KIM−1アンタゴニストおよび免疫系を調節するための使用
【課題】自己免疫疾患および哺乳動物の免疫系における他の障害の免疫機能を治療的に調節するための方法を提供すること。
【解決手段】T細胞と、第二の細胞(例えば、抗原提示細胞)との間のシグナル伝達を阻害するKIM−1アンタゴニストの使用が開示される。このような阻害は、種々の自己免疫疾患および移植片対宿主疾患を含む疾患の処置に対して有用である。また開示されるものは、哺乳動物におけるリンパ球もしくは他の免疫細胞によるIFN−γの分泌を阻害するためのKIM−1アンタゴニストの使用である。IFN−γの阻害は、炎症性疾患または炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)の処置に対して有用である。
【解決手段】T細胞と、第二の細胞(例えば、抗原提示細胞)との間のシグナル伝達を阻害するKIM−1アンタゴニストの使用が開示される。このような阻害は、種々の自己免疫疾患および移植片対宿主疾患を含む疾患の処置に対して有用である。また開示されるものは、哺乳動物におけるリンパ球もしくは他の免疫細胞によるIFN−γの分泌を阻害するためのKIM−1アンタゴニストの使用である。IFN−γの阻害は、炎症性疾患または炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)の処置に対して有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の分野は、医学、免疫学、分子生物学およびタンパク質化学である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
KIM−1(Kidney Injury Molecule−1)は、I型細胞膜糖タンパク質(Ichimuraら,1998,J.Biol.Chem.273:4135−4142)である。KIM−1の細胞外部分(外部ドメイン)は、6個のシステイン免疫グロブリン様ドメインおよびムチン様Oグリコシル化タンパク質に特有のT/SPリッチドメインを含む。このムチンドメインは、柄のように、細胞表面から離れたIg様ドメインを伸ばす(Jentoft,1990,Trends Biochem.Sci.15:291−294)。KIM−1は、A型肝炎ウイルスに対するレセプターとして同定されている(Kaplanら,1996,EMBO J.15:4282−4296;WO 96/04376;米国特許第5,622,861号)。二つのヒトKIM−1スプライス改変体が発見され、一つは肝臓において優勢であり(Feigelstock,1998,J.Virol.72:6621−6628)、もう一つは、腎臓において優勢である(前出のIchimuraら)。
【0003】
KIM−1は、TIM(T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン)ファミリーとして公知の遺伝子ファミリーのメンバーである。KIM−1に加えて、ヒトにおいてTIMファミリーの少なくとも二つの他のメンバーがある。一つのメンバーは、クローニングされて「200遺伝子(200 gene)」(特許文献1)と命名されたが、その後、TIM−3として公知になった。別のメンバーも、クローニングされて「遺伝子58(gene 58)」と命名された(特許文献2)。
KIM−1は、腎臓ダメージに対する臨床の診断マーカーとして興味を引いている(Baillyら,2002,J.Biol.Chem.277:39739−39748;Hanら,2002,Kidney Intl.62:237−244)。KIM−1(TIM−1)のマウスホモログは、気道反応性亢進の発生に関与していると考えられる遺伝子座内に存在することが報告されている(McIntireら,2001,Nature Immunology 2:1109)。TIM−2として公知のマウスタンパク質は、抗原特異的T細胞のインビボでの発生において役割を果たすことが報告されている(Kumanogohら,2002,Nature 419:629−633)。TIM−3として公知のマウスタンパク質は、マウスにおける免疫応答調節に関連している(Monneyら,2002.Nature 415:536−541)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2000/73498号
【特許文献2】国際公開第99/38881号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
KIM−1アンタゴニストを用いた哺乳動物の処置は、T細胞と他の免疫系細胞(例えば、樹状細胞、単球マクロファージおよびB細胞)との相互作用を変化させ、これによって抗原に対するIgG応答を強く抑制することが発見されている。さらに、このような処置は、抗原を用いたその後の抗原投与に応答して、記憶B細胞によるIgG1産生をほとんどなくすことが発見されている。さらに、KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、抗原応答に関与する免疫細胞によるIFN−γの分泌を減少することが発見されている。これらの発見に基づき、本発明は、自己免疫疾患および哺乳動物の免疫系における他の障害の免疫機能を治療的に調節するための方法を提供する。
【0006】
本発明は、哺乳動物において、T細胞と第二の細胞(例えば、抗原提示細胞(APC))との間のシグナル伝達を阻害する方法を提供する。この方法は、哺乳動物(例えば、免疫疾患または免疫障害を有する哺乳動物、または組織移植片を受ける準備のある哺乳動物)を同定する工程;ならびに哺乳動物に以下の型の有効量のKIM−1アンタゴニストの1つを投与する工程を包含する:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメント。
【0007】
上記のT細胞は、活性化T細胞(例えば、ヘルパーT細胞)であり得る。これはTh2細胞またはTh1細胞であり得る。本発明のいくつかの実施形態において、このT細胞は、移植されるドナーT細胞である。APCは、単球、マクロファージ、樹状細胞、またはB細胞であり得るが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、APCは、自己抗原を提示している。
【0008】
好ましくは、上記のKIM−1アンタゴニストは、可溶性ポリペプチドであり、この可溶性ポリペプチドは、KIM−1 Igドメインに加えてKIM−1ムチンドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、異種部分(例えば、免疫グロブリン(Ig)部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分、多量体化部分および精製容易化部分)を含む。好ましい異種部分は、Fc部分のようなIg部分である。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記のKIM−1アンタゴニストは、ポリマー(例えば、ポリアルキレングリコール、糖ポリマー、あるいはポリペプチド)に結合体化されたポリペプチドである。好ましいポリマーは、ポリアルキレングリコールであり、ポリエチレングリコール(PEG)は特に好ましい。このポリマーの平均分子量は、好ましくは、2,000Da〜30,000Daであり、そしてより好ましくは、5,000Da〜20,000Da(例えば、約10,000Da)である。
【0010】
本発明は、例えば、Th2細胞のような活性化T細胞によって、細胞哺乳動物におけるB細胞の活性化を阻害する方法を提供する。この方法は、B細胞または他のAPCを有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程、またはこのアンタゴニストが抗KIM−1抗体である場合、T細胞を有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程を包含する。本発明のいくつかの実施形態において、活性化T細胞は、移植されるドナーT細胞である。
【0011】
本発明は、哺乳動物における一以上の抗原に対して反応性のIgGのような抗体(例えば、IgG1)のサブセットの産生を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、有効量のKIM−1アンタゴニストは、哺乳動物の免疫系が最初に一以上の抗原を認識する30分〜30日前に、投与される。この抗原は、処置される疾患、障害、または状態に応じて、アロ抗原または自己抗原である。
【0012】
本発明は、自己免疫疾患における疾患再発を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0013】
本発明は、自己免疫疾患におけるエピトープ拡散を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0014】
本発明は、Th2媒介性疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、急速進行性半月体形成性糸球体腎炎、または移植片対宿主疾患(GVHD))、喘息、アトピー性皮膚炎、気管反応性亢進疾患のようなアトピー性障害および呼吸困難症候群を処置する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0015】
本発明は、GVHDを阻害する方法を提供する。この方法は、移植の30分〜30日前に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0016】
本発明は、哺乳動物において、リンパ球によるIFN−γの分泌を阻害する方法を提供する。この方法は、この哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0017】
本発明は、Th1 T細胞エフェクター機能の活性化、ならびにその結果、炎症性状態において起きる細胞性免疫応答を阻害する方法を提供する。このような炎症性状態の例は、炎症性腸疾患である。この方法は、この哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0018】
本発明は、哺乳動物における炎症性疾患または炎症性障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎および回腸炎のような炎症性腸疾患)を処置する方法を提供する。この方法は、この哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「抗KIM−1抗体」は、抗体(例えば、全長KIM−1ポリペプチドの細胞外部分に特異的に結合するIgG分子)を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「全長ヒトKIM−1ポリペプチド」は、その全体で配列番号1のポリペプチドまたはその全体で配列番号2のポリペプチドを意味する。これらの二つのポリペプチドは、ヒトKIM−1遺伝子のスプライス改変体を表す。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「異種部分」は、全長ヒトKIM−1ポリペプチド内に存在しないアミノ酸配列を意味する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1アンタゴニスト」は、(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;または(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントを意味し、これらの各々が、天然に存在するKIM−1の生物学的活性を、遮断するか、阻害するか、または妨害する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1融合タンパク質」は、異種部分に融合されたKIM−1部分を含む融合タンパク質を意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1部分」は、全長KIM−1ポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントを意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1ポリペプチド」は、KIM−1部分単独またはKIM−1部分を含む融合タンパク質を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1 Igドメイン」は、そのアミノ末端がアミノ酸29〜36であり、そしてそのカルボキシ末端がアミノ酸105〜107である配列番号1の一部分を意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1ムチンドメイン」は、そのアミノ末端がアミノ酸126〜130であり、そしてそのカルボキシ末端がアミノ酸255〜274である配列番号1の一部分を意味する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1膜貫通ドメイン」は、配列番号1のアミノ酸290〜311を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1細胞質ドメイン」は、配列番号1のアミノ酸312〜334、または配列番号2の312〜359を意味する。
【0030】
他に規定されない限り、本明細書中に使用される全ての技術および科学用語は、本発明が関係する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、規定を含める本明細書は、支配する。本明細書中に記載される全ての刊行物、特許および他の参考文献は、参考として援用される。
本明細書中に記載されるものと同様または等価である方法および材料は、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料は、以下に記載される。この材料、方法および例は、単なる例示であり、限定することを意味しない。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物における免疫応答に関与するT細胞と第二の細胞との間のシグナル伝達を阻害する方法であって、以下:
(a)免疫疾患または免疫障害を有する哺乳動物および組織移植片の調整における哺乳動物からなる群から選択される哺乳動物を同定する工程;および
(b)該哺乳動物に以下:(i)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(ii)抗KIM−1抗体;ならびに(iii)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
前記第二の細胞が、抗原提示細胞(APC)である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記T細胞が、活性化T細胞である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記T細胞が、ヘルパーT細胞である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記ヘルパーT細胞が、Th2細胞である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記T細胞が、移植されるドナーT細胞である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記APCが、単球、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記APCが、自己抗原を提示している、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記ポリペプチドが、さらにKIM−1ムチンドメインを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記ポリペプチドが、さらに異種部分を含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記異種部分が、免疫グロブリン(Ig)部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分および精製容易化部分からなる群から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記異種部分が、Ig部分である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記Ig部分が、Fc部分である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記ポリペプチドが、ポリマーに結合体化される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコール、糖ポリマーおよびポリペプチドからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール(PEG)である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ポリマーの平均分子量が、2,000Da〜30,000Daである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記ポリマーの平均分子量が、5,000Da〜20,000Daである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ポリマーの平均分子量が、約10,000Daである、項目19に記載の方法。
(項目21)
哺乳動物におけるB細胞の活性化を阻害する方法であって、B細胞を、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程を包含する、方法。
(項目22)
前記B細胞の活性化が、活性化T細胞によって媒介される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記活性化T細胞が、Th2細胞である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記活性化T細胞が、移植されるドナーT細胞である、項目22に記載の方法。
(項目25)
哺乳動物において、一以上の抗原に対する抗体のサブセットの産生を阻害する方法であって、以下(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
前記抗体が、IgGクラスである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記抗体が、IgG1サブクラスである、項目26に記載の方法。
(項目28)
有効量の前記ポリペプチドが、前記哺乳動物の免疫系が一以上の抗原を初めて認識する30分〜30日前に、該哺乳動物に投与される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記一以上の抗原が、アロ抗原である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記一以上の抗原が、自己抗原である、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記哺乳動物の前記免疫系が、前記一以上の抗原を、自己免疫疾患の過程におけるエピトープ拡散プロセスの一部として、初めて認識する、項目28に記載の方法。
(項目32)
自己免疫疾患におけるエピロープ拡散を阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1
Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目33)
Th2細胞媒介性疾患を処置する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目34)
前記Th2細胞媒介性疾患が、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、急速進行性半月体形成性糸球体腎炎、移植片対宿主疾患(GVHD)および全身性ループス腎炎(SLE)からなる群から選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
GVHDを阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目36)
KIM−1 IgドメインおよびFc部分を含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド。
(項目37)
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物内のリンパ球によるIFN−γの分泌を阻害する方法。
(項目38)
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物における炎症性疾患または炎症性障害を処置する方法。
(項目39)
前記炎症性疾患および前記炎症性障害が、炎症性腸疾患である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記炎症性疾患または前記炎症性障害が、急性炎症または慢性炎症である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記ヘルパーT細胞が、Th1細胞である、項目4に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(先行技術)は、ヒトKIM−1ポリペプチドの二つの天然に存在するスプライス改変体の略図である。この二つのアミノ酸配列は、残基323まで同一である。シグナル配列(残基1〜20)を下線で示す。膜貫通ドメイン(残基290〜311)を二重下線により示す。
【図2】図2(先行技術)は、359個のアミノ酸のヒトKIM−1スプライス改変体の略図である。シグナル配列および膜貫通ドメインを、黒い影で示す。Igドメイン上のシステイン残基を「C」により示す。逆三角形は、N−グリカン結合点を示す。ムチンドメインに相当するTSPリッチドメインを黒い太枠で示す。
【図3】図3は、ヒツジ赤血球で一次抗原投与を受けたBalb/cマウスにおいて、14日目に測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである(実験1)。
【図4】図4は、ヒツジ赤血球で一次抗原投与を受けたBalb/cマウスにおいて、14日目に測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである(実験2)。
【図5】図5は、ヒツジ赤血球で一次抗原投与を受けたC57Bl/6マウスにおいて、7日目に測定された免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである。
【図6】図6は、実験1由来のマウスにおいて、一次抗原投与(図3)から完全に回復させ、次いで再抗原投与した後、測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである。免疫グロブリン力価を、再抗原投与して3日後に測定した。
【図7】図7は、実験2由来のマウスにおいて、一次抗原投与(図4)から完全に回復させ、次いで再抗原投与した後、測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである。免疫グロブリン力価を、再抗原投与した3日後に測定した。
【図8】図8は、マウスMLR培養におけるIFNγ産生に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞をC57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて48時間後、その上清を回収し、IFNγレベルを測定するために使用した。インキュベーションの際のmAb 3A2およびmAb 1H9用いた培養物の処理よって、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した。
【図9】図9は、マウスMLR培養における細胞増殖に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞をC57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて72時間後、生体色素(vital dye)を培養物に添加して、1〜4時間にわたり発色させた。3日の培養期間の間、抗KIM−1抗体用いた培養物の処理によって、細胞増殖は影響されなかった。
【図10】図10は、マウスMLR培養におけるIFNγ産生に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞を、C57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて48時間後、その上清を回収して、IFNγレベルを測定するために使用した。インキュベーションの際のKIM−1−Ig融合タンパク質を用いた培養物の処理によって、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した。
【図11】図11は、マウスMLR培養における細胞増殖に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞を、C57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて72時間後、生体色素を培養物に添加して、1〜4時間にわたり発色させた。3日の培養期間の間、KIM−1−Ig融合タンパク質を用いた培養物の処理によって、細胞増殖は影響されなかった。
【図12】図12Aおよび図12Bは、ヒトMLR培養におけるIFNγ産生に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射JY細胞を、健常人のドナー由来の末梢血単核細胞を刺激するために使用した。培養にて5日後、その上清を回収して、IFNγレベルおよびIl−2レベルを測定するために使用した。インキュベーションの際のmAb AUF1およびmAb AKG7を用いた培養物の処理によって、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下したが(図12A)、一方で産生したIl−2のレベルは、変わらないままであった(図12B)。
【図13】図13は、ヒトMLR培養における細胞増殖に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射JY細胞を、健常人のドナー由来の末梢血単核細胞を刺激するために使用した。培養にて6日後、生体色素を培養物に添加して、1〜4時間にわたり発色させた。6日の培養期間の間、抗ヒトKIM−1 mAbを用いた培養物の処理によって、細胞増殖は有意にもたされなかった。
【図14】図14は、マウスにおいて、炎症性腸疾患の誘導後の体重減少に関するデータをまとめたヒストグラムである。雌性のBalb/cマウスをデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)に暴露した。8日後、マウスをただの水に換え戻して、DSS暴露から回復させた。三日後、マウスを体重測定した。この体重を、実験の開始時の体重に対する百分率として計算した。KIM−1−Ig融合タンパク質を用いた処理によって、体重スコアにおける改善で示すように、マウスに対して有意な防御が与えられた。10マウス/グループであった。平均等価(equivilence)試験により、>p=0.0001の有意差が得られた。
【図15】図15Aおよび図15Bは、マウスにおいて、炎症性腸疾患の誘導後の臨床スコアデータをまとめたヒストグラムである。3日の回復期間後、マウスを下痢および糞便中の血液の存在について評価した。KIM−1−Ig融合タンパク質を用いて処理したマウスは、未処置のグループまたはコントロール−Ig処理のグループより有意に優れたスコアを有した(図15A)。これは、部分的に、糞石における血液の存在を有した有意により少ないマウスがよるものであった(図15B)。平均等価試験により、KIM−1−Ig処置した同齢集団と比較して、未処理のコントロールの臨床スコアにおいて差異についての有意な値(p=0.05)が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
ネイティブなヒトKIM−1遺伝子は、少なくとも部分的には組織依存的なスプライス変化に依存して334アミノ酸または359アミノ酸(配列番号1)を含むポリペプチド(図1)をコードする。両方の配列とも以下を含む:シグナル配列、Igドメイン、ムチンドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン。
【0033】
可溶性のダイマー化KIM−1外部ドメイン−Fc融合タンパク質(マウスKIM−1外部ドメインおよびヒトFc部分を含む各モノマー)ならびに認識される動物モデル(マウスのSRBC反応)を使用して、本発明者らは、哺乳動物の免疫応答の著明な変化を成し遂げた。理論に縛られる意図はないが、本発明者らは、観察結果を融合タンパク質がKIM−1アンタゴニストのように作用し、この拮抗作用は、T細胞とAPCとの間のKIM−1媒介性シグナル伝達の相互作用を妨害することを示すものとして解釈する。この妨害の下流の効果は、哺乳動物の免疫反応の有用な調節を含む。このような調節は、自己免疫疾患ならびに哺乳動物の免疫系が、T細胞細胞傷害または免疫グロブリン反応のいずれかを介して、不適切な標的を攻撃する他の疾患および障害を処置するために使用され得る。免疫系調節が有益である疾患または障害の例としては、関節炎、全身性エリテマトーデス(erythromatosis)(SLEまたはループスとしてもまた公知)および移植片対宿主疾患(GVHD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の方法において、可溶性KIM−1アンタゴニストポリペプチドまたはKIM−1ブロッキング抗体(あるいは抗原結合性抗体フラグメント)は、予備形成されたポリペプチドとして直接投与され得る。あるいは、それは、核酸ベクター(このポリペプチドをコードし、そして発現する)を介して非直接的に投与され得る。いずれの方法にせよ、この結果は、KIM−1媒介性のT細胞上の効果(T細胞活性化およびT細胞増殖刺激を含める)を拮抗することである。T細胞上に位置するKIM−1のこの拮抗作用は、T細胞それ自体の破壊的作用をブロックすることによって、直接的に、所望の治療効果を達成し得る。さらに、この拮抗作用は、B細胞の活性化T細胞媒介性の活性化を阻害して、それによって有害な抗体産生を減少させることによって、間接的に、所望の治療効果を達成し得る。
【0035】
自己免疫疾患および特定のタイプの病原性感染を含める種々の疾患において、ダメージは自己抗体反応(すなわち、自己抗原を認識する抗体の産生)から生じる。本発明は、T細胞活性化およびT細胞分化を妨害することによって、このようなダメージを減少させるための方法および分子を提供する。これは、次いで、B細胞による特異的免疫グロブリン(例えば、IgG1)の産生および分泌を妨害する活性化T細胞媒介性のB細胞活性化を妨害する。従って、自己抗体反応によって特徴付けられる任意の疾患または障害は、本発明の方法および分子を使用することによって、処置され得る。
【0036】
特定の自己免疫疾患が処置される場合、抗原への暴露ならびに免疫系反応は、一過性である。これは、有効量のKIM−1アンタゴニストの投与が、一以上の抗原に対する免疫応答の後に続く再活性化を阻害する際の緩解をもたらす。この方法において、本発明は、疾患再発をブロックするために使用され得る。特定の自己免疫疾患が処置される場合、哺乳動物の免疫系は、一以上の抗原を、自己免疫疾患の過程におけるエピトープ拡散プロセスの一部として、初めて認識する。
【0037】
移植片対宿主疾患(GVHD)におけるダメージの多くは、一旦、例えば、骨髄移植において、移植される場合、(宿主抗原に対して)宿主において活性化されたドナーT細胞の作用から、直接的に生じる。T細胞活性化を妨害するこの能力によって、本発明は、GVHDを阻害するために有用である。活性化ドナーT細胞の直接的作用からのダメージに加えて、GVHDにおいて、抗体媒介性成分もまたある。この抗体媒介性成分は、自己抗体産生B細胞を活性化するドナーT細胞の活性化に依存することから、本発明は、GVHDにおいて自己抗体媒介性ダメージおよび細胞性免疫媒介性ダメージを減少させる。
【0038】
(抗体媒介性自己免疫疾患)
全身性エリテマトーデス(SLE;ループス)は、細胞内抗原(例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNAおよびヒストン)に対して指向される高レベルの自己抗体によって特徴付けられるTH−2媒介性自己免疫障害である。これらの特徴を考えると、ループスは、本発明に従って処置され得る自己免疫疾患を例示する。
【0039】
本発明による処置に適した他の器官特異的疾患または全身性自己免疫疾患の例としては、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、グレーブス病、シャーガス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎および急性進行性半月体形成性糸球体腎炎が挙げられる。例えば、Benjaminiら、1996、Immunology、A Short Course、第三版(Wiley−Liss,NewYork)を参照のこと。さらに、一旦、T細胞細胞傷害性活性によって媒介されると考えると、慢性関節リウマチ(RA)が、B細胞および/または抗体成分を有することは、現在公知であり(Leandroら,2002,Ann.Rheum.Dis.,61:863−866;De Vitaら,Arthritis Rheum.46:2029−2033;Tsujiら,2002,J.Exp.Med.196:1277−1290)、従って、本発明による処置に適している。
【0040】
いくつかの病原性感染薬剤に対する正常な免疫応答は、有害な自己抗体応答を誘発する。一つの例は、シャーガス病であり、Trypanosoma cruziで慢性的に感染したヒトおよび実験動物において発生する炎症性心筋症である。抗自己抗体は、シャーガス病患者の血清中に存在し(Bach−Eliasら、1998、Parasitol.Res.84:796−799;Tibbettsら,J.Immunol.152:1493−1499)、従って、この疾患は、本発明による処置に適している。
【0041】
感染から生じる自己抗体による細胞の破壊の別の例は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)であり、この自己抗体は、(FcレセプターまたはC3bレセプターを有する補体または食細胞によって)血小板破壊を引き起こし、出血を導き得る。ITPは、本発明による処置に適している。
【0042】
(移植片対宿主疾患(GVHD))
GVHDは、本発明の方法を使用して処置され得るT細胞媒介性状態を例示する。GVHDは、T細胞が宿主抗原を外来抗原として認識する場合に、惹起される。ヒト患者において、しばしば、骨髄移植(BMT)の致命的結果となるGVHDは、急性または慢性であり得る。GVHDの急性形態および慢性形態は、それぞれ、抗原特異的なTh1応答およびTh2応答の発生を例示する。急性GVHDは、BMT後はじめの2ヵ月以内に発症し、そして、皮膚、腸、肝臓および他の器官に対するドナー細胞傷害性T細胞媒介性ダメージによって特徴付けられる。慢性GVHDは、より遅く現れ(BMT後100日以上)、そして自己抗体を含む免疫グロブリン(Ig)の過剰産生、ならびにIg沈着によって引き起こされる皮膚、腎臓および他の器官へダメージによって特徴付けられる。急性GVHD患者の約90%は、慢性GVHDを発生するようになる。慢性GVHDは、Th2 T細胞媒介性疾患であるように思われる(De Witら,1993,J.Immunol.150:361−366)。急性GVHDは、Th1媒介性疾患である(Krengerら,1996,Immunol.Res.15:50−73;Williamsonら,1996,J.Immunol.157:689−699)。T細胞細胞傷害は、急性GVHD特有である。ドナーの抗宿主細胞傷害の結果は、種々の方法において見られ得る。第一に、宿主リンパ球は、急速に破壊され、これによって、急性GVHDを発症しているマウスは、大いに免疫抑制されている。第二に、ドナーリンパ球は、移植され、宿主の脾臓において拡大し、そしてこれらの細胞傷害活性は、ドナー細胞によって(外来として)認識され得る宿主抗原を発現する細胞株を利用することによって、インビトロで、直接測定され得る。第三に、この疾患は、さらなる組織にとって、致死性になり、そして細胞集団は、破壊される。
【0043】
慢性GVHDは、宿主組織および宿主細胞の抗体媒介性破壊から生じ、「SLE様」GVHDと呼ばれている。徴候としては、自己抗体形成、種々の器官(腎臓、肝臓)におけるIg沈着、皮膚発疹、リンパ系の過形成、シェーグレン様病変、強皮症様病変、多発動脈炎および他の病理が挙げられる。この疾患は、自己抗体形成によって、部分的に媒介される。前述のことを考えると、慢性GVHDは、本発明による処置に適している。
【0044】
(他のTh2関連疾患)
アトピー障害は、活性化T細胞およびAPCを含む免疫系細胞による、サイトカイン、ケモカイン、およびTh2応答に特有な他の分子(例えば、とりわけIL−4サイトカイン、IL−5サイトカインおよびIL−13サイトカイン)の発現によって特徴付けられる。従って、このようなアトピー障害は、Th2応答の発生を拮抗する方法(例えば、本発明のKIM−1アンタゴニスト)による処置を受け入れる。アトピー障害としては、喘息(気道過敏症および気道困難症候群)およびアトピー皮膚炎のような病理が挙げられる。本発明は、アトピー障害を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0045】
(活性化リンパ球、APCおよび炎症誘発性サイトカインによって媒介される炎症性疾患および炎症性障害)
マウスモデル系およびヒトモデル系における混合リンパ球反応アッセイ(MLR)を用いて、本発明者らは、(例えば、抗KIM−1 mAbまたはKIM−1−Ig融合タンパク質を用いる)KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断は、反応細胞によるIFNγの分泌を減少させることを示している。従って、KIM−1アンタゴニストは、IFNγにより媒介される任意の疾患または障害を処置するために使用され得る。
【0046】
IFNγは、免疫応答において、重要なサイトカインである。これは、炎症性かつ免疫プロセスの発現および程度に対し多面発現(pleotropic)効果を有する(Boehmら1997,Ann Rev Immunol 15:749−795)。IFNγ産生の欠乏は、抗ウイルス性応答および抗細菌性応答を縮小し、炎症性応答を減弱する。KIM−1アンタゴニストは、IFNγ産生が過剰か、または不適切な疾患または障害において、IFNγ産生を減少させるために、有利に使用され得る。このような疾患または障害の例としては、自己免疫疾患、大腸炎および慢性炎症が挙げられる。
【0047】
IFNγは、T細胞活性化およびB細胞応答の鍵成分である。これは、T細胞エフェクター細胞発生(例えば、Il−4との交差調節を介して)およびB細胞活性化(例えば、MHC媒介性抗原提示およびB7分子の発現の調節を介して)に影響する。IFNγは、Th1 T細胞媒介性免疫応答の重要な成分である。IFNγは、他の免疫系構成要素(例えば、マクロファージおよび好中球)に対し、明白な効果を有する。これは、これらの免疫系構成要素の活性化および有毒なエフェクター分子の放出を刺激する。
【0048】
IFNγは、組織常在性細胞型に対し、強力な効果を有する。内皮は、IFNγによって活性化される。IFNγで刺激される場合、患部組織に常在性細胞(例えば、慢性関節リウマチにおける滑膜細胞)は、TNFおよび他のサイトカイン、MCP−1および他のケモカインならびに有毒なエフェクター分子(例えば、一酸化窒素)を分泌する。IFNγによって媒介されるこれらの後者の機能の全ては、炎症の際に、組織内へ細胞輸送に影響する。
【0049】
実施例5(以下)に示されるように、KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断は、SRBCモデル系におけるIgG1産生を減少させるか、またはなくさせる。MLRアッセイにおいて、本発明者らは、KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断が、リンパ球によるIFNγ産生を減少させることを発見している。理論に縛られる意図はないが、IgG1産生における減少およびIFNγ産生の減少が、KIM−1遮断の二つの別々の効果を表し得、直接的に関連し得ないことは、注目される。従って、KIM−1アンタゴニストが、本発明による免疫機能を調節するために使用される場合、KIM−1アンタゴニストは、二つの別々の作用機構を介して、有益な効果を提供し得る。
【0050】
(融合タンパク質および結合体化ポリペプチド)
本発明のいくつかの実施形態は、KIM−1アンタゴニストポリペプチドを含み、KIM−1部分は、異種部分に融合されて、KIM−1融合タンパク質を形成する。KIM−1融合タンパク質は、KIM−1部分単独とは対照的に、種々の目的を達成するために使用され得る。このような目的としては、例えば、血清半減期の上昇、バイオアベイラビリティーの改善、特異的器官または組織型へのインビボターゲティング、組換え発現効率の改善、宿主細胞分泌の改善および精製の容易さが挙げられる。達成する目的に依存して、異種部分は、不活性であってもよく、または生物学的に活性でもよい。また、異種部分は、KIM−1部分に安定的に融合されるか、あるいはインビトロまたはインビボにて切断可能なように選択され得る。種々の目的を達成する異種部分は、当該分野において公知である。
【0051】
KIM−1融合タンパク質の発現の代わりとして、選択された異種部分が、予備形成され得、そしてKIM−1部分に化学的に結合され得る。ほとんどの場合、選択された異種部分は、KIM−1部分に融合されるか、または結合されるかにかかわらず、同様に機能する。従って、異種アミノ酸配列の以下の議論において、他に記載されない場合、異種配列は、融合タンパク質の形態で、あるいは化学的結合として、KIM−1部分に連結され得ることを理解すべきである。
【0052】
薬理学的に活性なポリペプチド(例えば、KIM−1ポリペプチド)は、しばしば、迅速なインビボクリアランスを示すことから、身体内で、治療的に有効な濃度を達成するためには、大量の用量を必要とする。さらに、約20kDaより小さいポリペプチドは、潜在的に、糸球体濾過を受け、時折、腎毒性を導く。比較的小さいポリペプチド(例えば、KIM−1フラグメント)の融合物または結合体は、利用されて、このような腎毒性の危険性を低下させ得るか、または回避し得る。治療的ポリペプチドのインビボ安定性(すなわち血清半減期)を上昇するための種々の異種アミノ酸配列(すなわち、ポリペプチド部分、すなわち「キャリア」)は、公知である。
【0053】
その長い半減期、広範なインビボ分布および酵素学的または免疫学的機能の欠如によって、基本的に全長ヒト血清アルブミン(HSA)あるいはHSAフラグメントは、異種部分に好ましい。方法および材料の適用(例えば、Yehら,1992,Proc.Natl.Acad Sci.USA,89:1904−1908およびSyedら,1997,Blood 89:3243−3252に教示されるもの)を通じて、HSAは、使用されてKIM−1融合タンパク質、またはKIM−1部分によって薬理学的活性を示し、かつインビボでの安定性の有意な上昇(例えば、10倍〜100倍より高い)を示す結合体を形成し得る。好ましくは、HSAのN末端は、KIM−1部分のC末端に融合される。HSAは天然に分泌されるタンパク質であることから、KIM−1融合タンパク質が真核細胞の(例えば、哺乳動物の)発現系で産生される場合、HSAシグナル配列は、細胞培養培地中へのKIM−1融合タンパク質の分泌物を得るために利用され得る。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態は、KIM−1ポリペプチドを利用し、KIM−1部分はFc領域(すなわち、Ig重鎖定常領域のC末端部分)に融合される。KIM−1−Fc融合物の潜在的利点としては、溶解性、インビボ安定性および多価性(例えば、二量体化)が挙げられる。使用されるFc領域は、IgA Fc領域、IgD Fc領域またはIgG Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3)であり得る。あるいは、使用されるFc領域は、IgE Fc領域、またはIgM Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3−CH4)であり得る。IgG Fc領域は、好ましい(例えば、IgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域)。Fc融合物をコードするDNAを構築および発現するための材料ならびに方法は、当該分野において公知であり、過度の実験なしでKIM−1融合物を得るために適用され得る。
【0055】
好ましくは、KIM−1−Fc融合物は、方向性をもって構築され、KIM−1部分は、融合タンパク質のアミノ末端部分を形成する。この方向性をもったFc融合物の構築および発現の例については、例えば、Wallnerら,米国特許第5,547,853(pSAB152)を参照のこと。あるいは、この融合物は、逆の方向性をもって構築され得、すなわち、KIM−1部分は、この融合物のカルボキシ末端部分を形成する。この方向性の例および議論については、例えば、Loら,米国特許第5,541,087号を参照のこと。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、Loら,米国特許第5,541,087号に従って、KIM−1免疫融合DNAを構築することによって得られるKIM−1融合タンパク質を利用する。免疫融合DNAは、分泌カセットをコードするポリヌクレオチドを含む。この分泌カセットは、シグナル配列、免疫グロブリンFc領域および分泌カセットの3’末端に融合されるKIM−1部分を(5’から3’方向で)コードする配列を含む。DNAは、宿主細胞において、高レベルで発現され得、融合タンパク質は、効率的に産生され、宿主細胞から分泌される。この分泌免疫融合物は、宿主細胞の溶解を必要とせずに、培養培地から回収され得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、DNA配列は、KIM−1部分と異種部分との間のタンパク分解性切断部位をコードする。切断部位は、コードされる融合タンパク質のタンパク分解性切断部位(従って、標的タンパク質からFcドメインを分離する)のために提供される。有用なタンパク分解性切断部位は、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシン、プラスミン、エンテロキナーゼ K)で認識されるアミノ酸配列を含む。
【0058】
KIM−1ポリペプチド構築物は、複製可能な発現ベクターに組込まれ得る。有用なベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミドなどが挙げられる。例示的な発現ベクターは、pSAB152(Wallnerら,米国特許第5,547,853号)。別の例示的な発現ベクターは、pdCであり、このpdC内の免疫融合DNAの転写は、ヒトサイトメガロウイルスのエンハンサーおよびプロモーターの制御下に置かれる(Loら,1991,Biochim.Biophys.Acta 1088:712;およびLoら,1998,Protein Engineering 11:495−500)。適切な宿主細胞は、KIM−1ポリペプチドをコードするDNAで形質転換され得るか、またはトランスフェクトされ得、そしてその宿主細胞は、KIM−1ポリペプチドの発現および分泌のために使用される。好ましい宿主細胞としては、不死のハイブリドーマ細胞、ミエローマ細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Hela細胞およびCOS細胞が挙げられる。
【0059】
完全にインタクトで野生型のFc領域は、本発明によるFc融合タンパク質において、通常は不必要でかつ望まれていないエフェクター機能を示す。従って、特定の結合部位は、好ましくは、KIM−1−Fc融合タンパク質の構築の際に、Fc領域から欠失させられる。例えば、軽鎖との同時発現は、不必要であることから、重鎖結合タンパク質(Bip(Hendershotら,1987,Immunol.Today 8:111−114))に対する結合部位は、IgEのFc領域から欠失させられて、これにより、この部位は、融合タンパク質の効率的な分泌を妨害しない。同様に、免疫グロブリンの軽鎖への結合の原因であるFc領域内のシステイン残基は、欠失されるか、または別のアミノ酸で置換されるべきであり、これにより、これらのシステイン残基は、このFc領域が免疫融合物として産生されるときに、Fc領域の正しい折りたたみを妨害しない。膜貫通ドメイン配列(例えば、IgMで存在する膜貫通ドメイン)は、欠失されるべきである。
【0060】
IgG1 Fc領域は、好ましい。あるいは、免疫グロブリンγの他のサブクラス(γ−2、γ−3およびγ−4)のFc領域は、分泌カセットで使用され得る。分泌カセットにおいて好ましく使用される免疫グロブリンγー1のIgG1 Fc領域は、ヒンジ領域(少なくとも一部)、CH2領域およびCH3領域を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンγー1のFc領域は、ヒンジ領域の一部およびCH3領域を含むが、CH2領域を含まないCH2欠失Fcである。CH2欠失Fcは、Gilliesら,1990,Hum.Antibod.Hybridomas,1:47により記載されている。いくつかの実施形態において、IgA、IgD、IgEまたはIgMのFc領域が、使用される。
【0061】
KIM−1−Fc融合タンパク質は、いくつかの異なる構造において構築され得る。一つの構造では、KIM−1部分のC末端は、Fc部分のN末端に直接融合される。わずかに異なる構造では、短いリンカー(例えば、2〜10個のアミノ酸)が、KIM−1部分のC末端とFc領域のN末端の融合物の間に組み込まれる。このようなリンカーは、高次構造的な可撓性を提供し、この可撓性は、いくつかの状況において、生物学的活性を改善させ得る。ヒンジ領域の十分な部分がFc部分において保持される場合、KIM−1−Fc融合物は、二量体化し、従って、二価の分子を形成する。単量体のFc融合物の同質集団は、単一特異性で二価の二量体を産生する。それぞれ異なる特異性を有する二つの単量体のFc領域の混合物は、二重特異性で二価の二量体を産生する。
【0062】
KIM−1結合体は、当該分野において公知の方法を用いて構築され得る。相当するアミノ反応基およびチオール反応基を含む多くの架橋剤の任意のものが、KIM−1を血清アルブミンに連結するために使用され得る。適したリンカーの例としては、チオール反応性マレイミドを挿入するアミン反応性架橋剤が挙げられる。これらのリンカーとしては、例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUSまたはGMBSが挙げられる。他の適したリンカーは、チオール反応性ハロアセテート基を挿入する。これらのリンカーとしては、例えば、SBAP、SIA、SIABが挙げられ、そして還元可能な結合を作製するために、スルフヒドリル基と反応するための保護チオールまたは非保護チオールを提供するリンカーとしては、SPDP、SMPT、SATAまたはSATP(これらの全ては、市販されている(例えば、Pierce Chemicals))がある。当業者は、KIM−1のN末端を血清アルブミンと連結する代わりの戦略を同様に想像し得る。
【0063】
当業者は、KIM−1ポリペプチドのN末端または血清アルブミン上のチオール部分で標的にされない血清アルブミンへの結合体を作り出し得る。例えば、KIM−1−アルブミン融合物は、遺伝子操作技術を用いて作り出され得、KIM−1部分は、KIM−1のアミノ末端(N−ter)、カルボキシ末端(C−ter)または両方の末端で、血清アルブミン遺伝子に融合される。
【0064】
KIM−1ポリペプチドの他の誘導体は、改変されたKIM−1またはKIM−1のフラグメントの他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合性結合体、あるいは凝集的結合体(例えば、さらなるN末端またはC末端として組換え培養での合成による)を含む。例えば、結合体化ペプチドは、タンパク質の輸送を、同時翻訳でか、あるいは翻訳後に、合成部位から細胞膜または細胞壁の内側か、または外側の機能部位に方向付けるタンパク質のN末端の領域でのシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列(例えば、酵母α因子リーダー)であり得る。KIM−1ポリペプチドは、KIM−1部分の精製または同定を容易にするために、異種のペプチドに融合され得る(例えば、ヒスチジン/KIM−1融合物)。KIM−1部分はまた、ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号)(Hoppら,1988,Biotechnology 6:1204)に連結され得る。この配列は、より高い抗原性であり、特異的モノクローナル抗体によって可逆的に結合されるエピトープを提供する。結果として、この配列は、アッセイおよび発現された組換えタンパク質の精製を容易にする。この配列は、ウシ粘膜エンテロキナーゼによって、Asp−Lys対形成の直後の残基で、特異的に切断される。
【0065】
遺伝子融合構築物を利用する発現系は、細菌内のタンパク質産生を向上するために使用されている。融合タンパク質のアミノ末端融合パートナーのように非常に高レベルで正常に発現される細菌タンパク質を利用することは、このメッセージの効率的な転写および翻訳、ならびにある場合では、この融合タンパク質の分泌および可溶化を保証することに役立つ(Smithら,1988 Gene 67:31;前出のHoppら;La Vallieら,1993,Biotechnology 11:187)。
【0066】
(結合体化ポリマー(ポリペプチド以外))
本発明のいくつかの実施形態は、KIM−1ポリペプチドを含み、一以上のポリマーが、KIM−1ポリペプチドに結合体化される(共有結合的に連結される)。このような結合に適したポリマーの例としては、ポリペプチド(上記で議論される)、糖ポリマーおよびポリアルキレングリコール鎖が挙げられる。代表的に、必ずでもないが、ポリマーは、以下の一以上を改善する目的のために、KIM−1ポリペプチドに結合体化される:溶解性、安定性またはバイオアベイラビリティー。
【0067】
KIM−1ポリペプチドへの結合のためのポリマーの好ましいクラスは、ポリアルキレングリコールである。ポリエチレングリコール(PEG)は、好ましいポリアルキレングリコールである。PEG部分(例えば、1〜6個のPEGポリマー)は、KIM−1ポリペプチド単独と比較して、血清半減期を上昇するために、各KIM−1ポリペプチドに結合体化され得る。PEG部分は、非抗原性であり、そして基本的に生物学的に不活性である。本発明の実施において使用されるPEG部分は、分枝状または非分枝状であり得る。
【0068】
KIM−1ポリペプチドに結合されるPEG部分の数および個々のPEG鎖の分子量は、種々であり得る。概して、ポリマーの分子量は高分子になるほど、ポリペプチドに結合されるポリマー鎖は少なくなる。好ましくは、PEGの平均分子量は、2kDa〜100kDaである。より好ましくは、平均分子量は、5kDa〜20kDaであり、最も好ましくは、8kDa〜12kDaである。
【0069】
ポリマー(例えば、PEG)は、任意の適した、ポリペプチド上の露出した反応基を介して、KIM−1ポリペプチドに連結され得る。この露出した反応基は、例えば、N末端アミノ基または内部のリジン残基のεアミノ基か、もしくは両方であり得る。天然に存在するリジン残基は、この目的のために利用され得るか、またはリジン残基は、KIM−1アミノ酸配列内に設計され得る。活性化ポリマーは、KIM−1ポリペプチド上の任意の遊離のアミノ基で反応し得、共有結合的に連結され得る。(利用可能な場合)KIM−1の遊離のカルボキシル基、適切に活性化したカルボニル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、イミダゾール基、参加した炭水化物部分およびメルカプト基もまた、ポリマー付着のための反応基として使用され得る。
【0070】
好ましくは、結合反応において、ポリペプチド濃度に依存して、一モルのポリペプチド当たり約1.0〜約10モルの活性化ポリマーが使用される。通常、選択した比は、反応を最大限に引き出しつつ、一方でKIM−1部分の所望の薬理学的活性を損ない得る(しばしば非特異的)副反応を最小限に抑えるバランスを表す。好ましくは、KIM−1ポリペプチドの生物学的活性のうちの少なくとも50%が保持され、最も好ましくは、約100%が保持される。
【0071】
ポリマーは、従来の化学を用いてKIM−1ポリペプチドに結合体化され得る。例えば、ポリアルキレングリコール部分は、KIM−1ポリペプチドのリジンεアミノ基にカップリングされ得る。このリジン側鎖の結合は、N−ヒドロキシルスクシニミド(NHS)活性エステル(例えば、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)およびPEGスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG))を用いて行われる。適したポリアルキレングリコール部分としては、例えば、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾールおよびPNPカルボネートが挙げられる。これらの試薬は、市販されている。さらなるアミン反応PEGリンカーは、スクシンイミジル部分と置換され得る。これらのリンカーとしては、例えば、イソチオシアネート、ニトロフェニルカルボネート、エポキシドおよびベンゾトリアゾールカルボネートが挙げられる。好ましくは、条件は、反応の(or reaction)選択性および進行性を最大限引き出すために選択される。反応条件のこのような最適化は、当該分野における通常の技術内である。
【0072】
PEG化は、当該分野で公知の任意のPEG化反応によって行われ得る。例えば、Focus on Growth Factors,3:4−10,1992;公開欧州特許出願第EP 0 154 316号および公開同第EP 0 401 384号を参照のこと。PEG化は、反応性のポリエチレングリコール分子(または類似の反応性の水溶性ポリマー)用いるアシル化反応またはアルキル化反応を使用して行われ得る。
【0073】
概して、アシル化によるPEG化は、ポリエチレングリコールの活性エステル誘導体を反応させることを含む。任意の反応性PEG分子が、PEG化に使用され得る。好ましい活性化PEGエステルは、Nヒドロキシスクシニミド(NHS)にPEGエステル化される。本明細書中で使用される場合、「アシル化」は、治療用タンパク質と水溶性ポリマー(例えば、PEG)との間の以下のタイプの結合(linkage)を含む:アミド、カルバメート、ウレタンなど。例えば、Bioconjugate Chem.5:133−140,1994を参照のこと。反応パラメータは、KIM−1ポリペプチドにダメージを与えるか、または不活性化する温度、溶媒、pHの条件を回避するように選択されるべきである。
【0074】
好ましくは、連結する結合は、アミドである。好ましくは、生じる生成物のうちの少なくとも95%は、モノPEG化、ジPEG化、またはトリPEG化である。しかしながら、高度のPEG化を有するいくつかの種は、使用される特定の反応条件に依存する量で形成され得る。必要に応じて、精製PEG化種は、従来の精製法(例えば、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーおよび電気泳動を含む)によって、混合物(特に未反応種)から分離される。
【0075】
アルキル化によるPEG化は、概して、還元剤の存在下で、PEGの末端のアルデヒド誘導体をKIM−1と反応させる工程を包含する。さらに、反応条件を操作して、実質的にKIM−1のN末端のα−アミノ基だけのPEG化を支持し得る(すなわち、モノ−PEG化タンパク質)。モノ−PEG化またはポリ−PEG化のいずれかの場合においても、PEG基は、好ましくは、−CH2−NH−基を介して、タンパク質に結合される。−CH2−基に特に関連して、このタイプの結合は、「アルキル」結合として公知である。
【0076】
モノ−PEG化産物を生産するため還元アルキル化を介した誘導体化は、誘導体化に利用可能な異なるタイプの第1級アミノ基(リジン対N末端)の差次的な反応を利用する。この反応は、リジン残基のε−アミノ基とこのタンパク質のN末端残基のα−アミノ基との間のpKaの差を利用するpHで行われる。このような選択性の誘導体化によって、アルデヒドのような反応基を含む水溶性ポリマーのタンパク質への付着は、制御される:ポリマーとの結合は、主にタンパク質のN末端で起こり、他の反応基(例えば、リジン側鎖アミノ基)の大きな改変は起きない。
【0077】
アシル化アプローチおよびアルキル化アプローチの両方で使用されるポリマー分子は、上記に記載されるような水溶性ポリマーから選択され得る。この選択されるポリマーは、単一の反応基(例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒド)を有するように修飾されるべきであり、好ましくは、これにより、ポリマー化度は、本方法で提供されるように、制御され得る。例示的な反応性PEGアルデヒドは、水に対して安定であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドであるか、またはこのモノC1−C10アルコキシ誘導体もしくはモノC1−C10アリールオキシアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号を参照のこと)である。このポリマーは、分枝状または非分枝状であり得る。アシル化反応について、選択されるポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。還元アルキル化について、選択されるポリマーは、単一の反応性アルデヒド基を有すべきである。概して、水溶性ポリマーは、天然に存在するグリコシル残基から選択され得る。なぜなら、これらの水溶性ポリマーは、通常、哺乳動物組換え発現系によってより都合よく作製されるからである。
【0078】
PEG化KIM−1を調製するための方法は、概して、(a)分子が一以上のPEG基に結合される条件下で、KIM−1タンパク質またはKIM−1ポリペプチドをポリエチレングリコール(例えば、PEGの反応性エステル誘導体または反応性アルデヒド誘導体)と反応させる工程および(b)反応生成物を得る工程を包含する。概して、アシル化反応についての最適な反応条件は、公知のパラメータおよび所望の結果に基づき、個別的に決定される。例えば、PEG:タンパク質の比が大きくなるほど、ポリ−PEG化産物の割合は大きくなる。
【0079】
モノ−ポリマー/KIM−1の実質的に同種の集団を実質的に産生するための還元アルキル化は、(a)KIM−1のアミノ末端のα−アミノ基の選択的改変を可能にする(pen−nit)適したpHで、還元アルキル化条件下においてKIM−1ポリペプチドを反応性PEG分子と反応させる工程;および(b)反応生成物を得る工程を包含する。
【0080】
モノ−ポリマー/KIM−1ポリペプチドの実質的に同種の集団について、還元アルキル化反応条件は、水溶性のポリマー部分のKIM−1のN末端への選択的結合を可能にする条件である。このような反応条件は、概して、リジンアミノ基とN末端のα−アミノ基との間のpKaの差を提供する(pKaは、アミノ基の50%がプロトン化され、50%はプロトン化されないpHである)。このpHはまた、使用されるタンパク質に対するポリマーの比に影響する。概して、pHが低い場合、タンパク質に対して大過剰のポリマーが所望される(すなわち、N末端のα−アミノ基がより小さい反応性になるほど、最適条件を達成するためにより多くのポリマーが必要とされる)。pHが高い場合、ポリマー:タンパク質の比は、それほど大きくなくてよい。(なぜなら、より反応性の高い基が利用可能なので、より少ないポリマー分子が必要とされるからである)。本発明のために、好ましいpHは3〜9の範囲であり、より好ましくは、3〜6の範囲である。
【0081】
KIM−1ポリペプチドは、タグ(例えば、タンパク分解によって、後で放出され得る部分)を含み得る。従って、リジン部分は、初めに改変されるHisタグを、リジンおよびN末端の両方と反応するトラウト試薬(Traut’s reagent)(Pierce)のような低分子量リンカーと反応させ、次いで、このhisタグを放出することによって選択的に改変され得る。次いで、このポリペプチドは、チオール反応性ヘッド基(例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基または遊離のSHもしくは保護SH)を含むPEGで選択的に改変され得る改変のSH基を含む。
【0082】
トラウト試薬(Traut’s reagent)は、PEG結合のための特異的部位を設置する任意のリンカーで置換され得る。一例として、トラウト試薬(Traut’s reagent)は、SPDP、SMPT、SATAまたはSATP(全てPierceから市販)で置換され得る。同様に、このタンパク質を、マレイミド基を挿入するアミン反応性リンカー(例えば、SMCC、AMAS、BMPS,MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUSまたはGMBS)、ハロアセテート基を挿入するアミン反応性リンカー(SBAP、SIA、SIAB)またはビニルスルホン基を挿入するアミン反応性リンカーと反応させ得、そして、結果生じる生成物を遊離のSHを含むPEGと反応させ得る。使用されるリンカーの大きさの唯一の限定は、リンカーがN末端タグの後での除去をブロックし得ないことである。
【0083】
いくつかの実施形態において、ポリアルキレングリコール部分は、KIM−1ポリペプチドのシステイン基にカップリングされる。カップリングは、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基およびチオール基を利用してもたらされ得る。
【0084】
必要に応じて、KIM−1ポリペプチドは、不安定な結合を介してポリエチレングリコール部分に結合体化される。この不安定な結合は、例えば、生化学的加水分解、タンパク質分解またはスルフヒドリル切断において、切断され得る。例えば、この結合は、インビボでの(生理的)条件下において、切断され得る。
【0085】
この反応は、反応基がN末端のαアミノ基上にある場合、好ましくは、約pH 5〜8(例えば、pH 5、6、7または8)で、生物学的活性物質を不活性ポリマーと反応させるために使用される任意の適した方法によって起こり得る。概して、このプロセスは、活性化ポリマーを調製する工程およびこの後に、タンパク質をこの活性化ポリマーと反応させ、処方物にとって適した可溶性タンパク質を産生する工程を包含する。
【0086】
KIM−1ポリペプチド上の一以上の部位が、ポリマーにカップリングされ得る。例えば、一つか、二つか、三つか、四つか、または五つのPEG部分が、ポリペプチドに結合され得る。いくつかの実施形態では、PEG部分は、アミノ末端に結合される。
【0087】
(抗KIM−1抗体)
本発明に従って使用される抗KIM−1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、種々のタイプの分子の任意のものであり得、この種々のタイプの分子としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ(diabody)、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、Fdフラグメント、dAbフラグメント、および相補性決定領域(CDR)を含むフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書中で使用される場合:Fdは、VHドメインおよびCH1ドメインからなるフラグメントを意味し;Fvは、抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるフラグメントを意味し;そしてdAbはVHドメインからなるフラグメントを意味する(Wardら,1989,Nature 341:544−546)。本明細書中で使用される場合、一本鎖抗体(scFv)は、VL領域およびVH領域が、これらを一本鎖タンパク質鎖としての作製を可能にする合成リンカーを介して対形成されて一価の分子を形成する抗体を意味する(Birdら,1988,Science 242:423−426;Hustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883)。本明細書中で使用される場合、ダイアボディ(diabody)は、VHドメインおよびVLドメインが、短すぎて同一鎖上の二つのドメイン間で対形成できないリンカーを用いて、従ってこれらのドメインを、別の鎖の相補的なドメインと対形成させ、そして二つの抗原結合部位を作製して、一本ポリペプチド鎖で発現される二重特異性抗体を意味する(例えば、Holligerら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;およびPoljakら,1994,Structure 2:1121−1123を参照のこと)。
【0089】
概して、抗体を得るための適用可能な方法は、当該分野で公知である。抗KIM−1抗体の作製にとって有用な方法および材料の概説については、例えば、Harlowら,1988,Antibodies,A Laboratory Manual;Yeltonら,1981,Ann.Rev.Biochem.,50:657−80.;ならびにAusubelら,1989,Current Protocols in Molecular Biology(New York:John WileyおよびSons)を参照のこと。抗KIM−1抗体の抗原結合特性は、種々の従来の方法(例えばラジオイムノアッセイ、免疫ブロットアッセイおよびELISA)の任意のもの利用して、当業者によって決定され得る。本発明の抗体を産生するための他の適した技術は、インビトロでのKIM−1ポリペプチドへのリンパ球の暴露、またはファージベクターまたは同様のベクターにおける抗体ライブラリーのスクリーニングを包含する。例えば、Huseら,1989.Science,246:1275−1281を参照のこと。
【0090】
(ベクター)
本発明は、KIM−1ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターおよび本発明の核酸が作動可能に連結される発現制御配列の選択は、所望の機能的特性(例えば、タンパク質発現、および形質転換される宿主細胞)に依存する。本発明のベクターは、rDNA分子に含まれる構造遺伝子の複製または宿主染色体内への挿入、そして好ましくはまた、発現も指向することを少なくとも可能であり得る。
【0091】
作動可能に連結されるコード配列の発現を調節することにとって有用な発現制御エレメントは、当該分野において公知である。例としては、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、および他の調節性エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。誘導性プロモーターが使用される場合、誘導性プロモーターは、例えば、宿主細胞培地における栄養状態の変化、または温度変化によって、制御され得る。
【0092】
ベクターは、原核生物レプリコン(すなわち、原核生物の宿主細胞(例えば、DNA配列で形質転換される細菌宿主細胞)において、染色体外性の組換えDNA分子の自律複製および維持を指向する能力を有するDNA配列)を含み得る。このようなレプリコンは、当該分野において周知である。さらに、原核生物レプリコンを含むベクターはまた、遺伝子の発現が、検出可能なマーカー(例えば、薬剤耐性)をもたらす上記遺伝子を含み得る。代表的な薬剤耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対して耐性をもたらす遺伝子である。
【0093】
原核生物レプリコンを含むベクターは、細菌宿主細胞において、コード遺伝子配列の発現を指向するための原核生物プロモーターまたはバクテリオファージプロモーターをさらに含み得る。細菌宿主に適合性のプロモーター配列は、代表的に、本発明のDNAセグメントの挿入に都合のよい制限部位を含むプラスミドベクター内で提供される。このようなベクタープラスミドの例は、pUC8、pUC9、pBR322およびpBR329(BioRad Laboratories)、pPLおよびpKK223(Pharmacia)である。任意の適した原核生物宿主は、本発明のタンパク質をコードする組換えDNA分子を発現するために使用され得る。
【0094】
真核生物細胞発現ベクターは、当該分野で公知であり、そして市販されている。代表的に、このようなベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に都合のよい制限部位を含む。例示的なベクターとしては、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia),pBPV−1、pML2d(International Biotechnologies),pTDTl(ATCC 31255)が挙げられる。
【0095】
真核生物細胞発現ベクターはまた、選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子)を含み得る。好ましい薬剤耐性遺伝子は、ネオマイシン耐性(すなわち、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子(Southernら,1982,J.Mol.Anal.Genet.1:327−341))をもたらす。
【0096】
抗体または抗体フラグメントを発現するために、部分的な軽鎖および重鎖、または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAは、発現ベクター内に挿入される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来のエピソームなどが挙げられる。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合性であるように選択される。抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子は、別々のベクター内に挿入され得る。いくつかの実施形態において、両方の遺伝子は、同一の発現ベクター内に挿入される。
【0097】
都合のよいベクターは、機能的に完全なヒトのCH免疫グロブリン配列またはCL免疫グロブリン配列をコードするベクターである。好ましくは、制限部位は操作されて、それにより、上記に記載されるように、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入され得、そして発現され得る。このようなベクターにおいて、スプライシングは、挿入されたJ領域のスプライシングドナー部位とヒトC領域の前にあるスプライシングアクセプター部位との間で通常起こし、ヒトCHエキソン内に生じるスプライス領域にもまた生じる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域下流の天然の染色体部位で起こる。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞から抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードし得る。
【0098】
哺乳動物の宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞において、高レベルのタンパク質発現を指向するウイルス性エレメント(例えば、レトロウイルス性LTR由来のプロモーターおよびエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよびエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターおよびエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のプロモーターおよびエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ由来のプロモーターおよびエンハンサーならびに強力な哺乳動物プロモーター(例えば、天然の免疫グロブリンプロモーターおよびアクチンプロモーター))を含む。ウイルス性調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる同第4,510,245号およびSchaffnerらによる同第4,968,615号を参照のこと。
【0099】
組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子を保有し得る。この選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照のこと)。例えば、代表的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞で、薬剤(例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセート)に対する耐性をもたらす。好ましい選択マーカー遺伝子としては、(メトトレキセート選択/増幅を用いるdhfr−宿主細胞における使用については)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子および(G418選択については)neo遺伝子が挙げられる。
【0100】
KIM−1ポリペプチドおよび抗KIM−1抗体をコードする核酸分子、ならびにこれらの核酸分子を含むベクターは、適した宿主細胞の形質転換のために使用され得る。哺乳動物細胞内への外来性DNAの導入のための方法は、当該分野において周知であり、この方法としては、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内ポリヌクレオチドの封入、および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられる。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターにより哺乳動物内へ導入され得る。
【0101】
宿主細胞の形質導入は、使用されるベクターおよび宿主細胞に適した従来の方法によって成し遂げられ得る。原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーション法および塩処理法が使用され得る(Cohenら,1972,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110−2114)。脊椎動物細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーション法、カチオン性脂質または塩処理法が使用され得る。例えば、Grahamら,1973,Virology 52:456−467;Wiglerら,1979,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:1373−1376)を参照のこと。
【0102】
宿主細胞は、原核生物か、または真核生物であり得る。好ましい真核生物宿主細胞としては、酵母および哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。有用な真核宿主細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC受託番号CCL61)、NIH Swissマウス胚細胞NIH−3T3(ATCC受託番号CRL1658)、およびベビーハムスター腎臓細胞(BHK)が挙げられる。発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該分野で公知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から市販される多くの不死化細胞株を含む。これらとしては、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝臓癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および多くの他の細胞株が挙げられる。
【0103】
産生細胞株からのポリペプチドの発現は、公知技術を利用して向上され得る。例えば、グルタミン合成酵素(GS)系は、通常、特定の条件下で発現を向上するために使用される。例えば、欧州特許第0216846号、同第0256055号、および同0323997号ならびに欧州特許出願第89303964.4号を参照のこと。
【0104】
(処方物)
KIM−1ポリペプチド、抗KIM−1抗体、または抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントを含有する組成物は、適した薬学的に受容可能なキャリアを含有し得る。例えば、これらの組成物は、作用部位への送達のために設計された調製物内への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および/または助剤を含有し得る。非経口投与のための適した処方物としては、水溶性形態における活性化合物の水溶液(例えば、水溶性塩)を含む。さらに、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒または親油性ビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)が挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増大させる物質を含み得、これらの物質は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含む。必要に応じて、懸濁液はまた、安定剤を含み得る。リポソームはまた、本発明の分子を細胞または間質領域内へ封入するために使用され得る。例示的な薬学的に受容可能なキャリアとしては、生理学的に適合性溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)を含有する。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に受容可能な物質(例えば、潤滑性物質または少量の補助物質(例えば、潤滑剤または乳化剤)、防腐剤または緩衝液を含み、これらは活性成分の有効期間または有効性を向上させる。
【0105】
本発明の組成物は、種々の形態であり得、この形態としては、例えば、液体の、半流動性のおよび固形の投薬形態(例えば、液体溶液(例えば、注射液および輸液)、分散系または懸濁液)が挙げられる。好ましい形態は、投与の意図する様態および治療用途に依存する。いくつかの実施形態において、組成物は、注射液または輸液(例えば、ヒトの受動免疫のために使用されるものに類似した組成物)の形態である。
【0106】
この組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散系、リポソーム、または高薬剤濃度に適した他の規則構造として処方され得る。滅菌注射液は、必要量の活性成分を、適切な上記で列挙された成分の一つまたは組み合わせを有する溶媒内へ組み込み、必要な場合は続いて濾過滅菌することによって調製され得る。概して、分散系は、活性成分を、基本分散媒および上記で列挙された成分由来の必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル内へ組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、この事前に濾過滅菌溶液から、活性成分ならびに任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥であり、溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーディングの使用、分散の場合における必要な特定サイズの維持および界面活性物質の使用によって維持され得る。注射組成物の長期吸収は、組成物内に吸収を遅延する薬剤(例えば、モノステアレート塩およびゲラチン)を含有することによって、もたらされ得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、活性成分は、制御開放処方またはデバイスを用いて処方される。このような処方およびデバイスの例としては、移植、経皮貼布、およびマイクロカプセル化送達システムが挙げられる。生分解性、かつ生体適合性ポリマーが使用される(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)。このような処方およびデバイスの調製のための方法は、当該分野において公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,1978,J.R.Robinson,(編),Marcel Dekker,Inc.,New Yorkを参照のこと。
【0108】
補充性活性化合物もまた、組成物内に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、KIM−1ポリペプチド、抗KIM−1抗体またはこのフラグメントは、第二の免疫調節剤(例えば、BAFF−R−Ig、LTβ−R−Ig、CTLA4−Ig、抗CD40L、または抗CD20モノクローナル抗体)とともに同時投与される。
【0109】
投薬レジメンは、最適の所望の反応を提供するように調整され得る。例えば、単回の大量瞬時投与(bolus)は、投与されてもよく、数回の分割用量は、時間をかけて投与されてもよく、また用量は、治療状況の緊急性によって示されるように、比例的に減少しても、上昇してもよい。投与の容易さのための投薬単位形態において非経口的組成物を処方することは都合がよく、そして本明細書中使用される場合の投薬単位形態の均一性は、処置される哺乳動物の被験体についての単回投薬として適した物理的に不連続の単位を意味し、各単位は必要とされる薬学的キャリアに関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の所定量を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、KIM−1ポリペプチドのための治療的有効用量は、0.1〜100mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態おいては、治療的有効用量は、0.5〜50mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態おいては、治療的有効用量は、1.0〜10mg/kg(例えば、約5mg/kg)の範囲である。治療的有効用量の決定はまた、インビトロで、適切な(治療的)時間にわたって、標的細胞(変性剤に依存性のKIM−1陽性細胞またはKIM−1レセプター陽性細胞)をコーティングするために必要な変性剤の濃度を測定するインビトロ実験を行うことによって評価され得る。FACSおよびELISAレセプター−リガンド結合アッセイは、細胞コーティング反応をモニターするために使用され得る。このようなインビトロでの結合アッセイの結果に基づき、適した変性剤濃度の範囲が選択され得る。
【0111】
本発明の分子は、薬学的に受容可能な無毒の賦形剤またはキャリアとの混合によって薬学的組成物内に処方され得る。このような組成物は、特に、液体溶液または液体懸濁液の形態で、非経口投与での使用のために調製され得る。この組成物は、単位用量形態で投与され得、そして任意の適した方法によって調製され得る。このような方法は、当該分野において公知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,Easton,PA 1980)を参照のこと。
【0112】
液体投薬形態としては、薬学的に受容可能な溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、および懸濁液が挙げられる。活性化合物に加えて、この液体投薬形態は、水、エチルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含む不活性成分を含み得る。
【0113】
注射用貯蔵処方物は、生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸−ポリ糖脂質)において、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製され得る。ポリマーに対する薬剤の比、使用されるポリマーの性質に依存して、薬剤放出の速度は、制御され得る。他の例示的な生分解性ポリマーとしては、ポリオルトエステルおよびポリ無水物が挙げられる。貯蔵注射用処方物はまた、薬剤をリポソーム、または体組織に適合性のマイクロエマルジョン内に閉じ込めることによって調製され得る。
【実施例】
【0114】
本発明は、以下の実施例により示される。これらの実施例は、例示的な目的のためだけに提供されるのであって、決して本発明の範囲または内容を限定するものとして解釈すべきでない。
【0115】
(実施例1:ヒトKIM−1細胞外ドメイン−Fc構築物(pHI105))
ヒトKIM−1の細胞外ドメイン(残基1〜290)をヒトIgG1(ヒンジ、CH2、CH3)Fc部分に融合し、そしてpEAG347(Biogen哺乳動物発現プラスミド)内へクローン化した。このプラスミドは、構成的発現のための直列型プロモーターおよび安定的に発現する細胞株のメトトレキセート選択のためのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を含んでいた。このコードされた融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0116】
【表1】
このシグナル配列を下線で示す。Fcヒンジを囲みで示す。
【0117】
(実施例2:ヒトKIM1ECDmucinΔ−Fc(pHI100))
ヒトIgG1(ヒンジ、CH2、CH3)のFc部分に融合したヒトKIM−1の残基1〜129をコードするDNAをpEAG347(構成的発現のための直列型プロモーターおよび安定的に発現する細胞株のメトトレキセート選択のためのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を含むBiogen哺乳動物発現プラスミド)内にクローン化した。このコードされた融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0118】
【表2】
(実施例3:ヒトKIM1ECD−6×His(pVB602))
ヒトKIM−1の細胞外ドメイン(残基1〜290)を、6個のヒスチジン残基の繰り返しを含む短いC末端ペプチド[VEHHHHHH]に融合し、pCA125(哺乳動物細胞における一過性構成的発現のためのCMVプロモーターを含むBIOGEN哺乳動物発現プラスミド)内にクローン化した。このコードされた融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0119】
【表3】
(実施例4:マウスKIM−1−Fc融合物)
NotI部位およびSalI部位に隣接したマウスkim−1のPCR増幅外部ドメインを(SalI−NotIフラグメントとしてEAG409から単離した)ヒトIgG1Fcに融合し、Ebna293細胞発現ベクターCH269内にクローン化し(構築物PEM073−6)、およびCHO細胞発現ベクターpV90内にクローン化した(構築物PEM078−1)。SalI部位は、kim1とFcとの間の接合部にある。融合タンパク質についてのORFの得られるヌクレオチド配列は、以下のとおりであった(大文字はSalI部位):
【0120】
【表4】
mukim−1外部ドメイン−ヒトFcの翻訳配列は、以下のとおりであった。SalIにより生じる二つの接合アミノ酸を太字で示す:
【0121】
【表5】
(実施例5:マウスSRBCモデルにおけるKIM−1−Fc融合物)
ヒツジ赤血球(SRBC)に対するげっ歯類の免疫応答は、コンピテントT細胞のAPCおよびB細胞との相互作用に依存する。従って、抗SRBC反応は、リンパ球およびAPC上の細胞性タンパク質が免疫応答の発生および成熟に果たす役割を検査するための有用なモデルである。マウスにおける抗SRBC反応は、IgMおよび種々のIgGアイソタイプ(高レベルのIgG1アイソタイプを含み、同様に見られるかなりのレベルのIgG2aおよびIgG2bも伴う)の産生からなる。IgG1は、Th2媒介性免疫応答によって誘導されるアイソタイプであると考えられ、Th2媒介性免疫応答は、Il−4、Il−5、およびIl−13のようなサイトカインの発現によって特徴付けられる。IgG2aアイソタイプおよびIgG2bアイソタイプは、Th1誘導性)免疫応答により特徴的なものであり、Il−12の発現と関連がある。最後に、IgG3アイソタイプは、T細胞非依存性免疫応答に典型的なものである。4つの全てのアイソタイプは抗SRBC反応において表される。
【0122】
抗SRBC反応の経過を、T細胞におけるKIM−1依存性活性を妨害するようにマウスKIM−1−Ig融合タンパク質(mKIM−1−Ig)で処置したマウスにおいて追った。マウスを抗原投与前日(D−1)に150μgs/マウスmKIM−1−Igを用いて処置し、0日目に100μlのPBS中10%溶液のSRBC(Colorado Serum Company)で抗原投与し、次いで3日目および6日目に150μgのmKIM−1−Igを用いて再度処理した。マウスを、免疫後、7日目、14日目、21日目、および30日目に血清サンプル用に採血し、抗SRBC抗体力価を、赤血球凝集アッセイを用いて測定した。このアッセイは、(IgMについて)抗体の五量体構造または(Igクラスについて)第三の種の抗イディオタイプ抗血清の存在に基づきSRBCを架橋し、そしてクラスター形成する(「凝集」(agglutinate))抗体の能力に依存した。
【0123】
簡潔には、プロトコールは以下のとおりであった。血清サンプルを、測定するアイソタイプに依存して適切なように(1:15〜1:200)希釈し、次いで反応の日に、Corning(Costar(登録商標)#3795)から購入した96ウェルアッセイプレートを用いて1:2工程で力価測定した。IgMアッセイについては、この血清サンプルを二連でアッセイした。グルコース−PBS(G−PBS)中の25μlの10%SRBCをウェルに加え、そして凝集反応を、37℃1時間にわたり展開した。Igアッセイについて、血清サンプルを三連でプレート内にロードし、希釈した。G−PBS中に希釈した25μlの1%2−メルカプトエタノール(Sigma)を各血清サンプルの一連に加え、次いでこのプレートを37℃で30分にわたりインキュベートした。これは、IgM五量体を一緒に保持する全てのジスルフィド結合を破壊し、従って任意のIgM骨格をなくすためになされた。次いで25μlのG−PBS中10%SRBCおよび25μlの抗イディオタイプ抗血清(ヤギ抗マウスのIgG1、IgG2a、IgG2b、またはIgG3(全てSouthern Biotechnology Associatesより))のG−PBS中1:250希釈を各三連の初めの2連に加え、サブタイプが存在する抗SRBC IgGを架橋した。各三連の第三のウェルを未架橋のままにし、2−メルカプトエタノール処理を逃れ得た任意の残存IgM活性についてのコントロールとして供した。このプレートを37℃で1時間にわたりインキュベートした。全てのアッセイプレートを4℃一晩放置し、記録および撮影する前に生じた赤血球凝集を安定化した。全ての力価を陽性の赤血球凝集読み出し(readout)を生じる最後の希釈として記録した。
【0124】
mKIM−1−Ig処理の抗SRBC反応に対する効果をSRBCで抗原投与していないか、またはSRBCで抗原投与したが、抗CD40L、非特異的ポリクローナルhIgG、もしくはPBSで投与したマウスのコントロール群と比較した。非抗原投与および抗CD40L処置したマウスは、予想どおり抗SRBC反応を有さなかった。SRBCが与えられたマウスおよびPBSまたはhIgGのいずれかで投与されたマウスは試験されたIgの全てのクラスに対する強い抗体力価を有した。対照的にmKIM−1−Igで処置されたマウスは、IgG1抗SRBCアイソタイプにおいて非常に著しいかつ特異的欠陥を有した。Balb/c系統のマウスを使用した2つの非依存性実験において、著しく欠陥的レベルのIgG1抗SBRCを検出した(図3および図4)。抗SRBC反応の誘導7日後、IgG1力価は、コントロール処置マウスよりmKIM−1−Ig処置マウスにおいて平均して70%低かった。抗SRBC反応の誘導14日後まで、IgG1力価は、85%を超えるまで減少した。同様の欠陥は、C57Bl/6系統のマウスを用いた1つの実験において観察された(図5)。Balb/cマウスおよびC57Bl/6マウスを、これらの免疫応答において異なる傾向を有し、Balb/cマウスは、主にTh2媒介性応答を有するとして特徴づけられ、C57Bl/6マウスでは、Th1媒介性応答を有すると考えられた。従って、これらのマウス系統において、マウスKIM−1−Ig融合タンパク質のIgG1アイソタイプ産生をブロックする能力により、系統における固有のTh傾向は無効にされた。驚いたことに、mKIM−1−Ig処置の効果は、第二の応答まで拡大し、そのため、IgG1は、後のSRBC抗原投与に応答して、記憶B細胞によって産生されなかった(図6および図7)。
【0125】
(実施例6:移植片対宿主病(GVHD))
GVHDは、F1への親の細胞移植レジメンを使用して、マウスでモデルとされる。マウスのDBA2系統由来の脾細胞を(DBA2×C57Bl/6)F1マウス(B6D2F1と呼ばれる)にivで注射する。この注射した脾細胞は移植片を構成し、そしてDBA2マウスは、その移植片のドナーである。移植片を受けるF1マウスは、宿主である。移植片に存在するドナーT細胞は、宿主細胞上の半分のMHCマーカー(ハプロタイプ)を外来として認識する。なぜなら、他(C57Bl/6親)に由来するからである。これは、宿主が生じるGVHDに対するドナーT細胞応答を誘導する。DBA/2親の脾細胞をB6D2F1宿主内に注射する場合、慢性GVHDが発生する。対照的に、C57Bl/6脾細胞をB6D2F1宿主内に注射する場合、急性GVHDが発生する。根底にあるどの機構が、これらの2種の注射プロトコールを使用する、異なる疾患結果の原因であるかは、不明のままであるが、DBA/2脾細胞移植片内に含まれる細胞によって発現されるサイトカインが慢性GVHDの発生を支持し、一方でC57Bl/6脾細胞移植片内に含まれる細胞によって発現されるサイトカインは急性GVHDの発生を支持すると考えられている。T細胞の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞:APC)との相互作用を妨害する試薬は、急性と慢性の両方のGVHDを効率的にブロックする。
【0126】
KIM−1アンタゴニストは、慢性GVHDのマウスモデルにおける免疫学的反応の発達を改変する。慢性GVHDをブロックする能力としては、B細胞活性化およびB細胞増殖に対する効果、ならびに分泌IgGの産生に対する効果が挙げられる。マウスをKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤、コントロール処置物で腹腔内に(ip)処置するか、未処置のままにする。4時間後、マウスにDBA/2マウスから単離した1×108個の脾細胞を、静脈内(iv)に0.5mlの注射を与える。このiv注射されたDBA/2の脾細胞は、同種移植片を構成していた。移植の2日後、4日後、および6日後に、マウスをKIM−1アンタゴニストもしくは改変薬剤、またはコントロール処置物で再度処置した。マウスのさらなるコントロール群に、1×108個のB6D2F1脾細胞を受けさせたが、この脾細胞によってB6D2F1レシピエントにおける疾患は誘導できなかった。あるいは、移植したB6D2F1マウスおよび未処置のB6D2F1マウスをコントロールとして使用する。移植の14日後、このマウスを屠殺し、疾患の証拠ために検査する。
【0127】
未処置の移植片レシピエントマウスは、慢性GVHDの発生を示す種々の症状を発症する。脾腫大すなわち脾臓の拡大は、ドナーT細胞および宿主B細胞が活性化され、そして細胞数の劇的な増加とともにポリクローナル拡大を起こすことを証明する。サブセットのB細胞上のCD69のような細胞表面タンパク質の出現は、B細胞の活性化を示す。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞由来のL−セレクチン分子の減少は、T細胞の活性化の証拠である。血清中へかまたはインビトロでの細胞培養アッセイにおけるIg分子(例えば、IgGクラス、IgAクラス、およびIgEクラス)の分泌は、B細胞が活性化し、そしてB細胞のIgクラスをスイッチング(switch)したことを示す。この点に関して、血清中またはインビトロでの細胞培養アッセイにおける抗自己Igの出現は、産生されているIgが不適切な自己抗原認識を有することを示す。最終的に、生存率を異なる処置レジメンの結果として測定し得る。KIM−1アンタゴニスト(例えば、KIM−1−Ig)を用いる処置は、脾腫大の程度の縮小、リンパ球集団のポリクローナル拡大における縮小、リンパ球活性化を示す細胞表面マーカーの出現または消滅における低下、Ig分泌の低下、および/または死亡率における低下によって示されるような、慢性GVHDの発生のこれらの読み出しを、ブロックする。
【0128】
本発明者らは、コントロールマウスを未処置の同種移植片レシピエントマウスと比較して、GVHDの際の脾腫大、B細胞活性化、およびのIg分泌の程度を検査する。抗CD40L mAb MR1をこれらの実施例において陽性コントロールとして使用する。なぜならCD40L/CD40相互作用をブロックすることは、慢性GVHDの発生を妨害する効率的手段であることが以前に示されているからである(Durieら,1994,J.Clin.Invest.94:1333−1338)。KIM−1アンタゴニストを用いた処置によって影響の及んだ細胞集団を研究するために、移植片注射して14日後のレシピエントマウスから採取した脾細胞についてFACS分析を行う。1群当たり3〜4匹のマウスからの脾臓細胞を単離し、プールする。レシピエントB細胞の活性化は、慢性GVHDの決定的な特徴である。慢性GVHDを起こすマウスにおいて、B200+ B細胞の少ないが容易に分かる集団は、活性化マーカーCD69を発現する。従って、CD69発現を疾患の程度の指標として使用する。異なる処置群からのマウスの脾細胞の培養物における全IgGをまた決定する。なぜなら、B細胞によるCD69の発現は、これらの活性化状態を示すからである。
【0129】
マウスモデルにおいて、上記の疾患の発生は、Th2サイトカインIl−4に依存し、そして抗Il−4 mAbで処置することによってブロックされ得る。このような処置は、宿主B細胞の拡大および結合する高Ig産生をブロックする。GVHDの発生は、多くの方法において結合される。ドナーT細胞集団および宿主B細胞集団の拡大を脾臓指標(index)によって測定し、この脾臓指標は、コントロール(非疾患)マウスに対して標準化された、体重に対する脾臓重量の比である。疾患マウスにおけるB細胞の活性化をB細胞活性化マーカーの分析を利用して測定する。最終的に、B細胞活性化の効果は、循環中(例えば、血清中)の、または疾患誘導の数週間後に採取された宿主脾細胞の培養によって産生されるIgのレベルにおいて見られる。疾患動物の循環Igは、抗自己抗体を含む。最終的に、疾患動物は、蓄積したIg沈着による腎臓不全および他の器官不全を起こし、従って、生存率は、疾患活性に関係のある基準である。
【0130】
(実施例7:SCID−huマウスモデル)
SCID−huマウスにおいて、ヒト免疫応答を研究することが、可能である。例えば、SCIDマウスに2〜5×107個のヒト末梢血単核細胞を腹腔内に注射すると、これらの細胞は、しばらくの間、腸に常駐し、かつ機能し、抗原投与に対して反応する。NOD−SCIDマウスをヒトPBLで回復(reconstitute)させると、これらのマウスは、脾臓へのヒト細胞(T、B、APC)の接種のさらなる利点を有し、この脾臓では、全身性の免疫応答が支持され得る。適切モデルは、Berneyら,2001,Transplantation 72:133−140において議論される。免疫応答の他のモデルは、SCID/beigeマウスを使用し、免疫応答のための支持を提供するためのPBLまたは胎児腸間膜リンパ節を含む胎児細胞の同時移植を含む(Carballidoら,2000,Nat.Med.6:103−106)。
【0131】
SCID−huまたはNOD−SCID−huマウスをヒト破傷風(tetanus)トキソイド(TT)を免疫したヒトドナーから単離した末梢血単核細胞(PBMC)で回復させる。そのようにして回復させたSCID−huマウスは、種々の区画(腹膜を含む)に常駐するヒト細胞を有する。そのようにして回復させたNOD−SCID−huマウスは、これらの二次リンパ器官(例えば、脾臓)内に含まれる種々の区画において常駐するヒトT細胞を有する。TT、もしくはTTの抗原性部分、またはリポソーム、もしくはTTを含むリポソームにカップリングした抗原を用いる免疫化によって、一次免疫応答を、これらの回復させたマウスにおいて誘導する。そのようにして回復させ、抗原投与したマウスは、抗原(例えば、NP、DNP、KLH、OVA、HIVgpl20またはそれらの部分、メラノーマ関連抗原GD2、およびヒツジムチンは、多くの例のうちのいくつかにすぎない)に対する高い力価(>1:1000)のIg応答を生じる。いくつかの例は、Ifversonら,1995,Immunology 84:111−116に示される。そのようにして回復させると、次いでKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いて処置したマウスは、抗原投与に対する高い力価を示さない。
【0132】
別の方法論において、SCID−huマウスを胎児ヒトの骨、胸腺、皮膚断片、および腸間膜リンパ節(MLN)を用いて回復させた。MLNの存在は、TT免疫化に対する強い免疫応答を支持するために十分である(そして、全てのドナー組織は胎児であることから、これは、厳密に一次免疫応答である)。このモデルは、Carballidoら,2000,Nat.Med.6:103−106において詳細に議論される。TT免疫化は、ヒトリンパ球の増殖、および活性化、ならびにB細胞によるIgM分泌およびIgG分泌を引き起こす。KIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いてそのようにして回復させたSCIDマウスの処置は、ヒトリンパ球の増殖および活性化、ならびにTT抗原投与の際の免疫グロブリンの分泌を低下させる。
【0133】
これらのモデルまたは他の同様のNOD−SCID−huモデルもしくはSCID−huモデルの改変において、二次免疫応答を、例えば遅延型過敏症(DTH)の疾患設定において測定する。この実施例において、TT抗原投与、TT−免疫個体由来のPBMCを用いて回復させたSCIDマウスまたはNOD−SCIDマウスの足蹠に与え、反応における足蹠の腫脹を、測定する。DTH反応は、回復させたマウスにおける循環中のヒト記憶T細胞の存在に依存する(rely on)。このようなモデルもまた、「トランスビボ(trans vivo)」モデルにおいてのように、移植患者におけるドナー組織の起こり得る拒絶を検出するために使用され得る。このタイプのアプローチの例は、Carrodeguasら,1999,Hum.Immunol.60:640−651において議論される。KIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いて、そのようにして回復させたマウスの処置により、DTH反応を防ぐ。SCIDマウスにおけるヒト疾患反応の他のモデルは、マウスにおける自己免疫患者由来の脾細胞またはPBMCの移動を含み、それによって、これらのモデルは、疾患の免疫グロブリンおよび他のマーカーの発現を継続する(MartinoおよびGrinaldim 1997,In:Immunology Methods Manual,第3巻Lefkovits(編)Academic Press,San Diegoを参照のこと)。患者由来の自己免疫細胞の移動前のKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いるこれらのマウスの処置により、自己免疫病理学的な免疫グロブリンまたは他のマーカーの発現を低下する。
【0134】
SCIDマウスを利用する非常に価値ある方法論は、レシピエントマウスへの疾患組織の異種移植を包含する。乾癬患者またはアトピー性皮膚炎患者由来の皮膚を移動する方法は、例えば、これらの疾患の広く使用されるモデルである。アトピー性皮膚炎は、Th2媒介性細胞性免疫疾患であり、このTh2媒介性細胞性免疫疾患は、PBMCおよび皮膚の生検(biopsy)を一緒にレシピエントマウスに移動することによってSCIDマウスにおいてモデル化され得る。KIM−1アンタゴニストまたは改変物(modifier)を用いるこれらのマウスの処置は、細胞性蓄積および局所的なサイトカイン分泌(これは、皮膚移植におけるリンパ球およびエフェクター細胞(好酸球、好塩基球など)の活性化の徴候(evidence)である)を防ぐ。これは、ドナー患者における皮膚炎を予防における効力の徴候(evidence)である。
【0135】
(実施例8:アトピー性疾患の他のマウスモデル)
アレルギー、喘息、気道過感受性(AHR)、および他のアトピー性疾患の有用なモデルを、マウスにおいて使用する。例えば、アレルギー性皮膚炎症を、抗原を用いる皮膚上への感作によって誘導する。一つの例において、抗原はアルブミン(OVA)である。この感作に対するTh2応答は、皮膚における好酸球の存在、Th2サイトカインの皮膚における局所的発現、および吸入抗原に対する気道過感受性(AHR)によって示される。好酸球は、初めにKIM−1アンタゴニストまたは改変物を用いて処置されるOVA感作マウスの皮膚では存在せず、Th2サイトカインのレベルは低下する。繰り返し感作されたマウスは、OVA特異的IgEを産生し、これらの脾細胞は、OVAを用いるインビトロ刺激の後にTh2サイトカインのIL−4およびIL−5を分泌する。Th2免疫応答のこれらの読み出しは、KIM−1アンタゴニストまたは改変物を用いる処置の際にブロックされる。あるいは、マウス(例えば、BALB/cマウス)を、抗原のi.p.注射で感作し得(0日目)、次いで3週間後(1回)および4週間後(3回:26日目、27日目、28日目など)に鼻腔内での抗原を用いて再抗原投与し得る。これは、肺応答性亢進(AHR)を生じ、この肺応答性亢進(AHR)は、IL−13のようなTh2サイトカインによって媒介される。このTh2免疫応答は、KIM−1アンタゴニストまたは改変物を用いる処置の際にブロックされる。
【0136】
OVA特異的TCRトランスジェニックモデル(DO11.10)を使用して、本発明者らは、OVA特異的免疫応答を誘導し、次いでTh2 OVA特異的T細胞を未処置のレシピエントに移し、このレシピエントを、次いでOVAエアロゾルで抗原投与する。これらのマウスは、抗原特異的AHRを急速に発生する。この反応は、マウスをOVAエアロゾル抗原投与の前にKIM−1アンタゴニストまたは改変物で処理する場合に、ブロックされる。
【0137】
メタコリンエアロゾル処置は、肺への好酸球の補充を誘導し、この補充はマウスにおけるAHRを引き起こす。KIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いるマウスの処置は、AHRの発生をブロックする。
【0138】
(実施例9:コラーゲン誘導性関節炎)
関節炎のこのマウスモデルにおいて、コラーゲンを使用してT細胞媒介性のB細胞活性化および自己抗体産生(これは、関節を攻撃する)を誘発し、関節リウマチに似た状態を生じる。マウスの種々の系統において、この反応は、IgG1の高い力価によって支配される。特に、遺伝子欠損によってIl−12を欠如したマウス(Il−12ノックアウトマウス:Il−12−/−)において、IgG1力価は非常に高く、これらのAbは、関節破壊を効率的に媒介する。
【0139】
フロイント完全アジュバント中のコラーゲンを用いて以下の2箇所で経皮内に注射によってマウスを処置する:各耳に少量の送達、および肩部の間の皮膚に少量の送達。3週間後、腹腔内経路を使用して、マウスを生理食塩水中の可溶性コラーゲンで追加免疫する。1週間以内に、関節ダメージをノギスを用いて関節の膨潤を測定することおよび抗体力価を測定することによって評価する。疾患発生の過程の際のマウスの処置は、疾患スコアを寛解させる。特に、疾患開始前日の0.1〜1mg/kgのKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いる処置、続いてその後の処置は、関節膨潤の低下および免疫グロブリン力価の低下によって評価されるように、疾患発生をブロックする。これは、処置の予防投与過程である。
【0140】
誘導後および追加免疫前のKIM−1アンタゴニストを用いる処置は、関節膨潤の低下および免疫グロブリン力価の低下によって評価されることから、疾患発生を寛解させる。これは、処置の治療的過程である。追加免疫注射後のKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いる処置は、関節膨潤の低下および免疫グロブリン力価の低下によって評価されるように、疾患発生をブロックする。これは、処置の治療的過程である。
【0141】
(実施例10:ループスのマウスモデル)
NZB/Wモデルにおいて、NZB系統由来のマウスをNZW系統由来のマウスと交配し、そしてこのF1子孫は、経時的にループス様疾患を発生する。疾患の徴候としては、自己抗体およびリウマチ因子の産生が挙げられる。腎臓におけるIg沈着は、大量の産生されるIgおよびRFに起因し、尿中のタンパク尿によって測定され得るように、経時的に腎臓機能の低下をもたらす。
【0142】
NZB/W F1子孫は、約5ヵ月齢で、その時点で中程度のタンパク尿スコア(PUは2)を伴い、疾患の症状を表し始める。9ヵ月齢までに、このマウスは、最大PU=4に達し、そして腎臓不全の結果として疾患になり(succomb)始める。SNF1(SWR×NZB F1交配)と呼ばれる別のモデルも同様の動態を伴う。
【0143】
マウスを、疾患開始の前日に0.1〜1mg/kgのKIM−1アンタゴニストで処置し、続いてその後に処置する。これは、PUスコア、および/または血清中免疫グロブリンの力価を測定すること、および/または脾臓における過形成の免疫組織化学的分析、および/または腎臓における糸球体の構造での免疫複合体沈着および免疫複合体変化の免疫組織化学的分析によって測定されるように、疾患発生をブロックする。
【0144】
疾患誘導後の(例えば、5ヵ月で、しかし重症の疾患(すなわちPU=2〜3)の前の)KIM−1アンタゴニストを用いる処置は、疾患発生寛解させるか、または疾患ダメージを回復させる。これは、PUスコア、および/または血清中の免疫グロブリンの力価を測定すること、および/または脾臓における過形成の免疫組織化学的分析、および/または腎臓における糸球体の構造での免疫複合体沈着および免疫複合体変化の免疫組織化学的分析によって測定され得る。
【0145】
疾患が重症(PU=3〜4)になった後のKIM−1アンタゴニストを用いる処置は、疾患発生寛解させるか、または疾患ダメージを回復させる。これは、PUスコア、および/または血清中の免疫グロブリンの力価を測定すること、および/または脾臓における過形成の免疫組織化学的分析、および/または腎臓における糸球体の構造での免疫複合体沈着および免疫複合体変化の免疫組織化学的分析によって測定され得る。
【0146】
(実施例11:混合リンパ球反応(MLR))
(マウスMLRアッセイおよびKIM−1の拮抗作用)
混合リンパ球反応(MLR)を、以下のとおり行った:脾臓を、滅菌技術を使用してC57Bl6マウスおよびBalb/cマウスから単離し、リンパ球を放出するため粗く挽き、次いで赤血球を溶解するため低張液(Gey’s溶液)を用いて処理した。残った細胞を細胞ストレーナー(BD Falcon,Bedford,MA USA)に通すことによって残留組織から分離し、そして、次いで滅菌かつ発熱物質なしのPBSで洗浄し、そして細胞をペレット化するために遠心した。これらの細胞をPBS溶液に2度目の再懸濁し、再度ペレット化し、次いで、完全RPMI培地中に再懸濁した。これらの細胞をカウントし、必要に応じて希釈した。Balb/cリンパ球を刺激細胞として使用するゆえに、これらの細胞を、使用前に3000RADで照射した。
【0147】
アッセイを確立するために、刺激細胞を、応答細胞の数(2×105/ウェル)に比例した種々の比でウェルに加えた。培地を、示すように、20μg/mlでラット抗KIM−1抗体、またはKIM−1−Ig融合タンパク質およびコントロール−Ig融合タンパク質で補填した。培養を3つの同一プレートでセットアップし、各実験条件を、1プレートあたり3ウェルで表した。1枚のプレートを使用して、MTSアッセイ(CellTiter 96,Promega,Madison,WI USA)を使用して細胞増殖データを出した。その他のプレートを使用して、サイトカイン分析用の上清サンプルを回収した。ELISA(Pierce Endogen,Rockford,IL USA)を使用して、培養上清中のmIFNγ、mTNF、およびmIl−2のレベルを測定した。増殖アッセイおよびELISAから生じた値についての標準誤差は、10%未満であり、図から省略している。IFNγについてのポジティブコントロール値からの大きなずれは、注目されるが、一方で培養中のIl−2およびTNFのレベルは、ポジティブコントロールと処置群との間に有意に差はなかった。従って、Il−2データおよびTNFデータは省略されている;IFNγおよび細胞増殖についてのデータは、それぞれ代表的実験について示す。
【0148】
ラット抗マウスKIM−1 mAbの3A2.5および1H9.11を使用するMLR培養の処理により、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した(図8)。この効果は、上清中に分泌されたIl−2またはTNFのレベルにおける低下は観察されなかったことから、IFNγに対して特異的であった。この効果は、細胞増殖アッセイが、培養中の生細胞の数は同程度であったことを示したことから(図9)、これらの培養における細胞数の減少によるものではなかった。
【0149】
KIM−1−Ig融合タンパク質を使用するMLR培養の処理により、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した(図10)。この効果は、上清中に分泌されたIl−2またはTNFのレベルにおける低下は注目されなかったことから(データは示さず)、IFNγに対して特異的であった。この効果は、細胞増殖アッセイが、KIM−1−Ig融合タンパク質で処理した培養中の生細胞の数が未処理のコントロールコントロールに非常に近かったことを示したことから(図11)、これらの培養における細胞数の減少によるものではなかった。
【0150】
(ヒトMLRアッセイおよびKIM−1の拮抗作用)
混合リンパ球反応(MLR)を、以下のとおり行った:末梢血単核細胞を、フィコール(Ficoll)勾配遠心を使用して、健常なヒトのドナーから採取した全血から単離した。次いでこの細胞を滅菌かつ発熱物質なしのPBSで洗浄し、そして遠心して細胞をペレット化した。これらの細胞をPBS溶液に2度目の再懸濁し、再度ペレット化し、次いで、完全RPMI培地中に再懸濁した。これらの細胞をカウントし、必要に応じて希釈した。JY細胞(ATCC,Bethesda,MD USA)を刺激細胞として使用するゆえに、これらの細胞を、使用前に10000RADで照射した。
【0151】
アッセイを確立するために、刺激細胞を、応答細胞の数(2×105/ウェル)に比例した種々の比でウェルに加えた。培地を、示されるように20μg/mlでマウス抗KIM−1抗体で補填した。培養を3つの同一プレートでセットアップし、各実験条件を、1プレートあたり3ウェルで表した。1枚のプレートを使用して、MTSアッセイ(CellTiter 96,Promega,Madison,WI USA)を使用して細胞増殖データを出した。その他のプレートを使用してサイトカイン分析用の上清サンプルを回収した。ELISA(Pierce Endogen,Rockford,IL USAまたはR+D Systems,Minneapolis,MN USA)を使用して、培養上清中のhIFNγ、hTNF、およびhIl−2のレベルを測定した。増殖アッセイおよびELISAから生じた値についての標準誤差は、10%未満であり、図から省略している。IFNγについてのポジティブコントロール値からの大きなずれは、観察されるが、一方で培養中のIl−2およびTNFのレベルは、ポジティブコントロールと処置群との間に有意に差はなかった。TNFデータは省略されている;Il−2、IFNγおよび細胞増殖についてのデータは、それぞれ代表的実験について示す。
【0152】
マウス抗ヒトKIM−1 mAbのAUF1およびAKG7を使用するMLR培養の処理により、上清中に分泌したIFNγのレベルは有意に低下した(図12A)。この効果は、上清中に分泌したIl−2またはTNFのレベルにおける低下が注目されなかったことから(図12B)、IFNγに対して特異的であった。この効果は、細胞増殖アッセイが培養中の生細胞の数は同程度であったことを示したことから(図13)、これらの培養における細胞数の減少によるものではなかった。
【0153】
(実施例12:マウス炎症性腸疾患(IBD)モデル)
実験マウスにおけるIBDのモデルにおける症状の過程または重症度に影響を及ぼす可溶型形態のKIM−1−Ig融合タンパク質の能力。このモデルにおいて、DSSを、(炎症の発生を引き起こす)大腸(結腸(colon))を慢性的に刺激した。炎症誘発性メディエータ(例えば、IFNγ、TNF、およびIl−12)は、マウスモデルおよびヒト患者の両方において、IBDの発生および重症度にとって重要であることは公知であった(Eggerら,2000,Digestion 62:240−248;Monteleoneら,2000,Ann.Med.32:552−560;Boumaら,2003,Nat.Rev.Immunol.3:521−533)。上記に記載するように、MLRデータは、KIM−1調節が炎症誘発性メディエータ(例えば、IFNγ)の産生に影響し得ることを示唆している。従って、KIM−1改変薬剤をインビボにおいて試験した。KIM−1−Ig融合タンパク質が、一以上のリガンドと細胞(例えば、活性化リンパ球または他の免疫細胞)上に発現したKIM−1との相互作用を妨害することによって作用しているという仮説が立てられた。
【0154】
IBDを、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルを使用してマウスにおいて誘導した(Copperら,1993,Lab.Invest.69:238−249)。滅菌蒸留水中4.5%DSS(ICN Biomedicals,Aurora OH USA)の溶液を飲用源として提供した。マウスを、DSSを導入する直前に体重測定し、その後、毎日体重測定した。またマウスを、下痢の程度について(1:柔らかいペレット、2:緩いペレット、3:明白に流体糞便、4:ひどい失調)およびColoScreenスライド(Helena Labs,Beaumont TX USA)を使用して糞便中の血液の存在について(0:なし、1:血液)記録した。少ないが、検出可能な量の血液に、0.5の中間スコアを与えた。0日目、2日目、および5日目に、200μgのKIM−1−Ig融合タンパク質またはポリクローナルhIgGコントロール(SandImmune,Sandoz,Geneva Switzerland)を用いてipでマウスに投与した。8日目に、マウスからDSS水を取り除き、正常の飲用水を与えた。体重および臨床スコアについてのモニタリングを12日目(この日の時間に実験が終了した)まで継続した。
【0155】
IBDの誘導局面の間(0日目、2日目および5日目)のマウスの処置により、8日目まで累積的体重減少および疾患スコアに対する有意な影響が生じた。従って、マウスからDSSを取り除き、正常飲用水に戻し、これらの回復をモニターした。0日目、2日目および5日目にKIM−1−Ig融合タンパク質を受けたマウスは、体重減少の程度(図14)および臨床スコア(下痢および出血;図15A)によって示されるように、11日目には、一貫してより健康であった(回復に3日)。KIM−1−Ig処置した同齢集団におけるずっと少ないマウスは、糞便に血液が存在した(図15B)。
【0156】
これらのデータは、インビボにおけるKIM−1調節が急性炎症性状態(例えば、DSS後に腸粘膜へのダメージを示す)において防御効果を有することを示唆した。これらの結果は、KIM−1アンタゴニストが他の急性炎症性状態または慢性炎症性状態(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬および膵炎)において有効であることを示唆した。
【0157】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の分野は、医学、免疫学、分子生物学およびタンパク質化学である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
KIM−1(Kidney Injury Molecule−1)は、I型細胞膜糖タンパク質(Ichimuraら,1998,J.Biol.Chem.273:4135−4142)である。KIM−1の細胞外部分(外部ドメイン)は、6個のシステイン免疫グロブリン様ドメインおよびムチン様Oグリコシル化タンパク質に特有のT/SPリッチドメインを含む。このムチンドメインは、柄のように、細胞表面から離れたIg様ドメインを伸ばす(Jentoft,1990,Trends Biochem.Sci.15:291−294)。KIM−1は、A型肝炎ウイルスに対するレセプターとして同定されている(Kaplanら,1996,EMBO J.15:4282−4296;WO 96/04376;米国特許第5,622,861号)。二つのヒトKIM−1スプライス改変体が発見され、一つは肝臓において優勢であり(Feigelstock,1998,J.Virol.72:6621−6628)、もう一つは、腎臓において優勢である(前出のIchimuraら)。
【0003】
KIM−1は、TIM(T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン)ファミリーとして公知の遺伝子ファミリーのメンバーである。KIM−1に加えて、ヒトにおいてTIMファミリーの少なくとも二つの他のメンバーがある。一つのメンバーは、クローニングされて「200遺伝子(200 gene)」(特許文献1)と命名されたが、その後、TIM−3として公知になった。別のメンバーも、クローニングされて「遺伝子58(gene 58)」と命名された(特許文献2)。
KIM−1は、腎臓ダメージに対する臨床の診断マーカーとして興味を引いている(Baillyら,2002,J.Biol.Chem.277:39739−39748;Hanら,2002,Kidney Intl.62:237−244)。KIM−1(TIM−1)のマウスホモログは、気道反応性亢進の発生に関与していると考えられる遺伝子座内に存在することが報告されている(McIntireら,2001,Nature Immunology 2:1109)。TIM−2として公知のマウスタンパク質は、抗原特異的T細胞のインビボでの発生において役割を果たすことが報告されている(Kumanogohら,2002,Nature 419:629−633)。TIM−3として公知のマウスタンパク質は、マウスにおける免疫応答調節に関連している(Monneyら,2002.Nature 415:536−541)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2000/73498号
【特許文献2】国際公開第99/38881号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
KIM−1アンタゴニストを用いた哺乳動物の処置は、T細胞と他の免疫系細胞(例えば、樹状細胞、単球マクロファージおよびB細胞)との相互作用を変化させ、これによって抗原に対するIgG応答を強く抑制することが発見されている。さらに、このような処置は、抗原を用いたその後の抗原投与に応答して、記憶B細胞によるIgG1産生をほとんどなくすことが発見されている。さらに、KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、抗原応答に関与する免疫細胞によるIFN−γの分泌を減少することが発見されている。これらの発見に基づき、本発明は、自己免疫疾患および哺乳動物の免疫系における他の障害の免疫機能を治療的に調節するための方法を提供する。
【0006】
本発明は、哺乳動物において、T細胞と第二の細胞(例えば、抗原提示細胞(APC))との間のシグナル伝達を阻害する方法を提供する。この方法は、哺乳動物(例えば、免疫疾患または免疫障害を有する哺乳動物、または組織移植片を受ける準備のある哺乳動物)を同定する工程;ならびに哺乳動物に以下の型の有効量のKIM−1アンタゴニストの1つを投与する工程を包含する:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメント。
【0007】
上記のT細胞は、活性化T細胞(例えば、ヘルパーT細胞)であり得る。これはTh2細胞またはTh1細胞であり得る。本発明のいくつかの実施形態において、このT細胞は、移植されるドナーT細胞である。APCは、単球、マクロファージ、樹状細胞、またはB細胞であり得るが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、APCは、自己抗原を提示している。
【0008】
好ましくは、上記のKIM−1アンタゴニストは、可溶性ポリペプチドであり、この可溶性ポリペプチドは、KIM−1 Igドメインに加えてKIM−1ムチンドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、異種部分(例えば、免疫グロブリン(Ig)部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分、多量体化部分および精製容易化部分)を含む。好ましい異種部分は、Fc部分のようなIg部分である。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記のKIM−1アンタゴニストは、ポリマー(例えば、ポリアルキレングリコール、糖ポリマー、あるいはポリペプチド)に結合体化されたポリペプチドである。好ましいポリマーは、ポリアルキレングリコールであり、ポリエチレングリコール(PEG)は特に好ましい。このポリマーの平均分子量は、好ましくは、2,000Da〜30,000Daであり、そしてより好ましくは、5,000Da〜20,000Da(例えば、約10,000Da)である。
【0010】
本発明は、例えば、Th2細胞のような活性化T細胞によって、細胞哺乳動物におけるB細胞の活性化を阻害する方法を提供する。この方法は、B細胞または他のAPCを有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程、またはこのアンタゴニストが抗KIM−1抗体である場合、T細胞を有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程を包含する。本発明のいくつかの実施形態において、活性化T細胞は、移植されるドナーT細胞である。
【0011】
本発明は、哺乳動物における一以上の抗原に対して反応性のIgGのような抗体(例えば、IgG1)のサブセットの産生を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、有効量のKIM−1アンタゴニストは、哺乳動物の免疫系が最初に一以上の抗原を認識する30分〜30日前に、投与される。この抗原は、処置される疾患、障害、または状態に応じて、アロ抗原または自己抗原である。
【0012】
本発明は、自己免疫疾患における疾患再発を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0013】
本発明は、自己免疫疾患におけるエピトープ拡散を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0014】
本発明は、Th2媒介性疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、急速進行性半月体形成性糸球体腎炎、または移植片対宿主疾患(GVHD))、喘息、アトピー性皮膚炎、気管反応性亢進疾患のようなアトピー性障害および呼吸困難症候群を処置する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0015】
本発明は、GVHDを阻害する方法を提供する。この方法は、移植の30分〜30日前に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0016】
本発明は、哺乳動物において、リンパ球によるIFN−γの分泌を阻害する方法を提供する。この方法は、この哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0017】
本発明は、Th1 T細胞エフェクター機能の活性化、ならびにその結果、炎症性状態において起きる細胞性免疫応答を阻害する方法を提供する。このような炎症性状態の例は、炎症性腸疾患である。この方法は、この哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0018】
本発明は、哺乳動物における炎症性疾患または炎症性障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎および回腸炎のような炎症性腸疾患)を処置する方法を提供する。この方法は、この哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「抗KIM−1抗体」は、抗体(例えば、全長KIM−1ポリペプチドの細胞外部分に特異的に結合するIgG分子)を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「全長ヒトKIM−1ポリペプチド」は、その全体で配列番号1のポリペプチドまたはその全体で配列番号2のポリペプチドを意味する。これらの二つのポリペプチドは、ヒトKIM−1遺伝子のスプライス改変体を表す。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「異種部分」は、全長ヒトKIM−1ポリペプチド内に存在しないアミノ酸配列を意味する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1アンタゴニスト」は、(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;または(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントを意味し、これらの各々が、天然に存在するKIM−1の生物学的活性を、遮断するか、阻害するか、または妨害する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1融合タンパク質」は、異種部分に融合されたKIM−1部分を含む融合タンパク質を意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1部分」は、全長KIM−1ポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントを意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1ポリペプチド」は、KIM−1部分単独またはKIM−1部分を含む融合タンパク質を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1 Igドメイン」は、そのアミノ末端がアミノ酸29〜36であり、そしてそのカルボキシ末端がアミノ酸105〜107である配列番号1の一部分を意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1ムチンドメイン」は、そのアミノ末端がアミノ酸126〜130であり、そしてそのカルボキシ末端がアミノ酸255〜274である配列番号1の一部分を意味する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1膜貫通ドメイン」は、配列番号1のアミノ酸290〜311を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「KIM−1細胞質ドメイン」は、配列番号1のアミノ酸312〜334、または配列番号2の312〜359を意味する。
【0030】
他に規定されない限り、本明細書中に使用される全ての技術および科学用語は、本発明が関係する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、規定を含める本明細書は、支配する。本明細書中に記載される全ての刊行物、特許および他の参考文献は、参考として援用される。
本明細書中に記載されるものと同様または等価である方法および材料は、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料は、以下に記載される。この材料、方法および例は、単なる例示であり、限定することを意味しない。本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳動物における免疫応答に関与するT細胞と第二の細胞との間のシグナル伝達を阻害する方法であって、以下:
(a)免疫疾患または免疫障害を有する哺乳動物および組織移植片の調整における哺乳動物からなる群から選択される哺乳動物を同定する工程;および
(b)該哺乳動物に以下:(i)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(ii)抗KIM−1抗体;ならびに(iii)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
前記第二の細胞が、抗原提示細胞(APC)である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記T細胞が、活性化T細胞である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記T細胞が、ヘルパーT細胞である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記ヘルパーT細胞が、Th2細胞である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記T細胞が、移植されるドナーT細胞である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記APCが、単球、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記APCが、自己抗原を提示している、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記ポリペプチドが、さらにKIM−1ムチンドメインを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記ポリペプチドが、さらに異種部分を含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記異種部分が、免疫グロブリン(Ig)部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分および精製容易化部分からなる群から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記異種部分が、Ig部分である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記Ig部分が、Fc部分である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記ポリペプチドが、ポリマーに結合体化される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコール、糖ポリマーおよびポリペプチドからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール(PEG)である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ポリマーの平均分子量が、2,000Da〜30,000Daである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記ポリマーの平均分子量が、5,000Da〜20,000Daである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ポリマーの平均分子量が、約10,000Daである、項目19に記載の方法。
(項目21)
哺乳動物におけるB細胞の活性化を阻害する方法であって、B細胞を、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程を包含する、方法。
(項目22)
前記B細胞の活性化が、活性化T細胞によって媒介される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記活性化T細胞が、Th2細胞である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記活性化T細胞が、移植されるドナーT細胞である、項目22に記載の方法。
(項目25)
哺乳動物において、一以上の抗原に対する抗体のサブセットの産生を阻害する方法であって、以下(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
前記抗体が、IgGクラスである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記抗体が、IgG1サブクラスである、項目26に記載の方法。
(項目28)
有効量の前記ポリペプチドが、前記哺乳動物の免疫系が一以上の抗原を初めて認識する30分〜30日前に、該哺乳動物に投与される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記一以上の抗原が、アロ抗原である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記一以上の抗原が、自己抗原である、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記哺乳動物の前記免疫系が、前記一以上の抗原を、自己免疫疾患の過程におけるエピトープ拡散プロセスの一部として、初めて認識する、項目28に記載の方法。
(項目32)
自己免疫疾患におけるエピロープ拡散を阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1
Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目33)
Th2細胞媒介性疾患を処置する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目34)
前記Th2細胞媒介性疾患が、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、急速進行性半月体形成性糸球体腎炎、移植片対宿主疾患(GVHD)および全身性ループス腎炎(SLE)からなる群から選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
GVHDを阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
(項目36)
KIM−1 IgドメインおよびFc部分を含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド。
(項目37)
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物内のリンパ球によるIFN−γの分泌を阻害する方法。
(項目38)
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物における炎症性疾患または炎症性障害を処置する方法。
(項目39)
前記炎症性疾患および前記炎症性障害が、炎症性腸疾患である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記炎症性疾患または前記炎症性障害が、急性炎症または慢性炎症である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記ヘルパーT細胞が、Th1細胞である、項目4に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(先行技術)は、ヒトKIM−1ポリペプチドの二つの天然に存在するスプライス改変体の略図である。この二つのアミノ酸配列は、残基323まで同一である。シグナル配列(残基1〜20)を下線で示す。膜貫通ドメイン(残基290〜311)を二重下線により示す。
【図2】図2(先行技術)は、359個のアミノ酸のヒトKIM−1スプライス改変体の略図である。シグナル配列および膜貫通ドメインを、黒い影で示す。Igドメイン上のシステイン残基を「C」により示す。逆三角形は、N−グリカン結合点を示す。ムチンドメインに相当するTSPリッチドメインを黒い太枠で示す。
【図3】図3は、ヒツジ赤血球で一次抗原投与を受けたBalb/cマウスにおいて、14日目に測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである(実験1)。
【図4】図4は、ヒツジ赤血球で一次抗原投与を受けたBalb/cマウスにおいて、14日目に測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである(実験2)。
【図5】図5は、ヒツジ赤血球で一次抗原投与を受けたC57Bl/6マウスにおいて、7日目に測定された免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである。
【図6】図6は、実験1由来のマウスにおいて、一次抗原投与(図3)から完全に回復させ、次いで再抗原投与した後、測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである。免疫グロブリン力価を、再抗原投与して3日後に測定した。
【図7】図7は、実験2由来のマウスにおいて、一次抗原投与(図4)から完全に回復させ、次いで再抗原投与した後、測定した免疫グロブリン力価をまとめたヒストグラムである。免疫グロブリン力価を、再抗原投与した3日後に測定した。
【図8】図8は、マウスMLR培養におけるIFNγ産生に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞をC57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて48時間後、その上清を回収し、IFNγレベルを測定するために使用した。インキュベーションの際のmAb 3A2およびmAb 1H9用いた培養物の処理よって、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した。
【図9】図9は、マウスMLR培養における細胞増殖に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞をC57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて72時間後、生体色素(vital dye)を培養物に添加して、1〜4時間にわたり発色させた。3日の培養期間の間、抗KIM−1抗体用いた培養物の処理によって、細胞増殖は影響されなかった。
【図10】図10は、マウスMLR培養におけるIFNγ産生に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞を、C57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて48時間後、その上清を回収して、IFNγレベルを測定するために使用した。インキュベーションの際のKIM−1−Ig融合タンパク質を用いた培養物の処理によって、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した。
【図11】図11は、マウスMLR培養における細胞増殖に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射Balb/c脾細胞を、C57Bl6マウス由来の脾細胞を刺激するために使用した。培養にて72時間後、生体色素を培養物に添加して、1〜4時間にわたり発色させた。3日の培養期間の間、KIM−1−Ig融合タンパク質を用いた培養物の処理によって、細胞増殖は影響されなかった。
【図12】図12Aおよび図12Bは、ヒトMLR培養におけるIFNγ産生に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射JY細胞を、健常人のドナー由来の末梢血単核細胞を刺激するために使用した。培養にて5日後、その上清を回収して、IFNγレベルおよびIl−2レベルを測定するために使用した。インキュベーションの際のmAb AUF1およびmAb AKG7を用いた培養物の処理によって、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下したが(図12A)、一方で産生したIl−2のレベルは、変わらないままであった(図12B)。
【図13】図13は、ヒトMLR培養における細胞増殖に関するデータをまとめたヒストグラムである。照射JY細胞を、健常人のドナー由来の末梢血単核細胞を刺激するために使用した。培養にて6日後、生体色素を培養物に添加して、1〜4時間にわたり発色させた。6日の培養期間の間、抗ヒトKIM−1 mAbを用いた培養物の処理によって、細胞増殖は有意にもたされなかった。
【図14】図14は、マウスにおいて、炎症性腸疾患の誘導後の体重減少に関するデータをまとめたヒストグラムである。雌性のBalb/cマウスをデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)に暴露した。8日後、マウスをただの水に換え戻して、DSS暴露から回復させた。三日後、マウスを体重測定した。この体重を、実験の開始時の体重に対する百分率として計算した。KIM−1−Ig融合タンパク質を用いた処理によって、体重スコアにおける改善で示すように、マウスに対して有意な防御が与えられた。10マウス/グループであった。平均等価(equivilence)試験により、>p=0.0001の有意差が得られた。
【図15】図15Aおよび図15Bは、マウスにおいて、炎症性腸疾患の誘導後の臨床スコアデータをまとめたヒストグラムである。3日の回復期間後、マウスを下痢および糞便中の血液の存在について評価した。KIM−1−Ig融合タンパク質を用いて処理したマウスは、未処置のグループまたはコントロール−Ig処理のグループより有意に優れたスコアを有した(図15A)。これは、部分的に、糞石における血液の存在を有した有意により少ないマウスがよるものであった(図15B)。平均等価試験により、KIM−1−Ig処置した同齢集団と比較して、未処理のコントロールの臨床スコアにおいて差異についての有意な値(p=0.05)が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
ネイティブなヒトKIM−1遺伝子は、少なくとも部分的には組織依存的なスプライス変化に依存して334アミノ酸または359アミノ酸(配列番号1)を含むポリペプチド(図1)をコードする。両方の配列とも以下を含む:シグナル配列、Igドメイン、ムチンドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン。
【0033】
可溶性のダイマー化KIM−1外部ドメイン−Fc融合タンパク質(マウスKIM−1外部ドメインおよびヒトFc部分を含む各モノマー)ならびに認識される動物モデル(マウスのSRBC反応)を使用して、本発明者らは、哺乳動物の免疫応答の著明な変化を成し遂げた。理論に縛られる意図はないが、本発明者らは、観察結果を融合タンパク質がKIM−1アンタゴニストのように作用し、この拮抗作用は、T細胞とAPCとの間のKIM−1媒介性シグナル伝達の相互作用を妨害することを示すものとして解釈する。この妨害の下流の効果は、哺乳動物の免疫反応の有用な調節を含む。このような調節は、自己免疫疾患ならびに哺乳動物の免疫系が、T細胞細胞傷害または免疫グロブリン反応のいずれかを介して、不適切な標的を攻撃する他の疾患および障害を処置するために使用され得る。免疫系調節が有益である疾患または障害の例としては、関節炎、全身性エリテマトーデス(erythromatosis)(SLEまたはループスとしてもまた公知)および移植片対宿主疾患(GVHD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の方法において、可溶性KIM−1アンタゴニストポリペプチドまたはKIM−1ブロッキング抗体(あるいは抗原結合性抗体フラグメント)は、予備形成されたポリペプチドとして直接投与され得る。あるいは、それは、核酸ベクター(このポリペプチドをコードし、そして発現する)を介して非直接的に投与され得る。いずれの方法にせよ、この結果は、KIM−1媒介性のT細胞上の効果(T細胞活性化およびT細胞増殖刺激を含める)を拮抗することである。T細胞上に位置するKIM−1のこの拮抗作用は、T細胞それ自体の破壊的作用をブロックすることによって、直接的に、所望の治療効果を達成し得る。さらに、この拮抗作用は、B細胞の活性化T細胞媒介性の活性化を阻害して、それによって有害な抗体産生を減少させることによって、間接的に、所望の治療効果を達成し得る。
【0035】
自己免疫疾患および特定のタイプの病原性感染を含める種々の疾患において、ダメージは自己抗体反応(すなわち、自己抗原を認識する抗体の産生)から生じる。本発明は、T細胞活性化およびT細胞分化を妨害することによって、このようなダメージを減少させるための方法および分子を提供する。これは、次いで、B細胞による特異的免疫グロブリン(例えば、IgG1)の産生および分泌を妨害する活性化T細胞媒介性のB細胞活性化を妨害する。従って、自己抗体反応によって特徴付けられる任意の疾患または障害は、本発明の方法および分子を使用することによって、処置され得る。
【0036】
特定の自己免疫疾患が処置される場合、抗原への暴露ならびに免疫系反応は、一過性である。これは、有効量のKIM−1アンタゴニストの投与が、一以上の抗原に対する免疫応答の後に続く再活性化を阻害する際の緩解をもたらす。この方法において、本発明は、疾患再発をブロックするために使用され得る。特定の自己免疫疾患が処置される場合、哺乳動物の免疫系は、一以上の抗原を、自己免疫疾患の過程におけるエピトープ拡散プロセスの一部として、初めて認識する。
【0037】
移植片対宿主疾患(GVHD)におけるダメージの多くは、一旦、例えば、骨髄移植において、移植される場合、(宿主抗原に対して)宿主において活性化されたドナーT細胞の作用から、直接的に生じる。T細胞活性化を妨害するこの能力によって、本発明は、GVHDを阻害するために有用である。活性化ドナーT細胞の直接的作用からのダメージに加えて、GVHDにおいて、抗体媒介性成分もまたある。この抗体媒介性成分は、自己抗体産生B細胞を活性化するドナーT細胞の活性化に依存することから、本発明は、GVHDにおいて自己抗体媒介性ダメージおよび細胞性免疫媒介性ダメージを減少させる。
【0038】
(抗体媒介性自己免疫疾患)
全身性エリテマトーデス(SLE;ループス)は、細胞内抗原(例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNAおよびヒストン)に対して指向される高レベルの自己抗体によって特徴付けられるTH−2媒介性自己免疫障害である。これらの特徴を考えると、ループスは、本発明に従って処置され得る自己免疫疾患を例示する。
【0039】
本発明による処置に適した他の器官特異的疾患または全身性自己免疫疾患の例としては、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、グレーブス病、シャーガス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎および急性進行性半月体形成性糸球体腎炎が挙げられる。例えば、Benjaminiら、1996、Immunology、A Short Course、第三版(Wiley−Liss,NewYork)を参照のこと。さらに、一旦、T細胞細胞傷害性活性によって媒介されると考えると、慢性関節リウマチ(RA)が、B細胞および/または抗体成分を有することは、現在公知であり(Leandroら,2002,Ann.Rheum.Dis.,61:863−866;De Vitaら,Arthritis Rheum.46:2029−2033;Tsujiら,2002,J.Exp.Med.196:1277−1290)、従って、本発明による処置に適している。
【0040】
いくつかの病原性感染薬剤に対する正常な免疫応答は、有害な自己抗体応答を誘発する。一つの例は、シャーガス病であり、Trypanosoma cruziで慢性的に感染したヒトおよび実験動物において発生する炎症性心筋症である。抗自己抗体は、シャーガス病患者の血清中に存在し(Bach−Eliasら、1998、Parasitol.Res.84:796−799;Tibbettsら,J.Immunol.152:1493−1499)、従って、この疾患は、本発明による処置に適している。
【0041】
感染から生じる自己抗体による細胞の破壊の別の例は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)であり、この自己抗体は、(FcレセプターまたはC3bレセプターを有する補体または食細胞によって)血小板破壊を引き起こし、出血を導き得る。ITPは、本発明による処置に適している。
【0042】
(移植片対宿主疾患(GVHD))
GVHDは、本発明の方法を使用して処置され得るT細胞媒介性状態を例示する。GVHDは、T細胞が宿主抗原を外来抗原として認識する場合に、惹起される。ヒト患者において、しばしば、骨髄移植(BMT)の致命的結果となるGVHDは、急性または慢性であり得る。GVHDの急性形態および慢性形態は、それぞれ、抗原特異的なTh1応答およびTh2応答の発生を例示する。急性GVHDは、BMT後はじめの2ヵ月以内に発症し、そして、皮膚、腸、肝臓および他の器官に対するドナー細胞傷害性T細胞媒介性ダメージによって特徴付けられる。慢性GVHDは、より遅く現れ(BMT後100日以上)、そして自己抗体を含む免疫グロブリン(Ig)の過剰産生、ならびにIg沈着によって引き起こされる皮膚、腎臓および他の器官へダメージによって特徴付けられる。急性GVHD患者の約90%は、慢性GVHDを発生するようになる。慢性GVHDは、Th2 T細胞媒介性疾患であるように思われる(De Witら,1993,J.Immunol.150:361−366)。急性GVHDは、Th1媒介性疾患である(Krengerら,1996,Immunol.Res.15:50−73;Williamsonら,1996,J.Immunol.157:689−699)。T細胞細胞傷害は、急性GVHD特有である。ドナーの抗宿主細胞傷害の結果は、種々の方法において見られ得る。第一に、宿主リンパ球は、急速に破壊され、これによって、急性GVHDを発症しているマウスは、大いに免疫抑制されている。第二に、ドナーリンパ球は、移植され、宿主の脾臓において拡大し、そしてこれらの細胞傷害活性は、ドナー細胞によって(外来として)認識され得る宿主抗原を発現する細胞株を利用することによって、インビトロで、直接測定され得る。第三に、この疾患は、さらなる組織にとって、致死性になり、そして細胞集団は、破壊される。
【0043】
慢性GVHDは、宿主組織および宿主細胞の抗体媒介性破壊から生じ、「SLE様」GVHDと呼ばれている。徴候としては、自己抗体形成、種々の器官(腎臓、肝臓)におけるIg沈着、皮膚発疹、リンパ系の過形成、シェーグレン様病変、強皮症様病変、多発動脈炎および他の病理が挙げられる。この疾患は、自己抗体形成によって、部分的に媒介される。前述のことを考えると、慢性GVHDは、本発明による処置に適している。
【0044】
(他のTh2関連疾患)
アトピー障害は、活性化T細胞およびAPCを含む免疫系細胞による、サイトカイン、ケモカイン、およびTh2応答に特有な他の分子(例えば、とりわけIL−4サイトカイン、IL−5サイトカインおよびIL−13サイトカイン)の発現によって特徴付けられる。従って、このようなアトピー障害は、Th2応答の発生を拮抗する方法(例えば、本発明のKIM−1アンタゴニスト)による処置を受け入れる。アトピー障害としては、喘息(気道過敏症および気道困難症候群)およびアトピー皮膚炎のような病理が挙げられる。本発明は、アトピー障害を阻害する方法を提供する。この方法は、有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0045】
(活性化リンパ球、APCおよび炎症誘発性サイトカインによって媒介される炎症性疾患および炎症性障害)
マウスモデル系およびヒトモデル系における混合リンパ球反応アッセイ(MLR)を用いて、本発明者らは、(例えば、抗KIM−1 mAbまたはKIM−1−Ig融合タンパク質を用いる)KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断は、反応細胞によるIFNγの分泌を減少させることを示している。従って、KIM−1アンタゴニストは、IFNγにより媒介される任意の疾患または障害を処置するために使用され得る。
【0046】
IFNγは、免疫応答において、重要なサイトカインである。これは、炎症性かつ免疫プロセスの発現および程度に対し多面発現(pleotropic)効果を有する(Boehmら1997,Ann Rev Immunol 15:749−795)。IFNγ産生の欠乏は、抗ウイルス性応答および抗細菌性応答を縮小し、炎症性応答を減弱する。KIM−1アンタゴニストは、IFNγ産生が過剰か、または不適切な疾患または障害において、IFNγ産生を減少させるために、有利に使用され得る。このような疾患または障害の例としては、自己免疫疾患、大腸炎および慢性炎症が挙げられる。
【0047】
IFNγは、T細胞活性化およびB細胞応答の鍵成分である。これは、T細胞エフェクター細胞発生(例えば、Il−4との交差調節を介して)およびB細胞活性化(例えば、MHC媒介性抗原提示およびB7分子の発現の調節を介して)に影響する。IFNγは、Th1 T細胞媒介性免疫応答の重要な成分である。IFNγは、他の免疫系構成要素(例えば、マクロファージおよび好中球)に対し、明白な効果を有する。これは、これらの免疫系構成要素の活性化および有毒なエフェクター分子の放出を刺激する。
【0048】
IFNγは、組織常在性細胞型に対し、強力な効果を有する。内皮は、IFNγによって活性化される。IFNγで刺激される場合、患部組織に常在性細胞(例えば、慢性関節リウマチにおける滑膜細胞)は、TNFおよび他のサイトカイン、MCP−1および他のケモカインならびに有毒なエフェクター分子(例えば、一酸化窒素)を分泌する。IFNγによって媒介されるこれらの後者の機能の全ては、炎症の際に、組織内へ細胞輸送に影響する。
【0049】
実施例5(以下)に示されるように、KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断は、SRBCモデル系におけるIgG1産生を減少させるか、またはなくさせる。MLRアッセイにおいて、本発明者らは、KIM−1のそのレセプターへの結合の遮断が、リンパ球によるIFNγ産生を減少させることを発見している。理論に縛られる意図はないが、IgG1産生における減少およびIFNγ産生の減少が、KIM−1遮断の二つの別々の効果を表し得、直接的に関連し得ないことは、注目される。従って、KIM−1アンタゴニストが、本発明による免疫機能を調節するために使用される場合、KIM−1アンタゴニストは、二つの別々の作用機構を介して、有益な効果を提供し得る。
【0050】
(融合タンパク質および結合体化ポリペプチド)
本発明のいくつかの実施形態は、KIM−1アンタゴニストポリペプチドを含み、KIM−1部分は、異種部分に融合されて、KIM−1融合タンパク質を形成する。KIM−1融合タンパク質は、KIM−1部分単独とは対照的に、種々の目的を達成するために使用され得る。このような目的としては、例えば、血清半減期の上昇、バイオアベイラビリティーの改善、特異的器官または組織型へのインビボターゲティング、組換え発現効率の改善、宿主細胞分泌の改善および精製の容易さが挙げられる。達成する目的に依存して、異種部分は、不活性であってもよく、または生物学的に活性でもよい。また、異種部分は、KIM−1部分に安定的に融合されるか、あるいはインビトロまたはインビボにて切断可能なように選択され得る。種々の目的を達成する異種部分は、当該分野において公知である。
【0051】
KIM−1融合タンパク質の発現の代わりとして、選択された異種部分が、予備形成され得、そしてKIM−1部分に化学的に結合され得る。ほとんどの場合、選択された異種部分は、KIM−1部分に融合されるか、または結合されるかにかかわらず、同様に機能する。従って、異種アミノ酸配列の以下の議論において、他に記載されない場合、異種配列は、融合タンパク質の形態で、あるいは化学的結合として、KIM−1部分に連結され得ることを理解すべきである。
【0052】
薬理学的に活性なポリペプチド(例えば、KIM−1ポリペプチド)は、しばしば、迅速なインビボクリアランスを示すことから、身体内で、治療的に有効な濃度を達成するためには、大量の用量を必要とする。さらに、約20kDaより小さいポリペプチドは、潜在的に、糸球体濾過を受け、時折、腎毒性を導く。比較的小さいポリペプチド(例えば、KIM−1フラグメント)の融合物または結合体は、利用されて、このような腎毒性の危険性を低下させ得るか、または回避し得る。治療的ポリペプチドのインビボ安定性(すなわち血清半減期)を上昇するための種々の異種アミノ酸配列(すなわち、ポリペプチド部分、すなわち「キャリア」)は、公知である。
【0053】
その長い半減期、広範なインビボ分布および酵素学的または免疫学的機能の欠如によって、基本的に全長ヒト血清アルブミン(HSA)あるいはHSAフラグメントは、異種部分に好ましい。方法および材料の適用(例えば、Yehら,1992,Proc.Natl.Acad Sci.USA,89:1904−1908およびSyedら,1997,Blood 89:3243−3252に教示されるもの)を通じて、HSAは、使用されてKIM−1融合タンパク質、またはKIM−1部分によって薬理学的活性を示し、かつインビボでの安定性の有意な上昇(例えば、10倍〜100倍より高い)を示す結合体を形成し得る。好ましくは、HSAのN末端は、KIM−1部分のC末端に融合される。HSAは天然に分泌されるタンパク質であることから、KIM−1融合タンパク質が真核細胞の(例えば、哺乳動物の)発現系で産生される場合、HSAシグナル配列は、細胞培養培地中へのKIM−1融合タンパク質の分泌物を得るために利用され得る。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態は、KIM−1ポリペプチドを利用し、KIM−1部分はFc領域(すなわち、Ig重鎖定常領域のC末端部分)に融合される。KIM−1−Fc融合物の潜在的利点としては、溶解性、インビボ安定性および多価性(例えば、二量体化)が挙げられる。使用されるFc領域は、IgA Fc領域、IgD Fc領域またはIgG Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3)であり得る。あるいは、使用されるFc領域は、IgE Fc領域、またはIgM Fc領域(ヒンジ−CH2−CH3−CH4)であり得る。IgG Fc領域は、好ましい(例えば、IgG1 Fc領域またはIgG4 Fc領域)。Fc融合物をコードするDNAを構築および発現するための材料ならびに方法は、当該分野において公知であり、過度の実験なしでKIM−1融合物を得るために適用され得る。
【0055】
好ましくは、KIM−1−Fc融合物は、方向性をもって構築され、KIM−1部分は、融合タンパク質のアミノ末端部分を形成する。この方向性をもったFc融合物の構築および発現の例については、例えば、Wallnerら,米国特許第5,547,853(pSAB152)を参照のこと。あるいは、この融合物は、逆の方向性をもって構築され得、すなわち、KIM−1部分は、この融合物のカルボキシ末端部分を形成する。この方向性の例および議論については、例えば、Loら,米国特許第5,541,087号を参照のこと。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、Loら,米国特許第5,541,087号に従って、KIM−1免疫融合DNAを構築することによって得られるKIM−1融合タンパク質を利用する。免疫融合DNAは、分泌カセットをコードするポリヌクレオチドを含む。この分泌カセットは、シグナル配列、免疫グロブリンFc領域および分泌カセットの3’末端に融合されるKIM−1部分を(5’から3’方向で)コードする配列を含む。DNAは、宿主細胞において、高レベルで発現され得、融合タンパク質は、効率的に産生され、宿主細胞から分泌される。この分泌免疫融合物は、宿主細胞の溶解を必要とせずに、培養培地から回収され得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、DNA配列は、KIM−1部分と異種部分との間のタンパク分解性切断部位をコードする。切断部位は、コードされる融合タンパク質のタンパク分解性切断部位(従って、標的タンパク質からFcドメインを分離する)のために提供される。有用なタンパク分解性切断部位は、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシン、プラスミン、エンテロキナーゼ K)で認識されるアミノ酸配列を含む。
【0058】
KIM−1ポリペプチド構築物は、複製可能な発現ベクターに組込まれ得る。有用なベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミドなどが挙げられる。例示的な発現ベクターは、pSAB152(Wallnerら,米国特許第5,547,853号)。別の例示的な発現ベクターは、pdCであり、このpdC内の免疫融合DNAの転写は、ヒトサイトメガロウイルスのエンハンサーおよびプロモーターの制御下に置かれる(Loら,1991,Biochim.Biophys.Acta 1088:712;およびLoら,1998,Protein Engineering 11:495−500)。適切な宿主細胞は、KIM−1ポリペプチドをコードするDNAで形質転換され得るか、またはトランスフェクトされ得、そしてその宿主細胞は、KIM−1ポリペプチドの発現および分泌のために使用される。好ましい宿主細胞としては、不死のハイブリドーマ細胞、ミエローマ細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Hela細胞およびCOS細胞が挙げられる。
【0059】
完全にインタクトで野生型のFc領域は、本発明によるFc融合タンパク質において、通常は不必要でかつ望まれていないエフェクター機能を示す。従って、特定の結合部位は、好ましくは、KIM−1−Fc融合タンパク質の構築の際に、Fc領域から欠失させられる。例えば、軽鎖との同時発現は、不必要であることから、重鎖結合タンパク質(Bip(Hendershotら,1987,Immunol.Today 8:111−114))に対する結合部位は、IgEのFc領域から欠失させられて、これにより、この部位は、融合タンパク質の効率的な分泌を妨害しない。同様に、免疫グロブリンの軽鎖への結合の原因であるFc領域内のシステイン残基は、欠失されるか、または別のアミノ酸で置換されるべきであり、これにより、これらのシステイン残基は、このFc領域が免疫融合物として産生されるときに、Fc領域の正しい折りたたみを妨害しない。膜貫通ドメイン配列(例えば、IgMで存在する膜貫通ドメイン)は、欠失されるべきである。
【0060】
IgG1 Fc領域は、好ましい。あるいは、免疫グロブリンγの他のサブクラス(γ−2、γ−3およびγ−4)のFc領域は、分泌カセットで使用され得る。分泌カセットにおいて好ましく使用される免疫グロブリンγー1のIgG1 Fc領域は、ヒンジ領域(少なくとも一部)、CH2領域およびCH3領域を含む。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンγー1のFc領域は、ヒンジ領域の一部およびCH3領域を含むが、CH2領域を含まないCH2欠失Fcである。CH2欠失Fcは、Gilliesら,1990,Hum.Antibod.Hybridomas,1:47により記載されている。いくつかの実施形態において、IgA、IgD、IgEまたはIgMのFc領域が、使用される。
【0061】
KIM−1−Fc融合タンパク質は、いくつかの異なる構造において構築され得る。一つの構造では、KIM−1部分のC末端は、Fc部分のN末端に直接融合される。わずかに異なる構造では、短いリンカー(例えば、2〜10個のアミノ酸)が、KIM−1部分のC末端とFc領域のN末端の融合物の間に組み込まれる。このようなリンカーは、高次構造的な可撓性を提供し、この可撓性は、いくつかの状況において、生物学的活性を改善させ得る。ヒンジ領域の十分な部分がFc部分において保持される場合、KIM−1−Fc融合物は、二量体化し、従って、二価の分子を形成する。単量体のFc融合物の同質集団は、単一特異性で二価の二量体を産生する。それぞれ異なる特異性を有する二つの単量体のFc領域の混合物は、二重特異性で二価の二量体を産生する。
【0062】
KIM−1結合体は、当該分野において公知の方法を用いて構築され得る。相当するアミノ反応基およびチオール反応基を含む多くの架橋剤の任意のものが、KIM−1を血清アルブミンに連結するために使用され得る。適したリンカーの例としては、チオール反応性マレイミドを挿入するアミン反応性架橋剤が挙げられる。これらのリンカーとしては、例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUSまたはGMBSが挙げられる。他の適したリンカーは、チオール反応性ハロアセテート基を挿入する。これらのリンカーとしては、例えば、SBAP、SIA、SIABが挙げられ、そして還元可能な結合を作製するために、スルフヒドリル基と反応するための保護チオールまたは非保護チオールを提供するリンカーとしては、SPDP、SMPT、SATAまたはSATP(これらの全ては、市販されている(例えば、Pierce Chemicals))がある。当業者は、KIM−1のN末端を血清アルブミンと連結する代わりの戦略を同様に想像し得る。
【0063】
当業者は、KIM−1ポリペプチドのN末端または血清アルブミン上のチオール部分で標的にされない血清アルブミンへの結合体を作り出し得る。例えば、KIM−1−アルブミン融合物は、遺伝子操作技術を用いて作り出され得、KIM−1部分は、KIM−1のアミノ末端(N−ter)、カルボキシ末端(C−ter)または両方の末端で、血清アルブミン遺伝子に融合される。
【0064】
KIM−1ポリペプチドの他の誘導体は、改変されたKIM−1またはKIM−1のフラグメントの他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合性結合体、あるいは凝集的結合体(例えば、さらなるN末端またはC末端として組換え培養での合成による)を含む。例えば、結合体化ペプチドは、タンパク質の輸送を、同時翻訳でか、あるいは翻訳後に、合成部位から細胞膜または細胞壁の内側か、または外側の機能部位に方向付けるタンパク質のN末端の領域でのシグナル(またはリーダー)ポリペプチド配列(例えば、酵母α因子リーダー)であり得る。KIM−1ポリペプチドは、KIM−1部分の精製または同定を容易にするために、異種のペプチドに融合され得る(例えば、ヒスチジン/KIM−1融合物)。KIM−1部分はまた、ペプチドAsp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)(配列番号)(Hoppら,1988,Biotechnology 6:1204)に連結され得る。この配列は、より高い抗原性であり、特異的モノクローナル抗体によって可逆的に結合されるエピトープを提供する。結果として、この配列は、アッセイおよび発現された組換えタンパク質の精製を容易にする。この配列は、ウシ粘膜エンテロキナーゼによって、Asp−Lys対形成の直後の残基で、特異的に切断される。
【0065】
遺伝子融合構築物を利用する発現系は、細菌内のタンパク質産生を向上するために使用されている。融合タンパク質のアミノ末端融合パートナーのように非常に高レベルで正常に発現される細菌タンパク質を利用することは、このメッセージの効率的な転写および翻訳、ならびにある場合では、この融合タンパク質の分泌および可溶化を保証することに役立つ(Smithら,1988 Gene 67:31;前出のHoppら;La Vallieら,1993,Biotechnology 11:187)。
【0066】
(結合体化ポリマー(ポリペプチド以外))
本発明のいくつかの実施形態は、KIM−1ポリペプチドを含み、一以上のポリマーが、KIM−1ポリペプチドに結合体化される(共有結合的に連結される)。このような結合に適したポリマーの例としては、ポリペプチド(上記で議論される)、糖ポリマーおよびポリアルキレングリコール鎖が挙げられる。代表的に、必ずでもないが、ポリマーは、以下の一以上を改善する目的のために、KIM−1ポリペプチドに結合体化される:溶解性、安定性またはバイオアベイラビリティー。
【0067】
KIM−1ポリペプチドへの結合のためのポリマーの好ましいクラスは、ポリアルキレングリコールである。ポリエチレングリコール(PEG)は、好ましいポリアルキレングリコールである。PEG部分(例えば、1〜6個のPEGポリマー)は、KIM−1ポリペプチド単独と比較して、血清半減期を上昇するために、各KIM−1ポリペプチドに結合体化され得る。PEG部分は、非抗原性であり、そして基本的に生物学的に不活性である。本発明の実施において使用されるPEG部分は、分枝状または非分枝状であり得る。
【0068】
KIM−1ポリペプチドに結合されるPEG部分の数および個々のPEG鎖の分子量は、種々であり得る。概して、ポリマーの分子量は高分子になるほど、ポリペプチドに結合されるポリマー鎖は少なくなる。好ましくは、PEGの平均分子量は、2kDa〜100kDaである。より好ましくは、平均分子量は、5kDa〜20kDaであり、最も好ましくは、8kDa〜12kDaである。
【0069】
ポリマー(例えば、PEG)は、任意の適した、ポリペプチド上の露出した反応基を介して、KIM−1ポリペプチドに連結され得る。この露出した反応基は、例えば、N末端アミノ基または内部のリジン残基のεアミノ基か、もしくは両方であり得る。天然に存在するリジン残基は、この目的のために利用され得るか、またはリジン残基は、KIM−1アミノ酸配列内に設計され得る。活性化ポリマーは、KIM−1ポリペプチド上の任意の遊離のアミノ基で反応し得、共有結合的に連結され得る。(利用可能な場合)KIM−1の遊離のカルボキシル基、適切に活性化したカルボニル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、イミダゾール基、参加した炭水化物部分およびメルカプト基もまた、ポリマー付着のための反応基として使用され得る。
【0070】
好ましくは、結合反応において、ポリペプチド濃度に依存して、一モルのポリペプチド当たり約1.0〜約10モルの活性化ポリマーが使用される。通常、選択した比は、反応を最大限に引き出しつつ、一方でKIM−1部分の所望の薬理学的活性を損ない得る(しばしば非特異的)副反応を最小限に抑えるバランスを表す。好ましくは、KIM−1ポリペプチドの生物学的活性のうちの少なくとも50%が保持され、最も好ましくは、約100%が保持される。
【0071】
ポリマーは、従来の化学を用いてKIM−1ポリペプチドに結合体化され得る。例えば、ポリアルキレングリコール部分は、KIM−1ポリペプチドのリジンεアミノ基にカップリングされ得る。このリジン側鎖の結合は、N−ヒドロキシルスクシニミド(NHS)活性エステル(例えば、PEGスクシンイミジルスクシネート(SS−PEG)およびPEGスクシンイミジルプロピオネート(SPA−PEG))を用いて行われる。適したポリアルキレングリコール部分としては、例えば、カルボキシメチル−NHS、ノルロイシン−NHS、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾールおよびPNPカルボネートが挙げられる。これらの試薬は、市販されている。さらなるアミン反応PEGリンカーは、スクシンイミジル部分と置換され得る。これらのリンカーとしては、例えば、イソチオシアネート、ニトロフェニルカルボネート、エポキシドおよびベンゾトリアゾールカルボネートが挙げられる。好ましくは、条件は、反応の(or reaction)選択性および進行性を最大限引き出すために選択される。反応条件のこのような最適化は、当該分野における通常の技術内である。
【0072】
PEG化は、当該分野で公知の任意のPEG化反応によって行われ得る。例えば、Focus on Growth Factors,3:4−10,1992;公開欧州特許出願第EP 0 154 316号および公開同第EP 0 401 384号を参照のこと。PEG化は、反応性のポリエチレングリコール分子(または類似の反応性の水溶性ポリマー)用いるアシル化反応またはアルキル化反応を使用して行われ得る。
【0073】
概して、アシル化によるPEG化は、ポリエチレングリコールの活性エステル誘導体を反応させることを含む。任意の反応性PEG分子が、PEG化に使用され得る。好ましい活性化PEGエステルは、Nヒドロキシスクシニミド(NHS)にPEGエステル化される。本明細書中で使用される場合、「アシル化」は、治療用タンパク質と水溶性ポリマー(例えば、PEG)との間の以下のタイプの結合(linkage)を含む:アミド、カルバメート、ウレタンなど。例えば、Bioconjugate Chem.5:133−140,1994を参照のこと。反応パラメータは、KIM−1ポリペプチドにダメージを与えるか、または不活性化する温度、溶媒、pHの条件を回避するように選択されるべきである。
【0074】
好ましくは、連結する結合は、アミドである。好ましくは、生じる生成物のうちの少なくとも95%は、モノPEG化、ジPEG化、またはトリPEG化である。しかしながら、高度のPEG化を有するいくつかの種は、使用される特定の反応条件に依存する量で形成され得る。必要に応じて、精製PEG化種は、従来の精製法(例えば、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーおよび電気泳動を含む)によって、混合物(特に未反応種)から分離される。
【0075】
アルキル化によるPEG化は、概して、還元剤の存在下で、PEGの末端のアルデヒド誘導体をKIM−1と反応させる工程を包含する。さらに、反応条件を操作して、実質的にKIM−1のN末端のα−アミノ基だけのPEG化を支持し得る(すなわち、モノ−PEG化タンパク質)。モノ−PEG化またはポリ−PEG化のいずれかの場合においても、PEG基は、好ましくは、−CH2−NH−基を介して、タンパク質に結合される。−CH2−基に特に関連して、このタイプの結合は、「アルキル」結合として公知である。
【0076】
モノ−PEG化産物を生産するため還元アルキル化を介した誘導体化は、誘導体化に利用可能な異なるタイプの第1級アミノ基(リジン対N末端)の差次的な反応を利用する。この反応は、リジン残基のε−アミノ基とこのタンパク質のN末端残基のα−アミノ基との間のpKaの差を利用するpHで行われる。このような選択性の誘導体化によって、アルデヒドのような反応基を含む水溶性ポリマーのタンパク質への付着は、制御される:ポリマーとの結合は、主にタンパク質のN末端で起こり、他の反応基(例えば、リジン側鎖アミノ基)の大きな改変は起きない。
【0077】
アシル化アプローチおよびアルキル化アプローチの両方で使用されるポリマー分子は、上記に記載されるような水溶性ポリマーから選択され得る。この選択されるポリマーは、単一の反応基(例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒド)を有するように修飾されるべきであり、好ましくは、これにより、ポリマー化度は、本方法で提供されるように、制御され得る。例示的な反応性PEGアルデヒドは、水に対して安定であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドであるか、またはこのモノC1−C10アルコキシ誘導体もしくはモノC1−C10アリールオキシアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号を参照のこと)である。このポリマーは、分枝状または非分枝状であり得る。アシル化反応について、選択されるポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。還元アルキル化について、選択されるポリマーは、単一の反応性アルデヒド基を有すべきである。概して、水溶性ポリマーは、天然に存在するグリコシル残基から選択され得る。なぜなら、これらの水溶性ポリマーは、通常、哺乳動物組換え発現系によってより都合よく作製されるからである。
【0078】
PEG化KIM−1を調製するための方法は、概して、(a)分子が一以上のPEG基に結合される条件下で、KIM−1タンパク質またはKIM−1ポリペプチドをポリエチレングリコール(例えば、PEGの反応性エステル誘導体または反応性アルデヒド誘導体)と反応させる工程および(b)反応生成物を得る工程を包含する。概して、アシル化反応についての最適な反応条件は、公知のパラメータおよび所望の結果に基づき、個別的に決定される。例えば、PEG:タンパク質の比が大きくなるほど、ポリ−PEG化産物の割合は大きくなる。
【0079】
モノ−ポリマー/KIM−1の実質的に同種の集団を実質的に産生するための還元アルキル化は、(a)KIM−1のアミノ末端のα−アミノ基の選択的改変を可能にする(pen−nit)適したpHで、還元アルキル化条件下においてKIM−1ポリペプチドを反応性PEG分子と反応させる工程;および(b)反応生成物を得る工程を包含する。
【0080】
モノ−ポリマー/KIM−1ポリペプチドの実質的に同種の集団について、還元アルキル化反応条件は、水溶性のポリマー部分のKIM−1のN末端への選択的結合を可能にする条件である。このような反応条件は、概して、リジンアミノ基とN末端のα−アミノ基との間のpKaの差を提供する(pKaは、アミノ基の50%がプロトン化され、50%はプロトン化されないpHである)。このpHはまた、使用されるタンパク質に対するポリマーの比に影響する。概して、pHが低い場合、タンパク質に対して大過剰のポリマーが所望される(すなわち、N末端のα−アミノ基がより小さい反応性になるほど、最適条件を達成するためにより多くのポリマーが必要とされる)。pHが高い場合、ポリマー:タンパク質の比は、それほど大きくなくてよい。(なぜなら、より反応性の高い基が利用可能なので、より少ないポリマー分子が必要とされるからである)。本発明のために、好ましいpHは3〜9の範囲であり、より好ましくは、3〜6の範囲である。
【0081】
KIM−1ポリペプチドは、タグ(例えば、タンパク分解によって、後で放出され得る部分)を含み得る。従って、リジン部分は、初めに改変されるHisタグを、リジンおよびN末端の両方と反応するトラウト試薬(Traut’s reagent)(Pierce)のような低分子量リンカーと反応させ、次いで、このhisタグを放出することによって選択的に改変され得る。次いで、このポリペプチドは、チオール反応性ヘッド基(例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基または遊離のSHもしくは保護SH)を含むPEGで選択的に改変され得る改変のSH基を含む。
【0082】
トラウト試薬(Traut’s reagent)は、PEG結合のための特異的部位を設置する任意のリンカーで置換され得る。一例として、トラウト試薬(Traut’s reagent)は、SPDP、SMPT、SATAまたはSATP(全てPierceから市販)で置換され得る。同様に、このタンパク質を、マレイミド基を挿入するアミン反応性リンカー(例えば、SMCC、AMAS、BMPS,MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUSまたはGMBS)、ハロアセテート基を挿入するアミン反応性リンカー(SBAP、SIA、SIAB)またはビニルスルホン基を挿入するアミン反応性リンカーと反応させ得、そして、結果生じる生成物を遊離のSHを含むPEGと反応させ得る。使用されるリンカーの大きさの唯一の限定は、リンカーがN末端タグの後での除去をブロックし得ないことである。
【0083】
いくつかの実施形態において、ポリアルキレングリコール部分は、KIM−1ポリペプチドのシステイン基にカップリングされる。カップリングは、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基およびチオール基を利用してもたらされ得る。
【0084】
必要に応じて、KIM−1ポリペプチドは、不安定な結合を介してポリエチレングリコール部分に結合体化される。この不安定な結合は、例えば、生化学的加水分解、タンパク質分解またはスルフヒドリル切断において、切断され得る。例えば、この結合は、インビボでの(生理的)条件下において、切断され得る。
【0085】
この反応は、反応基がN末端のαアミノ基上にある場合、好ましくは、約pH 5〜8(例えば、pH 5、6、7または8)で、生物学的活性物質を不活性ポリマーと反応させるために使用される任意の適した方法によって起こり得る。概して、このプロセスは、活性化ポリマーを調製する工程およびこの後に、タンパク質をこの活性化ポリマーと反応させ、処方物にとって適した可溶性タンパク質を産生する工程を包含する。
【0086】
KIM−1ポリペプチド上の一以上の部位が、ポリマーにカップリングされ得る。例えば、一つか、二つか、三つか、四つか、または五つのPEG部分が、ポリペプチドに結合され得る。いくつかの実施形態では、PEG部分は、アミノ末端に結合される。
【0087】
(抗KIM−1抗体)
本発明に従って使用される抗KIM−1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、種々のタイプの分子の任意のものであり得、この種々のタイプの分子としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ(diabody)、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、Fdフラグメント、dAbフラグメント、および相補性決定領域(CDR)を含むフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書中で使用される場合:Fdは、VHドメインおよびCH1ドメインからなるフラグメントを意味し;Fvは、抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるフラグメントを意味し;そしてdAbはVHドメインからなるフラグメントを意味する(Wardら,1989,Nature 341:544−546)。本明細書中で使用される場合、一本鎖抗体(scFv)は、VL領域およびVH領域が、これらを一本鎖タンパク質鎖としての作製を可能にする合成リンカーを介して対形成されて一価の分子を形成する抗体を意味する(Birdら,1988,Science 242:423−426;Hustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883)。本明細書中で使用される場合、ダイアボディ(diabody)は、VHドメインおよびVLドメインが、短すぎて同一鎖上の二つのドメイン間で対形成できないリンカーを用いて、従ってこれらのドメインを、別の鎖の相補的なドメインと対形成させ、そして二つの抗原結合部位を作製して、一本ポリペプチド鎖で発現される二重特異性抗体を意味する(例えば、Holligerら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;およびPoljakら,1994,Structure 2:1121−1123を参照のこと)。
【0089】
概して、抗体を得るための適用可能な方法は、当該分野で公知である。抗KIM−1抗体の作製にとって有用な方法および材料の概説については、例えば、Harlowら,1988,Antibodies,A Laboratory Manual;Yeltonら,1981,Ann.Rev.Biochem.,50:657−80.;ならびにAusubelら,1989,Current Protocols in Molecular Biology(New York:John WileyおよびSons)を参照のこと。抗KIM−1抗体の抗原結合特性は、種々の従来の方法(例えばラジオイムノアッセイ、免疫ブロットアッセイおよびELISA)の任意のもの利用して、当業者によって決定され得る。本発明の抗体を産生するための他の適した技術は、インビトロでのKIM−1ポリペプチドへのリンパ球の暴露、またはファージベクターまたは同様のベクターにおける抗体ライブラリーのスクリーニングを包含する。例えば、Huseら,1989.Science,246:1275−1281を参照のこと。
【0090】
(ベクター)
本発明は、KIM−1ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターおよび本発明の核酸が作動可能に連結される発現制御配列の選択は、所望の機能的特性(例えば、タンパク質発現、および形質転換される宿主細胞)に依存する。本発明のベクターは、rDNA分子に含まれる構造遺伝子の複製または宿主染色体内への挿入、そして好ましくはまた、発現も指向することを少なくとも可能であり得る。
【0091】
作動可能に連結されるコード配列の発現を調節することにとって有用な発現制御エレメントは、当該分野において公知である。例としては、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、および他の調節性エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。誘導性プロモーターが使用される場合、誘導性プロモーターは、例えば、宿主細胞培地における栄養状態の変化、または温度変化によって、制御され得る。
【0092】
ベクターは、原核生物レプリコン(すなわち、原核生物の宿主細胞(例えば、DNA配列で形質転換される細菌宿主細胞)において、染色体外性の組換えDNA分子の自律複製および維持を指向する能力を有するDNA配列)を含み得る。このようなレプリコンは、当該分野において周知である。さらに、原核生物レプリコンを含むベクターはまた、遺伝子の発現が、検出可能なマーカー(例えば、薬剤耐性)をもたらす上記遺伝子を含み得る。代表的な薬剤耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対して耐性をもたらす遺伝子である。
【0093】
原核生物レプリコンを含むベクターは、細菌宿主細胞において、コード遺伝子配列の発現を指向するための原核生物プロモーターまたはバクテリオファージプロモーターをさらに含み得る。細菌宿主に適合性のプロモーター配列は、代表的に、本発明のDNAセグメントの挿入に都合のよい制限部位を含むプラスミドベクター内で提供される。このようなベクタープラスミドの例は、pUC8、pUC9、pBR322およびpBR329(BioRad Laboratories)、pPLおよびpKK223(Pharmacia)である。任意の適した原核生物宿主は、本発明のタンパク質をコードする組換えDNA分子を発現するために使用され得る。
【0094】
真核生物細胞発現ベクターは、当該分野で公知であり、そして市販されている。代表的に、このようなベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に都合のよい制限部位を含む。例示的なベクターとしては、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia),pBPV−1、pML2d(International Biotechnologies),pTDTl(ATCC 31255)が挙げられる。
【0095】
真核生物細胞発現ベクターはまた、選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子)を含み得る。好ましい薬剤耐性遺伝子は、ネオマイシン耐性(すなわち、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子(Southernら,1982,J.Mol.Anal.Genet.1:327−341))をもたらす。
【0096】
抗体または抗体フラグメントを発現するために、部分的な軽鎖および重鎖、または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAは、発現ベクター内に挿入される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来のエピソームなどが挙げられる。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合性であるように選択される。抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子は、別々のベクター内に挿入され得る。いくつかの実施形態において、両方の遺伝子は、同一の発現ベクター内に挿入される。
【0097】
都合のよいベクターは、機能的に完全なヒトのCH免疫グロブリン配列またはCL免疫グロブリン配列をコードするベクターである。好ましくは、制限部位は操作されて、それにより、上記に記載されるように、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入され得、そして発現され得る。このようなベクターにおいて、スプライシングは、挿入されたJ領域のスプライシングドナー部位とヒトC領域の前にあるスプライシングアクセプター部位との間で通常起こし、ヒトCHエキソン内に生じるスプライス領域にもまた生じる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域下流の天然の染色体部位で起こる。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞から抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードし得る。
【0098】
哺乳動物の宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞において、高レベルのタンパク質発現を指向するウイルス性エレメント(例えば、レトロウイルス性LTR由来のプロモーターおよびエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよびエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターおよびエンハンサー(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のプロモーターおよびエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ由来のプロモーターおよびエンハンサーならびに強力な哺乳動物プロモーター(例えば、天然の免疫グロブリンプロモーターおよびアクチンプロモーター))を含む。ウイルス性調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる同第4,510,245号およびSchaffnerらによる同第4,968,615号を参照のこと。
【0099】
組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子を保有し得る。この選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照のこと)。例えば、代表的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞で、薬剤(例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセート)に対する耐性をもたらす。好ましい選択マーカー遺伝子としては、(メトトレキセート選択/増幅を用いるdhfr−宿主細胞における使用については)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子および(G418選択については)neo遺伝子が挙げられる。
【0100】
KIM−1ポリペプチドおよび抗KIM−1抗体をコードする核酸分子、ならびにこれらの核酸分子を含むベクターは、適した宿主細胞の形質転換のために使用され得る。哺乳動物細胞内への外来性DNAの導入のための方法は、当該分野において周知であり、この方法としては、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内ポリヌクレオチドの封入、および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられる。さらに、核酸分子は、ウイルスベクターにより哺乳動物内へ導入され得る。
【0101】
宿主細胞の形質導入は、使用されるベクターおよび宿主細胞に適した従来の方法によって成し遂げられ得る。原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーション法および塩処理法が使用され得る(Cohenら,1972,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110−2114)。脊椎動物細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーション法、カチオン性脂質または塩処理法が使用され得る。例えば、Grahamら,1973,Virology 52:456−467;Wiglerら,1979,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:1373−1376)を参照のこと。
【0102】
宿主細胞は、原核生物か、または真核生物であり得る。好ましい真核生物宿主細胞としては、酵母および哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。有用な真核宿主細胞の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC受託番号CCL61)、NIH Swissマウス胚細胞NIH−3T3(ATCC受託番号CRL1658)、およびベビーハムスター腎臓細胞(BHK)が挙げられる。発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該分野で公知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から市販される多くの不死化細胞株を含む。これらとしては、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝臓癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および多くの他の細胞株が挙げられる。
【0103】
産生細胞株からのポリペプチドの発現は、公知技術を利用して向上され得る。例えば、グルタミン合成酵素(GS)系は、通常、特定の条件下で発現を向上するために使用される。例えば、欧州特許第0216846号、同第0256055号、および同0323997号ならびに欧州特許出願第89303964.4号を参照のこと。
【0104】
(処方物)
KIM−1ポリペプチド、抗KIM−1抗体、または抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントを含有する組成物は、適した薬学的に受容可能なキャリアを含有し得る。例えば、これらの組成物は、作用部位への送達のために設計された調製物内への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および/または助剤を含有し得る。非経口投与のための適した処方物としては、水溶性形態における活性化合物の水溶液(例えば、水溶性塩)を含む。さらに、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒または親油性ビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)が挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増大させる物質を含み得、これらの物質は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含む。必要に応じて、懸濁液はまた、安定剤を含み得る。リポソームはまた、本発明の分子を細胞または間質領域内へ封入するために使用され得る。例示的な薬学的に受容可能なキャリアとしては、生理学的に適合性溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)を含有する。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に受容可能な物質(例えば、潤滑性物質または少量の補助物質(例えば、潤滑剤または乳化剤)、防腐剤または緩衝液を含み、これらは活性成分の有効期間または有効性を向上させる。
【0105】
本発明の組成物は、種々の形態であり得、この形態としては、例えば、液体の、半流動性のおよび固形の投薬形態(例えば、液体溶液(例えば、注射液および輸液)、分散系または懸濁液)が挙げられる。好ましい形態は、投与の意図する様態および治療用途に依存する。いくつかの実施形態において、組成物は、注射液または輸液(例えば、ヒトの受動免疫のために使用されるものに類似した組成物)の形態である。
【0106】
この組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散系、リポソーム、または高薬剤濃度に適した他の規則構造として処方され得る。滅菌注射液は、必要量の活性成分を、適切な上記で列挙された成分の一つまたは組み合わせを有する溶媒内へ組み込み、必要な場合は続いて濾過滅菌することによって調製され得る。概して、分散系は、活性成分を、基本分散媒および上記で列挙された成分由来の必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル内へ組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、この事前に濾過滅菌溶液から、活性成分ならびに任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥であり、溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーディングの使用、分散の場合における必要な特定サイズの維持および界面活性物質の使用によって維持され得る。注射組成物の長期吸収は、組成物内に吸収を遅延する薬剤(例えば、モノステアレート塩およびゲラチン)を含有することによって、もたらされ得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、活性成分は、制御開放処方またはデバイスを用いて処方される。このような処方およびデバイスの例としては、移植、経皮貼布、およびマイクロカプセル化送達システムが挙げられる。生分解性、かつ生体適合性ポリマーが使用される(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)。このような処方およびデバイスの調製のための方法は、当該分野において公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,1978,J.R.Robinson,(編),Marcel Dekker,Inc.,New Yorkを参照のこと。
【0108】
補充性活性化合物もまた、組成物内に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、KIM−1ポリペプチド、抗KIM−1抗体またはこのフラグメントは、第二の免疫調節剤(例えば、BAFF−R−Ig、LTβ−R−Ig、CTLA4−Ig、抗CD40L、または抗CD20モノクローナル抗体)とともに同時投与される。
【0109】
投薬レジメンは、最適の所望の反応を提供するように調整され得る。例えば、単回の大量瞬時投与(bolus)は、投与されてもよく、数回の分割用量は、時間をかけて投与されてもよく、また用量は、治療状況の緊急性によって示されるように、比例的に減少しても、上昇してもよい。投与の容易さのための投薬単位形態において非経口的組成物を処方することは都合がよく、そして本明細書中使用される場合の投薬単位形態の均一性は、処置される哺乳動物の被験体についての単回投薬として適した物理的に不連続の単位を意味し、各単位は必要とされる薬学的キャリアに関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の所定量を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、KIM−1ポリペプチドのための治療的有効用量は、0.1〜100mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態おいては、治療的有効用量は、0.5〜50mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態おいては、治療的有効用量は、1.0〜10mg/kg(例えば、約5mg/kg)の範囲である。治療的有効用量の決定はまた、インビトロで、適切な(治療的)時間にわたって、標的細胞(変性剤に依存性のKIM−1陽性細胞またはKIM−1レセプター陽性細胞)をコーティングするために必要な変性剤の濃度を測定するインビトロ実験を行うことによって評価され得る。FACSおよびELISAレセプター−リガンド結合アッセイは、細胞コーティング反応をモニターするために使用され得る。このようなインビトロでの結合アッセイの結果に基づき、適した変性剤濃度の範囲が選択され得る。
【0111】
本発明の分子は、薬学的に受容可能な無毒の賦形剤またはキャリアとの混合によって薬学的組成物内に処方され得る。このような組成物は、特に、液体溶液または液体懸濁液の形態で、非経口投与での使用のために調製され得る。この組成物は、単位用量形態で投与され得、そして任意の適した方法によって調製され得る。このような方法は、当該分野において公知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,Easton,PA 1980)を参照のこと。
【0112】
液体投薬形態としては、薬学的に受容可能な溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、および懸濁液が挙げられる。活性化合物に加えて、この液体投薬形態は、水、エチルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含む不活性成分を含み得る。
【0113】
注射用貯蔵処方物は、生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸−ポリ糖脂質)において、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製され得る。ポリマーに対する薬剤の比、使用されるポリマーの性質に依存して、薬剤放出の速度は、制御され得る。他の例示的な生分解性ポリマーとしては、ポリオルトエステルおよびポリ無水物が挙げられる。貯蔵注射用処方物はまた、薬剤をリポソーム、または体組織に適合性のマイクロエマルジョン内に閉じ込めることによって調製され得る。
【実施例】
【0114】
本発明は、以下の実施例により示される。これらの実施例は、例示的な目的のためだけに提供されるのであって、決して本発明の範囲または内容を限定するものとして解釈すべきでない。
【0115】
(実施例1:ヒトKIM−1細胞外ドメイン−Fc構築物(pHI105))
ヒトKIM−1の細胞外ドメイン(残基1〜290)をヒトIgG1(ヒンジ、CH2、CH3)Fc部分に融合し、そしてpEAG347(Biogen哺乳動物発現プラスミド)内へクローン化した。このプラスミドは、構成的発現のための直列型プロモーターおよび安定的に発現する細胞株のメトトレキセート選択のためのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を含んでいた。このコードされた融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0116】
【表1】
このシグナル配列を下線で示す。Fcヒンジを囲みで示す。
【0117】
(実施例2:ヒトKIM1ECDmucinΔ−Fc(pHI100))
ヒトIgG1(ヒンジ、CH2、CH3)のFc部分に融合したヒトKIM−1の残基1〜129をコードするDNAをpEAG347(構成的発現のための直列型プロモーターおよび安定的に発現する細胞株のメトトレキセート選択のためのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子を含むBiogen哺乳動物発現プラスミド)内にクローン化した。このコードされた融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0118】
【表2】
(実施例3:ヒトKIM1ECD−6×His(pVB602))
ヒトKIM−1の細胞外ドメイン(残基1〜290)を、6個のヒスチジン残基の繰り返しを含む短いC末端ペプチド[VEHHHHHH]に融合し、pCA125(哺乳動物細胞における一過性構成的発現のためのCMVプロモーターを含むBIOGEN哺乳動物発現プラスミド)内にクローン化した。このコードされた融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下のとおりであった:
【0119】
【表3】
(実施例4:マウスKIM−1−Fc融合物)
NotI部位およびSalI部位に隣接したマウスkim−1のPCR増幅外部ドメインを(SalI−NotIフラグメントとしてEAG409から単離した)ヒトIgG1Fcに融合し、Ebna293細胞発現ベクターCH269内にクローン化し(構築物PEM073−6)、およびCHO細胞発現ベクターpV90内にクローン化した(構築物PEM078−1)。SalI部位は、kim1とFcとの間の接合部にある。融合タンパク質についてのORFの得られるヌクレオチド配列は、以下のとおりであった(大文字はSalI部位):
【0120】
【表4】
mukim−1外部ドメイン−ヒトFcの翻訳配列は、以下のとおりであった。SalIにより生じる二つの接合アミノ酸を太字で示す:
【0121】
【表5】
(実施例5:マウスSRBCモデルにおけるKIM−1−Fc融合物)
ヒツジ赤血球(SRBC)に対するげっ歯類の免疫応答は、コンピテントT細胞のAPCおよびB細胞との相互作用に依存する。従って、抗SRBC反応は、リンパ球およびAPC上の細胞性タンパク質が免疫応答の発生および成熟に果たす役割を検査するための有用なモデルである。マウスにおける抗SRBC反応は、IgMおよび種々のIgGアイソタイプ(高レベルのIgG1アイソタイプを含み、同様に見られるかなりのレベルのIgG2aおよびIgG2bも伴う)の産生からなる。IgG1は、Th2媒介性免疫応答によって誘導されるアイソタイプであると考えられ、Th2媒介性免疫応答は、Il−4、Il−5、およびIl−13のようなサイトカインの発現によって特徴付けられる。IgG2aアイソタイプおよびIgG2bアイソタイプは、Th1誘導性)免疫応答により特徴的なものであり、Il−12の発現と関連がある。最後に、IgG3アイソタイプは、T細胞非依存性免疫応答に典型的なものである。4つの全てのアイソタイプは抗SRBC反応において表される。
【0122】
抗SRBC反応の経過を、T細胞におけるKIM−1依存性活性を妨害するようにマウスKIM−1−Ig融合タンパク質(mKIM−1−Ig)で処置したマウスにおいて追った。マウスを抗原投与前日(D−1)に150μgs/マウスmKIM−1−Igを用いて処置し、0日目に100μlのPBS中10%溶液のSRBC(Colorado Serum Company)で抗原投与し、次いで3日目および6日目に150μgのmKIM−1−Igを用いて再度処理した。マウスを、免疫後、7日目、14日目、21日目、および30日目に血清サンプル用に採血し、抗SRBC抗体力価を、赤血球凝集アッセイを用いて測定した。このアッセイは、(IgMについて)抗体の五量体構造または(Igクラスについて)第三の種の抗イディオタイプ抗血清の存在に基づきSRBCを架橋し、そしてクラスター形成する(「凝集」(agglutinate))抗体の能力に依存した。
【0123】
簡潔には、プロトコールは以下のとおりであった。血清サンプルを、測定するアイソタイプに依存して適切なように(1:15〜1:200)希釈し、次いで反応の日に、Corning(Costar(登録商標)#3795)から購入した96ウェルアッセイプレートを用いて1:2工程で力価測定した。IgMアッセイについては、この血清サンプルを二連でアッセイした。グルコース−PBS(G−PBS)中の25μlの10%SRBCをウェルに加え、そして凝集反応を、37℃1時間にわたり展開した。Igアッセイについて、血清サンプルを三連でプレート内にロードし、希釈した。G−PBS中に希釈した25μlの1%2−メルカプトエタノール(Sigma)を各血清サンプルの一連に加え、次いでこのプレートを37℃で30分にわたりインキュベートした。これは、IgM五量体を一緒に保持する全てのジスルフィド結合を破壊し、従って任意のIgM骨格をなくすためになされた。次いで25μlのG−PBS中10%SRBCおよび25μlの抗イディオタイプ抗血清(ヤギ抗マウスのIgG1、IgG2a、IgG2b、またはIgG3(全てSouthern Biotechnology Associatesより))のG−PBS中1:250希釈を各三連の初めの2連に加え、サブタイプが存在する抗SRBC IgGを架橋した。各三連の第三のウェルを未架橋のままにし、2−メルカプトエタノール処理を逃れ得た任意の残存IgM活性についてのコントロールとして供した。このプレートを37℃で1時間にわたりインキュベートした。全てのアッセイプレートを4℃一晩放置し、記録および撮影する前に生じた赤血球凝集を安定化した。全ての力価を陽性の赤血球凝集読み出し(readout)を生じる最後の希釈として記録した。
【0124】
mKIM−1−Ig処理の抗SRBC反応に対する効果をSRBCで抗原投与していないか、またはSRBCで抗原投与したが、抗CD40L、非特異的ポリクローナルhIgG、もしくはPBSで投与したマウスのコントロール群と比較した。非抗原投与および抗CD40L処置したマウスは、予想どおり抗SRBC反応を有さなかった。SRBCが与えられたマウスおよびPBSまたはhIgGのいずれかで投与されたマウスは試験されたIgの全てのクラスに対する強い抗体力価を有した。対照的にmKIM−1−Igで処置されたマウスは、IgG1抗SRBCアイソタイプにおいて非常に著しいかつ特異的欠陥を有した。Balb/c系統のマウスを使用した2つの非依存性実験において、著しく欠陥的レベルのIgG1抗SBRCを検出した(図3および図4)。抗SRBC反応の誘導7日後、IgG1力価は、コントロール処置マウスよりmKIM−1−Ig処置マウスにおいて平均して70%低かった。抗SRBC反応の誘導14日後まで、IgG1力価は、85%を超えるまで減少した。同様の欠陥は、C57Bl/6系統のマウスを用いた1つの実験において観察された(図5)。Balb/cマウスおよびC57Bl/6マウスを、これらの免疫応答において異なる傾向を有し、Balb/cマウスは、主にTh2媒介性応答を有するとして特徴づけられ、C57Bl/6マウスでは、Th1媒介性応答を有すると考えられた。従って、これらのマウス系統において、マウスKIM−1−Ig融合タンパク質のIgG1アイソタイプ産生をブロックする能力により、系統における固有のTh傾向は無効にされた。驚いたことに、mKIM−1−Ig処置の効果は、第二の応答まで拡大し、そのため、IgG1は、後のSRBC抗原投与に応答して、記憶B細胞によって産生されなかった(図6および図7)。
【0125】
(実施例6:移植片対宿主病(GVHD))
GVHDは、F1への親の細胞移植レジメンを使用して、マウスでモデルとされる。マウスのDBA2系統由来の脾細胞を(DBA2×C57Bl/6)F1マウス(B6D2F1と呼ばれる)にivで注射する。この注射した脾細胞は移植片を構成し、そしてDBA2マウスは、その移植片のドナーである。移植片を受けるF1マウスは、宿主である。移植片に存在するドナーT細胞は、宿主細胞上の半分のMHCマーカー(ハプロタイプ)を外来として認識する。なぜなら、他(C57Bl/6親)に由来するからである。これは、宿主が生じるGVHDに対するドナーT細胞応答を誘導する。DBA/2親の脾細胞をB6D2F1宿主内に注射する場合、慢性GVHDが発生する。対照的に、C57Bl/6脾細胞をB6D2F1宿主内に注射する場合、急性GVHDが発生する。根底にあるどの機構が、これらの2種の注射プロトコールを使用する、異なる疾患結果の原因であるかは、不明のままであるが、DBA/2脾細胞移植片内に含まれる細胞によって発現されるサイトカインが慢性GVHDの発生を支持し、一方でC57Bl/6脾細胞移植片内に含まれる細胞によって発現されるサイトカインは急性GVHDの発生を支持すると考えられている。T細胞の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞:APC)との相互作用を妨害する試薬は、急性と慢性の両方のGVHDを効率的にブロックする。
【0126】
KIM−1アンタゴニストは、慢性GVHDのマウスモデルにおける免疫学的反応の発達を改変する。慢性GVHDをブロックする能力としては、B細胞活性化およびB細胞増殖に対する効果、ならびに分泌IgGの産生に対する効果が挙げられる。マウスをKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤、コントロール処置物で腹腔内に(ip)処置するか、未処置のままにする。4時間後、マウスにDBA/2マウスから単離した1×108個の脾細胞を、静脈内(iv)に0.5mlの注射を与える。このiv注射されたDBA/2の脾細胞は、同種移植片を構成していた。移植の2日後、4日後、および6日後に、マウスをKIM−1アンタゴニストもしくは改変薬剤、またはコントロール処置物で再度処置した。マウスのさらなるコントロール群に、1×108個のB6D2F1脾細胞を受けさせたが、この脾細胞によってB6D2F1レシピエントにおける疾患は誘導できなかった。あるいは、移植したB6D2F1マウスおよび未処置のB6D2F1マウスをコントロールとして使用する。移植の14日後、このマウスを屠殺し、疾患の証拠ために検査する。
【0127】
未処置の移植片レシピエントマウスは、慢性GVHDの発生を示す種々の症状を発症する。脾腫大すなわち脾臓の拡大は、ドナーT細胞および宿主B細胞が活性化され、そして細胞数の劇的な増加とともにポリクローナル拡大を起こすことを証明する。サブセットのB細胞上のCD69のような細胞表面タンパク質の出現は、B細胞の活性化を示す。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞由来のL−セレクチン分子の減少は、T細胞の活性化の証拠である。血清中へかまたはインビトロでの細胞培養アッセイにおけるIg分子(例えば、IgGクラス、IgAクラス、およびIgEクラス)の分泌は、B細胞が活性化し、そしてB細胞のIgクラスをスイッチング(switch)したことを示す。この点に関して、血清中またはインビトロでの細胞培養アッセイにおける抗自己Igの出現は、産生されているIgが不適切な自己抗原認識を有することを示す。最終的に、生存率を異なる処置レジメンの結果として測定し得る。KIM−1アンタゴニスト(例えば、KIM−1−Ig)を用いる処置は、脾腫大の程度の縮小、リンパ球集団のポリクローナル拡大における縮小、リンパ球活性化を示す細胞表面マーカーの出現または消滅における低下、Ig分泌の低下、および/または死亡率における低下によって示されるような、慢性GVHDの発生のこれらの読み出しを、ブロックする。
【0128】
本発明者らは、コントロールマウスを未処置の同種移植片レシピエントマウスと比較して、GVHDの際の脾腫大、B細胞活性化、およびのIg分泌の程度を検査する。抗CD40L mAb MR1をこれらの実施例において陽性コントロールとして使用する。なぜならCD40L/CD40相互作用をブロックすることは、慢性GVHDの発生を妨害する効率的手段であることが以前に示されているからである(Durieら,1994,J.Clin.Invest.94:1333−1338)。KIM−1アンタゴニストを用いた処置によって影響の及んだ細胞集団を研究するために、移植片注射して14日後のレシピエントマウスから採取した脾細胞についてFACS分析を行う。1群当たり3〜4匹のマウスからの脾臓細胞を単離し、プールする。レシピエントB細胞の活性化は、慢性GVHDの決定的な特徴である。慢性GVHDを起こすマウスにおいて、B200+ B細胞の少ないが容易に分かる集団は、活性化マーカーCD69を発現する。従って、CD69発現を疾患の程度の指標として使用する。異なる処置群からのマウスの脾細胞の培養物における全IgGをまた決定する。なぜなら、B細胞によるCD69の発現は、これらの活性化状態を示すからである。
【0129】
マウスモデルにおいて、上記の疾患の発生は、Th2サイトカインIl−4に依存し、そして抗Il−4 mAbで処置することによってブロックされ得る。このような処置は、宿主B細胞の拡大および結合する高Ig産生をブロックする。GVHDの発生は、多くの方法において結合される。ドナーT細胞集団および宿主B細胞集団の拡大を脾臓指標(index)によって測定し、この脾臓指標は、コントロール(非疾患)マウスに対して標準化された、体重に対する脾臓重量の比である。疾患マウスにおけるB細胞の活性化をB細胞活性化マーカーの分析を利用して測定する。最終的に、B細胞活性化の効果は、循環中(例えば、血清中)の、または疾患誘導の数週間後に採取された宿主脾細胞の培養によって産生されるIgのレベルにおいて見られる。疾患動物の循環Igは、抗自己抗体を含む。最終的に、疾患動物は、蓄積したIg沈着による腎臓不全および他の器官不全を起こし、従って、生存率は、疾患活性に関係のある基準である。
【0130】
(実施例7:SCID−huマウスモデル)
SCID−huマウスにおいて、ヒト免疫応答を研究することが、可能である。例えば、SCIDマウスに2〜5×107個のヒト末梢血単核細胞を腹腔内に注射すると、これらの細胞は、しばらくの間、腸に常駐し、かつ機能し、抗原投与に対して反応する。NOD−SCIDマウスをヒトPBLで回復(reconstitute)させると、これらのマウスは、脾臓へのヒト細胞(T、B、APC)の接種のさらなる利点を有し、この脾臓では、全身性の免疫応答が支持され得る。適切モデルは、Berneyら,2001,Transplantation 72:133−140において議論される。免疫応答の他のモデルは、SCID/beigeマウスを使用し、免疫応答のための支持を提供するためのPBLまたは胎児腸間膜リンパ節を含む胎児細胞の同時移植を含む(Carballidoら,2000,Nat.Med.6:103−106)。
【0131】
SCID−huまたはNOD−SCID−huマウスをヒト破傷風(tetanus)トキソイド(TT)を免疫したヒトドナーから単離した末梢血単核細胞(PBMC)で回復させる。そのようにして回復させたSCID−huマウスは、種々の区画(腹膜を含む)に常駐するヒト細胞を有する。そのようにして回復させたNOD−SCID−huマウスは、これらの二次リンパ器官(例えば、脾臓)内に含まれる種々の区画において常駐するヒトT細胞を有する。TT、もしくはTTの抗原性部分、またはリポソーム、もしくはTTを含むリポソームにカップリングした抗原を用いる免疫化によって、一次免疫応答を、これらの回復させたマウスにおいて誘導する。そのようにして回復させ、抗原投与したマウスは、抗原(例えば、NP、DNP、KLH、OVA、HIVgpl20またはそれらの部分、メラノーマ関連抗原GD2、およびヒツジムチンは、多くの例のうちのいくつかにすぎない)に対する高い力価(>1:1000)のIg応答を生じる。いくつかの例は、Ifversonら,1995,Immunology 84:111−116に示される。そのようにして回復させると、次いでKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いて処置したマウスは、抗原投与に対する高い力価を示さない。
【0132】
別の方法論において、SCID−huマウスを胎児ヒトの骨、胸腺、皮膚断片、および腸間膜リンパ節(MLN)を用いて回復させた。MLNの存在は、TT免疫化に対する強い免疫応答を支持するために十分である(そして、全てのドナー組織は胎児であることから、これは、厳密に一次免疫応答である)。このモデルは、Carballidoら,2000,Nat.Med.6:103−106において詳細に議論される。TT免疫化は、ヒトリンパ球の増殖、および活性化、ならびにB細胞によるIgM分泌およびIgG分泌を引き起こす。KIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いてそのようにして回復させたSCIDマウスの処置は、ヒトリンパ球の増殖および活性化、ならびにTT抗原投与の際の免疫グロブリンの分泌を低下させる。
【0133】
これらのモデルまたは他の同様のNOD−SCID−huモデルもしくはSCID−huモデルの改変において、二次免疫応答を、例えば遅延型過敏症(DTH)の疾患設定において測定する。この実施例において、TT抗原投与、TT−免疫個体由来のPBMCを用いて回復させたSCIDマウスまたはNOD−SCIDマウスの足蹠に与え、反応における足蹠の腫脹を、測定する。DTH反応は、回復させたマウスにおける循環中のヒト記憶T細胞の存在に依存する(rely on)。このようなモデルもまた、「トランスビボ(trans vivo)」モデルにおいてのように、移植患者におけるドナー組織の起こり得る拒絶を検出するために使用され得る。このタイプのアプローチの例は、Carrodeguasら,1999,Hum.Immunol.60:640−651において議論される。KIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いて、そのようにして回復させたマウスの処置により、DTH反応を防ぐ。SCIDマウスにおけるヒト疾患反応の他のモデルは、マウスにおける自己免疫患者由来の脾細胞またはPBMCの移動を含み、それによって、これらのモデルは、疾患の免疫グロブリンおよび他のマーカーの発現を継続する(MartinoおよびGrinaldim 1997,In:Immunology Methods Manual,第3巻Lefkovits(編)Academic Press,San Diegoを参照のこと)。患者由来の自己免疫細胞の移動前のKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いるこれらのマウスの処置により、自己免疫病理学的な免疫グロブリンまたは他のマーカーの発現を低下する。
【0134】
SCIDマウスを利用する非常に価値ある方法論は、レシピエントマウスへの疾患組織の異種移植を包含する。乾癬患者またはアトピー性皮膚炎患者由来の皮膚を移動する方法は、例えば、これらの疾患の広く使用されるモデルである。アトピー性皮膚炎は、Th2媒介性細胞性免疫疾患であり、このTh2媒介性細胞性免疫疾患は、PBMCおよび皮膚の生検(biopsy)を一緒にレシピエントマウスに移動することによってSCIDマウスにおいてモデル化され得る。KIM−1アンタゴニストまたは改変物(modifier)を用いるこれらのマウスの処置は、細胞性蓄積および局所的なサイトカイン分泌(これは、皮膚移植におけるリンパ球およびエフェクター細胞(好酸球、好塩基球など)の活性化の徴候(evidence)である)を防ぐ。これは、ドナー患者における皮膚炎を予防における効力の徴候(evidence)である。
【0135】
(実施例8:アトピー性疾患の他のマウスモデル)
アレルギー、喘息、気道過感受性(AHR)、および他のアトピー性疾患の有用なモデルを、マウスにおいて使用する。例えば、アレルギー性皮膚炎症を、抗原を用いる皮膚上への感作によって誘導する。一つの例において、抗原はアルブミン(OVA)である。この感作に対するTh2応答は、皮膚における好酸球の存在、Th2サイトカインの皮膚における局所的発現、および吸入抗原に対する気道過感受性(AHR)によって示される。好酸球は、初めにKIM−1アンタゴニストまたは改変物を用いて処置されるOVA感作マウスの皮膚では存在せず、Th2サイトカインのレベルは低下する。繰り返し感作されたマウスは、OVA特異的IgEを産生し、これらの脾細胞は、OVAを用いるインビトロ刺激の後にTh2サイトカインのIL−4およびIL−5を分泌する。Th2免疫応答のこれらの読み出しは、KIM−1アンタゴニストまたは改変物を用いる処置の際にブロックされる。あるいは、マウス(例えば、BALB/cマウス)を、抗原のi.p.注射で感作し得(0日目)、次いで3週間後(1回)および4週間後(3回:26日目、27日目、28日目など)に鼻腔内での抗原を用いて再抗原投与し得る。これは、肺応答性亢進(AHR)を生じ、この肺応答性亢進(AHR)は、IL−13のようなTh2サイトカインによって媒介される。このTh2免疫応答は、KIM−1アンタゴニストまたは改変物を用いる処置の際にブロックされる。
【0136】
OVA特異的TCRトランスジェニックモデル(DO11.10)を使用して、本発明者らは、OVA特異的免疫応答を誘導し、次いでTh2 OVA特異的T細胞を未処置のレシピエントに移し、このレシピエントを、次いでOVAエアロゾルで抗原投与する。これらのマウスは、抗原特異的AHRを急速に発生する。この反応は、マウスをOVAエアロゾル抗原投与の前にKIM−1アンタゴニストまたは改変物で処理する場合に、ブロックされる。
【0137】
メタコリンエアロゾル処置は、肺への好酸球の補充を誘導し、この補充はマウスにおけるAHRを引き起こす。KIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いるマウスの処置は、AHRの発生をブロックする。
【0138】
(実施例9:コラーゲン誘導性関節炎)
関節炎のこのマウスモデルにおいて、コラーゲンを使用してT細胞媒介性のB細胞活性化および自己抗体産生(これは、関節を攻撃する)を誘発し、関節リウマチに似た状態を生じる。マウスの種々の系統において、この反応は、IgG1の高い力価によって支配される。特に、遺伝子欠損によってIl−12を欠如したマウス(Il−12ノックアウトマウス:Il−12−/−)において、IgG1力価は非常に高く、これらのAbは、関節破壊を効率的に媒介する。
【0139】
フロイント完全アジュバント中のコラーゲンを用いて以下の2箇所で経皮内に注射によってマウスを処置する:各耳に少量の送達、および肩部の間の皮膚に少量の送達。3週間後、腹腔内経路を使用して、マウスを生理食塩水中の可溶性コラーゲンで追加免疫する。1週間以内に、関節ダメージをノギスを用いて関節の膨潤を測定することおよび抗体力価を測定することによって評価する。疾患発生の過程の際のマウスの処置は、疾患スコアを寛解させる。特に、疾患開始前日の0.1〜1mg/kgのKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いる処置、続いてその後の処置は、関節膨潤の低下および免疫グロブリン力価の低下によって評価されるように、疾患発生をブロックする。これは、処置の予防投与過程である。
【0140】
誘導後および追加免疫前のKIM−1アンタゴニストを用いる処置は、関節膨潤の低下および免疫グロブリン力価の低下によって評価されることから、疾患発生を寛解させる。これは、処置の治療的過程である。追加免疫注射後のKIM−1アンタゴニストまたは改変薬剤を用いる処置は、関節膨潤の低下および免疫グロブリン力価の低下によって評価されるように、疾患発生をブロックする。これは、処置の治療的過程である。
【0141】
(実施例10:ループスのマウスモデル)
NZB/Wモデルにおいて、NZB系統由来のマウスをNZW系統由来のマウスと交配し、そしてこのF1子孫は、経時的にループス様疾患を発生する。疾患の徴候としては、自己抗体およびリウマチ因子の産生が挙げられる。腎臓におけるIg沈着は、大量の産生されるIgおよびRFに起因し、尿中のタンパク尿によって測定され得るように、経時的に腎臓機能の低下をもたらす。
【0142】
NZB/W F1子孫は、約5ヵ月齢で、その時点で中程度のタンパク尿スコア(PUは2)を伴い、疾患の症状を表し始める。9ヵ月齢までに、このマウスは、最大PU=4に達し、そして腎臓不全の結果として疾患になり(succomb)始める。SNF1(SWR×NZB F1交配)と呼ばれる別のモデルも同様の動態を伴う。
【0143】
マウスを、疾患開始の前日に0.1〜1mg/kgのKIM−1アンタゴニストで処置し、続いてその後に処置する。これは、PUスコア、および/または血清中免疫グロブリンの力価を測定すること、および/または脾臓における過形成の免疫組織化学的分析、および/または腎臓における糸球体の構造での免疫複合体沈着および免疫複合体変化の免疫組織化学的分析によって測定されるように、疾患発生をブロックする。
【0144】
疾患誘導後の(例えば、5ヵ月で、しかし重症の疾患(すなわちPU=2〜3)の前の)KIM−1アンタゴニストを用いる処置は、疾患発生寛解させるか、または疾患ダメージを回復させる。これは、PUスコア、および/または血清中の免疫グロブリンの力価を測定すること、および/または脾臓における過形成の免疫組織化学的分析、および/または腎臓における糸球体の構造での免疫複合体沈着および免疫複合体変化の免疫組織化学的分析によって測定され得る。
【0145】
疾患が重症(PU=3〜4)になった後のKIM−1アンタゴニストを用いる処置は、疾患発生寛解させるか、または疾患ダメージを回復させる。これは、PUスコア、および/または血清中の免疫グロブリンの力価を測定すること、および/または脾臓における過形成の免疫組織化学的分析、および/または腎臓における糸球体の構造での免疫複合体沈着および免疫複合体変化の免疫組織化学的分析によって測定され得る。
【0146】
(実施例11:混合リンパ球反応(MLR))
(マウスMLRアッセイおよびKIM−1の拮抗作用)
混合リンパ球反応(MLR)を、以下のとおり行った:脾臓を、滅菌技術を使用してC57Bl6マウスおよびBalb/cマウスから単離し、リンパ球を放出するため粗く挽き、次いで赤血球を溶解するため低張液(Gey’s溶液)を用いて処理した。残った細胞を細胞ストレーナー(BD Falcon,Bedford,MA USA)に通すことによって残留組織から分離し、そして、次いで滅菌かつ発熱物質なしのPBSで洗浄し、そして細胞をペレット化するために遠心した。これらの細胞をPBS溶液に2度目の再懸濁し、再度ペレット化し、次いで、完全RPMI培地中に再懸濁した。これらの細胞をカウントし、必要に応じて希釈した。Balb/cリンパ球を刺激細胞として使用するゆえに、これらの細胞を、使用前に3000RADで照射した。
【0147】
アッセイを確立するために、刺激細胞を、応答細胞の数(2×105/ウェル)に比例した種々の比でウェルに加えた。培地を、示すように、20μg/mlでラット抗KIM−1抗体、またはKIM−1−Ig融合タンパク質およびコントロール−Ig融合タンパク質で補填した。培養を3つの同一プレートでセットアップし、各実験条件を、1プレートあたり3ウェルで表した。1枚のプレートを使用して、MTSアッセイ(CellTiter 96,Promega,Madison,WI USA)を使用して細胞増殖データを出した。その他のプレートを使用して、サイトカイン分析用の上清サンプルを回収した。ELISA(Pierce Endogen,Rockford,IL USA)を使用して、培養上清中のmIFNγ、mTNF、およびmIl−2のレベルを測定した。増殖アッセイおよびELISAから生じた値についての標準誤差は、10%未満であり、図から省略している。IFNγについてのポジティブコントロール値からの大きなずれは、注目されるが、一方で培養中のIl−2およびTNFのレベルは、ポジティブコントロールと処置群との間に有意に差はなかった。従って、Il−2データおよびTNFデータは省略されている;IFNγおよび細胞増殖についてのデータは、それぞれ代表的実験について示す。
【0148】
ラット抗マウスKIM−1 mAbの3A2.5および1H9.11を使用するMLR培養の処理により、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した(図8)。この効果は、上清中に分泌されたIl−2またはTNFのレベルにおける低下は観察されなかったことから、IFNγに対して特異的であった。この効果は、細胞増殖アッセイが、培養中の生細胞の数は同程度であったことを示したことから(図9)、これらの培養における細胞数の減少によるものではなかった。
【0149】
KIM−1−Ig融合タンパク質を使用するMLR培養の処理により、上清中に分泌されたIFNγのレベルは有意に低下した(図10)。この効果は、上清中に分泌されたIl−2またはTNFのレベルにおける低下は注目されなかったことから(データは示さず)、IFNγに対して特異的であった。この効果は、細胞増殖アッセイが、KIM−1−Ig融合タンパク質で処理した培養中の生細胞の数が未処理のコントロールコントロールに非常に近かったことを示したことから(図11)、これらの培養における細胞数の減少によるものではなかった。
【0150】
(ヒトMLRアッセイおよびKIM−1の拮抗作用)
混合リンパ球反応(MLR)を、以下のとおり行った:末梢血単核細胞を、フィコール(Ficoll)勾配遠心を使用して、健常なヒトのドナーから採取した全血から単離した。次いでこの細胞を滅菌かつ発熱物質なしのPBSで洗浄し、そして遠心して細胞をペレット化した。これらの細胞をPBS溶液に2度目の再懸濁し、再度ペレット化し、次いで、完全RPMI培地中に再懸濁した。これらの細胞をカウントし、必要に応じて希釈した。JY細胞(ATCC,Bethesda,MD USA)を刺激細胞として使用するゆえに、これらの細胞を、使用前に10000RADで照射した。
【0151】
アッセイを確立するために、刺激細胞を、応答細胞の数(2×105/ウェル)に比例した種々の比でウェルに加えた。培地を、示されるように20μg/mlでマウス抗KIM−1抗体で補填した。培養を3つの同一プレートでセットアップし、各実験条件を、1プレートあたり3ウェルで表した。1枚のプレートを使用して、MTSアッセイ(CellTiter 96,Promega,Madison,WI USA)を使用して細胞増殖データを出した。その他のプレートを使用してサイトカイン分析用の上清サンプルを回収した。ELISA(Pierce Endogen,Rockford,IL USAまたはR+D Systems,Minneapolis,MN USA)を使用して、培養上清中のhIFNγ、hTNF、およびhIl−2のレベルを測定した。増殖アッセイおよびELISAから生じた値についての標準誤差は、10%未満であり、図から省略している。IFNγについてのポジティブコントロール値からの大きなずれは、観察されるが、一方で培養中のIl−2およびTNFのレベルは、ポジティブコントロールと処置群との間に有意に差はなかった。TNFデータは省略されている;Il−2、IFNγおよび細胞増殖についてのデータは、それぞれ代表的実験について示す。
【0152】
マウス抗ヒトKIM−1 mAbのAUF1およびAKG7を使用するMLR培養の処理により、上清中に分泌したIFNγのレベルは有意に低下した(図12A)。この効果は、上清中に分泌したIl−2またはTNFのレベルにおける低下が注目されなかったことから(図12B)、IFNγに対して特異的であった。この効果は、細胞増殖アッセイが培養中の生細胞の数は同程度であったことを示したことから(図13)、これらの培養における細胞数の減少によるものではなかった。
【0153】
(実施例12:マウス炎症性腸疾患(IBD)モデル)
実験マウスにおけるIBDのモデルにおける症状の過程または重症度に影響を及ぼす可溶型形態のKIM−1−Ig融合タンパク質の能力。このモデルにおいて、DSSを、(炎症の発生を引き起こす)大腸(結腸(colon))を慢性的に刺激した。炎症誘発性メディエータ(例えば、IFNγ、TNF、およびIl−12)は、マウスモデルおよびヒト患者の両方において、IBDの発生および重症度にとって重要であることは公知であった(Eggerら,2000,Digestion 62:240−248;Monteleoneら,2000,Ann.Med.32:552−560;Boumaら,2003,Nat.Rev.Immunol.3:521−533)。上記に記載するように、MLRデータは、KIM−1調節が炎症誘発性メディエータ(例えば、IFNγ)の産生に影響し得ることを示唆している。従って、KIM−1改変薬剤をインビボにおいて試験した。KIM−1−Ig融合タンパク質が、一以上のリガンドと細胞(例えば、活性化リンパ球または他の免疫細胞)上に発現したKIM−1との相互作用を妨害することによって作用しているという仮説が立てられた。
【0154】
IBDを、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルを使用してマウスにおいて誘導した(Copperら,1993,Lab.Invest.69:238−249)。滅菌蒸留水中4.5%DSS(ICN Biomedicals,Aurora OH USA)の溶液を飲用源として提供した。マウスを、DSSを導入する直前に体重測定し、その後、毎日体重測定した。またマウスを、下痢の程度について(1:柔らかいペレット、2:緩いペレット、3:明白に流体糞便、4:ひどい失調)およびColoScreenスライド(Helena Labs,Beaumont TX USA)を使用して糞便中の血液の存在について(0:なし、1:血液)記録した。少ないが、検出可能な量の血液に、0.5の中間スコアを与えた。0日目、2日目、および5日目に、200μgのKIM−1−Ig融合タンパク質またはポリクローナルhIgGコントロール(SandImmune,Sandoz,Geneva Switzerland)を用いてipでマウスに投与した。8日目に、マウスからDSS水を取り除き、正常の飲用水を与えた。体重および臨床スコアについてのモニタリングを12日目(この日の時間に実験が終了した)まで継続した。
【0155】
IBDの誘導局面の間(0日目、2日目および5日目)のマウスの処置により、8日目まで累積的体重減少および疾患スコアに対する有意な影響が生じた。従って、マウスからDSSを取り除き、正常飲用水に戻し、これらの回復をモニターした。0日目、2日目および5日目にKIM−1−Ig融合タンパク質を受けたマウスは、体重減少の程度(図14)および臨床スコア(下痢および出血;図15A)によって示されるように、11日目には、一貫してより健康であった(回復に3日)。KIM−1−Ig処置した同齢集団におけるずっと少ないマウスは、糞便に血液が存在した(図15B)。
【0156】
これらのデータは、インビボにおけるKIM−1調節が急性炎症性状態(例えば、DSS後に腸粘膜へのダメージを示す)において防御効果を有することを示唆した。これらの結果は、KIM−1アンタゴニストが他の急性炎症性状態または慢性炎症性状態(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬および膵炎)において有効であることを示唆した。
【0157】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における免疫応答に関与するT細胞と第二の細胞との間のシグナル伝達を阻害する方法であって、以下:
(a)免疫疾患または免疫障害を有する哺乳動物および組織移植片の調整における哺乳動物からなる群から選択される哺乳動物を同定する工程;および
(b)該哺乳動物に以下:(i)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(ii)抗KIM−1抗体;ならびに(iii)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記第二の細胞が、抗原提示細胞(APC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞が、活性化T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞が、ヘルパーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘルパーT細胞が、Th2細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞が、移植されるドナーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記APCが、単球、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記APCが、自己抗原を提示している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、さらにKIM−1ムチンドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、さらに異種部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記異種部分が、免疫グロブリン(Ig)部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分および精製容易化部分からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記異種部分が、Ig部分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Ig部分が、Fc部分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、ポリマーに結合体化される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコール、糖ポリマーおよびポリペプチドからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーの平均分子量が、2,000Da〜30,000Daである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーの平均分子量が、5,000Da〜20,000Daである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーの平均分子量が、約10,000Daである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物におけるB細胞の活性化を阻害する方法であって、B細胞を、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記B細胞の活性化が、活性化T細胞によって媒介される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化T細胞が、Th2細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性化T細胞が、移植されるドナーT細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物において、一以上の抗原に対する抗体のサブセットの産生を阻害する方法であって、以下(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記抗体が、IgGクラスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、IgG1サブクラスである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
有効量の前記ポリペプチドが、前記哺乳動物の免疫系が一以上の抗原を初めて認識する30分〜30日前に、該哺乳動物に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記一以上の抗原が、アロ抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記一以上の抗原が、自己抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物の前記免疫系が、前記一以上の抗原を、自己免疫疾患の過程におけるエピトープ拡散プロセスの一部として、初めて認識する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
自己免疫疾患におけるエピロープ拡散を阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1
Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
Th2細胞媒介性疾患を処置する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項34】
前記Th2細胞媒介性疾患が、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、急速進行性半月体形成性糸球体腎炎、移植片対宿主疾患(GVHD)および全身性ループス腎炎(SLE)からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
GVHDを阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項36】
KIM−1 IgドメインおよびFc部分を含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド。
【請求項37】
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物内のリンパ球によるIFN−γの分泌を阻害する方法。
【請求項38】
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物における炎症性疾患または炎症性障害を処置する方法。
【請求項39】
前記炎症性疾患および前記炎症性障害が、炎症性腸疾患である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記炎症性疾患または前記炎症性障害が、急性炎症または慢性炎症である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ヘルパーT細胞が、Th1細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項1】
哺乳動物における免疫応答に関与するT細胞と第二の細胞との間のシグナル伝達を阻害する方法であって、以下:
(a)免疫疾患または免疫障害を有する哺乳動物および組織移植片の調整における哺乳動物からなる群から選択される哺乳動物を同定する工程;および
(b)該哺乳動物に以下:(i)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(ii)抗KIM−1抗体;ならびに(iii)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記第二の細胞が、抗原提示細胞(APC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞が、活性化T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記T細胞が、ヘルパーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘルパーT細胞が、Th2細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記T細胞が、移植されるドナーT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記APCが、単球、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記APCが、自己抗原を提示している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、さらにKIM−1ムチンドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、さらに異種部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記異種部分が、免疫グロブリン(Ig)部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分および精製容易化部分からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記異種部分が、Ig部分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Ig部分が、Fc部分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、ポリマーに結合体化される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコール、糖ポリマーおよびポリペプチドからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーの平均分子量が、2,000Da〜30,000Daである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーの平均分子量が、5,000Da〜20,000Daである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーの平均分子量が、約10,000Daである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物におけるB細胞の活性化を阻害する方法であって、B細胞を、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストと接触させる工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記B細胞の活性化が、活性化T細胞によって媒介される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化T細胞が、Th2細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性化T細胞が、移植されるドナーT細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物において、一以上の抗原に対する抗体のサブセットの産生を阻害する方法であって、以下(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記抗体が、IgGクラスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、IgG1サブクラスである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
有効量の前記ポリペプチドが、前記哺乳動物の免疫系が一以上の抗原を初めて認識する30分〜30日前に、該哺乳動物に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記一以上の抗原が、アロ抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記一以上の抗原が、自己抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物の前記免疫系が、前記一以上の抗原を、自己免疫疾患の過程におけるエピトープ拡散プロセスの一部として、初めて認識する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
自己免疫疾患におけるエピロープ拡散を阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1
Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
Th2細胞媒介性疾患を処置する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項34】
前記Th2細胞媒介性疾患が、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ヴェグナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、急速進行性半月体形成性糸球体腎炎、移植片対宿主疾患(GVHD)および全身性ループス腎炎(SLE)からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
GVHDを阻害する方法であって、以下:(a)KIM−1 Igドメインを含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド;(b)抗KIM−1抗体;ならびに(c)抗KIM−1抗体の抗原結合性フラグメントからなる群から選択される有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項36】
KIM−1 IgドメインおよびFc部分を含み、かつ膜貫通ドメインおよびKIM−1細胞質ドメインを欠くポリペプチド。
【請求項37】
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物内のリンパ球によるIFN−γの分泌を阻害する方法。
【請求項38】
哺乳動物に有効量のKIM−1アンタゴニストを投与する工程を包含する、該哺乳動物における炎症性疾患または炎症性障害を処置する方法。
【請求項39】
前記炎症性疾患および前記炎症性障害が、炎症性腸疾患である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記炎症性疾患または前記炎症性障害が、急性炎症または慢性炎症である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記ヘルパーT細胞が、Th1細胞である、請求項4に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−280728(P2010−280728A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211426(P2010−211426)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2004−565717(P2004−565717)の分割
【原出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2004−565717(P2004−565717)の分割
【原出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
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