NOxセンサ技術のためのNOx吸着膜
2から20nmに及ぶ平均細孔径、pH7超の等電点により定義された基本表面特徴、および50m2/g超の比表面積を有するメソ多孔質遷移金属酸化物をNOx膜としてNOx検出装置に組み込むことができる。このメソ多孔質遷移金属酸化物は、イットリウム、ランタンおよび/またはセリウムの酸化物を含み、界面活性剤鋳型自己組織化プロセスを使用して形成できる。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、「NOxセンサ技術のためのNOx吸着膜」と題する2009年2月26日に出願された米国特許出願第12/393821号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、低コストの質量感受性NOxセンサに使用するのに適した材料、およびそのような材料を製造する方法に関する。本発明は、例えば、移動型ディーゼルエンジンおよびリーンバーンガソリンエンジンに使用できる、そのような材料が組み込まれたNOxセンサにも関する。
【背景技術】
【0003】
法律規格により、移動型ディーゼルエンジンおよびリーンバーンガソリンエンジンを使用した車両からの許容されるNOx放出レベルの規制が強化されている。より厳しい規格を考慮して、例えば、オンボード診断を使用して、遵守のために放出物質をモニタし、制御することが都合よいであろう。実際に、提案されたオンボード診断(OBD)規制は、自動車製造業者がリアルタイムのNOxモニタを備えた車両を製造することを要求し、これにより、改善されたエンジン性能、減少した放出物質、および相当な費用節約がもたらされるであろう。性能を最適化し、放出物質を減少させるための手法の1つは、リアルタイムのNOおよびNO2測定に基いて正確にアンモニアを添加することである。しかしながら、NOxセンサの様々な用途では、感度、検出速度、および耐久性に関する様々な要件のために、エンジンの製造業者とセンサのOEM企業に難題が提示される。
【0004】
市販のNOxセンサが公知である。典型的に市販システムにおいて、動作の原理は、NOおよびNO2を酸素に転化し、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)膜などの酸素膜を通じた浸透により酸素含有量の変化を検出する各工程を含む。しかしながら、従来の市販システムは、比較的大型で、高価であり、耐久性、特に低ppmレベルでの、感受性、および選択性(例えば、NOxとNH3とを区別する能力)に関する欠点を示す傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したことに鑑みて、従来のシステムおよび材料よりも、耐久性、感受性および選択性が改善されたNOx検出材料を含む、低コストのNOxセンサプラットホームを開発することが都合よいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこれらと他の態様および利点は、基本表面特徴および高表面積を有するメソ多孔質遷移金属酸化物NOx検出材料を使用して達成できる。このメソ多孔質遷移金属酸化物は、酸化イットリウム、酸化ランタンおよび酸化セリウムの内の1種類以上を含み、界面活性剤鋳型自己組織化(surfactant-templated self-assembly)プロセスを使用して調製できる。
【0007】
本発明の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、ここに記載された本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0008】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本発明の実施の形態を提示し、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されている。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本発明の様々な実施の形態を示しており、説明と共に、本発明の原理および動作を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】高温ガス検出のためのBAWセンサ固定具の基本アセンブリを示す斜視図
【図2】BAWセンサヘッド設計の説明図
【図3】酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質粉末の広角X線回折走査を示すグラフ
【図4】酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質粉末の小角X線回折走査を示すグラフ
【図5】La2O3被覆石英センサの周波数応答を示すグラフ
【図6】200,250,および300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図7】300℃でのCeO2被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図8】300℃でのY2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図9】300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図10】250℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図11】300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図12】350℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図13】400℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図14】300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図15】300℃でのLa2O3被覆ランガサイトセンサの周波数応答を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、広く、基本表面特徴、高表面積、および良好な熱水耐久性を有するメソ多孔質遷移金属酸化物を含むNOx検出材料に関する。この遷移金属酸化物は、酸化イットリウム、酸化ランタンおよび/または酸化セリウムを含み得る。
【0011】
ある実施の形態によれば、このメソ多孔質遷移金属酸化物は、2から20nmに及ぶ平均細孔径、pH7超の等電点により定義された基本表面特徴、および50m2/g超の比表面積を有する。さらに別の実施の形態によれば、メソ多孔質材料は、界面活性剤鋳型自己組織化プロセスを使用して形成される。さらにまた別の実施の形態において、NOxセンサは、メソ多孔質遷移金属酸化物膜を備えている。
【0012】
ここに用いたように、単数形は、文脈上他の意味で明白に示されていない限り、複数の対象物を含む。それゆえ、例えば、「遷移金属酸化物」への言及は、文脈上他の意味で明白に示されていない限り、そのような「遷移金属酸化物」を2種類以上を有する例を含む。
【0013】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと、ここに表すことができる。そのような範囲が表現されたときに、例は、そのある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行詞を使用して、値が近似として表されているときに、その特定の値は別の態様を形成すると理解されよう。範囲の各々の端点は、他の端点に関して、および他の端点とは独立して、両方において有意であることが理解されよう。
【0014】
明白に別記しない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを要求するものと決して考えられない。したがって、方法の請求項が、その工程が従う順序を実際に列挙していない場合、またはそうでなければ、特許請求の範囲または説明に、工程が特定の順序に制限されるべきであると具体的に述べられていない場合、どのような特定の順序も決して推測されるものではない。
【0015】
NOxの数多くの吸着材料の候補は、等電点に基づいて特定した。等電点は、固体表面が中性電荷を担持するpHである。等電点が大きいほど、その材料の表面はより塩基性である。多数の酸化物材料およびそれらの関連する等電点が表1に列記されている。
【表1】
【0016】
基本的な表面の化学的性質に加え、適切なNOx検出材料は、この材料が、エンジン排気ガスに関連する高温、熱水、化学的に攻撃的な環境に耐えるのを助ける性質である、適切な耐火性、熱水老化(例えば、スケール生成)を避ける能力、および還元/酸化摩耗に対する耐性を有するべきである。
【0017】
Y2O3、La2O3およびCeO2などの数多くの遷移金属酸化物を、その等電点および良好な熱水安定性に基づいて選択した。これらの材料は、表面の化学的性質が弱塩基(CeO2)から強塩基(La2O3)までに及ぶので、興味深い候補である。
【0018】
以下の材料の特性は、組合せで、本発明のNOx検出材料にとって都合よい:(1)酸性の窒素酸化物を引き付けることができる、pH7超の等電点により定義される基本表面特徴;(2)音波(AW)または微小電気機械システム(MEMS)カンチレバー検出プラットホームを可能にするのに十分なダイナミックレンジを与える、50m2/g超の比表面積;および(3)利用できる表面積との迅速な気相接触を与える、メソ多孔質細孔構造体。
【0019】
それゆえ、本発明によるNOx検出材料は、基本表面特徴、高比表面積、および良好な熱水耐久性を有するメソ多孔質遷移金属酸化物を含む。実施の形態において、NOx吸着材料は、pH7、7.5、8、8.5、9、9.5または10超の等電点、50、75、100、150、200、250または300m2/g超の比表面積、および2、4、8または16nm超の平均細孔径を有し得る。本発明の材料は、0.1から1マイクロメートルの範囲の厚さを有する膜に形成されたときに、2から20nmの範囲の平均細孔径、7から10の範囲の等電点、および50から300m2/gの比表面積を有する。以下に記載するように、界面活性剤鋳型自己組織化プロセスを用いて、これらのメソ多孔質材料を製造することができる。
【0020】
本発明のNOx検出材料は、例えば、設計された表面上のNOおよびNO2の特異的吸着の原理について動作するNOxセンサに組み込むことができる。一旦吸着されたら、質量感受性検出は、NOおよびNO2濃度データを提供できる。NOxセンサの態様としては以下が挙げられる:(1)NOおよびNO2を特異的に吸着するのに適しており、他のガス、特に二酸化炭素および水の存在により影響を受けない材料;(2)検出可能な吸着質量の増幅を可能にする高比表面積を有する安定な薄膜センサ材料;(3)NOxが表面に強力に結合しており、その差が瞬時ガス濃度に比例している累積モード、または活性表面がNOxに弱く結合しており、瞬時表面被覆率が気相中のNOxに比例している平衡モード、いずれかでの動作;および(4)活性表面に対するNOxの急速付着を促進し、NOとNO2との間の選択性を改善するための触媒(例えば、高分散Pt)の随意的な使用。触媒は、白金に加え、またはその代わりに、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウムまたは金などの貴金属を含む他の金属の粒子を含んで差し支えない。
【0021】
圧電材料の振動数の変化を、周波数の変化:
【数1】
【0022】
に従うソルベリーの式に関して、その上に堆積された材料の質量と相関させることができ、ここで、f0=圧電材料の共振周波数(Hz)、Δm=質量変化(g)、A=圧電活性結晶面積(電極間の面積、m2)、ρq=圧電物質の密度(g/cm3)、μq=圧電物質の剪断弾性係数(g/cm・s2)、およびνq=圧電物質の横波速度(m/s)。ATカット型石英結晶について、密度は、ρq=2.648g/cm3であり、剪断弾性係数μq=2.947×1011g/cm・s2である。
【0023】
一例として、NOxとの強力な化学収着相互作用を利用するNOxセンサを、質量変化の時間速度が気相中のNOx含有量に関連付けられる累積モードで動作させることができる。そのような装置は、検出表面の再生が必要になる前に、ほぼ飽和するまで使用することができ、排ガスの少ない公知の流量がセンサ材料に影響を与えるであろうバイパスモードで動作するのに最もうまく適するようである。流量を最小にし、センサのサイズを最大にすると、再生間の時間が延びるであろう。
【0024】
さらに別の例として、NOxとの結合相互作用が弱いNOxセンサを平衡モードで動作させることができる。結合強度が低いと、再生がより容易になる。また、反応速度が速い場合、結合エネルギーが温度(kT)に類似している範囲で、平衡表面被覆率は、気相濃度と比例する。そのようなセンサは、全ての排気環境において連続動作できるであろう。しかしながら、検出表面の被覆率は温度依存性であるので、ガスの等温状態調節、またはアルゴリズム補正のいずれかの対策が有益であろう。
【0025】
本発明によるメソ多孔質遷移金属酸化物は、例えば、高容量弱NOxトラップにおいて機能できる。それゆえ、質量感受性検出システムと共に、この酸化物はNOxセンサとして有用であり得る。例えば、音波(AW)検出システムを使用して、NOxの吸着から生じる膜における小さな質量変化を検出することができる。この目的のために、AW検出プラットホームのいくつかの構成を利用して差し支えない。例えば、堆積した膜のナノグラム未満の量を測定するために、薄膜堆積システムにおいて、石英結晶微量天秤などの厚み剪断モード(TSM)共振器を使用できる。この動作原理は、圧電結晶を刺激し、誘発された振動の共振周波数を見つける各工程を含む。共振周波数は結晶の有効質量に関連しているので、質量変化は、共振周波数の変化から計算できる。
【0026】
石英は、比較的低温(573℃)で相転移する。それゆえ、約973℃まで安定であるオルトリン酸ガリウム(GaPO4)、またはランタン、ガリウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物(ランガサイト)、およびランタン、ガリウム、タンタルおよび酸素からなる複合酸化物(ランガテイト)の族からの材料などの、高温安定性を有する他の圧電材料がNOx検出にとって好ましいであろう。例えば、La3Ga5SiO14は、約1470℃の融点まで安定である。
【0027】
他の検出システムも敏感な質量検出を提供できる。圧電性基板の表面上のリソグラフィーによりパターン化された電極によって、表面音波が励起され、検出される。音波検出システムは、例えば、表面音波(SAW)、バルク音波(BAW)または音響プレートモード(APM)センサを備えて差し支えない。質量検出は、電極間に配置された検出薄膜上の表面摂動により生じる表面波速度または減衰の変化を測定することによって、行うことができる。MEMSカンチレバーも、カンチレバーの質量変化に基づいて、共振応答および/またはたわみ応答を示すことができる。
【0028】
高温ガス検出のための試験プラットホームは、バルク音波(BAW)検出に基づき、高温センサヘッドおよびStanford ResearchからのQCM200ユニットを備えた。図1は、高温ガス検出のためのBAWセンサ固定具の基本アセンブリを示している。図2は、センサヘッドに被覆BAW装置を容易に取り付けるための、熱電対210、石英結晶センサ220、およびフランジ230を備えたセンサヘッド設計を示している。
【0029】
先の検出技術は、低コスト、高表面積のメソ多孔質材料により与えられる高ダイナミックレンジのために、潜在的に極めて費用効果的である。特に、共振周波数装置の適切なダイナミックレンジは、10mm2ほど小さな活性面積によって与えられる。そのようなフットプリントについて、多重チャンネルアレイでさえ空間効果的であろう。さらに、NOおよびNO2を独立して測定することも可能であろう。このことは、エンジン診断を提供する上で価値があるであろう。
【0030】
減少したフットプリントは、上述したように、向上した感受性および選択性と共に望ましいので、高有効表面積を有する検出層も望ましい。以下の計算は、本発明によるメソ多孔質遷移金属酸化物を使用して達成できる表面積および結果として得られるNOx装填を示す。
【0031】
最初に、1cm2の面積および300nm厚の膜厚を有するセンサを考える。nm2当たり5つのNOx部位の表面容量とすると、緻密な酸化物膜上の完全な表面被覆は、(5NO2/nm2)(1014nm2/cm2)(モル/6.02×1023原子)(46g/モル)≒4×10-8gNO2/cm2の質量増加となるであろう。
【0032】
次に、100m2/gの比表面積および50%の気孔率を有する同様の1cm2の膜を考える。この膜は、(300×10-7cm3)(7g/cm3)(100m2/g)(0.50)=1.05×1018nm2の増加した表面積を与え、完全な単層被覆で、(5NO2/nm2)(1.05×1018nm2/cm2)(モル/6.02×1023原子)(46g/モル)≒4×10-4gNO2/cm2の総質量増加を装填できるであろう。
【0033】
メソ多孔質膜によって与えられた増加した容量は、装置の質量感度を増幅する可能性を際立たせ、これは非常に小さなセンサ面積からの有意な測定を促進するであろう。
【0034】
本発明によれば、メソ多孔質遷移金属酸化物は、遷移金属酸化物前駆体、非イオン性界面活性剤および溶媒を含む水性前駆体混合物を形成し、この前駆体混合物を乾燥させ、架橋させて、中間生成物を形成し、この架橋済み中間体を加熱して、酸化物を形成することによって、調製できる。
【0035】
前駆体混合物を調製した後、界面活性剤は、硬化(加熱)工程中に自己組織化して、酸化物前駆体の鋳型を形成する。これは、界面活性剤の加熱と除去の際に、メソ規模の気孔率の領域を含む遷移金属酸化物センサ材料を形成するメソ規模の液体結晶相を画成する。
【0036】
例示の遷移金属酸化物前駆体としては、以下に限られないが、金属アルコキシド、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アセチルアセトネート、またはハロゲン化金属を含む、イットリウム、ランタンおよびセリウムの遷移金属化合物が挙げられる。
【0037】
有用な界面活性剤としては、BASF, Inc.から得られる臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)およびポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEOy−PPOx−PEOy)トリブロックコポリマーが挙げられる。特に、CTAB、Pluronic(登録商標)F127(x=106、y=70)および「Pluronic」P123(x=20、y=70)を、開示した本発明の方法に使用した。以下の非イオン性界面活性剤としては、「Pluronic」F103(x=17、y=60)、「Pluronic」F108(x=127、y=50)、「Pluronic」F88(x=104、y=39)および「Pluronic」F65(x=19、y=29)が挙げられる。前駆体混合物は、1種類以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0038】
界面活性剤は、遷移金属酸化物前駆体のための一時的な除去可能な有機鋳型として機能する。界面活性剤に対する遷移金属酸化物前駆体の比、および前駆体混合物中に含まれる溶媒の量を使用して、液体結晶相による界面活性剤の自己組織化、および次には、結果として生じる遷移金属酸化物の構造および性質を操作することができる。詳しくは、前駆体混合物の化学的性質を使用して、例えば、細孔容積および細孔直径を制御することができる。
【0039】
遷移金属酸化物前駆体の加水分解を開始するために、前駆体混合物に1種類以上の酸を加えてもよい。水は、その酸の希釈剤として、または加水分解反応の生成物として、前駆体混合物に間接的に加えてもよい。
【0040】
PEOy−PPOx−PEOyトリブロックコポリマーを含む前駆体混合物において、水が含まれる場合、水は、PEOブロックと反応し、遷移金属酸化物前駆体を含有する相を膨潤させることによって、界面活性剤鋳型の自己組織化に影響を与え得る。前駆体混合物中の水の濃度を使用して、架橋済み材料および後熱処理済み生成物の両方におけるメソ多孔質通路の組織化を制御しても差し支えない。
【実施例】
【0041】
本発明を、以下の実施例によりさらに明白にする。
【0042】
実施例1
酢酸セシウム(3.2g)を、エタノール(30g)、氷酢酸(2.4g)、濃HCl(2ml)、および「Pluronic」F127(1.6g)の混合物中に溶解させた。この溶液を室温で1時間に亘り撹拌した。この溶液を石英結晶基板上にスピンコートすることによって薄膜サンプルを作製し、溶媒を40℃で一晩蒸発させることによって粉末サンプルを作製した。これら薄膜および粉末サンプルを、5時間に亘り350℃でか焼する前に、5日間に亘り65℃で加熱することによって硬化させた。
【0043】
350℃でのか焼後の酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質粉末の広角X線回折(XRD)が図3に示されており、350℃でのか焼後の酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質薄膜の小角XRDが図4に示されている。このXRDデータにより、この組成物は、約12nmのd間隔を有するメソ多孔質構造を有するCeO2であることが確認される。窒素ポロシメトリーにより、約100m2/gの比表面積および約50から60体積%の細孔容積が示される。
【0044】
実施例2
LaCl3・7H2O(0.01モル、3.7g)を1gの「Pluronic」P123と共に、10mlのエタノール中に溶解させた。この溶液を30分間に亘り撹拌した後、石英結晶基板上のスピンコートにより膜を形成し、溶媒を40℃で一晩蒸発させることによって粉末を形成した。これら薄膜および粉末サンプルを、5時間に亘り400℃でか焼する前に、5日間に亘り65℃で加熱することによって硬化させて、高表面積の酸化ランタンを形成した。
【0045】
粉末サンプルは、53m2/gの比表面積および約50%の細孔容積を有した。実施例1および2からのか焼済み粉末サンプルに関する比表面積、細孔容積および細孔径の要約が表2に示されている。
【表2】
【0046】
実施例3
3.2gの酢酸ランタン、0.55gのP123、30mlのエタノール、2.4gの氷酢酸、および1mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で2時間に亘りねかせた。この溶液を石英基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、6時間に亘り65℃で蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0047】
図5は、200℃の一定温度での連続したオン・オフNO2曝露に対するLa2O3被覆石英センサの周波数応答を示している。以下の周波数対時間のプロットにおいて、被覆基板を、プログラム可能な炉内に配置されている石英管(内径約1インチ(約2.5cm)、長さ24インチ(約60cm))内に配置した。この管を通るガスの流れは、図面を参照して、図示された「サイクル」バーの最初の50%がNO2の「オン」時間を表すのに対し、その「サイクル」バーの次の50%がNO2「オフ」時間を表すように制御される。図面において、連続した「オン/オフ」サイクルは、C1、C2などと省略されている。
【0048】
図5に関して、NO2の流れがオンに切り換えられると(0.5l/分の総流量中で500ppm)、共振周波数は、La2O3膜によるNO2吸着のために減少する。NO2の吸着により、共振周波数を減少させる減衰効果が生じる。NO2の流れがオフに切り換えられると、周波数は、回復期間中に、ゆっくりと増加するか、または実質的に一定のままである。この回復は、NO2の流れの減少に単に関連し、NO2脱離を助ける「フラッシュ」ガスはないことに留意されたい。周波数応答の全体の負の勾配は、NO2の不完全な脱離と整合性を有している。
【0049】
実施例4
14.6mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.11gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、1時間に亘り20℃で、1時間に亘り30℃で、そして1時間に亘り60℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0050】
図6は、0.5l/分の総流量で500ppmのNO2の周期的なNO2流に対する200、250および300℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。200℃または250℃では、実質的に応答は観察されない。しかしながら、300℃の温度では、その結果は、各オン/オフサイクル中にNO2の吸着(不完全な脱離を伴う)を示した。
【0051】
GaPO4センサの感度は、単位面積当たりの質量変化に対する観察した周波数変化の比として、または差として、S=df/dρs=82.24Hz・cm2/mgとして表すことができる。周波数範囲について、Δf=20〜70Hz、吸着した質量は0.25〜0.9mg/cm2と推測される。
【0052】
実施例5(比較)
4.6gmlのセリウム2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中20質量%の溶液)、5mlのエタノール、7.5mlの2−メトキシエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む比較の前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。次いで、この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、1時間に亘り20℃で、1時間に亘り30℃で、そして1時間に亘り60℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化セリウム膜を形成した。この比較の前駆体溶液は、界面活性剤を含んでいない。
【0053】
図7は、0.5l/分の総流量で500ppmのNO2(サイクル1〜5)および1000ppmのNO2(サイクル6〜8)の周期的なNO2流に対する300℃でのCeO2被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。その結果は、かなり急速な(1分未満)NO2吸着を示したが、3回目のサイクル後には、周波数応答は次第に不規則になる。最初の3回のサイクルでは、周波数応答はたった約5Hzである。
【0054】
実施例6(比較)
12.6mlのイットリウム2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、5mlのエタノール、および0.016mlの硝酸を含む比較の前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。次いで、この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、1時間に亘り20℃で、1時間に亘り30℃で、そして1時間に亘り60℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化イットリウム膜を形成した。この比較の前駆体溶液は、界面活性剤を含んでいない。
【0055】
図8は、300℃でのY2O3被覆GaPO4結晶の周波数対時間のプロットを示している。周期的なNO2流に対する測定可能な応答はない。
【0056】
実施例7
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.135gのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。次いで、この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0057】
図9は、500ppmのNO2(0.5l/分の総流量)の周期的なNO2流に対する300℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。周波数応答は、最初の4回のサイクルについて再現可能であり(Δf≒10〜20Hz)、約50%の周期間回復を示し、これは、不可逆的な吸着との整合性を有する。
【0058】
実施例8
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.15gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0059】
図10〜13は、それぞれ、250、300、350および400℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周期的なNO2流に対する周波数応答を示している。図面のこの順序において、1つのサンプルを最初に300℃(図11)で試験し、次いで、350、400および250℃で試験した。300℃で、周波数応答(Δf≒10Hz)は、少なくとも6回のサイクルについて再現可能であり、サイクル3と5の間ではほぼ100%回復した。サイクル1〜5については、500ppmのNO2(0.5l/分の総流量)の周期的なNO2流を使用したのに対し、サイクル6では、NO2流を1000ppmに増加させた。
【0060】
350および400℃(図12および図13)では、周期的なNO2流に対する著しい応答はない。400℃のデータ(図13)における1つの急上昇は、測定の人為的な影響である。250℃(図10)では、比較的強力な吸着(Δf≒20〜40Hz)があるが、脱離は弱い。
【0061】
実施例9
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.5gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0062】
図14は、0.5l/分の総流量での500ppmのNO2(サイクル1および2)および1000ppmのNO2(サイクル3および4)の周期的なNO2流に対する320℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。周波数応答は比較的強力であり(サイクル1および2については、≒50Hzであり、サイクル3および4については、≒75Hz)、サイクル間の回復は約50%である。
【0063】
実施例10
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.5gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をランガサイト基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0064】
図15は、0.5l/分の総流量での500ppmのNO2(サイクル1および2)および1000ppmのNO2(サイクル3および4)の周期的なNO2流に対する300℃でのLa2O3被覆ランガサイト結晶の周波数応答を示している。ランガサイト基板上の周波数応答は、La2O3被覆GaPO4結晶(≒50〜75Hz)と比べて、強力であり(サイクル1および2については、≒1000Hzであり、サイクル3および4については、≒1500Hz)、最初のサイクル後に良好な再現性を示す。以前の実施例に関するように、ベースラインの下方へのシフトは、不完全な脱離のためである。サイクル間には、約50%の回復がある。
【0065】
実施例3〜10について、サンプル、その調製プロトコル、および対応する試験結果(周波数応答および公称回復%)の要約が表3に示されている。
【表3】
【0066】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の様々な改変および変更が行えることが当業者には明らかであろう。本発明の精神および実体を含む開示された実施の形態の改変、組合せ、副組合せおよび変種が当業者に想起されるであろうから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に全てを含むと考えられるべきである。
【符号の説明】
【0067】
210 熱電対
220 石英結晶センサ
230 フランジ
【優先権】
【0001】
本出願は、「NOxセンサ技術のためのNOx吸着膜」と題する2009年2月26日に出願された米国特許出願第12/393821号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、低コストの質量感受性NOxセンサに使用するのに適した材料、およびそのような材料を製造する方法に関する。本発明は、例えば、移動型ディーゼルエンジンおよびリーンバーンガソリンエンジンに使用できる、そのような材料が組み込まれたNOxセンサにも関する。
【背景技術】
【0003】
法律規格により、移動型ディーゼルエンジンおよびリーンバーンガソリンエンジンを使用した車両からの許容されるNOx放出レベルの規制が強化されている。より厳しい規格を考慮して、例えば、オンボード診断を使用して、遵守のために放出物質をモニタし、制御することが都合よいであろう。実際に、提案されたオンボード診断(OBD)規制は、自動車製造業者がリアルタイムのNOxモニタを備えた車両を製造することを要求し、これにより、改善されたエンジン性能、減少した放出物質、および相当な費用節約がもたらされるであろう。性能を最適化し、放出物質を減少させるための手法の1つは、リアルタイムのNOおよびNO2測定に基いて正確にアンモニアを添加することである。しかしながら、NOxセンサの様々な用途では、感度、検出速度、および耐久性に関する様々な要件のために、エンジンの製造業者とセンサのOEM企業に難題が提示される。
【0004】
市販のNOxセンサが公知である。典型的に市販システムにおいて、動作の原理は、NOおよびNO2を酸素に転化し、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)膜などの酸素膜を通じた浸透により酸素含有量の変化を検出する各工程を含む。しかしながら、従来の市販システムは、比較的大型で、高価であり、耐久性、特に低ppmレベルでの、感受性、および選択性(例えば、NOxとNH3とを区別する能力)に関する欠点を示す傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したことに鑑みて、従来のシステムおよび材料よりも、耐久性、感受性および選択性が改善されたNOx検出材料を含む、低コストのNOxセンサプラットホームを開発することが都合よいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこれらと他の態様および利点は、基本表面特徴および高表面積を有するメソ多孔質遷移金属酸化物NOx検出材料を使用して達成できる。このメソ多孔質遷移金属酸化物は、酸化イットリウム、酸化ランタンおよび酸化セリウムの内の1種類以上を含み、界面活性剤鋳型自己組織化(surfactant-templated self-assembly)プロセスを使用して調製できる。
【0007】
本発明の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、ここに記載された本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0008】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本発明の実施の形態を提示し、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されている。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本発明の様々な実施の形態を示しており、説明と共に、本発明の原理および動作を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】高温ガス検出のためのBAWセンサ固定具の基本アセンブリを示す斜視図
【図2】BAWセンサヘッド設計の説明図
【図3】酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質粉末の広角X線回折走査を示すグラフ
【図4】酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質粉末の小角X線回折走査を示すグラフ
【図5】La2O3被覆石英センサの周波数応答を示すグラフ
【図6】200,250,および300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図7】300℃でのCeO2被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図8】300℃でのY2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図9】300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図10】250℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図11】300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図12】350℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図13】400℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図14】300℃でのLa2O3被覆GaPO4センサの周波数応答を示すグラフ
【図15】300℃でのLa2O3被覆ランガサイトセンサの周波数応答を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、広く、基本表面特徴、高表面積、および良好な熱水耐久性を有するメソ多孔質遷移金属酸化物を含むNOx検出材料に関する。この遷移金属酸化物は、酸化イットリウム、酸化ランタンおよび/または酸化セリウムを含み得る。
【0011】
ある実施の形態によれば、このメソ多孔質遷移金属酸化物は、2から20nmに及ぶ平均細孔径、pH7超の等電点により定義された基本表面特徴、および50m2/g超の比表面積を有する。さらに別の実施の形態によれば、メソ多孔質材料は、界面活性剤鋳型自己組織化プロセスを使用して形成される。さらにまた別の実施の形態において、NOxセンサは、メソ多孔質遷移金属酸化物膜を備えている。
【0012】
ここに用いたように、単数形は、文脈上他の意味で明白に示されていない限り、複数の対象物を含む。それゆえ、例えば、「遷移金属酸化物」への言及は、文脈上他の意味で明白に示されていない限り、そのような「遷移金属酸化物」を2種類以上を有する例を含む。
【0013】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと、ここに表すことができる。そのような範囲が表現されたときに、例は、そのある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行詞を使用して、値が近似として表されているときに、その特定の値は別の態様を形成すると理解されよう。範囲の各々の端点は、他の端点に関して、および他の端点とは独立して、両方において有意であることが理解されよう。
【0014】
明白に別記しない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを要求するものと決して考えられない。したがって、方法の請求項が、その工程が従う順序を実際に列挙していない場合、またはそうでなければ、特許請求の範囲または説明に、工程が特定の順序に制限されるべきであると具体的に述べられていない場合、どのような特定の順序も決して推測されるものではない。
【0015】
NOxの数多くの吸着材料の候補は、等電点に基づいて特定した。等電点は、固体表面が中性電荷を担持するpHである。等電点が大きいほど、その材料の表面はより塩基性である。多数の酸化物材料およびそれらの関連する等電点が表1に列記されている。
【表1】
【0016】
基本的な表面の化学的性質に加え、適切なNOx検出材料は、この材料が、エンジン排気ガスに関連する高温、熱水、化学的に攻撃的な環境に耐えるのを助ける性質である、適切な耐火性、熱水老化(例えば、スケール生成)を避ける能力、および還元/酸化摩耗に対する耐性を有するべきである。
【0017】
Y2O3、La2O3およびCeO2などの数多くの遷移金属酸化物を、その等電点および良好な熱水安定性に基づいて選択した。これらの材料は、表面の化学的性質が弱塩基(CeO2)から強塩基(La2O3)までに及ぶので、興味深い候補である。
【0018】
以下の材料の特性は、組合せで、本発明のNOx検出材料にとって都合よい:(1)酸性の窒素酸化物を引き付けることができる、pH7超の等電点により定義される基本表面特徴;(2)音波(AW)または微小電気機械システム(MEMS)カンチレバー検出プラットホームを可能にするのに十分なダイナミックレンジを与える、50m2/g超の比表面積;および(3)利用できる表面積との迅速な気相接触を与える、メソ多孔質細孔構造体。
【0019】
それゆえ、本発明によるNOx検出材料は、基本表面特徴、高比表面積、および良好な熱水耐久性を有するメソ多孔質遷移金属酸化物を含む。実施の形態において、NOx吸着材料は、pH7、7.5、8、8.5、9、9.5または10超の等電点、50、75、100、150、200、250または300m2/g超の比表面積、および2、4、8または16nm超の平均細孔径を有し得る。本発明の材料は、0.1から1マイクロメートルの範囲の厚さを有する膜に形成されたときに、2から20nmの範囲の平均細孔径、7から10の範囲の等電点、および50から300m2/gの比表面積を有する。以下に記載するように、界面活性剤鋳型自己組織化プロセスを用いて、これらのメソ多孔質材料を製造することができる。
【0020】
本発明のNOx検出材料は、例えば、設計された表面上のNOおよびNO2の特異的吸着の原理について動作するNOxセンサに組み込むことができる。一旦吸着されたら、質量感受性検出は、NOおよびNO2濃度データを提供できる。NOxセンサの態様としては以下が挙げられる:(1)NOおよびNO2を特異的に吸着するのに適しており、他のガス、特に二酸化炭素および水の存在により影響を受けない材料;(2)検出可能な吸着質量の増幅を可能にする高比表面積を有する安定な薄膜センサ材料;(3)NOxが表面に強力に結合しており、その差が瞬時ガス濃度に比例している累積モード、または活性表面がNOxに弱く結合しており、瞬時表面被覆率が気相中のNOxに比例している平衡モード、いずれかでの動作;および(4)活性表面に対するNOxの急速付着を促進し、NOとNO2との間の選択性を改善するための触媒(例えば、高分散Pt)の随意的な使用。触媒は、白金に加え、またはその代わりに、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウムまたは金などの貴金属を含む他の金属の粒子を含んで差し支えない。
【0021】
圧電材料の振動数の変化を、周波数の変化:
【数1】
【0022】
に従うソルベリーの式に関して、その上に堆積された材料の質量と相関させることができ、ここで、f0=圧電材料の共振周波数(Hz)、Δm=質量変化(g)、A=圧電活性結晶面積(電極間の面積、m2)、ρq=圧電物質の密度(g/cm3)、μq=圧電物質の剪断弾性係数(g/cm・s2)、およびνq=圧電物質の横波速度(m/s)。ATカット型石英結晶について、密度は、ρq=2.648g/cm3であり、剪断弾性係数μq=2.947×1011g/cm・s2である。
【0023】
一例として、NOxとの強力な化学収着相互作用を利用するNOxセンサを、質量変化の時間速度が気相中のNOx含有量に関連付けられる累積モードで動作させることができる。そのような装置は、検出表面の再生が必要になる前に、ほぼ飽和するまで使用することができ、排ガスの少ない公知の流量がセンサ材料に影響を与えるであろうバイパスモードで動作するのに最もうまく適するようである。流量を最小にし、センサのサイズを最大にすると、再生間の時間が延びるであろう。
【0024】
さらに別の例として、NOxとの結合相互作用が弱いNOxセンサを平衡モードで動作させることができる。結合強度が低いと、再生がより容易になる。また、反応速度が速い場合、結合エネルギーが温度(kT)に類似している範囲で、平衡表面被覆率は、気相濃度と比例する。そのようなセンサは、全ての排気環境において連続動作できるであろう。しかしながら、検出表面の被覆率は温度依存性であるので、ガスの等温状態調節、またはアルゴリズム補正のいずれかの対策が有益であろう。
【0025】
本発明によるメソ多孔質遷移金属酸化物は、例えば、高容量弱NOxトラップにおいて機能できる。それゆえ、質量感受性検出システムと共に、この酸化物はNOxセンサとして有用であり得る。例えば、音波(AW)検出システムを使用して、NOxの吸着から生じる膜における小さな質量変化を検出することができる。この目的のために、AW検出プラットホームのいくつかの構成を利用して差し支えない。例えば、堆積した膜のナノグラム未満の量を測定するために、薄膜堆積システムにおいて、石英結晶微量天秤などの厚み剪断モード(TSM)共振器を使用できる。この動作原理は、圧電結晶を刺激し、誘発された振動の共振周波数を見つける各工程を含む。共振周波数は結晶の有効質量に関連しているので、質量変化は、共振周波数の変化から計算できる。
【0026】
石英は、比較的低温(573℃)で相転移する。それゆえ、約973℃まで安定であるオルトリン酸ガリウム(GaPO4)、またはランタン、ガリウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物(ランガサイト)、およびランタン、ガリウム、タンタルおよび酸素からなる複合酸化物(ランガテイト)の族からの材料などの、高温安定性を有する他の圧電材料がNOx検出にとって好ましいであろう。例えば、La3Ga5SiO14は、約1470℃の融点まで安定である。
【0027】
他の検出システムも敏感な質量検出を提供できる。圧電性基板の表面上のリソグラフィーによりパターン化された電極によって、表面音波が励起され、検出される。音波検出システムは、例えば、表面音波(SAW)、バルク音波(BAW)または音響プレートモード(APM)センサを備えて差し支えない。質量検出は、電極間に配置された検出薄膜上の表面摂動により生じる表面波速度または減衰の変化を測定することによって、行うことができる。MEMSカンチレバーも、カンチレバーの質量変化に基づいて、共振応答および/またはたわみ応答を示すことができる。
【0028】
高温ガス検出のための試験プラットホームは、バルク音波(BAW)検出に基づき、高温センサヘッドおよびStanford ResearchからのQCM200ユニットを備えた。図1は、高温ガス検出のためのBAWセンサ固定具の基本アセンブリを示している。図2は、センサヘッドに被覆BAW装置を容易に取り付けるための、熱電対210、石英結晶センサ220、およびフランジ230を備えたセンサヘッド設計を示している。
【0029】
先の検出技術は、低コスト、高表面積のメソ多孔質材料により与えられる高ダイナミックレンジのために、潜在的に極めて費用効果的である。特に、共振周波数装置の適切なダイナミックレンジは、10mm2ほど小さな活性面積によって与えられる。そのようなフットプリントについて、多重チャンネルアレイでさえ空間効果的であろう。さらに、NOおよびNO2を独立して測定することも可能であろう。このことは、エンジン診断を提供する上で価値があるであろう。
【0030】
減少したフットプリントは、上述したように、向上した感受性および選択性と共に望ましいので、高有効表面積を有する検出層も望ましい。以下の計算は、本発明によるメソ多孔質遷移金属酸化物を使用して達成できる表面積および結果として得られるNOx装填を示す。
【0031】
最初に、1cm2の面積および300nm厚の膜厚を有するセンサを考える。nm2当たり5つのNOx部位の表面容量とすると、緻密な酸化物膜上の完全な表面被覆は、(5NO2/nm2)(1014nm2/cm2)(モル/6.02×1023原子)(46g/モル)≒4×10-8gNO2/cm2の質量増加となるであろう。
【0032】
次に、100m2/gの比表面積および50%の気孔率を有する同様の1cm2の膜を考える。この膜は、(300×10-7cm3)(7g/cm3)(100m2/g)(0.50)=1.05×1018nm2の増加した表面積を与え、完全な単層被覆で、(5NO2/nm2)(1.05×1018nm2/cm2)(モル/6.02×1023原子)(46g/モル)≒4×10-4gNO2/cm2の総質量増加を装填できるであろう。
【0033】
メソ多孔質膜によって与えられた増加した容量は、装置の質量感度を増幅する可能性を際立たせ、これは非常に小さなセンサ面積からの有意な測定を促進するであろう。
【0034】
本発明によれば、メソ多孔質遷移金属酸化物は、遷移金属酸化物前駆体、非イオン性界面活性剤および溶媒を含む水性前駆体混合物を形成し、この前駆体混合物を乾燥させ、架橋させて、中間生成物を形成し、この架橋済み中間体を加熱して、酸化物を形成することによって、調製できる。
【0035】
前駆体混合物を調製した後、界面活性剤は、硬化(加熱)工程中に自己組織化して、酸化物前駆体の鋳型を形成する。これは、界面活性剤の加熱と除去の際に、メソ規模の気孔率の領域を含む遷移金属酸化物センサ材料を形成するメソ規模の液体結晶相を画成する。
【0036】
例示の遷移金属酸化物前駆体としては、以下に限られないが、金属アルコキシド、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アセチルアセトネート、またはハロゲン化金属を含む、イットリウム、ランタンおよびセリウムの遷移金属化合物が挙げられる。
【0037】
有用な界面活性剤としては、BASF, Inc.から得られる臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)およびポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEOy−PPOx−PEOy)トリブロックコポリマーが挙げられる。特に、CTAB、Pluronic(登録商標)F127(x=106、y=70)および「Pluronic」P123(x=20、y=70)を、開示した本発明の方法に使用した。以下の非イオン性界面活性剤としては、「Pluronic」F103(x=17、y=60)、「Pluronic」F108(x=127、y=50)、「Pluronic」F88(x=104、y=39)および「Pluronic」F65(x=19、y=29)が挙げられる。前駆体混合物は、1種類以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0038】
界面活性剤は、遷移金属酸化物前駆体のための一時的な除去可能な有機鋳型として機能する。界面活性剤に対する遷移金属酸化物前駆体の比、および前駆体混合物中に含まれる溶媒の量を使用して、液体結晶相による界面活性剤の自己組織化、および次には、結果として生じる遷移金属酸化物の構造および性質を操作することができる。詳しくは、前駆体混合物の化学的性質を使用して、例えば、細孔容積および細孔直径を制御することができる。
【0039】
遷移金属酸化物前駆体の加水分解を開始するために、前駆体混合物に1種類以上の酸を加えてもよい。水は、その酸の希釈剤として、または加水分解反応の生成物として、前駆体混合物に間接的に加えてもよい。
【0040】
PEOy−PPOx−PEOyトリブロックコポリマーを含む前駆体混合物において、水が含まれる場合、水は、PEOブロックと反応し、遷移金属酸化物前駆体を含有する相を膨潤させることによって、界面活性剤鋳型の自己組織化に影響を与え得る。前駆体混合物中の水の濃度を使用して、架橋済み材料および後熱処理済み生成物の両方におけるメソ多孔質通路の組織化を制御しても差し支えない。
【実施例】
【0041】
本発明を、以下の実施例によりさらに明白にする。
【0042】
実施例1
酢酸セシウム(3.2g)を、エタノール(30g)、氷酢酸(2.4g)、濃HCl(2ml)、および「Pluronic」F127(1.6g)の混合物中に溶解させた。この溶液を室温で1時間に亘り撹拌した。この溶液を石英結晶基板上にスピンコートすることによって薄膜サンプルを作製し、溶媒を40℃で一晩蒸発させることによって粉末サンプルを作製した。これら薄膜および粉末サンプルを、5時間に亘り350℃でか焼する前に、5日間に亘り65℃で加熱することによって硬化させた。
【0043】
350℃でのか焼後の酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質粉末の広角X線回折(XRD)が図3に示されており、350℃でのか焼後の酢酸セリウム前駆体系メソ多孔質薄膜の小角XRDが図4に示されている。このXRDデータにより、この組成物は、約12nmのd間隔を有するメソ多孔質構造を有するCeO2であることが確認される。窒素ポロシメトリーにより、約100m2/gの比表面積および約50から60体積%の細孔容積が示される。
【0044】
実施例2
LaCl3・7H2O(0.01モル、3.7g)を1gの「Pluronic」P123と共に、10mlのエタノール中に溶解させた。この溶液を30分間に亘り撹拌した後、石英結晶基板上のスピンコートにより膜を形成し、溶媒を40℃で一晩蒸発させることによって粉末を形成した。これら薄膜および粉末サンプルを、5時間に亘り400℃でか焼する前に、5日間に亘り65℃で加熱することによって硬化させて、高表面積の酸化ランタンを形成した。
【0045】
粉末サンプルは、53m2/gの比表面積および約50%の細孔容積を有した。実施例1および2からのか焼済み粉末サンプルに関する比表面積、細孔容積および細孔径の要約が表2に示されている。
【表2】
【0046】
実施例3
3.2gの酢酸ランタン、0.55gのP123、30mlのエタノール、2.4gの氷酢酸、および1mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で2時間に亘りねかせた。この溶液を石英基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、6時間に亘り65℃で蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0047】
図5は、200℃の一定温度での連続したオン・オフNO2曝露に対するLa2O3被覆石英センサの周波数応答を示している。以下の周波数対時間のプロットにおいて、被覆基板を、プログラム可能な炉内に配置されている石英管(内径約1インチ(約2.5cm)、長さ24インチ(約60cm))内に配置した。この管を通るガスの流れは、図面を参照して、図示された「サイクル」バーの最初の50%がNO2の「オン」時間を表すのに対し、その「サイクル」バーの次の50%がNO2「オフ」時間を表すように制御される。図面において、連続した「オン/オフ」サイクルは、C1、C2などと省略されている。
【0048】
図5に関して、NO2の流れがオンに切り換えられると(0.5l/分の総流量中で500ppm)、共振周波数は、La2O3膜によるNO2吸着のために減少する。NO2の吸着により、共振周波数を減少させる減衰効果が生じる。NO2の流れがオフに切り換えられると、周波数は、回復期間中に、ゆっくりと増加するか、または実質的に一定のままである。この回復は、NO2の流れの減少に単に関連し、NO2脱離を助ける「フラッシュ」ガスはないことに留意されたい。周波数応答の全体の負の勾配は、NO2の不完全な脱離と整合性を有している。
【0049】
実施例4
14.6mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.11gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、1時間に亘り20℃で、1時間に亘り30℃で、そして1時間に亘り60℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0050】
図6は、0.5l/分の総流量で500ppmのNO2の周期的なNO2流に対する200、250および300℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。200℃または250℃では、実質的に応答は観察されない。しかしながら、300℃の温度では、その結果は、各オン/オフサイクル中にNO2の吸着(不完全な脱離を伴う)を示した。
【0051】
GaPO4センサの感度は、単位面積当たりの質量変化に対する観察した周波数変化の比として、または差として、S=df/dρs=82.24Hz・cm2/mgとして表すことができる。周波数範囲について、Δf=20〜70Hz、吸着した質量は0.25〜0.9mg/cm2と推測される。
【0052】
実施例5(比較)
4.6gmlのセリウム2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中20質量%の溶液)、5mlのエタノール、7.5mlの2−メトキシエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む比較の前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。次いで、この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、1時間に亘り20℃で、1時間に亘り30℃で、そして1時間に亘り60℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化セリウム膜を形成した。この比較の前駆体溶液は、界面活性剤を含んでいない。
【0053】
図7は、0.5l/分の総流量で500ppmのNO2(サイクル1〜5)および1000ppmのNO2(サイクル6〜8)の周期的なNO2流に対する300℃でのCeO2被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。その結果は、かなり急速な(1分未満)NO2吸着を示したが、3回目のサイクル後には、周波数応答は次第に不規則になる。最初の3回のサイクルでは、周波数応答はたった約5Hzである。
【0054】
実施例6(比較)
12.6mlのイットリウム2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、5mlのエタノール、および0.016mlの硝酸を含む比較の前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。次いで、この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、5時間に亘り350℃でか焼する前に、1時間に亘り20℃で、1時間に亘り30℃で、そして1時間に亘り60℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化イットリウム膜を形成した。この比較の前駆体溶液は、界面活性剤を含んでいない。
【0055】
図8は、300℃でのY2O3被覆GaPO4結晶の周波数対時間のプロットを示している。周期的なNO2流に対する測定可能な応答はない。
【0056】
実施例7
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.135gのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。次いで、この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0057】
図9は、500ppmのNO2(0.5l/分の総流量)の周期的なNO2流に対する300℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。周波数応答は、最初の4回のサイクルについて再現可能であり(Δf≒10〜20Hz)、約50%の周期間回復を示し、これは、不可逆的な吸着との整合性を有する。
【0058】
実施例8
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.15gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0059】
図10〜13は、それぞれ、250、300、350および400℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周期的なNO2流に対する周波数応答を示している。図面のこの順序において、1つのサンプルを最初に300℃(図11)で試験し、次いで、350、400および250℃で試験した。300℃で、周波数応答(Δf≒10Hz)は、少なくとも6回のサイクルについて再現可能であり、サイクル3と5の間ではほぼ100%回復した。サイクル1〜5については、500ppmのNO2(0.5l/分の総流量)の周期的なNO2流を使用したのに対し、サイクル6では、NO2流を1000ppmに増加させた。
【0060】
350および400℃(図12および図13)では、周期的なNO2流に対する著しい応答はない。400℃のデータ(図13)における1つの急上昇は、測定の人為的な影響である。250℃(図10)では、比較的強力な吸着(Δf≒20〜40Hz)があるが、脱離は弱い。
【0061】
実施例9
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.5gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をGaPO4基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0062】
図14は、0.5l/分の総流量での500ppmのNO2(サイクル1および2)および1000ppmのNO2(サイクル3および4)の周期的なNO2流に対する320℃でのLa2O3被覆GaPO4結晶の周波数応答を示している。周波数応答は比較的強力であり(サイクル1および2については、≒50Hzであり、サイクル3および4については、≒75Hz)、サイクル間の回復は約50%である。
【0063】
実施例10
7.3mlのランタン2−メトキシエトキシド(2−メトキシエタノール中5質量%の溶液)、0.5gのP123、5mlのエタノールおよび0.016mlの硝酸を含む前駆体溶液を調製し、40℃で一晩ねかせた。この溶液をランガサイト基板上にスピンコートし、4時間に亘り400℃でか焼する前に、1時間に亘り40℃で、そして1時間に亘り90℃で、蓋をしたペトリ皿内で加熱して、酸化ランタン膜を形成した。
【0064】
図15は、0.5l/分の総流量での500ppmのNO2(サイクル1および2)および1000ppmのNO2(サイクル3および4)の周期的なNO2流に対する300℃でのLa2O3被覆ランガサイト結晶の周波数応答を示している。ランガサイト基板上の周波数応答は、La2O3被覆GaPO4結晶(≒50〜75Hz)と比べて、強力であり(サイクル1および2については、≒1000Hzであり、サイクル3および4については、≒1500Hz)、最初のサイクル後に良好な再現性を示す。以前の実施例に関するように、ベースラインの下方へのシフトは、不完全な脱離のためである。サイクル間には、約50%の回復がある。
【0065】
実施例3〜10について、サンプル、その調製プロトコル、および対応する試験結果(周波数応答および公称回復%)の要約が表3に示されている。
【表3】
【0066】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の様々な改変および変更が行えることが当業者には明らかであろう。本発明の精神および実体を含む開示された実施の形態の改変、組合せ、副組合せおよび変種が当業者に想起されるであろうから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に全てを含むと考えられるべきである。
【符号の説明】
【0067】
210 熱電対
220 石英結晶センサ
230 フランジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ多孔質遷移金属酸化物材料を形成する方法において、
遷移金属酸化物前駆体、界面活性剤、および溶媒を含む前駆体混合物を形成し、
前記前駆体混合物を硬化させて、界面活性剤系自己組織化鋳型および該鋳型により定められる遷移金属酸化物前駆体系メソ構造相を形成し、
硬化された混合物を熱処理して、メソ多孔質遷移金属酸化物を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物前駆体が、イットリウム、ランタンまたはセリウムの金属化合物を含み、該金属化合物が、金属アルコキシド、金属酢酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属アセチルアセトネート、およびハロゲン化金属からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤がトリブロックコポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
2から20nmに及ぶ平均細孔径、pH7超の等電点により定義された基本表面特徴、および50m2/g超の比表面積を有するメソ多孔質遷移金属酸化物であって、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする酸化物。
【請求項5】
メソ多孔質遷移金属酸化物膜を含むNOxセンサであって、前記酸化物が、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とするNOxセンサ。
【請求項1】
メソ多孔質遷移金属酸化物材料を形成する方法において、
遷移金属酸化物前駆体、界面活性剤、および溶媒を含む前駆体混合物を形成し、
前記前駆体混合物を硬化させて、界面活性剤系自己組織化鋳型および該鋳型により定められる遷移金属酸化物前駆体系メソ構造相を形成し、
硬化された混合物を熱処理して、メソ多孔質遷移金属酸化物を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物前駆体が、イットリウム、ランタンまたはセリウムの金属化合物を含み、該金属化合物が、金属アルコキシド、金属酢酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属アセチルアセトネート、およびハロゲン化金属からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤がトリブロックコポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
2から20nmに及ぶ平均細孔径、pH7超の等電点により定義された基本表面特徴、および50m2/g超の比表面積を有するメソ多孔質遷移金属酸化物であって、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする酸化物。
【請求項5】
メソ多孔質遷移金属酸化物膜を含むNOxセンサであって、前記酸化物が、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とするNOxセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−519133(P2012−519133A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552144(P2011−552144)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025332
【国際公開番号】WO2010/099272
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025332
【国際公開番号】WO2010/099272
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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