K−ras突然変異の定量検出キット
本発明は、K−ras突然変異の定量検出キットに関する。具体的に述べると、本発明は、分子標的抗癌薬の治療効果に関係するK−ras遺伝子突然変異の検出方法および検出キットに関する。特に、K−ras遺伝子の突然変異ホットスポット領域における突然変異を検出する蛍光定量PCR検出法、キットおよびその応用に関する。本発明は、K−ras遺伝子の特定部位の突然変異を検出し、分子標的抗腫瘍薬のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の治療効果を予測することができ、さらには腫瘍患者の臨床個別化投薬計画に対して指針を提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
K−ras遺伝子はras癌遺伝子ファミリーに属し、21kDのrasタンパク質をコードするため、p21遺伝子とも呼ばれる。K−ras遺伝子はEGFRシグナル伝達経路の重要分子の1つであり、EGFR経路の下流に位置する産物をコードし、腫瘍細胞の成長、増殖、血管生成などの過程において、重要な「スイッチ」の機能を果たす。突然変異が生じるとき、K−rasタンパク質は活性状態が持続した状態にあり、細胞成長に対する正常な制御ができず、細胞の持続的成長、アポトーシスの阻止が引き起こされる。異なる腫瘍組織におけるK−ras遺伝子の突然変異率は異なり、膵臓癌82%、結腸癌43%、肺癌30%、甲状腺癌29%、膀胱、肝、腎および子宮癌は10%か、または10%より低い(Bos J.L.et al,Cancer Res,1989,49(17):4682〜4689)。突然変異したK−rasの持続的活性化は、EGFR活性が抑制されるかどうかと無関係であるため、患者への抗EGFR治療によって有効な効果を得ることはできない(Amado R.G. et al,J Clin.Oncol.,2008,26(10):1626〜1634、Lievre A.et al,J.Clin.Oncol.,2008;26(3):374〜379)。したがって、K−ras遺伝子の突然変異を検出することにより、抗EGFR薬物の治療効果に対して一定の予測的評価をすることができ、腫瘍患者の個別化治療を実現し、それにより良好な予後に達する。
【0002】
現在、K−ras遺伝子の突然変異点は、主に12、13番目のアミノ酸コドンに集中しており(張健杰ら,西安交通大学学報,2005,26(4):349〜351、何暁文ら,中華消化雑誌,2002,22(1):26〜28)、このうちコドン12のGGT塩基がGTTまたはGAT塩基に突然変異するのが、最もよく見られる突然変異の型である。本発明は、リアルタイム定量PCR法により、分子標的抗腫瘍薬の治療効果に関係する腫瘍関連遺伝子K−rasのコドン12、13における5種類の型の突然変異状態を検出し、アービタックスなど分子標的薬の治療効果を予測する。
【0003】
本発明で採用された検出方法は、以下のいくつかの利点を有する。操作が簡単で標準化しやすい。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブハイブリダイゼーション法のようなその他の方法は、ハイブリダイゼーションに対する条件が非常に敏感で、実験条件を厳格にコントロール必要があり、また、制限酵素断片長多型実験はかなりの人的操作を必要とし、さらに定量することができない。実験周期が短く、2時間以内で完成することができる。シークエンシングにより結果を検証する必要はないが、ダイレクトシークエンシング法および高解像度融解曲線解析は、4日〜2週間が必要である。感度が高く、実験条件の最適化を行うことにより、突然変異の検出感度は1%に達することができるが、ダイレクトシークエンシング法の感度は20〜50%である。特異性が高いが、免疫組織化学法では偽陽性および偽陰性率が高く、さらに点突然変異の位置および型を確定することができない。定量が正確であることは本発明の実験方法で最も独特な利点であり、絶対定量法でデータを処理し、それにより標準曲線を作成することにより、検体中の野生型および突然変異型遺伝子の含量を正確に測定する。さらには突然変異型遺伝子が占める比率が得られ、臨床診断および投薬の助けとなる。ほかに、本発明は安全無毒性であるが、ミスマッチ塩基の化学的開裂法のようなその他の方法は、アイソトープおよび毒劇物試薬を使用する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bos J.L.et al,Cancer Res,1989,49(17):4682〜4689
【非特許文献2】Amado R.G. et al,J Clin.Oncol.,2008,26(10):1626〜1634
【非特許文献3】Lievre A.et al,J.Clin.Oncol.,2008;26(3):374〜379
【非特許文献4】張健杰ら,西安交通大学学報,2005,26(4):349〜351
【非特許文献5】何暁文ら,中華消化雑誌,2002,22(1):26〜28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題は、K−ras遺伝子突然変異の定量検出キットを提供することである。K−ras遺伝子コドン12(配列番号1、配列番号2)、2155位のGGT塩基がGTT、AGT、GATまたはTGT塩基に突然変異した状態、コドン13(配列番号1、配列番号2)のGGC塩基がGAC塩基に突然変異した状態を定量的に検出する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明は、Taq酵素、10×Taq緩衝液、MgCl2、dNTPミックス、K−ras遺伝子の突然変異部位の配列を特異的に増幅することができるPCRプライマーと、野生型および突然変異型の配列を特異的に識別することができるプローブを含む定量検出キット、ならびに以下に示す検出方法を提供する。
【0007】
(1)K−ras遺伝子のコドン12、13の突然変異部位付近に、それぞれ上下流プライマーを設計し、各突然変異部位の突然変異状態に基づき、特異的なプローブを設計する。このプローブはK−rasの特定部位の野生型または検出しようとする突然変異型の配列と特異的に結合することができ、それによりこの部位に検出される遺伝子の突然変異が生じているかどうかを確定する。
【0008】
(2)検出されるK−ras突然変異の比率を正確に定量するために、本発明は標準品を設計した。
【0009】
(3)被験検体および標準品に対し、蛍光定量PCRを行って検出する。
【0010】
(4)標準品の検出結果から、定量に用いる標準曲線が得られ、標準曲線から、被験検体の核酸のK−ras遺伝子突然変異が、K−ras遺伝子全体に占める比率を算出する。
【0011】
前記ステップ(1)の前に、被験検体中の核酸の抽出、精製、および濃度の測定が行われることをさらに含む。
【0012】
蛍光定量PCRは、適切なPCR条件下において、使用したプローブと、K−ras遺伝子の突然変異位置の塩基配列との特異的な結合を検出する。前記プローブは、好ましくは5’末端に蛍光発光物質が結合され、3’末端に蛍光消光物質が結合される。前述した蛍光発光物質はFAM、TET、HEX、ROXから選択され、前述した蛍光消光物質はBHQ、TAMARAから選択される。好ましくは、前記蛍光発光物質はFAMであり、前述した蛍光消光物質はBHQである。前記プローブの配列は、好ましくは配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28である。
【0013】
前記標準品は、少なくともプラスミド、ゲノムDNAまたは化学的に合成された配列のうちの1種を含む。好ましくは、前記標準品は、野生型プラスミドおよび/または突然変異型プラスミドを含み、このうち野生型プラスミドはK−ras遺伝子の野生型配列を含み、突然変異型プラスミドはK−ras遺伝子の突然変異型配列を含む。さらに好ましくは、前記標準品は野生型プラスミドおよび/または突然変異型プラスミドからなる。
【0014】
前記被験検体には、新鮮組織、パラフィン包埋組織、細胞株、血液、胸膜滲出液、腹膜滲出液、唾液、消化液、尿、唾液、糞便が含まれる。
【0015】
前記プライマーは、上流プライマーおよび下流プライマーからなる。前記プライマーは、好ましくは配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7である。
【0016】
前述したK−ras遺伝子突然変異の定量検出キットは以下から選択される試薬、すなわち上述したようなプライマー、プローブおよび標準品を含む。前記キットは、好ましくはさらにTaq酵素、10×Tap緩衝液、MgCl2、dNTPミックスを含む。好ましいプライマーおよびプローブの比率は2:1〜10:1であり、好ましい順方向プライマーおよび逆方向プライマーの比率は1:3〜3:1である。標準品は、上述したプラスミドが一定の比率に応じて混合されたものが含まれ、野生型プラスミドおよび突然変異型プラスミドの含量の比率は、それぞれ0〜100%である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に図および実施例を組み合わせて、本発明についてさらに詳細な説明を行う。
【0018】
【図1】図1は、実施例2で用いるプラスミド標準品の構築方法の概要図である。
【図2】図2は、実施例2の野生型プラスミドのマップであり、矢印は、ベクターに野生型PCR産物の配列を挿入する位置を示す。
【図3】図3は、実施例2のK−ras野生型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4A】図4Aは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→GTT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4B】図4Bは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4C】図4Cは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→GAT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4D】図4Dは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→TGT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4E】図4Eは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン13のGGC→GAC突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図5A】図5Aは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−ras野生型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5B】図5Bは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→GTT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5C】図5Cは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5D】図5Dは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→GAT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5E】図5Eは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→TGT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5F】図5Fは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン13のGGC→GAC突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図6A】図6Aは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図AはK−ras野生型プラスミドの標準曲線である。
【図6B】図6Bは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図BはK−rasコドン12のGGT→GTT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6C】図6Cは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図CはK−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6D】図6Dは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図DはK−rasコドン12のGGT→GAT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6E】図6Eは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図EはK−rasコドン12のGGT→TGT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6F】図6Fは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図FはK−rasコドン13のGGC→GAC突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図7A】図7Aは、本発明の実施例3で検出されたパラフィン包埋組織検体のK−rasコドン12の野生型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7B】図7Bは、本発明の実施例3で検出されたパラフィン包埋組織検体のGGT→TGT突然変異型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7C】図7Cは、本発明の実施例3で検出された新鮮組織検体のK−rasコドン12の野生型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7D】図7Dは、本発明の実施例3で検出された新鮮組織検体のGGT→GTT突然変異型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7E】図7Eは、本発明の実施例3で検出された全血検体のコドン13の野生型の蛍光定量PCRの増幅曲線図でありである。
【図7F】図7Fは、本発明の実施例3で検出された全血検体のGGC→GAC突然変異型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7G】図7Gは、本発明の実施例3で検出された細胞系検体のK−rasコドン12の野生型蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7H】図7Hは、本発明の実施例3で検出された細胞系検体のK−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図8】図8は、本発明の定量方法の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施例は、関連するいかなる実施も当業者に提供し、さらに本発明の完全な開示および記載に使用される。なおかつこれらの例は、出願人が考える発明の範囲を制限するものではなく、下文の実験もまた、実施されたすべての実験を指すものではなく、ただ実施することができる実験であるのみである。実施例において、具体的条件を明記していない実験方法は、通常、通例の条件、例えば分子クローニング実験マニュアル第3版(Sambrook J.)に基づくか、またはメーカー推奨の条件に基づく。
【実施例1】
【0020】
ヒトの新鮮腫瘍組織、パラフィン包埋組織、末梢血、胸水、ヒト細胞系のゲノムDNAの抽出
我々が検査を行ったヒト癌細胞系には、非小細胞肺癌(NSCLC)(A549、H460、H838およびH1703)、乳癌(MCF−7、BT474およびHuL100)、悪性中皮腫細胞系(H513、H2052、H290、MS−1およびH28)、結腸癌細胞系(SW480)、頭頸部癌細胞系(U87)、子宮頸癌(Hela)、肉腫細胞系(Mes−SA、Saos−2およびA204)が含まれる。
【0021】
検査を行ったヒトの新鮮な腫瘍組織、末梢血、パラフィン包埋組織には、NSCLC、中皮腫、結腸癌、悪性黒色腫、腎癌、食道癌、甲状腺癌、悪性癌および卵巣癌が含まれる。
【0022】
標本のDNA抽出
Qiagen社、Promega社、Roche社のDNA抽出キットを使用して検体のゲノムDNAを抽出することができ、Gene社のNanodrop ND1000型核酸微量測定器を使用して抽出したDNAの濃度および純度(OD260/OD280は約1.8、OD260/OD230は2.0より大きい)を測定した。以下に、Promega社のDNA抽出キットを例とし、検体DNAの抽出手順を紹介する。
【0023】
1.新鮮組織のDNA抽出
(1)はさみで大豆ほどの大きさに組織を切り取り、乳鉢に入れた。組織をせん断し、液体窒素を加えてすりつぶし、粉末にした。
【0024】
(2)あらかじめ冷却したライシス溶液600μlを乳鉢に入れ、1mlのピペットチップで6回ピペッティングを行い組織粉末およびライシス溶液を十分に混合させた。混合物を1.5mlEPチューブに移し、転倒混和を6回行って混合した後、65℃で20分間水浴に入れた。
【0025】
(3)RNaseを3μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0026】
(4)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を200μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上に5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0027】
(5)事前に600μlのイソプロパノール(室温)を入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0028】
(6)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を600μl加え、転倒混和を6回行って混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0029】
(7)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0030】
(8)沈殿に40μlのDNA溶解液を加え、65℃で1時間または4℃でオーバーナイトでインキュベートした。
【0031】
2.パラフィン包埋組織のDNA抽出
(1)1mgまたは1mgより小さい組織を1.5mlの遠心分離チューブに入れた。
【0032】
(2)新鮮なインキュベーション緩衝液/プロテイナーゼK溶液100μlを調製して加えた。検体の種類に基づき、56℃、オーバーナイトでインキュベートした。
【0033】
(3)インキュベートした検体チューブを取り出し、2倍容量のライシス緩衝液を加えた。
【0034】
(4)樹脂が完全に懸濁するまで、ボルテックスミキサーで10秒間樹脂を撹拌し、完全に懸濁した樹脂を7μl加えた。ボルテックスミキサーで3秒間撹拌後、室温で5分間インキュベートした。
【0035】
(5)ボルテックスミキサーで2秒間撹拌し、チューブをMagneSphere(登録商標)磁気分離スタンドに置いた。磁気分離をすぐに行った。
【0036】
(6)チューブの壁の樹脂には触れないように、すべての溶液を注意深く除去した。
【0037】
(7)ライシス緩衝液を100μl加え、磁気分離スタンドからチューブを取り外し、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。
【0038】
(8)チューブを磁気分離スタンドに戻し、全てのライシス溶液を除去した。
【0039】
(9)調製した1×洗浄液を100μl加え、磁気分離スタンドからチューブを取り外し、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。
【0040】
(10)チューブを磁気分離スタンドに戻し、全ての洗浄液を除去した。
【0041】
(11)ステップ(9)および(10)を2回繰り返し、全部で3回洗浄を行い、最後の1回の洗浄を確実に行った後、全ての液体を除去した。
【0042】
(12)蓋を開けてチューブを磁気分離スタンドに置き、空気中で5分間乾燥させた。
【0043】
(13)溶出液を25μl加えた。
【0044】
(14)チューブの蓋を閉め、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。65℃で5分間インキュベートした。
【0045】
(15)インキュベートしたチューブを取り出し、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。すぐに磁気分離スタンドに置いた。
【0046】
(16)DNA溶液を選択した容器に注意深く移した。
【0047】
3.全血のDNA抽出
(1)抗凝固全血を300μl採取し、細胞ライシス溶液を900μl加え、1mlのピペットチップでピペッティングを6回行って混合し、できる限り全血および細胞ライシス溶液を混合させた。室温に10分間放置し、その間に1mlピペットチップでピペッティングを3回行って混合した。
【0048】
(2)13,000×g、室温で20秒間遠心分離を行った後、上清を捨て、激しく振盪させた。あらかじめ冷却したライシス溶液を300μl加え、沈殿が完全に溶解するまで1mlのピペットチップでピペッティングを行い混合した。
【0049】
(3)RNaseを1.5μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0050】
(4)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を100μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上で5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0051】
(5)事前に300μlのイソプロパノール(室温)を入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0052】
(6)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を1ml加え、転倒混和を6回行って混合し、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0053】
(7)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0054】
(8)沈殿にDNA溶解液を40μl加え、65℃1時間または4℃オーバーナイトでインキュベートした。
【0055】
4.胸水のDNA抽出
(1)胸水5mlを採取し、2000rpm、室温で10分間遠心分離を行った。上清を回収し、細胞ライシス溶液を1ml加え、転倒混和を6回行って混合し、室温に10分間放置した。
【0056】
(2)13,000×g、室温で20秒間遠心分離を行った後、上清を捨て、激しく振盪し、あらかじめ冷却したライシス溶液を1ml加え、沈殿が完全に溶解するまで混合した。
【0057】
(3)RNaseを3μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0058】
(4)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を200μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上で5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0059】
(5)事前にイソプロパノール(室温)を5ml入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0060】
(6)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を1ml加え、転倒混和を6回行って混合し、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0061】
(7)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0062】
(8)沈殿にDNA溶解液を40μl加え、65℃1時間または4℃オーバーナイトでインキュベートした。
【0063】
5.細胞系のDNA抽出
(1)少なくとも約1×106個の細胞を採取し、1.5mlのEPチューブに移して、13,000×g、室温で遠心分離を10秒間行った。接着細胞である場合、細胞を採取する前にトリプシンで消化する必要がある。
【0064】
(2)上清を捨て、PBS200μlを加えて細胞を洗浄し、13,000×g、室温で遠心分離を10秒間行った後、上清を捨て、沈殿が混濁するまで激しく振盪した。
【0065】
(3)あらかじめ冷却したライシス溶液を600μl加え、細胞の塊が肉眼で見えなくなるまで、1mlのピペットチップでピペッティングを行って混合した。
【0066】
(4)RNaseを3μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0067】
(5)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を200μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上で5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0068】
(6)事前に600μlのイソプロパノール(室温)を入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0069】
(7)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を600μl加え、転倒混和を6回行って混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0070】
(8)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0071】
(9)沈殿にDNA溶解液40μlを加え、65℃1時間または4℃オーバーナイトでインキュベートした。
【実施例2】
【0072】
突然変異型および野生型の検出配列を含むプラスミド標準品の準備
1.野生型プラスミドの構築(図1、図2)
1.1 ベクターの準備
TAクローニングベクターpMD18−Tは、TAKARA社から購入した。
【0073】
1.2 インサートの準備
PCR法を使用してインサートを調製した。PCRのテンプレートはステップ1で抽出した検体のゲノムDNAであり、反応系および増幅条件は下表のとおりである(表1、表2、表3)。
表1:PCR反応系(50μl)
【0074】
【表1】
表2:PCRプライマー
【0075】
【表2】
表3:PCR増幅条件
【0076】
【表3】
【0077】
1.3 QIAgenゲル回収キットを使用して目的断片を回収した後、TAクローニングにより、pMD18−Tベクター(TAKARA社より購入)に挿入した。
【0078】
1.4 新しく構築したプラスミドは、大腸菌DH5α株で大量に増幅させ、抽出精製することにより得られた(具体的な方法は《分子クローニング実験マニュアル》第3版、96〜99、103頁を参照のこと)。
【0079】
1.5 BamHIおよびHindIIIを利用して、ダブルダイジェストを行って確認した。
【0080】
1.6 制限酵素消化の結果、陽性を呈した菌種のシーケンシングを行い、シーケンシングを正確に行った後、野生型の配列を含む標準品とした(図3)。
【0081】
2.突然変異型プラスミドの構築:突然変異部位の突然変異プライマーを設計し、DPN1法を利用して突然変異型配列を含む標準品が得られた。
【0082】
2.1 必要な突然変異配列に基づき、突然変異部位の突然変異プライマーを設計した(表4)。
表4:突然変異プライマー
【0083】
【表4】
【0084】
2.2 5ngの野生型プラスミドをテンプレートとし、突然変異プライマーおよびPfu酵素を使用して目的部位を突然変異させた。増幅系および条件は、表1、表4、表3に示す通りである。
【0085】
K−ras遺伝子コドン12のGGT→GTT突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−1−F(配列番号7)およびK−ras−1−R(配列番号8)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→AGT突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−2−F(配列番号9)およびK−ras−2−R(配列番号10)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→GAT突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−3−F(配列番号11)およびK−ras−3−R(配列番号12)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→TGT突然変異配列を含むプラスミドを調製する過程において、増幅系にK−ras−4−F(配列番号13)およびK−ras−4−R(配列番号14)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン13のGGC→GAC突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−5−F(配列番号15)およびK−ras−5−R(配列番号16)プライマーを添加する必要がある。
【0086】
2.3 DPN1酵素を使用してステップ2.2で得られた産物を処理し、37℃で1時間インキュベートした後、産物を回収した。大腸菌DH5α株で大量に増幅させ、抽出、精製することにより得られた。
【0087】
2.4 BamHIおよびHindIIIを利用して、ダブル酵素消化を行いプラスミドを同定し た。
【0088】
2.5 制限酵素消化の結果、陽性を呈した菌種のシークエンシングを行い、シークエンシングを正確に行った後、突然変異型配列を含む標準品とした(図4)。
【実施例3】
【0089】
肺癌および子宮頸癌検体を例とした、ヒト細胞系、ヒトの新鮮な腫瘍組織、末梢血、パラフィン包埋組織のゲノムDNAにおけるK−ras突然変異の検出
1.蛍光定量PCR反応のテンプレートは、実施例1で抽出した肺癌および子宮頸癌検体のゲノムDNAと、実施例2で調製した標準品であり、再蒸留水をネガティブコントロールとした。標準曲線を作成するため、標準品を1ng/μl、0.5ng/μl、0.25ng/μl、0.125ng/μl、0.0625ng/μl、0.03125ng/μlに2倍希釈した。
【0090】
2.反応系および反応条件は表2、表5、表6、表7に示され、このうち標識プローブの蛍光発光物質は、FAM、TET、HEX、ROXから選択され、蛍光消光物質はBHQ、TAMARAから選択された。
表5:蛍光定量PCR反応系(20μl/チューブ)
【0091】
【表5】
【0092】
K−ras遺伝子コドン12、13の突然変異状態の検出には、6つの系を構成する必要があるが、プローブが異なる以外、系に用いるその他の試薬は同じである。K−ras遺伝子コドン12、13の野生型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−w1(配列番号17)またはK−ras−w2(配列番号18)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→GTT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−11(配列番号19)またはK−ras−12(配列番号20)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→AGT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−21(配列番号21)またはK−ras−22(配列番号22)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→GAT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−31(配列番号23)またはK−ras−32(配列番号24)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→TGT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−41(配列番号25)またはK−ras−42(配列番号26)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン13のGGC→GAC突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−51(配列番号27)またはK−ras−52(配列番号28)プローブを添加する必要がある。
表6:プローブ
【0093】
【表6】
表7:増幅条件
【0094】
【表7】
【0095】
3.標準曲線の作成
ステップ3の標準品から得られたCT値の結果に基づき、標準曲線を作成した。図5はプラスミド標準品の増幅曲線であり、図中、上昇した5本の曲線は、左から右に順次それぞれ0.5ng/μl、0.25ng/μl、0.125ng/μl、0.0625ng/μl、0.03125ng/μlに希釈したプラスミド標準品の増幅曲線を表す。横軸はサイクル数を示し、縦軸は蛍光検出値を示す。ここから、さらに計算に用いる標準曲線を作成することができる(図6)。図6中、横軸はテンプレートのコピー数の対数値であり、縦軸はCT値である。このうちテンプレートのコピー数=質量/分子量×6.02×1023である。本実験において、プラスミドはpMD18−Tベクターおよびインサートからなり、インサートの塩基長は略一致し、違っていても最大でわずか20数塩基の長さであり、PMD18−Tベクター2692bpの長さに相対して、影響は大きくないため、野生型および突然変異型プラスミドの標準品のコピー数の比≒質量の比である。
【0096】
4.標本K−ras遺伝子の特定の突然変異型の比率の計算
標準曲線に基づき、検体のCT値から反応した野生型および突然変異型のゲノムDNAのコピー数を求め、それにより突然変異型K−rasDNAおよびK−rasDNAの総量(この部位の野生型にあらゆる突然変異型を加えたもの)の割合が得られる。図7に示すように、ある肺癌パラフィン包埋組織検体から検出された、K−rasコドン12の野生型のCT値は19.15であり(図7A)、GGT→TGT突然変異型の値は20.74であった(図7B)。それぞれ対応する標準曲線の公式(図6)から各々のコピー数を求めることができ、ここから突然変異型および野生型の含量の比が30:70であることがわかり、組織中の約30%のK−ras遺伝子コドン12にGGT→TGT突然変異が生じていることが推測された。
【0097】
5.検出結果
本実施例は、48例の肺癌および膵臓癌の組織、全血と、細胞系の標本に対してK−ras遺伝子突然変異の検出を行った。全部で10例に突然変異が生じていることが検出された。具体的な突然変異例数を表8に示す。突然変異比率、すなわちその検体中の突然変異遺伝子および非突然変異遺伝子の比率を表9に示す。
表8:K−ras突然変異例数
【0098】
【表8】
表9:K−ras突然変異の比率
【0099】
【表9】
【背景技術】
【0001】
K−ras遺伝子はras癌遺伝子ファミリーに属し、21kDのrasタンパク質をコードするため、p21遺伝子とも呼ばれる。K−ras遺伝子はEGFRシグナル伝達経路の重要分子の1つであり、EGFR経路の下流に位置する産物をコードし、腫瘍細胞の成長、増殖、血管生成などの過程において、重要な「スイッチ」の機能を果たす。突然変異が生じるとき、K−rasタンパク質は活性状態が持続した状態にあり、細胞成長に対する正常な制御ができず、細胞の持続的成長、アポトーシスの阻止が引き起こされる。異なる腫瘍組織におけるK−ras遺伝子の突然変異率は異なり、膵臓癌82%、結腸癌43%、肺癌30%、甲状腺癌29%、膀胱、肝、腎および子宮癌は10%か、または10%より低い(Bos J.L.et al,Cancer Res,1989,49(17):4682〜4689)。突然変異したK−rasの持続的活性化は、EGFR活性が抑制されるかどうかと無関係であるため、患者への抗EGFR治療によって有効な効果を得ることはできない(Amado R.G. et al,J Clin.Oncol.,2008,26(10):1626〜1634、Lievre A.et al,J.Clin.Oncol.,2008;26(3):374〜379)。したがって、K−ras遺伝子の突然変異を検出することにより、抗EGFR薬物の治療効果に対して一定の予測的評価をすることができ、腫瘍患者の個別化治療を実現し、それにより良好な予後に達する。
【0002】
現在、K−ras遺伝子の突然変異点は、主に12、13番目のアミノ酸コドンに集中しており(張健杰ら,西安交通大学学報,2005,26(4):349〜351、何暁文ら,中華消化雑誌,2002,22(1):26〜28)、このうちコドン12のGGT塩基がGTTまたはGAT塩基に突然変異するのが、最もよく見られる突然変異の型である。本発明は、リアルタイム定量PCR法により、分子標的抗腫瘍薬の治療効果に関係する腫瘍関連遺伝子K−rasのコドン12、13における5種類の型の突然変異状態を検出し、アービタックスなど分子標的薬の治療効果を予測する。
【0003】
本発明で採用された検出方法は、以下のいくつかの利点を有する。操作が簡単で標準化しやすい。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブハイブリダイゼーション法のようなその他の方法は、ハイブリダイゼーションに対する条件が非常に敏感で、実験条件を厳格にコントロール必要があり、また、制限酵素断片長多型実験はかなりの人的操作を必要とし、さらに定量することができない。実験周期が短く、2時間以内で完成することができる。シークエンシングにより結果を検証する必要はないが、ダイレクトシークエンシング法および高解像度融解曲線解析は、4日〜2週間が必要である。感度が高く、実験条件の最適化を行うことにより、突然変異の検出感度は1%に達することができるが、ダイレクトシークエンシング法の感度は20〜50%である。特異性が高いが、免疫組織化学法では偽陽性および偽陰性率が高く、さらに点突然変異の位置および型を確定することができない。定量が正確であることは本発明の実験方法で最も独特な利点であり、絶対定量法でデータを処理し、それにより標準曲線を作成することにより、検体中の野生型および突然変異型遺伝子の含量を正確に測定する。さらには突然変異型遺伝子が占める比率が得られ、臨床診断および投薬の助けとなる。ほかに、本発明は安全無毒性であるが、ミスマッチ塩基の化学的開裂法のようなその他の方法は、アイソトープおよび毒劇物試薬を使用する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bos J.L.et al,Cancer Res,1989,49(17):4682〜4689
【非特許文献2】Amado R.G. et al,J Clin.Oncol.,2008,26(10):1626〜1634
【非特許文献3】Lievre A.et al,J.Clin.Oncol.,2008;26(3):374〜379
【非特許文献4】張健杰ら,西安交通大学学報,2005,26(4):349〜351
【非特許文献5】何暁文ら,中華消化雑誌,2002,22(1):26〜28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題は、K−ras遺伝子突然変異の定量検出キットを提供することである。K−ras遺伝子コドン12(配列番号1、配列番号2)、2155位のGGT塩基がGTT、AGT、GATまたはTGT塩基に突然変異した状態、コドン13(配列番号1、配列番号2)のGGC塩基がGAC塩基に突然変異した状態を定量的に検出する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明は、Taq酵素、10×Taq緩衝液、MgCl2、dNTPミックス、K−ras遺伝子の突然変異部位の配列を特異的に増幅することができるPCRプライマーと、野生型および突然変異型の配列を特異的に識別することができるプローブを含む定量検出キット、ならびに以下に示す検出方法を提供する。
【0007】
(1)K−ras遺伝子のコドン12、13の突然変異部位付近に、それぞれ上下流プライマーを設計し、各突然変異部位の突然変異状態に基づき、特異的なプローブを設計する。このプローブはK−rasの特定部位の野生型または検出しようとする突然変異型の配列と特異的に結合することができ、それによりこの部位に検出される遺伝子の突然変異が生じているかどうかを確定する。
【0008】
(2)検出されるK−ras突然変異の比率を正確に定量するために、本発明は標準品を設計した。
【0009】
(3)被験検体および標準品に対し、蛍光定量PCRを行って検出する。
【0010】
(4)標準品の検出結果から、定量に用いる標準曲線が得られ、標準曲線から、被験検体の核酸のK−ras遺伝子突然変異が、K−ras遺伝子全体に占める比率を算出する。
【0011】
前記ステップ(1)の前に、被験検体中の核酸の抽出、精製、および濃度の測定が行われることをさらに含む。
【0012】
蛍光定量PCRは、適切なPCR条件下において、使用したプローブと、K−ras遺伝子の突然変異位置の塩基配列との特異的な結合を検出する。前記プローブは、好ましくは5’末端に蛍光発光物質が結合され、3’末端に蛍光消光物質が結合される。前述した蛍光発光物質はFAM、TET、HEX、ROXから選択され、前述した蛍光消光物質はBHQ、TAMARAから選択される。好ましくは、前記蛍光発光物質はFAMであり、前述した蛍光消光物質はBHQである。前記プローブの配列は、好ましくは配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28である。
【0013】
前記標準品は、少なくともプラスミド、ゲノムDNAまたは化学的に合成された配列のうちの1種を含む。好ましくは、前記標準品は、野生型プラスミドおよび/または突然変異型プラスミドを含み、このうち野生型プラスミドはK−ras遺伝子の野生型配列を含み、突然変異型プラスミドはK−ras遺伝子の突然変異型配列を含む。さらに好ましくは、前記標準品は野生型プラスミドおよび/または突然変異型プラスミドからなる。
【0014】
前記被験検体には、新鮮組織、パラフィン包埋組織、細胞株、血液、胸膜滲出液、腹膜滲出液、唾液、消化液、尿、唾液、糞便が含まれる。
【0015】
前記プライマーは、上流プライマーおよび下流プライマーからなる。前記プライマーは、好ましくは配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7である。
【0016】
前述したK−ras遺伝子突然変異の定量検出キットは以下から選択される試薬、すなわち上述したようなプライマー、プローブおよび標準品を含む。前記キットは、好ましくはさらにTaq酵素、10×Tap緩衝液、MgCl2、dNTPミックスを含む。好ましいプライマーおよびプローブの比率は2:1〜10:1であり、好ましい順方向プライマーおよび逆方向プライマーの比率は1:3〜3:1である。標準品は、上述したプラスミドが一定の比率に応じて混合されたものが含まれ、野生型プラスミドおよび突然変異型プラスミドの含量の比率は、それぞれ0〜100%である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に図および実施例を組み合わせて、本発明についてさらに詳細な説明を行う。
【0018】
【図1】図1は、実施例2で用いるプラスミド標準品の構築方法の概要図である。
【図2】図2は、実施例2の野生型プラスミドのマップであり、矢印は、ベクターに野生型PCR産物の配列を挿入する位置を示す。
【図3】図3は、実施例2のK−ras野生型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4A】図4Aは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→GTT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4B】図4Bは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4C】図4Cは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→GAT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4D】図4Dは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン12のGGT→TGT突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図4E】図4Eは、実施例2の突然変異型プラスミド標準品のシークエンシング結果であり、矢印は塩基の突然変異部位を示す。K−rasコドン13のGGC→GAC突然変異型プラスミドのシークエンシング結果である。
【図5A】図5Aは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−ras野生型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5B】図5Bは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→GTT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5C】図5Cは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5D】図5Dは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→GAT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5E】図5Eは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン12のGGT→TGT突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図5F】図5Fは、実施例3の標準品の増幅曲線図である。K−rasコドン13のGGC→GAC突然変異型プラスミド標準品の増幅曲線である。
【図6A】図6Aは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図AはK−ras野生型プラスミドの標準曲線である。
【図6B】図6Bは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図BはK−rasコドン12のGGT→GTT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6C】図6Cは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図CはK−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6D】図6Dは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図DはK−rasコドン12のGGT→GAT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6E】図6Eは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図EはK−rasコドン12のGGT→TGT突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図6F】図6Fは、図4に基づいて作成された標準曲線図である。このうち、図FはK−rasコドン13のGGC→GAC突然変異型プラスミドの標準曲線である。
【図7A】図7Aは、本発明の実施例3で検出されたパラフィン包埋組織検体のK−rasコドン12の野生型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7B】図7Bは、本発明の実施例3で検出されたパラフィン包埋組織検体のGGT→TGT突然変異型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7C】図7Cは、本発明の実施例3で検出された新鮮組織検体のK−rasコドン12の野生型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7D】図7Dは、本発明の実施例3で検出された新鮮組織検体のGGT→GTT突然変異型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7E】図7Eは、本発明の実施例3で検出された全血検体のコドン13の野生型の蛍光定量PCRの増幅曲線図でありである。
【図7F】図7Fは、本発明の実施例3で検出された全血検体のGGC→GAC突然変異型の蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7G】図7Gは、本発明の実施例3で検出された細胞系検体のK−rasコドン12の野生型蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図7H】図7Hは、本発明の実施例3で検出された細胞系検体のK−rasコドン12のGGT→AGT突然変異型蛍光定量PCRの増幅曲線図である。
【図8】図8は、本発明の定量方法の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施例は、関連するいかなる実施も当業者に提供し、さらに本発明の完全な開示および記載に使用される。なおかつこれらの例は、出願人が考える発明の範囲を制限するものではなく、下文の実験もまた、実施されたすべての実験を指すものではなく、ただ実施することができる実験であるのみである。実施例において、具体的条件を明記していない実験方法は、通常、通例の条件、例えば分子クローニング実験マニュアル第3版(Sambrook J.)に基づくか、またはメーカー推奨の条件に基づく。
【実施例1】
【0020】
ヒトの新鮮腫瘍組織、パラフィン包埋組織、末梢血、胸水、ヒト細胞系のゲノムDNAの抽出
我々が検査を行ったヒト癌細胞系には、非小細胞肺癌(NSCLC)(A549、H460、H838およびH1703)、乳癌(MCF−7、BT474およびHuL100)、悪性中皮腫細胞系(H513、H2052、H290、MS−1およびH28)、結腸癌細胞系(SW480)、頭頸部癌細胞系(U87)、子宮頸癌(Hela)、肉腫細胞系(Mes−SA、Saos−2およびA204)が含まれる。
【0021】
検査を行ったヒトの新鮮な腫瘍組織、末梢血、パラフィン包埋組織には、NSCLC、中皮腫、結腸癌、悪性黒色腫、腎癌、食道癌、甲状腺癌、悪性癌および卵巣癌が含まれる。
【0022】
標本のDNA抽出
Qiagen社、Promega社、Roche社のDNA抽出キットを使用して検体のゲノムDNAを抽出することができ、Gene社のNanodrop ND1000型核酸微量測定器を使用して抽出したDNAの濃度および純度(OD260/OD280は約1.8、OD260/OD230は2.0より大きい)を測定した。以下に、Promega社のDNA抽出キットを例とし、検体DNAの抽出手順を紹介する。
【0023】
1.新鮮組織のDNA抽出
(1)はさみで大豆ほどの大きさに組織を切り取り、乳鉢に入れた。組織をせん断し、液体窒素を加えてすりつぶし、粉末にした。
【0024】
(2)あらかじめ冷却したライシス溶液600μlを乳鉢に入れ、1mlのピペットチップで6回ピペッティングを行い組織粉末およびライシス溶液を十分に混合させた。混合物を1.5mlEPチューブに移し、転倒混和を6回行って混合した後、65℃で20分間水浴に入れた。
【0025】
(3)RNaseを3μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0026】
(4)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を200μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上に5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0027】
(5)事前に600μlのイソプロパノール(室温)を入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0028】
(6)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を600μl加え、転倒混和を6回行って混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0029】
(7)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0030】
(8)沈殿に40μlのDNA溶解液を加え、65℃で1時間または4℃でオーバーナイトでインキュベートした。
【0031】
2.パラフィン包埋組織のDNA抽出
(1)1mgまたは1mgより小さい組織を1.5mlの遠心分離チューブに入れた。
【0032】
(2)新鮮なインキュベーション緩衝液/プロテイナーゼK溶液100μlを調製して加えた。検体の種類に基づき、56℃、オーバーナイトでインキュベートした。
【0033】
(3)インキュベートした検体チューブを取り出し、2倍容量のライシス緩衝液を加えた。
【0034】
(4)樹脂が完全に懸濁するまで、ボルテックスミキサーで10秒間樹脂を撹拌し、完全に懸濁した樹脂を7μl加えた。ボルテックスミキサーで3秒間撹拌後、室温で5分間インキュベートした。
【0035】
(5)ボルテックスミキサーで2秒間撹拌し、チューブをMagneSphere(登録商標)磁気分離スタンドに置いた。磁気分離をすぐに行った。
【0036】
(6)チューブの壁の樹脂には触れないように、すべての溶液を注意深く除去した。
【0037】
(7)ライシス緩衝液を100μl加え、磁気分離スタンドからチューブを取り外し、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。
【0038】
(8)チューブを磁気分離スタンドに戻し、全てのライシス溶液を除去した。
【0039】
(9)調製した1×洗浄液を100μl加え、磁気分離スタンドからチューブを取り外し、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。
【0040】
(10)チューブを磁気分離スタンドに戻し、全ての洗浄液を除去した。
【0041】
(11)ステップ(9)および(10)を2回繰り返し、全部で3回洗浄を行い、最後の1回の洗浄を確実に行った後、全ての液体を除去した。
【0042】
(12)蓋を開けてチューブを磁気分離スタンドに置き、空気中で5分間乾燥させた。
【0043】
(13)溶出液を25μl加えた。
【0044】
(14)チューブの蓋を閉め、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。65℃で5分間インキュベートした。
【0045】
(15)インキュベートしたチューブを取り出し、ボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。すぐに磁気分離スタンドに置いた。
【0046】
(16)DNA溶液を選択した容器に注意深く移した。
【0047】
3.全血のDNA抽出
(1)抗凝固全血を300μl採取し、細胞ライシス溶液を900μl加え、1mlのピペットチップでピペッティングを6回行って混合し、できる限り全血および細胞ライシス溶液を混合させた。室温に10分間放置し、その間に1mlピペットチップでピペッティングを3回行って混合した。
【0048】
(2)13,000×g、室温で20秒間遠心分離を行った後、上清を捨て、激しく振盪させた。あらかじめ冷却したライシス溶液を300μl加え、沈殿が完全に溶解するまで1mlのピペットチップでピペッティングを行い混合した。
【0049】
(3)RNaseを1.5μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0050】
(4)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を100μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上で5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0051】
(5)事前に300μlのイソプロパノール(室温)を入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0052】
(6)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を1ml加え、転倒混和を6回行って混合し、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0053】
(7)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0054】
(8)沈殿にDNA溶解液を40μl加え、65℃1時間または4℃オーバーナイトでインキュベートした。
【0055】
4.胸水のDNA抽出
(1)胸水5mlを採取し、2000rpm、室温で10分間遠心分離を行った。上清を回収し、細胞ライシス溶液を1ml加え、転倒混和を6回行って混合し、室温に10分間放置した。
【0056】
(2)13,000×g、室温で20秒間遠心分離を行った後、上清を捨て、激しく振盪し、あらかじめ冷却したライシス溶液を1ml加え、沈殿が完全に溶解するまで混合した。
【0057】
(3)RNaseを3μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0058】
(4)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を200μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上で5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0059】
(5)事前にイソプロパノール(室温)を5ml入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0060】
(6)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を1ml加え、転倒混和を6回行って混合し、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0061】
(7)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0062】
(8)沈殿にDNA溶解液を40μl加え、65℃1時間または4℃オーバーナイトでインキュベートした。
【0063】
5.細胞系のDNA抽出
(1)少なくとも約1×106個の細胞を採取し、1.5mlのEPチューブに移して、13,000×g、室温で遠心分離を10秒間行った。接着細胞である場合、細胞を採取する前にトリプシンで消化する必要がある。
【0064】
(2)上清を捨て、PBS200μlを加えて細胞を洗浄し、13,000×g、室温で遠心分離を10秒間行った後、上清を捨て、沈殿が混濁するまで激しく振盪した。
【0065】
(3)あらかじめ冷却したライシス溶液を600μl加え、細胞の塊が肉眼で見えなくなるまで、1mlのピペットチップでピペッティングを行って混合した。
【0066】
(4)RNaseを3μl加え、転倒混和を6回行って混合し、37℃で20分間水浴に入れた。
【0067】
(5)室温まで冷却し、タンパク質沈殿剤を200μl加え、転倒混和を6回行って混合した。氷上で5分間放置した後、13,000×g、室温で4分間遠心分離を行った。
【0068】
(6)事前に600μlのイソプロパノール(室温)を入れた新しいEPチューブに上清を移し、6回穏やかに混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0069】
(7)上清を捨て、沈殿に70%エタノール(室温)を600μl加え、転倒混和を6回行って混合した後、13,000×g、室温で1分間遠心分離を行った。
【0070】
(8)エタノールを除去し、15分間空気乾燥させた。
【0071】
(9)沈殿にDNA溶解液40μlを加え、65℃1時間または4℃オーバーナイトでインキュベートした。
【実施例2】
【0072】
突然変異型および野生型の検出配列を含むプラスミド標準品の準備
1.野生型プラスミドの構築(図1、図2)
1.1 ベクターの準備
TAクローニングベクターpMD18−Tは、TAKARA社から購入した。
【0073】
1.2 インサートの準備
PCR法を使用してインサートを調製した。PCRのテンプレートはステップ1で抽出した検体のゲノムDNAであり、反応系および増幅条件は下表のとおりである(表1、表2、表3)。
表1:PCR反応系(50μl)
【0074】
【表1】
表2:PCRプライマー
【0075】
【表2】
表3:PCR増幅条件
【0076】
【表3】
【0077】
1.3 QIAgenゲル回収キットを使用して目的断片を回収した後、TAクローニングにより、pMD18−Tベクター(TAKARA社より購入)に挿入した。
【0078】
1.4 新しく構築したプラスミドは、大腸菌DH5α株で大量に増幅させ、抽出精製することにより得られた(具体的な方法は《分子クローニング実験マニュアル》第3版、96〜99、103頁を参照のこと)。
【0079】
1.5 BamHIおよびHindIIIを利用して、ダブルダイジェストを行って確認した。
【0080】
1.6 制限酵素消化の結果、陽性を呈した菌種のシーケンシングを行い、シーケンシングを正確に行った後、野生型の配列を含む標準品とした(図3)。
【0081】
2.突然変異型プラスミドの構築:突然変異部位の突然変異プライマーを設計し、DPN1法を利用して突然変異型配列を含む標準品が得られた。
【0082】
2.1 必要な突然変異配列に基づき、突然変異部位の突然変異プライマーを設計した(表4)。
表4:突然変異プライマー
【0083】
【表4】
【0084】
2.2 5ngの野生型プラスミドをテンプレートとし、突然変異プライマーおよびPfu酵素を使用して目的部位を突然変異させた。増幅系および条件は、表1、表4、表3に示す通りである。
【0085】
K−ras遺伝子コドン12のGGT→GTT突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−1−F(配列番号7)およびK−ras−1−R(配列番号8)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→AGT突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−2−F(配列番号9)およびK−ras−2−R(配列番号10)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→GAT突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−3−F(配列番号11)およびK−ras−3−R(配列番号12)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→TGT突然変異配列を含むプラスミドを調製する過程において、増幅系にK−ras−4−F(配列番号13)およびK−ras−4−R(配列番号14)プライマーを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン13のGGC→GAC突然変異配列を含むプラスミドの調製過程において、増幅系にK−ras−5−F(配列番号15)およびK−ras−5−R(配列番号16)プライマーを添加する必要がある。
【0086】
2.3 DPN1酵素を使用してステップ2.2で得られた産物を処理し、37℃で1時間インキュベートした後、産物を回収した。大腸菌DH5α株で大量に増幅させ、抽出、精製することにより得られた。
【0087】
2.4 BamHIおよびHindIIIを利用して、ダブル酵素消化を行いプラスミドを同定し た。
【0088】
2.5 制限酵素消化の結果、陽性を呈した菌種のシークエンシングを行い、シークエンシングを正確に行った後、突然変異型配列を含む標準品とした(図4)。
【実施例3】
【0089】
肺癌および子宮頸癌検体を例とした、ヒト細胞系、ヒトの新鮮な腫瘍組織、末梢血、パラフィン包埋組織のゲノムDNAにおけるK−ras突然変異の検出
1.蛍光定量PCR反応のテンプレートは、実施例1で抽出した肺癌および子宮頸癌検体のゲノムDNAと、実施例2で調製した標準品であり、再蒸留水をネガティブコントロールとした。標準曲線を作成するため、標準品を1ng/μl、0.5ng/μl、0.25ng/μl、0.125ng/μl、0.0625ng/μl、0.03125ng/μlに2倍希釈した。
【0090】
2.反応系および反応条件は表2、表5、表6、表7に示され、このうち標識プローブの蛍光発光物質は、FAM、TET、HEX、ROXから選択され、蛍光消光物質はBHQ、TAMARAから選択された。
表5:蛍光定量PCR反応系(20μl/チューブ)
【0091】
【表5】
【0092】
K−ras遺伝子コドン12、13の突然変異状態の検出には、6つの系を構成する必要があるが、プローブが異なる以外、系に用いるその他の試薬は同じである。K−ras遺伝子コドン12、13の野生型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−w1(配列番号17)またはK−ras−w2(配列番号18)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→GTT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−11(配列番号19)またはK−ras−12(配列番号20)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→AGT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−21(配列番号21)またはK−ras−22(配列番号22)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→GAT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−31(配列番号23)またはK−ras−32(配列番号24)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン12のGGT→TGT突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−41(配列番号25)またはK−ras−42(配列番号26)プローブを添加する必要があり、K−ras遺伝子コドン13のGGC→GAC突然変異型遺伝子を検出する場合、系にK−ras−51(配列番号27)またはK−ras−52(配列番号28)プローブを添加する必要がある。
表6:プローブ
【0093】
【表6】
表7:増幅条件
【0094】
【表7】
【0095】
3.標準曲線の作成
ステップ3の標準品から得られたCT値の結果に基づき、標準曲線を作成した。図5はプラスミド標準品の増幅曲線であり、図中、上昇した5本の曲線は、左から右に順次それぞれ0.5ng/μl、0.25ng/μl、0.125ng/μl、0.0625ng/μl、0.03125ng/μlに希釈したプラスミド標準品の増幅曲線を表す。横軸はサイクル数を示し、縦軸は蛍光検出値を示す。ここから、さらに計算に用いる標準曲線を作成することができる(図6)。図6中、横軸はテンプレートのコピー数の対数値であり、縦軸はCT値である。このうちテンプレートのコピー数=質量/分子量×6.02×1023である。本実験において、プラスミドはpMD18−Tベクターおよびインサートからなり、インサートの塩基長は略一致し、違っていても最大でわずか20数塩基の長さであり、PMD18−Tベクター2692bpの長さに相対して、影響は大きくないため、野生型および突然変異型プラスミドの標準品のコピー数の比≒質量の比である。
【0096】
4.標本K−ras遺伝子の特定の突然変異型の比率の計算
標準曲線に基づき、検体のCT値から反応した野生型および突然変異型のゲノムDNAのコピー数を求め、それにより突然変異型K−rasDNAおよびK−rasDNAの総量(この部位の野生型にあらゆる突然変異型を加えたもの)の割合が得られる。図7に示すように、ある肺癌パラフィン包埋組織検体から検出された、K−rasコドン12の野生型のCT値は19.15であり(図7A)、GGT→TGT突然変異型の値は20.74であった(図7B)。それぞれ対応する標準曲線の公式(図6)から各々のコピー数を求めることができ、ここから突然変異型および野生型の含量の比が30:70であることがわかり、組織中の約30%のK−ras遺伝子コドン12にGGT→TGT突然変異が生じていることが推測された。
【0097】
5.検出結果
本実施例は、48例の肺癌および膵臓癌の組織、全血と、細胞系の標本に対してK−ras遺伝子突然変異の検出を行った。全部で10例に突然変異が生じていることが検出された。具体的な突然変異例数を表8に示す。突然変異比率、すなわちその検体中の突然変異遺伝子および非突然変異遺伝子の比率を表9に示す。
表8:K−ras突然変異例数
【0098】
【表8】
表9:K−ras突然変異の比率
【0099】
【表9】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適切なPCR条件下において、K−ras遺伝子の突然変異位置の上下流200個以内のヌクレオチドと結合する、ポリメラーゼ連鎖反応のプライマー。
【請求項2】
前記プライマーが上流プライマーおよび下流プライマーからなる、請求項1に記載のプライマー。
【請求項3】
適切なPCR条件下において、K−ras遺伝子の突然変異位置の塩基配列と特異的に結合する、蛍光定量PCRのプローブ。
【請求項4】
前記プローブの5’末端に蛍光発光物質が結合され、3’末端に蛍光消光物質が結合される、請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
検出しようとするK−ras遺伝子の野生型配列を含む、プラスミド。
【請求項6】
前記プラスミドに含まれるK−ras遺伝子の野生型配列が配列番号29である、請求項5に記載のプラスミド。
【請求項7】
検出しようとするK−ras遺伝子の突然変異型配列を含む、プラスミド。
【請求項8】
前記プラスミドに含まれるK−ras遺伝子の突然変異型配列が、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33または配列番号34である、請求項7に記載のプラスミド。
【請求項9】
以下から選択される試薬、すなわち請求項1または2に記載のプライマー、請求項3または4に記載のプローブと、請求項5および/または7に記載のプラスミドを含む、K−ras遺伝子突然変異の定量検出キット。
【請求項10】
プライマーおよびプローブの比率が2:1〜10:1であり、順方向および逆方向プライマーの比率が1:3〜3:1である、請求項9に記載のキット。
【請求項1】
適切なPCR条件下において、K−ras遺伝子の突然変異位置の上下流200個以内のヌクレオチドと結合する、ポリメラーゼ連鎖反応のプライマー。
【請求項2】
前記プライマーが上流プライマーおよび下流プライマーからなる、請求項1に記載のプライマー。
【請求項3】
適切なPCR条件下において、K−ras遺伝子の突然変異位置の塩基配列と特異的に結合する、蛍光定量PCRのプローブ。
【請求項4】
前記プローブの5’末端に蛍光発光物質が結合され、3’末端に蛍光消光物質が結合される、請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
検出しようとするK−ras遺伝子の野生型配列を含む、プラスミド。
【請求項6】
前記プラスミドに含まれるK−ras遺伝子の野生型配列が配列番号29である、請求項5に記載のプラスミド。
【請求項7】
検出しようとするK−ras遺伝子の突然変異型配列を含む、プラスミド。
【請求項8】
前記プラスミドに含まれるK−ras遺伝子の突然変異型配列が、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33または配列番号34である、請求項7に記載のプラスミド。
【請求項9】
以下から選択される試薬、すなわち請求項1または2に記載のプライマー、請求項3または4に記載のプローブと、請求項5および/または7に記載のプラスミドを含む、K−ras遺伝子突然変異の定量検出キット。
【請求項10】
プライマーおよびプローブの比率が2:1〜10:1であり、順方向および逆方向プライマーの比率が1:3〜3:1である、請求項9に記載のキット。
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図1】
【図2】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図1】
【図2】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【公表番号】特表2013−515493(P2013−515493A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546311(P2012−546311)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002201
【国際公開番号】WO2011/079524
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512171054)北京雅康博生物科技有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002201
【国際公開番号】WO2011/079524
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512171054)北京雅康博生物科技有限公司 (2)
【Fターム(参考)】
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