説明

Oリング取り外し治具及びOリング取り外し方法

【課題】電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができるOリング取り外し治具を提供する。
【解決手段】同一平面内に配置された少なくとも2つの柱状の支持体20と、この支持体20の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたゴムからなる挟持体10と、を備え、隣接する支持体20に配置された挟持体10どうしが、所定の間隔を離隔した状態で対向しているOリング取り外し治具100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Oリング取り外し治具及びOリング取り外し方法に関する。更に詳しくは、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができるOリング取り外し治具及びOリング取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの電子部品を製造する製造装置には、半導体などの製造工程で使用される樹脂などの化合物を精製するためのフィルターなどが用いられている。このフィルターの端部には、溝が形成されており、この溝には、例えば、図4に示すフィルター30のようにOリング31が嵌め込まれている。
【0003】
従来、このようなOリングは、フィルターの交換と同時に回収され、廃棄されていたが、Oリングの使用可能期間はフィルターの使用可能期間よりも長いため、Oリングを廃棄することなく、フィルターから取り外して再び使用する場合もあった。
【0004】
このようにOリングを取り外して再び使用すると、Oリングのコストを削減することが可能になるという利点があり、特に、高価なOリングを使用している場合にはその効果は大きくなる。しかし、例えば、Oリングがフィルターに固着している場合があるため、フィルターからOリングを取り外す際に、Oリングを無理に取り外そうとして作業者が指先などに怪我をすることがあった。そのため、フィルターからOリングを取り外すための治具が報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−85641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の治具は、木材を材料として用いているため、例えば、特許文献1に記載の治具を用いて電子部品などの精密機器を製造する装置に使用されているフィルターのOリングを取り外した場合、Oリングが汚染されるおそれがある。そして、Oリングが汚染されることに起因して、電子部品などの精密機器が汚染されるおそれある。また、特許文献1に記載の治具は、フィルターからOリングを容易に取り外すことができるという点においても未だ改良の余地があった。そのため、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができる治具が切望されていた。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができるOリング取り外し治具及びOリング取り外し方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、以下のOリング取り外し治具及びOリング取り外し方法が提供される。
【0009】
[1] 同一平面内に配置された少なくとも2つの柱状の支持体と、前記支持体の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたゴムからなる挟持体と、を備え、隣接する前記支持体に配置された前記挟持体どうしが、所定の間隔を離隔した状態で対向しているOリング取り外し治具。
【0010】
[2] 前記挟持体が、柱状である前記[1]に記載のOリング取り外し治具。
【0011】
[3] 前記挟持体が、貫通孔を有する柱状であり、前記貫通孔に前記支持体が挿入されている前記[1]または[2]に記載のOリング取り外し治具。
【0012】
[4] 前記柱状の挟持体どうしが、平行に配置されている前記[2]または[3]に記載のOリング取り外し治具。
【0013】
[5] 前記柱状の挟持体どうしが、ハの字状に配置されている前記[2]または[3]に記載のOリング取り外し治具。
【0014】
[6] 前記挟持体が、シリコンゴムからなる前記[1]〜[5]のいずれかに記載のOリング取り外し治具。
【0015】
[7] その外周面に溝が形成された略柱状の前記フィルター本体と、前記溝に嵌め込まれたOリングとを有するフィルターから、前記Oリングを取り外すためのOリング取り外し方法であって、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のOリング取り外し治具の隣接する前記支持体に配置された前記挟持体の間に前記フィルターの前記Oリングを押し込み、前記Oリングの一部を前記溝から離間させる工程を含むOリング取り外し方法。
【0016】
[8] 隣接する前記支持体に配置された前記挟持体の間に前記フィルターの前記Oリングを押し込む際に、その長手方向の中心軸を中心に前記フィルターを回転させる前記[7]に記載のOリング取り外し方法。
【0017】
[9] 前記溝から離間させた前記Oリングの一部と前記溝との間に、棒を挿入した後、前記棒を固定しつつ、前記フィルターを前記挟持体の間から外す工程を更に含む前記[7]または[8]に記載のOリング取り外し方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のOリング取り外し治具は、同一平面内に配置された少なくとも2つの柱状の支持体と、この支持体の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたゴムからなる挟持体と、を備え、隣接する支持体に配置された挟持体どうしが、所定の間隔を離隔した状態で対向しているため、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができるという効果を奏するものである。
【0019】
本発明のOリング取り外し方法は、本発明のOリング取り外し治具を使用するため、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0021】
[1]Oリング取り外し治具:
図1に示すOリング取り外し治具100は、本発明のOリング取り外し治具の一実施形態であり、同一平面内に配置された少なくとも2つの柱状の支持体20と、この支持体20の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたゴムからなる挟持体10と、を備え、隣接する支持体20に配置された挟持体10どうしが、所定の間隔を離隔した状態で対向しているものである。このようなOリング取り外し治具であると、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができる。
【0022】
[1−1]支持体:
本実施形態のOリング取り外し治具に備えられる支持体は、同一平面内に配置された少なくとも2つの柱状のものである。支持体の数は、2つ以上である限り特に制限はなく、Oリングを挟むことができる部分が、取り外されるOリングのサイズの数に合わせた数になるような本数が好ましい。例えば、図1に示すOリング取り外し治具100は、支持体20を3つ備えた例であり、3つの支持体20を備えることによってOリングを挟むことができる部分が2箇所になるという利点がある。即ち、Oリングを挟む部分を適宜選択することができるという利点がある。
【0023】
支持体の材質は、特に制限はなく、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂等を挙げることができる。なお、支持体は、挟持体と同じ材質のものを用いることもできる。また、支持体と挟持体とを一体に形成することもできる。
【0024】
支持体の形状は、柱状である限り特に制限はなく、例えば、三角柱状、四角柱状、多角柱状、円柱状、楕円柱状などを例示することができる。
【0025】
支持体としては、具体的には、直径が3〜7mmで長さが250〜300mmである円柱状の金属製のものを用いることができる。
【0026】
支持体は、隣接するものどうしが、例えば、図1に示すようにハの字状となるように配置してもよいし、図2に示すように平行になるように配置してもよい。
【0027】
[1−2]挟持体:
本実施形態のOリング取り外し治具に備えられた挟持体は、支持体の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたゴムからなるである。このようにゴムからなる挟持体は、Oリングと間で生じる摩擦が大きいため、挟持体によってOリングを挟持した際に加えた力が、効果的にOリングに伝わる。そのため、フィルター本体の溝からOリングを容易に離間させることができる。また、ゴムからなる挟持体を用いることによって、Oリングを傷めずに取り外すことができるという利点がある。
【0028】
挟持体のゴムとしては、例えば、シリコンゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、NBR(アクリルニトリルゴム)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素ゴムなどを挙げることができる。これらの中でも、弾性があり、耐溶剤性に優れたシリコンゴムが好ましい。
【0029】
挟持体は、支持体の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたものである限りその形状は特に制限はないが、柱状であることが好ましい。柱状としては、例えば、三角柱状、四角柱状、多角柱状、円柱状、楕円柱状などを例示することができる。これらの中でも、Oリングとの接触角度があり、ゴム凹み時にOリングとの接触面積が広い四角柱状が好ましい。即ち、四角柱状であると、三角柱状である場合に比べて、ゴム凹み時(即ち、Oリングを挟持したとき)のOリングとの接触面積が広いため、良好にOリングを取り外すことができる。また、例えば、2本のOリングを備えたフィルターから、一方のOリングのみを取り外す際には、多角柱状である場合に比べて、取り外したいOリングを視認し易く、容易に挟持することができるため、Oリングを容易に取り外すことができる。柱状の挟持体の大きさは、Oリングの大きさや数に応じて適宜選択することができるが、例えば、四角柱状の挟持体の場合、縦が10〜20mm、横が10〜20mm、長さが100〜140mmであるものを用いることができる。なお、挟持体は、1つの支持体に複数配置されてもよい。図3に示すOリング取り外し治具102は、1つの支持体20に2つの挟持体11a,11bが配置されている例である。
【0030】
支持体の表面に挟持体を配置して固定する場合、その方法は特に制限はないが、例えば、接着剤により接着する方法、ネジにより固定する方法、金属溶着により固定する方法などを挙げることができる。
【0031】
また、挟持体は、貫通孔を有する柱状であり、その貫通孔に支持体が挿入されているものであることも好ましい。このような挟持体を用いると、支持体に固定する必要がないため、容易に作製することができる。例えば、図1に示すOリング取り外し治具100は、貫通孔を有する四角柱状の挟持体10を備え、この挟持体10の貫通孔に支持体20が挿入されている例である。柱状としては、例えば、三角柱状、四角柱状、多角柱状、円柱状、楕円柱状などを例示することができる。
【0032】
本実施形態のOリング取り外し治具は、更に、隣接する支持体に配置された挟持体どうしが、所定の間隔を離隔した状態で対向しているものである。ここで、「所定の間隔を離隔した状態」とは、Oリングの外径によって適宜選択される間隔であり、具体的には、取り外されるOリングの外径よりも狭い間隔を有するように離隔した状態を意味する。
【0033】
本実施形態のOリング取り外し治具は、柱状の挟持体どうしが、ハの字状になるように配置することが好ましい。図1に示すOリング取り外し治具100は、隣接する四角柱状の挟持体10をハの字状に配置している例であり、このように、隣接する柱状の挟持体をハの字状に配置することによって、Oリングを押し込んだ際に、その力が効果的にOリングに伝わるため、溝から容易にOリングの一部を離間させることができる。
【0034】
例えば、外径が42〜48mmのOリングを取り外す場合、ハの字状に配置した2つの柱状の挟持体の狭い方の間隔(図1に示す距離A)は、30〜42mmであることが好ましく、32〜34mmであることが更に好ましい。上記挟持体の間隔が30mm未満であると、挟持体の間にOリングを押し込んだとしても、Oリングを溝から離間させるのに十分な力が生じないおそれがある。一方、42mm超であると、Oリングが挟持体に挟持されない。このとき、ハの字状に配置した2つの柱状の挟持体の広い方の間隔(図2に示す距離B)は、40〜48mmであることが好ましく、43〜45mmであることが更に好ましい。上記挟持体の間隔が40mm未満であると、挟持体の間にOリングを押し込んだとしても、Oリングを溝から離間させるのに十分な力が生じないおそれがある。一方、48mm超であると、Oリングを挟持しない部分が多くなるため、Oリング取り外し治具が大きくなるおそれがある。
【0035】
なお、図1に示すOリング取り外し治具100ように、3つの柱状の挟持体を備える場合、それぞれの柱状の挟持体の狭い方の間隔(図1に示す距離A及び距離C)は、同じであっても、異なってもよい。また、それぞれの柱状の挟持体の広い方の間隔(図1に示す距離B及び距離D)は、同じであっても、異なってもよい。
【0036】
また、本実施形態のOリング取り外し治具は、柱状の挟持体どうしが、平行になるように配置されてもよい。例えば、図2に示すOリング取り外し治具101は、隣接する柱状の挟持体10を平行に配置している例であり、このように、隣接する柱状の挟持体を平行に配置することによって、Oリングを押し込んだ際に、その力がOリングに伝わるため、溝から容易にOリングの一部を離間させることができる。また、手で外す場合に比べて、Oリングにかかる力を低減することができるため、Oリングの負荷を低減できるという利点がある。
【0037】
例えば、外径が42〜48mmのOリングを取り外す場合、平行に配置した2つの柱状の挟持体の間隔は、35〜45mmであることが好ましく、38〜42mmであることが更に好ましい。上記挟持体の間隔が35mm未満であると、挟持体の間にOリングを押し込んだとしても、Oリングを溝から離間させるのに十分な力が生じないおそれがある。一方、45mm超であると、Oリングが挟持体に挟持されない。
【0038】
[1−3]固定体:
本実施形態のOリング取り外し治具の支持体は、固定体に固定されていることが好ましく、固定体の形状は、枠状であってもよいし、枠状でなくてもよい。枠状としては、例えば、正方形状、長方形状、多角形状、円形状、楕円形状などを挙げることができ、また、枠状でない形状としては、例えば、2本の柱状体を平行に配置した形状(例えば、二の字状)などを挙げることができる。図1に示すOリング取り外し治具100は、長方形状の枠である固定体22を備えている例であり、この長方形状の固定体22は、4つの柱状体を組み合わせて形成することができる。柱状体は、その短手方向の断面形状が、三角形状、四角形状、多角形状、円形状、楕円形状、L字状などの形状のものを例示することができる。なお、固定体は、柱状体を組み合わせて形成するのではなく、一体に形成することもできる。固定体の材質(柱状体を組み合わせて形成する場合は柱状体の材質)は、例えば、鉄、ステンレスなどの金属、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂等を挙げることができる。
【0039】
[2]Oリング取り外し方法:
本発明のOリング取り外し方法の一実施形態は、その外周面に溝が形成された略柱状のフィルター本体と、溝に嵌め込まれたOリングとを有するフィルターから、Oリングを取り外すためのOリング取り外し方法であって、本発明のOリング取り外し治具の隣接する支持体に配置された挟持体の間にフィルターのOリングを押し込み、Oリングの一部を溝から離間させる工程を含むものである。このようなOリング取り外し方法によると、本発明のOリング取り外し治具を使用しているため、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができる。
【0040】
本実施形態のOリング取り外し方法に用いるフィルターは、外周面に溝が形成された略柱状のフィルター本体と、上記溝に嵌め込まれたOリングとを有するものであり、例えば、図4は、外周面に溝が形成された略柱状のフィルター本体32と、上記溝に嵌め込まれたOリング31とを有するフィルター30を例示している。このようなフィルターとしては、電子部品などの精密機器を製造する装置に使用されているフィルター、飲料品用の濾過フィルター、高純度な化学薬品の濾過フィルターなどを挙げることができる。
【0041】
フィルター本体は、外周面に溝が形成された略柱状であり、その材質や大きさなどは特に制限はなく、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、ポリテトラフルオロエチレン製、ナイロン製などを挙げることができる。また、フィルター本体としては、例えば、外径が50〜70mmで長さが500〜600mmであるものを例示することができる。なお、フィルター本体の外周面に形成される溝は、Oリングを嵌め込むことができるものである限り特に制限はなく、溝の数は1つであっても、複数であってもよい。また、「略柱状」とは、柱状、筒状、及び、有底の筒状を含む概念であり、柱状としては、三角柱状、四角柱状、多角柱状、円柱状、楕円柱状などを例示することができ、筒状としては、三角筒状、四角筒状、多角筒状、円筒状、楕円筒状などを例示することができる。
【0042】
Oリングは、フィルター本体の溝に嵌め込まれるものであり、その材質や大きさなどは特に制限はなく、その材質は、パーフロロゴム、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、NBR(アクリルニトリルゴム)、シリコンゴムなどを挙げることができる。Oリングとしては、例えば、外径が43〜47mm、内径が35〜39mmであるものを例示することができる。フィルター本体の溝に嵌め込まれているOリングの数は、1つであっても、複数であってもよい。
【0043】
本実施形態のOリング取り外し方法は、まず、図5に示すように、Oリング31の径方向とOリング取り外し治具100の隣接する四角柱状の挟持体10,10の長手方向とが同一平面内に位置する状態で、Oリング31を挟持体10,10の間に配置する。なお、柱状の挟持体どうしが、ハの字状になるように配置する場合、例えば、図5に示すように、柱状の挟持体どうしの間隔が広い方の間に配置する。
【0044】
次に、四角柱状の挟持体10,10の長手方向にOリングを押し込むことによって、図6に示すように、Oリング31の一部を溝から離間させる。このように挟持体10,10の間に押し込まれたOリング31は、弾性変形してその一部が溝から離間する。即ち、Oリング31を挟持体10,10の間に押し込むと、挟持体10,10とOリング31との当接面を始点として、Oリング31に対し、Oリング31を押し込んだ方向と逆の方向に力が加わる。従って、この力がOリング31内で衝突し、力のバランスが崩れた部分においてOリング31が溝から離間することになる。なお、図5は、Oリングが装着されたフィルターを隣接する柱状の挟持体に当接させた状態を示す平面図である。図6は、Oリングの一部を溝から離間させた状態を示す平面図である。
【0045】
なお、本実施形態のOリング取り外し方法は、隣接する支持体に配置された挟持体の間にフィルターのOリングを押し込む際に、その長手方向の中心軸を中心にフィルターを回転させることが好ましい。このようにすると、Oリングを容易に弾性変形させることができるという利点がある。
【0046】
本実施形態のOリング取り外し方法は、図7に示すように、溝から離間させたOリング31の一部と溝との間に、棒40を挿入した後、棒40を固定しつつ、フィルター30を挟持体10,10の間から外す工程を更に含むことが好ましい。フィルター30を挟持体10,10の間から外す場合、例えば、フィルター30のOリング31を押し込こんだ方向にフィルター本体32を倒すことによって、フィルター30を挟持体10,10の間から外すことが好ましい。なお、図7は、溝から離間したOリングの一部と溝との間に棒を挿入した状態を示す平面図である。
【0047】
棒としては、例えば、SUS製、ポリエチレン製等の、強度を有した樹脂のなどを挙げることができる。このような棒を用いることによって、Oリングを容易に回収することができる。
【0048】
フィルターを挟持体の間から外すことによって、溝に嵌め込まれていたOリングの残部を溝から離間することができ、フィルターからOリングを容易に取り外すことができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
まず、直径5mm、長さ270mmのSUS製の円柱体(支持体)を3本用意し、この円柱体に、縦15mm、横15mm、長さ120mmの四角柱状であって長手方向の中心軸に沿って貫通孔が形成されているシリコンゴムからなる挟持体10を装着した。次に、4つのSUS製の断面L字状の柱状体を組み合わせて長方形状の枠(固定体)を形成した。次に、上記3つの円柱体を、隣接するものどうしがハの字状を形成するように上記枠の短手方向に沿って配置して固定した。このようにして図1に示すようなOリング取り外し治具100を形成した。なお、3つの円柱体は、図2に示すように、シリコンゴムからなる挟持体10の間隔Aが33mm、間隔Bが44mm、間隔Cが48mm、間隔Dが53mmとなるように配置した。
【0051】
次に、上記のようにして形成したOリング取り外し治具を用いてフィルターの溝に嵌め込まれたパーフロロゴムからなるOリング(外径45mm、内径38m)を取り外した。即ち、まず、図5に示すように、Oリングの径方向と一対のシリコンゴムの長手方向とが同一平面上に位置するように、一対のシリコンゴムの間隔が広い側(図2においては間隔B側)にOリングを配置した。次に、一対のシリコンゴムの間隔が狭い側(図2においては間隔A側)に向かってOリングを押し込むことによってOリングの一部をフィルターの溝から離間させた(図6参照)。次に、溝から離間したOリングの一部と溝との間にSUS製の棒(直径2mm、長さ150mm)を挿入した後、挿入した方の先端を上方(一対のシリコンゴムの間隔が広い側)に向けた。次に、この棒が移動しないように手で固定した。その後、一対のシリコンゴムの間隔が狭い側に向けてフィルターを倒すことによって、溝に嵌め込まれていたOリングの残部を溝から離間させ、フィルターからOリングを取り外した。なお、外径56〜60mmのOリングをフィルターから取り外す場合には、間隔DにフィルターのOリングを配置し、上述した手順と同様にしてOリングを取り外すことが好ましい。
【0052】
実施例1のOリング取り外し治具は、比較例1のOリング取り外し治具に比べて、電子部品などの精密機器を汚染するおそれがなく、フィルターからOリングを容易に取り外すことができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のOリング取り外し治具は、電子部品などの精密機器を製造する装置に使用されているフィルターのOリングを取り外す治具として好適である。
【0054】
本発明のOリング取り外し方法は、電子部品などの精密機器を製造する装置に使用されているフィルターのOリングを好適に取り外すことが可能な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のOリング取り外し治具の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明のOリング取り外し治具の別の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明のOリング取り外し治具の別の実施形態を示す平面図である。
【図4】Oリングが取り付けられたフィルターの一実施形態を示す斜視図である。
【図5】Oリングが装着されたフィルターを隣接する柱状の挟持体に当接させた状態を示す平面図である。
【図6】Oリングの一部を溝から離間させた状態を示す平面図である。
【図7】溝から離間したOリングの一部と溝との間に棒を挿入した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
100,101,102:Oリング取り外し治具、10,11a,11b:挟持体、20:支持体、22:固定体、30:フィルター、31:Oリング、32:フィルター本体、40:棒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面内に配置された少なくとも2つの柱状の支持体と、
前記支持体の表面の少なくとも一部にそれぞれ配置されたゴムからなる挟持体と、
を備え、
隣接する前記支持体に配置された前記挟持体どうしが、所定の間隔を離隔した状態で対向しているOリング取り外し治具。
【請求項2】
前記挟持体が、柱状である請求項1に記載のOリング取り外し治具。
【請求項3】
前記挟持体が、貫通孔を有する柱状であり、前記貫通孔に前記支持体が挿入されている請求項1または2に記載のOリング取り外し治具。
【請求項4】
前記柱状の挟持体どうしが、平行に配置されている請求項2または3に記載のOリング取り外し治具。
【請求項5】
前記柱状の挟持体どうしが、ハの字状に配置されている請求項2または3に記載のOリング取り外し治具。
【請求項6】
前記挟持体が、シリコンゴムからなる請求項1〜5のいずれか一項に記載のOリング取り外し治具。
【請求項7】
その外周面に溝が形成された略柱状の前記フィルター本体と、前記溝に嵌め込まれたOリングとを有するフィルターから、前記Oリングを取り外すためのOリング取り外し方法であって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のOリング取り外し治具の隣接する前記支持体に配置された前記挟持体の間に前記フィルターの前記Oリングを押し込み、前記Oリングの一部を前記溝から離間させる工程を含むOリング取り外し方法。
【請求項8】
隣接する前記支持体に配置された前記挟持体の間に前記フィルターの前記Oリングを押し込む際に、その長手方向の中心軸を中心に前記フィルターを回転させる請求項7に記載のOリング取り外し方法。
【請求項9】
前記溝から離間させた前記Oリングの一部と前記溝との間に、棒を挿入した後、前記棒を固定しつつ、前記フィルターを前記挟持体の間から外す工程を更に含む請求項7または8に記載のOリング取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190104(P2009−190104A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31536(P2008−31536)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】