」および「an」は、列挙する構成成分のうちの「1つまたは複数」を指すと理解されるべきである。選択肢(例えば、「または(or)」)の使用は、選択肢のうちの1つ、両方、またはそれらの任意の組合せのうちのいずれかを意味すると理解されるべきである。さらに、本明細書に記載する構造および置換基の種々の組合せから得られる個々の化合物または化合物群は、それぞれの化合物または化合物群が、個々に記載されているのと同じ程度で本出願によって開示されると理解されるべきである。したがって、特定の構造または特定の置換基の選択は、本発明の範囲に属する。
【0013】
本開示に従う「結合ドメイン」または「結合領域」は、例えば、生物学的分子(例えば、IL6もしくはIL6R)、あるいは安定であっても一過性であっても、2つ以上の同じまたは異なる分子の複合体、または集合体もしくは凝集体(例えば、IL6xR複合体)を特異的に認識し、それに結合する能力を有する任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドまたはペプチドであってよい。そのような生物学的分子として、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、アミノ酸、もしくはそれらの誘導体、脂質、脂肪酸、もしくはそれらの誘導体;炭水化物、糖類、もしくはそれらの誘導体;ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド核酸、核酸分子、もしくはそれらの誘導体;糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、リポタンパク質、プロテオリピド、もしくはそれらの誘導体;例えば、生物学的試料に存在し得るその他の生物学的分子;またはそれらの任意の組合せが挙げられる。結合領域は、生物学的分子にかまたはその他の目的の標的に対しての、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換えにより産生された結合パートナーを含む。ウエスタンブロット、ELISAまたはBiacore(登録商標)解析を含めて、特定の標的と特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するための多様なアッセイが公知である。
【0014】
抗体技術に関して当業者によって理解されている用語はそれぞれ、本明細書において明確に定義しない限り、当技術分野で与えられている意味を有する。例えば、用語「V」および「V」はそれぞれ、抗体の軽鎖および重鎖に由来する可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として知られている個別の明確に定義されたサブ領域から構成される。用語「C」および「C」はそれぞれ、「免疫グロブリン定常領域」、すなわち、抗体の軽鎖および重鎖に由来する定常領域を指し、後者の領域は、その領域が由来する抗体のアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)に応じて、CH1、CH2、CH3およびCH4の定常領域ドメインにさらに分割可能であると理解されている。定常領域ドメインの一部がFc領域(「結晶化可能なフラグメント(fragment crystallizable)」領域)を構成し、この領域は、ADCC(抗体依存性細胞媒介型細胞傷害性)、ADCP(抗体依存性細胞媒介型食作用)、CDC(補体依存性細胞傷害性)、および補体結合、Fc受容体に対する結合、in vivoにおける、Fc領域を欠くポリペプチドと比べてより長い半減期、プロテインA結合性、ならびに正におそらく胎盤移行(Caponら(1989年)Nature、337巻:525頁を参照されたい)などの免疫グロブリンのエフェクター機能に関与するドメインを含有する。さらに、Fc領域を含有するポリペプチドは、ポリペプチドの二量体化または多量体化も可能にする。「ヒンジ領域」は、本明細書においては「リンカー」とも呼び、抗体の単鎖の可変結合領域と定常領域との間に挿入され、それらを接続するアミノ酸配列であり、これは、ヒンジの形態をとって、抗体、または抗体様分子に可動性をもたらすことが当技術分野では公知である。
【0015】
抗原結合ドメインおよびエフェクター機能を付与するドメインは、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスの間で交換することができることから、免疫グロブリンのドメイン構造は工学的に作製しやすい。免疫グロブリンの構造および機能が、例えば、Harlowら編、Antibodies: A Laboratory Manual、Chapter 14(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、1988年)に概説されている。広範な序論、および組換え抗体技術の全ての態様に関する詳細な情報を、教科書Recombinant Antibodies(John Wiley & Sons、NY、1999年)に見出すことができる。詳細な抗体工学の実験室プロトコールの包括的なコレクションを、R. KontermannおよびS. Duebel編、The Antibody Engineering Lab Manual(Springer Verlag、Heidelberg/New York、2000年)に見出すことができる。
【0016】
本明細書で使用する場合、「誘導体」は、化合物の化学的または生物学的に改変した別形(version)であって、親化合物に構造的に類似し、その親化合物から(実際または理論的に)誘導可能である別形を指す。一般に、親化合物は、「誘導体」を生成するための出発材料であり得、一方、「類似体」を生成するためには、親化合物を出発材料として必ずしも使用するとは限らない場合がある点で、「誘導体」は、「類似体」とは異なる。誘導体は、親化合物とは異なる化学的または物理的な特性を示す場合がある。例えば、誘導体は、親化合物と比較して、より親水性である場合もあり、または変化した反応性を示す場合(例えば、標的に対する親和性を変化させるアミノ酸の変化を有するCDR)もある。
【0017】
用語「生物学的試料」は、被験体もしくは生物学的供給源に由来する血液試料、生検検体、組織外植片、器官培養物、生物学的液体、または任意のその他の組織、細胞もしくはその他の標本を含む。被験体または生物学的供給源は、例えば、ヒトまたは非ヒト動物、初代細胞培養物、または染色体に組み込まれたもしくはエピソーム性の組換え核酸配列を含有し得る遺伝子操作された細胞系、体細胞ハイブリッド細胞系、不死化したもしくは不死化可能な細胞系、分化したもしくは分化可能な細胞系、形質転換細胞系などを含めた、培養馴化細胞系(culture adapted cell line)であってよい。本開示のさらなる実施形態では、被験体または生物学的供給源は、悪性の疾患、障害もしくは状態またはB細胞の障害を含めた、疾患、障害または状態を有することが疑われる場合、あるいはそうしたリスクを有する場合がある。特定の実施形態では、被験体または生物学的供給源は、過剰増殖疾患、炎症性疾患もしくは自己免疫疾患を有することが疑われる場合、またはそうしたリスクを有する場合があり、本開示の特定のその他の実施形態では、被験体または生物学的供給源は、そのような疾患、障害または状態のリスクも、その存在も有さないことが知られている場合がある。
IL6アンタゴニスト
上記のように、本開示は、以下の特性の1つまたは複数を有するIL6xR複合体に特異的な結合領域または結合ドメインを含有する、ポリペプチドを提供する:(1)IL6もしくはIL6Rα単独と比較してIL6xR複合体により大きな親和性、(2)sIL6xR複合体との結合について膜gp130もしくは可溶性gp130と競合する、(3)IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害する、または(4)IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害しない。特定の実施形態では、本開示によるIL6xR複合体に特異的な結合ドメインは、以下の特性を有する:(1)IL6またはIL6Rα単独のいずれに対するよりもIL6xR複合体に対してより大きな親和性、(2)sIL6xR複合体との結合について膜gp130と競合する、(3)IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害する、および(4)IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害しない。例えば、IL6xRに特異的な結合領域または結合ドメインは、免疫グロブリンの可変結合ドメインまたはその誘導体、例えば抗体、Fab、scFvなどであることができる。この開示との関連で、IL6xRに特異的な結合領域または結合ドメインは、本明細書に記載のgp130でないことを理解すべきである。
【0018】
本明細書で用いるように、「IL6xR複合体」または「IL6xR」は、IL6受容体とのIL6の複合体を指し、そこにおいて、IL6受容体(例えばIL6Rα、IL6RA、IL6R1およびCD126としても公知である)は膜タンパク質(本明細書でmIL6RまたはmIL6Rαと称する)または可溶性の形態(本明細書でsIL6RまたはsIL6Rαと称する)である。用語「IL6R」は、mIL6RαおよびsIL6Rαの両方を包含する。一実施形態では、IL6xRは、IL6およびsIL6Rαの複合体を含む。特定の実施形態では、IL6xR複合体は、1つまたは複数の共有結合を通して一緒に保持される。例えば、IL6Rのカルボキシ末端は、ハイパーIL6として公知である複合体を提供するために、ペプチドリンカーを通してIL6のアミノ末端に融合させることができる(例えば、Fischerら(1997年)Nat. Biotechnol. 15巻:142頁を参照されたい)。ハイパーIL6リンカーは、架橋化合物、1〜50個のアミノ酸配列、またはその組合せで構成することができる。ハイパーIL6は、二量体化ドメイン、例えば免疫グロブリンFcドメインまたは免疫グロブリン定常ドメインサブ領域をさらに含むことができる。特定の実施形態では、IL6xR複合体は、非共有結合的相互作用を通して、例えば水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力、塩橋、疎水性相互作用など、またはそれらの任意の組合せによって一緒に保持される。例えば、IL6およびIL6Rは、非共有結合で無理なく結合することができ(例えば、天然に見られるように、または合成もしくは組換えタンパク質として)、または各々は、複合体の安定性をさらに高めるために、免疫グロブリンFcドメインなどの二量体化ドメインに融合させることができる。
【0019】
本明細書で用いるように、「gp130」は、IL6xR複合体に結合するシグナル伝達タンパク質を指す。gp130タンパク質は、膜形態(mgp130)、可溶性形態(sgp130)または任意の他の機能的形態であることができる。例示的なgp130タンパク質は、GenBank受託番号NP_002175.2に記載の配列またはその任意の可溶性もしくは誘導体の形態を有する(例えば、Narazakiら(1993年)Blood 82巻:1120頁またはDiamantら(1997年)FEBS Lett.412巻:379頁を参照されたい)。例示のために、および理論によって縛られることを望まないが、mgp130タンパク質は、IL6/mILRまたはIL6/sILR複合体のいずれかに結合することができるが、sgp130は主にIL6/sILR複合体に結合する(Schellerら(2006年)Scand. J. Immunol. 63巻:321頁を参照されたい)。したがって、本開示の結合ドメイン、またはその融合タンパク質の特定の実施形態は、IL6またはIL6Rα単独のいずれかよりも高い親和性でIL6xRに結合することによって、およびgp130、好ましくはmgp130への結合に対してsIL6xR複合体と競合することによって、あるいはsIL6xR複合体とのsgp130の結合を増強または強化することによって、IL6xR複合体トランス−シグナル伝達を阻害することができる。本開示の結合ドメインは、(1)結合ドメインまたはその融合タンパク質が、sIL6xRへのgp130の結合を阻止し、そして結合ドメインが、sIL6xRとのgp130の結合と比較して、同等以上の親和性でsIL6xRに結合するか、あるいは(2)結合ドメインまたはその融合タンパク質がsIL6xR複合体へのsgp130の結合を強化、増強または促進し、それによってmgp130との結合のためにsIL6xR複合体が利用可能である時間を減少させる場合に、sIL6xRに対するgp130の結合と「競合する」。
【0020】
本開示の結合ドメインおよびその融合タンパク質は、それらが、例えば約10−1、10−1、10−1、10−1、10−1、1010−1、1011−1、1012−1または1013−1以上の親和性またはK(すなわち、1/Mの単位による特定の結合相互作用の平衡結合定数)で標的分子に結合する場合、「免疫特異性」であることができるかまたは所望の程度に結合することができ、例えば、試験試料に存在する他の成分に実質的に結合せずに標的に「特異的または選択的に結合する」ことを含む。「高親和性」結合ドメインは、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも10−1、少なくとも1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも1012−1、少なくとも1013−1、またはそれを超えるKを有する結合ドメインを指す。あるいは、親和性は、Mの単位(例えば、10−5M〜10−13M)を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(K)と定義してもよい。本開示による結合ドメインポリペプチドおよび融合タンパク質の親和性は、従来の技術を用いて容易に決定することができる(例えば、Scatchardら(1949年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 51巻:660頁、および米国特許第5,283,173号、第5,468,614号、Biacore(登録商標)分析、または同等物を参照されたい)。
【0021】
一態様では、本開示のIL6アンタゴニスト結合ドメインは、IL6またはIL6Rα単独の何れかに対するよりも少なくとも2倍〜1000倍高いsIL6xR複合体との親和性を有する。sIL6xR複合体に結合することによって、本開示の結合ドメインは、IL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害する。特定の実施形態では、sIL6xR複合体に対する結合ドメインの親和性は、sIL6xR複合体に対するgp130の親和性とほぼ同じであり、ここで「ほぼ同じ」は、同等のまたは最高約2倍まで高い親和性を意味する。特定の実施形態では、sIL6xR複合体に対する結合ドメインの親和性は、sIL6xR複合体に対するgp130の親和性より少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍またはそれを超えて高い。例えば、sIL6xR複合体に対するgp130の親和性が約2nM(例えば、Gaillardら(1999年)Eur. Cytokine Netw. 10巻:337頁を参照されたい)である場合、sIL6xR複合体に対して少なくとも10倍高い親和性を有する結合ドメインは約0.2nM以下の解離定数(K)を有するであろう。
【0022】
さらなる実施形態では、本開示のIL6アンタゴニスト結合ドメインは、(a)sIL6xR複合体に、IL6またはIL6Rα単独より少なくとも2倍〜1000倍高い親和性で結合し、(b)sIL6xR複合体との結合についてgp130と競合するか、またはsIL6xR複合体とのgp130の結合を強化する、ポリペプチド配列を含む。さらなる実施形態では、sIL6xR複合体に、IL6またはIL6Rα単独のいずれかに対するより少なくとも2倍〜1000倍高い親和性で結合する本開示のポリペプチド結合ドメインは、(i)IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達をより顕著にまたは優先的に阻害すること、(ii)IL6以外のgp130サイトカインファミリーメンバーのシグナル伝達を阻害しないこと、(iii)IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害し、IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を検出可能に阻害しないこともでき、(iv)これらの特性の2つ以上を有することができ、または(v)これらの特性の全てを有することができる。
【0023】
特定の実施形態では、本開示のポリペプチドIL6アンタゴニスト結合ドメインは、sIL6xR複合体に、IL6またはIL6Rα単独のいずれかに対するより少なくとも2倍〜1000倍高い親和性で結合し、IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達をより顕著にまたは優先的に阻害する。「IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害する」ことは、sIL6xR活性は測定可能に低減されるが、IL6シス−シグナル伝達の減少は実質的に変更されない程度にトランス−シグナル伝達を変化させることを指す(すなわち、阻害が最小限であるか、存在しないかまたは測定可能ではないことを意味する)。例えば、sIL6xR活性(例えば、HepG2細胞でのアンチキモトリプシン(ACT)の急性相発現)のバイオマーカーを測定して、トランス−シグナル伝達阻害を測定することができる。代表的なアッセイは、Jostockら(Eur. J. Biochem. 2001年)によって記載されている。簡潔には、HepG2細胞を、sIL6xR(トランス−シグナル伝達)またはIL6(シス−シグナル伝達)の存在下でACTを過剰発現させるために刺激することができるが、spg130を加えることは、IL6によって誘導される発現に実質的に影響せずに、sIL6xRによって誘導されるACTの過剰発現を阻害する。同様に、IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害する本開示のポリペプチド結合ドメインは、sIL6xRによって誘導されるACTの過剰発現を阻害する(すなわち、トランス−シグナル伝達を阻害する)が、IL6によって誘導される発現に実質的に影響しない(すなわち、シス−シグナル伝達を測定可能に減少させない)。このアッセイおよび当技術分野で公知である他のアッセイを用いて、IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達の優先的阻害を測定することができる(例えば、Sporriら(1999年)Int. Immunol. 11巻:1053頁、Miharaら(1995年)Br. J. Rheum. 34巻:321頁、Chenら(2004年)Immun. 20巻:59頁に記載の他のバイオマーカーを参照されたい)。
【0024】
さらなる実施形態では、IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインによるシグナル伝達は、本開示の結合ドメインポリペプチドまたはその融合タンパク質によって実質的に阻害されない。例えば、gp130を経るIL6xR複合体によるトランス−シグナル伝達は阻害されるが、白血病抑制因子(LIF)、線毛神経栄養因子(CNTF)、神経ポイエチン(NP)、カルジオトロフィン(cardiotropin)様サイトカイン(CLC)、オンコスタチンM(OSM)、IL−27、IL−31、カルジオトロフィン−1(CT−1)またはそれらの任意の組合せを経るシグナル伝達など、1つまたは複数の他のgp130ファミリーサイトカインによるシグナル伝達は、最小限に影響されるかまたは影響を受けない。
【0025】
さらに、標的分子との結合ドメインの相互作用は、その相互作用の動態学的結合または解離の測定として提供することができる。本明細書でkONとも呼ばれる動態学的結合(k)は、結合相互作用が起こる速度の尺度である。一実施形態では、kONは、未結合の分子が、それが結合することができる細胞表面領域に存在する平均時間が与えられた場合、およびこの領域の細胞表面の未結合分子の濃度が与えられた場合の、未結合の結合ドメインが標的分子に結合する可能性の尺度であってもよい。k(kON)は、1/M・秒の単位を有する。特定の実施形態では、kON値は、約10/M・秒、約10/M・秒、約10/M・秒、約10/M・秒、約10/M・秒、約10/M・秒、約10/M・秒、約1010/M・秒またはそれを超えてもよい。結合ドメインがscFvである場合、kONは、約10/M・秒未満〜約10/M・秒の範囲であることができる(Ulrikら(2000年)Cancer Res. 60巻:6434頁、XavierおよびWillson(1998年)Biophys. J. 74巻:2036頁)。結合ドメインのkONは、表面プラズモン共鳴などの、当技術分野で公知である方法を用いて測定することができる(Leonardら(2007年)J. Immunol. Methods 323巻:172頁)。
【0026】
本明細書でkOFFとも呼ばれる動態学的解離(k)は、複合体の解離速度の尺度そして、したがって本開示のポリペプチド結合ドメインが結合する標的分子の「滞留時間」の尺度である。k(kOFF)は、1/秒の単位を有する。本開示の結合ドメインの好ましいin vivo半減期は、数日または数週間のオーダーであるが、IL6およびsIL6の生成は両者とも疾患状態で非常に上昇することがあるので、結合ドメイン濃度は低くてもよいが、標的は豊富であってよいことを、当業者は理解しよう(例えば、Luら(1993年)Cytokine 5巻:578頁を参照されたい)。したがって、特定の実施形態では、本開示の結合ドメインは、約10−5/秒(例えば、約1日)以下のkOFFを有する。特定の実施形態では、kOFFは、約10−1/秒、約10−2/秒、約10−3/秒、約10−4/秒、約10−5/秒、約10−6/秒、約10−7/秒、約10−8/秒、約10−9/秒、約10−10/秒、またはそれ未満の範囲であってもよい(Graffら(2004年)Protein Eng. Des. Sel. 17巻:293頁を参照されたい)。
【0027】
本開示の結合ドメインは、本明細書に記載のように、または当技術分野で公知である様々な方法によって生成することができる(例えば、米国特許第6,291,161号、第6,291,158号を参照されたい)。原料には、ヒト、ラクダ科の動物(ラクダ、ヒトコブラクダまたはラマから、Hamers−Castermanら(1993年)Nature、363巻:446頁およびNguyenら(1998年)J. Mol. Biol.、275巻:413頁)、サメ(Rouxら(1998年)Proc. Nat’l. Acad. Sci.(USA)95巻:11804頁)、魚類(Nguyenら(2002年)Immunogenetics、54巻:39頁)、齧歯動物、トリ、ヒツジを含む様々な種からの抗体遺伝子配列(それらは、ファージライブラリーなどで、抗体、sFv、scFvまたはFabとしてフォーマットすることができる)、ランダムペプチドライブラリーをコードする配列、またはフィブリノーゲンドメイン(例えば、Weiselら(1985年)Science230巻:1388頁を参照されたい)、クニッツドメイン(例えば、米国特許第6,423,498号を参照されたい)、リポカリンドメイン(例えば、国際公開第2006/095164号を参照されたい)、V様ドメイン(例えば、米国特許出願公開第2007/0065431号を参照されたい)、C型レクチンドメイン(ZelenskyおよびGready(2005年)FEBS J. 272巻:6179頁)、mAbまたはFcab(商標)(例えば、PCT特許出願公開第WO2007/098934号、WO2006/072620号を参照されたい)などの、代替の非抗体骨格のループ領域の工学的に作製された多様なアミノ酸をコードする配列が含まれる。さらに、都合のよい系(例えば、マウス、HuMAbマウス(登録商標)、TCマウス(商標)、KMマウス(登録商標)、ラマ、ニワトリ、ラット、ハムスター、ウサギ、その他)で、免疫原として合成単鎖IL6xR複合体、例えばヒトIL6xR複合体またはハイパーIL6を用いるハイブリドーマ開発のための従来の戦略を、本開示の結合ドメインを開発するために用いることができる。
【0028】
例示的な実施例では、IL6xR複合体に特異的な本開示の結合ドメインは、合成IL6xR複合体への結合についてスクリーニングすることによってFabファージの断片ライブラリーで同定された(Hoetら(2005年)Nature Biotechnol. 23巻:344頁を参照されたい)。このスクリーニングのために用いられる合成IL6xR複合体は、N−IL6Rα(frag)−L1−IL6(frag)−L2−ID−Cの構造を含み、式中、Nはアミノ末端であり、Cはカルボキシ末端であり、IL6Rα(frag)は完全長IL6Rαの断片であり、IL6(frag)はIL6の断片であり、L1およびL2はリンカーであり、IDは免疫グロブリンFcドメインなどの介在ドメインまたは二量体化ドメインである。
【0029】
より具体的には、IL6xR複合体に特異的な結合ドメインを同定するために用いられるIL6xR(ハイパーIL6の形態)は、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の通りの構造を有する:(a)完全長タンパク質の最初の110個のアミノ酸および、カルボキシ末端部分(用いるアイソフォームに依存する(GenBank受託番号NP_000556.1、アイソフォーム1またはNP_852004.1、アイソフォーム2を参照されたい))を欠くIL6Rαからの212個のアミノ酸の中央断片を、(2)GSのリンカーに融合し、次にそれを、(3)IL6の175個のアミノ酸のカルボキシ末端断片(すなわち、完全長タンパク質GenBank受託番号NP_000591.1の最初の27個のアミノ酸を欠く)に融合し、次にそれを、(4)配列番号589に記載のIgG2Aヒンジであるリンカーに融合し、それを最後に、免疫グロブリンG1(IgG1)Fcドメインからなる二量体化ドメインに融合する。特定の実施形態では、IgG1 Fcドメインからなる二量体化ドメインは、以下のアミノ酸の1つまたは複数が変異している(すなわち、その位置に異なるアミノ酸を有する):位置234のロイシン(L234)、位置235のロイシン(L235)、位置237のグリシン(G237)、位置318のグルタミン酸(E318)、位置320のリシン(K320)、位置322のリシン(K322)、またはそれらの任意の組合せ(EU番号付け)。例えば、これらのアミノ酸のいずれか1つを、アラニンに変換する(変異する)ことができる。さらなる実施形態では、IgG1 Fcドメインは、L234、L235、G237、E318、K320およびK322(EU番号付けによる)の各々がアラニンに突然変異している(すなわち、それぞれL234A、L235A、G237A、E318A、K320AおよびK322A)。
【0030】
一実施形態では、本開示のIL6アンタゴニスト結合ドメインを同定するために用いられるIL6xR複合体は、配列番号606に記載のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、IL6xR複合体に特異的な結合ドメインを含むポリペプチドであって、IL6xRがsIL6xRであり、配列番号606に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが提供される。さらなる実施形態では、IL6xR複合体に特異的な結合ドメインを含むポリペプチドは、(1)IL6またはIL6Rα単独のいずれかに対するよりも高い親和性をsIL6xR複合体に対して示し、sIL6xRは配列番号606に記載のアミノ酸配列を有し、(2)配列番号606に記載のアミノ酸配列を有するsIL6xR複合体との結合について膜gp130または可溶性gp130と競合し、(3)IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達をより優先的に阻害し、(4)IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害せず、(5)特性(1)〜(4)の任意の組合せを有するか、あるいは、(6)(1)〜(4)の全ての特性を有する。本開示の結合ドメインを同定するために用いることができるか、または前記結合特性のいずれかを測定するための参照複合体として用いることができる他の例示的なIL6xR複合体が、例えば、米国特許出願公開第2007/0172458号、第2007/0031376号、および米国特許第7,198,781号、第5,919,763号に記載されている。
【0031】
一部の実施形態では、本開示のIL6アンタゴニスト結合ドメインは、本明細書に記載のIL6、IL6RまたはIL6xR複合体、好ましくはヒトIL6、ヒトIL6RまたはヒトIL6xR複合体に特異的なVおよびVドメインを含む。特定の実施形態では、VおよびVドメインは、齧歯動物(例えば、マウス、ラット)のもの、ヒト化されたものまたはヒトのものである。そのようなVおよびVドメインを含む結合ドメインの例を、それぞれ配列番号435〜496および805〜810、および373〜434および799〜804に記載する。さらなる実施形態では、IL6またはIL6Rα単独のいずれかよりも大きい親和性でIL6xRに結合し、そしてsIL6xR複合体との結合についてmgp130と競合するか、またはsIL6xRへのsgp130結合を強化する、IL6xR複合体に特異的なポリペプチド結合ドメインが提供され、そこにおいて、それぞれ配列番号373〜434および799〜804、および435〜496および805〜810に記載のように、結合ドメインは、1つまたは複数の軽鎖可変領域(V)のアミノ酸配列に、または1つまたは複数の重鎖可変領域(V)に、またはその両方に、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも100%同一である配列を含み、各CDRは、最高3つのアミノ酸変化を有する(すなわち、変化の多くはフレームワーク領域内にある)。
【0032】
さらなる実施形態では、本開示の結合ドメインは、それぞれ配列番号435〜496および805〜810、および373〜434および799〜804に記載の、IL6、IL6R、またはIL6xR複合体に特異的なVおよびVドメインを含み、それらは、そのようなVドメイン、Vドメイン、または両方のアミノ酸配列に少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%同一であり、各CDRは、0〜3個のアミノ酸変化を有する。例えば、本開示のVドメイン、Vドメインまたは両方のアミノ酸配列は、TRU(XT6)−1002に見出される例示的な結合ドメイン(配列番号608を参照されたい)からの、それぞれVドメイン(例えば、アミノ酸512〜631)、Vドメイン(例えば、アミノ酸649〜758)、または両方のアミノ酸配列に、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%同一であることができ、そこにおいて、各CDRは、0〜3個のアミノ酸変化を有する。
【0033】
2つ以上のポリペプチドまたは核酸分子配列との関連で、用語「同一の」または「同一性割合」は、例えば手動整列によるか、または目視検査による配列比較アルゴリズムなどの、当技術分野で公知である方法を用いて測定して、比較ウインドウまたは指定された領域にわたる最大の一致について比較し、整列させた場合に、同じであるか、または指定された領域が同じである指定された割合のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性)、2つ以上の配列またはサブ配列を意味する。例えば、配列同一性割合および配列類似性を決定するのに適する好ましいアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それらは、Altschulら(1977年)Nucleic Acids Res. 25巻:3389頁およびAltschulら(1990年)J. Mol. Biol. 215巻:403頁にそれぞれ記載されている。
【0034】
本明細書に記載のこれらのまたは他の実施形態のいずれかでは、VおよびVドメインは、いずれの向きにも配置することができ、本明細書に開示される最大約30個のアミノ酸リンカーで、または2個のサブ結合ドメインの相互作用に適合するスペーサー機能を提供することができる他の任意のアミノ酸配列で分離されてもよい。特定の実施形態では、VおよびVドメインを結合するリンカーは、リンカー47(配列番号543)またはリンカー80(配列番号576)などの、配列番号497〜604および823〜828に記載のアミノ酸配列を含む。多重特異性結合ドメインは、ラクダ科の動物の抗体構成への類似により、少なくとも2つの特異的下位結合(sub−binding)ドメインを、または対のVおよびV鎖のより一般的な哺乳動物の抗体構成への類似により、少なくとも4つの特異的下位結合ドメインを有する。
【0035】
さらなる実施形態では、本開示のIL6アンタゴニストに特異的な結合ドメインは、抗IL6、抗IL6Rまたは抗IL6xR複合体のscFvまたはFab断片の可変領域から、あるいはその重鎖または軽鎖可変領域から得られたか、誘導されたかまたは設計された、1つ(好ましくはCDR3)または複数の相補性決定領域(「CDR」)、または1つまたは複数のそのようなCDRの複数のコピーを含むことができる。
【0036】
CDRは、Kabat、Chothia、AbMおよび接触による定義(contact definition)を含め、当技術分野の様々な方式で定義される。Kabat定義は配列変動性に基づき、CDR領域を予測するための最も一般に用いられる定義である(Johnsonら(2000年)Nucleic Acids Res. 28巻:214頁)。Chothia定義は、構造的なループ領域の位置に基づく(Chothiaら(1986年)J. Mol. Biol. 196巻:901頁、Chothiaら(1989年)Nature 342巻:877頁)。AbM定義はKabatとChothia定義の間の折衷型であり、Oxford Molecular Groupによって作成された抗体構造モデル化のためのプログラムの統合セットである(Martinら(1989年)Proc. Nat’l. Acad. Sci.(USA)86巻:9268頁、Reesら、ABMTM、抗体可変領域のモデル化のためのコンピュータプログラム、Oxford、UK;Oxford Molecular,Ltd.)。接触による定義として公知である追加の定義は最近導入され(MacCallumら(1996年)J. Mol. Biol. 5巻:732頁を参照されたい)、それは利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。
【0037】
慣例によって、重鎖のCDRドメインは、H1、H2およびH3と呼ばれ、それらはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって順番に連続して番号付けられている。CDR−H1は長さが約10〜12残基であり、ChothiaおよびAbM定義によるとCysの4つ後の残基から開始し、Kabat定義によると5つ後の残基から開始する。H1には、Trp、Trp−Val、Trp−IleまたはTrp−Alaが続くことができる。H1の長さはAbM定義によると約10〜12残基であるが、Chothia定義は最後の4つの残基を除外する。KabatおよびAbM定義によるとCDR−H2はH1の末端の15残基後から開始し、それは一般に配列Leu−Glu−Trp−Ile−Glyの後に続き(しかし、いくつかの変形形態が公知である)、一般に配列Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Alaの前にくる。Kabat定義によると、H2の長さは約16〜19残基であるが、AbM定義は長さが9〜12残基であると予測する。CDR−H3は、H2の末端の33残基後で通常開始され、一般にアミノ酸配列Cys−Ala−Argの後に続き、アミノ酸Glyの前にあり、3〜約25残基の範囲の長さを有する。
【0038】
慣例によって、軽鎖のCDR領域は、L1、L2およびL3と呼ばれ、それらはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって順番に連続して番号付けられている。CDR−L1は、一般に約残基24から開始し、一般にCysの後に続く。CDR−L1の後の残基は常にTrpであり、それは以下の配列の1つを開始する:Trp−Tyr−Gln、Trp−Leu−Gln、Trp−Phe−GlnまたはTrp−Tyr−Leu。CDR−L1の長さは、約10〜17残基である。CDR−L2はL1の末端の約16残基後に開始し、一般に残基Ile−Tyr、Val−Tyr、Ile−LysまたはIle−Pheの後に続く。CDR−L2は、長さが約7残基である。CDR−L3は、L2の末端の33残基後で通常開始され、一般にCysの後に続き、その後に、一般に配列Phe−Gly−XXX−Glyが続き、約7〜11残基の長さを有する。
【0039】
したがって、本開示の結合ドメインは、抗IL6、抗IL6R、抗IL6xRの可変領域からの単一のCDR3を含むことができ、またはそれは、同じであってもまたは異なってもよい複数のCDRを含むことができる。特定の実施形態では、本開示のIL6アンタゴニスト結合ドメインは、フレームワーク領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3領域を含むVおよびVドメインを含み、そこにおいて、(a)Vドメインは、配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つで見られる重鎖CDR3のアミノ酸配列を含み、または(b)Vドメインは、配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つで見られる軽鎖CDR3のアミノ酸配列を含み、または(c)結合ドメインは(a)のVアミノ酸配列および(b)のVアミノ酸配列を含み、あるいは結合ドメインは(a)のVアミノ酸配列および(b)のVアミノ酸配列を含み、そこにおいて、VおよびVは同じ参照配列で見られる。さらなる実施形態では、本開示の結合ドメインは、フレームワーク領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3領域を含むIL6、IL6RまたはIL6xR複合体に特異的なVおよびVドメインを含み、そこにおいて、(a)Vドメインは、配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つで見られる重鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含み、または(b)Vドメインは、配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つで見られる軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸配列を含み、または(c)結合ドメインは(a)のVアミノ酸配列および(b)のVアミノ酸配列を含み、あるいは結合ドメインは(a)のVアミノ酸配列および(b)のVアミノ酸配列を含み、そこにおいて、VおよびVアミノ酸配列は同じ参照配列に由来する。例示的なIL6アンタゴニストの軽鎖および重鎖可変ドメインCDRを、それぞれ配列番号1〜186および787〜792、ならびに187〜372および793〜798に提供する。IL6アンタゴニストの軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号373〜434および799〜804、ならびに435〜496および805〜810に提供する。
【0040】
特異的CDRを含む本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、IL6アンタゴニスト結合ドメインは、(i)配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つで見られるVドメインのアミノ酸配列に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するVドメインであって、各CDRは、0〜3個のアミノ酸変化を有するVドメイン、または(ii)配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つで見られるVドメインのアミノ酸配列に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するVドメインであって、各CDRは、0〜3個のアミノ酸変化を有するVドメイン、または(iii)(i)のVドメインおよび(ii)のVドメインの両方、あるいはVおよびVが同じ参照配列に由来する(i)のVドメインおよび(ii)のVドメインの両方を含むことができる。
【0041】
特定の実施形態では、本開示のIL6アンタゴニスト結合ドメインは、免疫グロブリン骨格などの免疫グロブリン様ドメインであってもよい。本開示で意図される免疫グロブリン骨格には、scFv、Fab、ドメイン抗体または重鎖のみの抗体が含まれる。さらなる実施形態では、抗IL6もしくは抗IL6xR抗体(例えば、マウスまたはラットなどのヒト以外、キメラ、ヒト化、ヒトの抗体)、またはそれぞれ配列番号435〜496および805〜810ならびに373〜434および799〜804のいずれか1つに記載のVおよびVドメインのアミノ酸配列に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するFab断片もしくはscFv断片が提供され、それらは以下の特性の1つまたは複数を有することもできる:(1)IL6またはIL6Rα単独のいずれかに対するよりも高いIL6xR複合体に対する親和性、(2)sIL6xR複合体との結合について膜gp130もしくは可溶性gp130と競合するか、またはsIL6xR複合体とのgp130の結合を増強する、(3)IL6シス−シグナル伝達よりもIL6トランス−シグナル伝達を優先的に阻害する、あるいは(4)IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害しない。そのような抗体、FabまたはscFvは、本明細書に記載の方法のいずれかで用いることができる。特定の実施形態では、本開示は、IL6アンタゴニスト(すなわち、IL6シス−およびトランス−シグナル伝達を阻害することができる)である結合ドメインを含むポリペプチドを提供する。さらなる実施形態では、本開示によるIL6アンタゴニストは、IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害しない。例示的なIL6アンタゴニストには、IL6、IL6RまたはIL6xRに特異的な結合ドメイン、例えば免疫グロブリン可変結合ドメインまたはその誘導体(例えば、抗体、Fab、scFvなど)が含まれる。
【0042】
あるいは、本開示の結合ドメインは、免疫グロブリン以外の骨格の一部であってもよい。意図される他の骨格には、Aドメイン分子、フィブロネクチンIIIドメイン、アンチカリン、アンキリン反復を工学的に作製した結合分子、アドネクチン、クニッツドメインまたはプロテインAのZドメインアフィボディが含まれる。
【0043】
本明細書に記すように、本明細書に記載する、軽鎖および重鎖可変領域およびCDRなどの結合ドメインの変異体および誘導体が意図される。一例では、1つまたは複数のアミノ酸残基が特異的結合剤のアミノ酸配列を補う挿入変異体を提供する。挿入はタンパク質の一末端または両末端に位置してよく、または特異的結合剤のアミノ酸配列の内部領域内に位置してよい。本開示の変異体生成物は、成熟状態の特異的結合剤の生成物、すなわちリーダー配列またはシグナル配列が除去され、生成するタンパク質が追加のアミノ末端残基を有する特異的結合剤の生成物も含む。追加のアミノ末端残基は別のタンパク質に由来してよく、または特異的タンパク質に由来するとして同定可能ではない1つまたは複数の残基を含むことができる。位置−2および−1に追加のメチオニン残基およびリシン残基を有する本開示のポリペプチドと同様に、位置−1に追加のメチオニン残基を有するポリペプチドを意図する。追加のMet、Met−LysまたはLys残基(または一般に1つまたは複数の塩基性残基)を有する変異体は、細菌宿主細胞での高い組換えタンパク質産生に特に有用である。
【0044】
本明細書で使用する「アミノ酸」は、天然アミノ酸(自然界に存在するアミノ酸)、置換された天然アミノ酸、非天然アミノ酸、置換された非天然アミノ酸、またはこれらの任意の組合せを指す。天然アミノ酸に関する指定は、本明細書では標準一文字または三文字コードのいずれかとして記述する。天然極性アミノ酸は、アスパラギン(AspまたはN)およびグルタミン(GlnまたはQ)、およびアルギニン(ArgまたはR)、リシン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH)、およびこれらの誘導体などの塩基性アミノ酸、ならびにアスパラギン酸(AspまたはD)およびグルタミン酸(GluまたはE)、およびこれらの誘導体などの酸性アミノ酸を含む。天然疎水性アミノ酸は、トリプトファン(TrpまたはW)、フェニルアラニン(PheまたはF)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV)、およびこれらの誘導体、ならびにグリシン(GlyまたはG)、アラニン(AlaまたはA)、プロリン(ProまたはP)、およびこれらの誘導体などの他の非極性アミノ酸を含む。中程度の極性の天然アミノ酸は、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、チロシン(TyrまたはY)、システイン(CysまたはC)、およびこれらの誘導体を含む。他に指定しない限り、本明細書に記載する任意のアミノ酸はD−またはL−形状(configuration)のいずれかであってよい。
【0045】
置換変異体は、アミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基が除去され代わりの残基に置換されている融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、置換は現実には保存性であるが、しかしながら、本開示は非保存的である置換も包含する。物理的性質および二次および三次タンパク質構造に対する寄与に従って、アミノ酸を分類することができる。保存的置換は、類似した性質を有する別のアミノ酸に代えて1つのアミノ酸の置換として、当技術分野で理解されている。例示的な保存的置換は、すぐ下の表1に述べる(1997年3月13日に公開されたWO97/09433、10頁を参照されたい)。
【0046】
【表1】

あるいは、保存的アミノ酸は、すぐ下の表2に記載するように、Lehninger(Biochemistry、Second Edition;Worth Publishers、Inc. NY:NY(1975年)、71〜77頁)に記載されたのと同様に分類することができる。
【0047】
【表2】

変異体または誘導体は、特異的発現系の使用から生じる追加のアミノ酸残基を有することもできる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合生成物の一部として所望のポリペプチドを発現する市販のベクターの使用は、該所望のポリペプチドからのGST成分の切断後に位置−1に追加のグリシン残基を有する、該所望のポリペプチドを提供する。ヒスチジンタグが、アミノ酸配列、一般に配列のカルボキシ末端および/またはアミノ末端に取り込まれている変異体を含めた、他のベクター系での発現から生じる変異体も意図される。
【0048】
本開示の結合ドメインにおける1つまたは複数のアミノ酸残基が除去されている、欠失変異体も意図される。欠失は融合タンパク質の一末端もしくは両末端で、またはアミノ酸配列内の1つもしくは複数の残基の除去から影響を受ける可能性がある。
IL6アンタゴニスト結合ドメイン融合タンパク質
本明細書に言及するように、本開示のポリペプチド結合ドメインはさらに、介在ドメイン(例えば、免疫グロブリン定常領域またはそのサブ領域)のアミノ末端、カルボキシ末端、または両末端と融合した、融合タンパク質の一部分であってよい。本開示の例示的な融合タンパク質には、SMIPタンパク質、PIMSタンパク質、単一特異性の多価結合ドメイン融合タンパク質、多重特異性結合ドメイン融合タンパク質などが含まれる。1つまたは複数の結合ドメインを、当技術分野で公知であるかまたは本明細書に記載するリンカーによって、介在ドメインに接合させることが可能である。
【0049】
本明細書で使用する「介在ドメイン」は、単に1つまたは複数の結合ドメインの足場(scaffold)として機能するアミノ酸配列を指し、したがって融合タンパク質は、組成物に単鎖ポリペプチドとして、主に(例えば、50%以上の融合タンパク質集団)または実質的に(例えば、90%以上の融合タンパク質集団)存在する。例えば、特定の介在ドメインは、構造機能(例えば、スペーシング、柔軟性、剛性)または生物機能(例えば、ヒト血液中などの血漿中の半減期増加)を有し得る。血漿中の本開示の融合タンパク質の半減期を増大することができる例示的な介在ドメインには、アルブミン、トランスフェリン、血清タンパク質と結合する足場ドメインなど、またはこれらの断片が含まれる。
【0050】
好ましい実施形態では、本開示の多重特異性融合タンパク質の介在ドメインは、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワース力、ジスルフィド結合、塩架橋、疎水性相互作用など、またはこれらの任意の組合せなどによる、非共有結合相互作用または共有結合相互作用による、少なくとも2つの単鎖ポリペプチドまたはタンパク質の結合を促進することができるアミノ酸配列を指す「二量体化ドメイン」である。例示的な二量体化ドメインは免疫グロブリン重鎖定常領域またはサブ領域(例えば、CH2H3)を含む。二量体化ドメインが、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、セプタマー、オクタマーなどを含めた高次多量体複合体の形成も促進することができることは理解されるはずである。
【0051】
「定常サブ領域」は、全ての定常領域ドメインが供給源抗体で見られるわけではないが、1つまたは複数の免疫グロブリン定常領域ドメインの一部または全部に相当するかまたはそれらに由来する、好ましいペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列を指すために、本明細書で定義する用語である。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質の定常領域ドメインは、いくつかのFc受容体と結合する能力を保持し(FcRn結合など)、かつin vivoでの比較的長い半減期を保持しながら、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、または補体活性化および補体依存性細胞傷害性(CDC)の最小エフェクター機能を欠く、または有する。特定の実施形態では、本開示の結合ドメインをヒトIgG1定常領域またはサブ領域と融合させ、ここで、IgG1定常領域またはサブ領域は、以下の突然変異した1つまたは複数のアミノ酸を有する:位置234のロイシン(L234)、位置235のロイシン(L235)、位置237のグリシン(G237)、位置318のグルタミン酸(E318)、位置320のリシン(K320)、位置322のリシン(K322)、またはこれらの任意の組合せ(EUナンバリング)。
【0052】
Fc受容体(CD16、CD32、CD64、CD89、FcεRl、FcRn)と、または補体成分C1q(例えば、米国特許第5,624,821号;Presta(2002年)Curr. Pharma. Biotechnol. 3巻:237頁を参照されたい)とFcとの相互作用を変えることができる突然変異を、Fcドメインの内側または外側に作製するための方法は、当技術分野で公知である。本開示の特定の実施形態は、FcRnおよびプロテインAとの結合が保たれ、Fcドメインが他のFc受容体またはC1qともはや相互作用しないかまたは最小限で相互作用する、ヒトIgG由来の定常領域またはサブ領域を有する免疫グロブリンまたは融合タンパク質を含む組成物を含む。例えば、本開示の結合ドメインは、位置297のアスパラギン(EUナンバリングの下でN297)が別のアミノ酸に突然変異して、この位置におけるグリコシル化を低下または消失し、したがってFcγRおよびC1qへの有効なFcの結合を無効にする、ヒトIgG1定常領域またはサブ領域と融合することができる。別の例示的な突然変異は、C1qの結合はノックアウトするがFcの結合には影響を与えないP331Sである。
【0053】
さらなる実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン参照配列と比較して改変型グリコシル化パターンを有する場合がある。例えば、様々な遺伝的技法のいずれかを利用して、グリコシル化部位を形成する1つまたは複数の特定のアミノ酸残基を変えることができる(Coら、(1993年)Mot. Immunol. 30巻:1361頁;Jacquemonら、(2006年)J. Thromb. Haemost. 4巻:1047頁;Schusterら、(2005年)Cancer Res. 65巻:7934頁;Warnockら、(2005年)Biotechnol. Bioeng. 92巻:831頁を参照されたい)。あるいは、本開示の融合タンパク質が産生される宿主細胞を工学的に作製して(engineered)、改変型グリコシル化パターンを生み出すことができる。当技術分野で公知である1つの方法は、例えば、ADCCを増大する両断型、非フコシル化変異体の形態の改変型グリコシル化をもたらす。これらの変異体は、オリゴ糖修飾酵素を含有する宿主細胞での発現から生じる。あるいは、BioWa/Kyowa HakkoのPotelligent技術は、本発明によるグリコシル化分子のフコース含有量を減らすことが意図される。公知である1つの方法では、GDP−フコースの産生によって免疫グロブリンFc領域のグリコシル化パターンを修飾する、組換え免疫グロブリン産生用のCHO宿主細胞を提供する。
【0054】
あるいは、化学的技法を使用して本開示の融合タンパク質のグリコシル化パターンを改変する。例えば、様々なグリコシダーゼ阻害剤および/またはマンノシダーゼ阻害剤は、ADCC活性の増大、Fc受容体結合の増大、およびグリコシル化パターンの改変の、1つまたは複数の所望の効果をもたらす。特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質を発現する細胞を、前記宿主細胞によって産生される免疫糖タンパク質分子のADCCを増大させる濃度で炭水化物修飾物質を含み、前記炭水化物修飾物質が800μM未満の濃度で存在する培養培地で増殖する。好ましい実施形態では、これらの多重特異性融合タンパク質を発現する細胞を、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、または800μMなど100〜800μMの濃度で、カスタノスペルミンまたはキフネンシン、より好ましくはカスタノスペルミンを含む培養培地で増殖させる。カスタノスペルミンなどの炭水化物修飾物質を用いてグリコシル化を改変するための方法は、米国特許出願公開第2009/0041756号またはPCT公開番号WO2008/052030に提供されている。
【0055】
別の実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、エフェクター細胞Fc受容体との結合に影響を与えるアミノ酸修飾を有する場合がある。これらの修飾は、Prestaら(2001年)Biochem. Soc. Trans. 30巻:487頁に開示された手法などの、当技術分野で公知である任意の技法を使用して作製することができる。別の手法では、Xencor XmAb技術を利用して、Fcドメインに相当する定常サブ領域を操作して、細胞殺傷エフェクター機能を高めることが可能である(Lazarら、(2006年)Proc. Nat’l. Acad. Sci.(USA)103巻:4005頁を参照されたい)。この手法を使用して、例えば、FCγRに対する改善された特異性および結合性を有する定常サブ領域を作製し、それによって細胞殺傷エフェクター機能を高めることができる。
【0056】
他のさらなる実施形態では、定常領域またはサブ領域は、このような介在ドメインを欠く相当する融合タンパク質と比較して、血漿半減期または胎盤通過を場合によっては増大することができる。特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質の延長した血漿半減期は、ヒトにおいて、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも24、少なくとも30、少なくとも36、少なくとも40、少なくとも48時間、少なくとも数日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも数週間、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも数カ月以上である。
【0057】
定常サブ領域は、以下のドメイン:CH2ドメイン、CH3ドメイン(IgA、IgD、IgG、IgEまたはIgM)、およびCH4ドメイン(IgEまたはIgM)のいずれかの一部または全部を含むことができる。したがって、本明細書で定義する定常サブ領域は、免疫グロブリン定常領域の一部分に相当するポリペプチドを指す。定常サブ領域は、同じ、または異なる、免疫グロブリン、抗体アイソタイプ、または(例えば、両方がIgG1である、または一方がIgG1であり、他方がIgG2である)対立遺伝子変異体由来のCH2ドメインおよびCH3ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは切断型であり、その配列を参照によって本明細書に組み込む、配列番号366〜371としてPCT公開番号WO2007/146968に挙げられたカルボキシ末端配列を含む。特定の実施形態では、定常サブ領域は、アミノ末端リンカー、カルボキシ末端リンカー、または両末端のリンカーを場合によっては有することができる、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。
【0058】
「リンカー」は、約2〜約150アミノ酸のリンカーなどの、他のペプチドまたはポリペプチドと接合または連結するペプチドである。本開示の融合タンパク質において、リンカーは介在ドメイン(例えば、免疫グロブリン由来定常サブ領域)と結合ドメインを接合することができ、またはリンカーは結合ドメインの2つの可変領域を接合することができる。例えばリンカーは、抗体ヒンジ領域配列から得られる、由来する、または設計されるアミノ酸配列、結合ドメインと受容体を連結する配列、または結合ドメインと細胞表面膜貫通領域または膜アンカーを連結する配列であってよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、生理的条件または他の標準的ペプチド条件(例えば、ペプチド精製条件、ペプチド保存に関する条件)下で少なくとも1つのジスルフィド結合に関与することができる、少なくとも1つのシステインを有することができる。特定の実施形態では、免疫グロブリンヒンジペプチドに相当するかまたはそれに類似するリンカーは、そのヒンジのアミノ末端に向けて位置するヒンジシステインに相当するシステインを保持する。さらなる実施形態では、リンカーはIgG1ヒンジに由来し、ヒンジシステインに相当する1つのシステインまたは2つのシステインを有する。特定の実施形態では、1つまたは複数のジスルフィド結合は介在ドメイン間の鎖間ジスルフィド結合として形成される。他の実施形態では、本開示の融合タンパク質は、結合ドメインと直接融合した介在ドメインを有することができる(すなわち、リンカーまたはヒンジなし)。いくつかの実施形態では、介在ドメインは二量体化ドメインである。
【0059】
さらに、結合ドメインはVおよびVドメインを含むことができ、これらの可変領域ドメインはリンカーによって組み合わせることができる。例示的な可変領域結合ドメインリンカーには、nが1〜5の整数である、(GlySer)(GlySer)、(GlySer)(GlySer)、(GlySer)(GlySer)、または(GlySer)などの(GlySer)ファミリーに属するリンカーが含まれる(例えば、それぞれ配列番号518、525、542、585、586および603に相当するリンカー22、29、46、89、90および116を参照されたい)。好ましい実施形態では、これらの(GlySer)ベースのリンカーは可変ドメインを結合させるために使用し、結合ドメインと介在ドメインを結合させるためには使用しない。
【0060】
本開示の融合タンパク質の介在ドメインまたは二量体化ドメインを、ペプチドリンカーによって1つまたは複数の遠位または末端結合ドメインと結合させることが可能である。スペーシング機能を与える以外に、リンカーは、融合タンパク質内と、融合タンパク質とそれらの標的(複数可)間またはそれらの中の両方で、融合タンパク質の1つまたは複数の結合ドメインを正確に配向するのに適した、柔軟性または剛性を与えることができる。さらにリンカーは、ヒトなどの、投与の必要性のある被験体への投与後、in vitroとin vivoの両方で完全長融合タンパク質の発現および精製タンパク質の安定性を補助することができ、これらの同じ被験体において非免疫原性であるかまたは免疫原性が低いことが好ましい。特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質の二量体化ドメインのリンカーは、ヒト免疫グロブリンヒンジの一部または全部を含むことができる。
【0061】
介在ドメイン(例えば、免疫グロブリン由来定常サブ領域)と結合ドメインを接合するため、または結合ドメインの2つの可変領域を接合するために使用することができる例示的なリンカーは、配列番号497〜604および823〜828で列挙する。
【0062】
本開示で意図するリンカーには、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーの任意のドメイン間領域(例えば、抗体ヒンジ領域)由来の、またはII型膜タンパク質のファミリーである、C型レクチンの茎部領域由来のペプチドが含まれる。これらのリンカーは、約2〜約150アミノ酸、または約2〜約40アミノ酸、または約8〜約20アミノ酸、好ましくは約10〜約60アミノ酸、より好ましくは約10〜約30アミノ酸、および最も好ましくは約15〜約25アミノ酸の長さ範囲である。例えば、リンカー1(配列番号497)は2アミノ酸長であり、リンカー116(配列番号603)は36アミノ酸長である。
【0063】
一般的な長さの考慮事項を超えて、本開示の融合タンパク質における使用に適したリンカーには、IgGヒンジ、IgAヒンジ、IgDヒンジ、IgEヒンジ、またはそれらの変異体から選択される抗体ヒンジ領域が含まれる。特定の実施形態では、リンカーは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、またはそれらの断片もしくは変異体から選択される抗体ヒンジ領域(上部およびコア領域)であってよい。本明細書で使用するように、「免疫グロブリンヒンジ領域」であるリンカーは、CH1のカルボキシ末端と(IgG、IgA、およびIgDに関して)CH2のアミノ末端または(IgEおよびIgMに関して)CH3のアミノ末端の間に見られるアミノ酸を指す。本明細書で使用する「野生型免疫グロブリンヒンジ領域」は、抗体の重鎖に見られる、(IgG、IgA、およびIgDに関して)CH1領域とCH2領域の間に介入しそれらを結び付ける、または(IgEおよびIgMに関して)CH2領域とCH3領域の間に介入しそれらを結び付ける、天然に存在するアミノ酸配列を指す。好ましい実施形態では、野生型免疫グロブリンヒンジ領域配列はヒトである。
【0064】
結晶学的研究によれば、IgGヒンジドメインは、機能上および構造上3つの領域:上部ヒンジ領域、コアまたは中央ヒンジ領域、および底部ヒンジ領域、に分割することができる(Shinら、(1992年)Immunol. Rev 130巻:87頁)。例示的な上部ヒンジ領域には、IgG1で見られるEPKSCDKTHT(配列番号830)、IgG2で見られるERKCCVE(配列番号831)、IgG3で見られるELKTPLGDTTHT(配列番号832)またはEPKSCDTPPP(配列番号833)、およびIgG4で見られるESKYGPP(配列番号834)が含まれる。例示的な中央ヒンジ領域には、IgG1およびIgG2で見られるCPPCP(配列番号835)、IgG3で見られるCPRCP(配列番号836)、およびIgG4で見られるCPSCP(配列番号837)が含まれる。IgG1、IgG2、およびIgG4抗体はそれぞれ1つの上部および中央ヒンジを有するようであり、一方IgG3は、4つ(1つのELKTPLGDTTHTCPRCP(配列番号838)および3つのEPKSCDTPPPCPRCP(配列番号839))をタンデムで有する。
【0065】
IgAおよびIgD抗体はIgG様コア領域を欠くようであり、IgDは2つの上部ヒンジ領域をタンデムで有するようである(配列番号840および841を参照されたい)。IgA1およびIgA2抗体で見られる例示的な野生型上部ヒンジ領域は、配列番号842および843において述べる。
【0066】
IgEおよびIgM抗体は、対照的に、典型的なヒンジ領域の代わりに、ヒンジ様の性質を有するCH2領域を有する。IgEおよびIgMの例示的な野生型CH2上部ヒンジ様配列は、それぞれ配列番号844
【化1】

【0067】
および配列番号845
【化2】

【0068】
において述べる。
【0069】
「改変野生型免疫グロブリンヒンジ領域」または「改変型免疫グロブリンヒンジ領域」は、(a)最大30%のアミノ酸が変化した(例えば、最大25%、20%、15%、10%、または5%のアミノ酸置換または欠失の)野生型免疫グロブリンヒンジ領域、(b)最大30%のアミノ酸が変化した(例えば、最大25%、20%、15%、10%、または5%のアミノ酸置換または欠失の)少なくとも10アミノ酸長(例えば、少なくとも12、13、14または15アミノ酸長)である野生型免疫グロブリンヒンジ領域の一部分、または(c)コアヒンジ領域を含む野生型免疫グロブリンヒンジ領域の一部分(その一部分は4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸長、または少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸長であってよい)を指す。特定の実施形態では、上部およびコア領域を含むIgG1ヒンジなどの、野生型免疫グロブリンヒンジ領域の1つまたは複数のシステイン残基を、1つまたは複数の他のアミノ酸残基(例えば、1つまたは複数のセリン残基)によって置換することができる。改変型免疫グロブリンヒンジ領域は、別のアミノ酸残基(例えば、セリン残基)によって置換された、上部およびコア領域を含むIgG1ヒンジなどの野生型免疫グロブリンヒンジ領域のプロリン残基を、代替的または追加的に有することができる。
【0070】
結合領域(connecting region)として使用することができる代わりのヒンジ配列およびリンカー配列は、IgV様またはIgC様ドメインを結合させる細胞表面受容体の一部分から作製することができる。細胞表面受容体が複数のIgV様ドメインをタンデムで含有するIgV様ドメイン間の領域、および細胞表面受容体が複数のタンデムIgC様領域を含有するIgC様ドメイン間の領域も、結合領域またはリンカーペプチドとして使用することができる可能性がある。特定の実施形態では、ヒンジ配列およびリンカー配列は5〜60アミノ酸長であり、主として柔軟性である場合があるが、さらなる剛性特性を与える場合もあり、最小のβ−シート構造を有してα−らせん構造を主として含有し得る。配列は血漿および血清で安定であり、タンパク質分解的切断に耐性があることが好ましい。いくつかの実施形態では配列は、1つのジスルフィド結合または複数のジスルフィド結合を形成して分子のC末端を安定化する能力を与える、CPPCなどの天然に存在するモチーフまたは加えられたモチーフを含有してもよい。他の実施形態では、配列は1つまたは複数のグリコシル化部位を含有し得る。ヒンジおよびリンカー配列の例には、CD2、CD4、CD22、CD33、CD48、CD58、CD66、CD80、CD86、CD96、CD150、CD166、およびCD244の、IgV様とIgC様ドメインの間またはIgC様またはIgV様ドメインの間のドメイン間領域が含まれる。代わりのヒンジは、CD69、CD72およびCD161などの非免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー由来の、II型受容体のジスルフィド含有領域から作製することもできる。
【0071】
いくつかの実施形態では、ヒンジリンカーは、鎖間ジスルフィド結合を形成するための単一のシステイン残基を有する。他の実施形態では、リンカーは、鎖間ジスルフィド結合を形成するための2つのシステイン残基を有する。さらなる実施形態では、ヒンジリンカーは、免疫グロブリンドメイン間領域(例えば、抗体ヒンジ領域)に由来するか、またはII型C型レクチンの茎部領域に由来する(II型膜タンパク質由来、例えば、PCT出願公開No.WO2007/146968からの配列番号111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、231、233、235、237、239、241、243、245、247、249、251、253、255、257、259、261、263、265、267、269、271、273、275、277、279、281、287、289、297、305、307、309〜311、313〜331、346、373〜377、380、または381(それらの配列を参照によって本明細書に組み込む)などの、PCT出願公開番号WO2007/146968に記載する例示的なレクチンの茎部領域配列を参照されたい)。
【0072】
一態様では、本開示の融合タンパク質は、SMIPタンパク質の型である、IL6、IL6R、またはIL6xRに特異的な結合ドメインを含む。SMIPタンパク質を作製するための方法は本明細書に記載されており、当技術分野で公知である(米国特許出願公開第2003/0133939号、同第2003/0118592号、および同第2005/0136049号を参照されたい)。特定の実施形態では、融合タンパク質は、IL6またはIL6Rα単独のいずれかよりも高い親和性でIL6xRに結合し、sIL6xR複合体との結合に関してgp130と競合し、またはsIL6xRとのgp130の結合を高めるIL6xR複合体に特異的なポリペプチド結合ドメインを有し、ここでアミノ末端からカルボキシ末端に、(a)ポリペプチド結合ドメインが第1のリンカーと融合しており、(b)免疫グロブリン重鎖CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドが第2のリンカーと融合しており、そして(c)免疫グロブリン重鎖CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドがCH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合している。あるいは、SMIPタンパク質構造は、Nが融合タンパク質のアミノ末端であり、BDが抗IL6xR複合体結合ドメインまたはscFvであり、L1がリンカーであり、CH2およびCH3が免疫グロブリン定常重鎖領域2および3であり、Cが融合タンパク質のカルボキシ末端である、以下の:N−BD−L1−CH2CH3−Cとして例示することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、46(配列番号542)などのnが1〜6の整数である(GlySer)であり、またはリンカーは、リンカー47(配列番号543)、またはリンカー80(配列番号576)などの、IgG1,IgAまたはIgEヒンジ領域、0、1、または2個のシステイン残基を有する突然変異IgG1ヒンジ領域である。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、リンカーによってまたはリンカー以外によって、免疫グロブリン定常領域またはサブ領域以外のドメインと融合し、したがって融合タンパク質は、組成物に単鎖ポリペプチドとして主にまたは実質的に存在する。
【0073】
さらなる実施形態では、本開示のSMIP融合タンパク質は、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つに記載の少なくとも1つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含有する軽鎖可変領域を含み、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つに記載の少なくとも1つの重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1,CDR2、およびCDR3配列を含有する重鎖可変領域を含む結合ドメインを有する。なおさらなる実施形態では、本開示のSMIP融合タンパク質は、配列番号671〜694のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有し、リーダーペプチド配列は有するか、または有さない。
【0074】
さらに他の実施形態では、SMIPポリペプチドは、IL6シスおよびトランスシグナル伝達が測定可能に阻害されるIL6アンタゴニストである、結合領域またはドメインを有することができる。特定の実施形態では、本開示によるIL6アンタゴニストは、IL6以外のgp130ファミリーサイトカインのシグナル伝達を阻害しない。
【0075】
さらなる実施形態では、本開示の融合タンパク質は、結合ドメインが融合タンパク質のカルボキシ末端に位置するPIMSタンパク質の形態でIL6アンタゴニスト結合ドメインを含む。PIMSタンパク質を作製するための構築物および方法は、PCT公開番号WO2009/023386に記載される。一般にPIMS分子は、アミノ末端からカルボキシ末端方向に、介在ドメイン(例えば、同じ(好ましい)または異なる動物種、免疫グロブリンアイソタイプおよび/または免疫グロブリンサブクラス由来のCH2およびCH3ドメインを含むもの由来の免疫グロブリン定常サブ領域)、リンカーペプチド(例えば、免疫グロブリンヒンジ領域)、および特異的結合ドメインを含む単鎖ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、PIMS分子はアミノ末端に位置する免疫グロブリンヒンジ領域をさらに含有し、アミノ末端のヒンジ領域は、二量体化ドメインと結合ドメインの間に見られるリンカーと同じであるか、または異なってよい。いくつかの実施形態では、アミノ末端に位置するリンカーは、天然に存在するかまたは加えられたモチーフ(CPPCなど)を含有し、少なくとも1つのジスルフィド結合の形成を促進して、多量体分子のアミノ末端を安定する。したがって、いくつかのPIMS分子の例示的な構造編成は、N−二量体化ドメイン−リンカー−結合ドメイン−CまたはN−ヒンジリンカー−二量体化ドメイン−リンカー−結合ドメイン−Cを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は介在ドメインを有し、ここで融合タンパク質は組成物に単鎖ポリペプチドとして主にまたは実質的に存在し、または組成物に二量体として主にまたは実質的に見られる。
【0076】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、IL6またはIL6Rα単独のいずれかよりもIL6xR複合体と高い親和性で結合し、sIL6xR複合体との結合に関してgp130と競合し、またはsIL6xR複合体とのgp130の結合を高める、IL6アンタゴニストポリペプチド結合ドメインを有し、ここでカルボキシ末端からアミノ末端に、(a)ポリペプチド結合ドメインが第1のリンカーと融合しており、(b)第1のリンカーが免疫グロブリン重鎖CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合しており、そして(c)CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドが免疫グロブリン重鎖CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合しており、そして(d)CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドが第2のリンカーと融合している。さらなる実施形態では、本開示のPIMS融合タンパク質は、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つに記載の少なくとも1つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含有する軽鎖可変領域を含み、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つに記載の少なくとも1つの重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1,CDR2、およびCDR3配列を含有する重鎖可変領域を含む結合ドメインを有する。
【0077】
他の態様では、本開示の融合タンパク質は、SCORPION(商標)タンパク質などの多機能性結合タンパク質の形態で、IL6またはIL6xRに特異的な結合ドメインを含む。SCORPION(商標)タンパク質を作製するための方法は本明細書に記載されており、当技術分野で公知である(PCT出願公開番号WO2007/146968を参照されたい)。他の例示的な多機能性融合タンパク質に関しては、例えば、米国特許出願公開第2006/0051844号および米国特許第7,166,707号を参照。特定の実施形態では、単一特異性の多価融合タンパク質は、第1および第2の結合ドメイン、第1および第2のリンカー、ならびに二量体化ドメインを含み、二量体化ドメインは、本明細書に記載するように、IL6xRに対してそれぞれ特異的である、免疫グロブリン可変領域結合ドメイン、またはその誘導体と、リンカーによってそれぞれの末端で融合している。あるいは、SCORPION(商標)タンパク質の構造は、BD1が第1の結合ドメインであり、IDが介在ドメインであり、そしてBD2が第2の結合ドメインである、以下のN−BD1−ID−BD2−Cとして例示することができる。いくつかのこのような構築物では、IDは第1と第2の結合ドメインの間に配置された免疫グロブリン定常領域またはサブ領域を含む。さらなる実施形態では、融合タンパク質は介在ドメインを有し、かつ融合タンパク質は組成物に単鎖ポリペプチドとして主にまたは実質的に存在する。いくつかの構築物では、IDは二量体化ドメインである。
【0078】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、IL6またはIL6Rα単独のいずれかよりも高い親和性でIL6xRに結合し、sIL6xR複合体との結合に関してgp130と競合し、またはsIL6xR複合体とのgp130の結合を高める、IL6xR複合体に特異的な少なくとも2つのポリペプチド結合ドメインを有し、ここでアミノ末端からカルボキシ末端に、(a)第1のポリペプチド結合ドメインが第1のリンカーと融合しており、(b)第1のリンカーが免疫グロブリン重鎖CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合しており、(c)CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドが免疫グロブリン重鎖CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合しており、(d)CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドが第2のリンカーと融合しており、そして(e)第2のリンカーが第2のポリペプチド結合ドメインと融合している。なおさらなる実施形態では、本開示のSCORPION(商標)融合タンパク質は、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つに記載の少なくとも1つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含有する軽鎖可変領域を独立して含み、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つに記載の少なくとも1つの重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1,CDR2、およびCDR3配列を含有する重鎖可変領域を含む少なくとも2つの結合ドメインを有する。いくつかの実施形態では、第1のリンカーは、リンカー46(配列番号542)などの、nが1〜5の整数である(GlySer)リンカーである。他の実施形態では、第1または第2のリンカーは、配列番号497〜604および823〜828で見られる任意のリンカーなどの、IgG1,IgAまたはIgEヒンジ領域、または0、1、または2個のシステイン残基を有する突然変異IgG1ヒンジ領域である。
【0079】
さらに別の態様では、本明細書に記載するIL6アンタゴニスト結合ドメインを有する例示的な多重特異性融合タンパク質は、IL6アンタゴニストではない少なくとも1つの追加の結合領域または結合ドメインを含有することができる。特定の実施形態では、多重特異性融合タンパク質は、第1および第2の結合ドメイン、第1および第2のリンカー、ならびに介在ドメインを含み、ここで介在ドメインの一末端はIL6xRに特異的な免疫グロブリン可変領域由来の第1の結合ドメインとリンカーによって融合しており、他の末端はインターロイキン受容体外部ドメイン、増殖因子受容体外部ドメイン(例えば、TGFR)、または腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体(TNFSFR)外部ドメインなどの、受容体のリガンド結合外部ドメインである第2の結合ドメインとリンカーによって融合している。いくつかの実施形態では、外部ドメインの全体未満を利用する。具体的には、リガンド結合をもたらす外部ドメイン内のドメインを利用する。例えば、TNF−αアンタゴニストドメインが融合タンパク質のアミノ末端に存在し、IL6アンタゴニスト結合ドメインが融合タンパク質のカルボキシ末端に存在し得、またはIL6アンタゴニスト結合ドメインがアミノ末端に存在し、TNF−αアンタゴニストがカルボキシ末端に存在し得ることが意図される。本明細書に言及するように、本開示の結合ドメインは、介在ドメイン(例えば、免疫グロブリン定常領域またはそのサブ領域(IgG1のCH2CH3など))のそれぞれの末端と融合することができる。さらに、2つ以上の結合ドメインを、当技術分野で公知であるかまたは本明細書に記載する同じまたは異なるリンカーによって、介在ドメインにそれぞれ接合させることが可能である。
【0080】
本明細書でXceptor分子と呼ぶ、このような多重特異性融合タンパク質の例示的な構造には、BDが免疫グロブリン様または免疫グロブリン可変領域結合ドメインであり、IDが介在ドメインであり、EDが、例えば受容体外部ドメイン、セマフォリンドメインなどの、リガンド結合ドメインである、N−BD−ID−ED−C、N−LD−ID−BD−C、N−ED1−ID−LD2−Cが含まれる。いくつかの構築物では、IDは二量体化ドメインである。いくつかの構築物では、IDは第1と第2の結合ドメインの間に配置された免疫グロブリン定常領域またはサブ領域を含むことができる。なおさらなる実施形態では、融合タンパク質は介在ドメインを有し、ここで融合タンパク質は組成物に単鎖ポリペプチドとして主にまたは実質的に存在する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の多重特異性融合タンパク質は、TNFRSF外部ドメインまたはTNFRSF外部ドメインのサブドメイン、例えばシステインに富むドメイン(CRD)1、CRD2、CRD3、50のTNF結合ループ、90のTNF結合ループ、またはこれらの任意の組合せを含むTNF−αアンタゴニストを有する。例えば、TNF−αアンタゴニストは、配列番号696に記載のTNFRSF1A(この配列に含まれる天然リーダーペプチド配列有りまたは無し)の外部ドメイン、または配列番号695に記載のTNFRSF1B(この配列に含まれる天然リーダーペプチド配列有りまたは無し)の外部ドメインを含むことができる。
【0082】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、(a)IL6またはIL6Rα単独のいずれかよりも高い親和性でIL6xRに結合し、sIL6xR複合体との結合に関してgp130と競合し、またはsIL6xR複合体とのgp130の結合を高める、IL6xR複合体に特異的なポリペプチド結合ドメイン、および(b)TNFRSF1B外部ドメインを含むポリペプチド結合ドメインを有し、ここでアミノ末端からカルボキシ末端またはカルボキシ末端からアミノ末端で、(a)抗IL6xR結合ドメインまたはTNFRSF1B外部ドメインが第1のリンカーと融合しており、(b)第1のリンカーが免疫グロブリン重鎖CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合しており、(c)CH2定常領域またはサブ領域ポリペプチドが免疫グロブリン重鎖CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドと融合しており、(d)CH3定常領域またはサブ領域ポリペプチドが第2のリンカーと融合しており、そして(e)第2のリンカーが抗IL6xR結合ドメインまたはTNFRSF1B外部ドメインと融合している。特定の実施形態では、本開示の多重特異性Xceptor融合タンパク質は、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号373〜434および799〜804のいずれか1つに記載の少なくとも1つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含有する軽鎖可変領域を含み、それぞれのCDRが0〜3個のアミノ酸変化を有する、それぞれ配列番号435〜496および805〜810のいずれか1つに記載の少なくとも1つの重鎖可変領域CDR1、CDR2、およびCDR3とそれぞれ少なくとも80%〜100%同一であるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含有する重鎖可変領域を含む、IL6xR結合ドメインを有する。関連実施形態では、TNFRSF1B外部ドメインは、天然リーダーペプチド配列が含まれないという条件で、配列番号695に記載のアミノ酸配列を含む。なおさらなる実施形態では、本開示のXceptor融合タンパク質は、配列番号607〜668のいずれか1つに記載の配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有し、リーダーペプチド配列を有するかまたは有さず、それぞれのCDRは0〜3個のアミノ酸変化を有する。
【0083】
一般に、このような構築物は、本開示の多重特異性融合タンパク質のアミノ末端にI型受容体外部ドメインを有するかまたはカルボキシ末端にII型受容体外部ドメインを有する。I型受容体外部ドメインを有する構築物の一例は、アミノ末端にTNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)外部ドメインを有し、そしてカルボキシ末端にIL6xR複合体結合ドメインを有する構築物である。予想外に、カルボキシ末端にTNFRSF外部ドメインを有するI型受容体外部ドメイン構築物も働いた(配列番号669および670を参照されたい)。
【0084】
複数の結合ドメイン、例えば結合ドメイン1(BD1)および結合ドメイン2(BD2)を有する本開示のポリペプチドの場合、その1つは例えば抗IL6xRであり、低いkOFF値は阻害活性および、完全価数(full valency)で結合した本開示のポリペプチドまたは融合タンパク質の濃度を最大にし、したがって投薬の範囲は、BD1またはBD2単独で相互作用する型のポリペプチドまたは融合タンパク質に広がる(Perelson(1980年)Math. Biosci. 49巻:87頁を参照されたい)。高いkOFF値を有する結合ドメインを選択することも重要な場合がある。例えば、所望のシグナル伝達表現型を誘導するためには複合体中の短い滞留時間が好ましい受容体において、高いkOFFが所望される場合がある(Matsuiら、(1994年)Proc. Nat’l. Acad.Sci.(USA)91巻:12862頁;Lyonsら、(1996年)Immunity 5巻:53頁を参照されたい)。2つの結合ドメインを含む組成物、例えば本明細書に記載するSCORPION(商標)分子についてのBD1およびBD2に対して、kOFFを独立に制御することができることは当業者に理解されよう。さらなる非制限的な例に関して、結合ドメインの1つが非常に低いkOFFを有し、もう1つの結合ドメインが比較的高いkOFFを有することが所望の場合がある。これによって、多重特異性結合ポリペプチドは、高いkOFFのBDに対応する標的分子連続的に関与しながら、低いkOFFのBDに対応する標的分子と細胞表面で結合して長い滞留時間を有することができる。これにより、SCORPION(商標)タンパク質の濃度が低いとき、シグナル伝達を増強する効果を有することができる(Kalergisら、(2001年)Nature Immunol. 2巻:229頁を参照されたい)。結合ドメインを工学的に作製することによって、または所望の力学的特性を有する結合ドメインをスクリーニングすることによって、kOFFを改変することができることは当業者によって理解されよう(Suら、(2007年)J. Immunol. Methods 322巻:94頁;Steukersら、(2006年)J. Immunol. Methods 310巻:126頁;Jermutusら、(2001年)Proc. Nat’l. Acad.Sci.(USA)98巻:75頁を参照されたい)。
【0085】
本明細書に記載する任意の結合ドメインポリペプチドまたは融合タンパク質を効率よく産生するために、リーダーペプチドを使用して発現されるポリペプチドおよび融合タンパク質の分泌を容易にする。任意の従来のリーダーペプチド(シグナル配列)の使用は、新たに(nascently)発現されたポリペプチドまたは融合タンパク質を分泌経路に誘導し、リーダーペプチドとポリペプチドまたは融合タンパク質の間の接合部またはその近辺での成熟ポリペプチドまたは融合タンパク質からのリーダーペプチドの切断をもたらすと予想される。特定のリーダーペプチドは、分子操作を容易にするためのリーダーペプチドのコード配列の開始点または終点における制限エンドヌクレアーゼ切断部位の容易な含有を可能にする、ポリヌクレオチドによってコードされる配列の使用など、当技術分野で公知である考慮事項に基づいて選択される。ただし、このような導入配列は、新たに発現されたタンパク質からのリーダーペプチドのいかなる所望のプロセシングにも許容されない形で干渉しない、またはリーダーペプチドがポリペプチドまたは融合タンパク質の成熟の間に切断されない場合、ポリペプチドまたは融合タンパク質分子のいかなる所望の機能にも許容されない形で干渉しない、アミノ酸を指定するものとする。本開示の例示的なリーダーペプチドには、天然リーダー配列、またはXが任意のアミノ酸でありnが0〜3であるHN−MDFQVQIFSFLLISASVIMSRG(X)−COH(配列番号785)またはHN−MEAPAQLLFLLLLWLPDTTG−COH(配列番号786)などの他の配列が含まれる。
【0086】
特定の例示的実施形態では、このようなタンパク質はグリコシル化されており、グリコシル化のパターンは、(組換え宿主細胞で調製される場合)その中でタンパク質が発現される宿主細胞、および培養条件を含めた様々な要因に依存する。
【0087】
本開示は、本開示の結合ドメインまたはこのような結合ドメインを含む融合タンパク質の誘導体も提供する。誘導体は、アミノ酸残基の挿入、欠失、または置換以外の修飾を有する特異的結合剤のポリペプチドを含む。好ましくは、修飾は現実には共有結合性であり、例えば、ポリマー、脂質、他の有機および無機成分との化学結合を含む。本開示の誘導体を調製して特異的結合剤のポリペプチドの循環半減期を増大することができ、またはこれらを設計して、所望の細胞、組織もしくは器官に対するポリペプチドの標的化能力を改善することができる。
【0088】
特定の実施形態では、本開示の結合ドメインポリペプチドまたはその融合タンパク質のin vivo半減期は、巨大分子の半減期を増大するための当技術分野で公知である方法を使用して増大することができる。例えば、本開示は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどの1つまたは複数の水溶性ポリマー結合を含むよう、共有結合により修飾されるかまたは誘導体化される、融合タンパク質を包含する(例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、同第4,179,337号を参照されたい)。当技術分野で公知であるさらに他の有用なポリマーには、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースおよび他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレート化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、およびこれらのポリマーの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体化タンパク質である。水溶性ポリマーは特定の位置、例えば本開示によるタンパク質およびポリペプチドのアミノ末端で結合することができ、またはポリペプチドの1つもしくは複数の側鎖とランダムに結合することができる。治療能力を改善するためのPEGの使用は米国特許第6,133,426号に記載される。
【0089】
このような方法は、結合ドメイン単独のそれよりも長い半減期を結合ドメイン融合タンパク質にもたらすタンパク質と結合ドメインとが融合している、融合タンパク質の作製も含む。このような融合タンパク質は、長い半減期を有するタンパク質(例えば、免疫グロブリン、免疫グロブリンFcドメイン、トランスフェリン、連鎖球菌Gタンパク質、またはアルブミン)とそれ自体が結合するタンパク質を含むことができる。結合ドメインと安定血漿タンパク質のこのような融合は、例えば、米国特許第5,428,130号、同第5,116,964号に開示される。
【0090】
本開示の特定の実施形態は免疫グロブリンまたはFc融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、特にFcドメインが、新生児Fc受容体であるFcRnと相互作用することができる場合、長い半減期、例えば数時間、1日以上、またはさらに1週間以上を有することができる。FcドメインにおけるFcRnに対する結合部位は、細菌プロテインAおよびプロテインGが結合する部位でもある。これらのタンパク質間の強い結合は、例えば、タンパク質精製の間にプロテインAまたはプロテインG親和性クロマトグラフィーを利用することによって、本開示の抗体または融合タンパク質を精製するための手段として使用することができる。
【0091】
タンパク質の精製技法は当業者には周知である。これらの技法は、1レベルでの、ポリペプチドおよび非ポリペプチド画分の粗製物分画を含む。部分的または完全精製(または均質までの精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動技法を使用する、さらなる精製がしばしば所望される。純粋融合タンパク質の調製に特に適した分析法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動および等電点電気泳動である。ペプチドを精製する特に有効な方法は、迅速タンパク質液体クロマトグラフィーおよびHPLCである。
【0092】
本発明の特定の態様は、精製に関するもので、そして特定の実施形態では、本開示のポリペプチドの実質的精製に関する。本明細書で使用する用語「精製」は他の成分から単離可能な組成物を指すものとし、ここで融合タンパク質は、その自然に得ることができる状態に対して任意の程度まで精製する。したがって精製タンパク質は、それが本来存在する環境から単離したそのようなタンパク質も指す。
【0093】
一般に「精製された」は、様々な他の成分を除去するための分画を施したポリペプチドの組成物を指し、その組成物はその発現される生物活性を実質的に保持する。用語「実質的に精製された」を使用する場合、この表示は、例えば、組成物において約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99重量%以上をタンパク質が構成するなどの、タンパク質が組成物の主成分を形成する、結合ドメインタンパク質組成物を指す。
【0094】
精製度を定量化するための様々な方法は、本開示に照らすと当業者には公知である。これらは例えば、活性画分の特異的結合活性の決定、またはSDS/PAGE分析による画分中のタンパク質の量の評価を含む。タンパク質画分の純度を評価するのに好ましい方法は、画分の結合活性を計算し、それを初期抽出物の結合活性と比較し、したがって「精製倍数」によって評価する本明細書の精製度を計算することである。結合活性の量を表すために使用する実際の単位は、当然ながら、精製を追跡するために選択する個々のアッセイ技法、および発現されるタンパク質が検出可能な結合活性を示すかどうかに依存する。
【0095】
タンパク質精製において使用するのに適した様々な技法は、当業者には周知である。これらは例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いた沈殿、または熱変性、次に遠心分離;イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイトおよび親和性クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー工程;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;およびこれらの技法と他の技法の組合せを含む。当技術分野で一般に公知であるように、これらの様々な精製工程を実施する順序は変えることができる、または特定の工程を省略して、実質的に精製されたタンパク質の調製に適した方法をさらにもたらすことができる。
ポリヌクレオチド、発現ベクター、および宿主細胞
本開示は、本開示の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(単離または精製または純粋ポリヌクレオチド)、このようなポリヌクレオチドを含むベクター(クローニングベクターおよび発現ベクターを含む)、および本開示によるポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換またはトランスフェクトした細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。
【0096】
特定の実施形態では、本開示の結合ドメイン、または1つまたは複数のこのような結合ドメインを含有する融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を意図する。SMIPおよびXceptor構築物をコードする発現カセットは、添付の実施例において与える。
【0097】
本発明は、本開示のポリヌクレオチドを含むベクター、および特に、組換え発現構築物にも関する。一実施形態では、本開示は、本開示の結合ドメインをコードするポリヌクレオチド、またはこのような結合ドメインを含むポリペプチド、例えばSMIP、PIMS、SCORPION、Xceptorまたは他の単一、二重または多重機能性融合タンパク質、ならびにこのような結合ドメインコード配列の転写、翻訳およびプロセシングを引き起こすかまたは容易にする他のポリヌクレオチド配列を含むベクターを意図する。
【0098】
原核生物および真核生物宿主と共に使用するのに適したクローニングベクターおよび発現ベクターは、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor、NY、(1989年)に記載される。例示的なクローニング/発現ベクターには、クローニングベクター、シャトルベクターおよび、プラスミド、ファージミド、ファスミド、コスミド、ウイルス、人工染色体に基づいてよい発現構築物、またはその中に含有されるポリヌクレオチドの増幅、移動および/または発現に適していることが当技術分野で公知である任意の核酸媒体(nucleic acid vehicle)が含まれる。
【0099】
本明細書で使用する「ベクター」は、連結した別の核酸を運ぶことができる核酸分子を意味する。例示的なベクターには、プラスミド、酵母人工染色体およびウイルスゲノムが含まれる。特定のベクターは宿主細胞で自己複製することができるが、一方他のベクターは宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼び、これらは発現制御配列と作動可能に連結し、したがってこれらの配列の発現を誘導することができる核酸配列を含有する。
【0100】
特定の実施形態では、発現構築物はプラスミドベクターに由来する。例示的な構築物には、アンピシリン耐性遺伝子、ポリアデニル化シグナルおよびT7プロモーター部位をコードする核酸配列を有する修飾pNASSベクター(Clontech、Palo Alto、CA)、CHEF1プロモーターを有するpDEF38およびpNEF38(CMC ICOS Biologics、Inc.)、およびCMVプロモーターを有するpD18(Lonza)が含まれる。他の適切な哺乳動物発現ベクターが周知である(例えば、Ausubelら、1995年;Sambrookら、上掲を参照;例えば、Invitrogen、San Diego、CA;Novagen、Madison、WI;Pharmacia、Piscataway、NJからのカタログも参照されたい)。適切な選択剤(例えば、メトトレキセート)の施用後の遺伝子増幅に起因する、融合タンパク質の高い産生レベルを促進するのに適した調節制御下で、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)コード配列を含む、有用な構築物を調製することができる。
【0101】
一般に、組換え発現ベクターは、宿主細胞の形質転換を可能にする複製起点および選択マーカー、および前記したような下流の構造配列の転写を誘導するための高発現遺伝子由来のプロモーターを含み得る。本開示によるポリヌクレオチドと作動可能に連結したベクターは、クローニング構築物または発現構築物をもたらす。例示的なクローニング/発現構築物は、少なくとも1つの発現制御エレメント、例えば本開示のポリヌクレオチドと作動可能に連結したプロモーターを含有する。本開示によるベクターおよびクローニング/発現構築物における、エンハンサー、因子特異的結合部位、ターミネーターおよびリボソーム結合部位などの、追加の発現制御エレメントも意図される。本開示によるポリヌクレオチドの異種構造配列は、翻訳開始配列および翻訳終結配列とともに適切な段階で構築する。したがって、例えば、本明細書で提供する融合タンパク質コード核酸は、宿主細胞でこのようなタンパク質を発現させるための組換え発現構築物としての、様々な発現ベクター構築物のいずれか1つに含ませることができる。
【0102】
適切なDNA配列(複数可)を、様々な手順によって例えばベクターに挿入することができる。一般に、当技術分野で公知である手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ切断部位(複数可)にDNA配列を挿入する。クローニング、DNA単離、増幅および精製のための標準的技法、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含めた酵素反応のための標準的技法、および様々な分離技法が意図される。いくつかの標準的技法は、例えば、Ausubelら(1993年 Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publ. Assoc. Inc.& John Wiley & Sons、Inc.、Boston、MA);Sambrookら、(1989年 Molecular Cloning、Second Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY);Maniatisら、(1982年 Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY);Glover(Ed.)(1985年 DNA Cloning Vol.I and II、IRL Press、Oxford、UK);Hames and Higgins(Eds.)(1985年 Nucleic Acid Hybridization、IRL Press、Oxford、UK);およびその他において記載される。
【0103】
発現ベクターにおけるDNA配列は、少なくとも1つの適切な発現制御配列(例えば、構成的プロモーターまたは制御的プロモーター(regulated promoter))と作動可能に連結して、mRNA合成を誘導する。このような発現制御配列の代表例には、前記したような真核生物細胞またはそれらのウイルスのプロモーターが含まれる。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは他のベクターを選択マーカーとともに使用して、任意の所望の遺伝子から選択することができる。真核生物プロモーターには、CMV即時初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−Iが挙げられる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は十分に当業者のレベルの範囲内であり、本開示によるタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸と作動可能に連結した少なくとも1つのプロモーターまたは制御的プロモーターを含む、特定の特に好ましい組換え発現構築物の調製は、本明細書に記載する。
【0104】
本開示のポリヌクレオチドの変異体も意図する。変異体ポリヌクレオチドは、本明細書に記載する定義された配列のポリヌクレオチドの1つと少なくとも90%、および好ましくは95%、99%、または99.9%同一であり、または約65〜68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または約42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミドのストリンジェントハイブリダイゼーション条件下において、定義された配列のこれらのポリヌクレオチドの1つとハイブリダイズする。ポリヌクレオチド変異体は、結合ドメイン、またはその融合タンパク質をコードする能力を保持し、本明細書に記載する機能を有する。
【0105】
用語「ストリンジェント」を使用して、ストリンジェントとして当技術分野で一般に理解されている条件を指す。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドなどの変性剤の濃度によって決定する。ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関するストリンジェント条件の例は、約65〜68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または約42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミドである(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y. 1989年参照されたい)。
【0106】
よりストリンジェントな条件(より高い温度、より低いイオン強度、より高濃度のホルムアミドまたは他の変性剤など)も使用することはできるが、しかしながら、ハイブリダイゼーションの割合は影響を受ける可能性がある。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに関する場合、さらなる例示的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、37℃(14塩基オリゴヌクレオチド用)、48℃(17塩基オリゴヌクレオチド用)、55℃(20塩基オリゴヌクレオチド用)、および60℃(23塩基オリゴヌクレオチド用)における6×SSC、0.05%のピロリン酸ナトリウム中での洗浄を含む。
【0107】
本開示のさらなる態様は、本開示のポリヌクレオチドまたはベクター/発現構築物のいずれかを用いて形質転換またはトランスフェクトした、または他方法でそれらを含有する宿主細胞を提供する。本開示のポリヌクレオチドまたはクローニング/発現構築物は、形質転換、トランスフェクション、および形質導入を含めた、当技術分野で公知である任意の方法を使用して適切な細胞に導入する。宿主細胞は、例えばex vivo遺伝子治療を含めたex vivo細胞治療を受けた被験体の細胞を含む。本開示によるポリヌクレオチド、ベクター、またはタンパク質を有するとき本開示の一態様として意図する真核生物宿主細胞には、被験体自身の細胞(例えば、ヒト患者自身の細胞)に加えて、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(発現される多価結合分子のグリコシル化パターンを修飾することができる修飾型CHO細胞を含む、米国特許出願公開No.2003/0115614を参照されたい)、COS細胞(COS−7など)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、HEK293細胞、HepG2細胞、N細胞、3T3細胞、Spodoptera frugiperda細胞(例えば、Sf9細胞)、Saccharomyces cerevisiae細胞、および本開示によるタンパク質またはペプチドの発現、そして場合によっては単離において有用であることが当技術分野で公知である任意の他の真核生物細胞が挙げられる。Escherichia coil、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、Streptomycete、または本開示によるタンパク質またはペプチドの発現、そして場合によっては単離に適していることが当技術分野で公知である任意の原核生物細胞を含めた、原核生物細胞も意図される。原核生物細胞からタンパク質またはペプチドを単離する際に、特に、封入体からタンパク質を抽出するための当技術分野で公知である技法を、使用することができることが意図される。適切な宿主の選択は、本明細書の教示から当業者の範囲内にある。本開示の融合タンパク質をグリコシル化する宿主細胞が意図される。
【0108】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターを含有する細胞を指す。このような用語は、特定の被験体細胞だけでなく、このような細胞の子孫を指すことを目的とすることは理解されるはずである。特定の修飾は突然変異または環境の影響のいずれかによって後の世代で起こる可能性があるので、このような子孫は、実際は、親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用する用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。
【0109】
組換え宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択、または特定遺伝子の増幅に適するように改変した従来の栄養培地で培養することができる。例えば温度、pHなどの、発現用に選択した特定宿主細胞のための培養条件は、当業者には容易に明らかであろう。様々な哺乳動物細胞培養系を利用して、組換えタンパク質を発現させることも可能である。哺乳動物発現系の例には、Gluzman(1981年)Cell 23巻:175頁によって記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7系、および適合ベクターを発現することができる他の細胞系、例えばC127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞系が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、例えば、多価結合タンパク質発現構築物の調製に関して本明細書に記載するように、複製起点、適切なプロモーター、そして場合によってはエンハンサー、およびさらに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、および5’隣接非転写配列を含む。SV40スプライス、およびポリアデニル化部位由来のDNA配列を使用して、必要とされる非転写遺伝子エレメントを与えることができる。宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、またはエレクトロポレーション(Davisら、(1986年)Basic Methods in Molecular Biology)を含めた、当業者が精通している様々な方法によって実施することができる。
【0110】
一実施形態では、本開示によるタンパク質またはポリペプチドの発現を誘導する組換えウイルス構築物を、宿主細胞に形質導入する。形質導入した宿主細胞は、ウイルス出芽の間にウイルス粒子によって取り込まれた宿主細胞膜の一部分由来の、発現タンパク質またはポリペプチドを含有するウイルス粒子を生成する。
組成物および使用法
IL−6トランスシグナル伝達と関係がある疾患状態に罹患したヒトまたは非ヒト哺乳動物を治療するために、本開示の結合ドメインは典型的には、前に論じたようにより大きな(larger)タンパク質の一部分で構成され、そして次に、1回または複数回の投与過程後に疾患状態の症状を改善するのに有効である量で被験体に投与する。ポリペプチドであるので、本開示のタンパク質は、以下でより十分に論じるように、注射または注入による静脈内投与に使用することができる、他の薬学的に許容される賦形剤の安定剤を場合によっては含む、薬学的に許容される希釈剤に縣濁または溶解することができる。
【0111】
薬学的に有効な用量は、疾患状態の発生を予防、阻害する、または疾患状態を治療する(症状をある程度、好ましくは症状全てを改善する)のに必要とされる用量である。薬学的に有効な用量は、治療薬、併用薬剤、および医学分野の当業者が認識している他の要因の考慮下での、疾患の型、使用する組成物、投与の経路、治療する被験体の型、特定被験体の身体特性に依存する。例えば、0.1mg/体重1kg〜100mg/体重1kgの量(一回用量として、1日に1回、1週間1回、1カ月に1回、または任意の適切な間隔で投与することができる)の活性成分を、本開示の結合ドメインポリペプチドまたは融合タンパク質の効力に応じて投与することができる。
【0112】
特定の実施形態では、IL6のシスシグナル伝達は最低限阻害されるかまたは全く阻害されない、すなわち、シスシグナル伝達のいかなる阻害も実質的ではなく、阻害が存在しない、無症状、または検出可能ではないことを意味する。IL6トランスシグナル伝達の阻害の程度は変わり得るが、しかしながら一般にトランスシグナル伝達は、このようなシグナル伝達により媒介されるかまたはそれに関連する疾患状態の症状に対してプラスの効果を有する程度に変わる。特定の実施形態では、本開示の結合ドメインポリペプチドまたはその融合タンパク質によるIL6のトランスシグナル伝達に対する阻害は、疾患の進行を遅延、停止、または逆行させることが可能である。
【0113】
本開示の組成物を使用して、IL6シグナル伝達によって媒介されるヒトおよび非ヒト哺乳動物における疾患状態を治療することができる。IL−6の生成の増大、したがってIL−6シグナル伝達の生成の増大は、アルツハイマー病、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、SLE)、炎症、心筋梗塞、ページェット病、骨粗しょう症、固形腫瘍(例えば、結腸癌、RCC、前立腺癌および膀胱癌)、特定の神経癌、B細胞悪性疾患(例えば、キャッスルマン病、いくつかのリンパ腫亜型、慢性リンパ性白血病、および特に、悪性メラノーマ)を含めた、様々な疾患のプロセスと関連している。いくつかの場合、IL−6は増殖経路と関連がある。それは、ヘパリン結合性上皮増殖因子および肝細胞増殖因子などの他の因子とともに作用するからである(例えば、Grantら、(2002年)Oncogene 21巻:460頁;Badache and Hynes(2001年)Cancer Res. 61巻:383頁;Wangら、(2002年)Oncogene 21巻:2584頁を参照されたい)。したがってIL−6シグナル伝達の阻害は、多くの病状において有益であり得る。IL−6トランスシグナル伝達は、結腸癌、炎症性腸疾患、および関節リウマチを含めた、悪性疾患、および自己免疫状態または炎症状態に関与している。IL−6シスシグナル伝達は、前述に加え乳癌を含めた、悪性疾患と自己免疫状態の両方に関与している。一般に、トランスシグナル伝達は自己免疫状態または炎症状態とより関係がある可能性があり、かつシスシグナル伝達は悪性疾患状態とより関係があり得ると考えられている(例えば、Rabeら、(2008年)Blood 111巻:1021頁);Sansoneら、(2007年)J. Clin Invest. 117巻:3988頁を参照されたい)。
【0114】
したがって、本開示の結合ドメインを含む薬剤は、関節リウマチを含む自己免疫疾患、シェーグレン症候群、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、橋本病、およびキャッスルマン病、急性および慢性炎症、および骨粗しょう症および、骨量の消失と関係がある他の障害、ならびにホルモン非依存性前立腺癌、B細胞非ホジキンリンパ腫などのB細胞増殖障害、および腎臓、乳房、結腸、肺、脳、および他の組織の癌を含む癌を治療するのに有用である。
【0115】
別の態様では、融合タンパク質の組成物を本開示によって提供する。本開示の医薬組成物は一般に、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と組み合わせて1つまたは複数の型の結合ドメインまたは融合タンパク質を含む。このような担体は、利用する用量および濃度でレシピエントに無毒である。治療用途の薬学的に許容される担体は薬剤分野では周知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro (Ed.) 1985年)に記載されている。例えば、生理的pHで滅菌生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水を使用することができる。防腐剤、安定剤、色素などを医薬組成物において提供することができる。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、またはp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを防腐剤として加えることができる。上記文献1449頁。さらに、抗酸化剤および懸濁剤を使用することができる。上記文献。本発明の化合物は遊離塩基または塩の形態のいずれかで使用することができ、両方の形態が本発明の範囲内に存在すると考えられる。
【0116】
医薬組成物は、バッファーなどの希釈剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストリン)、キレート剤(例えば、EDTA)、グルタチオンおよび他の安定剤および賦形剤も含有することができる。中性緩衝生理食塩水、または非特異的血清アルブミンと混合した食塩水は、例示的な適切な希釈剤である。生成物は、希釈剤として適切な賦形剤溶液(例えば、スクロース)を使用して、凍結乾燥品として製剤することが好ましい。
【0117】
第2の薬剤と併せた、本開示の多重特異性融合タンパク質組成物の投与も意図される。第2の薬剤は、炎症、自己免疫、および癌などの特定の疾患状態用の標準的治療剤として、当技術分野で認められている薬剤であってよい。意図される例示的な第2の薬剤には、サイトカイン、増殖因子、ステロイド、NSAID、DMARD、化学療法剤、放射線療法剤、または他の活性薬剤および補助薬剤、またはこれらの任意の組合せが含まれる。
【0118】
「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、そして親化合物の所望の薬理活性を有する、本開示の結合ドメインポリペプチドまたは融合タンパク質の塩を指す。このような塩には、以下の(1)例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成される酸付加塩、または例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプタン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸で形成される酸付加塩、または(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンによって置換されるか、または例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合するかのいずれかのときに形成される塩が挙げられる。
【0119】
特定の例示的実施形態では、本開示のポリペプチドまたは融合タンパク質を、例えばボーラス注射または注入によって静脈内投与する。静脈内に加えての投与の経路には、経口、局所、非経口(例えば、舌下または口腔)、舌下、直腸、膣、および鼻腔内が含まれる。本明細書で使用する用語非経口は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内、海綿内、鞘内(intrathecal)、道内(intrameatal)、尿道内注射または注入技法を含む。患者への組成物の投与によりその中に含有される活性成分に生物学的利用能を与えることができるように、医薬組成物を製剤化する。患者に投与される組成物は1つまたは複数の投薬単位(dosage unit)の形態をとり、例えば錠剤は単一の投薬単位であってよく、かつエアロゾル形での本開示の1つまたは複数の化合物の容器は複数の投薬単位を保持することができる。
【0120】
経口投与用に、スクロース、カオリン、グリセリン、スターチ デキストラン、シクロデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、およびエチルセルロースなどの、賦形剤および/または結合剤が存在してよい。甘味剤、防腐剤、色素/着色剤、香味増進剤、またはこれらの任意の組合せが、場合によっては存在してよい。コーティングシェルも場合によっては利用することができる。
【0121】
注射により投与することを目的とする組成物において、1つまたは複数の界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、バッファー、安定剤、等張化剤、またはこれらの任意の組合せを、場合によっては含めることができる。
【0122】
核酸ベースの製剤に関して、または本開示による発現産物を含む製剤に関して、約0.01μg/体重1kg〜約100mg/体重1kgを、例えば、皮内、皮下、筋肉内、または静脈内経路によって、または所与の環境の状況下に適した当技術分野で公知である任意の経路によって投与する。好ましい用量は、例えば約1μg/kg〜約20mg/kgであり、約5μg/kg〜約10mg/kgが特に好ましい。投与の回数および頻度は宿主の応答に依存することは、当業者には明らかであろう。
【0123】
本開示の医薬組成物は、例えば固体、液体、または気体(エアロゾル)の形態などの、患者への投与を可能にする任意の形態であってよい。組成物は液体の形態、例えばエリキシル剤、シロップ、溶液、乳濁液または懸濁液であってよい。2つの例として、液体は経口投与用、または注射による送達用であってよい。
【0124】
本明細書で使用する液状医薬組成物は、溶液、懸濁液の形態、または他の同様の形態であれ、以下の構成成分:注射用水、食塩水溶液、好ましくは生理食塩水溶液、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、溶媒または懸濁媒体として働くことができる合成モノまたはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン4酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などのバッファー、およびナトリウム、塩化物、またはデキストロースなどの張性を調節するための薬剤の1つまたは複数を含むことができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックでできたアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量バイアルに封入することができる。生理食塩水溶液は好ましい添加剤である。注射用医薬組成物は滅菌状態であることが好ましい。
【0125】
調製物において、アルミニウム塩、油中水型エマルジョン、生分解性油性ビヒクル、水中油型エマルジョン、生分解性マイクロカプセル、およびリポソームを含めた送達ビヒクルなどの、他の構成成分を含めることも所望される場合がある。このようなビヒクルにおいて使用するためのアジュバントの例には、N−アセチルムラミル−L−アラニン−D−イソグルタミン(MDP)、リポ多糖(LPS)、グルカン、IL−12、GM−CSF、γ−インターフェロン、およびIL−15が含まれる。
【0126】
当業者に公知である任意の適切な担体を本開示の医薬組成物において利用することができるが、担体の型は投与の形式、および徐放が所望されるかどうかに応じて変わる。非経口投与用に、担体は水、食塩水、アルコール、脂肪、ワックス、バッファー、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。経口投与用に、前記の担体、または、マンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム、またはこれらの任意の組合せなどの固形担体のいずれかを利用することができる。
【0127】
本開示は、本開示の医薬組成物を含む投薬単位を意図する。このような投薬単位には、例えば、2区画バイアルまたはシリンジを含めた単回用量または複数用量バイアルまたはシリンジ、凍結乾燥形態で本開示の医薬組成物および他の再構成用希釈剤を含むバイアルまたはシリンジが含まれる。複数用量投薬単位は、例えば静脈内注入デバイスと結び付けるためのバッグまたはチューブであってもよい。
【0128】
本開示は、単位用量または複数用量容器、例えばバイアル中の本開示の医薬組成物、および上に記載した障害などの障害に罹患する患者に該組成物を投与するための説明書セットを含むキットも意図する。
【0129】
本明細書で言及する、全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、特許以外の刊行物、表、配列、ウエブページなどは、参照によってそれらの全容を本明細書に組み込む。以下の実施例は、本発明を制限するものではなく、例示することを目的とする。
【実施例】
【0130】
SMIPおよびXceptor配列
抗IL6xR結合ドメインを有する例示的SMIPおよびXceptor(配列番号231〜292)分子のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号671〜694および607〜668で提供し、融合タンパク質の対応するヌクレオチド発現カセットを、それぞれ配列番号761〜784および697〜758で提供する(成熟タンパク質は、配列番号671〜694および607〜668に見出されるシグナルペプチド配列が欠落していることに留意されたい)。
【0131】
アミノ末端にTNFRSF1B外部ドメインを、カルボキシ末端に抗IL6xR結合ドメインを有するXceptorは、本明細書においてTRU(XT6)−1001からTRU(XT6)−1062と称される。逆配向、すなわちアミノ末端に抗IL6xR結合ドメイン、カルボキシ末端にTNFRSF1B外部ドメインを有するXceptorは、本明細書において、TRU(X6T)−1008およびTRU(X6T)−1019と称される。抗IL6xR結合ドメインを有するSMIP構築体は、本明細書において、TRU(S6)−1002、TRU(S6)−1004、TRU(S6)−1007、TRU(S6)−1008、TRU(S6)−1011、TRU(S6)−1013、TRU(S6)−1014、TRU(S6)−1018、TRU(S6)−1019、TRU(S6)−1022、TRU(S6)−1024〜TRU(S6)−1026、TRU(S6)−1029、TRU(S6)−1038、TRU(S6)−1040、TRU(S6)−1047、TRU(S6)−1051、TRU(S6)−1052、TRU(S6)−1054、TRU(S6)−1056およびTRU(S6)−1059〜TRU(S6)−1061と称される。
【0132】
Fab結合ドメインのファージライブラリーを、基本的にHoetら(2005年)Nature Biotechnol. 23巻:344頁に記載の通りに、IL6xR複合体に特異的な結合ドメインについてスクリーニングした。結合ドメインは、PCR増幅によってクローニングした、簡潔に述べると、PCR SuperMix(Invitrogen、San Diego、CA)、および重複によってGSリンカーを作製する適切なプライマー、および初期アニーリングを56℃で9サイクル、次いで62℃でさらに20サイクルを使用して、Fabライブラリークローン由来のVLおよびVH領域を増幅した。PCR産物はアガロースゲルで分離し、Qiagen(Chatsworth、CA)PCR精製カラムを使用して精製した。第二ラウンドのソーイング(sewing)反応は、モル当量のVLおよびVH産物とエクスパンドバッファーおよび水の混合、95℃で5秒間の変性、次いで室温までゆっくりと冷却することを含んでいた。増幅のために、dNTPの混合物を拡張酵素(Expand enzyme)とともに加え、72℃で10秒間インキュベートした。外側プライマーを加え(5’VHおよび3’VL)、混合物は62℃のアニーリングおよび45分の伸長反応で35回サイクルに施した。生成した750塩基対の産物はゲルで精製し、EcoRIおよびNotIで消化し、プラスミドpD28にクローニングした(さらなる詳細に関しては、米国特許出願公開第2005/0136049号およびPCT出願公開番号WO2007/146968を参照されたい)。結合活性は、Hoetら(2005年)に記載されたのと同様にELISAによって調べた。
【0133】
本明細書に記載する様々なSMIPおよびXceptor融合タンパク質を、以下に記載するように抗IL6xR活性、抗TNF活性、または両方の活性に関して試験した。以下の実施例で使用した略語は、以下の用語を含む:PBS−T:PBS、pH7.2〜7.4および0.1%のTween(登録商標)20;作業バッファー:1%のBSAを含むPBS−T;ブロッキングバッファー:3%のBSAを含むPBS−Tおよび3%のBSA。
【0134】
(実施例1)
融合タンパク質の発現
293細胞における、本明細書に開示の融合タンパク質の特定の発現を、FreeStyle(商標)293Expression System(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して、製造業者の指示書に従って実施した。
【0135】
個々の30mlのトランスフェクションのために、28mlのFreeStyle(商標)293Expression Medium中3×10細胞を使用した。トランスフェクション当日、細胞懸濁液の少量のアリコートを微小遠心管に移し、集塊をなす細胞の生存率および量を、トリパンブルー色素排除法を使用して決定した。この懸濁液を、45秒間激しくボルテックスにかけ細胞の集塊を壊し、細胞総数をCoulter Counterまたは血球計数器を使用して決定した。細胞の生存率は90%を上回った。所要の細胞を含有する振とうフラスコを、37℃のインキュベーター内のオービタルシェイカーに配置した。
【0136】
個々のトランスフェクション試料について、脂質−DNA複合体を以下のように調製した。30μgのプラスミドDNAを、Opti−MEM(登録商標)Iで全量1mlに希釈し、緩やかに混合した。60μlの293fectin(商標)を、Opti−MEM(登録商標)Iで全容量1mlに希釈し、緩やかに混合し、室温において5分間インキュベートした。5分間のインキュベート後、希釈したDNAを希釈した293fectin(商標)に加え、全容量2mlを得、緩やかに混合した。得られた溶液を、室温において20〜30分間インキュベートし、DNA−293fectin(商標)複合体を形成させた。
【0137】
DNA−293fectin(商標)複合体をインキュベートする一方で、細胞懸濁液をインキュベーターから取り出し、適量の細胞懸濁液を、滅菌、使い捨ての125mlのErlenmeyer振とうフラスコに入れた。30mlのトランスフェクションのために、新鮮な、あらかじめ暖めておいたFreeStyle(商標)293 Expression Mediumを、全容量28mlまで加えた。
【0138】
DNA−293fectin(商標)複合体のインキュベーション完了後、2mlのDNA−293fectin(商標)複合体を、振とうフラスコに加えた。2mlのOpti−MEM(登録商標)Iを、DNA−293fectin(商標)複合体の代わりに陰性対照のフラスコに加えた。個々のフラスコは、全容量30mlを含有し、最終細胞密度はおよそ1×10生存細胞/mlであった。この細胞を、空気中8%COの加湿雰囲気の37℃のインキュベーターにおいて、125rpmで回転するオービタルシェイカーでインキュベートした。トランスフェクションのおよそ7日後に細胞を収穫し、組換えタンパク質の発現に関してアッセイした。
【0139】
IL6アンタゴニスト結合ドメインを有する融合タンパク質は、上記のように293細胞において発現した。
【0140】
(実施例2)
ELISAによる、XCEPTORのIL6およびハイパーIL6への結合
ハイパーIL6(HIL6またはIL6xR)、組換えヒトIL6(rhIL6)およびヒト可溶性IL6Rの結合活性を、実質的に以下のように、Xceptor TRU(XT6)−1002、1019、1025、1042、1058およびTRU(X6T)−1019(それぞれ、配列番号608、625、631、648、664および670)に関して試験した。
HIL6およびIL6の結合
96ウェルプレートの個々のウェルに、PBS(pH7.2〜7.4)中2μg/ml溶液のヤギ抗ヒトIgG−Fc(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)から100μlを加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて4回洗浄後、250μlのブロッキングバッファー(3%BSAまたは10%正常ヤギ血清を含有するPBS−T)を各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間(または4℃において一晩)インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて3回洗浄後、300ng/mlから出発して、作業バッファーで3倍段階希釈したXceptor TNFRSF1B::抗HIL6試料およびヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems、Minneapolis、MN)を、抗ヒトIgG−Fcコーティングプレートの2連のウェルに100μl/ウェル加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中150pM溶液のヒトハイパーIL6または組換えヒトIL6から100μl/ウェルを2連のウェルに加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中150ng/ml溶液の抗ヒトIL6−ビオチン(R&D Systems)から100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファーで1:4,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(Zymed、San Francisco、CA)を100μl/ウェル加え、プレートにカバーをして、室温で30分間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて6回洗浄後、100μl/ウェルの3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(3,3,5,5−tetramentylbenzidine)(TMB)基質溶液(Pierce、Rockford、IL)を約3から5分間加え、その後、50μlの停止バッファー(1N HSO)/ウェルを用いて反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmにおいて読み取った。
sIL6Rの結合
96ウェルプレートの個々のウェルに、PBS、pH7.2〜7.4中2μg/ml溶液のヤギ抗ヒトIgG−Fc(ICN Pharmaceuticals、Costa Mesa、CA)から100μlを加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて4回洗浄後、250μlのブロッキングバッファー(3%BSAまたは10%正常ヤギ血清を含有するPBS−T)を各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間(または4℃において一晩)インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて3回洗浄後、それぞれ300ng/mlから出発して、作業バッファーで3倍段階希釈した、100μl/ウェルのXceptor TNFRSF1B::抗HIL6試料、陽性対照の抗ヒトIL−6R(R&D Systems、Minneapolis、MN)および陰性対照のヒトIgGまたはヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems)を、抗ヒトIgG−Fcコーティングプレートの2連のウェルに加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中75pM溶液の組換えヒトsIL6R(R&D Systems)から100μl/ウェルを2連のウェルに加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中100ng/ml溶液の抗ヒトIL6R−ビオチン(R&D Systems)から100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファーで1:4,000に希釈した100μl/ウェルの西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(Zymed、San Francisco、CA)を加え、プレートにカバーをして、室温で30分間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて6回洗浄後、100μl/ウェルの3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Pierce、Rockford、IL)を約3から5分間加え、その後、50μlの停止バッファー(1N HSO)/ウェルを用いて反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmにおいて読み取った。
【0141】
図1Aおよび1Bのデータは、全Xceptor融合タンパク質は、TNFRSF1B外部ドメインが融合タンパク質分子のアミノ末端にあっても、またはカルボキシ末端にあっても、HIL6と結合できることを実証している。さらに、これらのアッセイは、Xceptorのうち2種だけがrhIL6と結合し(図1B)、sIL6Rと結合するものはなかった(図1C)ので、Xceptorタンパク質がIL6xR複合体に対して特異性を有することを示している。関連する研究において、xceptor TRU(XT6)−1002およびSMIP TRU(S6)−1002は、非ヒト霊長類のMucaca mulatta由来のIL6と交差反応することが見出された。
【0142】
(実施例3)
ELISAによる、XCEPTORのTNF−αへの結合
TNF−αの結合活性を、実質的に以下のように、Xceptor TRU(XT6)−1002、1042、1058、1019およびTRU(X6T)−1019(それぞれ、配列番号608、648、664、625および670)に関して試験した。
【0143】
96ウェルプレートの個々のウェルに、PBS、pH7.2〜7.4中2μg/ml溶液のヤギ抗ヒトIgG−Fc(ICN Pharmaceuticals、Costa Mesa、CA)から100μlを加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて4回洗浄後、250μlのブロッキングバッファーを各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間(または4℃において一晩)インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて3回洗浄後、それぞれ300ng/mlから出発して、作業バッファーで3倍段階希釈した、Xceptor TNFRSF1B::抗HIL6試料、陽性対照のEnbrel(登録商標)(エタネルセプト(etanercept))および組換えヒトTNFR2(TNFRSF1B)−Fcキメラ(R&D Systems、Minneapolis、MN)ならびに陰性対照のヒトIgGまたはヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems)100μl/ウェルを、抗ヒトIgG−Fcコーティングプレートの2連のウェルに加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中2ng/ml溶液の組換えヒトTNF−α(R&D Systems)から100μl/ウェルを2連のウェルに加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中200ng/ml溶液の抗ヒトTNF−α−ビオチン(R&D Systems)から100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で約1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファーで1:1,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で30分間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて6回洗浄後、100μl/ウェルの3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Pierce、Rockford、IL)を約3から5分間加え、その後、50μlの停止バッファー(1N HSO)/ウェルを用いて反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmにおいて読み取った。
【0144】
図2のデータは、被検全Xceptor融合タンパク質は、TNFRSF1B外部ドメインが融合タンパク質のアミノ末端にあっても、またはカルボキシ末端にあっても、TNF−αと結合できることを示している。
【0145】
(実施例4)
ELISAによる、XCEPTORのデュアルリガンドの結合
TNF−αおよびIL6xR複合体への同時結合を、実質的に以下のように、Xceptor融合タンパク質TRU(XT6)−1006(配列番号612)に関して試験した。
【0146】
96ウェルプレートの個々のウェルに、100μlのヒトHIL−6溶液(PBS中5μg/ml、pH7.2〜7.4)を加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて4回洗浄後、250μlのブロッキングバッファーを各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間(または4℃において一晩)インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて3回洗浄後、300ng/mlから出発して、作業バッファーで3倍段階希釈したXceptor TNFRSF1B::HIL6試料100μl/ウェルをHIL−6コーティングプレートの2連のウェルに加えた。陰性対照は、ヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems、Minneapolis、MN)、Enbrel(登録商標)(etanercept)および作業バッファーのみを含んだ。このプレートにカバーをして、室温で1.5時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中2ng/mlの組換えヒトTNF−α(R&D Systems Minneapolis、MN)から100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で1.5時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中200ng/mlの抗ヒトTNF−α−ビオチン(R&D Systems)から100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で1.5時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファーで1:1,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で30分間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて6回洗浄後、100μl/ウェルの3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Pierce、Rockford、IL)を3から5分間加え、その後、50μlの停止バッファー(1N HSO)/ウェルを用いて反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmにおいて読み取った。
【0147】
図3のデータは、Xceptorタンパク質が、2種のリガンド(この場合、TNF−αおよびハイパーIL6)に同時に結合できることを実証している。
【0148】
(実施例5)
ELISAによる、ハイパーIL6のGP130への結合のXCEPTORによるブロッキング
Xceptor融合タンパク質TRU(XT6)−1004、1006、1007、1008、1013および1019(それぞれ、配列番号610、612、613、614、619および625)による、ハイパーIL6(IL6xR)の可溶性gp130受容体への結合のブロッキングを、実質的に以下のように試験した。
【0149】
96ウェルプレートの個々のウェルに、PBS、pH7.2〜7.4中0.25〜0.5μg/ml溶液のヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems、Minneapolis、MN)から100μlを加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて4回洗浄後、250μlのブロッキングバッファー(3%BSAまたは10%正常ヤギ血清を含有するPBS−T)を各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間(または4℃において一晩)インキュベートした。以下の試料より、50μg/mlから出発して、作業バッファーで5倍段階希釈物を作製した:Xceptor TNFRSF1B::抗HIL6試料、陽性対照のヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems)および抗ヒトIL6R(R&D Systems)ならびに陰性対照の抗ヒトIL6(R&D Systems)、ヒトIgGまたはEnbrel(登録商標)(etanercept)。等容量の段階希釈Xceptor試料を、ハイパーIL6(最終ハイパーIL6濃度が2.5ng/ml)と混合し、室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて3回洗浄後、Xceptor/HIL6混合物、ヒトgp130−Fcキメラ、抗ヒトIL6R、抗ヒトIL6、ヒトIgGおよびEnbrel(登録商標)(etanercept)の段階希釈物を100μl/ウェルで、ヒトgp130−Fcコーティングプレートの2連のウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において約1.5時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファーで1:10,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgG−Fc(Pierce、Rockford、IL)100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温で1時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて6回洗浄後、100μl/ウェルの3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Pierce)を約5から15分間加え、その後、50μlの停止バッファー(1N HSO)/ウェルを用いて反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmにおいて読み取った。
【0150】
図4のデータは、抗IL6xR結合ドメインを含有するXceptorタンパク質は、可溶性gp130がHIL6と結合することをブロックできることを実証している。
【0151】
(実施例6)
IL6誘導性細胞増殖およびハイパーIL6誘導性細胞増殖のXCEPTORによるブロッキング
IL6誘導性TF−1細胞増殖またはハイパーIL6(IL6xR)誘導性TF−1細胞増殖のブロッキングを、実質的に以下のように、Xceptor融合タンパク質TRU(XT6)−1011、1014、1025、1026、1002およびTRU(X6T)−1019(それぞれ、配列番号617、620、631、632、608および670)に関して試験した。
【0152】
96ウェル平底プレートの個々のウェルに、新鮮な成長培地(10%のFBS−RPMI 1640;2mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;10mMのHEPES;1mMのピルビン酸ナトリウム;および2ng/mlのHu GM−CSF)中0.3×10のTF−1細胞(ヒト赤白血病細胞)を、増殖アッセイに使用する1日前に加えた。その後、細胞を収穫し、アッセイ培地(GM−CSFを含まないことを除いて成長培地と同じで、サイトカイン非含有)を用いて2回洗浄し、次いでアッセイ培地に1×10細胞/mlで再懸濁した。IL6活性のブロッキングに関して、目的のTNFSFR1B::抗−HIL6 Xceptorまたは抗体の段階希釈物を、固定濃度の組換えヒトIL6(rhIL6)(R&D Systems、Minneapolis、MN)またはハイパーIL6(HIL6)と一緒に、96ウェルプレート中で、37℃、5%COにおいて1時間プレインキュベートした。使用した対照は、ヒトIgG;ヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems);抗hIL6抗体(R&D Systems);および抗−hIL6R抗体(R&D Systems)を含んだ。プレインキュベーション期間後、1×10細胞(100μl中)を各ウェルに加えた。TNFSFR1B::HIL6、rhIL6またはHIL6および細胞を含有する、全容量200μl/ウェルの最終アッセイ混合物を、37℃、5%COにおいて、72時間インキュベートした。培養の最後の4から6時間の間に、H−チミジン(アッセイ培地中20μCi/ml、25μl/ウェル)を加えた。細胞をUniFilter−96GF/cプレートに回収し、とり込まれたH−チミジンを、TopCountリーダー(Packard)を使用して決定した。データは、3連の平均のcpm±SDとして表す。ブロッキングのパーセント=100−(試験cpm−対照のcpm/最大cpm−対照のcpm)×100。
【0153】
図5Aおよび図5Bのデータは、全Xceptorタンパク質は、TNFRSF1B外部ドメインが融合タンパク質分子のアミノ末端にあっても、またはカルボキシ末端にあっても、IL6およびハイパーIL6により誘導される細胞増殖を、それぞれブロックできることを実証している。
【0154】
(実施例7)
ELISAによる、TNF−αのTNFRへの結合のXCEPTORによるブロッキング
Xceptor融合タンパク質TRU(XT6)−1004、1006、1007、1008、1013および1019(それぞれ、配列番号610、612、613、614、619および625)による、TNF−αのTNF受容体への結合のブロッキングを、実質的に以下のように試験した。
【0155】
96ウェルプレートの個々のウェルに、PBS、pH7.2〜7.4中0.25〜0.5μg/ml溶液の組換えヒトTNFR2−Fcキメラ(R&D Systems、Minneapolis、MN)から100μlを加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて4回洗浄後、250μlのブロッキングバッファー(3%BSAまたは10%正常ヤギ血清を含有するPBS−T)を各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間(または4℃において一晩)インキュベートした。以下の試料より、50μM〜250μMから出発して、作業バッファーで5倍段階希釈物を作製した:Xceptor TNFRSF1B::抗HIL6試料、陽性対照のEnbrel(登録商標)(etanercept)および抗TNF−α(R&D Systems)ならびに陰性対照のヒトgp130−Fcキメラ(R&D Systems)およびヒトIgG。等容量の段階希釈Xceptor試料を、TNF−α(最終TNF−α濃度が2.5ng/ml)と混合し、室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて3回洗浄後、Xceptor/TNF−α混合物、Enbrel(登録商標)(etanercept)、抗TNF−α、およびヒトgp130−Fcキメラ、ヒトIgGの段階希釈物を、組換えヒトTNFR2−Fcコーティングプレートの2連のウェルに100μl/ウェル加え、プレートにカバーをし、室温において約1.5時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー中200ng/ml溶液の抗ヒトTNF−α−ビオチン(R&D Systems)から100μl/ウェルを加え、プレートにカバーをして、室温において1から2時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファーで1:1,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)を100μl/ウェル加え、プレートにカバーをして、室温で30分間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて6回洗浄後、100μl/ウェルの3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(Pierce、Rockford、IL)を約3から5分間加え、その後、50μlの停止バッファー(1N HSO)/ウェルを用いて反応を停止させた。各ウェルの吸光度を450nmにおいて読み取った。
【0156】
図6のデータは、Xceptorタンパク質が、TNF−αのTNF受容体への結合をブロックし、それはTNFR−Fcによるブロッキングとおよそ同等であったことを示す。
【0157】
(実施例8)
TNF−α誘導性細胞死滅のXCEPTORによるブロッキング
TNF−α誘導性のL929細胞の死滅のブロッキングを、実質的に以下のように、Xceptor融合タンパク質TRU(XT6)−1011、1014、1025、1026、1002およびTRU(X6T)−1019(それぞれ、配列番号617、620、631、632、608および670)に関して試験した。
【0158】
L929マウス線維芽細胞(ATCC、Manassas、VA)の懸濁液を、2×10細胞/mlの密度で培養培地(10%FBS−RPMI 1640、2mMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび10mM HEPES)において調製し、次いで、100μlを、96ウェル平底の黒色プレートの個々のウェルに加え、37℃、5%COにおいて一晩、加湿インキュベーター内でインキュベートした。アッセイ培地(2%FBSを添加したことを除いて、培養培地と同じ)で段階希釈したXceptor TNFRSF1B::抗HIL6試料を、等容量の組換えヒトTNF−α(rhTNF−α;R&D Systems、Minneapolis、MN)と混合し、37℃、5%COにおいて1時間、加湿インキュベーター内でインキュベートした。陽性対照(すなわち、L929細胞のTNFα誘導性死滅をブロックする試薬)は、Enbrel(登録商標)(etanercept)、rhTNFR2−Fcキメラ(R&D Systems、Minneapolis、MN)および抗TNF−α抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)を含んだ。陰性対照は、アッセイ培地単独(TNF−αは加えず)および抗体hIgG(TNF−α添加)を含んだ。TNF−αの活性を分析するために、L929細胞から培養培地を取り除き、次いで個々のウェルに50μlのTNF−α/Xceptorまたは対照混合物、および50μlのアクチノマイシンD(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)(4μg/mlの新たに調製された作業溶液から)を加えた。その後、細胞を、37℃、5%COにおいて24時間、加湿インキュベーター内でインキュベートした。細胞生存率を測定するために、個々のウェルに、100μlのATPlite 1 Step Reagent(PerkinElmer、Waltham、MA)を製造業者の指示書に従って加え、2分間振とうし、次いでTopCountリーダー(Packard)を使用して発光を測定する。
【0159】
図7のデータは、全Xceptorタンパク質は、TNFRSF1B外部ドメインが融合タンパク質分子のアミノ末端にあっても、またはカルボキシ末端にあっても、このアッセイにおいて、TNF−α誘導性の細胞死滅をブロックできることを実証している。
【0160】
(実施例9)
ELISAによる、SMIPのIL6およびハイパーIL6への結合
ハイパーIL6(HIL6またはIL6xR)、組換えヒトIL6(rhIL6)、およびヒト可溶性IL6Rの結合活性を、SMIP融合タンパク質TRU(S6)−1004、1007、1008、1013、1018、1019、1029および1038(それぞれ、配列番号672、673、674、676、678、679、684および685)に関して、Xceptorタンパク質の代わりにSMIPタンパク質を検査したことを除いて、基本的に実施例1と同じアッセイを使用して試験した。
【0161】
図8のデータは、全SMIPタンパク質はHIL6に結合できることを実証している。
【0162】
(実施例10)
ハイパーIL6に対する結合特異性および他のGP130サイトカインに対する非結合性
IL6ならびにgp130サイトカインのIL−11、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)およびカルディオトロピン−1(CT−1)によるTF−1細胞増殖の誘導に関するXceptor融合タンパク質の作用を、実質的に以下のように試験した。
【0163】
96ウェル平底プレートの個々のウェルに、新鮮な成長培地(10%のFBS−RPMI 1640;2mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;10mMのHEPES;1mMのピルビン酸ナトリウム;および2ng/mlのHu GM−CSF)中0.3×10のTF−1細胞(ヒト赤白血病細胞)を、増殖アッセイに使用する1日前に加えた。細胞を収穫し、アッセイ培地(GM−CSFを含まないことを除いて成長培地と同じで、サイトカイン非含有)を用いて2回洗浄し、次いでアッセイ培地に1×10細胞/mlで再懸濁した。LIF、OSMおよびCT−1の活性のブロッキングを試験するために、TNFSFR1B::抗HIL6xceptorのTRU(XT6)−1002(配列番号608)、TRU(XT6)−1019(配列番号625)、TRU(XT6)−1022(配列番号628)およびTRU(XT6)−1025(配列番号631)の段階希釈物を、固定濃度の各gp130サイトカイン1つ1つと一緒に、またはハイパーIL6(HIL6)と一緒に、96ウェルプレートにおいて、37℃、5%COにおいて1時間とプレインキュベートした。プレインキュベーション期間後、1×10細胞(100μl中)を各ウェルに加えた。TNFSFR1B::HIL6、gp130サイトカインまたはHIL6および細胞を含有する、全容量200μl/ウェルの最終アッセイ混合物を、37℃、5%COにおいて、72時間インキュベートした。培養の最後の4から6時間の間に、H−チミジン(アッセイ培地中20μCi/ml、25μl/ウェル)を加えた。細胞をUniFilter−96GF/cプレートに回収し、とり込まれたH−チミジンを、TopCountリーダー(Packard)を使用して決定した。ブロッキングのパーセント=100−(試験cpm−対照のcpm/最大cpm−対照のcpm)×100。
【0164】
結果は、xceptorがIL6活性をブロックしたが、IL−11、LIF、OSMまたはCT−1をブロックしなかったことを示し(データ非掲載)、したがって、ハイパーIL6に結合したが、他の被検gp130サイトカインには結合しなかったことを示した。
【0165】
(実施例11)
ELISAによる、SMIPのハイパーIL6への結合
ハイパーIL6(HIL6)結合活性を、TRU(S6)−1063〜TRU(S6)−1066と称されるヒト化SMIP融合タンパク質(それぞれ、配列番号801〜804で提供される軽鎖可変領域および配列番号807−810で提供される重鎖可変領域)に関して、実質的に以下のように試験した。
【0166】
96ウェルプレートの個々のウェルに、100μlのPBS、pH7.2〜7.4中1μg/mlのヒトハイパーIL6(IL6R−IL6−mIgG)を加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて5回洗浄後、250μlのブロッキングバッファー(3%BSA含有PBS−T)を各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間インキュベートした。
【0167】
SMIP融合タンパク質および、陰性対照としてのTNFR−Fcの、300ng/mlから出発する3倍段階希釈物を、作業バッファー(1%BSA含有PBS−T)100μlで作製した。プレートにカバーをし、室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、1:1,000に希釈したHRPコンジュゲートヤギ抗ヒト−Fc抗体(Pierce、Rockford、IL)100μl/ウェルを各ウェルに加えた。プレートにカバーをして、室温で1時間インキュベートした。プレートを、PBS−Tを用いて5回洗浄後、100μlのQuant−Blu(商標)基質(Pierce、Rockford、IL)を各ウェルに加えた。このプレートを室温において10〜30分間インキュベートし、蛍光を、325/420nmにおいて測定した。
【0168】
図9に示すデータは、全被検SMIP融合タンパク質がHIL6に結合できることを実証している。
【0169】
(実施例12)
様々なIL6アンタゴニスト融合タンパク質の結合親和性
ハイパーIL6(HIL6;単量体または二量体)ならびにその成分であるIL6およびsIL6Rと、scFv、SMIP、Xceptorおよび逆Xceptorフォーマットの様々な抗HIL6結合ドメインとの相互作用の結合親和性および動的速度定数を、Biacore(登録商標)T100装置(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を使用して決定した。
【0170】
抗HIL6、SMIPS、Xceptorおよび逆Xceptorを、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミド使用して、アミンを介してカルボキシメチルデキストラン(CM4)表面に共有結合させたモノクローナルマウス抗ヒトFcにより捕捉した。活性化表面の非占有部位を、エタノールアミンによりブロックした。捕捉抗体(抗hFcと称される)は、全てのサブクラスに関するIgG FcのC2ドメインに結合し、アッセイの過程において、捕捉されたHIL6バインダーからの認識できる解離は示さなかった。サイクルごとに、3種の異なるHIL6バインダーを、フローセル2、3および4バインダーに捕捉し、一方フローセル1は参照セルとして使用した。サイクルごとに、単一濃度の単一HIL6関連分子を35マイクロリットル/分で150秒間注入し、その後、300秒間解離させた。サイクルの終わりに、抗hFc捕捉抗体と結合したタンパク質を解離する3MのMgClを使用して、表面を穏やか再生した。単量体または二量体のHIL6の結合を研究するために、0〜100nMの範囲の様々な濃度において、捕捉された3種のHIL6バインダーの個々のセットに関して複数サイクルを実施した。HIL6バインダーは、サイクルごとにCVが2%を超えずに再現性よく捕捉された。実験は、25℃において実施した。参照セルとの結合に伴うシグナルを、バルク屈折率の変化を差し引くために使用し、ブランク(バッファーのみ)の注入を、ドリフトおよび系のノイズを補正するために使用した。動的パラメーターおよび親和性を、BIAevaluationソフトウェアを使用して決定した。表面に固定したウサギポリクロナール抗マウスIgG Fc抗体に捕捉された二量体ヒトHIL6/マウスIgG Fc融合タンパク質を使用し、表面の上に様々な濃度のscFvを注入して、逆配向(reverse orientation)の抗HIL6 scFv分子を分析した。HIL6成分のIL6(eBioscience、カタログ番号14−8069)およびsIL6Rについては、単一の100nMの注入を実施し、結合の定量的評価を得た。ヒトgp130−ヒトIgG Fc(R&D Systems) 融合タンパク質をさらに捕捉し、比較目的でHIL6バインダーとして照合した。表3はSMIPおよびscFvフォーマット中の抗HIL6バインダーに関して得られた結果を示す。
【0171】
【表3】

表4は、アミノ末端にTNFRSF1B外部ドメイン、カルボキシ末端に抗HIL6xR結合ドメインを有するXceptorフォーマット(TRU(XT6))、または逆配向のXceptorフォーマット(TRU(X6T))におけるHIL6バインダーに関して得られた結果を示す。
【0172】
【表4】

これらのデータは、様々なフォーマットの抗ハイパーIL6結合ドメインが、様々な範囲の親和性(約2nMから約3000nM)を有して単量体および二量体のハイパーIL6に結合したことを示し、最も親和性の高いバインダーがハイパーIL6に対するgp130の親和性に近いことを示す。大部分の結合ドメインは、ハイパーIL6に対して選択的であり、IL6またはsIL6Rには感知できるほどには結合しない。しかし、結合ドメインTRU(X6T)−1019およびTRU(XT6)−1022は、IL6に固く結合でき(親和性は約0.44nMから約12nM)、一方、結合ドメインTRU(XT6)−1025は受容体に結合する(定性的データのみ)。
【0173】
(実施例13)
IL6アンタゴニストの、IL6:SIL6R複合体への結合
ヒトIL6(eBioscience、カタログ番号14−8069)および可溶性IL6R(R&D Systems、カタログ番号227−SR/CF)を、各々50nMでHEPES緩衝生理食塩水において組み合わせた。本発明者らは、これらの条件下でおよそ30nMのIL6:sIL6R複合体が形成されると見積もる。この複合体を、TRU(S6)−1002(配列番号671)のSMIP表面の上に注入した(TRU(S6)−1002を、上記の実施例12のように捕捉した)。IL6およびsIL6Rを、さらに50nMで単独で注入し、個別の結合を評価した。センサーグラムを図10に示し、これは参照およびブランクを差し引いてある。
【0174】
このデータは、TRU(S6)−1002が、IL6:sIL6R複合体と強く結合し、さらに非常に高濃度において受容体に弱く結合するが、これらの条件下でIL6とは、検出可能に結合しないことを実証する。
【0175】
(実施例14)
様々なフォーマットの様々なIL6アンタゴニスト結合ドメイン
抗体中の抗IL6結合ドメイン、SMIP、XceptorならびにIL6およびハイパーIL6 (HIL6)に対するヒト化抗体フォーマットの結合を、下記のようにBiacore(登録商標)を使用して試験した。これらの研究に用いたマウスモノクローナル抗体は、ハイブリドーマAH64、AH65、BSF2−77、CLB−8、CLB−12、CLB−16、HH61−08およびHH61−10から得、これらは全てIL6アンタゴニスト結合ドメインである。
【0176】
抗IL6結合ドメインを、抗IL6抗体の場合は固定化抗マウスFcポリクロナール抗体、またはSMIP、Xceptorおよびヒト化SMIPの場合は抗ヒトFcモノクローナル抗体を使用して捕捉した。IL6の抗IL6結合ドメインへの結合を、シングルサイクルカイネティクスを使用して研究した。最も低濃度のIL6(6.4pM)から出発し、最も高濃度(4,000pM)へと進行する、サイクル当たりIL6の5回の連続注入を行った。流速は45μL/分であり、IL6の各注入は7分間続いた。最も高濃度のIL6の注入の終わりに、IL6を30分間解離させた。このデータを、1対1結合のシングルサイクルカイネティクスモデルに適合させた。HIL6の結合を、単一濃度のHIL6(6.4〜4,000pM)/サイクルを7分間注入し、その後、結合したHIL6を、30秒(0から800pM)または1時間(0および4,000pM)のどちらかで解離させることにより研究した。これらのデータを、1対1結合のモデルに適合させた。全ての分析は、BlAevaluationソフトウェアを使用して実施した。動的速度定数および親和性を表5に提供する。
【0177】
【表5】

様々なフォーマットの抗IL6結合ドメインは、様々な親和性(約7pMから約3,734pMまで)で、全てがIL6と結合した。結合ドメインの一部は、ハイパーIL6ともまた結合可能であった。これらのうち、モノクローナル抗体AH65およびBSF2−77由来の結合ドメインを詳細に研究し、様々なフォーマットのこれらの結合ドメインのハイパーIL6に対する親和性は、約12pMから約977pMの範囲に及んだ。一般的に、SMIPタンパク質および二重特異性xceptorのフォーマットは、親モノクローナル抗体の結合親和性の10倍以内の結合親和性を有する。
【0178】
(実施例15)
抗IL6結合ドメインの結合部位の決定
IL−6は、部位I、IIおよびIIIと称される3つの保存エピトープを介してgp130受容体と結合する。gp130を介したシグナル伝達が起こるために、六量体シグナル伝達複合体が形成されなければならない。IL−6は、部位Iと結合することによって、IL6Raとの複合体を最初に形成する。部位IIは、IL6とIL6Raとの二元複合体によって形成される複合エピトープであり、これはgp130と反応する。最終的に、六量体シグナル伝達複合体が、部位IIIとgp130との相互作用により形成される(Boulangerら、(2003年) Science 300巻:2101頁)。抗IL6抗体のAH65およびCL−16は、部位IIIのバインダーとして作用し、一方抗IL6抗体のCL−12は部位IIと相互作用することが示されている(Kalaiら、(1997年)Eur. J. Biochem. 249巻:690頁)。本明細書に開示のTRU−1002結合ドメインの結合部位を以下のように決定した。
【0179】
96ウェルプレートの個々のウェルに、PBS、pH7.2〜7.4中1μg/mlの抗ヒトTNF−RII(R&D Systems、Minneapolis MN)の100μlを加えた。このプレートにカバーをし、4℃において一晩インキュベートした。PBS−Tを用いて5回洗浄後、250μlのブロッキングバッファー(3%BSA含有PBS−T)を各ウェルに加え、プレートにカバーをし、室温において2時間インキュベートした。
【0180】
PBS−Tを用いて5回洗浄後、作業バッファー(WB;1%BSA含有PBS−T)中0.5μg/mlの濃度の100μlのTRU(XT6)−1002を1つのプレートの各ウェルに加えた。第2のプレートにおいて、100μlの0.5mg/mlのTRU(XT6)−1019を各ウェルに加えた。このプレートを室温において2時間インキュベートした。
【0181】
同時に、2つの新しいプレートを、250μlのSuper Block(Pierce、Rockford IL)を用いてブロックし、室温において1時間インキュベートした。PBS−Tを用いて5回洗浄後、20μg/ml(100μl/ウェル)から出発し、作業バッファーで2倍段階希釈した以下の分子:MQ2−13A5(LM−E13)、AH65(LM−A02)、CL−16(LM−S06)、CL−12(LM−S02)、CL−14(LM−S04)およびS6−A2(TRU(S6)−1002)を、双方のプレートに加えた。作業バッファーのみを、陰性対照として含んだ。その後、作業バッファー中20ng/mlの、等容量(100μl)のヒトハイパーIL6を各ウェルに加え、200μLを上下に3回ピペッティングすることによって混合した。プレートを、室温において1時間インキュベートした。
【0182】
インキュベーション後、1つのプレートの個々のウェルの200μlの混合物を、TRU(XT6)−1002のプレートに移し、5回洗浄した。同様の操作をを、第2のプレートついて、TRU(XT6)−1019のプレート上に対して行った。これらのプレートを室温において1時間インキュベートした。PBS−Tを用いて5回洗浄後、100μlのビオチン化抗−IL6R(150ng/ml)(R&D Systems、Minneapolis MN)を各ウェルに加え、プレートを室温において1時間インキュベートした。洗浄後、作業バッファーで1:20,000に希釈した100μlのストレプトアビジン−HRP(Pierce、Rockford IL)を各ウェルに加えた。これらのプレートを、室温において30分間インキュベートした。PBS−Tを用いて5回洗浄後、100μlのQuant−Blu基質(Pierce、Rockford、IL)を各ウェルに加えた。このプレートを室温において10〜30分間インキュベートし、蛍光を325/420nmにおいて測定した。
【0183】
結果を図11Aおよび11Bに示し、そして、その結果は、TRU(XT6)−1002が部位IIIに結合し、一方TRU(XT6)−1019は部位IIに結合することを示している。
【0184】
(実施例16)
SMIPおよびXCEPTORの、肝細胞のIL6Rへの結合
TRU(S6)−1002、TRU(XT6)−1019および抗IL6抗体hu−PM1の、肝臓由来HepG2細胞のIL6Rに結合する能力を以下のように試験した。
【0185】
HepG2細胞をFACSバッファーで洗浄し、FACSバッファー(PBS+3%FBS)で2×10細胞/mLに調整した。96ウェルプレートのウェルに、50μLのこの溶液を加えた(10細胞/ウェル)。プレートを、希釈した被検分子を加える用意ができるまで37℃に保った。被検分子の段階希釈物をFACSバッファーで調製し、細胞に加えるときに1×に希釈される、2×作業ストックを得た。希釈した被検分子を細胞に加え(50μL/ウェル)、細胞を氷上で20分間インキュベートした。IgG全体(whole IgG)を対照として使用した。その後、細胞を、FACSバッファーを用いて2回洗浄し、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒト抗体(Jackson Labs;FACSバッファーで1:200希釈)に再懸濁した。暗所において氷上で20分間インキュベート後、細胞を、FACSバッファーを用いて2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁し、LSRII(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA)において読み取った。
【0186】
図12に示すように、TRU(S6)−1002およびTRU(XT6)−1029は、基本的にHepG2(肝臓)細胞とは結合しないことを示した。
【0187】
(実施例17)
マウスにおけるIL6活性およびTNFの活性の、SMIPおよびXCEPTORによるブロッキング
本明細書に開示のSMIPおよびXceptor融合タンパク質が、マウスにおける血清アミロイドA(SAA)タンパク質のIL−6誘導性産生またはTNF誘導性産生をブロックする能力について、下記のように試験した。SAAは、ヒトおよびマウスにおける主要な急性期タンパク質の1つである。血漿SAAレベルの長期的上昇が慢性炎症において見られ、肝臓、腎臓および脾臓に影響を与えるアミロイドーシスをもたらす(Rienhoffら、(1990年)Mol. Biol. Med. 7巻:287頁)。IL6およびTNFは双方とも、単独で投与された場合SAAの誘導を示した(Benigniら(1996年)Blood 87巻:1851頁;Ramadoriら(1988年)Eur. J. Immunol. 18巻:1259頁)。
(a)ハイパーIL6活性のブロッキング
雌のBALB/Cマウスに、0.2mlのPBSまたはPBS中のEnbrel(登録商標)(200μg)、TRU(S6)−1002(200μg)もしくはTRU(XT6)−1002(300μgまたは500μg)を、後眼窩に注入した。1時間後、このマウスに、0.2mlのPBSまたはPBS中2μgのヒトハイパーIL6をIP注入した。マウス血清を、IP注入の2時間後および24時間後に採取した。SAAの血清濃度をELISAにより決定し、sgp130の濃度をLuminexに基づくマウス可溶性受容体アッセイにより決定した。
【0188】
図13および14に示すように、TRU(S6)−1002およびTRU(XT6)−1002は、sgp130およびSAA双方のハイパーlL6誘導性発現をブロックした。
【0189】
(b)TNF活性のブロッキング
雌のBALB/Cマウスに、0.2mlのPBSまたはPBS中のEnbrel(登録商標)(200μg)、TRU(S6)−1002(200μg)もしくはTRU(XT6)−1002(300μg)を、後眼窩に注入した。1時間後、このマウスに、0.2mlのPBSまたはPBS中0.5μgのマウスTNF−αをIP注入した。マウス血清を、IP注入の2時間後および24時間後に採取した。SAAの血清濃度をELISAにより決定し、sgp130の濃度をLuminexに基づくマウス可溶性受容体アッセイにより決定した。
【0190】
図15AおよびBに示すように、xceptorのTRU(XT6)−1002は、SAAのTNF−α誘導性発現をブロックし、注入2時間後に観察されたSAAのレベルは、Enbrel(登録商標)で観察されるレベルと同様であった。
【0191】
(実施例18)
in vivoにおけるXCEPTORの活性
本明細書に記載の融合タンパク質の治療効力を、下記に示す疾患の動物モデルにおいて試験した。
【0192】
(a)多発性骨髄腫
融合タンパク質の活性を、2種の十分特徴付けられた多発性骨髄腫のマウスモデル、すなわち、5T2多発性骨髄腫(5T2MM)モデルおよび5T33多発性骨髄腫(5T33MM)モデルの少なくとも1種において試験する。5T33モデルにおいて、マウスを、腫瘍細胞の注入のときから融合タンパク質により処置する(予防モード)。5T2MMモデルにおいて、マウスを、疾患の発症から処置する(治療モード)。腫瘍の発達および新脈管形成に対する治療効果を、双方のモデルにおいて評価し、5T2MMモデルにおいて、骨に関する研究もまたさらに実施する。
【0193】
骨髄腫の5TMMネズミモデルがRadlらにより始めに開発された(J. lmmunol.(1979年)122巻:609頁;さらにRadlら、Am. J. Pathol.(1988年)132巻:593頁;Radl J. Immunol. Today(1990年)11巻:234頁も参照されたい)。その臨床的特徴は、ヒトの疾患に非常に似ており、腫瘍細胞は骨髄に存在し、血清パラプロテイン濃度が疾患発達の尺度であり、新生血管形成は5T2MMおよび5T33MMモデルの双方において増加し(Van Valckenborghら、Br J Cancer(2002年)86巻:796頁)、特定の系において明らかな溶骨性骨疾患が発症する。5T2MMモデルは、中程度の腫瘍成長および溶骨性骨病変の発達を含む。この病変は、網状骨容積の減少、骨ミネラル密度の減少、および破骨細胞数の増加を伴う(Croucherら、Blood(2001年)98巻:3534頁)。5T33MMモデルは、腫瘍の取り込みがより迅速であり、骨髄に加えて、腫瘍細胞はさらに肝臓においても成長する(Vanderkerkenら、Br. J. Cancer(1997年)76巻:451頁)。
【0194】
5T2および5T33MMモデルは、広範囲にわたって特徴付けられている。特定のモノクローナル抗体は、5T2および5T33MMの双方のイディオタイプに対して産生されており(raised)、高い感度で、ELISAによる血清パラプロテインの検出を可能にし、ならびにFACS分析および組織切片の免疫染色の双方による腫瘍細胞の特異的染色を可能にする(Vanderkerkenら、1997年)。VH遺伝子の配列分析は、RT−PCRおよびノーザンブロット分析による細胞の検出を可能にする(Zhuら、Immunol.(1998年)93巻:162頁)。in vitroおよびin vivo実験の双方に使用できる5TMMモデルは、典型的なMM疾患を生じ、様々な方法が、骨髄における腫瘍量、血清パラプロテイン濃度、(微小血管密度を測定することによる)骨髄新脈管形成および(X線撮影、密度測定および組織形態測定の組合せによる)溶骨性骨病変の評価に利用できる。これらの後者のパラメーターの調査は、前臨床設定ならびに完全な同系微小環境において骨髄腫細胞の成長および生物学的研究における5TMMモデルの使用を可能にする。MM細胞それ自体を標的にする分子および骨髄の微小環境を標的とする分子の双方が研究できる。具体的には、5T33MMモデルが微小環境およびMM細胞それ自体の双方の研究に使用できるのに対して、一方、5T2MMモデルは、骨疾患を伴う骨髄腫の研究にも使用できる。
【0195】
本明細書に開示の融合タンパク質の予防効力を研究するために、C57BL/KaLwRijマウスに、2×10の5T33MM細胞および融合タンパク質を0日目に注入する。28日目にマウスを犠牲にし、腫瘍の発達を、血清パラプロテイン濃度および(抗イディオタイプ抗体を用いたフローサイトメトリーによって、または細胞標本によって決定される)単離骨髄細胞における腫瘍細胞のパーセントを決定することによって評価する。脾臓および肝臓の重量を決定し、さらなる分析のためにこれらの器官を4%ホルムアルデヒドで固定する。骨試料は、パラフィン切片のCD31免疫染色および微小血管密度の定量を含むさらなる処理のために固定する。
【0196】
本明細書に開示の融合タンパク質の治療効力を研究するために、マウスに、5T2MM細胞を0日目に注入し、融合タンパク質を、検出可能なレベルの血清パラプロテインの存在によって決定されるような疾患の発症後に投与する。融合タンパク質の投与のおよそ5週間後にマウスを犠牲にし、腫瘍の発達を、予防的研究に関する上記のように評価する。さらに、骨分析を、骨の病変の数および海綿質面積を決定するためにX線を使用して、ならびに破骨細胞の数を評価するためにTRAP染色を使用して、実施する。
【0197】
(b)関節リウマチ
本明細書に開示の融合タンパク質の治療効力を、関節リウマチ(RA)の2種のネズミモデル、すなわちコラーゲン誘発関節炎(CIA)およびグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(G6PI)モデルの少なくとも1種において試験する。これらのモデルの各々は、RAにおける治療薬の特定のクラスの効力の予測にとって有用であることが他者によって示されている(Holmdahl(2000年)Arthritis Res. 2巻:169頁;Holmdahl(2006年)Immunol. Lett. 103巻:86頁;Holmdahl(2007年)Methods Mol. Med. 136巻:185頁;McDevitt, H.(2000年)Arthritis Res. 2巻:85頁;KamradtおよびSchubert(2005年)Arthritis Res. Ther. 7巻:20頁を参照されたい)。
(i)CIAモデル
CIAモデルは、関節炎の発症機序および免疫学的根拠に関する、関節炎の最もよく特徴付けられたマウスモデルである。さらに、CIAモデルは、最も広範囲に使用されるRAのモデルであり、患者において疾患を阻害する薬剤の能力を予測するためには完全ではないが、RAの潜在的な新規の治療薬を調査する場合、多数の人に選択されるモデルであると考えられる(Jirholtら、(2001年)Arthritis Res. 3巻:87頁;Van den Berg(2002年)Curr. Rheumatol. Rep. 4巻:232頁;Rosloniec(2003年)Collagen−Induced Arthritis。In Current Protocols in Immunology、Coliganら編、John Wiley & Sons、Inc.、Hoboken、NJ)。
【0198】
CIAモデルにおいて、関節炎は、完全フロイントアジュバント(CFA)中コラーゲンII(CII)を用いた雄DBA/1マウスの免疫によって誘導される。具体的には、マウスに、21日前にCFA中のCIIを皮内/皮下注入し、0日目に不完全フロイントアジュバント(IFA)中のCIIを追加免疫する。マウスは、CII/IFAの追加免疫の数日以内に関節炎の臨床的徴候を現わす。CII/CFAにより免疫されたマウスのサブセット(0%から10%)は、追加免疫をしなくても0日目の当日またはその周辺において関節炎の徴候を現わし、実験からは除外される。一部のCIA実験において追加免疫を省き、その代わりにマウスを、CII/CFAによる免疫後21日から開始する、Xceptorまたは対照での処置を行なう(すなわち、最初の処置の日が0日目である)。
【0199】
予防計画および/または治療計画において、マウスを、融合タンパク質、ビヒクル(PBS)または陰性対照もしくは陽性対照を用いて処置する。予防処置は0日目に開始し、対照(未処置)マウスにおける疾患のピークを通して続ける。治療処置は、大部分のマウスが関節炎の軽度の徴候を示したときに開始する。関節炎のCIAモデルおよびG6PI誘発性モデルの双方において優れた効力を有することが示されたEnbrel(登録商標)を、陽性対照として使用する。実験毎に収集したデータは、関節炎の臨床的スコアおよび累積発現率を含む。CIAモデルにおける関節炎の臨床的徴候を、以下の表6に示すような0から4のスケールを使用して採点する。
【0200】
【表6】

(ii)G6PIモデル
G6PIモデルにおいて、関節炎は、アジュバント中のG6PIを用いたDBA/1マウスの免疫により誘発される(KamradtおよびSchubert(2005年)Arthritis Res. Ther. 7巻:20頁;Schubertら、(2004年)J. Immunol. 172巻:4503頁;Bockermannら、(2005年)Arthritis Res. Ther. 7巻:R1316頁;Iwanamiら、(2008年)Arthritis Rheum. 58巻:754頁;Matsumotoら、(2008年)Arthritis Res. Ther. 10巻:R66頁)。G6PIは、実質的に体内の全ての細胞に存在する酵素であり、免疫により関節特異的疾患が誘発される理由は公知ではない。CTLA4−Ig、TNFアンタゴニスト(例えば、Enbrel(登録商標))および抗IL6受容体モノクローナル抗体などのいくつかの薬剤が、G6PIモデルにおいて関節炎の発達を阻害することが示されている。
【0201】
雄DBA/1マウスを、関節炎を誘発するために、完全フロイントアジュバント(CFA)中G6PIを用いて免疫する。具体的には、マウスに、CFA中G6PIを0日目に皮内/皮下注入し、免疫の数日以内に関節炎の臨床的徴候が現れる。上述のCIAモデルでのように、マウスを、予防計画および/または治療計画において、融合タンパク質、ビヒクル(PBS)または陰性対照もしくは陽性対照を用いて処置する。予防処置は0日目に開始し、対照マウスにおける疾患のピークを通して続ける。治療処置は、大部分のマウスが関節炎の軽度の徴候を示したときに開始する。関節炎のCIAモデルおよびG6PI誘導性モデルの双方において優れた効力を有することを示したEnbrel(登録商標)を、陽性対照として使用する。実験毎に収集したデータは、関節炎の臨床的スコアおよび累積発現率を含む。G6PIモデルにおける関節炎の臨床的徴候を、CIAモデルに対して用いたスケールと同様のスケールを使用して採点する。
【0202】
(c)多発性嚢胞腎
本明細書に開示した融合タンパク質の多発性嚢胞腎の治療における効力を、Gattoneら、Nat. Med.(2003年)9巻:1323頁;Torresら、Nat. Med.(2004年)10巻:363頁; Wangら、J. Am. Soc. Nephrol.(2005年)16巻:846頁;およびWilson(2008年)Curr. Top. Dev. Biol. 84巻:311頁に記載されたような、ネズミモデルにおいて試験する。
【0203】
本発明は、上に概説した特定の実施形態と併せて記載しているが、多くの改変、変更および変形が当業者に明らかであろうことは明白である。したがって、上に説明したような本開示の実施形態は例示目的であって、限定するものではない。様々な改変が、以下の特許請求の範囲に規定したような本開示の精神および範囲から逸脱することなく実施可能である。本明細書において参照した全ての出版物は、全体を説明したかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0204】
配列番号1〜834は、添付の配列リストに提示する。添付の配列リストに使用した、シンボル「n、」を含むヌクレオチド配列のコードは、WIPO Standard ST.25(1998)、付録2、表1に一致する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL6/IL6R(IL6xR)複合体に特異的な結合ドメインを含む単離ポリペプチドであって、
(a)IL6もしくはIL6Rα単独のいずれかよりも高い親和性で前記IL6xR複合体に結合するか、またはIL6単独よりも高い親和性で前記IL6xR複合体単独および前記IL6Rα単独に結合し、そして
(b)前記IL6xR複合体への可溶性gp130の結合を増大させるか、またはsIL6xR複合体への結合について膜gp130と競合し、ここで、
前記結合ドメインが、IL6のシス−シグナル伝達よりも、IL6のトランス−シグナル伝達を優先的に阻害し、前記ポリペプチドがgp130ではない、単離ポリペプチド。
【請求項2】
前記結合ドメインが、IL6単独よりも高い親和性で前記IL6xR複合体単独および前記IL6Rα単独に結合し、sIL6xRへの可溶性gp130の結合を増大させる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記結合ドメインが、IL6以外のgp130ファミリーのサイトカインのシグナル伝達を阻害しない、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記結合ドメインが、配列番号373〜496および799〜810に記載の1つもしくは複数の軽鎖可変領域と、または配列番号373〜496および799〜810に記載の1つもしくは複数の重鎖可変領域と、またはその両方と、少なくとも80%同一である配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記結合ドメインが、抗体もしくはその抗原結合ドメイン、FabまたはscFvである、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記結合ドメインが、配列番号373〜434および799〜804のそれぞれに記載の少なくとも1つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3に対し、それぞれ少なくとも80%同一であるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含有する軽鎖可変領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記結合ドメインが、配列番号435〜496および805〜810のそれぞれに記載の少なくとも1つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3に対し、それぞれ少なくとも80%同一であるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含有する重鎖可変領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記結合ドメインが、配列番号373〜434および799〜804のそれぞれに記載の少なくとも1つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3に対し、それぞれ少なくとも80%同一であるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含有する軽鎖可変領域を含み、配列番号435〜496および805〜810のそれぞれに記載の少なくとも1つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3に対し、それぞれ少なくとも80%同一であるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含有する重鎖可変領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記IL6xR複合体が、配列番号606に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質であって、(a)免疫グロブリンFcドメインまたは免疫グロブリンFcドメインの1つもしくは複数のCHドメイン、あるいは(b)血清タンパク質結合性タンパク質と融合している、融合タンパク質。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFcドメインの1つまたは複数のCHドメインが、CH2定常領域およびCH3定常領域、好ましくは、IgG1のCH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質であって、アミノ末端からカルボキシ末端までに、(a)IL6xRに特異的な前記ポリペプチド結合ドメインがリンカーと融合しており、(b)前記リンカーが免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチドと融合しており、(c)前記CH2定常領域ポリペプチドが免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチドと融合している、融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質であって、カルボキシ末端からアミノ末端までに、(a)IL6xRに特異的な前記ポリペプチド結合ドメインが第1のリンカーと融合しており、(b)前記第1のリンカーが免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチドと融合しており、(c)前記CH3定常領域ポリペプチドが免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチドと融合しており、(d)前記CH2定常領域ポリペプチドが第2のリンカーと融合している、融合タンパク質。
【請求項14】
前記リンカーが、免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドである、請求項12または13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記リンカーが、配列番号497〜604および823〜828からなる群から選択される、請求項12または13に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
第2の結合ドメインに介在ドメインによって共有結合により連結している第1の結合ドメインを含む多重特異性単鎖結合性融合タンパク質であって、前記第1の結合ドメインまたは前記第2の結合ドメインのいずれかが、請求項1から8のいずれか一項に記載のものである、多重特異性単鎖結合性融合タンパク質。
【請求項17】
前記第1の結合ドメインが、IL6xR複合体に特異的であり、前記第2の結合ドメインが、IL6アンタゴニストではない受容体外部ドメインである、請求項16に記載の多重特異性単鎖結合性融合タンパク質。
【請求項18】
前記介在ドメインが、前記第1の結合ドメインと前記第2の結合ドメインとの間に配置された免疫グロブリン定常領域または定常領域の一部を含む、請求項16または17に記載の多重特異性単鎖結合性融合タンパク質。
【請求項19】
前記免疫グロブリン定常領域が、第1のリンカーと第2のリンカーとの間に配置される、請求項18に記載の多重特異性単鎖結合性融合タンパク質。
【請求項20】
前記介在ドメインが、二量体化ドメインである、請求項16から19のいずれか一項に記載の多重特異性単鎖結合性融合タンパク質。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載のポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
発現制御配列に作動可能に連結している請求項21に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載の発現ベクターを含有する組換え宿主細胞。
【請求項24】
請求項1から20のいずれかに記載のポリペプチドまたは融合タンパク質、および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物。
【請求項25】
IL6関連疾患に罹患しているヒトまたは非ヒト哺乳動物の被験体を治療する方法であって、有効量の請求項1から21のいずれかに記載のポリペプチド、融合タンパク質または組成物を前記被験体に投与する工程を含む方法。
【請求項26】
前記疾患が、炎症性疾患または癌である、請求項25に記載の方法。

【図2】
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【図8】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−531885(P2012−531885A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516885(P2011−516885)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049593
【国際公開番号】WO2010/003101
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511001758)エマージェント プロダクト デベロップメント シアトル, エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】