説明

IMIコーティングを含む電気光学要素

【課題】自動車のためのバックミラーアセンブリ内、並びに窓アセンブリ内で利用するエレクトロクロミック要素を提供する。
【解決手段】エレクトロクロミック要素は、第1の表面及び第1の表面の反対側にある第2の表面を有する第1の基体と、第1の基体と離間した関係であり、かつ第2の表面に対向する第3の表面及び第3の表面の反対側にある第4の表面を有する第2の基体と、第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体とを含む。要素は、第1の表面、第2の表面、第3の表面、及び第4の表面の少なくとも選択された1つの少なくとも一部分を覆う透明電極層を更に含み、透明電極層は、絶縁体/金属/絶縁体スタックを含む。絶縁体/金属/絶縁体スタックを構成するのに利用する材料は、反射率、色、電気的切り換え安定性、及び環境耐久性のような要素の光学的及び物理的特性を最適化するように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、共に引用により全体が本明細書に組み込まれる2006年3月3日出願の「改良型コーティング及びこのコーティングを組み込むリアビュー要素」という名称の米国特許仮出願第60/779、369号、及び2006年6月5日出願の「表示/信号灯を組み込むエレクトロクロミックバックミラーアセンブリ」という名称の米国特許仮出願第60/810、921号の恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は、自動車のためのバックミラーアセンブリ内、並びに窓アセンブリ内で利用する時のエレクトロクロミック要素に関するものであり、より具体的には、このようなアセンブリ内で使用する改良型エレクトロクロミック要素に関する。より具体的には、本発明は、絶縁体/金属/絶縁体スタックを有する透明電極層を含むエレクトロクロミック要素に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、後部から接近中の車両のヘッドライトから発せられる光に対して防眩を目的として全反射モード(昼)から部分反射モード(夜)に変わる自動車のための様々なバックミラーが提案されている。同様に、建築窓、天窓での使用、自動車のための窓、サンルーフ、及びバックミラー内での使用、並びに航空機窓のような他の乗り物の窓に対して可変透過率光フィルタが提案されている。このような装置には、透過率が、サーモクロミック手段、フォトクロミック手段、又は電気光学手段(例えば、液晶、双極性懸濁液、電気泳動、エレクトロクロミックなど)により変更され、かつ可変透過率特性が少なくとも部分的に可視スペクトル(約3800Åから約7800Åの波長)である電磁放射線に影響を及ぼす装置がある。電磁放射線に対する可逆可変透過率を有する装置は、可変透過率光フィルタと、可変反射率ミラーと、情報を伝達する際にこのような光フィルタ又はミラーを使用する表示装置とにおける可変透過率要素として提案されている。
【0004】
透過率がエレクトロクロミック手段により変えられる、電磁放射線に対して可逆的可変透過率の装置は、例えば、Chang著「エレクトロクロミック及びエレクトロケミクロミック材料及び現象」、「非放出電気光学ディスプレイ」、A.Kmetz及びK.von Willisen共編、「Plenum Press」、ニューヨーク、NY1976、155ページから196ページ(1976年)により、及びP.M.S.Monk、R.J.Mortimer、D.R.Rosseinsky共著「エレクトロクロミズム」、「VCH Publishers、Inc.」、ニューヨーク、ニューヨーク洲(1995年)の様々な部分において説明されている。多数のエレクトロクロミック装置が当業技術で公知である。例えば、Manosに付与された米国特許第3、451、741号、Bredfeldt他に付与された米国特許第4、090、358号、Clecak他に付与された米国特許第4、139、276号、Kissa他に付与された米国特許第3、453、038号、Rogersに付与された米国特許第3、652、149号、米国特許第3、774、988号及び米国特許第3、873、185号、Jones他に付与された米国特許第3、282、157号、米国特許第3、282、158号、米国特許第3、282、160号、及び米国特許第3、283、656号を参照されたい。これらの素子に加えて、1990年2月20日にH.J.Bykerに付与された「単一コンパートメント自己消去溶液相エレクトロクロミック装置、そこに使用する溶液、及びその用途」という名称の米国特許第4、902、108号と、1992年5月19日にJ.H.Bechtel他に付与された「自走車両のための自動バックミラーシステム」という名称のカナダ特許第1、300、945号と、1992年7月7日にH.J.Bykerに付与された「可変反射率自動車ミラー」という名称の米国特許第5、128、799号と、1993年4月13日にH.J.Byker他に付与された「電気光学素子」という名称の米国特許第5、202、787号と、1993年4月20日にJ.H.Bechtelに付与された「自動バックミラーのための制御システム」という名称の米国特許第5、204、778号と、1994年1月11日にD.A.Theiste他に付与された「着色溶液相エレクトロクロミックミラー」という名称の米国特許第5、278、693号と、1994年1月18日にH.J.Bykerに付与された「UV安定化組成及び方法」という名称の米国特許第5、280、380号と、1994年1月25日にH.J.Bykerに付与された「可変反射率ミラー」という名称の米国特許第5、282、077号と、1994年3月15日にH.J.Bykerに付与された「ビピリジニウム塩溶液」という名称の米国特許第5、294、376号と、1994年8月19日にH.J.Bykerに付与された「ビピリジニウム塩溶液を備えたエレクトロクロミック装置」という名称の米国特許第5、336、448号と、1995年1月18日にF.T.Bauer他に付与された「ライトパイプを組み込む自動バックミラー」という名称の米国特許第5、434、407号と、1995年9月5日にW.L.Tonarに付与された「自走車両のための外側自動バックミラー」という名称の米国特許第5、448、397号と、1995年9月19日にJ.H.Bechtel他に付与された「電子制御システム」という名称の米国特許第5、451、822号とに開示するもののような市販のエレクトロクロミック装置及び関連回路がある。これらの特許の各々は、本発明と共通の出願人に譲渡されており、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。このようなエレクトロクロミック装置は、完全に一体化された内側/外側バックミラーシステムにおいて、又は別々の内側又は外側バックミラーシステム、及び/又は可変透過率窓として利用することができる。
【0005】
図1は、前部平面基体12及び後部平面基体を有し、かつ全体的なレイアウトで公知の一般的なエレクトロクロミックミラー装置10の断面を示している。透明な導電コーティング14は、前部要素12の後面上に設けられており、かつ別の透明な導電塗料18が、後部要素16の前面上に設けられている。反射体20は、一般的に保護銅金属層20b及び保護塗料20cの1つ又はそれよりも多くの層により覆われた銀金属層20aを含み、後部要素16の後面に配置されている。このような構造の説明の明瞭さを期すために、前部ガラス要素12の前面12aは、時に第1の表面と呼び、前部ガラス要素12の内面12bは、時に第2の表面と呼び、後部ガラス要素16の内面16aは、時に第3の表面と呼び、後部ガラス要素16の背面16bは、時に第4の表面と呼ぶ。図示の例においては、前部ガラス要素は、更にエッジ面12cを含み、一方、後部ガラス要素は、エッジ面116cを含む。前部要素12及び後部要素16は、シール22により平行かつ離間した関係で保持され、従って、チャンバ26が作り出される。エレクトロクロミック媒体24は、空間又はチャンバ26内に含まれている。エレクトロクロミック媒体24は、クリップ接点及び電子回路(図示せず)を通じて印加される可変電圧又は電位により装置内で強度が可逆的に調整される電磁放射線が通過する透明電極層14及び18と直接接触している。
【0006】
チャンバ26内に設けられたエレクトロクロミック媒体24は、表面拘束電極位置型又は溶液相型のエレクトロクロミック材料及びその組合せを含むことができる。全溶液相媒体では、溶解性の任意的な不活性電解液、陽極材料、陰極材料、及び溶液中に存在することがあるあらゆる他の成分の電気化学特性は、実質的な電気化学的変化又は他の変化が、陽極材料の電気化学酸化、陰極材料の電気化学的低減、及び陽極材料の酸化型と陰極材料の還元体の間の自己消去反応以外に、陽極材料を酸化して陰極材料を低減する電位差で発生するようなものであることが好ましい。
【0007】
殆どの場合、電位差が透明導電体14及び18間にない時、チャンバ26内のエレクトロクロミック媒体24は、本質的に無色か殆ど無色であり、入射光(IO)は、前部要素12に入って、透明コーティング14、チャンバ26内エレクトロクロミック媒体24、透明コーティング18、及び後部要素16を通過すると、層20aから反射して、再び装置を通過して前部要素12を出る。一般的に、電位差のない反射画像(IR)のマグニチュードは、入射光強度(IO)の約45パーセントから約85パーセントである。正確な値は、例えば、前部要素の前面からの残留反射(I’R)、並びに前部要素12と前部透明電極14、前部透明電極14とエレクトロクロミック媒体24、エレクトロクロミック媒体24と第2の透明電極18、及び第2の透明電極18と後部要素16の境界面からの2次反射など以下で概説する多くの変数に依存する。これらの反射は、当業技術で公知であり、光が2つの材料の境界面を横切る時の1つの材料と別の材料の間の屈折率の差によるものである。前部要素及び後部要素が平行でない場合、残留反射(I’R)又は他の2次反射は、ミラー面20aからの反射像(IR)と重なり合わないで二重像が現れる(観察者が反射画像内に実際に存在する被写体の数の2倍(又は3倍)に見えるものを見ることになる)。
【0008】
エレクトロクロミックミラーが設けられるのが車両の内側であるのか、又は外側であるのかによって反射像のマグニチュードに対して最低限の最小要件がある。例えば、大部分の自動車メーカからの現在の要件によれば、内側ミラーは、好ましくは、少なくとも40パーセントのハイエンド反射率を有し、かつ外側ミラーは、少なくとも35パーセントのハイエンド反射率を有するべきである。
【0009】
電極層14及び18は、入射光(IO)が反射体20aの方へ進む時に、かつ反射された後に再び通過する時に減衰されるように、電位が導体14及び18間に印加された時にチャンバ26内のエレクトロクロミック媒体は暗色化するように、エレクトロクロミック媒体に通電するために有効である電子回路に接続されている。透明電極間の電位差を調節することにより、このような装置は、連続可変透過率が広範囲にある状態で「グレースケール」装置として機能することができる。溶液相エレクトロクロミックシステムに対しては、電極間の電位が除去されるか又はゼロに戻った時、装置は、電位が印加される前に装置が有していたのと同じゼロ電位均衡色及び透過率に自発的に戻る。他のエレクトロクロミック材料もエレクトロクロミック装置を製造するのに利用可能である。例えば、エレクトロクロミック媒体は、固体金属酸化物、酸化還元活性ポリマー、及び溶液相酸化物及び固体金属酸化物又は酸化還元活性ポリマーの複合型組合せであるエレクトロクロミック材料を含むことができる。しかし、上述の溶液相設計は、現在使用中である大部分のエレクトロクロミック装置を代表するものである。
【0010】
図1に示すもののような第4の表面の反射体エレクトロクロミックミラーが市販される前でさえ、エレクトロクロミック装置を研究している様々なグループは、第4の表面から第3の表面に反射体を移動することに対して検討していた。このような設計は、装置内に作り込まれる層の少数化があるために理論的により製造しやすいはずであるという利点を有し、すなわち、第3の表面の透明電極は、第3の表面の反射体/電極がある時には必要でない。この概念は、1966年という早い時期に説明されたが、第3の表面の反射体を組み込んだ達成可能な自動減光ミラーに対する厳密な基準のために商業レベルで成功したグループは皆無であった。1966年10月25日にJ.F.Donnelly他に付与された「光学的可変マジックミラー」という名称の米国特許第3、280、701号は、pH誘発の変色を利用して光を減衰させるシステムのための第3の表面の反射体に対して最も早期に説明したものの1つがある。
【0011】
1991年11月19日にN.R.Lynam他に付与された「周囲被覆電気光学ミラー」という名称の米国特許第5、066、112号は、シールを隠すために導電コーティングを前部及び後部のガラス要素周囲に付加した電気光学ミラーを教示している。第3の表面の反射体がそこに説明されているが、第3の表面の反射体として有用であると説明されている材料には、内側ミラーとしての使用に十分な反射率がなく、及び/又は少なくとも1つの溶液相エレクトロクロミック材料を含む溶液相エレクトロクロミック媒体と接触した時に安定していないという欠点がある。
【0012】
全固体型装置の中央部に配置された反射体/電極を取り扱った特許もある。例えば、Baucke他に付与された米国特許第4、762、401号、米国特許第4、973、141号、及び米国特許第5、069、535号は、以下の構造体、すなわち、ガラス要素、透明インジウム錫酸化物電極、タングステン酸化物エレクトロクロミック層、固体イオン導電膜、単層水素イオン透過性反射体、固体イオン導電膜、水素イオン貯蔵層、触媒層、後部金属層及び裏面要素(従来の3及び4番目の表面を表す)を有するエレクトロクロミックミラーを教示している。反射体は、第3の表面上に堆積されず、かつエレクトロクロミック材料、特に少なくとも1つの溶液相エレクトロクロミック材料及び関連媒体とは直接に接触していない。その結果、少なくとも1つのエレクトロクロミック材料を含む溶液相エレクトロクロミック媒体と接触している第3の表面の反射体/電極を有する改良型高反射率エレクトロクロミックバックミラーを達成することが望ましい。提案するエレクトロクロミック窓は、一般的に、図1に示すものと類似のものであるが、層20a、20b、及び20cがないエレクトロクロミックセルを含む。
【0013】
反射性の第3表面エレクトロクロミック装置の適応は、多くの問題の解決を助けてきたが、これらの要素にはまだ多数の欠点がある。反射率、色、電気的切り換え安定性、及び環境耐久性のような光学的及び物理的特性を犠牲にすることなく比較的低コストである第2表面透明導電酸化物を有するエレクトロクロミック要素を提供する様々な試みが行われてきた。従来の手法は、インジウム錫酸化物層に着目したものであったが、これらの試みは、上述の無数の問題を実質的に解決していない。特に、いくつかの問題が、インジウム錫酸化物に対する透明導電代替物の開発を支持している。例えば、エレクトロクロミック装置の急激な切り換えには、関連セルの両側に低シート抵抗材料が必要である。大きいエレクトロクロミックセルは、特にシート抵抗の影響を受けるが、一方、高シート抵抗導体は、導体表面にわたって有意な電位降下を引き起こす。これらの空間電位降下により、局所的電流密度が下るので、影響を受けた区域での変色が遅れ、従って、虹彩効果のような効果が発生する。以前のエレクトロクロミックシステムに関連する他の固有の問題及び欠陥を本明細書で説明する。
【0014】
従って、反射率、色、電気的切り換え安定性、及び環境耐久性などのような光学的及び物理的特性を犠牲にすることなくエレクトロクロミック要素の全体コストを低減する構成要素を有する透明電極を含むエレクトロクロミック要素を提供することが望ましい。
【0015】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/779、369号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/810、921号
【特許文献3】米国特許第3、451、741号
【特許文献4】米国特許第4、090、358号
【特許文献5】米国特許第4、139、276号
【特許文献6】米国特許第3、453、038号
【特許文献7】米国特許第3、652、149号
【特許文献8】米国特許第3、774、988号
【特許文献9】米国特許第3、873、185号
【特許文献10】米国特許第3、282、157号
【特許文献11】米国特許第3、282、158号
【特許文献12】米国特許第3、282、160号
【特許文献13】米国特許第3、283、656号
【特許文献14】米国特許第4、902、108号
【特許文献15】カナダ特許第1、300、945号
【特許文献16】米国特許第5、128、799号
【特許文献17】米国特許第5、202、787号
【特許文献18】米国特許第5、204、778号
【特許文献19】米国特許第5、278、693号
【特許文献20】米国特許第5、280、380号
【特許文献21】米国特許第5、282、077号
【特許文献22】米国特許第5、294、376号
【特許文献23】米国特許第5、336、448号
【特許文献24】米国特許第5、434、407号
【特許文献25】米国特許第5、448、397号
【特許文献26】米国特許第5、451、822号
【特許文献27】米国特許第3、280、701号
【特許文献28】米国特許第5、066、112号
【特許文献29】米国特許第4、762、401号
【特許文献30】米国特許第4、973、141号
【特許文献31】米国特許第5、069、535号
【特許文献32】米国特許第4、297、401号
【特許文献33】米国特許第4、418、102号
【特許文献34】米国特許第4、695、490号
【特許文献35】米国特許第5、596、023号
【特許文献36】米国特許第5、596、024号
【特許文献37】米国特許第4,902,108号
【特許文献38】米国特許第6、020、987号
【特許文献39】米国特許出願第60/888、686号
【特許文献40】米国特許第5、239、406号
【特許文献41】米国特許第5、523、877号
【特許文献42】米国特許第5、724、187号
【特許文献43】米国特許第5、818、625号
【特許文献44】米国特許第5、864、419号
【特許文献45】米国特許第6、816、297号
【特許文献46】米国特許出願公開第2004/0032638号
【特許文献47】US6/95193B1
【特許文献48】US6963439B2
【特許文献49】米国特許第6、195、193号
【非特許文献1】Chang著「エレクトロクロミック及びエレクトロケミクロミック材料及び現象」、「非放出電気光学ディスプレイ」、A.Kmetz及びK.von Willisen共編、「Plenum Press」、ニューヨーク、NY1976、155ページから196ページ(1976年)
【非特許文献2】P.M.S.Monk、R.J.Mortimer、D.R.Rosseinsky共著「エレクトロクロミズム」、「VCH Publishers、Inc.」、ニューヨーク、ニューヨーク洲(1995年)
【非特許文献3】「CIE公開13.3、光源の演色性を測定かつ指定する方法」、CIE、1995年
【発明の開示】
【0016】
本発明の一態様は、第1の表面及び第1の表面の反対側にある第2の表面を有する第1の基体と、第1の基体と離間した関係であり、かつ第2の表面に対向する第3の表面及び第3の表面の反対側にある第4の表面を有する第2の基体と、第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体とを含むエレクトロクロミック要素である。エレクトロクロミック要素は、第2の表面及び第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆う透明電極層を更に含み、透明電極層は、第1の絶縁体層と、少なくとも1つの金属層と、第2の絶縁体層とを含み、エレクトロクロミック要素は、80に等しいか又はそれよりも大きい演色指数を示す。
【0017】
本発明の別の態様は、第1の表面及び第1の表面の反対側にある第2の表面を有する第1の基体と、第1の基体と離間した関係であり、かつ第2の表面に対向する第3の表面及び第3の表面の反対側にある第4の表面を有する第2の基体と、第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体とを含むエレクトロクロミック要素を含む。エレクトロクロミック要素は、第2の表面及び第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆う透明電極層を更に含み、透明電極層は、第1の絶縁体層と、少なくとも1つの金属層と、第2の絶縁体層とを含み、第1の絶縁体層及び第2の絶縁体層のうちの少なくとも選択された一方は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化チタン、CeOx、二酸化錫、シリコン窒化物、二酸化シリコン、ZnS、酸化クロム、酸化ニオブ、ZrOx、WO3、酸化ニッケル、IRO2、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む。
【0018】
本発明の更に別の態様は、第1の表面及び第1の表面の反対側にある第2の表面を有する第1の基体と、第1の基体と離間した関係であり、かつ第2の表面に対向する第3の表面及び第3の表面の反対側にある第4の表面を有する第2の基体と、第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体とを含むエレクトロクロミック要素である。エレクトロクロミック要素は、第2の表面及び第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆う透明電極層を更に含み、透明電極層は、第1の絶縁体層と、金属層と、第2の絶縁体層とを含み、第1の絶縁体層及び第2の絶縁体層のうちの少なくとも一方及び絶縁体層と金属層の間の少なくとも1つの障壁層があり、障壁層は、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、銅、ニッケル、プラチナ、イリジウム、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む。
【0019】
本発明の更に別の態様は、第1の表面及び第1の表面の反対側にある第2の表面を有する第1の基体と、第1の基体と離間した関係であり、かつ第2の表面に対向する第3の表面及び第3の表面の反対側にある第4の表面を有する第2の基体と、第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体とを含むエレクトロクロミック要素である。エレクトロクロミック要素は、第2の表面及び第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆う透明電極層を更に含み、透明電極層は、第1の絶縁体層と、金属層と、第2の絶縁体層とを含み、金属層は、銀を含み、第1の絶縁体層及び第2の絶縁体層のうちの少なくとも一方は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化チタン、CeOx、二酸化錫、シリコン窒化物、二酸化シリコン、ZnS、酸化クロム、酸化ニオブ、ZrOx、WO3、酸化ニッケル、IRO2、及びその組合せを含む。
【0020】
本発明の更に別の態様は、エレクトロクロミック要素を製造する方法であり、本方法は、第1の表面及び第1の表面の反対側にある第2の表面を有する第1の基体を準備する段階と、第2の表面に対向する第3の表面及び第3の表面の反対側にある第4の表面有する第2の基体を準備する段階と、第1の絶縁体層、金属層、及び第2の絶縁体層を含む透明電極層を第2の表面及び第3の表面の少なくとも第2のものに付加する段階とを含む。本方法は、エポキシを第2の表面及び第3の表面の少なくとも選択された一方に付加する段階と、赤外線をエポキシに印加することにより第1の基体を第2の基体に密封する段階とを更に含み、赤外線の最小波長は、2.5μmである。
【0021】
本発明のエレクトロクロミック要素は、反射率、色、電気的切り換え安定性、及び環境耐久性などのような光学的及び物理的特性を犠牲にすることなくエレクトロクロミック要素の全体コストを低減する構成要素を有する透明電極を含む。更に、本発明のエレクトロクロミック要素は、比較的製造しやすく、強固な製造工程を提供する一助になり、絶縁体/金属/絶縁体スタックを構成する際に利用する構成要素の選択における多用性を提供し、その構成の調整を可能にして特定の光学的及び物理的性質を達成する。
【0022】
本発明の上記及び他の特徴、利点、及び目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面の参照により、当業者により更に理解かつ認識されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書での説明上、用語「上部」、「下部」、「右」、「左」、「後部」、「前部」、「垂直」、「水平」、及びその派生語は、図1及び3の向きとして本発明に関連するものとする。しかし、明示的に反対に指定されている場合を除き、本発明は、様々な代替方位及び段階シーケンスを取ることができることは理解されるものとする。添付図面で例示し、かつ以下の明細書で説明する特定の装置及び処理は、特許請求の範囲で定める発明の概念の例示的な実施形態であることも理解されるものとする。従って、本明細書で開示する実施形態に関する特定の寸法及び他の物理的特性は、特許請求の範囲により特に断らない限り、制限的であると見なすべきではない。
【0024】
図2は、内側ミラーアセンブリ110、及びそれぞれ運転者側及び乗客側のための2つの外側バックミラーアセンブリ111a及び111bを含む車両ミラーシステム100を概略的に例示する正面立面図であり、アセンブリの全ては、従来の方法で自動車に設けられるようになっており、ミラーは、車両の後部に面し、かつ後方の眺めが得られるように車両の運転者が見ることができる。ミラーアセンブリは、一般的に、本明細書を説明するのに利用するが、注意点として、本発明は、エレクトロクロミック窓の構造に等しく適用可能である。内側ミラーアセンブリ110及び外側バックミラーアセンブリ111a、111bは、上述のカナダ特許第1、300、945号、米国特許第5、204、778号、又は米国特許第5、451、822号で例示されかつ説明されている形式の光感知電子回路、及びグレア及び周囲光を感知して駆動電圧をエレクトロクロミック装置に供給することができる他の回路を組み込むことができる。図示の例においては、電子回路150は、反射体/電極120及び透明電極128に接続されており、かつエレクトロクロミック媒体126が暗くなることにより、エレクトロクロミック媒体を通過する様々な量の光パルスビームを減衰させて、次に、エレクトロクロミック媒体126を含むミラーの反射率を変えるように、反射体/電極120及び透明電極128にわたって電位の制御を適用することを可能にするものである。ミラーアセンブリ110、111a、111bは、同様の番号が内側ミラー及び外側ミラーの構成要素を特定するという点で類似のものである。これらの構成要素は、構成が若干異なる場合があるが、実質的に同様に機能し、同様に付番された構成要素と実質的に同じ結果を取得する。例えば、内側ミラー110の前部ガラス要素の形状は、全体的に外側ミラー111a、111bより長くて狭い。外側ミラー111a、111bと比較して、内側ミラー110上には、一部の異なる性能規格も設けられている。例えば、内側ミラー110は、一般的に、完全に視界を遮蔽するものがない時には、約50%から約85%又はそれよりも多くの反射率を有するはずであり、一方、外側ミラーは、約50%から約65%の反射率を有することが多い。また、合衆国では(自動車製造業者により供給された時)、乗客側ミラー111bは、湾曲又は凸状形状を有し、一方、運転者側ミラー111a及び内側ミラー110は、現在は平坦でなければならない。欧州では、運転者側ミラー111aは、一般的に平坦又は非球面であり、一方、乗客側ミラー111bは、凸状形状を有する。日本では、外側ミラー111a、111bの両方は、凸状形状を有する。以下の説明は、一般的に、本発明の全てのミラーアセンブリに適用可能であり、一方、一般的概念は、エレクトロクロミック窓の構造に等しく適用可能である。
【0025】
図3は、前面112aと後面112bとを有する前部透明基体112と、前面114aと後面114bとを有する後部基体114とを有するミラーアセンブリ111aの断面図を示している。このような構造の説明の明瞭さを期すために、以下の名称をこれ以降使用する。前部基体の前面112aは、第1の表面112aと呼び、前面の裏面112bは、第2の表面112bと呼ぶ。後部基体の前面114aは、第3の表面114aと呼び、後部基体の裏面114bは、第4の表面114bと呼ぶ。前部基体112は、エッジ面112cを更に含み、一方、後部基体114は、エッジ面114cを更に含む。チャンバ125は、透明導体128(第2の表面112b上に担持)の層、反射体/電極120(第3の表面114a上に配置)、及びシール部材116の内周壁132により形成される。エレクトロクロミック媒体126は、チャンバ125内に収容されている。
【0026】
本明細書で大まかに使用しかつ説明する時、要素の表面上に担持又は要素の表面に付加される電極又は層というのは、要素の表面上に直接に配置されているか、又は要素の表面上に直接に配置されている別のコーティング又は1つ又は複数の層上に配置されている両方の電極又は層を指す。更に、注意点として、ミラーアセンブリ111aは、説明を目的としてのみ説明するものであり、特定の構成要素及び要素は、図1に例示する構成、及びエレクトロクロミック窓に対して公知である構成などの中に再配置することができる。
【0027】
前部透明基体112は、透明であり、かつ自動車環境内に一般的にある条件、例えば、変動する温度及び圧力において作動することができる十分な強度を有する材料とすることができる。前部基体112は、あらゆる形式の硼珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、フロートガラス、又は電磁スペクトルの可視領域内で透明であるあらゆる他の材料、例えば、ポリマー又はプラスチックなどを含むことができる。前部基体112は、ガラスシートであることが好ましい。後部基体114は、全ての用途において透明である必要はなく、従って、ポリマー、金属、ガラス、セラミックを含むことができ、かつガラスシートであることが好ましいという点を除き、先に概説した作動条件を満たさなければならない。
【0028】
第3の表面114aのコーティングは、第2の表面112及び第3の表面114aの両方の外周近くに配置したシール部材116により離間しかつ平行な関係で第2の表面112b上のコーティングに密封可能に接合されている。シール部材116は、第2の表面112b上のコーティングを第3の表面114a上のコーティングに接着させて、エレクトロクロミック材料126がチャンバ125内から漏れないように周囲を密封することができるあらゆる材料とすることができる。任意的に、透明導電コーティング128の層及び反射体/電極120の層は、シール部材116を堆積する部分にわたって除去することができる(その部分全体ではない、そうでなければ駆動電位を2つのコーティングに印加することはできない)。このような場合、シール部材116は、ガラスと良好に接着すべきである。
【0029】
エレクトロクロミック装置内で使用する周囲シール部材116の性能要件は、当業技術で公知である液晶ディスプレイ(LCD)で使用する周囲シールのためのものと類似のものである。シール116は、ガラス、金属、及び金属酸化物に良好な粘着性を有さなければならず、酸素、湿気、及び他の有害な蒸気、及びインジウムに対して低い浸透性を有さなければならず、かつエレクトロクロミック装置が含んで保護することを意味するエレクトロクロミック材料又は液晶材料と相互作用したり、害したりしてはならない。外周シールは、スクリーン印刷又は分注のようなLCD工業で一般的に使用される手段によって付加することができる。ガラスフリット又は半田ガラスで作られるもののような完全密封シールを使用することができるが、この種のシールの処理に関わる高温(通常450℃近く)は、ガラス基体そり、透明な伝導電極の特性の変化、及び反射体の酸化又は劣化のような多数の問題を引き起こす可能性がある。処理温度の低温化のために、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、又はUV硬化有機密封樹脂が好ましい。LCDのためのこのような有機樹脂密封システムは、米国特許第4、297、401号、米国特許第4、418、102号、米国特許第4、695、490号、米国特許第5、596、023号、及び米国特許第5、596、024号に説明されている。ガラスに対する優れた粘着性、低い酸素透過性、及び良好な溶媒抵抗のためにエポキシベースの有機密封樹脂が好ましい。これらのエポキシシールは、米国特許第4、297、401号に説明されているもののようなUV硬化、又は液体ポリアミド樹脂又はジシアンジアミドとの液体エポキシ樹脂の混合物のような熱硬化とすることができ、又はホモポリマー化することができる。エポキシ樹脂は、ヒュームドシリカ、シリカ、雲母、粘土、炭酸カルシウム、アルミナのような流量及び縮みを低減するために充填剤又は増粘剤、及び/又は色を増すために顔料を含むことができる。疎水性又はシラン表面処理で前処理した充填剤が好ましい。硬化樹脂架橋結合密度は、単機能性エポキシ樹脂、二機能性エポキシ樹脂、多機能性エポキシ樹脂、及び硬化剤の混合物の使用により制御することができる。シラン又はチタン酸塩のような添加物は、シールの加水分解安定性を改善するのに使用することができ、かつガラスビーズ又はロッドのようなスペーサは、最終的なシール厚み及び基体間隔を制御するのに使用することができる。周辺シール部材116に使用する適切なエポキシ樹脂としては、テキサス州ヒューストン所定のシェル・ケミカル・カンパニーから販売されている「EPON RESIN」の813、825、826、828、830、834、862、1001F(1002F)2012、DP−155、164、1031、1074、58005、58006、58034、58901、871、872、及びDPL−862、ニューヨーク州ホーソーン所在のチバ・ガイギーから販売されている「ARALITE」の「GY 6010」、「GY 6020」、「CY 9579」、「GT 7071」、「XU 248」、「EPN 1139」、「EPN 1138」、「PY 307」、「ECN 1235」、「ECN 1273」、「ECN 1280」、「MT 0163」、「MY 720」、「MY 0500」、「MY 0510」、及び「PT 810」、及びミシガン州ミッドランド所在のダウ・ケミカル・カンパニーから販売されている「D.E.R.」の331、317、361、383、661、662、667、732、736、「D.E.N.」の431、438、439、及び444があるがこれらに限定されない。適切なエポキシ硬化剤としては、シェル・ケミカル・カンパニーのV−15、V−25、V−40ポリアミドがある。適切なエポキシ硬化剤としては、シェル・ケミカル・カンパニーのV−15、V−25、及びV−40ポリアミド、日本国東京の味の素株式会社から販売されている「AJICURE」PN−23、PN−34及びVDH、日本国東京の四国精密化学から販売されている「CUREZOL」AMZ、2MZ、2E4MZ、ClIZ、C17Z、2PZ、2IZ、及び2P4MZ、ニュージャージー州メープル・シェード所在の「CVC Specialty Chemicals」から販売されている「ERISYS」DDA、又はU−405、24EMI、U−410、及びU−415で促進されたDDA、ペンシルベニア州アレンタウン所在のエア・プロダクツから販売されている「AMICURE」PACM、352、CG、CG−325、及びCG−1200がある。適切な充填剤としては、イリノイ州タスコラ所在のカボット・コーポレーションから販売されている「CAB−O−SIL」L−90、LM−130、LM−5、PTG、M−5、MS−7、MS−55、TS−720、HS−5、及びEH−5のようなヒュームドシリカ、オハイオ州アクロン所在のデグッサから販売されている「AESOSIL」R972、R974、R805、R812、R812S、R202、US204、及びUS206がある。適切な粘土充填剤としては、ニュージャージー州エジソン所在のエンゲルハード・コーポレーションから販売されているBUCA、CATALPO、「ASP NC」、「SATINTONE 5」、「SATINTONE SP−33」、「TRANSLINK 37」、「TRANSLINK 77」、「TRANSLINK 445」、及び「TRANSLINK 555」がある。適切なシリカ充填剤は、メリーランド州ボルチモア所在のSCMケミカルズから販売されている「SILCRON」G−130、G−300、G−100−T、及びG−100がある。シールの加水分解安定性を改善する適切なシラン表面処理剤は、ミシガン州ミッドランド所在のダウ・コーニング・コーポレーションから販売されているZ−6020、Z−6030、Z−6032、Z−6040、Z−6075、及びZ−6076である。適切な精密ガラスマイクロビーズスペーサは、カリフォルニア州パロアルト所在のヂューク・サイアンティフィックから一式のサイズの取り合わせで販売されている。
【0030】
エレクトロクロミック媒体126は、通過する光を減衰させることができ、少なくとも1つの溶液相エレクトロクロミック材料が、反射体/電極120と、溶液相表面拘束型とすることができる少なくとも1つの更に別の電子活性材料と密接しており、一方は、表面上にメッキされている。しかし、本発明で好ましい媒体は、米国特許第4,902,108号、第5,128,799号、第5,278,693号、第5,280,380号、第5,282,077号、第5,294,376号、及び第5,336,448号に開示された溶液相酸化還元エレクトロクロミック材料である。「予め選択された色を生成することができる改良型エレクトロクロミック媒体」という名称の米国特許第6、020、987号では、通常の作動範囲を通じて灰色であると認められるエレクトロクロミック媒体が開示されている。この特許の全ての開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。溶液相エレクトロクロミック媒体を利用した場合、公知の技術で密封可能な充填ポート142を通してチャンバ125に挿入することができる。
【0031】
電位が要素に印加される時、ミラー又は窓が均一に暗色化されない可能性があることは、エレクトロクロミック技術で公知である。不均一暗色化は、エレクトロクロミック要素の固体状態エレクトロクロミック材料、流体、又はゲルにわたって電位が局所的に異なるためである。要素にわたる電位は、電極のシート抵抗、バスバー構成、エレクトロクロミック媒体の導電性、エレクトロクロミック媒体の濃度、電池間隔又は電極間の距離、及びバスバーからの距離と共に変化する。この問題に対する一般的に提唱される解決法は、電極を構成するコーティング又は層を厚くし、それによってシート抵抗を低減して要素を迅速に暗色化させることを可能にすることである。以下に説明するように、この単純化した方法には、この問題を解決するのに限定されるという実際的に欠点が付与される。多くの場合、この欠点により、エレクトロクロミック要素は所定の用途には不適切になる。本発明の実施形態の少なくとも1つでは、単純に電極層を厚くすることから生じる問題を解決し、エレクトロクロミック要素が更に迅速に均一に暗色化する特性を備えることになる改良電極材料、電極及びバスバー構成を製造する方法を説明する。
【0032】
典型的な内部ミラーでは、バスバーは、長い方向に平行に延びている。これは、電極間の各部分にわたる電位の低下を最小限にするためである。更に、ミラーは、典型的には、高シート抵抗の透明電極及び低シート抵抗の反射体電極から成る。ミラーは、高シート抵抗電極のバスバー付近で最も迅速に暗色化することになり、2つの電極間のある中間位置で最も遅い。低シート抵抗電極のバスバー付近では、これらの2つの値の間の暗色化速度を有することになる。1つが2つのバスバーの間に移動すると有効電位が変動する。2つの長い平行なバスバーの間の距離が比較的短い場合は(バスバー間の距離がバスバーの長さの半分未満)、ミラーは、「窓日除け」様式で暗色化することになる。これは、ミラーは、1つのバス付近で迅速に暗色化し、この暗色化が、2つのバスバー間で徐々に移動すように見えることを意味する。典型的には、暗色化速度は、この部分の中間で測定され、幅対高さ比が2よりも大きいミラーの場合には、暗色化速度のあらゆる不均一性は比較的小さい。
【0033】
また、ミラーの大きさ、及びそれに伴ってバスバー間の距離が大きくなると、各部分にわたる暗色化速度の相対差も増大する。これは、ミラーが外部用途に設計される場合に悪化する可能性がある。環境のような厳しさに耐えることができる金属は、典型的には、内部ミラー用途に適していてそれによく用いられる銀又は銀合金のような金属よりも導電性が低い。従って、外部用途の金属電極のシート抵抗は、6オーム/平方までとすることができ、内部ミラーはのシート抵抗は、<0.5オーム/平方とすることができる。他の外部ミラー用途では、透明電極の厚みは、様々な光学的要求に対して制限される可能性がある。ITOのような透明電極は、本明細書において引用により組み込まれている「改良型透明導電体を有する電気光学要素」という名称の米国特許出願第60/888、686号に説明されているような最も一般的な用法では、1/2波厚みに限定されることが多い。この制限は、本明細書で説明するITOの特性によるものであるが、ITOコーティングを厚くするのに伴う費用にもよる。他の用途では、コーティングは、1/2波厚みの80%に制限される。これらの厚み制約の両方は、透明電極のシート抵抗を1/2波に対して約12オーム/平方より大きく、1/2波コーティングの80%であるコーティングに対して17〜18オーム/までに限定する。金属及び透明電極が高シート抵抗であれば、暗色化が緩徐で均一性の小さなミラーになる。
【0034】
暗色化速度は、電気回路に関するエレクトロクロミック要素の分析から推定することができる。以下の考察は、要素にわたって均一なシート抵抗を有するコーティングに関する。並列電極間の何らかの位置の電位は、単純に各電極のシート抵抗及びエレクトロクロミック媒体の抵抗の関数である。以下の表1では、電極間の要素にわたる平均電位が最大及び最小電位間の差と共に示されている。この例は、並列バスバー間が10cm間隔、180ミクロン電池間隔、1.2ボルト駆動電圧、及び100、000オーム*cm流体抵抗の要素に対するものである。上部及び底部電極シート抵抗の6つの組合せを比較する。
【0035】
(表1)

【0036】
暗色化の速度は、高シート抵抗電極に電気的に接触する点で速く、この位置での有効電位に関連する。この電気的に接触する点(又は他所)に隣接する有効電位が高くなると、ミラーの平均暗色化が速くなる。最も速い全体暗色化時間は、その部分にわたって電位が可能な限り高くなった時に起こることになる。これは、電気化学を促進して加速した速度で暗色化させることになる。上部及び底部両方の基体のコーティングのシート抵抗は、電極間の有効電位を判断する役割を果たすが、表に見られるように、高シート抵抗電極は、更に重大な役割を果たす。以前のエレクトロクロミック技術では、実質的な利益をもたらして実行することが比較的容易である銀のような材料を用いたために、改良は、殆ど専ら低抵抗電極のシート抵抗を下げることによって行われた。
【0037】
駆動電位を増大させると全体的な速度を増大させることができるが、駆動電圧とは関係なく傾向は一定であることになる。更に、所定の電圧での電流引き込みは、暗色化の均一性に影響を及ぼす。均一性は、電池間隔、濃度、又はエレクトロクロミック材料の選択を調節することによって改善することができるが、これらの調節を用いて均一性を改善すると、多くの場合、暗色化速度、明色化速度、又は暗色化及び明色化速度の両方に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、電池間隔を増大させ、流体濃度を低減すると、電流引き込みが減少することになり、それによって均一性が改善することになるが、清浄化時間は増大することになる。従って、層のシート抵抗は、暗色化速度及び暗色化均一性の両方が得られるように適切に設定すべきである。好ましくは、透明電極のシート抵抗は、11.5オーム/平方未満、好ましくは10.5オーム/平方未満、より好ましくは9.5オーム/平方未満とする必要があり、以下に説明する光学的要件のために、一部の実施形態では、透明電極の厚みは、約1/2波光学厚み未満とすべきである。代替的に、透明電極は、IMI形式コーティングを含むことができる。反射体電極は、約3オーム/平方未満、好ましくは約2オーム/平方未満、最も好ましくは1オーム/平方未満とすべきである。更に、このように構成されたミラー又はエレクトロクロミック要素は、比較的均一な暗色化も有することになり、最高及び最低暗色化速度の間の暗色化時間の差が係数3未満、好ましくは係数2未満、最も好ましくは係数1.5未満になる。このような高速で均一な暗色化要素が可能になる新しい高性能低価格材料を以下に説明する。
【0038】
他の用途では、2つの比較的平行なバスバーを有することは現実的でない場合がある。これは、外部ミラーに共通の平らでない形状のためであると考えられる。他の状況では、低抵抗電極に接触する点を有することが望ましいことがある。点接触により、一部の実施形態で用いられるレーザ削除線を最小限にするか又は削除することができる。点接触を用いると、単純化されるか、又はミラー構築の態様のいくつかではそれが好ましいが、その部分にわたり比較的均一な電位を達成するのは困難である。低抵抗反射体電極に沿う比較的長いバスを排除すると、電極の抵抗が実質的に増大する。従って、迅速に均一に暗色化するためには、バスバー及びコーティングシート抵抗値の新しい組合せが必要である。
【0039】
上述のように、当業者には、点接触方式を可能にするために、金属反射体電極には極度の低シート抵抗値を必要とすることになると予想される。しかし、透明の電極は、低シート抵抗にして均一性を改善することが必要である。表2は、均一性実験の結果を示している。この試験では、ほぼ8インチ幅×6インチ高さの溶液相エレクトロクロミック要素を作られた。本明細書で説明した要素設計の利点は、主に大きな要素に関する。大きな要素は、可視領域の縁部のあらゆる点の縁部から幾何学的中心までの最小距離が、ほぼ5cmを超えるものであると定められる。均一な暗色化がなければ、距離がほぼ7.5cmを超えると更に問題が大きくなり、距離がほぼ10cmを超えると更に問題が大きくなる。透明電極(ITO)のシート抵抗及び金属反射体は、表2に示すように変化した。金属電極を点接触部と接触させた。いわゆるJクリップのようなクリップ接触部をほぼ1”長さのAgペースト線と共に用い、ミラーの短い長さの側部の1つに沿って金属反射体に電気的に接触させた。透明電極は、Agペーストを介し、点接触部と反対の1側部に沿い、ミラーの両方の長い側部に沿う距離の3分の1にわたって連続的に電気的に接触させた。暗色化時間(T5515)をミラーの3つの位置で測定した。位置1は、点接触部付近であり、位置2は、点接触部と反対側の透明電極バスの縁部であり、位置3は、ミラーの中心である。T5515時間(秒)は、ミラーが55%反射率から15%反射率になるのにかかる時間である。最大反射率は、ミラーの最大反射率である。ΔT5515は、点1と点2との間又は点2と点3の間のいずれかの時間差である。これは、ミラーの最も速い位置と他の2つの位置の間の暗色化速度の差の尺度である。暗色化の均一性が高まれば、これらの数は互いに近づく。タイミング係数は、所定の位置での暗色化時間を最も速い位置での時間で割ったものである。それによってあらゆる所定の位置での絶対速度に関係なく、異なる位置間の時間の相対的スケーリングが示されている。上述のように、好ましくは、タイミング係数は3未満、好ましくは2未満、最も好ましくは1.5未満である。この特定のミラー構成に対してITOシート抵抗が14オーム/平方である場合には、タイミング係数の3が得られないことは表2に見ることができる。ITOが9オーム/平方である3つの例全てのタイミング係数は、3未満である。ミラー読取りの中心は、最も速い位置から最も外れた位置である。このデータに統計的分析を行うと、予想外に、ITOシート抵抗は、タイミング係数に寄与する唯一の因子であることが分った。統計的モデルを用いると、ITOシート抵抗は、この実施形態では、タイミング係数3.0以下にするためには、約11.5オーム/平方未満であることが必要である。同じ統計モデルを用いると、ITOのシート抵抗は、このミラー構成では、2.0未満のタイミング係数に対して7オーム/平方未満とすべきである。第3の表面反射体のシート抵抗により、タイミング係数は影響を受けないが、全体的な暗色化速度は影響される。前記反射体のシート抵抗が2オーム/平方以下であり、ITOがほぼ9オーム/平方である場合には、このミラーに対する暗色化速度は、中心では8秒未満である。この値は、ほぼ従来のバス配列で同様の大きさのミラーに対応する。従って、ITOのシート抵抗を低下させることにより、比較的高シート抵抗反射体に点接触が可能になる。
【0040】
(表2)

【0041】
均一性及び暗色化の速度でのITOのシート抵抗の予想外の役割は、別の組の実験に拡張された。これらの実験では、高シート抵抗電極、この例ではITOに対するバスバー接触の長さは、ミラーの側部まで、場合によっては、更にミラーの底部縁部まで拡大された。表3は、バス長さが変化すると均一性に及ぼされる影響を明らかにしている。これらの試験では、要素の形状及び構成は、説明するところ以外は上述の表Bと同じである。接触パーセントは、周縁部の全長に比較したITO接触のバスバー長さのパーセント比較である。バスバー比は、ほぼ2cm又はそれ未満の小さな反射体接触部に対するITO接触の長さである。
【0042】
表3からのデータは、高シート抵抗電極のバス長さが増大すると、均一性が有意に改善することを示している。2オーム/平方の反射体では、40%から85%までバスの長さが増大すると、タイミング係数が2.4から1.7に改善する。0.5オーム/平方反射体では、ITOバス長さが同じく40から85%まで変化すると、タイミング係数が3.2から1.2まで改善し、暗色化速度が有意に改善する。低シート抵抗反射体の要素は、比較可能な2オーム/平方の場合より暗色化が一般的に速いが、ITO接触部短く均一性が0.5オームの場合には、タイミング係数で明らかにするように不良になることに注意されたい。ITOに対するバス長さを増大させると、0.5オーム/平方の反射体の要素で特に役立つ。
【0043】
接触パーセントが増大すると、暗色化の最も速い位置及び最も遅い位置も変化する可能性がある。この例では、高接触パーセントでは、位置1及び3の両方の暗色化時間及び対応するタイミング係数が有意に改善する。
【0044】
(表3)

【0045】
これらの実験は、低シート抵抗電極で短いバスを用いる場合には、反対側の電極に対するバス長さを増大させて均一性を改善することが有利であることを示している。従って、理想的には、大きなミラーには、バスバーの長さの比は5:1より大きく、好ましくは9:1より大きく、より好ましくは13:1より大きく、最も好ましくは20:1より大きくし、タイミング係数を3より小さくすることが好ましい。更に、小さなバスの長さと関係なく、高シート抵抗電極に対するバス長さを増大することによって均一性を改善し、接触パーセントを好ましくはほぼ58%より大きく、より好ましくはほぼ85%より大きくすることも見出した。典型的には大きなECミラーの接触パーセントは、50%未満である。上述の例では、ITOを透明電極として使用している。代替的に、本明細書で説明するようなIMIコーティングを使用して、速度及び均一性に関して類似の結果を得ることができる。
【0046】
組合せ反射体/電極120は、第3の表面114a上に配置されており、かつミラー反射率層として機能する反射材料121の少なくとも1つの層を含み、また、エレクトロクロミック媒体と接触して、かつエレクトロクロミック媒体中のあらゆる成分と化学的及び電気化学的に安定した関係で不可欠な電極を形成する。上述のように、エレクトロクロミック要素を製造する従来の方法は、電極として第3の表面上に透明導電材料を組み込んで第4の表面上で反射体を設置することであった。「反射体」及び「電極」を組み合わせて第3の表面上に両方を設置することにより、要素製造をより複雑でないものにするだけでなく、要素がより高い性能で作動することも可能にするいくつかの利点が生まれる。例えば、第3の表面114a上の組合せ反射体/電極120は、一般的に、従来の透明電極及び先に使用した反射体/電極より高い導電率を有し、それによって設計上の柔軟性の改善が可能になる。第4の表面の反射体要素で取得可能な着色速度と類似の着色速度を維持しながら、同時に、エレクトロクロミック要素を生成する全体コスト及び時間を実質的に低減しながら、第2の表面112b上の透明導電電極128の組成をより低い導電率を有する(より安くかつより生産及び製造しやすい)組成に変えることができる。しかし、特定の設計の実行性が最も重要である場合、例えば、ITO、IMIのような第2の表面上に導電率が中から高の透明電極を使用することができる。第3の表面114a上の高導電率(すなわち、250オーム/平方未満、好ましく15オーム/平方未満)反射体/電極120、及び第2の表面112b上の高導電率透明電極128の組合せにより、全体的な着色がより均一であるエレクトロクロミック要素が生成されるばかりでなく、着色速度及び明色化速度の増大も可能にすることになる。更に、第4の表面の反射体ミラーアセンブリは、導電率が比較的低い2つの透明電極を含み、先に使用した第3の表面の反射体ミラーにおいては、導電率が比較的低い透明電極及び反射体/電極があり、従って、電流を出し入れする前部及び後部要素上の長いバスバーが、適切な着色速度を保証するために必要である。
【0047】
電極としての役割を果たすように透明導電材料128の層を第2の表面112b上に堆積させる。透明導電材料128は、前部要素112に良好に接着し、エレクトロクロミック要素内のいずれの材料にも耐食性であり、大気による腐食に抗し、最小拡散又は鏡面反射率、高い光透過率、中間色に近い配色、及び良好な電導度を有するあらゆる材料とすることができる。
【0048】
この例においては、透明導電材料128は、協働して絶縁体/金属/絶縁体(IMI)スタック139を形成する、エレクトロクロミック媒体126の近くの第2の表面112b、金属層133、及び絶縁体層135の近くの絶縁体131を含む。必要に応じて、色抑制材料130の任意的な層を透明導電材料128と第2の表面112bの間で堆積させて電磁スペクトルのあらゆる不要な部分の反射を抑制することができる。更に、以下で説明するように、障壁層137を組み込むことができる。絶縁体/金属/絶縁体スタックを形成するのに利用する材料は、反射率、色、電気的切り換え安定性、及び環境耐久性のようなエレクトロクロミック要素の光学的及び物理的特性を最適化するように選択する。
【0049】
エレクトロクロミックミラー用途内で絶縁体/金属/絶縁体スタックを利用する一般的な概念は、米国特許第5、239、406号、米国特許第5、523、877号、米国特許第5、724、187号、米国特許第5、818、625号、及び米国特許第5、864、419号に開示されているが、これらでは、絶縁体/金属/絶縁体透明電極を利用する機能的かつ耐久性があるエレクトロクロミック要素を作り出すために様々な所要の特性を達成する特定のスタック要領が教示されていない。
【0050】
本明細書の説明では、本発明の有用なIMIスタック139を作り出すために必要な諸要件及び特性を詳述している。本発明のIMIスタック139の特定の構造は、エレクトロクロミック要素内でのIMIスタックの利用に関連した多くの従来の欠点及び問題を克服するものである。具体的には、可視光線の透過率と考える時、IMIコーティングは、単一の層の透明導電酸化物(TCO)と比較してエレクトロクロミック要素内では違った挙動をすると判断した。ミラーの反射率又は窓の透過率は、透明電極が被覆されたガラスの吸収に直接依存し、ミラー又は窓の反射率は、透明電極が相当な吸収を示す時には低減される。透明電極の透過率が反射損失のために低い場合、このような透明電極で製造される窓は、透過率が低く、かつ反射率は、潜在的に問題がある。TCOの透過率は、空気より高い屈折率を有するエレクトロクロミック媒体と接触して設けられた時、増加し、従って、反射率の低下になり、被覆ガラスは、ほぼ同じ吸収を有する。その結果として、TCOを窓内で使用した場合、結果として生じる反射率は落ち、透過率は、空気中の各部に対して増加することになる。しかし、IMIコーティングは、一般的にこのような挙動ではない。IMIコーティングは、空気と接触している時と比較すると、エレクトロクロミック媒体と接触して設置した時は、IMIコーティングの透過率は、増加したり、減少したり、又は同じままである場合がある。従って、適切なIMIコーティング構造は一般化することができず、また、エレクトロクロミック用途での関連した挙動は、TCOコーティングに対して行うことができるようには計算することができない。本発明のエレクトロクロミック要素は、エレクトロクロミック用途に適切な相対的な高い透過率及び低いシート抵抗を示すIMIコーティングを組み込んでいる。特に、説明するようなコーティングの挙動は、実質的に全ての従来技術のIMI形式のコーティングに対して上述したように、空気と比較して、エレクトロクロミックセル内では例外的に良好に働く。
【0051】
一例として、図5は、入射媒体が空気又はエレクトロクロミック流体である時、ガラス上でのITOの異なる透過率を例示している。この場合、エレクトロクロミック流体は、主として、550nmで1.44の屈折率を有する炭酸プロピレンから成る。透過率の変化の有力な原因は、反射率で低減による。エレクトロクロミック流体の事例は、実際には、空気の事例と比較して若干高めの吸収(0.2%)を有する。しかし、エレクトロクロミック流体と比較した空気の間の透過率の変化は、直接的なものではない。ガラス、2.0の屈折率を有する誘電体、銀層、また、2.0の屈折率を有する上部層から成るIMIスタックの分析を行い、各誘電体及び銀層の厚みを変えた。空気とエレクトロクロミック流体の間の透過率の変化(エレクトロクロミック流体−空気)を計算して、結果を統計学的に分析して傾向を判断した。図6は、比較的単純な3層IMIスタックとして存在する複雑な関係を例示している。図6に示す等高線プロットの各々においては、層のうちの2層を変更し、一方、他方の層を一定に保持した。
【0052】
本発明のIMIスタック139を製造するのに利用した特定の構成要素は、スタックの透過率を増大させる一助になるものであり、誘電体層の屈折率は、一般的にできるだけ高く保持される。比較的高い屈折率は、かなりの厚みの銀又は銀の合金層を有するスタック139の透過率を増大させる一助になる。誘電体に関する高屈折率化の必要性は、IMIコーティングを空気の近くに配置するような時と比較して、屈折率が比較的高いエレクトロクロミック流体の近くにこの同じコーティングを位置決めした時の方が極めて重要である。この高屈折率化は、比較的高い透過率レベルで色の範囲に到達する一助になる。誘電体層の屈折率は、1.7をよりも大きく、より好ましくは2.0をよりも大きく、最も好ましくは2.5を超えることが好ましい。
【0053】
表4は、異なる誘電性屈折率及び銀の厚みを有するIMIスタックの透過率を明らかにするいくつかのスタックの透過率を示している。オレゴン州ポートランド所在の「Software Spectrum、Inc.」から販売されているような薄膜コンピュータプログラム(TFCaIc)で値を計算した。表4に示すように、銀の厚みを固定し、かつ透過率を最大にするように誘電体を最適化した。表2の層の厚みは、オングストローム単位である。具体的には、酸化チタン、(2つの異なる屈折率で)インジウム亜鉛酸化物(IZO)、及び混合チタンシリコン二酸化物層を含むモデル内で4つの異なる屈折率を示す誘電体を使用した。二酸化チタンは、ドープすると、電気バルク抵抗を増大させることができる。透過率は、IMIスタックに近接で位置する空気及びエレクトロクロミック流体に対して示している。注意点として、屈折率が高いほど、透過率値は高くなり、かつこれらの高い透過率は、銀層が厚くなると維持され、従って、シート抵抗値が小さくなると、窓において比較的高い透明度、又はミラーにおいて高い反射率が可能になる。その結果として、関連エレクトロクロミック要素に対して切り換え時間の高速化が得られる。広範囲の銀の厚みにわたって高い透過率を維持するために誘電体の高反射率化を得ることができることは、色の反射又は透過のような他の属性が得られるように層を調整する余地を示している。誘電体の厚みは、高屈折率化時に肉厚化することができ、従って、より経済的な製品、並びにより用途の広いスタックが得られる。透過率は、好ましくは約50%をよりも大きく、より好ましくは約60%をよりも大きく、更に一層好ましくは70%さえよりも大きく、更に一層好ましくは80%をよりも大きく、最も好ましくは90%を超えるものとする。高い透過率が主要な設計基準である場合、銀層は、厚みが好ましくは300オングストローム未満、より好ましくは200オングストローム未満、更に一層好ましくは150オングストローム未満、最も好ましくは100オングストローム未満である。
【0054】
表4:異なるIMIスタックの透過率値

【0055】
誘電体の屈折率の実数部に加えて、誘電体の屈折率の虚数成分に対して説明する。屈折率の虚数部は、誘電体層における光吸収に影響を及ぼす。IMIスタックの誘電体層は、金属層における光の永続的な電界を最小にする役目をし、従って、誘電体層の電界が強化される。従って、屈折率の虚数部による吸収のマグニチュードは、基体中の誘電体層だけに見られる部分に対して増加する。その結果として、誘電体層における吸収量を最小にして透明電極の透過率を最大にすることが重要である。逆に、誘電体層における吸収を用いると、IMIスタックの透過率を調整することができ、他の光学的又は電気的要件に向けて固定することができる金属層を調整しなくて済む。
【0056】
表5は、誘電体の固定屈折率のための達成可能な透過率に及ぼすIMI誘電体で吸収効果を示している。薄膜モデル化を再度用いて、ほぼ同じ実数屈折率nを有する異なる誘電体層を有するIMIスタックに対して透過率及び反射率を計算した。銀厚みを100オングストロームに固定し、かつ透過率最適化中に誘電体層を移動させた。最大透過率は、誘電体のk値と非常に相関するものである。このデータは、透過率を絶縁体のk値を結び付ける方程式を生成するように線形曲線に当て嵌めた。この方程式に基づく透過率対k値を表6に示している。50%を超える透過率を取得するために、k値は、好ましくは約0.2未満、より好ましくは0.1未満、更に一層好ましくは0.04未満、更に一層好ましくは0.01未満、最も好ましくは0.005未満である。最も好ましいレベル及びそれ未満では、k値の変化に伴う透過率の変化は殆どない。これらの好ましい範囲は、2.0での層に対して一定の実数屈折率を利用して判断した。kの好ましい値は、他の実数屈折率を使用時には若干ずれる場合がある。
【0057】
表5:最大達成可能透過率に及ぼす吸収(k)の影響及び固定n値に関する最低吸収

【0058】
表6:表4からの値に基づいて方程式を使用した透過率対k値

【0059】
注意点として、一部の用途においては、高屈折率を示し、従って、誘電体層における屈折率の組合せ又は屈折率勾配から恩典を受けると思われる色の反射及び透過の調整のような光学的利点を得ることは、誘電体層の一部だけに有利であると考えられる。
【0060】
IMIスタック139内の銀層の透過率を最大にする別の手法は、できるだけ低い屈折率(実数部)を有する銀層を作り出すことである。この比較的低い屈折率は、いくつかの手段によって取得することができる。酸化亜鉛に銀の層を堆積させることは、酸化亜鉛と銀間の結晶適合にために比較的低い屈折率を有する銀を生成する一助になる。具体的には、銀は擬似エピタキシャル成長させると細かい構造を有し、一方、酸化亜鉛層は、スパッタリングを通して堆積させると一般的に結晶構造を有する。従って、酸化亜鉛層は、結晶性のために粗面になる傾向がある。従って、スタック内の酸化亜鉛層の厚みは、厚みでスケーリングすることが多い粗度が過度に増大しないように制御すべきである。更に、酸化亜鉛の堆積パラメータを用いて層形態を制御して様々な全厚レベルで厚みを最小にすることができる。
【0061】
銀の屈折率は、電気的性質にも関連する。所定の銀コーティングに対しては、この好ましい層は、低いバルク抵抗を有することになり、従って、より高い透過率値が得られる。2つの方法を使用して、電子担体濃度の増大及び電子移動度の増大を含むコーティングのバルク抵抗を低減する。結果として生じるIMスタックは、電子移動度の増大増加のためにより高い透過率を有する。
【0062】
銀層の電気的性質に加えて、dバンドの電気的転移も、銀層の特性に影響を及ぼす。銀においては、大部分の遷移金属の場合と同様に、電子は、より高いエネルギレベルに励起することができ、遷移は、金属内のdバンド又はd軌道で発生する。これらの遷移は、金属の屈折率にかなり影響を及ぼす。金属内の電子濃度を変えることにより、吸収の始まりが発生すると考えられる周波数を変えた。これは、d−バンド遷移をより高い周波数に移動させ、従って、可視域で関連銀層の屈折率を下げ、従って、透過率を増大させることにより達成された。380nmと780nm間の可視スペクトルの少なくとも1つの部分におけるAg屈折率の実数部は、約0.12未満、より好ましくは約0.10未満、更に一層好ましくは約0.08未満、最も好ましくは約0.06未満であるべきであることが好ましい。
【0063】
銀と隣接材料の間の境界面は、IMIスタックの最終的な透過率(及びシート抵抗)に劇的に影響を及ぼす。IMIスタック中の低い吸収は、境界面の粗度が減少するか、又は銀と誘電体の間の混合が増大する時に発生し、吸収は、層が原子的に滑らかである時に最大である。IMIスタック及び堆積用材料は、滑らかな層及び境界面が得られるように選択した。更に、境界面の粗度が増大する時に銀の光定数、特に、電子移動度が減少し、従って、透過率に悪影響を与える。Ag又は金属層より下方の層の表面のピーク−谷間粗度は、約50オングストローム未満、より好ましくは約30オングストローム未満、更に一層好ましくは約15オングストローム未満、最も好ましくは約10オングストローム未満であることが好ましい。Ag又は金属層より下の様々な層の処理設定値は、堆積処理設定値又は方法を変えることにより調整することができることが理想的である。これが一実施形態において実施可能でない場合には、層をイオンビーム技術により平滑化して必要とされる表面粗度を達成することができる。
【0064】
銀層の隣に設置する材料の選択に関して更に別の考慮が為された。光学的に滑らかな境界面でさえも表面プラズモンとして公知である境界面状態が存在する。表面プラズモンは、通常の層としての役割を果たし、スタックの反射特性に実質的には影響を及ぼさないが、透過性強度に劇的に影響を及ぼす。プラズモンの周波数又はピーク吸収は、隣接材料の誘電体機能の関数であり、銀層のプラズマ周波数の関数である。従って、薄膜モデルで見られる見掛けの特性に関わらず、適切な材料の選択により利益が得られた。銀層のプラズマ周波数は、表面プラズモンの周波数がコーティング内でかなり吸収が発生しないように選択した誘電率を有する銀層に隣接して位置する層と共にできるだけ高いものであることが理想的である。
【0065】
一部の用途においては、問題のない色、反射率、及び低いシート抵抗を維持しながら、エレクトロクロミックミラー又は窓内での低透過率化が望まれている。一例として、反射体に銀のような金属を利用すると、ミラーの反射率を下げて市場要件を満たすようにIMIコーティングの透過率を修正することができる。上述の場合では、材料をIMIスタックに導入して表面プラズモン層を作成すれば、結果として、可視域内での吸収が制御される。このようにして、他の区域で好ましい特性を維持しながら、IMIコーティングの透過率を調整する。銀層に隣接して障壁又はシード層を設置するなどの他の手段を利用することができる。従って、銀に隣接した薄肉金属層で低透過率値化になり、この金属層を用いて透過色を調整する助けにすることができる。
【0066】
IMI形式コーティングの透過率を増大させるために他の手段も利用可能である。上述のように、銀又は金属層の屈折率は、高い透過率価値を達成するのに極めて重要である。コーティングの堆積後の焼鈍しは、透過率を増大させる別の手段である。所定の期間にわたって高温でサンプルを加熱することにより、同時にコーティングのシート抵抗を低減しながらコーティングの透過率を増大させることができる。時間と温度の考察を5層IMIスタックに行った。スタックは、ガラス/IZO/AZO/Ag/AZO/IZOから成るものであったが、IZOは、約1パーセントと99パーセントの間の百分率の亜鉛を有するインジウム亜鉛酸化物であり、かつAZOは、アルミニウムドープ酸化亜鉛であり、アルミニウムのドープレベルは、約0.25%と10%の間にある。AZO層は、厚みがほぼ50オングストロームであり、一方、銀の厚みは、厚み約80オングストロームであり、IZO層は、ほぼ440オングストロームであった。3つの異なる温度で、かつ様々な時間にわたってスタックを加熱した。図7は、加熱条件による透過率の変化の結果を例示し、一方、図8は、同じ加熱条件に関するシート抵抗の変化を例示している。例示するように、堆積後の熱処理法で改良型IMIスタックを作り出す。言うまでもなく、他の金属を銀の変りに使用することができ、好ましい金属は、適切な入射適合が発生することを可能にするために低い屈折率を有するべきである。好ましい金属としては、銀、金、銅、アルミニウム亜鉛、マグネシウム、ベリリウム、カドミウム、ジルコニウム、及びバナジウムがある。コーティングは、約150℃及び450℃の間で、より好ましくは200℃と400℃の間で、最も好ましくは250℃と350℃の間で加熱することが好ましい。加熱時間は、5分と40分の間、より好ましくは5分と20分の間、最も好ましくは10分と20分の間であることが好ましい。
【0067】
エレクトロクロミック窓又はミラーの色は、重要な美観上の特性であり、色の中性が多くの用途で好まれている。例えば、現代建築の窓は、高い「演色指数」(CRI)を有するように設計されており、事物の色は、透過物体を通して見ても変らず、100の演色指数が、完全な状況であり、80を超える値は、合格値であり、90を超える値が好ましく、95を超える値が更に好ましい。演色指数は、以下の参考文献、すなわち、「CIE公開13.3、光源の演色性を測定かつ指定する方法」、CIE、1995年で定められている。ミラーの色は、ミラーが暗色化状態に遷移した時に変る。ミラーが完全に暗色化状態である時、観察される色及び反射率は、本質的にガラスの上面の第1及び第2の表面によるものである。各々、本発明と共に本出願人に譲渡され、かつ本明細書において引用により組み込まれている、2004年11月9日に付与された「自己洗浄型親水性コーティングを有するエレクトロクロミックミラー」という名称の米国特許第6、816、297号、及び2000年2月1日に付与された「予め選択した色を生成することができるエレクトロクロミック媒体」という名称の米国特許第6、020、987号では、ガラス及び流体色の第1の表面上のコーティングが明るい状態(非暗色化状態)から完全に暗い状態までの色の出現にどのように影響を及ぼすかが詳述されている。
【0068】
ミラーが、観察者に到達する第3の表面又は第4の表面上の反射体からの光なしで完全に暗色化された状態にある時、ミラーの外観は、第1の基体の第1及び第2の表面からの光の組合せによるものである。第1の表面上のコーティングなしで、あらゆる色が第2の表面上の透明電極による薄膜干渉効果によるものである非被覆ガラスの境界面からの約4%の反射率が得られる。透明導電酸化物の色は、主として層の厚みによるものである。TCOの厚みが増大する時に、色は、予測可能に変る。色は、TCOより上方又は下方に付加的な層を加えることにより、更に変えることができる。先に参照した特許では、TCO及び他のコーティングの色を最小にする方法を教示されている。暗い状態のミラーの反射率は、TCOの厚み、及び他の層がコーティングスタック内に存在するか否かによっても影響を受ける。ITO又は他のTCOの吸収がかなり低いことの結果として、ミラーの明るい状態では、層内の厚み変化による色に変化は殆どない。同様に、窓においては、ITOは、実質的に透過色の一因ではないし、ITOを調整することによる色調整もオプションにはならない。
【0069】
エレクトロクロミックミラーの反射性金属層の固有の色に影響を及ぼさないためには、IMI透明電極は、80をよりも大きく、好ましくは90をよりも大きく、最も好ましくは95を超える透過演色指数を有するべきである。窓とは異なり、ミラーに衝突する光は、2回、すなわち、1回目は光が反射体に接近する時、2回目は光が反射体から反射した後にコーティングを通過すべきである。IMI被覆されたガラスの演色指数が低すぎる場合、反射体の色が変る。多くのエレクトロクロミックミラー用途においては、ミラーは、かなり中立でなければならない。低い色純度レベルが好ましく、それによって画像の色は、実質的にミラーにより変ったりしない。注意点として、全てのIMIスタックが固有に十分に高い演色指数を有するというわけではない。誘電体層の屈折率及び全ての層の厚みが協働して最終的な透過色が得られ、色は、層を変えると変わる。多くの場合、問題のない透過色に対する必要性が、最大透過率に対する必要性と対立しており、高い透過率のための最適化により、透過スペクトルが着色透過率に至る中立からずれてしまう。具体的には、a*及びb*に関して説明しているように、負のa*は、緑色光に対する人間の目の偏った反応のために比較的高い透過率コーティングで得られる。正のa*を得るためには、大部分の用途において好ましくない同じ平均反射率レベルの低い方のキャップYを維持すべきである。高透過率の用途に対して負のa*を有することの結果として、色の大きな違いは、b*のシフトで予想されるシフトである。従って、色は、黄色の偏りと青の偏りの間でずれる。その結果として、IMIスタックは、色がb*の特定の範囲外にずれないように適切に設計する。好ましくは、反射体の色ずれは、約10C*単位未満であり、ここで、C*=sqrt[sqr(a*)+sqr(b*)]であり、より好ましくは約5未満、最も好ましくは約2.5未満である。代替的に、好ましくは、反射体の色ずれは、約10b*単位未満、より好ましくは約5b*単位未満であり、最も好ましくは約2.5b*単位未満である。多くの用途において、反射体は、好ましくない色の偏りを示し、従って、設計者は、目標とする用途に向けて特定の反射体を廃棄せざるを得ない。IMIコーティングの透過色を調整する新しい機能を用いて、ミラーの最終的な色は、反射体で不適切さを補償するためにIMIコーティングの色を調整することにより問題のないものにすることができる。このようにして、反射体の問題のない材料の範囲を広げており、これは、最終的なミラーアセンブリに他の利益をもたらすことができる。例えば、様々な反射体に関する共通の問題は、黄色の偏りであり、従って、最終的なミラーアセンブリでは、結果として画像が黄色の外観になる。しかし、最終的なミラーの色は、IMIコーティングを変えることにより青くすることができ、IMIコーティングは、優先的な青い透過色が得られるように設計されており、従って、それによって比較的より黄色が少ない色が透過されるであろう。青のずれ量は、IMIを通る青色光及び黄色光の相対透過率に基づいてものであり、b*明度により近似させることができる。好ましくは、IMIコーティングにより反射体の色補正は、約2.5C*単位よりも大きく、より好ましくは約5よりも大きく、最も好ましくは約10を超える。代替的に、好ましくは、反射体の色ずれは、約2.5b*単位を上回り、より好ましくは約5b*単位を上回り、最も好ましくは約10b*単位を超える。
【0070】
反射する色は、上述のように、エレクトロクロミックミラー用途にも極めて重要である。暗色化された状態では、観察者が見る色は、第2の表面上の透明電極の色により支配され、層の厚み及び屈折率は、製品の最終的な色に影響を及ぼす。層の厚みに加えて、色は、異なる波長帯域で吸収を有する誘電体を選択することにより調整することができる。一般的に、共通の誘電体は、スペクトルの青い部分に吸収を有し、一方、可視スペクトルの他の帯域に吸収を有することができる誘電体もある。吸収特性に基づいて誘電材料を選択してIMIスタック及び最終的なミラーの望ましい最終的な色特性が得られるようにすることができる。色は、スタック内に異なる屈折率を有する誘電材料があれば調整することができる。誘電体層の屈折率の変化を用いて誘電体層に対して固定屈折率だけから成るIMIコーティングでは達成不可能な反射率、透過率、及び色の異なる組合せを達成しやすくすることができる。
【0071】
中間の暗色化された状態の色も、エレクトロクロミックミラーにおいては重要であることが多い。ミラーが暗色化する時の色の変化を色偏位と呼ぶ。ミラーを暗色化の中間状態に設定することが多く、反射色は、流体の色、反射体の色、及び透明電極の色の組合せである。IMIコーティングにより、中間の暗色化状態問題のない色が得られるべきである。暗い状態での反射色は、約35未満、好ましくは約20未満、より好ましくは約10未満、最も好ましくは約5未満のC*値を有することが好ましい。
【0072】
多くの用途において、斜めの視角での色は、極めて重要である。特に、窓用途に対しては、全て又は大部分の視角で気持ちの良好な色を有することが必要であることが多い。この目標を達成するために特定の層、厚み、及び屈折率が必要である。一部のIMIスタックには、他のIMIスタックよりも角度による色の変化が発生しやすい。銀層の厚み及び誘電体層の厚みは、エレクトロクロミック要素で問題のない性能に重要であることを示している。銀層の厚みは、好ましくは、約50オングストロームから500オングストロームの範囲、より好ましくは、約75オングストロームから約250オングストロームの範囲、最も好ましくは約100オングストロームから150オングストロームの範囲であるべきである。上下の誘電体層の全厚は、約100オングストロームと700オングストロームの間で変わる。特定の色目的が必要である場合には、これよりも厚い層を時には用いることができる。金属層上下の誘電体層の厚みは、以下で説明するような特定の化学的要件、物理的要件や環境耐久性要件を達成するようにスタックに追加することができる多くの異なる誘電材料間で分割することができる。好ましくは、反射する色は、垂直入射から約20C*単位未満、より好ましくは10未満、最も好ましくは5未満の45度までずれる。
【0073】
多くの場合、単一の金属層だけを含むIMIスタックによって全ての美観上の要件、電気的要件、及び環境要件を満たすことは困難である。これは、複数の金属層から成るIMIスタックを設計することにより克服される。2つ又はそれよりも多くの金属層でスタックを製造することにより、透過率及び反射色及び強度の組合せが多いほど、可能になる自由度が多くなる。複数の金属層も、エレクトロクロミック窓又はミラーに対して切り換え時間の高速化になるIMIコーティングに向けて低シート抵抗化のためのものである。一般的に、2つの金属層スタックは、比較的薄い基部層、金属層、比較的厚い中心部誘電体層、第2の金属層、及び比較的薄い最上誘電体層を有する。誘電体層の厚みは、他の誘電体層に対するものである。金属層は、一般的に、誘電体層より薄い。誘電体層は、異なる材料を含んで、単一の金属IMIコーティングに対して説明してきたものに類似したある一定の設計目標を達成することができる。誘電材料、金属、及び厚みの選択は、特定の設計目標に基づいている。例えば、高透過率化が極めて重要である場合、金属層は、薄くする傾向があり、一方、低シート抵抗化が極めて重要である設計目標である場合、金属層は、肉厚化になると考えられる。IMIコーティングの多重金属層の使用は、特定のシート抵抗レベルで高透過率化を達成する一助にすることができることが多い。更に、複数の金属層では、単一の金属IMIスタックに対して斜めの視角で均一な色を得ることができる。
【0074】
当業技術で公知のように、紫外線シールド及び太陽光シールドは、エレクトロクロミック窓の1つの要件である。一般的に、これらの窓では、複雑な一連のガラス板及びコーティングを使用して適切なシールドを達成する。しかし、必要な遮蔽特性を示すエレクトロクロミック窓を設計時の従来の試みでは、IMIコーティングの使用は開示されていない。代替的に、過去の試みでは、エレクトロクロミック窓に積層するガラス上の更に別のコーティングの利用が教示されている。これらの付加的な層は、機能的であるが、必然的に、関連窓アセンブリの重量増及びコスト増になる。
【0075】
UV遮蔽又は阻止は、材料の選択の組合せ及びスタックの光学設計を通じてIMI透明電極において達成することができる。例えば、UV吸収特性を示す誘電材料を選択することができる。具体的には、TiO2、CeO2、及び酸化亜鉛が有効な紫外線吸収剤である。これらの材料は、一般的に光帯域間隙によりUV吸収を示す。これらの材料による紫外線の吸収は、コーティングの光学設計により増大させることができる。例えば、IMIスタックは、紫外線の一部を反射することができ、全体的なUV透過率が低減される。
【0076】
IMIスタック139の金属層は、UV阻止特性を有することができる。例えば、銀は、より低いエネルギバンドからのdバンドへの電子の光学遷移により、UVスペクトル内への吸収を有する。これらのいわゆるdバンド遷移により、結果として紫外線の相当な吸収が発生する。銀の場合、dバンド遷移は、スペクトルのUV部内で比較的高いエネルギで発生する。金及び銅のような他の金属は、より低いエネルギ状態でのdバンド遷移を有する。これらの金属の場合、dバンド吸収により、結果として金属がかなり着色される。しかし、これらの金属は、銀より良好な阻止を示す。銀又は他の金属の特性は、特に、吸収が原子吸光によるものであり、結晶構造関連の吸収ではない場合に、高UV吸収化を示す金属との合金により増大させことができる。好ましくは、UV透過率は、約75%未満、より好ましくは50%未満、更に一層好ましくは25%未満、最も好ましくは15%未満である。
【0077】
金属及び他の導電体は、赤外線及び太陽輻射を反射する。反射光の強度は、材料の導電率及び層の厚みと比例している。層又はコーティングの厚みを増大させる時に、反射率は、1次オーダーでは、材料の導電性に依存する最大値に漸近的に接近する。材料は、導電性が高いほど赤外線反射率が高い。更に、材料の導電性を増大させる時に、反射率は、波長が短いほど増大する。上述のように、導電率の起源は、コーティングの透過率及び反射率に影響を及ぼす。材料の導電性は、電子密度及び電子移動度の組合せである。これらの属性の各々は、赤外線反射率に及ぼす影響が異なり、赤外線反射率は、導電率が高電子移動度よりもむしろ高電子密度による時に最大化される。
【0078】
日射透過率及び日射反射率は、IMIコーティングの光学設計により調整することができる。例えば、多金属層スタックは、単一金属層スタックより太陽光の高い阻止率を有することができる。エレクトロクロミック窓の太陽光阻止特性は、付加的な層が第1及び第4の表面に増設された場合に更に修正することができる。これらの更に別のコーティングにより、低e利点を得ることができ、及び/又は更に別の太陽光遮蔽特性を達成することができる。更に、エレクトロクロミック窓は、別の1つ又は複数のガラス板と組み合わせて絶縁ガラス構成とすることができる。更に別のガラス板を層非コーティング処理又は層コーティング処理すると、特定のUV又は太陽光阻止特性を達成することができる。太陽熱利得(SHGC)を最小にするために、エレクトロクロミック窓が外側に対する第1の「lite」であり、低eコーティングが第4の表面上に設けられるようにエレクトロクロミック窓を設置すべきである。美観上又は機能性上で必要なガラス板の表面に付加的な層を加えることができる。一般的に、エレクトロクロミック窓のIMI層の使用により、透明導電酸化物と比較して、所定のオーム/平方に対して実質的により多くの太陽輻射が阻止される。更に、IMI層は、コストの大幅な軽減でこれを達成することができる。明るい状態においては、SHGCは、好ましくは約0.7未満、より好ましくは約0.5未満、最も好ましくは0.3未満である。暗い状態においては、SHGCは、約0.5未満、より好ましくは約0.3未満、最も好ましくは約0.15未満である。
【0079】
従来、IMIコーティングの誘電体層は、2つの異なるカテゴリに分類される。建築のための窓用途においては、誘電体層は、一般的に非導電性であり、従来的に、透明導電酸化物は、材料のコスト高及び一般的にこれらの材料に関連した製造上の複雑さのために回避されている。多くの場合に、誘電体層に対して最適の光透過率及び導電率を達成するために高温又は精巧に制御された処理が必要である。IMIコーティングを透明電極として使用するような場合、誘電体層は、通常、透明導電酸化物であり、透明導電酸化物は、塗面に垂直に導電を可能にするために必要である。従来の手法では、エレクトロクロミック用途に向けてIMIコーティングで使用する実施可能な材料は厳しく制限されている。
【0080】
透明電極の目的は、特定の用途に十分な透明度を達成しながらエレクトロクロミックセルに電気を供給することである。しかし、異なる関連層の導電率を最適化することにより更に別の利点を得ることができる。エレクトロクロミックセルは、第1の抵抗器を高導電率金属層として群の並列の抵抗器として処理することができる。この層の高い導電率により、セルの縁部近くのコーティングの平面に垂直に進むのではなくより多くの電気が関連部品の中心部に到着することができ、こんどは、それによってその部分がより均一に暗色化する。透明電極としてTCOを使用する時に一般的に当て嵌まるように、金属コーティングに垂直な方向には、感知可能な電圧降下がないと想定している。
【0081】
IMIスタックの場合のような付加的な層を金属層の上部に加える時には、エレクトロクロミックセル内で付加的な利点が得られるように調整することができる付加的な設計基準が必要である。金属層上で導電率が比較的高いTCOを設置することにより、金属層に垂直方向には感知可能な電圧降下は導入されない。しかし、TCO又は他の誘電体層の導電率が比較的低い場合、金属表面に垂直方向に付加的な電圧降下が発生し、従って、電流の流れが制限される。この付加的な電圧降下は、可視領域の中心部と比較して部分の縁部では表面に垂直方向に電圧降下を平滑化するものである。定量的利点は、異なる材料のセル間隔、流体物性、セルサイズ、及び相対的な導電率のような多くの変数の関数である。正味効果として、ある一定の用途においては、高い方の金属層とエレクトロクロミック媒体の間で導電率が比較的低い層を導入する方が、暗色化を均一にすることができる。
【0082】
必要な導電率及び導電率の特定のレベルの位置の問題は、多重金属層で形成するIMIコーティングには重要である。多重金属IMIコーティングの経費は、ITOのような高コスト材料がIMIスタックの全ての部分で必要であるというわけではない場合には劇的に軽減される。例えば、2銀層スタックでは、中心部誘電体層は、多くの場合に、厚み700オングストローム又はそれよりも大きいものまでであり、上部及び底部の誘電体は、350オングストロームを超える可能性があり、スタックのITOの総量は、約1400オングストロームであり、かつ従って製品に相当な経費が導入される。導電率の小さい材料でITOの一部又は全てを置換することにより、コーティングの全体的な実行性は損なわれず、経費は劇的に低減される。
【0083】
エレクトロクロミック媒体と直接に接触する材料は、エレクトロクロミック要素の実行性に極めて重要である。例えば、一部の材料はシールの中の材料又は流体と反応して全て又は一部を不動態化し、それによってエレクトロクロミック要素の暗色化特性の差が生じる。不動態化は、IMIコーティングの上部層がある一定の望ましい特性を有することを保証することにより最小にすることができる。1つのこのような特性は、電気を伝える層の機能である。約10MOhsの導電率を有する上部層を有することにより、不動態化の確率は、実質的に低減される。通常は導電率が低い層は、ドープ又は化学量論組成を通して組成を変えて不動態化を低減するのに十分なレベルの導電率を導入することにより、エレクトロクロミック媒体の隣の上部層として実施可能にすることができる。他の化学的手段を使用して、層の表面の化学的性質を変えることにより非適合材料を実施可能にすることができる。化学配位子又は構成成分の適切な適用により、表面特性を十分に変えて不動態化の可能性を最小にすることができる。
【0084】
金属層の下の誘電体層は、TCOとすることができるが、必要なことではない。IMIスタックの全体的な導電率は、金属層の実質的に高い導電率のために、基部層がTCOでない場合は実質的に改善しない。金属層の導電率増大のための誘電体層のための他の好ましい材料としては、ITO、IZO、AZO、ZnO、TiOx、CeOx、SnO2、SiN、SiO2、Zn、NiOx、CrOx、NbOx、及びZrOxがある。材料は、純粋、化学量論的、部分的に化学量論的とすることができ、又は互いにドープするか又は混合させて中間特性を達成することができる。好ましくは、透過率を最適化すべきである場合、感知可能な吸収を示す材料は回避すべきである。吸収材は、材料が比較的高い屈折率を有し、層内の吸収が薄膜干渉光学器械の反射率及び透過率特性を増大させ、従って、吸収なしでは実際的に達成不可能である属性が得られる場合は好ましいと考えられる。付加的な層で覆われた時に価値可能に暗色化しないような、エレクトロクロミック層として使用することがある他の導電酸化物は、IMIスタックの一部として機能することも可能である。これらの層は、たとえ層が電界印加で若干暗色化したとしても、問題のないものであろうし、かつ覆う必要はないであろう。WO3、NiO、又はIrO2のような材料が、このカテゴリに該当すると考えられる。
【0085】
金属層のすぐ上、及び更に重要なことに金属層より下方の層は、IMIスタックの全体的特性に極めて重要である。上述のような、特定の材料は、透過率に影響を与え、かつスタックの電気的性質を有することができる。金属層に隣接した層も、誘電体層に金属層の粘着力に影響を及ぼす。金属層より上方の障壁層も、その後の誘電体層の堆積処理の影響から金属層を保護することで役割を果たすことができる。上部障壁層は、その後の堆積段階により変ることが多いので、犠牲的層と考えられることが多い。
【0086】
適正な基部層又は上部層を用いなければ、IMIスタックの構造的一体性は損なわれる場合がある。IMIコーティングを基体(例えば、ガラス)とエレクトロクロミック要素のエポキシ(又は、他の密封方法)シーラントの間に設置する場合、良好な構造的一体性を有するIMIスタックが必要であろう。IMIスタックは、従って、ガラス及びエポキシに対する良好な粘着力を有し、また、良好な内部粘着力を有するべきである。これらの区域のいずれかの間の粘着力が損なわれた場合、コーティングは、この用途で効果がない場合がある。IMIコーティング内の一般的な欠陥地点は、金属層と隣接材料の間にあることが多い。この区域が十分な粘着力を持たない場合、エレクトロクロミック要素は突発欠陥が発生して機能しなくなる場合がある。問題のない粘着力を促進する障壁層として良好に機能材料としては、Ru、Ni、NiCr、NiCrOx、ZnO(又はドープZnO)、Cu、Ti、Nb、NbOx、Ni、Pd、及びPtがある。これらの層の厚みを調整して必要な保護特性及び粘着力特性を達成することができる。一般的に、この機能で使用する金属層の厚みは、厚みが薄い側の数オングストロームと、20オングストロームを超えるか又は40オングストロームとの間で変る。好ましくは、金属障壁層の厚みは、約1オングストロームと40オングストロームの間、より好ましくは約2オングストロームと20オングストロームの間、最も好ましくは約3オングストロームと10オングストロームの間である。より低い吸収を有する酸化物、窒化物、又は他の材料は、対応する金属層よりも実質的に厚くなる可能性があり、厚みは、好ましくは約150オングストロームに等しいか又はそれ未満、より好ましくは約100オングストロームに等しいか又はそれ未満、最も好ましくは約50オングストロームに等しいか又はそれ未満である。
【0087】
金属層の隣の層も、電気的切り換え又は「循環」中に金属層の性能に影響を及ぼす場合がある。金属が破壊するか又は溶液化することになる電位は、エレクトロクロミックセルの特性の関数である。IMIスタックの金属に対する隣接材料は、コーティングの損傷が発生する前に、最大達成可能電位差に影響を与える。典型的には、隣接材料としての貴金属は、銀のような金属が高印加切り換え電位で存続するのを助けることになり、好ましくは、Au、Ru、Rh、Pd、Cd、Cu、Ni、Pt、及びIrを含む。障壁材料も、破損又はメッキ剥離が電気的循環中に発生する電位を変える可能性がある。好ましくは、隣接材料又は電気安定化層は、銀、又はAgの実施可能な置換として本明細書で説明する別の金属の実施可能な使用可能印加電位を約0.05ボルトだけ増大させるか、より好ましくは、使用可能電位を約0.10ボルトだけ、更に一層好ましくは約0.20ボルトだけ、更に最も好ましくは約0.30ボルトを上回って増大させることになる。隣接材料を適切に選択すれば、セルに対する実施可能な印加電位が増大する。IMIスタックに必要な実施可能な電位は、IMIを陰極又は陽極として使用した場合に変ることになる。
【0088】
IMIコーティングを更に安定させて高印加電位を耐え抜くために使用することができる別の手段は、それ自体が高印加電位に耐え抜くことができる金属との金属層の合金を含む。例えば、金を銀とドープ又は合金にして銀が高印加電位を耐え抜くことを可能にすることができる。有用であると考えられる他の材料としては、他の貴金属があり、好ましくは、Pd、Si、Ge、Mg、Au、optisils、Ti、又はCuを含む。
【0089】
高印加電圧時に存続することに加えて、IMIコーティングは、損傷が時間又は電気的循環と共に成長することなく、かき傷又は他の損傷に耐え抜く必要がある。これは、欠陥を「癒す」ことになる金属に添加物を含めることにより達成することができる。例えば、銀金属層内でのインジウム又はチタンドープは、結晶粒界又は銀層境界面への移動を引き起こして銀が凝集したり、又は更に損傷するのを防止することができる。これらの治癒機能は、本来材料又は境界面の結晶粒界に移動する元素又は化合物で銀をドープすることにより得ることができる。
【0090】
IMIスタック、特に、銀ベースのIMIスタックの安定性は、金属層の特性に依存する。一般的に、加速耐候試験で典型的な環境的に厳しい状況では、コーティングは、金属層で破損するか又は劣化する。IMIスタックは、ピンホールのないコーティングが得られることが理想的であるが、生産において完全なコーティングを製造することは殆ど不可能である。その結果として、これらが予想使用年数中に破損しないことになるようにIMIコーティングを安定させるか又は保護するために、他の手段が必要である。
【0091】
銀ベースのIMIコーティングの一般的な劣化機構は、銀層が再結晶又は凝集して大きな低エネルギ構造体を形成するというものである。この凝集過程は、銀層が低エネルギ状態になる熱力学的推進力により引き起こされる。劣化機構は、全体的な劣化機構中の中間段階の1つ又はそれよりも多くを排除することによって過程を妨害することにより遅くするか又は停止させることができる。例えば、銀の層の初期のエネルギ状態は、集塊が起こる可能性があるか否かに関して、又は形成速度の極めて重要な要素である。銀層が堆積するか又は後処理により堆積後に安定した熱力学的状態になった場合、IMIは、銀層に関する実質的なエネルギ推進力がないために、その後に外的刺激に露出された時に凝集に抗する。銀は、いくつかの異なる手段により低いエネルギ状態にすることができる。第1の手段は、堆積処理中に銀が本来低いエネルギ状態になるように、適切なスタックのための障壁材料又は基部層材料を選択することである。基部層としての酸化亜鉛は、この作業に特によく適している。Sbなどの他の材料も利点を有しており、かつ好ましいものである。
【0092】
第2の手段は、イオンビーム支援堆積の使用であり、一方、第3の手段は、プラズモン、擬安定などのオプションを含む。基部層及び/又はその後の層の堆積の前の金属層の上部の処理によっても、表面を修正し、従って、改善して核生成や粘着力を促進させることができる。化学手段を使用して、より低いエネルギ状態に銀層を堆積させることを可能にするか又は銀層を障壁又は基部層と結合させ、従って、銀層の凝集機能を制限することができる。好ましい金属障壁としては、NiCr及び他のNi合金及び貴金属がある。二硫化物のような硫黄含有化合物による誘電体層又は金属障壁又は他の隣接材料の前処理により、銀金属層の核生成又は基部層との結合を改善することができる。処理から生じる核生成の強化及び結合の改善により、銀層又は金属層の安定性を実質的に改善し、従って、使用可能な使用年数を延長させることができる。他の手段を用いて、IMIスタック内の適切な位置に少量の硫黄を導入することができる。例えば、少量の硫黄含有ガス(H2S又はSO2など)を堆積処理に追加することができる。更に、所定のターゲットを適切なレベルの硫黄で意図的にドープすることができる。この手法には、硫黄の量を容易に制御することを可能にしながら、堆積チャンバに非常に反応性のガスを導入しないという付加的な利点がある。上述の酸化亜鉛障壁層は、少量の硫黄でドープすると、障壁層との銀層の粘着力の強化を助けることができる。
【0093】
部品の使用寿命を改善することに加えて、これらの手段は、IMIコーティングを含む層のスタック内の粘着も助ける。スタック内の粘着を改善することにより、エポキシシーラント又は他の類似したストレッサにより印加される様々な力からスタックを保護するための精巧なマスキングの必要がなく、より多くの用途でスタックを使用することができる。
【0094】
銀又は金属層の安定性は、ドーパントの金属層への添加により改善することができる。銀の場合、銀原子の拡散は、表面粒界に沿うと、バルク金属微結晶内のほぼ100倍の速度である。従って、凝集の主な経路は、表面又は粒界に沿った銀原子拡散のために発生することが予想される。銀が層間に挟み込まれた時、拡散が表面にわたって発生する見込みは低減されることになる。適切な材料の選択又は金属層の隣の隣接材料への化学処理により、表面関連の拡散及び凝集の見込みが更に低減される。結晶粒界が、次に、凝集する銀層のための有力な経路になる。粒界に沿った拡散は、銀杢内での可溶性で限られ、かつ結晶粒界に移住する元素又は化合物で銀をドープすることにより妨げることができる。これらのドーパントは、粒界に沿った銀原子の拡散を制限するものであり、Pd、Cu、Zn又はTiを含むことが好ましい。
【0095】
銀及び他の金属の凝集に影響を及ぼす別の要素は、隣接金属への金属の粘着力である。好ましい金属及び材料は上述したが、特定の用途では、これらの前に問題のなかった材料が問題のあるものになる場合がある。Na、Mg、Caなど特定の元素又はガラス基体にある他の成分が、銀又は他の金属層と隣接材料の間で粘着力に関する問題を引き起こすことがある。これらの元素は、銀層の粘着力に影響を及ぼし、従って、凝集に至る銀層を防止するか又は安定させるリンクのうちの1つを弱める。これらの元素は、多くの場合に高温及び高湿度条件で又は被覆ガラスの熱処理中に基体から拡散することが多く、また、通常の作動状況での方が緩やかに分散することがあり、従って、いわゆる潜在欠陥が発生する。
【0096】
基体から拡散することができるNaの量は、コーティングスタック内の基本的な水素又は陽子の存在により影響を受ける。ガラス中のナトリウムは、陽イオンとして存在し、電荷的中性を維持するために、対イオンは、ガラスマトリックス内に移動すべきである。陽子は、この機能で作用する。従って、水素がコーティング内で最小にされることが極めて重要である。これは、関連の処理機器内で水素含有量又は含水率を最小にするように堆積処理を操作することにより達成することができる。水は、水素を解放するためにプラズマで容易に分解されるという事実のために、水素と共に水を最小にすることが極めて重要である。水及び水素は、処理ポンプの適切な選択及び極低温冷凍機のような水抜き装置の使用により最小にすることができる。慎重な漏れ検出及び排除も重要である。
【0097】
IMIコーティングの破損に及ぼすナトリウム及び他のガラスの成分の影響を最小にする別の方法には、障壁層の使用がある。一般的に、障壁層は、主にシリカで構成され、屈折率の密接な適合のためにガラス基体上へ直接に堆積される。ドーパントをシリカ障壁層に添加して、基本的な移動の阻止を容易にしやすくすることが多い。燐ドープシリカ及び燐酸アルミニウムのような材料を使用することができる。
【0098】
障壁層が事実上非結晶であることが重要である。結晶層の方が、多数の粒界のために、一般的に、小さな要素の移動を妨害するのに効率的でない。更に、障壁層は、ガラス上へ直接に堆積したり、また、機能層又は光学層としてIMIスタックに一体化させて同時に障壁層の役割を果たす必要はない。シリコン窒化物及び亜鉛錫酸塩は、特に、実質的な障壁層材料である。元素の拡散を妨げるシリコン窒化物の効率は、シリコン窒化物を若干シリコンが豊富なものにすることによって層のナトリウム阻止特性を改善することにより改善することができる。
【0099】
金属より下方で非晶質層を用いる利点を金属より上方の層に適用することができる。上部誘電体は、層の一部又は全体が非晶質層から成るように設計することができる。非晶質層は、IMIスタックまでの環境湿度又は他の化学材料の拡散を制限し、従って、IMIスタックの使用年数が延びている。
【0100】
材料内の応力により金属層に掛かる異なる形式の力が発生するので、誘電体及び/又は金属又は銀層内の応力レベルも、IMIスタックの使用寿命に影響を及ぼす。例えば、銀層より上方の層が圧縮応力を受けている場合、圧縮応力により垂直方位の力が金属に掛かる。この力は、次に、金属が凝集するためのあらゆる固有の推進力を加速するか、又は強化する場合がある。好ましい状態は、応力の観点から、金属及び誘電体が類似の応力状態、すなわち、両方とも緊張状態又は両方とも圧縮状態である時である。応力が金属に掛ける駆動力のマグニチュードは、応力がIMIスタックの使用寿命に関してどのくらい大きな問題になるかを示すものである。誘電体層の絶対応力の好ましいレベルは、3GPa未満であり、より好ましくは1.5GPa未満、最も好ましくは0.5GPa未満である。材料内の応力は、通常、材料特性の関数であるが、層を堆積する使用する処理パラメータにも依存する。MSVD技術を用いて層を堆積させる場合、圧力は、コーティング内の応力レベルを調整する重要な変数である。応力レベルが高いと引張応力状態が促進され、圧力が低いと圧縮応力が促進される。スパッタ原子とスパッタガス原子質量の比も、コーティング内の最終的応力において役目を果たす。スパッタガス内の質量が高いほど、引張応力が促進され、一方、質量が小さいほど圧縮応力が促進される。ドーパント又は低レベル添加物を用いて層内の応力レベルを調整しやすくすることができる。層の1つ又はそれよりも多くを異なるスパッタリングガス又は圧力で堆積させて必要な応力レベルを達成することは有利である。イオンビーム支援堆積又はシステムにエネルギを供給する他の手段を用いて、異なる層における応力レベルを調整しやすくすることができる。
【0101】
本質的に中立の応力プロフィールを有する構成IMIコーティングには、更に、ガラス又は基体に歪みが発生しないという付加的な利点がある。堆積処理中に固有のものであるか又は熱膨張率の違いによるコーティングの内部応力により、基体に力が掛かり、従って、基体内に反り又は撓みが発生する。ミラー又は窓用途においては、平坦度及び均一なセル間隔が製品の極めて重要な特徴である場合、コーティング内の応力による基体の撓みは、非常に問題になる可能性がある。中立化された応力を有するIMIコーティングは、反りの問題を最小にする一助になり、従って、製品全体が優れたものになる。基体が軽量化のために薄くされる時に、所定の応力レベルに対する撓み量は増加する。従って、この問題は、これらの状況では悪化し、応力中立製品に対する必要性の方が重要である。IMIの応力は、IMIコーティングを付加したガラスの曲率半径の変化が3000mmよりも大きく、好ましくは5000mmよりも大きく、最も好ましくは約10、000mmを超えるように制御すべきである。
【0102】
上述のように、IMIコーティングの特性は、熱処理で変わる場合がある。エポキシは、一般的に、最適エポキシプロフィールが得られる好ましい時間及び温度硬化プロフィールでガラスの2つの「lite」を共に密封してエレクトロクロミックセルを形成するのに使用する。ある一定の既存のプロフィールの族により、同等のエポキシ特性が得られる。従って、特定のプロフィールの選択は、経済的な側面、処理速度、又は他の実際的事柄のような他の基準ベースのことが多い。一般的に、TCOに基づく透明電極では、熱処理中には特性が実質的に変わらず、従って、エポキシを硬化させる特定の炉プロフィールを選択する理由にはならない。しかし、これらの熱的プロフィールを利用してIMIコーティングの特性を最適化することができる。例えば、シート抵抗は、最大2オームから3オームまで下げることができ、透過率は、時間温度プロフィールによっては1%から3%増大させることができる。このようにして、堆積特性を調整することにより必ずしも達成可能でない状態にIMI特性を改善する。この特性改善の理由は、金属中の電子の電子移動度の増加によるものであると予想される。上述のように、金属(銀)は、電子移動度が比較的大きい時の方が屈折率は低く、低屈折率化は、高光透過率化に寄与し、高電子移動度化も、次に、低シート抵抗化に寄与する。
【0103】
エポキシ硬化プロフィールを調整しても、エポキシ内又はエレクトロクロミックセルの他の成分内の制限のために、完全にはIMI特性を最適化することはできない場合、IMI被覆ガラスを異なる炉又は乾燥炉で前処理すると望ましい特性を達成することができる。IMIの熱処理は、応力レベルが低めであり、従って、ガラスを比較的平坦に保つという有用な特性を有することができる。最適のシート抵抗の増加及び透過率の減少は、周囲大気の関数であることが多い。一般的に、コーティングは、好ましいガスが使用しない場合の方が、早い時期に又は低い温度で破損する場合がある。好ましいガスは、IMIスタックで使用する誘電体層の関数であることが多い。一部の材料は、特に、異なるガスの拡散を妨げるのに有効である。シリコン窒化物、例えば、非晶質材料は、特にIMIスタック熱処理法中に酸素の拡散を妨げるのに有用である。環境耐久性を改善する上述の基部層及び障壁層も、熱硬化挙動をシフトするのに役割を果たす。
【0104】
一部の場合には、ガラスを加熱する方法を選択して硬化プロフィール挙動を変えることができる。例えば、ガラスを通過するがIMIコーティングと実質的に結合する赤外線波長を用いることができる。この方法でガラスを加熱することは、下から被覆ガラス「lite」を加熱することに似たものである。一般的に、熱対流炉又は従来的な赤外線炉においては、エレクトロクロミックセルは、外側から中に加熱される。上部及び底部のガラスの外面は、対流ガス及び/又は赤外線に露出される。赤外線は、ピークが約5ミクロンを超える波長である場合、ガラスの表面だけが加熱される。次に、ガラス及びエポキシは、表面から全体に導通により加熱される。コーティング面が、その部分で最後に熱を受ける部分である。より高温の赤外線素子を使用してその部分を加熱する時、全体的な赤外線は、約2.5ミクロンより短い波長である。ガラスが全く透明である時、放射線は、吸収されずにガラスを通過する。エネルギは、その固有の光学特性のためにIMIコーティングと結合し、従って、コーティング面の方が、実際に熱源により近い外面よりも速い速度で加熱し、それによってこの処理においてガラスの内部温度を下げるように硬化時間が短縮される。熱源がエポキシと直接に接触しているということから、エポキシの方が速く加熱される。
【0105】
IMIコーティングは、回転式被覆装置又は直列単体被覆装置のようなオンライン被覆装置を使用して付加することができる。これらの被覆装置形式により、堆積が行われた後に比較的すばやくコーティングを積層することができる。これらの方法の各々には、マスキングに対して異なるオプションがある。従って、これらの方法の方が、コーティングが空気に露出される時間の延長がないことから広範囲な材料を使用することを可能にする。従って、エレクトロクロミックセルのIMIスタックの密封は、多くの有害な環境ストレッサからIMIスタックを保護することができる。一部の場合には、最適以下の環境耐久性をもたらす所定の組の判断基準に対してIMIスタックが最適化される。上述のように、この状況に対処する1つの方法が、エポキシのボードでIMIコーティングをマスキングすることである。これは、問題を処理する実施可能な方法である。しかし、一部の用途は、エポキシのボードでIMIをマスキングすることを可能にしない場合がある。この場合、ポリマー被覆装置のような保護縁部コーティングを付加するが、保護縁部コーティングは、IMIコーティングを密封することができ、従って、環境中のあらゆる有害な化学材料との接触が防止される。
【0106】
他の状況では、広域被覆装置でIMIスタックを製造して、被覆装置がない生産ラインで後の時期に使用するためにガラスを保管することは有利であろう。IMIスタックをどのように設計すればこの種の製造シナリオに向けてスタックを最適化することができるかに対する方法を上述した。例えば、低粘性プラスチックシートのような仮設保護被膜材料又はPVAのような化学保護材を付加することができる。これらの材料は、あらゆる機械的処理後又は洗浄前に物理的に除去することができる。PVAのような水溶性化学保護層を使用する場合、仮設コーティングを除去するための手段として洗浄機自体を利用することができる。Zn金属のような他の仮設コーティングを用いることもできる。この場合、層を除去するために、洗浄機の最初の区間では弱酸が必要であろう。当業技術で公知のような他の処理も実施可能である。
【0107】
ある一定の電気化学ミラー用途では、ガラスの上部「lite」上に反射層を付加することによりエポキシシールを隠すことを組み込むことができる。このような用途において有用な方法及び材料は、2003年5月6日出願の「薄いベゼル被覆縁部を有するエレクトロクロミック装置」という名称の米国特許出願公開第2004/0032638号に開示されており、この特許は、本明細書において引用により組み込まれている。これらの装置内の透明電極としてのIMIコーティングの使用では、一部の重要な変更が導入されている。例えば、透明電極の下に反射金属層を堆積することは、一部の用途においてはコスト効率が高いものではない。これは、ITOのようなTCOを透明電極として使用するからである。これらの材料では、適切な電気的性質及び光学特性を得るために高い堆積温度が必要である。反射性金属層を有するガラスは、TCOの堆積の前に加熱すべきである。この反射性が高い金属がガラス縁部周りにあると、ガラスの加熱挙動を実質的に変え、従って、その部分に歪みが導入される可能性がある。
【0108】
この問題は、IMIスタックが透明電極として使用される場合は回避される。IMIコーティングでは、堆積処理中には高い堆積温度は必要ではない。次に、TCO層と関連すると思われる問題なしに、IMIコーティング前に金属層又は層を付加することができる。複数のマスクが可能な回転式被覆装置又は他の被覆装置を堆積に使用する場合、1つのマスクで1つ(又はそれよりも多く)の位置で金属層をガラスに付加することができ、次に、IMIを別のマスクでガラスの残りの上に付加することができる。必要に応じて、金属層は、次に、エポキシから内部にマスキングすることができ、同時に依然としてその部分の縁部に対して良好な電気的接触を維持する。
【0109】
実験
1回目の実験で、Ag層の隣の材料がブロー試験、蒸気使用寿命、及び最終的な部分の美観においてスタックの性能に影響を及ぼすことが分った。蒸気使用寿命は、シール、コーティング、又はこれらの材料(以下でより詳細に説明)の組合せの安定性を測定するための加速試験である。試験により、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)が粘着(29psi及びコーティング内でのリフトなし)に対して最適であり、一方、インジウム−酸化亜鉛(IZO)が蒸気使用寿命(35日)に対して最適であることが分った。2回目の実験は、これらの結果に基づいて構築するように設計したところ、蒸気使用寿命において妥協点に至ったが、1回目のより不満なブロー試験結果(コーティング内粘着力の欠如)に対する適合が達成された。ブロー試験は、シール、基体へのコーティングの粘着力、及びコーティング内粘着力(以下でより詳細に説明)を評価するための手段である。無充填EC要素は、ガラス内に穿孔された穴を有し、チャンバは、破損になるまで加圧される。破損時の圧力が、破損モードと共に記録された。2回目の実験から、スタックを最適化して、ミラー要素の反射率を79%に上げた。2回目の各部の室温での電気的循環運動でかき傷又はフィンガプリントが初期に存在する潜在欠陥が現れた。
【0110】
最大透過率及び最低限抵抗をIZO基部層及びAZO上部層で達成し、AZO/Ag/AZOスタックは最大コーティング内粘着力を達成し、かつブロー試験では破壊せず、Ag層のすぐ上にあるIZOは、粘着力不良であり、IZO上部層を有するスタックは、蒸気試験では安定性が良好であり、一方、AZO上部層を有するスタックは、蒸気試験では性能不良であり、IZO上部層による美観は、改善したことに注意されたい。
【0111】
1回目の実験では、銀をアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)及びインジウム−酸化亜鉛(IZO)と組み合わせて使用して評価のために3層IMIスタックを生成した。使用したAZOターゲットは、重量比2%のAI23を含むZnOであった。使用したIZOターゲットは、重量比15%のZnOを含むIn233であった。AZOは、ITOに類似した透明導電酸化物であるが導電率は若干低い。ITOと同様に、AZOでは、結晶性を最大化して最適の電気的性質ができるように、堆積中にかなりの基体温度が必要である。AZOは、Agとの格子整合という固有の特性を有する。それによってIZOより低いシート抵抗及びIZOより高い透過率化を有するIMIスタックになる。IZOは、これとは対照的に、非晶質であり、導電率の損失なく室温で堆積させることができる。IZOの非結晶性により、更に円滑性という利点が得られる。IZOは、ほぼ100%の亜鉛含有量からほぼ100%のインジウム含有量に変わることができる。本出願人の研究に向けて1つのIn/Zn組成を選択した。AZOの方が、その結晶性のために粗い膜を形成する傾向がある。過度の粗度は、IMIスタック内の銀層の透過率及び導電率に悪影響を与える可能性があり、従って、適切なAZO特性を持たせて達成するAg層に関してその利点が打ち消される。
【0112】
IMIスタック内の誘電体層の絶対導電率は、機能的な導電率が銀層から導出され、かつ誘電体層は絶縁体として機能するには薄すぎるので、スタックの実行性に実質的に影響を与えるものではない。AZOは、極めて廉価で、更に、銀に対する良好な粘着力を有するという利点を有する。更に、銀は、AZO上で成長させた時、材料間での良好な結晶性の格子整合のために特性が強化される。しかし、AZOの耐化学性は、例外的なものではない。IZOは、主にインジウム酸化物で構成されており、高価である。しかし、AZOよりも良好な導電率及び耐化学性を有する。15%Zn/85%Inのターゲット組成をこの例で使用したが、インジウムが多いか又は少ない他の混合物を使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、IZOが非結晶であることが好ましいと考えられる。
【0113】
簡潔さを期すために、色又は透過率でなく機械的及び化学的耐久性を主な懸念事項とし、誘電体層を350Aに固定した。これらの初期の実験に対しては、AZOをアルゴンのみで堆積させた。酸素は添加しなかった。IZO層をアルゴン中の4%O2で堆積させた。
【0114】
準備したコーティングスタック及び特性を表7に示している。各スタックにおいては、公称誘電体層厚は350Aであり、公称銀厚みは110Aである。これらのスタックを使用してエレクトロクロミックミラーを生成した。空気及びエレクトロクロミック流体の隣にコーティングを有するモデル効果を表6に示している。自動車内部ミラー形状は、高反射性の第3の表面のコーティングを付して使用した。IMI被覆ガラスが透明上板を成した。ミラーアセンブリの光学特性を表7で説明する。部分「1173 IEC」とは、1/2波ITOを透明電極として製造した基準部分を指す。ミラーアセンブリをブロー試験して、IMIコーティング粘着力を評価した。充填ミラーは、耐久性に対して蒸気試験された。
【0115】

【0116】
表7に示す透過率データは、EC流体に対してではなく、空気中で測定した一枚ガラスに対応する。6オームから7オームの範囲のシート抵抗は、大雑把に全波ITOと同等である。図示のように、1.6mmガラス上の全波ITOの透過率は、ほぼ85%である。IMIスタックは、US6/95193B1及びUS6963439B2に説明されている一般原則に従って製造かつ硬化されるエポキシを有する要素のためのエポキシ硬化乾燥炉内での熱処理により引き起こされた透過率の増加を示している。2つの透明電極間の透過率の直接的な比較は、両方のコーティングがEC流体と接触している時に限り行うことができる。これには、両方の材料に関する薄膜モデルを使用した計算又はでECセルの測定が必要である。これらのオプションの場合のモデル透過率値を表8に示している。
【0117】

【0118】
IMI上板を付して準備したセルの反射率は、1/2波ITO上板を有するミラーよりかなり低い。また、IMI上板のシート抵抗は、標準的な部分に使用する生産1/2波ITOの実質的に半分である。しかし、上述のように、1回目の実験のIMIスタックは、色又は透過率に対しては最適化しなかった。表9に説明するセルの相対反射率は、単体透過率値と矛盾する。なぜこれがそうであるのかは不明である。熱処理による透過率変化は、この群ではサンプル間では首尾一貫している。しかし、この変化、並びに粘着力のレベル、及びある程度までは材料の光定数は、ある程度、コーティングパラメータ及び条件の関数になる。ブロー試験値は、エポキシの硬化を経て、かつ充填孔が塞がれている空の要素セルを取って要素の縁部からほぼ0.5インチのところに直径がほぼ1.5mmの孔を穿孔することにより取得する。各部を0.5psi/秒又は1psi/秒の割合で加圧して、破損時の圧力を書き留める。ガラスからのコーティング分離、又はコーティングスタック内での分離、又はエポキシ自体の中でのエポキシの分離のような破損機構も書き留める。蒸気試験値は、2001年2月27日に付与された「エレクトロクロミック装置のためのシール」という名称の米国特許第6、195、193号に説明されている試験手順を通じて取得し、この特許は、本明細書において引用により組み込まれている。
【0119】

【0120】
シール幅で変動を補正するために、更に統計的分析を行う前にデータを「正規化する」ことが時々貴重であることが多い。これを行う1つの方法は、試験値に通常のシール幅を掛けて、各個々の部分に対してこれを実際のシール幅で割るというものである。
【0121】
AZO|Ag|AZOの平均ブロー値は、ITOを透明電極とした各部に本質的に同等である。評価した異なるスタックに対しては、ガラス/AZO/Ag/AZOがITOに同等であり、一方、他のスタックは、一部のスタック内の層割れが発生して値がほぼ20%低いとわかった。銀の両側にAZO層があると、最高レベルの粘着力が得られる。高いブロー値は、AZO|Ag|AZOサンプルに対してはIMI層の全体的なリフトにより補強される。IMIコーティングリフトのパーセントは、銀上の層と相関しているように見える。ここでもまた、AZOの方が良好な結果が得られる。蒸気データで最も強い傾向は、上部層としてIZOを有するスタックの性能の強化である。
【0122】
同じ一連のスタックの蒸気耐用期間試験においては、平均して、IZO|Ag|IZOスタックが蒸気試験で最も強力な性能を発揮したが、AZO|Ag|IZOスタックも、それほど劣ってはいないことを示している。残念ながら、ブロー試験で最も強力な性能を発揮したスタックは、蒸気試験では性能が最も劣るスタックであった。これらの強み及び弱みは、斬新的なスタック設計を通じて制御することができる。
【0123】
均一な着色及び明色化に関連した要素の美観は、硬化プロフィール、コーティングスタックの材料の選択、及びシール材料の材料選択を含め、多くの要素により影響を受ける可能性がある。
【0124】
現在、米国特許第6、195、193号に説明されているものに非常によく似た材料及び硬化方法を使用することが好ましい。ガラスに対する優れた粘着力、低い酸素透過性、及び良好な耐溶剤性のために、エポキシに基づく有機樹脂密封システムが好ましい。これらのエポキシシールは、「液晶ディスプレイ及びそのための光重合可能シーラント」という名称の米国特許第4、297、401号に説明されるようなUV硬化、又は液体ポリアミド樹脂又はジシアンジアミドとの液体エポキシ樹脂の混合物のような熱硬化とすることができ、又はそれらは、ホモポリマー化することができる。有機密封樹脂は、充填剤又は増粘剤を含有して、ヒュームドシリカ、シリカ、マイカ、粘土、炭酸カルシウム、アルミナのような流量及び収縮を低減し、及び/又は顔料を含んで色を増すことができる。疎水性又はシラン表面処理で前処理される充填剤が好ましい。硬化樹脂架橋結合密度は、一官能価エポキシ樹脂、二官能価エポキシ樹脂、及び多官能価エポキシ樹脂及び硬化剤の混合物の使用により制御することができる。シラン又はチタン酸塩のような添加物を使用してシールの加水分解安定性を改善することができ、又はガラスビーズ又はロッドのようなスペーサを使用して最終的なシール厚み及び基体間隔を制御することができる。周辺シール部材116に用いる適切なエポキシ密封樹脂としては、テキサス州ヒューストン所在の「Shell Chemical Co.」から販売されている「エポキシ樹脂」813、825、826、828、830、834、862、1001F、1002F、2012、DP−155、164、1031、1074、58005、58006、58034、58901、871、872、及びDPL−862、ニューヨーク州ホーソーン所在の「Ciba Geigy」から販売されている「ARALITE」の「GY 6010」、「GY 6020」、「CY 9579」、「GT 7071」、「XU 248」、「EPN 1139」、「EPN 1138」、「PY 307」、「ECN 1235」、「ECN 1273」、「ECN 1280」、「MT 0163」、「MY 720」、「MY 0500」、「MY 0510」、及び「Pt 810」、ミシガン州ミッドランド所在の「Dow Chemical Co.」から販売されている「D.E.R.」331、317、361、383、661、662、667、732、736、「D.E.N.」431、438、439、及び444、メタキシレンジアミン、1、8−ジアミノ−p−メタン、「isophrone」ジアミン、1、3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1、6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、1、4ジアミノシクロヘキサン、1、3ジアミノシクロヘキサン、1、2ジアミノシクロヘキサン、1、3ペンタンジアミン、及び2−メチルペンタメチレンジアミンがあるがこれらに限定されない。
【0125】
適切なエポキシ硬化剤としては、「Shell Chemical Co.」のV−15、V−25、及び「V−40」ポリアミド、日本国東京の味の素株式会社から販売されている「AJICURE」PN−23、PN−34、及びVDH、日本国東京の四国精密化学から販売されている「CUREZOL」AMZ、2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、2IZ、及び2P4MZ、ニュージャージー州メープル・シェード所在の「CVC Specialty Chemicals」から販売されている「ERISYS」DDA又はU−405、24EMI、U−410、及びU−415で増加されたDDA、ペンシルベニア州アレンタウン所在の「Air Products」から販売されている「AMICURE」PACM、352、CG、CG−325、及びCG−1200がある。
【0126】
適切な充填剤としては、イリノイ州タスコラ所在の「Cabot Corporation」から販売されている「CAB−O−SIL」L−90、LM−130、LM−5、PTG、M−5、MS−7、MS−55、TS−720、HS−5、及びEH−5のようなヒュームドシリカがある。適切な充填剤は、ヒュームドシリカ(例えば、「CAB−O−SIL」L−90)、LM−130、LM−5、PTG、M−5、MS−7、MS−55、TS−720、HS−5、及びEH−5、オハイオ州アクロン所在の「Degussa」から販売されている「AESOSIL」R972、R974、R805、R812、「R812 S」、R202、US204、及びUS206がある。適切な粘土充填剤としては、ニュージャージー州エジソン所在の「Engelhard Corporation」から販売されているBUCA、CATALPO、「ASP NC」、「SATINTONE 5」、「SATINTONE SP−33」、「TRANSLINK 37」、「TRANSLINK 77」、「TRANSLINK 445」、及び「TRANSLINK 555」がある。適切なシリカ充填剤は、メリーランド州ボルチモア所在の「SCM Chemicals」から販売されている「SILCRON」G−130、G−300、G−100−T、及びG−100がある。適切な精密ガラスマイクロビーズスペーサは、任意的に、カリフォルニア州パロアルト所在の「Duke Scientific」から一連のサイズで入手可能である。
【0127】
任意的に、シールの加水分解安定性を改善するために組み込むことができるシラン結合剤としては、ミシガン州ミッドランド所在の「Dow Corning Corporation」から販売されているZ−6020(これは、「Union Carbide」製のA−1120と同じか又は非常に類似)、Z−6030、Z−6032、Z−6040、Z−6075、及びZ−6076がある。
【0128】
更に、架橋ポリマー又は増粘剤の選択、原位置架橋の方法、プラグ材料の選択、及び使用するエレクトロクロミック種は、材料の特定の組合せにより問題のない美観上の結果が得られるか否かに影響を与える場合がある。それでも尚、バルク導電率が勝るTCO材料が、エレクトロクロミック媒体に隣接して設けられた時、様々な美観上の問題に対して幾分影響をより受けない傾向がある。
【0129】
AZO酸化レベルが最適化された実験で、ガラス/AZO/Agスタックの導電率及び透過率に及ぼす付加的なO2の影響が分った。これは、機器及びターゲット組成が異なると異なるが、それらの傾向は、この種のスタックを最適化するために必要な一部の段階を示している。ガラス/AZO/Agスタックのシート抵抗及び透過率は、このような方法で最適化された。このスタックの導電率及び透過率に及ぼすO2の影響を図9に示している。AZO層自体の絶対導電率は、重要でなく、銀層の特性に対するその影響のみが重要である。これが、最適化路線を取る根本的理由である。アルゴンガス供給量に4%O2を添加すると、最適導電率及び透過率が得られた。図10は、O2添加による減衰係数(吸収能)及びAZOの粗度の変化を示している。6%O2の添加により、4%よりも低い吸光度を有するAZOが生成されるが、粗度も増加傾向である。粗度の増加が、図9において6%O2で観察されるシート抵抗の増加の考え得る原因である。これは、一部の導電率を犠牲にすることによりスタック透過率を若干増大させる可能性を示唆するものではない。
【0130】
IZOと同様に、この一連の実験で準備した全てのスタックに向けて堆積したAZOを4%O2でスパッタリングした。表10は、評価に向けてDOE−2で堆積したスタックを示している。また、比較に向けて、全波ITO上板及び1/2波ITO上板の透過率及びシート抵抗も含まれている。これらのスタック設計の根本的理由は、粘着力及び蒸気耐用期間に対処することである。ブロー試験により測定する時、AZO層は、Ag層の片側又は両側に設置して粘着力を改善した。蒸気使用寿命に対処しやすいようにIZOを上部層として設置した。層厚を調整して、暗色化状態で青っぽい色が得られるようにスタックを調整し、かつ透過率を最大化した。
【0131】
スタック設計の透過率は、84.5パーセントから87.3パーセントに変わる。シート抵抗は、5.0オーム/平方から9.0オーム/平方に変わる。所定のAgの厚みに対しては、下部層がガラス/IZO/AZO/Agから成る時、最大透過率及び最低シート抵抗が発生する。IZOは、層を滑らかに保ち、AZOは、AZOとAgの間で結晶格子整合のためにAgのミクロ組織を改善する。それによってAg導電率及び粘着力が改善する。AZO層が結晶質であるので、層が肉厚化する時に表面粗度が増大する。従って、IZO/AZOの2層は、Agに播種する適切なインタフェース層を有すると同時に、必要な光学的厚みを達成する。銀の下で過度に厚いAZO層に関連した粗度のために、サンプル#11のかなりの高抵抗化がありそうである。これは、サンプル7及び8においても明らかである。サンプル7の肉厚AZO基部層に関連した粗度により、比較的滑らかなIZO基部層を有するサンプル8よりも1オメガ/平方高いシート抵抗が生じるのが認められる。粗度は、Ag層を薄くした時の方が電気的性質に与える影響が大きいことになる。
【0132】
製造したEC要素の光学的特徴付けデータを表11に示している。反射率が本質的に7%Auと93%Agの合金に全て由来する反射性が高い第3の表面の反射体電極を有する自動車内部ミラー形状を使用した。
【0133】

【0134】

【0135】
第2の組の実験においては、上部層として1IZO層を設けることによる前の実験と比較して、AZO/Ag/AZOスタックの蒸気結果を約50%改善した。逆に、蒸気耐用期間性能は、IZO/Ag/IZOスタック内でのAg層とIZO層の間で設置した薄いAZO層の増設で約1/3下がった。
【0136】
IMIに基づくセルの反射率は、1173IEC部分に対してはほぼ87%、1回目の69%から75%と比較して76%から79%の範囲であった。IMIに基づくセルの反射色は、生産部分と同等であり、#8及び#1は平均的生産部分よりも若干黄色が少なかった。スタック#7では、適切なブロー数字が得られたが、IMIスタックでは破損率が高かった。スタック8及び13は、スタック#7より低いブロー圧力で破損し、かつIMIスタック内での粘着力不良率が非常に高かった。蒸気試験結果は、かなり平坦かつ平凡なものであった。1回目の最良スタックと最悪スタックは、30日間と15日間の間で続いたが、2回目のサンプルは、平均20日で破損した。1回目と2回目とでは、いくつかの相違点があり(スタック設計変更に加えて)、これが、ブロー及び蒸気の性能に影響を与えたと考えられる。2回目のEC−セルの性能の1つの問題は、積層である。IMI被覆ガラスは、積層前は数日間放置したが、処理の徴候があった。被覆装置の層の配列も変わった。1回目では、被覆装置内で前後方向に移動しながら層を生成した。2回目では、順方向に移動しながら全ての層を生成した。1回目にはなかった酸素も、2回目ではAZO層内に酸素があった。
【0137】
2回目の部分の美観は、同じ流体及びエポキシで1回目で達成した良好な外観と適合するものであった。1.2ボルトでの室温循環で、各部には、潜在欠陥が発生し、フィンガプリント、擦り傷、又は他の欠陥があった。
【0138】
サンプル#13の性能は、規格品に比較のために暗色化及び曇り除去性能を発生させるために最終試験器で実施した。表12は、性能統計データの一部を示している。IMIスタック#13は、規格品より20%速く暗色化した。低シート抵抗化は、予想通り、より高電流引き込みをもたらした。図13は、DOE2サンプル番号7、8、及び13に対して明るい状態及び暗い状態における反射色を例示し、表10に明るい状態及び暗い状態における反射色を示している。
【0139】

【0140】

【0141】
暗い状態のIMIスタックの色は、ITO透明電極とする規格品に相当するものである。暗い状態の反射率は、平坦なミラーの設計目標の範囲である。
【0142】
以下は、IMIのDOE−3として大雑把にひとまとめにした数組の実験に基づく実験結果及び表現である。層応力は、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、亜鉛ドープインジウム−酸化物(IZO)、及び金属銀(Ag)に対して2種類の処理圧力で分析した。これらの結果から。AZOは、圧縮応力が最も高いと分るが、これは、より高い燃焼チャンバ圧力での処理によりも若干下げることができる。応力の小さな変化に基づいて、より高い圧力での処理からは殆ど何も得ることができないと判断した。この結論には、特定の層設計に関する燃焼チャンバ圧力とコーティングリフトとの電位の相関関係を示す結果によって異議が唱えられた。
【0143】
被覆装置内の処理段階に対するIMIスタックの感度を判断するために堆積の順序を調査した。これらの実験の狙いは、堆積に向けて静止基体を利用する回転式被覆装置でIMIコーティングを実施する際に大きな危険性があるか否かを判断することであった。処理方法を異なっても、コーティング特性の大きな変化は観察されなかった。
【0144】
蒸気オートクレーブに露出した際に肉厚AZO層が破損しやすいために、粘着力及び蒸気安定性の最大化が得られるようにAZO緩衝下部層及びAZO緩衝上部層の最適厚みを判断する一連の実験が行われた。緩衝上部層に対しては、僅か50AのAZOで粘着力が得られ、そのレベルよりも小さいとAZO層を肉厚化しても強化は得られないと判断した。AZO緩衝下部層に対しては、結果は、確定的なものではなかった。上述のように、肉厚AZO内の応力は、粘着力に影響を及ぼすのに十分に大きなものであり、一部の場合には、緩衝下部層の厚みの修正により生じるあらゆる特性上の変化をおそらく圧倒するものと考えられる。
【0145】
2組の熱処理試験が行われた。第1の組から、300℃で30分までの延長期間にわたる熱処理では、IMIコーティングは損傷せず、実際には特性が改善することが分った。第2の組の実験では、IZOに基づくIMIスタックは、酸化亜鉛が豊富なIZO組成に対しては熱処理後の方が良好な性能を発揮することが分った。
【0146】
IMIスタックの光学的モデル化が行われた。このモデル化では、IMIコーティングの透過率に及ぼす誘電体屈折率の影響、最終的には、ECセルの性能に及ぼす影響を考慮した。結果から、TiO2のような屈折率の高い層を用いると、現在使用されている1/2波ITOで可能であるものに非常に近い性能及び色が得られやすいことを示している。
【0147】
多層コーティングスタック内の層応力は、コーティングの粘着力に悪影響を与える可能性がある。このような理由から、調査中のIMIスタックで使用している誘電体層が適度に低い応力で堆積されていることを確かめることが重要であった。堆積に利用したアルゴン圧は、材料毎に応答勾配を判断するために、材料毎に高及び低で実施した。結果を表14に示している。コーティングの全てに対して測定した応力は、適度に低く、1ギガパスカル未満であった。AZO層内の応力は、IZO層より高かったが、圧力の増加で発生した小さな変化は、圧力調整していたので利点が制限されたことを示している。これらの実験からの結果に基づいて、DOEの残りの堆積は、3.0mTorrで行った。
【0148】

【0149】
AZOは、最適の粘着力及び熱安定性が得られるので銀層と接触して使用する非常に良好な材料である。残念ながら、AZOは、化学的侵食には極めて安定的というものではない。このような理由から、銀層に対する緩衝として最小厚みAZOを利用して、かつIZO、ITO、又は適切な蒸気安定性を有する別の誘電体でコーティング厚みの残りを形成する多層手法が好ましい。セクション3を2部に分け、AZO緩衝下部層及びAZO緩衝上部層を別々に考慮する。表15は、この評価に向けて利用するスタック設計及び層厚を示している。実験の前半(13から17)では、粘着力及び蒸気安定性に及ぼすAZO緩衝上部層厚変動の影響を調査した。実験の後半(18から22)では、粘着力に及ぼすAZO緩衝下部層厚変動の影響を調べた。実験18から22では肉厚AZO上部層を使用したために、この試験に即したモノリシックAZO上部層の公知の弱点による蒸気安定性に対しては試験しなかった。試験の平均化した結果を表16に示している。実験13から17で使用した肉厚AZO基部層では、それぞれ、平均値が26psi及び34日であるブロー及び蒸気試験において非常に良好な結果が得られた。銀層より下方にあることが、蒸気オートクレーブに露出されることに対する適切な保護となっている。AZO下部層の厚みを考慮した実験18から22では、ブロー試験において平均値は21.5psiであった。銀層より下方であれ、上方であれ、AZO層の厚みに関しては明確な傾向は明らかでない。良好な粘着力が得られるためには50AのAZOバッファ層が適切のように見える。この一連からの最も明確な傾向は、450AのAZO下部層(13から17を除く)を有するサンプルに対してはコーティングのリフトが認められないということである。実験18から22では、ブロー試験のコーティングリフトの平均値は65%であった。また、実験13から17のサンプルのブロー試験では、ガラス破断が主であった。実験18から22のサンプルに関するガラス破断による破損の割合は、低かった。代替的に、破損は、コーティングリフトが主であった。残念ながら、実験18から22は、一部の場合には、肉厚AZO上部層を使用したという事実により無効となった。明らかに、この肉厚層の歪みは、IMIコーティングの粘着力を支配するのに十分高い。AZO緩衝下部層の厚みの変化により引き起こされた摂動があっても、一部の場合には、上部層の応力により恐らく圧倒されたと考えられる。
【0150】

【0151】

【0152】
実験10からの実施条件を用いて、440オングストロームでのIZO、50オングストロームでのAZO、80オングストロームでのAg、50オングストロームでのAZO、449オングストロームでのIZO、及びガラスを含む5層IMIスタックで被覆したいくつかの11.8インチx16インチの「lite」を準備した。サンプルは、サイズが4インチx4インチのこれらの「lite」から切り取った。次に、各サンプルの光透過率、曇り、及びシート抵抗を基準として測定した。4つの時間、5分、10分、15分、及び20分のうちの1つにわたって以下の3つの温度、200℃、300℃.及び400℃でサンプルを2つずつ浸漬した。次に、各サンプルの透過率、曇り、及びシート抵抗を再測定して基準値と比較した。平均化したデータを表17に示している。
【0153】
IMIスタックの透過率は、熱処理の全てに対して増加するが、最大の変化が300℃サンプルに対して観察された。400℃サンプルでは、300℃サンプルに対して透過率増加が小さくなる。これは、大きなb*シフトを引き起こす大きな光学特性変化によっても引き起こされる。可視域へのUV吸収縁部の観察されたシフトに対しての可能な説明は、IZOが高温により修正されるということである。第2の考えられる説明は、Ag表面プラズモン帯域が、AZO/銀境界面での化学的又は構造的変化により高温でシフトしているということである。これは、既存のAg/AZOベースの低放射率コーティングの観察された高温反応に基づいてその可能性は低い。
【0154】

【0155】
これらの実験に対しては、曇りは、面の反射率(YR)の非鏡面成分と定めている。200℃、300℃のいずれでも測定可能な曇りの変化はなかった。これは、400℃での最短浸漬持続時間(5分)の場合にも当て嵌まることであった。400℃での浸漬持続時間が長くなると、曇りの測定可能な増加が生じたが、全体的な曇りは、それでも最小限のものであった。
【0156】
透過率に対しても当て嵌まるように、熱処理の全てにより、シート抵抗が減少した。300℃での処理では、200℃の実験よりも改善した。400℃の実験では、5分で良好な結果が得られ、この結果は、300℃の結果に相当するものである。400℃で5分を超えると、シート抵抗の改善が徐々に失われ、20分のサンプルは、予熱伝導率と殆ど同等のままであった。10分と15分の間にわたって300℃でIMIの全てを熱処理した場合、最適の特性が達成された。
【0157】
これらの結果から、生産において使用されると考えられるあらゆる熱処理又はエポキシ硬化により、IMI性能は悪化するのではなく改善することが分る。エポキシ硬化乾燥炉の温度を300℃に上げることは、IMIコーティングの特性を最適化するために最良であろうが、エポキシ性能には恐らく有利でないと考えられる。
【0158】
以下は、評価のための3層IMIスタックのサンプルに関するものである。これらのスタックは、各サンプルの誘電体層により、サンプルにわたって組成勾配が定められ、IZOの複数の組成を評価することができるという点で、「国立再生可能エネルギ研究所(NREL)」での組合せスパッタリング機能からの恩典を受ける。IZOは、インジウム−酸化物(In23)及び酸化亜鉛(ZnO)の非特定の組合せである。一般的に、最適の導電性を得るために〜20%Znを使用するが、IZOの物理的特性及び化学的特性を優先して最適化し、IMIスタックの安定性及び粘着力を改善したいと考えた。誘電体層の絶対導電性は、IMIスタックの性能にはあまり重要ではない。インジウム−亜鉛組成の4つのライブラリを3層IMIスタック、すなわち、基部誘電体(400Å)、銀(100Å)、上部誘電体(400Å)として2インチx2インチのガラス基体(1.1mm)上に付加した。各々の場合、できるだけ均一な誘電体及び銀の厚みを堆積した。NRELシステムでは、小さい2インチ円環マグネトロン及び静止基体を使用するので、その均一性は最適性が劣る。このように理由及びいくつかの他の理由から、NRELでのシステムよりも良好な均一性及び反復性が得られるような3インチマグネトロン及び直線運動で「Temescal」被覆装置において組合せシステムを準備した。4つのライブラリの組成範囲を表18に示している。
【0159】

【0160】
熱処理前に、各サンプルにわたって5ヵ所で透過率、シート抵抗、及び曇りの基準値を測定した。次に、サンプルを標準的生産(200℃)のために設定したエポキシ硬化乾燥炉(線502)に通した。次に、透過率、シート抵抗、及び曇りを再測定した。結果を表19に示している。データは、In/Zn比率により細分化することができる。In含有量が低く、Zn含有量が高い誘電体では、透過率が高くなり、シート抵抗が低くなったIMIスタックが生成された。曇りは、熱処理前に比するものである。熱処理後、非常に高いZn含有量で曇りの増加があったが、Inが豊富なサンプルに場合は遥かに大きな増加があった。この大きな曇りの増加は、一部の場合には、熱処理中のIZOの結晶化の示すものである。この挙動は、IZOの組成異常に関する文献に説明している。
【0161】

【0162】
これらの実験の結果は、非常に興味深い。IZOは、一般的に、ZnO含有量で堆積して導電率を最大にする。IMIスタックの導電率は、銀のいずれかの側で使用する誘電体層の絶対導電率に影響をあまり受けない。組合せサンプルの高いZnO含有量範囲(〜70%)により、熱処理での性能は最も良かった。たとえIZO層の導電率が高い亜鉛含有量が乏しくても、IMIスタックの全体的な導電率はこの範囲で最も高かった。熱処理後の曇り及び透過率も、高いZnO含有量で最適であった。〜30%In23含有量が適切な粘着力を維持しながら適切な蒸気性能が得られるのに十分に高い場合、3層設計は、IMIスタックに実施可能であると考えられる。
【0163】
代替誘電体層の利点の評価の一部として、かつ一部の特許文書を支持するために光学モデル化が行われた。モデル化の狙いは、材料置換を通じてIMIスタックの色及び透過率の潜在的な改良点を定量化することであった。2回目のIMIのDOE報告で説明したように、被覆ガラスの透過率は、出口媒体が空気又は炭酸プロピレン(PC)溶液であるか否かによってかなり変わることがある。ガラス上の1/2波ITOの場合、モデル化した透過率は、空気に対して88.0%から炭酸プロピレンに対する92.4%まで改善する。簡潔さを期すために、3層スタックをモデル内で使用した(表20)。Ag層より上方及びAg層より下方の上下の5ÅAZOバッファ層の増設がスタックの光学特性に与える影響は最小である。
【0164】

【0165】
中から高までの屈折率の範囲のための評価に向けて4つの誘電材料を選択した。これらの材料は、TiSi26(1.7)、IZO(2.0)、冷間TiO2(2.4)、及び熱間TiO2(2.8)である。最初の調査においては、空気及び炭酸プロピレン出口媒体に向けてスタックを最適化した。ここで示すデータは、全体的に炭酸プロピレン場合の最適化に基づいている。誘電材料毎にいくつかのAgの厚みを評価した。そのデータを表21に示している。この例においては、誘電材料及び銀の厚みを選択した。次に、「TFCaIc」を利用して、最適の透過率が得られるように誘電体層厚を精密化した。比較のために、各々の場合、出口媒体の透過率も示している。2つの低屈折率の場合に対しては、空気中の透過率は、薄いAgの場合の方が高い。この関係は、肉厚化Agの場合は逆になり、炭酸プロピレンに対しての方が透過率は高い。TiO2の場合のいずれも均一に炭酸プロピレンに対しての方が透過率が高い。約30Åを超える銀の厚みに対しては、最適の透過率は、TiO2のような高屈折率誘電体層を用いることにより得られる。6オーム/平方IMIコーティングを取得するには、層が厚みがほぼ100ÅのAgが必要である。色は、Cr/Ru後方反射体を有する100ÅAg層の場合に対して計算した。このデータを表22に示している。同じ方法で計算したOECセル(1/2波ITO)が比較のために含まれている。TiSi26の場合の明るさの高い状態の反射率は、誤解を引き起こすものである。非常に高い暗い状態での反射率で示すように、反射率のかなりの部分は、第2の表面からのものである。反射色は、明るい状態は多少緑色であり、暗い状態では青銅色が非常に強い。IZOの場合、明るい状態での反射率の方が低く、かつ多少緑色であった。IZOセルの暗い状態での反射率は、基準OECセルより僅かにより高いだけであり、かつ非常に中立的である。TiO2セルの明るい状態での反射率は、基準より1パーセントだけ低く、かつ色は、IZOセルと同じで、僅かに緑色である。暗い状態では、反射率が非常に低く、本質的に中間色である。熱間TiO2セルでは、反射率は、基準セルより高く、色は、非常に中立的である。暗い状態で、反射率が低く、僅かに紫の色である。
【0166】

【0167】

【0168】
AZO、IZO、ITO、又はこれらの材料の一部の組合せに基づく3層IMIスタック(100ÅのAg)は、OEC形式のRuに基づくミラーに対しては約52.8%の反射率に制限される。同様にモデル化した標準的な1/2波ITOに基づくセルは、約60.1%の反射率を有する。IMIに基づくセルの反射率を1/2波ITOに対して現在得られるレベルに増大させるために、モデル内で使用するTiO2のような高屈折率層を組み込む必要がある。TiO2を組み込む5層IMIスタックは、一部の場合には、59.2%の反射率に近づくと考えられる。材料高屈折率化により、セル反射率は、実際には標準セルよりも若干高い60.3%に近づくことができる。単一のTiO2層がガラス上へIMIスタックより下方に堆積すれば、ほぼ57.8%の反射率が得られる。IMIコーティングの透過率が、1/2波ITOと同じ高さであることが必要な場合は、高屈折率層は、スタックの一部になる必要があることになる。
【0169】
本発明のエレクトロクロミック要素は、反射率、色、電気的切り換え安定性、環境耐久性のような光学的及び物理的特性を犠牲にすることなくエレクトロクロミック要素の全体コストを低減する構成要素を有する透明電極を含む。更に、発明のエレクトロクロミック要素は、比較的製造しやすく、強固な製造工程を達成する一助になり、絶縁体/金属/絶縁体スタックを製造する際に利用する構成要素の選択において多用性が得られ、かつ特定の光学的及び物理的特性を達成するために構成の調整を可能にする。
【0170】
以上の説明は、好ましい実施形態のみの説明と考えられる。発明の修正は、当業者及び発明を製造又は使用する者に想起されるであろう。従って、図面に示して上述した実施形態は、単に例示を目的としたものであり、均等物の教義を含む特許法の原則に従って解釈される特許請求の範囲によって定められる発明の範囲に含まれることを意図するが、それを限定することを意図していないことは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】第4の表面の反射体を組み込む従来技術エレクトロクロミックミラーアセンブリの拡大断面図である。
【図2】自動車のための内側/外側エレクトロクロミックバックミラーシステムを概略的に例示する正面立面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿って切り取った第3の表面の反射体/電極を組み込むエレクトロクロミックミラーの拡大断面図である。
【図4】図3の区域IVの透明電極の更に別の拡大断面図である。
【図5】空気又はエレクトロクロミック流体の入射媒体内のガラス上での反射率/透過率とITOの波長のグラフである。
【図6A】3層IMIスタックの層厚の異なる組合せの1つに関する空気を備えたIMIと入射媒体としてのEC流体の間の透過率の差のグラフである。
【図6B】3層IMIスタックの層厚の異なる組合せの1つに関する空気を備えたIMIと入射媒体としてのEC流体の間の透過率の差のグラフである。
【図6C】3層IMIスタックの層厚の異なる組合せの1つに関する空気を備えたIMIと入射媒体としてのEC流体の間の透過率の差のグラフである。
【図7】5層IMIスタックの透過率の変化と浸漬時間のグラフである。
【図8】5層IMIスタックの抵抗の変化と浸漬時間のグラフである。
【図9】2層IMIスタックのシート抵抗及び透過率と酸素百分率のグラフである。
【図10】2層IMIスタックの酸素百分率と減衰係数と%粗度のグラフである。
【図11】DOE2サンプル7、8、及び13の波長と反射率のグラフである。
【符号の説明】
【0172】
111a ミラーアセンブリ
112 前部透明基体
114 後部基体
125 チャンバ
126 エレクトロクロミック媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と該第1の表面の反対側にある第2表面とを有する第1の基体と、
前記第1の基体と離間した関係であり、かつ前記第2表面に対向する第3の表面と該第3の表面の反対側にある第4の表面とを有する第2の基体と、
前記第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体と、
前記第2の表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆い、かつ第1の絶縁体層、少なくとも1つの金属層、及び第2の絶縁体層を含む透明電極層と、
を含み、
80に等しいか又はそれよりも大きい演色指数を示す、
ことを特徴とするエレクトロクロミック要素。
【請求項2】
90に等しいか又はそれよりも大きい演色指数を示すことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項3】
95に等しいか又はそれよりも大きい演色指数を示すことを特徴とする請求項2に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属層は、単一の金属層を含むことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項5】
前記単一の金属層は、銀を含み、
前記単一の金属層は、50オングストロームと500オングストロームの間の厚みを有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項6】
前記単一の金属層は、75オングストロームと250オングストロームの間の厚みを有することを特徴とする請求項5に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項7】
前記単一の金属層は、100オングストロームと150オングストロームの間の厚みを有することを特徴とする請求項6に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項8】
前記第1の絶縁体層、前記少なくとも1つの金属層、及び前記第2の絶縁体層の全厚は、100オングストロームと700オングストロームの間であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項9】
透明な状態で0.70に等しいか又はそれ未満の太陽熱利得係数を示すことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項10】
エレクトロクロミック要素の前記太陽熱利得係数は、0.50に等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項9に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項11】
エレクトロクロミック要素の前記太陽熱利得係数は、0.30に等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項10に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項12】
第1の表面と該第1の表面の反対側にある第2表面とを有する第1の基体と、
前記第1の基体と離間した関係であり、かつ前記第2表面に対向する第3の表面と該第3の表面の反対側にある第4の表面とを有する第2の基体と、
前記第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体と、
前記第2表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆い、かつ第1の絶縁体層、少なくとも1つの金属層、及び第2の絶縁体層を含む透明電極層と、
を含み、
前記第1の絶縁体層及び前記第2の絶縁体層の少なくとも一方は、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、酸化チタン、導電TiO2、CeOx、酸化錫、シリコン窒化物、二酸化シリコン、ZnS、酸化クロム、酸化ニオブ、ZrOx、WO3、酸化ニッケル、IrO2、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む、
ことを特徴とするエレクトロクロミック要素。
【請求項13】
前記絶縁体層の前記選択された1つは、前記少なくとも1つの金属層と前記透明電極層が覆う前記選択された表面との間に位置決めされることを特徴とする請求項12に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項14】
前記エレクトロクロミック媒体と接触する絶縁層が、その上部において、10MOhmに等しいか又はそれよりも大きい導電率を有することを特徴とする請求項12に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項15】
前記第1の絶縁体層と前記透明電極層が覆う前記選択された表面との間に位置決めされ、かつルテニウム、NiCr、NiCrOx、銅、チタン、ニオブ、ニッケル、パラジウム、プラチナ、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む障壁層、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項16】
前記障壁層は、40オングストロームに等しいか又はそれ未満の厚みを有することを特徴とする請求項15に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項17】
前記障壁層の前記厚みは、20オングストロームに等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項16に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項18】
前記第1の絶縁体層と前記透明電極層が覆う前記選択された表面との間に位置決めされ、かつシリカ、ドープシリカ、燐ドープシリカ、アモルファスアルミナ、燐酸アルミニウム、SiNSnZnOx又は他の化学的に不活性な非吸収誘電体層、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む障壁層、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項19】
前記障壁層は、150オングストロームに等しいか又はそれ未満の厚みを有することを特徴とする請求項18に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項20】
前記障壁層の前記厚みは、100オングストロームに等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項19に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項21】
前記障壁層の前記厚みは、50オングストロームに等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項20に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項22】
第1の表面と該第1の表面の反対側にある第2表面とを有する第1の基体と、
前記第1の基体と離間した関係であり、かつ前記第2表面に対向する第3の表面と該第3の表面の反対側にある第4の表面とを有する第2の基体と、
前記第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体と、
前記第2表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆い、かつ前記エレクトロクロミック媒体の近くの第1の絶縁体層、少なくとも1つの金属層、及び第2の絶縁体層を含む透明電極層と、
を含み、
前記第1の絶縁体は、インジウム錫酸化物を含み、
前記透明電極の前記透過率は、約75%に等しいか又はそれよりも大きい、
ことを特徴とするエレクトロクロミック要素。
【請求項23】
前記エレクトロクロミック媒体と接触する絶縁体層が、その上部において、10MOhmに等しいか又はそれよりも大きい導電率を有することを特徴とする請求項22に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項24】
前記第1の絶縁体層と前記透明電極層が覆う前記選択された表面との間に位置決めされ、かつルテニウム、NiCr、NiCrOx、銅、チタン、ニオブ、ニッケル、パラジウム、プラチナ、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む障壁層、
を更に含むことを特徴とする請求項22に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項25】
前記障壁層は、40オングストロームに等しいか又はそれ未満の厚みを有することを特徴とする請求項24に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項26】
前記障壁層の前記厚みは、20オングストロームに等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項25に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項27】
前記第1の絶縁体層と前記透明電極層が覆う前記選択された表面との間に位置決めされ、かつシリカ、ドープシリカ、燐ドープシリカ、アモルファスアルミナ、燐酸アルミニウム、SiNSnZnOx又は他の化学的に不活性な非吸収誘電体層、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む障壁層、
を更に含むことを特徴とする請求項22に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項28】
前記障壁層は、150オングストロームに等しいか又はそれ未満の厚みを有することを特徴とする請求項27に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項29】
前記障壁層の前記厚みは、100オングストロームに等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項28に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項30】
前記障壁層の前記厚みは、50オングストロームに等しいか又はそれ未満であることを特徴とする請求項29に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項31】
第1の表面と該第1の表面の反対側にある第2表面とを有する第1の基体と、
前記第1の基体と離間した関係であり、かつ前記第2表面に対向する第3の表面と該第3の表面の反対側にある第4の表面とを有する第2の基体と、
前記第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体と、
前記第2表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆い、かつ第1の絶縁体層、金属層、第2の絶縁体層、及び該金属層といずれかの絶縁体層との間に位置決めされた任意的な電気安定化層を含む透明電極層と、
を含み、
1つ又は複数の前記任意的な電気安定化層の少なくとも1つが、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、銅、ニッケル、プラチナ、インジウム、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む、
ことを特徴とするエレクトロクロミック要素。
【請求項32】
前記金属層は、銀を含むことを特徴とする請求項31に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項33】
前記選択電気安定化層は、前記金属層への実行可能な印加電位を約0.05ボルトだけ増大させることになることを特徴とする請求項31に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項34】
前記選択電気安定化層は、前記金属層への前記実行可能な印加電位を約0.10ボルトだけ増大させることになることを特徴とする請求項33に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項35】
前記選択電気安定化層は、前記金属層への前記実行可能な印加電位を約0.20ボルトだけ増大させることになることを特徴とする請求項34に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項36】
前記選択電気安定化層は、前記金属層への実行可能な印加電位を約0.30ボルトだけ増大させることになることを特徴とする請求項35に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項37】
前記金属層は、該金属層が構成された卑金属とは異なる貴金属で合金されることを特徴とする請求項31に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項38】
前記金属層は、インジウム及びチタンの少なくとも選択された一方でドープされることを特徴とする請求項31に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項39】
第1の表面と該第1の表面の反対側にある第2表面とを有する第1の基体と、
前記第1の基体と離間した関係であり、かつ前記第2表面に対向する第3の表面と該第3の表面の反対側にある第4の表面とを有する第2の基体と、
前記第1及び第2の基体の間に位置し、電界の印加時に可変である光透過率を有するエレクトロクロミック媒体と、
前記第2表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方の少なくとも一部を覆い、かつ第1の絶縁体層、金属層、及び第2の絶縁体層を含む透明電極層と、
を含み、
前記金属層は、銀を含み、前記第1の絶縁体層及び前記第2の絶縁体層の少なくとも一方は、酸化亜鉛又はSb及びその組合せを含む、
ことを特徴とするエレクトロクロミック要素。
【請求項40】
前記選択絶縁体層の少なくとも選択されたもの及びそれが覆う前記金属層の表面が、低エネルギ状態であることを特徴とする請求項39に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項41】
前記選択絶縁体層又は前記金属層の下にある他の層及び該金属層の表面のうちの前記少なくとも選択された1つは、イオンビーム処理されることを特徴とする請求項39に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項42】
前記選択絶縁体層によって覆われた前記金属層の下にある層の表面が、化学的に処理されることを特徴とする請求項39に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項43】
前記金属層の下にある前記層の表面が、二硫化物又はSO2で処理されることを特徴とする請求項42に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項44】
前記金属層は、パラジウム、銅、インジウム、チタン、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つでドープされることを特徴とする請求項31に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項45】
前記選択表面と前記第1の絶縁体との間に位置し、かつシリカ、ドープシリカ、燐ドープシリカ、アモルファスアルミナ、燐酸アルミニウム、SiNSnZnOx又は他の化学的に不活性な非吸収誘電体層、及びその組合せのうちの少なくとも選択された1つを含む障壁層、
を更に含むことを特徴とする請求項38に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項46】
前記障壁層は、非晶質であることを特徴とする請求項45に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項47】
前記第1又は第2の絶縁体層は、3GPa未満の絶対応力を有することを特徴とする請求項39に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項48】
前記第1又は第2の絶縁体層の前記絶対応力は、1.5GPa未満であることを特徴とする請求項47に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項49】
前記第1又は第2の絶縁体層の前記絶対応力は、0.5GPa未満であることを特徴とする請求項48に記載のエレクトロクロミック要素。
【請求項50】
エレクトロクロミック要素を製造する方法であって、
第1の表面と該第1の表面の反対側にある第2表面とを有する第1の基体を準備する段階と、
前記第2表面に対向する第3の表面と該第3の表面の反対側にある第4の表面と有する第2の基体を準備する段階と、
第1の絶縁体層、金属層、及び第2の絶縁体層を含む透明電極層を前記第2の表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方に付加する段階と、
エポキシを前記第2の表面及び前記第3の表面の少なくとも選択された一方に付加する段階と、
主波長が2.5ミクロン未満である赤外線を前記エポキシに印加することによって前記第1の基体を前記第2の基体に密封する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
前記透明電極層を付加する段階は、前記第1の絶縁体層及び前記第2の絶縁体層の少なくとも選択された一方を、ITO、IZO、AZO、ZnO、ドープZnO、TiOx、導電TiOx、CeOx、SnO2、SiN、SiO2、ZnS、NiOx、CrOx、NbOx、ZrOx、及びその組合せを含むように準備する段階を含むことを特徴とする請求項50に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A−C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2009−529153(P2009−529153A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558344(P2008−558344)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/005638
【国際公開番号】WO2007/103342
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500115826)ジェンテックス コーポレイション (46)
【Fターム(参考)】