OFDM−MIMO受信装置
【課題】 シンボル間干渉による劣化を最小として、システム全体の信号品質を向上させることができるOFDM−MIMO受信装置を提供する。
【解決手段】 相互相関演算部302が、複数系統の送信信号の既知信号を記憶しておき、受信した複数系統の送信信号について、それぞれ記憶されている既知信号との相互相関演算を行って、FFT窓設定部303が、系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早い第1のピークと最も遅い第2のピークとの位置差がガードインターバル長以内であれば、第1のピーク位置に基づいてFFT演算器304にFFT窓開始位置を設定し、当該位置差がガードインターバル長を越える場合には、全ての送信系統の信号成分におけるシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索し、探索された位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するOFDM−MIMO受信装置としている。
【解決手段】 相互相関演算部302が、複数系統の送信信号の既知信号を記憶しておき、受信した複数系統の送信信号について、それぞれ記憶されている既知信号との相互相関演算を行って、FFT窓設定部303が、系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早い第1のピークと最も遅い第2のピークとの位置差がガードインターバル長以内であれば、第1のピーク位置に基づいてFFT演算器304にFFT窓開始位置を設定し、当該位置差がガードインターバル長を越える場合には、全ての送信系統の信号成分におけるシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索し、探索された位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するOFDM−MIMO受信装置としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いたMIMO(Multiple Input Multiple Output)無線通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置に係り、特にシステム全体の信号品質を高めることができる受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
MIMO無線通信システムでは、送信側、受信側双方が複数のアンテナを持っており、送信側では、複数のデータを複数のアンテナ使って送信し、受信側では受信信号から各送信信号を分離して受信データを取り出す。
そのため、1つの受信系統の受信信号には、複数の送信系列からの送信信号成分が含まれ、各送信信号成分には、それぞれチャネルにより電力減衰、位相回転、遅延の影響が加わっている。
【0003】
一般に、MIMO方式を含むOFDM信号を用いたシステムでは、時間軸上の受信信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)演算処理を行うことにより、周波数軸の信号に変換を行い、等化などの処理により送信信号を再生する。
【0004】
FFT演算処理を行う場合には、有効シンボルに付加されているガードインターバル信号を含む当該シンボル内の信号を、予め設定されているFFTポイント数分だけ取り込み、演算を行う。
【0005】
シンボルの先頭の検出には、ガードインターバルを利用した自己相関、又は、送信側においてプリアンブル信号を付加して受信側でプリアンブル信号を利用して求めた相互相関を用いる。
【0006】
そして、従来の受信装置においては、上記相関演算で、受信信号に含まれる最も大きい送信信号成分のピーク値と、当該ピーク位置を検出し、それを基準にしてFFT窓(FFT処理の対象となるデータの取り込み区間)を設定するようになっていた。
【0007】
[関連技術]
尚、OFDM方式に関する技術としては、特開2001−103033号公報「データ伝送装置」(出願人:日立電子株式会社、特許文献1)がある。
特許文献1には、受信装置が、受信信号と所定の同期シンボル信号との相互相関値系列信号を解析して、シンボル間干渉が最小となる有効相関ピークを検出し、当該ピークに基づいて受信サンプリングクロック同期処理及びフレームタイミング、シンボルタイミングの制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−103033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のOFDM−MIMO受信装置では、受信信号に含まれる最大送信信号成分のピーク値及びピーク位置に基づいてFFT窓を設定していたため、最大送信信号成分に対して遅延または先行した送信信号成分においてシンボル間干渉を起こし、信号品質が劣化してしまう恐れがあるという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、シンボル間干渉による劣化を軽減し、システム全体の信号品質を向上させることができるOFDM−MIMO受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎の既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークの位置から、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置までをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置を前記FFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたことを特徴としている。
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に付加される既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎に既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークと、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置差が、送信信号に付加されるガードインターバル長以内であれば、第1のピークに基づいてFFT窓開始位置をFFT演算器に設定し、当該ピークの位置差が、ガードインターバル長を超える場合には、第1のピークから第2のピークまでをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置をFFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎の既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークの位置から、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置までをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置を前記FFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたOFDM−MIMO受信装置としているので、シンボル間干渉電力が最小となるFFT窓開始位置を設定して、シンボル間干渉による信号劣化を最小に抑え、システム全体の信号品質を向上させることができる効果がある。
【0014】
本発明によれば、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に付加される既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎に既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークと、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置差が、送信信号に付加されるガードインターバル長以内であれば、第1のピークに基づいてFFT窓開始位置をFFT演算器に設定し、当該ピークの位置差が、ガードインターバル長を超える場合には、第1のピークから第2のピークまでをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置をFFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたOFDM−MIMO受信装置としているので、送信系統による遅延差が大きい場合であっても、シンボル間干渉電力が最小となるFFT窓開始位置を設定して、シンボル間干渉による信号劣化を最小に抑え、システム全体の信号品質を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置が用いられるOFDM−MIMO無線通信システムの構成例を示す説明図である。
【図2】本受信装置の受信ベースバンド部107の構成を示す構成ブロック図である。
【図3】相互相関演算部302の構成ブロック図である。
【図4】FFT窓設定部303の構成ブロック図である。
【図5】相互相関電力と受信信号の関係を示す説明図である。
【図6】電力の高いパスが時間的に後ろにある場合の相互相関電力と受信信号を示す説明図である。
【図7】ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合のFFT窓開始位置の設定方法を示す説明図である。
【図8】ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【図9】ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【図10】ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【図11】本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
【図12】本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
【図13】本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
【図14】送信系統がM系統の場合の相互相関ピーク電力の説明図である。
【図15】FFT窓位置設定部502の概略処理を示すフローチャートである。
【図16】図15の処理108に示したFFT窓開始位置探索処理を示すフローチャートである。
【図17】図16の処理204に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置は、受信した複数系統の送信信号について、それぞれ既知信号との相互相関演算を行って、相互相関のピーク位置とピーク電力を求め、時間的に最も早いピーク位置と最も遅いピーク位置との間隔が、ガードインターバル長以下であれば、時間的に最も早いピーク位置に基づいてFFT窓を設定し、ガードインターバル長を越える場合には、全ての送信系統の信号成分におけるシンボル間干渉電力の総量が最小となるFFT窓の位置を探索し、当該位置にFFT窓を設定するものであり、最適な位置にFFT窓を設定することにより、シンボル間干渉を低減して、システム全体の信号品質を向上させることができるものである。
【0017】
また、本OFDM−MIMO受信装置は、最適なFFT窓の位置を探索する際に、時間的に最も早いピークから最も遅いピークまでの範囲をFFT窓開始位置探索範囲として、範囲内の初期位置にFFT窓を設定して、送信系統毎にそれぞれシンボル間干渉電力を算出し、全ての系統のシンボル間干渉電力を合計して、当該FFT窓開始位置に応じたシンボル間干渉電力の総量とする処理を行い、FFT窓の位置を順次ずらして当該シンボル間干渉電力の総量を求める処理を行って、範囲内の全てのFFT窓開始位置についてシンボル間干渉電力の総量を求める処理が終わると、当該シンボル間干渉電力の総量が最小となるFFT窓開始位置を特定して、当該FFT窓開始位置をFFT演算器に設定するものであり、シンボル間干渉を低減して、システム全体の信号品質を向上させることができるものである。
【0018】
[OFDM−MIMO無線通信システム:図1]
本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置が用いられるOFDM−MIOMO無線通信システムについて図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置が用いられるOFDM−MIMO無線通信システムの構成例を示す説明図である。
図1では、2系統の送信部(送信装置)と2系統の受信部(受信装置)を持つ2×2のOFDM−MIMO無線通信システムの構成を示している。
そして、本実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置は、当該システムにおける第一系統、第二系統の受信部として動作するものである。尚、送信部と受信部とを両方備えた無線通信装置として構成してもよい。
【0019】
図1に示すように、当該無線通信システムは、送信側として、MIMO送信処理部101と、系統毎に設けられた送信ベースバンド部(図では「送信BB」)102と、送信RF(Radio Frequency)部(図では「送信RF」)103と、送信アンテナ104とを備えている。
また、受信側として、系統毎に設けられた受信アンテナ105と、受信RF部(図では「受信RF」)106及び受信ベースバンド部(図では「受信BB」)107と、MIMO受信処理部108とを備えている。
【0020】
図1においては、各ブロックの「-(ハイフン)」の後の番号は、系統番号を示したものである。また、図中のhyxは、第x系統送信部から第y系統受信部への伝送路特性を示したものである。
【0021】
[各部の説明]
各構成部分について説明する。
[送信部の構成]
[MIMO処理部101]
MIMO送信処理部101は、入力信号をMIMOの通信方式に合わせて分離・符号化し、第一系統及び第二系統の送信ベースバンド部102-1,102-2へ出力する。
以下、系統番号は省略して説明する。
【0022】
[送信ベースバンド部102]
送信ベースバンド部102は、マッピング処理部と、既知信号付加処理部と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)演算器と、ガードインターバル付加処理部とを備え、入力された信号に、マッピング、プリアンブル信号付加、周波数軸信号から時間軸信号への変換、ガードインターバル付加の処理を施し、送信RF部103へ出力する。
【0023】
マッピング処理部は、所定の変調方式(例えば、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や64QAM)に従い、入力信号をデータキャリアにマッピングする。
既知信号付加処理部は、受信側に予め設定された既知の信号(既知信号)を付加する。ここで、既知信号は、第一系統と第二系統とで異なる信号となっている。
【0024】
IFFT演算器は、入力信号に対してIFFT演算を施し、周波数軸信号から時間軸信号へ変換を行う。
ガードインターバル付加処理部は、入力された時間軸信号に対して、所定の長さ(例えば、有効シンボル長の1/4や1/8)のガードインターバルを付加して、送信RF部103へ出力する。
【0025】
また、送信ベースバンド部102の別の構成として、プリアンブル信号をIFFT変換後に付加する構成もある。
このような場合、送信ベースバンド部102は、マッピング処理部と、IFFT演算器と、プリアンブル信号付加処理部と、ガードインターバル付加処理部とを備える。
そして、プリアンブル信号付加処理部が、IFFT演算された時間軸信号に対してプリアンブル信号を付加するようになっている。他の部分の動作は上述した例と同様である。
【0026】
[送信RF部103、送信アンテナ104]
送信RF部103は、入力された信号をD/A変換して、送信周波数帯への周波数変換等を行い、系統毎に送信アンテナ104に出力する。
送信アンテナ104は、送信RF部103から入力された信号を送信する。
【0027】
[受信部の構成]
[受信アンテナ105、送信RF部106]
受信アンテナ105は、送信アンテナ104-1,104-2から送信された信号をそれぞれ受信し、受信RF部106へ出力する。
受信RF部106は、各系統の受信アンテナ105から入力された受信信号をベースバンド帯へ周波数変換し、AGC(Auto Gain Control)処理を行い、A/D変換して、各系統の受信ベースバンド部107へ出力する。
【0028】
[受信ベースバンド部107]
受信ベースバンド部107は、入力された信号について、自己相関及び相互相関の相関演算を行って相関ピーク電力及びピーク位置の検出を行い、FFT演算を施して時間軸信号から周波数軸信号へ変換し、チャネル推定を行い、MIMO受信処理部108へ出力する。
本受信装置では、受信ベースバンド部107における処理が従来とは異なっている。受信ベースバンド部107の構成については後で説明する。
【0029】
[MIMO受信処理部108]
MIMO受信処理部108は、各系統の受信ベースバンド部107から出力された信号について、チャネル推定結果を用いて受信信号の信号分離処理を行う。信号分離処理は、例えば、MMSE(Minimum Mean Square Error)やMLD(Maximum Likelihood Detection)による分離・検出を行う。
【0030】
[受信ベースバンド部107の構成:図2]
次に、図1に示した受信ベースバンド部107の構成について図2を用いて説明する。図2は、本受信装置の受信ベースバンド部107の構成を示す構成ブロック図である。
図2に示すように、受信ベースバンド部107は、自己相関演算部(図では「自己相関」と記載)301と、相互相関演算部(図では「相互相関」)302と、FFT窓設定部303と、FFT演算器(図では「FFT」)304と、チャネル推定部(図では「チャネル推定」)305とを備える。
【0031】
自己相関演算部301は、送信側で付加されたプリアンブル信号に含まれる一定周期信号を用いて自己相関をとり、フレームの先頭を検出し、相互相関演算部302へ出力する。
【0032】
相互相関演算部302は、送信側で付加されたプリアンブル信号に含まれる各系統の既知信号と、予め記憶されている既知信号との相関をとり、その相関値をFFT窓設定部303へ出力する。相互相関演算部302については、後で詳細に説明する。
【0033】
FFT窓設定部303は、本受信装置の特徴部分であり、相互相関演算部302の演算結果に基づいてFFT窓の位置を決定し、FFT演算器304へ出力する。FFT窓設定部303の詳細については後で説明する。
【0034】
チャネル推定部305は、FFT演算器304により変換された周波数軸信号から、既知のパイロット信号やプリアンブル信号に基づいてチャネルを推定し、MIMO受信処理部108へ出力する。
【0035】
[相互相関演算部302:図3]
次に、図2に示した相互相関演算部302の構成について図3を用いて説明する。図3は、相互相関演算部302の構成ブロック図である。
図3に示すように、相互相関演算部302は、既知信号格納メモリ401-1,401-2と、相関演算器402-1,402-2とを備える。
【0036】
既知信号格納メモリ401-1は、送信側の第一系統の既知信号(REF1)を格納しているメモリであり、既知信号を相関演算器402-1へ出力する。既知信号は、送信側において、プリアンブルに付加されて送信されるものである。
既知信号格納メモリ401-2は、送信側の第二系統の既知信号(REF2)を格納しているメモリであり、既知信号を相関演算器402-2へ出力する。
【0037】
相関演算器402-1,402-2は、受信信号ryと第一系統の既知信号又は第二系統の既知信号との相関演算を行い、演算結果CCy1,CCy2をFFT窓設定部303へ出力する。
【0038】
[FFT窓設定部303:図4]
次に、図2に示したFFT窓設定部303の構成について図4を用いて説明する。図4は、FFT窓設定部303の構成ブロック図である。
図4に示すように、FFT窓設定部303は、ピーク位置・ピーク電力検出器501-1,501-2と、FFT窓位置設定部502とを備える。尚、図4では本線系のパスは省略している。
【0039】
ピーク位置・ピーク電力検出器501-1は、受信信号ryと第一系統の既知信号との相互相関演算結果CCy1の最大値(ピーク電力)とその位置(ピーク位置)を検出して、FFT窓位置設定部502へ出力する。
同様に、ピーク位置・ピーク電力検出器501-2は、受信信号ryと第二系統の既知信号との相互相関演算結果CCy2の最大値と最大値の位置を検出して、FFT窓位置設定部502へ出力する。
【0040】
FFT窓位置設定部502は、入力されたピーク位置及びピーク電力に基づいて、FFT窓開始位置を決定し、図2のFFT演算器304へ出力する。FFT窓開始位置設定部502における処理が、本受信装置の特徴部分となっている。
【0041】
[相互相関電力と受信信号:図5]
本受信装置のFFT窓開始位置設定方法について説明する前に、相互相関電力と受信信号の関係について図5を用いて説明する。図5は、相互相関電力と受信信号の関係を示す説明図である。
図5では、第一系統の受信部で受信された信号r1の各相互相関電力の総和と受信信号のイメージを示している。縦軸は相関電力であり、横軸はサンプル(時間)である。
【0042】
Pr11は、r1と既知信号格納メモリ401-1からの既知信号(第一送信系統で付加された既知信号)との相互相関ピーク電力を示しており、Pr12は、r1と既知信号格納メモリ401-2からの既知信号(第二送信系統で付加された既知信号)との相互相関ピーク電力を示している。
【0043】
また、上部に記載された四角形は受信信号のイメージであり、斜線部分は各送信信号成分のガードインターバルを示す。四角形の幅は電力差のイメージを示している。
POS1とPOS2は、それぞれPr11とPr12の位置であり、ΔPOSは、POS1とPOS2の差分(位置差、間隔)である。
また、図中のx′1,x′2は受信信号に含まれる第一系統送信信号成分、第二系統送信信号成分で、それぞれチャネルにより電力減衰、位相回転、遅延の影響を受けている。
【0044】
図5では、最大の相互相関ピーク電力が時間的に早く現れ、且つピークの間隔ΔPOSがガードインターバル長(LGI)より短い場合を示している。このような場合は、適切にFFT窓を設けることにより、原理的にはシンボル間干渉は発生しない。
但し、実際にはマージンα(0<α<LGI)を持つため、シンボル間干渉が発生しないピーク位置差は(LGI−α)以内となる。
図5の例はピーク間隔ΔPOSが(LGI−α)となっているので、最大の相互相関ピーク電力Pr11の位置POS1に基づいて、マージンαだけ早いタイミングにFFT窓開始位置を設定した場合、第一送信系統、第二送信系統ともシンボル間干渉は発生しない。
【0045】
[電力の高いパスが時間的に後ろにある場合:図6]
次に、電力の高いパスが時間的に後ろにある場合について図6を用いて説明する。図6は、電力の高いパスが時間的に後ろにある場合の相互相関電力と受信信号を示す説明図である。
図6に示すように、相互相関電力が最も大きいPr12を基準にしてFFT窓開始位置を設けると、第一送信系統では後ろのシンボルにかかってしまい、シンボル間干渉が発生する。
【0046】
[FFT窓開始位置の設定]
次に、FFT窓開始位置の設定方法について説明する。
[ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合:図7]
まず、ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合について図7を用いて説明する。図7は、ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合のFFT窓開始位置の設定方法を示す説明図である。
ピーク間隔がガードインターバル長以下の場合、パスの電力にかかわらず、シンボル間干渉が発生しないようにFFT窓を設定することが可能である。
図7に示すように、ピーク間隔ΔPOSが、ガードインターバル長LGI以下の場合、ピーク電力の大きさにかかわらず、時間的に最も早い相互相関ピーク電力の位置POS1を基準にして、POS1の位置にFFT窓開始位置を設定する。
これにより、時間的に最も早い送信系統だけでなく、他の送信系統についてもシンボル間干渉は生じない。
【0047】
また、対象とするパスは、最もピーク電力が大きいパスの相互相関電力をPmaxとして、Pmaxに対してしきい値THRPを設け、それを越えるものを対象とする。しきい値THRPは、例えば、次式算出する。
THRP=μPmax (0<μ<1)
μは、システムの仕様等により決定される。
【0048】
具体的には、図4に示したFFT窓設定部303のピーク位置・ピーク電力検出部501が、第一、第二の送信系統毎に相互相関電力の最大値とその位置を検出し、FFT窓位置設定部502が、時間的に最も早い系統の相互相関ピーク電力と、最も遅い相互相関ピーク電力との間隔ΔPOSを算出し、ピーク間隔がガードインターバル長以下の場合(到来した各送信信号成分の遅延差がガードインターバル長以内の場合)に、時間的に最も早い相互相関ピーク電力の位置に基づいてFFT窓開始位置を設定する。
【0049】
尚、上述したように、マージンαを設けてFFT窓開始位置を設定する場合には、ピーク間隔ΔPOSがガードインターバル長からマージンを引いた長さ(LGI−α)以下であるかどうかを判断して、(LGI−α)以下である場合に、時間的に最も早い相互相関ピーク電力の位置POS1を基準にして(POS1−α)の位置にFFT窓を設けるようにしてもよい。
【0050】
[ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合:図8,9,10]
次に、ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合について図8,図9,図10を用いて説明する。図8,図9,図10は、ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【0051】
まず、図8に示すように、図7と同様に時間的に最初の相互相関ピーク電力に基づいて、そこからマージンαだけ早いタイミングにFFT窓開始位置を設定した場合、第一送信系統はよいが、第二送信系統では、前のシンボルを拾ってしまうためシンボル間干渉が発生する。
【0052】
図9は、図8の場合よりもFFT窓開始位置を遅くしたものである。この場合でも、第二送信系統では前のシンボルとのシンボル間干渉が発生してしまう。
【0053】
図10では、図9の場合よりもFFT窓開始位置を遅くしている。この場合には、第二送信系統ではシンボル間干渉は発生しないが、第一送信系統において後ろのシンボルとのシンボル間干渉が発生してしまう。
このように、ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合、FFT窓をどこに設定したとしてもいずれかの送信系統でシンボル間干渉が発生する。
【0054】
そこで、本受信装置では、ピーク間隔ΔPOSがガードインターバル長を超える場合には、全て(ここでは2つ)の送信系統で発生するシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索し、当該位置をFFT窓開始位置とする。
【0055】
具体的には、FFT窓開始位置を探索する範囲で、順次FFT窓開始位置をずらして設定しつつ、各FFT窓開始位置に応じて、それぞれの送信系統で発生するシンボル間干渉電力を算出後、全ての送信系統のシンボル間干渉電力を加算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶しておき、シンボル間干渉電力の総和が最小となる位置を検出して、その位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するようにしている。
【0056】
シンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置の探索処理は、システム運用前の設定時に、FFT窓設定部303のFFT窓位置設定部502が行うものである。
具体的には、運用前に、実際に送信部からの送信信号を当該受信装置で受信してレジスタに記憶しておき、FFT窓設定部303のFFT窓位置設定部502が、記憶されたデータについてFFT窓開始位置を順次ずらして設定しつつ、シンボル間干渉電力の総和を算出して最適なFFT窓開始位置を特定するものである。そして、特定されたFFT窓位置に基づいてシステムが運用されるようになっている。
【0057】
[シンボル間干渉電力の算出:図11,12,13]
次に、本受信装置におけるシンボル間干渉電力の具体的な算出方法について送信系統が2系統の場合について、図11,12,13を用いて説明する。図11,12,13は、本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
図11に示すように、各ピーク位置をPOS1、POS2(POS1<POS2)とし、図のようにFFT窓の開始位置をw(POS1≦w≦POS2)として、wを動かして、各開始位置(w)に対応するシンボル間干渉電力C(w)を算出する。
【0058】
図11の場合、FFT窓の開始位置wは時間的に早い相互相関ピーク電力POS1の位置であり、第一送信系統ではシンボル間干渉は発生していない。第二送信系統で発生しているシンボル間干渉の電力は、図中、縦線の網掛けで表示されている部分の面積に相当し、
C(w)={(POS2−LGI)−POS1}・Pr12
で算出される。
【0059】
図12に示すように、図11よりもFFT窓開始位置を遅くした場合、第一送信系統と第二送信系統の両方にシンボル間干渉が発生する。尚、図中のFFT_PTSはFFTポイント数を示す。
したがって、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力は、
C(W)={(w1+FFT_PTS)−(POS1+FFT_PTS)}・Pr11
+{(POS2−LGI)−w1}・Pr12
=(w1−POS1)・Pr11+{(POS2−LGI)−w1}・Pr12
で算出される。
【0060】
また、図13に示すように、FFT窓開始位置を相互相関ピーク電力POS2の位置に設定した場合には、第一送信系統でのみシンボル間干渉が発生し、第二送信系統ではシンボル間干渉は発生しない。
この場合のシンボル間干渉電力は、
C(w)={(w+FFT_PTS)−(POS1+FFT_PTS)}・Pr11
=(w−POS1)・Pr11
で算出される。
【0061】
[一般的なシンボル間干渉電力の算出方法]
上述したように、FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力は、当該FFT窓位置とした場合に、各送信系統で発生するシンボル間干渉電力の総和となる。
したがって、FFT窓開始位置設定部502は、まず、送信系統毎にシンボル間干渉電力を求めてから、全ての系統におけるシンボル間干渉電力を合算して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和を得る。
【0062】
各系統のシンボル間干渉電力の算出方法は、FFT窓開始位置wと、当該系統の相互相関ピーク電力位置POSxと、ガードインターバル長との関係によって3通りに分類される。
ここで、受信信号に含まれる各送信信号成分のシンボル間干渉電力をCx(w)、各ピーク電力をPyxとしている。xは送信系統の番号、yは受信系統の番号である。
【0063】
Cx(w)={(POSx−LGI)−w}・Pyx (w<POSx−LGI) (式1)
Cx(w)=(w−POSx)・Pyx (w>POSx) (式2)
Cx(w)=0 (POSx−LGI≦w≦POSx) (式3)
【0064】
式1は、例えば、図11,12の第二送信系統に適用され、式2は、図12,13の第一送信系統に適用され、式3は、図11の第一送信系統及び図13の第二送信系統に適用される。
【0065】
そして、本受信装置では、上記式(1)〜(3)のいずれかを用いて算出された各送信系統のシンボル間干渉電力を合算して、その値を、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和とする。つまり、各FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和は、
【0066】
【数1】
【0067】
と表される。
図11〜13の場合、M=2であり、各送信系統についてFFT窓開始位置と相互相関ピーク電力の位置に基づいて、上述した式(1)〜(3)のいずれかを適用して、合算することでシンボル間干渉電力の総和が求められる。
そして、FFT窓設定部303は、シンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置をFFT演算器304に設定する。
【0068】
[M系統の場合:図14]
次に、送信系統がM系統である場合のFFT窓開始位置の設定方法について図14を用いて説明する。図14は、送信系統がM系統の場合の相互相関ピーク電力の説明図である。
本受信装置では、相互相関演算部302は、M系統の送信部に対応する既知信号を格納するM個のメモリを備えている。そして、系統毎に相互相関演算を行って、相関演算結果をFFT窓設定部303に出力する。
【0069】
FFT窓設定部303では、系統毎に相互相関ピーク電力とその位置を検出して、それに基づいてFFT窓位置設定部502がFFT窓開始位置を設定する。
図14に示すように、M系統の場合には、相互相関電力のピークはM本得られる。また、x′1,x′2,…x′M-1,x′Mは第一送信系統から第M送信系統の送信信号成分であり、電力減衰、位相回転、遅延の影響を受けている。
【0070】
FFT窓位置設定部502は、全ピーク位置POS1〜POSMの中から、時間的に最も早いピークの位置(最先行位置)POSfirstと、時間的に最も遅いピークの位置(最後方位置)POSbottomを検出し、その位置差ΔPOSを検出する。
図14の例では、POSfirstはPOS1であり、POSMはしきい値THRPを超えていないので、POSbottomはPOSM-1となる。
【0071】
そして、2系統の場合と同様に、POSfirstとPOSbottomの間隔ΔPOSがガードインターバルLGI以内であれば、最も早いPOSfirstに基づいてFFT窓を設ける。
また、ΔPOSがガードインターバルLGIを越えている場合には、上述した式(1)〜(3)及び数1を用いて、シンボル間干渉電力の総和が最も小さくなるFFT窓の位置を探索して、当該位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定する。
但し、FFT窓開始位置(w)の探索範囲はPOSfirst<w<POSbottomとする。
このようにして、M系統の場合のFFT窓開始位置が設定されるものである。
【0072】
[FFT窓位置設定部502の概略処理:図15]
次に、FFT窓位置設定部502の概略処理について図15を用いて説明する。図15は、FFT窓位置設定部502の概略処理を示すフローチャートである。
図15に示すように、FFT窓位置設定部502は、処理が開始されると、系統毎に入力される相互相関ピーク電力に基づいて、相互相関ピークの最先行位置(POSfirst)と最後方位置(POSbottom)を検出し(100)、POSfirstとPOSbottomの位置差(ΔPOS)を検出する。
【0073】
そして、FFT窓位置設定部502は、ΔPOSがガードインターバル長以内であるかどうかを判断し(104)、ΔPOSがガードインターバル長以内であれば(Yesの場合)、最初のピーク位置であるPOSfirstに基づいて、FFT演算器304にFFT窓開始位置を設定する(106)。
【0074】
また、FFT窓位置設定部502は、処理104でΔPOSがガードインターバル長を超えている場合(Noの場合)には、全ての送信系統のシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索して、当該位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するFFT窓開始位置探索処理を行う(108)。FFT窓開始位置探索処理については図16を用いて詳述する。
このようにして、FFT窓位置設定部502における概略処理が行われる。
【0075】
[FFT窓開始位置探索処理:図16]
次に、図15の処理108に示したFFT窓開始位置探索処理について図16を用いて説明する。図16は、図15の処理108に示したFFT窓開始位置探索処理を示すフローチャートである。
図15の処理104でΔPOSがガードインターバルを超えていた場合、FFT窓位置設定部502は、全ての送信系統のシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置の探索を行う。
図16に示すように、FFT窓位置設定部502は、まず、FFT窓開始位置を初期位置に設定し(w=POSfirst)(200)、送信系統の番号xを1とする(x=1)(202)。
【0076】
そして、FFT窓位置設定部502は、受信した第x系統の送信信号におけるシンボル間干渉電力Cx(w)を算出する(204)。算出方法は、上述した式(1)〜(3)に基づいて行われるものであり、図17を用いて後述する。
【0077】
FFT窓位置設定部502は、Cx(w)を算出すると、xが送信系統数Mに達したかどうか(x≧Mかどうか)を判断する(110)。
xが送信系統数Mに達していない場合(Noの場合)には、FFT窓位置設定部502は、xをインクリメントし(x=x+1)(206)、処理204に戻る。
【0078】
また、処理110でxが送信系統数Mに達した場合には(Yesの場合)、FFT窓位置設定部502は、x=1〜MのCx(w)を合計して、当該FFT窓位置におけるシンボル間干渉電力Cx(w)の総和を算出し、記憶しておく(212)。処理204、212の処理は、請求項におけるシンボル間干渉電力算出処理に相当する。
【0079】
そして、FFT窓位置設定部502は、FFT窓位置の探索範囲(POSfirst<w<POSbottom)について探索を行ったかどうか、つまりFFT窓位置シフト終了かどうか(w≧POSbottom)を判断し(214)、終了でなければ(Noの場合)、FFT窓位置をシフトさせて(w=w+1)(216)、処理202に移行して次のFFT窓位置についてシンボル間干渉電力の総和を算出する。
【0080】
また、処理214において、FFT窓位置のシフトが終了した場合には、探索範囲内のFFT窓開始位置に対応して記憶されているシンボル間干渉電力の総和の中で、シンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓の位置を選択し(220)、当該位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定し(222)、処理を終わる。
このようにして、FFT窓開始位置探索処理が行われる。
【0081】
[送信系統毎のシンボル間干渉電力Cx(w)の算出処理:図17]
次に、図16の処理204に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理について図17を用いて説明する。図17は、図16の処理204に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理を示すフローチャートである。
図17に示すように、FFT窓位置設定部502は、第x系統の送信信号の相互相関ピーク電力位置(POSx)とガードインターバル長(LGI)に基づいて、まず、FFT窓開始位置(w)が、w<POSx−LGIであるかどうかを判断し(300)、w<POSx−LGIであれば(Tの場合)、上述した式(1)Cx(w)={(POSx−LGI)−w}・Pyx に従ってCx(w)を算出する(302)。
【0082】
また、処理300で、w<POSx−LGIではない場合(Fの場合)、FFT窓位置設定部502は、更にw>POSxであるかどうかを判断し(304)、w>POSxである場合には(Tの場合)、上述した式(2)Cx(w)=(w−POSx)・Pyx に従ってCx(w)を算出する(306)。
【0083】
また、処理304で、w>POSxでない場合(Fの場合)、FFT窓位置設定部502は、式(3)Cx(w)=0に従って、シンボル間干渉電力を0と算出する(308)。
このようにして、図16に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理が行われる。
【0084】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置によれば、相互相関演算部302が、複数系統の送信信号に付加され系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信した複数系統の送信信号について、それぞれ記憶されている既知信号との相互相関演算を行って、FFT窓設定部303が、系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、系統毎の相互相関ピークの内、時間的に最も早いピークと最も遅いピークとの位置差がガードインターバル長以内であれば、時間的に最も早いピーク位置に基づいてFFT演算器304にFFT窓開始位置を設定し、当該位置差がガードインターバル長を越える場合には、全ての送信系統におけるシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索するFFT窓開始位置探索処理を行って、特定された位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するようにしているので、シンボル間干渉を低減して、システム全体の信号品質を向上させることができる効果があり、また、ピーク位置差がガードインターバル以内の場合には探索処理を行わずに処理を軽減できる効果がある。
【0085】
また、本OFDM−MIMO受信装置によれば、FFT窓設定部303のFFT窓位置設定部502が、FFT窓開始位置探索処理において、時間的に最も早いピークから最も遅いピークまでの範囲をFFT窓開始位置探索範囲として、送信系統毎のシンボル間干渉電力を算出し、全ての送信系統のシンボル間干渉電力を合計して当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総量を算出して記憶する処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらして設定しながら探索範囲内の全てのFFT窓開始位置についてシンボル間干渉電力の総量を算出して記憶する処理を行って、記憶されたシンボル間干渉電力の総量の内で最小のものに対応するFFT窓開始位置を選択して、FFT演算器304に当該FFT窓開始位置を設定するようにしており、送信系統による遅延差が大きい場合であっても、シンボル間干渉を最小とする最適なFFT窓開始位置を設定することができ、信号品質の劣化を最小限に抑えて、システム全体の信号品質を向上させることができる効果がある。
【0086】
また、本OFDM−MIMO受信装置によれば、FFT窓位置設定部502が、相互相関ピークの最大値に基づいてしきい値を設定し、当該しきい値を超えた相互相関ピークを検出の対象としているので、実質的に有効な受信信号のみに基づいて探索範囲を決定することができ、無駄な処理を行わないようにすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、システム全体の信号品質を高めることができるOFDM−MIMO受信装置に適している。
【符号の説明】
【0088】
101…MIMO送信処理部、 102…送信ベースバンド部、 103…送信FR部、 104…送信アンテナ、 105…受信アンテナ、 106…受信RF部、 107…受信ベースバンド部、 108…MIMO受信処理部、 301…自己相関演算部、 302…相互相関演算部、 303…FFT窓設定部、 304…FFT演算器、 305…チャネル推定部、 401…既知信号格納メモリ、 402…相関演算器、 501…ピーク位置・ピーク電力検出器、 502…FFT窓位置設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いたMIMO(Multiple Input Multiple Output)無線通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置に係り、特にシステム全体の信号品質を高めることができる受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
MIMO無線通信システムでは、送信側、受信側双方が複数のアンテナを持っており、送信側では、複数のデータを複数のアンテナ使って送信し、受信側では受信信号から各送信信号を分離して受信データを取り出す。
そのため、1つの受信系統の受信信号には、複数の送信系列からの送信信号成分が含まれ、各送信信号成分には、それぞれチャネルにより電力減衰、位相回転、遅延の影響が加わっている。
【0003】
一般に、MIMO方式を含むOFDM信号を用いたシステムでは、時間軸上の受信信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)演算処理を行うことにより、周波数軸の信号に変換を行い、等化などの処理により送信信号を再生する。
【0004】
FFT演算処理を行う場合には、有効シンボルに付加されているガードインターバル信号を含む当該シンボル内の信号を、予め設定されているFFTポイント数分だけ取り込み、演算を行う。
【0005】
シンボルの先頭の検出には、ガードインターバルを利用した自己相関、又は、送信側においてプリアンブル信号を付加して受信側でプリアンブル信号を利用して求めた相互相関を用いる。
【0006】
そして、従来の受信装置においては、上記相関演算で、受信信号に含まれる最も大きい送信信号成分のピーク値と、当該ピーク位置を検出し、それを基準にしてFFT窓(FFT処理の対象となるデータの取り込み区間)を設定するようになっていた。
【0007】
[関連技術]
尚、OFDM方式に関する技術としては、特開2001−103033号公報「データ伝送装置」(出願人:日立電子株式会社、特許文献1)がある。
特許文献1には、受信装置が、受信信号と所定の同期シンボル信号との相互相関値系列信号を解析して、シンボル間干渉が最小となる有効相関ピークを検出し、当該ピークに基づいて受信サンプリングクロック同期処理及びフレームタイミング、シンボルタイミングの制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−103033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のOFDM−MIMO受信装置では、受信信号に含まれる最大送信信号成分のピーク値及びピーク位置に基づいてFFT窓を設定していたため、最大送信信号成分に対して遅延または先行した送信信号成分においてシンボル間干渉を起こし、信号品質が劣化してしまう恐れがあるという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、シンボル間干渉による劣化を軽減し、システム全体の信号品質を向上させることができるOFDM−MIMO受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎の既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークの位置から、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置までをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置を前記FFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたことを特徴としている。
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に付加される既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎に既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークと、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置差が、送信信号に付加されるガードインターバル長以内であれば、第1のピークに基づいてFFT窓開始位置をFFT演算器に設定し、当該ピークの位置差が、ガードインターバル長を超える場合には、第1のピークから第2のピークまでをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置をFFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎の既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークの位置から、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置までをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置を前記FFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたOFDM−MIMO受信装置としているので、シンボル間干渉電力が最小となるFFT窓開始位置を設定して、シンボル間干渉による信号劣化を最小に抑え、システム全体の信号品質を向上させることができる効果がある。
【0014】
本発明によれば、複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、複数の送信系統毎に付加される既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、送信系統毎に既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、相互相関演算結果に基づいて、送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークと、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置差が、送信信号に付加されるガードインターバル長以内であれば、第1のピークに基づいてFFT窓開始位置をFFT演算器に設定し、当該ピークの位置差が、ガードインターバル長を超える場合には、第1のピークから第2のピークまでをFFT窓開始位置の探索範囲として、複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置をFFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたOFDM−MIMO受信装置としているので、送信系統による遅延差が大きい場合であっても、シンボル間干渉電力が最小となるFFT窓開始位置を設定して、シンボル間干渉による信号劣化を最小に抑え、システム全体の信号品質を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置が用いられるOFDM−MIMO無線通信システムの構成例を示す説明図である。
【図2】本受信装置の受信ベースバンド部107の構成を示す構成ブロック図である。
【図3】相互相関演算部302の構成ブロック図である。
【図4】FFT窓設定部303の構成ブロック図である。
【図5】相互相関電力と受信信号の関係を示す説明図である。
【図6】電力の高いパスが時間的に後ろにある場合の相互相関電力と受信信号を示す説明図である。
【図7】ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合のFFT窓開始位置の設定方法を示す説明図である。
【図8】ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【図9】ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【図10】ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【図11】本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
【図12】本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
【図13】本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
【図14】送信系統がM系統の場合の相互相関ピーク電力の説明図である。
【図15】FFT窓位置設定部502の概略処理を示すフローチャートである。
【図16】図15の処理108に示したFFT窓開始位置探索処理を示すフローチャートである。
【図17】図16の処理204に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置は、受信した複数系統の送信信号について、それぞれ既知信号との相互相関演算を行って、相互相関のピーク位置とピーク電力を求め、時間的に最も早いピーク位置と最も遅いピーク位置との間隔が、ガードインターバル長以下であれば、時間的に最も早いピーク位置に基づいてFFT窓を設定し、ガードインターバル長を越える場合には、全ての送信系統の信号成分におけるシンボル間干渉電力の総量が最小となるFFT窓の位置を探索し、当該位置にFFT窓を設定するものであり、最適な位置にFFT窓を設定することにより、シンボル間干渉を低減して、システム全体の信号品質を向上させることができるものである。
【0017】
また、本OFDM−MIMO受信装置は、最適なFFT窓の位置を探索する際に、時間的に最も早いピークから最も遅いピークまでの範囲をFFT窓開始位置探索範囲として、範囲内の初期位置にFFT窓を設定して、送信系統毎にそれぞれシンボル間干渉電力を算出し、全ての系統のシンボル間干渉電力を合計して、当該FFT窓開始位置に応じたシンボル間干渉電力の総量とする処理を行い、FFT窓の位置を順次ずらして当該シンボル間干渉電力の総量を求める処理を行って、範囲内の全てのFFT窓開始位置についてシンボル間干渉電力の総量を求める処理が終わると、当該シンボル間干渉電力の総量が最小となるFFT窓開始位置を特定して、当該FFT窓開始位置をFFT演算器に設定するものであり、シンボル間干渉を低減して、システム全体の信号品質を向上させることができるものである。
【0018】
[OFDM−MIMO無線通信システム:図1]
本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置が用いられるOFDM−MIOMO無線通信システムについて図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置が用いられるOFDM−MIMO無線通信システムの構成例を示す説明図である。
図1では、2系統の送信部(送信装置)と2系統の受信部(受信装置)を持つ2×2のOFDM−MIMO無線通信システムの構成を示している。
そして、本実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置は、当該システムにおける第一系統、第二系統の受信部として動作するものである。尚、送信部と受信部とを両方備えた無線通信装置として構成してもよい。
【0019】
図1に示すように、当該無線通信システムは、送信側として、MIMO送信処理部101と、系統毎に設けられた送信ベースバンド部(図では「送信BB」)102と、送信RF(Radio Frequency)部(図では「送信RF」)103と、送信アンテナ104とを備えている。
また、受信側として、系統毎に設けられた受信アンテナ105と、受信RF部(図では「受信RF」)106及び受信ベースバンド部(図では「受信BB」)107と、MIMO受信処理部108とを備えている。
【0020】
図1においては、各ブロックの「-(ハイフン)」の後の番号は、系統番号を示したものである。また、図中のhyxは、第x系統送信部から第y系統受信部への伝送路特性を示したものである。
【0021】
[各部の説明]
各構成部分について説明する。
[送信部の構成]
[MIMO処理部101]
MIMO送信処理部101は、入力信号をMIMOの通信方式に合わせて分離・符号化し、第一系統及び第二系統の送信ベースバンド部102-1,102-2へ出力する。
以下、系統番号は省略して説明する。
【0022】
[送信ベースバンド部102]
送信ベースバンド部102は、マッピング処理部と、既知信号付加処理部と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)演算器と、ガードインターバル付加処理部とを備え、入力された信号に、マッピング、プリアンブル信号付加、周波数軸信号から時間軸信号への変換、ガードインターバル付加の処理を施し、送信RF部103へ出力する。
【0023】
マッピング処理部は、所定の変調方式(例えば、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や64QAM)に従い、入力信号をデータキャリアにマッピングする。
既知信号付加処理部は、受信側に予め設定された既知の信号(既知信号)を付加する。ここで、既知信号は、第一系統と第二系統とで異なる信号となっている。
【0024】
IFFT演算器は、入力信号に対してIFFT演算を施し、周波数軸信号から時間軸信号へ変換を行う。
ガードインターバル付加処理部は、入力された時間軸信号に対して、所定の長さ(例えば、有効シンボル長の1/4や1/8)のガードインターバルを付加して、送信RF部103へ出力する。
【0025】
また、送信ベースバンド部102の別の構成として、プリアンブル信号をIFFT変換後に付加する構成もある。
このような場合、送信ベースバンド部102は、マッピング処理部と、IFFT演算器と、プリアンブル信号付加処理部と、ガードインターバル付加処理部とを備える。
そして、プリアンブル信号付加処理部が、IFFT演算された時間軸信号に対してプリアンブル信号を付加するようになっている。他の部分の動作は上述した例と同様である。
【0026】
[送信RF部103、送信アンテナ104]
送信RF部103は、入力された信号をD/A変換して、送信周波数帯への周波数変換等を行い、系統毎に送信アンテナ104に出力する。
送信アンテナ104は、送信RF部103から入力された信号を送信する。
【0027】
[受信部の構成]
[受信アンテナ105、送信RF部106]
受信アンテナ105は、送信アンテナ104-1,104-2から送信された信号をそれぞれ受信し、受信RF部106へ出力する。
受信RF部106は、各系統の受信アンテナ105から入力された受信信号をベースバンド帯へ周波数変換し、AGC(Auto Gain Control)処理を行い、A/D変換して、各系統の受信ベースバンド部107へ出力する。
【0028】
[受信ベースバンド部107]
受信ベースバンド部107は、入力された信号について、自己相関及び相互相関の相関演算を行って相関ピーク電力及びピーク位置の検出を行い、FFT演算を施して時間軸信号から周波数軸信号へ変換し、チャネル推定を行い、MIMO受信処理部108へ出力する。
本受信装置では、受信ベースバンド部107における処理が従来とは異なっている。受信ベースバンド部107の構成については後で説明する。
【0029】
[MIMO受信処理部108]
MIMO受信処理部108は、各系統の受信ベースバンド部107から出力された信号について、チャネル推定結果を用いて受信信号の信号分離処理を行う。信号分離処理は、例えば、MMSE(Minimum Mean Square Error)やMLD(Maximum Likelihood Detection)による分離・検出を行う。
【0030】
[受信ベースバンド部107の構成:図2]
次に、図1に示した受信ベースバンド部107の構成について図2を用いて説明する。図2は、本受信装置の受信ベースバンド部107の構成を示す構成ブロック図である。
図2に示すように、受信ベースバンド部107は、自己相関演算部(図では「自己相関」と記載)301と、相互相関演算部(図では「相互相関」)302と、FFT窓設定部303と、FFT演算器(図では「FFT」)304と、チャネル推定部(図では「チャネル推定」)305とを備える。
【0031】
自己相関演算部301は、送信側で付加されたプリアンブル信号に含まれる一定周期信号を用いて自己相関をとり、フレームの先頭を検出し、相互相関演算部302へ出力する。
【0032】
相互相関演算部302は、送信側で付加されたプリアンブル信号に含まれる各系統の既知信号と、予め記憶されている既知信号との相関をとり、その相関値をFFT窓設定部303へ出力する。相互相関演算部302については、後で詳細に説明する。
【0033】
FFT窓設定部303は、本受信装置の特徴部分であり、相互相関演算部302の演算結果に基づいてFFT窓の位置を決定し、FFT演算器304へ出力する。FFT窓設定部303の詳細については後で説明する。
【0034】
チャネル推定部305は、FFT演算器304により変換された周波数軸信号から、既知のパイロット信号やプリアンブル信号に基づいてチャネルを推定し、MIMO受信処理部108へ出力する。
【0035】
[相互相関演算部302:図3]
次に、図2に示した相互相関演算部302の構成について図3を用いて説明する。図3は、相互相関演算部302の構成ブロック図である。
図3に示すように、相互相関演算部302は、既知信号格納メモリ401-1,401-2と、相関演算器402-1,402-2とを備える。
【0036】
既知信号格納メモリ401-1は、送信側の第一系統の既知信号(REF1)を格納しているメモリであり、既知信号を相関演算器402-1へ出力する。既知信号は、送信側において、プリアンブルに付加されて送信されるものである。
既知信号格納メモリ401-2は、送信側の第二系統の既知信号(REF2)を格納しているメモリであり、既知信号を相関演算器402-2へ出力する。
【0037】
相関演算器402-1,402-2は、受信信号ryと第一系統の既知信号又は第二系統の既知信号との相関演算を行い、演算結果CCy1,CCy2をFFT窓設定部303へ出力する。
【0038】
[FFT窓設定部303:図4]
次に、図2に示したFFT窓設定部303の構成について図4を用いて説明する。図4は、FFT窓設定部303の構成ブロック図である。
図4に示すように、FFT窓設定部303は、ピーク位置・ピーク電力検出器501-1,501-2と、FFT窓位置設定部502とを備える。尚、図4では本線系のパスは省略している。
【0039】
ピーク位置・ピーク電力検出器501-1は、受信信号ryと第一系統の既知信号との相互相関演算結果CCy1の最大値(ピーク電力)とその位置(ピーク位置)を検出して、FFT窓位置設定部502へ出力する。
同様に、ピーク位置・ピーク電力検出器501-2は、受信信号ryと第二系統の既知信号との相互相関演算結果CCy2の最大値と最大値の位置を検出して、FFT窓位置設定部502へ出力する。
【0040】
FFT窓位置設定部502は、入力されたピーク位置及びピーク電力に基づいて、FFT窓開始位置を決定し、図2のFFT演算器304へ出力する。FFT窓開始位置設定部502における処理が、本受信装置の特徴部分となっている。
【0041】
[相互相関電力と受信信号:図5]
本受信装置のFFT窓開始位置設定方法について説明する前に、相互相関電力と受信信号の関係について図5を用いて説明する。図5は、相互相関電力と受信信号の関係を示す説明図である。
図5では、第一系統の受信部で受信された信号r1の各相互相関電力の総和と受信信号のイメージを示している。縦軸は相関電力であり、横軸はサンプル(時間)である。
【0042】
Pr11は、r1と既知信号格納メモリ401-1からの既知信号(第一送信系統で付加された既知信号)との相互相関ピーク電力を示しており、Pr12は、r1と既知信号格納メモリ401-2からの既知信号(第二送信系統で付加された既知信号)との相互相関ピーク電力を示している。
【0043】
また、上部に記載された四角形は受信信号のイメージであり、斜線部分は各送信信号成分のガードインターバルを示す。四角形の幅は電力差のイメージを示している。
POS1とPOS2は、それぞれPr11とPr12の位置であり、ΔPOSは、POS1とPOS2の差分(位置差、間隔)である。
また、図中のx′1,x′2は受信信号に含まれる第一系統送信信号成分、第二系統送信信号成分で、それぞれチャネルにより電力減衰、位相回転、遅延の影響を受けている。
【0044】
図5では、最大の相互相関ピーク電力が時間的に早く現れ、且つピークの間隔ΔPOSがガードインターバル長(LGI)より短い場合を示している。このような場合は、適切にFFT窓を設けることにより、原理的にはシンボル間干渉は発生しない。
但し、実際にはマージンα(0<α<LGI)を持つため、シンボル間干渉が発生しないピーク位置差は(LGI−α)以内となる。
図5の例はピーク間隔ΔPOSが(LGI−α)となっているので、最大の相互相関ピーク電力Pr11の位置POS1に基づいて、マージンαだけ早いタイミングにFFT窓開始位置を設定した場合、第一送信系統、第二送信系統ともシンボル間干渉は発生しない。
【0045】
[電力の高いパスが時間的に後ろにある場合:図6]
次に、電力の高いパスが時間的に後ろにある場合について図6を用いて説明する。図6は、電力の高いパスが時間的に後ろにある場合の相互相関電力と受信信号を示す説明図である。
図6に示すように、相互相関電力が最も大きいPr12を基準にしてFFT窓開始位置を設けると、第一送信系統では後ろのシンボルにかかってしまい、シンボル間干渉が発生する。
【0046】
[FFT窓開始位置の設定]
次に、FFT窓開始位置の設定方法について説明する。
[ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合:図7]
まず、ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合について図7を用いて説明する。図7は、ピーク間隔がガードインターバル長以内の場合のFFT窓開始位置の設定方法を示す説明図である。
ピーク間隔がガードインターバル長以下の場合、パスの電力にかかわらず、シンボル間干渉が発生しないようにFFT窓を設定することが可能である。
図7に示すように、ピーク間隔ΔPOSが、ガードインターバル長LGI以下の場合、ピーク電力の大きさにかかわらず、時間的に最も早い相互相関ピーク電力の位置POS1を基準にして、POS1の位置にFFT窓開始位置を設定する。
これにより、時間的に最も早い送信系統だけでなく、他の送信系統についてもシンボル間干渉は生じない。
【0047】
また、対象とするパスは、最もピーク電力が大きいパスの相互相関電力をPmaxとして、Pmaxに対してしきい値THRPを設け、それを越えるものを対象とする。しきい値THRPは、例えば、次式算出する。
THRP=μPmax (0<μ<1)
μは、システムの仕様等により決定される。
【0048】
具体的には、図4に示したFFT窓設定部303のピーク位置・ピーク電力検出部501が、第一、第二の送信系統毎に相互相関電力の最大値とその位置を検出し、FFT窓位置設定部502が、時間的に最も早い系統の相互相関ピーク電力と、最も遅い相互相関ピーク電力との間隔ΔPOSを算出し、ピーク間隔がガードインターバル長以下の場合(到来した各送信信号成分の遅延差がガードインターバル長以内の場合)に、時間的に最も早い相互相関ピーク電力の位置に基づいてFFT窓開始位置を設定する。
【0049】
尚、上述したように、マージンαを設けてFFT窓開始位置を設定する場合には、ピーク間隔ΔPOSがガードインターバル長からマージンを引いた長さ(LGI−α)以下であるかどうかを判断して、(LGI−α)以下である場合に、時間的に最も早い相互相関ピーク電力の位置POS1を基準にして(POS1−α)の位置にFFT窓を設けるようにしてもよい。
【0050】
[ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合:図8,9,10]
次に、ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合について図8,図9,図10を用いて説明する。図8,図9,図10は、ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合の例を示す説明図である。
【0051】
まず、図8に示すように、図7と同様に時間的に最初の相互相関ピーク電力に基づいて、そこからマージンαだけ早いタイミングにFFT窓開始位置を設定した場合、第一送信系統はよいが、第二送信系統では、前のシンボルを拾ってしまうためシンボル間干渉が発生する。
【0052】
図9は、図8の場合よりもFFT窓開始位置を遅くしたものである。この場合でも、第二送信系統では前のシンボルとのシンボル間干渉が発生してしまう。
【0053】
図10では、図9の場合よりもFFT窓開始位置を遅くしている。この場合には、第二送信系統ではシンボル間干渉は発生しないが、第一送信系統において後ろのシンボルとのシンボル間干渉が発生してしまう。
このように、ピーク間隔がガードインターバル長を超える場合、FFT窓をどこに設定したとしてもいずれかの送信系統でシンボル間干渉が発生する。
【0054】
そこで、本受信装置では、ピーク間隔ΔPOSがガードインターバル長を超える場合には、全て(ここでは2つ)の送信系統で発生するシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索し、当該位置をFFT窓開始位置とする。
【0055】
具体的には、FFT窓開始位置を探索する範囲で、順次FFT窓開始位置をずらして設定しつつ、各FFT窓開始位置に応じて、それぞれの送信系統で発生するシンボル間干渉電力を算出後、全ての送信系統のシンボル間干渉電力を加算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶しておき、シンボル間干渉電力の総和が最小となる位置を検出して、その位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するようにしている。
【0056】
シンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置の探索処理は、システム運用前の設定時に、FFT窓設定部303のFFT窓位置設定部502が行うものである。
具体的には、運用前に、実際に送信部からの送信信号を当該受信装置で受信してレジスタに記憶しておき、FFT窓設定部303のFFT窓位置設定部502が、記憶されたデータについてFFT窓開始位置を順次ずらして設定しつつ、シンボル間干渉電力の総和を算出して最適なFFT窓開始位置を特定するものである。そして、特定されたFFT窓位置に基づいてシステムが運用されるようになっている。
【0057】
[シンボル間干渉電力の算出:図11,12,13]
次に、本受信装置におけるシンボル間干渉電力の具体的な算出方法について送信系統が2系統の場合について、図11,12,13を用いて説明する。図11,12,13は、本受信装置におけるシンボル間干渉電力の算出を示す模式説明図である。
図11に示すように、各ピーク位置をPOS1、POS2(POS1<POS2)とし、図のようにFFT窓の開始位置をw(POS1≦w≦POS2)として、wを動かして、各開始位置(w)に対応するシンボル間干渉電力C(w)を算出する。
【0058】
図11の場合、FFT窓の開始位置wは時間的に早い相互相関ピーク電力POS1の位置であり、第一送信系統ではシンボル間干渉は発生していない。第二送信系統で発生しているシンボル間干渉の電力は、図中、縦線の網掛けで表示されている部分の面積に相当し、
C(w)={(POS2−LGI)−POS1}・Pr12
で算出される。
【0059】
図12に示すように、図11よりもFFT窓開始位置を遅くした場合、第一送信系統と第二送信系統の両方にシンボル間干渉が発生する。尚、図中のFFT_PTSはFFTポイント数を示す。
したがって、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力は、
C(W)={(w1+FFT_PTS)−(POS1+FFT_PTS)}・Pr11
+{(POS2−LGI)−w1}・Pr12
=(w1−POS1)・Pr11+{(POS2−LGI)−w1}・Pr12
で算出される。
【0060】
また、図13に示すように、FFT窓開始位置を相互相関ピーク電力POS2の位置に設定した場合には、第一送信系統でのみシンボル間干渉が発生し、第二送信系統ではシンボル間干渉は発生しない。
この場合のシンボル間干渉電力は、
C(w)={(w+FFT_PTS)−(POS1+FFT_PTS)}・Pr11
=(w−POS1)・Pr11
で算出される。
【0061】
[一般的なシンボル間干渉電力の算出方法]
上述したように、FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力は、当該FFT窓位置とした場合に、各送信系統で発生するシンボル間干渉電力の総和となる。
したがって、FFT窓開始位置設定部502は、まず、送信系統毎にシンボル間干渉電力を求めてから、全ての系統におけるシンボル間干渉電力を合算して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和を得る。
【0062】
各系統のシンボル間干渉電力の算出方法は、FFT窓開始位置wと、当該系統の相互相関ピーク電力位置POSxと、ガードインターバル長との関係によって3通りに分類される。
ここで、受信信号に含まれる各送信信号成分のシンボル間干渉電力をCx(w)、各ピーク電力をPyxとしている。xは送信系統の番号、yは受信系統の番号である。
【0063】
Cx(w)={(POSx−LGI)−w}・Pyx (w<POSx−LGI) (式1)
Cx(w)=(w−POSx)・Pyx (w>POSx) (式2)
Cx(w)=0 (POSx−LGI≦w≦POSx) (式3)
【0064】
式1は、例えば、図11,12の第二送信系統に適用され、式2は、図12,13の第一送信系統に適用され、式3は、図11の第一送信系統及び図13の第二送信系統に適用される。
【0065】
そして、本受信装置では、上記式(1)〜(3)のいずれかを用いて算出された各送信系統のシンボル間干渉電力を合算して、その値を、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和とする。つまり、各FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和は、
【0066】
【数1】
【0067】
と表される。
図11〜13の場合、M=2であり、各送信系統についてFFT窓開始位置と相互相関ピーク電力の位置に基づいて、上述した式(1)〜(3)のいずれかを適用して、合算することでシンボル間干渉電力の総和が求められる。
そして、FFT窓設定部303は、シンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置をFFT演算器304に設定する。
【0068】
[M系統の場合:図14]
次に、送信系統がM系統である場合のFFT窓開始位置の設定方法について図14を用いて説明する。図14は、送信系統がM系統の場合の相互相関ピーク電力の説明図である。
本受信装置では、相互相関演算部302は、M系統の送信部に対応する既知信号を格納するM個のメモリを備えている。そして、系統毎に相互相関演算を行って、相関演算結果をFFT窓設定部303に出力する。
【0069】
FFT窓設定部303では、系統毎に相互相関ピーク電力とその位置を検出して、それに基づいてFFT窓位置設定部502がFFT窓開始位置を設定する。
図14に示すように、M系統の場合には、相互相関電力のピークはM本得られる。また、x′1,x′2,…x′M-1,x′Mは第一送信系統から第M送信系統の送信信号成分であり、電力減衰、位相回転、遅延の影響を受けている。
【0070】
FFT窓位置設定部502は、全ピーク位置POS1〜POSMの中から、時間的に最も早いピークの位置(最先行位置)POSfirstと、時間的に最も遅いピークの位置(最後方位置)POSbottomを検出し、その位置差ΔPOSを検出する。
図14の例では、POSfirstはPOS1であり、POSMはしきい値THRPを超えていないので、POSbottomはPOSM-1となる。
【0071】
そして、2系統の場合と同様に、POSfirstとPOSbottomの間隔ΔPOSがガードインターバルLGI以内であれば、最も早いPOSfirstに基づいてFFT窓を設ける。
また、ΔPOSがガードインターバルLGIを越えている場合には、上述した式(1)〜(3)及び数1を用いて、シンボル間干渉電力の総和が最も小さくなるFFT窓の位置を探索して、当該位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定する。
但し、FFT窓開始位置(w)の探索範囲はPOSfirst<w<POSbottomとする。
このようにして、M系統の場合のFFT窓開始位置が設定されるものである。
【0072】
[FFT窓位置設定部502の概略処理:図15]
次に、FFT窓位置設定部502の概略処理について図15を用いて説明する。図15は、FFT窓位置設定部502の概略処理を示すフローチャートである。
図15に示すように、FFT窓位置設定部502は、処理が開始されると、系統毎に入力される相互相関ピーク電力に基づいて、相互相関ピークの最先行位置(POSfirst)と最後方位置(POSbottom)を検出し(100)、POSfirstとPOSbottomの位置差(ΔPOS)を検出する。
【0073】
そして、FFT窓位置設定部502は、ΔPOSがガードインターバル長以内であるかどうかを判断し(104)、ΔPOSがガードインターバル長以内であれば(Yesの場合)、最初のピーク位置であるPOSfirstに基づいて、FFT演算器304にFFT窓開始位置を設定する(106)。
【0074】
また、FFT窓位置設定部502は、処理104でΔPOSがガードインターバル長を超えている場合(Noの場合)には、全ての送信系統のシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索して、当該位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するFFT窓開始位置探索処理を行う(108)。FFT窓開始位置探索処理については図16を用いて詳述する。
このようにして、FFT窓位置設定部502における概略処理が行われる。
【0075】
[FFT窓開始位置探索処理:図16]
次に、図15の処理108に示したFFT窓開始位置探索処理について図16を用いて説明する。図16は、図15の処理108に示したFFT窓開始位置探索処理を示すフローチャートである。
図15の処理104でΔPOSがガードインターバルを超えていた場合、FFT窓位置設定部502は、全ての送信系統のシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置の探索を行う。
図16に示すように、FFT窓位置設定部502は、まず、FFT窓開始位置を初期位置に設定し(w=POSfirst)(200)、送信系統の番号xを1とする(x=1)(202)。
【0076】
そして、FFT窓位置設定部502は、受信した第x系統の送信信号におけるシンボル間干渉電力Cx(w)を算出する(204)。算出方法は、上述した式(1)〜(3)に基づいて行われるものであり、図17を用いて後述する。
【0077】
FFT窓位置設定部502は、Cx(w)を算出すると、xが送信系統数Mに達したかどうか(x≧Mかどうか)を判断する(110)。
xが送信系統数Mに達していない場合(Noの場合)には、FFT窓位置設定部502は、xをインクリメントし(x=x+1)(206)、処理204に戻る。
【0078】
また、処理110でxが送信系統数Mに達した場合には(Yesの場合)、FFT窓位置設定部502は、x=1〜MのCx(w)を合計して、当該FFT窓位置におけるシンボル間干渉電力Cx(w)の総和を算出し、記憶しておく(212)。処理204、212の処理は、請求項におけるシンボル間干渉電力算出処理に相当する。
【0079】
そして、FFT窓位置設定部502は、FFT窓位置の探索範囲(POSfirst<w<POSbottom)について探索を行ったかどうか、つまりFFT窓位置シフト終了かどうか(w≧POSbottom)を判断し(214)、終了でなければ(Noの場合)、FFT窓位置をシフトさせて(w=w+1)(216)、処理202に移行して次のFFT窓位置についてシンボル間干渉電力の総和を算出する。
【0080】
また、処理214において、FFT窓位置のシフトが終了した場合には、探索範囲内のFFT窓開始位置に対応して記憶されているシンボル間干渉電力の総和の中で、シンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓の位置を選択し(220)、当該位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定し(222)、処理を終わる。
このようにして、FFT窓開始位置探索処理が行われる。
【0081】
[送信系統毎のシンボル間干渉電力Cx(w)の算出処理:図17]
次に、図16の処理204に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理について図17を用いて説明する。図17は、図16の処理204に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理を示すフローチャートである。
図17に示すように、FFT窓位置設定部502は、第x系統の送信信号の相互相関ピーク電力位置(POSx)とガードインターバル長(LGI)に基づいて、まず、FFT窓開始位置(w)が、w<POSx−LGIであるかどうかを判断し(300)、w<POSx−LGIであれば(Tの場合)、上述した式(1)Cx(w)={(POSx−LGI)−w}・Pyx に従ってCx(w)を算出する(302)。
【0082】
また、処理300で、w<POSx−LGIではない場合(Fの場合)、FFT窓位置設定部502は、更にw>POSxであるかどうかを判断し(304)、w>POSxである場合には(Tの場合)、上述した式(2)Cx(w)=(w−POSx)・Pyx に従ってCx(w)を算出する(306)。
【0083】
また、処理304で、w>POSxでない場合(Fの場合)、FFT窓位置設定部502は、式(3)Cx(w)=0に従って、シンボル間干渉電力を0と算出する(308)。
このようにして、図16に示した送信系統毎のシンボル間干渉電力の算出処理が行われる。
【0084】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係るOFDM−MIMO受信装置によれば、相互相関演算部302が、複数系統の送信信号に付加され系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信した複数系統の送信信号について、それぞれ記憶されている既知信号との相互相関演算を行って、FFT窓設定部303が、系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、系統毎の相互相関ピークの内、時間的に最も早いピークと最も遅いピークとの位置差がガードインターバル長以内であれば、時間的に最も早いピーク位置に基づいてFFT演算器304にFFT窓開始位置を設定し、当該位置差がガードインターバル長を越える場合には、全ての送信系統におけるシンボル間干渉電力の総和が最小となるFFT窓開始位置を探索するFFT窓開始位置探索処理を行って、特定された位置をFFT窓開始位置としてFFT演算器304に設定するようにしているので、シンボル間干渉を低減して、システム全体の信号品質を向上させることができる効果があり、また、ピーク位置差がガードインターバル以内の場合には探索処理を行わずに処理を軽減できる効果がある。
【0085】
また、本OFDM−MIMO受信装置によれば、FFT窓設定部303のFFT窓位置設定部502が、FFT窓開始位置探索処理において、時間的に最も早いピークから最も遅いピークまでの範囲をFFT窓開始位置探索範囲として、送信系統毎のシンボル間干渉電力を算出し、全ての送信系統のシンボル間干渉電力を合計して当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総量を算出して記憶する処理を行い、探索範囲内でFFT窓開始位置をずらして設定しながら探索範囲内の全てのFFT窓開始位置についてシンボル間干渉電力の総量を算出して記憶する処理を行って、記憶されたシンボル間干渉電力の総量の内で最小のものに対応するFFT窓開始位置を選択して、FFT演算器304に当該FFT窓開始位置を設定するようにしており、送信系統による遅延差が大きい場合であっても、シンボル間干渉を最小とする最適なFFT窓開始位置を設定することができ、信号品質の劣化を最小限に抑えて、システム全体の信号品質を向上させることができる効果がある。
【0086】
また、本OFDM−MIMO受信装置によれば、FFT窓位置設定部502が、相互相関ピークの最大値に基づいてしきい値を設定し、当該しきい値を超えた相互相関ピークを検出の対象としているので、実質的に有効な受信信号のみに基づいて探索範囲を決定することができ、無駄な処理を行わないようにすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、システム全体の信号品質を高めることができるOFDM−MIMO受信装置に適している。
【符号の説明】
【0088】
101…MIMO送信処理部、 102…送信ベースバンド部、 103…送信FR部、 104…送信アンテナ、 105…受信アンテナ、 106…受信RF部、 107…受信ベースバンド部、 108…MIMO受信処理部、 301…自己相関演算部、 302…相互相関演算部、 303…FFT窓設定部、 304…FFT演算器、 305…チャネル推定部、 401…既知信号格納メモリ、 402…相関演算器、 501…ピーク位置・ピーク電力検出器、 502…FFT窓位置設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、
前記複数の送信系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、前記送信系統毎の前記既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、
設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、
前記相互相関演算結果に基づいて、前記送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークの位置から、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置までをFFT窓開始位置の探索範囲として、前記複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、前記複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、前記探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら前記探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、前記記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置を前記FFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたことを特徴とするOFDM−MIMO受信装置。
【請求項1】
複数の送信系統から送信されるOFDM信号を複数の受信系統で受信するOFDM−MIMO通信システムで用いられるOFDM−MIMO受信装置であって、
前記複数の送信系統毎に異なる既知信号を予め記憶しておき、受信信号について、前記送信系統毎の前記既知信号との相互相関演算を行う相互相関演算部と、
設定されたFFT窓開始位置に基づいて入力された信号のFFT演算を行うFFT演算器と、
前記相互相関演算結果に基づいて、前記送信系統毎に相互相関ピーク及びその位置を検出し、時間的に最も早くしきい値を越える第1のピークの位置から、最も遅くしきい値を越える第2のピークの位置までをFFT窓開始位置の探索範囲として、前記複数の送信系統毎の受信信号のシンボル間干渉電力を算出し、前記複数の送信系統毎のシンボル間干渉電力を合算してシンボル間干渉電力の総和を算出して、当該FFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の総和として記憶する総和算出処理を行い、前記探索範囲内でFFT窓開始位置をずらしながら前記探索範囲の全てのFFT窓開始位置について総和算出処理を行い、前記記憶したFFT窓開始位置に対応するシンボル間干渉電力の中で、当該総和が最小となるFFT窓開始位置を前記FFT演算器に設定するFFT窓設定部とを備えたことを特徴とするOFDM−MIMO受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−166465(P2011−166465A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27187(P2010−27187)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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