説明

IP電話端末およびセッション確立方法

【課題】呼制御サーバに要求される処理能力および通信トラヒックを低く抑えることのできるセッション確立技術を提供する。
【解決手段】発信先および発信元のSIPサーバ機能付IP電話端末1−2、1−3は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1経由でINVITEメッセージと302 Redirectメッセージを送受信することにより、互いのIPアドレスを取得する(S102〜S108)。そして、発信先および発信元のSIPサーバ機能付IP電話端末1−2、1−3は、互いのIPアドレスを用いて、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1を経由させずにSIPメッセージを直接送受信することにより、SIPシーケンスを実行して両者間にセッションを確立する(S109〜S118)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話端末に関し、特にIP電話端末間のセッション確立技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに通話したことのあるIP電話端末間におけるセッション確立に要する時間を短縮する技術が開示されている。この技術において、互いに通話したことのない発信元および発信先のIP電話端末は、呼制御サーバ経由で呼制御シーケンスを行ってセッションを確立するとともに、互いに通話相手のIPアドレスを取得する。その後、自身のIPアドレスに変更があった場合は、新しいIPアドレスを通話相手に通知することにより、互いに通話相手のIPアドレスを管理する。以降の呼制御シーケンスにおいては、呼制御サーバを経由せずに、互いに管理している通話相手のIPアドレスを用いて、呼制御メッセージを直接送受信することにより、セッションを確立する。
【0003】
この技術によれば、互いに通話したことのあるIP電話端末間の呼制御シーケンスにおいては、呼制御サーバでの呼制御メッセージの中継処理が省略されるため、セッション確立に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−272944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、互いに通話したことのないIP電話端末間のセッション確立のために、呼制御サーバ経由で呼制御シーケンスが実行される。互いに通話したことのない複数のIP電話端末間で呼制御シーケンスが同時に行われる可能性もあるため、このようなケースに備えて、呼制御サーバには高い処理能力が要求される。
【0006】
また、IP電話端末は、自身のIPアドレスが変更される都度、これまでに通話したことのあるIPアドレス取得済みのIP電話端末各々に、自身の最新のIPアドレスを通知しなければならず、通信トラヒックが増大する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、呼制御サーバに要求される処理能力および通信トラヒックを低く抑えることのできるセッション確立技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明において、発信元のIP電話端末は、呼制御サーバ経由で発信先のIP電話端末に接続要求を送信し、発信先のIP電話端末は、呼制御サーバより受信した接続要求から発信元のIP電話端末のアドレスを取得するとともに、呼制御サーバ経由で発信元のIP電話端末に自端末のアドレス通知を送信する。そして、発信元のIP電話端末は、呼制御サーバより受信したアドレス通知から発信先のIP電話端末のアドレスを取得する。それから、発信元および発信先のIP電話端末は、取得した互いのアドレスを用いて、呼制御サーバを経由せずに呼制御メッセージを送受信することにより呼制御シーケンスを実行して、両者間にセッションを確立する。
【0009】
例えば、本発明は、相手端末との間に確立されたセッションを介して前記相手端末と通話データを送受信するIP電話端末であって、
呼制御サーバ経由で前記相手端末から受信した自端末に対する接続要求に応答して、前記呼制御サーバ経由で前記相手端末に、自端末のアドレス通知を送信するアドレス通知送信手段と、
前記呼制御サーバ経由で前記相手端末に送信した前記相手端末に対する接続要求の応答として、前記呼制御サーバ経由で前記相手端末から、前記相手端末のアドレス通知を受信するアドレス通知受信手段と、
前記自端末に対する接続要求あるいは前記相手端末のアドレス通知により特定される前記相手端末のIPアドレスを用いて、前記呼制御サーバを経由せずに前記相手端末と呼制御メッセージを送受信することにより呼制御シーケンスを実行し、前記セッションを確立する呼制御手順実行手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、呼制御サーバに要求される処理能力および通信トラヒックを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るIP電話システムの概略図である。
【図2】図2は、本実施の形態に係るIP電話システムにおいて、SIPサーバ機能付IP電話端末1間のセッションが確立される場合の動作を説明するためのシーケンス図である。
【図3】図3は、SIPサーバ機能付IP電話端末1の概略機能構成図である。
【図4】図4(A)は、SIPサーバ機能付IP電話端末1の発信動作を説明するためのフロー図であり、図4(B)は、SIPサーバ機能付IP電話端末1の着信動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係るIP電話システムの概略図である。
【0014】
図示するように、本実施の形態に係るIP電話システムは、複数のSIP(Session Initiation Protcol)サーバ機能付IP電話端末1−1〜1−n(以下、単にSIPサーバ機能付IP電話端末1とも呼ぶ)がLAN3に接続されて構成されている。LAN3はGW(ゲートウェイ)2を介してWAN4に接続されている。また、WAN4には、少なくとも1台のIP電話端末5、SIPサーバ6等が接続されている。
【0015】
本実施の形態に係るIP電話システムでは、所定のルールに従って決定されたいずれか一台のSIPサーバ機能付IP電話端末1のみがSIPサーバ機能を有効にして、自端末1を含むすべてのSIPサーバ機能付IP電話端末1を配下におく。また、SIPサーバ機能付IP電話端末1間にセッションが確立される場合、発信元および発信先のSIPサーバ機能付IP電話端末1は、SIPサーバ(SIPサーバ機能を有効にしているSIPサーバ機能付IP電話端末1)経由で接続要求およびこの接続要求に対する応答としてのアドレス通知を送受して、互いのIPアドレスを取得する。そして、互いに取得した相手端末1のIPアドレスを用いて、SIPサーバを経由せずにSIPメッセージを直接送受信することにより呼制御シーケンスを実行する。
【0016】
図2は、本実施の形態に係るIP電話システムにおいて、SIPサーバ機能付IP電話端末1間にセッションが確立される場合の動作を説明するためのシーケンス図である。ここでは、SIPサーバ機能付IP電話端末1−2がSIPサーバ機能付IP電話端末1−3に発信する場合を例にとり説明する。なお、SIPサーバ機能付IP電話端末1−1がSIPサーバ機能を有効にしているものとする。
【0017】
SIPサーバ機能付IP電話端末1−2は、発信先(SIPサーバ機能付IP電話端末1−3)の電話番号の指定を伴う発信操作を操作者から受け付けると(S101)、この電話番号を発信先電話番号とし、自端末(SIPサーバ機能付IP電話端末1−2)の電話番号を発信元電話番号とする、自端末1−2のIPアドレス(発信元IPアドレス)の指定を伴うINVITEメッセージ(接続要求)を生成する。そして、このINVITEメッセージを、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1に送信する(S102)。
【0018】
これを受けて、SIPサーバ機能付IP電話端末1−1は、SIPサーバ機能により、SIPサーバ機能付IP電話端末1−2から受信したINVITEメッセージをSIPサーバ機能付IP電話端末1−3に中継する(S103)。
【0019】
SIPサーバ機能付IP電話端末1−3は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1からINVITEメッセージを受信すると、このINVITEメッセージで指定されている発信元電話番号(SIPサーバ機能付IP電話端末1−2の電話番号)を参照し、発信元が他のSIPサーバ機能付IP電話端末1−2であることを確認する(S104)。そして、このINVITEメッセージから発信元IPアドレス(SIPサーバ機能付IP電話端末1−2のIPアドレス)を取得する(S105)。それから、SIPサーバ機能付IP電話端末1−3は、このINVITEメッセージに対する応答として、自端末1−3のIPアドレスが記述された302 Redirectメッセージ(アドレス通知)を生成し、この302 Redirectメッセージを、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1に送信する(S106)。
【0020】
これを受けて、SIPサーバ機能付IP電話端末1−1は、SIPサーバ機能により、SIPサーバ機能付IP電話端末1−3から受信した302 Redirectメッセージを、INVITEメッセージの発信元であるSIPサーバ機能付IP電話端末1−2に中継する(S107)。
【0021】
SIPサーバ機能付IP電話端末1−2は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1から302 Redirectメッセージを受信すると、この302 Redirectメッセージで指定されているIPアドレス(SIPサーバ機能付IP電話端末1−3のIPアドレス)を発信先IPアドレスとして取得する(S108)。
【0022】
それから、SIPサーバ機能付IP電話端末1−2は、発信操作で指定された電話番号を発信先電話番号とし、自端末1−2の電話番号を発信元電話番号とするINVITEメッセージを再度生成する。そして、302 Redirectメッセージから取得した発信先IPアドレスを用いて、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1を経由させることなく直接SIPサーバ機能付IP電話端末1−3に、このINVITEメッセージを送信する(S109)。
【0023】
SIPサーバ機能付IP電話端末1−3は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1以外からINVITEメッセージを受信すると、このINVITEメッセージで指定されている発信元電話番号(SIPサーバ機能付IP電話端末1−2の電話番号)を参照し、発信元(SIPサーバ機能付IP電話端末1−2)が他のSIPサーバ機能付IP電話端末1であることを確認する(S110)。そして、このINVITEメッセージの発信元であるSIPサーバ機能付IP電話端末1−2に対して、180 Ringingメッセージ(暫定応答)を、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1を経由させることなく直接送信するとともに(S111)、着信鳴動を開始する(S112)。
【0024】
SIPサーバ機能付IP電話端末1−2は、INVITEメッセージ発信先であるSIPサーバ機能付IP電話端末1−3から180 Ringingメッセージを受信すると、RBT(Ringing Back Tone)の出力を開始する(S113)。
【0025】
一方、SIPサーバ機能付IP電話端末1−3は、操作者から応答操作を受け付けると(S114)、着信鳴動を停止するとともに(S115)、INVITEメッセージ発信元であるSIPサーバ機能付IP電話端末1−2に対して、200 OKメッセージ(接続応答)を、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1−1を経由させることなく直接送信する(S116)。
【0026】
SIPサーバ機能付IP電話端末1−2は、INVITEメッセージ発信先であるSIPサーバ機能付IP電話端末1−3から200 OKメッセージを受信すると、RBTの出力を停止する(S117)。
【0027】
これにより、SIPサーバ機能付IP電話端末1−2とSIPサーバ機能付IP電話端末1−3との間にセッションが確立され、両端末1−2、1−3間での通話が可能となる(S118)。
【0028】
つぎに、SIPサーバ機能付IP電話端末1の詳細を説明する。
【0029】
図3は、SIPサーバ機能付IP電話端末1の概略機能構成図である。
【0030】
図示するように、SIPサーバ機能付IP電話端末1は、マンマシンインターフェース部10と、LANインターフェース部11と、通信制御部12と、SIPサーバ機能部13と、サーバ機能制御部14と、通話処理部15と、呼制御部16と、を有する。
【0031】
マンマシンインターフェース部10は、操作者が電話をするためインターフェースであり、ダイヤルキー等を備えた操作パネル、LCD等の表示パネル、ハンドセット、およびスピーカ等を有する。
【0032】
LANインターフェース部11は、LAN3に接続するためのインターフェースである。
【0033】
通信制御部12は、LANインターフェース部11を介して、他のSIPサーバ機能付IP電話端末1、IP電話端末5、およびSIPサーバ6等との通信を制御する。
【0034】
SIPサーバ機能部13は、SIPサーバとして必要な処理を実行する。
【0035】
サーバ機能制御部14は、所定のルールに従い、LAN3に接続されているSIPサーバ機能付IP電話端末1のうち、いずれか一台のSIPサーバ機能付IP電話端末1のSIPサーバ機能部13のみが有効となるように、SIPサーバ機能部13の起動・停止を制御する。
【0036】
例えば、SIPサーバ機能部13が稼働中の場合、サーバ機能制御部14は、他のSIPサーバ機能付IP電話端末1からサーバ探索パケットを受信する都度、このパケットの送信元に応答パケットを送信する。一方、SIPサーバ機能部13が停止中の場合、定期的にサーバ探索パケットをLAN3にマルチキャスト送信する。そして、サーバ探索パケットに対する応答パケットの送信元のSIPサーバ機能付IP電話端末1を、SIPサーバとして呼制御部16に設定する。ここで、サーバ探索パケットに対する応答パケットを所定時間内に受信しなかった場合、乱数等を用いてランダムに決定された時間が経過するまで、他のSIPサーバ機能付IP電話端末1からサーバ起動パケットを受信するのを待つ。サーバ起動パケットを受信したならば、このサーバ起動パケットの送信元のSIPサーバ機能付IP電話端末1を、SIPサーバとして呼制御部16に設定する。一方、サーバ起動パケットを受信しなかったならば、自端末1のSIPサーバ機能部13を起動し、自端末1をSIPサーバとして呼制御部16に設定するとともに、サーバ起動パケットをLAN3にマルチキャスト送信する。
【0037】
その他に、複数のSIPサーバ機能付IP電話端末1のなかからいずれか一台のSIPサーバ機能付IP電話端末1のSIPサーバ機能部13のみを有効にする技術として、特開2008−205699号公報に記載の技術を利用することができる。
【0038】
通話処理部15は、RTP(Realtime Transport Protocol)に従い、呼制御部16によって確立されたセッションを介して相手端末と通話データを送受信する。そして、相手端末から受信した通話データを音声信号に復号してマンマシンインターフェース部10から出力するとともに、マンマシンインターフェース部10に入力された音声信号を通話データに符号化して相手端末に送信する。
【0039】
呼制御部16は、相手端末とのセッション確立を制御する。図示するように、呼制御部16は、サーバ情報記憶部161と、アドレス通知送信部162と、アドレス通知受信部163と、呼制御手順実行部164と、を有する。
【0040】
サーバ情報記憶部161には、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1の情報がサーバ機能制御部14により記憶される。
【0041】
アドレス通知送信部162は、呼制御手順実行部164の指示に従い、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で受信したINVITEメッセージに対する応答として、自端末1のIPアドレスが記述された302 Redirectメッセージを、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1に送信する。
【0042】
アドレス通知受信部163は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末に送信したINVITEメッセージに対する応答として、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1から302 Redirectメッセージを受信する。そして、この302 Redirectメッセージを呼制御手順実行部164に通知する。
【0043】
呼制御手順実行部164は、SIPに従い呼制御シーケンスを実行して、相手端末との間にセッションを確立する。
【0044】
ここで、呼制御手順実行部164は、マンマシンインターフェース部10を介して操作者から受け付けた発信操作により指定されている、あるいはSIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1から受信したINVITEメッセージにより特定される、相手端末の電話番号もしくはその番号体系が、他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号もしくはその番号体系として予め登録されているものである場合、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1から受信した302 RedirectメッセージあるいはINVITEメッセージにより特定される相手端末のIPアドレスを用いて、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由させずに直接、相手端末とSIPメッセージを送受信することにより、呼制御シーケンスを実行する。一方、相手端末の電話番号もしくはその番号体系が他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号もしくはその番号体系として予め登録されているものでない場合、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末とSIPメッセージを送受信することにより、呼制御シーケンスを実行する。
【0045】
図4(A)は、SIPサーバ機能付IP電話端末1の発信動作を説明するためのフロー図である。このフローは、呼制御部16がマンマシンインターフェース部10を介して操作者から発信操作を受け付けることにより開始される。
【0046】
まず、呼制御手順実行部164は、相手端末の電話番号を発信先電話番号とし、自端末1の電話番号を発信元電話番号とする、自端末1のIPアドレス(発信元IPアドレス)の指定を伴うINVITEメッセージを生成する。そして、このINVITEメッセージを、サーバ情報記憶部161に登録されたSIPサーバ機能付IP電話端末1(SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1)に送信する(S201)。そして、このSIPサーバ機能付IP電話端末1から相手端末のメッセージを受信するのを待つ(S202)。
【0047】
つぎに、呼制御手順実行部164は、サーバ情報記憶部161に登録されたSIPサーバ機能付IP電話端末1から相手端末のメッセージを受信したならば(S202でYES)、この受信した相手端末のメッセージが180 Ringingメッセージであるか、それとも302 Redirectメッセージであるかを調べる(S203)。
【0048】
相手端末のメッセージが180 Ringingメッセージである場合(S203で「180 Ringing」)、呼制御手順実行部164は、サーバ情報記憶部161に登録されたSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末とSIPに従った発信シーケンスを続行して、相手端末との間にセッションを確立する(S204)。
【0049】
一方、相手端末のメッセージが302 Redirectメッセージである場合(S203で「302 Redirect」)、呼制御手順実行部164は、この302 Redirectメッセージから相手端末(他のSIPサーバ機能付IP電話端末1)のIPアドレスを発信先IPアドレスとして取得する(S205)。それから、呼制御手順実行部164は、この発信先IPアドレスを用いて、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由させずに相手端末1とSIPメッセージを直接送受信することにより、SIPに従った発信シーケンス(INVITEメッセージの送信、180 Ringingメッセージの受信とRBTの出力開始、および200 OKメッセージの受信とRBTの出力停止)を実行して、相手端末1との間にセッションを確立する(S206)。
【0050】
図4(B)は、SIPサーバ機能付IP電話端末1の着信動作を説明するためのフロー図である。このフローは、呼制御部16が、LANインターフェース部11および通信制御部12を介して、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1からINVITEメッセージを受信することにより開始される。
【0051】
まず、呼制御手順実行部164は、INVITEメッセージで指定されている発信元番号またはその番号体系が他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号または番号体系として予め登録されているものと一致するか否かを判断する(S301)。
【0052】
INVITEメッセージで指定されている発信元電話番号またはその番号体系が他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号または番号体系と一致しない場合(S301でNO)、呼制御手順実行部164は、サーバ情報記憶部161に登録されたSIPサーバ機能付IP電話端末1(SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1)経由で、発信元電話番号により特定される相手端末とSIPメッセージを送受信することにより、SIPに従った着信シーケンス(180 Rinngingメッセージの送信と着信鳴動の開始、応答操作の受付による着信鳴動の停止と200 OKメッセージの送信)を実行して、相手端末との間にセッションを確立する(S302)。
【0053】
一方、INVITEメッセージで指定されている発信元番号またはその番号体系が他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号または番号体系と一致する場合(S301でYES)、呼制御手順実行部164は、このINVITEメッセージから発信元IPアドレスを取得するとともに(S303)、アドレス通知送信部162にアドレス通知を指示する。これを受けて、アドレス通知送信部162は、INVITEメッセージに対する応答として、自端末1のIPアドレスが記述された302 Redirectメッセージを生成する。そして、この302 Redirectメッセージを、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1に送信する(S304)。
【0054】
それから、呼制御手順実行部164は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由することなく、取得した発信元IPアドレスにより特定される相手端末(他のSIPサーバ機能付IP電話端末1)からINVITEメッセージが直接届くのを待つ(S305)。
【0055】
つぎに、呼制御手順実行部164は、取得した発信元IPアドレスにより特定される相手端末1からINVITEメッセージを直接受信したならば(S305でYES)、発信元IPアドレスを用いて、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由させずに相手端末1とSIPメッセージを直接送受信することにより、SIPに従った着信シーケンス(180 Rinngingメッセージの送信と着信鳴動の開始、応答操作の受付による着信鳴動の停止と200 OKメッセージの送信)を実行して、相手端末1との間にセッションを確立する(S306)。
【0056】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0057】
本実施の形態において、SIPサーバ機能付IP電話端末1間にセッションを確立する場合、発信先および発信元のSIPサーバ機能付IP電話端末1は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由でINVITEメッセージと302 Redirectメッセージを送受信することにより、互いのIPアドレスを取得する。そして、発信先および発信元のSIPサーバ機能付IP電話端末1は、互いのIPアドレスを用いて、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由させずにSIPメッセージを直接送受信することにより、SIPシーケンスを実行して両者間にセッションを確立する。
【0058】
したがって、本実施の形態によれば、SIPサーバの関与(SIPメッセージの中継回数)を通常の場合(SIPサーバがすべてのSIPメッセージを中継する場合)に比べて減らすことができるので、SIPサーバ機能部13の処理能力を低く抑えることができる。これにより、本実施の形態に係るIP電話システムのように、複数のSIPサーバ機能付IP電話端末1でIP電話システムを構築した場合のコストを低くすることができる。
【0059】
また、SIPサーバの関与を減らすことができるので、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1がリンクダウン等した場合に、SIPサーバ機能付IP電話端末1間でセッションが確立できなくなる可能性を低くすることができる。
【0060】
また、本実施の形態において、SIPサーバ機能付IP電話端末1は、自身のIPアドレスが変更される都度、これまでに通話したことのあるIPアドレス取得済みのSIPサーバ機能付IP電話端末1各々に、自身の最新のIPアドレスを通知する必要がない。したがって、本実施の形態によれば、LAN3上の通信トラヒックが増大するのを防止することができる。
【0061】
また、本実施の形態において、SIPサーバ機能付IP電話端末1は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1から受信した接続要求の送信元の電話番号あるいはその番号体系が、予め登録された他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号あるいは番号体系である場合に、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由しないSIPシーケンスを実行し、予め登録された他のSIPサーバ機能付IP電話端末1の電話番号あるいは番号体系でない場合は、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由する通常のSIPシーケンスを実行する。
【0062】
したがって、本実施の形態によれば、すべてのSIPメッセージがSIPサーバに中継される通常のSIPシーケンスを前提とするIP電話端末を混在させて、IP電話システムを構築することができる。また、本発明に対応していない外線端末(図1のIP電話端末5)ともセッションを確立することができる。
【0063】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記の実施の形態では、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末にINVITEメッセージを送信したSIPサーバ機能付IP電話端末1(図2のSIPサーバ機能付IP電話端末1−2)が、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末より受信した302 Redirectメッセージから相手端末のIPアドレスを取得し、このIPアドレスを用いて相手端末に直接INVITEメッセージを送信して、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由しないSIPシーケンスを実行している。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0065】
SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末からINVITEメッセージを受信したSIPサーバ機能付IP電話端末1(図2のSIPサーバ機能付IP電話端末1−3)が、自端末1のアドレス通知として、自端末1のIPアドレスが記述された302 Redirectメッセージを、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1経由で相手端末に送信するとともに、INVITEメッセージから相手端末のIPアドレスを取得し、このIPアドレスを用いて相手端末(図2のSIPサーバ機能付IP電話端末1−2)に直接INVITEメッセージを送信して、SIPサーバとして機能するSIPサーバ機能付IP電話端末1を経由しないSIPシーケンスを実行してもよい。
【0066】
また、上記の実施の形態において、SIPサーバ機能付IP電話端末1は、302 Redirectメッセージを用いて自端末1のアドレス通知を行っているが、本発明はこれに限定されない。INVITEメッセージに対する応答として、その他のSIPメッセージを用いて自端末1のアドレス通知を行うようにしてもよい。
【0067】
また、上記の実施の形態では、複数のSIPサーバ機能付IP電話端末1を用いることにより、専用のSIPサーバを設けることなくIP電話システムを構築しているが、本発明はこれに限定されない。LAN3上に専用のSIPサーバを設けることにより、IP電話システムを構成する各SIPサーバ機能付IP電話端末1からSIPサーバ機能(SIPサーバ機能部13とサーバ機能制御部14)を省略するようにしてもよい。
【0068】
また、上記の実施の形態において、図3に示すSIPサーバ機能付IP電話端末1の機能構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)などの計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。もしくは、CPU、メモリ、HDD、DVD−ROM等の補助記憶装置、およびNIC(Network Interface Card)、モデム等の通信インターフェースを備えたPC(Personal Computer)等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することで実現されるものでもよい。
【0069】
また、上記の実施の形態では、呼制御シーケンスとしてSIPを用いた場合を例にとり説明したが、本発明は、H.323等のその他の呼制御シーケンスを用いた場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1:SIPサーバ機能付IP電話端末、2:GW、3:LAN、4:WAN、5:IP電話端末、6:SIPサーバ、10:マンマシンインターフェース部、11:LANインターフェース部、12:通信制御部、13:SIPサーバ機能部、14:サーバ機能制御部、15:通話処理部、16:呼制御部、161:サーバ情報記憶部、162:アドレス通知送信部、163:アドレス通知受信部、164:呼制御手順実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端末との間に確立されたセッションを介して前記相手端末と通話データを送受信するIP電話端末であって、
呼制御サーバ経由で前記相手端末から受信した自端末に対する接続要求に応答して、前記呼制御サーバ経由で前記相手端末に、自端末のアドレス通知を送信するアドレス通知送信手段と、
前記呼制御サーバ経由で前記相手端末に送信した、前記相手端末に対する接続要求の応答として、前記呼制御サーバ経由で前記相手端末から、前記相手端末のアドレス通知を受信するアドレス通知受信手段と、
前記自端末に対する接続要求あるいは前記相手端末のアドレス通知により特定される前記相手端末のIPアドレスを用いて、前記呼制御サーバを経由せずに前記相手端末と呼制御メッセージを送受信することにより呼制御シーケンスを実行し、前記セッションを確立する呼制御手順実行手段と、を有する
ことを特徴とするIP電話端末。
【請求項2】
請求項1に記載のIP電話端末であって、
前記アドレス通知送信手段は、
前記自端末に対する接続要求で指定されている前記相手端末の電話番号あるいはその番号体系が所定の電話番号あるいは番号体系である場合に、前記自端末のアドレス通知を送信し、
前記呼制御手順実行手段は、
前記相手端末の電話番号あるいはその番号体系が前記所定の電話番号あるいは番号体系である場合に、前記自端末に対する接続要求あるいは前記相手端末のアドレス通知により特定される前記相手端末のIPアドレスを用いて、前記呼制御サーバを経由せずに前記相手端末と前記呼制御メッセージを送受信することにより前記呼制御シーケンスを実行し、前記相手端末の電話番号あるいはその番号体系が前記所定の電話番号あるいは番号体系でない場合に、前記呼制御サーバ経由で前記相手端末と呼制御メッセージを送受信することにより呼制御シーケンスを実行して、前記セッションを確立する
ことを特徴とするIP電話端末。
【請求項3】
IP電話端末間のセッション確立方法であって、
発信元のIP電話端末が、呼制御サーバ経由で発信先のIP電話端末に接続要求を送信し、
前記発信先のIP電話端末が、前記呼制御サーバより受信した前記接続要求から前記発信元のIP電話端末のIPアドレスを取得するとともに、前記呼制御サーバ経由で前記発信元のIP電話端末に自端末のアドレス通知を送信し、
前記発信元のIP電話端末が、前記呼制御サーバより受信した前記アドレス通知から前記発信先のIP電話端末のIPアドレスを取得し、
前記発信元のIP電話端末および前記発信先のIP電話端末が、取得した互いのIPアドレスを用いて、前記呼制御サーバを経由せずに呼制御メッセージを送受信することにより呼制御シーケンスを実行し、両者間にセッションを確立する
ことを特徴とするセッション確立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129934(P2012−129934A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281912(P2010−281912)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】