LVAD移植用手術器具
ここでは手術のための新たな器具が開示されている。この発明のデバイスは、手術医が人工装置(例えば左心室補助装置(LVAD))の移植やその他の処置をより効率的かつ容易に実施できるようにする新たな特徴を有している。装置の一つの実施形態はサージカルコネクタへ解放可能な形で連結される吸引部材を用いている。この吸引部材は器官と器官へ取付けるサージカルコネクタを位置合わせするとともに安定化する。別の装置に対するある実施形態においては、穴開けシステムは、バルーンカテーテルと、ガイドワイヤの上へ通されるようになった穴開け器具を用いている。穴開け器具の実施形態は、穴開けした組織を除去、摘出する一方で、失血を防止する。さらに別の装置に対する実施形態では、自動サージカルコネクタが新たなプレス式機構を用いている。プレス式機構によって、手術医は縫付けを用いずにコネクタを器官へ取付けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究或いは開発に関する記載
不適応
背景
開示分野
この発明は手術の分野に関するものである。さらに詳しくはこの発明はオフポンプ手術用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
鬱血性心不全のために毎年340万人以上の人間が死亡している。鬱血性心不全は薬剤あるいは手術による治療では治すことができないことがしばしばである。心不全を患っている大部分の患者にとっての最善の選択は、臓器ドナーあるいは人工的手段による心臓移植である。適したドナー心臓が少ないため(1年当たり2,000以下)、患者や医師は人工心臓による治療に頼るしかない。このことが完全置換型人工心臓(TAH)の開発の主要な動機であった。信頼性の高いTAHはいまだに開発されていないが、移植可能な左心室補助装置(LVAD)の開発においては大きな進歩がみられた。LVADは、心臓機能を完全に置き換える代わりに、左心房あるいは左心室から体循環へ血液を圧送することによって具合の悪い左心室を支える。LVADは受容可能なドナーが獲得できるまで心臓疾患を患った患者を安定化させるための良い手段を提供してきている。
【0003】
今日の容積変位型あるいは脈動LVADは臨床的には十分に機能しているが、1年半くらい経過すると機械的な摩耗のためにその信頼性が劣化する。これらのポンプは、人の心臓と同じような脈動性の放出を行うインレットバルブおよびアウトレットバルブとともに、プッシャプレートあるいはダイヤフラムを用いている。1分当たり80回放出を行うポンプは1年間に42万回の放出を行わなければならず、このことは機械システムにとって容易でない設計上の挑戦になる。従って、周期的な機械駆動に頼らない新しいタイプのポンプを開発することに関心が持たれてきた。こうした努力の結果として連続流ポンプが開発された。
【0004】
連続流ポンプは脈動ポンプに比べていくつかの利点を有している。連続流ポンプは一般的に脈動ポンプよりも小型であり、またエネルギ効率がよい。可動部分は一つしかなく、多くの設計では機械的摩耗を被るようなベアリングやその他の機械部品を用いていない。さらに、連続流ポンプは本質的に、流入および流出圧力に基づいてポンプ出力を調節することができる。こうした特徴のために、連続流ポンプは経時変化による故障が生じにくく、また体格の小さい患者への移植により適している。
【0005】
典型的なLVAD移植手術は一般に左心室の心尖(apex)に約2cmの穴を開ける必要がある。心尖に穴を開けるまえに、その心臓は側腹部切開用パッド(laparatomy pad)で所定の位置まで持ち上げられる。そのあと手術医は穴開け器具あるいは外科用メスを用いて心臓の心尖に穴を開ける。手術医は次に心室の所望の位置に心尖LVADコネクタあるいはカフを縫い付けて、液密性の連結を形成する。LVADコネクタを左心室へ縫い付けて固定したら手術医はLVADコネクタへLVADを取り付ける。
【0006】
慣習的には、移植手術の間は、患者は通常心肺バイパスと呼ばれる心肺装置へつながれる。患者の血液は心肺装置へバイパスされるため、左心室内部の圧力は著しく低下する。従って、手術医が左心室の心尖に穴を開けるとき、失われる血液は最小限に抑えられ、手術医はLVADのカニューレをLVADコネクタの中へ挿入するのに十分な時間をとることができる。
【0007】
しかし、大部分の患者は十分に耐えることができるものの、心肺バイパスは重篤な患者や高齢者では大きな危険性を伴う。器質性の脳疾患や肝硬変、腎不全、肺動脈弁閉鎖不全を含めた先在の器官障害を有する患者においては、CPBは重大な病的状態、あるいは死を引き起こす可能性がある。進行性心不全を患った患者はしばしば内科的合併疾患を有しているため、LVAD挿入のときに心肺バイパスを回避する方法は魅力的である。このため、医師は心肺装置を用いない手術法、すなわちオフポンプ手術法の研究を始めている。
【0008】
しかし、オフポンプLVAD移植は大きな困難を伴う。例えば、手術医は動いている心臓に対して手術を行うという難しい仕事に直面する。さらに、心室は胸骨の後ろにある胸腔の中に位置している。心臓の鼓動を可能にした状態で心室へのアクセスをより容易にするように心臓の位置を移すことは容易なことではない。また、いったん適切に配置したら、心尖カフあるいはコネクタを所定の位置へ正確に縫い付けるために、鼓動する心臓を安定化させなければならない。
【0009】
オフポンプ手術のときに心室の中に穴を開けることはさらにずっと大きな困難を生じる。患者は心肺バイパスを付けていないため、心臓は循環を維持しなければならない。従って、心臓の各収縮期で、心臓は完全に充填して大きな壁張力およびキャビティ圧力を発生して、放出を行う。1回の素早い動きで心尖プラグ(apical plug)を穴開けし、フィンガ、プラグあるいはLVADを挿入することによってしか、放血を避けて心臓の出力を維持することができない。
【0010】
今日のオフポンプ手術法における別の欠点は、摘出/穴開けされた心臓の組織が心室から完全に取り除かれたことを確かめることが難しいことである。例えば、今日の手術用デバイスは穴開け用器具と組み合わせてアンビルを使用する。これらのデバイスは心室に十字形の切り込みを形成し、アンビルを心室の中に挿入する必要がある。そうしたデバイスは不必要な出血を引き起こすだけでなく、組織を完全に除去する有効な手段にもなっていない。
【0011】
従って、心肺装置、すなわちオフポンプを用いることなく手術医が心室補助装置を移植することができるようになる手術用器具が必要とされている。この手術用器具は使用が簡単で、血液の損失を最小限に抑えることが好ましい。
【発明の概要】
【0012】
概要
ここではオフポンプ手術用の新しい手術用器具が開示されている。開示されている器具に対する一つの実施の形態は、サージカルコネクタへ解放可能に連結するようになった吸引部材を用いた装置である。フレキシブルアームと組み合わせたこの新たな吸引部材は、手術中、器官を位置合わせして安定化するだけでなく、サージカルコネクタをその器官の上に位置合わせして安定化する。フレキシブルアームはLVAD移植などの手術のときに所定の位置にロックされ、コネクタおよび器官を保持することができる。このデバイスに対する別の実施の形態においては、バルーンカテーテルと、ガイドワイヤの上に通される穴開け器具とを用いた新たな穴開けシステムが開示されている。ガイドワイヤはその上を穴開け器具がガイドされるトラックとして機能する。この穴開け器具の実施の形態によれば、穴開けで取り出された組織を完全に除去し摘出することができる。さらに、この穴開けシステムの実施の形態によればオフポンプ手術のときの失血を防止することができる。さらに別の実施の形態においては、自動化されたサージカルコネクタは新しいプレス式機構を用いている。このプレス式機構によれば手術医は縫い付けをせずにコネクタを器官へ取り付けることができる。さらに詳しくは、サージカルコネクタは、拡張した位置にロックすることが可能なシーリング部材を有している。この手術器具のその他の特徴および利点については、以下で説明する。
【0013】
安定化デバイス
ある実施の形態においては、手術デバイスはサージカルコネクタへ解放可能な形で連結されるようになった吸引部材を有している。吸引部材はサージカルコネクタを吸引によって器官の表面に対して安定化するための開口部を有している。手術デバイスはさらに、吸引部材へ連結されるフレキシブルアームを有している。フレキシブルアームは固定位置に固定されて、サージカルコネクタと器官を所定の位置へ保持することができる。
【0014】
別の実施の形態においては、手術デバイスはサージカルコネクタを有している。この手術デバイスはまたサージカルコネクタへ解放可能な形で連結される吸引部材も有している。吸引部材はサージカルコネクタを吸引によって器官の表面へ固定するための開口部を有している。さらに、この手術デバイスは吸引部材へ連結されたフレキシブルアームを有している。フレキシブルアームは固定位置にロックされて、サージカルコネクタと器官を安定化することができる。
【0015】
別の実施の形態においては、固定位置にロックすることができるフレキシブルアームを有する手術デバイスを提供する段階を有する方法が開示されている。前記フレキシブルアームは吸引部材へ取り付けられる。吸引部材は心尖心室補助装置コネクタへ解放可能な形で連結される。この方法はさらに吸引部材へ真空を印加する段階を有する。さらに、この方法はサージカルコネクタへ解放可能な形に連結される吸引部材を器官の表面の上へ設置する段階を有する。さらに、この方法は前記フレキシブルアームを所定の位置にロックして器官およびサージカルコネクタを安定化する段階を有する。
【0016】
ここに開示されているデバイスは既存の技術に対していくつかの利点を提供している。従来の技術は、通常、心臓などの器官を位置合わせして安定化するために二つのデバイスを必要とする。すなわち、器官を位置合わせするために一つのデバイスが必要であり、一方で手術をする器官のターゲット領域を安定化するためにもう一つのデバイスが使用される。さらに、従来の方法は実際のインプラントあるいはサージカルコネクタをターゲット器官へ位置合わせ、あるいは安定化するための手段を有していない。ここに開示されている装置は上述したすべての機能を一つの簡単なデバイスで実行する。
【0017】
穴開け器具およびシステム
ある実施の形態においては、手術用穴開け器具は、開口した末端部と閉じた基端部とを有する中空本体を有する。開口した末端部は切断刃を有する。中空本体はこの中空本体から真空を印加するために真空連結部を有する。この手術用穴開け器具は前記中空本体と同軸状に配置された中空の細形部材も有する。細形部材はガイドワイヤの上に挿入されるようになっている。
【0018】
別の実施の形態においては、手術用穴開けシステムはガイドワイヤを有する。このシステムは、前記ガイドワイヤの上へ挿入されるようになった細形部材を有する穴開け器具も有している。さらに、このシステムは前記ガイドワイヤの上へ同軸状に取り付けられるようになったバルーンカテーテルを有する。
【0019】
別の実施の形態においては、器官に穴開けする方法は、器官の中へガイドワイヤを挿入する段階を有する。この方法は、ガイドワイヤの上に挿入されるようになった穴開け器具を提供する段階も有する。さらに、この方法は穴開け器具をガイドするためにガイドワイヤの上に穴開け器具を通す段階を有する。さらに、この方法は、器官の一部を穴開けするために器官の中へ穴開け器具を挿入する段階を有する。
【0020】
ここに開示されているデバイスは既存の技術に対していくつかの利点を提供している。現在の技術は器官からの摘出組織を完全に除去することが保証できない。さらに、その他の穴開け器具あるいは方法は、オフポンプ手術のときの著しい失血を防止することができない。本発明のデバイスおよび方法はこれらの問題のいくつか、あるいはすべてに取り組んでいる。
【0021】
サージカルコネクタ
ある実施の形態においては、器官を医療デバイスへ連結するためのサージカルコネクタは内側本体を有している。このサージカルコネクタは前記内側本体の周りに摺動可能に配置された外側中空本体も有する。また、コネクタは前記内側本体の周りに配置された末端シーリング部材を有している。末端シーリング部材は折り畳んだ(collapsed)状態と拡張した状態を有する。末端シーリング部材は前記折り畳んだ状態にロックすることもできる。サージカルコネクタは前記外側中空本体の周囲に配置された基端シーリング部材も有する。この基端シーリング部材は前記末端シーリング部材に近接している。
【0022】
別の実施の形態においては、サージカルコネクタシステムはガイドワイヤを有する。このサージカルコネクタシステムはガイドワイヤの上に挿入されるようになったバルーンカテーテルを有している。さらに、このサージカルコネクタシステムは、前記ガイドワイヤの上に挿入されるようになった内側本体を有するサージカルコネクタを有している。サージカルコネクタは前記内側本体の周囲に摺動可能に配置された外側中空本体も有する。また、コネクタは前記内側本体の周囲に配置された末端シーリング部材を有している。末端シーリング部材は折り畳んだ状態と拡張した状態を有する。末端シーリング部材は前記折り畳んだ状態にロックすることもできる。サージカルコネクタは前記外側中空本体の周りに配置された基端シーリング部材も有する。この基端シーリング部材は前記末端シーリング部材に近接している。
【0023】
以上では、この発明の詳細について以下で説明するために、この発明の請求項の主題を形成するこの発明の特徴および技術上の利点の概要を述べた。当該分野の技術者は、ここに記載されている概念や特定の実施の形態を、この発明の同じ目的を実行するためのその他の構造を修正あるいは設計するための基礎として容易に利用できることがわかるであろう。また、当該分野の技術者は、そうした等価な構造は添付の請求項に述べられているこの発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解できるであろう。
図面の簡単な説明
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】サージカルコネクタおよび器官の両方を位置合わせし安定化するための、手術デバイスの実施の形態を示している。
【図2】一般的な心尖心室補助装置のコネクタを示している。
【図3a−d】サージカルコネクタおよび器官を位置合わせおよび安定化する方法の実施の形態を示している。
【図4】手術用穴開け器具に対する実施の形態を示している。
【図5】手術用穴開け器具に対する別の実施の形態を示している。
【図6a−c】器官に穴開けする方法に対する実施の形態を示している。
【図7】手術用穴開けシステムにおいて使用されるバルーンカテーテルの実施の形態を示している。
【図8】サージカルコネクタの実施の形態を示しており、末端シーリング部材はそのファブリックカバーのない状態で示されている。
【図9】外側中空本体と基端シーリング部材がない状態でサージカルコネクタの実施の形態を示している。
【図10a−c】末端シーリング部材の折り畳んだ状態から末端シーリング部材の伸張した状態までの推移を示している。
【図11a−c】末端シーリング部材を折り畳んだ状態から解放するプロセスにおける外側中空本体を示している。
【図12a−b】内側部材をサージカルコネクタのその他の部材から取り外すところを示している。
【0025】
表記法および名称
以下の説明および請求項を通じて、特定のシステムコンポーネントを参照するためにいくつかの用語を使用している。この書類では、名称は異なるが機能は同じであるコンポーネントを区別しようとしているわけではない。
【0026】
以下の説明および請求項において、“含む”および“有する”という用語は非制限形式で用いられており、従って“含んでいるが、それに限定されるわけでなく・・”ということを意味していると解釈すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適な実施態様の詳細な説明
以下ではオフポンプ手術のための新たな手術用器具を説明する。ここでは、オフポンプ手術とは、心肺装置、すなわち心肺バイパスの補助を受けずに行われる任意の処置を指すものと定義する。しかし、ここに開示されている手術用の器具および方法は心肺バイパスを利用した手術に対しても用いることができる。
【0028】
器官を位置合わせし安定化するための手術用デバイス
図1は器官を位置合わせし安定化するための手術用デバイスに対する実施の形態を示している。ある実施の形態においては、この装置はアーム107と、ベース103と、吸引部材109を有している。アーム107は末端102および基端104を有する。アーム107は、アーム107を固定するために安定用のベース103へ連結されている。アーム107はベース103のまわりに回転可能であり、手術医がさらなる位置合わせを行えるようになっている。安定用のベース103は、装置を外科手術用開創器具あるいはその他のしっかりしたサポートへ固定するためのクランプあるいはファスナを有していることが好ましい。アーム107の末端102は吸引部材109へ連結されている。
【0029】
吸引部材109は一般に中空であり、吸引部材109を介して空気を吸引して真空あるいは負圧を形成するためにその末端に開口部を有している。吸引部材109からの吸引によって、器官が所定の位置に安定化あるいは保持されるとともに、器官へのインプラントの連結が容易になる。別の実施の形態においては、吸引部材109の末端開口部、あるいは器官と接触する開口部は特定の器官の表面に順応するようになっている。例えば、少なくとも一つの実施の形態においては、吸引部材109は心臓の左心室180の心尖部分の上に取り付けられる。
【0030】
ある実施の形態においては、吸引部材109はアーム107の末端から長手方向に延びる形でアーム107へ連結されている。例えば、吸引部材109は中空部材121によってフレキシブルアーム107へ取り付け、あるいは連結されている。中空部材121は吸引部材109と連通していることが好ましい。別の実施の形態においては、中空部材121とアーム107の末端との間にはジョイントが配置されている(図示されていない)。言い換えれば、中空部材121はジョイントによってアーム107へ連結されている。このジョイントによってアーム107にはさらなる関節動作が提供され、器官に対して吸引部材をより容易に位置合わせできるようになる。この目的のためには、それらに限定されるわけではないが、ヒンジやボールジョイント、スイベルジョイントなどを含めた任意の適当なジョイントを利用することができる。
【0031】
ある実施の形態においては、部材109内部の真空を引くために、真空ライン131が吸引部材109へ直接連結されている。別の実施の形態においては、真空ライン131は中空部材121へ取り付けられている。別の場合には、真空ライン131はアーム107の中を同軸状に延びている(図示されていない)。真空ライン131は一般に任意の標準的な手術室で利用可能な真空連結装置へ連結されている。さらに別の実施の形態においては、真空ラインと吸引部材との間にバルブ117が配置されている。バルブ117は真空を調節するために用いられる任意の適当な装置でよい。
【0032】
好ましい実施の形態においては、吸引部材109はサージカルコネクタ114へ解放可能な形で連結されるようになっている。従って、吸引部材109は器官を位置合わせして安定化するだけでなく、種々のサージカルコネクタを位置合わせして安定化することもできる。サージカルコネクタ114は、器官あるいは組織(例えば心臓、肝臓、腎臓、胃など)へ取り付け、あるいは縫い付けられて人工インプラントと器官との間に連結を形成する任意の連結デバイスでよい。適したサージカルコネクタの例には、スリーブ、グラフト、カフ、コネクタ、カニューレなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そうしたコネクタは一般に構造が管状であるけれども、サージカルコネクタ114は手術用途に適した任意の適当な形状を有することが可能である。
【0033】
ある実施の形態においては、サージカルコネクタ114は図2に示されているような心尖LVADコネクタ214である。一般に、心尖LVADコネクタは、LVADの流入導管を心臓の左心室へガイドして連結するために使用される。心尖LVADコネクタ214は、心臓接触端部251を有する中空本体241を有している。心臓接触端部251は縫い付け用のカフ212によって周囲を囲まれている。手術医はこのカフ212を縫い付けてコネクタ214を水密状態で心臓へ取り付ける。一般に、LVADコネクタ214は構造が管状である。しかし、LVADコネクタは長方形や六角形、楕円などの任意の適当な幾何形状を有していてよい。
【0034】
ある実施の形態においては、吸引部材109は形状が円筒形あるいは管状である。しかし、吸引部材109は、サージカルコネクタに対応した任意の幾何形状を有していてよい。管状の実施の形態においては、吸引部材109はサージカルコネクタ114の内部に摺動可能な状態でぴったりとはまるような直径を有している。従って、サージカルコネクタ114はコネクタ114と吸引部材109との間で例えば摩擦式(friction fit)などでぴったりと嵌めることによって所定の位置にしっかりと保持される。別の場合には、吸引部材をサージカルコネクタ114の上に設置できるように、吸引部材109はサージカルコネクタ114よりも大きな直径を有している。大部分の実施の形態においては、吸引部材109は市販されている既存のサージカルコネクタへ解放可能な形で連結するようになっている。
【0035】
他の実施の形態においては、吸引部材109はねじ連結、スナップ式連結、バヨネット連結などの任意の適当な連結手段によってサージカルコネクタへ解放可能な形で連結するようになっている。そうした実施の形態においては、サージカルコネクタは吸引部材109といっしょに使用するように特別な設計になっている。
【0036】
別の実施の形態においては、吸引部材109は取り外し可能な形で中空部材121へ取り付けられる。吸引部材109は任意の適当な連結を用いて中空部材121へ連結される。この連結は吸引部材109と中空部材121との間に気密性シールを形成して、必要な吸引を維持する。適当な連結の例としては、ねじ連結、バヨネット連結などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。従って、様々なサージカルコネクタに対応した種々の吸引部材109をアーム107へ取り付けることができる。別の実施の形態においては、吸引部材109は手術ごとに廃棄されたり、交換されたりする。別の実施の形態においては、中空部材121と吸引部材の両方がアーム107から取り外し可能である。
【0037】
吸引部材109は任意の適当な材料から形成される。好ましい実施の形態においては、吸引部材109はポリマ材料から形成されている。適したポリマ材料の例にはポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。非使い捨てタイプである吸引部材109の実施の形態においては、材料が殺菌可能、あるいは加圧滅菌可能であることが好ましい。そうした材料にはセラミックやガラス、金属、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0038】
アーム107はフレキシブルであり、様々な位置にロック可能であることが好ましい。ある実施の形態においては、アーム107は分節機構あるいは関節機構を有している。別の場合には、アーム107はポリマ材料から形成された連続チューブあるいはシリンダから成っている。アーム107の位置をロックすることによって、ユーザは手術用連結装置を取り付けるための所望の位置に器官を安定化させることができる。ある実施の形態においては、アーム107はテンションによって所定の位置にロックされる。ユーザはアーム107の基端104に取り付けられたノブ113を回してテンションを強め、アーム107を所定の位置にロックする。しかし、アーム107は任意の適当な手段によって所定の位置にロックすることができる。別の実施の形態においては、アーム107は単に材料の特性によって所定の位置に保持されるだけである。例えば、テンションやその他の手段を用いずにその形状を保持することができる非弾性の変形可能な材料を用いることができる。そうした材料には、延性金属、ポリマ、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ある実施の形態においては、アーム107の構造は管状である。しかし、アーム107は長方形や三角形、六角形などの異なる断面を有していてもよい。
【0039】
ここで図3a〜図3dを参照する。手術のときに器官(例えば心臓)を位置合わせして安定化する方法においては、ベース103は固定されたプラットホーム(すなわち外科手術用開創装置あるいは手術台)へクランプされて、装置100を所定の位置に保持する。真空ラインを介して吸引部材109から連続的に真空が引かれる。吸引部材109を介した真空引きを一時的に停止させるには、バルブ117を用いる。サージカルコネクタ114は、一般的にすでに縫い付けリング112を用いて吸引部材109の末端の、吸引部材の開口部から遠い方に挿入されている。次に吸引部材109を所望の手術箇所の上に設置する。真空を再び印加して器官表面の一部を図3aに示されているように真空の力を用いて吸引部材109によって捕捉する。
【0040】
器官表面が吸引部材109によって捕捉されたあと、ユーザ(例えば手術医)は次にアーム107を所望の位置まで移動する(図3bを参照のこと)。ユーザがアーム107を移動するとき、器官180もアームの動きといっしょに移動する。従って、ユーザは従来のラパロトミーパッドなどの大きなパッキングを用いることなく器官を所望の固定手術位置まで移すことができる。器官180がいったん所定の位置に移動したら、ノブ113をまわすことによって、あるいは単にアーム107の材料特性によって位置を固定して、アーム107をロックする。いったん固定されると、器官の位置はユーザがアーム107を移動しようとするまでずっと維持される。
【0041】
本発明の装置100は器官を位置合わせする手段を提供するだけでなく、手術のときに器官表面を安定化もする。例えば、オフポンプLVAD移植のとき、心臓は適切な位置にあっても、心室はなおも生理的圧力で鼓動している。このため、心室の表面は常に動いており、手術医に対して不安定な表面を提供している。吸引部材109を介して引かれている真空が器官の波打つ表面を固定する。さらに、サージカルコネクタ114は吸引部材109へ連結されているため、サージカルコネクタ114も器官180の表面に対して所定の位置に保持される。図3cに示されているように、このときは、手術医は、サージカルコネクタ114が取り付けあるいは縫い付けのときに動いてしまうという心配がなく、器官180の表面上に安定してサージカルコネクタ114を取り付け、あるいは縫い付けることができる。
【0042】
それに比べて、従来の手術デバイスは器官を安定化はするが、その位置が固定されるときにサージカルコネクタ(例えばLVADコネクタ)を位置合わせして安定化する手段が提供されていない。従って、この装置100の実施の形態は、心臓とLVADコネクタの両方を安定化して位置合わせするための簡単な解決策を提供している。上述した方法および装置はLVADコネクタおよび心臓に限定されず、その他の手術用連結装置および器官に対しても使用することができる。
【0043】
いったん適切に位置合わせされ安定化されると、サージカルコネクタ114はコネクタの縫い付けリング112を介して器官表面へ取り付けられる。ユーザがサージカルコネクタ114の、所定の位置への取り付けを完了すると、真空が解除され、フレキシブルアーム107がその固定位置から外される(図3dを参照のこと)。吸引部材109はサージカルコネクタ114および器官180から外され、サージカルコネクタ114は器官180へ取り付けたままにされる。
【0044】
器官穴開け器具およびシステム
ここで器官に穴開けするための器具およびシステムについて説明する。ある特定の実施の形態においては、器官は心臓である。しかし、その他の器官もここに開示されているシステムの実施の形態を用いて穴開けすることができる。このシステムによれば、手術医は、例えばあまり失血を引き起こすことなく器官に穴を形成することができる。さらに、このシステムによれば摘出された組織をすべて除去でき、心腔の中に残余物を残さない。ある実施の形態においては、このシステムは穴開け器具300と、バルーンカテーテルと、ガイドワイヤ340を含んでいる。図4はオフポンプシステムの一部として使用される穴開け器具300の実施の形態を示している。穴開け器具300とバルーンカテーテルは両方とも長手方向にガイドワイヤと同軸になっている。一般に、穴開け器具300は中空本体310を有する。実施の形態においては、中空本体310は穴開け部302と真空チャンバ304と、内側細形部材313を有する。穴開け器具の穴開け部302と真空チャンバ304は中空であることが好ましい。ある実施の形態においては、外側のガード(図示されていない)が穴開け器具300の外側表面の周りを取り囲んでおり、穴開け器具300の長手方向に沿って摺動する。一般に、穴開け部302は穴開けする器官の所望の部分へ押し込まれる。穴開けされた組織は吸引力によって真空チャンバ304の中に引き込まれる。以下でより詳しく説明するように、穴開け器具300によって形成された開口部はバルーンカテーテルのバルーン部分によって塞がれる。
【0045】
ここで図5を参照する。ある実施の形態においては、穴開け部と真空チャンバは一体化されており、一つの中空本体402を形成している。言い換えると、穴開け器具は二つの別々の部分(すなわち穴開け部302と真空チャンバ304)に分離されている必要はなく、開口した末端411と閉じた基端406とを有する一様な中空本体402から成っていてもよい。開口した末端417は切断刃411を有する。閉じた基端406は真空連結部423を有する。真空連結部423は中空本体402に沿って設けられていてもよい。
【0046】
中空本体402は、ユーザが中空本体内腔の摘出された組織を見ることができるように、半透明あるいは透明のプラスチックから形成されていることが好ましい。しかし、いくつかの実施の形態においては、中空本体402は金属あるいはその他の適当な材料から形成されている。適した材料の例にはポリカーボネートやポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、ステンレススチール、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0047】
ここで図4に戻ると、ある実施の形態においては、穴開け部302は、器官の中に円形の穴を開けるために構造が管状であって、真空チャンバ304の末端に配置されている。しかし、穴開け部302は、他の目的のために、任意の適当な断面を有していてもよい。穴開け部302は中空本体310の開口した末端317に切断刃311を有する。切断刃311は心臓組織に容易に穴開けできるように鋭く、あるいはテーパ状になっていることが好ましい。以下でさらに詳しく説明するように、穴開け部302の基端は真空チャンバ304の中に嵌められるか、あるいは真空チャンバ304へ取り付けられる。ある実施の形態においては、図4に示されているように切断刃311の外側表面は面取りされており、一方、内側表面はまっすぐであり、面取りされていない。また、穴開け部302の内側表面は真空チャンバ304の内側表面と同じ高さになっていて、摘出された組織が真空チャンバ304まで通過しやすくなっている。
【0048】
ある実施の形態においては、穴開け部302はサージカルスチール(surgical steel)などの金属から形成されていて、心臓組織を容易に貫通できるようになっている。しかし、穴開け部302を形成するのに任意の適当な材料を使用することができる。例えば穴開け部302は硬化プラスチックあるいはポリマ材料から形成されてもよい。穴開け部302は再利用可能で殺菌式であってもよい。別の場合には穴開け部302は使い捨て式である。また、穴開け部302の、真空部に対する長さは任意でよい。
【0049】
穴開け器具の真空チャンバ304も中空で、一般に穴開け部302と同じ断面形状を有している。真空チャンバ304の基端は中空本体310の閉じた基端306から成っており、その末端は開口している。いくつかの実施の形態においては、真空チャンバ304の閉じた端部には真空連結部323を介して真空ライン321が取り付けられている。別の場合には真空連結部323は真空チャンバ304の外側表面に沿って設けられている。真空連結部323は中空本体310の中に引き込まれる真空を調節するためにバルブ(図示されていない)を有していてもよい。オプションとして、バルブ(図示されていない)は真空ライン321と真空チャンバ304の閉じた端部306の間に配置されていて真空の調節を行う。例えば、真空をオンオフするのに単純なストップコック(図示されていない)を用いてもよい。
【0050】
ある実施の形態においては、真空チャンバ304の開口した末端は図4からわかるように穴開け部302を受容するようになっている。真空チャンバ304は穴開け部302の直径よりも大きな直径を有する。従って、ある実施の形態においては、穴開け部302は真空チャンバ304の内腔の中に挿入可能であり、所定の位置に圧入される。さらに別の実施の形態においては、穴開け部302は、ねじ連結、バヨネット連結、スナップ式連結などの任意の適当な連結によって真空チャンバ304へ取り付けられる。真空チャンバ304と穴開け部302との間の連結は、真空を保持できる気密性シールを形成していることが好ましい。別の実施の形態においては、真空チャンバ304は穴開け部302の直径よりも小さい直径を有していて、真空チャンバ304が穴開け部302の内腔内へ挿入可能である。
【0051】
ある実施の形態においては、真空チャンバ304は半透明あるいは透明であって、摘出された心臓組織を真空チャンバ304の中へ吸引するときにユーザがそれを見ることができるようになっている。真空チャンバ304はポリマ材料から形成されていることが好ましい。殺菌が可能で生物適合性を有する任意の適当なポリマ材料を使用することができる。ある実施の形態においては、真空チャンバ304も使い捨て式である。従って、少なくとも一つの実施の形態においては、真空チャンバ304と穴開け部302は両方とも使い捨て式である。
【0052】
図5を参照する。穴開け器具300はさらに、内側に細形部材413を有する。一体化した中空本体を有する実施の形態においては、内側の細形部材413は中空本体410の内部に同軸に配置されている。図4に示されているように二つの部材から成る中空部材を有する実施の形態においては、細形部材313は真空チャンバ304と穴開け部302の内部に同軸に配置されている。部材313の基端は中空本体310の閉じた基端306へ取り付けられており、中空本体の内腔の中心を長手方向に延びていて中空本体310の開口した末端317を貫通している。また、内側細形部材313は中空であり、長手方向にガイドワイヤ340と同軸である。
【0053】
一つの実施の形態においては、内側細形部材313は伸張および収縮可能であり、従って切断刃311を越えて延びるその部材の先端318までの距離は、器官の組織の厚みに応じて調節が可能である。例えば、内側細形部材313は入れ子式である。また、細形部材313は中空本体310の閉じた基端306を貫通している。
【0054】
内側細形部材313はいくつかの目的を有している。まず、それは穴開け器具300をガイドワイヤ340に沿ってガイドし、摘出すべきターゲットである心臓組織までの、穴開け器具の軌道を維持する。内側細形部材313の内径はガイドワイヤの直径よりも若干大きく、穴開け器具300がガイドワイヤに沿って、意図する摘出箇所まで正確に摺動するようになっている。また、内側細形部材313は心臓組織を固定することによって、摘出された組織が心腔内に残らないようにする。細形部材313の末端318は“くちばし(snout)”あるいは弾丸のような形状をしていることが好ましい。別の場合には、細形部材313の末端318は鋭い先端である。しかし、末端318は心腔を容易に貫通するのに適した任意の構造でよい。
【0055】
少なくとも一つの実施の形態においては、真空チャンバはハンドル(図示されていない)を有していて、ユーザが穴開け器具300を操作しやすいようになっている。このハンドルによって、摘出された組織とともに穴開け器具300を器官から取り出しやすくなる。特定の実施の形態においては、細形部材213の基端は中空本体310の閉じた端部を貫通して、ハンドルを形成している。別の場合には、ハンドルは中空本体310の外側表面あるいは真空チャンバ304へ取り付けられている。
【0056】
ある実施の形態においては、内側細形部材313は穴開け部302の末端開口部317の開口部を越えて、開口部を貫いて延びている。このように延びているために、細形部材313は穴開け器具300の切断刃とバルーンカテーテルとの間のスペーサとして機能する。スペーサの機能を果たすため、穴開け器具300が心臓の中に穴開けを行うとき、切断刃がバルーンカテーテルに接触することはない。内側細形部材313が心臓の壁を貫通するとき、それはバルーンカテーテルの先端を押して、バルーンを切断刃から引き離す。
【0057】
内側細形部材313はポリマなどの半剛体材料から形成されていることが好ましい。しかし、カテーテルを製造するのに、当該分野において周知である任意の適当な材料を使用することができる。適したポリマの例には、ポリエチレン、ポリプロピテン、PET、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。それとは違って内側細形部材は金属から形成してもよい。
【0058】
別の実施の形態においては、穴開け器具300は外側のガード(図示されていない)を有する。上述したように、外側ガードは穴開け器具300の周囲を取り囲んでいる。外側ガードは穴開け器具300の長手方向に沿って、切断刃の上を内側細形部材の先端318を越えて摺動が可能である。外側ガードの目的は、穴開けされた心臓組織が穴開け器具の中に吸引され穴開け器具が心臓から引き抜かれるときに、閉じた連続通路を確保することである。心室に新たに形成された穴にバルーンカテーテルを充填するときに、血液が心腔から放出されてしまうような事態は外側ガードによって防止される。
【0059】
再び図5を参照する。ある実施の形態においては、穴開けデバイスは中空本体402の内部に同軸状に配置された内側中空本体(図示されていない)を有する。内側中空本体は管状の形状を有することが好ましい。そうした実施の形態においては、真空は内側中空本体のみを介して印加される。従って、真空連結部423が内側中空本体の基端へ連結されて、内側中空本体を介して吸引が行われる。別の実施の形態においては、内側中空本体は閉じた基端406を通して格納可能可能である。器官組織が薄い場合には、内側中空本体を中空の穴開け部302の内部に同軸状に設置することによって、穴開けされた組織を中空本体402の内部に捕捉することができる。また、内側の細形部材413が内側中空本体の内側に同軸状に配置されていて、摘出された組織のガイドを行うとともに、さらにこれを固定する。
【0060】
ガイドワイヤ340は当該分野において周知の任意の適当なワイヤである。一つの実施の形態においては、ガイドワイヤ340は心臓壁や心腔、大動脈弓、大腿動脈を通るガイドとして作用する。ガイドワイヤ340を用いる利点は、それが穴開け器具300やバルーンカテーテルに対するガイド用トラックとしての機能を果たすことである。従って、ガイドワイヤ340によって穴開け器具300とバルーンカテーテルは適切に位置合わせされる。
【0061】
バルーンカテーテルは心腔の中に挿入されるようになっている。バルーンカテーテルの膨張部は穴開け部302の直径よりも若干大きな直径まで膨張可能なことが好ましい。以下でより詳細に述べるように、大きな直径を有するバルーンが、穴開け器具300によって形成された穴を塞ぐ。バルーンカテーテルは任意の適当な生物適合性を有する材料から形成される。他の実施の形態においては、バルーンカテーテルは心腔の穴を塞ぐことができるその他のカテーテルデバイスで置き換えられている。バルーンカテーテルのさらに別の実施の形態を以下で説明する。
【0062】
ここで図6(a)〜(c)を参照する。心腔に穴開けするためのある方法においては、ガイドワイヤ340はニードルに取り付けられる。ある実施の形態においては、ガイドワイヤを挿入するまえに、手術医は当該分野において周知の方法によって、あるいはここに開示されている新しい方法によってLVADコネクタを取り付ける。次に、取り付けたニードルをLVADコネクタの中心を通してターゲットである心室の中へ挿入する。心臓はなおも圧送を行っているため、ニードルは自動的に大動脈の中を圧送される。ニードルとガイドワイヤは大動脈弓の中を通って大腿動脈まで航行する。次にユーザはニードルを大腿動脈から引き抜いて、大腿動脈から心室までの全体的なガイドを形成する。収縮したバルーンカテーテルを、大腿動脈を介してガイドワイヤまで挿入する。ユーザがカテーテルを動脈を介し、大動脈弓を介して心腔まで押して戻すとき、ガイドワイヤは収縮したバルーンカテーテルを載せたトラックとして機能する。次にバルーンカテーテルを造影剤、あるいはその他の任意の適当な材料を用いて膨張させる。
【0063】
ガイドワイヤ340およびバルーンカテーテルを所定の位置に設置したら、次に穴開け器具300をガイドワイヤ340の上へ挿入する(図6aを参照のこと)。この時点で、ユーザはバルブを回すことによって真空を印加して、真空チャンバ304内部に圧力差を生じさせる。ユーザは、穴開け器具300が心腔の内部へ貫通するまで、穴開け部302を用いて心腔390の中に穴を開ける(図6bを参照のこと)。さらに、細形部材313の末端318が心腔390に突き刺さる。穴開け器具300の内腔の中における圧力差によって形成される真空によって、摘出された組織は真空チャンバ304の内腔の中に吸引される。真空チャンバ304が透明である実施の形態においては、摘出された心臓組織392が真空チャンバ304の内腔の中に入るときを手術医は実際に見ることができる。従って、手術医は心臓組織が完全に切除されたことを目で確認することができる。穴開け器具300が器官から引き抜かれたとき、拍動する心臓によって形成される外向き圧力によって、膨張したバルーンカテーテル500が穴開け器具300で形成された組織の穴を塞ぐ(図6cを参照のこと)。従って、バルーンカテーテル500は、心臓組織392の摘出によって残った穴から血液が吹き出さないようにする栓として作用する。さらに、バルーンカテーテル500は摘出された心臓組織392が心室の中に落ちて戻らないようにする手段にもなる。細形部材313がしっかり突き刺さるため、細形部材313は心臓組織392が心腔390の中に戻ってしまわないようにする機能も果たす。
【0064】
新たに形成された穴をバルーンカテーテルがしっかりと塞いだことを確認したら、手術医はその穴の中にLVADを挿入することができる。上述の穴開け方法は心臓に関して説明してきたが、説明した穴開け用システムは、膀胱や胃、肝臓など、組織の決められた部分を切除する必要がある他の器官や血管に用いることができる。
【0065】
自動サージカルコネクタ
図8は自動サージカルコネクタの実施の形態を示している。開示されているコネクタではコネクタを心臓などの器官へ位置合わせして縫い付ける必要がない。また、縫い付けの場合は器官を繰り返し貫通する必要がある。それに引き替え、本サージカルコネクタ800は、器官の壁へ押しつけられるシーリング部材の力を用いた新しいプレス式機構によって所定の位置に保持される。
【0066】
サージカルコネクタ800のある実施の形態が図8に示されている。この実施の形態においては、サージカルコネクタ800は、内側本体810と、外側の中空本体830と、末端のシーリング部材840と、基端のシーリング部材850を有する。一般に、内側本体810はガイドワイヤ890の上を同軸状に摺動するようになっている。また、内側本体810は末端部815と、基端部811と、中央部813を有する。末端部815と基端部811と中央部813は連続した本体を形成していることが好ましい。さらに、内側本体810は一般に断面が円形である。しかし、内側本体810は任意の適当な断面形状を有することができる。いくつかの実施の形態においては、内側本体810は中空である。別の場合には、内側本体810は、ガイドワイヤ890を通せるように内側本体の内部に通路が設けられていれば中空でなくてよい。
【0067】
少なくとも一つの実施の形態においては、中央部813は末端部815および基端部811よりも大きな直径を有している。中央部813から末端部815へはテーパ状になっているか、あるいは末端シーリング部材840に推移領域を提供するような外形を有していることが好ましい。ある実施の形態においては、末端部815は丸い先端816を有する。末端部815はガイドワイヤの穴開け用システムにおいては末端シーリング部材840とバルーンカテーテルとの間のスペーサとして機能する。特に、バルーンカテーテルの外側表面へ最適な形で合うような丸い先端を設けて、バルーンが何かの拍子に破れることがないようにすることもできる。
【0068】
少なくとも一つの実施の形態においては、サージカルコネクタ800は図9に示されているように中間シース820を有する。説明上、図9は中間シース820と、末端シーリング部材840と、内側本体810のみを有するサージカルコネクタ800を示している。中間シース820は、外側中空本体830と内側本体810との間で、内側本体810の中央部813の周囲に配置されている。大部分の実施の形態においては、中間シース820は任意の適当な金属から形成されている。しかし、他の実施の形態においては、中間シース820はプラスチックから形成されていてもよい。また、中間シース820は一般に内側本体810の中央部813の周囲に摺動可能に配置されている。従って、中間シース820は中央部813の直径よりも若干大きな直径を有している。中間シース820は以下でさらに詳しく説明するように、末端シーリング部材840をその拡張した状態に維持する機能を有する。
【0069】
サージカルコネクタ800のある実施の形態においては、末端シーリング部材840は支持部842とシーリング部846を有する。また、支持部842とシーリング部846はいっしょになって複数のリブ841を構成している。各リブ841は軸状部843と放射状部844を有する。従って、各リブの軸状部843は支持部842に対するフレームあるいは骨組みを形成し、一方、各リブ841の放射状部844はシーリング部材846に対するフレームを形成している。各リブの軸状部843は内側本体810の長手軸方向に揃っていることが好ましい。一つの実施の形態においては、各リブ841の軸状部843は軸状部843の末端部847へ向けてテーパ状になっている。テーパ状の軸状部843のために、末端シーリング部材840は半径方向外側へ拡張する、すなわち広がることができる。
【0070】
放射状部844は軸状部843に対して斜めに配置されており、軸状部843から半径方向外側へ延びている。放射状部844は軸状部843に対して任意の適当な角度を形成している。軸状部843におけると同様に、各リブ841の放射状部844はテーパを有し、末端シーリング部材840の伸張を可能にしている。図9に示されているように、放射状部844は、外側先端845から、放射状部844と軸状部843との交差部分までテーパ状になっている。また、いくつかの実施の形態においては、放射状部844の外側先端は斜めに曲げられている。曲がった外側先端845のために、外側中空本体830が末端シーリング部材を圧縮しやすくなる。さらに別の実施の形態においては、放射状部844の外側先端845は他のリブ(図示されていない)の外側先端845と重なっている。この重なりのために、末端シーリング部材840の圧縮状態において、それをよりコンパクトに圧縮することが可能になる。
【0071】
末端シーリング部材840は図10に示されているように、折り畳んだ状態と拡張した状態を有する。図10は、図10Aに示された末端シーリング部材840の圧縮された状態から図10Cの拡張した状態までの移り変わりを示している。末端シーリング部材840のリブ841は、その圧縮状態において内側本体810の末端部の上に縮まっている。従って、軸状部843とリブ841の放射状部844のテーパによってリブ841は互いに対して縮むことが可能になる。いくつかの実施の形態においては、軸状部843と放射状部844は互いの上にさらに重なる構造になっていて、さらに圧縮あるいは収縮される。リブ841に対してテーパ形状を用いる以外に、末端シーリング部材840の収縮を最適化するために他の形状を用いることもできる。例えば、各軸状部843は傾斜部(図示されていない)を有していてもよい。
【0072】
図10Aに示されているように、収縮したとき、リブ841の軸状部は、内側本体810の末端部815を取り囲む円錐台形状の支持部842を形成する。しかし、支持部842は圧縮されたときに内側本体810に適合するその他の任意の構造を有することができる。ある実施の形態においては、各軸状部843の基端部848は内側本体810の中央部813と接触して、末端シーリング部材840の拡張を開始する。内側本体810を末端に向けて器官880の中へ前方に押すと、図10Bに示されているように中央部813は軸状部841を広げ、互いに引き離す。中央部813が末端シーリング部材の円錐台部分の中へ完全に挿入されると、リブ841は図10Cに示されているように末端シーリング部材840の拡張状態まで完全に広がる。
【0073】
ある実施の形態においては、リブ841は平坦な形状を有する。しかし、リブ841はリブ841を広げたり縮めたりできる任意の形状が可能である。例えば、リブ841はワイヤなど断面が円筒形でもよい。好ましい実施の形態においては、リブ841は血栓を形成しない金属から形成されている。一般に、この金属は弾性金属であって、リブにばねのような特性を付与する。適した金属の例にはニチノールや銅、ステンレススチール、チタン、亜鉛、ニッケル、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。末端シーリング部材840は血栓を形成しないメッシュあるいはファブリックでも覆われている。こうしたメッシュあるいはファブリックによって、末端シーリング部材840は基端シーリング部材と液密性シールを形成する。特に、この材料はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、あるいはそれらの組み合わせから形成されたポリマーファブリックでよい。しかし、当該分野において周知の、血栓を形成せず生物適合性を有する任意の適当な材料を使用することができる。開示されているコネクタが従来のデバイスに対して有する利点は、それが内側カニューレを有していないことである。コネクタを介して心室から流出する血液は末端シーリング部材840の連続した表面および中間シース820の内側表面と接触するだけである。こうした特徴のために、心臓の中に凝固や血栓が生じる可能性が低減される。
【0074】
サージカルコネクタ800は外側の中空本体830も有する。ある実施の形態においては、内側本体810は外側中空本体830の内部に同軸状に配置されている。外側中空本体830は内側本体810の中央部813よりも若干大きな直径を有することが好ましい。外側中空本体830は中間シース820と内側本体810の中央部813の周囲に配置されている。さらに、外側中空本体830は内側本体の中央部に沿って摺動する。外側中空本体830はプラスチックや金属などの任意の適当な材料から形成される。
【0075】
別の実施の形態においては、サージカルコネクタは基端シーリング部材850を有する。末端シーリング部材840におけると同様に、基端シーリング部材850も図8に示されているようなメッシュあるいはファブリックで覆われた複数のリブ(図示されていない)から成っている。基端シーリング部材850は圧縮可能および拡張可能である必要はないけれども、いくつかの実施の形態はそうした特徴を組み入れている。別の場合には、基端シーリング部材850は金属あるいはプラスチックから形成された中空でない連続した部材(図示されていない)から成っている。少なくとも一つの実施の形態では、シーリング部材850は内側本体の末端に向けて傾斜している。従って、基端シーリング部材のフレームあるいは骨組みを形成する複数のリブの放射状部も末端に向けて傾斜している。また、基端シーリング部材は外側中空本体830の周囲に可動な状態で配置されている。基端シーリング部材は外側中空本体830に沿った位置にロックできることが好ましい。外側中空本体830と基端シーリング部材との間のねじ連結やラチェット機構などの、任意の適当な機構でこれを実現することができる。この機構によって基端シーリング部材850は末端方向へは移動になるが、基端シーリング部材が基端部方向には戻らないようにしている。このようにして、器官あるいは組織は基端シーリング部材と末端シーリング部材840との間にしっかりとクランプされて、液密性シールあるいはプレス式シールを形成する。
【0076】
ある方法においては、開示されているサージカルコネクタ800は上述した穴開け用システムといっしょに使用される。この方法のある実施の形態においては、上でその実施の形態を説明したガイドワイヤ穴開け用システムを用いて器官に穴が形成される。穴開け作業のあと、バルーンカテーテルは新たに形成された穴の中に留まって失血を防止する。しかし、他の穴開け方法をサージカルコネクタ800の実施の形態といっしょに利用することもできる。
【0077】
器官880の中に穴が形成されたあと、内側本体810の末端816がバルーンカテーテル(図示されていない)へ接触するまで、手術医は内側本体810をガイドワイヤ890の上で挿入する。内側本体810の末端816はバルーンカテーテルを破裂させないように丸くなっていることが好ましい。末端の丸い先端を使って手術医はバルーンカテーテルを器官の中へ素早く押し戻す一方で、内側本体810の中央部813をバルーンカテーテルのあとに残った空隙あるいは穴の中に挿入する。中央部816は器官の穴の直径とほぼ同じ直径を有しているため、中央部を挿入することによって器官からの液体の損失を防ぐことができる。
【0078】
基端シーリング部材850が器官の外側表面へ接触するまで内側本体810の中央部813を挿入する。図11Aに示されているように外側中空本体830によって、末端シーリング部材840はその圧縮状態が保持される。中央部813を挿入し終わると、手術医は外側中空本体830を引き戻して、末端シーリング部材840のリブ841が図11Bに示すように半径方向外側へ広がれるようにする。
【0079】
最初に末端シーリング部材840が拡張したら、内側本体810をさらに器官880の中へ末端に向けて押す。図10Cおよび図8を参照のこと。内側本体810の中央部813が内側へ押されるとき、各リブ841の軸状部843は中央部813を取り囲む中間シース820と係合する。末端シーリング部材840がその完全に拡張した状態に達するまで、リブ841は半径方向外側へ移動する。また、中間シース820はリブの軸状部の下側を摺動して、末端シーリング部材840を図9に示されているようにその拡張状態にロックする。すなわち、中間シース820は末端シーリング部材840がその圧縮状態へ戻らないようにし、末端シーリング部材840をその完全に拡張した状態に維持する。中間シース820はその基端部に配置されたストップあるいはタブを有していて、末端シーリング部材840が完全に拡張して位置がロックされたことを手術医へ示す。
【0080】
末端シーリング部材840の位置がロックされると、手術医は基端シーリング部材850を器官の外側表面に対して調節あるいは締め付けを行って、液密性シールを確保する。この締め付けは、ラチェット機構やねじ連結(図示されていない)などのデバイスを組み入れたどのような機構によっても実現することができる。このようにして、器官の壁は内側と基端のシーリング部材830、850との間にしっかりとクランプされ、プレス式タイプの連結を形成する。このため、開示されているサージカルコネクタ800は器官880へ固定するのに縫い付けを必要としない。器官の壁が内側と基端のシーリング部材830、850との間にしっかりとクランプされると、手術医は内側本体810を中間シース820および外側中空本体830から引き抜いて、図12Bに示されているように手術デバイスを取り付けるための固定コネクタあるいは導管を残す。ある実施の形態においては、手術デバイスはLVADであるが、任意の適当な手術デバイスをサージカルコネクタ800へ取り付けることができる。手術医が内側本体810を取り外すと、バルーンカテーテルは再び栓として機能して、器官からの失血を防止する。
【0081】
オフポンプ手術のためのバルーンタイプカテーテル
上述した穴開けシステムは心室の穴を塞ぐように特別に設計されたバルーンタイプカテーテルといっしょに使用されることが好ましい。図7に示されているように、バルーンカテーテル700はガイドワイヤ701と同軸である。カテーテル700の膨張可能なバルーン部分は心室の穴を塞ぐのに適した任意の形状でよい。一つの実施の形態においては、バルーンは膨張すると円錐台形状を有する。別の実施の形態においては、バルーンは末端突起部705と連続したシールあるいはカフ部分403を有していて、乳首形状のバルーン(図7を参照のこと)を形成している。末端突起部703は理想的には、開けられた穴とほぼ同じ直径であり、シール部705は末端部705よりも大きな直径を有していて、心室750内部にシールを形成する。シール部は心室の曲率に似た凸状の曲率を有している。末端突起部705の末端は弾丸のような形状を有していて、開けられた穴の中にカテーテルを容易に滑り込ませてそこを塞ぐことが可能である。また、カテーテル本体717の末端713は穴開け器具がバルーンを破裂させないように、最適な量だけ離間されている。
【0082】
さらに別の実施の形態においては、カテーテルは機械的に拡張が可能なシール(図示されていない)を有している。この実施の形態の利点は、膨張したバルーンを破裂させる危険性のないことである。拡張可能かつ折り畳み可能な機械式シールは傘と非常に似た形で動作する。この機械式シールは上述した拡張可能なシーリング部材と同じように動作する。ある実施の形態においては、機械式シールは血栓を形成しない材料によって覆われた折り畳み可能な骨組みあるいはフレームから成っている。この機械式シールは心室の内部により適合するような曲面状の外観を有していることが好ましい。
【0083】
バルーンカテーテルに対する別の実施の形態は薄型の基端バルブ(図示されていない)を有している。ある実施の形態においては、基端バルブはカテーテル本体と同じ直径を有する。基端バルブは一般に1方向バルブである。すなわち、基端バルブによってバルーンカテーテルには液体あるいは気体を充填することが可能であるが、バルーン部が膨張したあとはバルーン部内部の圧力は維持される。当該分野において周知の任意の適当なバルブを使用することができる。
【0084】
ある特定の実施の形態においては、バルーンカテーテルは、バルーンが膨張したあと基端バルブと連結される基端カテーテル部を有しており、末端カテーテル部と基端カテーテル部は連続したカテーテル本体を形成する。カテーテル本体は、約0.01 mmから10 mmの範囲の小さな直径を有していることが好ましい。カテーテル本体は、それらに限定されるわけではないが穴開け器具300あるいはサージカルコネクタ800を含めた種々の手術デバイスに対するガイドワイヤとして機能する。従って、ある実施の形態においては、バルーンカテーテル700と穴開け器具300は、追加のガイドワイヤを必要とせずに手術用穴開けシステムの一部として使用される。
【0085】
そうした実施の形態においては、バルーンカテーテルはガイドワイヤを必要としない。その代わりに、バルーンカテーテルの末端が器官のターゲット領域へ挿入される。場合によって、バルーンカテーテルを容易に挿入するためにターゲット領域において切開が行われる。バルーンカテーテルは、器官の中に挿入されたあと、バルーンの中に液体あるいは気体を注入することによって膨張させられる。バルーン部は、バルーンカテーテルの基端バルブへ取り付けられるポンプやインジェクションポート、注射器など任意の適当なデバイスによって膨張させられる。バルーン部が膨張したら、インジェクションデバイスを基端バルブから取り外す。バルブが1方向性であるため、バルーン部はインジェクションデバイスを取り外したあとも膨張したままである。次に、ねじ連結などの適当な連結によって基端部を末端部へ取り付け、連続したカテーテル本体を形成する。
【0086】
ここで開示したデバイスの各々はメディカルキットの部材として組み入れられる。例えば、人工装置のオフポンプ連結のためのキットは、ここでのサージカルコネクタや上述したバルーンカテーテル、ガイドワイヤ、および開示されている穴開け器具から成る。このキットはここで開示されている手術デバイスの任意の組み合わせ、あるいは個数から成っている。さらに、ここに開示されている方法および装置はオフポンプ手術に限定されるわけではなく、オンポンプであろうがオフポンプであろうが、任意の手術といっしょに使用できる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を示し、説明してきたが、当該分野の技術者はこの発明の精神あるいは教示から逸脱することなくその修正を形成することができる。ここで説明した実施の形態は単に例であり、発明を制限するものではない。このシステムおよび装置の多くの変形や修正が可能であり、この発明の範囲内である。従って、保護の範囲はここで説明した実施の形態に制限されるわけではなく、請求項によってのみ制限される。請求項の範囲は、請求項の主要事項の等価物すべてを含んでいる。
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究或いは開発に関する記載
不適応
背景
開示分野
この発明は手術の分野に関するものである。さらに詳しくはこの発明はオフポンプ手術用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
鬱血性心不全のために毎年340万人以上の人間が死亡している。鬱血性心不全は薬剤あるいは手術による治療では治すことができないことがしばしばである。心不全を患っている大部分の患者にとっての最善の選択は、臓器ドナーあるいは人工的手段による心臓移植である。適したドナー心臓が少ないため(1年当たり2,000以下)、患者や医師は人工心臓による治療に頼るしかない。このことが完全置換型人工心臓(TAH)の開発の主要な動機であった。信頼性の高いTAHはいまだに開発されていないが、移植可能な左心室補助装置(LVAD)の開発においては大きな進歩がみられた。LVADは、心臓機能を完全に置き換える代わりに、左心房あるいは左心室から体循環へ血液を圧送することによって具合の悪い左心室を支える。LVADは受容可能なドナーが獲得できるまで心臓疾患を患った患者を安定化させるための良い手段を提供してきている。
【0003】
今日の容積変位型あるいは脈動LVADは臨床的には十分に機能しているが、1年半くらい経過すると機械的な摩耗のためにその信頼性が劣化する。これらのポンプは、人の心臓と同じような脈動性の放出を行うインレットバルブおよびアウトレットバルブとともに、プッシャプレートあるいはダイヤフラムを用いている。1分当たり80回放出を行うポンプは1年間に42万回の放出を行わなければならず、このことは機械システムにとって容易でない設計上の挑戦になる。従って、周期的な機械駆動に頼らない新しいタイプのポンプを開発することに関心が持たれてきた。こうした努力の結果として連続流ポンプが開発された。
【0004】
連続流ポンプは脈動ポンプに比べていくつかの利点を有している。連続流ポンプは一般的に脈動ポンプよりも小型であり、またエネルギ効率がよい。可動部分は一つしかなく、多くの設計では機械的摩耗を被るようなベアリングやその他の機械部品を用いていない。さらに、連続流ポンプは本質的に、流入および流出圧力に基づいてポンプ出力を調節することができる。こうした特徴のために、連続流ポンプは経時変化による故障が生じにくく、また体格の小さい患者への移植により適している。
【0005】
典型的なLVAD移植手術は一般に左心室の心尖(apex)に約2cmの穴を開ける必要がある。心尖に穴を開けるまえに、その心臓は側腹部切開用パッド(laparatomy pad)で所定の位置まで持ち上げられる。そのあと手術医は穴開け器具あるいは外科用メスを用いて心臓の心尖に穴を開ける。手術医は次に心室の所望の位置に心尖LVADコネクタあるいはカフを縫い付けて、液密性の連結を形成する。LVADコネクタを左心室へ縫い付けて固定したら手術医はLVADコネクタへLVADを取り付ける。
【0006】
慣習的には、移植手術の間は、患者は通常心肺バイパスと呼ばれる心肺装置へつながれる。患者の血液は心肺装置へバイパスされるため、左心室内部の圧力は著しく低下する。従って、手術医が左心室の心尖に穴を開けるとき、失われる血液は最小限に抑えられ、手術医はLVADのカニューレをLVADコネクタの中へ挿入するのに十分な時間をとることができる。
【0007】
しかし、大部分の患者は十分に耐えることができるものの、心肺バイパスは重篤な患者や高齢者では大きな危険性を伴う。器質性の脳疾患や肝硬変、腎不全、肺動脈弁閉鎖不全を含めた先在の器官障害を有する患者においては、CPBは重大な病的状態、あるいは死を引き起こす可能性がある。進行性心不全を患った患者はしばしば内科的合併疾患を有しているため、LVAD挿入のときに心肺バイパスを回避する方法は魅力的である。このため、医師は心肺装置を用いない手術法、すなわちオフポンプ手術法の研究を始めている。
【0008】
しかし、オフポンプLVAD移植は大きな困難を伴う。例えば、手術医は動いている心臓に対して手術を行うという難しい仕事に直面する。さらに、心室は胸骨の後ろにある胸腔の中に位置している。心臓の鼓動を可能にした状態で心室へのアクセスをより容易にするように心臓の位置を移すことは容易なことではない。また、いったん適切に配置したら、心尖カフあるいはコネクタを所定の位置へ正確に縫い付けるために、鼓動する心臓を安定化させなければならない。
【0009】
オフポンプ手術のときに心室の中に穴を開けることはさらにずっと大きな困難を生じる。患者は心肺バイパスを付けていないため、心臓は循環を維持しなければならない。従って、心臓の各収縮期で、心臓は完全に充填して大きな壁張力およびキャビティ圧力を発生して、放出を行う。1回の素早い動きで心尖プラグ(apical plug)を穴開けし、フィンガ、プラグあるいはLVADを挿入することによってしか、放血を避けて心臓の出力を維持することができない。
【0010】
今日のオフポンプ手術法における別の欠点は、摘出/穴開けされた心臓の組織が心室から完全に取り除かれたことを確かめることが難しいことである。例えば、今日の手術用デバイスは穴開け用器具と組み合わせてアンビルを使用する。これらのデバイスは心室に十字形の切り込みを形成し、アンビルを心室の中に挿入する必要がある。そうしたデバイスは不必要な出血を引き起こすだけでなく、組織を完全に除去する有効な手段にもなっていない。
【0011】
従って、心肺装置、すなわちオフポンプを用いることなく手術医が心室補助装置を移植することができるようになる手術用器具が必要とされている。この手術用器具は使用が簡単で、血液の損失を最小限に抑えることが好ましい。
【発明の概要】
【0012】
概要
ここではオフポンプ手術用の新しい手術用器具が開示されている。開示されている器具に対する一つの実施の形態は、サージカルコネクタへ解放可能に連結するようになった吸引部材を用いた装置である。フレキシブルアームと組み合わせたこの新たな吸引部材は、手術中、器官を位置合わせして安定化するだけでなく、サージカルコネクタをその器官の上に位置合わせして安定化する。フレキシブルアームはLVAD移植などの手術のときに所定の位置にロックされ、コネクタおよび器官を保持することができる。このデバイスに対する別の実施の形態においては、バルーンカテーテルと、ガイドワイヤの上に通される穴開け器具とを用いた新たな穴開けシステムが開示されている。ガイドワイヤはその上を穴開け器具がガイドされるトラックとして機能する。この穴開け器具の実施の形態によれば、穴開けで取り出された組織を完全に除去し摘出することができる。さらに、この穴開けシステムの実施の形態によればオフポンプ手術のときの失血を防止することができる。さらに別の実施の形態においては、自動化されたサージカルコネクタは新しいプレス式機構を用いている。このプレス式機構によれば手術医は縫い付けをせずにコネクタを器官へ取り付けることができる。さらに詳しくは、サージカルコネクタは、拡張した位置にロックすることが可能なシーリング部材を有している。この手術器具のその他の特徴および利点については、以下で説明する。
【0013】
安定化デバイス
ある実施の形態においては、手術デバイスはサージカルコネクタへ解放可能な形で連結されるようになった吸引部材を有している。吸引部材はサージカルコネクタを吸引によって器官の表面に対して安定化するための開口部を有している。手術デバイスはさらに、吸引部材へ連結されるフレキシブルアームを有している。フレキシブルアームは固定位置に固定されて、サージカルコネクタと器官を所定の位置へ保持することができる。
【0014】
別の実施の形態においては、手術デバイスはサージカルコネクタを有している。この手術デバイスはまたサージカルコネクタへ解放可能な形で連結される吸引部材も有している。吸引部材はサージカルコネクタを吸引によって器官の表面へ固定するための開口部を有している。さらに、この手術デバイスは吸引部材へ連結されたフレキシブルアームを有している。フレキシブルアームは固定位置にロックされて、サージカルコネクタと器官を安定化することができる。
【0015】
別の実施の形態においては、固定位置にロックすることができるフレキシブルアームを有する手術デバイスを提供する段階を有する方法が開示されている。前記フレキシブルアームは吸引部材へ取り付けられる。吸引部材は心尖心室補助装置コネクタへ解放可能な形で連結される。この方法はさらに吸引部材へ真空を印加する段階を有する。さらに、この方法はサージカルコネクタへ解放可能な形に連結される吸引部材を器官の表面の上へ設置する段階を有する。さらに、この方法は前記フレキシブルアームを所定の位置にロックして器官およびサージカルコネクタを安定化する段階を有する。
【0016】
ここに開示されているデバイスは既存の技術に対していくつかの利点を提供している。従来の技術は、通常、心臓などの器官を位置合わせして安定化するために二つのデバイスを必要とする。すなわち、器官を位置合わせするために一つのデバイスが必要であり、一方で手術をする器官のターゲット領域を安定化するためにもう一つのデバイスが使用される。さらに、従来の方法は実際のインプラントあるいはサージカルコネクタをターゲット器官へ位置合わせ、あるいは安定化するための手段を有していない。ここに開示されている装置は上述したすべての機能を一つの簡単なデバイスで実行する。
【0017】
穴開け器具およびシステム
ある実施の形態においては、手術用穴開け器具は、開口した末端部と閉じた基端部とを有する中空本体を有する。開口した末端部は切断刃を有する。中空本体はこの中空本体から真空を印加するために真空連結部を有する。この手術用穴開け器具は前記中空本体と同軸状に配置された中空の細形部材も有する。細形部材はガイドワイヤの上に挿入されるようになっている。
【0018】
別の実施の形態においては、手術用穴開けシステムはガイドワイヤを有する。このシステムは、前記ガイドワイヤの上へ挿入されるようになった細形部材を有する穴開け器具も有している。さらに、このシステムは前記ガイドワイヤの上へ同軸状に取り付けられるようになったバルーンカテーテルを有する。
【0019】
別の実施の形態においては、器官に穴開けする方法は、器官の中へガイドワイヤを挿入する段階を有する。この方法は、ガイドワイヤの上に挿入されるようになった穴開け器具を提供する段階も有する。さらに、この方法は穴開け器具をガイドするためにガイドワイヤの上に穴開け器具を通す段階を有する。さらに、この方法は、器官の一部を穴開けするために器官の中へ穴開け器具を挿入する段階を有する。
【0020】
ここに開示されているデバイスは既存の技術に対していくつかの利点を提供している。現在の技術は器官からの摘出組織を完全に除去することが保証できない。さらに、その他の穴開け器具あるいは方法は、オフポンプ手術のときの著しい失血を防止することができない。本発明のデバイスおよび方法はこれらの問題のいくつか、あるいはすべてに取り組んでいる。
【0021】
サージカルコネクタ
ある実施の形態においては、器官を医療デバイスへ連結するためのサージカルコネクタは内側本体を有している。このサージカルコネクタは前記内側本体の周りに摺動可能に配置された外側中空本体も有する。また、コネクタは前記内側本体の周りに配置された末端シーリング部材を有している。末端シーリング部材は折り畳んだ(collapsed)状態と拡張した状態を有する。末端シーリング部材は前記折り畳んだ状態にロックすることもできる。サージカルコネクタは前記外側中空本体の周囲に配置された基端シーリング部材も有する。この基端シーリング部材は前記末端シーリング部材に近接している。
【0022】
別の実施の形態においては、サージカルコネクタシステムはガイドワイヤを有する。このサージカルコネクタシステムはガイドワイヤの上に挿入されるようになったバルーンカテーテルを有している。さらに、このサージカルコネクタシステムは、前記ガイドワイヤの上に挿入されるようになった内側本体を有するサージカルコネクタを有している。サージカルコネクタは前記内側本体の周囲に摺動可能に配置された外側中空本体も有する。また、コネクタは前記内側本体の周囲に配置された末端シーリング部材を有している。末端シーリング部材は折り畳んだ状態と拡張した状態を有する。末端シーリング部材は前記折り畳んだ状態にロックすることもできる。サージカルコネクタは前記外側中空本体の周りに配置された基端シーリング部材も有する。この基端シーリング部材は前記末端シーリング部材に近接している。
【0023】
以上では、この発明の詳細について以下で説明するために、この発明の請求項の主題を形成するこの発明の特徴および技術上の利点の概要を述べた。当該分野の技術者は、ここに記載されている概念や特定の実施の形態を、この発明の同じ目的を実行するためのその他の構造を修正あるいは設計するための基礎として容易に利用できることがわかるであろう。また、当該分野の技術者は、そうした等価な構造は添付の請求項に述べられているこの発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解できるであろう。
図面の簡単な説明
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】サージカルコネクタおよび器官の両方を位置合わせし安定化するための、手術デバイスの実施の形態を示している。
【図2】一般的な心尖心室補助装置のコネクタを示している。
【図3a−d】サージカルコネクタおよび器官を位置合わせおよび安定化する方法の実施の形態を示している。
【図4】手術用穴開け器具に対する実施の形態を示している。
【図5】手術用穴開け器具に対する別の実施の形態を示している。
【図6a−c】器官に穴開けする方法に対する実施の形態を示している。
【図7】手術用穴開けシステムにおいて使用されるバルーンカテーテルの実施の形態を示している。
【図8】サージカルコネクタの実施の形態を示しており、末端シーリング部材はそのファブリックカバーのない状態で示されている。
【図9】外側中空本体と基端シーリング部材がない状態でサージカルコネクタの実施の形態を示している。
【図10a−c】末端シーリング部材の折り畳んだ状態から末端シーリング部材の伸張した状態までの推移を示している。
【図11a−c】末端シーリング部材を折り畳んだ状態から解放するプロセスにおける外側中空本体を示している。
【図12a−b】内側部材をサージカルコネクタのその他の部材から取り外すところを示している。
【0025】
表記法および名称
以下の説明および請求項を通じて、特定のシステムコンポーネントを参照するためにいくつかの用語を使用している。この書類では、名称は異なるが機能は同じであるコンポーネントを区別しようとしているわけではない。
【0026】
以下の説明および請求項において、“含む”および“有する”という用語は非制限形式で用いられており、従って“含んでいるが、それに限定されるわけでなく・・”ということを意味していると解釈すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適な実施態様の詳細な説明
以下ではオフポンプ手術のための新たな手術用器具を説明する。ここでは、オフポンプ手術とは、心肺装置、すなわち心肺バイパスの補助を受けずに行われる任意の処置を指すものと定義する。しかし、ここに開示されている手術用の器具および方法は心肺バイパスを利用した手術に対しても用いることができる。
【0028】
器官を位置合わせし安定化するための手術用デバイス
図1は器官を位置合わせし安定化するための手術用デバイスに対する実施の形態を示している。ある実施の形態においては、この装置はアーム107と、ベース103と、吸引部材109を有している。アーム107は末端102および基端104を有する。アーム107は、アーム107を固定するために安定用のベース103へ連結されている。アーム107はベース103のまわりに回転可能であり、手術医がさらなる位置合わせを行えるようになっている。安定用のベース103は、装置を外科手術用開創器具あるいはその他のしっかりしたサポートへ固定するためのクランプあるいはファスナを有していることが好ましい。アーム107の末端102は吸引部材109へ連結されている。
【0029】
吸引部材109は一般に中空であり、吸引部材109を介して空気を吸引して真空あるいは負圧を形成するためにその末端に開口部を有している。吸引部材109からの吸引によって、器官が所定の位置に安定化あるいは保持されるとともに、器官へのインプラントの連結が容易になる。別の実施の形態においては、吸引部材109の末端開口部、あるいは器官と接触する開口部は特定の器官の表面に順応するようになっている。例えば、少なくとも一つの実施の形態においては、吸引部材109は心臓の左心室180の心尖部分の上に取り付けられる。
【0030】
ある実施の形態においては、吸引部材109はアーム107の末端から長手方向に延びる形でアーム107へ連結されている。例えば、吸引部材109は中空部材121によってフレキシブルアーム107へ取り付け、あるいは連結されている。中空部材121は吸引部材109と連通していることが好ましい。別の実施の形態においては、中空部材121とアーム107の末端との間にはジョイントが配置されている(図示されていない)。言い換えれば、中空部材121はジョイントによってアーム107へ連結されている。このジョイントによってアーム107にはさらなる関節動作が提供され、器官に対して吸引部材をより容易に位置合わせできるようになる。この目的のためには、それらに限定されるわけではないが、ヒンジやボールジョイント、スイベルジョイントなどを含めた任意の適当なジョイントを利用することができる。
【0031】
ある実施の形態においては、部材109内部の真空を引くために、真空ライン131が吸引部材109へ直接連結されている。別の実施の形態においては、真空ライン131は中空部材121へ取り付けられている。別の場合には、真空ライン131はアーム107の中を同軸状に延びている(図示されていない)。真空ライン131は一般に任意の標準的な手術室で利用可能な真空連結装置へ連結されている。さらに別の実施の形態においては、真空ラインと吸引部材との間にバルブ117が配置されている。バルブ117は真空を調節するために用いられる任意の適当な装置でよい。
【0032】
好ましい実施の形態においては、吸引部材109はサージカルコネクタ114へ解放可能な形で連結されるようになっている。従って、吸引部材109は器官を位置合わせして安定化するだけでなく、種々のサージカルコネクタを位置合わせして安定化することもできる。サージカルコネクタ114は、器官あるいは組織(例えば心臓、肝臓、腎臓、胃など)へ取り付け、あるいは縫い付けられて人工インプラントと器官との間に連結を形成する任意の連結デバイスでよい。適したサージカルコネクタの例には、スリーブ、グラフト、カフ、コネクタ、カニューレなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そうしたコネクタは一般に構造が管状であるけれども、サージカルコネクタ114は手術用途に適した任意の適当な形状を有することが可能である。
【0033】
ある実施の形態においては、サージカルコネクタ114は図2に示されているような心尖LVADコネクタ214である。一般に、心尖LVADコネクタは、LVADの流入導管を心臓の左心室へガイドして連結するために使用される。心尖LVADコネクタ214は、心臓接触端部251を有する中空本体241を有している。心臓接触端部251は縫い付け用のカフ212によって周囲を囲まれている。手術医はこのカフ212を縫い付けてコネクタ214を水密状態で心臓へ取り付ける。一般に、LVADコネクタ214は構造が管状である。しかし、LVADコネクタは長方形や六角形、楕円などの任意の適当な幾何形状を有していてよい。
【0034】
ある実施の形態においては、吸引部材109は形状が円筒形あるいは管状である。しかし、吸引部材109は、サージカルコネクタに対応した任意の幾何形状を有していてよい。管状の実施の形態においては、吸引部材109はサージカルコネクタ114の内部に摺動可能な状態でぴったりとはまるような直径を有している。従って、サージカルコネクタ114はコネクタ114と吸引部材109との間で例えば摩擦式(friction fit)などでぴったりと嵌めることによって所定の位置にしっかりと保持される。別の場合には、吸引部材をサージカルコネクタ114の上に設置できるように、吸引部材109はサージカルコネクタ114よりも大きな直径を有している。大部分の実施の形態においては、吸引部材109は市販されている既存のサージカルコネクタへ解放可能な形で連結するようになっている。
【0035】
他の実施の形態においては、吸引部材109はねじ連結、スナップ式連結、バヨネット連結などの任意の適当な連結手段によってサージカルコネクタへ解放可能な形で連結するようになっている。そうした実施の形態においては、サージカルコネクタは吸引部材109といっしょに使用するように特別な設計になっている。
【0036】
別の実施の形態においては、吸引部材109は取り外し可能な形で中空部材121へ取り付けられる。吸引部材109は任意の適当な連結を用いて中空部材121へ連結される。この連結は吸引部材109と中空部材121との間に気密性シールを形成して、必要な吸引を維持する。適当な連結の例としては、ねじ連結、バヨネット連結などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。従って、様々なサージカルコネクタに対応した種々の吸引部材109をアーム107へ取り付けることができる。別の実施の形態においては、吸引部材109は手術ごとに廃棄されたり、交換されたりする。別の実施の形態においては、中空部材121と吸引部材の両方がアーム107から取り外し可能である。
【0037】
吸引部材109は任意の適当な材料から形成される。好ましい実施の形態においては、吸引部材109はポリマ材料から形成されている。適したポリマ材料の例にはポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。非使い捨てタイプである吸引部材109の実施の形態においては、材料が殺菌可能、あるいは加圧滅菌可能であることが好ましい。そうした材料にはセラミックやガラス、金属、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0038】
アーム107はフレキシブルであり、様々な位置にロック可能であることが好ましい。ある実施の形態においては、アーム107は分節機構あるいは関節機構を有している。別の場合には、アーム107はポリマ材料から形成された連続チューブあるいはシリンダから成っている。アーム107の位置をロックすることによって、ユーザは手術用連結装置を取り付けるための所望の位置に器官を安定化させることができる。ある実施の形態においては、アーム107はテンションによって所定の位置にロックされる。ユーザはアーム107の基端104に取り付けられたノブ113を回してテンションを強め、アーム107を所定の位置にロックする。しかし、アーム107は任意の適当な手段によって所定の位置にロックすることができる。別の実施の形態においては、アーム107は単に材料の特性によって所定の位置に保持されるだけである。例えば、テンションやその他の手段を用いずにその形状を保持することができる非弾性の変形可能な材料を用いることができる。そうした材料には、延性金属、ポリマ、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ある実施の形態においては、アーム107の構造は管状である。しかし、アーム107は長方形や三角形、六角形などの異なる断面を有していてもよい。
【0039】
ここで図3a〜図3dを参照する。手術のときに器官(例えば心臓)を位置合わせして安定化する方法においては、ベース103は固定されたプラットホーム(すなわち外科手術用開創装置あるいは手術台)へクランプされて、装置100を所定の位置に保持する。真空ラインを介して吸引部材109から連続的に真空が引かれる。吸引部材109を介した真空引きを一時的に停止させるには、バルブ117を用いる。サージカルコネクタ114は、一般的にすでに縫い付けリング112を用いて吸引部材109の末端の、吸引部材の開口部から遠い方に挿入されている。次に吸引部材109を所望の手術箇所の上に設置する。真空を再び印加して器官表面の一部を図3aに示されているように真空の力を用いて吸引部材109によって捕捉する。
【0040】
器官表面が吸引部材109によって捕捉されたあと、ユーザ(例えば手術医)は次にアーム107を所望の位置まで移動する(図3bを参照のこと)。ユーザがアーム107を移動するとき、器官180もアームの動きといっしょに移動する。従って、ユーザは従来のラパロトミーパッドなどの大きなパッキングを用いることなく器官を所望の固定手術位置まで移すことができる。器官180がいったん所定の位置に移動したら、ノブ113をまわすことによって、あるいは単にアーム107の材料特性によって位置を固定して、アーム107をロックする。いったん固定されると、器官の位置はユーザがアーム107を移動しようとするまでずっと維持される。
【0041】
本発明の装置100は器官を位置合わせする手段を提供するだけでなく、手術のときに器官表面を安定化もする。例えば、オフポンプLVAD移植のとき、心臓は適切な位置にあっても、心室はなおも生理的圧力で鼓動している。このため、心室の表面は常に動いており、手術医に対して不安定な表面を提供している。吸引部材109を介して引かれている真空が器官の波打つ表面を固定する。さらに、サージカルコネクタ114は吸引部材109へ連結されているため、サージカルコネクタ114も器官180の表面に対して所定の位置に保持される。図3cに示されているように、このときは、手術医は、サージカルコネクタ114が取り付けあるいは縫い付けのときに動いてしまうという心配がなく、器官180の表面上に安定してサージカルコネクタ114を取り付け、あるいは縫い付けることができる。
【0042】
それに比べて、従来の手術デバイスは器官を安定化はするが、その位置が固定されるときにサージカルコネクタ(例えばLVADコネクタ)を位置合わせして安定化する手段が提供されていない。従って、この装置100の実施の形態は、心臓とLVADコネクタの両方を安定化して位置合わせするための簡単な解決策を提供している。上述した方法および装置はLVADコネクタおよび心臓に限定されず、その他の手術用連結装置および器官に対しても使用することができる。
【0043】
いったん適切に位置合わせされ安定化されると、サージカルコネクタ114はコネクタの縫い付けリング112を介して器官表面へ取り付けられる。ユーザがサージカルコネクタ114の、所定の位置への取り付けを完了すると、真空が解除され、フレキシブルアーム107がその固定位置から外される(図3dを参照のこと)。吸引部材109はサージカルコネクタ114および器官180から外され、サージカルコネクタ114は器官180へ取り付けたままにされる。
【0044】
器官穴開け器具およびシステム
ここで器官に穴開けするための器具およびシステムについて説明する。ある特定の実施の形態においては、器官は心臓である。しかし、その他の器官もここに開示されているシステムの実施の形態を用いて穴開けすることができる。このシステムによれば、手術医は、例えばあまり失血を引き起こすことなく器官に穴を形成することができる。さらに、このシステムによれば摘出された組織をすべて除去でき、心腔の中に残余物を残さない。ある実施の形態においては、このシステムは穴開け器具300と、バルーンカテーテルと、ガイドワイヤ340を含んでいる。図4はオフポンプシステムの一部として使用される穴開け器具300の実施の形態を示している。穴開け器具300とバルーンカテーテルは両方とも長手方向にガイドワイヤと同軸になっている。一般に、穴開け器具300は中空本体310を有する。実施の形態においては、中空本体310は穴開け部302と真空チャンバ304と、内側細形部材313を有する。穴開け器具の穴開け部302と真空チャンバ304は中空であることが好ましい。ある実施の形態においては、外側のガード(図示されていない)が穴開け器具300の外側表面の周りを取り囲んでおり、穴開け器具300の長手方向に沿って摺動する。一般に、穴開け部302は穴開けする器官の所望の部分へ押し込まれる。穴開けされた組織は吸引力によって真空チャンバ304の中に引き込まれる。以下でより詳しく説明するように、穴開け器具300によって形成された開口部はバルーンカテーテルのバルーン部分によって塞がれる。
【0045】
ここで図5を参照する。ある実施の形態においては、穴開け部と真空チャンバは一体化されており、一つの中空本体402を形成している。言い換えると、穴開け器具は二つの別々の部分(すなわち穴開け部302と真空チャンバ304)に分離されている必要はなく、開口した末端411と閉じた基端406とを有する一様な中空本体402から成っていてもよい。開口した末端417は切断刃411を有する。閉じた基端406は真空連結部423を有する。真空連結部423は中空本体402に沿って設けられていてもよい。
【0046】
中空本体402は、ユーザが中空本体内腔の摘出された組織を見ることができるように、半透明あるいは透明のプラスチックから形成されていることが好ましい。しかし、いくつかの実施の形態においては、中空本体402は金属あるいはその他の適当な材料から形成されている。適した材料の例にはポリカーボネートやポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、ステンレススチール、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0047】
ここで図4に戻ると、ある実施の形態においては、穴開け部302は、器官の中に円形の穴を開けるために構造が管状であって、真空チャンバ304の末端に配置されている。しかし、穴開け部302は、他の目的のために、任意の適当な断面を有していてもよい。穴開け部302は中空本体310の開口した末端317に切断刃311を有する。切断刃311は心臓組織に容易に穴開けできるように鋭く、あるいはテーパ状になっていることが好ましい。以下でさらに詳しく説明するように、穴開け部302の基端は真空チャンバ304の中に嵌められるか、あるいは真空チャンバ304へ取り付けられる。ある実施の形態においては、図4に示されているように切断刃311の外側表面は面取りされており、一方、内側表面はまっすぐであり、面取りされていない。また、穴開け部302の内側表面は真空チャンバ304の内側表面と同じ高さになっていて、摘出された組織が真空チャンバ304まで通過しやすくなっている。
【0048】
ある実施の形態においては、穴開け部302はサージカルスチール(surgical steel)などの金属から形成されていて、心臓組織を容易に貫通できるようになっている。しかし、穴開け部302を形成するのに任意の適当な材料を使用することができる。例えば穴開け部302は硬化プラスチックあるいはポリマ材料から形成されてもよい。穴開け部302は再利用可能で殺菌式であってもよい。別の場合には穴開け部302は使い捨て式である。また、穴開け部302の、真空部に対する長さは任意でよい。
【0049】
穴開け器具の真空チャンバ304も中空で、一般に穴開け部302と同じ断面形状を有している。真空チャンバ304の基端は中空本体310の閉じた基端306から成っており、その末端は開口している。いくつかの実施の形態においては、真空チャンバ304の閉じた端部には真空連結部323を介して真空ライン321が取り付けられている。別の場合には真空連結部323は真空チャンバ304の外側表面に沿って設けられている。真空連結部323は中空本体310の中に引き込まれる真空を調節するためにバルブ(図示されていない)を有していてもよい。オプションとして、バルブ(図示されていない)は真空ライン321と真空チャンバ304の閉じた端部306の間に配置されていて真空の調節を行う。例えば、真空をオンオフするのに単純なストップコック(図示されていない)を用いてもよい。
【0050】
ある実施の形態においては、真空チャンバ304の開口した末端は図4からわかるように穴開け部302を受容するようになっている。真空チャンバ304は穴開け部302の直径よりも大きな直径を有する。従って、ある実施の形態においては、穴開け部302は真空チャンバ304の内腔の中に挿入可能であり、所定の位置に圧入される。さらに別の実施の形態においては、穴開け部302は、ねじ連結、バヨネット連結、スナップ式連結などの任意の適当な連結によって真空チャンバ304へ取り付けられる。真空チャンバ304と穴開け部302との間の連結は、真空を保持できる気密性シールを形成していることが好ましい。別の実施の形態においては、真空チャンバ304は穴開け部302の直径よりも小さい直径を有していて、真空チャンバ304が穴開け部302の内腔内へ挿入可能である。
【0051】
ある実施の形態においては、真空チャンバ304は半透明あるいは透明であって、摘出された心臓組織を真空チャンバ304の中へ吸引するときにユーザがそれを見ることができるようになっている。真空チャンバ304はポリマ材料から形成されていることが好ましい。殺菌が可能で生物適合性を有する任意の適当なポリマ材料を使用することができる。ある実施の形態においては、真空チャンバ304も使い捨て式である。従って、少なくとも一つの実施の形態においては、真空チャンバ304と穴開け部302は両方とも使い捨て式である。
【0052】
図5を参照する。穴開け器具300はさらに、内側に細形部材413を有する。一体化した中空本体を有する実施の形態においては、内側の細形部材413は中空本体410の内部に同軸に配置されている。図4に示されているように二つの部材から成る中空部材を有する実施の形態においては、細形部材313は真空チャンバ304と穴開け部302の内部に同軸に配置されている。部材313の基端は中空本体310の閉じた基端306へ取り付けられており、中空本体の内腔の中心を長手方向に延びていて中空本体310の開口した末端317を貫通している。また、内側細形部材313は中空であり、長手方向にガイドワイヤ340と同軸である。
【0053】
一つの実施の形態においては、内側細形部材313は伸張および収縮可能であり、従って切断刃311を越えて延びるその部材の先端318までの距離は、器官の組織の厚みに応じて調節が可能である。例えば、内側細形部材313は入れ子式である。また、細形部材313は中空本体310の閉じた基端306を貫通している。
【0054】
内側細形部材313はいくつかの目的を有している。まず、それは穴開け器具300をガイドワイヤ340に沿ってガイドし、摘出すべきターゲットである心臓組織までの、穴開け器具の軌道を維持する。内側細形部材313の内径はガイドワイヤの直径よりも若干大きく、穴開け器具300がガイドワイヤに沿って、意図する摘出箇所まで正確に摺動するようになっている。また、内側細形部材313は心臓組織を固定することによって、摘出された組織が心腔内に残らないようにする。細形部材313の末端318は“くちばし(snout)”あるいは弾丸のような形状をしていることが好ましい。別の場合には、細形部材313の末端318は鋭い先端である。しかし、末端318は心腔を容易に貫通するのに適した任意の構造でよい。
【0055】
少なくとも一つの実施の形態においては、真空チャンバはハンドル(図示されていない)を有していて、ユーザが穴開け器具300を操作しやすいようになっている。このハンドルによって、摘出された組織とともに穴開け器具300を器官から取り出しやすくなる。特定の実施の形態においては、細形部材213の基端は中空本体310の閉じた端部を貫通して、ハンドルを形成している。別の場合には、ハンドルは中空本体310の外側表面あるいは真空チャンバ304へ取り付けられている。
【0056】
ある実施の形態においては、内側細形部材313は穴開け部302の末端開口部317の開口部を越えて、開口部を貫いて延びている。このように延びているために、細形部材313は穴開け器具300の切断刃とバルーンカテーテルとの間のスペーサとして機能する。スペーサの機能を果たすため、穴開け器具300が心臓の中に穴開けを行うとき、切断刃がバルーンカテーテルに接触することはない。内側細形部材313が心臓の壁を貫通するとき、それはバルーンカテーテルの先端を押して、バルーンを切断刃から引き離す。
【0057】
内側細形部材313はポリマなどの半剛体材料から形成されていることが好ましい。しかし、カテーテルを製造するのに、当該分野において周知である任意の適当な材料を使用することができる。適したポリマの例には、ポリエチレン、ポリプロピテン、PET、あるいはそれらの組み合わせが含まれる。それとは違って内側細形部材は金属から形成してもよい。
【0058】
別の実施の形態においては、穴開け器具300は外側のガード(図示されていない)を有する。上述したように、外側ガードは穴開け器具300の周囲を取り囲んでいる。外側ガードは穴開け器具300の長手方向に沿って、切断刃の上を内側細形部材の先端318を越えて摺動が可能である。外側ガードの目的は、穴開けされた心臓組織が穴開け器具の中に吸引され穴開け器具が心臓から引き抜かれるときに、閉じた連続通路を確保することである。心室に新たに形成された穴にバルーンカテーテルを充填するときに、血液が心腔から放出されてしまうような事態は外側ガードによって防止される。
【0059】
再び図5を参照する。ある実施の形態においては、穴開けデバイスは中空本体402の内部に同軸状に配置された内側中空本体(図示されていない)を有する。内側中空本体は管状の形状を有することが好ましい。そうした実施の形態においては、真空は内側中空本体のみを介して印加される。従って、真空連結部423が内側中空本体の基端へ連結されて、内側中空本体を介して吸引が行われる。別の実施の形態においては、内側中空本体は閉じた基端406を通して格納可能可能である。器官組織が薄い場合には、内側中空本体を中空の穴開け部302の内部に同軸状に設置することによって、穴開けされた組織を中空本体402の内部に捕捉することができる。また、内側の細形部材413が内側中空本体の内側に同軸状に配置されていて、摘出された組織のガイドを行うとともに、さらにこれを固定する。
【0060】
ガイドワイヤ340は当該分野において周知の任意の適当なワイヤである。一つの実施の形態においては、ガイドワイヤ340は心臓壁や心腔、大動脈弓、大腿動脈を通るガイドとして作用する。ガイドワイヤ340を用いる利点は、それが穴開け器具300やバルーンカテーテルに対するガイド用トラックとしての機能を果たすことである。従って、ガイドワイヤ340によって穴開け器具300とバルーンカテーテルは適切に位置合わせされる。
【0061】
バルーンカテーテルは心腔の中に挿入されるようになっている。バルーンカテーテルの膨張部は穴開け部302の直径よりも若干大きな直径まで膨張可能なことが好ましい。以下でより詳細に述べるように、大きな直径を有するバルーンが、穴開け器具300によって形成された穴を塞ぐ。バルーンカテーテルは任意の適当な生物適合性を有する材料から形成される。他の実施の形態においては、バルーンカテーテルは心腔の穴を塞ぐことができるその他のカテーテルデバイスで置き換えられている。バルーンカテーテルのさらに別の実施の形態を以下で説明する。
【0062】
ここで図6(a)〜(c)を参照する。心腔に穴開けするためのある方法においては、ガイドワイヤ340はニードルに取り付けられる。ある実施の形態においては、ガイドワイヤを挿入するまえに、手術医は当該分野において周知の方法によって、あるいはここに開示されている新しい方法によってLVADコネクタを取り付ける。次に、取り付けたニードルをLVADコネクタの中心を通してターゲットである心室の中へ挿入する。心臓はなおも圧送を行っているため、ニードルは自動的に大動脈の中を圧送される。ニードルとガイドワイヤは大動脈弓の中を通って大腿動脈まで航行する。次にユーザはニードルを大腿動脈から引き抜いて、大腿動脈から心室までの全体的なガイドを形成する。収縮したバルーンカテーテルを、大腿動脈を介してガイドワイヤまで挿入する。ユーザがカテーテルを動脈を介し、大動脈弓を介して心腔まで押して戻すとき、ガイドワイヤは収縮したバルーンカテーテルを載せたトラックとして機能する。次にバルーンカテーテルを造影剤、あるいはその他の任意の適当な材料を用いて膨張させる。
【0063】
ガイドワイヤ340およびバルーンカテーテルを所定の位置に設置したら、次に穴開け器具300をガイドワイヤ340の上へ挿入する(図6aを参照のこと)。この時点で、ユーザはバルブを回すことによって真空を印加して、真空チャンバ304内部に圧力差を生じさせる。ユーザは、穴開け器具300が心腔の内部へ貫通するまで、穴開け部302を用いて心腔390の中に穴を開ける(図6bを参照のこと)。さらに、細形部材313の末端318が心腔390に突き刺さる。穴開け器具300の内腔の中における圧力差によって形成される真空によって、摘出された組織は真空チャンバ304の内腔の中に吸引される。真空チャンバ304が透明である実施の形態においては、摘出された心臓組織392が真空チャンバ304の内腔の中に入るときを手術医は実際に見ることができる。従って、手術医は心臓組織が完全に切除されたことを目で確認することができる。穴開け器具300が器官から引き抜かれたとき、拍動する心臓によって形成される外向き圧力によって、膨張したバルーンカテーテル500が穴開け器具300で形成された組織の穴を塞ぐ(図6cを参照のこと)。従って、バルーンカテーテル500は、心臓組織392の摘出によって残った穴から血液が吹き出さないようにする栓として作用する。さらに、バルーンカテーテル500は摘出された心臓組織392が心室の中に落ちて戻らないようにする手段にもなる。細形部材313がしっかり突き刺さるため、細形部材313は心臓組織392が心腔390の中に戻ってしまわないようにする機能も果たす。
【0064】
新たに形成された穴をバルーンカテーテルがしっかりと塞いだことを確認したら、手術医はその穴の中にLVADを挿入することができる。上述の穴開け方法は心臓に関して説明してきたが、説明した穴開け用システムは、膀胱や胃、肝臓など、組織の決められた部分を切除する必要がある他の器官や血管に用いることができる。
【0065】
自動サージカルコネクタ
図8は自動サージカルコネクタの実施の形態を示している。開示されているコネクタではコネクタを心臓などの器官へ位置合わせして縫い付ける必要がない。また、縫い付けの場合は器官を繰り返し貫通する必要がある。それに引き替え、本サージカルコネクタ800は、器官の壁へ押しつけられるシーリング部材の力を用いた新しいプレス式機構によって所定の位置に保持される。
【0066】
サージカルコネクタ800のある実施の形態が図8に示されている。この実施の形態においては、サージカルコネクタ800は、内側本体810と、外側の中空本体830と、末端のシーリング部材840と、基端のシーリング部材850を有する。一般に、内側本体810はガイドワイヤ890の上を同軸状に摺動するようになっている。また、内側本体810は末端部815と、基端部811と、中央部813を有する。末端部815と基端部811と中央部813は連続した本体を形成していることが好ましい。さらに、内側本体810は一般に断面が円形である。しかし、内側本体810は任意の適当な断面形状を有することができる。いくつかの実施の形態においては、内側本体810は中空である。別の場合には、内側本体810は、ガイドワイヤ890を通せるように内側本体の内部に通路が設けられていれば中空でなくてよい。
【0067】
少なくとも一つの実施の形態においては、中央部813は末端部815および基端部811よりも大きな直径を有している。中央部813から末端部815へはテーパ状になっているか、あるいは末端シーリング部材840に推移領域を提供するような外形を有していることが好ましい。ある実施の形態においては、末端部815は丸い先端816を有する。末端部815はガイドワイヤの穴開け用システムにおいては末端シーリング部材840とバルーンカテーテルとの間のスペーサとして機能する。特に、バルーンカテーテルの外側表面へ最適な形で合うような丸い先端を設けて、バルーンが何かの拍子に破れることがないようにすることもできる。
【0068】
少なくとも一つの実施の形態においては、サージカルコネクタ800は図9に示されているように中間シース820を有する。説明上、図9は中間シース820と、末端シーリング部材840と、内側本体810のみを有するサージカルコネクタ800を示している。中間シース820は、外側中空本体830と内側本体810との間で、内側本体810の中央部813の周囲に配置されている。大部分の実施の形態においては、中間シース820は任意の適当な金属から形成されている。しかし、他の実施の形態においては、中間シース820はプラスチックから形成されていてもよい。また、中間シース820は一般に内側本体810の中央部813の周囲に摺動可能に配置されている。従って、中間シース820は中央部813の直径よりも若干大きな直径を有している。中間シース820は以下でさらに詳しく説明するように、末端シーリング部材840をその拡張した状態に維持する機能を有する。
【0069】
サージカルコネクタ800のある実施の形態においては、末端シーリング部材840は支持部842とシーリング部846を有する。また、支持部842とシーリング部846はいっしょになって複数のリブ841を構成している。各リブ841は軸状部843と放射状部844を有する。従って、各リブの軸状部843は支持部842に対するフレームあるいは骨組みを形成し、一方、各リブ841の放射状部844はシーリング部材846に対するフレームを形成している。各リブの軸状部843は内側本体810の長手軸方向に揃っていることが好ましい。一つの実施の形態においては、各リブ841の軸状部843は軸状部843の末端部847へ向けてテーパ状になっている。テーパ状の軸状部843のために、末端シーリング部材840は半径方向外側へ拡張する、すなわち広がることができる。
【0070】
放射状部844は軸状部843に対して斜めに配置されており、軸状部843から半径方向外側へ延びている。放射状部844は軸状部843に対して任意の適当な角度を形成している。軸状部843におけると同様に、各リブ841の放射状部844はテーパを有し、末端シーリング部材840の伸張を可能にしている。図9に示されているように、放射状部844は、外側先端845から、放射状部844と軸状部843との交差部分までテーパ状になっている。また、いくつかの実施の形態においては、放射状部844の外側先端は斜めに曲げられている。曲がった外側先端845のために、外側中空本体830が末端シーリング部材を圧縮しやすくなる。さらに別の実施の形態においては、放射状部844の外側先端845は他のリブ(図示されていない)の外側先端845と重なっている。この重なりのために、末端シーリング部材840の圧縮状態において、それをよりコンパクトに圧縮することが可能になる。
【0071】
末端シーリング部材840は図10に示されているように、折り畳んだ状態と拡張した状態を有する。図10は、図10Aに示された末端シーリング部材840の圧縮された状態から図10Cの拡張した状態までの移り変わりを示している。末端シーリング部材840のリブ841は、その圧縮状態において内側本体810の末端部の上に縮まっている。従って、軸状部843とリブ841の放射状部844のテーパによってリブ841は互いに対して縮むことが可能になる。いくつかの実施の形態においては、軸状部843と放射状部844は互いの上にさらに重なる構造になっていて、さらに圧縮あるいは収縮される。リブ841に対してテーパ形状を用いる以外に、末端シーリング部材840の収縮を最適化するために他の形状を用いることもできる。例えば、各軸状部843は傾斜部(図示されていない)を有していてもよい。
【0072】
図10Aに示されているように、収縮したとき、リブ841の軸状部は、内側本体810の末端部815を取り囲む円錐台形状の支持部842を形成する。しかし、支持部842は圧縮されたときに内側本体810に適合するその他の任意の構造を有することができる。ある実施の形態においては、各軸状部843の基端部848は内側本体810の中央部813と接触して、末端シーリング部材840の拡張を開始する。内側本体810を末端に向けて器官880の中へ前方に押すと、図10Bに示されているように中央部813は軸状部841を広げ、互いに引き離す。中央部813が末端シーリング部材の円錐台部分の中へ完全に挿入されると、リブ841は図10Cに示されているように末端シーリング部材840の拡張状態まで完全に広がる。
【0073】
ある実施の形態においては、リブ841は平坦な形状を有する。しかし、リブ841はリブ841を広げたり縮めたりできる任意の形状が可能である。例えば、リブ841はワイヤなど断面が円筒形でもよい。好ましい実施の形態においては、リブ841は血栓を形成しない金属から形成されている。一般に、この金属は弾性金属であって、リブにばねのような特性を付与する。適した金属の例にはニチノールや銅、ステンレススチール、チタン、亜鉛、ニッケル、あるいはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。末端シーリング部材840は血栓を形成しないメッシュあるいはファブリックでも覆われている。こうしたメッシュあるいはファブリックによって、末端シーリング部材840は基端シーリング部材と液密性シールを形成する。特に、この材料はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、あるいはそれらの組み合わせから形成されたポリマーファブリックでよい。しかし、当該分野において周知の、血栓を形成せず生物適合性を有する任意の適当な材料を使用することができる。開示されているコネクタが従来のデバイスに対して有する利点は、それが内側カニューレを有していないことである。コネクタを介して心室から流出する血液は末端シーリング部材840の連続した表面および中間シース820の内側表面と接触するだけである。こうした特徴のために、心臓の中に凝固や血栓が生じる可能性が低減される。
【0074】
サージカルコネクタ800は外側の中空本体830も有する。ある実施の形態においては、内側本体810は外側中空本体830の内部に同軸状に配置されている。外側中空本体830は内側本体810の中央部813よりも若干大きな直径を有することが好ましい。外側中空本体830は中間シース820と内側本体810の中央部813の周囲に配置されている。さらに、外側中空本体830は内側本体の中央部に沿って摺動する。外側中空本体830はプラスチックや金属などの任意の適当な材料から形成される。
【0075】
別の実施の形態においては、サージカルコネクタは基端シーリング部材850を有する。末端シーリング部材840におけると同様に、基端シーリング部材850も図8に示されているようなメッシュあるいはファブリックで覆われた複数のリブ(図示されていない)から成っている。基端シーリング部材850は圧縮可能および拡張可能である必要はないけれども、いくつかの実施の形態はそうした特徴を組み入れている。別の場合には、基端シーリング部材850は金属あるいはプラスチックから形成された中空でない連続した部材(図示されていない)から成っている。少なくとも一つの実施の形態では、シーリング部材850は内側本体の末端に向けて傾斜している。従って、基端シーリング部材のフレームあるいは骨組みを形成する複数のリブの放射状部も末端に向けて傾斜している。また、基端シーリング部材は外側中空本体830の周囲に可動な状態で配置されている。基端シーリング部材は外側中空本体830に沿った位置にロックできることが好ましい。外側中空本体830と基端シーリング部材との間のねじ連結やラチェット機構などの、任意の適当な機構でこれを実現することができる。この機構によって基端シーリング部材850は末端方向へは移動になるが、基端シーリング部材が基端部方向には戻らないようにしている。このようにして、器官あるいは組織は基端シーリング部材と末端シーリング部材840との間にしっかりとクランプされて、液密性シールあるいはプレス式シールを形成する。
【0076】
ある方法においては、開示されているサージカルコネクタ800は上述した穴開け用システムといっしょに使用される。この方法のある実施の形態においては、上でその実施の形態を説明したガイドワイヤ穴開け用システムを用いて器官に穴が形成される。穴開け作業のあと、バルーンカテーテルは新たに形成された穴の中に留まって失血を防止する。しかし、他の穴開け方法をサージカルコネクタ800の実施の形態といっしょに利用することもできる。
【0077】
器官880の中に穴が形成されたあと、内側本体810の末端816がバルーンカテーテル(図示されていない)へ接触するまで、手術医は内側本体810をガイドワイヤ890の上で挿入する。内側本体810の末端816はバルーンカテーテルを破裂させないように丸くなっていることが好ましい。末端の丸い先端を使って手術医はバルーンカテーテルを器官の中へ素早く押し戻す一方で、内側本体810の中央部813をバルーンカテーテルのあとに残った空隙あるいは穴の中に挿入する。中央部816は器官の穴の直径とほぼ同じ直径を有しているため、中央部を挿入することによって器官からの液体の損失を防ぐことができる。
【0078】
基端シーリング部材850が器官の外側表面へ接触するまで内側本体810の中央部813を挿入する。図11Aに示されているように外側中空本体830によって、末端シーリング部材840はその圧縮状態が保持される。中央部813を挿入し終わると、手術医は外側中空本体830を引き戻して、末端シーリング部材840のリブ841が図11Bに示すように半径方向外側へ広がれるようにする。
【0079】
最初に末端シーリング部材840が拡張したら、内側本体810をさらに器官880の中へ末端に向けて押す。図10Cおよび図8を参照のこと。内側本体810の中央部813が内側へ押されるとき、各リブ841の軸状部843は中央部813を取り囲む中間シース820と係合する。末端シーリング部材840がその完全に拡張した状態に達するまで、リブ841は半径方向外側へ移動する。また、中間シース820はリブの軸状部の下側を摺動して、末端シーリング部材840を図9に示されているようにその拡張状態にロックする。すなわち、中間シース820は末端シーリング部材840がその圧縮状態へ戻らないようにし、末端シーリング部材840をその完全に拡張した状態に維持する。中間シース820はその基端部に配置されたストップあるいはタブを有していて、末端シーリング部材840が完全に拡張して位置がロックされたことを手術医へ示す。
【0080】
末端シーリング部材840の位置がロックされると、手術医は基端シーリング部材850を器官の外側表面に対して調節あるいは締め付けを行って、液密性シールを確保する。この締め付けは、ラチェット機構やねじ連結(図示されていない)などのデバイスを組み入れたどのような機構によっても実現することができる。このようにして、器官の壁は内側と基端のシーリング部材830、850との間にしっかりとクランプされ、プレス式タイプの連結を形成する。このため、開示されているサージカルコネクタ800は器官880へ固定するのに縫い付けを必要としない。器官の壁が内側と基端のシーリング部材830、850との間にしっかりとクランプされると、手術医は内側本体810を中間シース820および外側中空本体830から引き抜いて、図12Bに示されているように手術デバイスを取り付けるための固定コネクタあるいは導管を残す。ある実施の形態においては、手術デバイスはLVADであるが、任意の適当な手術デバイスをサージカルコネクタ800へ取り付けることができる。手術医が内側本体810を取り外すと、バルーンカテーテルは再び栓として機能して、器官からの失血を防止する。
【0081】
オフポンプ手術のためのバルーンタイプカテーテル
上述した穴開けシステムは心室の穴を塞ぐように特別に設計されたバルーンタイプカテーテルといっしょに使用されることが好ましい。図7に示されているように、バルーンカテーテル700はガイドワイヤ701と同軸である。カテーテル700の膨張可能なバルーン部分は心室の穴を塞ぐのに適した任意の形状でよい。一つの実施の形態においては、バルーンは膨張すると円錐台形状を有する。別の実施の形態においては、バルーンは末端突起部705と連続したシールあるいはカフ部分403を有していて、乳首形状のバルーン(図7を参照のこと)を形成している。末端突起部703は理想的には、開けられた穴とほぼ同じ直径であり、シール部705は末端部705よりも大きな直径を有していて、心室750内部にシールを形成する。シール部は心室の曲率に似た凸状の曲率を有している。末端突起部705の末端は弾丸のような形状を有していて、開けられた穴の中にカテーテルを容易に滑り込ませてそこを塞ぐことが可能である。また、カテーテル本体717の末端713は穴開け器具がバルーンを破裂させないように、最適な量だけ離間されている。
【0082】
さらに別の実施の形態においては、カテーテルは機械的に拡張が可能なシール(図示されていない)を有している。この実施の形態の利点は、膨張したバルーンを破裂させる危険性のないことである。拡張可能かつ折り畳み可能な機械式シールは傘と非常に似た形で動作する。この機械式シールは上述した拡張可能なシーリング部材と同じように動作する。ある実施の形態においては、機械式シールは血栓を形成しない材料によって覆われた折り畳み可能な骨組みあるいはフレームから成っている。この機械式シールは心室の内部により適合するような曲面状の外観を有していることが好ましい。
【0083】
バルーンカテーテルに対する別の実施の形態は薄型の基端バルブ(図示されていない)を有している。ある実施の形態においては、基端バルブはカテーテル本体と同じ直径を有する。基端バルブは一般に1方向バルブである。すなわち、基端バルブによってバルーンカテーテルには液体あるいは気体を充填することが可能であるが、バルーン部が膨張したあとはバルーン部内部の圧力は維持される。当該分野において周知の任意の適当なバルブを使用することができる。
【0084】
ある特定の実施の形態においては、バルーンカテーテルは、バルーンが膨張したあと基端バルブと連結される基端カテーテル部を有しており、末端カテーテル部と基端カテーテル部は連続したカテーテル本体を形成する。カテーテル本体は、約0.01 mmから10 mmの範囲の小さな直径を有していることが好ましい。カテーテル本体は、それらに限定されるわけではないが穴開け器具300あるいはサージカルコネクタ800を含めた種々の手術デバイスに対するガイドワイヤとして機能する。従って、ある実施の形態においては、バルーンカテーテル700と穴開け器具300は、追加のガイドワイヤを必要とせずに手術用穴開けシステムの一部として使用される。
【0085】
そうした実施の形態においては、バルーンカテーテルはガイドワイヤを必要としない。その代わりに、バルーンカテーテルの末端が器官のターゲット領域へ挿入される。場合によって、バルーンカテーテルを容易に挿入するためにターゲット領域において切開が行われる。バルーンカテーテルは、器官の中に挿入されたあと、バルーンの中に液体あるいは気体を注入することによって膨張させられる。バルーン部は、バルーンカテーテルの基端バルブへ取り付けられるポンプやインジェクションポート、注射器など任意の適当なデバイスによって膨張させられる。バルーン部が膨張したら、インジェクションデバイスを基端バルブから取り外す。バルブが1方向性であるため、バルーン部はインジェクションデバイスを取り外したあとも膨張したままである。次に、ねじ連結などの適当な連結によって基端部を末端部へ取り付け、連続したカテーテル本体を形成する。
【0086】
ここで開示したデバイスの各々はメディカルキットの部材として組み入れられる。例えば、人工装置のオフポンプ連結のためのキットは、ここでのサージカルコネクタや上述したバルーンカテーテル、ガイドワイヤ、および開示されている穴開け器具から成る。このキットはここで開示されている手術デバイスの任意の組み合わせ、あるいは個数から成っている。さらに、ここに開示されている方法および装置はオフポンプ手術に限定されるわけではなく、オンポンプであろうがオフポンプであろうが、任意の手術といっしょに使用できる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を示し、説明してきたが、当該分野の技術者はこの発明の精神あるいは教示から逸脱することなくその修正を形成することができる。ここで説明した実施の形態は単に例であり、発明を制限するものではない。このシステムおよび装置の多くの変形や修正が可能であり、この発明の範囲内である。従って、保護の範囲はここで説明した実施の形態に制限されるわけではなく、請求項によってのみ制限される。請求項の範囲は、請求項の主要事項の等価物すべてを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになった吸引部材と、
この吸引部材へ連結されたフレキシブルアームと、
を有し、前記吸引部材がサージカルコネクタを器官の表面に対して吸引によって安定化するための開口部を有し、前記フレキシブルアームを固定位置に固定してサージカルコネクタおよび器官を所定の位置へ保持することができるような手術デバイス。
【請求項2】
前記吸引部材が摩擦式適合によって前記サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項3】
前記吸引部材が前記サージカルコネクタの内部に摺動可能に嵌るようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項4】
前記吸引部材が前記サージカルコネクタの周囲に摺動可能に嵌るようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項5】
前記吸引部材が、ねじ連結とバヨネット連結とスナップ式連結とから成るグループから選択される連結によって前記サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項6】
前記サージカルコネクタが心尖心室補助装置コネクタである請求項1記載の手術デバイス。
【請求項7】
前記フレキシブルアームが中空部材によって前記吸引部材へ連結されており、前記中空部材が前記吸引部材と連通している請求項1記載の手術デバイス。
【請求項8】
前記中空部材へ取り付けられた真空ラインを有する請求項1記載の手術デバイス。
【請求項9】
前記フレキシブルアームが中空である請求項1記載の手術デバイス。
【請求項10】
前記フレキシブルアームの基端部へ真空ラインが取り付けられていて、前記フレキシブルアームを介して吸引部材から真空が引かれる請求項9記載の手術デバイス。
【請求項11】
前記吸引部材が前記フレキシブルアームへ取り外し可能な状態で取り付けられている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項12】
前記中空部材が、ヒンジとスイベルジョイントとボールジョイントから成るグループから選択されたジョイントによって前記フレキシブルアームへ取り付けられる請求項1記載の手術デバイス。
【請求項13】
前記吸引部材が管状である請求項1記載の手術デバイス。
【請求項14】
前記フレキシブルアームが非弾性の変形可能な材料から成っている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項15】
前記吸引部材がポリマ材料から成る請求項1記載の手術デバイス。
【請求項16】
前記器官が心臓である請求項1記載の手術デバイス。
【請求項17】
サージカルコネクタと、
このサージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになった吸引部材と、
この吸引部材へ連結されたフレキシブルアームと、
を有し、前記吸引部材が前記サージカルコネクタを器官の表面へ吸引によって固定するための開口部を有しており、前記サージカルコネクタおよび器官を安定化するために前記フレキシブルアームを固定位置へロックすることができる手術デバイス。
【請求項18】
前記サージカルコネクタが前記吸引部材へ同軸状に連結される請求項17記載の手術デバイス。
【請求項19】
前記サージカルコネクタが前記吸引部材へ解放可能な状態で連結されるようになっている請求項17記載の手術デバイス。
【請求項20】
前記サージカルコネクタが心室補助装置コネクタである請求項17記載の手術デバイス。
【請求項21】
前記サージカルコネクタが器官接触端部を有する中空本体を有し、前記器官接触端部がカフによって囲まれている請求項17記載の手術デバイス。
【請求項22】
a)サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結される吸引部材へ取り付けられ、固定位置に固定することができるフレキシブルアームを有する手術デバイスを提供する段階と、
b)前記吸引部材へ真空を印加する段階と、
c)前記吸引部材へ解放可能な状態で連結された吸引部材を、器官の表面上へ位置合わせする段階と、
d)前記器官とサージカルコネクタを安定化するために前記フレキシブルアームを所望の位置へ固定する段階と、
を有し、前記サージカルコネクタと前記器官が吸引部材からの真空によって所定の位置に保持される方法。
【請求項23】
前記段階(d)のあとに前記サージカルコネクタを器官の表面へ取り付けて流体密閉性シールを形成する段階を有する請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記吸引部材を前記サージカルコネクタから取り外す段階を有し、前記サージカルコネクタが前記器官へ取り付けられたままにされる請求項23記載の方法。
【請求項25】
開口した末端部と閉じた基端部とを有する中空本体と、
この中空本体内部に同軸状に配置された中空の細形部材と、
を有し、前記開口した末端部が切断刃を有し、前記中空本体がこの中空本体から真空を印加するために真空連結部を有し、前記細形部材がガイドワイヤの上に挿入されるようになっている手術用穴開け器具。
【請求項26】
前記中空本体が透明である請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項27】
前記中空本体がポリマ材料から成る請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項28】
前記中空本体が金属から成る請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項29】
前記真空連結部が前記中空本体の前記閉じた基端部に配置されている請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項30】
前記細形部材が前記中空本体の前記基端部へ連結されている請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項31】
前記切断刃が面取りされた外側表面を有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項32】
前記細形部材がポリマ材料から成る請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項33】
前記細形部材が入れ子式である請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項34】
前記細形部材が前記真空チャンバの前記閉じた端部へ取り付けられている請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項35】
前記細形部材へ取り付けられたハンドルを有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項36】
前記真空連結部が真空を調節するためのバルブを有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項37】
前記中空本体へ取り付けられたハンドルを有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項38】
前記中空本体が円筒形状である請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項39】
前記中空本体が、
前記中空本体の前記開口した末端部と開口した基端部とを有する穴開け部と、
この穴開け部の開口した基端部へ連結された真空チャンバと、
を有し、前記真空チャンバが前記中空本体の閉じた基端部を有し、前記真空チャンバが前記真空連結部を有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項40】
前記真空チャンバが前記中空の穴開け部へ解放可能な状態で連結されている請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項41】
前記真空チャンバが、摩擦式連結か、ねじ連結か、バヨネット連結か、あるいはスナップ式連結によって前記中空の穴開け部へ解放可能な状態で連結されている請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項42】
前記中空穴開け部が前記真空チャンバよりも小さな直径を有する請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項43】
前記中空穴開け部が前記真空チャンバよりも大きな直径を有する請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項44】
前記中空の穴開け部が金属から成る請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項45】
前記真空チャンバが透明である請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項46】
ガイドワイヤと、
このガイドワイヤの上へ挿入可能になった細形部材を有する穴開け器具と、
前記ガイドワイヤの上に同軸状に取り付けられるバルーンカテーテルと、
を有する手術用穴開けシステム。
【請求項47】
前記穴開け器具が、
開口した末端部と閉じた基端部とを有する中空本体を有し、
前記開口した末端部が切断刃を有し、前記中空本体がこの中空本体から真空を印加するために真空連結部を有し、前記中空の細形部材が前記中空本体内部に同軸状に配置されている請求項46記載の手術用穴開けシステム。
【請求項48】
前記穴開け器具の前記中空本体が、
前記中空本体の前記開口した末端部と開口した基端部とを有する穴開け部と、
この穴開け部の開口した基端部へ連結された真空チャンバと、
を有し、前記真空チャンバが前記中空本体の閉じた基端部を有し、前記真空チャンバが前記真空連結部を有する請求項46記載の手術用穴開けシステム。
【請求項49】
前記バルーンカテーテルが膨張したとき、前記穴開け器具の直径よりも大きな直径を有する請求項46記載の手術用穴開けシステム。
【請求項50】
器官に穴を開けるための方法であって、
a)前記器官の中にガイドワイヤを挿入する段階と、
b)前記ガイドワイヤの上へ挿入されるようになった穴開け器具を提供する段階と、
c)前記穴開け器具をガイドするためにガイドワイヤの上に穴開け器具を通す段階と、
d)前記器官の一部に穴開けするために器官の中に穴開け器具を挿入する段階と、
を有する方法。
【請求項51】
前記器官の穴開けされた部分を穴開け器具の中に吸引するために、穴開け器具へ真空を印加する段階を有する請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記器官が心臓である請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記器官の中にガイドワイヤを挿入する段階が、ガイドワイヤを心臓の中、大動脈の中、および大腿動脈の中へ挿入する段階を有する請求項50記載の方法。
【請求項54】
バルーンカテーテルをガイドワイヤで大腿動脈から心臓の中へ挿入する段階と、バルーンカテーテルを膨張させる段階とを有し、前記段階(d)のあとバルーンカテーテルが器官の穴を塞ぐ請求項50記載の方法。
【請求項55】
器官を医療デバイスへ連結するためのサージカルコネクタであって、
内側本体と、
この内側本体の周囲に摺動可能に配置された外側中空本体と、
前記内側本体の周囲に配置された末端シーリング部材と、
前記外側中空本体の周囲に配置された基端シーリング部材と、
を有し、前記末端シーリング部材が折り畳まれた状態と拡張した状態とを有し、前記末端シーリング部材を前記拡張した状態にロックすることが可能であり、前記基端シーリング部材が前記末端シーリング部材に近接しているサージカルコネクタ。
【請求項56】
前記内側本体が基端部と中央部と末端部とを有し、前記外側中空本体が前記内側本体の中央部の周囲に摺動可能に配置されている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項57】
前記内側本体の前記中央部が前記末端部および前記基端部よりも大きな直径を有する請求項56記載のサージカルコネクタ。
【請求項58】
前記内側本体が前記中央部から前記末端部まで推移領域を有し、この推移領域が前記末端シーリング部材の拡張を容易にするような外側形状を有する請求項56記載のサージカルコネクタ。
【請求項59】
前記末端シーリング部材が放射状シーリング部と支持部とを有し、前記支持部が前記折り畳んだ状態において前記内側本体の前記末端部の周囲を取り囲み、前記支持部が前記拡張した状態において前記内側本体の前記中央部の周囲を取り囲む請求項56記載のサージカルコネクタ。
【請求項60】
前記末端シーリング部材が複数のリブを有する請求項59記載のサージカルコネクタ。
【請求項61】
前記複数のリブが前記折り畳まれた状態においては一体に圧縮され、前記拡張した状態においては広がる請求項60記載のサージカルコネクタ。
【請求項62】
前記内側シーリング部材が前記複数のリブを覆うポリマ材料を有する請求項60記載のサージカルコネクタ。
【請求項63】
前記複数のリブの各々が軸状部と放射状突起部を有し、前記軸状部が前記内側本体に沿って長手方向に揃えられ、前記放射状突起部が前記軸状部から半径方向に延びており、前記放射状突起部が前記軸状部と斜めに交差している請求項60記載のサージカルコネクタ。
【請求項64】
前記末端部が丸い先端を有する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項65】
前記内側本体の前記中央部を取り囲むシースを有し、このシースが前記外側中空本体と前記内側本体との間に配置されている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項66】
前記シースが前記末端シーリング部材の前記支持部の内部で同軸状に摺動して、前記末端シーリング部材を前記拡張した状態にロックする請求項65記載のサージカルコネクタ。
【請求項67】
前記基端シーリング部材がポリマから成っている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項68】
前記外側中空本体が前記内側本体の中央部に沿って基端部の方へ摺動して、前記末端シーリング部材を前記折り畳まれた状態から解放する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項69】
前記基端シーリング部材がねじ機構によって末端方向へ調節される請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項70】
前記基端シーリング部材がラチェット機構によって末端方向へ調節される請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項71】
前記基端シーリング部材がポリマ材料によって覆われた複数のリブを有する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項72】
前記外側中空本体が前記シーリング部を前記末端シーリング部材の前記折り畳まれた状態に圧縮する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項73】
前記内側本体が円形の断面を有する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項74】
前記折り畳まれた状態にある前記内側中空本体の直径が前記内側本体の直径にほぼ等しい請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項75】
前記外側中空本体が円筒形状である請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項76】
前記内側本体がガイドワイヤの上に同軸状に挿入されるようになっている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項77】
ガイドワイヤと、
このガイドワイヤの上に挿入されるようになったバルーンカテーテルと、
サージカルコネクタと、
を有し、前記サージカルコネクタが、
前記ガイドワイヤの上に挿入されるようになった内側本体と、
前記内側本体の周囲に摺動可能に配置された外側中空本体と、
前記内側本体の周囲に配置された末端シーリング部材と、
前記外側中空本体の周囲に配置された基端シーリング部材と、
を有し、前記末端シーリング部材が折り畳まれた状態と拡張した状態とを有し、前記末端シーリング部材を前記拡張された状態にロックすることが可能であり、前記基端シーリング部材が前記末端シーリング部材に近接している手術連結システム。
【請求項1】
サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになった吸引部材と、
この吸引部材へ連結されたフレキシブルアームと、
を有し、前記吸引部材がサージカルコネクタを器官の表面に対して吸引によって安定化するための開口部を有し、前記フレキシブルアームを固定位置に固定してサージカルコネクタおよび器官を所定の位置へ保持することができるような手術デバイス。
【請求項2】
前記吸引部材が摩擦式適合によって前記サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項3】
前記吸引部材が前記サージカルコネクタの内部に摺動可能に嵌るようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項4】
前記吸引部材が前記サージカルコネクタの周囲に摺動可能に嵌るようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項5】
前記吸引部材が、ねじ連結とバヨネット連結とスナップ式連結とから成るグループから選択される連結によって前記サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになっている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項6】
前記サージカルコネクタが心尖心室補助装置コネクタである請求項1記載の手術デバイス。
【請求項7】
前記フレキシブルアームが中空部材によって前記吸引部材へ連結されており、前記中空部材が前記吸引部材と連通している請求項1記載の手術デバイス。
【請求項8】
前記中空部材へ取り付けられた真空ラインを有する請求項1記載の手術デバイス。
【請求項9】
前記フレキシブルアームが中空である請求項1記載の手術デバイス。
【請求項10】
前記フレキシブルアームの基端部へ真空ラインが取り付けられていて、前記フレキシブルアームを介して吸引部材から真空が引かれる請求項9記載の手術デバイス。
【請求項11】
前記吸引部材が前記フレキシブルアームへ取り外し可能な状態で取り付けられている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項12】
前記中空部材が、ヒンジとスイベルジョイントとボールジョイントから成るグループから選択されたジョイントによって前記フレキシブルアームへ取り付けられる請求項1記載の手術デバイス。
【請求項13】
前記吸引部材が管状である請求項1記載の手術デバイス。
【請求項14】
前記フレキシブルアームが非弾性の変形可能な材料から成っている請求項1記載の手術デバイス。
【請求項15】
前記吸引部材がポリマ材料から成る請求項1記載の手術デバイス。
【請求項16】
前記器官が心臓である請求項1記載の手術デバイス。
【請求項17】
サージカルコネクタと、
このサージカルコネクタへ解放可能な状態で連結されるようになった吸引部材と、
この吸引部材へ連結されたフレキシブルアームと、
を有し、前記吸引部材が前記サージカルコネクタを器官の表面へ吸引によって固定するための開口部を有しており、前記サージカルコネクタおよび器官を安定化するために前記フレキシブルアームを固定位置へロックすることができる手術デバイス。
【請求項18】
前記サージカルコネクタが前記吸引部材へ同軸状に連結される請求項17記載の手術デバイス。
【請求項19】
前記サージカルコネクタが前記吸引部材へ解放可能な状態で連結されるようになっている請求項17記載の手術デバイス。
【請求項20】
前記サージカルコネクタが心室補助装置コネクタである請求項17記載の手術デバイス。
【請求項21】
前記サージカルコネクタが器官接触端部を有する中空本体を有し、前記器官接触端部がカフによって囲まれている請求項17記載の手術デバイス。
【請求項22】
a)サージカルコネクタへ解放可能な状態で連結される吸引部材へ取り付けられ、固定位置に固定することができるフレキシブルアームを有する手術デバイスを提供する段階と、
b)前記吸引部材へ真空を印加する段階と、
c)前記吸引部材へ解放可能な状態で連結された吸引部材を、器官の表面上へ位置合わせする段階と、
d)前記器官とサージカルコネクタを安定化するために前記フレキシブルアームを所望の位置へ固定する段階と、
を有し、前記サージカルコネクタと前記器官が吸引部材からの真空によって所定の位置に保持される方法。
【請求項23】
前記段階(d)のあとに前記サージカルコネクタを器官の表面へ取り付けて流体密閉性シールを形成する段階を有する請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記吸引部材を前記サージカルコネクタから取り外す段階を有し、前記サージカルコネクタが前記器官へ取り付けられたままにされる請求項23記載の方法。
【請求項25】
開口した末端部と閉じた基端部とを有する中空本体と、
この中空本体内部に同軸状に配置された中空の細形部材と、
を有し、前記開口した末端部が切断刃を有し、前記中空本体がこの中空本体から真空を印加するために真空連結部を有し、前記細形部材がガイドワイヤの上に挿入されるようになっている手術用穴開け器具。
【請求項26】
前記中空本体が透明である請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項27】
前記中空本体がポリマ材料から成る請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項28】
前記中空本体が金属から成る請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項29】
前記真空連結部が前記中空本体の前記閉じた基端部に配置されている請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項30】
前記細形部材が前記中空本体の前記基端部へ連結されている請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項31】
前記切断刃が面取りされた外側表面を有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項32】
前記細形部材がポリマ材料から成る請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項33】
前記細形部材が入れ子式である請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項34】
前記細形部材が前記真空チャンバの前記閉じた端部へ取り付けられている請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項35】
前記細形部材へ取り付けられたハンドルを有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項36】
前記真空連結部が真空を調節するためのバルブを有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項37】
前記中空本体へ取り付けられたハンドルを有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項38】
前記中空本体が円筒形状である請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項39】
前記中空本体が、
前記中空本体の前記開口した末端部と開口した基端部とを有する穴開け部と、
この穴開け部の開口した基端部へ連結された真空チャンバと、
を有し、前記真空チャンバが前記中空本体の閉じた基端部を有し、前記真空チャンバが前記真空連結部を有する請求項25記載の手術用穴開け器具。
【請求項40】
前記真空チャンバが前記中空の穴開け部へ解放可能な状態で連結されている請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項41】
前記真空チャンバが、摩擦式連結か、ねじ連結か、バヨネット連結か、あるいはスナップ式連結によって前記中空の穴開け部へ解放可能な状態で連結されている請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項42】
前記中空穴開け部が前記真空チャンバよりも小さな直径を有する請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項43】
前記中空穴開け部が前記真空チャンバよりも大きな直径を有する請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項44】
前記中空の穴開け部が金属から成る請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項45】
前記真空チャンバが透明である請求項39記載の手術用穴開け器具。
【請求項46】
ガイドワイヤと、
このガイドワイヤの上へ挿入可能になった細形部材を有する穴開け器具と、
前記ガイドワイヤの上に同軸状に取り付けられるバルーンカテーテルと、
を有する手術用穴開けシステム。
【請求項47】
前記穴開け器具が、
開口した末端部と閉じた基端部とを有する中空本体を有し、
前記開口した末端部が切断刃を有し、前記中空本体がこの中空本体から真空を印加するために真空連結部を有し、前記中空の細形部材が前記中空本体内部に同軸状に配置されている請求項46記載の手術用穴開けシステム。
【請求項48】
前記穴開け器具の前記中空本体が、
前記中空本体の前記開口した末端部と開口した基端部とを有する穴開け部と、
この穴開け部の開口した基端部へ連結された真空チャンバと、
を有し、前記真空チャンバが前記中空本体の閉じた基端部を有し、前記真空チャンバが前記真空連結部を有する請求項46記載の手術用穴開けシステム。
【請求項49】
前記バルーンカテーテルが膨張したとき、前記穴開け器具の直径よりも大きな直径を有する請求項46記載の手術用穴開けシステム。
【請求項50】
器官に穴を開けるための方法であって、
a)前記器官の中にガイドワイヤを挿入する段階と、
b)前記ガイドワイヤの上へ挿入されるようになった穴開け器具を提供する段階と、
c)前記穴開け器具をガイドするためにガイドワイヤの上に穴開け器具を通す段階と、
d)前記器官の一部に穴開けするために器官の中に穴開け器具を挿入する段階と、
を有する方法。
【請求項51】
前記器官の穴開けされた部分を穴開け器具の中に吸引するために、穴開け器具へ真空を印加する段階を有する請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記器官が心臓である請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記器官の中にガイドワイヤを挿入する段階が、ガイドワイヤを心臓の中、大動脈の中、および大腿動脈の中へ挿入する段階を有する請求項50記載の方法。
【請求項54】
バルーンカテーテルをガイドワイヤで大腿動脈から心臓の中へ挿入する段階と、バルーンカテーテルを膨張させる段階とを有し、前記段階(d)のあとバルーンカテーテルが器官の穴を塞ぐ請求項50記載の方法。
【請求項55】
器官を医療デバイスへ連結するためのサージカルコネクタであって、
内側本体と、
この内側本体の周囲に摺動可能に配置された外側中空本体と、
前記内側本体の周囲に配置された末端シーリング部材と、
前記外側中空本体の周囲に配置された基端シーリング部材と、
を有し、前記末端シーリング部材が折り畳まれた状態と拡張した状態とを有し、前記末端シーリング部材を前記拡張した状態にロックすることが可能であり、前記基端シーリング部材が前記末端シーリング部材に近接しているサージカルコネクタ。
【請求項56】
前記内側本体が基端部と中央部と末端部とを有し、前記外側中空本体が前記内側本体の中央部の周囲に摺動可能に配置されている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項57】
前記内側本体の前記中央部が前記末端部および前記基端部よりも大きな直径を有する請求項56記載のサージカルコネクタ。
【請求項58】
前記内側本体が前記中央部から前記末端部まで推移領域を有し、この推移領域が前記末端シーリング部材の拡張を容易にするような外側形状を有する請求項56記載のサージカルコネクタ。
【請求項59】
前記末端シーリング部材が放射状シーリング部と支持部とを有し、前記支持部が前記折り畳んだ状態において前記内側本体の前記末端部の周囲を取り囲み、前記支持部が前記拡張した状態において前記内側本体の前記中央部の周囲を取り囲む請求項56記載のサージカルコネクタ。
【請求項60】
前記末端シーリング部材が複数のリブを有する請求項59記載のサージカルコネクタ。
【請求項61】
前記複数のリブが前記折り畳まれた状態においては一体に圧縮され、前記拡張した状態においては広がる請求項60記載のサージカルコネクタ。
【請求項62】
前記内側シーリング部材が前記複数のリブを覆うポリマ材料を有する請求項60記載のサージカルコネクタ。
【請求項63】
前記複数のリブの各々が軸状部と放射状突起部を有し、前記軸状部が前記内側本体に沿って長手方向に揃えられ、前記放射状突起部が前記軸状部から半径方向に延びており、前記放射状突起部が前記軸状部と斜めに交差している請求項60記載のサージカルコネクタ。
【請求項64】
前記末端部が丸い先端を有する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項65】
前記内側本体の前記中央部を取り囲むシースを有し、このシースが前記外側中空本体と前記内側本体との間に配置されている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項66】
前記シースが前記末端シーリング部材の前記支持部の内部で同軸状に摺動して、前記末端シーリング部材を前記拡張した状態にロックする請求項65記載のサージカルコネクタ。
【請求項67】
前記基端シーリング部材がポリマから成っている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項68】
前記外側中空本体が前記内側本体の中央部に沿って基端部の方へ摺動して、前記末端シーリング部材を前記折り畳まれた状態から解放する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項69】
前記基端シーリング部材がねじ機構によって末端方向へ調節される請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項70】
前記基端シーリング部材がラチェット機構によって末端方向へ調節される請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項71】
前記基端シーリング部材がポリマ材料によって覆われた複数のリブを有する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項72】
前記外側中空本体が前記シーリング部を前記末端シーリング部材の前記折り畳まれた状態に圧縮する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項73】
前記内側本体が円形の断面を有する請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項74】
前記折り畳まれた状態にある前記内側中空本体の直径が前記内側本体の直径にほぼ等しい請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項75】
前記外側中空本体が円筒形状である請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項76】
前記内側本体がガイドワイヤの上に同軸状に挿入されるようになっている請求項55記載のサージカルコネクタ。
【請求項77】
ガイドワイヤと、
このガイドワイヤの上に挿入されるようになったバルーンカテーテルと、
サージカルコネクタと、
を有し、前記サージカルコネクタが、
前記ガイドワイヤの上に挿入されるようになった内側本体と、
前記内側本体の周囲に摺動可能に配置された外側中空本体と、
前記内側本体の周囲に配置された末端シーリング部材と、
前記外側中空本体の周囲に配置された基端シーリング部材と、
を有し、前記末端シーリング部材が折り畳まれた状態と拡張した状態とを有し、前記末端シーリング部材を前記拡張された状態にロックすることが可能であり、前記基端シーリング部材が前記末端シーリング部材に近接している手術連結システム。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12a】
【図12b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図12a】
【図12b】
【公表番号】特表2009−542375(P2009−542375A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518616(P2009−518616)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/072759
【国際公開番号】WO2008/005990
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509007089)セムト,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/072759
【国際公開番号】WO2008/005990
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509007089)セムト,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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