MRI装置
【課題】造影剤を投与することなく、下肢の血流など、低流速の流れを確実に描出する。
【解決手段】一実施形態のMRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に読出し傾斜磁場パルスを含むパルスシーケンスに拠るスキャンを実行するものであり、信号収集手段と、画像生成手段とを備える。信号収集手段は、被検体からのエコー信号を読み出すためのパルス本体、および、パルス本体に付加されると共に被検体内の動きのある流体の磁化スピンをディフェーズさせる制御パルスを含むように読出し傾斜磁場パルスを構成し、スキャンを実行することでエコー信号を収集する。画像生成手段は、エコー信号に基づいて、流体の画像、又は、流体の影響を受ける画像を生成する。
【解決手段】一実施形態のMRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に読出し傾斜磁場パルスを含むパルスシーケンスに拠るスキャンを実行するものであり、信号収集手段と、画像生成手段とを備える。信号収集手段は、被検体からのエコー信号を読み出すためのパルス本体、および、パルス本体に付加されると共に被検体内の動きのある流体の磁化スピンをディフェーズさせる制御パルスを含むように読出し傾斜磁場パルスを構成し、スキャンを実行することでエコー信号を収集する。画像生成手段は、エコー信号に基づいて、流体の画像、又は、流体の影響を受ける画像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内のスピン(原子核スピン)の磁気共鳴現象に基づいてその内部を画像化する磁気共鳴イメージングに係り、造影剤を用いることなく、動静脈相画像を得るMRI(磁気共鳴イメージング)装置及びMR(磁気共鳴)イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをそのラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、肺野や腹部の血流像を得る場合、臨床的には、被検体に造影剤を投与して血管造影を行うMRアンギオグラフィが行われ始めている。しかし、この造影MRアンギオグラフィ法は、造影剤の投与が伴うことから、侵襲的な処置が必要で、何よりもまず、患者の精神的且つ体力的な負担が大きい。また、検査コストも高い。さらに、患者の体質などによっては造影剤を投与できない場合もある。
【0004】
一方、造影MRアンギオグラフィ法に代わる手法として、タイム・オブ・フライト(time−of−flight:TOF)法、位相コントラスト(phase contrast:PC)法などが知られている。
【0005】
この内、タイム・オブ・フライト法及び位相コントラスト法は、血流などの流れの効果を利用する手法である。流れの効果は、移動するスピンが有する2つの性質のいずれかによって起こる。1つは、スピンが単純に位置を移動させることで、2つ目は、傾斜磁場の中をスピンが移動することによって生じる横磁化の位相シフトに依る。この内、前者の位置移動に基づく手法がTOF法であり、後者の位相シフトに基づく手法が位相コントラスト法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したTOF法や位相コントラスト法は、何れも血液などの流体の流れの効果を利用する手法であることから、MRI装置の性能にも依存するが、一般的には、速度が2〜3cm/s以上の血流のみを描出可能であって、これよりも低い速度の流れは殆ど検出できなかった。例えば、患者(人)の抹消静脈、リンパ管、CSF(脊髄液)、膵管などの流れは遅く、1cm/s以下の速度が殆どである。しかも、拍動などに因る位置ずれの影響もあるので、これら低速度の流体の流れは従来、検出不可能であった。
【0007】
また、上述したTOF法や位相コントラスト法にしても、血流方向と垂直なスライスを撮像する必要がある。つまり、スライス方向をその上下方向に合わせてアキシャル像を撮影する必要がある。このため、2次元スライス像の場合、血流の流れに沿った画像にはならない。このため、3次元画像を得ようとすると、スライス枚数が多くなって、撮像全体の時間が長くなるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の現状を打破するためになされたもので、造影剤を投与することなく、下肢の血流などに見られる低流速の流れを確実に描出することを、その第1の目的とする。
【0009】
また本発明は、造影剤を投与することなく、短時間の撮像で、下肢の血流などに見られる低流速の流れを高画質で確実に描出することを、その第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態のMRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に読出し傾斜磁場パルスを含むパルスシーケンスに拠るスキャンを実行するものであり、信号収集手段と、画像生成手段とを備える。前記信号収集手段は、前記被検体からのエコー信号を読み出すための読出し傾斜磁場パルスの印加方向に、前記被検体内の動きのある流体の磁化スピンをディフェーズさせるディフェーズパルスが流体速度に応じた強度で印加されるように前記スキャンを実行することで、前記エコー信号を収集する。前記画像生成手段は、前記エコー信号に基づいて、前記流体の画像を生成する。
【0011】
前記信号収集手段は例えば、前記被検体の心時相として第1および第2の心時相を設定すると共に、前記流体の磁化スピンをディフェーズさせるパルスとして前記第1および第2の心時相の前記読出し傾斜磁場パルスの前記制御パルスを構成し、前記第1および第2の心時相において第1の前記スキャンおよび第2の前記スキャンをそれぞれ実行することで、前記エコー信号から成るエコーデータを2組収集する。
【0012】
前記信号収集手段は例えば、前記被検体の第1の心時相として収縮期の心時相を設定すると共に前記被検体の第2の心時相として拡張期の心時相を設定し、同一のスライス又はスライスエンコード量に設定される1回の撮像の中で、前記第1の心時相にて第1の前記スキャンを実行する動作と、前記第2の心時相にて第2の前記スキャンを実行する動作とを交互に繰り返す。
この場合、前記信号収集手段は例えば、前記第1のスキャンによってk空間の一部を埋める前記エコーデータを収集すると共に、前記第2のスキャンによってk空間全体を埋める前記エコーデータを収集し、前記画像生成手段は、前記第1のスキャンの前記エコーデータを第1のk空間に配置すると共に前記第2のスキャンの前記エコーデータを第2のk空間に配置し、前記第1のk空間上の未収集領域に対して、前記第2のk空間の一部であると共に前記未収集領域に対応する領域の前記エコーデータを複写する。
【0013】
撮像部位または前記流体を特定する情報の入力を受け付ける手段をさらに設け、前記信号収集手段が、入力された前記撮像部位または前記流体に応じて、前記流体の磁化スピンをディフェーズさせる前記制御パルスの強度を制御する構成としてもよい。
【0014】
また、前記被検体内の動きのある流体の動き方向に、前記読出し傾斜磁場パルスの印加方向を実質的に合わせる構成としてもよい。
また、前記制御パルスは、前記磁化スピンのディフェーズ及びリフェーズのうちの少なくとも一方を担うパルスであってもよい。また、前記2つの心時相で前記第1及び第2のスキャンに用いるパルスシーケンスの読出し傾斜磁場パルスの制御パルスを共に前記ディフェーズ又はリフェーズを担うパルスで形成していてもよい。
【0015】
また好適には、前記2つの心時相のうち、一方の心時相における前記第1のスキャンに用いるパルスシーケンスの読出し傾斜磁場パルスの制御パルスは前記ディフェーズを担うパルスで形成され、他方の心時相における前記第2のスキャンに用いるパルスシーケンスの読出し傾斜磁場パルスの制御パルスは前記リフェーズを担うパルスで形成される。
【0016】
例えば、前記信号収集手段が2つの時相として前記被検体の心臓の収縮期及び拡張期に属する心時相をそれぞれ設定し、前記制御パルスが前記収縮期の心時相にて前記磁化スピンのディフェーズを担うと共に前記拡張期の心時相にて前記磁化スピンのリフェーズを担う構成としてもよい。例えば、前記制御パルスの波形面積を変更可能に設定していてもよい。
【0017】
例えば、前記流体は前記被検体内の血流であり、前記血流は、流速が遅い前記被検体の下肢の動静脈であって、前記画像生成手段は、前記動静脈を分離した画像を生成する動静脈画像生成手段である。
【0018】
一例として、前記第1及び第2のスキャンはハーフフーリエ法に基づくスキャンである。例えば、前記第1のスキャンは、第1のk空間の位相エンコード方向における低周波領域を成す中心領域にエコーデータを配置するためのエコー信号を発生させるパルスシーケンスに拠るスキャンであり、前記第2のスキャンは、第2のk空間の位相エンコード方向における低周波領域を成す中心領域と、高周波領域を成す両端部の内の一方とにエコーデータを配置するためのエコー信号を発生させるパルスシーケンスに拠るスキャンである。
【0019】
この場合、前記画像生成手段は、前記第1のスキャンによりエコーデータが収集される第1のk空間、及び、前記第2のスキャンによりエコーデータが収集される第2のk空間のそれぞれにおいて、前記ハーフフーリエ法に応じた演算によってエコーデータを生成して配置する演算手段と、前記第1のk空間上で残っている未収集領域に前記第2のk空間の対応する領域のエコーデータを複写する複写手段とを備えていてもよい。
【0020】
例えば、前記画像生成手段は、前記第1のk空間のエコーデータ又はその画像データと、前記第2のk空間のエコーデータ又はその画像データとの間で演算を行うことで、動脈相画像に関するエコーデータ又はその画像データを得る動脈相画像生成手段を備えることができる。
【0021】
また、前記動脈相画像生成手段により実行される演算は、差分演算、重付け差分演算、又は加算演算であってもよい。また、例えば、前記画像生成手段は、前記動脈相画像生成手段から得られた動脈相画像に関するエコーデータ又はその画像データと、前記第2のk空間のエコーデータ又はその画像データとの間で差分演算を行うことで、静脈相画像に関するエコーデータ又はその画像データを得る静脈相画像生成手段を備えてもよい。
好適には、前記第1及び第2のスキャンは2次元スキャン又は3次元スキャンである。例えば、前記第1及び第2のスキャンに用いるパルスシーケンスは、FASE(Fast Asymmetric SE)法、EPI(エコープラナーイメージング)法、FSE(高速SE)法、又はSE法に拠るパルス列である。
【0022】
一例として、前記信号収集手段は、前記被検体の心時相を表す信号を検出する検出手段と、この検出手段により検出される信号中に現れる周期的な心拍参照波からの異なる時刻にて前記被検体の撮像部位に準備用MRシーケンスを複数回実行して複数枚のMR画像を得る準備手段と、この準備手段により得られた複数枚のMR画像から前記2つの時相を決める手段とを備える。例えば、前記心時相を表す信号は前記被検体のECG信号又はPPG信号であり、前記心拍参照波はそのECG信号又はPPG信号のR波である。
また、好適には、前記制御パルスの強度を前記流体の流れの速度に応じて制御する手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のMRI装置によれば、例えば、異なる心時相に同期してイメージングスキャンを行ったり、読出し傾斜磁場パルスにディフェーズパルスやリフェーズパルスを付加する構成としたため、造影剤を投与することなく、下肢の血流などに見られる低流速の流れを確実に描出しうる。特に、下肢の動静脈を分離した画像を短時間に且つ高画質に描出しうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るMRI装置の構成例を示す機能ブロック図。
【図2】第1の実施形態におけるECG−prepスキャン及び2回のイメージングスキャンの時系列関係を説明する図。
【図3】ECG−prepスキャンの手順を例示する概略フローチャート。
【図4】ECG−prepスキャンのECG信号に対する時系列関係を例示するタイミングチャート。
【図5】ECG−prepスキャンにより得られた、遅延時間をダイナミックに変化させたときの模式的画像図。
【図6】第1回目及び第2回目のイメージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図7】第1回目及び第2回目のイメージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図8】第1の実施形態における心電同期法に基づく第1回目及び第2回目のイメージングスキャンのタイミングを例示するタイミングチャート。
【図9】読出し傾斜磁場に付加するディフェーズパルス及びリフェーズパルスを説明する図。
【図10】3次元の撮像部位と撮像する血管との位置関係を説明する図。
【図11】第1の実施形態におけるエコーデータの演算及び表示の処理を説明する概略フローチャート。
【図12】動脈相画像を得るための差分演算の概要を説明する模式図。
【図13】静脈相画像を得るための差分演算の概要を説明する模式図。
【図14】動脈相画像及び静脈相画像の同時表示状態を例示する図。
【図15】第1の実施形態の変形例で実施される2回のイメージングスキャンのパルスシーケンス。
【図16】第2の実施形態に係るECG−prepスキャン及び1回のイメージングスキャンの時系列関係を説明する図。
【図17】イメージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図18】メージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図19】第1の実施形態における心電同期法に基づくイメージングスキャンのタイミングを例示するタイミングチャート。
【図20】収縮期と拡張期に夫々収集したエコーデータをk空間に配置する様子を説明する図。
【図21】第2の実施形態におけるエコーデータの演算及び表示の処理を説明する概略フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を、図1〜図13を参照して説明する。
この実施形態にかかるMRI(磁気共鳴イメージング)装置の概略構成を図1に示す。
【0026】
(1.1)装置の構成
このMRI装置は、被検体Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部と、被検体Pの心時相を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部とを備えている。
【0027】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するホスト計算機の制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0028】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はまた、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもとで、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0029】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向の傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場GS、位相エンコード方向傾斜磁場GE、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場GRから成る論理軸方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0に重畳される。
【0030】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。この送信器8T及び受信器8Rは後述するシーケンサ5の制御のもとで動作する。送信器8Tは、核磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する。受信器8Rは、RFコイル7が受信したエコー信号などのMR信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してMR信号のデジタルデータ(原データ)を生成する。
【0031】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(シーケンスコントローラとも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13、及び音声発生器16を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順(図示せず)により、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0032】
なお、このMRI装置は、予め選択した値の同期タイミング(心時相)に基づく心電同期法に拠るMRスキャンを行うことを特徴の1つとしている。ホスト計算機6は、図2に示すように、予め同期タイミングを決めるための準備用パルスシーケンスを実行する準備用スキャン(以下、ECG−prepスキャンという)、及び、その同期タイミングに拠る心電同期でイメージング用パルスシーケンスを実行する2回のイメージング用スキャン(以下、イメージングスキャンという)を、図示しないメインプログラムを実行する中で行う。ECG−prepスキャンの実行ルーチンの一例を図3に、心電同期に基づく第1回目及び第2回目におけるイメージングスキャンの実行ルーチンの一例を図6、7に示す。
【0033】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの動作を制御するとともに、受信器8Rが出力したMR信号のデジタルデータを一旦入力し、これを演算ユニット10に転送するように構成されている。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0034】
このパルスシーケンスとしては、フーリエ変換法を適用したものであれば、2次元(2D)スキャン又は3次元スキャン(3D)のものであってもよい。また、そのパルス列の形態としては、SE法、高速SE法、EPI(Echo Planar Imaging;エコープラナーイメージング)法、FASE(Fast Asymmetric SE)法(すなわち、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせたイメージング法)など、SE系のパルス列が好適である。
【0035】
また、演算ユニット10は、受信器8Rが出力したデジタルデータ(原データ又は生データとも呼ばれる)を、シーケンサ5を通して入力し、その内部メモリによるk空間(フーリエ空間または周波数空間とも呼ばれる)にそのデジタルデータを配置し、このデータを1組毎に2次元又は3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニットは、必要に応じて、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理(重付け差分処理も含む)も実行可能になっている。この合成処理には、画素毎に加算する処理、最大値投影(MIP)処理などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとって原データのまま1フレームの原データに合成するようにしてもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、重み付け加算処理などが含まれる。
【0036】
記憶ユニット11は、再構成された画像データのみならず、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを保管することができる。表示器12は画像を表示する。また入力器13を介して、術者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報をホスト計算機6に入力できる。
【0037】
音声発生器16は、ホスト計算機6から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発することができる。
【0038】
さらに、心電計測部は、被検体の体表に付着させてECG信号を電気信号として検出するECGセンサ17と、このセンサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施してホスト計算機6およびシーケンサ5に出力するECGユニット18とを備える。この心電計測部による計測信号は、ECG−prepスキャンと心電同期のイメージングスキャンとのそれぞれを実行するときにシーケンサ5に必要に応じて用いることができる。これにより、心電同期法の同期タイミングを適切に設定でき、この同期タイミングに基づく心電同期のイメージングスキャンを行ってデータ収集できるようになっている。
【0039】
(1.2)ECG−prepスキャン
次に、ECG−prepスキャンによる最適な同期タイミングの決定処理を図3〜5に基づき説明する。
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行している中で、入力器13からの指令に応答して、図3に示すECG−prepスキャンを開始する。
【0040】
最初に、ホスト計算機6は、ECG−prepスキャンを実行するスキャン条件およびパラメータ情報を入力器13から読み込む(同図ステップS1)。スキャン条件には、スキャンの種類、パルスシーケンス、読出し傾斜磁場パルスの印加方向などが含まれる。パラメータ情報には、心電同期の同期タイミング(時相)を決めるための初期時間T0(ここでは、ECG信号中のR波のピーク値からの経過時間)、時間増分に刻み幅Δt、回数カウンタCNTの上限値などが含まれ、これらのパラメータは操作者に任意に設定できる。
【0041】
次いで、ホスト計算機6は、シーケンスの実行回数をカウントする回数カウンタCNTおよび同期タイミングを決めるための時間の増分パラメータTincをクリヤする(CNT=0,Tinc=0:ステップS2)。この後、ホスト計算機6は音声発生器16にメッセージデータを送出して、例えば「息を止めて下さい」といった息止め指令を被検体(患者)に対して行わせる(ステップS3)。この息止めは、ECG−prepスキャン実行中の被検体の体動を抑制する上で実施する方が好ましいが、場合によっては、息止めを実施しない状態でECG−prepスキャンを実行するようにしてもよい。
【0042】
このように準備が整うと、ホスト計算機6はステップS4以降の処理を順次実行する。これにより、心電同期の同期タイミングを変更しながらのスキャン実行に移行する。
【0043】
具体的には、R波のピーク到達時間からの遅延時間TDLが、TDL=T0+Tincにより演算される(ステップS4)。次いで、ECGユニット18で信号処理されたECG信号が読み込まれ、その信号中のR波のピーク値が出現したか否かが判断される(ステップS5)。この判断処理はR波出現まで繰り返される。R波が出現すると(ステップS5,YES)、ステップS4で演算したその時点の遅延時間TDLがR波ピーク時間から経過したかどうかが続いて判断される(ステップS6)。この判断処理も遅延時間TDLが経過するまで続けられる。
【0044】
R波のピーク時刻から遅延時間TDLが経過すると(ステップS6,YES)、各回のパルスシーケンスの開始をシーケンサ5に指令する(ステップS7:図4参照)。このパルスシーケンスは、好ましくは、後述するイメージング用パルスシーケンスと同一タイプに設定され、例えば、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせた2D−FASE(Fast Asymmetric SE)法である。勿論、このシーケンスには高速SE法、EPI法など、各種のものを採用できる。この指令に応答し、シーケンサ5は操作者から指令された種類のパルスシーケンスの実行を開始するので、被検体の所望部位の領域がスキャンされる。このECG−prepスキャンは、例えば、画像データ収集用のイメージングスキャン(本スキャン)が3次元(3D)法の場合、2次元(2D)スキャンで行ってもよいし、イメージングスキャンの領域に合わせた3次元スキャンで行ってもよい。本実施形態では、イメージングスキャンは3次元スキャンとして実行するが、ECG−prepスキャンはスキャン時間短縮の観点から2次元スキャンとして実行する。ECG−prepスキャンの使命に鑑みると、2次元スキャンでも十分である。
【0045】
上記シーケンス実行開始の指令後、回数カウンタCNT=CNT+1の演算が行われ(ステップS8)、さらに、時間の増分パラメータTinc=ΔT・CNTの演算が行われる(ステップS9)。これにより、パルスシーケンスの実行を指令した各回毎に回数カウンタCNTのカウント値が1ずつ増加し、また同期タイミングを調整する増分パラメータTincがそのカウント値に比例して増加する。
【0046】
次いで、各回のパルスシーケンスの実行に必要な予め定めた所定期間(例えば500〜1000msec程度)が経過するまでそのまま待機する(ステップS10)。さらに、回数カウンタCNTが予め定めた上限値になったか否かを判断する(ステップS11)。同期タイミングを最適化させるために、遅延時間TDLを各種の時間値に変更しながら、例えば5枚の2次元像を撮影する場合、回数カウンタCNT=5に設定される。回数カウンタCNT=上限値に到達していない場合(ステップS11,NO)、ステップS5の処理に戻って上述した処理が繰り返される。反対に、回数カウンタCNT=上限値に到達した場合(ステップS11,YES)、息止め解除の指令が音声発生器16に出され(ステップS12)、その後の処理はメインプログラムに戻される。息止めの音声メッセージは例えば「息をして結構です」である。
【0047】
上述の処理を順次実行すると、一例として、図4に示すタイミングで準備用のパルスシーケンスが実行されたことになる。例えば、初期時間T0=300msec,時間刻みΔT=100msecを指令していたとすると、第1回目のシーケンスに対する遅延時間TDL=300msec、第2回目のそれに対する遅延時間TDL=400msec、第3回目のそれに対する遅延時間TDL=500msec、…といった具合に同期タイミングを決する遅延時間TDLが調整される。
【0048】
このため、息止め指令後の最初のR波がピーク値に達すると、その到達時刻から遅延時間TDL(=T0)後に、例えば2次元FASE法に基づく第1回目のスキャンIMGprep1が所定時間(500〜1000msec)継続し、エコー信号が収集される。このシーケンス継続中に次のR波が出現した場合でも、図3のステップS10の待機処理があるので、このR波出現には何等関与されずに、シーケンスは続けられる。つまり、ある心拍に同期して開始されたシーケンスの実行処理は次の心拍にまたがって続けられ、エコー信号が収集される。
【0049】
そして、回数カウンタCNTが所定値に到達していない場合、ステップS5〜S11の処理が再び実行される。このため、図4の例では、3番目のR波が出現してピーク値に達すると、この到達時点から遅延時間TDL=T0+Tinc=400msecが経過した時点で、第2回目のスキャンIMGprep2が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。このスキャンが終わって次のR波が出現し、遅延時間TDL=T0+2・Tinc=500msecが経過すると、第3回目のスキャンIMGprep3が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。さらに、このスキャンが終わって次のR波が出現し、遅延時間TDL=T0+3・Tinc=600msecが経過すると、第4回目のスキャンIMGprep4が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。このスキャンが所望回数、例えば5回続き、合計5フレーム(枚)の同一断面のエコーデータが収集される。
【0050】
エコーデータは順次、受信器8Rおよびシーケンサ5を経由して演算ユニット10に送られる。演算ユニット10はk空間(周波数空間)のエコーデータを2次元フーリエ変換法により実空間の画像データに再構成する。この画像データは血流像データとして記憶ユニット11に記憶される。ホスト計算機6は、例えば入力器13からの操作信号に応答して、この血流像を順次、シネ(CINE)表示する。
【0051】
つまり、図5に模式的に示す如く、例えば下肢の時相が相互に異なるn枚の2次元コロナル像が表示される。このコロナル像には、下肢をほぼ上下方向に流れる動脈AR及び静脈VEが位置する。但し、撮像したタイミング、すなわちR波からの「遅延時間TDL=初期時間T0+Tinc・Δt」が画像毎に異なる。術者はこれらの画像を目視観察して、動脈AR及び静脈VEが最も高信号に現れている画像及び静脈のみが最も高信号に現れている画像を選択する。この内、静脈VEのみが相対的に高信号に現れている画像に相当する遅延時間TDL1により、収縮期の同期タイミングTDL=TDL1が決められる。また、動脈AR及び静脈VEが相対的に高信号に現れている画像に相当する遅延時間TDL2により、拡張期の同期タイミングTDL=TDL2が決められる。
【0052】
したがって、術者は、このように遅延時間TDLをダイナミックに変えて撮像した複数枚の血流像を目視観察し、2つの心時相として、収縮期及び拡張期夫々における最適な遅延時間TDL=TDL1、TDL2(同期タイミング)を決め、この遅延時間TDLを引き続き行うイメージングスキャンに反映させる処理を例えば手動で行う。
【0053】
なお、目視観察で決めた画像を指定すると、その指定画像に与えられている遅延時間TDLを最適同期タイミングとして自動的に記憶し、このタイミングTDLをイメージングスキャン時に自動的に読み出すようにソフトウエアを構築し、インストールしてもよい。これにより、ECG同期タイミングの自動指定処理が可能になる。
【0054】
(1.3)イメージングスキャン
次に、この実施形態における2回のイメージングスキャン(つまり、2回の撮像)の動作を図6〜10を参照して説明する。
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行し、その一環として、入力器13からの操作情報に応答して図6に示す各回のイメージングスキャンの処理を実行する。
【0055】
いま、第1回目のイメージングスキャン(撮像)が収縮期に割り当てられているとする。この場合、ホスト計算機6は、最初に、前述したECG−prepスキャンを通して操作者が決めた収縮期用の最適な遅延時間TDL(=TDL1又はTDL2>TDL1)を例えば入力器13を介して入力する(ステップS20)。
【0056】
次いで、ホスト計算機6は操作者が入力器13から指定したスキャン条件(読出し傾斜磁場パルスの印加方向、画像サイズ、スキャン回数、スキャン間の待機時間、スキャン部位に応じたパルスシーケンスなど)及び画像処理法の情報(MIP処理、差分処理など。差分処理の場合には、単純差分、重み付け差分処理、加算処理のいずれかなど。)を入力し、遅延時間TDLを含むそれらの情報を制御データに処理し、その制御データをシーケンサ5および演算ユニット10に出力する(ステップS21)。
【0057】
次いで、スキャン前の準備完了の通知があったと判断できると(ステップS22)、ステップS23で息止め開始の指令を音声発生器14に出力する(ステップS23)。これにより、音声発生器14は、ECG−prepスキャン時と同様に「息を止めて下さい」といった内容の音声メッセージを発するから、これを聞いた患者は息を止めることになる(図9参照)。
【0058】
この後、ホスト計算機6はシーケンサ5に第1回目(又は第2回目)のイメージングスキャン開始を指令する(ステップS24)。
【0059】
シーケンサ5は、このイメージングスキャン開始の指令を受けると(図7、ステップS24−1)、ECG信号の読み込みを開始し(ステップS24−2)、ECG信号におけるR波(参照波形)のピーク値の所定n回目の出現を、そのピーク値に同期させたECGトリガ信号から判断する(ステップS24−3)。ここで、R波の出現をn回(例えば2回)待つのは、確実に息止めに移行した時期を見計らうためである。所定n回目のR波が出現すると、設定した遅延時間TDL1だけ待機する処理を行う(ステップS24−4)。
【0060】
この最適な遅延時間TDL1(又はTDL2)が経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5は第1回目のイメージングスキャンを実行する(ステップS24−5)。具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく第1回目のイメージングスキャン(撮像)が図8(a),(c)に示す如く心電同期で実行される(同図(c)において位相エンコード方向傾斜磁場の図示は省略されている)。
【0061】
このパルスシーケンスによれば、読出し傾斜磁場パルスGRの印加方向ROは、例えば図10に示すように、撮像目的の血流(動脈AR,静脈VE)の流れる方向にほぼ一致するように設定されている。
【0062】
また、このパルスシーケンスに含まれる読出し傾斜磁場パルスGRは図8(c)及び図9(a)〜(c)に示す如く、エコー信号を収集する周波数エンコード用のパルス本体Pbodyと、このパルス本体Pbodyの時間的前後に連続的に付加された制御パルスとしての2つのディフェーズパルスPdephaseとから成る。このディフェーズパルスPdephaseは、周波数エンコード用のパルス本体Pbodyと同極性になっており、これにより、移動している磁化スピンに対してそのディフェージングを促進する機能を有する。
【0063】
なお、ディフェーズパルスPdephaseは、殆ど移動していない磁化スピンには殆どディフェーズ機能を発揮しない。このため、読出し傾斜磁場パルスGRは、撮像目的の流体(血液やリンパ液)の動きの方向にほぼ一致して印加されることが重要である。
【0064】
好適には、ディフェーズパルスPdephaseは、撮像対象である流体としてのリンパ液や血流の速度に応じて強度が変更又は制御可能になっている。図9(a)〜(c)には、この順に、ディフェーズパルスPdephaseの強度を下げる例を例示している。一般に、血流速度が大きくなるに従って、ディフェーズパルスPdephaseの強度を下げるように変更又は制御される。
【0065】
なお、撮像対象とする流体(血流など)の速度が比較的高いときには、図9(d)に示す如く、パルス本体Pbodyの時間的前後に連続的に制御パルスとしての、合計2つのリフェーズパルスPrephaseが付加される。このリフェーズパルスPrephaseは、周波数エンコード用のパルス本体Pbodyに対して極性が反対になっており、ディフェーズ過多を抑えるべく、磁化スピンをリフェーズさせてアーチファクトを抑制する機能を有する。このリフェーズパルスPrephaseの強度も流速に応じて変更されることが好ましい。
【0066】
この第1の実施形態では、従って、第1回目及び第2回目(後述する)のイメージングスキャンの両方において、読出し傾斜磁場パルスGRにはディフェーズパルスPdephase又はリフェーズPrephaseが付加される。
【0067】
このため、上述した3次元FASE法のパルスシーケンスが実行されることで、励起90°RFパルス及びリフォーカス180°RFパルスに付勢されたエコー信号が各スライスエンコード及び各位相エンコード毎に収集される。このエコー信号には、ディフェーズパルスPdephaseに因る磁化スピンの位相のディフェーズ作用又はリフェーズPrephaseに因る磁化スピンの位相のリフェーズ作用が反映される。
このことは後述する表示動作と共に詳述するが、その概要を述べると以下のようである。
【0068】
つまり、読出し傾斜磁場パルスの印加方向に沿って流れている流体にとって、ディフェーズパルスPdephaseに因るディフェーズ効果はフローボイド(flow void)効果の促進につながる。このため、エコー信号の強度はディフェーズパルスによって低下する。反対に、その方向に殆ど流れていない流体の場合、ディフェーズパルスPdephaseに因るフローボイド効果の促進具合は低く、エコー信号の強度はそれほど低下しない。
【0069】
リフェーズパルスPrephaseの場合、そのリフェーズ作用により、流体の流れに応じてディフェージングの効きが抑制される。
【0070】
上述したパルスシーケンスにおけるエコー間隔は5msec程度に短縮される。これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約600msec程度のスキャン時間で、例えば図10に示す如く下肢に設定した3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される。
【0071】
この1つ目のスライスエンコードに拠るスキャンが終了すると、シーケンサ5は、最終スライスエンコードのスキャンが完了したかどうかを判断し(ステップS24−6)、この判断がNO(最終スライスエンコードに拠るスキャンが済んでいない)の場合、ECG信号を監視しながら、例えば前回のイメージングスキャンに使用したR波から例えば2心拍(2R−R)と、短めに設定した期間が経過するまで待機する(ステップS24−7)。なお、繰返し時間TRは4心拍(4R−R)以下に設定される。
【0072】
このように例えば2R−R分に相当する期間待って、例えば3個目のR波が出現すると(ステップS24−7,YES)、シーケンサ5は前述したステップS24−4にその処理を戻す。これにより、その3個目のR波ピーク値に同期したECGトリガ信号から指定遅延時間TDL1が経過した時点で次のスライスエンコード量SE2に基づくスキャンが前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS24−4,5)。以下同様に、最終のスライスエンコード量SEn(例えばn=8)までエコー信号が収集される。
【0073】
スライスエンコード量SEnに拠る最終回のスキャンが終わると、ステップS24−6における判断がYESとなり、シーケンサ5からホスト計算機6に1回目(又は2回目の)イメージングスキャンの完了通知が出力される(ステップS24−8)。これにより、処理がホスト計算機6に戻される。
【0074】
ホスト計算機6は、シーケンサ5からのスキャン完了通知を受けると(ステップS25)、息止め解除の指令を音声発生器16に出力する(ステップS26)。そこで、音声発生器16は、例えば「息をして結構です」といった音声メッセージを患者に向けて発し、息止め期間が終わる(図8参照)。
【0075】
これにより、2R−R毎に心電同期による第1回目(又は第2回目)のイメージングスキャン(撮像)が例えば3D−FASE法に基づき実行される。
【0076】
患者Pから発生するエコー信号は、スライス傾斜磁場パルスGsが供するスライスエンコード毎に、RFコイル7で受信され、受信器8Rに送られる。受信器8Rはエコー信号に各種の前処理を施し、デジタル量に変換する。このデジタル量のエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に送られ、メモリで形成される3次元k空間のエンコード量に応じた位置に配置される。
【0077】
次いで、図2に示す如く、適宜な時間を空けて、拡張期に対する第2回目のイメージングスキャン(撮像)が1回目と同様に行われる。但し、第2回目の場合、前述したECG−prepスキャンを通して予め設定されていた拡張期の所定時相を決める最適遅延時間TDL2が読み込まれ(図6、ステップS20、S21)、この遅延時間TDL2に基づく心電同期がとられる(図7、ステップS24−4)。
【0078】
このため、第2回目のイメージングスキャンの場合、図8(b),(c)に示す如く、R波ピークから遅延時間TDL2だけ遅延させた拡張期の同期タイミングで各位相エンコード量SEに拠る3次元FASE法のスキャンが実行される。この場合も、読出し傾斜磁場パルスGRの印加方向は、血流などの撮像流体の動きの方向に殆ど一致させる。また、読出し傾斜磁場パルスGRには、磁化スピンの挙動(ディフェーズ又はリフェーズ)を制御する制御パルス(ディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephase)が付加されている。
【0079】
従って、第2回目のイメージングスキャンによって、第1回目と同様に、読出し傾斜磁場パルスGRに付加したディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseのスピン制御機能を反映させた拡張期の画像データが得られる。
【0080】
(1.4)データ処理及び画像表示
このようにエコーデータの収集が終わると、ホスト計算機6は演算ユニット10に、図11に示す処理を実行させる。
同図に示す如く、演算ユニット6はホスト計算機6からの指令に応答して、収縮期用k空間及び拡張期用k空間の両方にハーフフーリエ法に基づくエコーデータの演算をさせる(ステップS31)。つまり、エコーデータを収集していなかったk空間の残り領域のデータを複素共役関係により演算し、これを配置する。これにより、両方のk空間が全てエコーデータで埋まる。
【0081】
この後、演算ユニット10は、収縮期用k空間及び拡張期用k空間のエコーデータを夫々、3次元フーリエ変換して画像再構成を行う(ステップS32,S33)。この結果、図12(a),(b)に示す如く、収縮期における遅延時間TDL1の時相の画像(収縮期画像)IMsys及び拡張期における遅延時間TDL2の時相の画像(拡張期画像)IMdiaの3次元データが得られる。
【0082】
この画像データによれば、収縮期画像IMsysには静脈VEのみが映り込んでおり、動脈ARは殆ど映っていない状態にある。一方、拡張期画像IMdiaには動脈AR及び静脈VEが程度の差はあれ、共に映り込んでいる。
【0083】
ここで、このような収縮期画像IMsys及び拡張期画像IMdiaが得られる原理を、前述した読出し傾斜磁場GRの印加方向及びディフェーズパルスPdephaseの機能から以下に詳述する。
【0084】
読出し傾斜磁場パルスの印加方向に流れている血流などの成分の磁化スピンの位相は、ディフェーズパルスに拠って更にばらけ易くなる。つまり、流れている成分にとっては、流れていること自体に因るフローボイド(flow void)効果が促進されたことと等価である。反対に、リフェーズパルスに拠って、かかる血流などの磁化スピンの位相にはリフェーズ機能が作用する。
【0085】
例えば、被検体の下肢を例にとる。下肢の場合、収縮期における動脈でも通常、1cm/s以下の低い流速であり、収縮期における静脈及び拡張期における動脈及び静脈にいたっては殆ど動いていないかと見なせる程の低流速である。この下肢に対して、図8に示すように、ディフェーズパルスPdephaseを付加した読出し傾斜磁場パルスGRを用いて収縮期と拡張期の所望時相夫々でイメージングスキャン(撮像)が行われる。
【0086】
これらのイメージングスキャンによって動静脈の磁化スピンが励起され、エコー信号が収集される。このとき、動脈及び静脈の流速が若干でも互いに異なるので、この流速の相違がリフェーズパルスに拠るフローボイド効果の促進具合に反映され、エコー信号の信号値の相対的な変化として現れる。
【0087】
具体的には、収縮期は以下のようである。静脈は極めてゆっくり流れるので、ディフェーズパルスによって若干のエコー信号低下はあるものの、フローボイド効果は少なく、比較的高い信号値でブライトブラッド(bright blood)に描出される。これに対して、収縮期の動脈は静脈よりは大きい流速で流れるので、ディフェーズパルスに拠るフローボイド効果の促進具合が静脈のそれよりも大きい。これにより、動脈の信号値低下は大きく、ブラックブラッド(black blood)に描出される。この状態は前述した図12(a)に模式的に表される。なお、同図ではハッチング部分をブライトブラッドとし、点線部分をブラックブラッドとしている。
【0088】
一方、拡張期の場合、動脈及び静脈共に極めて低い流速でしか動いていないので、動脈及び静脈共に、ディフェーズパルスに因る若干の信号値低下はあるものの、ブライトブラッドに描出される。この状態は前述した図12(b)に模式的に表される。
【0089】
図11の説明に戻ると、演算ユニット10は、動脈相画像IMARを得るため、収縮期画像IMsys及び拡張期画像IMdiaについて、差分演算「IMdia−β・IMsys」を画素毎に行う(ステップS34)。ここで、βは重付け係数である。これにより、図12に示す如く、重付け係数βを適宜に設定することにより、静脈VEの画像データが殆ど零になり、動脈ARのみが映った動脈相画像IMARの3次元画像データが得られる。
【0090】
さらに、静脈相画像IMVEを得るため、差分演算「IMdia−IMAR」を画素毎に行う(ステップS35)。画像データIMARは上述の重付け差分により演算された画像データである。これにより、図13に示す如く、動脈ARの画像データが殆ど零になり、静脈VEのみが映った静脈相画像IMVEの3次元画像データが得られる。なお、この差分演算も重付け差分によって行ってもよい。
【0091】
このように差分演算が終わると、演算ユニット10は、両方の動脈相画像IMAR及び静脈相画像IMVE夫々について、MIP(最大値投影)処理を行って、所望方向からそれらの血管を観測したときの2次元画像(例えばコロナル像)のデータを作成する(ステップS36)。
【0092】
この動脈相及び静脈相の2次元画像IMAR及びIMVEは例えば図14に示す如く、表示器12に表示されるとともに、それらの画像データは記憶ユニット11に格納される(ステップS39)。
【0093】
なお、この表示に際し、動脈相画像IMAR及び静脈相画像IMVEに加えて、収縮期画像IMsys及び拡張期画像IMdiaを同一画面に又は別体モニタの画面に表示するようにしてもよい。
【0094】
(1.5)効果
以上説明したように、本実施形態のMRI装置では、イメージングスキャン時に、読出し傾斜磁場パルスGRを下肢血管などに見られる低流速の流体(血流など)の流れ方向にほぼ合わせて印加している。しかも、同時に、傾斜磁場パルスGRにディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseを付加している。
【0095】
これにより、流れている流体及びそれよりも低い速度でしか流れていない流体の間の相対的な信号値差を、ディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseで増大させることができる。そこで、例えばディフェーズパルスを用いた場合、流れ速度が腹部や胸部よりも低い下肢の血管であっても、かかる相対的な信号値差から図14に示す如く、動静脈を明瞭に分離し且つ高い描出能で表示させることができる。
【0096】
このように、動静脈間の信号値に相対的な差を与えるために、読出し傾斜磁場パルスの印加方向を流れの方向に合せて、且つ、磁化スピンのディフェーズやリフェーズを積極的に利用してフローボイド効果を制御する手法は、本発明者によって初めて開発された新規な手法である。
【0097】
また、本実施形態では、ECG−prepスキャンによって収縮期及び拡張期に対する最適なECG同期タイミングを予め設定しているので、収縮期及び拡張期の各時相において狙った血流を確実に捕捉することができる。さらに、心電同期タイミングの事前の最適設定により、撮像のやり直しを行う必要も殆ど無くなり、操作者の操作上の負担や患者の体力的、精神的負担も軽減される。
【0098】
また、スライス方向又はスライスエンコード方向を患者の上下方向以外の方向にとることができるので、TOF法などのような血流と垂直な上下方向に撮影する手法と比較して、全体のスキャン時間が短くて済む。これにより、患者の負担も少なく、患者スループットも上がる。
【0099】
さらに、造影剤を投与しなくても済むので、非侵襲に撮像でき、この点からも患者の精神的、体力的な負担が著しく軽くなる。同時に、造影効果のタイミングを計る必要があるなど、造影法固有の煩わしさからも解放されるとともに、造影法と違って、必要に応じて繰返し撮像が可能になる。
【0100】
(第1の実施形態の変形例)
上述した実施形態にあっては、図8に示すように、第1回目及び第2回目のイメージングスキャン共に、その読出し傾斜磁場パルスGRにディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseを付加する態様で説明した。
【0101】
この態様に対する変形例として、拡張期の時相で行う第1回目のイメージングスキャンに図15(a)に示す如くディフェーズパルスPdephaseを付加し、一方、収縮期の時相で行う第2回目のイメージングスキャンに同図(b)に示すリフェーズパルスPrephaseを付加するようにしてもよい。
【0102】
つまり、収縮期及び拡張期の別に応じて、磁化スピンの挙動を付加的に制御する制御パルスの種類を変えるのである。これにより、拡張期にリフェーズ(フローコンペンセーション)の効果を反映させて信号値を増大させ、S/Nを向上させることができる。
【0103】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る第2の実施形態を図16〜図21に基づいて説明する。なお、この実施形態で使用するMRI装置のハードウエア構成は、第1の実施形態のものと同一又は同等である。
【0104】
第2の実施形態では、第1の実施形態で実行していた第1回目及び第2回目の2回のイメージングスキャンを1回のイメージングスキャンで実行すると共に、心周期の収縮期及び拡張期に合せて前述したディフェーズパルス及びリフェーズパルスを使い分けした構成に関する。
【0105】
いま、低速度の流体として、下肢の動静脈の分離画像を得るものとする。図16に示す如く、最初にECG−prepスキャンが行われ、次いで1回のイメージングスキャンが心電同期法の元で実行される。ECG−prepスキャンは第1の実施形態で説明した手法で行われ、これにより、収縮期及び拡張期で最も描出能を提供する、R波からの遅延時間TDL1及びTDL2が夫々設定される。
【0106】
次いで、この遅延時間TDL1及びTDL2に基づく心電同期法に拠るイメージングスキャンが1回の撮像として実行される。このイメージングスキャンの手順を図17、18に例示し、このスキャンに使用するパルスシーケンスを19に例示する。
【0107】
(2.1)イメージングスキャン
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行している中で、その一環として、入力器13からの操作情報に応答して図17及び18に示す処理を実行する。
【0108】
これを詳述すると、ホスト計算機6は、最初に、前述したECG−prepスキャンを通して操作者が決めた最適な2つの遅延時間TDL(つまり、収縮期の最適遅延時間TDL1及び拡張期の最適遅延時間TDL2(>TDL1))を例えば入力器13を介して入力する(ステップS120)。この最適遅延時間TDL1及びTDL2の情報は予め例えば記憶ユニット11内に記憶させておいてもよい。
【0109】
次いで、ホスト計算機6は、スキャン条件及び画像処理法の情報を入力し、遅延時間TDL1及びTDL2を含むそれらの情報を制御データに処理し、その制御データをシーケンサ5および演算ユニット10に必要に応じて出力する(ステップS121)。
【0110】
次いで、ホスト計算機6により、第1の実施形態と同様に、スキャン前の準備完了が判断されると、息止め開始が指令され、イメージングスキャン開始が指令される(ステップS123〜S124)。
【0111】
シーケンサ5は、イメージングスキャン開始の指令を受けると(図18:ステップS124−1)、ECG信号の読み込みを開始し(ステップS124−2)、ECG信号におけるR波(参照波形)のピーク値の所定n回目の出現を、そのピーク値に同期させたECGトリガ信号から判断する(ステップS124−3)。
【0112】
所定n回目のR波が出現すると、最初に、収縮期の特定時相用に設定した遅延時間TDL1だけ待機する処理を行う(ステップS124−4)。
【0113】
この最適な遅延時間TDL1が経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5は収縮期に対するスキャンを実行する(ステップS124−5)。
【0114】
具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく1回目のスライスエンコード量SE1の元で第1のスキャンSNsys1が図19に示す如く心電同期法により実行される。
【0115】
この第1のスキャンSNsys1では、読出し傾斜磁場パルスGRは下肢の動静脈にほぼ沿った体軸方向に印加される。また、この読出し傾斜磁場パルスGRには、磁化スピンの位相を分散させるディフェーズパルスPdephaseが図示の如く、時間的に連続して前後に付加されている。また、このパルスシーケンスにおけるエコー間隔は5msec程度に短縮される。
【0116】
なお、この収縮期に対する第1のスキャンSNsysnに使用するパルスシーケンスは、図19に示す如く、エコー数が短く設定され、スキャン開始から1心拍内の僅かな時間で終わるようになっている。エコー数は、図20に模式的に示す如く、k空間の位相エンコードke方向の中心部(低周波領域)のみに配置するエコーデータをスライスエンコード量毎に収集するに足りるように設定されている。このため、拡張期に対する第2のスキャンSNdianは、図19、20に示す如く、収縮期に対する第1のスキャンSNsysnと同一心拍内に開始できるようになっている。また、収縮期用k空間(第1のk空間)Ksysにおいて不足するエコーデータは、後述する拡張用k空間(第2のk空間)Kdiaからのコピー及びハーフフーリエ法に拠る演算によって求められる(図20参照)。
【0117】
これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約数百msec程度の短いスキャン時間で、下肢に設定した3次元撮像領域Rima(図10参照)からエコー信号が収集される。
【0118】
次いで、シーケンサ5は、拡張期におけるスキャン制御に移行する。具体的には、拡張期の特定時相用に設定した遅延時間TDL2だけ待機する処理を行う(ステップS124−6)。
【0119】
この最適な遅延時間TDL2が経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5は拡張期に対する第2のスキャンを実行する(ステップS124−7)。具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく1回目のスライスエンコード量SE1の元で第2のスキャンSNdia1が図19に示す如く心電同期法により実行される。
【0120】
この第2のスキャンSNdia1においても、読出し傾斜磁場パルスGRは下肢の動静脈にほぼ沿った体軸方向に印加される。また、この読出し傾斜磁場パルスGRには、磁化スピンをリフェーズさせるリフェーズパルスPrephaseが図示の如く、時間的に連続して前後に付加されている。また、このパルスシーケンスにおけるエコー間隔も5msec程度に短縮される。
【0121】
なお、この拡張期における第2のスキャンSNdianに使用するパルスシーケンスは、図19に示す如く、収縮期よりは多いが、ハーフフーリエ法を併用する分、k空間全部に充填するエコー数よりも少ないエコー数を収集するように設定されている。エコー数は、図20に模式的に示す如く、k空間の位相エンコードke方向の中心部(低周波領域)及びその一方の端部(高周波)のみに配置するエコーデータをスライスエンコード量毎に収集するに足りるように設定されている。拡張期用k空間Kdiaにおいて、不足するエコーデータは後述するようにハーフフーリエ法に拠って演算により求められる。この拡張期におけるスキャンSNdia1は、図19,20に示す如く、通常、次の心拍まで跨ってスキャンされる。
【0122】
これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約600msec程度のスキャン時間で、下肢に設定した3次元撮像領域Rima(図10参照)からエコー信号が収集される。
【0123】
これらの1回目のイメージングスキャンが終了すると、シーケンサ5は、最終のスキャンが完了したかどうかを判断し(ステップS124−8)、この判断がNO(最終スキャンが済んでいない)の場合、ECG信号を監視しながら、例えばイメージングスキャンに使用したR波から例えば2心拍(2R−R)と、短めに設定した期間が経過するまで待機し、静止している実質部のスピンの縦磁化の回復を積極的に抑制する(ステップS124−9)。
【0124】
このように例えば2R−R分に相当する期間待って、例えばスキャン開始から3個目のR波が出現すると(ステップS124−9,YES)、シーケンサ5は前述したステップS124−4にその処理を戻す。
【0125】
これにより、その3個目のR波ピーク値から遅延時間TDL1が経過した時点で次のスライスエンコード量SE2に応じて2回目の収縮期に対する第1のスキャンSNsys2が前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS124−4,5)。さらに、3個目のR波ピーク値から遅延時間TDL2が経過した時点でスライスエンコード量SE2に応じて2回目の拡張期に対する第2のスキャンSNdia2が前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS124−6,7)。
【0126】
以下同様に、最終のスライスエンコード量SEn(例えばn=8)までエコー信号が収縮期及び拡張期それぞれに対して収集される。
【0127】
スライスエンコード量SEnでの最終回のスキャンSNsysn,SNdianが終わると、ステップS124−8における判断がYESとなり、シーケンサ5からホスト計算機6にイメージングスキャンの完了通知が出力される(ステップS124−10)。これにより、処理がホスト計算機6に戻される。
【0128】
ホスト計算機6は、シーケンサ5からのスキャン完了通知を受けると(図17:ステップS125)、息止め解除の指令を音声発生器16に出力する(ステップS126)。
【0129】
したがって、図19に模式的に示す如く、1回のイメージングスキャン(撮像)の中で、例えば2R−R毎に、収縮期及び拡張期に対する心電同期スキャンが例えば3D−FASE法によりn個のスライスエンコード量に対して実行される。
【0130】
患者Pから発生したエコー信号は、第1の実施形態と同様にデジタル量のエコーデータに変換される。このエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に送られ、メモリで形成される収縮期及び拡張期用の3次元k空間Ksys及びKdia夫々に位相エンコード量及びスライスエンコード量に対応して配置される。
【0131】
(2.2)データ処理及び画像表示
このようにエコーデータ収集が終わると、ホスト計算機6は演算ユニット10に、図21に示す処理を実行するように指令する。
【0132】
図21に示す如く、演算ユニット6はホスト計算機6からの指令に応答して、収縮期用k空間Ksys及び拡張期用k空間Kdiaにおける全データ配置を完成させる(ステップS131,S132)。具体的には、ステップS131で、図20に示す如く、拡張期用k空間Kdiaにおける位相エンコード方向の一方の高周波領域Reのエコーデータ(図20では、番号h〜nまでのエコー)が収縮期用k空間Ksysの対応位置にコピーされる。このエコーデータは、収縮期用スキャンによっては収集されていなかった領域のデータである。次いで、ステップS132に移行して、収縮期用k空間Ksys及び拡張期用k空間Kdiaの両方にハーフフーリエ法を個別に適用して、エコーデータを収集していなかった残りの領域のデータを複素共役関係により演算し、これを配置する。したがって、ステップS131,S132の処理を通して、両方のk空間Ksys及びKdiaが全てデータで埋まる。
【0133】
この後、演算ユニット10は、収縮期用k空間Ksys及び拡張期用k空間Kdiaに夫々、3次元フーリエ変換による画像再構成を行う(ステップS133,S134)。この結果、前述した図12(a),(b)に示す如く、収縮期における遅延時間TDL1の画像(収縮期画像)IMsys及び拡張期における遅延時間TDL2の画像(拡張期画像)IMdiaの3次元データが得られる。この画像データによれば、収縮期画像IMsysには静脈VEのみが映り込んでおり、動脈ARは殆ど映っていない状態にある。一方、拡張期画像IMdiaには動脈AR及び静脈VEが程度の差はあれ、共に映り込んでいる。
【0134】
そこで、演算ユニット10は、第1の実施形態と同様に(図12〜14参照)、差分演算「IMdia−β・IMsys」による動脈相画像IMARの生成(ステップS135)、差分演算「IMdia−IMAR」による静脈相画像IMVEの生成(ステップS136)、動脈相画像IMAR及び静脈相画像IMVE夫々のMIP(最大値投影)処理(ステップS137)、及び、動脈相及び静脈相の2次元画像表示及び画像データの格納(ステップS138)が順次実行される。
【0135】
(2.3)作用効果
以上説明したように、本実施形態のMRI装置では、イメージングスキャン時に、読出し傾斜磁場パルスGRを下肢血管の流れ方向にほぼ合わせて印加すると共に、収縮期に印加する傾斜磁場パルスGRにディフェーズパルスPdephaseを付加し、また拡張期に印加するそれにリフェーズパルスPrephaseをそれぞれ付加している。
【0136】
これにより、第1の実施形態で説明した磁化スピンの挙動制御と同様に、収縮期に流れている、特に動脈にフローボイドの促進効果を与えて信号値を下げることができ、一方、拡張期の動脈及び動脈の流れには積極的にフローコンペンセーションの効果を与えることができる。
【0137】
従って、流れている血流及びそれよりも低い速度でしか流れていない血流の間の相対的な信号値差を、ディフェーズパルス及びリフェーズパルスで顕著にし、流れ速度が腹部や胸部よりも低い下肢の血管であっても、かかる相対的な信号値差に基づいて動静脈を明瞭に分離し且つ高い描出能で表示させることができる。
【0138】
また、本実施形態のMRI装置によれば、1心周期内の収縮期及び拡張期夫々に最適なスキャン開始タイミング(R波からの遅延時間)が設定される。そして、1スライスエンコードに対する収縮期及び拡張期の2ショットのスキャンが、1回のイメージングスキャンの中で順次、交互に実行される。しかも、1心周期内の最初に行う収縮期用スキャンは、後続の拡張期用スキャンに時間的に掛からないようにデータ収集時間(エコー数)を短くし、そこで収集したエコーデータは収縮期用k空間内のコントラスト向上の観点で最も重要な低周波領域に配置する。収縮期用k空間の不足するデータは、比較的長めにエコー収集を行うことができる後続の拡張期用スキャンで得たデータをコピーして補う。また、収縮期用及び拡張期用夫々のスキャンはハーフフーリエ法を採用し、スキャン時間を極力短く設定している。
【0139】
このため、通常、1スライスエンコードに対する収縮期用及び拡張期用の2ショットのスキャンは2心拍程度内に収まる。そこで、これらのスキャンを順次交互に繰り返すことで、1回の撮像における1回の息止め継続可能期間内に収縮期及び拡張期の血流のエコーデータが収集される。つまり、収縮期及び拡張期の血流の3次元データが1回の撮像で各別に且つ最適タイミングで収集される。
【0140】
従って、収縮期及び拡張期について個別にイメージングスキャンを行う(つまり合計2回の撮像を行う)必要が無く、1回の撮像で済む。それゆえ、撮像時間が大幅に少なくて済み、患者スループットが上がる。とくに、かかる撮像時間の短縮効果は3次元撮像のときに顕著になる。また、患者の体動等に因るミスレジストレーションを大幅に減らすことができるので、提示される画像の画質も良くなる。さらに、1回の撮像で収集された2時相のエコーデータから動脈相及び静脈相を分離した血流像(MRA像)を得ることができるので、撮像効率が良く、また、提供される血流情報も豊富になる。
また、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態で得られたその他の作用効果も同様に享受できる。
【0141】
(第2の実施形態の変形例)
上述した第2の実施形態の第1回目及び第2回目のイメージングスキャンにあっては、図19に示す如く、収縮期用の読出し傾斜磁場パルスにディフェーズパルスを付加し、拡張期用の読出し傾斜磁場パルスにリフェーズパルスを付加していた。これに対して、収縮期用及び拡張期用の読出し傾斜磁場パルスに共に、ディフェーズパルスのみを付加してもよい。これにより、第1の実施形態(図8参照)のときと同様に、時相毎に異なる血流速度に起因したフローボイド効果の促進具合を信号値の強度に反映させることができ、動静脈の分離を確実に行うことができる。
【0142】
(各実施形態に共通の変形例)
なお、本発明は、上述した各実施形態に記載の構成に限定されるものではなく、さらに各種の変形構成や応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、動脈相画像及び静脈相画像の両方を提示するようにしたが、これについては、動脈相画像のみを差分演算し、表示するようにしてもよい。すなわち、図21のステップS136における静脈相画像に対する差分演算を省くことができる。反対に、動脈相及び静脈相の画像の差分演算を共に行うものの、表示する画像は動脈動画像のみであってもよい。
【0143】
また、前述した各実施形態にあっては、収縮期用及び拡張期用のスキャン夫々に対して、ハーフフーリエ法を適用したスキャン法を採用したが、このハーフフーリエ法は必ず採用しなくてもよい。その場合、拡張期用スキャンによりk空間をフルにデータ収集し、そのスライスエンコード方向両端の高周波領域のエコーデータを収縮期用k空間の対応領域に夫々コピーするとよい。
【0144】
さらに、前述した実施形態は3次元スキャンで行う場合を説明したが、これは2次元スキャンの撮像であっても同様に適用できる。採用するパルスシーケンスも、FASE法に限らず、反転回復(IR)パルスを用いたFSE法やFASE法のシーケンスを採用してもよい。
【0145】
さらに、前述した実施形態のエコーデータの後処理は、エコーデータを一度、実空間の画像データに変換し、この後で差分演算を行って動脈相及び静脈相の画像を得るように構成しているが、かかる差分演算を、マトリクスサイズが同じk空間Ksys,Kdia上のエコーデータのままで行い、その差分結果であるエコーデータを再構成して血流画像を得るようにしてもよい。
【0146】
さらに、被検体の心拍を表す信号を検出する構成としては、前述したECG信号を検出するものに変えて、例えば指先の脈波を光信号で検出するPPG(peripheral gating)と呼ばれる検出信号を用いるようにしてもよい。
【0147】
さらに、前述した各実施形態及びその変形例に係るMRI装置は2つの心時相の画像データから1つの画像データを作成する構成にしているが、本発明の別の態様によれば、必ずしもこれに限定されない。例えば、ディフェーズパルスやリフェーズパルスを付加した読出し傾斜磁場パルスを流体(血液、リンパ液など)の流れの方向にほぼ一致させて印加し、心時相とは関係無く、1回のイメージングスキャンを行って単独の画像を得るようにしてもよい。この画像には、フローボイド効果の促進の程度を反映した流体がブライト又はブラックに映り込むから、これにより、流体に関するフロー情報を与えることができる。
【0148】
さらに、撮像対象となる流体の流れ速度に応じて前述したディフェーズパルスやリフェーズパルスの強度を制御する手段を設けることもできる。この手段は、例えば入力器13、ホスト計算機6、及び/又は記憶ユニット11から成る。オペレータが撮像部位及び流体を特定する情報を入力器13から入力すると、ホスト計算機6が記憶ユニット11に予め記憶させていたテーブル(流体毎のパルス強度を格納)を参照し、この参照結果に応じてディフェーズパルスやリフェーズパルスの強度をシーケンサ5に出力すればよい。また、オペレータが入力器13を介して直接にパルス強度を与えることもできる。
【0149】
実施形態の説明は以上の通りであるが、本発明は実施形態記載の構成に限定されるものではなく、当業者においては、特許請求の範囲に記載の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更、変形可能なものであり、それらの構成も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 ホスト計算機
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
17 ECGセンサ
18 ECGユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内のスピン(原子核スピン)の磁気共鳴現象に基づいてその内部を画像化する磁気共鳴イメージングに係り、造影剤を用いることなく、動静脈相画像を得るMRI(磁気共鳴イメージング)装置及びMR(磁気共鳴)イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをそのラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、肺野や腹部の血流像を得る場合、臨床的には、被検体に造影剤を投与して血管造影を行うMRアンギオグラフィが行われ始めている。しかし、この造影MRアンギオグラフィ法は、造影剤の投与が伴うことから、侵襲的な処置が必要で、何よりもまず、患者の精神的且つ体力的な負担が大きい。また、検査コストも高い。さらに、患者の体質などによっては造影剤を投与できない場合もある。
【0004】
一方、造影MRアンギオグラフィ法に代わる手法として、タイム・オブ・フライト(time−of−flight:TOF)法、位相コントラスト(phase contrast:PC)法などが知られている。
【0005】
この内、タイム・オブ・フライト法及び位相コントラスト法は、血流などの流れの効果を利用する手法である。流れの効果は、移動するスピンが有する2つの性質のいずれかによって起こる。1つは、スピンが単純に位置を移動させることで、2つ目は、傾斜磁場の中をスピンが移動することによって生じる横磁化の位相シフトに依る。この内、前者の位置移動に基づく手法がTOF法であり、後者の位相シフトに基づく手法が位相コントラスト法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したTOF法や位相コントラスト法は、何れも血液などの流体の流れの効果を利用する手法であることから、MRI装置の性能にも依存するが、一般的には、速度が2〜3cm/s以上の血流のみを描出可能であって、これよりも低い速度の流れは殆ど検出できなかった。例えば、患者(人)の抹消静脈、リンパ管、CSF(脊髄液)、膵管などの流れは遅く、1cm/s以下の速度が殆どである。しかも、拍動などに因る位置ずれの影響もあるので、これら低速度の流体の流れは従来、検出不可能であった。
【0007】
また、上述したTOF法や位相コントラスト法にしても、血流方向と垂直なスライスを撮像する必要がある。つまり、スライス方向をその上下方向に合わせてアキシャル像を撮影する必要がある。このため、2次元スライス像の場合、血流の流れに沿った画像にはならない。このため、3次元画像を得ようとすると、スライス枚数が多くなって、撮像全体の時間が長くなるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の現状を打破するためになされたもので、造影剤を投与することなく、下肢の血流などに見られる低流速の流れを確実に描出することを、その第1の目的とする。
【0009】
また本発明は、造影剤を投与することなく、短時間の撮像で、下肢の血流などに見られる低流速の流れを高画質で確実に描出することを、その第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態のMRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に読出し傾斜磁場パルスを含むパルスシーケンスに拠るスキャンを実行するものであり、信号収集手段と、画像生成手段とを備える。前記信号収集手段は、前記被検体からのエコー信号を読み出すための読出し傾斜磁場パルスの印加方向に、前記被検体内の動きのある流体の磁化スピンをディフェーズさせるディフェーズパルスが流体速度に応じた強度で印加されるように前記スキャンを実行することで、前記エコー信号を収集する。前記画像生成手段は、前記エコー信号に基づいて、前記流体の画像を生成する。
【0011】
前記信号収集手段は例えば、前記被検体の心時相として第1および第2の心時相を設定すると共に、前記流体の磁化スピンをディフェーズさせるパルスとして前記第1および第2の心時相の前記読出し傾斜磁場パルスの前記制御パルスを構成し、前記第1および第2の心時相において第1の前記スキャンおよび第2の前記スキャンをそれぞれ実行することで、前記エコー信号から成るエコーデータを2組収集する。
【0012】
前記信号収集手段は例えば、前記被検体の第1の心時相として収縮期の心時相を設定すると共に前記被検体の第2の心時相として拡張期の心時相を設定し、同一のスライス又はスライスエンコード量に設定される1回の撮像の中で、前記第1の心時相にて第1の前記スキャンを実行する動作と、前記第2の心時相にて第2の前記スキャンを実行する動作とを交互に繰り返す。
この場合、前記信号収集手段は例えば、前記第1のスキャンによってk空間の一部を埋める前記エコーデータを収集すると共に、前記第2のスキャンによってk空間全体を埋める前記エコーデータを収集し、前記画像生成手段は、前記第1のスキャンの前記エコーデータを第1のk空間に配置すると共に前記第2のスキャンの前記エコーデータを第2のk空間に配置し、前記第1のk空間上の未収集領域に対して、前記第2のk空間の一部であると共に前記未収集領域に対応する領域の前記エコーデータを複写する。
【0013】
撮像部位または前記流体を特定する情報の入力を受け付ける手段をさらに設け、前記信号収集手段が、入力された前記撮像部位または前記流体に応じて、前記流体の磁化スピンをディフェーズさせる前記制御パルスの強度を制御する構成としてもよい。
【0014】
また、前記被検体内の動きのある流体の動き方向に、前記読出し傾斜磁場パルスの印加方向を実質的に合わせる構成としてもよい。
また、前記制御パルスは、前記磁化スピンのディフェーズ及びリフェーズのうちの少なくとも一方を担うパルスであってもよい。また、前記2つの心時相で前記第1及び第2のスキャンに用いるパルスシーケンスの読出し傾斜磁場パルスの制御パルスを共に前記ディフェーズ又はリフェーズを担うパルスで形成していてもよい。
【0015】
また好適には、前記2つの心時相のうち、一方の心時相における前記第1のスキャンに用いるパルスシーケンスの読出し傾斜磁場パルスの制御パルスは前記ディフェーズを担うパルスで形成され、他方の心時相における前記第2のスキャンに用いるパルスシーケンスの読出し傾斜磁場パルスの制御パルスは前記リフェーズを担うパルスで形成される。
【0016】
例えば、前記信号収集手段が2つの時相として前記被検体の心臓の収縮期及び拡張期に属する心時相をそれぞれ設定し、前記制御パルスが前記収縮期の心時相にて前記磁化スピンのディフェーズを担うと共に前記拡張期の心時相にて前記磁化スピンのリフェーズを担う構成としてもよい。例えば、前記制御パルスの波形面積を変更可能に設定していてもよい。
【0017】
例えば、前記流体は前記被検体内の血流であり、前記血流は、流速が遅い前記被検体の下肢の動静脈であって、前記画像生成手段は、前記動静脈を分離した画像を生成する動静脈画像生成手段である。
【0018】
一例として、前記第1及び第2のスキャンはハーフフーリエ法に基づくスキャンである。例えば、前記第1のスキャンは、第1のk空間の位相エンコード方向における低周波領域を成す中心領域にエコーデータを配置するためのエコー信号を発生させるパルスシーケンスに拠るスキャンであり、前記第2のスキャンは、第2のk空間の位相エンコード方向における低周波領域を成す中心領域と、高周波領域を成す両端部の内の一方とにエコーデータを配置するためのエコー信号を発生させるパルスシーケンスに拠るスキャンである。
【0019】
この場合、前記画像生成手段は、前記第1のスキャンによりエコーデータが収集される第1のk空間、及び、前記第2のスキャンによりエコーデータが収集される第2のk空間のそれぞれにおいて、前記ハーフフーリエ法に応じた演算によってエコーデータを生成して配置する演算手段と、前記第1のk空間上で残っている未収集領域に前記第2のk空間の対応する領域のエコーデータを複写する複写手段とを備えていてもよい。
【0020】
例えば、前記画像生成手段は、前記第1のk空間のエコーデータ又はその画像データと、前記第2のk空間のエコーデータ又はその画像データとの間で演算を行うことで、動脈相画像に関するエコーデータ又はその画像データを得る動脈相画像生成手段を備えることができる。
【0021】
また、前記動脈相画像生成手段により実行される演算は、差分演算、重付け差分演算、又は加算演算であってもよい。また、例えば、前記画像生成手段は、前記動脈相画像生成手段から得られた動脈相画像に関するエコーデータ又はその画像データと、前記第2のk空間のエコーデータ又はその画像データとの間で差分演算を行うことで、静脈相画像に関するエコーデータ又はその画像データを得る静脈相画像生成手段を備えてもよい。
好適には、前記第1及び第2のスキャンは2次元スキャン又は3次元スキャンである。例えば、前記第1及び第2のスキャンに用いるパルスシーケンスは、FASE(Fast Asymmetric SE)法、EPI(エコープラナーイメージング)法、FSE(高速SE)法、又はSE法に拠るパルス列である。
【0022】
一例として、前記信号収集手段は、前記被検体の心時相を表す信号を検出する検出手段と、この検出手段により検出される信号中に現れる周期的な心拍参照波からの異なる時刻にて前記被検体の撮像部位に準備用MRシーケンスを複数回実行して複数枚のMR画像を得る準備手段と、この準備手段により得られた複数枚のMR画像から前記2つの時相を決める手段とを備える。例えば、前記心時相を表す信号は前記被検体のECG信号又はPPG信号であり、前記心拍参照波はそのECG信号又はPPG信号のR波である。
また、好適には、前記制御パルスの強度を前記流体の流れの速度に応じて制御する手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のMRI装置によれば、例えば、異なる心時相に同期してイメージングスキャンを行ったり、読出し傾斜磁場パルスにディフェーズパルスやリフェーズパルスを付加する構成としたため、造影剤を投与することなく、下肢の血流などに見られる低流速の流れを確実に描出しうる。特に、下肢の動静脈を分離した画像を短時間に且つ高画質に描出しうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るMRI装置の構成例を示す機能ブロック図。
【図2】第1の実施形態におけるECG−prepスキャン及び2回のイメージングスキャンの時系列関係を説明する図。
【図3】ECG−prepスキャンの手順を例示する概略フローチャート。
【図4】ECG−prepスキャンのECG信号に対する時系列関係を例示するタイミングチャート。
【図5】ECG−prepスキャンにより得られた、遅延時間をダイナミックに変化させたときの模式的画像図。
【図6】第1回目及び第2回目のイメージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図7】第1回目及び第2回目のイメージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図8】第1の実施形態における心電同期法に基づく第1回目及び第2回目のイメージングスキャンのタイミングを例示するタイミングチャート。
【図9】読出し傾斜磁場に付加するディフェーズパルス及びリフェーズパルスを説明する図。
【図10】3次元の撮像部位と撮像する血管との位置関係を説明する図。
【図11】第1の実施形態におけるエコーデータの演算及び表示の処理を説明する概略フローチャート。
【図12】動脈相画像を得るための差分演算の概要を説明する模式図。
【図13】静脈相画像を得るための差分演算の概要を説明する模式図。
【図14】動脈相画像及び静脈相画像の同時表示状態を例示する図。
【図15】第1の実施形態の変形例で実施される2回のイメージングスキャンのパルスシーケンス。
【図16】第2の実施形態に係るECG−prepスキャン及び1回のイメージングスキャンの時系列関係を説明する図。
【図17】イメージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図18】メージングスキャンの一例を示す概略フローチャート。
【図19】第1の実施形態における心電同期法に基づくイメージングスキャンのタイミングを例示するタイミングチャート。
【図20】収縮期と拡張期に夫々収集したエコーデータをk空間に配置する様子を説明する図。
【図21】第2の実施形態におけるエコーデータの演算及び表示の処理を説明する概略フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を、図1〜図13を参照して説明する。
この実施形態にかかるMRI(磁気共鳴イメージング)装置の概略構成を図1に示す。
【0026】
(1.1)装置の構成
このMRI装置は、被検体Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部と、被検体Pの心時相を表す信号としてのECG信号を計測する心電計測部とを備えている。
【0027】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するホスト計算機の制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0028】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はまた、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもとで、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0029】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向の傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場GS、位相エンコード方向傾斜磁場GE、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場GRから成る論理軸方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0に重畳される。
【0030】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。この送信器8T及び受信器8Rは後述するシーケンサ5の制御のもとで動作する。送信器8Tは、核磁気共鳴(NMR)を励起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する。受信器8Rは、RFコイル7が受信したエコー信号などのMR信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してMR信号のデジタルデータ(原データ)を生成する。
【0031】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ(シーケンスコントローラとも呼ばれる)5、ホスト計算機6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、入力器13、及び音声発生器16を備える。この内、ホスト計算機6は、記憶したソフトウエア手順(図示せず)により、シーケンサ5にパルスシーケンス情報を指令するとともに、装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0032】
なお、このMRI装置は、予め選択した値の同期タイミング(心時相)に基づく心電同期法に拠るMRスキャンを行うことを特徴の1つとしている。ホスト計算機6は、図2に示すように、予め同期タイミングを決めるための準備用パルスシーケンスを実行する準備用スキャン(以下、ECG−prepスキャンという)、及び、その同期タイミングに拠る心電同期でイメージング用パルスシーケンスを実行する2回のイメージング用スキャン(以下、イメージングスキャンという)を、図示しないメインプログラムを実行する中で行う。ECG−prepスキャンの実行ルーチンの一例を図3に、心電同期に基づく第1回目及び第2回目におけるイメージングスキャンの実行ルーチンの一例を図6、7に示す。
【0033】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの動作を制御するとともに、受信器8Rが出力したMR信号のデジタルデータを一旦入力し、これを演算ユニット10に転送するように構成されている。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Tおよび受信器8Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0034】
このパルスシーケンスとしては、フーリエ変換法を適用したものであれば、2次元(2D)スキャン又は3次元スキャン(3D)のものであってもよい。また、そのパルス列の形態としては、SE法、高速SE法、EPI(Echo Planar Imaging;エコープラナーイメージング)法、FASE(Fast Asymmetric SE)法(すなわち、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせたイメージング法)など、SE系のパルス列が好適である。
【0035】
また、演算ユニット10は、受信器8Rが出力したデジタルデータ(原データ又は生データとも呼ばれる)を、シーケンサ5を通して入力し、その内部メモリによるk空間(フーリエ空間または周波数空間とも呼ばれる)にそのデジタルデータを配置し、このデータを1組毎に2次元又は3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニットは、必要に応じて、画像に関するデータの合成処理や差分演算処理(重付け差分処理も含む)も実行可能になっている。この合成処理には、画素毎に加算する処理、最大値投影(MIP)処理などが含まれる。また、上記合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとって原データのまま1フレームの原データに合成するようにしてもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、重み付け加算処理などが含まれる。
【0036】
記憶ユニット11は、再構成された画像データのみならず、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを保管することができる。表示器12は画像を表示する。また入力器13を介して、術者が希望する同期タイミング選択用のパラメータ情報、スキャン条件、パルスシーケンス、画像合成や差分の演算に関する情報をホスト計算機6に入力できる。
【0037】
音声発生器16は、ホスト計算機6から指令があったときに、息止め開始および息止め終了のメッセージを音声として発することができる。
【0038】
さらに、心電計測部は、被検体の体表に付着させてECG信号を電気信号として検出するECGセンサ17と、このセンサ信号にデジタル化処理を含む各種の処理を施してホスト計算機6およびシーケンサ5に出力するECGユニット18とを備える。この心電計測部による計測信号は、ECG−prepスキャンと心電同期のイメージングスキャンとのそれぞれを実行するときにシーケンサ5に必要に応じて用いることができる。これにより、心電同期法の同期タイミングを適切に設定でき、この同期タイミングに基づく心電同期のイメージングスキャンを行ってデータ収集できるようになっている。
【0039】
(1.2)ECG−prepスキャン
次に、ECG−prepスキャンによる最適な同期タイミングの決定処理を図3〜5に基づき説明する。
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行している中で、入力器13からの指令に応答して、図3に示すECG−prepスキャンを開始する。
【0040】
最初に、ホスト計算機6は、ECG−prepスキャンを実行するスキャン条件およびパラメータ情報を入力器13から読み込む(同図ステップS1)。スキャン条件には、スキャンの種類、パルスシーケンス、読出し傾斜磁場パルスの印加方向などが含まれる。パラメータ情報には、心電同期の同期タイミング(時相)を決めるための初期時間T0(ここでは、ECG信号中のR波のピーク値からの経過時間)、時間増分に刻み幅Δt、回数カウンタCNTの上限値などが含まれ、これらのパラメータは操作者に任意に設定できる。
【0041】
次いで、ホスト計算機6は、シーケンスの実行回数をカウントする回数カウンタCNTおよび同期タイミングを決めるための時間の増分パラメータTincをクリヤする(CNT=0,Tinc=0:ステップS2)。この後、ホスト計算機6は音声発生器16にメッセージデータを送出して、例えば「息を止めて下さい」といった息止め指令を被検体(患者)に対して行わせる(ステップS3)。この息止めは、ECG−prepスキャン実行中の被検体の体動を抑制する上で実施する方が好ましいが、場合によっては、息止めを実施しない状態でECG−prepスキャンを実行するようにしてもよい。
【0042】
このように準備が整うと、ホスト計算機6はステップS4以降の処理を順次実行する。これにより、心電同期の同期タイミングを変更しながらのスキャン実行に移行する。
【0043】
具体的には、R波のピーク到達時間からの遅延時間TDLが、TDL=T0+Tincにより演算される(ステップS4)。次いで、ECGユニット18で信号処理されたECG信号が読み込まれ、その信号中のR波のピーク値が出現したか否かが判断される(ステップS5)。この判断処理はR波出現まで繰り返される。R波が出現すると(ステップS5,YES)、ステップS4で演算したその時点の遅延時間TDLがR波ピーク時間から経過したかどうかが続いて判断される(ステップS6)。この判断処理も遅延時間TDLが経過するまで続けられる。
【0044】
R波のピーク時刻から遅延時間TDLが経過すると(ステップS6,YES)、各回のパルスシーケンスの開始をシーケンサ5に指令する(ステップS7:図4参照)。このパルスシーケンスは、好ましくは、後述するイメージング用パルスシーケンスと同一タイプに設定され、例えば、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせた2D−FASE(Fast Asymmetric SE)法である。勿論、このシーケンスには高速SE法、EPI法など、各種のものを採用できる。この指令に応答し、シーケンサ5は操作者から指令された種類のパルスシーケンスの実行を開始するので、被検体の所望部位の領域がスキャンされる。このECG−prepスキャンは、例えば、画像データ収集用のイメージングスキャン(本スキャン)が3次元(3D)法の場合、2次元(2D)スキャンで行ってもよいし、イメージングスキャンの領域に合わせた3次元スキャンで行ってもよい。本実施形態では、イメージングスキャンは3次元スキャンとして実行するが、ECG−prepスキャンはスキャン時間短縮の観点から2次元スキャンとして実行する。ECG−prepスキャンの使命に鑑みると、2次元スキャンでも十分である。
【0045】
上記シーケンス実行開始の指令後、回数カウンタCNT=CNT+1の演算が行われ(ステップS8)、さらに、時間の増分パラメータTinc=ΔT・CNTの演算が行われる(ステップS9)。これにより、パルスシーケンスの実行を指令した各回毎に回数カウンタCNTのカウント値が1ずつ増加し、また同期タイミングを調整する増分パラメータTincがそのカウント値に比例して増加する。
【0046】
次いで、各回のパルスシーケンスの実行に必要な予め定めた所定期間(例えば500〜1000msec程度)が経過するまでそのまま待機する(ステップS10)。さらに、回数カウンタCNTが予め定めた上限値になったか否かを判断する(ステップS11)。同期タイミングを最適化させるために、遅延時間TDLを各種の時間値に変更しながら、例えば5枚の2次元像を撮影する場合、回数カウンタCNT=5に設定される。回数カウンタCNT=上限値に到達していない場合(ステップS11,NO)、ステップS5の処理に戻って上述した処理が繰り返される。反対に、回数カウンタCNT=上限値に到達した場合(ステップS11,YES)、息止め解除の指令が音声発生器16に出され(ステップS12)、その後の処理はメインプログラムに戻される。息止めの音声メッセージは例えば「息をして結構です」である。
【0047】
上述の処理を順次実行すると、一例として、図4に示すタイミングで準備用のパルスシーケンスが実行されたことになる。例えば、初期時間T0=300msec,時間刻みΔT=100msecを指令していたとすると、第1回目のシーケンスに対する遅延時間TDL=300msec、第2回目のそれに対する遅延時間TDL=400msec、第3回目のそれに対する遅延時間TDL=500msec、…といった具合に同期タイミングを決する遅延時間TDLが調整される。
【0048】
このため、息止め指令後の最初のR波がピーク値に達すると、その到達時刻から遅延時間TDL(=T0)後に、例えば2次元FASE法に基づく第1回目のスキャンIMGprep1が所定時間(500〜1000msec)継続し、エコー信号が収集される。このシーケンス継続中に次のR波が出現した場合でも、図3のステップS10の待機処理があるので、このR波出現には何等関与されずに、シーケンスは続けられる。つまり、ある心拍に同期して開始されたシーケンスの実行処理は次の心拍にまたがって続けられ、エコー信号が収集される。
【0049】
そして、回数カウンタCNTが所定値に到達していない場合、ステップS5〜S11の処理が再び実行される。このため、図4の例では、3番目のR波が出現してピーク値に達すると、この到達時点から遅延時間TDL=T0+Tinc=400msecが経過した時点で、第2回目のスキャンIMGprep2が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。このスキャンが終わって次のR波が出現し、遅延時間TDL=T0+2・Tinc=500msecが経過すると、第3回目のスキャンIMGprep3が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。さらに、このスキャンが終わって次のR波が出現し、遅延時間TDL=T0+3・Tinc=600msecが経過すると、第4回目のスキャンIMGprep4が所定時間継続し、同様にエコー信号が収集される。このスキャンが所望回数、例えば5回続き、合計5フレーム(枚)の同一断面のエコーデータが収集される。
【0050】
エコーデータは順次、受信器8Rおよびシーケンサ5を経由して演算ユニット10に送られる。演算ユニット10はk空間(周波数空間)のエコーデータを2次元フーリエ変換法により実空間の画像データに再構成する。この画像データは血流像データとして記憶ユニット11に記憶される。ホスト計算機6は、例えば入力器13からの操作信号に応答して、この血流像を順次、シネ(CINE)表示する。
【0051】
つまり、図5に模式的に示す如く、例えば下肢の時相が相互に異なるn枚の2次元コロナル像が表示される。このコロナル像には、下肢をほぼ上下方向に流れる動脈AR及び静脈VEが位置する。但し、撮像したタイミング、すなわちR波からの「遅延時間TDL=初期時間T0+Tinc・Δt」が画像毎に異なる。術者はこれらの画像を目視観察して、動脈AR及び静脈VEが最も高信号に現れている画像及び静脈のみが最も高信号に現れている画像を選択する。この内、静脈VEのみが相対的に高信号に現れている画像に相当する遅延時間TDL1により、収縮期の同期タイミングTDL=TDL1が決められる。また、動脈AR及び静脈VEが相対的に高信号に現れている画像に相当する遅延時間TDL2により、拡張期の同期タイミングTDL=TDL2が決められる。
【0052】
したがって、術者は、このように遅延時間TDLをダイナミックに変えて撮像した複数枚の血流像を目視観察し、2つの心時相として、収縮期及び拡張期夫々における最適な遅延時間TDL=TDL1、TDL2(同期タイミング)を決め、この遅延時間TDLを引き続き行うイメージングスキャンに反映させる処理を例えば手動で行う。
【0053】
なお、目視観察で決めた画像を指定すると、その指定画像に与えられている遅延時間TDLを最適同期タイミングとして自動的に記憶し、このタイミングTDLをイメージングスキャン時に自動的に読み出すようにソフトウエアを構築し、インストールしてもよい。これにより、ECG同期タイミングの自動指定処理が可能になる。
【0054】
(1.3)イメージングスキャン
次に、この実施形態における2回のイメージングスキャン(つまり、2回の撮像)の動作を図6〜10を参照して説明する。
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行し、その一環として、入力器13からの操作情報に応答して図6に示す各回のイメージングスキャンの処理を実行する。
【0055】
いま、第1回目のイメージングスキャン(撮像)が収縮期に割り当てられているとする。この場合、ホスト計算機6は、最初に、前述したECG−prepスキャンを通して操作者が決めた収縮期用の最適な遅延時間TDL(=TDL1又はTDL2>TDL1)を例えば入力器13を介して入力する(ステップS20)。
【0056】
次いで、ホスト計算機6は操作者が入力器13から指定したスキャン条件(読出し傾斜磁場パルスの印加方向、画像サイズ、スキャン回数、スキャン間の待機時間、スキャン部位に応じたパルスシーケンスなど)及び画像処理法の情報(MIP処理、差分処理など。差分処理の場合には、単純差分、重み付け差分処理、加算処理のいずれかなど。)を入力し、遅延時間TDLを含むそれらの情報を制御データに処理し、その制御データをシーケンサ5および演算ユニット10に出力する(ステップS21)。
【0057】
次いで、スキャン前の準備完了の通知があったと判断できると(ステップS22)、ステップS23で息止め開始の指令を音声発生器14に出力する(ステップS23)。これにより、音声発生器14は、ECG−prepスキャン時と同様に「息を止めて下さい」といった内容の音声メッセージを発するから、これを聞いた患者は息を止めることになる(図9参照)。
【0058】
この後、ホスト計算機6はシーケンサ5に第1回目(又は第2回目)のイメージングスキャン開始を指令する(ステップS24)。
【0059】
シーケンサ5は、このイメージングスキャン開始の指令を受けると(図7、ステップS24−1)、ECG信号の読み込みを開始し(ステップS24−2)、ECG信号におけるR波(参照波形)のピーク値の所定n回目の出現を、そのピーク値に同期させたECGトリガ信号から判断する(ステップS24−3)。ここで、R波の出現をn回(例えば2回)待つのは、確実に息止めに移行した時期を見計らうためである。所定n回目のR波が出現すると、設定した遅延時間TDL1だけ待機する処理を行う(ステップS24−4)。
【0060】
この最適な遅延時間TDL1(又はTDL2)が経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5は第1回目のイメージングスキャンを実行する(ステップS24−5)。具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく第1回目のイメージングスキャン(撮像)が図8(a),(c)に示す如く心電同期で実行される(同図(c)において位相エンコード方向傾斜磁場の図示は省略されている)。
【0061】
このパルスシーケンスによれば、読出し傾斜磁場パルスGRの印加方向ROは、例えば図10に示すように、撮像目的の血流(動脈AR,静脈VE)の流れる方向にほぼ一致するように設定されている。
【0062】
また、このパルスシーケンスに含まれる読出し傾斜磁場パルスGRは図8(c)及び図9(a)〜(c)に示す如く、エコー信号を収集する周波数エンコード用のパルス本体Pbodyと、このパルス本体Pbodyの時間的前後に連続的に付加された制御パルスとしての2つのディフェーズパルスPdephaseとから成る。このディフェーズパルスPdephaseは、周波数エンコード用のパルス本体Pbodyと同極性になっており、これにより、移動している磁化スピンに対してそのディフェージングを促進する機能を有する。
【0063】
なお、ディフェーズパルスPdephaseは、殆ど移動していない磁化スピンには殆どディフェーズ機能を発揮しない。このため、読出し傾斜磁場パルスGRは、撮像目的の流体(血液やリンパ液)の動きの方向にほぼ一致して印加されることが重要である。
【0064】
好適には、ディフェーズパルスPdephaseは、撮像対象である流体としてのリンパ液や血流の速度に応じて強度が変更又は制御可能になっている。図9(a)〜(c)には、この順に、ディフェーズパルスPdephaseの強度を下げる例を例示している。一般に、血流速度が大きくなるに従って、ディフェーズパルスPdephaseの強度を下げるように変更又は制御される。
【0065】
なお、撮像対象とする流体(血流など)の速度が比較的高いときには、図9(d)に示す如く、パルス本体Pbodyの時間的前後に連続的に制御パルスとしての、合計2つのリフェーズパルスPrephaseが付加される。このリフェーズパルスPrephaseは、周波数エンコード用のパルス本体Pbodyに対して極性が反対になっており、ディフェーズ過多を抑えるべく、磁化スピンをリフェーズさせてアーチファクトを抑制する機能を有する。このリフェーズパルスPrephaseの強度も流速に応じて変更されることが好ましい。
【0066】
この第1の実施形態では、従って、第1回目及び第2回目(後述する)のイメージングスキャンの両方において、読出し傾斜磁場パルスGRにはディフェーズパルスPdephase又はリフェーズPrephaseが付加される。
【0067】
このため、上述した3次元FASE法のパルスシーケンスが実行されることで、励起90°RFパルス及びリフォーカス180°RFパルスに付勢されたエコー信号が各スライスエンコード及び各位相エンコード毎に収集される。このエコー信号には、ディフェーズパルスPdephaseに因る磁化スピンの位相のディフェーズ作用又はリフェーズPrephaseに因る磁化スピンの位相のリフェーズ作用が反映される。
このことは後述する表示動作と共に詳述するが、その概要を述べると以下のようである。
【0068】
つまり、読出し傾斜磁場パルスの印加方向に沿って流れている流体にとって、ディフェーズパルスPdephaseに因るディフェーズ効果はフローボイド(flow void)効果の促進につながる。このため、エコー信号の強度はディフェーズパルスによって低下する。反対に、その方向に殆ど流れていない流体の場合、ディフェーズパルスPdephaseに因るフローボイド効果の促進具合は低く、エコー信号の強度はそれほど低下しない。
【0069】
リフェーズパルスPrephaseの場合、そのリフェーズ作用により、流体の流れに応じてディフェージングの効きが抑制される。
【0070】
上述したパルスシーケンスにおけるエコー間隔は5msec程度に短縮される。これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約600msec程度のスキャン時間で、例えば図10に示す如く下肢に設定した3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される。
【0071】
この1つ目のスライスエンコードに拠るスキャンが終了すると、シーケンサ5は、最終スライスエンコードのスキャンが完了したかどうかを判断し(ステップS24−6)、この判断がNO(最終スライスエンコードに拠るスキャンが済んでいない)の場合、ECG信号を監視しながら、例えば前回のイメージングスキャンに使用したR波から例えば2心拍(2R−R)と、短めに設定した期間が経過するまで待機する(ステップS24−7)。なお、繰返し時間TRは4心拍(4R−R)以下に設定される。
【0072】
このように例えば2R−R分に相当する期間待って、例えば3個目のR波が出現すると(ステップS24−7,YES)、シーケンサ5は前述したステップS24−4にその処理を戻す。これにより、その3個目のR波ピーク値に同期したECGトリガ信号から指定遅延時間TDL1が経過した時点で次のスライスエンコード量SE2に基づくスキャンが前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS24−4,5)。以下同様に、最終のスライスエンコード量SEn(例えばn=8)までエコー信号が収集される。
【0073】
スライスエンコード量SEnに拠る最終回のスキャンが終わると、ステップS24−6における判断がYESとなり、シーケンサ5からホスト計算機6に1回目(又は2回目の)イメージングスキャンの完了通知が出力される(ステップS24−8)。これにより、処理がホスト計算機6に戻される。
【0074】
ホスト計算機6は、シーケンサ5からのスキャン完了通知を受けると(ステップS25)、息止め解除の指令を音声発生器16に出力する(ステップS26)。そこで、音声発生器16は、例えば「息をして結構です」といった音声メッセージを患者に向けて発し、息止め期間が終わる(図8参照)。
【0075】
これにより、2R−R毎に心電同期による第1回目(又は第2回目)のイメージングスキャン(撮像)が例えば3D−FASE法に基づき実行される。
【0076】
患者Pから発生するエコー信号は、スライス傾斜磁場パルスGsが供するスライスエンコード毎に、RFコイル7で受信され、受信器8Rに送られる。受信器8Rはエコー信号に各種の前処理を施し、デジタル量に変換する。このデジタル量のエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に送られ、メモリで形成される3次元k空間のエンコード量に応じた位置に配置される。
【0077】
次いで、図2に示す如く、適宜な時間を空けて、拡張期に対する第2回目のイメージングスキャン(撮像)が1回目と同様に行われる。但し、第2回目の場合、前述したECG−prepスキャンを通して予め設定されていた拡張期の所定時相を決める最適遅延時間TDL2が読み込まれ(図6、ステップS20、S21)、この遅延時間TDL2に基づく心電同期がとられる(図7、ステップS24−4)。
【0078】
このため、第2回目のイメージングスキャンの場合、図8(b),(c)に示す如く、R波ピークから遅延時間TDL2だけ遅延させた拡張期の同期タイミングで各位相エンコード量SEに拠る3次元FASE法のスキャンが実行される。この場合も、読出し傾斜磁場パルスGRの印加方向は、血流などの撮像流体の動きの方向に殆ど一致させる。また、読出し傾斜磁場パルスGRには、磁化スピンの挙動(ディフェーズ又はリフェーズ)を制御する制御パルス(ディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephase)が付加されている。
【0079】
従って、第2回目のイメージングスキャンによって、第1回目と同様に、読出し傾斜磁場パルスGRに付加したディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseのスピン制御機能を反映させた拡張期の画像データが得られる。
【0080】
(1.4)データ処理及び画像表示
このようにエコーデータの収集が終わると、ホスト計算機6は演算ユニット10に、図11に示す処理を実行させる。
同図に示す如く、演算ユニット6はホスト計算機6からの指令に応答して、収縮期用k空間及び拡張期用k空間の両方にハーフフーリエ法に基づくエコーデータの演算をさせる(ステップS31)。つまり、エコーデータを収集していなかったk空間の残り領域のデータを複素共役関係により演算し、これを配置する。これにより、両方のk空間が全てエコーデータで埋まる。
【0081】
この後、演算ユニット10は、収縮期用k空間及び拡張期用k空間のエコーデータを夫々、3次元フーリエ変換して画像再構成を行う(ステップS32,S33)。この結果、図12(a),(b)に示す如く、収縮期における遅延時間TDL1の時相の画像(収縮期画像)IMsys及び拡張期における遅延時間TDL2の時相の画像(拡張期画像)IMdiaの3次元データが得られる。
【0082】
この画像データによれば、収縮期画像IMsysには静脈VEのみが映り込んでおり、動脈ARは殆ど映っていない状態にある。一方、拡張期画像IMdiaには動脈AR及び静脈VEが程度の差はあれ、共に映り込んでいる。
【0083】
ここで、このような収縮期画像IMsys及び拡張期画像IMdiaが得られる原理を、前述した読出し傾斜磁場GRの印加方向及びディフェーズパルスPdephaseの機能から以下に詳述する。
【0084】
読出し傾斜磁場パルスの印加方向に流れている血流などの成分の磁化スピンの位相は、ディフェーズパルスに拠って更にばらけ易くなる。つまり、流れている成分にとっては、流れていること自体に因るフローボイド(flow void)効果が促進されたことと等価である。反対に、リフェーズパルスに拠って、かかる血流などの磁化スピンの位相にはリフェーズ機能が作用する。
【0085】
例えば、被検体の下肢を例にとる。下肢の場合、収縮期における動脈でも通常、1cm/s以下の低い流速であり、収縮期における静脈及び拡張期における動脈及び静脈にいたっては殆ど動いていないかと見なせる程の低流速である。この下肢に対して、図8に示すように、ディフェーズパルスPdephaseを付加した読出し傾斜磁場パルスGRを用いて収縮期と拡張期の所望時相夫々でイメージングスキャン(撮像)が行われる。
【0086】
これらのイメージングスキャンによって動静脈の磁化スピンが励起され、エコー信号が収集される。このとき、動脈及び静脈の流速が若干でも互いに異なるので、この流速の相違がリフェーズパルスに拠るフローボイド効果の促進具合に反映され、エコー信号の信号値の相対的な変化として現れる。
【0087】
具体的には、収縮期は以下のようである。静脈は極めてゆっくり流れるので、ディフェーズパルスによって若干のエコー信号低下はあるものの、フローボイド効果は少なく、比較的高い信号値でブライトブラッド(bright blood)に描出される。これに対して、収縮期の動脈は静脈よりは大きい流速で流れるので、ディフェーズパルスに拠るフローボイド効果の促進具合が静脈のそれよりも大きい。これにより、動脈の信号値低下は大きく、ブラックブラッド(black blood)に描出される。この状態は前述した図12(a)に模式的に表される。なお、同図ではハッチング部分をブライトブラッドとし、点線部分をブラックブラッドとしている。
【0088】
一方、拡張期の場合、動脈及び静脈共に極めて低い流速でしか動いていないので、動脈及び静脈共に、ディフェーズパルスに因る若干の信号値低下はあるものの、ブライトブラッドに描出される。この状態は前述した図12(b)に模式的に表される。
【0089】
図11の説明に戻ると、演算ユニット10は、動脈相画像IMARを得るため、収縮期画像IMsys及び拡張期画像IMdiaについて、差分演算「IMdia−β・IMsys」を画素毎に行う(ステップS34)。ここで、βは重付け係数である。これにより、図12に示す如く、重付け係数βを適宜に設定することにより、静脈VEの画像データが殆ど零になり、動脈ARのみが映った動脈相画像IMARの3次元画像データが得られる。
【0090】
さらに、静脈相画像IMVEを得るため、差分演算「IMdia−IMAR」を画素毎に行う(ステップS35)。画像データIMARは上述の重付け差分により演算された画像データである。これにより、図13に示す如く、動脈ARの画像データが殆ど零になり、静脈VEのみが映った静脈相画像IMVEの3次元画像データが得られる。なお、この差分演算も重付け差分によって行ってもよい。
【0091】
このように差分演算が終わると、演算ユニット10は、両方の動脈相画像IMAR及び静脈相画像IMVE夫々について、MIP(最大値投影)処理を行って、所望方向からそれらの血管を観測したときの2次元画像(例えばコロナル像)のデータを作成する(ステップS36)。
【0092】
この動脈相及び静脈相の2次元画像IMAR及びIMVEは例えば図14に示す如く、表示器12に表示されるとともに、それらの画像データは記憶ユニット11に格納される(ステップS39)。
【0093】
なお、この表示に際し、動脈相画像IMAR及び静脈相画像IMVEに加えて、収縮期画像IMsys及び拡張期画像IMdiaを同一画面に又は別体モニタの画面に表示するようにしてもよい。
【0094】
(1.5)効果
以上説明したように、本実施形態のMRI装置では、イメージングスキャン時に、読出し傾斜磁場パルスGRを下肢血管などに見られる低流速の流体(血流など)の流れ方向にほぼ合わせて印加している。しかも、同時に、傾斜磁場パルスGRにディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseを付加している。
【0095】
これにより、流れている流体及びそれよりも低い速度でしか流れていない流体の間の相対的な信号値差を、ディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseで増大させることができる。そこで、例えばディフェーズパルスを用いた場合、流れ速度が腹部や胸部よりも低い下肢の血管であっても、かかる相対的な信号値差から図14に示す如く、動静脈を明瞭に分離し且つ高い描出能で表示させることができる。
【0096】
このように、動静脈間の信号値に相対的な差を与えるために、読出し傾斜磁場パルスの印加方向を流れの方向に合せて、且つ、磁化スピンのディフェーズやリフェーズを積極的に利用してフローボイド効果を制御する手法は、本発明者によって初めて開発された新規な手法である。
【0097】
また、本実施形態では、ECG−prepスキャンによって収縮期及び拡張期に対する最適なECG同期タイミングを予め設定しているので、収縮期及び拡張期の各時相において狙った血流を確実に捕捉することができる。さらに、心電同期タイミングの事前の最適設定により、撮像のやり直しを行う必要も殆ど無くなり、操作者の操作上の負担や患者の体力的、精神的負担も軽減される。
【0098】
また、スライス方向又はスライスエンコード方向を患者の上下方向以外の方向にとることができるので、TOF法などのような血流と垂直な上下方向に撮影する手法と比較して、全体のスキャン時間が短くて済む。これにより、患者の負担も少なく、患者スループットも上がる。
【0099】
さらに、造影剤を投与しなくても済むので、非侵襲に撮像でき、この点からも患者の精神的、体力的な負担が著しく軽くなる。同時に、造影効果のタイミングを計る必要があるなど、造影法固有の煩わしさからも解放されるとともに、造影法と違って、必要に応じて繰返し撮像が可能になる。
【0100】
(第1の実施形態の変形例)
上述した実施形態にあっては、図8に示すように、第1回目及び第2回目のイメージングスキャン共に、その読出し傾斜磁場パルスGRにディフェーズパルスPdephase又はリフェーズパルスPrephaseを付加する態様で説明した。
【0101】
この態様に対する変形例として、拡張期の時相で行う第1回目のイメージングスキャンに図15(a)に示す如くディフェーズパルスPdephaseを付加し、一方、収縮期の時相で行う第2回目のイメージングスキャンに同図(b)に示すリフェーズパルスPrephaseを付加するようにしてもよい。
【0102】
つまり、収縮期及び拡張期の別に応じて、磁化スピンの挙動を付加的に制御する制御パルスの種類を変えるのである。これにより、拡張期にリフェーズ(フローコンペンセーション)の効果を反映させて信号値を増大させ、S/Nを向上させることができる。
【0103】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る第2の実施形態を図16〜図21に基づいて説明する。なお、この実施形態で使用するMRI装置のハードウエア構成は、第1の実施形態のものと同一又は同等である。
【0104】
第2の実施形態では、第1の実施形態で実行していた第1回目及び第2回目の2回のイメージングスキャンを1回のイメージングスキャンで実行すると共に、心周期の収縮期及び拡張期に合せて前述したディフェーズパルス及びリフェーズパルスを使い分けした構成に関する。
【0105】
いま、低速度の流体として、下肢の動静脈の分離画像を得るものとする。図16に示す如く、最初にECG−prepスキャンが行われ、次いで1回のイメージングスキャンが心電同期法の元で実行される。ECG−prepスキャンは第1の実施形態で説明した手法で行われ、これにより、収縮期及び拡張期で最も描出能を提供する、R波からの遅延時間TDL1及びTDL2が夫々設定される。
【0106】
次いで、この遅延時間TDL1及びTDL2に基づく心電同期法に拠るイメージングスキャンが1回の撮像として実行される。このイメージングスキャンの手順を図17、18に例示し、このスキャンに使用するパルスシーケンスを19に例示する。
【0107】
(2.1)イメージングスキャン
ホスト計算機6は、図示しない所定のメインプログラムを実行している中で、その一環として、入力器13からの操作情報に応答して図17及び18に示す処理を実行する。
【0108】
これを詳述すると、ホスト計算機6は、最初に、前述したECG−prepスキャンを通して操作者が決めた最適な2つの遅延時間TDL(つまり、収縮期の最適遅延時間TDL1及び拡張期の最適遅延時間TDL2(>TDL1))を例えば入力器13を介して入力する(ステップS120)。この最適遅延時間TDL1及びTDL2の情報は予め例えば記憶ユニット11内に記憶させておいてもよい。
【0109】
次いで、ホスト計算機6は、スキャン条件及び画像処理法の情報を入力し、遅延時間TDL1及びTDL2を含むそれらの情報を制御データに処理し、その制御データをシーケンサ5および演算ユニット10に必要に応じて出力する(ステップS121)。
【0110】
次いで、ホスト計算機6により、第1の実施形態と同様に、スキャン前の準備完了が判断されると、息止め開始が指令され、イメージングスキャン開始が指令される(ステップS123〜S124)。
【0111】
シーケンサ5は、イメージングスキャン開始の指令を受けると(図18:ステップS124−1)、ECG信号の読み込みを開始し(ステップS124−2)、ECG信号におけるR波(参照波形)のピーク値の所定n回目の出現を、そのピーク値に同期させたECGトリガ信号から判断する(ステップS124−3)。
【0112】
所定n回目のR波が出現すると、最初に、収縮期の特定時相用に設定した遅延時間TDL1だけ待機する処理を行う(ステップS124−4)。
【0113】
この最適な遅延時間TDL1が経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5は収縮期に対するスキャンを実行する(ステップS124−5)。
【0114】
具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく1回目のスライスエンコード量SE1の元で第1のスキャンSNsys1が図19に示す如く心電同期法により実行される。
【0115】
この第1のスキャンSNsys1では、読出し傾斜磁場パルスGRは下肢の動静脈にほぼ沿った体軸方向に印加される。また、この読出し傾斜磁場パルスGRには、磁化スピンの位相を分散させるディフェーズパルスPdephaseが図示の如く、時間的に連続して前後に付加されている。また、このパルスシーケンスにおけるエコー間隔は5msec程度に短縮される。
【0116】
なお、この収縮期に対する第1のスキャンSNsysnに使用するパルスシーケンスは、図19に示す如く、エコー数が短く設定され、スキャン開始から1心拍内の僅かな時間で終わるようになっている。エコー数は、図20に模式的に示す如く、k空間の位相エンコードke方向の中心部(低周波領域)のみに配置するエコーデータをスライスエンコード量毎に収集するに足りるように設定されている。このため、拡張期に対する第2のスキャンSNdianは、図19、20に示す如く、収縮期に対する第1のスキャンSNsysnと同一心拍内に開始できるようになっている。また、収縮期用k空間(第1のk空間)Ksysにおいて不足するエコーデータは、後述する拡張用k空間(第2のk空間)Kdiaからのコピー及びハーフフーリエ法に拠る演算によって求められる(図20参照)。
【0117】
これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約数百msec程度の短いスキャン時間で、下肢に設定した3次元撮像領域Rima(図10参照)からエコー信号が収集される。
【0118】
次いで、シーケンサ5は、拡張期におけるスキャン制御に移行する。具体的には、拡張期の特定時相用に設定した遅延時間TDL2だけ待機する処理を行う(ステップS124−6)。
【0119】
この最適な遅延時間TDL2が経過した時点が最適な心電同期タイミングであるとして、シーケンサ5は拡張期に対する第2のスキャンを実行する(ステップS124−7)。具体的には、既に記憶していたパルスシーケンス情報に応じて送信器8Tおよび傾斜磁場電源4を駆動し、例えば3次元FASE法のパルスシーケンスに基づく1回目のスライスエンコード量SE1の元で第2のスキャンSNdia1が図19に示す如く心電同期法により実行される。
【0120】
この第2のスキャンSNdia1においても、読出し傾斜磁場パルスGRは下肢の動静脈にほぼ沿った体軸方向に印加される。また、この読出し傾斜磁場パルスGRには、磁化スピンをリフェーズさせるリフェーズパルスPrephaseが図示の如く、時間的に連続して前後に付加されている。また、このパルスシーケンスにおけるエコー間隔も5msec程度に短縮される。
【0121】
なお、この拡張期における第2のスキャンSNdianに使用するパルスシーケンスは、図19に示す如く、収縮期よりは多いが、ハーフフーリエ法を併用する分、k空間全部に充填するエコー数よりも少ないエコー数を収集するように設定されている。エコー数は、図20に模式的に示す如く、k空間の位相エンコードke方向の中心部(低周波領域)及びその一方の端部(高周波)のみに配置するエコーデータをスライスエンコード量毎に収集するに足りるように設定されている。拡張期用k空間Kdiaにおいて、不足するエコーデータは後述するようにハーフフーリエ法に拠って演算により求められる。この拡張期におけるスキャンSNdia1は、図19,20に示す如く、通常、次の心拍まで跨ってスキャンされる。
【0122】
これにより、最初のスライスエンコード量SE1の元、約600msec程度のスキャン時間で、下肢に設定した3次元撮像領域Rima(図10参照)からエコー信号が収集される。
【0123】
これらの1回目のイメージングスキャンが終了すると、シーケンサ5は、最終のスキャンが完了したかどうかを判断し(ステップS124−8)、この判断がNO(最終スキャンが済んでいない)の場合、ECG信号を監視しながら、例えばイメージングスキャンに使用したR波から例えば2心拍(2R−R)と、短めに設定した期間が経過するまで待機し、静止している実質部のスピンの縦磁化の回復を積極的に抑制する(ステップS124−9)。
【0124】
このように例えば2R−R分に相当する期間待って、例えばスキャン開始から3個目のR波が出現すると(ステップS124−9,YES)、シーケンサ5は前述したステップS124−4にその処理を戻す。
【0125】
これにより、その3個目のR波ピーク値から遅延時間TDL1が経過した時点で次のスライスエンコード量SE2に応じて2回目の収縮期に対する第1のスキャンSNsys2が前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS124−4,5)。さらに、3個目のR波ピーク値から遅延時間TDL2が経過した時点でスライスエンコード量SE2に応じて2回目の拡張期に対する第2のスキャンSNdia2が前述と同様に実行され、3次元撮像領域Rimaからエコー信号が収集される(ステップS124−6,7)。
【0126】
以下同様に、最終のスライスエンコード量SEn(例えばn=8)までエコー信号が収縮期及び拡張期それぞれに対して収集される。
【0127】
スライスエンコード量SEnでの最終回のスキャンSNsysn,SNdianが終わると、ステップS124−8における判断がYESとなり、シーケンサ5からホスト計算機6にイメージングスキャンの完了通知が出力される(ステップS124−10)。これにより、処理がホスト計算機6に戻される。
【0128】
ホスト計算機6は、シーケンサ5からのスキャン完了通知を受けると(図17:ステップS125)、息止め解除の指令を音声発生器16に出力する(ステップS126)。
【0129】
したがって、図19に模式的に示す如く、1回のイメージングスキャン(撮像)の中で、例えば2R−R毎に、収縮期及び拡張期に対する心電同期スキャンが例えば3D−FASE法によりn個のスライスエンコード量に対して実行される。
【0130】
患者Pから発生したエコー信号は、第1の実施形態と同様にデジタル量のエコーデータに変換される。このエコーデータはシーケンサ5を通して演算ユニット10に送られ、メモリで形成される収縮期及び拡張期用の3次元k空間Ksys及びKdia夫々に位相エンコード量及びスライスエンコード量に対応して配置される。
【0131】
(2.2)データ処理及び画像表示
このようにエコーデータ収集が終わると、ホスト計算機6は演算ユニット10に、図21に示す処理を実行するように指令する。
【0132】
図21に示す如く、演算ユニット6はホスト計算機6からの指令に応答して、収縮期用k空間Ksys及び拡張期用k空間Kdiaにおける全データ配置を完成させる(ステップS131,S132)。具体的には、ステップS131で、図20に示す如く、拡張期用k空間Kdiaにおける位相エンコード方向の一方の高周波領域Reのエコーデータ(図20では、番号h〜nまでのエコー)が収縮期用k空間Ksysの対応位置にコピーされる。このエコーデータは、収縮期用スキャンによっては収集されていなかった領域のデータである。次いで、ステップS132に移行して、収縮期用k空間Ksys及び拡張期用k空間Kdiaの両方にハーフフーリエ法を個別に適用して、エコーデータを収集していなかった残りの領域のデータを複素共役関係により演算し、これを配置する。したがって、ステップS131,S132の処理を通して、両方のk空間Ksys及びKdiaが全てデータで埋まる。
【0133】
この後、演算ユニット10は、収縮期用k空間Ksys及び拡張期用k空間Kdiaに夫々、3次元フーリエ変換による画像再構成を行う(ステップS133,S134)。この結果、前述した図12(a),(b)に示す如く、収縮期における遅延時間TDL1の画像(収縮期画像)IMsys及び拡張期における遅延時間TDL2の画像(拡張期画像)IMdiaの3次元データが得られる。この画像データによれば、収縮期画像IMsysには静脈VEのみが映り込んでおり、動脈ARは殆ど映っていない状態にある。一方、拡張期画像IMdiaには動脈AR及び静脈VEが程度の差はあれ、共に映り込んでいる。
【0134】
そこで、演算ユニット10は、第1の実施形態と同様に(図12〜14参照)、差分演算「IMdia−β・IMsys」による動脈相画像IMARの生成(ステップS135)、差分演算「IMdia−IMAR」による静脈相画像IMVEの生成(ステップS136)、動脈相画像IMAR及び静脈相画像IMVE夫々のMIP(最大値投影)処理(ステップS137)、及び、動脈相及び静脈相の2次元画像表示及び画像データの格納(ステップS138)が順次実行される。
【0135】
(2.3)作用効果
以上説明したように、本実施形態のMRI装置では、イメージングスキャン時に、読出し傾斜磁場パルスGRを下肢血管の流れ方向にほぼ合わせて印加すると共に、収縮期に印加する傾斜磁場パルスGRにディフェーズパルスPdephaseを付加し、また拡張期に印加するそれにリフェーズパルスPrephaseをそれぞれ付加している。
【0136】
これにより、第1の実施形態で説明した磁化スピンの挙動制御と同様に、収縮期に流れている、特に動脈にフローボイドの促進効果を与えて信号値を下げることができ、一方、拡張期の動脈及び動脈の流れには積極的にフローコンペンセーションの効果を与えることができる。
【0137】
従って、流れている血流及びそれよりも低い速度でしか流れていない血流の間の相対的な信号値差を、ディフェーズパルス及びリフェーズパルスで顕著にし、流れ速度が腹部や胸部よりも低い下肢の血管であっても、かかる相対的な信号値差に基づいて動静脈を明瞭に分離し且つ高い描出能で表示させることができる。
【0138】
また、本実施形態のMRI装置によれば、1心周期内の収縮期及び拡張期夫々に最適なスキャン開始タイミング(R波からの遅延時間)が設定される。そして、1スライスエンコードに対する収縮期及び拡張期の2ショットのスキャンが、1回のイメージングスキャンの中で順次、交互に実行される。しかも、1心周期内の最初に行う収縮期用スキャンは、後続の拡張期用スキャンに時間的に掛からないようにデータ収集時間(エコー数)を短くし、そこで収集したエコーデータは収縮期用k空間内のコントラスト向上の観点で最も重要な低周波領域に配置する。収縮期用k空間の不足するデータは、比較的長めにエコー収集を行うことができる後続の拡張期用スキャンで得たデータをコピーして補う。また、収縮期用及び拡張期用夫々のスキャンはハーフフーリエ法を採用し、スキャン時間を極力短く設定している。
【0139】
このため、通常、1スライスエンコードに対する収縮期用及び拡張期用の2ショットのスキャンは2心拍程度内に収まる。そこで、これらのスキャンを順次交互に繰り返すことで、1回の撮像における1回の息止め継続可能期間内に収縮期及び拡張期の血流のエコーデータが収集される。つまり、収縮期及び拡張期の血流の3次元データが1回の撮像で各別に且つ最適タイミングで収集される。
【0140】
従って、収縮期及び拡張期について個別にイメージングスキャンを行う(つまり合計2回の撮像を行う)必要が無く、1回の撮像で済む。それゆえ、撮像時間が大幅に少なくて済み、患者スループットが上がる。とくに、かかる撮像時間の短縮効果は3次元撮像のときに顕著になる。また、患者の体動等に因るミスレジストレーションを大幅に減らすことができるので、提示される画像の画質も良くなる。さらに、1回の撮像で収集された2時相のエコーデータから動脈相及び静脈相を分離した血流像(MRA像)を得ることができるので、撮像効率が良く、また、提供される血流情報も豊富になる。
また、この第2の実施形態によれば、第1の実施形態で得られたその他の作用効果も同様に享受できる。
【0141】
(第2の実施形態の変形例)
上述した第2の実施形態の第1回目及び第2回目のイメージングスキャンにあっては、図19に示す如く、収縮期用の読出し傾斜磁場パルスにディフェーズパルスを付加し、拡張期用の読出し傾斜磁場パルスにリフェーズパルスを付加していた。これに対して、収縮期用及び拡張期用の読出し傾斜磁場パルスに共に、ディフェーズパルスのみを付加してもよい。これにより、第1の実施形態(図8参照)のときと同様に、時相毎に異なる血流速度に起因したフローボイド効果の促進具合を信号値の強度に反映させることができ、動静脈の分離を確実に行うことができる。
【0142】
(各実施形態に共通の変形例)
なお、本発明は、上述した各実施形態に記載の構成に限定されるものではなく、さらに各種の変形構成や応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、動脈相画像及び静脈相画像の両方を提示するようにしたが、これについては、動脈相画像のみを差分演算し、表示するようにしてもよい。すなわち、図21のステップS136における静脈相画像に対する差分演算を省くことができる。反対に、動脈相及び静脈相の画像の差分演算を共に行うものの、表示する画像は動脈動画像のみであってもよい。
【0143】
また、前述した各実施形態にあっては、収縮期用及び拡張期用のスキャン夫々に対して、ハーフフーリエ法を適用したスキャン法を採用したが、このハーフフーリエ法は必ず採用しなくてもよい。その場合、拡張期用スキャンによりk空間をフルにデータ収集し、そのスライスエンコード方向両端の高周波領域のエコーデータを収縮期用k空間の対応領域に夫々コピーするとよい。
【0144】
さらに、前述した実施形態は3次元スキャンで行う場合を説明したが、これは2次元スキャンの撮像であっても同様に適用できる。採用するパルスシーケンスも、FASE法に限らず、反転回復(IR)パルスを用いたFSE法やFASE法のシーケンスを採用してもよい。
【0145】
さらに、前述した実施形態のエコーデータの後処理は、エコーデータを一度、実空間の画像データに変換し、この後で差分演算を行って動脈相及び静脈相の画像を得るように構成しているが、かかる差分演算を、マトリクスサイズが同じk空間Ksys,Kdia上のエコーデータのままで行い、その差分結果であるエコーデータを再構成して血流画像を得るようにしてもよい。
【0146】
さらに、被検体の心拍を表す信号を検出する構成としては、前述したECG信号を検出するものに変えて、例えば指先の脈波を光信号で検出するPPG(peripheral gating)と呼ばれる検出信号を用いるようにしてもよい。
【0147】
さらに、前述した各実施形態及びその変形例に係るMRI装置は2つの心時相の画像データから1つの画像データを作成する構成にしているが、本発明の別の態様によれば、必ずしもこれに限定されない。例えば、ディフェーズパルスやリフェーズパルスを付加した読出し傾斜磁場パルスを流体(血液、リンパ液など)の流れの方向にほぼ一致させて印加し、心時相とは関係無く、1回のイメージングスキャンを行って単独の画像を得るようにしてもよい。この画像には、フローボイド効果の促進の程度を反映した流体がブライト又はブラックに映り込むから、これにより、流体に関するフロー情報を与えることができる。
【0148】
さらに、撮像対象となる流体の流れ速度に応じて前述したディフェーズパルスやリフェーズパルスの強度を制御する手段を設けることもできる。この手段は、例えば入力器13、ホスト計算機6、及び/又は記憶ユニット11から成る。オペレータが撮像部位及び流体を特定する情報を入力器13から入力すると、ホスト計算機6が記憶ユニット11に予め記憶させていたテーブル(流体毎のパルス強度を格納)を参照し、この参照結果に応じてディフェーズパルスやリフェーズパルスの強度をシーケンサ5に出力すればよい。また、オペレータが入力器13を介して直接にパルス強度を与えることもできる。
【0149】
実施形態の説明は以上の通りであるが、本発明は実施形態記載の構成に限定されるものではなく、当業者においては、特許請求の範囲に記載の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更、変形可能なものであり、それらの構成も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 ホスト計算機
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット
12 表示器
13 入力器
17 ECGセンサ
18 ECGユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場中に置かれた被検体に読出し傾斜磁場パルスを含むパルスシーケンスに拠るスキャンを実行するMRI装置において、
前記被検体からのエコー信号を読み出すための読出し傾斜磁場パルスの印加方向に、前記被検体内の動きのある流体の磁化スピンをディフェーズさせるディフェーズパルスが流体速度に応じた強度で印加されるように前記スキャンを実行することで、前記エコー信号を収集する信号収集手段と、
前記エコー信号に基づいて、前記流体の画像を生成する画像生成手段と
を備えたことを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
請求項1記載のMRI装置において、
前記信号収集手段は、前記スキャンとして、前記被検体の心時相として設定された第1および第2の心時相それぞれにおいて、前記ディフェーズパルスを含む第1のスキャンおよび第2のスキャンを実行することを特徴とするMRI装置。
【請求項3】
請求項1記載のMRI装置において、
前記信号収集手段は、前記被検体の第1の心時相として収縮期の心時相を設定すると共に前記被検体の第2の心時相として拡張期の心時相を設定し、同一のスライス又はスライスエンコード量の撮像の中で、前記第1の心時相にて第1の前記スキャンを実行する動作と、前記第2の心時相にて第2の前記スキャンを実行する動作とを交互に繰り返すことを特徴とするMRI装置。
【請求項4】
請求項1記載のMRI装置において、
前記信号収集手段は、第1の前記スキャンによってk空間の一部を埋める前記エコーデータを収集すると共に、第2の前記スキャンによってk空間全体を埋める前記エコーデータを収集し、
前記画像生成手段は、前記第1のスキャンの前記エコーデータを第1のk空間に配置すると共に前記第2のスキャンの前記エコーデータを第2のk空間に配置し、前記第1のk空間上の未収集領域に対して、前記第2のk空間の一部であると共に前記未収集領域に対応する領域の前記エコーデータを複写することを特徴とするMRI装置。
【請求項5】
請求項1記載のMRI装置において、
撮像部位または前記流体を特定する情報の入力を受け付ける手段をさらに備え、
前記信号収集手段は、入力された前記撮像部位または前記流体に応じて、前記流体の磁化スピンをディフェーズさせる前記ディフェーズパルスの強度を制御することを特徴とするMRI装置。
【請求項1】
静磁場中に置かれた被検体に読出し傾斜磁場パルスを含むパルスシーケンスに拠るスキャンを実行するMRI装置において、
前記被検体からのエコー信号を読み出すための読出し傾斜磁場パルスの印加方向に、前記被検体内の動きのある流体の磁化スピンをディフェーズさせるディフェーズパルスが流体速度に応じた強度で印加されるように前記スキャンを実行することで、前記エコー信号を収集する信号収集手段と、
前記エコー信号に基づいて、前記流体の画像を生成する画像生成手段と
を備えたことを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
請求項1記載のMRI装置において、
前記信号収集手段は、前記スキャンとして、前記被検体の心時相として設定された第1および第2の心時相それぞれにおいて、前記ディフェーズパルスを含む第1のスキャンおよび第2のスキャンを実行することを特徴とするMRI装置。
【請求項3】
請求項1記載のMRI装置において、
前記信号収集手段は、前記被検体の第1の心時相として収縮期の心時相を設定すると共に前記被検体の第2の心時相として拡張期の心時相を設定し、同一のスライス又はスライスエンコード量の撮像の中で、前記第1の心時相にて第1の前記スキャンを実行する動作と、前記第2の心時相にて第2の前記スキャンを実行する動作とを交互に繰り返すことを特徴とするMRI装置。
【請求項4】
請求項1記載のMRI装置において、
前記信号収集手段は、第1の前記スキャンによってk空間の一部を埋める前記エコーデータを収集すると共に、第2の前記スキャンによってk空間全体を埋める前記エコーデータを収集し、
前記画像生成手段は、前記第1のスキャンの前記エコーデータを第1のk空間に配置すると共に前記第2のスキャンの前記エコーデータを第2のk空間に配置し、前記第1のk空間上の未収集領域に対して、前記第2のk空間の一部であると共に前記未収集領域に対応する領域の前記エコーデータを複写することを特徴とするMRI装置。
【請求項5】
請求項1記載のMRI装置において、
撮像部位または前記流体を特定する情報の入力を受け付ける手段をさらに備え、
前記信号収集手段は、入力された前記撮像部位または前記流体に応じて、前記流体の磁化スピンをディフェーズさせる前記ディフェーズパルスの強度を制御することを特徴とするMRI装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−183429(P2012−183429A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151345(P2012−151345)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2010−161778(P2010−161778)の分割
【原出願日】平成12年12月27日(2000.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2010−161778(P2010−161778)の分割
【原出願日】平成12年12月27日(2000.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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