説明

NotchまたはNumb特異的免疫療法との相乗効果を有する、癌細胞の再生のネガティブな遺伝的制御

本発明者らは、Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化することによって患者における癌を治療する方法を開示する。本発明者らはさらに、上記のようなペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を開示する。加えて、本発明者らは、Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化することによって患者における癌を治療する方法を開示する。本発明者らはまた、上記のようなペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、癌治療の分野に関する。より詳細には、本発明は、アップレギュレーション、過剰発現、またはNotch、Numb、もしくはその両方の脱抑制によって特徴付けられる癌を治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Notchは、多くの細胞系譜において、細胞運命特定の制御、および増殖と分化の間のバランスの維持に関与している原形質膜受容体である(1、2)。Notchシグナル伝達は、多くの生理学的プロセスにおいて重要であり、Notchの分布は種々の血液癌および固形癌に関与している。
【0003】
最もよい例は、Notchの変異と、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T−ALL)との間の連関である。T−ALL腫瘍細胞のサブセットにおいて、(7、9)染色体点座は、Notch1の3’位をT細胞受容体Jβ遺伝子座に融合する。これは、短縮型Notch1タンパク質を生じ、これは、構成的に活性かつ異常に発現される(3)。加えて、(7、9)転座とは独立したNotch1の活性化変異が、ヒトのT−ALL症例の50%を超えて見出されてきた(4)。
【0004】
異常なNotchシグナル伝達はまた、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、および結腸癌を含む固形腫瘍において報告されているが、遺伝子損傷の証拠はなかった(5〜7)。Notchは、癌の型、存在する他のシグナル伝達経路、および活性化されるNotch受容体の同一性に依存して、発癌性または腫瘍抑制性のいずれかの役割を果たす可能性がある。
【0005】
しかしながら、乳癌を含む大部分の症例においては、Notchシグナル伝達は腫瘍増殖を促進する(8)。Notchの発癌性の役割についての1つのメカニズムは、分化を妨害し、幹細胞表現型を維持するその能力から駆動され得るというものである。幹細胞および癌細胞は、無限の増殖および未分化などの共通の特徴を共有している。さらに、幹細胞および腫瘍細胞における自己再生は、ソニックヘッジホッグ、Wnt、およびNotchを含む同様の経路によって調節されている。腫瘍細胞は、正常な幹細胞から誘導され癌は、治療に対して抵抗性がある「癌幹細胞」を有することが可能である(9)。
【0006】
胚形成における非対称的な細胞分裂の間、Notchの活性は、細胞の運命の決定因子であるNumbによって生物学的に拮抗される(11、12)。非対称的な細胞分裂は、分化した娘細胞および未分化娘細胞における幹細胞の分裂から構成される。Numbはまた、多くの成熟哺乳動物細胞においても発現されている(13)。成熟細胞は対称的に分裂し、Numbは有糸分裂において対称的に分配される。対称的な分配は、Numbが不活性であり、またはさらなる機能を有することを示唆する。Numb/Notch拮抗作用は、正常な乳房柔組織の分裂の制御と関連する。正常な乳房柔組織は、常に変わることなく、強力かつ均一なNumb染色を発現している。対照的に、腫瘍は顕著に不均一性を示し、多くの場合において、Numb免疫反応性の完全な非存在を示す(14(非特許文献1)、15(非特許文献2))。
【0007】
この情報およびさらなる情報に基づいて、NotchのNumb媒介調節の破壊(遮断または阻害による)は、天然に存在する乳癌の原因となる役割を果たしていると考えられる。80%の乳癌が、腫瘍細胞の50%でNumbの免疫反応性を示す。このように、すべての乳癌のほぼ半分でNumbレベルが減少している。Numb発現レベルと、攻撃性疾患の公知の指標である腫瘍悪性度およびKi67標識指標との間で、強力な逆相関が見出された(14(非特許文献1))。低レベルNumbは、MG132などのプロテアソーム阻害剤を用いる処理によって高レベルまで回復されることが報告された(14(非特許文献1))。研究された乳癌におけるNumbレベルの減少は、一般的に増加したプロテオソーム活性の結果であるとは見られなかった。プロテオソーム性分解によってもまた調節される他の細胞タンパク質の基底レベルが同じ実験条件下で影響を受けなかったからであるが、この問題はさらなる研究を必要としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Pece SおよびSantolini Eら、J.Cell Biol.(2004)167:215〜21
【非特許文献2】Stylianou S、Clarke RBおよびBrennan K、Cancer Res.(2006)66:1517〜25
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化することによって、患者における癌を治療する方法に関する。
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、上記のようなペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物に関する。
【0011】
1つの実施形態において、本発明は、Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化することによって、患者における癌を治療する方法に関する。
【0012】
1つの実施形態において、本発明は、上記のようなペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物に関する。
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対する抗体を含む組成物を患者に投与することによって、患者における癌を治療する方法に関する。
【0014】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせた、これらの図面の1つ以上の参照によって、より良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Notch1C末端アミノ酸1902−2143(A、B)およびNumb1ホスホチロシン結合ドメイン(PTB)(C、D)の分子モデル。(B、D)はこれらの分子の電荷を示し、赤色は正電荷を示し、青色は負電荷を示す。ペプチドNotch1−1947、Notch1−2112、およびNumb1−87の位置は(A、C)に示す。
【図2】MCF7乳癌細胞株およびSK−OV−3卵巣癌細胞株に対するNotch1の発現。(A、B、C)細胞はアイソタイプ対照抗体で染色した。(D、E、F)細胞をNotch1に対する抗体で染色した。MCF7(A、D)、SK−OY−3(B、E)、およびSK−LMS−1平滑筋肉腫(C、F)。
【図3】TAL−1の増殖の反応速度論。新鮮に単離されたTAL−1を150IU/ml IL−Sで培養した。低濃度のIL−2で大部分の細胞は最初の(fist)8日間で死滅した。その後、生存している細胞は数が増加した。
【図4】(A)ペプチド(dNP)でパルスしていないHLA−A2−IgG二量体で染色したTAL−1を陰性二量体対照として使用した。(B)Notch1−2112ペプチドHLA−A2−IgG二量体(dNotch1−2112)で染色したTAL−1。(C)TAL−1染色Numb1−87−HLA−A2ペプチド二量体(dNumb1−87)。Bと比較して、TCRhiPerhi細胞数の3.3倍増加していることに注目のこと。(D)AES1−HLA−A2−IgGペプチド二量体で染色したTAL−1。(E−H)パーフォリンに対する抗体で染色したTAL−1。(G)Numb1−87−TCR+細胞は、最大量のパーフォリンを有する。
【図5】(A−D)TAL−2においてゲートされたすべての分析。(A)ペプチド(dNP)でパルスしていないHLA−A2−IgG二量体で染色したTAL−1を陰性二量体対照として使用した。(B)Notch1−1947ペプチドHLA−A2−IgG二量体(dNotch1−1947)で染色したTAL−2、(C)Notch1−2112−HLA−A2−IgG二量体(dNotch2112)で染色したTAL−2、(D)Numb1−87−J−ILA−A2−lgGペプチド二量体(dNumb1−87)で染色したTAL−2、(E−H)大型サイズTAL−2の分析。(E)dNP、(F)Notch1−1947、(G)Notch1−2112、(H)Numb1−87は、TCR1aの数が3倍増加している。
【図6−1】癌細胞株でのESA、CD44、およびCD24の発現。ゲムシダビンのあるなしで培養した細胞をESAについてゲートした。CD44およびCD24を分析した。ESACD44CD24低/−集団は比較的高く、PANC−1およびAsPC−1に対するGEM処理によるこれらのマーカーの発現の示差的な変化がなかった。BR−C系統MCF7のESACD44CD24低/−細胞は、CSt−Csとして知られており、その集団はGEM処理に伴って増加する。(A)PANC−1;(B)MCF7;(C)SKOV−3;(D)MIA PaCa−2;(E)MCF7。
【図6−2】癌細胞株でのESA、CD44、およびCD24の発現。ゲムシダビンのあるなしで培養した細胞をESAについてゲートした。CD44およびCD24を分析した。ESACD44CD24低/−集団は比較的高く、PANC−1およびAsPC−1に対するGEM処理によるこれらのマーカーの発現の示差的な変化がなかった。BR−C系統MCF7のESACD44CD24低/−細胞は、CSt−Csとして知られており、その集団はGEM処理に伴って増加する。(A)PANC−1;(B)MCF7;(C)SKOV−3;(D)MIA PaCa−2;(E)MCF7。
【図6−3】癌細胞株でのESA、CD44、およびCD24の発現。ゲムシダビンのあるなしで培養した細胞をESAについてゲートした。CD44およびCD24を分析した。ESACD44CD24低/−集団は比較的高く、PANC−1およびAsPC−1に対するGEM処理によるこれらのマーカーの発現の示差的な変化がなかった。BR−C系統MCF7のESACD44CD24低/−細胞は、CSt−Csとして知られており、その集団はGEM処理に伴って増加する。(A)PANC−1;(B)MCF7;(C)SKOV−3;(D)MIA PaCa−2;(E)MCF7。
【図7】(A)NKG2DリガンドMICAおよびMICBを発現する細胞数はGem耐性およびFU耐性MIA PaCa−2において増加した。MIC−A/B細胞はPTX耐性細胞の数を増加しなかった。(B)薬物耐性陽性対照MCF−7細胞を用いると同様の結果であった。白色ピークは?ESA+細胞?を表し、黒色ピークはMIC−A/B細胞を示す。MICA−A/B細胞%は下線で示す。MICA−A/B細胞数の増加は、薬物対生細胞あたりのMIC−A/B密度の増加と並行していなかった。
【図8】膵臓細胞株は、その数が薬物耐性集団にいて増加しているCD133細胞を含む。CSCマーカー(CD44+CD24、CD44CD133、およびCD24CD133)の発現を共有する集団はゲムシダビンを用いる処理後に増加した。()は実質的に2倍より多い増加である。(白色)未処理細胞、(黒色)薬物対生細胞。MCF−7およびSKOV3はCD44、CD24、およびESAマーカーのための陽性対照として使用した。薬物対生細胞の選択およびCSC表現の細胞の定量は、材料および方法に記載されるように作成した。(A)ESACD44CD24およびCD133集団は、Mia−PaCa−2、PANC−1、MCF7、およびSKOV3の全体の集団と比較して、3〜5倍GEM耐性集団が増加したが、AsPC−1では増加しなかった。(B)大量のDLL4拡大細胞はCD44CD24、およびCD24表現型であった。(C)比較結果をCD44CD133表現型について観察した。(D)比較結果をCD24CD133表現型について観察した。
【図9−1】ゲムシタビンで生存している細胞は、Miapaca−2およびMCF−7独特な生存経路の成分を活性化している。(A)NICDおよびBcl−2発現は、未処理(UT)Miapaca−2と比較して、Gem耐性MIA PaCa−2において増加した。(B)NECD発現は増加し、NICD発現はMCF7細胞において減少した。2回の実験の内の1つを示す。(C、D)Gem耐性MCF−7におけるNECD発現の発現のダイアグラムは、Numb、Numb、およびBcl−2の量の減少と並行していた。各タンパク質の発現レベルは、同じゲル中で分離された同じサンプル中のアクチンレベルと比例させて標準化した。以下の式を使用して計算した:発現指数=サンプル中の特定のタンパク質の光学密度/同じサンプル中のタンパク質のαアクチン密度。MCF7細胞中のBcl−2の発現は10分間曝露したメンブレンから示される;MIA PaCa−2中のBcl−2は3分間のみ曝露した同じメンブレンから示される。MCF7はMIA PaCa−2よりも少ない量のBcl−2を有した。MCF7細胞中のBcl−2のE.I.は、3分間の曝露における光学密度値から計算した。タンパク質の量の決定は、比率の減算{(NECD:NumbL)−GEM耐性 対 NECD:NumbL)−GEM感受性}が2よりも高いかまたは低い;すなわち、倍数増加、または倍数減少であるという場合に、実質的であると見なした。NE、NECD;NI、NICD;N−L、Numb、N−S、Numb
【図9−2】ゲムシタビンで生存している細胞は、Miapaca−2およびMCF−7独特な生存経路の成分を活性化している。(A)NICDおよびBcl−2発現は、未処理(UT)Miapaca−2と比較して、Gem耐性MIA PaCa−2において増加した。(B)NECD発現は増加し、NICD発現はMCF7細胞において減少した。2回の実験の内の1つを示す。(C、D)Gem耐性MCF−7におけるNECD発現の発現のダイアグラムは、Numb、Numb、およびBcl−2の量の減少と並行していた。各タンパク質の発現レベルは、同じゲル中で分離された同じサンプル中のアクチンレベルと比例させて標準化した。以下の式を使用して計算した:発現指数=サンプル中の特定のタンパク質の光学密度/同じサンプル中のタンパク質のαアクチン密度。MCF7細胞中のBcl−2の発現は10分間曝露したメンブレンから示される;MIA PaCa−2中のBcl−2は3分間のみ曝露した同じメンブレンから示される。MCF7はMIA PaCa−2よりも少ない量のBcl−2を有した。MCF7細胞中のBcl−2のE.I.は、3分間の曝露における光学密度値から計算した。タンパク質の量の決定は、比率の減算{(NECD:NumbL)−GEM耐性 対 NECD:NumbL)−GEM感受性}が2よりも高いかまたは低い;すなわち、倍数増加、または倍数減少であるという場合に、実質的であると見なした。NE、NECD;NI、NICD;N−L、Numb、N−S、Numb
【図10】(A、B)UT−Miapaca−2と比較したGem耐性MIAPaCa−2の形態学的変化。UT−MIAPaCa−2は円形形状細胞であるが(A)、しかしながら、これらはゲムシタビンを用いる処理後に、長い触手を有する紡錘体形状細胞に変形する(B)。Gem耐性MCF−7細胞中での細胞あたりのMICA−A/B Ag細胞の低レベル発現。白色ピーク、アイソタイプ対照Ab;暗いピーク、MIC−A/B特異的Ab。
【図11】(A)SKOV3.A2細胞は、Numb−1ペプチド活性化PBMCに対してNumb−1(87−95)ペプチドを提示する。Numb−1ペプチドによるIFN−g産生は、Notchペプチド活性化PBMCによるよりも、PBMCを2倍実質的に高く活性化した。48時間において、IFNgの量は2種のNotchペプチド活性化細胞株によって産生され、非特異的にIL−2活性化された細胞株は低くかつ同様であったことに注目のこと。Notchパプチド、2112−2120のみが、プロテオソームによるNotch消化後にHL−A2によって提示可能である(プログラムpaproc.de)。(B)SKOV3におけるNotchおよびNumbタンパク質発現のウェスタン分析。Numb S/Lは、MCF−7におけるよりもSKOV3において有意に多い量で発現されるが、Miapaca−2においては同様の量である。Numbの一部はリン酸化されている。小部分のNumbはSer283がおいてリン酸化されている。大部分のNumbはSer264がリン酸化されている。NECDはmAbs−scc3275(Notch分子全体を認識する)、およびH131(NICDの100および80kDaにそれぞれ対応する2つのポリペプチドを検出する)を用いて検出される。(C)Numb−1(87−95)ペプチド活性化細胞へのNumb−1(87−95)ペプチドの提示は、PKCファミリーメンバー、およびより低い程度では、MAPKキナーゼによって媒介されるリン酸化に依存する。PI3Kは、ペプチド提示に関与していないようである。広範なスペクトルのPKCキナーゼ阻害剤、スタウロスポリンを用いるSKOV3.A2の処理は、指標細胞株によるIFN−gを消滅させたが、PI3K阻害剤ウォートマリン(WT)ではそうではなかった。黒記号は24時間測定を示し、白記号は48時間測定を示す。
【図12】MCF−7は未処理であるか(UT、Gem感受性)、またはゲムシタビン(300nM ゲムシタビン、3日間、続いて、100nM ゲムシタビン、さらに5日間、Gem耐性)。CD24陰性/低細胞の増加であって、CD24低およびCD24細胞のMFIではないことに注目のこと。この実験は同じ条件で反復し、データを確認した(データ示さず)。
【図13】癌−幹様細胞(C−St−C)は癌細胞塊を生じる。
【図14】オーロラAの過剰発現によって引き起こされる発癌の提案されているメカニズム。
【図15A】Notchは癌細胞増殖を活性化した。
【図15B】免疫選択後のNumbの機能的修復。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化することによって、患者における癌を治療する方法に関する。
【0017】
1つの実施形態において、本発明は、Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化することによって、患者における癌を治療する方法に関する。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対する抗体を含む組成物を患者に投与することによって、患者における癌を治療する方法に関する。
【0019】
Drosophilaにおいては単一のNotch受容体および2つのリガンド(DeltaおよびSerrate)が存在している。哺乳動物においては4種の受容体および5種のリガンドが存在している。Notch1〜4は、Drosophila Notchのホモログであり;Delta様−1、−3、および−4(D111、D113、D114)はDeltaのホモログであり;Jagged1およびJagged2(Jag1およびJag2)はSerrateのホモログである。
【0020】
各Notch受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインからなる全長前駆体タンパク質として合成される。Notchシグナル伝達は、通常、2つの隣接する細胞間のリガンド受容体結合によって活性化される。この相互作用は、その細胞外ドメイン中で、切断部位、S2を露出して、受容体におけるコンホメーションの変化を誘導する。メタロプロテアーゼTNFα転換酵素(TACE)および/またはKuzbanianによる切断後、Notch受容体は、切断部位S3において膜内タンパク質分解を受ける。γセクレターゼ複合体によって媒介されるこの切断は、Notch細胞内ドメイン(N−ICD)を遊離させ、次いで、これは、核に移行してNotch標的遺伝子を活性化する。γセクレターゼ機能の阻害は、Notch受容体の最終的な切断を妨害し、Notchシグナル伝達を遮断する。N−ICD切断の非存在下において、Notch標的遺伝子の転写は、DrosophilaにおけるHairlessの抑制因子(再組換えシグナル結合タンパク質jk(RBP−jk)ホモログ)によって媒介されるリプレッサー複合体によって阻害される。
【0021】
Drosophilaにおける最近の研究は、Hairless経路の正準の抑制因子とは独立してNotchがシグナル伝達可能であることを示唆している。しかしながら、これが脊椎動物に当てはまるか否かは明らかではない。筋原細胞株および発生しつつあるトリ神経堤からのいくつかの初期の証拠は、Notchシグナル伝達がドミナントネガティブなHairlessの抑制因子の存在下で起こり得るが、さらなる性格付けが、脊椎動物における代替的な下流の経路を確立するために必要であることを示唆している(10)。
【0022】
本発明のNotch1、Notch2、Notch3、およびNotch4は哺乳動物タンパク質であり、1つの実施形態において、ヒトタンパク質である。1つの実施形態において、Notch1は配列番号1で示される配列を有する。1つの実施形態において、Notch2は配列番号2で示される配列を有する。1つの実施形態において、Notch3は配列番号3で示される配列を有する。1つの実施形態において、Notch4は配列番号4で示される配列を有する。
【0023】
哺乳動物Numbは、4種のスプライシングアイソフォーム、Numb1〜Numb4を有し、これらは、C末端のプロリンリッチ領域(PRR)における49アミノ酸挿入(5kDa)の存在または非存在に基づいて、2つの型(NumbおよびNumb)に分けられる。
【0024】
1つの実施形態において、Numb1は配列番号5で示される。1つの実施形態において、Numb2は配列番号6で示される。1つの実施形態において、Numb3は配列番号7で示される。1つの実施形態において、Numb4は配列番号8で示される。
【0025】
本明細書で使用される「ペプチド」は、約5〜約50アミノ酸を含む任意のオリゴマーを指す。「ペプチド」は、ペプチドがそのペプチドのアミノ酸配列のサブ配列と少なくとも約95%の同一性を有する場合に、タンパク質から「誘導される」。1つの実施形態において、タンパク質から誘導されたペプチドは、そのタンパク質のアミノ酸配列のサブ配列と、少なくとも約96%の同一性、例えば、約97%の同一性、98%の同一性、99%の同一性、99.5%の同一性、または99.9%の同一性を有してもよい。本明細書で使用される場合、「から誘導される」とは、ペプチドがタンパク質のタンパク質分解によって産生されなければならないとは言及しないし、そのことを暗示することもない。ペプチドは、タンパク質のタンパク質分解によって、タンパク質のアミノ酸配列を考慮した化学合成、ペプチドをコードする核酸配列を発現する生物の使用によって、または当該分野において公知である他の技術によって、製造されてもよい。
【0026】
1つの実施形態において、ペプチドは、DGVNTYNC(配列番号9)、RYSRSD(配列番号11)、LLEASAD(配列番号18)、LLDEYNLV(配列番号21)、MPALRPALLWALLALWLCCA(配列番号22)、NGGVCVDGVNTYNC(配列番号25)、DGVNTYNCRCPPQWTG(配列番号30)、RMNDGTTPLI(配列番号32)、およびLKNGANR(配列番号35)からなる群より選択される。
【0027】
1つの実施形態において、上記ペプチドは、Notch1274−282(配列番号10)、Notch11938−1943(配列番号11)、Notch11938−1946(配列番号12)、Notch11938−1947(配列番号13)、Notch11940−1948(配列番号14)、Notch11940−1949(配列番号15)、Notch11944−1955(配列番号16)、Notch11947−1955(配列番号17)、Notch12111−2120(配列番号19)、Notch12112−2120(配列番号20)、Notch12113−2120(配列番号21)、Notch21−20(配列番号22)、Notch27−15(配列番号24)、Notch2271−285(配列番号26)、Notch2271−286(配列番号27)、Notch2277−285(配列番号28)、Notch2277−286(配列番号29)、Notch21940−1948(配列番号31)、Notch21940−1949(配列番号32)、Notch21991−2003(配列番号33)、Notch21995−2003(配列番号34)、およびNotch21997−2003(配列番号35)からなる群より選択される。
【0028】
1つの実施形態において、上記ペプチドは、LWVSADGL(配列番号37)、CRDGTTRRWICHCFMAVKD(配列番号38)、RWICHCFMAVKD(配列番号39)、RWLEEVSKSVRA(配列番号41)、およびVDDGRLASADRHTEV(配列番号43)からなる群より選択される。
【0029】
1つの実施形態において、上記ペプチドは、Numb187−95(配列番号36)、Numb188−95(配列番号37)、Numb1131−149(配列番号38)、Numb1138−149(配列番号39)、Numb1139−147(配列番号40)、Numb1442−453(配列番号41)、Numb1443−451(配列番号42)、Numb1592−606(配列番号43)、およびNumb1594−602(配列番号44)からなる群より選択される。
【0030】
上記ペプチドは、生理食塩水のような薬学的に受容可能なキャリアであって、とりわけ当該分野において公知であるものも含む組成物の成分であってもよい。
【0031】
上記ペプチドは、それに対する抗体を産生するために使用することができる。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(一般的に「抗体」)の産生および精製のための方法は当該分野において公知である。1つの実施形態において、上記ペプチドは、抗体がペプチドに対して産生可能であるような様式でHLA−A−A2分子と共有結合される。
【0032】
一旦、産生および精製されると、ペプチドに対する抗体は、癌を治療するために患者に直接的に投与可能であり、または他の物質とともに組成物を形成して、癌を治療するために患者に投与可能である組成物を生じることが可能である。1つの実施形態において、抗体は、抗癌剤および放射性同位元素からなる群より選択される治療分子とともに組成物を形成可能である。例示的な抗癌剤としては、とりわけ、以下が挙げられるがこれらに限定されない:パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb社からタキソール(Taxol)として市販されている)、ドキソルビシン(商品名アドリアマイシン(Adriamycin)としてもまた公知)、ビンクリスチン(商品名オンコビン(Oncovin)、ビンカサール(Vincasar)PES、およびビンクレックス(Vincrex)として公知)、アクチノマイシンD、アルトレタミン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、デカルバジン、ダウノルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトザントロン(mitozantrone)、オキサリプラチン、プロカルバジン、ステロイド、ストレプトゾシン、タキソテレ、タモゾロミド、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレオスルファン、UFT(ウラシル−テグフル(tegufur))、ビンブラスチン、およびビンデシン。
【0033】
癌治療の当該分野において公知である放射性同位元素には、とりわけ以下が含まれるがこれらに限定されない:125I、131I、90Y、221At、225Ac、212Bi、213Bi、99Re、166Ho、177Lu、または153Sm。
【0034】
抗体が治療分子とともに組成物に形成される場合、1つの実施形態において、上記治療分子は、抗体の重鎖の定常領域に共有結合される。1つの実施形態において、上記治療分子は、例えば、以下によって共有結合可能である:(i)スルフヒドリル(−SH)含有置換基を治療分子に加えること;(ii)重鎖の定常領域にスルフヒドリル含有置換基を有する抗体を調製すること;および(iii)抗体および治療分子を、それらのスルフヒドリル含有置換基を通して反応させ、治療分子と抗体の重鎖の定常領域の間で−S−S−結合を形成すること。
【0035】
1つの実施形態において、ペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物は、当該分野において公知である、アルムニウム塩、QS21、MF59、またはビノソームなどの、アジュバントをさらに含んでもよい。
【0036】
上記ペプチドは、もしあれば、ペプチドに対する抗体の形成を誘発することを当業者が予測するような様式で、薬学的に受容可能なキャリアとともに患者に投与可能である。ワクチン接種の方法は当該分野において周知である。ペプチドの投与は、NotchまたはNumbのアップレギュレーション、過剰発現、または脱抑制によって特徴付けられる任意の癌を治療するために使用可能である。1つの実施形態において、上記癌は、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T−ALL)、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、明細胞腎細胞癌腫、および結腸癌からなる群より選択される。
【0037】
「ペプチドに対する免疫化」およびこの語句のバリエーションは、抗体が抗原としてのペプチドを認識する、患者の免疫系による1つ以上の抗体の作製の誘導をいう。理論によって束縛されることはないが、Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されるペプチドに対して患者を免疫化することによって、すなわち、ペプチドに対する抗体の作製を誘導することによって、Notchのアップレギュレーション、過剰発現、または脱抑制によって特徴付けられる癌に罹患している少なくともある患者が治療可能であり、すなわち、腫瘍サイズまたは癌細胞の計数の少なくとも部分的な減少を経験することが考えられる。
【0038】
1つの実施形態において、上記ペプチドは、投与後に抗体がペプチドに対して産生可能であるような様式で、投与前にHLA−A2分子と共有結合される。
【0039】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下に続く実施例において開示されている技術は、本発明の実施において十分に機能するために、本発明者によって発見された技術を表し、従って、その実施のための好ましい様式を構成すると見なされ得ることが当業者によって理解されるべきである。しかしながら、本開示に鑑みて、開示される特定の実施形態において多くの変更が行われ得、本発明の技術思想および範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似の結果がなお得られることを、当業者は理解するべきである。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
要約:Notchは、多くの細胞系譜において、細胞運命特定の制御、および増殖と分化の間のバランスの維持に関与している原形質膜受容体である。Notchの破壊は、種々の血液癌および固形癌に関連付けられてきた。Numbもまた、多くの成熟哺乳動物細胞において発現されている。成熟細胞は対称的に分裂し、Numbは有糸分裂において対称的に分配される。Numb媒介性Notch調節は、天然に存在する乳癌において原因となる役割を果たしていると考えられている。乳癌におけるNumbレベルの減少は、プロテオソーム性分解によって調節されている。
【0041】
本発明者らは、Numbタンパク質によるNotchの調節されないネガティブ制御がNumbのプロテオソーム性分解の結果であるならば、Numbの分解はMHC−I分子によって提示される輸送されるペプチドを生成し得ると推論している。驚くべきことに、本発明者らは、Notch1、Notch2、およびNumb1から自然に処理されたペプチドの候補をほとんど発見しなかった。ペプチドNotch1(2112−2120)およびNumb1(87−95)を特異的に認識したTDRを発現するCD8T細胞は、卵巣癌患者の腹水中で提示された。これらの細胞の多くは分化しており、高レベルのパーフォリンを発現していた。
【0042】
Notch1の天然の免疫原性、特に、Numb1のそれは、腫瘍の進行の間に克服される免疫学的監視のメカニズムを示唆する。NotchおよびNumbからの腫瘍抗原を用いる免疫治療は、癌患者の治療のために重要であるはずである。
【0043】
緒言:Notchは、多くの細胞系譜において、細胞運命特定の制御、および増殖と分化の間のバランスの維持に関与している原形質膜受容体である(1、2)。Notchシグナル伝達は多数の生理学的プロセスにおいて重要であり、Notchの破壊は種々の血液癌および固形癌に関連付けられてきた。
【0044】
最もよい例は、Notchの変異と、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T−ALL)との間の連関である。T−ALL腫瘍細胞のサブセットにおいて、(7、9)染色体点座は、Notch1の3’位をT細胞受容体Jβ遺伝子座に融合する。これは、短縮型Notch1タンパク質を生じ、これは構成的に活性かつ異常に発現される(3)。加えて、(7、9)転座とは独立した、Notch1の活性化変異が、ヒトのT−ALL症例の50%を超えて見出されてきた(4)。
【0045】
異常なNotchシグナル伝達はまた、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、および結腸癌を含む固形腫瘍において報告されているが、遺伝子損傷の証拠はなかった(5〜7)。Notchは、癌の型、存在する他のシグナル伝達経路、および活性化されるNotch受容体の同一性に依存して、発癌性または腫瘍抑制性のいずれかの役割を果たす可能性がある。
【0046】
しかしながら、乳癌を含む大部分の症例においては、Notchシグナル伝達は腫瘍増殖を促進する(8)。Notchの発癌性の役割についての1つのメカニズムは、分化を妨害し、幹細胞表現型を維持するその能力から駆動され得るというものである。幹細胞および癌細胞は、無限の増殖および未分化などの共通の特徴を共有している。さらに、幹細胞および腫瘍細胞における自己再生は、ソニックヘッジホッグ、Wnt、およびNotchを含む同様の経路によって調節されている。腫瘍細胞は、正常な幹細胞から誘導され、癌は、治療に対して抵抗性がある「癌幹細胞」を有することが可能である(9)。
【0047】
Drosophilaにおいては単一のNotch受容体および2つのリガンド(DeltaおよびSerrate)が存在している。哺乳動物においては、本概説の焦点である4個の受容体および5種のリガンドが存在している。Notch1〜4はDrosophila Notchのホモログであり;Delta様−1、−3、および−4(D111、D113、D114)はDeltaのホモログであり;Jagged1およびJagged2(Jag1およびJag2)はSerrateのホモログである。
【0048】
各Notch受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインからなる全長前駆体タンパク質として合成される。Notchシグナル伝達は、通常、2つの隣接する細胞間のリガンド受容体結合によって活性化される。この相互作用は、その細胞外ドメイン中で、切断部位、S2を露出して、受容体におけるコンホメーションの変化を誘導する。メタロプロテアーゼTNFα転換酵素(TACE)および/またはKuzbanianによる切断後、Notch受容体は、切断部位S3において膜内タンパク質分解を受ける。γセクレターゼ複合体によって媒介されるこの切断は、Notch細胞内ドメイン(N−ICD)を遊離させ、次いで、これは、核に移行してNotch標的遺伝子を活性化する。γセクレターゼ機能の阻害は、Notch受容体の最終的な切断を妨害し、Notchシグナル伝達を遮断する。N−ICD切断の非存在下において、Notch標的遺伝子の転写は、DrosophilaにおけるHairlessの抑制因子(再組換えシグナル結合タンパク質jk(RBP−jk)ホモログ)によって媒介されるリプレッサー複合体によって阻害される。
【0049】
Drosophilaにおける最近の研究は、Hairless経路の正準の抑制因子とは独立してNotchがシグナル伝達可能であることを示唆している。しかしながら、これが脊椎動物に当てはまるか否かは明らかではない。筋原細胞株および発生しつつあるトリ神経堤からのいくつかの初期の証拠は、Notchシグナル伝達がドミナントネガティブなHairlessの抑制因子の存在下で起こり得るが、さらなる性格付けが、脊椎動物における代替的な下流の経路を確立するために必要であることを示唆している(10)。
【0050】
胚形成における非対称的な細胞分裂の間、Notchの活性は、細胞の運命の決定因子であるNumbによって生物学的に拮抗される(11、12)。非対称的な細胞分裂は、分化した娘細胞および未分化娘細胞における幹細胞の分裂から構成される。Numbはまた、多くの成熟哺乳動物細胞においても発現されている(13)。成熟細胞は対称的に分裂し、Numbは有糸分裂において対称的に分配される。対称的な分配は、Numbが不活性であり、またはさらなる機能を有することを示唆する。Numb/Notch拮抗作用は、正常な乳房柔組織の分裂の制御と関連する。正常な乳房柔組織は、常に変わることなく、強力かつ均一なNumb染色を発現している。対照的に、腫瘍は顕著に不均一性を示し、多くの場合において、Numb免疫反応性の完全な非存在を示す(14、15)。
【0051】
この情報およびさらなる情報に基づいて、NotchのNumb媒介調節の破壊(遮断または阻害による)は、天然に存在する乳癌の原因となる役割を果たしていると考えられる。80%の乳癌が、腫瘍細胞の50%でNumbの免疫反応性を示す。このように、すべての乳癌のほぼ半分でNumbレベルが減少している。Numb発現レベルと、攻撃性疾患の公知の指標である腫瘍悪性度およびKi67標識指標との間で、強力な逆相関が見出された(14)。低レベルNumbは、MG132などのプロテアソーム阻害剤を用いる処理によって高レベルまで回復されることが報告された(14)。研究された乳癌におけるNumbレベルの減少は、一般的に増加したプロテオソーム活性の結果であるとは見られなかった。プロテオソーム性分解によってもまた調節される他の細胞タンパク質の基底レベルが同じ実験条件下で影響を受けなかったからであるが、この問題はさらなる研究を必要としている。
【0052】
本発明者らは、Numbタンパク質によるNotchの調節されないネガティブ調節がNumbプロテアソーム分解の結果であるならば、Numbの分解は、抗原プロセシングと関連するトランスポーター(TAP)によって輸送され、かつMHC−I分子によって提示されるペプチドを生成し得ると推論している。これらのMHC−I Numbペプチド複合体を認識するT細胞は、健常個体において寛容化または除去される可能性がある。さらに、Notchの分解がそのシグナル伝達のために必要とされる場合には、N−ICDの分解もまた、Notchペプチドを生成するはずである。Notchフラグメントのいくつかがプロテアソームによって分解される場合、これらもまた、MHC−I分子によって提示される可能性がある。NotchおよびNumbペプチドが寛容原性ではない場合には、このようなペプチドのための受容体を有する活性化CD8T細胞が、癌患者の中でインビボで検出されるはずである。本研究は、この仮説に取り組むために実施した。
【0053】
材料と方法:
予測アルゴリズムを有する候補MHC−I結合ペプチドの同定。本発明者らは、HLA−A、B、CおよびHLA−DR分子を結合可能であるペプチドを同定するために以下のプログラムを使用した:(1)HLA−A、B、Cへのペプチド結合を予測するためのBIMAS(Informatics and Molecular Analysis Section.)(http://bimas.cit.nih.gov/molbio/hla_bind)(16);(2)PAPROC(Prediction Algorithm for Proteasomal Cleavages)、PAPROCは実験的な切断データに基づく、ヒトおよび酵母の20Sプロテアソームによる切断のための予測ツール(http://www.paproc2.de/paprocl/paprocl.html)、および(3)MHC−II結合ペプチドの予測のためのTEPITOPEプログラム、このプログラムはJurgen Hammer博士(Roche)から入手可能である(www.vaccinome.com)(17、18)。
【0054】
生成されるプロテアソームの予測およびMHC−I結合ペプチドを同定するために、本発明者らは、NCBIからNotch1、Notch2、およびNumb1のアミノ酸配列をダウンロードした。これらのアクセッション番号は、それぞれ、Notch1(NM_017617)、Notch2(NM_024408)、およびNumb1(P49757)である。本発明者らは、ヒトプロテオソーム野生型1、2、および3によって産生されたペプチドを同定した。
【0055】
ペプチド候補CD8細胞エピトープを含むNotch1領域およびNumb1領域の三次元タンパク質構造モデルは、Swiss Model Programを使用してダウンロードした。Swiss Model Programは、完全に自動化されたタンパク質構造相同性モデリングプログラムであり、ExPASyウェブサーバーを介して(http://swissmodel.expasy.org/repository/)、またはプログラムDeep View(Swiss Pdb− Viewer、http://swissmodel.expasy.org/spdbvl)からアクセス可能である(19)。ペプチドが配置されているNotch1領域およびNumb1領域の分子モデルは、図1(A〜D)に示される(20〜22)。
【0056】
細胞株。本発明者らは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(Rockville、MD)から入手したヒト乳癌細胞株MCF7、ヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3、およびヒト平滑筋肉腫細胞株SK−LMS−1を使用した。すべての細胞株は、10% FCS、100単位/ml ペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地(GIBCO,Grand Island,NY)中で増殖させた。細胞は処理前に80%のコンフルエンシーまで単層で増殖させた。
【0057】
リンパ球培養。リンパ球は、HLA−A2卵巣癌患者からのヘパリン処理腹水から、Ficoll勾配遠心分離によって単離した。分離後、本発明者らは、本発明者が記載したように、1週間、10% FCSおよび300IU IL−2(Biosource Camarillo、CA)を補充したRPMI1640培地を用いてリンパ球を培養した(23、24)。
【0058】
合成ペプチド。以下のペプチドを本研究において使用した:Notch1(1947−1955、RLLEASADA)、Notch1(2112−2120、RLLDEYNLV)、Numb1(87−95、VLWVSADGL)、Glil(580−588、GLMPAQHYL)、およびAESI(128−137、LPL TPLPVGL)。これらのすべてのペプチドは、the Synthetic Antigen Core Facility of the University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのMartin Campbell博士によって合成された。アミノ酸は、Rainin Symphony Automated Peptide Synthesizer上で、標準的なN−(9−フルオレニル)メトキシ−カルボニルペプチドケミストリーを使用して、COOH末端から連続的な様式でカップリングを行い、高速液体クロマトグラフィーによって精製した。ペプチドの純度は95%〜97%の範囲であった。ペプチドは10% DMSOを有するPBSに溶解し、本発明者らが記載するように使用するまで、1mg/mlのアリコートで−20℃にて保存した(23)。
【0059】
フローサイトメトリー。腫瘍細胞上でのNotch1分子の発現を調べるために、BD Cytofix/Cytopermで前処理し、細胞内染色のためにBD Perm/Wash(BD Bioscience Pharmingen,San Diego,CA)によって洗浄した細胞を、抗Notch1モノクローナル抗体−PE(フィコエリトリン)標識およびPE結合体化マウスモノクローナルアイソタイプコントロール抗体(BD Bioscience Pharniingen)で染色し、Becton Dickinson FACS Caliberを、Cell Questソフトウェア(Becton Dickinson,NJ)およびFlow−Joプログラム(Macバージョン8.11 Tree Star,Inc,OR)とともに使用して分析した(25)。
【0060】
本発明者らは、同じリガンドを用いるインビトロ刺激に際してCTL分化におけるTCR密度の役割を評価するために各ペプチドと反応性である高濃度/多数のT細胞受容体(TCR)を発現する細胞を同定した。101よりも高い平均蛍光密度(MFI)を有する抗原四量体/二量体を用いる細胞染色を通常含むTCR集団は、3つの集団に分割し、1つは、101〜102のMFI(TCR)を有する抗原パルスしたHLA−A2/IgG二量体(二量体)を用いて染色し、他のものは、102〜103のMFI(TCR)を有する抗原パルスした二量体を用いて染色し、他のものは103〜104のMFI(TCR)を有する抗原パルスした二量体を用いて染色した。これらの集団は、本発明者らが記載したように、それぞれ、TCR、TCR中、TCRと称する(26)。
【0061】
T細胞:ペプチド−HLA−A2−IgG二量体相互作用。Notch1(1940−1948)、Notch1(2112−2120)、Numb1(87−95)、Gli1(580−588)、およびAESI(128−137)に特異的なTCRの発現は、HLA−A2−IgG−二量体(BD Bioscience Pharmingen)を使用して決定した。ペプチド負荷二量体は、本発明者らが以前に記載したように調製した(23)。この二量体でのリンパ球の染色は、以前に記載されたように実施した(24、27、28)。
【0062】
同じ細胞をまた、この二量体とは異なる蛍光色素:フルオレセイン イソチオシアネート(FITC)、アロフィコシアニン(APC)、およびPEに結合体化された特異的抗体を使用して、CD8抗原の発現およびパーフォリン(エフェクターポア形成酵素)の存在について染色した。対応するペプチド負荷二量体を反応する細胞は、それぞれ、Notch1−1940−TCR細胞、Notch1−2112−TCR、Numb1−87−TCR、およびGli1−87−TCR細胞と称する。ペプチドを負荷していないコントロールHLA−A2−IgG二量体を反応させた細胞はdNP−TCR細胞と称する。
【0063】
結果:
プロテアソーム処理ペプチドの選択。候補免疫原性NumbペプチドおよびNotchペプチドの予備分析は、HLA−A、B、C結合予測アルゴリズムに基づいて、Notch1、Notch2、およびNumb1からのペプチドが、HLA−A、B、C分子に結合することを同定した。結果は、非常に大量のペプチドを示し、これは、いくつかのMHC−Iへの潜在的な結合因子である。非常に大量のMHC−I結合ペプチドは、ペプチド選択を困難にした。本発明者らは、以下に結合する潜在能力を有するペプチドを検索および同定した:(a)コーカサス人および中国人においてより高い頻度で発現されているHLA−A2、(b)日本人においてより高い頻度で発現されているHLA−A2、および(c)アフリカ系米国人にいてHIVに対するT細胞応答と関連していると報告されているHLA−A33(29)。本発明者らはまた、他のHLA−A2集団におけるよりも、HLA−A2アフリカ系米国人においてより頻度が高い(25%)HLA−A2.5への潜在的な結合因子を調べた(30)。
【0064】
自己/腫瘍(TA)−抗原の免疫優勢は、MHC−Iへの抗原の結合親和性によって常に決定されるわけではない。実際は、免疫原性ペプチドのいくつかは(C85、MART−1)、HLA−A2に対して非常に弱い結合因子である。内因性に処理される、本発明者らの免疫原性ペプチドの選択の機会を改善するために、本発明者らは、プロテオソーム消化予測分析を実施した(18)。表1の結果は、HLA分子のいずれかに結合すると予測されるもののうちで非常に少ないNotch1、Notch2、およびNumb1ペプチドのみが、内部のタンパク質のプロテアソーム消化によってもまた生成可能であることを示す。実際は、Notch1からの2種のペプチドのみ、およびNumb1からの1種のみが、結合することが予測されているこれらのMHC−I対応物と類似していた。
【0065】
【表1】

a)MHC−1を結合可能であるペプチドを生成する予想プロテアソームは、プログラムPAPROC(http://www.paproc2.de/paproc1/paproc1.html)を用いて同定した。
b)消化型は、プログラムPAPROCによって1、2、および3と称するタンパク質分解特異性(sperificities)を示す。
c)「/」はペプチドの消化の位置および得られた生成物を示す。
d)N/Aは「利用不可」、結合したペプチドがないことを示す。
【0066】
表1の結果は、ペプチドNotch1(2112−2120)およびNotch1(274−282)が、プロテオソームによって処理され、それぞれ、HLA−A2およびHLA−A33によって、8量体として提示されることを示す。N末端およびC末端のアンカーモチーフの位置に基づいて、Notch1(2112−2120)のみがHLA−A2と複合体を形成し得る。香味深いことに、Notch1(2112−2120)はまた、HLA−A2.1よりも低い親和性ではあるが、A2.5もまた結合し得る。それゆえに、Notch1(2112−2120)は、それぞれ、A2.1およびA2.5を発現する、コーカサス人およびアフリカ系米国人のための共通の/共有されているエピトープであり得る。
【0067】
完全に異なる結果をNotch2ペプチドについて得た。ペプチドNotch2(19401948)のみが、プロテアソームによって消化され、HLA−A24による10量体として提示されることが可能である。このペプチドおよびすべての他のNotch1ペプチドは、HLA−A2またはアフリカ系米国人集団における応答と関連する組織適合性遺伝子産物のいずれかによって提示不可能である。しかしながら、Notch2(1940−1948)は、プロテアソームによって生成され、HLA−A2.5によって提示されることが可能である。それゆえに、Notch2(1940−1948)は、HLA−A24とHLAA2.5と関連して腫瘍によって提示可能である。Notch2(1940−1948)はNotch1(1947−1955)とは配列が異なっていることもまた強調されるべきである。
【0068】
結果はNumbについて驚くべきものであった。Numb1ペプチド(87−95)は、プロテアソームによって消化され、HLA−A2.1によって8量体として提示可能である。Numbペプチド443−451は、HLA−A2.1によって提示され、12量体として提示可能であり、従って、その免疫原性は、エキソペプチダーゼによるトリミングに依存する可能性がある。
【0069】
天然の免疫原性ペプチドの検出。プロテオソームによって不完全に消化されたペプチドが修復可能であるか否かに取り組むために、本発明者らは、新たな候補免疫原を操作した。Notch2(1940−1948)およびNumb(443−451)などの9アミノ酸長を超えるペプチドは、提示前にN末端およびC末端でトリミング可能である。修復を操作するために、本発明者らは、同じ最小9アミノ酸エピトープを保持し、隣接する残基を修飾した。修飾は、Notch/Numb隣接残基を、他のタンパク質からの隣接残基で置き換えることによって行った。これは、HLA−A2と関連する、最小CTLエピトープの提示を可能にする。結果は、Notch1およびNumb1からのHLA−A2結合ペプチドのみがプロテオソーム性消化後に提示可能であったことを示す(表2)。
【0070】
【表2】

(*)RMHHDIおよびRSPQLは上記のNotch1ペプチドの隣接残基である。
(**)すべての得られた残基はHLA−A2に対して非常に低い親和性を有する。
HLA−A2結合スコアは:147.697(9量体)、0.075(10量体)、および11.861(10量体)である。太字および斜字体は配列中の置換を示す。
【0071】
これらのタンパク質のどれがインビボで抗原性であるかを同定するために、本発明者らは、ペプチドNotch1(1947−1955)、Notch1(2112−2120)、およびNumb1(87−95)を特異的に認識可能であるTCRを発現するCD8T細胞の存在を決定した。プロテオソーム性消化によって生成されることが知られているAESIペプチド(128−137)は、インビボ免疫原性のための陰性対照として使用した。プロテオソーム性消化によっては生成されないGli1ペプチド(580−588)は、陰性対照として使用した。ベースラインTCR+細胞数はdNP二量体を用いて決定した。本発明者らは、進行した疾患を有する患者からの卵巣腫瘍関連リンパ球中で、高い、中程度、または低い親和性を有するTCRを有するCD8細胞の存在を調べた。
【0072】
卵巣癌におけるNotchおよびNumbのタンパク質およびリガンドの存在の意義は、発癌の間に、成熟卵巣血管系と血管形成性新生血管の両方を含む、卵巣血管のサブセット中でNotchおよびNumbが発現されているという事実に起因する(31)。卵巣中でのこれらの発現は、内皮細胞と血管関連壁細胞の両方において見出された(32)。腫瘍血管形成は、Notchを含む生理学的血管形成と同じ経路の多くを含む。これは、ヒト腫瘍サンプルとマウス異種移植片の両方において示されてきた。インサイチュハイブリダイゼーションおよび定量的な(puantitative)ポリメラーゼ連鎖反応(pPCR)によって測定すると、0114mRNAは、腎臓または乳房サンプルにおいては検出不可能であったが、ヒト明細胞腎細胞癌腫および乳癌の血管系においては高度に発現されていた。腫瘍サンプルの中では、0114発現はmRNAレベルでYEGFと正の相関があった(33)。異種移植片研究において、0114を発現しないヒトMCF7細胞株が腫瘍を生じ、それらの血管系の中で高レベルのマウス0114を発現した(34)。現在、腫瘍における0114の研究は、良好なモノクローナル抗体の欠如によって妨害されている。免疫組織化学によって0114タンパク質レベルの測定を可能にする抗体を開発するための研究が進行中である。
【0073】
分化を調節するNotch経路の構成要素は腺癌においてより頻繁に発現されるのに対して、Deltex、Mastermindは腺腫においてより頻繁であった(35)。qPCRは、腺腫と比較して卵巣腺癌においてNotch1 mRNAが減少していることを明らかにした。Notch1細胞外タンパク質の発現は良性腫瘍および悪性腫瘍において同様であった(35)。HES−1タンパク質は、18/19卵巣癌および境界型腫瘍において強力に発現されることが見出されたが、腺腫においてはそうではなかった。従って、Notch経路の構成要素のいくつかは、腺腫と癌腫の間で示差的に発現されている(36)。
【0074】
別々の実験において、本発明者らは、AES1がSK−OV−3(卵巣癌細胞)およびSKBR3(乳癌細胞)において強力に発現されることを見出した。腫瘍細胞に対するNotchの発現を調べるために、本発明者らは、Notch1および対応するアイソタイプ対照に対する抗体を使用して、SK−OV−3、MCF7、およびSK−LMS−1悪性平滑筋肉腫を染色した。図2の結果(A〜F)は、SK−OV−3およびMCF7がNotch1を発現するが、SK−LMS−IはNotch1を発現しないことを示す。
【0075】
本発明者らは、非活性化クローンの拡大を回避するために、低濃度のIL−2とともに卵巣腹水を培養した。図3は、腫瘍関連リンパ球(TAL)の増殖の反応速度論を示す。本発明者らは、CD8Numb1−87−TCR細胞が患者番号1からの培養腹水に存在することを見出しており、これは、Notch1−2112−TCR、およびAES1−128−TCR細胞よりも多い数であった(図4B〜D)。Numb−TCRCD8細胞はパーフォリンを発現し、これは、これらの細胞がインビボで分化したことを示した(図4G)。パーフォリンの発現は、2つのシグナル:1つはTCRから、他方はIL−2から、によって成業されていることが言及されるべきである。あらゆる特異性のT細胞が、同じ量のIL−2中で培養されたので、本発明者らの結果は、パーフォリン発現の違いは、抗原による活性化に起因する。
【0076】
Notch1−TCR細胞およびNumb−TCR細胞が他の患者からの腹水に存在するか否かに取り組むために、本発明者らは、4例のさらなるHLA−A2からの卵巣−TALを用いて実験を反復した。表3、および図5は、患者番号2、4、および5
が、Notch1−2112TCR、およびNumb1−87−TCRCD8細胞を含んでいたことを示す。Notch1−2112−TCR、Numb1−87 TCR細胞は、IL−2を用いる培養3週間後には、患者3からの培養腹水中でもはや検出されなかった(表3)。これは、これらの細胞が、他のT細胞集団の増殖のために、拡大しなかったかまたは希釈されたかのいずれかであることを示している。
【0077】
【表3】

(*)ベースライン対照dNPと反応性である陽性細胞%よりも有意に高く(2倍)、特異性対照Notch1(1947)−TCR細胞よりも高い。卵巣TALを、300IU IL−2を含む培地中で1週間培養した。
【0078】
特異的TCRの密度に基づいてCD8集団を特徴付けするために、本発明者らは、TCR細胞、TCR細胞、およびTCR細胞の存在を調べた。図5DおよびHは、患者2における有意な数のNumb1−87−TCRCD8細胞の存在を、対照、ベースライン対照と相互作用した細胞、空の二量体(dNP−TCR細胞)、および陰性対照、Notch1−1947ペプチドをパルスしたHLA−A2二量体を相互作用した細胞と比較して示す。Notch−2112−TCR細胞の少しの増加もまた存在した(図5CおよびG)。これらの結果は、大きなブラストサイズの集団の中で、CD8細胞の別個の分析において確認した(図5Gおよび5H)。大きなブラストサイズT細胞は、活性な細胞合成を有し、分裂するリンパ球である。同様の結果は患者5でも観察され、この患者における違いは、Numb1−87−TCRCD8細胞は、対照のdNP−HLA−A2−IgG二量体と反応性である細胞よりも2.45倍多かった。Notch 1−2112TCR細胞もまた、ベースライン対照、dNPと反応性である細胞よりも1.63倍多く存在した(表3)。患者4においては、本発明者らは、ベースライン、NP二量体と相互作用した細胞と比較して、2.61倍多いNotch1−2112−TCR細胞を見出した(表3)。これらの結果は、4例すべての卵巣患者からのすべての腹水が、Notch1−2112ペプチドおよび/またはNumb1−87ペプチドのTCRを有する細胞を含んだことを示す。
【0079】
それゆえに、ペプチドNotch1−2112およびNumb1−87は、インビボで産生されるのみならず、卵巣癌患者の腹水中でインビボでCD8細胞を活性化する。
【0080】
考察:本研究において、本発明者らは、卵巣癌患者においてCD8+細胞についてのインビボで天然の免疫原である、NotchおよびNumbから候補ペプチドを同定した。候補ペプチドは、HLA−A2、HLA−A24、HLA−A33、およびHLA−Cw4分子へのそれらの結合モチーフに基づいて選択した。さらなるストリンジェンシーのパラメーターとして、本発明者らは、プロテオソームによって産生される候補天然免疫原性ペプチドを同定した。第3に、プロテオソームによって産生されると同定されたペプチドとして、本発明者らは「修復可能」ペプチドのみを選択した。「修復可能」ペプチドのみが、APC中で腫瘍Agの前駆体を送達するDNAおよびRNAベクターによって発現可能である。
【0081】
驚くべきことに、本発明者らは、各タンパク質からの非常に少ない天然の免疫原性ペプチド、およびHLA−A2と関連して提示される各々1つのみを見出した。天然に免疫原性であるペプチドは、新規かつ感度の高い方法によって同定した。本発明者らは、TA/ペプチド負荷したA2−IgG二量体を使用し、本発明者らは、ペプチドを負荷していない陰性対照二量体を用いる染色と比較することによって、卵巣TALの認識の特異性を決定した。これらのリンパ球の分化は、パーフォリンの発現および細胞あたりのパーフォリン(MFIとして)の量を測定することによって決定した。本発明者らは、5例の患者のうちの2例が、Notch1−2112に特異的なTCRを発現するCD8パーフォリン細胞を活性化し、5例のうちの3例が、Notch1−87に特異的なTCRを発現するCD8パーフォリン細胞を活性化したことを見出した。これらのCD8細胞は、腫瘍を認識するT細胞の公知の低TCR密度よりも、より高密度のTCRを発現した。本発明者らの結果は、卵巣癌免疫治療のためのNotch1−2112ペプチドおよびNumb1−87ペプチドの使用を予測する。
【0082】
NotchおよびNumbは、卵巣癌のみならず、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、胃癌、および結腸癌においてもまた発現される(5〜7、37)。特異的免疫治療標的化により、これらの分子は、これらの抗原を発現する腫瘍の除去において有効であり得る。最近、NotchおよびNumbは、癌細胞の分化および転移の潜在能力を制御することが示された。NotchおよびNumbを標的とする免疫治療は、化学療法耐性であるのみならず、患者の死亡を迅速にもたらす肝臓および膵臓の癌の治療選択にすぐになるという可能性がある。
【0083】
本研究の結果はまた、HLA−A2系に向けた免疫原性TAの選択性を示す。HLA−A2スーパータイプには、HLA−A2(サブタイプ1〜7)に加えて、HLA−A68.2、およびHALL69.1が含まれる。しかしながら、プロテオソーム性消化の結果がHLA−A2サブタイプの親和性と比較された場合には、HLA−A2.5のみが、HLA−A2.1と同じペプチドを提示可能であった。HLA−A2.5は、ヒト起源と関連して、祖先の対立遺伝子と見なされている。しかしながら、HLA−A2.5によって提示可能であるNumb1ペプチドは、癌に対する予防を付与しないようである。HLA−A2.5およびHKA−A24と関連するNotch2ペプチドのみが、ある程度の予防を付与する可能性がある。次に、Notch1がコーカサス人における予防のために有意であるのに対して、Notch2は、何人かのアフリカ系米国人において癌の予防のために有意であるだろうか?
HLA−A2.1とのNotch1およびNumb1の関連性は、コーカサス人およびヒスパニックにおける癌予防のために有意である可能性がある。次に、肝臓および膵臓の癌からの予防は、最初はNumb1により、次にはNotch1による、免疫学的監視の冗長性に起因するのだろうか?
HLA−A24へのペプチド結合は、提示のためにネガティブに選択した。本発明者らは、HLA−A24への潜在的な結合と、プロテオソーム消化による産生の両方として、10量体Notch2(1940−1949)のみを見出した。HLA−A24と結合したNotch1ペプチドおよびNumb1ペプチドのいずれもポジティブに選択されなかった。HLA−A24産物は、東南アジア人に高頻度でプレセットされており、特に、日本において最も高頻度である(38)。
【0084】
異なる民族的グループの中で癌の発生率には明確に違いがある。例えば、結腸直腸癌の発生率は、世界中で少なくとも25倍の変動が存在する。その最高の発生率は北米、オーストラリア/ニュージーランド、西ヨーロッパにおいてであり、、男性では、とりわけ、日本においてであり(100,000人あたり49.3人);発生率はアフリカおよびアジアで低い傾向があり(例えば、中国は男性で100,000人あたり15.6人)、南アメリカの南部地域では中間である。胃癌については、胃癌の地理学的分布は、国の間での広い変動によって特徴付けられ;高リスク地域には、東アジア(例えば、日本−年齢標準頻度62.1)、西ヨーロッパ、ならびに中南米の地域が含まれる。発生率は、男性では、南アジア、北部および東部アフリカ、北米(例えば、年齢標準頻度はわずか7.4)、ならびにオーストラリアおよびニュージーランドにおいて低い。膵臓癌はUSAおよび日本で最高であるのに対して(それぞれ、100,000人あたり11.8人および10.9人)、アフリカおよび中国では最低である(それぞれ、100,000人あたり2.1人および6.3人)。多くの要因、例えば、食事、環境、習慣(喫煙および飲酒の履歴)、および遺伝がこの変動に寄与している。免疫遺伝は、確かに、寄与している要因の1つであり得る(39)。
【0085】
このような要因には、食事の成分や、名目上同じ成分の食事においては、食事の中での代謝および組織再生の経路に干渉する化合物の存在が含まれる可能性がある。
【0086】
ペプチドワクチンを用いる、Notch1およびNumbに対する免疫療法の開発は、急速に致死的な癌を発症する高いリスクを有する集団のために有用であり得る。
【0087】
Parkらは、Notch−3が卵巣癌において過剰発現されていると報告した(37)。本発明者らは,HLA−A2分子に結合し、I型プロテアソーム酵素活性によって消化されるが、II型またはIII型によってはほとんど消化されないか、全く消化されない、6種のNotch−3ペプチドを見出した。Notch−3ペプチドは、癌免疫療法の良好な標的であり得る。
【0088】
(実施例2)
緒言
正常な発生の間に、幹細胞再生は、周囲の幹細胞環境からのシグナルによって調節される。幹細胞集団の拡大は、特定のニッチまたは期間が形成されるときに停止する。この事象は、転移性の形質転換を暗示しない。多数の両性腫瘍が同様の理由のために拡大可能であるからである。NotchおよびHedgehogなどの、正常細胞の自己再生を調節する経路の相互の影響の解明が進行中である(40)。
【0089】
癌細胞は、活性化発癌遺伝子(例えば、Ras、BCr−Ablなど)とともに、調節解除されたNotchおよびHedgehogを含む。化学療法および放射線療法は衆生細胞を抹殺することが期待されているが、転移は、癌幹細胞(Cst−C)の特徴を有する腫瘍細胞が、化学療法および放射線療法に耐性である腫瘍細胞の集団の中に隠れていることを示唆している。癌細胞の増殖潜在性は、正常な幹細胞の能力と非常に類似している。この潜在能力は、対称的な細部分裂、およびアンカー非依存的な細胞増殖として説明できた(41)。発癌性Ras変異が蓄積する場合に、正常な幹細胞が悪性幹細胞(癌幹細胞)に変化する可能性がある(42)。
【0090】
膵臓癌は、世界中で5番目に多い癌である。その非常に高い死亡率の理由は、早期診断の手段が欠けていること、初期診断の時点で切除不能であること、および切除後の迅速な再発が含まれる。外科的切除は、局所的拡大および転移のために、膵臓癌細胞においては治療の選択肢であることはまれである。進行した膵臓癌を有する患者にとって、化学療法などの治療の選択肢は限られており、ゲムシタビン(GEM)が現在の標準的な治療である(43、44)。多くの臨床試験が組み合わせ化学療法を研究したが、進行した膵臓癌患者の予後の有意な改善を提供する戦略は同定されていない。新たな治療アプローチが必要とされている(45〜49)。1つのブレイクスルー点は、化学療法に抵抗性があるCSt−Cを標的とすることかもしれない。
【0091】
細胞表面マーカーCD44およびCD24(CD24)の発現によって特徴付けられる乳癌細胞(BR−C)は、CSt−C機能的特性を有する(50)。CD44CD24ESA膵臓癌細胞は、免疫不全マウスにおいて腫瘍を形成する。CD44は、CSt−Cのために重要であり得る。なぜなら、CD44のレベルは、転移の間の癌細胞のホーミングと相関したからである(52)。CD133(プロミニン−1)の発現は、神経St−Cと脳CSt−Cの間を区別した(53)。CD133結腸癌細胞は、CD133細胞とは異なり、指数関数的に増殖した(54、55)。正常な前立腺幹細胞もまた、CD133を発現するが、しかしながら、CD44/α2β1/CD133表現型を有するCD133は、CSt−C特性を有する(56)。
【0092】
これらの知見は、化学療法剤がCSt−Cマーカーを発現する細胞を抹殺するかという疑問を惹起した。本発明者らは、GEMが、PC、BR−C、および上皮卵巣癌(BOVC)系統において、CD44CD133、およびCD24低CD133+細胞をポジティブに選択することを見出した。GME耐性(GEM耐性)PC、MIA−PaCa−2は、NECDおよびNICDの発現において、GEM耐性BR−C、MCF7とは異なっていた。GEM耐性細胞のDLL4活性化は、含まれる培地よりも、CD44CD24細胞の2〜3倍高い拡大を生じた。NotchおよびCD44CD24細胞は、NotchおよびNumbペプチド活性化PBMCによって、およびより少ない程度では、IL−2活性化PBMCによって抹殺された。
【0093】
材料と方法
細胞株および材料。ヒト癌細胞株PC(MIA−PaCa−2、PANC−1、およびAsPC−1)、BR−C細胞株(MCF7)、卵巣癌(SKOV−3)は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC;Manassas,VA)から購入した。すべての細胞は、10%ウシ胎仔血清(FCS)、100U/L ペニシリン、および100μg/mL ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640培地中で、95%加湿空気および5%二酸化炭素、37℃で培養した。
【0094】
試薬は以下の通り購入した:塩酸ゲムシタビン(ゲムザール(Gemzar)(登録商標、Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、パクリタキセル(タキソール(Taxol)(登録商標、Bristol−Myers Squibb Co.,Princeton,NJ)、5−フルオロウラシル(5−FU、Sigma,Saint Louis,MO)、フルオレセイン イソチオシアネート(FITC)結合体化マウス抗ヒト上皮特異的抗原(ESA)モノクローナル抗体(Biomeda,Foster City,CA)、アロフィコシアニン(APC)結合体化マウス抗CD44モノクローナル抗体(BD Pharmingen,San Diego,CA)、FITC結合体化マウス抗CD44モノクローナル抗体(BD Pharmingen,San Diego,CA)、R−フィコエリトリン(R−PE)結合体化マウス抗CD24モノクローナル抗体(BD Pharmingen,San Diego,CA)、FITC結合体化マウス抗CD24モノクローナル抗体(Abeam Inc.,Cambridge,MA)、PE結合体化マウス抗MICA/B抗体(R&D Systems,Inc.,Minneapolis,MN)、APC結合体化マウス抗CD133/2抗体(Miltenyi Biotec Inc.,Auburn,CA)および組換えヒトデルタ様タンパク質4(DLL4)(R&D Systems,Inc.,Minneapolis,MN)。
【0095】
抗癌薬物による腫瘍細胞株の増殖の阻害。IC50は、本発明者ら記載したように、GEM、PTX、およびFUとの72時間の曝露後に、古典的な3−(4,5−ジメチルトリアゾリル)−2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによって決定した(73)。
【0096】
フローサイトメトリー分析。すべての細胞は、Gemとともに、2×IC50ゲムシタビンで、10日間培養した。培養細胞(2×10)を冷PBS中で洗浄し、続いて、20μLの1mg/mL ヒトIgG(Sigma,Saint Louis,MO)で、氷上にて1時間ブロッキングした。この工程は、染色の間に免疫グロブリンの非特異的結合を阻害するために必要であった。次いで、細胞を、ESA、CD44、およびCD24に対する抗体で三重染色した。分析は、Becton Dickinson FACSCaliburおよびCell Questソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて実施した。細胞をESA+集団でゲートした。CD24およびCD44の発現をゲートしたESA+細胞中で本発明が記載したように試験した(26)。ESA+、CD44、およびCD24/−細胞の集団は、全細胞および全ESA+細胞のパーセントとして計算した。すべての細胞株もまた、MIC−A/BおよびCD133で染色し、上記のように分析した。他の実験において、MIA−PaCa−2およびMCF7は、2倍IC50濃度のGEM、PTX、またはFUとともに、続いて、0.7倍IC50濃度で3日間で培養し、上記のように染色および分析した。
【0097】
DLL4によるGEMRes MCF7の刺激。GEMRes MCF7は、0.3μM GEMで7週間の培養後に得た。MCF7は、DLL4の存在下または非存在下で、エストラジオール、線維芽細胞増殖因子を含む培地中で24時間刺激した(40)。
【0098】
NotchおよびNumbペプチドを用いるHLA−A2 PBMCの刺激。天然の免疫原性NotchNICD(2112−2120)およびNumb 1−PTBドメインペプチド(87−95)を、本発明者らが記載したように同定した(Ishyiama 2007)。非接着PBMCは、本発明者らが記載したように、ペプチドパルスした自系未熟DCを用いて活性化した(26)。
【0099】
ウェスタンブロット分析。生MIA−PaCa−2、MCF7、およびSKOV−3の細胞溶解物を、培養物のトリプシン処理後に、本発明者らが記載したように(74)調製した。この手順は、死滅した細胞および死滅しかけた細胞を除外する。細胞タンパク質は,SDS−PAGEによって分離し、ポリビニリデンジフルオリドメンブレンに移した。免疫ブロッティングおよび定量を、本発明者らが記載したように実施した(74)。
【0100】
結果
PC系統Mia−PaCa−2およびPANC−1の薬物感受性は、BR−C系統MCF7のそれと同様である。抗癌薬物耐性細胞を選択するために、本発明者らは、PC系統MIA−PaCa−2、PANC−1、AsPC−1;BR−C系統、MCF7;およびEOVC系統に対するGEM、5−フルオロウラシル(5−FU)、およびパクリタキセル(PTX)の細胞毒性を定量した。3種すべての薬物が癌治療のために有効であった。GEMは、フェーズIII臨床試験において、5−FUよりも、PCに対して少し良好な臨床的利点を提供する(44、45)。PTXもまた、PCに対して試されたが
しかしながら、GEMと比較して、改善を示さなかった。
【0101】
表1は、72時間で50%細胞増殖を阻害した薬物濃度(IC50)を示す。IC50の最も広い分散は、800(PANC−1)〜15,200nM(AsPC−1)の範囲である5−FUについて見出された。PTXのIC50は3.9〜18.3nMの狭い範囲であった。多くのPTX耐性AsPC−1のIC50は、多くのPTX感受性PANC−1のそれよりも4倍より大きかった。Mia−PaCa−2、PANC−1、およびMCF7は、GEMに対して同様の高い耐性を示し、それぞれ、300、350、および430nMのIC50であった。AsPC−1およびSKOV−3は、GEM感受性(GEM感受性)であり、20nMでIC50であった。それゆえに、Mia−PaCa−2、PANC−1、およびMCF7において、3種の薬物のIC50は同様であった。
【0102】
【表4−1】

【0103】
【表4−2】

*DLL4での刺激の際に総細胞数の45%<増加。**ゲムシタビンなしと比較して、ゲムシタビンを用いる選択後に、BR−CSt−Cの集団の2.7〜2.8倍の増加
【0104】
【表5】

ESACD44CD24、CD44CD133およびCD24CD133細胞は、薬物に対するPC、BR−C、およびEOVCの耐性を増加した。乳房腫瘍からのESACD44CD24細胞は、CSt−Cの機能的特徴を有している(50)。脳腫瘍、前立腺癌、および結腸癌からのCD133細胞は、CSt−Cであると見なされている(53〜56)。抗癌薬物がCSt−C表現型を有する集団を増加させるという仮説に取り組むために、本発明者らは、GEMの存在下または非存在下で培養したPC系統上でのこれらのマーカーの発現を試験した。表1Cならびに図6および7A、Bは、ESAの発現が、MIA−PaCa−2およびPANC−1を除いた癌系統の大部分において高かったことを示す。ESA細胞はGEM耐性細胞を増加した。ESACD44CD24集団は、AsPC−1を除いたすべてのGEM耐性細胞において増加した。
【0105】
ESACD44CD24およびCD133集団は、Mia−PaCa−2、PANC−1、MCF7、およびSKOV3における全体の集団と比較して、3〜5倍、GEM耐性集団を増加したが、AsPC−1においては増加しなかった(図8A)。GEMとともに培養した生MIA−PaCa−2細胞の形態学的外見は、円形から、紡錘型または長い触手を有する細胞に変化した(図10A、B)。これらの外見は、ヒト膵臓幹細胞の型と類似であった(57)。
【0106】
ESACD44CD24低集団は、GEM耐性Mia−PaCa−2およびMCF7で増加したので、本発明者らは、他の化学療法剤が同様の効果を有したか否かを調べた。CSt−C集団は、GEMおよび5−FUで処理されたMIA−PaCa−2において増加したが、PTX処理では増加しなかった(図7A)。例えば、3.0×10Mia−PaCa−2細胞から開始し、1.3、3.3、3.4、および8.1×10細胞を、GEM、PTX、5−FU、および薬物なしでそれぞれ収集した。0.6、0.4、1.6、および8.7×10MCF−7を、それぞれ、GEM、PTX、5−FU、および薬物なしで、3×10MCF−7細胞の培養後に収集した。GEMおよび5−FUは、MCF7とMia−PaCa−2の両方においてCSt−様−C集団増加したが、PTXはMCF7中のそれを増加した(図7B)。
【0107】
化学療法薬物は、薬物耐性細胞中でNKG2Dリガンドを発現する集団を増加する。
【0108】
薬物耐性癌細胞は、細胞免疫エフェクターに対してより感受性があるという仮説に取り組むために、本発明者らは、NKG2Dリガンド、MIC−Aおよび−Bの発現を定量した(58、59)。ESAMIA−PaCa−2細胞を、MIC−A/Bについて分析した。MCF7細胞は、CD44、CD24、およびMIC−A/Bを用いて分析した(図7B)。なぜなら、ほぼすべての(95%以上)MCF7細胞がESAを発現したからである。
【0109】
MIC−A/Bは、未処理MIA−PaCa−2の28.9%で存在した。GEM耐性および5−FU耐性Mia−PaCa−2細胞は、3倍より多く、MIC−A/Bの発現を有意に増加した(図7A)。多くのESAMIA−PaCa−2細胞は、MIC−A/Bを豊富に発現した。CSt−様−Cは、あらゆる抗癌薬物に対して耐性であるMCF7の完全な集団の中で増加した。しかしながら、MIC−A/Bの発現は、CD44およびCD24の発現と相関しなかった。
【0110】
ゲムシタビンは、より高いNECDを有するMCF1細胞、およびより高いNICDを有するMIA−PaCa−2を選択する。Notchシグナル伝達は、正常な関西部の生存および増殖を促進する。Notchシグナルは、短縮型細胞内ドメイン(NICD)によって媒介され、これは、核における転写を活性化する。Numbは、Notchの分解を誘導することによってNotchシグナル伝達と拮抗する(60、13)。哺乳動物Numbは4種のスプライシングアイソフォームを有し、これらは、C末端のプロリンリッチ領域(PRR)における49アミノ酸挿入(5kDa)の存在または非存在に基づいて、2つの型(NumbおよびNumb)に分けられる。NumbまたはNumbがNotchの顕著なアンタゴニストであるか否かは不明である。NotchおよびNumbタンパク質の発現を特徴付けするために、本発明者らは、GEMのあるなしで培養した生MIA−PaCa−2およびMCF7の溶解物中でのタンパク質の定量的免疫ブロット分析を実施した(図9)。
【0111】
GEM感受性細胞と比較して、Notch細胞外ドメイン(NECD)発現は、GEM耐性MIA−PaCa−2において18%、およびMCF7において73%増加した。対照的に、MIA−PaCa−2(35%)においてはわずかに増加したが、MCF7においては39%減少した。Numb発現は、GEM耐性MIA−PaCa−2において50%増加したが、GEM耐性MCF7において29%減少した。対照的に、Numbは、GEM耐性MIA−PaCa−2とMCF7の両方において18%減少した。結果は、GEM耐性MIA−PaCa−2細胞が機能的なNICD量を有意に増加したのに対して、MCF7は、Numbの同時の減少とともにNECDを増加した。本発明者らの結果は、GEM耐性MCF7のNotchリガンドに対する感受性は、GEM耐性MIA−PaCa−2のそれよりも高いことを示す。
【0112】
GEM耐性におけるDLL4によるNotchシグナル伝達の活性化はCSt−Cを増加させる。デルタ様タンパク質4(DLL4)は、Notch受容体の内皮性活性化リガンドである(61、62)。多くの(>90%)のGEM耐性MCF7細胞はG1(休止)期にあった。これらの実際の細胞数は時間とともに減少した。本発明者らは、可溶性DLL4を用いて、GEM耐性MCF7においてNotchシグナル伝達を活性化した。DLL4は、GEMの非存在下および存在下で増殖を活性化した。DLL4+GEMは、DLL4単独と比較して、CSt−C集団をほぼ3倍、選択的に拡大した(表1C)。多数のDLL4拡大細胞は、CD44CD24およびCD24表現型であった(図8B)。このような細胞は、これらの接着が乏しいので、高い転移の潜在性があると記載されてきた(63)。
【0113】
NotchおよびNumbペプチド活性化PBMCは、CD44CD24およびNotch細胞を抹殺する。MCF7がMIC−A/B、Notch、およびNumbタンパク質を発現するという知見は、MCF7がIL−2活性化末梢血単核細胞(PBMC)ならびにNotchおよびNumbペプチド活性化PBMCに対して感受性があるか否かという疑問を惹起した。データ(示さず)は、MCF7を有する健常HLA−A2一致ドナーからの、IL−2活性化PBMCを用いる免疫選択が、NICDMCF7細胞の数を36%減少したことを示す。Notch11212−2120ペプチド活性化PBMCは、NICD+細胞の数を50%減少したのに対し、Numb87−95ペプチド刺激PBMCは、IL−2活性化PBMCと同様の非特異的効果を媒介した。それゆえに、ペプチド活性化PMBCの一部は、HLA−2によって提示されるNothc−NICD領域からのペプチドを認識した。
【0114】
活性化PBMCがCSt−様−Cの拡大を阻害したか否かを同定するために、本発明者らは、同じ活性化PBMCとともに、GEM耐性およびGEM感受性MCF7を同時培養した。データ(示さず)は、MCF7細胞が、IL−2活性化されかつNotch−12112−2120+IL−2活性化PBMCとの同時培養の間に、数が減少しなかったことを示す。Numb87−95+IL−2活性化PBMCは、IL−2−PBMCと比較して、MCF7およびCD44CD24MCF7の数を有意に減少した。
【0115】
GEM耐性MCF7が同じ免疫エフェクターに対して感受性があったか否かに取り組むために、本発明者らは実験を反復した。データ(示さず)は、GEM耐性細胞がゆっくりと増殖し、5日間で50%のみ数が増加したことを示す。免疫エフェクターとの同時培養は、MCF7増殖を完全に阻害した。対照的に、CD44CD24細胞は非常にゆっくりと増殖し、これらは、免疫エフェクターの非存在下では、53,000細胞〜60,000細胞まで増加し、IL−2活性化およびIL−2プラスペプチド活性化PBMCを用いる免疫選択後には、非選択GEM耐性MCF7と比較して、2倍より多く数が有意に減少した。IL−2活性化またはペプチド活性化PBMCとの同時培養後に、GEM耐性MCF7の生存の有意な違いはなかった。
【0116】
結果は、GEM耐性MCF7上でのMIC−A/B発現の増加と一貫している。活性化NKおよびCTLなどの細胞免疫エフェクター上のNKG2D受容体は、MIC−A/Bの認識によって、腫瘍の抹殺の効率を増幅する(59)。しかしながら、MCF7とMIA−PaCa−2の両方のGEM耐性細胞は、MIC−A/B発現を増加し、天然の免疫単独が、それを発現しないいくつかの細胞を放置した。
【0117】
非特異的細胞性免疫はGEM耐性細胞に対して有効であるが、CSt−様−Cは脱出し得る。なぜなら、MIC−A/Bは、特に、CSt−様−C上で発現されなかったからである。CSt−様−Cを含むGEM耐性細胞は、G1停止を維持および克服するためにNotchシグナル伝達を必要とする。Notch−12112−2120活性化PBMCはNotch細胞を除去可能である。本発明者らの結果は、CSt−様−Cに対するGEMをとりわけ含む化学療法後に、後天的な特異的かつ天然の免疫治療の見通しを支持する。
【0118】
考察
本発明者らは、いくつかのPC系統、MIA−PaCa−2、PANC−1、およびASPC−1が、胸部−CSt−C表現型を有する顕著な集団を含んだことを見出した。加えて、試験したすべての系統が、結腸−CSt−Cマーカーを発現する顕著なサイズの集団を含んだ。膵臓−CSt−様−Cの表現型特徴付けは、陽性対照胸部MCF7と同時に実施した。機能的タンパク質は、しばしば、それらの組織起源とは独立して、癌細胞の特異的な特徴を提供する。
【0119】
試験したすべての細胞株の中でGEMに対して最も感受性があったAsPC−1は、BR−CSt−C表現型(ESACD44CD24)の大きな集団および結腸−CSt−C表現型の小さな集団を含んだ。この表現型を有する細胞の大きな数の理由は不明である。AsPC−1が腹水から単離されたので、これはCSt−C細胞から生じ、これが腹膜後器官から腹水に侵入しかつ浮遊したという可能性があるかもしれない。
【0120】
CSt−C表現型を有する集団は、GEMまたは5−FUを用いる処理によってMIA−PaCa−2において増加したが、PTXでは増加しなかった。しかしながら、CSt−Cの集団はASPC−1中では同じままであり、GEMを用いる処理にいては増加しなかった。この変化の欠如は、GEMのIC50とは相関しなかった。本発明者らの結果は、膵臓CSt−Cが維持のために独特な経路を使用することを示した。
【0121】
GEMおよび5−FUはDNA合成の阻害剤であり、これはG0/G1およびS期での停止を誘導し、腫瘍細胞中でアポトーシスを誘発する(64、65)。PTX阻害剤は、細胞周期のG2およびM期において遮断することによって細胞分裂を阻害し、細胞質微小管を安定化する。しかしながら、G1で静止している癌細胞はGEMおよび5−FUで生き残る。なぜなら、これらの核酸合成は最小限であるからである。対照的に、PTXは、紡錘体の位置に干渉でき、対称的な細胞分裂を生じる。Numb局在化は、非対称的な細胞分裂を生じる。PTXは、CSt−Cの有糸分裂段階において、対称と非対称の両方の細胞分裂を停止できる。その後、CSt−Cは生き残り、薬物の分解後に拡大を開始する。Notch受容体は、3種のデルタの膜貫通リガンド(DLLl、2、および4)ならびに2種のSerrate(Jagged−1および2)リガンドによって活性化される(65)。DLL4によるNotch活性化は、血管形成の活性化のために顕著であると最近報告された(61、62)。Notchの過剰発現はNumb発現と拮抗し、Numb機能を抑制する(14)。それゆえに、DLL4は、CSt−様−Cの対称的な細胞分裂および迅速な拡大をブーストする。
【0122】
このプロセスにおけるGEMの役割は何であろうか?GEMおよび5−FUはDNAおよびRNA合成の阻害剤であり、これは、新たに合成される鎖に取り込まれる。GEMおよび5−FUはG1期の細胞には影響を与えなかった(64、66)。PTXは、微小管を安定化することによって、GM期をブロックする。G1で静止している癌細胞は、GEM、5−FU、およびPTXで生き残る。なぜなら、これらの核酸合成は最小限であるからである。PTXは、紡錘体の位置に干渉でき、対称的な細胞分裂を生じる(67、68)。Numb局在化は、非対称的な細胞分裂を生じる(69)。その後、CSt−Cは生き残り、薬物の分解後に拡大を開始する。Notch受容体は、3種のデルタの膜貫通リガンド(DLLl、2、および4)ならびに2種のSerrate(Jagged−1および2)リガンドによって活性化されるときに、独特なシグナルを明らかに伝達する。Notchリガンドが刺激細胞においてNECDのエンドサイトーシスを誘導することが最近報告された(70)。本発明で使用されるDLL4などの可溶性リガンドは、別の研究後に、CS−Cの増殖を活性化する際に有効性が少ないはずである(70)。
【0123】
GEM耐性MCF7およびMIA−PaCa−2は、NECD、NICD、およびNumbの密度が異なっており、MCF7は、MIA−PaCa−2よりもNECDの密度を増加していた。MCF7はNICDを減少したのに対して、MIA−PaCa−2はNICDを増加した。MCF7がNotch受容体の密度を増加させることによって応答するためのそれらの「周到さ」を増加させるのに対して、MIA−PaCa−は、薬物が除去されるときに転写を活性化させるためにより多くのNICDを「準備中」に保持すると提案することは魅力的である。Numbの減少は「応答準備仮説」と一致している。CSt−CはGEM耐性細胞中では少数派(<30%)であったので、NotchおよびNumb活性化のメカニズムおよび経路を同定するために将来の研究が必要とされている。
【0124】
本発明者らは、これらの細胞がどのようにして除去できるかを研究した。本発明者らの最初の顕著な知見は、GEM耐性細胞が、NKG2Dリガンド、MIC−AおよびBの発現を増加したことである。MIC−A/Bの発現の増加は、NKおよびCTLおよびサイトカイン活性化リンパ球に対する癌細胞の感受性を増加させるはずである。この知見は、PCにおける腫瘍抗原ワクチンの有効性に対する最近の知見を支持するための理論的根拠を提供する(71)。
【0125】
本発明者らの2番目の顕著な知見は、NotchおよびNumbそれ自体が、Notch−NICDおよびNumbペプチドに特異的であるCTLによって標的化可能であることである。NICDペプチドは、シグナル伝達後に分解されたNICDから生じる。Numbペプチドは、Numbリン酸化後に生成する。このシナリオにおいて、GEM耐性腫瘍は、Numbが分解され、CS−C増殖が活性化されるときに、CTLのための標的となる。さらに、NICDは、癌細胞が「応答準備」状態にある場合、CTLのための良好な標的になる。両方の系統におけるNumbの観察された減少、およびMCF7におけるNICDの減少は、これらの試みが化学療法直後に有効であることを示唆する。CSt−Cは、照射(72)および化学療法(本研究)に対して抵抗性があることが最近報告された。自系の腫瘍抗原活性化TおよびNK細胞を用いる、進行した膵臓癌を有する患者の輸液は、このような患者の生存を延長する可能性がある。
【0126】
(実施例3:ヒト固形腫瘍における癌幹細胞様細胞(CSt−C))
幹細胞(St−C)は、自己再生能力と、多方向に分化する能力の両方を有する細胞である。幹細胞は、器官の生成および初期発生において必要とされるが、しかしまた、種々の組織の傷害または炎症性損傷の修復および維持の間にも必要とされる。
【0127】
ある種の遺伝子、例えば、RASの中での変異は、完全な癌表現型を有する細胞を付与するために十分である。癌幹細胞(CSt−C)は、原癌遺伝子における変異の蓄積から生じる。C−St−Csは、自己再生が可能であり、インビボで腫瘍増殖を持続し、自己再生的分化の能力を有する、生物学的に区別できるクローンを表す。C−St−Csは、血液癌、ならびに乳癌、脳腫瘍、前立腺癌、および結腸癌などの固形腫瘍において同定された。C−St−Csは、放射線および多剤耐性ならびにアンカー非依存性増殖などの典型的な悪性の特徴をほとんどすべて有する。従って、古典的な治療様式は、これらの細胞を抹殺するのではなく、C−St−Csのための栄養素が豊富なニッチを作製することである。分子標的治療の新たなストラテジーが必要である。本実施例において、本発明者らは、C−St−Csの抹殺のための適切な標的に焦点を当てる。
【0128】
幹細胞および癌発生の対称型/非対称型分裂
St−Cは2つの型の分裂、対称型および非対称型を有する。親のSt−Cの対称型細胞分裂は、親のSt−Cと同じ能力を有する2つの娘細胞St−Cを生じ、St−Cの数を増加する。非対称細胞分裂は、1つの同一の娘細胞(自己再生)および分化する1つの娘細胞を生じる。非対称分裂は、細胞内および細胞外のメカニズムによって調節される。最初に、細胞の運命を決定する細胞の構成要素の非対称的分割を決定する。外部要因が、微小環境に対して、娘細胞の非対称的配置を媒介する(St−Cニッチおよびシグナルに対する曝露)。
【0129】
発生の間に観察される対称的St−C分裂もまた、創傷治癒および再生の間に一般的である。St−Cは、胚性または初期胎児発生の間に、未分化娘細胞のSt−Cプールを拡大するために対称的分裂を受ける。対称的St−C分裂はまた、成体においても観察された。Drosophilaの卵巣において、成体生殖系列幹細胞は、非対称的に分裂して、ニッチの中に幹細胞の運命を有する1つの娘細胞を保持し、他方を分化させるためにニッチの外部に配置する。しかしながら、雌性生殖系列はSt−Cは、対称的に分裂させるため、および実験操作後にさらなるSt−Cを再生させるために誘導することができ、ここで、1つのSt−Cがニッチから取り出される。
【0130】
哺乳動物幹細胞もまた、対称型と非対称型の細胞分裂の間でスイッチを切り換えている。神経と上皮の両方の前駆細胞は、胚性発生の間にSt−Cプールを拡大する主として対称的な分裂から、中期から後期の妊娠期間において分化した細胞数を拡大する主として非対称型分裂まで変化する。対称型St−C自己再生および拡大は、発生の柔軟性および生成の増強を付与する。しかしながら、St−C自己再生はまた、癌の固有のリスクを含む。Drosophila神経芽細胞は、以下の非対称型局在の結果として非対称的に分裂する:(i)皮質細胞極性決定基(例えば、Partner of Inscuteable(PINS)および非定型プロテインキナーゼC(a−PKC))、(ii)細胞運命の決定因子(例えば、NumbおよびProspero)、および(iii)紡錘糸の規則的な整列。非対称分裂を調節する機構が破壊される場合には、神経芽細胞は対称的に分裂し、腫瘍を形成する。
【0131】
PINSを欠く細胞クローンは腫瘍形成性である。PINSと致死性巨大幼虫因子(LGL)の両方を欠く二重変異体細胞は、大部分が対称的分裂であり、かつ自己再生する神経芽細胞からなる脳を生成する。細胞の運命の決定因子であるNumbまたはProsperoを欠く細胞クローンもまた腫瘍形成性であり、移植後に新たな宿主に増殖可能である。これらの腫瘍細胞は、対称様式の分裂を採用する40日間で異数体になることが示されてきた。それゆえに、対称的に分裂する能力は、新生物形質転換のための必須条件であり得る。癌は、少なくとも部分的に、対称様式の細胞分裂を採用する能力を反映し得る。
【0132】
非対称細胞分裂を促進する機構は、腫瘍抑制において進化の過程で保存された役割を有する。大腸腺腫様ポリポーシス(adenomatous polyposis coli)(APC)遺伝子は、Drosophila精原幹細胞の非対称分裂のために必要であり、哺乳動物腸管上皮における重要な腫瘍抑制因子である。APCが腸管上皮におけるSt−Cによる非対称分裂を調節しているか否かは不明であるが、結腸直腸癌は、腸管上皮St−Cのものと顕著に類似している特性を有する。LGLのヒトホモログ、HUGL−1もまた、癌において頻繁に欠失されており、マウスにおける対応する遺伝子の欠失は、中枢神経系における極性および異形成の損失に導く。Numbの損失は、乳癌において観察されるNotch経路のシグナル伝達の活性化過剰に関与し得る。これらの遺伝子産物は、細胞の極性に対するそれらの効果とは独立している種々のメカニズムを通して腫瘍形成を阻害することができるが、これらの遺伝子が一貫的に腫瘍抑制因子として機能するという事実は、非対称分裂それ自体が癌に対して防御し得ることを示唆する。
【0133】
対称型細胞分裂と癌の間の連関についてのさらなる証拠は、ある遺伝子産物が、哺乳動物細胞中で、対称型細胞分裂を誘導することと、発癌遺伝子として機能することの両方が可能であるという観察である。aPKCは、通常、PAR3/6−aPKC複合体の一部として、神経芽細胞の頂端皮質に局在する。aPKCの構成的に活性な改変体の神経特異的発現は、対称的に分裂している神経芽細胞の大きな増加を引き起こす。Drosophilaにおける腫瘍発生性の潜在能力と一致して、aPKCはまた、ヒト肺癌における発癌遺伝子として同定されてきた。従って、非対称型分裂は、発癌を抑制する可能性がある。非対称型分裂に切り換えるためのSt−Cの調節は、癌の進行を抑制する可能性がある。
【0134】
NotchおよびNumbは対称型/非対称型の分裂において重要な役割を果たしている
Notchは、核における転写活性化に直接的に関与する細胞内ドメイン(NICD)を切断後に遊離する膜貫通受容体をコードしている。Notch活性化は、細胞質シグナルの迅速な活性化を通して、その特異的標的遺伝子:hairyおよびsplit 3のエンハンサー(Hes3)ならびにソニックヘッジホッグ(Sonic hedgehog)(Shh)の発現の誘導によって、神経St−Cの生存を促進する。Notchリガンド、デルタ様4(DLL4)は細胞死を迅速に阻害する。Notchリガンドに曝露された細胞は、Notchリガンドへの曝露の延長後、ニューロン、星状細胞、および乏突起膠細胞を生成する潜在能力を保持する。DLL4によって分裂されるように刺激された細胞は、未成熟状態の正常脳の柔組織中で長時間生存し、プロ生存分子のアップレギュレーションを示唆する。
【0135】
NotchアンタゴニストNumbは、Notchの量を減少し、Notchシグナルへの娘細胞の応答を修飾する(Notch細胞はシグナルを受容し、隣接細胞にそのシグナルを伝達できるのに対し、Notch細胞はNotchシグナルを受容することのみができる)。Notchシグナル伝達の阻害は、哺乳動物の非対称型分裂の調節に関与しているようである。齧歯類皮質の発生における未分化の神経前駆細胞は、神経発生のために運命付けられた前駆体に、Numbを非対称的に分配する。従って、筋細胞におけるNumbの非対称的分離は、制御の一般的な様式であり得る。神経芽細胞の非対称型分裂からの層間剥離の間、Numbおよびいくつかの他のタンパク質は、固有の決定因子として、基底皮質半月(crescent)に同時局在化される。これらのタンパク質は、基底娘細胞またはガングリオン母細胞に分割され、これらは、1回以上分裂し、2つのニューロンまたはニューロンおよびグリア細部を生じる。タンパク質が分割される頂端娘細胞は、神経芽細胞の特性を維持しており、数回のさらなる細胞分裂のラウンドを受けることが可能である。
【0136】
N末端ホスホチロシン結合(PTB)ドメインは、は、膜にNumbを補充する。Numb−PTBドメインは、NIP(Numb相互作用タンパク質)と特異的に相互作用し、これは、細胞質ゾルから、原形質膜までNumbを補充する固有の膜タンパク質である。Numb−PTBドメインはまた、ユビキチン化およびmNumbの分解のためのE3リガーゼとして働くLNX(NumbXのリガンド)と相互作用し得る。哺乳動物Numb(mNumb)は4つのスプライシングアイソフォームを有する。これらは、C末端のプロリンリッチ領域(PRR)における50アミノ酸挿入物の存在または非存在に基づいて2つの型に分けられる。長いPRRドメインを有するヒトアイソフォーム(Numb−PRR)は、中枢神経系(CNS)における初期の神経発生の間の分化に影響を与えることなく、細胞の増殖を促進する。短いPRRドメインを有するアイソフォーム(Numb−PRR)は、幹細胞の増殖を阻害し、ニューロンの分化を促進する。Numb−PRRは、Notchの量を減少し、Numb−Lよりも強力なNotchシグナル伝達の活性と拮抗する。対照的に、Numbのネガティブ調節であるユビキチン化は、電荷を有するデカペプチドを含むPTB改変体を標的とする。
【0137】
本発明者らは、乳房MCF−7、膵臓Miapaca−2、および卵巣SKOV3系統におけるNumbLおよびNumbSの発現の独特のレベルを見出した。Numbの発現は、C−St−Cの対称型/非対称型分裂の潜在性、およびその癌活性化に対する関連性の指標であり得る。この問題に取り組むためにさらなる研究が必要である。
【0138】
多能性因子が標的とするポリコーム基タンパク質標的遺伝子
ポリコーム基(PcG)タンパク質は、クロマチン構造の後成的修飾を通して後生動物発生の間に細胞の同一性を維持している転写リプレッサーである。PcGタンパク質は、胚性幹細胞(E−St−C)において発生遺伝子を転写的に抑制し、その発現は、さもなくば分化を促進する。PcG結合クロマチンは、ヒストンH3のLys27(K27)においてトリメチル化されており、転写的にサイレントである。8量体結合転写因子−4(OCT4)、SRY関連ハイモビリティーグループ(HMG)−ボックスタンパク質−2(SOX2)、およびホメオドメイン含有転写因子、NANOG遺伝子はPcG標的であり、クロマチン修飾因子が、ESf−C細胞における発生経路を直接的に抑制するためにこれらの3つの多能性調節因子と協調的に作用し得る。OCT4は、成体多能性St−C、ならびにいくつかのヒトおよびラット腫瘍細胞において発現されるが、しかしながら、これらのSt−Cの正常に分化した娘細胞においては発現されない。Oct4遺伝子を発現する成体細胞は、潜在的に多能性St−Cであり、発癌プロセスの開始と関連性がある。SOX2は、転写の調節およびクロマチン構造に関連している。SOX2は、線維芽細胞増殖因子−4(Fgf4)のエンハンサーDNA配列上にOCT4または遍在性OCT1タンパク質のいずれかとの三成分複合体を形成することによって、内部細胞塊(ICM)およびその子孫または誘導体細胞の調節に関与している。Nanogは、マウスEst−Cの細胞再生および多能性のための白血病阻害因子(LIF)非依存性能力を付与する。Nanogは、NK遺伝子ファミリーのメンバーとの相同性により、ENK(初期胚特異的NK)として最初に記載された。Nanog mRNAは、始原生殖細胞および胚性幹細胞において存在する。Stellaそれ自体を多能性のマーカーとして考慮したにも関わらず、Nanogタンパク質はStella陽性マウス始原生殖細胞においては見出されない。生殖細胞におけるNanogの機能は、それらが成熟するにつれて進行的に消失する。Nnaogは分化を促進する遺伝子の転写を抑制し得る。
【0139】
多くの発生の遺伝子と関連するクロマチンコンホメーションは、H3における阻害性メチル化K27と、活性化メチル化Kヒストンの両方からなる「ピバレントドメイン」から構成される。これらの二価ドメインは分化した細胞においては失われており、これらがES細胞の発生学的な柔軟性を維持する際に重要な役割を果たすことを示唆している。従って、OCT4、SOX2、およびNANOGは、多能性状態における鍵となる発生学的調節因子をサイレンシングするために、PcGタンパク質と協調して作用し得る。
【0140】
PcGによる遺伝子不活性化は、種々のPcGタンパク質の2つの複合体の共同を必要とする:(i)ポリコーム抑制複合体1(PRC)はクロマチンに結合し、公知の遺伝子活性化タンパク質複合体の効果を遮断する、(ii)PRC2はPRC1を遺伝子を標的とするように導く。ZesteのエンハンサーについてのE(Z)として公知であるPRC2成分の1つは、メチル(CH3)基をK27に付加する能力を有し、これは、クロマチンのH3の末端のテールに位置している。ヒストン修飾は、その修飾に依存して、遺伝子の活性を調節し、それらをオンまたはオフのいずれかに切り換える際に、主要な役割を果たす。PRC2の場合において、CH3付加は、不活性化される遺伝子にPRC1を誘引することによって、遺伝子をオフに切り換える。PRCのメチル化活性は、PRC1結合のために必要とされる。
【0141】
ショウジョウバエE(z)タンパク質のヒト等価物であるEZH2の発現は、局在化した腫瘍または正常組織におけるよりも、前立腺癌および乳癌の転移においてはるかに高い。癌組織におけるEZH2の発現は、黒色腫、乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌、および胃癌の乏しい予後および悪性の潜在性、例えば、高い増殖、伝播、および侵襲と相関することが報告された。E(Z)タンパク質の産生を遮断することは、前立腺癌細胞の増殖を阻害した。EZH2は、腫瘍抑制遺伝子またはその場所にアンカーされた細胞を維持するタンパク質を作製する遺伝子を阻害し得る。EZH2の過剰発現およびPRC改変体の形成は、未分化細胞ならびに癌細胞において起こる。EZH2によって媒介されるヒストンメチル化は、それらの多能性発生状態において幹細胞を維持することを補助する。
【0142】
癌は脱分化によって得られる癌幹様細胞から引き起こされ得る
1)多能性因子は、成熟細胞から幹様細胞を作製するために必要とされる。
【0143】
いくつかの癌は、幹細胞であることを伴う、脱分化された癌細胞から引き起こすことができる。OCT4、SOX2、およびNanogに加えて、c−mycおよびKlf4もまた、Est−C表現型の長期間の維持、および培養中でのEst−Cの迅速な増殖に寄与する。成体マウス線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導は、Oct4、Sox2、c−Myc、およびKlf4を導入することによって実証され、これは、成熟細胞が特別な状況下で未成熟に戻り得ること、次いで、ある癌細胞は幹細胞であることを維持し得ることを示唆する。これらの因子はいかにして互いに影響を与えるのであろうか?Oct4の発現の増加は、マウスEst−Cに余分の胚期の外胚葉および中胚葉への分化を引き起こすのに対して、Nanogの発現の増加は、自己再生および未分化状態の維持を増強する。Oct4の発現の減少は、マウスEst−Cに栄養外胚葉への分化を引き起こす。これは、Oct4およびNanogが独立して操作し、それらの主要な機能は胚性細胞分化の抑制であり得ることを示す。両方のタンパク質からの合わせたシグナルは、原始外胚葉の再生および多能性に導く。8量体およびsoxエレメントは、マウスおよびヒトのNanog転写のアップレギュレーションのために必要とされる。OCT4、SOX2、およびNanogはさらなる転写因子とともに協働作用する。これらは必須であるが、多能性細胞状態の詳細のためには十分ではない。Oct4およびNanogの発現の上流制御の特徴付けが非常に重要である。
【0144】
2)癌細胞は幹細胞であることを獲得し得る。
【0145】
癌細胞は、通常は、長い生存、遠くでの転移、および抗癌剤耐性で定義される、悪性の潜在性を有する。C−St−Csは、乳癌、脳腫瘍、前立腺癌、および結腸癌において報告された。乳癌、膵臓癌、および卵巣癌は上皮起源であるので、これらは、上皮マーカーESAを発現する。試験されたある膵臓癌(PC)系統はCSt−Cに特徴的な表現型:CD44+CD24/−を発現したが、すべての膵臓癌(PC)系統で発現されるわけではない。驚くべきことに、ESA+CD44+CD24/−集団はゲムシタビン(GEM)または5−フルオロウラシル(FU)を伴う培養後に増加した。DNAおよびRNA合成阻害剤GEMおよび5−FUは、最も有効な抗癌薬物の中に含まれる。薬物および照射によるC−St−Csのポジティブ選択は、2つの仮説に対するサポートをもたらす。第1に、C−St−Csは耐性集団において富化されており、なぜなら、これらは、高レベルの抗アポトーシス性分子を発現し、同時にG1休止状態であるからである。第2に、紡錘体の位置の変化、すなわち、脱分化の後、ゆっくりとかつ「非対称的に」耐性細胞が分裂することである。これらの仮説は図13に要約されている。
【0146】
C−St−Cの根絶
すべての研究は、C−St−Cが化学療法および放射線療法に耐性であることに同意している。C−St−Cを根絶するための第1の試みは、対称型細胞分裂を促進する遺伝子経路を負に調節することである。上記に列挙したすべての遺伝子およびタンパク質の機能はアンタゴニスト的な遺伝子産物によって負に調節可能である。
【0147】
1つの可能性は、癌細胞の中でのNotchのアンタゴニストの発現にある(図2)。NumbまたはそのPTBドメインをコードするmRNAは、ネガティブ鎖RNAベクターから腫瘍細胞中で発現可能である。このようなベクターは、ニューキャスル病ウイルスまたはセンダイウイルスに基づく。不運にも、近年の鳥インフルエンザへの関心がこの試みの魅力を制限している。
【0148】
代替案は、活性化経路を正に制御するタンパク質の分解である。哺乳動物オーロラAは、いくつかの癌におけるその過剰発現、特定の細胞株における増殖を促進するその能力、ならびにレベルの減少が複数の中心体の増殖、有糸分裂の遅延、およびアポトーシスに導くという事実により、発癌遺伝子と呼ばれている。提案するメカニズムを以下に説明する。オーロラ−Aは、MIA−PaCa−2を含むPC系統において過剰発現され、経路:MAPK−ERK−ETS2によって活性化される。哺乳動物オーロラ−Aがいかにして幹細胞の非対称型分裂および自己再生を調節することかは不明であり、これが、PC発癌に関与し、Ras−またはMyc−シグナルと協働する。最近の研究は、UBリガーゼE3 Se110の減少が、延長されかつ持続されたオーロラ−Aシグナルを可能にし、その標的は、癌細胞の自己再生を促進することを見出している。癌細胞におけるUb−リガーゼが助けとなり得る。図14を参照のこと。
【0149】
第2の試みは、非対称型分裂を阻害するために、PKCおよびaPKCのより特異的な小分子阻害剤を開発することである。このような阻害剤は、異なる状況において重要である。タキソールは微小管の重合に影響を与える。いくつかのタキソール耐性細胞が紡錘糸を再配置するという可能性がある。タキソールで処理された卵巣およびPCはCD44+CD24細胞の数を増加させた。
【0150】
第3の試みは、一見無関係な研究から得られる。EZH2タンパク質は、活性特異的腫瘍免疫治療によって標的とされた。HLA−A24様式によって限定されるEZH2のペプチド配列を認識するCTLを同定した。EZH2を用いるワクチン試験は、前立腺癌の患者および脳腫瘍の患者において進行中である。疑問は、高発現EZH2が、高いターンオーバー速度を生じるか否かである。このシナリオにおいてのみ、EZH2に焦点を当てた免疫療法がCSt−Cを根絶する。図17A〜17Bを参照のこと。
【0151】
本発明者らは、NumbおよびNotchそれ自体が、活性化CTLによるCst−Cの根絶のための適切な標的であると考えている。Notchリガンドによる増殖を活性化するCst−Cは、Numbを分解し、提示する。
【0152】
NumbペプチドはHLA−A、B、Cに結合する。これらの複合体は、Numbペプチド特異的CTLによって認識および根絶が可能である。代替としては、休止状態にあるCSt−CはNotchを分解する。腫瘍によって提示されるNotchペプチド−HLA、ABC複合体は、Notchペプチド特異的CTLの標的中のCst−Cを形質転換する。
【0153】
結論
自己再生と多能性の両方の能力として規定されたSt−Cの増殖および分化は、対称型/非対称型細胞分裂によって調節される。Notchシグナル伝達経路は、これらの分裂のバランスを取る。Numbは、Notchシグナル伝達の抑制を通してのみならず、固有の予想される決定因子としてのそのアイソフォームを通してもまた、幹細胞分裂において重要な役割を果たしている。NotchおよびMunbの発現はCSt−Cの転移の潜在能力を示し得る。抗癌薬物は、CSt−Cを選択または誘導する。CST−Cは、維持および拡大するために、多能性因子およびPcGタンパク質を必要とする。それゆえに、Numb、Notch、PKC、aPKC、およびEZH2は、化学療法および放射線療法後にSt−C根絶のための適切な標的であるはずである。
【0154】
本明細書で開示され、特許請求されるすべての組成物および方法は、本開示に鑑みて、過度の実験なしで、作製および実行が可能である。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態によって説明されてきたが、本発明の概念、技術思想、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法の工程でまたはその工程の順番で、バリエーションがその組成物および方法に適用され得ることは、当業者には明白である。より詳細には、化学的と生理学的の両方で関連している特定の薬剤は、同じまたは類似の結果を達成される場合、本明細書に記載された薬剤の代わりに置換されてもよいことは明白である。すべてのこのような置換物および修飾は当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本明細書の技術思想、範囲、および概念の中にはいると見なされる。
【0155】
(参考文献)
以下の参考文献は、これらが、本明細書に示されたものに対する補遺的な、実験手順または他の詳細を提供するという程度まで、参照として本明細書に具体的に組み込まれる。
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【化44】

【0200】
【化45】

【0201】
【化46】

【0202】
【化47】

【0203】
【化48】

【0204】
【化49】

【0205】
【化50】

【0206】
【化51】

【0207】
【化52】

【0208】
【化53】

【0209】
【化54】

【0210】
【化55】

【0211】
【化56】

【0212】
【化57】

【0213】
【化58】

【0214】
【化59】

【0215】
【化60】

【0216】
【化61】

【0217】
【化62】

【0218】
【化63】

【0219】
【化64】

【0220】
【化65】

【0221】
【化66】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化する工程を包む、患者における癌を治療する方法。
【請求項2】
前記ペプチドが、
【化67】

からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが、Notch1274−282(配列番号10)、Notch11938−1943(配列番号11)、Notch11938−1946(配列番号12)、Notch11938−1947(配列番号13)、Notch11940−1948(配列番号14)、Notch11940−1949(配列番号15)、Notch11944−1955(配列番号16)、Notch11947−1955(配列番号17)、Notch12111−2120(配列番号19)、Notch12112−2120(配列番号20)、Notch12113−2120(配列番号21)、Notch21−20(配列番号22)、Notch27−15(配列番号24)、Notch2271−285(配列番号26)、Notch2271−286(配列番号27)、Notch2277−285(配列番号28)、Notch2277−286(配列番号29)、Notch21940−1948(配列番号31)、Notch21940−1949(配列番号32)、Notch21991−2003(配列番号33)、Notch21995−2003(配列番号34)、およびNotch21997−2003(配列番号35)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T−ALL)、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、明細胞腎細胞癌腫、および結腸癌からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチド;および
薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、組成物。
【請求項6】
前記ペプチドが、
【化68】

からなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドが、Notch1274−282(配列番号10)、Notch11938−1943(配列番号11)、Notch11938−1946(配列番号12)、Notch11938−1947(配列番号13)、Notch11940−1948(配列番号14)、Notch11940−1949(配列番号15)、Notch11944−1955(配列番号16)、Notch11947−1955(配列番号17)、Notch12111−2120(配列番号19)、Notch12112−2120(配列番号20)、Notch12113−2120(配列番号21)、Notch21−20(配列番号22)、Notch27−15(配列番号24)、Notch2271−285(配列番号26)、Notch2271−286(配列番号27)、Notch2277−285(配列番号28)、Notch2277−286(配列番号29)、Notch21940−1948(配列番号31)、Notch21940−1949(配列番号32)、Notch21991−2003(配列番号33)、Notch21995−2003(配列番号34)、およびNotch21997−2003(配列番号35)からなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対して患者を免疫化する工程を包含する、患者における癌を治療する方法。
【請求項9】
前記ペプチドが、
【化69】

からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドが、Numb187−95(配列番号36)、Numb188−95(配列番号37)、Numb1131−149(配列番号38)、Numb1138−149(配列番号39)、Numb1139−147(配列番号40)、Numb1442−453(配列番号41)、Numb1443−451(配列番号42)、Numb1592−606(配列番号43)、およびNumb1594−602(配列番号44)からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T−ALL)、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、明細胞腎細胞癌腫、および結腸癌からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチド;ならびに
薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、組成物。
【請求項13】
前記ペプチドが、
【化70】

からなる群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ペプチドが、Numb187−95(配列番号36)、Numb188−95(配列番号37)、Numb1131−149(配列番号38)、Numb1138−149(配列番号39)、Numb1139−147(配列番号40)、Numb1442−453(配列番号41)、Numb1443−451(配列番号42)、Numb1592−606(配列番号43)、およびNumb1594−602(配列番号44)からなる群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、Numb1、Numb2、Numb3、およびNumb4からなる群より選択されるタンパク質から誘導されたペプチドに対する抗体を含む組成物を患者に投与する工程を包む、患者における癌を治療する方法。
【請求項16】
前記ペプチドが、
【化71】

からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドが、Notch1274−282(配列番号10)、Notch11938−1943(配列番号11)、Notch11938−1946(配列番号12)、Notch11938−1947(配列番号13)、Notch11940−1948(配列番号14)、Notch11940−1949(配列番号15)、Notch11944−1955(配列番号16)、Notch11947−1955(配列番号17)、Notch12111−2120(配列番号19)、Notch12112−2120(配列番号20)、Notch12113−2120(配列番号21)、Notch21−20(配列番号22)、Notch27−15(配列番号24)、Notch2271−285(配列番号26)、Notch2271−286(配列番号27)、Notch2277−285(配列番号28)、Notch2277−286(配列番号29)、Notch21940−1948(配列番号31)、Notch21940−1949(配列番号32)、Notch21991−2003(配列番号33)、Notch21995−2003(配列番号34)、Notch21997−2003(配列番号35)、Numb187−95(配列番号36)、Numb188−95(配列番号37)、Numb1131−149(配列番号38)、Numb1138−149(配列番号39)、Numb1139−147(配列番号40)、Numb1442−453(配列番号41)、Numb1443−451(配列番号42)、Numb1592−606(配列番号43)、およびNumb1594−602(配列番号44)からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびリンパ腫(T−ALL)、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、明細胞腎細胞癌腫、および結腸癌からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、抗癌剤および放射性同位元素からなる群より選択される治療分子をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記治療分子が、前記抗体の重鎖定常領域に共有結合されている、請求項19に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公表番号】特表2010−520280(P2010−520280A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552676(P2009−552676)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/001694
【国際公開番号】WO2008/108910
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(591217403)ボード オブ リージェンツ, ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (49)
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】