説明

INSITUオレフィン重合触媒系

本発明に係る実施形態は、in situオレフィン重合触媒系の形成方法、かかる系に包含される触媒、および上記の系を用いて製造されるポリマーを包含する。上記in situオレフィン重合触媒系のために、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムが通常ハロヒドロカルビル化合物と接触されてハロヒドロカルビルグリニャールを形成し、そのグリニャールは通常第10族金属化合物と接触されてオレフィン重合触媒を形成し、これは1つまたは複数のオレフィンモノマーと接触されて、それらからポリマーを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2008年4月25日に出願された米国仮特許出願第61/047,812号に対する優先権の利益を主張し、その出願は参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
技術分野
本明細書には、第10族金属含有シクロオレフィン重合触媒、その重合触媒の製造方法、および該重合触媒を用いるシクロオレフィンの重合方法が記載されている。
【背景技術】
【0003】
ノルボルネンポリマーなどのシクロオレフィンポリマーは、優れた誘電特性および低吸水特性のために、エレクトロニクス分野において絶縁材料として貴重である。シクロオレフィンポリマーのうち、ノルボルネン付加重合体に代表されるシクロオレフィン付加重合体は、低吸湿性および優れた誘電特性などの種々の特性のために、通常、様々な種類のモールディング、電子部品用のシーリング材料、および絶縁材料として使用するのに適している。
【0004】
一般にシクロオレフィンポリマー、特にノルボルネン型ポリマーは、ニッケル触媒を用いて製造することができる。例えば、米国特許第6136499号明細書には、ENi(C(ここで、n=1または2であり、Eは中性の電子供与体配位子である)の使用が記載されている。Eがトルエンである場合、このような触媒は、トリフルオロ酢酸ニッケル(II)およびCMgBrのような適切な出発材料の反応によって製造される(BrezinskiおよびKlabunde、Organometallics,1983年,2,1116において)。このようなニッケル触媒は、フッ素化アリールグリニャール試薬を用いて製造される。
【0005】
しかしながら、フッ素化グリニャール試薬の取り扱いには安全上の懸念がある。フッ素化アリールマグネシウムハロゲン化物に関連して爆発の報告がある(a)Appleby,Chem.Ind.(London)1971年,4,120、b)MooreおよびWaymouth,Chem.Eng.News 1997年,75(11),6、ならびにc)Regerら,Inorg.Synth.2004年,34,5−8を参照)。
【0006】
Organometallics,2005年,24,3579には、Tetrahedron Letters 1999年,40,7449に記載されるKnochelの手順により、PrMgClを用いた、臭化[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]マグネシウムの合成が記載されている。この論文には、「Leazerらによる最近の報告により、臭化[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]マグネシウムはそれだけでは危険ではないが、過剰のマグネシウム金属の存在下で、(トリフルオロメチル)アリールグリニャール試薬の爆発性の発熱分解が生じることが確認される」と報告されている。Leazerは、Knochelの手順が「安全かつ信頼性がある」と記載しており、「我々は、Knochelの手順が[...](トリフルオロメチル)フェニルグリニャール試薬を調製するための最良の方法であり、[...]暴走反応への傾向を示さず、[...]マルチキログラムのスケールアップに適していることを発見した」と強調している(J.Org.Chem.2003年,23,3695)。Knochelの手順は、ハロゲン−マグネシウム交換からなる。Knochelの手順によるCMgBrおよび他のフッ素化アリールグリニャールの合成は、参照によって本明細書中に援用されるTetrahedron Letters 1999年,40,7449に記載されている。
【0007】
本発明の実施形態は、以下の添付図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】比較例1に記載されるような、トルエンおよびthfの混合物中の(η−トルエン)Ni(C19FNMRスペクトルを示す。
【図2】比較例2に記載されるような、触媒例1と同じ溶媒混合物(シクロヘキサン/EtOAc/thf)中の(η−トルエン)Ni(C19FNMRスペクトルを示す。
【図3】触媒例1の第10族金属触媒の19FNMRスペクトルを示す。
【図4】触媒例2の方法で製造された第10族金属触媒の19FNMRスペクトルを描く。
【図5】触媒例3の方法で製造された第10族金属触媒の19FNMRスペクトルを描く。
【図6】触媒例4の方法で製造された第10族触媒の19FNMRスペクトルを示す。
【図7】触媒例5の方法で製造された第10族触媒の19FNMRスペクトルを示す。
【図8】触媒例6の第10族金属触媒から単離されたNi触媒の分子構造の図を示す。
【図9】触媒例6の方法で製造された第10族金属触媒の19FNMRスペクトルを描く。
【図10】触媒例7の第10族金属触媒から単離された不活性Ni種の分子構造の図を示す。
【図11】触媒例7の第10族金属触媒から単離された不活性Ni種の19FNMRスペクトルを描く。
【図12】触媒例8の方法で製造された第10族金属触媒の19FNMRスペクトルを描く。
【図13】合成例5の方法で得られたコポリマーのMwおよび収率に対するハロヒドロカルビルグリニャールの当量の効果を示すグラフである。
【図14】合成例5の方法で得られたコポリマーのMwおよびPDに対するハロヒドロカルビルグリニャールの当量の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るin situオレフィン重合触媒系は、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウム、ジアルキルマグネシウムまたはトリアルキルマグネシウム酸リチウムを適切な溶媒中でハロヒドロカルビル化合物と接触させることによるハロヒドロカルビルグリニャールの形成と;同じまたは別の適切な溶媒中で上記ハロヒドロカルビルグリニャールを第10族金属化合物と接触させることによるオレフィン重合触媒の形成と;上記触媒を、適切な重合溶媒中で提供される1つまたは複数の重合可能なオレフィンモノマーと接触させることとを包含する。このようにして、上記触媒は上記モノマーの重合を開始させることができ、本発明の実施形態に従って形成される触媒は、第10族金属含有in situ重合触媒であるといえる。
【0010】
上記の第10族金属含有in situ重合触媒を含むin situオレフィン重合触媒系、このような触媒の製造方法、およびオレフィンの重合のための上記の系の使用は、単離したフッ素化グリニャール試薬を取り扱う必要性を低減または排除し、したがって、このようなフッ素化グリニャール試薬に関連する安全上の懸念を低減または排除する。
【0011】
上記および関連の目標を達成するために、本発明に従う実施形態が以下で説明され、特許請求の範囲において指摘される。その目的を進展させるために、以下の説明および添付図面は、本発明のいくつかの実施形態の実例となる特定の態様および実行を詳細に示す。しかしながら、これらは本発明の原理が使用され得る種々の方法のうちのごく少数を示すものであって、本発明の他の利点および特徴はこれらの教示から明らかになり得ることを理解すべきであり、このような他の特徴および利点は本発明の範囲内にある。
【0012】
本明細書において以下の略語が使用される:
Pr:イソプロピル
thf:テトラヒドロフラン CAS:[109−99−9]
DME:1,2−ジメトキシエタン CAS:[110−71−4]
EtOAc:酢酸エチル CAS:[141−78−6]
MAK:メチルアミルケトン [110−43−0]
MEK:メチルエチルケトン [78−93−3]
RT:室温
Ni(Ethex):2−エチルヘキサン酸ニッケル(II) CAS:[4454−16−4]
[Ni(acac)]:アセチルアセトン酸ニッケル(II) CAS:[3264−82−2]
Ni(stearate):ステアリン酸ニッケル(II) CAS:[2223−955−2]
Ni(tmhd):テトラメチルヘプタンジオン酸ニッケル(II) CAS:[41749−92−2]
Ni(hfacac):ヘキサフルオロアセチルアセトン酸ニッケル(II) CAS:[14949−69−0]
Ni(tfacac):トリフルオロアセチルアセトン酸ニッケル(II) CAS:[14324−83−5]
Ni(dbm):ジベンゾイルメタン酸ニッケル(II) CAS:[14552−54−6]
Ni(bac):ベンゾイルアセトン酸ニッケル(II) CAS:[14405−47−1]
Li[NiBr]:テトラブロモニッケル酸(II)二リチウム溶液(THF中0.5M)CAS:[13826−95−4]
[Cu(acac)]:アセチルアセトン酸銅(II) CAS:[13395−16−9]
[Co(acac)]:アセチルアセトン酸コバルト(III) CAS:[21679−46−9]
[Ag(acac)]:アセチルアセトン酸銀 CAS:[15525−64−1]
[Rh(acac)]:アセチルアセトン酸ロジウム(III) CAS:[14284−92−5]
[Pd(acac)]:アセチルアセトン酸パラジウム(II) CAS:[14024−61−4]
MGENB:メチルグリシジルエーテルノルボルネン CAS:[3188−75−8]
DeNB:5−デシル−2−ノルボルネン CAS:[22094−85−5]
PENB:フェネチルノルボルネン CAS:[29415−09−6]
TESNB:トリエトキシシリルノルボルネン CAS:[7538−46−7]
MeOAcNB:5−ノルボルネン−2−メタノールアセタート CAS:[10471−24−6]
HFANB:ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピルメチルノルボルネン CAS:[196314−61−1]
TFSNB:N−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イルメチル)−1,1,1−トリフルオロメタンスルホンアミド CAS:[287923−92−6]
tBuEsNB:ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン−2−tert−ブチルカルボキシラート CAS:[154970−45−3]
Mn:数平均分子量
Mw:重量平均分子量、および
PD:多分散性(Mw/Mn)。
【0013】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」という用語は、ポリマー自体に加えて、このようなポリマーの合成に付随する開始剤、触媒および他の要素からの残留物(このような残留物は、共有結合されていないと理解される)も包含すると理解されるであろう。さらに、このような残留物および他の要素は、普通は重合後の精製過程で除去されるが、一般的には、容器間または溶媒もしくは分散媒間で移動される際にポリマーと混和または混合されて、通常ポリマーに残存する。
【0014】
本明細書において定義されるように、「オレフィン」、「ポリシクロオレフィン」、「多環式オレフィン」、および「ノルボルネン型」という用語は交換して使用可能であり、以下の構造A1またはA2:
【化1】

のいずれかで示されるような少なくとも1つのノルボルネン部分を包含する付加重合可能なモノマーまたは結果として得られる繰り返し単位を指す。
【0015】
本発明の触媒系を用いて重合させることができる最も簡単なノルボルネン型または多環式オレフィンモノマーには、二環式モノマーのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(一般に、ノルボルネンと呼ばれる)が含まれる。しかしながら、ノルボルネン型モノマーまたは繰り返し単位という用語は、本明細書において使用される場合、ノルボルネン自体を意味するだけでなく、任意の置換ノルボルネン、またはこれらのより高次の置換および非置換環状誘導体、例えば、以下に示される構造B1およびB2のmがゼロよりも大きい誘導体も指すと理解される。
【化2】

【0016】
本明細書において使用される場合、「ヒドロカルビル」は、炭素骨格を有し各炭素が1つまたは複数の水素原子で適切に置換されたラジカルまたは基を指す。「ハロヒドロカルビル」という用語は、水素原子のうちの1つまたは複数(ただし全てではない)がハロゲン(F、Cl、Br、I)によって置き換えられたヒドロカルビル基を指す。ペルハロカルビルという用語は、各水素がハロゲンで置き換えられたヒドロカルビル基を指す。ヒドロカルビルの非限定的な例には、C〜C25アルキル、C〜C24アルケニル、C〜C24アルキニル、C〜C25シクロアルキル、C〜C24アリール、またはC〜C24アラルキルが含まれるが、これらに限定されない。代表的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびドデシルが含まれるが、これらに限定されない。代表的なアルケニル基には、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、および2−ブテニルが含まれるが、これらに限定されない。代表的なアルキニル基には、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、および2−ブチニルが含まれるが、これらに限定されない。代表的なシクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルが含まれるが、これらに限定されない。代表的なアリール基には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびアントラセニルが含まれるが、これらに限定されない。代表的なアラルキル基には、ベンジル、フェネチル、およびフェンブチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書を通して使用されるハロヒドロカルビルという用語は、上記のヒドロカルビル部分を含むが、ハロゲン化の程度は、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置き換えられているもの(例えば、フルオロメチル基)から、過ハロゲン化とも呼ばれる、ヒドロカルビル基の全ての水素原子がハロゲン原子で置き換えられたもの(例えば、トリフルオロメチルまたはペルフルオロメチル)までの範囲に及び得る。例えば、本発明の実施形態において有用なハロゲン化アルキル基は、式C2z+1(ここで、Xは独立してハロゲンまたは水素であり、zは1〜20の整数から選択される)の部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基である。いくつかの実施形態では、各Xは、水素、塩素、フッ素、臭素、および/またはヨウ素から独立して選択される。他の実施形態では、各Xは独立して、水素またはフッ素のいずれかである。したがって、代表的なハロヒドロカルビルおよびペルハロカルビルは、適切な数の水素原子がそれぞれハロゲン原子で置き換えられた上記の例示的なヒドロカルビルによって例示される。
【0018】
ノルボルネン型または多環式オレフィンモノマーは、以下の式C:
【化3】

によって表すことができる。式中、Xは、−CH−、−CH−CH−、または−O−から選択され、mは0〜5の整数であり、そしてR、R、R、およびRはそれぞれ、水素、1〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル、1〜20個の炭素原子を含有するハロヒドロカルビル、および1〜20個の炭素原子を含有するペルハロカルビルから独立して選択される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、R、R、R、およびRのそれぞれは、水素、ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、またはペルハロカルビル基から独立して選択される。さらに、いくつかの実施形態では、RまたはRの1つ、ならびにRおよびRの1つは統合して、C〜C10アルキリデニル基を表すことができる。代表的なアルキリデニル基には、特に、メチリデニルおよびエチリデニル基が含まれる。
【0020】
本発明の他の実施形態では、R、R、R、およびRのうち1つまたは複数は、C〜C20ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはペルハロカルビル基であり、このようなヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルまたはペルハロカルビル基は、O、N、S、PおよびSiから選択される1つまたは複数のへテロ原子を包含し、その他のR、R、R、およびRはHである。へテロ原子を包含する例示的な基は、式:
−A−Y
によって表される。式中、Aは、架橋していてもよいC〜C20ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビル、もしくはペルハロカルビル基であって、またはかかる基にO、N、S、PおよびSiから選択される1つまたは複数のへテロ原子を含む基を包含する基であり、そしてYは、置換または非置換マレイミド、トリアルコキシシリル、酢酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシペルフルオロアルキル、アルキルグリシジルエーテルまたはその他のエポキシ含有基、ペルフルオロアルキルスルホンアミド、およびエステルまたは無水物などのカルボン酸誘導体を含むがこれらに限定されない官能基である。
【0021】
本発明の実施形態の実施において有用なノルボルネン型モノマーのいくつかの具体例には、重合可能なノルボルネン型モノマー、例えばノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)、MGENB、DeNB、PENB、TESNB、MeOAcNB、HFANB、TFSNB、t−BuEsNB、5−エチリデンノルボルネン、5−メチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−5−イソブチルカルボキシラート、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−n−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−i−プロポキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−n−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−(2−メチルプロポキシ)−カルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−(1−メチルプロポキシ)カルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−t−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−(4’−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)カルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、および5−アセチルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンが含まれる。
【0022】
本発明のin situオレフィン重合触媒系の製造方法の実施形態は、安全で信頼性のある(一貫して同じポリマーの製造をもたらす)第10族金属開始剤/第10族金属触媒(以下、簡単に、第10族金属触媒と称する)を製造することを包含し、容易に入手できる出発材料の使用を伴い、本明細書において記載される。そのように記載される第10族金属触媒は、上記の種々のオレフィン、シクロオレフィンおよび多環式オレフィンモノマーを重合させてポリマーにするために使用することができる。
【0023】
本発明の実施形態における第10族金属触媒は、一般に2段階で製造される。第1に、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムがハロヒドロカルビル化合物と接触されてハロヒドロカルビルグリニャールを形成する。第2に、上記ハロヒドロカルビルグリニャールが第10族金属化合物と接触されて、上記の第10族金属触媒を形成する。
【0024】
上記の2段階は通常溶液中で実行され、選択される溶媒は、重合溶媒として適切であると共に、形成される中間体グリニャールに関して非反応性である。このようにして、上記第10族金属触媒は、in situ(その場)で形成することができ、所望により、直ちに重合反応に使用することができる。上記2段階のため(そしてその後、得られた第10族金属触媒を保持するため)に使用され得る溶媒の例には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン(ISOPAR C)、およびオクタンなどのアルカンおよびシクロアルカン溶媒;thf、MeTHF、ジ−n−ブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジアルキルグリコールエーテル、およびジエチルエーテルなどのエーテル;ベンゼン、キシレン、トルエン、p−シメン、ナフタレン、メシチレン、テトラリン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、p−ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロトルエンなどの芳香族溶媒、ならびにこれらの混合物が含まれる。上記2段階のそれぞれにおいて同一または異なる溶媒が使用され得る。
【0025】
上記の第1の段階において、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムは、ハロヒドロカルビル化合物の求電子性炭素原子を攻撃する求核試薬としての役割を果たすと確信される。ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムは、式RMgXによって表すことができ、式中、Rは、1〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、そしてXは、Cl、Br、またはIのうちの1つなどのハロゲン原子である。
【0026】
適切なハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムの一般的な例には、特に、ヨウ化アルキルマグネシウム、ヨウ化アリールマグネシウム、塩化アルキルマグネシウム、臭化アルキルマグネシウム、塩化アリールマグネシウム、臭化アリールマグネシウム、塩化アルケニルマグネシウム、臭化アルケニルマグネシウムが包含される。より具体的には、このような例には、ヨウ化ベンジルマグネシウム、ヨウ化n−ブチルマグネシウム、塩化アリルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、臭化n−ブチルマグネシウム、塩化n−ブチルマグネシウム、塩化t−ブチルマグネシウム、臭化4−クロロフェニルマグネシウム、塩化シクロヘキシルマグネシウム、塩化シクロペンタジエニルマグネシウム、塩化シクロペンチルマグネシウム、臭化シクロプロピルマグネシウム、臭化3,5−ジメチルフェニルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化n−ヘプチルマグネシウム、臭化n−ヘキシルマグネシウム、臭化イソブチルマグネシウム、塩化イソブチルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化イソプロピルマグネシウム、臭化4−メトキシフェニルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、塩化メチルマグネシウム、塩化n−オクチルマグネシウム、臭化n−ペンチルマグネシウム、塩化n−ペンチルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化n−プロピルマグネシウム、塩化n−プロピルマグネシウム、塩化2−トリルマグネシウム、塩化4−トリルマグネシウム、塩化[(トリメチルシリル)メチル]マグネシウム、および臭化ビニルマグネシウムが含まれる。
【0027】
適切なハロヒドロカルビル化合物の一般的な例には、特に、ハロベンゼン、ハロアルキル置換ハロベンゼン、およびハロトルエンを含むハロアリール化合物、ならびに分枝状ハロアルキル化合物を含むハロアルキル化合物(ハロアルキル置換メタンなど)が包含される。ハロヒドロカルビル化合物の具体例には、特に、クロロペンタフルオロベンゼン、ブロモペンタフルオロベンゼン、ヨードペンタフルオロベンゼン、ジ−トリフルオロメチルブロモベンゼン、トリフルオロメチルブロモベンゼン、トリ−トリフルオロメチルブロモベンゼン、臭化ジフルオロフェニル、臭化トリフルオロフェニル、臭化テトラフルオロフェニル、ブロモトリクロロベンゼン、ブロモテトラクロロベンゼン、ブロモペンタクロロベンゼン、臭化2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジクロロフェニル、ジトリフルオロメチルフルオロクロロメタン、およびペンタフルオロベンゼンが包含される。
【0028】
上記の第1の段階では、適切な当量数のハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムが適切な当量数のハロヒドロカルビル化合物と接触される。有利には、本発明のいくつかの実施形態については、かかる適切な当量数の比は、3:1〜1:3(ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウム対ハロヒドロカルビル化合物)を包含することが分かった。別の実施形態では、ハロヒドロカルビル化合物に対するハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムの当量比の範囲は、2:1〜1:2、例えば、1.1:1〜1:1.1(1:1を含む)である。通常、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムおよびハロヒドロカルビル化合物は、接触される際に両方とも溶液中にある。ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウム溶液をハロヒドロカルビル化合物溶液に添加することもできるし、あるいはハロヒドロカルビル化合物溶液をハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウム溶液に添加することもできるし、あるいは2つの溶液を同時に混ぜ合わせることもできる。
【0029】
ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムは、ハロヒドロカルビルグリニャールの形成を容易にするのに適した温度においてハロヒドロカルビル化合物と接触される。1つの実施形態では、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムは、約−10℃〜約70℃の温度でハロヒドロカルビル化合物と接触される。別の実施形態では、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムは、約0℃〜約50℃の温度でハロヒドロカルビル化合物と接触される。さらに別の実施形態では、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムは、約15℃〜約40℃の温度でハロヒドロカルビル化合物と接触される。
【0030】
ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムをハロヒドロカルビル化合物と接触させた結果としてのハロヒドロカルビルグリニャールの形成は、以下の化学反応スキーム:
MgX+RX → RMgX
によって表すことができる。式中、Rはヒドロカルビル基であり、Xは独立して、Cl、BrまたはIであり、そしてRは、ハロヒドロカルビル基(通常は、フルオロヒドロカルビル基)であるが、RはRよりも電気陰性および/または電子求引性である。この場合、所与の反応における特定のハロヒドロカルビル化合物およびハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムの選択および使用は、ハロヒドロカルビル化合物のハロヒドロカルビル基がハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムのヒドロカルビル基よりも電気陰性および/または電子求引性であるかどうかに依存する。
【0031】
ハロヒドロカルビルグリニャールは、通常、ハロヒドロカルビル部分(ハロヒドロカルビル化合物に由来)およびハロゲン化マグネシウム(ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムに由来)から構成される。ハロヒドロカルビルグリニャールの一般的な例には、特に、ハロゲン化ハロフェニルマグネシウム、ハロゲン化ハロアルキル置換フェニルマグネシウム、ハロゲン化ハロトルエンマグネシウム、およびハロゲン化ハロアルキル置換アルキルマグネシウムが包含される。ハロヒドロカルビルグリニャールの具体例には、特に、臭化ペンタフルオロフェニルマグネシウム、塩化ペンタフルオロフェニルマグネシウム、臭化ジ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、塩化ジ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、臭化トリ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、塩化トリ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、臭化トリフルオロメチルフェニルマグネシウム、塩化トリフルオロメチルフェニルマグネシウム、臭化ジフルオロフェニルマグネシウム、塩化ジフルオロフェニルマグネシウム、臭化トリフルオロフェニルマグネシウム、塩化トリフルオロフェニルマグネシウム、臭化テトラフルオロフェニルマグネシウム、臭化2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジクロロフェニルマグネシウム、塩化ジ−トリフルオロメチル−フルオロ−メチル−マグネシウム、臭化ジ−トリフルオロメチル−フルオロ−メチル−マグネシウム、臭化トリクロロフェニルマグネシウム、塩化トリクロロフェニルマグネシウム、臭化テトラクロロフェニルマグネシウム、塩化テトラクロロフェニルマグネシウム、臭化ペンタクロロフェニルマグネシウム、および塩化ペンタクロロフェニルマグネシウムが包含される。
【0032】
本明細書で開示される技術革新に従って第10族金属触媒を形成する際に有用なハロヒドロカルビルグリニャールを形成するための上記の手順および試薬に加えて、我々は、ジアルキルマグネシウム化合物とハロヒドロカルビル化合物との間の反応も上記の有用なハロヒドロカルビルグリニャールを形成することができると確信する。我々は、塩化リチウムを伴う塩化アルキルマグネシウム(ターボグリニャール(Turbo−Grignard)と呼ばれることもある)は、ハロヒドロカルビル化合物と反応して、上記の有用なハロヒドロカルビルグリニャールを形成することができると確信する。このようなジアルキルマグネシウムの例には、ジエチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、およびジブチルマグネシウムが含まれるが、これらに限定されない。ターボグリニャールの例には、iPrMgCl・LiCl錯体およびsec−BuMgCl・LiClが含まれるが、これらに限定されない。さらに、我々は、トリアルキルマグネシウム酸リチウムはハロヒドロカルビル化合物と反応して、上記の有用なハロヒドロカルビルグリニャールを生じることができると確信する。このようなマグネシウム酸塩の例には、トリ−n−ブチルマグネシウム酸リチウム(n−BuMgLi)およびジブチルイソプロピルマグネシウム酸リチウム(i−Pr(n−Bu)MgLi)が含まれるが、これらに限定されない。ジアルキルマグネシウム、ターボグリニャール、またはトリアルキルマグネシウム酸リチウムとハロヒドロカルビル化合物との反応は、ハロヒドロカルビル化合物がペンタフルオロベンゼン、クロロペンタフルオロベンゼンまたはブロモペンタフルオロベンゼンなどのアリール官能性を含有する場合に有効である。
【0033】
本発明の実施形態のために有用な第10族金属化合物は、以下の性質/特性:ハロヒドロカルビルグリニャールとの反応性;有機溶媒溶解性;水が最小限であるか全く存在しないこと;酸種が最小限であるか全く存在しないこと;または高純度;の少なくとも1つを有する。さらに、このような第10族金属化合物は、少なくとも1つの第10族金属原子、ニッケル、パラジウムまたは白金を含有する。第10族金属化合物の例には、特に、酢酸ニッケル、アセチルアセトン酸ニッケル、エチルヘキサン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、トリフルオロ酢酸ニッケル、トリフルオロアセチルアセトン酸ニッケル、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸ニッケル、ジベンゾイルメタン酸ニッケル、ベンゾイルメタン酸ニッケル、カルボン酸ニッケル、シクロヘキサン酪酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、酢酸パラジウム、アセチルアセトン酸パラジウム、エチルヘキサン酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸パラジウム、カルボン酸パラジウム、およびアセチルアセトン酸白金が含まれる。
【0034】
適切な当量の第10族金属化合物は、適切な当量のハロヒドロカルビルグリニャールと接触されて、第10族金属触媒の形成を容易にする。本発明のいくつかの実施形態では、第10族金属化合物に対するハロヒドロカルビルグリニャールの当量比は10:1〜2:1である。他の実施形態では、第10族金属化合物に対するハロヒドロカルビルグリニャールの当量比が5:1〜2:1であり、さらに他の実施形態では上記比が3:1〜2:1である。しかしながら、金属化合物に対するグリニャールの比も、より高い比もより低い比も、有効であることが証明され得、したがって本出願の範囲内にあることに注意すべきである。
【0035】
上記の第10族金属触媒は、通常、ノルボルネン型モノマーの重合に適した溶媒中で形成されるので、有利には、この触媒溶液/懸濁液をモノマーの溶液と混ぜ合わせて容易に重合を開始し得るように準備することができる。ここで、「混ぜ合わせる」には、上記のモノマー溶液を触媒溶液に添加すること、あるいはその逆が含まれると理解されるべきである。したがって、本発明に従う触媒溶液はin situ触媒であるといえる。
【0036】
第10族金属化合物は、第10族金属触媒の形成を容易にするのに適した温度においてハロヒドロカルビルグリニャールと接触される。1つの実施形態では、第10族金属化合物は、約−10℃〜約85℃の温度においてハロヒドロカルビルグリニャールと接触される。別の実施形態では、第10族金属化合物は、約0℃〜約60℃の温度においてハロヒドロカルビルグリニャールと接触される。さらに別の実施形態では、第10族金属化合物は、約25℃〜約45℃の温度においてハロヒドロカルビルグリニャールと接触される。
【0037】
第10族金属化合物をハロヒドロカルビルグリニャールと接触させることによって形成される第10族金属触媒の本質は不明であるが、本発明者らは、以下の拘束力のない非限定的な所見を提示する。
【0038】
ここで図1を参照すると、米国特許第6,136,499号明細書(‘499号特許)の開示に従う代表的なNi触媒の19FNMRスペクトルが提供されている。本発明者らは、当初は本発明に係る実施形態がこのような触媒を提供し得ると確信していたが、図3に示す19FNMRスペクトルは、かかる実施形態によると異なる種が提供されることを示している。いかなる理論に拘束されることも望まないが、図3の第10族錯体はフッ素化ヒドロカルビル配位子を含むものと確信される。
【0039】
以下においてより詳細に説明されるように、アセチルアセトン酸ニッケル(II)とペンタフルオロフェニルグリニャールとの反応は、本明細書においてA、B、CおよびTと称される少なくとも4つのニッケルペンタフルオロフェニル種を生じる。Aは、少なくとも1つのペンタフルオロフェニル配位子を含有し;Bは、少なくとも3つのペンタフルオロフェニル配位子を含有し、そのうち2つのペンタフルオロフェニル配位子は化学的に等価であり、他のペンタフルオロフェニル配位子とは区別され;Cは、NiおよびMgの2つの金属中心を架橋する塩素(μ−Cl)と、そのNi中心に配位した2つのペンタフルオロフェニル配位子とを有するバイメタル種であり;そしてTは、4つのペンタフルオロフェニル配位子が配位したNi中心を有する触媒不活性種であると確信される。種A、B、CおよびTについて観察される19FNMR共鳴は、図1および2に示す‘499号特許の(η−トルエン)Ni(Cについての19FNMR共鳴とは異なっているので、種A、B、CおよびTは、‘499号特許に開示されるような、トルエンおよびthfなどの溶媒分子によって安定化されたニッケルビス(ペンタフルオロフェニル)フラグメントではないと確信される。
【0040】
図3に示される19FNMRスペクトル(後述の触媒例1)における個々の共鳴は、異なる反応条件の使用と、結晶化による種CおよびTの単離とによって、個々の種、A、B、CおよびTに割り当てることができる。in situ混合物中の特定の種の量が変化すると、その種に関連する全ての19F共鳴の大きさが比例的に変化するので、個々の種を同定することが可能になる。
【0041】
金属中心のペンタフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン誘導体、およびペンタフルオロフェニル配位子(集合的に、ペンタフルオロフェニル種)は、19FNMRスペクトルにおいて少なくとも3つの異なる共鳴周波数を生じる、少なくとも3つの化学的に区別されるフッ素原子基を有する。すなわち、式Iで示されるように、芳香族ペンタフルオロベンゼン環の1つの位置がフッ素でない原子、基または配位子で置換され、これにより、上記フッ素でない原子、基または配位子からメタ、オルト、およびパラの位置にあるフッ素原子が19FNMRによって識別できる化学的に別個のフッ素原子となっている。
【化4】

【0042】
種CおよびTのアイデンティティは分かっており、それらの結晶構造は標準的なX線回折技術を用いて決定される。種CおよびTの結晶を得るための方法は、それぞれ、後述の触媒例6(種C)および触媒例7(種T)という見出しの下で説明される。周囲の母液オイルを加えた結晶、およびバルクオイルのない種C結晶について、19FNMRを測定した。種Cの結晶構造およびその19FNMRスペクトルは、それぞれ、図8および9に示されている。上記結晶構造から、種Cのアイデンティティが[(Ni(C(μ−Cl)Mg(thf)}]であることがわかる。Ni中心には、シス立体化学を有する2つのペンタフルオロフェニル基が配位している。ニッケル中心は、2つの架橋クロロ配位子(μ−Cl)によってマグネシウム中心に連結されており、マグネシウム中心の8面体配位圏の残りは、酸素原子の自由電子対によって配位した4つのthf溶媒分子によって占められている。触媒作用は第10族金属中心によって支援されるので、Mgに配位した溶媒分子のアイデンティティは、触媒活性にとって重要ではないと確信される。種Cに相当する共鳴は、バルクオイルのない再溶解結晶のスペクトルにおいてそれらの強度が増大することによって同定可能である。種Cの共鳴の化学シフトは後述の触媒例6に示されている。3つの同定可能な共鳴の存在は、結晶構造と一致して、上記ペンタフルオロフェニル配位子が化学的に等価であることを裏づけている。
【0043】
種Tの結晶は、後述の触媒例7という見出しの下で説明されるようにして得た。この結晶を用いて、標準的なX線回技術により結晶構造を決定した。上記結晶を再溶解させて19FNMRスペクトルを得た。種Tの結晶構造およびその19FNMRスペクトルは、それぞれ図10および11に示されている。図11において、種Tに起因する3つの共鳴は、他のスペクトルと比較して大きさが増大したことにより同定可能である。例えば、図11のスペクトルを、結晶化によって種Tの存在量を高めなかった図3または4のスペクトルと比較されたい。上記結晶構造から、種Tのアイデンティティが[Ni(C][(thf)Mg(μ−Cl)Mg(thf)であることがわかる。種Tのアニオンは、Ni中心に配位した4つのペンタフルオロフェニル配位子を有する二価のアニオンであり、一価のカチオンは、3つの架橋クロロ配位子および各Mg中心に関連する3つのthf溶媒配位子を有するホモバイメタル種である。
【0044】
当業者は、種Cが、in situ第10族金属触媒を形成するためにPrMgCl、CBrおよびNi(acac)を採用した場合において形成される特定の実施形態であること、異なる組み合わせの反応物を用いることにより他の種が形成され得ること、したがってこれら他の種が本発明の範囲内にあることを容易に理解するであろう。架橋ハロゲン配位子を伴うMおよびMg金属または金属イオン中心を有するヘテロバイメタル錯体の属は、以下の式IIに示される。式IIの構造を有する錯体は、触媒作用を支援するのに十分であると確信され、本明細書に記載される方法を用いて容易に合成される。
【化5】

【0045】
式IIにおいて、Mは、平面正方形の第10族金属中心を形成するための2+酸化状態にある第10族金属を表し、第10族金属はNi、PdおよびPtを含む。Xは、Cl、BrまたはIを表す。RおよびR配位子は、独立して、第10族金属触媒の合成に使用されるハロヒドロカルビルグリニャールに由来するハロヒドロカルビル配位子を表す。通常、このような配位子には、ハロヒドロカルビル、例えば、ハロフェニル、ハロアルキル置換ハロフェニル、ハロメチルフェニル、およびハロアルキル配位子(分枝状ハロアルキル配位子を含む)(例えば、ハロアルキル置換メチル)などが包含される。いくつかの実施形態では、このようなハロヒドロカルビル配位子は、ペンタフルオロフェニル、ジ−トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジクロロフェニル、3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル、2,4,6−トリ−トリフルオロメチルフェニル、ジ−トリフルオロメチル−フルオロ−クロロメチル、トリクロロフェニル、テトラクロロフェニル、およびペンタクロロフェニルを含む。他の実施形態では、RおよびRはそれぞれ、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、トリクロロフェニル、テトラクロロフェニル、およびペンタクロロフェニルから独立して選択される。
【0046】
種AおよびBの構造はまだ決定されておらず、理論によって拘束されることは望まないが、種AおよびBのNMRスペクトルおよび種CおよびTの既知の構造からの支援情報によって、種AおよびBのアイデンティティをごくわずかの可能性に限定することが可能になる。特に、観察される化学シフト(触媒例1を参照)は、Ni中心と配位した1つまたは複数のペンタフルオロフェニル配位子と極めてよく一致している。既知の種々のペンタフルオロフェニルNi錯体の19F共鳴は以下の表1に示される。
【0047】
【表1】

【0048】
ハロヒドロカルビルグリニャールと第10族金属化合物との反応によって形成される種CおよびTの既知の構造を考慮すると、種AおよびBの19F共鳴は、シス立体化学を有する少なくとも2つのペンタフルオロフェニル配位子を有する第10族金属錯体を強く示唆している。本明細書で開示される技術革新によると、ハロヒドロカルビルグリニャールと第10族金属化合物との反応によって形成される全ての種は、平面正方形の配位構造を有する第10族金属錯体を形成し、シス立体化学を有する2つのハロヒドロカルビル配位子が第10族金属と配位している。上記ハロヒドロカルビル配位子は、特に、ハロフェニル、ハロアルキル置換ハロフェニル、ハロメチルフェニル、およびハロアルキル配位子(ハロアルキル置換メチルなどの分枝状ハロアルキル配位子を含む)を包含する群から独立して選択される。ただし、上記第10族金属錯体中の第10族金属は、いずれも、thfが配位していてはならない。したがって、上記2つのハロヒドロカルビル配位子はシス立体化学を有し、上記の式IIについて開示されたハロヒドロカルビルと同じ群から独立して選択される。
【0049】
1つの実施形態では、平面正方形の配位構造を有する第10族金属錯体は、第10族金属と配位した第3のハロヒドロカルビル配位子を有し、該第3のハロヒドロカルビル配位子は、上記で定義した群のいずれかから独立して選択される。平面正方形構造を有する上記第10族金属錯体中の第10族金属に配位した残りの1つまたは2つの配位子は、特に、ハロ配位子、上記第10族金属と配位した1つまたは複数の酸素原子を有する配位子、上記第10族金属および上記第10族金属錯体中の第2の金属中心と配位した架橋ハロ配位子、ならびに上記第10族金属および上記第10族金属錯体中の第2の金属中心と配位した1つまたは複数の酸素原子を有する架橋配位子、を包含する群から選択される。1つまたは複数の酸素原子を有する例示的な配位子には、酢酸、アセチルアセトン酸、トリフルオロアセチルアセトン酸、エチルヘキサン酸、ナフテン酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸、シクロヘキサン酪酸、プロピオン酸、オクタン酸、ステアリン酸、テトラメチルヘプタンジオン酸、ジベンゾイルメタン酸、ベンゾイルアセトン酸、およびカルボン酸官能性を有する配位子が含まれる。1つの実施形態では、上記第2の金属中心がマグネシウムである。
【0050】
種Bは6つの区別される19F共鳴を示すので、種Bは、少なくとも2つの化学的に非等価なペンタフルオロフェニル配位子を有する。しかし、−114.4ppmのシフトに割り当てられるオルトフッ素共鳴は、−116.1ppmのシフトに割り当てられるオルトフッ素共鳴の積分強度のほぼ正確に半分である(例えば、図3および4を参照)。種Bのメタおよびパラフッ素原子に割り当てられる19F共鳴についても同様の所見が適用できる。したがって、種Bは、Ni中心に関連する3つのペンタフルオロフェニル配位子を有し、それらのペンタフルオロフェニル配位子のうち2つは化学的に等価である。
【0051】
当業者は、種Bが、合成においてPrMgCl、CBr、およびNi(acac)が使用される場合に形成される特定の実施形態であることを容易に認めるであろう。種Bは、以下の式IIIに示されるように、式[MRL]で表される第10族金属中心アニオンを有する属に属する。Lは、thfなどの溶媒配位子、ClまたはBrなどのハロ配位子、および/または、合成で使用される第10族金属化合物に由来する対アニオンであって、上述した配位子の例示的な群からの1つまたは複数から選択される。上記R、R、およびR配位子は、独立して、上記のようなハロヒドロカルビル配位子を表す。
【0052】
式IIIにおいて、Mは、平面正方形の第10族金属中心を形成するための2+酸化状態にある第10族金属を表し、第10族金属はNi、PdおよびPtを含む。1つの実施形態では、上記R、RおよびR配位子は、独立して、ハロフェニル、ハロアルキル置換ハロフェニル、ハロメチルフェニル、ハロアルキル配位子(ハロアルキル置換メチルなどの分枝状ハロアルキル配位子を含む)、を包含する群から選択される。ハロヒドロカルビル配位子の具体例には、特に、ペンタフルオロフェニル、ジ−トリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジクロロフェニル、ジ−トリフルオロメチルフルオロフェニルが含まれる。別の実施形態では、R、RおよびRは、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、トリクロロフェニル、テトラクロロフェニル、およびペンタクロロフェニルを包含する群から独立して選択される1つまたは複数である。さらに別の実施形態では、R、RおよびRはペンタフルオロフェニルである。変数pおよびqは、式IIIに示される第10族金属含有錯体および対カチオン錯体の全体の原子価電荷(valent charge)に依存する。1つの実施形態では、変数pおよびqは、独立して、1または2である。別の実施形態では、変数pおよびqの合計(p+q)の値は2または3である。
【0053】
Zは、式IIIに示される第10族金属含有錯体アニオンの対カチオン、または、式IIIに示される配位子Lと配位したカチオン含有基である。Zの正確なアイデンティティは触媒作用に重要でないと確信される。通常、Zは、1+または2+の原子価または形式電荷を有する。1つの実施形態では、Zは、特に、溶媒和したMgカチオン、Mgカチオン錯体、または、Lが2つの金属中心を架橋するのに適した非溶媒配位子である場合には式IIIの配位子Lと配位したMgカチオン、を包含する群から選択される1つまたは複数である。P.Sobota(Pure & Appl.Chem.,1989年,61巻,5号,861)によると、Mg2+は、Mgと配位した非溶媒配位子を全く必要とせずにthfおよび恐らく他の溶媒と溶媒和することが可能なので、Mgカチオンは、対カチオンZとしての機能を果たすことができる。Zは、種Tにおける対カチオンとしての機能を果たす[(thf)Mg(μ−Cl)Mg(thf)錯体などのカチオン錯体であってもよい。Zは、式III中の配位子Lと配位して、第10族金属中心および少なくとも1つのマグネシウム金属中心を含む単一のヘテロバイメタル錯体またはヘテロマルチメタル錯体を形成することもできる。ここで、上記少なくとも1つのマグネシウム金属中心の8面体配位圏における残りの位置は、上記のように、式III中のLと同じアイデンティティであり得る配位子によって占有され得る。上記第10族含有金属アニオン錯体および上記Zカチオンは、化学量論的変数pおよびqを有し、電気的に中性の錯体を形成する。
【化6】

【0054】
種Cの解明された結晶構造、および種Aと種Cの間の19FNMRスペクトルの類似性は、種Aもcis−ビス(ペンタフルオロフェニル)第10族中心を有することを強く示唆し、ここで、上記第10族金属中心の残りの2つの配位子は、上記ペンタフルオロフェニル配位子が化学的に等価であるように配置される。特に、19FNMRスペクトルが種Aと一致することは、上記平面正方形第10族金属錯体中の残りの位置が化学的に同一であることを要求する。
【0055】
当業者は、種Aが、合成においてPrMgCl、CBr、およびNi(acac)が使用される場合に形成される特定の実施形態であることを容易に認識するであろう。種Aは、以下の式IVおよびVに示す第10族金属中心を包含する属に属する。種Aを含む属は、上記のような2つのシスヒドロカルビル配位子を有する第10族金属中心によって特徴づけられる。上記第10族金属中心には、1つまたは複数の配位子上の2つの酸素原子または2つのブロモ配位子がシス型で配位している。種Aの属として可能性のある構造の1つは、架橋クロロ配位子(μ−Cl)が架橋ブロモ配位子(μ−Br)で置き換えられていることを除いては種Cの属(式II)と同一の種である。あるいは、式Vに示されるように、種Aの属は、2つの酸素原子(曲線で結ばれた2つの酸素原子によって表される)を有する二座配位子を含むことができる。あるいは、種Aの属は、少なくとも2つの酸素原子を有する2つの配位子を含むことができる。ここで、1つの酸素原子はそれぞれの金属中心に単座型で結合して、第10族金属中心とマグネシウム金属中心との間を架橋する。式IVおよびVで表されるような2つ以上の酸素原子を有する配位子は、特に、アセチルアセトン酸、エチルヘキサン酸、ナフテン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸、シクロヘキサン酪酸、オクタン酸、およびプロピオン酸を包含する群(カルボン酸官能性を有する配位子を含む)から選択される。
【0056】
式IV〜Vにおいて、Mは、平面正方形の第10族金属中心を形成するための2+酸化状態の第10族金属を表し、第10族金属はNi、PdおよびPtを含む。上記R10およびR11配位子は、式IIについて上記で定義されたハロヒドロカルビルの群から選択される。いくつかの実施形態では、R10およびR11はそれぞれ、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、トリクロロフェニル、テトラクロロフェニル、およびペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、トリクロロフェニル、テトラクロロフェニル、およびペンタクロロフェニルを包含する群から独立して選択される。他の実施形態では、R10およびR11は、ペンタフルオロフェニルである。式IVにおいて、Zは式IIIの場合と同じ定義を有する。1つの実施形態では、変数sおよびrは独立して1または2である。別の実施形態では、変数sおよびrの合計(s+r)の値は2または3である。
【化7】

【0057】
形成される種A、B、CおよびTの相対量は、使用される反応条件に大きく依存する。以下の方法において説明されるように、ハロヒドロカルビルグリニャール化合物は溶液中で形成され、次に、第10族金属化合物に添加される。グリニャール溶液は、第1の量のハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムおよび第2の量のハロヒドロカルビル化合物を混ぜ合わせることによって形成される。次に、得られたハロヒドロカルビルグリニャール溶液が固体の第10族金属化合物に添加されると、触媒例1において見られるように、得られる反応生成物は、概ね種Aおよび種Cである。触媒例2〜4において示されるように、種Tの量は、シクロヘキサン中の第10族金属化合物の懸濁液にハロヒドロカルビルグリニャール溶液を添加することによって増大され得る。種Bの量は、第10族金属化合物のテトラヒドロフラン溶液にハロヒドロカルビルグリニャール溶液を添加することによって増大され得る。
【0058】
多環式ポリマーを含むポリオレフィンは、種A、種B、および種Cの1つまたは複数をオレフィンモノマーと接触させることによって合成することができる。1つの実施形態では、任意の各第10族金属触媒種(種A、種B、または種C)に対する全オレフィンモノマーのモル比は、独立して、20:1〜10,000:1であり、好ましくは50:1〜5,000:1であり、そして最も好ましくは100:1〜1,000:1である。別の実施形態では、ここに記載されるいずれかの第10族金属触媒種(種A、種B、および種C)に含有される第10族金属に対する全オレフィンモノマーのモル比は、20:1〜10,000:1であり、好ましくは50:1〜5,000:1であり、そして最も好ましくは100:1〜1,000:1である。
【0059】
本明細書において記載される第10族金属触媒は、環状の繰り返し単位を有する広範なポリマーを調製するために適している。環状繰り返し単位を有するポリマーは、本明細書において記載される第10族金属触媒の触媒量の存在下におけるポリシクロオレフィンモノマーの付加重合によって調製することができる。かかる第10族金属触媒を用いて製造されるポリマーは、環状の繰り返し単位を有する。その環状繰り返し単位を有するポリマーは、2つまたはより多くのタイプの環状繰り返し単位、3つまたはより多くのタイプの環状繰り返し単位、そして4つまたはより多くのタイプの環状繰り返し単位を含有することができるが、これらに限定されない。
【0060】
上記モノマーは溶液中で重合される。典型的には、所望のモノマーを含有する反応媒体に第10族金属触媒が添加されるが、第10族金属触媒へモノマーを添加しても有効であり得ると確信される。第10族金属触媒を用いて調製されるポリマーは、2,3鎖結合(enchainment)により連結されたポリシクロオレフィン繰り返し単位の付加重合体である。上記繰り返し単位は、ポリシクロオレフィンモノマーまたは本明細書に記載されるような少なくとも1つのノルボルネン型部分を含有するポリシクロオレフィンモノマーの組み合わせから重合される。
【0061】
重合反応は、重合に供されるシクロオレフィンモノマーまたはモノマー混合物の溶液に、上記第10族金属触媒の溶液を添加することによって実行することができる。溶媒中のモノマーの量は、5〜75重量%の範囲である。別の実施形態では、溶媒中のモノマーの量は、10〜50重量%の範囲である。上記第10族金属触媒溶液および上記モノマー溶液を接触させた後、その反応媒体を攪拌して、第10族金属触媒とモノマー成分との完全な混合を確かにする。重合反応のための溶媒は、第10族金属触媒および/または第10族金属触媒反応物を受け入れるために列挙されるもの(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン(ISOPAR C)、オクタンなどのアルカンおよびシクロアルカン溶媒;thf、ジ−n−ブチルエーテル、MeTHF、メチル−t−ブチルエーテル、ジアルキルグリコールエーテル、およびジエチルエーテルなどのエーテル;ベンゼン、キシレン、トルエン、p−シメン、ナフタレン、メシチレン、テトラリン、フルオロベンゼン、o−ジフルオロベンゼン、p−ジフルオロベンゼン、トリフルオロトルエンおよびヘキサフルオロベンゼンなどの芳香族溶媒;のうちの1つまたは複数)、ならびに芳香族炭化水素などの非極性有機溶媒、酢酸エチルおよび酢酸i−アミルなどのエステル、およびMEKまたはMAKなどのケトン、そして上述した溶媒のいずれかの混合物、のいずれかを含む。1つの実施形態では、上記重合溶媒は、水または極性ヒドロキシル含有化合物ではない。
【0062】
触媒に対するモノマーの比は、触媒前駆体、すなわちハロヒドロカルビルグリニャールと反応される遷移金属錯体のモル数に対するモノマーのモル数の比によって決定される。
【0063】
重合反応温度(特定の重合タイプに関係なく)は、所望のポリマーを生じるために適切である。1つの実施形態では、重合反応温度は0℃〜100℃である。別の実施形態では、重合反応温度は30℃〜80℃である。さらに別の実施形態では、重合反応温度は40℃〜70℃である。
【0064】
重合反応時間(特定の重合タイプに関係なく)は、所望のポリマーを生じるために適切である。1つの実施形態では、第10族金属触媒およびモノマーは、約1分〜約20時間接触される。別の実施形態では、第10族金属触媒およびモノマーは、約10分〜約10時間接触される。さらに別の実施形態では、第10族金属触媒およびモノマーは、約20分〜約4時間接触される。
【0065】
本発明に係る実施形態によって製造されるポリマーは、電子、マイクロ電子、光電子および光学用途において有用である。電子およびマイクロ電子用途での使用には、犠牲層/構造、誘電体フィルム(すなわち、マルチチップモジュールおよびフレキシブル回路)、チップ取付けおよびチップ積層接着剤、アンダーフィル接着剤、チップ封止材、グロブトップ、近密封性ボードおよびチップ保護コーティング、埋め込み受動部品、積層用接着剤、キャパシタ誘電体、高周波数絶縁体/コネクタ、高電圧絶縁体、高温ワイヤコーティング、導電性接着剤、一時的なウェハまたはチップボンディングに有用な再加工可能または取り外し可能な接着剤、感光性接着剤および誘電体フィルム、レジスタ、フォトレジスト、インダクタ、キャパシタ、アンテナ、ならびにプリント回路ボード基板が含まれる。光学用途での使用には、光学フィルム、眼科用レンズ、導波管、光ファイバー、感光性光学フィルム、特殊レンズ、ウィンドウ、高屈折率フィルム、レーザー光学、カラーフィルタ、光学接着剤、光コネクタ、ならびに光電子画像形成および感知装置の製造における使用が含まれる。
【0066】
実施例
ここに示される作用例または他に示される場合以外は、この明細書および特許請求の範囲において使用される材料および反応条件の量を指す全ての数、値および/または式は、このような数、値および/または式を得る際に遭遇する種々の不確実性を反映し、したがって全ての場合に「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。さらに、本明細書において数値の範囲が開示される場合、他に示されない限り、このような範囲は連続的であり、その最小値および最大値ならびにその間の全ての値を包含する。さらに、所与の特徴を説明するために1つよりも多い範囲が提供される場合、第1の上記範囲からの値は、第2の上記範囲からの値と結合されて、所与の特徴の別の説明を提供する新しい範囲を作ることができることが理解されるであろう。
【0067】
以下の例は例証的な目的のためだけに提供され、いかなる意味でも本発明を限定することは意図されない。他に示されない限り、以下の例および特許請求の範囲において、全ての部および割合は重量によるものであり、全ての温度は摂氏温度(℃)であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧であり、そして反応条件および材料は無水である。さらに、以下の実験で使用される溶媒は本質的に無酸素(酸素フリー)である。すなわち、言及される試薬および溶媒は、本質的に無酸素であるとして購入され、または反応容器に入れてから本質的に全ての溶解酸素を除去するのに十分であると確信される期間、窒素がスパージされるか、あるいはこのような試薬および溶媒はその使用前に個々にスパージされて、反応容器に入れるまで窒素雰囲気下で保存されるかのいずれかである。したがって、具体的な実験の記載においては無酸素試薬および溶媒を提供する上記の方法のいずれかに言及しないが、一方または他方が用いられることが理解されるであろう。また、他に特記しない限り、形成される任意のポリマーの分子量(Mw)はポリ(スチレン)標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定し、パーセント(%)転化率/収率も、他に特記しない限りGPCによって決定した。さらに、PrMgClの濃度はTHF中2.0Mであり、PrMgBrの濃度はTHF中1.0Mであり、そしてEtMgBrの濃度はTHF中1.0Mであった。第10族触媒混合物の19FNMRの解析において、19F共鳴は、全ての共鳴と比較して約1%以上が積分される場合にのみ考慮した。
【0068】
触媒比較例1
(η−トルエン)Ni(Cの溶液(BrezinskiおよびKlabunde、Organometallics 1983年,2,1116において)を、触媒例8と同じ溶媒混合物(トルエン/thf)中で調製した。0.6mLの上記ニッケル溶液を0.2mLのd−thfと混合した後、この溶液の19FNMRを実行した。1つのニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された:−118.4(オルト−F,2F)、−162.5(パラ−F,F)、−166.0(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図1に示す。
【0069】
触媒比較例2
(η−トルエン)Ni(Cの溶液を、触媒例1と同じ溶媒混合物(シクロヘキサン/EtOAc/thf)中で調製した。0.6mLの上記Ni溶液を0.2mLのd−thfと混合した後、この溶液の19FNMRスペクトルを得た。1つの種が観察された:116.9(オルト−F,2F)、−160.2(パラ−F,F)、−164.1(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図2に示す。
【0070】
触媒例1
PrMgCl(0.38mL、0.76mmol)をシクロヘキサン(0.38mL)で希釈した。次に、室温において、CBr(188.0mg、0.76mmol)を上記PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を室温において[Ni(acac)](59.1mg、0.23mmol)に滴下し、得られた混合物を十分なEtOAcで希釈して、該混合物の濃度をNi基準で0.2Mにした。0.6mLの上記ニッケル溶液を0.2mLのd−thfと混合した後、この溶液の19FNMRスペクトルを得た。4つの異なるニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された(ペンタフルオロフェニルグリニャールと水または酸などのポルチコ(portico)不純物との反応からの副産物として形成されるCHと共に):種A:−115.4(オルト−F,2F)、−165.7(パラ−F,F)、−168.4(メタ−F,2F);種B:−114.4(オルト−F,2F)、−116.1(オルト−F,4F)、−168.1(パラ−F,1F)、−169.0(パラ−F,2F)、−165.2(メタ−F,2F)、−166.0(メタ−F,4F);種C:−116.2(オルト−F,2F)、−167.4(パラ−F,F)、−168.8(メタ−F,2F);種T:−113.9(オルト−F,2F)、−170.8(パラ−F,F)、−169.8(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図3に示す。種A、B、CおよびTの積分比は、それぞれ、41%、5%、53%および1%であった。
【0071】
触媒例2
Br(7.11g、28.8mmol)を、0℃において、PrMgCl(14.4mL、28.8mmol)に液下した。次に、この溶液をシクロヘキサン(3mL)で希釈し、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、0℃において、シクロヘキサン(5mL)中の[Ni(acac)](2.12g、8.25mmol)懸濁液に滴下して加え、得られた混合物を十分なEtOAcで希釈して、該混合物の濃度をNi基準で0.2Mにした。0.6mLの上記希釈混合物を0.2mLのd−thfと混合した後、この混合物の19FNMRスペクトルを得た。4つの異なるニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された(ペンタフルオロフェニルグリニャールと水または酸などのポルチコ不純物との反応からの副産物として形成されるCHと共に):種A:−115.4(オルト−F,2F)、−165.7(パラ−F,F)、−168.4(メタ−F,2F);種B:−114.4(オルト−F,2F)、−116.1(オルト−F,4F)、−168.1(パラ−F,1F)、−169.0(パラ−F,2F)、−165.2(メタ−F,2F)、−166.0(メタ−F,4F);種C:−116.2(オルト−F,2F)、−167.4(パラ−F,F)、−168.8(メタ−F,2F);種T:−113.9(オルト−F,2F)、−170.8(パラ−F,F)、−169.8(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図4に示す。種A、B、CおよびTの積分比は、それぞれ、38%、7%、47%および8%であった。
【0072】
触媒例3
thf(0.50mL、1.0mmol)中のPrMgClを、室温においてCBr(248.0mg、1.0mmol)に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温において、シクロヘキサン(0.50mL)中の[Ni(acac)](73.4mg、0.29mmol)の懸濁液に滴下した。得られた油性溶液を十分なEtOAcで希釈して、該混合物の濃度をNi基準で0.2Mにした。0.6mLの上記希釈混合物を0.2mLのd−thfと混合した後、この溶液の19FNMRスペクトルを得た。4つの異なるニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された(ペンタフルオロフェニルグリニャールと水または酸などのポルチコ不純物との反応からの副産物として形成されるCHと共に):種A:−115.4(オルト−F,2F)、−165.7(パラ−F,F)、−168.4(メタ−F,2F);種B:−114.4(オルト−F,2F)、−116.1(オルト−F,4F)、−168.1(パラ−F,1F)、−169.0(パラ−F,2F)、−165.2(メタ−F,2F)、−166.0(メタ−F,4F);種C:−116.2(オルト−F,2F)、−167.4(パラ−F,F)、−168.8(メタ−F,2F);種T:−113.9(オルト−F,2F)、−170.8(パラ−F,F)、−169.8(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図5に示す。種A、B、CおよびTの積分比は、それぞれ、33%、5%、29%および33%であった。
【0073】
触媒例4
Br(248.0mg、1.0mmol)をシクロヘキサン(0.50mL)中に希釈した点を除いて、触媒例3と同じである。0.6mLの上記混合物を0.2mLのd−thfと混合した後、この混合物の19FNMRスペクトルを得た。4つの異なるニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された(ペンタフルオロフェニルグリニャールと水または酸などのポルチコ不純物との反応からの副産物として形成されるCHと共に):種A:−115.4(オルト−F,2F)、−165.7(パラ−F,F)、−168.4(メタ−F,2F);種B:−114.4(オルト−F,2F)、−116.1(オルト−F,4F)、−168.1(パラ−F,1F)、−169.0(パラ−F,2F)、−165.2(メタ−F,2F)、−166.0(メタ−F,4F);種C:−116.2(オルト−F,2F)、−167.4(パラ−F,F)、−168.8(メタ−F,2F);種T:−113.9(オルト−F,2F)、−170.8(パラ−F,F)、−169.8(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図6に示す。種A、B、CおよびTの積分比は、それぞれ、9%、2%、25%および64%であった。
【0074】
触媒例5
PrMgCl(2.0mL、4.0mmol)をthf(6.5mL)中に希釈した。次に、CBr(0.98g、4.0mmol)を、室温においてPrMgCl溶液に液滴で添加して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温において、thf(2mL)中の[Ni(acac)](0.2g、0.78mmol)の緑色の溶液に滴下した。0.6mLの上記混合物を0.2mLのd−thfと混合した後、得られた混合物の19FNMRスペクトルを得た。3つの異なるニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された(ペンタフルオロフェニルグリニャールと水または酸などのポルチコ不純物との反応からの副産物として形成されるCHと共に):種A:−115.4(オルト−F,2F)、−165.7(パラ−F,F)、−168.4(メタ−F,2F);種B:−114.4(オルト−F,2F)、−116.1(オルト−F,4F)、−168.1(パラ−F,1F)、−169.0(パラ−F,2F)、−165.2(メタ−F,2F)、−166.0(メタ−F,4F);種C:−116.2(オルト−F,2F)、−167.4(パラ−F,F)、−168.8(メタ−F,2F)。上記19FNMRスペクトルを図7に示す。種A、B、およびCの積分比は、それぞれ、7%、67%、および26%であった。
【0075】
触媒例6(種C)
PrMgCl(2.0mL、4.0mmol)をthf(6.5mL)中に希釈した。次に、CBr(0.98g、4.0mmol)を、室温において、PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を室温において、thf(2mL)中の[Ni(acac)](0.2g、0.78mmol)の緑色の溶液に滴下した。次に、この混合物にn−ヘキサン(10mL)を滴下して、該混合物を4℃に冷却した。3日後、赤色の結晶が得られ、濾過して[Ni(C(μ−Cl)Mg(thf)]を得た(0.3g、0.39mmol、50%収率)。これらの結晶は、X線回折に適していた(図8)。上記結晶はthf/EtOAc(50:50)混合物に可溶であった。0.6mLの上記ニッケル溶液を0.2mLのd−thfと混合した後、溶解した結晶の19FNMRスペクトルを得た。種C:−116.2(オルト−F,2F)、−167.4(パラ−F,F)、−168.8(メタ−F,2F)。種Cの結晶構造およびその19FNMRスペクトルを、それぞれ、図8および9に示す。
【0076】
触媒例7(種T)
PrMgCl(0.50mL、1.0mmol)をシクロヘキサン(0.5mL)中に希釈した。次に、CBr(248mg、1.0mmol)を、室温において、PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温において、シクロヘキサン(0.5mL)中の[Ni(acac)](59.1mg、0.23mmol)懸濁液に滴下した。得られた懸濁液をEtOAc(2mL)で希釈し、次いで濾過した。次に、得られたオレンジ色の混合物にn−ヘキサン(10mL)を上層として添加し、4℃で冷却した。3日後、2つの層の拡散によって黄色の結晶が得られ、濾過して[MgCl(thf)][Ni(C]を得た(0.13g、0.07mmol、30%収率)。これらの結晶は、単結晶X線回折研究に適していた。上記結晶は、thf/EtOAcの混合物に可溶であり、上記結晶を溶解した溶液0.6mLを0.2mLのd−thfと混合した後、該溶液の19FNMRスペクトルを得た。種T:−113.9(オルト−F,2F)、−170.8(パラ−F,F)、−169.8(メタ−F,2F)。種Tの結晶構造およびその19FNMRスペクトルを、それぞれ、図10および11に示す。
【0077】
触媒例8
PrMgCl(0.33mL、0.66mmol)をトルエン(0.33mL)中に希釈した。次に、室温においてCBr(160.0mg、0.66mmol)を滴下して、透明な黄色の溶液を得た。次に、この黄色の溶液を、室温において、[Ni(Ethex)](93.0mg、0.27mmol)のトルエン(0.2mL)溶液に滴下し、得られた混合物をトルエンで希釈して、該混合物の濃度をNi基準で0.2Mにした。0.6mLの上記混合物を0.2mLのd−thfと混合した後、この混合物の19FNMRスペクトルを得た。この溶液の19FNMRスペクトルにおいて、2つの異なるニッケルペンタフルオロフェニル種が観察された。種A:−115.2(オルト−F,2F)、−166.3(パラ−F,F)、−168.1(メタ−F,2F);種B:−114.7(オルト−F,2F)、−116.3(オルト−F,4F)、−167.8(パラ−F,1F)、−168.3(パラ−F,2F)、−165.3(メタ−F,2F)、−166.4(メタ−F,4F)。上記19FNMRスペクトルを図12に示す。
【0078】
触媒例9
PrMgCl(0.37mL、0.74mmol)をシクロヘキサン(0.38mL)中に希釈した。CBr(183.0mg、0.74mmol)を室温において、PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この溶液を、室温において、[Pd(acac)](65.36mg、0.21mmol)に滴下し、得られた混合物をEtOAcで希釈して、該混合物の濃度をPd基準で0.2Mにした。
【0079】
合成例1
シクロヘキサン(668mL)およびMEK(116mL)中にMGENB(53.7g、298mmol)、DeNB(116.3g、497mmol)およびPENB(39.4g、199mmol)を含む混合物を反応容器に加えた。このモノマー混合物を窒素で15分間スパージし、60℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例1に係る0.2Mの触媒混合物41.2mLを上記モノマー反応混合物に加えた。触媒を除去した後、重合溶液をMeOHと混ぜ合わせてポリマーを沈殿させた。濾過によりポリマーを単離し、次いで真空オーブン中で一晩乾燥させた。収率は186.4g(89%)であり、Mw=69200、Mn=30000であった。
【0080】
合成例2
トルエン(175mL)およびMEK(21mL)中にMGENB(14.9g、83mmol)、DeNB(19.4g、83mmol)およびPENB(21.9g、110mmol)を含む混合物を、攪拌手段を備えた反応容器に入れた。上記モノマー混合物を窒素で15分間スパージし、60℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例8に係る0.2Mの混合物13.8mLを上記例モノマー反応混合物に加えた。この混合物を5時間攪拌した。触媒を除去した後、重合溶液をMeOHと混ぜ合わせてポリマーを沈殿させた。濾過によりポリマーを単離し、次いで真空オーブン中で一晩乾燥させた。収率は47g(87%)であり、Mw=64900、Mn=32400であった。
【0081】
合成例3
ヘプタン(203mL)およびMAK(32mL)中にMGENB(14.9g、83mmol)、DeNB(19.4g、83mmol)およびPENB(21.9g、110mmol)を含む混合物を、攪拌手段を備えた反応容器に入れた。このモノマー混合物を窒素で15分間スパージし、50℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例1に係る0.2Mの混合物55.0mLを上記モノマー反応混合物に加えた。この混合物を3時間攪拌した。次いで、水(5mL)を加えて反応を終結させた。収率は54.5g(97%)であり、Mw=88200、Mn=33900であった。
【0082】
合成例4
EtOAc(90mL)およびシクロヘキサン(98mL)中にMGENB(13.4g、74mmol)、DeNB(29.1g、124mmol)およびPENB(9.84g、50mmol)を含む混合物を、攪拌手段を備えた反応容器に入れた。このモノマー混合物を窒素で15分間スパージし、50℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例1に係る0.2Mの混合物41.2mLを上記モノマー反応混合物に加えた。この混合物を3時間攪拌した。次いで、水(5mL)を加えて反応を終結させた。収率は47.1g(94%)であり、Mw=83800、Mn=32400であった。
【0083】
合成例5〜14
例5〜14では、DeNB/MGENB(70/30)の共重合において、第10族金属化合物に添加されるペンタフルオロフェニルグリニャールの当量を異ならせることによって得られた種々の触媒混合物の活性を検討した。具体的には、以下の例は、第10族金属化合物に添加されたペンタフルオロフェニルグリニャールの量に応じて、得られるポリマーの分子量(Mw)、多分散性(PD)および収率が変化することを説明する。
【0084】
合成例5
シクロヘキサン(18.5mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)、DeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を反応容器に加えた。このモノマー混合物を窒素で15分間スパージし、60℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例1に係る0.2Mの混合物1.0mLを上記モノマー反応混合物に添加した。この混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0085】
例6〜14のそれぞれでは、ペンタフルオロフェニルグリニャールの量を、以下の表2に示されるように変更したことを除いてこの実験を繰り返した。
【0086】
【表2】

【0087】
図13および14には、表2のデータをグラフで示している。具体的には、例5〜14のNi(acac)系においてニッケルに添加されるペンタフルオロフェニルグリニャールの当量数を、図13では収率およびMwに対してプロットし、図14ではPDおよびMwに対してプロットしている。
【0088】
合成例15〜18
これらの例は、DeNB/PENB/MGENBの重合において、異なる温度での第10族金属触媒の活性を実証するものである。
【0089】
各重合のために、トルエン(16mL)およびMEK(4.2mL)中にMGENB(1.5g、8.3mmol)、DeNB(1.9g、8.3mmol)およびPENB(2.2g、11.1mmol)を含む混合物を、攪拌手段を備えた反応容器に入れた。このモノマー混合物を窒素で15分間スパージし、次に、各実験ランに対して以下の表3に示す温度に加熱した。表3に示す温度に到達したら、触媒例8に係る0.2Mの触媒錯体混合物1.2mLを上記モノマー反応混合物に添加した。次に、この反応混合物を3時間攪拌し、次いで水(0.5mL)を添加して終結させた。各例について、金属錯体の添加量は93mgであり、PrMgClの量は0.45mLであり、そしてCBrの量は0.22gであった。それぞれのランの温度、転化率、Mw、MnおよびPDを、上述した表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
合成例19〜24
以下の例は、異なるモノマーに対する第10族金属触媒の活性を説明するものである。
【0092】
合成例19
モノマーであるTFSNB(25.78mmol)をシクロヘキサンおよびMEKで希釈して、25重量%のモノマー溶液を調製した。この溶液を適切な反応容器に加え、該モノマー混合物を窒素で15分間スパージし、次いで60℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例1に係る0.2Mの触媒錯体混合物1.0mLを上記モノマー反応混合物に添加した。この反応混合物を60℃で3時間攪拌し、次に水(0.5mL)を添加して終結させた。
【0093】
例20〜24のそれぞれでは、モノマーを以下の表4に示されるものに変えたことを除いて、合成例19の手順を繰り返した。
【0094】
【表4】

【0095】
合成例25−33
以下の例は、Ni以外の金属を有する触媒錯体の活性を説明するものである。
【0096】
使用される触媒錯体の形成にあたっては、各実験についてPrMgClおよびCBrの量、ならびに金属錯体の量および種類を以下の表5に示されるとおりとした点を除いては、触媒例1の基本手順を用いた。重合(または重合の試行)のために、シクロヘキサン(18.5mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を有する反応容器に、各実験用に形成された触媒錯体を注入し、60℃に予熱した。上記反応混合物をその温度に保持して3時間攪拌し、次いで水(0.5mL)を添加して終結させた。表に示されるように、第10族金属錯体を使用しなかった例29〜32では重合生成物は全く観察されなかったが、第10族金属錯体を使用した例25〜28および31ではモノマーの重合が観察された。
【0097】
【表5】

【0098】
合成例34〜39
以下の例は、触媒として活性な種を生成するためには、第10族金属錯体と、PrMgClおよびCBrの両方との組み合わせが必要であることを説明するものである。具体的には、以下の表6に示されるように、例示的なNiおよびPd金属錯体のそれぞれについて、重合反応を3回試行した。これらの反応のうち2つではPrMgClまたはCBrの一方を除外し、第3の試行では両方を存在させた。この結果から、PrMgClおよびCBrの両方が提供された場合にのみポリマー生成物が得られたことが容易に分かる。例34〜39のそれぞれで行われる手順は、以下および表6に示される。
【0099】
合成例34
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作はドライボックスの内部で行った。PrMgCl(0.33mL、0.66mmol)をトルエン(0.33mL)中に希釈した。この溶液を、室温において、[Ni(Ethex)](93.0mg、0.27mmol)に滴下し、得られた混合物を、金属(Ni)基準で0.2Mの濃度までトルエンにより希釈した。
【0100】
この溶液を、トルエン(16.7mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物に注入し、反応容器に添加し、60℃に加熱した。この混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0101】
合成例35
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作はドライボックスの内部で行った。CBr(163.0mg、0.66mmol)をトルエン(0.33mL)中に希釈した。この溶液を、室温において、[Ni(Ethex)](93.0mg、0.27mmol)に滴下し、得られた混合物を金属基準で0.2Mの濃度までトルエンにより希釈した。
【0102】
この希釈混合物を、トルエン(16.7mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を有する反応容器に注入し、60℃に加熱した。この反応混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0103】
合成例36
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作はドライボックスの内部で行った。PrMgCl(0.33mL、0.66mmol)をトルエン(0.33mL)中に希釈した。次に、CBr(163.0mg、0.66mmol)を、室温において、PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この溶液を、室温において、[Ni(Ethex)2](93.0mg、0.27mmol)に滴下し、得られた混合物をNi基準で0.2Mの濃度までトルエンにより希釈した。
【0104】
この希釈混合物を、トルエン(16.7mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を有する反応容器に注入し、60℃に加熱した。この反応混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0105】
合成例37
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作はドライボックスの内部で行った。PrMgCl(0.37mL、0.74mmol)をシクロヘキサン(0.37mL)中に希釈した。この溶液を、室温において、[Pd(acac)](65.36mg、0.21mmol)に滴下し、得られた混合物を金属(Pd)基準で0.2Mの濃度までEtOAcにより希釈した。
【0106】
この希釈混合物を、シクロヘキサン(18.5mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を有する反応容器に注入し、60℃に加熱した。この反応混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0107】
合成例38
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作はドライボックスの内部で行った。CBr(183.0mg、0.74mmol)をシクロヘキサン(0.37mL)中に希釈した。この溶液を、室温において、[Pd(acac)](65.36mg、0.21mmol)に滴下し、得られた溶液を金属(Pd)基準で0.2Mの濃度までEtOAcにより希釈した。
【0108】
この希釈混合物を、シクロヘキサン(18.5mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を有する反応容器に注入し、60℃に加熱した。この反応混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0109】
合成例39
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作はドライボックスの内部で行った。PrMgCl(0.37mL、0.74mmol)をトルエン(0.37mL)中に希釈した。次に、CBr(183.0mg、0.74mmol)を、室温において、PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温において、[Pd(acac)](65.36mg、0.21mmol)に滴下し、得られた混合物を金属(Pd)基準で0.2Mの濃度までEtOAcにより希釈した。
【0110】
この希釈混合物を、シクロヘキサン(18.5mL)およびMEK(2.5mL)中にMGENB(1.4g、7.8mmol)およびDeNB(4.2g、17.9mmol)を含む混合物を有する反応容器に注入し、60℃に加熱した。この反応混合物を60℃で3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0111】
【表6】

【0112】
合成例40〜46
以下の例は、種々のタイプのハロゲン化アルキルマグネシウム、ペンタフルオロフェニル基を含有する種、およびニッケル塩を用いて調製した触媒錯体の活性を説明するものである。
【0113】
合成例40
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。THF(23.3g、47.7mmol)中2.0MのPrMgClを、シクロヘキサン(18.5g、225mmol)の添加により希釈した。次に、0℃で攪拌しながら、上記PrMgCl溶液にCBr(11.8g、47.7mmol)を滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらNi(acac)(3.5g、13.64mmol)に添加し、得られた混合物をEtOAc(21.42g、243mmol)で希釈した。
【0114】
この希釈混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0115】
合成例41
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。CBr(11.8g、47.7mmol)を、室温で攪拌しながらTHF(47.7g、47.7mmol)中1.0Mの臭化エチルマグネシウム(EtMgBr)溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらNi(acac)(3.5g、13.64mmol)に添加した。
【0116】
得られた混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0117】
合成例42
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。CBr(11.8g、47.7mmol)を、0℃で攪拌しながら、THF(46.8g、47.7mmol)中1.0Mの臭化イソプロピルマグネシウム(PrMgBr)溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらNi(acac)(3.5g、13.64mmol)に添加した。
【0118】
得られた混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0119】
合成例43
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。THF(23.3g、47.7mmol)中2.0MのPrMgClをシクロヘキサン(18.5g、225mmol)で希釈した。次に、ペンタフルオロベンゼン(CH)(8.0g、47.7mmol)を、0℃で攪拌しながら、上記PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらNi(acac)(3.5g、13.64mmol)に添加し、得られた混合物をEtOAc(21.42g、243mmol)で希釈した。
【0120】
この希釈混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0121】
合成例44
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。ペンタフルオロベンゼン(CH)(8.0g、47.7mmol)を、室温で攪拌しながらTHF(47.7g、47.7mmol)中1.0Mの臭化エチルマグネシウム(EtMgBr)溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらNi(acac)(3.5g、13.64mmol)に添加した。
【0122】
得られた混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0123】
合成例45
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。THF(23.3g、47.7mmol)中2.0MのPrMgClをシクロヘキサン(18.5g、225mmol)で希釈した。次に、CBr(11.8g、47.7mmol)を、0℃で攪拌しながら上記PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらテトラメチルヘプタンジオン酸ニッケル(Ni(TMHD)2)(5.8g、13.64mmol)に添加し、得られた混合物をEtOAc(21.42g、243mmol)で希釈した。
【0124】
この希釈混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0125】
合成例46
使用した全ての溶媒は無水であり、全ての操作は窒素下で行った。THF(23.3g、47.7mmol)中2.0MのPrMgClをシクロヘキサン(18.5g、225mmol)で希釈した。次に、CBr(11.8g、47.7mmol)を、0℃で攪拌しながら上記PrMgCl溶液に滴下して、透明な黄色の溶液を得た。この黄色の溶液を、室温で攪拌しながらトリフルオロ酢酸ニッケル(Ni(TFA))(5.4g、13.64mmol)に添加し、得られた混合物をEtOAc(21.42g、243mmol)で希釈した。
【0126】
この希釈混合物を、52.5℃に予熱したMGENB(88.4g、491mmol)、DeNB(115.0g、491mmol)、PENB(129.7g、654mmol)、シクロヘキサン(1045g、10.43mol)およびMEK(189.3g、2.15mol)の混合物を有する反応容器に注入した。触媒の注入が完了したら、その反応混合物を約0.43℃/分の昇温速度で67.5℃まで加熱し、次いで一定温度に保持した。上記反応混合物を、上記触媒の注入後3時間攪拌した。次に、水(5g)を添加して反応を終結させた。
【0127】
例40〜46のそれぞれの収率、Mw、MnおよびPDを表7に示す。ここで、各ランにおける収率は、ポリマー溶液中の未反応モノマーの量をガスクロマトグラフィで分析することによって決定した。
【0128】
【表7】

【0129】
合成例47
シクロヘキサン(10.6mL)およびMEK(1.8mL)中にMGENB(0.86g、4.8mmol)、DeNB(1.86g、7.9mmol)およびPENB(0.63g、3.2mmol)を含む混合物を、攪拌手段を備えた反応容器に入れた。上記混合物を窒素で15分間スパージし、60℃に加熱した。この温度に到達したら、thf(0.35mL)およびEtOAc(0.35mL)の混合物中に溶解した[Ni(C(μ−Cl)Mg(thf)](種C、0.1g、0.13mmol)を、上記モノマー反応混合物に添加した。その反応混合物を3時間攪拌した。次いで、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0130】
合成例48
重合(または、重合の試行)48にあたっては、各実験について特定の金属錯体の量が以下の表8に示されるとおりであることを除いて、合成例47の基本手順を用いた。
【0131】
シクロヘキサン(10.6mL)およびMEK(1.8mL)中にMGENB(0.86g、4.8mmol)、DeNB(1.86g、7.9mmol)およびPENB(0.63g、3.2mmol)を含む混合物を、攪拌手段を備えた反応容器に入れた。上記混合物を窒素で15分間スパージし、60℃に加熱した。この温度に到達したら、触媒例5に係る0.09Mの触媒錯体の混合物1.5mLを、上記モノマー反応混合物に添加した。その反応混合物を3時間攪拌した。次に、水(0.5mL)を添加して反応を終結させた。
【0132】
【表8】

【0133】
これらの例は、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムおよびハロヒドロカルビル化合物がどのように結合してグリニャール化合物を形成し、これが次に第10族金属化合物と接触されて未知の構造の触媒を形成するのかを説明するものである。この族の構造および作用のメカニズムは、ポリシクロオレフィンを形成するために有効に使用される第10族金属触媒を形成する。
【0134】
既に、本発明の実施形態が、ここに記載されるポリマー組成物を有利で新規な方法により製造するための触媒および方法を提示することが理解されるはずである。さらに、このような触媒、方法、およびそのポリマー組成物が、ここに開示される特定の実施形態のいずれかに限定されることはなく、むしろこのような開示は本発明の範囲および趣旨を特徴づけるものであって、かかる発明はここに開示される触媒、方法および組成物の変更もその範囲に含むことが意図され、特許請求の範囲によって定義されるように、このようなものも本発明の範囲内に入ることが理解されるであろう。
【0135】
例えば、本発明の実施形態では、オレフィン重合触媒は、2段階プロセスを用いてin situで形成される。上記オレフィン重合触媒は、第1の適切な溶媒系中でハロヒドロカルビルグリニャールを第10族金属化合物と接触させることによって形成される。ハロヒドロカルビルグリニャールは、第1の溶媒系と同じでも異なっていてもよい第2の適切な溶媒系中でハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムをハロヒドロカルビル化合物と接触させることによって形成される。
【0136】
上記オレフィン重合触媒は、単一の種でもよいし、2つ以上の活性触媒種を含有する多成分系でもよい。ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウム、ハロヒドロカルビル化合物、第10族金属化合物、溶媒、反応性成分の濃度、条件(温度、圧力)のうち1つまたは複数のアイデンティティを変更することによって、オレフィン重合触媒の特定の種、多数の種、および/または多数の種の所望の比率を選択的に得ることができる。異なる触媒種または触媒種の異なる比率を用いて、オレフィン重合において別の目的(高収率、高PD、高/低MW)を達成することができる。
【0137】
上記オレフィン重合触媒は、すぐに使用されてもよく、保存されて都合のよいときに使用されてもよい。ここに記載されるオレフィン重合触媒の利点は、その後のオレフィン重合において所望の目的を達成するための触媒系をあつらえることが可能なことである。ここに記載されるオレフィン重合触媒の別の利点は、シクロオレフィン重合に関してフッ素化グリニャール試薬を用いることに通常つきまとう安全上の懸念が軽減および/または排除されることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムをハロヒドロカルビル化合物と接触させてハロヒドロカルビルグリニャールを形成することと、
前記ハロヒドロカルビルグリニャールを第10族金属化合物と接触させて、in situ多成分オレフィン重合触媒系を形成することと
を含む、2つ以上の触媒活性種を有するin situ多成分オレフィン重合触媒系の形成方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムが、ヨウ化アルキルマグネシウム、ヨウ化アリールマグネシウム、塩化アルキルマグネシウム、臭化アルキルマグネシウム、塩化アリールマグネシウム、臭化アリールマグネシウム、塩化アルケニルマグネシウム、および臭化アルケニルマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムが、ヨウ化ベンジルマグネシウム、ヨウ化n−ブチルマグネシウム、塩化アリルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、臭化n−ブチルマグネシウム、塩化n−ブチルマグネシウム、塩化t−ブチルマグネシウム、臭化4−クロロフェニルマグネシウム、塩化シクロヘキシルマグネシウム、塩化シクロペンタジエニルマグネシウム、塩化シクロペンチルマグネシウム、臭化シクロプロピルマグネシウム、臭化3,5−ジメチルフェニルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化n−ヘプチルマグネシウム、臭化n−ヘキシルマグネシウム、臭化イソブチルマグネシウム、塩化イソブチルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、塩化イソプロピルマグネシウム、臭化4−メトキシフェニルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、塩化メチルマグネシウム、塩化n−オクチルマグネシウム、臭化n−ペンチルマグネシウム、塩化n−ペンチルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化n−プロピルマグネシウム、塩化n−プロピルマグネシウム、塩化2−トリルマグネシウム、塩化4−トリルマグネシウム、塩化[(トリメチルシリル)メチル]マグネシウム、および臭化ビニルマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロヒドロカルビル化合物が、ハロベンゼン、ハロアルキル置換ハロベンゼン、およびハロトルエンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロヒドロカルビル化合物が、クロロペンタフルオロベンゼン、ブロモペンタフルオロベンゼン、ヨードペンタフルオロベンゼン、ジ−トリフルオロメチル−ブロモ−ベンゼン、トリフルオロメチル−ブロモ−ベンゼン、臭化ジフルオロフェニル、臭化トリフルオロフェニル、臭化テトラフルオロフェニル、ブロモトリクロロベンゼン、ブロモテトラクロロベンゼン、ブロモペンタクロロベンゼン、臭化2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジクロロフェニル、ジ−トリフルオロメチル−フルオロ−クロロメタンおよびペンタフルオロベンゼンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロヒドロカルビルグリニャールが、ハロゲン化ハロフェニルマグネシウム、ハロゲン化ハロアルキル置換フェニルマグネシウム、およびハロゲン化ハロトルエンマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロヒドロカルビルグリニャールが、臭化ペンタフルオロフェニルマグネシウム、塩化ペンタフルオロフェニルマグネシウム、臭化ジ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、塩化ジ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、臭化トリ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、塩化トリ−トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、臭化トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、塩化トリフルオロメチル−フェニルマグネシウム、臭化ジフルオロフェニルマグネシウム、塩化ジフルオロフェニルマグネシウム、臭化トリフルオロフェニルマグネシウム、臭化テトラフルオロフェニルマグネシウム、臭化2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジクロロフェニルマグネシウム、塩化ジ−トリフルオロメチル−フルオロ−メチル−マグネシウム、臭化ジ−トリフルオロメチル−フルオロ−メチル−マグネシウム、臭化トリクロロフェニルマグネシウム、塩化トリクロロフェニルマグネシウム、臭化テトラクロロフェニルマグネシウム、塩化テトラクロロフェニルマグネシウム、臭化ペンタクロロフェニルマグネシウムおよび塩化ペンタクロロフェニルマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第10族金属化合物が、酢酸ニッケル、アセチルアセトン酸ニッケル、エチルヘキサン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、トリフルオロ酢酸ニッケル、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸ニッケル、カルボン酸ニッケル、シクロヘキサン酪酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、およびステアリン酸ニッケルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第10族金属化合物が、ジベンゾイルメタン酸ニッケル、ベンゾイルメタン酸ニッケル、カルボン酸ニッケル、シクロヘキサン酪酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、酢酸パラジウム、アセチルアセトン酸パラジウム、エチルヘキサン酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸パラジウム、カルボン酸パラジウム、アセチルアセトン酸白金からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
in situ第10族金属触媒をオレフィンモノマーと接触させてポリマーを形成することを含むポリマーの製造方法であって、前記in situ第10族金属触媒は、ハロゲン化ヒドロカルビルマグネシウムをハロヒドロカルビル化合物と接触させてハロヒドロカルビルグリニャールを形成することと、前記ハロヒドロカルビルグリニャールを第10族金属化合物と接触させてin situ第10族金属触媒を形成することとによって製造される、ポリマー製造方法。
【請求項11】
前記in situ第10族金属触媒を第1のシクロオレフィンモノマーおよび第2のシクロオレフィンモノマーと接触させ、前記第1のシクロオレフィンモノマーが前記第2のシクロオレフィンモノマーとは異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シクロオレフィンモノマーが、式C:
【化1】

(式中、Xは、−CH−、−CH−CH−、または−O−から選択され、mは0〜5の整数であり、そしてR、R、R、およびRは、水素、1〜20個の炭素原子を含有するヒドロカルビル、1〜20個の炭素原子を含有するハロヒドロカルビル、および1〜20個の炭素原子を含有するペルハロカルビルから独立して選択され、前記ヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルおよびペルハロカルビル基は、場合により、O、N、S、PおよびSiから選択される1つまたは複数のへテロ原子、および式:
−A−Y
によって表される基を含み、ここで、Aは、架橋していてもよいC〜C20のヒドロカルビル、ハロヒドロカルビルもしくはペルハロカルビル基、またはかかる基にO、N、S、PおよびSiから選択される1つまたは複数のへテロ原子を含む基であり、そしてYは、置換または非置換のマレイミド、トリアルコキシシリル、酢酸ヒドロキシアルキル、ヒドロキシペルフルオロアルキル、アルキルグリシジルエーテルまたはその他のエポキシ含有基、ペルフルオロアルキルスルホンアミド、およびエステルまたは無水物などのカルボン酸誘導体を含む官能基である)
によって表される化合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
式II、III、IVまたはV
【化2】

(式中、Mは、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群からの1つまたは複数から独立して選択される第10族金属または金属イオンであり;R、R、R、R、R、R10およびR11は、ハロフェニル、ハロアルキル置換ハロフェニル、ハロメチルフェニル、ハロアルキル配位子からなる群からそれぞれ独立して選択され;Lは、溶媒配位子、またはハロ配位子、アセチルアセトン酸、エチルヘキサン酸、ナフテン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸、シクロヘキサン酪酸、オクタン酸、プロピオン酸からなる群から選択される配位子であり;そしてZは、Mgカチオン、Mgカチオン錯体、および配位子L(ここで、Lは架橋可能な非溶媒配位子である)と配位したMgカチオンを含む錯体から選択される対カチオンであり、ここで、Mgは2+酸化状態にあり、pおよびqは、第10族金属錯体が中性であるように1または2の値を有する)
によって表される少なくとも2つの構造を含む、第10族金属錯体を含むシクロオレフィン重合触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−518923(P2011−518923A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506470(P2011−506470)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041613
【国際公開番号】WO2009/132240
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(303043461)プロメラス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】