説明

LED用電源回路

【課題】既存の白熱灯用電子トランスに接続して使用するLED用電源回路であって、当該電子トランスのインバータ回路が発振できない、あるいは発振が停止するのを回避して、LEDを定常点灯させることのできるLED用電源回路を提供する。
【解決手段】LED用電源回路10を、電子トランス14から出力された交流電圧Viを整流する整流回路18と、整流回路18から出力された直流電圧Vdcを受けて、LED16に対して定電流を供給する定電流回路20と、整流回路18の一次側において、整流回路18に並列接続された抵抗42を有する起動回路22とで構成することにより、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の白熱灯用電子トランスに接続して発光ダイオード等のランプを点灯させるLED用電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
白熱球を使用したスポットライトとして、従来から、12Vの電圧で点灯するハロゲンランプが一般的に使用されており、このようなハロゲンランプを点灯させるため、商用交流電源(100V、50あるいは60Hz)からの交流電圧を12Vまで降圧してハロゲンランプに供給する電子トランスが使用されている(このような電子トランスに関係する発明の例として、特許文献1を挙げることができる。)。
【0003】
一般的な電子トランス1は、図7に示すように、大略、商用交流電圧Vinを整流する整流回路2と、整流回路2の二次側に接続された自励発振式のインバータ回路3と、整流回路2およびインバータ回路3の間に取り付けられ、インバータ回路3の発振を開始させるためのトリガ回路4とで構成されている。
【0004】
図示したインバータ回路3は、いわゆるハーフブリッジ形であり、トリガ回路4から延びる一対の出力ライン5a、5bの間において、互いに直列に接続された2個のコンデンサC1、C2と、2個のスイッチング素子(この例ではトランジスタが用いられている)Q1、Q2と、これら2個のスイッチング素子Q1、Q2を自励発振により交互にオン・オフさせる帰還トランスT1と、二次側にハロゲンランプ等の白熱灯6が接続される出力トランスT2とで構成されている。
【0005】
また、トリガ回路4は、両端間の電圧がトリガ電圧に達することによって導通状態になるトリガ素子Q3と、整流回路2から延びる一対の出力ライン5a、5bの間において、互いに直列に接続されたトリガ用抵抗R1およびトリガ用コンデンサC3とで構成されている。
【0006】
この電子トランス1によれば、商用交流電源7からの交流電圧Vinは、整流回路2で整流されて脈流の直流電圧となり、インバータ回路3にて高周波の交流電圧Vacに変換された後、出力トランスT2で適切な電圧Vi(例えば、12V)まで降圧されて白熱灯6に供給される。
【0007】
ところで、最近、白熱灯に比べて消費電力が低く、かつ、長寿命といった長所を有する発光ダイオード(以下、「LED」という。)の使用範囲が、需要者のエコロジー意識の高まりとともに、省エネ対策のひとつとして急速に広まっており、また、白熱灯の代替としてLEDを使用したいというニーズも高まっている。
【0008】
上述した白熱灯用の電子トランス1にLEDを直接接続したとしてもLEDを適切に点灯させることはできない(例えば、電子トランス1にLEDを直接接続すると、LEDに大電流が流れることによって当該LEDが破損するおそれがある。)ことから、白熱灯の代替としてLEDを使用する場合、図8に示すように、電子トランス1とLED8との間には、電子トランス1から供給された高周波・低電圧の交流電圧Viを整流するとともに、LED8に対して定電流を供給するLED用電源回路9が取り付けられる。
【0009】
LED用電源回路9は、例えば、電子トランス1からの交流電圧Viを整流する整流回路Xと、整流回路Xからの直流電圧を受けて、LED8に定電流を供給する定電流回路Yとで構成されている。また、整流回路Xは、4つのダイオードD5〜D8で構成された全波整流用のダイオードブリッジX1と、当該ダイオードブリッジX1の二次側において並列に取り付けられた平滑用コンデンサC4とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−198384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、既存の電子トランス1は、LED8に比べて電力消費量が大きなハロゲンランプ(例えば、50W)を点灯するのに適した回路設計がなされており、このような電子トランス1にLED用電源回路9を接続してLED8を点灯させた場合、LED8の電力消費量が小さい(例えば、10W)ことから、電子トランス1には、白熱灯の点灯に使用されることを前提とした本来の設計電流値よりも小さな電流しか流れないことになる。
【0012】
加えて、LED8は「ダイオード」であるから、白熱灯のような「抵抗」とは異なり、順方向電圧が印加されることで電流が流れる非線形性を有している。このため、電子トランス1に流れる電流は、商用交流電源7から出力される交流電圧Vinの半サイクル中において一時的に著しく低下することになる。すなわち、LED8の順方向電圧(LED1灯当たり例えば3Vであり、図8に示すようにLEDが2灯の場合は約6V)を考慮すると、電子トランス1の出力電圧Viが上記順方向電圧(約6V)よりも小さい期間は、電流がほとんど流れない。
【0013】
このように、電子トランス1に流れる電流値が低下した場合、インバータ回路3の自励発振用のスイッチング素子Q1、Q2の増幅率が低下し、当該スイッチング素子Q1、Q2が発振できない、あるいは発振が停止して、LED8が点灯しない、あるいは点灯した後で不所望に消灯してしまうという問題があった。
【0014】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、既存の白熱灯用電子トランスに接続して使用するLED用電源回路であって、当該電子トランスのインバータ回路が発振できない、あるいは発振が停止するのを回避して、LEDを定常点灯させることのできるLED用電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載した発明は、「一対のスイッチング素子Q1、Q2と、前記一対のスイッチング素子Q1、Q2を自励発振によって交互にオン・オフさせる帰還トランスT1とを有するインバータ回路3を備える電子トランス14から出力された交流電圧Viを整流し、然る後、LED16に対して定電流を供給するLED用電源回路10であって、
前記電子トランス14から出力された交流電圧Viを整流する整流回路18と、
前記整流回路18から出力された直流電圧Vdcを受けて、前記LED16に対して定電流を供給する定電流回路20と、
前記整流回路18の一次側において、前記整流回路18に並列接続された抵抗42を有する起動回路22とを備えていることを特徴とするLED用電源回路10」である。
【0016】
この発明によれば、電子トランス14から出力された交流電圧Viは、互いに並列に接続された整流回路18と起動回路22とに印加される。そして、整流回路18(および当該整流回路18の二次側に接続された定電流回路20)には、LED16の消費電力量に応じた電流Ireが流れるとともに、起動回路22にも、当該起動回路22における抵抗42の抵抗値に応じた電流Istが流れる。これにより、電子トランス14には、整流回路18および定電流回路20に流れる電流Ireと、起動回路22に流れる電流Istとを合わせた電流Itrが流れることとなる。
【0017】
したがって、LED16の消費電力量が小さいことから整流回路18および定電流回路20に流れる電流Ireが小さい場合には、起動回路22における抵抗42の抵抗値を小さくして当該起動回路22に流れる電流Istを大きくすることにより、電子トランス14に流れる電流Itrを当該電子トランス14におけるインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2が発振できない、あるいは発振が停止するような電流値よりも大きくして、LED16を定常点灯させることができる。
【0018】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のLED用電源回路10に関し、「前記起動回路22は、前記抵抗42に対して直列に接続されたインダクタ44を更に有している」ことを特徴とする。
【0019】
起動回路22を抵抗42とコイル等のインダクタ44とを直列に接続して構成することにより、起動回路22を抵抗42のみで構成する場合に比べて、抵抗42の抵抗値を大きくすることができる。換言すれば、インダクタ44を加えることにより、起動回路22に流れる電流Istが(抵抗42のみで構成する場合に比べて)小さくなっても電子トランス14におけるインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2を発振させ続けることができる。これにより、起動回路22における消費電力量を小さくすることができる。
【0020】
なお、インダクタ44を加えることによって起動回路22に流れる電流Istが小さくなってもスイッチング素子Q1、Q2を発振させることができる理由については未だ明らかになっていないが、次のような理由が考えられる。
【0021】
すなわち、スイッチング素子Q1、Q2が自励発振しようとして極性が変化する際、インダクタ44に蓄積されたエネルギーによって起動回路22の端子間に起電力が発生し、これが電子トランス14におけるインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2を誘起させることにより、当該スイッチング素子Q1、Q2の発振を促進させることができるからである。
【0022】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載したLED用電源回路10に関し、「前記起動回路22は、前記抵抗42を構成する少なくとも2つの抵抗体46a、46bと、リレー48とを有しており、
前記リレー48は、前記2つの抵抗体46a、46bいずれか一方をバイパス状態として他方を使用するか、両者を非バイパス状態として使用するかを切り替えることにより、あるいは互いに抵抗値の異なる前記2つの抵抗体46a、46bにおける一方の前記抵抗体をバイパスするとともに他方の前記抵抗体を非バイパス状態にして使用するように切り替えることにより、前記スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後における前記抵抗42の抵抗値を、前記スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前における前記抵抗42の抵抗値よりも大きくする」ことを特徴とする。
【0023】
本発明は、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する際に必要な電流Itrの電流値と、発振を開始した後、発振を維持するのに必要な電流Itrの電流値とを比較すると、後者の方が小さいことを利用したものである。
【0024】
すなわち、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前において、起動回路22のリレー48が抵抗42を構成する2つの抵抗体46a、46bのいずれか一方をバイパス状態として他方を使用することにより、抵抗42の抵抗値が小さくなって起動回路22に流れる電流Istの電流値が大きくなり、その結果、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する際に十分な電流Itrが流れる。そして、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後において、リレー48が上記バイパス状態を解除する(=両者を非バイパス状態として使用する)ことにより、抵抗42の抵抗値が(発振開始前に比べて)大きくなって起動回路22に流れる電流Istの電流値が小さくなり、その結果、スイッチング素子Q1、Q2の発振を維持しつつ、起動回路22における消費電力量を低減させることができる。もちろん、互いに抵抗値の異なる2つの抵抗体46a、46bの一方の抵抗体をバイパスするとともに他方の抵抗体を非バイパス状態にして使用するように切り替えて抵抗42の抵抗値を上述のように変化させてもよい。
【0025】
請求項4に記載した発明は、請求項1または2に記載したLED用電源回路10に関し、「前記起動回路22における前記抵抗42は、PTCサーミスタである」ことを特徴とする。
【0026】
PTCサーミスタとは、Positive Temperature Coefficientサーミスタの略であり、印加される電圧の増加により、PTCサーミスタ自身の温度が自己発熱(あるいは周囲温度の上昇)によって上昇し、これとともに抵抗値が増大するという性質を有する抵抗体のことである。
【0027】
起動回路22の抵抗42としてこのPTCサーミスタを用いることにより、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前、すなわちLED用電源回路10が未だ通電されておらずPTCサーミスタ自身の温度が低いときには、PTCサーミスタの抵抗値は小さいことから、起動回路22に流れる電流Istは大きく、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する際に十分な電流Itrを流すことができる。そして、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後には、PTCサーミスタに印加される電圧が増加していくとともに(あるいはLED用電源回路10全体の温度が上昇することにより)PTCサーミスタ自身の温度が上昇し、これに伴いPTCサーミスタの抵抗値も大きくなる。これにより、起動回路22に流れる電流Istは小さくなるので、起動回路22における消費電力量を低減させることができる。
【0028】
このようにPTCサーミスタを用いることにより、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前後でPTCサーミスタ自身の温度が上昇して、当該PTCサーミスタの抵抗値が増加する性質を利用することにより、抵抗値を変化させるために複雑な回路を設ける必要がなく、簡単な回路構成でスイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前後における抵抗値を変化させることができる。
【発明の効果】
【0029】
既存の白熱灯用電子トランスを用いてLEDを点灯させる際、本発明のLED用電源回路を電子トランスとLEDとの間に取り付けることにより、LEDに流れる電流が小さい場合であっても、当該電子トランスのインバータ回路が発振できない、あるいは発振が停止するのを回避して、LEDを定常点灯させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のLED用電源回路を示す図である。
【図2】本発明のLED用電源回路に関する他の実施例を示す図である。
【図3】本発明のLED用電源回路に関する他の実施例を示す図である。
【図4】本発明のLED用電源回路に関する他の実施例を示す図である。
【図5】本発明のLED用電源回路に関する他の実施例を示す図である。
【図6】本発明のLED用電源回路に関する他の実施例を示す図である。
【図7】従来技術の電子トランスを示す図である。
【図8】従来技術のLED用電源回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を適用したLED用電源回路10について、図面を用いて説明する。図1は本実施例のLED用電源回路10を示す図である。
【0032】
LED用電源回路10は、商用交流電源12から電子トランス14を介して入力された交流電圧Viを整流し、定電流をLED16に供給する回路であり、大略、整流回路18と、定電流回路20と、起動回路22とで構成されている(なお、商用交流電源12から電子トランス14に供給される交流電圧を「Vin」とする。)。
【0033】
なお、本実施例では2つのLED16a、16bを順方向に直列接続したLED16を使用している。なお、使用するLEDの種類および個数に関する限定は特にないが、LED16の順方向電圧(複数のLEDを直列に接続した場合は各LEDの順方向電圧の総和)は電子トランス14から出力された交流電圧Vi以下にしなければならない。
【0034】
整流回路18は、上述のように、電子トランス14から出力された交流電圧Viを脈流の直流電圧Vdcに整流する回路であり、本実施例では、交流電圧Viを全波整流して脈流の直流電圧に変換する、4つのダイオード24a〜24dで構成されたフルブリッジ回路26と、フルブリッジ回路26の二次側において並列に接続された平滑用コンデンサ28とを備えている。なお、商用交流電源12から供給された交流電圧Viの利用効率は悪くなるが、上記全波整流回路に替えて半波整流回路を使用することもできる。
【0035】
フルブリッジ回路26を構成する4つのダイオード24a〜24dには、高周波用ダイオードとしてのショットキーバリアダイオード(SBD)あるいはファーストリカバリーダイオード(FRD)が使用される。
【0036】
平滑用コンデンサ28は、必要に応じて設けられる、フルブリッジ回路26から供給される脈流の直流電圧をより平滑にすると同時に定電流回路20から発生するスイッチングノイズを低減するコンデンサであり、その種類としては、例えば、温度特性の良好なフィルムコンデンサ等が用いられる。
【0037】
定電流回路20は、整流回路18の二次側においてこれと並列に取り付けられており、整流回路18で整流された脈流の直流電圧を受けて、これを必要に応じて降圧した後、LED16に定電流を供給するための回路であり、スイッチング用FET(電界効果トランジスタ)30、高速ダイオード32、および限流用インダクタ34で構成されたFETスイッチング部35と、電流検出用抵抗36と、スイッチング動作用内部発振器を有し、FETスイッチング部35のスイッチング用FET30をオン・オフ制御するPWM(パルス幅制御)回路38とで構成されている。
【0038】
この定電流回路20は、LED16の点灯電流を電流検出用抵抗36にてセンス電圧(電流検出用抵抗36のセンス電圧=点灯電流×電流検出用抵抗36の抵抗値)として検出し、当該センス電圧に対応してPWM回路38から出力されたパルス幅信号に応じてFETスイッチング部35をスイッチング動作させ、これによってFETスイッチング部35から出力される点灯電流をパルス幅制御して、LED16に定常点灯電流を供給するようになっている。
【0039】
もちろん、定電流回路20は上述した回路に限られず、他のスイッチング回路や、3端子レギュレータあるいはトランジスタを用いた回路等、様々な方式の回路を用いることができる。
【0040】
起動回路22は、整流回路18の一次側、すなわち電子トランス14から出力された電圧Viを整流回路18に給電する一対の給電ライン40間において、整流回路18に並列に接続された回路であり、本実施例では、抵抗42のみで構成されている。もちろん、抵抗42は、1つの抵抗体であってもよいし、複数の抵抗体を直列および/または並列に組み合わせたものであってもよい。
【0041】
電子トランス14は、商用交流電源12からの交流電圧Vin(100V、50Hzあるいは60Hz)を高周波の降圧した電圧Vi(例えば、12V)に変換する回路である。本実施例における電子トランス14の構成は、[背景技術]において説明した一般的な電子トランス1の構成と同じであることから、当該電子トランス1の説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0042】
次に、本実施例のLED用電源回路10を用いてLED16を点灯させたときの作用効果について説明する。
【0043】
商用交流電源12から出力された交流電圧(100V、50Hzあるいは60Hz)は、上述したように電子トランス14において高周波の降圧した電圧Vi(例えば、12V)に変換された後、LED用電源回路10に供給される。LED用電源回路10に供給された電圧Viは、整流回路18と、当該整流回路18に並列接続された起動回路22(=抵抗42)とに印加される。
【0044】
整流回路18に印加された電圧Viは、整流回路18におけるフルブリッジ回路26で全波整流されて脈流の直流電圧となった後、平滑用コンデンサ28でより平滑にされる。
【0045】
整流回路18から出力された脈流の直流電圧は定電流回路20に入力され、当該定電流回路20は、必要に応じて所定の電圧(例えば、数Vから十数V)まで降圧した定常点灯電流をLED16に供給し、LED16が点灯する。LED16が点灯しているとき、整流回路18および定電流回路20には、LED16の消費電力量に応じた大きさの電流Ireが流れる。
【0046】
一方、起動回路22(本実施例の場合は、抵抗42)に電圧Viが印加されることにより、起動回路22には、抵抗42の抵抗値に応じた大きさの電流Istが流れることから、電子トランス14には、整流回路18および定電流回路20に流れる電流Ireと、起動回路22に流れる電流Istとを合わせた電流Itrが流れることとなる。
【0047】
これにより、LED16の消費電力量が小さく、整流回路18および定電流回路20に流れる電流Ireが小さい場合であっても、起動回路22における抵抗42の抵抗値を小さくして当該起動回路22に流れる電流Istを大きくすることにより、電子トランス14に流れる電流Itrを当該電子トランス14におけるインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2が発振できない、あるいは発振が停止するような電流値よりも大きくして、LED16を定常点灯させることができる。
【0048】
具体例を示すと、電子トランス14が12V−50Wの白熱灯(ハロゲンランプ)を点灯するために設計されたものである場合において、起動回路22における抵抗42の抵抗値を30Ωに設定することにより、当該電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2を問題なく発振させるとともに、発振状態を維持することができた。この場合、起動回路22における消費電力量は約5Wであった。なお、抵抗42の抵抗値を30Ωよりも大きくすると(すなわち、起動回路22に流れる電流Istの電流値が小さくなると)、当該スイッチング素子Q1、Q2の発振を開始させることはできなかった。
【0049】
上記実施例では、起動回路22が抵抗42のみで構成されている場合について説明したが、起動回路22は、図2に示すように、抵抗42と、コイル等のようにインダクタンスを有するインダクタ44とを互いに直列に接続することによって構成してもよい。
【0050】
起動回路22を抵抗42とインダクタ44とを互いに直列に接続して構成することにより、起動回路22を抵抗42のみで構成する場合に比べて、当該抵抗42の抵抗値を大きくすることができる。換言すれば、インダクタ44を加えることにより、起動回路22に流れる電流Istを、抵抗42のみで構成する場合に比べて小さくしても、電子トランス14におけるインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2を発振させるとともに発振状態を維持し続けることができる。したがって、インダクタ44を加えることにより、起動回路22における消費電力量を小さくすることができる。
【0051】
なお、インダクタ44を加えることによって起動回路22に流れる電流Istが小さくなってもスイッチング素子Q1、Q2を発振させることができる理由については未だ明らかになっていないが、次のような理由が考えられる。
【0052】
すなわち、スイッチング素子Q1、Q2が自励発振しようとして極性が変化する際、インダクタ44に蓄積されたエネルギーによって起動回路22の端子間に起電力が発生し、これが電子トランス14におけるインバータ回路3のスイッチング素子Q1、Q2を誘起させることにより、当該スイッチング素子Q1、Q2の発振を促進させることができるからである。
【0053】
具体例を示すと、電子トランス14が12V−50Wの白熱灯(ハロゲンランプ)を点灯するために設計されたものである場合において、起動回路22における抵抗42の抵抗値を50Ω、インダクタ44のインダクタンスを100μHに設定することにより、当該電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2を問題なく発振させるとともに、発振状態を維持することができた。この場合、起動回路22での消費電力量は約2Wであった。このように、インダクタ44を加えることにより、抵抗42のみで起動回路22を構成した場合(抵抗42の抵抗値=30Ω、消費電力量=約5W)に比べて消費電力量を低減することができた。
【0054】
なお、上記具体例における電子トランス14のスイッチング周波数は50kHzであり、インダクタ44のインダクタンスが100μHである場合、そのリアクタンスは、2π×[スイッチング周波数]×[インダクタンス]=2π×50×103×100×10-6=31.4Ωとなる。上記具体例の場合、実験によるとリアクタンスは抵抗42の抵抗値に近い(厳密な意味で「近い」ということではなく、「大きくずれない」という意味)値で効果的な動作をすることが見いだされた。仮に、リアクタンスが大きくなりすぎると起動電流が低下して発振し難くなり、逆にリアクタンスが小さすぎるとインダクタ44に蓄積されるエネルギーが減少するので、スイッチング素子Q1、Q2を誘起させる効果が薄れる。
【0055】
また、起動回路22を、抵抗42を構成する少なくとも2つの抵抗体46a、46bと、リレー48とで構成し、リレー48によって、抵抗体46a、46bのいずれか一方をバイパス状態として他方を使用するか、両者を非バイパス状態として使用するかを切り替えることにより、あるいは、2つの抵抗体46a、46bの抵抗値を互いに異なるものとし、一方の抵抗体をバイパスするとともに他方の抵抗体を非バイパス状態にして使用するように切り替えることにより、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後における抵抗42の抵抗値を、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前における抵抗42の抵抗値よりも大きくしてもよい。もちろん、抵抗値を大きくした後でも、スイッチング素子Q1、Q2の発振状態が維持される程度の抵抗値が選択されることは言うまでもない。
【0056】
このような起動回路22は、例えば図3に示すように、互いに直列に接続された2つの抵抗体46a、46b(つまり、2つの抵抗体46a、46bで抵抗42が構成されている。)と、1つのリレー48とで構成することができる。
【0057】
リレー48は、電磁石50と当該電磁石50がオンオフすることによって開閉される継電部52とを有している。また、電磁石50に給電する一対の給電線54が整流回路18と定電流回路20とを電気的に接続する一対の直流給電ライン56にそれぞれ接続されている。
【0058】
継電部52からは3つの端子が出ており、共通端子52aは直列接続された2つの抵抗体46a、46bの間の接続点に接続されている。電磁石50が励磁されたときに共通端子52aと導通し、励磁されていないときに開放される開放端子52bは、どこにも接続されていない。電磁石50が励磁されていないときに開放され、励磁されたときに共通端子52aと導通接続する接続端子52cは、一方の抵抗体46aにおける、他方の抵抗体46bと接続する側とは反対の端子が接続された側の給電ライン40に接続されている。
【0059】
これにより、電磁石50が励磁されていないとき(すなわち、インバータ回路3におけるスイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前)において、共通端子52aは接続端子52cに接続しており、抵抗体46aはバイパス(短絡)されている。そして、電磁石50が励磁されているとき(すなわちインバータ回路3におけるスイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後)、共通端子52aは開放端子52bに接続しており、抵抗体46aはバイパス(短絡)されず、抵抗体46bと直列に接続されている。
【0060】
このような起動回路22を備えるLED用電源回路10を用いた場合、電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前は、整流回路18と定電流回路20との間における一対の直流供給ライン56間に電圧Vdcが印加されておらず、リレー48の電磁石50が励磁されていないことから、継電部52の共通端子52aは、接続端子52cと導通状態になっている。このため、一方の抵抗体46aはバイパスされ、他方の抵抗体46bの抵抗値に応じた電流Ist(電流値=大、消費電力量=大)が起動回路22に流れることとなる。
【0061】
電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後は、一対の直流給電ライン56間に電圧Vdcが印加されるので、リレー48の電磁石50が励磁されて継電部52の共通端子52aと接続端子52cとは非導通状態になり、替わりに共通端子52aと開放端子52bとが導通状態になることから、両方の抵抗体46a、46bの合計抵抗値に応じた電流Ist(電流値=小、消費電力量=小)が起動回路22に流れる。
【0062】
本実施例の起動回路22によれば、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前には、起動回路22における抵抗42の抵抗値を小さくして(=抵抗体46bの抵抗値のみ)当該起動回路22に流れる電流Istの電流値を大きくすることにより、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する際に十分な電流Itrが流れるようにする。そして、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後には、抵抗42の抵抗値を(発振開始前に比べて)大きくして(=抵抗体46aの抵抗値+抵抗体46bの抵抗値)起動回路22に流れる電流Istの電流値を小さくすることにより、スイッチング素子Q1、Q2の発振を維持しつつ、起動回路22における消費電力量を低減させることができる。
【0063】
具体例を示すと、電子トランス14が12V−50Wの白熱灯(ハロゲンランプ)を点灯するために設計されたものである場合において、一方の抵抗体46aの抵抗値を70Ω、他方の抵抗体46bの抵抗値を30Ωに設定することにより、電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2の発振開始時には、起動回路22における抵抗42の抵抗値を30Ω(消費電力量約5W)とし、発振開始後は、同抵抗値を70Ω+30Ω=100Ω(消費電力量約1.4W)として、起動回路22における消費電力量を低減しつつ、発振状態を維持することができた。なお、リレー48の電磁石50で消費される電力は、0.15Wと十分に小さいことから、リレー48を用いたことによる消費電力量の増加は問題にならない。
【0064】
さらに、図4に示すように、直列接続した2つの抵抗体46a、46bに加えて、インダクタ58を直列に接続してもよい。
【0065】
この場合、電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前は、上述のように、一方の抵抗体46aがバイパスされ、他方の抵抗体46bとこれに直列接続されたインダクタ58とによるR−L回路に電流Istが流れることになる。スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後は、両抵抗体46a、46bとインダクタ58とによるR−L回路となる。
【0066】
具体例を示すと、電子トランス14が12V−50Wの白熱灯(ハロゲンランプ)を点灯するために設計されたものである場合において、一方の抵抗体46aの抵抗値を150Ω、他方の抵抗体46bの抵抗値を50Ω、インダクタ58のインダクタンスを100μHに設定することにより、電子トランス14のスイッチング素子Q1、Q2の発振開始時には、50Ωの抵抗と100μHのインダクタンスとによるR−L回路で、起動回路22における消費電力量が約2Wとなり、発振開始後は、200Ω(=150Ω+50Ω)の抵抗と100μHのインダクタンスとによるR−L回路で、消費電力量を約0.7Wに低減することができた。
【0067】
また、抵抗42を構成する抵抗体46a、46bの少なくとも一方にPTCサーミスタ(Positive Temperature Coefficientサーミスタの略であり、印加される電圧の増加により、PTCサーミスタ自身の温度が自己発熱(あるいは周囲温度の上昇)によって上昇し、これとともに抵抗値が増大するという性質を有する抵抗体のこと)を用いることにより、リレー48が不要となり、起動回路22をより簡単な構成にすることができる。
【0068】
図5には、PTCサーミスタの抵抗体46aと通常の抵抗体46bとを互いに直列に接続した場合を示し、図6には、PTCサーミスタの抵抗体46aと通常の抵抗体46bとを互いに並列に接続した場合を示す。なお、図示しないが、1つのPTCサーミスタのみで抵抗42を構成してもよい。
【0069】
抵抗体46aにPTCサーミスタを用いることにより、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する前で未だPTCサーミスタ自身の温度が低いときには、PTCサーミスタの抵抗値は小さいことから、起動回路22に流れる電流Istは大きく、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始する際に十分な電流Itrを流すことができる。そして、スイッチング素子Q1、Q2が発振を開始した後には、PTCサーミスタに印加される電圧が増加していくとともに(あるいはLED用電源回路10全体の温度が上昇することにより)PTCサーミスタ自身の温度が上昇し、これに伴いPTCサーミスタの抵抗値も大きくなる。これにより、起動回路に流れる電流Istは小さくなるので、起動回路22における消費電力量を低減させることができる。
【符号の説明】
【0070】
10…LED用電源回路
12…商用交流電源
14…電子トランス
16…LED
18…整流回路
20…定電流回路
22…起動回路
24a〜24d…ダイオード
26…フルブリッジ回路
28…平滑用コンデンサ
30…スイッチング用FET
32…高速ダイオード
34…限流用インダクタ
35…FETスイッチング部
36…電流検出用抵抗
38…PWM回路
40…給電ライン
42…抵抗
44…インダクタ
46a、46b…抵抗体
48…リレー
50…電磁石
52…継電部
54…給電線
56…直流給電ライン
58…インダクタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子を自励発振によって交互にオン・オフさせる帰還トランスとを有するインバータ回路を備える電子トランスから出力された交流電圧を整流し、然る後、LEDに対して定電流を供給するLED用電源回路であって、
前記電子トランスから出力された交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路から出力された直流電圧を受けて、前記LEDに対して定電流を供給する定電流回路と、
前記整流回路の一次側において、前記整流回路に並列接続された抵抗を有する起動回路とを備えていることを特徴とするLED用電源回路。
【請求項2】
前記起動回路は、前記抵抗に対して直列に接続されたインダクタを更に有していることを特徴とする請求項1に記載のLED用電源回路。
【請求項3】
前記起動回路は、前記抵抗を構成する少なくとも2つの抵抗体と、リレーとを有しており、
前記リレーは、前記2つの抵抗体のいずれか一方をバイパス状態として他方を使用するか、両者を非バイパス状態として使用するかを切り替えることにより、あるいは互いに抵抗値の異なる前記2つの抵抗体における一方の前記抵抗体をバイパスするとともに他方の前記抵抗体を非バイパス状態にして使用するように切り替えることにより、前記スイッチング素子が発振を開始した後における前記抵抗の抵抗値を、前記スイッチング素子が発振を開始する前における前記抵抗の抵抗値よりも大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載のLED用電源回路。
【請求項4】
前記起動回路における前記抵抗は、PTCサーミスタであることを特徴とする請求項1または2に記載のLED用電源回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate