説明

LED信号機

【課題】従来のLED信号機を改良し、LEDユニットの回込防止回路や複合現示対応回路を不要として信頼性と経済性を向上させるとともに単現示と複合現示の制御を正常に行う。
【解決手段】既設の信号制御システム10からの電圧と電流及び新しい信号制御システム20からの制御信号により点滅するLED信号機1に対して新しい信号制御システム20から伝送された制御信号をLEDユニット3に出力する小型制御端末2の出力回路を両線制御方式にして、従来のLED信号機のLEDユニットの回込防止回路や複合現示対応回路を不要にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道などの信号制御システムに使用するLED信号機、特に回路構成の簡略化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道信号機の点灯制御を行なう既設の信号制御システムは各信号灯と1対1の個別配線で接続して制御信号を伝送している。このため多数の電気配線を扱う必要があり施工や保守が容易でなかった。この問題を解消するため、各信号灯との間を光LANで接続して多重化情報伝送方式の新しい信号制御システムが開示されている。
【0003】
この個別配線を使用した既設の信号制御システムを多重化情報伝送方式の新しい信号制御システムに切り替えるに際して、新しい信号制御システムに円滑に切り替えるため既設の信号制御システムと新しい信号制御システムを接続し、新旧の信号制御システムを併存させるLED信号機が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に示されたLED信号機1aは、図4(a)の回路図に示すように、既設の信号制御システム10と新しい信号制御システム20からの制御信号により点滅するものであり、小型制御端末21とLEDユニット31を有する。小型制御端末21は絶縁トランス4を介して電力が供給され、新しい信号制御システム20からLANケーブルを介して伝送された多重化情報を個別化して制御信号をLEDユニット31に出力する。LEDユニット31は、図4(b)の回路図に示すように、LED発光部5と、既設の信号制御システム10と個別配線で接続され、既設の信号制御システム10から伝送された制御信号を整流してLED発光部5に駆動電流を供給する第1の整流回路6と、小型制御端末21からの制御信号を整流してLED発光部5に駆動電流を供給する第2の整流回路7を有する。第1の整流回路6からLED発光部5に駆動電流を供給する回路には第2の整流回路7からの駆動電流を阻止するダイオード8と回込防止回路32が設けられている。この回込防止回路32とダイオード8及びLED発光部5と並列に複合現示対応回路33が設けられている。複合現示対応回路33は、図5の回路図に示すように、例えば2個のLEDユニット31Y,31Gが複合現示対象として直列接続された状態で、いずれか一方のLED発光部5が断線したときに、既設の信号制御システム10から伝送された制御信号を整流する第1の整流回路6からの駆動電流を迂回させて他方のLED発光部5を滅灯させる。
【0005】
この複合現示対象の2個のLEDユニット31Y,31Gに新しい信号制御システム20から伝送された制御信号に応じた駆動電流を第2の整流回路7に出力する小型制御端末21の出力回路にそれぞれリレー接点YR,GRが片線制御方式で並列に設けられている。この場合、図6の回路図に示すように、回込防止回路32を設けていない状態で、例えばリレー接点YRが導通すると、小型制御端末のリレー接点GRや第1の整流回路6に制御信号を出力する既設の信号制御システム10のリレー接点YGRが遮断していても、図6の点線で示すように、小型制御端末21の出力回路からLEDユニット31Gの第2の整流回路7からLED発光部5と第1の整流回路6とLEDユニット31Yの第1の整流回路6と複合現示対応回路33及び第2の整流回路7を通して半波整流された駆動電流が回り込んでLEDユニット31GのLED発光部5までがうっすらと点灯してしまう。この駆動電流の回り込みは新しい信号制御システム20でも常に2個のLEDユニット31Y,31Gを複合現示する場合は問題ないが、2個のLEDユニット31Y,31Gを個々に点灯する単現示の場合には不都合になる。この不都合が生じることを防ぐために各LEDユニット31Y,31Gに回込防止回路32を設けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように各LEDユニット31Y,31Gに回込防止回路32や複合現示対応回路33を設けているとLEDユニット31Y,31Gの回路構成が複雑になり、高価になってしまう。
【0007】
この発明は、従来のLED信号機を改良し、LEDユニットの回込防止回路や複合現示対応回路を不要として信頼性と経済性を向上させるとともに単現示と複合現示の制御を正常に行うことができるLED信号機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のLED信号機は、既設信号制御システムと新しい信号制御システムとの接続手段を有するLED信号機において、小型制御端末とLEDユニットを有し、小型制御端末は、両線制御方式の出力回路を有し、新しい信号制御システムから伝送された制御信号をLEDユニットに出力し、LEDユニットは、LED発光部と、既設信号制御システムから伝送された制御信号を整流してLED発光部に駆動電流を供給する第1の整流回路と、小型制御端末からの制御信号を整流してLED発光部に駆動電流を供給する第2の整流回路及び第1の整流回路からLED発光部に駆動電流を供給する回路に設けられ、第2の整流回路からの駆動電流を阻止するダイオードを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、新しい信号制御システムから伝送された制御信号をLEDユニットに出力する小型制御端末の出力回路を両線制御方式にして従来のLED信号機のLEDユニットの回込防止回路や複合現示対応回路を不要にすることにより、信頼性と経済性を向上するとともに単現示と複合現示の制御を正常に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明のLED信号機の構成を示す回路図である。
【図2】既設信号制御システムからの制御信号による複合現示状態を示す回路図である。
【図3】新しい信号制御システムからの制御信号による単現示状態を示す回路図である。
【図4】従来のLED信号機の構成を示す回路図である。
【図5】従来のLED信号機の複合現示状態を示す回路図である。
【図6】従来のLED信号機の回込防止回路がない場合の単現示状態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(a),(b)はこの発明のLED信号機の構成を示す回路図である。図に示すように、LED信号機1は、信号機などの現場機器に接続した制御線に印加する電圧と電圧によって制御する方式の既設の信号制御システム10と、信号機などの現場機器に設けた小型制御端末と接続した電送線に送受される制御情報によって制御する方式の新しい信号制御システム20に接続され、既設の信号制御システム10からの電圧と電流及び新しい信号制御システム20からの制御信号により点滅するものであり、小型制御端末2とLEDユニット3を有する。小型制御端末2は絶縁トランス4を介して電力が供給され、新しい信号制御システム20からLANケーブルを介して伝送された多重化情報を個別化して制御信号をLEDユニット3に出力する。LEDユニット3は、図1(b)に示すように、LED発光部5と、既設の信号制御システム10と個別配線で接続され、既設の信号制御システム10から伝送された制御信号を整流してLED発光部5に駆動電流を供給する第1の整流回路6と、小型制御端末2からの制御信号を整流してLED発光部5に駆動電流を供給する第2の整流回路7を有する。第1の整流回路6からLED発光部5に駆動電流を供給する回路には第2の整流回路7からの駆動電流を阻止するダイオード8が設けられている。このLEDユニット3の第2の整流回路7に駆動電流を出力する小型制御端末2の出力回路は、図2に示すように、1対のリレー接点Rが両線制御方式で設けられている。
【0012】
このLED信号機1で既設の信号制御システム10から制御信号が入力すると、入力した制御信号を第1の整流回路6で全波整流してダイオード8からLED発光部5に駆動電流を供給してLED発光部5を点灯させる。また、新しい信号制御システム20から制御信号が入力して小型制御端末2のリレー接点Rを導通させると第2の整流回路7に交流電圧が供給され、第2の整流回路7で全波整流してLED発光部5に駆動電流を供給してLED発光部5を点灯させる。
【0013】
このLED信号機1で例えばY現示とG現示を複合現示する場合は、図2の回路図に示すように、2個のLEDユニット3Y,3Gの第1の整流回路6を直列に接続して既設の信号制御システム10から伝送された制御信号を入力し、LEDユニット3Yの第2の整流回路7は小型制御端末2の出力回路に設けた1対のリレー接点YRを介して制御信号を入力し、LEDユニット3Gの第2の整流回路7は小型制御端末2の出力回路に設けた1対のリレー接点GRを介して制御信号を入力する。
【0014】
この2個のLEDユニット3Y,3Gを有するLED信号機1に既設の信号制御システム10で複合現示させる場合、既設の信号制御システム10のリレー接点YGRを導通させてLEDユニット3Y,3Gの直列接続された第1の整流回路6に交流電圧を供給する。このとき新しい信号制御システム20から制御信号が入力しないので小型制御端末2の出力回路の設けたリレー接点YR,GRはオフの状態になっている。LEDユニット3Y,3Gの第1の整流回路6に供給された交流電圧は第1の整流回路6で全波整流されて、図2の破線で示すように、LEDユニット3YのLED発光部5とLEDユニット3GのLED発光部5に駆動電流を流して点灯してYG現示にする。
【0015】
また、新しい信号制御システム20から制御信号を入力してLEDユニット3YのLED発光部5を点灯するときは、図3の回路図に示すように、新しい信号制御システム20からの制御信号により小型制御端末2のリレー接点YRを導通させる。このリレー接点YRの導通によりLEDユニット3Yの第2の整流回路7に交流電圧が供給され、第2の整流回路7で全波整流してLED発光部5に駆動電流を供給してLED発光部5を点灯させてY現示とする。このとき小型制御端末2のリレー接点GRはオフの状態になっており、かつリレー接点GRが両線制御方式であるから、LEDユニット3Gの第2の整流回路7に駆動電流が回り込むことはなく、LEDユニット3GのLED発光部5が点灯することを確実に防止することができる。
【0016】
また、新しい信号制御システム20からの制御信号により複合現示させる場合は、新しい信号制御システム20からの制御信号により小型制御端末2のリレー接点YRとリレー接点GRを導通させることによりLEDユニット3YのLED発光部5とLEDユニット3GのLED発光部5を点灯させてYG現示にする。
【符号の説明】
【0017】
1;LED信号機、2;小型制御端末、3;LEDユニット、4;絶縁トランス、
5;LED発光部、6;第1の整流回路、7;第2の整流回路、8;ダイオード、
YR,GR;リレー接点、YGR;リレー接点、10;既設の信号制御システム、
20;新しい信号制御システム。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−1114号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設信号制御システムと新しい信号制御システムとの接続手段を有するLED信号機において、
小型制御端末とLEDユニットを有し、
前記小型制御端末は、両線制御方式の出力回路を有し、新しい信号制御システムから伝送された制御信号を前記LEDユニットに出力し、
前記LEDユニットは、LED発光部と、既設信号制御システムから伝送された制御信号を整流して前記LED発光部に駆動電流を供給する第1の整流回路と、前記小型制御端末からの制御信号を整流して前記LED発光部に駆動電流を供給する第2の整流回路及び前記第1の整流回路から前記LED発光部に駆動電流を供給する回路に設けられ、前記第2の整流回路からの駆動電流を阻止するダイオードとを有することを特徴とするLED信号機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−20564(P2011−20564A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167351(P2009−167351)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】