説明

L−リジン生産能の向上したコリネバクテリウム属微生物、およびそれを利用してL−リジンを生産する方法

【課題】L−リジン生産能の向上したコリネバクテリウム属微生物、およびそれを利用してL−リジンを生産する方法を提供する。
【解決手段】内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子が、ジヒドロゲナーゼ遺伝子への一つ以上の塩基対の挿入、あるいは欠失による突然変異、および該遺伝子内のナンセンスコドンを導入される塩基対の転移、または転換の突然変異により不活性化されたリジンを生産するコリネバクテリウム属微生物、およびその微生物を培養し、培養物からL−リジンを回収する、L−リジンの生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L-リジン生産能の向上したコリネバクテリウム属微生物、およびそれを利用してL-リジンを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリネバクテリウム属菌株(Corynebacterium)、特に、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)は、L-アミノ酸生産に多用されているグラム陽性の微生物である。L-アミノ酸、特にL-リジンは、動物飼料、人の医薬品および薬剤産業に使われており、コリネバクテリウム菌株の発酵により生成されている。このように、コリネバクテリウム菌株を利用したL-アミノ酸の製法は、重要であるため、その製造方法を改善するために多くの試みが行われている。
【0003】
そのうち、DNA組み換え技術を利用して特定遺伝子を破壊させたり、または減衰発現させることにより、L-アミノ酸生産のコリネバクテリウム菌株を改良しようとする研究があった。例えば、特許文献1には、a)ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)をコーディングするDNAが一つ以上の塩基対の挿入による挿入突然変異、一つ以上の塩基対の欠失を有する欠失突然変異、およびナンセンス突然変異の挿入を有する転移(transition)または転換(transversion)突然変異により構成される群より選択される突然変異法のうちの1つの方法によって減衰されていたり、または減衰されていないコリネバクテリウムに比べて前記ポリペプチドの活性の低下したコリネバクテリウムを成長させる段階、b)培地または前記バクテリアの細胞中に所望のL-アミノ酸の産物を濃縮する段階、およびc)前記L-アミノ酸を分離する段階を含む、コリネバクテリウムのL-リジンを発酵によって製造する方法が開示されている。
【0004】
また、それぞれのL-アミノ酸の生合成に関連した遺伝子を増幅させてL-アミノ酸生成に及ぼす効果を研究し、L-アミノ酸生産のコリネバクテリウム菌株を改良しようとする研究が多くなされてきた(非特許文献1参照)。また、他のバクテリア由来の外来遺伝子を導入する場合もある。例えば、特許文献2には、微生物のクエン酸シンターゼの合成に関与する遺伝情報を有するDNA断片とベクターDNAとの組み換え体DNAを保有するコリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物を培養し、培養物中にL-グルタミン酸およびL-プロリン酸を製造する方法が開示されている。
【0005】
しかし、前記した従来方法によっても、相変らずL-リジンの生産能の向上した菌株は、相変らず要求されている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,872,553号明細書
【特許文献2】特開平07-121228号公報
【非特許文献1】Eggeling, Amino Acids 6, 261-272(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、L-リジンの生産能の向上したコリネバクテリウム属微生物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記微生物を利用してL-リジンを生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子が不活性化されており、リジンを生産するコリネバクテリウム属微生物を提供する。
【0010】
前記他の目的を達成するために、本発明は、前記微生物を培養して培養物または細胞中にL-リジンを生産する段階、および培養物からL-リジンを回収する段階を含むL-リジンを生産する方法を提供する。
【0011】
本発明(1)は、内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子が不活性化されており、リジンを生産する、コリネバクテリウム属微生物である。
本発明(2)は、不活性化は、NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子内への一つ以上の塩基対の挿入による挿入突然変異、該遺伝子内の一つ以上の塩基対の欠失を有する欠失突然変異、および該遺伝子内のナンセンスコドンを導入させる塩基対の転移または転換の突然変異からなる群より選択される一つ以上の突然変異によって不活性化されたことを特徴とする、本発明(1)の微生物である。
本発明(3)は、不活性化は、NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子の一部分と抗生物質マーカーとを含むベクターをコリネバクテリウム属微生物に形質転換させ、該抗生物質の存在下で培養して選抜されることを特徴とする、本発明(1)の微生物である。
本発明(4)は、NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子は、配列番号:1のヌクレオチド配列を有することを特徴とする、本発明(1)の微生物である。
本発明(5)は、コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102(受託番号KCCM-10709P)であることを特徴とする、本発明(1)の微生物である。
本発明(6)は、本発明(1)〜(5)のいずれか一発明の微生物を培養して培養物または細胞中にL-リジンを生産する段階、および培養物からL-リジンを回収する段階を含む、L-リジンを生産する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の微生物によれば、内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子が不活性化されており、L-リジン生産能力が向上している。
【0013】
本発明の方法によれば、L-リジンを高い生産性をもって生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子が不活性化されており、リジンを生産するコリネバクテリウム属微生物を提供する。
【0015】
本発明において、前記内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子は、コリネバクテリウム属微生物に内在的に存在する遺伝子であり、ジヒドロゲナーゼ活性を有することが知られている(Nakagawa, Appl. Microbiol. Biotechnol. 62(2-3), pp.99-109, (2003))。前記遺伝子は、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032のゲノムの完全な配列分析からその活性が予測されてものである。望ましくは、前記遺伝子は、配列番号:1のヌクレオチド配列を有するものである。
【0016】
本発明において、内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子の不活性化された前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネスFERM BP-1539、コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881、およびコリネバクテリウム・グルタミクムKFCC11001であり得るが、それらの例に限定されるものではない。
【0017】
本発明において、前記不活性化は、当業界に公知の任意の不活性化方法によってなされ得る。本発明において、不活性化とは、前記NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が野生菌株に比べて低レベルに減少したり、または全く発現しない遺伝子、および発現するにしても、その活性がないか、または減少している遺伝子が生成されるということを意味する。
【0018】
本発明の一具体例は、本発明の微生物において前記不活性化は、前記NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子内への一つ以上の塩基対の挿入による挿入突然変異、前記遺伝子内の一つ以上の塩基対の欠失を有する欠失突然変異、および前記遺伝子内のナンセンスコドンを導入させる塩基対の転移または転換の突然変異からなる群より選択される一つ以上の突然変異によって不活性化されたものであり得る。
【0019】
本発明の一具体例は、本発明の微生物において、前記不活性化は、前記NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子の一部分と抗生物質マーカーとを含むベクターをコリネバクテリウム属微生物に形質転換させ、前記抗生物質の存在下で、前記形質転換された微生物を培養して選抜されることであり得る。望ましくは、前記ベクターは、配列番号:2のNCgl2053遺伝子断片を含むpCR-2053ベクターである。前記遺伝子の一部配列を含むベクターを前記微生物に形質転換し、選抜マーカー下で培養する場合、前記遺伝子の一部配列と前記微生物内の内在的遺伝子とは、相同組み換えを起こす。前記相同組み換えにより、前記微生物内の前記内在的遺伝子は組み換えられ、組み換えられた遺伝子を有する微生物中から前記マーカーを含む組み換え微生物だけが選抜マーカーによって選抜される。その結果、内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子の不活性化されたコリネバクテリウム属微生物を得ることができる。しかし、本願の菌株を得る方法は、かかる相同組み換え法に限定されるものではなく、当業界に公知の任意の方法が使われ得る。
【0020】
本発明の一具体例で、本発明の微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102(受託番号KCCM-10709P)である。
【0021】
本発明はまた、本発明の微生物を培養して培養物または細胞中にL-リジンを生産する段階、および培養物からL-リジンを回収する段階を含むL-リジンを生産する方法を提供する。
【0022】
本発明の方法において、コリネバクテリウム属微生物の培養は、当業界に公知の任意の培養条件および培養方法が使われ得る。コリネバクテリウム菌株培養のために使われ得る培地としては、例えば、Manual of Methods for General Bacteriology by the American Society for Bacteriology(Washington D.C., USA, 1981)に開示された培地が使われ得る。培地中で使われ得る糖源としては、ブドウ糖、サッカロース、乳糖、果糖、麦芽糖、澱粉、セルロースのような糖および炭水化物、大豆油、ひまわり油、ひまし油、ココナッツ油のようなオイルおよび脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸のような脂肪酸、グリセロール、エタノールのようなアルコール、酢酸のような有機酸が含まれる。これらの物質は、個別にまたは混合物として使われ得る。使われ得る窒素源としては、ペプトン、酵母抽出物、肉汁、麦芽抽出物、とうもろこし浸漬液、大豆ミール、および尿素または無機化合物、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムが含まれる。窒素源もまた個別に、または混合物として使用され得る。使われ得るリン源としては、リン酸ニ水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムまたは相応するナトリウムを含有する塩が含まれる。また、培養培地は、成長に必要な硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄のような金属塩を含有していなければならない。最後に、前記物質に加え、アミノ酸およびビタミンのような必須成長物質が使われ得る。また、培養培地に適切な前駆体が使われ得る。前記の原料は、培養過程で培養物により回分式または連続式に添加され得る。
【0023】
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのような塩基性化合物、またはリン酸または硫酸のような酸化合物を適切な方式で使用し、培養物のpHを調節できる。また、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用して気泡生成を抑制できる。好気状態を維持するために、培養物内の酸素または酸素含有気体(例、空気)を注入する。培養物の温度は、普通20℃ないし45℃、望ましくは、25℃ないし40℃である。培養時間は、所望のL-アミノ酸の生成量が得られるまで続けることができるが、望ましくは、10ないし160時間である。
【0024】
本発明の方法において、培養は、バッチ工程、注入バッチ、反復注入バッチ、連続式のような多様な方式で行われ得る。かかる培養方法は、当業界に公知であり、任意の方法が使われ得る。
【0025】
L-アミノ酸は、陰イオン交換クロマトグラフィ、および後続のニンヒドリン誘導体化によって分離されて分析され得る。
【0026】
本発明の菌株および方法を開発しようとして、本発明者らはまず、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032をリジン存在下で培養し、それから発現される蛋白質のレベルをニ次元電気泳動によって分析し、得られた結果を、リジンが存在しない中で培養された対照群実験で得られた蛋白質レベルと比較した。その結果、リジンの存在下で過発現する蛋白質、すなわち、リジンによって発現が誘導されると推定される蛋白質を確認した。確認された蛋白質に関する情報を基に、米国国立保健院のジェンバンク(NIH GenBank)から前記蛋白質についての遺伝子情報を確認し、それらがNCgl1835およびNCgl2053であることを確認した。
【0027】
また、前記遺伝子が実際にリジンの存在下で発現が誘導されているか否かを確認した。まず、前記遺伝子のプロモータと予想される核酸領域をPCRを介して増幅し、増幅されたプロモータ核酸をプロモータの除去されたlacZ遺伝子と融合させ、前記遺伝子のプロモータ-lacZコーディング配列の融合遺伝子を製作した。得られた融合遺伝子をベクターに挿入し、前記ベクターを微生物に導入し、リジン存在下で培養してlacZ蛋白質が発現しているか否かをβガラクトシラーゼ活性を測定して確認した。その結果、前記遺伝子は、実際にリジンにより発現が誘導されるということが確認された。
【0028】
しかし、それら遺伝子がリジン生産菌株でリジン生合成にどのように関与しているかは、明らかではない。本発明者らは、リジン存在下で過発現された前記遺伝子を確認した上に、追加的にコリネバクテリウム属微生物中の内在的NCgl2053遺伝子を不活性化させてリジン生産量を測定し、実際にリジン生産性が向上するということを確認した。
【0029】
以下、本発明を実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
以下の実施例では、コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC110881の内在的NCgl2053遺伝子を不活性化させ、前記遺伝子が不活性化された組み換え微生物を製造し、前記組み換え微生物を培養して培養物中にリジンを生産し、その培養物中のリジンの生産量を測定した。
【0031】
実施例1:コリネバクテリウム属微生物の内在的NCgl2053遺伝子を不活性化させるためのベクター製作
本実施例では、前記NCgl2053遺伝子の一部配列および抗生物質マーカーを含むベクターを製作するために、配列番号:3と4とのオリゴヌクレオチドをプライマーとして、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032の染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、約500bp(配列番号:2;配列番号:1の170ないし650ヌクレオチド)のNCgl2053遺伝子断片を増幅した。PCRは、96℃で30秒の変性、52℃で30秒のアニーリング、72℃で30秒の重合を30回反復した。増幅されたNCgl2053遺伝子断片をTOPO クローニング Kit(Invitrogen、米国)を利用して大腸菌プラスミドpCR2.1に挿入し、pCR-2053プラスミドを得た。図1は、約500bpのNCgl2053遺伝子断片がクローニングされたpCR-2053ベクターを表す図面である。
【0032】
実施例2:コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881の内在的NCgl2053遺伝子が不活性化されたL-リジン生産菌株の製作
Appl. Microbiol. Biotechnol.(1999) 52: pp.541-545に開示された形質転換法を利用し、実施例1で製作したpCR-2053プラスミドをL-リジン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881に電気パルス法で形質転換した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地で培養した。培養2日目に獲得した形質転換株からNCgl2053遺伝子の破壊いかんを確認するために、前記形質転換株の染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCRは、形質転換株染色体DNAをテンプレートとし、配列番号:5と6とのオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用し、pCR-2053プラスミドを含む約5,150bp(配列番号:1の118ないし775ヌクレオチド)のNCgl2053遺伝子断片を増幅した。その結果、前記遺伝子が破壊されているということがが確認された菌株を獲得し、これをコリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102と命名した。前記遺伝子は、相同組み換えにより、pCR-2053プラスミドが染色DNA上の内在的NCgl2053遺伝子の中間部分に挿入されることにより、不活性化されたと見られる。
【0033】
コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102菌株は、ブタペスト条約による国際寄託機関である韓国微生物保存センターに2005年11月16日付けで寄託された(受託番号KCCM-10709P)。
【0034】
実施例3:コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102を利用したリジン生産
実施例2で得られたコリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102菌株を培養してL-リジンを生産した。
【0035】
まず、下記のシード培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコにコリネバクテリウム・グルタミクム母菌株KFCC10881とKFCC10881-CJP5102とを接種し、30℃で20時間200rpmで撹拌しつつ培養した。得られたシード培養液1mLを下記の生産培地24mlを含有する250mlコーナー-バッフルフラスコに接種し、30℃で120時間200rpmで撹拌しつつ培養した。培養終了後、HPLC(Waters 2457)によりL-リジンの生産量を測定した。その結果、コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881およびKFCC10881-CJP5102菌株は、それぞれ培養物中のL-リジンの塩酸塩として示され、それぞれ45g/lおよび49g/lのL-リジンを生産した。
【0036】
シード培地(pH7.0):
原糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KH2PO4 4g、K2HPO4 8g、MgSO47H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl 1000μg、カルシウム-パントテン酸2,000μg、ニコチンアミド2,000μg(蒸溜水1リットル基準)。
【0037】
生産培地(pH7.0):
原糖100g、(NH4)2SO4 40g、大豆蛋白質2.5g、コーンスティープ固体(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、KH2PO4 1g、MgSO47H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1,000μg、カルシウム-パントテン酸2,000μg、ニコチンアミド3,000μg、CaCO3 30g(蒸溜水1リットル基準)。
【0038】
実施例4:コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102菌株の培養物からL-リジンの回収
糖蜜および原糖の含有培地中からコリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102菌株を培養して得たリジン発酵液1Lに塩酸を添加し、前記発酵ブロスのpHをpH2.0に調節し、CaイオンをCaSO4、CaCl2の形態に変形させた。次に、前記培養物をアンモニウムイオン形態に再生された陽イオン交換樹脂(Diaion SK-L10)に上流側から流し、リジンを前記樹脂に吸着させた。次に、脱塩水で洗浄し、樹脂層内に残存する菌体などを除去した後、2N水酸化アンモニウムで溶離し、高濃度のリジンを回収した。回収された液を濃縮した後、塩酸でpH5.0に調節しつつ20℃で冷却結晶化した。結晶化の完了したスラリを遠心分離して一次ウェット製品を得て、母液は、再度回分式で濃縮しつつ結晶化した後、二次ウェット製品を得た。一次およびニ次のウェット製品をいずれも加えて乾燥した結果、含有量98.5%のリジンドライ製品46.5gを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のL-リジン生産能の向上したコリネバクテリウム属微生物、およびそれを利用してL-リジンを生産する方法は、例えば、L-アミノ酸関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】約500bpのNCgl2053遺伝子断片がクローニングされたpCR-2053ベクターを表す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内在的NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子が不活性化されており、リジンを生産する、コリネバクテリウム属微生物。
【請求項2】
不活性化は、NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子内への一つ以上の塩基対の挿入による挿入突然変異、該遺伝子内の一つ以上の塩基対の欠失を有する欠失突然変異、および該遺伝子内のナンセンスコドンを導入させる塩基対の転移または転換の突然変異からなる群より選択される一つ以上の突然変異によって不活性化されたことを特徴とする、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
不活性化は、NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子の一部分と抗生物質マーカーとを含むベクターをコリネバクテリウム属微生物に形質転換させ、該抗生物質の存在下で培養して選抜されることを特徴とする、請求項1記載の微生物。
【請求項4】
NCgl2053ジヒドロゲナーゼ遺伝子は、配列番号:1のヌクレオチド配列を有することを特徴とする、請求項1記載の微生物。
【請求項5】
コリネバクテリウム・グルタミクムKFCC10881-CJP5102(受託番号KCCM-10709P)であることを特徴とする、請求項1記載の微生物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の微生物を培養して培養物または細胞中にL-リジンを生産する段階、および培養物からL-リジンを回収する段階を含む、L-リジンを生産する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−151551(P2007−151551A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320683(P2006−320683)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(504309863)シージェイ コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】