説明

Oリングの取出装置及びその方法

【課題】洗浄工程が終えられたOリングを、待機位置から取出位置へ移動させる間で異物が付着することなく取出す。
【解決手段】洗浄工程が終えられたOリング2及び治具3を基台4aに組付け、カラー上下チャック5を上方向へ移動させることで、最上位置のOリング2が取出位置へ移動される途中で他の部材に触れないように最上位置のOリング2を取出位置へ移動させ、その取出位置へ移動させた取出対象のOリングを吸着ヘッド9により取出す。洗浄工程が終えられたOリング2及び治具3を基台4aに組付けた後、洗浄工程が終えられたポールカラー11を移動させるだけで、Oリング2を他の部材に触れることなく取出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取出対象のOリングを待機位置から取出位置へ移動させて取出すOリングの取出装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部材同士の接触部を気密又は水密に保持するための手段としてOリングが多用されている。この種のOリングを例えばワークに組付けるために取出す方法として例えば特許文献1に開示されている方法がある。特許文献1に開示されている方法では、設備に固定された第1の供給プレートと、当該第1の供給プレート上をスライド移動可能に設備に固定された第2の供給プレートとを用い、複数のOリングを供給筒に縦列配置し、第2の供給プレートが第1の供給プレート上をスライド移動することで、供給筒の最下位置(待機位置)に配置されていたOリングが、第2の供給プレートの端面により押出され、押出されたOリングが取出位置まで移動する。そして、取出位置まで移動したOリングを取出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2511500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、Oリングにおいては、部材同士の接触部を気密又は水密に確実に保持するように異物(人毛や衣類の繊維等)が付着しないことが望ましい。しかしながら、上記した特許文献1に開示されている方法では、取出対象のOリングを待機位置から取出位置へ移動させる工程において、Oリングを、洗浄することができない第1の供給プレート上を滑らせて待機位置から取出位置へ移動させているので、たとえ供給筒に配置されているOリングが洗浄工程を終えた状態(異物を除去した状態)であったとしても、Oリングを第1の供給プレート上を滑らせる工程でOリングに異物が付着してしまう虞がある。その結果、異物が付着したOリングを取出し、その異物が付着したOリングを後工程にて例えばワークに組付けてしまうと、部材同士の接触部を気密又は水密に保持することができない等の不具合を誘発してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄工程が終えられたOリングを、待機位置から取出位置へ移動させる間で異物が付着することなく取出すことを可能とするOリングの取出装置、及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1及び5乃至7に記載した発明によれば、設備(4)を、当該設備(4)の基台(4a)に着脱可能に支持された支持部材(10)と、支持部材(10)に対して移動可能に保持された可動部材(11)と、を有する治具(3)を備える構成とし、基台(4a)から脱離し洗浄された治具(3)における可動部材(11)により、Oリング(2)を待機位置から取出位置へ移動させるようにした。これにより、治具(3)が基台(4a)に着脱可能であるので、治具(3)を洗浄することができ、その結果、その洗浄された治具(3)における可動部材(11)により、洗浄されたOリング(2)を待機位置から取出位置へ移動させる間で他の部材(非洗浄部材)に触れることなく取出すことができる。
【0007】
請求項2及び8に記載した発明によれば、支持部材(10)を、棒状の軸部材(10)を有し、可動部材(11)を、軸部材(10)の軸方向に移動可能な移動部材(11)を有し、移動部材(11)を軸部材(10)の一端側から他端側へ移動させることで、Oリング(2)を待機位置から取出位置へ移動させるようにした。これにより、取出対象のOリング(2)を軸部材(10)の一端側から他端側へ移動部材(11)により移動させるという簡単な構成で実現することができる。
【0008】
請求項3及び9に記載した発明によれば、複数のOリング(2)のうち一部のOリング(2)を取出す場合に、その一部のOリング(2)を除く残りのOリング(2)を変位不可能な状態に保持した状態で、その一部のOリング(2)を取出すようにした。これにより、例えば表面張力が作用すること等で取出対象の一部のOリング(2)と共に残りのOリング(2)が取出されてしまうことを防止することができ、取出対象の一部のOリング(2)だけを確実に取出すことができる。
【0009】
請求項4及び10に記載した発明によれば、残りのOリング(2)のうち少なくとも一部のOリング(2)に接しているOリング(2)を変位不可能な状態に保持した状態で、その一部のOリング(2)を取出すようにした。これにより、残りのOリング(2)の全てを保持する構成を必要とすることなく、残りのOリング(2)のうち少なくとも取出対象の一部のOリング(2)に接しているOリング(2)を保持するという必要最小限の構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、Oリング取出装置の全体構成を示す概略図
【図2】機能ブロック図
【図3】Oリング及び治具が洗浄される態様を示す図
【図4】Oリング及び治具が基台に組付けられる態様を示す図
【図5】フローチャート
【図6】作用を示す図
【図7】図6相当図
【図8】図6相当図
【図9】図6相当図
【図10】図6相当図
【図11】図6相当図
【図12】Oリングがワークに組付けられる態様を示す図
【図13】図3相当図
【図14】Oリング及び治具が運搬される態様を示す図
【図15】ポールの平面図及び側面図
【図16】Oリング及び切出チャックの側面図
【図17】Oリング、治具及び拡張ヘッドの側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、Oリング取出装置の全体構成を概略的に示している。Oリング取出装置1は、例えばシリコンゴムを材質とするOリング2(図1では5個のOリング2a〜2e)を嵌込可能な治具3と、治具3を組付可能な基台4aと、カラー上下チャック5と、切出チャック6(保持手段に相当)と、一対の投光センサ7及び受光センサ8と、吸着ヘッド9(取出手段に相当)とを備えて構成されている。治具3及び基台4aは設備4の構成部品である。
【0012】
治具3は、ポール10(支持部材、軸部材に相当)と、ポールカラー11(可動部材、移動部材に相当)とが組合わされて構成されている。ポール10は、Oリング2の内径よりも僅かに小さい外径を有する円柱形状のポール本体12と、ポール本体12の一端側(図1では下端側)に当該ポール本体12よりも径小な円柱形状の取付軸部13とを有し、ポール本体12の軸中心と取付軸部13の軸中心とが一致する形状に形成されている。ポールカラー11は、その内径がポール本体12の外径よりも僅かに大きい環状に形成され、ポール10(ポール本体12)の軸方向(図1では矢印A1−A2にて示す方向)に移動可能にポール本体12に嵌込まれている。
【0013】
これらポール10及びポールカラー11は、Oリング2との抵抗を低減するために、Oリング2の材質がシリコンゴムであることを考慮し、例えばステンレス鋼やテフロン(登録商標)樹脂を材質として成形されていたり、その外周面部にバイコート(潤滑性及び離型性に優れた有機系材料を組合わせた複合有機系材料のコーティング)が施されていたりすることが望ましい。治具3は、ポール10の取付軸部13が基台4aに形成されている取付穴部14に嵌込まれることで、その軸方向が基台4aの平面方向(図1では矢印B1−B2にして示す方向)に略垂直となるように着脱可能に固定状態で組付けられる。
【0014】
カラー上下チャック5は、治具3が基台4aに組付けられた状態でポールカラー11の下面部11aを支持するように配置される。この場合、カラー上下チャック5は、ポール本体12の周方向に180度の間隔を有する等間隔の2点でポールカラー11の下面部11aを支持しても良いし、ポール本体12の周方向に120度の間隔を有する等間隔の3点でポールカラー11の下面部11aを支持しても良いし、ポール本体12の周方向に90度の間隔を有する等間隔の4点でポールカラー11の下面部11aを支持しても良い。複数のOリング2がポール10(ポール本体12)に縦列して嵌込まれている状態では、複数のOリング2のうち再下位置に配置されているOリング2(図1ではOリング2e)だけがポールカラー11の上面部11bに接する。
【0015】
投光センサ7及び受光センサ8は、治具3が基台4aに組付けられた状態でポール本体12の他端側(図1では上端側)に近い位置に対向して配置されている。この場合、投光センサ7と受光センサ8とを結ぶ光軸(図1では破線矢印Pにて示す)上にOリング2が存在していなければ(移動されていなければ)、投光センサ7から投じられた光が受光センサ8に受けられるが、投光センサ7と受光センサ8とを結ぶ直線上にOリング2が存在していれば(移動されていれば)、投光センサ7から投じられた光がOリング2に遮られて受光センサ8に受けられないようになっている。投光センサ7から投じられた光がOリング2に遮られない位置が待機位置であり、投光センサ7から投じられた光がOリング2に遮られる位置が取出位置である。即ち、図1は、Oリング2aが取出位置に配置されていると共に、Oリング2b〜2eが待機位置に配置されている態様を示している。
【0016】
切出チャック6は、投光センサ7及び受光センサ8の下方に配置されており、保持位置(図1で実線にて示す位置)と非保持位置(図1で破線にて示す位置、初期位置)との間で水平方向(ポール10の軸方向に直交する方向)に移動可能に構成されている。切出チャック6は、保持位置へ移動されている場合には、その接触面部6aが取出位置に配置されているOリング2(図1ではOリング2a)の直下に配置されているOリング2(次に取出位置へ移動されるOリング2であり、図1ではOリング2b)に接しており、そのOリング2に対して径方向(軸中心へ向かう方向)への適度な押圧力を付与することで、そのOリング2を変位不可能に保持している。Oリング2に接する接触面部6aは平面により形成されている。
【0017】
切出チャック6の接触面部6にはOリング2に接しても、そのOリング2の接触部を損傷させない加工が施されている。又、切出チャック6も、カラー上下チャック5と同様に、ポール本体12の周方向に例えば180度の間隔を有する等間隔の2点でOリング2を保持しても良いし、ポール本体12の周方向に例えば120度の間隔を有する等間隔の3点でOリング2を保持しても良いし、ポール本体12の周方向に例えば90度の間隔を有する等間隔の4点でOリング2を保持しても良い。
【0018】
吸着ヘッド9は、吸気孔15を有すると共に、その下面部側にOリング2の外形形状に沿うように凹状の吸着面部9aが形成されており、取出位置に配置されているOリング2を真空吸着により治具3から取出して吸着面部9aに吸着すると共に、吸着ヘッド搬送機構16(図1では図示せず、図2参照)により上下方向及び水平方向へ移動可能になっている。
【0019】
図2は、上記したOリング取出装置1の電気的な構成を機能ブロック図により示している。制御部17は、マイクロコンピュータ主体として構成されており、上記したカラー上下チャック5、切出チャック6、投光センサ7、受光センサ8、吸着ヘッド9、吸着ヘッド搬送機構16を接続し、予め記憶している制御プログラムを実行することで、それらカラー上下チャック5、切出チャック6、投光センサ7、受光センサ8、吸着ヘッド9、吸着ヘッド搬送機構16の動作を制御し、Oリング取出装置1の動作を制御する。
【0020】
カラー上下チャック5は、制御部17から駆動指令信号を入力すると、ポール10の軸方向に沿って上方向へ移動する。制御部17からカラー上下チャック5へ出力される駆動指令信号は例えばレベル信号であり、カラー上下チャック5は、制御部17から駆動指令信号を入力している期間でポール10の軸方向に沿って上方向へ移動する。このようにしてカラー上下チャック5がポール10の軸方向に沿って上方向へ移動することに連動し、カラー上下チャック5がポールカラー11の下面部11aを押圧することで、ポールカラー11もポール10の軸方向に沿って上方向へ移動し、ポール10に嵌込まれているOリング2もポール10の軸方向に沿って上方向へ移動する。
【0021】
切出チャック6は、制御部17から駆動指令信号を入力すると、非保持位置から保持位置へ向かう方向への移動力を発生する。制御部17から切出チャック6へ出力される駆動指令信号は例えばレベル信号であり、切出チャック6は、制御部17から駆動指令信号を入力している期間で非保持位置から保持位置へ向かう方向への移動力を発生する。即ち、切出チャック6がOリング2に接する前(保持位置に達する前)では、切出チャック6の移動力は非保持位置から保持位置へ進行する推進力となり、切出チャック6がOリング2に接した後(保持位置に達した後)では、切出チャック6の移動力はOリング2を径方向へ押圧する押圧力となる。尚、切出チャック6は、制御部17からの駆動指令信号の入力を停止すると、保持位置から非保持位置へ移動する(初期位置へ復帰する)。
【0022】
投光センサ7は、制御部17から投光指令信号を入力すると、直進性を有する光を投じる。制御部17から投光センサ17へ出力される投光指令信号は例えばレベル信号であり、投光センサ7は、制御部17から投光指令信号を入力している期間で光を投じる。
【0023】
受光センサ8は、投光センサ7から投じられた光を受けると、受光信号を制御部17へ出力する。受光センサ8から制御部17へ出力される受光信号は例えばレベル信号であり、制御部17は、受光センサ8から受光信号を入力している期間で投光センサ7から投じられた光が受光センサ8に受けられたと判定し、Oリング2が取出位置に存在していないと判定する。
【0024】
吸着ヘッド9は、取出対象のOリング2の真上に位置している状態では、制御部17から吸着指令信号を入力すると、吸着待機位置から吸着実行位置まで下降し、Oリング2を真空吸着により吸着面部9aに吸着し、Oリング2を吸着面部9aに吸着した状態で吸着実行位置から吸着待機位置まで上昇する(復帰する)。制御部17から吸着ヘッド9へ出力される吸着指令信号は例えばパルス信号であり、吸着ヘッド9は、制御部17から吸着指令信号を入力すると、上記した一連の動作を行う。尚、吸着ヘッド9は、Oリング2の重量、Oリング2を吸着する吸着力、取出対象のOリング2との相対的な位置関係等により上下移動する必要がなければ、上下移動することを省いてOリング2を真空吸着により吸着面部9aに吸着しても良い。
【0025】
又、吸着ヘッド9は、Oリング2の組付対象であるワーク18の真上に位置している状態では、制御部17から吸着破壊指令信号を入力すると、Oリング2を吸着面部9aに吸着している状態で吸着破壊待機位置から吸着破壊実行位置まで下降し、吸着破壊することで、吸着面部9aに吸着しているOリング2を吸着面部9aから自然落下させ、吸着破壊実行位置から吸着破壊待機位置まで上昇する。制御部17から吸着ヘッド9へ出力される吸着破壊指令信号は例えばパルス信号であり、吸着ヘッド9は、制御部17から吸着破壊指令信号を入力すると、上記した一連の動作を行う。尚、吸着ヘッド9は、ワーク18との相対的な位置関係等により上下移動する必要がなければ、上下移動することを省いて吸着破壊しても良い。尚、ここでいうワーク18とは、例えば圧力センサの一構成部品である。Oリング2は、このようにして吸着ヘッド9の吸着面部9aから自然落下され、ワーク18の上面部18aに環状に(Oリング2の外形形状に沿うように)形成されている凹部19に嵌込まれることで、ワーク18に組付けられる。
【0026】
吸着ヘッド搬送機構16は、制御部17から搬送指令信号を入力すると、吸着ヘッド9を上記した吸着待機位置と吸着破壊待機位置との間で所定の搬送経路にしたがって搬送する(移動させる)。制御部17から吸着ヘッド搬送機構16へ出力される搬送指令信号は例えばパルス信号であり、吸着ヘッド搬送機構16は、制御部17から搬送指令信号を入力すると、上記した一連の動作を行う。
【0027】
次に、上記した構成の作用について、図3乃至図12を参照して説明する。
作業者が取扱うOリング2及び治具3(ポール10及びポールカラー11)は洗浄工程が終えられている。ここでいう洗浄とは、異物を除去する作業(異物が付着し難くする作業を含んでも良い)であり、例えば高圧エアを吹付けたり洗浄液に浸したりする等である。洗浄液に浸す場合であれば、その洗浄液を除去する乾燥工程をも含む。この場合、図3に示すように、最初にOリング2、ポール10及びポールカラー11を組付け、止め具20をポール10に取付けた上で、組付けられたOリング2、ポール10及びポールカラー11に例えば高圧エアガン21から高圧エアを噴射することで、それらOリング2、ポール10及びポールカラー11を纏めて洗浄しても良い。又、図示しないが、最初にOリング2、ポール10及びポールカラー11を別々に洗浄し、各々が洗浄されたOリング2、ポール10及びポールカラー11を組付けても良い。尚、洗浄工程が終えられた後では、止め具20はポール10から取外される。
【0028】
作業者は、図4に示すように、このようにして洗浄工程が終えられたOリング2及び洗浄工程が終えられた治具3を袋22により密封された状態で取扱う。ここでいう密封とは、洗浄工程が終えられたOリング2及び洗浄工程が終えられた治具3に異物(人毛や衣類の繊維等)が付着しない程度の状態である。作業者は、袋22を開封し、Oリング2及び治具3を袋22から取出し、ポール10の取付軸部13を基台4aの取付穴部14に嵌込むことで、治具3を基台4aの平面方向に略垂直となるように固定状態で組付け、カラー上下チャック5をポールカラー11の下方に配置し、Oリング2及びポールカラー11をカラー上下チャック5により支持させる。この場合、作業者は、ポール10の取付軸部13に近い位置を把持しながら作業を行うことが望ましく、即ち、Oリング2に触れないことが望ましい。又、Oリング2及び治具3を一体的に基台4aに組付けることに限らず、治具3を基台4aに組付けた後に、Oリング2を治具3に組付けても良い。
【0029】
次いで、作業者は、例えばパーソナルコンピュータを操作して制御部17に制御プログラムを実行させ、これ以降の作業を自動制御にて実行させる。制御部17は、制御プログラムを開始すると、図5にフローチャートとして示す処理を実行する。制御部17は、投光指令信号の投光センサ7への出力を開始し、投光センサ7からの投光を開始させる(ステップS1)。ここで、Oリング2が嵌込まれた治具3を基台4aに組付けた直後であり、最上位置のOリング2(図1ではOリング2a、取出対象の一部のOリング)が取出位置へ移動されていなければ、投光センサ7から投じられた光が受光センサ8に受けられ、受光センサ8から受光信号が出力され、受光センサ8から出力された受光信号が制御部17に入力される。
【0030】
次いで、制御部17は、駆動指令信号のカラー上下チャック5への出力を開始し、カラー上下チャック5の上方向への移動を開始させ(ステップS2)、受光センサ8からの受光信号の入力状態を判定し、最上位置のOリング2が取出位置へ移動されたか否かを判定する(ステップS3)。ここで、カラー上下チャック5が上方向へ移動されることに連動し、ポールカラー11が上方向へ移動され、全てのOリング2が上方向へ移動され、図6に示すように、最上位置のOリング2が取出位置へ移動されると、上記したように投光センサ7から投じられた光が最上位置のOリング2に遮られて受光センサ8に受けられなくなり、受光センサ8から受光信号が出力されなくなる。
【0031】
制御部17は、受光センサ8からの受光信号の入力が途絶えたと判定し、最上位置のOリング2が取出位置へ移動されたと判定すると(ステップS3:YES)、駆動指令信号のカラー上下チャック5への出力を停止し、カラー上下チャック5の上方向への移動を停止させる(ステップS4)。次いで、制御部17は、駆動指令信号の切出チャック6への出力を開始し、切出チャック6の非保持位置から保持位置への移動を開始させ、図7に示すように、最上位置のOリング2の直下に配置されているOリング2(図1ではOリング2b、残りのOリング)を切出チャック6により保持する(ステップS5)。
【0032】
次いで、制御部17は、吸着指令信号を吸着ヘッド9へ出力し、図8に示すように、吸着ヘッド9を吸着待機位置から吸着実行位置まで下降させ、最上位置のOリング2を真空吸着により吸着ヘッド9の吸着面部9aに吸着させた後に、図9に示すように、最上位置のOリング2が吸着面部9aに吸着された吸着ヘッド9を吸着実行位置から吸着待機位置まで上昇させる(ステップS6)。次いで、制御部17は、駆動指令信号の切出チャック6への出力を停止し、図10に示すように、Oリング2の切出チャック6による保持を解除し(ステップS7)、切出チャック6の保持位置から非保持位置への移動を開始させる(切出チャック6を初期位置へ復帰させる)。
【0033】
そして、制御部17は、例えば取出したOリング2の個数が予め設定しておいた設定数に達したか否かを判定したり切出チャック6がOリング2に接したか否かを判定したりすることで、取出対象のOリング2が治具3に残っているか否かを判定する(ステップS8)。制御部17は、例えば取出したOリング2の個数が予め設定しておいた設定数に達していないと判定したり切出チャック6がOリング2に接したと判定したりし、取出対象のOリング2が治具3に残っていると判定すると(S8:YES)、上記したステップS2へ戻り、上記したステップS2乃至S8の処理を繰返して実行し、図11に示すように、次のOリング2(図1ではOリング2b)を取出す。
【0034】
一方、制御部17は、例えば取出したOリング2の個数が予め設定しておいた設定数に達したと判定したり切出チャック6がOリング2に接しなかったと判定したりし、取出対象のOリング2が治具3に残っていないと判定すると(S8:NO)、投光指令信号の投光センサ7への出力を停止し、投光センサ7からの投光を停止させ(ステップS9)、上記した一連の処理を終了する。
【0035】
尚、制御部17は、上記したようにOリング2を真空吸着により吸着ヘッド9の吸着面部9aに吸着させた後では、ステップS7及びS8を実行することと並行して、搬送指令信号を吸着ヘッド搬送機構16へ出力することで、図12に示すように、吸着ヘッド9を吸着待機位置から吸着破壊待機位置まで移動させ、吸着破壊指令信号を吸着ヘッド9へ出力することで、吸着しているOリング2を吸着面部9aから自然落下させ、Oリング2をワーク18の凹部19に嵌込んでワーク18に組付け、吸着ヘッド9を吸着破壊待機位置から吸着待機位置まで移動させる(復帰させる)。
【0036】
以上に説明したように本実施形態によれば、洗浄工程が終えられたOリング2及び治具3を基台4aに組付け、カラー上下チャック5を上方向へ移動させることで、最上位置のOリング2が取出位置へ移動される途中で他の部材に触れないように最上位置のOリング2を取出位置へ移動させ、その取出位置へ移動させた取出対象のOリングを吸着ヘッド9により取出すようにしたので、洗浄工程が終えられたOリング2及び治具3を基台4aに組付けた後、洗浄工程が終えられたポールカラー11を移動させるだけで、Oリング2を他の部材に触れることなく取出すことができ、洗浄工程が終えられたOリング2を異物が付着することなく取出すことができる。
【0037】
又、取出対象である最上位置のOリング2を取出位置へ移動させた後、最上位置のOリング2を除く残りのOリング2を切出チャック6により保持した状態で、最上位置のOリング2を吸着ヘッド9により取出すようにしたので、例えば表面張力が作用すること等で最上位置のOリング2と共に直下のOリング2が取出されてしまうことを防止することができ、最上位置のOリング2だけを確実に取出すことができる。
【0038】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
Oリング2を垂直方向へ取出す構成としたが、Oリング2を水平方向へ取出す構成であっても良い。
【0039】
軸部材を直線形状としたが、例えば設備の制約等の事情により、軸部材を「L」字形状や「コ」字形状としても良い。
可動部材として、ポール10の軸方向に移動するポールカラー11を配置し、そのポールカラー11を移動させることで、Oリング2を移動させる構成としたが、例えばポール10の周方向に環状の袋体(バルーン)を配置し、その環状の袋体に気体を導入して当該袋体を膨張させることで、Oリング2を移動させる構成としても良い。
【0040】
例えばロボットを用いることで、Oリング2及び治具3を自動制御により基台4aに組付ける構成としても良い。
Oリング2を洗浄する方法として、図13に示すように、洗浄液が流れる流路23を有するポール24を採用し、洗浄液を流路23に流すことで、Oリング2及び治具3を洗浄するようにしても良い。
【0041】
Oリング2及び治具3を運搬する方法として、図14に示すように、ポール10と一体化したカセット25を採用し、治具3をカセット25と共に基台4aに組付けた後に、カセット25を分解して除去するようにしても良い。
【0042】
ポールの形状として、図15に示すような形状であっても良い。即ち、図15(a)に示すように、1本のメインポール26と複数本(図15(a)では4本)のサブポール27とが組合わされている形状であっても良い。又、図15(b)に示すように、ポール28の外周面部に軸方向に延びる複数本(図15(b)では8本)のスリット(切欠部)29が形成されている形状であっても良い。このような構成によれば、Oリング2との接触面積を低減することができ、Oリング2との抵抗をより低減することができる。
【0043】
切出チャックの形状として、図16に示すような形状であっても良い。即ち、図16(a)に示すように、Oリング2と接する接触面部30aが曲面で形成されている切出チャック30であっても良い。又、図16(b)に示すように、Oリング2と接する部分が鋭角部31aにより形成され、その鋭角部31aが上位に配置されているOリング2との境界に近い箇所でOリング2と接するようにテーパ形状に形成されている切出チャック31であっても良い。更に、図16(c)に示すように、Oリング2と接する部分が鋭角部32aにより形成され、その鋭角部32aが上位に配置されているOリング2との境界でOリング2と接するようにくさび形状に形成されている切出チャック32であっても良い。
【0044】
図17に示すように、Oリング2が嵌込まれた治具3に、ポール10よりも径大な外径を有する拡張ヘッド33を取付け、Oリング2を拡張ヘッド33の外周面部に沿って移動させることで、Oリング2の径を拡張して取出すようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
図面中、1はOリング取出装置、2はOリング、3は治具、4aは基台、4は設備、6は切出チャック(保持手段)、9は吸着ヘッド(取出手段)、10はポール(支持部材、軸部材)、11はポールカラー(可動部材、移動部材)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取出対象のOリング(2)を待機位置から取出位置へ移動させる設備(4)を有するOリングの取出装置において、
前記設備(4)は、当該設備(4)の基台(4a)に着脱可能に支持された支持部材(10)と、前記支持部材(10)に対して移動可能に保持された可動部材(11)と、を有する治具(3)を備え、
前記基台(4a)から脱離し洗浄された前記治具(3)における前記可動部材(11)により、前記Oリング(2)を待機位置から取出位置へ移動させることを特徴とするOリングの取出装置。
【請求項2】
請求項1に記載したOリングの取出装置において、
前記支持部材(10)は、棒状の軸部材(10)を有し、
前記可動部材(11)は、前記軸部材(10)の軸方向に移動可能な移動部材(11)を有し、
前記移動部材(11)を前記軸部材(10)の一端側から他端側へ移動させることで、前記Oリング(2)を待機位置から取出位置へ移動させることを特徴とするOリングの取出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したOリングの取出装置において、
複数のOリング(2)のうち一部のOリング(2)を取出す場合に、その一部のOリング(2)を除く残りのOリング(2)を変位不可能な状態に保持する保持手段(6)を備えたことを特徴とするOリングの取出装置。
【請求項4】
請求項3に記載したOリングの取出装置において、
前記保持手段(6)は、残りのOリング(2)のうち少なくとも一部のOリング(2)に接しているOリング(2)を変位不可能な状態に保持することを特徴とするOリングの取出装置。
【請求項5】
設備(4)の基台(4a)に対して着脱可能な治具(3)と、取出対象のOリング(2)と、を用意し、
前記基台(4a)から前記治具(3)を脱離させ、前記Oリング(2)を前記治具(3)が有する可動部材(11)に組付けた状態で洗浄し、
洗浄が終わった前記Oリング(2)及び前記治具(3)を、前記Oリング(2)が待機位置となるように可動部材(11)を移動させた状態で前記基台(4a)に組付け、
前記Oリング(2)が前記待機位置から途中で他の部材に触れずに取出位置となるように前記可動部材(11)を移動させ、
前記取出位置に移動した前記Oリング(2)を取出手段(9)により取出すことを特徴とするOリングの取出方法。
【請求項6】
設備(4)の基台(4a)に対して着脱可能な治具(3)と、取出対象のOリング(2)とを用意し、
前記基台(4a)から前記治具(3)を脱離させ、前記Oリング(2)及び前記治具(3)を別々に洗浄した状態で前記Oリング(2)を前記治具(3)が有する可動部材(11)に組付け、
洗浄が終わった前記Oリング(2)及び前記治具(3)を、前記Oリング(2)が待機位置となるように可動部材(11)を移動させた状態で前記基台(4a)に組付け、
前記Oリング(2)が前記待機位置から途中で他の部材に触れずに取出位置となるように前記可動部材(11)を移動させ、
前記取出位置に移動した前記Oリング(2)を取出手段(9)により取出すことを特徴とするOリングの取出方法。
【請求項7】
設備(4)の基台(4a)に対して着脱可能な治具(3)と、取出対象のOリング(2)とを用意し、
前記基台(4a)から前記治具(3)を脱離させ、前記Oリング(2)及び前記治具(3)を別々に洗浄し、
洗浄が終わった前記治具(3)を前記基台(4a)に組付け、
洗浄が終わった前記Oリング(2)を、前記Oリング(2)が待機位置となるように前記治具(3)が有する可動部材(11)を移動させた状態で前記可動部材(11)に組付け、
前記Oリング(2)が前記待機位置から途中で他の部材に触れずに取出位置となるように前記可動部材(11)を移動させ、
前記取出位置に移動した前記Oリング(2)を取出手段(9)により取出すことを特徴とするOリングの取出方法。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れかに記載したOリングの取出方法において、
前記支持部材(10)は、棒状の軸部材(10)を有し、
前記可動部材(11)は、前記軸部材(10)の軸方向に移動可能な移動部材(11)を有し、
前記移動部材(11)を前記軸部材(10)の一端側から他端側へ移動させることで、前記Oリング(2)が前記待機位置から途中で他の部材に触れずに取出位置となることを特徴とするOリングの取出方法。
【請求項9】
請求項5乃至8の何れかに記載したOリングの取出方法において、
複数のOリング(2)のうち一部のOリング(2)を取出す場合に、その一部のOリング(2)を除く残りのOリング(2)を変位不可能な状態に保持した状態で、一部のOリング(2)を前記取出手段(9)により取出すことを特徴とするOリングの取出方法。
【請求項10】
請求項9に記載したOリングの取出方法において、
残りのOリング(2)のうち一部のOリング(2)に接しているOリング(2)を変位不可能な状態に保持した状態で、一部のOリング(2)を前記取出手段(9)により取出すことを特徴とするOリングの取出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−111015(P2012−111015A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263582(P2010−263582)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】