説明

LACTOBACILLUSPLANTARUMおよびその使用

【課題】単離されたLactobacillus plantarum CMU995を提供すること。
【解決手段】単離されたLactobacillus plantarum CMU995を提供する。これは、受託番号DSM 23780の下でDSMZに寄託された。Lactobacillus plantarum CMU995を含む組成物およびLactobacillus plantarum CMU995の使用も提供する。この株は、病原体を阻害するため、胃腸管を保護するため、および/または尿路の感染を予防もしくは治療するための医薬または健康食品として製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Lactobacillus plantarum株およびその使用、とりわけ、単離されたLactobacillus plantarum CMU995およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Lactobacillusは、人間または動物の腸管に存在する主要な細菌の1つである。Lactobacillusは、人間または動物の体の生理活性に対して有益な効果を及ぼすため、様々なプロバイオティクス産物にしばしば加えられる。例えば、Lactobacillusは、腸病原体(Salmonella属またはEscherichia属などの)の増殖を阻害できるか、病原体侵入に抵抗することができ、例えば、胃腸管系上皮細胞へのSalmonella typhimuriumの侵入を阻止する。
【0003】
現在、病原体を阻害するための、Lactobacillusの適用に関する多くの特許がある。例えば、米国特許第5,603,930号は、エンテロトキシンおよび腸侵入性病原体を阻害できるLactobacillus johnsoniiを開示し、米国特許第3,953,609号は、消化器系におけるEscherichia属の増殖を阻害できるLactobacillus lactisを開示し、米国特許第6,491,956号は、Helicobacter pylori感染に起因する胃炎、十二指腸潰瘍および胃潰瘍を予防および治療できるLactobacillus acidophilusを開示する。
【0004】
基礎的な生理的/薬理学的活性に加えて、Lactobacillusが動物の体内で効果的に機能するためには、2つの重要な特徴を有していなければならない。まず、Lactobacillusは、消化器系で生き残り、腸管に到達してその機能を行うために、動物の胃腸管によって分泌される胃酸およびコリンに対する強い耐性を有しなければならない。次に、Lactobacillusは、胃腸管で他の病原体と競合し、それらの病原体によって駆逐されるのを避けるために、動物宿主の腸上皮細胞に強く接着できなければならない。さらに、病原体も、腸上皮細胞に接着することによって動物の体を感染させるので、Lactobacillusが腸の上皮細胞に対して比較的強い接着能を有するならば、病原体を駆逐して、胃腸管を感染から保護することができる。
【0005】
本発明の発明者は、新生児の排泄物から、Lactobacillus plantarumの新しい株をスクリーニングし、相対インビボおよびインビトロ実験を通して、病原体を阻害することに加えて、Lactobacillus plantarumが胃腸管および尿路の細胞への優れた接着能を有し、それゆえに、胃腸管および尿路を病原性感染から、効果的かつ長期的に保護できることを見出した。本発明者は、この株が病原体の増殖を直接阻害でき、それらの病原体に起因する疾患を予防および治療することも見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許出願第099123851号
【特許文献2】米国特許第5,603,930号
【特許文献3】米国特許第3,953,609号
【特許文献4】米国特許第6,491,956号
【特許文献5】台湾公開特許第200708622号
【特許文献6】台湾公開特許第200611973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主目的は、受託番号BCRC 910472の下に台湾の食品工業発展研究所(FIRDI)に寄託され、受託番号DSM 23780の下にドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に寄託されている、単離されたLactobacillus plantarum CMU995を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、Lactobacillus plantarum CMU995を含む組成物を提供することである。
【0009】
さらに、本発明のさらなる目的は、病原体を阻害するため、胃腸管を保護するため、および/または尿路を保護するための医薬または健康食品を製造するための、Lactobacillus plantarum CMU995の使用を提供することである。
【0010】
本発明のために実行される詳細な技術および好ましい実施形態は、特許請求されている発明の特徴を当業者がよく理解するように、添付図面と併せて、下記の段落に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Lactobacillus plantarum CMU995の遺伝子指紋地図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の発明者は、健康な新生児の排泄物をスクリーニングして、それから新しいLactobacillus株を分離した。この株は、Lactobacillus plantarumと同定され、Lactobacillus plantarum CMU995と名付けられた。
【0013】
上述の通り、望ましい生理作用をもたらすためには、Lactobacillusは、胃腸管への接着について病原体と競合し、さらに病原体を駆逐するために、動物宿主の腸上皮細胞に強く接着できなければならない。Lactobacillus plantarum CMU995は、市場で一般に見られるLactobacillus rhamnosus GG(LGG)よりもさらに強い胃腸上皮細胞への接着能で胃腸上皮細胞に付着できることが発見された。
【0014】
胃腸上皮細胞に接着することに加えて、Lactobacillus plantarum CMU995は、尿上皮細胞にも堅固に接着することができ、したがって、尿路への接着について病原体と競合し、さらに病原体を除去して、尿路を保護することができる。
【0015】
Lactobacillus plantarum CMU995は、胃腸管および尿路に対して良好な接着性を有するので、病原体感染を予防または治療するのに使用できる。予防には、Lactobacillus plantarum CMU995は、この株が胃腸管または尿路に接着して、これらの産物を摂取する人々を保護できるように、食料、飲料、栄養剤または健康食品に添加することができる。病原菌が胃腸管または尿路に侵入するとき、それらは、接着について、Lactobacillus plantarum CMU995と競合できず、したがって、感染機構を始動することができず、体の外に駆逐される。治療には、病原体が人体または動物体の胃腸管または尿路に感染しているときに、例えば、Lactobacillus plantarum CMU995を含む医薬を摂取でき、その際、Lactobacillus plantarum CMU995に特徴的な、胃腸管および尿路への吸着によって、胃腸管または尿路に接着している病原体が除去され、治療効果をもたらすことになる。それゆえに、Lactobacillus plantarum CMU995は、その強い吸着能を介して、病原体が胃腸管または尿路の細胞に接着するのを阻害して、病原体の感染を予防または治療することができる。
【0016】
胃腸管または尿路への病原体の接着を阻害して、間接的に感染を阻害することに加えて、Lactobacillus plantarum CMU995は、病原体の増殖を直接阻害することができ、したがってそれは、これら2つの阻害機構の共働によって胃腸管および/または尿路を保護することができる。それゆえに、テキストで「病原体を阻害する」という句は、胃腸管への病原体の接着の阻害、尿路への病原体の接着の阻害および病原体の増殖の阻害を含む。
【0017】
Lactobacillus plantarum CMU995は、胃腸管および/または尿路における様々な病原体を阻害するのに使用できる。例えばそれは、Helicobacter pylori、Campylobacter jejuni、Salmonella属種、Escherichia属種、Staphylococcus属種、Shigella flexneri、Clostridium perfringens、Candida albicansおよびこれらの組合せからなる群から選択された病原体を阻害できる。特に、それはHelicobacter pyloriを阻害するのに使用できる。
【0018】
Helicobacter pyloriは、グラム陰性、微好気性の病原菌であり、胃および十二指腸における様々な領域で生き残ることができる。Helicobacter pyloriの伝染経路は現在のところ、いまだに不明であるが、それは、胃粘膜慢性炎症へと導くことができ、その結果、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、または胃癌にさえなる。したがって、世界保健機関(WHO)は、Helicobacter pyloriが1タイプの発癌性微生物であり、発癌性であることが見出された最初の原核生物でもあると発表した。世界人口の半分以上がHelicobacter pylori保菌者であり、ほとんどは開発途上国に住んでいる。現在のところ、Helicobacter pyloriによって誘発される疾患を治療するための主要なアプローチは、抗生物質の使用によるものである。しかし、Helicobacter pyloriの薬剤耐性のため、もはや、多くの抗生物質は満足な治療結果をもたらさない。Lactobacillus plantarum CMU995は、Helicobacter pyloriの増殖および腸上皮細胞へのその接着を著しく阻害できるので、Helicobacter pyloriに起因する様々な疾患を効果的に予防または治療するために、従来の使用と組み合わせるか、または置き換えるのに用いることができる。
【0019】
さらに、Lactobacillus plantarum CMU995は、病原体の増殖を直接阻害できるので、病原体に起因する疾患を予防および治療するのに使用でき、上記疾患は胃腸疾患のみに限定されない。例えば、Staphylococcus属種は、胃腸管、ならびに気道、尿路、静脈および創傷などの領域を感染させ得ることが知られており、したがって、Lactobacillus plantarum CMU995によるStaphylococcus属種の増殖の阻害は、前述の領域の感染を治療および予防するのに適用できる。別の態様では、Candida albicansは、胃腸管、ならびに口腔および尿路などの粘膜組織を感染させ得、したがって、Lactobacillus plantarum CMU995によるCandida albicansの増殖の阻害は、口腔または尿路の感染の治療または予防に適用できる。
【0020】
Lactobacillus plantarum CMU995の接着性特性、および病原体増殖を阻害する能力により、それは、様々な医療用品および健康用品に広範に適用できる。したがって、本発明は、Lactobacillus plantarum CMU995を含む組成物も提供する。Lactobacillus plantarum CMU995の前述の特別な特徴に基づいて、本発明の組成物は、病原体を阻害するため、胃腸管を保護するため、尿路を保護するため、またはこれらの組合せのために使用できる。
【0021】
本発明の組成物は、いかなる形で調製することもできる。例えばそれは、医薬品組成物、食料、飲料、栄養補助剤、乳製品、食品、健康食品、スプレーおよび坐薬からなる群から選択される形に調製することができる。本発明の一実施形態では、Lactobacillus plantarum CMU995を食品(例えば、乳製品)に添加することができる。医薬品組成物および食品におけるLactobacillusの適用は、参照により全体として本明細書に組み込まれている、台湾公開特許第200708622号および台湾公開特許第200611973号で見ることができる。
【0022】
本発明の組成物には、接着および病原体増殖の阻害の効果を強化するための、いかなる適した添加物も任意選択で添加できる。代わりに、適用の柔軟性を増大させるために、他の栄養物または製薬成分を組成物に添加することもできる。例えば、本発明の組成物は、制酸剤、他のプロバイオティクスなどの1または複数種の活性成分を、これらの活性成分がLactobacillus plantarum CMU995の有効性に対して有害な効果を有しない限り含有し得る。
【0023】
本発明は、病原体を阻害するため、胃腸管を保護するため、および/または尿路を保護するための、医薬または健康食品の製造のための、Lactobacillus plantarum CMU995の使用も提供する。
【0024】
以下に、下記の実施例を参照して本発明をさらに例示する。しかし、これらの実施例は、例示を目的として示すのみであり、本発明の範囲を制限しない。
【実施例1】
【0025】
接着分析
実験A.Lactobacillus株の調製
胃腸細胞の接着分析を行うのに用いられるLactobacillus株には、Lactobacillus plantarum CMU995、Lactobacillus rhamnosus GG(LGG)、ならびに検査室から分離されたLactobacillus株B7P3、A7G1、B1T4、IA5およびHT5が含まれる。すべてのLactobacillus株をMRS培養溶液(Difco、Detroit、Michigan、USA)で2回活性化し、それらをMRS培養液(5mL)中に移し、培養した。24時間後に、1mLのブロスを採取し、10分間遠心処理し(6000rpm)、リン酸緩衝液(PBS、pH7.2)で2回すすいで、以下の接着実験へと進んだ。乳酸菌rhamnosus GGを対照群として使用した。
【0026】
実験B.胃腸管および尿路細胞系の細胞培養
この実験で使用された胃腸管細胞系は、Caco−2ヒト結腸腺癌(受託番号:ATCC CRL2102)およびAGS胃腺癌(受託番号:ATCC CRL1739)であった。使用された尿路細胞系は、Helaヒト子宮頸部上皮細胞(受託番号:ATCC CCL−2)であった。これら(Caco−2ヒト結腸腺癌、AGS胃腺癌、およびHelaヒト子宮頸部上皮細胞)はすべて、生物資源保存及研究中心(Bioresource Collection and Research Center)(BCRC)、台湾から購入し、細菌、真菌およびマイコプラズマの汚染試験にすでに合格していた。細胞系が得られた後、それらを直ちに、常温下37℃の水浴中に移し、解凍し、25cm2のペトリディッシュ内で培養し、その後、37℃の、5容量%二酸化炭素を含有する細胞インキュベーター内で培養した。細胞を活性化し、数回、継代し、細胞系が安定となった後、さらなる実験を行った。Caco−2細胞の培養培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Gibco Corpから購入)であった。AGS細胞の培養培地は、F−12培地(Gibco Corpから購入)であった。Hela細胞の培養培地は、基礎培地(MEM(Gibco Corpから購入される))であった。上記の培養培地すべてには、10容量%胎児ウシ血清(FBS)が添加されていた。
【0027】
実験C.Lactobacillusの接着分析
実験Bで調製された細胞系を5分間、0.05容量%トリプシン(1mL)で処理し、96ウェルプレートに移した。その際、各ウェルに1×104細胞を加えた、培地を毎日、新しい培地(200μL)で替えた。次に、実験A(20μL)で調製されたLactobacillusブロスを細胞に加え、Lactobacillusを細胞に接着させるために、1時間培養した。1時間の接着後に、培地を除去し、細胞を5回、リン酸緩衝溶液(PBS)ですすぎ、細胞に接着しなかったLactobacillusを除去し、10容量%ホルマリン(100μL)を加えて細胞とLactobacillusとを安定化させた。30分後に、細胞を3回、PBSですすぎ、最後にクリスタルバイオレット(100μL)で5分間染色し、細胞表面の染色を落すために、直ちに最小量の75容量%アルコールで洗浄した。
【0028】
位相差顕微鏡検査を用いて、胃腸管または尿路の上皮細胞への様々なLactobacillusの接着能を観察し、ランダム化された顕微鏡領域下で、50細胞へのLactobacillusの接着を観察および計算し、各細胞に接着しているLactobacillusの平均量を計算した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


【0030】
表1から分かるように、Lactobacillus plantarum CMU995は、他の知られているLactobacillus(国際的によく知られており、市場で一般的に見られるLactobacillus rhamnosus GGも含める)と比較して、胃腸管および尿路の細胞への接着能がさらに良好であり、したがって、さらに長期にわたって、胃腸管および尿路に保護を与えることができる。
【実施例2】
【0031】
病原体の増殖の阻害試験
実験D.ペトリディッシュ試験
ウェル拡散法(well−diffusion method)を用いて、病原体増殖に対するLactobacillusの阻害能を評価した。滅菌Brucella寒天培地(Difco、Detroit,Michigan,USA)を細菌ペトリディッシュ内に注ぎ、固めた。次に、終夜培養された、胃腸管の指標病原体、Helicobacter pylori(受託番号:BCRC17021)および臨床的に単離されたHelicobacter pylori CMU83を寒天培地に均一になすりつけた。ブロスがわずかに乾燥した後、直径7mmの穴を、当該寒天培地上に作り、実験AのMRS培地中で24時間培養したLactobacillus plantarum CMU 995のブロス(70μL)を穴に加えた。さらに、Campylobacter jejuni CMU20、Escherichia属種、Staphylococcus aureus、Salmonella属種、Shigella flexneri、Clostridium perfringensおよびCandida albicansを含む、他の胃腸病原体を分析するのにも上記の方法を用いた。各試料を繰り返し3回分析し、培養培地を細菌インキュベーターに入れ、16から18時間後に、細菌阻害域(環)の直径を測定した。ここで、Lactobacillus rhamnosus GGの発酵溶液を陽性対照として用い、pH6.3のMRS培地を陰性対照として用いた。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】


【0033】
表2の結果は、Lactobacillus rhamnosus GGと比較して、本発明のLactobacillus plantarum CMU995が、病原体増殖を阻害するのに、さらに良好な有効性を有し、したがって、病原体に起因する疾患を予防および治療するのに使用できることを例示する。例えば、それは、胃腸管を病原体感染から保護するのに使用できる。
【実施例3】
【0034】
病原体感染の阻害試験および接着試験
Caco−2細胞、AGS細胞およびHela細胞(各1mL;密度:5×104細胞/mL)を24ウェル細胞培養プレートでそれぞれ培養し、37℃の、5容量%二酸化炭素/95容量%空気を含む細胞インキュベーターに入れ、2日間培養し、以下の2種類の試験を行った。
【0035】
実験E.予防および保護モード
2日間培養され、均一に混合されたCaco−2細胞、AGS細胞またはHela細胞に、実験Aで24時間培養されたLactobacillus plantarum CMU995の発酵溶液(100μL)を加え、細胞を細胞インキュベーターに入れ、0.5時間インキュベートした。次に、細胞に接着しなかったLactobacillusを除去するために、細胞を滅菌食塩水ですすいだ。Helicobacter pylori CMU83、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)またはSalmonella enteritidis(各1mL、1×107cfu/mL)を細胞に加え、均一に混合し、細胞インキュベーターに1時間、細胞を入れ、培養し、病原体を細胞に感染させた。次に、培地を除去し、細胞に感染しなかった病原体を除去するために、細胞を滅菌食塩水ですすいだ。0.1容量%Triton−X−100(1mL)(Sigma、Louis,Missouri,USA)をさらに加え、感染している病原体を放出させるために、細胞を溶解させた。最後に、溶解した細胞を含有している溶液を収集し、PBS溶液(9mL)中に入れた。溶液を適切に希釈した後、混釈平板法を用いて、細菌数を計算した。ここで、細胞にLactobacillusが加えられなかった実験を対照群として用い、計算結果を下記の式に当てはめて、Lactobacillus plantarum CMU995の感染阻害率を計算した。結果を表3に示す。
感染阻害率=(対照群における病原体の数−Lactobacillusの添加を行った群における病原体の数)/対照群における病原体の数×100%
【0036】
実験F.治療および除去モード
Caco−2細胞、AGS細胞またはHela細胞をそれぞれ2日間培養し、Helicobacter pylori CMU83、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)またはSalmonella enteritidis(各1mLで、1×107cfu/mL)を細胞に加え、病原体を細胞に感染させるために、細胞を0.5時間培養した。次に、細胞に侵入しなかった病原体を除去するために、細胞を滅菌食塩水ですすいだ。実験Aで24時間培養されたLactobacillus plantarum CMU995の発酵溶液(100のμL)を細胞に加え、Lactobacillus plantarum CMU995に病原体を駆逐させるために、細胞を1時間培養した。最後に、細胞に接着しなかったLactobacillusおよび駆逐された病原体を除去するために、細胞を滅菌食塩水ですすいだ。感染している病原体を放出させるために、0.1容量%Triton−X−100(1mL)を加えて、細胞を溶解させた。溶解した細胞を含有している溶液を収集して、適切に希釈した後、混釈平板法によって細菌数を計算した。ここで、細胞にLactobacillusが加えられなかった実験を対照群として用い、計算結果を上記の式に当てはめて、Lactobacillus plantarum CMU995の感染阻害率を計算した。結果を表4に示す。
【0037】
【表3】


【0038】
【表4】


【0039】
表3および4から分かるように、Lactobacillus plantarum CMU995は、病原体感染を阻害するのに優れた有効性を有する。詳細には、治療および除去モードの結果は、Lactobacillus plantarum CMU995は、胃腸管および尿路の細胞への、病原体の接着を効果的に減らし、細胞から病原体をさらに駆逐して、感染を阻害する効果をもたらすことができることを明らかに示した。さらに、Lactobacillus plantarum CMU995は、大腸菌またはSalmonella属種にも優れた阻害効果を有する。
【実施例4】
【0040】
動物試験
実験G.実験動物群
6週齢の雄性C57BL/6マウス(Lasco,Inc.、台湾から購入)がこの実験で使われた。マウスの体重は20から26gにわたり、マウスは、温度が22℃に維持され、定期的な12時間の明暗を有する独立したIVCマウス飼育システムで飼育された。マウスに滅菌飼料および逆浸透水を与え、自由摂取させた。マウスを環境に適応させるため、実験を始める前に、これらのマウスに2週間飼料を与えた。マウスをランダムに、1群当たり8匹のマウスの4群に分類した。Helicobacter pyloriによって感染する前に、各群のマウスは、様々な濃度の新たに調製されたLactobacillus plantarum CMU995ブロス200μLで、特定の時間に連続7日間経口給餌され、1日1回給餌された。各群の実験の条件を以下に記載する。
【0041】
群A:生理食塩水/陰性対照群
滅菌濾過された生理的食塩水によってマウスに給餌した。
【0042】
群B:1×1010コロニー形成単位(cfu)/mLのLactobacillus plantarum CMU995の群
Lactobacillus plantarum CMU995をMRS培養液で24時間培養し、ブロスを収集し、遠心処理し、生理食塩水中に再溶解させた。細菌濃度を1×1010cfu/mLに調整し、次に細菌をマウスに給餌した。
【0043】
群C:1×109cfu/mLのLactobacillus plantarum CMU995の群
Lactobacillus plantarum CMU995をMRS培養液で24時間培養し、ブロスを収集し、遠心処理し、生理食塩水中に再溶解させた。細菌濃度を1×109cfu/mLに調整し、細菌を次にマウスに給餌した。
【0044】
群D:1×108cfu/mLのLactobacillus plantarum CMU995の群
Lactobacillus plantarum CMU995をMRS培養液で24時間培養し、ブロスを収集し、遠心処理し、生理食塩水中に再溶解させた。細菌濃度を1×108cfu/mLに調整し、細菌を次にマウスに給餌した。
【0045】
実験H. Helicobacter pylori感染試験
マウスにLactobacillus plantarum CMU995ブロスを7日間給餌した後、その翌日に、2×107コロニー形成単位(cfu)のHelicobacter pylori CMU83を含有しているブロスをマウスに経口給餌した。感染を引き起こすために、マウスに3日間連続給餌し、その翌日に、マウスを1日間断食させた。次に、マウスを二酸化炭素で屠殺し、それらの頸部および脊椎骨を分離した。マウスの胃および十二指腸切片(およそ0.5g)を採取して、9.5mLの滅菌PBS溶液を含有するeppendorfチューブに入れ、ホモジナイザーで3分間撹拌した。断片化した組織を含有する溶液(1mL)を採取し、次に滅菌PBS溶液で連続的に10倍希釈した。様々な希釈倍率で希釈された溶液(100μL)を採取し、塗抹平板法によってBrucella寒天培地上にそれぞれプレーティングし、Helicobacter pyloriをスクリーニングするために、2.5容量%胎児ウシ血清および選択剤SR147E(Oxoid,Hampshire,England)を培地に加えた。この培地を試験して、この実験で使用するHelicobacter pylori CMU83をスクリーニングできることを確認した。細菌を培養するために、培地を37℃で48時間微好気条件下に置き、細菌のコロニー形成単位(cfu)を計算した。各実験の統計分析は3回繰り返し、実験結果はSPSS 10.0ソフトウェアによって分析した。最初に、一元配置ANOVA(分散分析)を用いて各群間の有意差を検定し、判定基準はp<0.05であった。結果を表5に示す。
【0046】
【表5】


【0047】
表5は、1×109cfu/mLまたは1×1010cfu/mLの濃度のLactobacillus plantarum CMU995をマウスに給餌した後、マウス胃腸管へのHelicobacter pyloriの感染が著しく阻害され、したがって、Lactobacillus plantarum CMU995が胃腸管を病原性感染から保護する有効性をもたらし得ることを示す。
【実施例5】
【0048】
実験I.株の同定
[Lactobacillus同定キット分析]
本発明のLactobacillus plantarum CMU995を16時間MRS培養培地で活性化およびインキュベートし、Lactobacillusの同定を専門とするAPI 50 CHL同定キット(Biomerieux、Marcy I’Etoile、Frace)を用いて、株の種を分析および確認した。
【0049】
[遺伝子配列決定分析]
Lactobacillus用の特異的プライマーを用いて、Lactobacillus plantarum CMU995の16S−23S rRNA区域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、結果として生じた産物の配列を分析した。得られたPCR産物の配列を分析した。配列の一部を配列番号1に示す。
配列番号1
ACATTGCAACAGCGCGTGCCGTATTTTAATTATCGGCTAGCCACAGAGATCTATCCGTTAAACAAACAATTTACTGAGAAATACGGGAATAAGTATGGGAAATATCCCTAGCGAACCCTAAATAATGGCCCCCCTGTCTTGAACAGATAGACTGGCCAAACTCCTACGGGAGAAAACGTTGGGAAATTTTGCTCAATGGGCCCAACCCTGAGGCGCCCCTGCCACATATATGAGGAAAGCCTTCGGGTTATAAAATTTTTTTTCAGCGAGGAGTGAAGTGAGGATAAGAACCTTCTACA
【0050】
この分析で使用されるプライマーは、LU−5およびLac−2であった。それらの配列を下記に示す。
LU-5: 5'-CTAGCGGGTGCGACTTTGTT-3' 配列番号2
Lac-2: 5'-CCTCTTCGCTCGCCGCTACT-3' 配列番号3
【0051】
[パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分析]
パルスフィールドゲル電気泳動を用いて、Lactobacillus plantarum CMU995のゲノムDNAを分析した。Lactobacillus plantarum CMU995の遺伝子指紋地図を得るための制限酵素としてSgsI(Promega Corporation、Madison,USA)を用いた。結果を図1に示す。図1における遺伝子指紋地図は、Lactobacillus plantarum CMU995の遺伝子指紋同定の参照として示すのみであり、この株の遺伝子同定結果を限定するために示すものではない。
【0052】
API 50 CHL同定キットの結果によれば、それは、Lactobacillus plantarum CMU995がLactobacillius plantarumに属していることを示している。PCR産物の遺伝子配列の比較の結果によって、この株が新しいLactobacillus plantarumであることがさらに証明される。
【0053】
Lactobacillus plantarum CMU995は、受託番号BCRC 910472の下に台湾の食品工業発展研究所(FIRDI)に寄託され、受託番号DSM 23780の下にドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に寄託された。
【0054】
上記の実施例は、Lactobacillus plantarum CMU995が、胃腸管および尿路への病原体の接着を阻害して、胃腸管の細胞を保護し、病原性感染を減らすことができ、それは病原体の増殖を直接的に阻害することもでき、したがって、それは、これらの2つの阻害機構の共働効果によって胃腸管および尿路を保護できることを明らかにした。
【0055】
上記の開示は、詳細な技術的内容およびその発明的特徴に関連する。当業者は、本発明の特徴から逸脱せずに記載されている本発明の開示および示唆に基づいて、様々な修正および代替を進めることができる。しかるに、そのような修正および代替は上記の説明で完全に開示されてはいないが、それらは、添付の特許請求の範囲に実質的に包含されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号DSM 23780の下にドイツ微生物細胞培養収集機関(DSMZ)に寄託されている、単離されたLactobacillus plantarum CMU995。
【請求項2】
胃腸管および/または尿路に接着できる、請求項1に記載のLactobacillus plantarum CMU995。
【請求項3】
病原体の増殖を阻害できる、請求項1または2に記載のLactobacillus plantarum CMU995。
【請求項4】
病原体が胃腸管および/または尿路に接着するのを阻害できる、請求項1から3のいずれかに記載のLactobacillus plantarum CMU995。
【請求項5】
病原体が、Helicobacter pylori、Campylobacter jejuni、Salmonella属種、Escherichia属種、Staphylococcus属種、Shigella flexneri、Clostridium perfringens、Candida albicansおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項3または4に記載のLactobacillus plantarum CMU995。
【請求項6】
病原体がHelicobacter pyloriである、請求項3から5のいずれかに記載のLactobacillus plantarum CMU995。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のLactobacillus plantarum CMU 995を含む組成物。
【請求項8】
病原体を阻害するため、胃腸管を保護するため、および/または尿路を保護するために使用される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
病原体が、Helicobacter pylori、Campylobacter jejuni、Salmonella属種、Escherichia属種、Staphylococcus属種、Shigella flexneri、Clostridium perfringens、Candida albicansおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
医薬品組成物、飼料、飲料、栄養補助剤、乳製品、食品、健康食品、スプレーまたは坐薬である、請求項7から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
病原体を阻害するため、胃腸管を保護するため、および/または尿路を保護するための医薬の製造のための、請求項1から6のいずれかに記載のLactobacillus plantarum CMU 995の使用。
【請求項12】
病原体が、Helicobacter pylori、Campylobacter jejuni、Salmonella属種、Escherichia属種、Staphylococcus属種、Shigella flexneri、Clostridium perfringens、Candida albicansおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2012−24074(P2012−24074A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217075(P2010−217075)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(509075457)中國醫藥大學 (11)
【Fターム(参考)】