説明

LED照明装置

【課題】 テレビカメラの捉える映像にちらつきが生じないようにしたLED照明装置を提供することである。
【解決手段】 複数のLED14を有したLED器具12は、被写体の照明用に使用され、LED点灯装置13でPWM制御されてLED14の点灯が行われる。LED点灯装置13は、テレビカメラで撮影した被写体の映像の奇数フィールドと偶数フィールドとの明るさがほぼ同じになるように、かつ、人間の目に映像のちらつきを感じない周波数でPWM制御しLED14を点灯する。これにより、テレビカメラで撮影した映像でもちらつかなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を用いた舞台・スタジオ向けのLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、舞台やテレビスタジオ等の照明用に使用されるスポットライトの光源には、ハロゲン電球や放電ランプが使用されている。これは、光源の発光部分がレンズに対して十分小さく、レンズが光源の光を充分に取り込むことができ効率よく照射できるからである。ハロゲン電球や放電ランプを用いたスポットライトでは、フィラメントをできるだけ高温に熱して光を発生させるので、可視光だけでなく多くの熱線を放射する。従って、光源を収納する筐体には熱に耐える鉄あるいは軽金属の板が使用され、またレンズも耐熱性のガラスが使用されるので、スポットライトが重くなりスポットライトの移動に労力を要している。
【0003】
そこで、多数のLEDを光源として配置し、各LEDの照射ビームを一点に集光させて仮想の単一点光源ユニットを構成し、この光源ユニットとレンズとの位置関係を可変にして被照射面の照度及び照度分布を変化させるようにしたLED照明装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−307502号公報(図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、LED照明装置の光源であるLEDをPWM制御で点灯制御して、LEDによる照射面(被写体)をテレビカメラなどで撮影すると、PWM制御の周波数帯によっては、テレビカメラの映像にちらつき(フリッカ)が発生することがある。
【0005】
これは、PWM制御によるLEDの点灯制御は、所定の周波数でLEDの点消灯を繰り返し、LEDの点灯時間をパルス幅の大きさで制御して照射面の明るさを制御するものであることから、テレビカメラで撮影するタイミングがLEDの点消灯のタイミングに適合しない場合があるからである。
【0006】
一般に、テレビカメラは同一映像を奇数フィールドと偶数フィールドとで取り込み撮影するが、例えば、奇数フィールドの映像を取り込む際にはLEDが点灯しており、偶数フィールドの映像を取り込む際にはLEDが消灯していると、奇数フィールドの映像は明るく偶数フィールドの映像は暗くなってしまうので、同一映像にちらつきが生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、テレビカメラの捉える映像にちらつきが生じないようにしたLED照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わるLED照明装置は、複数のLEDを有し被写体の照明用に使用され、PWM制御されて前記LEDの点灯が行われるLED器具と;テレビカメラで撮影した前記被写体の映像の奇数フィールドと偶数フィールドとの前記PWM制御による前記LEDの点灯時間の差分が前記映像のちらつきに影響しない周波数でPWM制御し前記LEDを点灯するLED点灯装置と;を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義及び技術的意味は以下による。LED照明装置は、舞台やテレビスタジオ等の照明用に使用されるスポットライトとして使用される照明装置であり、光源として複数のLED(発光ダイオード)が使用され、被写体に対して集光レンズで集光した光を照射する。LEDとしては、いわゆるパワー型LED及び砲弾型LEDの双方を含み、パワー型LEDのみが配置される場合、砲弾型LEDのみが配置される場合、パワー型LED及び砲弾型LEDの双方が配置される場合の双方を含む。LEDの発光出力はLED点灯装置によりLEDに供給される点灯電源を所定の周波数でPWM(パルス幅)制御することにより制御される。
【0010】
LED点灯装置は、所定の周波数でLEDに供給される点灯電源をPWM制御しLEDを点灯する。すなわち、制御部でスイッチ素子を所定の周波数でPWM制御し、LEDに供給される点灯電源を制御してLEDの点灯時間を調節し、LEDの発光出力を制御する。その際の所定の周波数は、テレビカメラで撮影した被写体の映像の奇数フィールドと偶数フィールドとのPWM制御によるLEDの点灯時間の差分が映像のちらつきに影響しない高い周波数とする。例えば、PWM制御の周波数を4.5kHz以上に設定する。
【0011】
これにより、テレビカメラで撮影した映像における奇数フィールドと偶数フィールドとのPWM制御による差分は最大で1パルス分であるから、その1パルス分の差分が生じてもテレビカメラの映像のちらつきに影響しない。
【0012】
本発明によれば、PWM制御の周波数を高くするので、テレビカメラの映像の奇数フィールドと偶数フィールドとで明るさの差分(1パルス)が生じても、テレビカメラの映像のちらつきへの影響が小さくなる。従って、テレビカメラで撮影した映像でもちらつかなくなる。
【0013】
請求項2の発明に係わるLED照明装置は、複数のLEDを有し被写体の照明用に使用され、前記LEDの点灯がPWM制御により行われるLED器具と;前記PWM制御の周波数が前記被写体の映像を撮影するテレビカメラの同期周波数の整数倍かつ299.7Hz以上となる周波数でPWM制御し前記LEDを点灯するLED点灯装置と;を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明は、PWM制御の周波数として高い周波数とすることに代えて、テレビカメラの同期周波数の整数倍となる周波数でPWM制御するようにしたものである。例えば、テレビカメラの同期周波数(59.94Hz)に対し、PWM制御の周波数をその同期周波数(59.94Hz)の整数倍とする。これにより、テレビカメラで撮影した映像における奇数フィールドと偶数フィールドとのパルスを同数とすることができ、奇数フィールドと偶数フィールドとを同じ明るさにすることができる。なお、実用的には、300Hz未満の低い周波数では、人間の目による目視の段階でちらついてしまうので、テレビカメラの同期周波数(59.94Hz)の5倍の周波数(299.7Hz)以上とすることが望ましい。
【0015】
本発明によれば、カメラの同期周波数(59.94Hz)の整数倍に設定するので、奇数フィールドおよび偶数フィールドがともに同じ明るさとなり、しかも、人間の目による目視の段階でちらつかない周波数、すなわち、カメラの同期周波数(59.94Hz)の5倍以上の299.5Hz以上に設定するので、カメラで撮影した映像もちらつかなくなる。これにより、LED器具による照射面(被写体)をテレビカメラなどで撮影した際のちらつき(フリッカ)を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、PWM制御の周波数を高くするので、テレビカメラの映像の奇数フィールドと偶数フィールドとで明るさの差分(1パルス)が生じても、テレビカメラの映像のちらつきへの影響が小さくなる。従って、テレビカメラで撮影した映像でもちらつかなくなる。
【0017】
請求項2の発明によれば、カメラの同期周波数(59.94Hz)の整数倍に設定するので、奇数フィールドおよび偶数フィールドがともに同じ明るさとなり、しかも、人間の目による目視の段階でちらつかない周波数、すなわち、カメラの同期周波数(59.94Hz)の5倍以上の299.5Hz以上に設定するので、カメラで撮影した映像もちらつかなくなる。これにより、LED器具による照射面(被写体)をテレビカメラなどで撮影した際のちらつき(フリッカ)を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の実施の形態に係わるLED照明装置の構成図、図2は正面図である。LED照明装置11はLED器具12とLED点灯装置13とから構成される。LED器具12には、複数のLED14を配列したLED配列部15が収納されるとともに、LED配列部15の複数のLED14から出射された出射光を集光して外部に照射する集光レンズ16が収納されている。
【0019】
集光レンズ16は、LED配列部15から離間して配設され、LED配列部15の複数のLED14から出射される出射光を集光するものであり、球面レンズや平坦状レンズで形成される。図1では1個のフレネルレンズを用いた場合を示している。
【0020】
また、集光レンズ16とLED配列部15との距離を相対的に可変とする移動機構17が設けられており、移動機構17は光源フォーカスハンドル17a及びレンズフォーカスハンドル17bから構成されている。この移動機構17によりフォーカスさせることにより、被写体の被照射面での照射面積を連続変化させ、また光量を連続変化させる。また、LED器具の集光レンズ16側にはバンドア18が設けられており、このバンドア18の開閉角度を調節することにより、LED器具12からの光の照射範囲を調節する。
【0021】
LED点灯装置13は、調光信号に基づいてLEDを調光制御する制御部19と、制御部19からの指令に基づいてスイッチ素子を駆動しLED14に供給される点灯電源を所定の周波数でPWM(パルス幅)制御するドライバ20とから構成される。これにより、LED14の発光出力は調光信号に基づいて調光制御される。
【0022】
図3は、LED点灯装置13によるLED14のPWM制御の一例を示す特性図である。LED点灯装置13は、調光信号に基づいてLED14に供給する点灯電源の供給時間をPWM制御する。そのPWM制御の周波数は、テレビカメラで撮影した被写体の映像のちらつきに影響しない周波数とする。テレビカメラの同期周波数は59.94Hzであり約60Hzである。従って、映像の1フレームにおける奇数フィールドは約16.7ms、偶数フィールドも約16.7msである。この約16.7msの間に、奇数フィールドと偶数フィールドとで1パルス分の差による明るさの差が生じても、人間の目で映像のちらつきを感じない周波数とする。例えば、PWM制御の周波数を4.5kHz以上に設定する。
【0023】
このように、テレビカメラで撮影した被写体の映像の奇数フィールドと偶数フィールドとのPWM制御によるLED14の点灯時間の差分が映像のちらつきに影響しない周波数でPWM制御し、LED14を点灯するので、テレビカメラで撮影した映像でもちらつかなくなる。
【0024】
図4は、LED点灯装置13によるLED14のPWM制御の他の一例を示す特性図である。図4の一例は、LED点灯装置13でのPWM制御の周波数が被写体の映像を撮影するテレビカメラの同期周波数の整数倍で、かつテレビカメラの同期周波数の5倍、すなわち、299.7Hz以上となる周波数でPWM制御するようにしたものである。PWM制御の周波数をテレビカメラの同期周波数の整数倍とすることで、テレビカメラで撮影した映像の奇数フィールドと偶数フィールドとのパルス数が同数となる。従って、奇数フィールドと偶数フィールドとが同じ明るさになる。
【0025】
なお、テレビカメラで撮影した映像の奇数フィールドと偶数フィールドとのパルス数が同数であっても、約300Hz未満の周波数では、人間の目による目視でちらつきを感じるので、PWM制御の周波数は、テレビカメラの同期周波数(59.94Hz)の5倍の周波数(299.7Hz)以上の周波数としている。これにより、LED器具12による被写体の照射面をテレビカメラで撮影した際のちらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係わるLED照明装置の構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係わるLED照明装置の正面図。
【図3】本発明の実施の形態におけるLED点灯装置によるLEDのPWM制御の一例を示す特性図。
【図4】本発明の実施の形態におけるLED点灯装置によるLEDのPWM制御の他の一例を示す特性図。
【符号の説明】
【0027】
11…LED照明装置、12…LED器具、13…LED点灯装置、14…LED、15…LED配列部、16…集光レンズ、17…移動機構、18…バンドア、19…制御部、20…ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを有し被写体の照明用に使用され、PWM制御されて前記LEDの点灯が行われるLED器具と;
テレビカメラで撮影した前記被写体の映像の奇数フィールドと偶数フィールドとの前記PWM制御による前記LEDの点灯時間の差分が前記映像のちらつきに影響しない周波数でPWM制御し前記LEDを点灯するLED点灯装置と;
を備えたことを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
複数のLEDを有し被写体の照明用に使用され、前記LEDの点灯がPWM制御により行われるLED器具と;
前記PWM制御の周波数が前記被写体の映像を撮影するテレビカメラの同期周波数の整数倍かつ299.7Hz以上となる周波数でPWM制御し前記LEDを点灯するLED点灯装置と;
を備えたことを特徴とするLED照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−79990(P2006−79990A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264120(P2004−264120)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】