説明

N−アルキルカルバゾールとその誘導体を合成する方法

本発明は、N−アルキルカルバゾールを調合するためのプロセスを開示する。前述のプロセスには以下のステップが含まれる:a)シクロヘキサノンを塩素処理して2−クロロシクロヘキサノンを生成するステップ、b)2−クロロシクロヘキサノンをN−エチルアニリンと反応させて、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノンを形成するステップ、c)同時水分除去を使った還流によって、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノンを環化して、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを取得するステップ、d)濃縮塩化水素酸で9−エチルテトラヒドロカルバゾールを処理した後、N−エチルアニリンを除去するため水洗するステップ、e)触媒が存在する溶剤の中で9−エチルテトラヒドロカルバゾールを加熱することによって、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを脱水素して、N−アルキルカルバゾールを取得するステップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アルキルカルバゾールとその誘導体を合成する新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバゾールとその誘導体、即ち、N−エチルカルバゾールは、染料、顔料および殺虫剤の合成に対して幅広く応用されている。カルバゾール誘導体は、電機産業、高耐熱性重合体、コンクリート可塑剤、およびこれらと同等な分野にも広く使われている。カルバゾールは、コールタールの重要な成分の1つでもある。高温なコールタールには平均1.5%のカルバゾールが含まれている。カルバゾールは、物理的分離(ピリジン、ケトン、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジアルキルスルホキシド、ジアルキルホルムアミドを使った抽出)や(KOH、あるいは濃縮HSO融合を使った)化学的分離の両方によりアントラセンの生産中に得られる副産物としても取得される。
シクロヘキサノンからクロロシクロヘキサノンを合成する方法を述べた多くの文献が出版されているので利用できる。芳香性第1アミンおよび第2アミンも利用可能で、当該アミンは、対応するニトロの還元によって作ることができる。
N−エチルカバゾールは高価な染料を調合するための重要な中間産物である。産業界でそれは、カルバゾールの水酸化カリウムあるいは炭酸カリウムとの反応によって調合された後、エチレンハロゲン化物あるいはジエチルサルフェートでエチル化される。(DE−B2132961参照)カルバゾールからN−エチルカルバゾールを調合するその他のプロセスには、例えば、エチルベンゼンスルホナート(Chemical Abstracts, Volume 82, Abstract No.45003 1975参照)、ジエチルN−(o−トリル)ホスホルアミダート(Journal of Heterocyclic Chemistry, Volume 18, page 315 (1981)参照)、あるいは、1−ジエトキシエチリウムテトラフルオロホウ酸塩が使われている。しかし、これらのプロセスは、産業にとって重要なものではない。
【0003】
既知なすべての産業調合プロセスには、労働およびエネルギー集約的方法でプロセス排水から除去し、埋め立て処分するか、浄化プラントを経由して、最終的に河川に流すべき大量な無機塩が生成されるという欠点がある。これらのプロセスは環境に対して非友好的で、大量な固体廃棄物および液体廃棄物を生成する。例えば、BIOS Final Report 986の頁197に説明されている方法を使うと、取得される廃水中には、生産されたN−エチルカルバゾール1トンあたり、約220kgの塩化カリウムが含まれる。DE−B−2132961の中に述べられているプロセスによって処理した場合、N−エチルカルバゾール1トンあたり、約490kgの硫酸カリウムが廃水中に検出されている。エチレンハロゲン化物類がエチレン化剤として使用されるプロセスには、廃棄エアーの単純な燃焼にハロゲンが含まれているため可能でないので、有機ハロゲン化合物の放射を避けるため、廃棄エアーに非常に高価な浄化を実行しなければならないという更なる欠点が含まれている。反応混合物の水性発展が含まれるこれらのプロセスでは、有機ハロゲン化合物の含有を避けることができない。更に、エチルハロゲン化物を使用する場合およびジエチルサルフェートを使用する場合の両方で、これらの物質を取り扱う時、有毒な上、発ガン性があるので、特別な対策が要求される。エチルカルバゾールを調合するための改良されたプロセスがエコロジーと産業衛生の両方の理由から、極度に強く望まれている。幾つかのケースで、アルキルハロゲン化物もしくはジアルキルサルフェートの代わりに、ジアルキルカーボネートをアミン類のアルキル化の中で使うことができる;従って、例えば、イミダゾールをメチル化するため、ジメチルサルフェートの代わりにクラウン・エーテルのようなジメチルカーボネートを相転移触媒が存在している状態で使用することが、Liebigs Annalen der Chemie 1987, page 77の中に述べられている。この出版物は、ジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの間に見られる反応性の顕著な違いを引用すると供に、いかなる環境でも、ジエチルカーボネートを使っても規定された生成物が得られなかったと述べている。ジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの間に見られる異なった挙動および後者を使って達成された貧弱な結果も例として、Synthesis 1986, page 382の中で考察されている。アミドグループの窒素原子上のエチル化がジエチルカーボネートを使うと可能である。欧州出願特許EP−A−410214は、少なくとも同等な量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属カーボネートおよび追加の相転移触媒の面前で起こるウレタンのジエチルカーボネートとの反応について述べているが、アミド類のこれらの反応性は、アミド類の酸性度が高いので、アミド類のこれらと比較することはできない。
【0004】
ジエチルカーボネートは一般にアミンと反応してカルバミック酸エステルを付与する(Houben−Weyl,Methods of Organic Chemistry, Volume E 4, page 159; Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry, 4th edition, Volume 14, page 591;DE−B−2160111参照)、更に、米国特許第4550188号はエチル化だけを副反応として開示している。
【0005】
まれであるが、エチル化が芳香族アミンのジエチルカーボネートとの反応の中で、主反応として起こる。DE−A−2618033は様々なアニリン誘導体のジエチルカーボネートとの反応に加え、p−フェニレンヂアミンおよびp−トルイジンの反応についても述べている。窒素上でモノエチレン化およびビスエチレン化された生成物の混合物が生成されるジエチルカーボネートを有する、リング上の電子提供置換基によって活性化された2つのモノアリルアミン類が生成される。アニリンの比較的高揮発性の芳香族アミンであるアニリンのポリエチレングリコールおよび炭酸カリウムを含む触媒が存在している状態におけるジエチルカーボネートとのガス相反応は、N−エチルアニリンの56.5%混合物、N−エトキシカーボニル−N−エチルアニリンの19.7%混合物およびアニリンの24.4%混合物を付与する。(Journal of Organic Chemistry, Volume 52, page 1300, 1987)高い割合の開始材料が未反応のままになっていることが明らかに観察された。従ってこの方法は、揮発性の低いアミン類に適用することはできない。ドイツ特許仕様書DE−C−3007196は、芳香族アミンの、触媒としての有機性ヨウ化物の面前におけるジアルキルカーボネートによるアルキル化について述べている。しかし、有機ヨウ化物が追加されるので、この産業規模の実現には、廃棄エアーの高価な浄化が再び必要となる。更に、水性ワークアップによって、有機ハロゲン化合物の廃水への混入が導かれる。以上に加え、N−メチル−とN,N−ジメチル−アニリンの混合物が得られるジメチルカーボネートとの反応だけが開示される。ジエチルカーボネートを含むこれらと同等な結果を付与し、本質的により優れたアルキル化アクションを持つ表示はない。カルボン酸エステル中のメチルおよびエチルグループの顕著に異なったアルキル化キャパシティーも、ジメチルカーボネートの使用に加え、例えば、カルボン酸エステルのメチルグループおよび、より高いアルキルグループとの混合物並びに、なるべく、所望のN,N−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)メチルアミンを付与するビス(2,4,6−トリブロモフェニル)アミンのN−メチル化のためのエチルグループの使用も開示しているEP−B−104601から見ることができる。ジアリルアミンのN−アルキル化反応のこのタイプの中のメチルおよびエチルグループの匹敵する反応性能を示す、特定エチル化中のメチル化に沿ったアルキル化の進行状態は参照されない。しかしながら、ジメチル炭酸塩の場合でも、反応も完全ではないので、反応物と生成物の分離が必要となる。
【0006】
N−エチルカルバゾールは、有用な染料や顔料の合成に使用されている。それは、Pigment Violet−23(PV−23)の合成の主要な成分の1つとして使用され、プリント用インク、プラスチックおよびペイント産業中におけるそれに対する需要が急速に増加している。カルバゾールの価格上昇と市場における激烈な競争に伴い、成長している顔料市場の中で競争に勝つため、PV−23の製造コストの大幅な削減が必須であることは明らかである。これは、我々の製品により高い競争力を持たせるよう、我々を、カルバゾール誘導体の調合のためのBischler合成の適用に含まれる様々なステップの研究に導く。:
Bischler反応によるカルバゾールとテトラヒドロカルバゾールの合成は、従来技術の分野で良く知られている。テロラヒドロカルバゾールの調合のためのBischler合成の適用はDE374098(1923)の中に初めて記載されている。ドイツ特許は、第1芳香族アミンあるいは第2芳香族アミンを含む1,2−ハロシクロヘキサノンの合成方法を開示している。DE947068は更に、少なくとも1つの置換されていないo−ポジションを持つ第1あるいは第2芳香族アミンを使い、分子状の酸素から不活性ガスのない雰囲気の中に行う、2−ハロゲンシクロヘキサノンの反応によるテトラヒドロカルバゾールの合成を開示している。
【0007】
芳香族アミンが持つ広範囲な有用性と2−クロロシクロヘキサノンとそれが容易に反応する性質は、Bischler合成を、テトラヒドロカルバゾールの調合に対する非常に魅力的な方法にする。
【0008】
論文、Rogers and Corson, J.Am.Soc, 69, 2910, 1947の中には、シクロヘキサノンとフェニールヒドラジンから、1ステップの操作でテトラヒドロカルバゾールを合成する方法が述べられている。これは、キシレン中で、クロラニルで加熱することによって芳香族化される。(Barclay and Campbell, J.Chem.Soc.530,1945参照)
論文、K.Darrell Berlin, Peter E.Clark, Jack Schroeder and Darrell Hopper, Proc.of the Okala.Acad, ofsci.for 1966, pg215−220には、2.5時間の還流後、酢酸中に81%の収率が得られる3−tert−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾールの合成方法が報告されている。反応が5時間行なわれると、収率が78.8に下落した。
【0009】
論文、E.Campaigne and R.D.Lake, Journal of Organic Chemistry (1959), 24, 478−87には、N−エチルアニリン(0.20M)の、2−クロロシクロヘキサノン(0.20M)、キノリン(0.02M)、炭酸ナトリウム(0.30M)および150mlのメチルセルソルブ(溶剤)との反応から、2−N−エチルアニリノシクロヘキサノンを合成する方法が述べられている。この方法を使用すると、45分の還流後、42%の収率が得られる。生のテトラヒドロカルバゾールは、それをピクリン酸塩に変換するか、アルミナのコラムを貫通させることによって浄化される。その後、浄化された当該テトラヒドロカルバゾールから、30% Pd−カーボン触媒(12時間還流した後、10ml/gのキシレンを含むN−エチルテトラヒドロカルバゾール1gあたり0.25−0.4gの30% Pd−C触媒)を使って、水素が除去される。
【0010】
従来技術の分野に開示されているN−エチルテトラヒドロカルバゾールを合成するためのプロセスには、溶剤あるいは水素除去剤が必要である。更に、従来技術の分野に開示されているプロセスによって、テトラヒドロカルバゾールから合成されるアルキルカルバゾールの収量と純度は非常に低い。従って、溶剤あるいは脱水素剤を含まない2−クロロシクロヘキサノンおよびN−エチルアニリンからN−エチルテトラヒドロカルバゾールを高収率および高純度で調整するプロセスを開発することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許第DE−B2132961号
【特許文献2】米国特許第4550188号
【特許文献3】独国特許仕様書第DE−C−3007196号
【特許文献4】独国特許第DE374098号
【特許文献5】独国特許第DE947068号
【特許文献6】独国特許第DE−B−2160111号
【特許文献7】欧州出願特許EP−A−410214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の持つ目的の幾つかは以下の通りである:
本発明の目的は、N−アルキルテトラヒドロカルバゾールを調合することである。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、N−アルキルカルバゾールを調合するプロセスを提供することである。
【0014】
本発明の更なるもう1つの目的は、多くの量の純度の高い生成物を提供するプロセスを用意することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、単純、安全、便利、容易な商業レベルの操業が可能で、且つコスト効化の高いプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に基づき、以下のステップを含む、N−アルキルカルバゾールを調合するプロセスが提供される:
a.シクロヘキサノンを塩素処理して、2−クロロシクロヘキサノンを形成するステップ;
b.2−クロロシクロヘキサノンをN−エチルアニリンと反応させて、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノンを形成するステップ;
c.同時水分除去を使った還流によって、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノンを環化して、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを取得するステップ;
d.濃縮塩化水素酸で9−エチルテトラヒドロカルバゾールを処理した後、N−エチルアニリンを除去するため水洗するステップ;
e.触媒が存在する溶剤の中で9−エチルテトラヒドロカルバゾールを加熱することによって、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを脱水素して、N−アルキルカルバゾールを取得するステップ。
【0017】
本発明のもう1つの具体化の要件に従って、N−アルキルカルバゾールを洗浄した後、触媒を除去するため濾過する方法ステップを更に含むプロセス。
【0018】
大抵、触媒は再利用が可能である。
【0019】
触媒は大抵、炭素上のパラジウム、ラネーニッケルおよびプラチナからなるグループの中から選ばれる。
【0020】
触媒をなるべく炭素上のパラジウムとする。
【0021】
使用する触媒の濃度は大抵、約5%から30%までの範囲におさまる。
【0022】
使用した触媒の割合は大抵、9−エチル−テトラヒドロカルバゾールの質量の約1%から10%までの範囲に収まる。
【0023】
使用する触媒の割合はなるべく、9−エチル−テトラヒドロカルバゾールの質量の約5%にする。
【0024】
脱水素化は大抵、約160℃から約250℃までの範囲に収まる温度で実行される。
【0025】
脱水素化はなるべく、約200℃の温度で実施する。
【0026】
溶剤は大抵、o−キシレン、ジフェニルエーテル、1,2,4−トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シクロヘキシルプロピオナートおよび1,2,4,5 テトラメチルベンゼンからなるグループの中から選んだ少なくとも1つである。
【0027】
反応は大抵、約8時間から22時間までの範囲に収まる期間実行される。
【0028】
テトラヒドロカルバゾールのN−アルキルカルバゾールへの変換の効率は大抵、98%より高い。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に基づき、N−アルキルカルバゾールを調製するプロセスが提供される。
【0030】
本発明の発明者は、カルバゾールとその誘導体を調製するためのBischler合成の適用に含まれる様々なステップについて注意深く検討した。アリールアミノシクロヘキサノンをまず調製し、管理された状態で、これらを所望のテトラヒドロカルバゾールにシクロ化してから、適当な脱水素触媒を使って生成物から水素を除去して、所望のカルバゾール誘導体を高い収量と純度で取得することが最善であることが判明している。
【0031】
本発明に基づきN−アルキルカルバゾールを調製するプロセスには以下のステップが含まれる:
最初のステップは、シクロヘキサノンを塩素処理して2−クロロシクロヘキサノンを形成するステップである;取得した2−クロロシクロヘキサノンをその後N−エチルアニリンと反応させて、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノン形成した上、更に加熱して、同時水分除去と供に還流させて、9−エチル−テトラヒドロカルバゾールの形成をもたらすシクロ化を完了させる。過剰なN−エチルアニリンをセメント、塩化水素および水洗を使った処理によって除去する。取得した有機層をその後、酸を含まない状態にするため洗浄した後、濃縮して、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを粘性の高い液体として取得する。生の生成物が更なる処理を施すことなく、次のステップのために取られる。
【0032】
N−エチルアニリンが塩基性化によって塩化水素酸塩水溶液から再生成される。
【0033】
次のステップは、金属触媒の面前で、溶剤中の9−エチルテトラヒドロカルバゾールから水素を除去するステップである。
【0034】
脱水素用に使われる金属触媒は、炭素上のパラジウム、ラネーニッケルおよびプラチナからなるグループの中から選ばれる。
【0035】
最も好ましい具体化の条件に従って、N−エチルカルバゾールが、窒素の雰囲気の中で9−テトラヒドロカルバゾールの脱水素によって、o−キシレン、ジフェニルエーテル、1,2,4−トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シクロヘキシルプロピオナートおよび1,2,4,5トリメチルベンゼンからなるグループの中から選んだ溶剤中のPd−Carbon触媒と供に9−テトラヒドロカルバゾールを加熱することによって合成される。
【0036】
脱水素のために使われる触媒の濃度は、約5%から30%までの範囲に収まり、使用する触媒の割合は、9−エチルテトラヒドロカルバゾールの質量の約1%から10%までの範囲に収まる。使用する触媒の割合はなるべく、9−エチルテトラヒドロカルバゾールの質量の約5%にする。
【0037】
脱水素のステップは、約160℃から250℃までの範囲に収まる温度で、約8時間から22時間までの範囲に収まる期間実施する。脱水素化のステップはなるべく、約200℃の温度で実施する。
【0038】
本発明のプロセスによって取得されたテトラヒドロカルバゾールの変換は>98%である。変換された材料上のN−エチルカルバゾールの収量は定量に近い。脱水素化を完全に実施する必要はない。未反応のテトラヒドロカルバソールは、適切な溶剤の中で生のN−エチルカルバゾールを結晶化することによって除去することができる。N−エチルテトラヒドロカルバゾールを含む濾過液は、脱水素化の次のバッチ用にリサイクルすることができる。次の脱水素化バッチの中で、触媒を(少なくとも3回)繰り返して容易にリサイクルできることは、生のN−エチルテトラヒドロカルバゾールを使用したにも係わらず、触媒は脱水素化の間に毒されないことを示す。
【0039】
本発明の具体化の1つの要件に基づき、約1%w/wの量のラネーニッケルが、9−エチルテトラヒドロカルバゾールの脱水素化用の触媒として使われる。テトラヒドロカルバゾールを250℃の温度で約15時間を越える期間変換した時得られる効率は、わずか16%であることが判明した。
【0040】
本発明のもう1つの具体化の要件に従って、9−エチルテトラヒドロカルバゾールの脱水素化は、o−キシレンの代わりに、ジフェニルエーテルの中で、200℃の温度で実施される。98%の変換を条件とする反応は8時間で完了する。
【0041】
本発明を全く制限しないで、本発明を実証する以下の例を引用して、本発明を説明する。
【実施例1】
【0042】
2−クロロシクロヘキサノンの調合
混合物を得るため、490gのシクロヘキサノンを水(1250ml)に添加した。混合物を4リッターの容量を持ち、メカニカル撹拌装置、塩素導入用デップチューブインレット、サーモウェルおよび還流コンデンサーを装備してなる総合リアクターに入れて、200℃の温度で強く攪拌した。その後、強く攪拌しながら、塩素を71g/時間のレートで4時間導入した。反応混合物を沈殿させた。底部の有機層を帯水層から分離させた上、NaCO溶液で中和したし後、沈殿させて、油性層を得た。組み合わされた油性層は、436gの2−クロロシクロヘキサノン、102gのシクロヘキサノンおよび54gのジククロを付与した。2−クロロシクロヘキサノンの収量:GC純度が98%を越えることを条件として、82%。
【実施例2】
【0043】
9−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾールの調合
266.2gのN−エチルアニリンをメカニカル攪拌装置、サーモウェルおよびディーン・スターク装置の上に氷水循環装置を付けたダブルコイル式コンデンサーを搭載したリアクターの中に取り込んだ。これに、132.5gの2−クロロシクロヘキサノンを、1時間を超える期間添加して、100℃に加熱され、2時間攪拌した反応質量を取得した。発熱が見られ、2時間攪拌した後、反応質量を150から160℃までの範囲に収まる温度に更に加熱した。反応で発生した水を、(氷水循環装置を搭載した)コンデンサーの頂部から真空装置を適用することによって除去し、理論的水量がディーン・スターク装置のサイドアームの中に収集されるまで維持した。セメントを加えることによって、過剰なN−エチルアニリンを析出させた。HClと水による洗浄。取得された有機層を、酸を含まなくなるまで洗浄し、減圧した状態で濃縮して、178.2gのGC純度98.4%の粘性液体(収量89%)を得た。質量分光スペクトルが分子イオンピーク(199)とマッチする。
【0044】
N−エチルアニリンが塩基性化、抽出および蒸留によって塩化水素酸塩水溶液から再生成される。受け取ったN−エチルアニリンの量は113.2gmであった。
【0045】
比較例:
132.5gの2−クロロ−シクロヘキサノンを、123.42gのN−エチルアニリン、500mlのメチルセロソルブ、127gのドライ炭酸ナトリウムおよび7.9gのピリジンに、30℃から400℃までの範囲に収まる温度で、1時間を超える時間をかけて添加した。反応質量を100℃に加熱し、2時間攪拌した。反応温度を更に130℃まで上げて、この温度に、水がもはや蒸発しなくなるまで保った。反応質量をワークアップさせて、96.3%のGC純度を持つ粗9−エチル−テトラヒドロカルバゾールを48.2g取得した。
【実施例3】
【0046】
266.2gのN−エチルアニリンを、200mlのo−キシレンと供にリアクターに装填した。これに、132.5gの2−クロロ−シクロヘキサノンを、2時間を超える期間に添加して、透明な溶液を取得し、その後、これを100℃に加熱して、水分を除去しながら2時間攪拌した。中身をマイルドな真空を適用することによって、水分を同時に除去しながら、150℃から160℃までの範囲に収まる温度に更に加熱した。反応質量を上記のようにウォークアップさせて、96.8%のGC純度を持つ粗9−エチル−テトラヒドロカルバゾールを136g取得した。
【実施例4】
【0047】
テトラヒドロカロバゾールの脱水素化[N−エチルカルバゾールの調合]
70gの9−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾール(98.6%)を35mlのo−キシレンと一緒にリアクターの中に装填した。1.4gの5% Pd−Carbon触媒を上記の質量に添加し、溶剤を一部蒸留し、10時間維持した後、中味を、窒素をゆっくり流しながら200℃に加熱した。反応の進捗を、様々な時間間隔でサンプルを除去することによって、ガス層クロマトグラフィーでチェックした。200℃に10時間保った後、テトラヒドロカルバゾールの99%変換が達成された。キシレンをもっと添加することによって、反応混合物を室温になるまで冷却した。反応質量を濾過して触媒を除去し、少量のo−キシレンで洗浄した。減圧状態の濃度上のキシレン層は67.8gの固体と98.6%のGC純度を付与した。濾過した触媒は、脱水素化の次のバッチに再利用される。
【0048】
N−エチルカルバゾールは、活性化された炭素を使って処理して、99.9%の収率を得た後、トルエンとヘキサンの混合物から結晶化された。元素分析とNMRスペクトルは、N−エチルカルバゾールの構造をサポートする。
【0049】
元素分析は以下の通りである:
C=86.215%;H=6.40%;N−7.067%(理論的C−86.22%;H=6.73%;N=7.18%)。
【実施例5】
【0050】
テトラヒドロカルバゾールの脱水素化中に行う触媒のリサイクル
70gの9−エチル−l,2,3,4−テトラヒドロカルバゾールを3.5gの上記バッチ(無水ベースで2wt%)および35mlのo−キシレンから取得した濾過済み湿触媒3.5gと一緒に装填した。中味を窒素をゆっくり流しながら加熱して、200℃の液温を達成し、この状態を15時間保持して、82%の9−エチルカルバゾールと17%のエチルテラヒドロカルバゾールのGC変換を取得した。更に、0.3gのフレッシュな5%−Pd−carbon(湿度50%)をこのステージで添加し、反応を200℃に6時間に維持して、99%の変換を得た。反応質量をその後濾過して触媒を除去し、濾過物を減圧状態で濃縮して、67.9gの98.4%GC純度の原生成物を得た。濾過した触媒を、新鮮な5% Pd−c触媒を加え、10%の初期触媒をロードすることによって、更に3回リサイクルして、より高い変換を達成した。
【0051】
技術の進歩
●本発明に基づき、金属触媒の面前で、N−エチルテトラヒドロカルバゾールを脱水素化することによって、N−エチルカルバゾールを調合するプロセスが提供される。使用した触媒は、更なる脱水素化ステップのため、分離して再利用することができる。
【0052】
●更に、本発明は、溶剤あるいは脱水素化剤を含まない2−クロロシクロヘキサノンおよびN−エチルアニリンから、高い収量と純度のN−エチルテトラヒドロカルバゾールを調合することに関する。
【0053】
●現プロセスには更に、高い収量のN−エチルカルバゾールを、急速に浄化されるか、次のステップのため使用することができるフォームで得るために行う、浄化することなく脱水素化するための粗N−テトラヒドロカルバゾールの使用が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a.シクロヘキサノンを塩素処理して2−クロロシクロヘキサノンを形成するステップ;
b.2−クロロシクロヘキサノンをN−エチルアニリンと反応させて、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノンを形成するステップ;
c.同時水分除去を使った還流によって、2−(N−エチルアニリノ)シクロヘキサノンを環化して、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを取得するステップ;
d.濃縮塩化水素酸で9−エチルテトラヒドロカルバゾールを処理した後、N−エチルアニリンを除去するため水洗いするステップ;
e.触媒が存在する溶剤の中で9−エチルテトラヒドロカルバゾールを加熱することによって、9−エチルテトラヒドロカルバゾールを脱水素化して、N−アルキルカルバゾールを取得するステップ
を含むことを特徴とする、N−アルキルカルバゾールを調合するプロセス。
【請求項2】
N−アルキルカルバゾールを洗浄した後、触媒を除去するため濾過する方法やステップを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
触媒が再使用可能であることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
触媒が炭素上のパラジウム、ラネーニッケルおよびプラチナからなるグループの中から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
触媒が炭素上のパラジウムであることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
使用された触媒の濃度が約5%から30%までの範囲に収まることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
使用した触媒の割合が、9−エチル−テトラヒドロカルバゾールの質量の約1%から10%までの範囲に収まることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
使用した触媒の割合が、9−エチル−テトラヒドロカルバゾールの質量の約5%であることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
脱水素化が約160℃から250℃までの範囲に収まる温度で実行されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
脱水素化が約200℃の温度で実行されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
溶剤がo−キシレン、ジフェニルエーテル、1,2,4−トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シクロヘキシルプロピオナートおよび1,2,4,5テトラメチルベンゼンからなるグループの中から選んだ少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
反応が約8時間から22時間までの範囲に収まる期間実行されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
テトラヒドロ−カルバゾールのN−アルキルカルバゾールへの変換が98%より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
N−アルキルカルバゾールがN−エチルカルバゾールであることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−502454(P2013−502454A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526185(P2012−526185)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000394
【国際公開番号】WO2011/024186
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(511300949)
【Fターム(参考)】