説明

MEMSメモリ用マイクロプローブ

【課題】安定な記録/再生特性を実現することができ、かつプローブ先端に耐摩耗性を有するMEMSメモリ用マイクロプローブを提供する。
【解決手段】記録媒体に対向するように配置され、該記録媒体に接触させて情報の記録/再生を行うプローブ先端部と、前記プローブ先端部との電気的および機械的接続を担うレバー部と、前記レバー部との電気的および機械的接続を担うベース部とを具備する。前記プローブ先端部には、前記記録/再生に用いられる電極と、該電極とともに前記プローブ先端部を形成する支持部とが交互に複数配置され、前記電極および前記支持部が前記記録媒体に対向する同一平面をなすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)メモリに用いられるマイクロプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
動画撮影機能付きの携帯電話、600万画素を超えるデジタルカメラなど、我々が扱う情報量は年々急速に増大しており、情報記録装置の大容量化、小型化が求められている。情報記録装置の記録密度を向上させる直接的な方法は、ハードディスクや光ディスクでは記録/再生ビットの径を小さくすることであり、フラッシュメモリなどの不発揮性メモリでは単位セルサイズをより小さくすることであるが、既存の原理(光の回折など)に基づいた方法では近い将来に高密度化に物理的限界が来るという予測がある。例えば、ハードディスクドライブでは、高密度化に伴い磁気の熱揺らぎの影響が大きくなってくるため、単純に今のまま高密度化していけば室温でデータが壊れてしまう問題がある。光ディスクにおいても、光の回折限界により記録/再生ビットのサイズは限界に達しつつある。これを打破する有力な手段として、走査型プローブ顕微(SPM)の原理を利用したプローブ型MEMSメモリが研究されている。
【0003】
プローブ型MEMSメモリとは、プローブ先端の記録/再生用電極と記録媒体との間の様々な物理的相互作用を利用して情報の書き込み、読み出し、および消去を行う記録装置である。プローブ型MEMSメモリの記録/再生のヘッドとしてマイクロプローブを適用する場合、電荷、低抗、電流および電圧のような重要な因子がマイクロプローブによって精密に測定されねばならない。このため記録/再生時においてマイクロプローブ先端の記録/再生用電極を含む特定の領域が記録媒体に確実に接触していることが重要である。記録/再生用電極と記録媒体の接触が十分でない場合には、記録/再生動作が不安定となり、プローブ型MEMSメモリの信頼性低下につながる。このため、記録/再生用電極と記録媒体とを記録/再生時に確実に接触させることが重要である。言い替えれば、記録/再生時に記録/再生用電極と記録媒体の記録/再生ビットとが非接触となる可能性を低くすることが重要である。
【0004】
従来、プローブ型MEMSメモリが高速かつ高密度に情報を記録または再生できるようにするため、プローブを先鋭化構造とする場合が多い。この場合、プローブ先端の直径は数nm〜数百nmである。単純にプローブの先端を小さくすると、プローブ先端の摩耗が激しくなり、先端径が大きくなってしまう。これは、プローブ先端に対向して接触させる記録媒体上の記録/再生ビットのサイズ制約をもたらす。また、摩耗が激しく進行すると、プローブ先端と記録/再生ビットとが上述したように記録/再生時に非接触となり、記録/再生動作自体が行えなくなってしまう。
【0005】
下記特許文献1の第3頁には、このようなプローブ先端の摩耗についての実験結果が示されている。この実験は、プローブ先端のチップ半径が5nmであるシャープタイプのMEMSメモリ用マイクロプローブと、同チップ半径が50nmであるブラントタイプのMEMSメモリ用マイクロプローブの両者に同じ荷重を加えたとき、各々の摩耗の程度を観察するというものである。プローブの移動速度は2μm/sである。同実験結果によれば、同じ荷重が加えられた場合、シャープタイプのプローブのチップがブラントタイプのチップより激しく摩耗することが分かる。これは、シャープタイプのプローブのチップ半径がブラントタイプのチップ半径より小さく荷重が集中することによる。シャープタイプのプローブの分解能はブラントタイプのプローブの分解能よりも高いことから、高密度記録装置にはブラントタイプではなくシャープタイプのプローブとする場合が多い。しかし、シャープタイプのプローブはこのようにブラントタイプのプローブよりも摩耗の程度が激しいという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−221792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、プローブ先端の記録/再生用電極と記録媒体の記録/再生ビットとが記録/再生時に非接触となる可能性が低く安定な記録/再生特性を実現することができ、かつプローブ先端に耐摩耗性を有するMEMSメモリ用マイクロプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、一態様に係るMEMSメモリ用マイクロプローブは、記録媒体に対向するように配置され、該記録媒体に接触させて情報の記録/再生を行うプローブ先端部と、前記プローブ先端部との電気的および機械的接続を担うレバー部と、前記レバー部との電気的および機械的接続を担うベース部とを具備する。
【0009】
前記プローブ先端部には、前記記録/再生に用いられる電極と、該電極とともに前記プローブ先端部を形成する支持部とが交互に複数配置され、前記電極および前記支持部が前記記録媒体に対向する同一平面をなすことを特徴とする。
【0010】
なお、前記電極の材料を前記支持部よりも硬い材料としてもよい。前記電極と前記支持部との間に挟まれる絶縁層をさらに具備してもよい。前記記録媒体に接触する面に平行な前記プローブ先端部の任意の断面が互いに同一であってもよい。前記電極は、前記プローブ先端部の前記記録媒体に対する相対的な移動方向であるプローブスキャン方向に対して平行な方向に沿ってアレイ状に配置されてもよい。前記レバー部は、前記プローブ先端部を第1の方向から支える第1のレバー部と、前記プローブ先端部を前記第1の方向に対向する第2の方向から支える第2のレバー部とを有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プローブ先端の記録/再生用電極と記録媒体の記録/再生ビットとが記録/再生時に非接触となる可能性が低く安定な記録/再生特性を実現することができ、かつプローブ先端に耐摩耗性を有するMEMSメモリ用マイクロプローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブをボトム方向から見た斜視図
【図2】上記MEMSメモリ用マイクロプローブをトップ方向から見た斜視図
【図3】上記MEMSメモリ用マイクロプローブのA−A’方向の断面図
【図4】上記MEMSメモリ用マイクロプローブのB−B’方向の断面図
【図5】上記MEMSメモリ用マイクロプローブにおける記録/再生用電極配置のいくつかの例を示す図
【図6】上記MEMSメモリ用マイクロプローブのプローブ先端部が記録媒体に接触する様子を示す図
【図7】上記MEMSメモリ用マイクロプローブのレバー部を両持ち構造とする場合を示す図
【図8】上記MEMSメモリ用マイクロプローブの製造プロセスの一例を示す図
【図9】第2実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブを示す斜視図
【図10】第3実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブをある方向から見た斜視図、図2は、上記MEMSメモリ用マイクロプローブを別の方向から見た斜視図である。本実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブ10は、プローブ先端部11と、レバー部15と、ベース部17とを備える。レバー部15は、プローブ先端部11とベース部17との間の電気的および機械的接続を担う。レバー部15は、プローブ先端部11を支え、ベース部17はレバー部15を支える。
【0015】
図1においてレバー部15より紙面上方に突出するように示されるプローブ先端部11の面が記録媒体に対向し、両者が接触し、同記録媒体に対する情報の書き込み動作(記録)、または同記録媒体からの情報の読み出し動作(再生)が行われる。MEMSメモリは、このような本実施形態に係るマイクロプローブ10と記録媒体とによって構成される。
【0016】
なお、本実施形態では説明の簡単化のため一本のマイクロプローブ10について説明するが、複数本のマイクロプローブにも本発明は適用可能である。
【0017】
プローブ先端部11は、交互に配置される複数の支持部14と記録/再生用スライス型電極12とを有する。直方体のような形状を有する支持部14の一面と、同じく直方体のような形状を有する記録/再生用スライス型電極12の一面とが同一平面を成している。この平面は上述したように記録媒体に対向しており、記録/再生用スライス型電極12が記録媒体上の記録/再生ビットに接触することで記録媒体に対する情報の書き込み動作(記録)、または同記録媒体からの情報の読み出し動作(再生)が行われる。
【0018】
なお、支持部14と共に交互に配置される記録/再生用スライス型電極12は、支持部14よりも硬い材料を用いて構成することが好ましい。
【0019】
また、支持部14と記録/再生用スライス型電極12との間には、両者によって挟み込まれるように絶縁層13が形成される。絶縁層13は、例えば絶縁酸化膜(例:SiO2)である。このように絶縁層13を設ける構成とする場合、プローブ先端部11における複数のスライス型電極12間の電気干渉を抑えることができる。また、スライス型電極12の各々の電気スポットが絶縁層13によって絞られることにより、記録/再生ビットの広がりを防ぐことができる。
【0020】
図2に示すように、レバー部15にはレバー部電極アレイ16が設けられ、ベース部17にはベース部電極アレイ18が形成される。プローブ先端部11の記録/再生用スライス型電極12とレバー部15のレバー部電極アレイ16とは電気的に接続される。レバー部15のレバー部電極アレイ16とベース部17のベース部電極アレイ18とは、貫通電極を介して電気的に接続される。
【0021】
図3は、図1および図2に示される第1実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブのA−A’方向の断面図、図4は、上記MEMSメモリ用マイクロプローブのB−B’方向の断面図である。
【0022】
図3および図4の紙面下側が記録媒体に対向する方向である。図3および図4からわかるように、記録媒体に接触する面に平行なプローブ先端部11の任意の断面は互いに同一である。このような一定断面を持つ構造によれば、記録媒体との接触によってプローブ先端部11が摩耗しても、ヘッドとしての性能を維持することができる。
【0023】
図5は、第1実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブにおける記録/再生用電極配置のいくつかの例を示す図である。図1ないし図4には、記録/再生用スライス型電極12が等間隔で5つ配置される場合が示されているが、記録/再生用スライス型電極12を複数設ける構成はこれに限定されない。例えば、図5(a)に示すように支持部14の両側を挟むように記録/再生用スライス型電極12を2つ設ける構成としてもよい。図5(b)は、記録/再生用スライス型電極12を中央に寄せて図5(a)よりも狭い間隔で2つ設ける構成としたものである。図5(c)(d)は、同様に3つの記録/再生用スライス型電極12を設ける構成例、図5(e)(f)は、同様に4つの記録/再生用スライス型電極12を設ける構成例である。また、記録/再生用スライス型電極12の数は限定されず、1本から数万本までの構成としてもよい。
【0024】
図6は、第1実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブ10のプローブ先端部11が記録媒体に接触する様子を示す図である。図6において、100は記録媒体、101は記録媒体100上の記録/再生ビットを示している。
【0025】
記録/再生用スライス型電極12から記録媒体100に電流が流れる場合、記録媒体100の記録/再生ビット101には情報が記録される。
【0026】
一方、記録/再生ビット101が存在する箇所と記録/再生ビット101が存在しない箇所との電気特性の違いから、記録/再生ビット101に記録されている情報がスライス型電極12を通じて読み出される。
【0027】
MEMSメモリ用マイクロプローブ10が情報を書き込み或いは読み出す時のヘッド(プローブ先端部11)の記録媒体に対する相対的な移動方向のことをプローブスキャン方向という。記録/再生用スライス型電極12は、このようなプローブスキャン方向と平行な方向に沿って、アレイ状に複数設けられる。
【0028】
図7は、上記MEMSメモリ用マイクロプローブのレバー部を両持ち構造とする場合を示す図である。この場合、プローブ先端部11はベース部17aおよびレバー部15aによって第1の方向から支える共に、ベース部17bおよびレバー部15bによって第1の方向に対向する第2の方向から支えることができる。これによりプローブ先端部11を記録媒体100に対して安定に接触させることができる。
【0029】
以上説明した第1実施形態は、数μm〜数百μmであるプローブ先端部11に、数nm〜数十nmの複数の記録/再生用スライス型電極12を設ける構成であって、プローブ1本でマルチ化の機能を有するものであり、当該プローブを使用して、高い記録/再生レートと高記録密度を両立するMEMSメモリ用マイクロプローブを提供することができる。
【0030】
特に、記録/再生用スライス型電極12を複数配置する構成であることにより、記録/再生用スライス型電極12を1つのみ備える構成に比べて記録/再生用スライス型電極12と記録媒体100の記録/再生ビット101とが非接触となる可能性が低く、プローブ先端部11と記録媒体100との接触状態によらず確実に記録/再生を行うことができ、装置の信頼性を向上することができる。
【0031】
また、プローブ先端部11において、同一平面(接触面)をなすように記録/再生用スライス型電極12、支持部14(および絶縁層13)を交互に複数配置する構成とし、このような接触面を記録媒体100に対向して接触させる構成としていることにより、接触時に記録/再生電極12に加わる荷重が分散される。従って本実施形態によれば、プローブ先端部11と記録媒体100との間の電気的の接触面積は増大させずに、その機械的の接触面積のみを増大させることができることから、記録/再生用スライス型電極12の摩耗を抑制することができる。
【0032】
また、記録媒体に接触する面に関してプローブ先端部11が一定断面を持つ構造によれば、記録媒体との接触によってプローブ先端部11が摩耗しても、ヘッドとしての性能を維持することができる。また、支持部14と共に交互に配置される記録/再生用スライス型電極12は、支持部14よりも硬い材料を用いて構成する構成によれば、プローブ先端部11において、記録/再生用スライス型電極12は支持部14よりも後に摩耗し、これにより記録/再生用スライス型電極12は常に接触面側に突出することになる。従って、摩耗が生じたとしても記録/再生用スライス型電極12と記録媒体100との電気的接触を維持することができ、安定な記録/再生特性を実現することができる。
【0033】
以下、上述したようなMEMSメモリ用マイクロプローブの試作例に係る製造プロセスの一例を図8を参照して説明する。この試作ではデバイスレイヤーの厚さが10μm、ボックスレイヤーの厚さが0.5μm、ハンドリングレイヤーの厚さが380μmであるSOI基板80を用いた。
【0034】
まず、リソグラフィーおよびDRIE(Deep Reactive Ion Etching)工程によりSOI基板80のデバイスレイヤー上にプローブ先端のトレンチ81を形成し(図8(a))、このトレンチ81を形成した面に熱酸化処理によって絶縁膜(SiO2)82を形成し(図8(b))、さらにCr/Au83を蒸着する(図8(c))。
【0035】
次に、デバイスレイヤーに形成されたトレンチ84に対しめっき工程によりAu84を充填したのち(図8(d))、Au81およびCr/Au83およびSiO2の3つの層を研磨する(図8(e))。次に、表面および裏面にAl85,86を蒸着し、裏面のリソグラフィ、Alエッチングを行い、レジスト87を塗布し(図8(f))、表面にリソグラフィおよびAlエッチングを行ってレジスト88を塗布する(図8(g))。次に、DRIE工程89,90,92を再度行って、デバイスレイヤーにプローブの形状を形成する(図8(h),(i),(j))。表面にはレジスト91を塗布してAlエッチングを行う。次に、酸化膜(SiO2)を除去(BHF)し、Alエッチングを行ったのち、レジスト91を除去する(図8(k))。最終的に、裏面にAl93を蒸着して完成する(図9(l))。
【0036】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブを示す斜視図である。
【0037】
第2実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブ20は、プローブ先端部21と、レバー部25と、ベース部27とを備える。ベース部27は、プローブ先端部21とレバー部25を支える。
【0038】
図9(a)においてレバー部25より紙面上方に突出するように示されるプローブ先端部21の面が記録媒体に対向し、両者が接触し、同記録媒体に対する情報の書き込み動作(記録)、または同記録媒体からの情報の読み出し動作(再生)が行われる。MEMSメモリは、このような本実施形態に係るマイクロプローブ20と記録媒体とによって構成される。
【0039】
プローブ先端部21は、プローブ20の先端21は貫通トレンチ構造を有する支持部24と、支持部24のトレンチの各側壁にコーティングされる記録/再生用薄膜電極22とから構成される。支持部24の一面と、記録/再生用薄膜電極22の一面とが同一平面を成している。この平面は上述したように記録媒体に対向しており、記録/再生用薄膜電極22が記録媒体上の記録/再生ビットに接触することで記録媒体に対する情報の書き込み動作(記録)、または同記録媒体からの情報の読み出し動作(再生)が行われる。
【0040】
図10(b)に示すように、レバー部25にはレバー部電極アレイ26が設けられ、ベース部27にはベース部電極アレイ28が形成される。プローブ先端部21の記録/再生用薄膜電極22とレバー部25のレバー部電極アレイ26とは電気的に接続される。レバー部25のレバー部電極アレイ26とベース部27のベース部電極アレイ28とは、貫通電極を介して電気的に接続される。
【0041】
第1実施形態と同様に、第2実施形態においても図7に示したような両持ち構造としてもよい。
【0042】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様にプローブ先端の記録/再生用電極と記録媒体の記録/再生ビットとが記録/再生時に非接触となる可能性が低く安定な記録/再生特性を実現することができ、かつプローブ先端に耐摩耗性を有するとともに、支持部24のトレンチの側壁に記録/再生用薄膜電極22を設ける構成としていることにより、高密度および高転送レートの記録/再生を実現することができる。
【0043】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブを示す斜視図である。
【0044】
第3実施形態に係るMEMSメモリ用マイクロプローブ30は、プローブ先端部31と、レバー部35と、ベース部37とを備える。ベース部37は、プローブ先端部31とレバー部35を支える。
【0045】
図10(a)においてレバー部35より紙面上方に突出するように示されるプローブ先端部31の面が記録媒体に対向し、両者が接触し、同記録媒体に対する情報の書き込み動作(記録)、または同記録媒体からの情報の読み出し動作(再生)が行われる。MEMSメモリは、このような本実施形態に係るマイクロプローブ30と記録媒体とによって構成される。
【0046】
プローブ先端部31は貫通トレンチ構造を有する支持部34と、支持部34のトレンチの各側壁にコーティングされた記録/再生用薄膜電極32と、トレンチ内で対向する2つの記録/再生用薄膜電極32の間に挿入される電極間絶縁層39とから構成される。
【0047】
支持部34の一面と、記録/再生用薄膜電極32の一面とが同一平面を成している。この平面は上述したように記録媒体に対向しており、記録/再生用薄膜電極32が記録媒体上の記録/再生ビットに接触することで記録媒体に対する情報の書き込み動作(記録)、または同記録媒体からの情報の読み出し動作(再生)が行われる。
【0048】
図10(b)に示すように、レバー部35にはレバー部電極アレイ36が設けられ、ベース部37にはベース部電極アレイ38が形成される。プローブ先端部31の記録/再生用薄膜電極32とレバー部35のレバー部電極アレイ36とは電気的に接続される。レバー部35のレバー部電極アレイ36とベース部37のベース部電極アレイ38とは、貫通電極を介して電気的に接続される。
【0049】
第1実施形態と同様に、第3実施形態においても図7に示したような両持ち構造としてもよい。
【0050】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様にプローブ先端の記録/再生用電極と記録媒体の記録/再生ビットとが記録/再生時に非接触となる可能性が低く安定な記録/再生特性を実現することができ、かつプローブ先端に耐摩耗性を有するとともに、支持部34のトレンチの側壁に記録/再生用薄膜電極32を設ける構成としていることにより、高密度および高転送レートの記録/再生を実現することができる。さらに第3実施形態によれば、トレンチ内で対向する2つの記録/再生用薄膜電極32の間に電極間絶縁層39を挿入する構成としていることにより、2つの記録/再生用薄膜電極32の間の電気的な干渉を電極間絶縁層39により抑制することができ、より安定な記録/再生特性を実現することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,20,30…MEMSメモリ用マイクロプローブ
11,21,31…プローブ先端部
12…記録/再生用スライス型電極
13,23,33…絶縁層
14,24,34…支持部
15,25,35…レバー部
16,26,36…レバー部電極アレイ
17,27,37…ベース部
18,28,38…ベース部電極アレイ
22,32…記録/再生用薄膜電極
39…電極間絶縁層
100…記録媒体
101…記録/再生ビット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向するように配置され、該記録媒体に接触させて情報の記録/再生を行うプローブ先端部と、
前記プローブ先端部との電気的および機械的接続を担うレバー部と、
前記レバー部との電気的および機械的接続を担うベース部とを具備し、
前記プローブ先端部には、
前記記録/再生に用いられる電極と、該電極とともに前記プローブ先端部を形成する支持部とが交互に複数配置され、
前記電極および前記支持部が前記記録媒体に対向する同一平面をなすことを特徴とするMEMSメモリ用マイクロプローブ。
【請求項2】
前記電極の材料を前記支持部よりも硬い材料とすることを特徴とする請求項1記載のMEMSメモリ用マイクロプローブ。
【請求項3】
前記電極と前記支持部との間に挟まれる絶縁層をさらに具備することを特徴とする請求項1記載のMEMSメモリ用マイクロプローブ。
【請求項4】
前記記録媒体に接触する面に平行な前記プローブ先端部の任意の断面が互いに同一であることを特徴とする請求項1記載のMEMSメモリ用マイクロプローブ。
【請求項5】
前記電極は、前記プローブ先端部の前記記録媒体に対する相対的な移動方向であるプローブスキャン方向に対して平行な方向に沿ってアレイ状に配置されることを特徴とする請求項1記載のMEMSメモリ用マイクロプローブ。
【請求項6】
前記レバー部は、前記プローブ先端部を第1の方向から支える第1のレバー部と、前記プローブ先端部を前記第1の方向に対向する第2の方向から支える第2のレバー部とを有することを特徴とする請求項1記載のMEMSメモリ用マイクロプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−159350(P2011−159350A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19674(P2010−19674)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新技術イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(509130000)技術研究組合BEANS研究所 (13)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)