説明

LED光照射装置および印刷装置

【課題】 装置内部を効率的に冷却することができるLED光照射装置およびこれを備える印刷装置を提供する。
【解決手段】LED3を一方面に実装した基板2と、基板2の他方面に互いに間隔をあけて立設された複数のフィン4と、基板冷却用の空気を給送するファン5と、ファン5からの空気を複数のフィン4に向けて案内する案内流路10と、を備え、複数のフィン4は、基板2の他方面から互いに平行に延びるように起立しており、隣接するフィン4によって挟まれた空間に空気流路8が形成されており、案内流路10の幅は、下流側が上流側より狭くなっている、LED光照射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光を照射するLED光照射装置、及び、当該LED光照射装置を備える印刷装置に関する。より詳細には、冷却構成を備えるLED光照射装置およびこれを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LED(発光ダイオード)を有するLED光照射装置として、図9に示すような構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。図9に示すように、このLED光照射装置100は、通電により発光するLED101と、このLED101を一方面(下面)に実装した基板102と、基板102の他方面(上面)に間隔をあけて立設された平板状の複数のフィン103,103・・とを備えている。また、LED光照射装置100は、複数のフィン103,103・・の上方に配置されて複数のフィン103,103・・に基板冷却用の空気を給送するファン104を備えている。また、複数のフィン103,103・・は互いに平行になるように並置されており、互いに対面するフィン103,103によって挟まれた空間により空気流路105が形成されている。
【0003】
このような構成を備えるLED光照射装置100では、LED101が発光することにより発熱すると、このLED101の発光熱により基板102が発熱する。これに対して、ファン104から基板冷却用の空気をフィン103に対して供給し、この冷却空気によってフィン103を冷却することにより、フィン103の下に配置された基板102を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−212477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなLED光照射装置100では、基板冷却用の空気をファン104から下方へ向かって給送したときに、この冷却空気が複数のフィン103,103・・の上端に衝突してしまい、冷却空気を下方へスムーズに送れないことがあった。そのため、冷却空気が下方へ流れないので、空気流路105の下部(底部)の方へ冷却空気をスムーズに導入することができず、冷却空気が空気流路105の上部(入口付近)に留まってしまうことがあった。その結果、フィン103の下部を冷却することができず、基板102を効率的に冷却することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、装置内部を効率的に冷却することができるLED光照射装置、及び、これを備える印刷装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのLED光照射装置であって、LEDを一方面に実装した基板と、前記基板の他方面に互いに間隔をあけて立設された複数の放熱部材と、基板冷却用の空気を給送するファンと、前記ファンからの空気を前記複数の放熱部材に向けて案内する案内流路と、を備え、隣接する前記放熱部材によって挟まれた空間に空気流路が形成されており、前記案内流路は、下流側の流路幅が上流側の流路幅より狭くなっており、前記ファンからの空気を案内して前記空気流路に導入可能である、LED光照射装置。
【0008】
このような構成によれば、案内流路10の下流側の幅が上流側の幅より狭いので、下流側の空気の流速を上流側の流速より速くすることができ、その結果、空気圧を高めることができる。これにより、圧力が高くなった空気を空気流路8に送ることができるので、空気を空気流路8にスムーズに流入させることができる。その結果、冷却効果をより高めることができる。
【0009】
また、上記LED光照射装置において、前記複数の放熱部材は、それぞれ薄板から形成され、2列に並べて配置されており、対向する前記列によって囲まれた空間に空気導入部が形成されており、前記案内流路は、前記ファンからの空気を案内して前記空気導入部に導入可能であることが好ましい。
【0010】
あるいは、上記LED光照射装置において、前記複数の放熱部材は、それぞれ薄板から形成され、一端部に切り欠きからなる空気導入部が形成されており、前記案内流路は、前記ファンからの空気を案内して前記空気導入部に導入可能であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するための印刷装置であって、上記のいずれかのLED光照射装置を備え、前記LEDは、紫外線を発光する印刷装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のLED光照射装置及びこれを備える印刷装置によれば、装置内部を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るLED光照射装置の断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】LED光照射装置の要部拡大図である。
【図4】LED光照射装置の要部拡大図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】他の実施形態に係るLED光照射装置の要部拡大図である。
【図7】更に他の実施形態に係るLED光照射装置の要部拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図9】従来のLED光照射装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るLED光照射装置の断面図である。また、図2は、図1のA−A断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、LED光照射装置1は、複数の基板2,2・・と、各基板2の一方面(裏面)にそれぞれ実装された複数のLED(発光ダイオード)3,3・・と、各基板2の他方面(表面)にそれぞれ起立するように間隔をあけて配置された複数のフィン(放熱部材)4,4・・とを備えている。また、LED光照射装置1は、複数のフィン4,4・・の上方に配置された複数のファン5,5・・と、フィン4とファン5との間に配置された一対の案内板6、6とを備えている。上記各構成要件は、ケーシング20内に収容されており、ねじ等の固定具によりケーシング20に固定されている。
【0016】
基板2は、電子回路等を実装する公知の基板であり、例えばアルミニウム等から形成されており、LED3の発光熱により発熱する。また、LED3は、基板2に配置された公知の発光ダイオードであり、通電により発光し、発光時に発熱する。また、ファン5は、基板冷却用の空気を給送する公知の送風機である。
【0017】
図3および図4は、LED光照射装置の要部拡大図であり、図5は、図4のB−B断面図である。図3および図4に示すように、各フィン4は、金属の薄板から形成されており、正面視において矩形状に形成され、断面視において湾曲状に形成されている。また、複数のフィン4,4・・は、それぞれ、下端部が基板2に接触するように立設され、基板2の他方面から互いに平行に延びるように起立している。また、各フィン4は、その上端から下端まで延びる側辺7を備えている。
【0018】
また、図4及び図5に示すように、複数のフィン4,4・・は、2列に並べて配置されており、それぞれが平行になるように並べて配置されている。そして、互いに隣接して対面するフィン4,4によって挟まれた空間により空気流路8が形成されている。これにより、複数の空気流路8,8・・が2列に並んで形成されている。対面するフィン4,4の間隔(空気流路8の幅)は、1.5mm〜3.0mmが好ましい。
【0019】
また、2列に並んだ複数のフィン4,4・・は、一方の列のフィン4の側辺7と他方の列のフィン4の側辺7とが互いに対向するように配置されている。そして、対向する列によって囲まれた空間、すなわち、2列に並んだ複数のフィン4,4・・の側辺7,7・・によって囲まれた空間により、空気導入部9が形成されている。この空気導入部9は、フィン4の上端の高さ位置から、下方に入り込み、基板2の表面の高さ位置まで延びるように形成されている。また、空気導入部9は、複数の空気流路8,8・・に連通している。
【0020】
また、図2に示すように、一対の案内板6、6は、ケーシング20に固定され、ファン5から空気導入部9に向かうように延びており、一端(上端)がファン5の下端近傍に位置し、他端(下端)が空気導入部9の上端近傍に位置するように配置されている。案内板6の下端の高さ位置は、フィン4の上端の高さ位置よりわずかに上方に位置している。また、一対の案内板6、6によって囲まれた空間により空気の案内流路10が形成されており、この案内流路10は、ファン5から空気導入部9に向かうように延びている。また、案内流路10の上流側はファン5の下方で開口し、下流側は空気導入部9の上方で開口しており、ファン5からの冷却空気を案内流路10を介して空気導入部9に導入可能に構成されている。また、一対の案内板6、6は、上端部が離間し、下端部が接近するように構成されており、これにより、案内流路10は、上流が拡大し、下流が縮小しており、下流側の流路幅が上流側の流路幅より狭くなっている(下流側の断面積が上流側の断面積より小さくなっている)。
【0021】
次に、以上のように構成されたLED光照射装置1の作動を説明する。LED光照射装置1を作動させるときはまず、図示しない電源をオンにすることにより、LED3を発光させると共に、ファン5を作動させる。そうすると、LED3の発光熱により基板2が発熱する。また、ファン5の作動により、基板冷却用の空気がファン5から案内流路10に送られる。案内流路10に供給された基板冷却用の空気は、上流から下流へ流れてゆき、図4、図5に矢印で示すように、空気導入部9へ導入され、その後、空気導入部9からこれに連通する空気流路8へ流れてゆき、空気流路8の外部へ排出される。この過程で、空気流路8を流れる冷却空気によりフィン4が冷却され、フィン4の冷却により基板2が冷却される。このとき、本発明のLED光照射装置1によれば、案内流路10の下流側の幅が上流側の幅より狭いので、下流側の空気の流速を上流側の流速より速くすることができ、その結果、空気圧を高めることができる。これにより、圧力が高くなった空気を空気流路8に送ることができるので、空気を空気流路8にスムーズに流入させることができる。その結果、冷却効果をより高めることができる。
【0022】
また、複数のフィン4,4・・の側辺7,7・・によって囲まれた空間により空気導入部9が形成されているので、空気導入部9へ送られた冷却空気をフィン4の側辺7に沿うように下方へ案内することができる。これにより、空気導入部9の冷却空気が下方へ案内されるので、冷却空気をフィン4の下部に向かって導入することができる。その結果、冷却空気がフィン4の下部まで十分に行きわたる。そして、この空気が空気導入部9から空気流路8へ流れてゆくので、空気流路8の上部から下部にわたる全体に冷却空気を流すことができる。これにより、フィン4全体を効率的に冷却することができるので、基板2を効率的に冷却することができる。よって、本発明によれば、装置内部を効率的に冷却することができる。
【0023】
また、空気導入部9がフィン4の上端の高さ位置から下方に入りこんでいるので、空気流路8への空気の流入面積を大きくすることができる。これにより、空気流路8へ空気を流しやすくなるので、フィン4を確実に冷却することができる。
【0024】
また、従来のようにフィン4の上方から直接空気流路8に空気を送ろうとする場合、フィン4が湾曲形状であると、湾曲部分により空気の流入が阻害されることがあった。しかしながら、上記のLED光照射装置1によれば、冷却空気を空気導入部9に導入してから空気流路8へ流すので、従来のようにフィン4の湾曲部分によって空気の流れが阻害されることがない。したがって、冷却空気を空気流路8へスムーズに送ることができる。よって、本発明はフィン4が湾曲形状である場合に特に有効である。
【0025】
また、案内板6の下端がフィン4の上端の高さ位置より上方に位置していると、案内板6の下端とフィン4の上端との隙間を介して外部空気を空気導入部9に導入することができる。これにより、ファン5からの空気と共に外部の新鮮な空気も空気導入部9に導入することができるので、冷却効率をより高めることができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0027】
例えば、上記実施形態では、複数のフィン4,4・・・が2列に並ぶ構成であったが、この構成に限定されるものではない。図6は、他の実施形態に係るLED光照射装置の要部拡大図である。図6において、図4と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。図6に示すように、複数のフィン4,4・・・は、1列に並ぶように配置されている。各フィン4は、上端部の中央部から下方に向かって切り欠かれて凹状に形成されており、切り欠き部分において対向する側辺7、7が形成されている。そして、凹状の切り欠きからなる空間、すなわち、1列に並んだ複数のフィン4,4・・の側辺7,7・・によって囲まれた空間により、空気導入部9が形成されている。このように、各フィン4の上端を中央部分において一部低く形成することによっても、空気導入部9を形成することができる。このような構成によっても、側辺7,7によって空気導入部9が形成され、この空気導入部9が側辺7に沿って下方に延びているので、冷却空気を空気導入部9に導入して下方へ案内することができる。これにより、冷却空気が空気流路8の下部まで十分にゆきわたるので、フィン4を確実に冷却することができる。
【0028】
また、上記実施形態では、案内板6の下端がフィン4の上端の高さ位置より上方に位置していたが、この構成に限定されるものではない。図7は、更に他の実施形態に係るLED光照射装置の要部拡大図である。図7において、図4と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。図7に示すように、案内板6の下端は、フィン4の上端の高さ位置より下方に位置しており、空気導入部9に進入していてもよい。このような構成によれば、冷却空気をより確実に空気導入部9に供給することができる。また、案内板6の下端がより下方へ延びることにより、案内流路10の流路幅がより狭くなるので、冷却空気の流速をより速くすることができる。よって、冷却空気を空気導入部9の底部に確実に導入することができ、冷却効果をより高めることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、各フィン4は、断面視において湾曲するような形状であったが、この構成に限定されず、断面視において直線状にすることもできる。
【0030】
また、上記実施形態では、放熱部材としてフィン4を用いていたが、放熱部材の構成はこれに限定されるものではない。例えば、放熱部材として棒状体(図示せず)を用いることもできる。そして、複数の棒状体は、基板2の上面にそれぞれ起立するように間隔をあけて配置され、下端部が基板2に接触するように立設されている。このような構成によっても、隣接する棒状体によって囲まれた空間により空気流路8を形成することができ、空気流路8に空気を流すことができる。
【0031】
また、上記実施形態では、空気導入部9を備える構成であったが、この空気導入部9を省略することもできる。すなわち、図6に示すフィン4の上端に必ずしも切り欠きを形成しなくてもよい。このような構成によっても、ファン5からの空気を案内流路10によって案内した後、空気流路8に導入することができる。
【0032】
また、上述の各LED光照射装置1は、印刷装置において用いることができる。図8は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の概略構成図である。図8に示すように、印刷装置21は、紙等の印刷媒体Pを搬送する複数の搬送ローラ22,22と、印刷媒体Pに向かってインクを噴出するため複数のインク噴出装置23,23・・とを備えている。また、印刷装置21は、各インク噴出装置23の間にそれぞれ配置された複数のLED光照射装置1,1・・を備えている。
【0033】
インク噴出装置23としては、例えば、インクを微滴化して印刷媒体Pに直接噴出する公知のピエゾ方式のインクジェット装置を用いることができる。また、複数のインク噴出装置23,23・・は、それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)のインクを噴出するように構成されている。
【0034】
LED光照射装置1は、上述した各実施形態におけるLED光照射装置1を用いることができ、LED3は、紫外線を発光する紫外線発光ダイオードを用いている。
【0035】
このような構成を備える印刷装置21により印刷をするときは、まず、搬送中の印刷媒体Pに対して各インク噴出装置23からインクを噴出する。これにより、印刷媒体Pにインクが付着する。また、それと伴に、インクが付着した印刷媒体Pに対して各LED光照射装置1から紫外線を照射することにより、この紫外線によってインクが硬化する。このようにして印刷を行うことができる。
【0036】
また、印刷装置21は上記実施形態に係る構成に限定されるものではなく、種々の形態の印刷装置においてLED光照射装置1を用いることができる。例えば、上記実施形態に係る印刷装置21では、インクジェット方式のインク噴出装置23を用いていたが、印刷の方式はこの構成に限定されるものではなく、インク噴出装置23の替わりに凸版を用いて、凸版印刷方式にすることもできる。凸版印刷とは、表面に凹凸を有する版の凸部分にインクを乗せて印刷媒体Pにインクを転写する公知の印刷方式である。
【符号の説明】
【0037】
1 LED光照射装置
2 基板
3 LED(発光ダイオード)
4 フィン(放熱部材)
5 ファン
6 案内板
7 側辺
8 空気流路
9 空気導入部
10 案内流路
20 ケーシング
21 印刷装置
22 搬送ローラ
23 インク噴出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを一方面に実装した基板と、
前記基板の他方面に互いに間隔をあけて立設された複数の放熱部材と、
基板冷却用の空気を給送するファンと、
前記ファンからの空気を前記複数の放熱部材に向けて案内する案内流路と、を備え、
隣接する前記放熱部材によって挟まれた空間に空気流路が形成されており、
前記案内流路は、下流側の流路幅が上流側の流路幅より狭くなっており、前記ファンからの空気を案内して前記空気流路に導入可能である、LED光照射装置。
【請求項2】
前記複数の放熱部材は、それぞれ薄板から形成され、2列に並べて配置されており、対向する前記列によって囲まれた空間に空気導入部が形成されており、
前記案内流路は、前記ファンからの空気を案内して前記空気導入部に導入可能である請求項1に記載のLED光照射装置。
【請求項3】
前記複数の放熱部材は、それぞれ薄板から形成され、一端部に切り欠きからなる空気導入部が形成されており、
前記案内流路は、前記ファンからの空気を案内して前記空気導入部に導入可能である請求項1に記載のLED光照射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のLED光照射装置を備え、
前記LEDは、紫外線を発光し、インクが付着した印刷媒体に紫外線を照射する印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−182372(P2012−182372A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45224(P2011−45224)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】