説明

LED面状照明装置

【課題】二次元状に多数のLEDが配設されたLED面状照明装置において、点灯駆動に由来するノイズを低減する。
【解決手段】二次元状に配設されたLEDを領域Aと領域Bとに区分し、LEDを各領域毎に異なるパターンのPWM駆動信号により点灯駆動する。領域AのLEDに対しては立ち上がりエッジの位置を固定しパルス幅waを制御したPWM駆動信号(b)、領域BのLEDに対しては立ち下がりエッジの位置を固定しパルス幅wbを制御したPWM駆動信号(c)により点灯駆動する。これにより、駆動回路のトランジスタのオン動作又はオフ動作のタイミングがずれるために、スイッチングノイズが分散し、ノイズレベルのピークが下がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のLED(発光ダイオード)を二次元的に配設してなるLED面状照明装置に関し、特に、平板状の対象物を略均一に照明し、その透過光や反射光により対象物を検査する用途に好適なLED面状照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大形の液晶パネルなどの欠陥を製造ラインで検査するために、例えば特許文献1に開示されているような検査装置が利用されている。この検査装置は、平行配置された複数本の冷陰極管などの線状光源と、それら線状光源から発せられる光を面状に変換するための光学シートとを含む検査用バックライト装置(検査用照明装置)を備えている。
【0003】
近年、こうした検査用照明装置にもより一層の照度の均一性、高寿命化、低消費電力化などが要求されている。一方、LEDの性能向上、特に高輝度化は最近、非常に進展しており、照明用光源として高輝度LEDが使用されるようになってきている。こうした流れの中で、上記のような検査用照明装置にもLEDが使用されるようになってきている。
【0004】
上記のような平面状の照明装置を構成する場合、多数の高輝度LEDを二次元的に配設し、各LEDをPWM(パルス幅変調)駆動することで輝度を調整することが考えられる。ところが、光源部を大型化するためにLEDの数を増やすほど、PWM駆動信号を生成する回路でのスイッチングノイズが大きくなり、不要輻射による外部機器への悪影響が問題となる。特に、検査用照明装置の場合、上記のようなノイズが対象物を撮影する撮像機器や画像処理回路などの誤動作の原因となると、適切な検査ができなくなり、不良品の見逃し或いは正常品の誤判定といった大きな問題を引き起こすおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−25132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、多数のLEDを利用したLED面状照明装置におけるノイズを低減することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明は、複数のLEDが二次元的に配設された面状光源部と、前記複数のLEDをPWM(パルス幅変調)駆動するLED駆動部と、を具備するLED面状照明装置において、
前記LED駆動部は、立ち上がりエッジ位置及び立ち下がりエッジ位置がともに相違する少なくとも2以上の異なるパターンのPWM駆動信号を生成し、前記光源部において複数に分割された各領域に含まれるLED毎に、前記異なるパターンのPWM駆動信号により点灯駆動することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るLED面状照明装置では、LED駆動部が複数の異なるパターンのPWM駆動信号によりLEDを点灯駆動することにより、光源部に含まれるLEDへの駆動電流の供給期間(つまり点灯期間)を時間的に分散させることができる。これにより、LED駆動部に含まれるトランジスタなどの回路素子のオン・オフ動作に伴って発生するスイッチングノイズが分散化され、ノイズレベルのピーク値が減少する。
【0009】
また、LEDへの駆動電流の供給期間が分散化されることで、電流を供給する電源の稼働率も或る程度平均化される。それにより、リップル電流が減少するため、電源を構成する回路素子へのストレスが減り、故障が起こりにくくなって信頼性の向上にもつながる。
【0010】
本発明に係るLED面状照明装置の好ましい一態様として、N(Nは2以上)種の異なるパターンは、各PWM駆動信号のデューティ比が(100/N)%未満であるときにパルス幅が重ならないパターンとするとよい。
【0011】
具体的には例えば、前記PWM駆動信号として互いに異なるパターンの第1及び第2のPWM駆動信号を含み、第1のPWM駆動信号の立ち上がりエッジ位置と第2のPWM駆動信号の立ち下がりエッジ位置とが一致し、第1のPWM駆動信号はパルス幅に応じて立ち下がりエッジ位置が変移し、第2のPWM駆動信号はパルス幅に応じて立ち上がりエッジ位置が変移する構成とすることができる。
【0012】
この構成によれば、LEDへの駆動電流の供給期間を適切に分散することができるので、ノイズ低減や電源の稼働率の平均化にも有利である。また、第1のPWM駆動信号が立ち上がる際に第2のPWM駆動信号は立ち下がるため、それらPWM駆動信号を生成するためのトランジスタなどの回路素子のオン・オフ動作に伴うノイズを低減する効果が期待できる。
【0013】
なお、光源部における上記複数の領域は適宜に設定することができるが、例えばLEDの1ライン毎に異なる領域となるようにするとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るLED面状照明装置によれば、動作に伴うノイズレベルが下がるので、不要輻射による外部機器への悪影響などを防止することができる。それにより、本面状照明装置を検査装置に組み込む場合に、検査装置本体の回路の誤動作などを防止し、良好な検査を遂行することができる。また、本発明に係るLED面状照明装置によれば、電源を構成する回路素子へのストレスが低減されるため、故障が起こりにくくなり、長寿命化による信頼性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係るLED面状照明装置の一実施例を図面を参照して説明する。図4は本実施例のLED面状照明装置の一使用形態である検査装置の概略図である。
【0016】
図4において、本実施例の面状照明装置は多数のLEDが平面的に配列された(図4はこれを横から見た状態である)面状光源部1と各LEDを点灯駆動するLED点灯装置2とから成る。面状光源部1は単位時間当たりの光エネルギーが略一定であり、また平面的な照射面(図4では上面)の輝度が略均一となっている。この面状光源部1と撮像装置4との間に液晶パネル等の検査対象物3が配設される。撮像装置4は面状光源部1によって背面側から照らされる検査対象物3を撮影し、画像処理装置5は撮影された画像を処理することで検査対象物3の微細な欠陥の有無を識別する。
【0017】
図3は面状光源部1の平面図である。1枚の基板12には同一種類の高輝度白色LED11が格子状に配列され、この基板12が平面的に20枚並べられることで面状光源部1は構成されている。この例では、LED11の1ライン毎に互いに異なる領域A及び領域Bが設定されており、領域Aに含まれるLED11と領域Bに含まれるLED11とは互いに異なるパターンのPWM駆動信号により点灯駆動されるようになっている。
【0018】
図1は本実施例のLED面状照明装置におけるLED点灯装置2の概略構成図、図2はLED点灯装置2の動作を説明するためのタイムチャートである。
【0019】
このLED点灯装置2は、CPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータによりその機能が達成されるPWM駆動部21と、PWM駆動部21から与えられる駆動信号に応じて駆動電流をLED11に供給する駆動回路26A、26Bと、を含む。PWM駆動部21からは、互いに異なるパターンのPWM駆動信号が出力され、駆動回路26Aは上述した領域Aに含まれるLED11に駆動電流を供給し、駆動回路26Bは上述した領域Bに含まれるLED11に駆動電流を供給する。PWM駆動部21はマイクロコンピュータにより達成される機能ブロックとして、基準パルス生成部22、駆動パルスA生成部23、駆動パルスB生成部24、パルス幅制御部25、を備える。
【0020】
図2により、LED点灯装置2の動作を説明する。
基準パルス生成部22は、例えば水晶発振器などにより発生される所定周波数の基準クロックを計数する1/n分周カウンタを含む。このカウンタの出力値は、図2(a)に示すように0からnまで順にインクリメントされ、nに達すると0にリセットされる。したがって、基準パルス生成部22の出力は図2(a)に示すように三角波パルス信号である。この三角波パルス信号のサイクルは例えば80[kHz]とすることができる。
【0021】
上記三角波パルス信号が駆動パルスA生成部23と駆動パルスB生成部24とに入力される。駆動パルスA生成部23は、三角波パルス信号がカウンタ値=0で立ち上がり、カウンタ値がp(p≦n)に達すると立ち下がる矩形波パルス信号を第1のPWM駆動信号として生成する(図2(b)参照)。一方、駆動パルスB生成部24は、三角波パルス信号のカウンタ値がq(=n−p)に達すると立ち上がり、カウンタ値が0になるときに立ち下がる矩形波パルス信号を第2のPWM駆動信号として生成する(図2(c)参照)。つまり、第1のPWM駆動信号の立ち上がりエッジと第2のPWM駆動信号の立ち下がりエッジとは一致している。
【0022】
パルス幅制御部25は外部から指示される光量設定値に応じて、p値を駆動パルスA生成部23へ指示し、q値を駆動パルスB生成部24へ指示する。光量を増加する場合には、p値を増加する一方、q値を減少させる。これにより、駆動パルスA生成部23で生成される第1のPWM駆動信号のパルス幅wa、及び、駆動パルスB生成部24で生成される第2のPWM駆動信号のパルス幅wb(=wa)は広がる。第1のPWM駆動信号は立ち上がりエッジの位置が固定され、第2のPWM駆動信号は立ち下がりエッジの位置が固定されているから、両PWM駆動信号のデューティ比が50%未満であるときにはパルス幅wa、wbは重ならない。
【0023】
即ち、両PWM駆動信号のデューティ比が50%未満であるとき、領域Aに含まれるLED11と領域Bに含まれるLED11とは交互に点灯することになる。PWM点灯駆動の1サイクルは撮像装置4による1フレームの撮像サイクルに比べて十分に短いので、全てのLEDがパルス幅waの同一のPWM駆動信号により点灯駆動される場合と同じ輝度となる。
【0024】
駆動回路26A、26BにはPWM駆動信号によりオン・オフされるトランジスタ等が含まれ、そのオン・オフ動作に際してスイッチングノイズが発生する。本実施例のLED面状照明装置では、駆動回路26Aに供給されるPWM駆動信号と駆動回路26Bに供給されるPWM駆動信号とでは立ち上がりエッジ位置及び立ち下がりエッジ位置が相違するので、駆動回路26Aに含まれるトランジスタと駆動回路26Bに含まれるトランジスタとが同時にオフ→オン動作又はオン→オフ動作することはなく、そのタイミングは時間的にずれる。そのため、スイッチングノイズは時間的に分散され、ノイズレベルのピーク値は下がる。
【0025】
また、両PWM駆動信号のデューティ比が50%未満であるとき、駆動回路26Aに含まれるトランジスタと駆動回路26Bに含まれるトランジスタとは同時にオン状態とならない。そのため、駆動電流を供給する電源の稼働率が平均化され、電源電流のリップル電流が減少する。それにより、電源の回路素子に対するストレスが軽減される。
【0026】
なお、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を加えても本願の特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【0027】
例えば上記実施例は、全てのLEDを領域A、Bの2つに分けているが、3以上に分けてそれぞれ異なるパターンのPWM駆動信号により点灯駆動してもよい。また、PWM駆動信号の生成方法は上記記載のものに限らない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例によるLED面状照明装置における点灯駆動装置の概略構成図。
【図2】図1の点灯駆動装置の動作説明のタイムチャート。
【図3】本実施例のLED面状照明装置における面状光源部の平面図。
【図4】本実施例のLED面状照明装置の一使用形態である検査装置の概略図。
【符号の説明】
【0029】
1…面状光源部
11…LED
12…基板
2…LED点灯装置
21…PWM駆動部
22…基準パルス生成部
23…駆動パルスA生成部
24…駆動パルスB生成部
25…パルス幅制御部
26A、26B…駆動回路
3…検査対象物
4…撮像装置
5…画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDが二次元的に配設された面状光源部と、前記複数のLEDをPWM(パルス幅変調)駆動するLED駆動部と、を具備するLED面状照明装置において、
前記LED駆動部は、立ち上がりエッジ位置及び立ち下がりエッジ位置がともに相違する少なくとも2以上の異なるパターンのPWM駆動信号を生成し、前記光源部において複数に分割された各領域に含まれるLED毎に、前記異なるパターンのPWM駆動信号により点灯駆動することを特徴とするLED面状照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLED面状照明装置であって、
N(Nは2以上)種の異なるパターンは、各PWM駆動信号のデューティ比が(100/N)%未満であるときにパルス幅が重ならないパターンであることを特徴とするLED面状照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載のLED面状照明装置であって、
前記PWM駆動信号として互いに異なるパターンの第1及び第2のPWM駆動信号を含み、第1のPWM駆動信号の立ち上がりエッジ位置と第2のPWM駆動信号の立ち下がりエッジ位置とが一致し、第1のPWM駆動信号はパルス幅に応じて立ち下がりエッジ位置が変移し、第2のPWM駆動信号はパルス幅に応じて立ち上がりエッジ位置が変移するものであることを特徴とするLED面状照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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