説明

OFDM信号受信装置およびOFDM信号の受信方法

【課題】本発明は、OFDM信号送信装置側のクロックとOFDM信号受信装置側のクロックとの間でクロック誤差が生じる場合においても、CNRの改善を図ることができるOFDM信号受信装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るOFDM信号受信装置100は、ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号における第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施する、加算平均処理処理部1を、備えている。また、OFDM信号受信装置100の移動を検知する移動検出部10も備えている。加算平均処理処理部1は、移動検出部1の検出結果に応じて、加算平均処理の実施の有無を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、OFDM信号受信装置およびOFDM信号の受信方法に係る発明であり、特に、ガードインターバル(GI)信号を保有するOFDM信号を受信する装置、および当該OFDM信号を受信する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタル放送の送信方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式が採用されている。当該OFDM方式では、ある帯域内に、互いに直交する数百〜数千の多数の搬送波(サブキャリア)を多重伝送する。このようなOFDM方式は、周波数利用効率が非常に高く、移動受信時に生じるフェージング妨害に強いという利点をもつ。また、OFDM方式は、電波が高層ビルや山などの障害物で反射し、複数経路から遅延して受信装置に到達するというマルチパス現象の影響を受けにくいという利点をもつ。
【0003】
このようなOFDM方式は、地上波デジタル放送のみならず、電話線や電力線を利用した有線通信、無線LAN(Local Area Network)などの無線通信などで採用されつつある。
【0004】
図1に示すように、OFDM方式で変調されたシンボル信号は、データや制御信号などを含む有効シンボル信号と、マルチパスの影響を低減させる目的のガードインターバル信号(以下、GI信号と称する)とから構成されている。GI信号は、各有効シンボル信号の先頭部分に設定されており、有効シンボルの後尾部分の複製である。ここで、先頭側と後尾側とでは、先頭側の方が時系列的に早い。図1について言えば、図の左側が先頭側である。
【0005】
マルチパスによる反射波の遅延時間が、ガードインターバル期間Tg以内であるとする。この場合には、シンボル間干渉(ISI)の影響の無い完全な1シンボル分のデータを取り出すことができる。なお、通常、ガードインターバル期間Tgは、有効シンボル期間Tuの1/4,1/8,1/16,および1/32の何れかに設定される。
【0006】
ところで、OFDM信号受信装置側における、CNR(Carrier to Noise Ration)改善を目的とした技術として、特許文献1が存在する。特許文献1では、OFDM信号受信装置においてOFDM信号を復調する場合、GI信号におけるブロック間干渉に侵されたシンボルのみを取り除き、GI信号におけるブロック間干渉に侵されていないシンボルを復調に活かしている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−303440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、OFDM信号送信装置側のクロックと、OFDM信号受信装置側のクロックとの間でズレが生じる。そして、当該クロック誤差は、OFDM信号受信装置が移動しているときに、より大きくなる可能性が高い。このように、受信装置の移動によりクロック誤差がかなり大きくなった場合には、特許文献1に係る技術を採用したとしても、CNRの改善効果はあまり得られず、かえってCNRがかなり劣化することもある。
【0009】
また、特許文献1では、GI信号がブロック間干渉に侵されていない場合には、GI信号全てと、当該GI信号の複製元である有効シンボル信号の後尾部分(以下、単に複製元部分と称する)とを、加算平均処理することとなる。
【0010】
しかしながら、当該GI信号の全てと上記複製元部分とを精度良く加算することは大変困難である。つまり、上述したクロック誤差が生じているので、当該GI信号の先頭部分と複製元部分の先頭部分とを正確に一致させることは、とても困難である。もし、前記のように正確に一致されないときには、シンボル間干渉により、かえってCNRが大幅に劣化する。
【0011】
そこで、本発明は、OFDM信号送信装置側のクロックとOFDM信号受信装置側のクロックとの間でクロック誤差が生じる場合においても、CNRの改善を図ることができるOFDM信号受信装置、およびOFDM信号の受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のOFDM信号受信装置は、ガードインターバル信号および前記ガードインターバル信号に続く有効シンボル信号から成るOFDM信号を受信する受信部と、前記ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号における前記第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施する、加算平均処理処理部とを、備えるOFDM信号受信装置であって、前記OFDM信号受信装置の移動を検知する移動検出部を、さらに備えており、前記加算平均処理部は、前記移動検出部の検出結果に応じて、前記加算平均処理の実施の有無を切り替える。
【0013】
また、請求項2に記載のOFDM信号受信装置は、請求項1に記載のOFDM信号受信装置であって、前記加算平均処理部は、前記移動検出部が、前記OFDM信号受信装置の移動を検知したときには、前記加算平均処理は実施せず、前記移動検出部が、前記OFDM信号受信装置の移動を検知しないときには、前記加算平均処理を実施する。
【0014】
また、請求項3に記載のOFDM信号受信装置は、請求項2に記載のOFDM信号受信装置であって、前記移動検出部は、前記OFDM信号から得られるドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、前記OFDM信号受信装置が移動している判断し、前記ドップラ周波数の前記所定の時間内における前記振幅の変動量が、前記所定量以下であるときに、前記OFDM信号受信装置が移動していないと判断する。
【0015】
また、請求項4に記載のOFDM信号受信装置は、請求項2に記載のOFDM信号受信装置であって、前記加算平均処理部は、前記ガードインターバル信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた前記第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号の後尾から前記第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの前記第二のシンボル範囲との、加算平均処理を実施する。
【0016】
また、請求項5に記載のOFDM信号受信装置は、請求項4に記載のOFDM信号受信装置であって、前記所定のシンボル範囲は、前記ガードインターバル信号のシンボル長の10%程度である。
【0017】
また、請求項6に記載のOFDM信号の受信方法は、ガードインターバル信号および前記ガードインターバル信号に続く有効シンボル信号から成るOFDM信号を受信する、OFDM信号受信装置におけるOFDM信号の受信方法であって、(A)前記OFDM信号受信装置の移動を検知するステップと、(B)前記ステップ(A)の検出結果に応じて、前記ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号における前記第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施するか否かを切り替えるステップとを、備えている。
【0018】
また、請求項7に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項6に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記ステップ(B)は、(B−1)前記OFDM信号受信装置の移動を検知したときには、前記加算平均処理は実施せず、(B−2)前記OFDM信号受信装置の移動を検知しないときには、前記加算平均処理を実施する、ステップである。
【0019】
また、請求項8に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項7に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記ステップ(A)は、(A−1)前記OFDM信号から得られるドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、前記OFDM信号受信装置が移動している判断し、(A−2)前記ドップラ周波数の前記所定の時間内における前記振幅の変動量が、前記所定量以下であるときに、前記OFDM信号受信装置が移動していないと判断する、ステップである。
【0020】
また、請求項9に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項7に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記加算平均処理は、前記ガードインターバル信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた前記第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号の後尾から前記第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの前記第二のシンボル範囲との、加算平均処理である。
【0021】
また、請求項10に記載のOFDM信号の受信方法は、請求項9に記載のOFDM信号の受信方法であって、前記所定のシンボル範囲は、前記ガードインターバル信号のシンボル長の10%程度である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1、6に記載の発明は、ガードインターバル信号およびガードインターバル信号に続く有効シンボル信号から成るOFDM信号を受信する受信部と、ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号における第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施する、加算平均処理処理部とを、備えるOFDM信号受信装置であって、OFDM信号受信装置の移動を検知する移動検出部を、さらに備えており、加算平均処理部は、移動検出部の検出結果に応じて、加算平均処理の実施の有無を切り替える。また、(A)OFDM信号受信装置の移動を検知するステップと、(B)ステップ(A)の検出結果に応じて、ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号における第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施するか否かを切り替えるステップとを、備えている。
【0023】
したがって、OFDM信号受信装置の移動によりクロック誤差がかなり大きくなった場合に、加算平均処理を実施しないようにすれば、当該移動時における加算平均処理により、かえってCNRが劣化することを防止できる。
【0024】
また、請求項2、7に記載の発明では、移動検出部が、OFDM信号受信装置の移動を検知したときには、加算平均処理は実施せず、OFDM信号受信装置の移動を検知しないときには、加算平均処理を実施する。
【0025】
OFDM信号受信装置が移動しているときには、加算平均処理を実施しても、当該加算平均処理による効果はそれほど大きくない。したがって、OFDM信号受信装置の移動によりクロック誤差がかなり大きくなる場合に、加算平均処理を実施しないので、当該移動時における加算平均処理により、かえってCNRが劣化することを防止できる。他方、OFDM信号受信装置が静止状態で、クロック誤差が小さい場合に、加算平均処理を実施するで、スタティック状態でのCNRが改善される。
【0026】
また、請求項3、8に記載の発明では、OFDM信号から得られるドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、OFDM信号受信装置が移動している判断し、ドップラ周波数の所定の時間内における振幅の変動量が、所定量以下であるときに、OFDM信号受信装置が移動していないと判断する。
【0027】
したがって、ドップラ周波数を算出すれば、当該ドップラ周波数に基づいてOFDM信号受信装置の移動が検出できる。このような、ドップラ周波数を算出する回路は、とても容易の構成できる。よって、簡略な回路構成により移動検出部を設けることができる。
【0028】
また、請求項4、9に記載の発明では、ガードインターバル信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号の後尾から第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの第二のシンボル範囲との、加算平均処理を実施する。
【0029】
したがって、受信装置と送信装置との間のクロック誤差に起因して加算の開始位置がずれたとしても、当該加算平均処理によりシンボル間干渉が発生することを防止できる。換言すれば、たとえ前記クロック誤差が発生したとしても、加算平均処理を正常に実施でき、CNRの改善を図ることができる。
【0030】
また、請求項5、10に記載の発明では、所定のシンボル範囲は、ガードインターバル信号のシンボル長の10%程度である。
【0031】
所定のシンボル範囲を大きく取りすぎると、ガードインターバル信号の上記加算平均化処理によるCNR性能が低下する。他方、当該所定のシンボル範囲を小さくしすぎると、上述のようなクロック誤差に起因したシンボル間干渉に起因して、CNR性能が大幅に低下する。したがって、所定のシンボル範囲をガードインターバル信号のシンボル長の10%程度とすることにより、前記の各問題を考慮した最適な所定のシンボル範囲が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0033】
<実施の形態1>
図2は、本実施の形態に係るOFDM信号受信装置の要部構成を示す機能ブロック図である。また、本実施の形態に係るOFDM信号の受信方法の特徴的なフローを図3に示す。
【0034】
図2に示すように、OFDM信号受信装置100は、加算平均処理部1と移動検出部10とを、少なくとも備えている。ここで、移動検出部10は、FFT(Fast Fourier Transform)部2およびドップラ周波数算出部から、構成されている。
【0035】
図2において図示してない受信部(例えばアンテナ等)は、GI信号および当該GI信号に続く有効シンボル信号から成るOFDM信号を受信する。図1で示すように、OFDM方式で変調されたシンボル信号(1シンボル長分)は、データや制御信号などを含む有効シンボル信号と、マルチパスの影響を低減させる目的のGI信号とから構成されている。GI信号は、各有効シンボル信号の先頭部分に設定されており、有効シンボルの後尾部分の複製である。ここで、先頭側と後尾側とでは、先頭側の方が時系列的に早い。図1について言えば、図の左側が先頭側である。
【0036】
マルチパスによる反射波の遅延時間が、ガードインターバル期間Tg以内であるとする。この場合には、シンボル間干渉(ISI)の影響の無い完全な1シンボル分のデータを取り出すことができる。なお、通常、ガードインターバル期間Tgは、有効シンボル期間Tuの1/4,1/8,1/16,および1/32の何れかに設定される。
【0037】
加算平均処理部1では、受信したOFDM信号に対して、次の加算平均処理を実施する。具体的に、GI信号における第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号における第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算を行い、当該加算後の信号に対して平均化処理を実施する。なお、当該加算平均処理部1の具体的な動作は、実施の形態2で説明する。
【0038】
移動検出部10では、OFDM信号受信装置100が移動しているか否かを検知する(ステップS1)。具体的に、本実施の形態では、移動検出部10は、加算平均処理部2から出力されたOFDM信号から得られるドップラ周波数を算出し、当該ドップラ周波数に基づいて、OFDM信号受信装置100の移動を検出する。なお、ドップラ周波数は、後述の一例の説明では、時間方向のOFDM信号のシンボル変化量に基づいて算出されている。
【0039】
FFT部2に、時間方向のOFDM信号が入力され、当該時間方向のOFDM信号について高速フーリエ変換処理を実施する。つまり、FFT部2では、当該時間方向のOFDM信号をある時間間隔毎にサンプリングし、当該サンプリングされた部分に対するパワーが求められる。そして、ドップラ周波数算出部3では、隣接する前記サンプリング毎に対するパワーの変化を検出し、当該パワーの変化の度合いに基づいてドップラ周波数を算出する。
【0040】
また、ドップラ周波数算出部3は、上記算出されたドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、OFDM信号受信装置100が移動している判断する(ステップS1で「Yes」)。これに対して、ドップラ周波数算出部3は、上記算出されたドップラ周波数の所定の時間内における振幅の変動量が、所定量以下であるときに、OFDM信号受信装置100が移動していないと判断する(ステップS1で「No」)。ここで、所定量は、「0」もしくはこれに近似する値であり、ドップラ周波数の振幅の変動量がほとんど変化しない場合の量である。
【0041】
なお、上記OFDM信号受信装置100の移動検出方法およびドップラ周波数の算出方法は一例であり、他の方法により、OFDM信号受信装置100の移動を検出しても良く、他の方法により、ドップラ周波数の算出を行っても良い。
【0042】
加算平均処理部1では、移動検出部10からの出力を受けて、上記加算平均処理を実施するか否かを切り替える。換言すれば、加算平均処理部1は、移動検出部10の検出結果に応じて、上記加算平均処理の実施の有無を切り替える。
【0043】
具体的に、移動検出部10がOFDM信号受信装置100の移動を検知したときには(ステップS1で「Yes」)、加算平均処理部1は、加算平均処理は実施しない(ステップS2)。これに対して、移動検出部10がOFDM信号受信装置100の移動を検知しないときには(ステップS1で「No」)、加算平均処理部1は、加算平均処理を実施する(ステップS3)。
【0044】
なお、OFDM信号受信装置100の移動によりクロック誤差がかなり大きくなる場合に加算平均処理を実施すると、かえってCNRが劣化する。他方、OFDM信号受信装置100が静止状態ではクロック誤差が小さい場合には、加算平均処理を実施することにより、スタティック状態でのCNRが改善される。
【0045】
以上のように、本実施の形態では、OFDM信号受信装置100の移動を検知し、当該検出結果に応じて、上述した加算平均処理の実施の有無を切り替えている。
【0046】
ここで、OFDM信号受信装置100が移動しているときには、加算平均処理を実施しても、当該加算平均処理に起因した効果はそれほど大きくない。また、クロック誤差が発生した場合、またはクロック誤差が発生していない場合において、ガードインターバルの重ね合わせの際に、シンボルヘッドの位置がずれて見えることがある。レイリーフェーディング等に起因して、シンボルヘッドの検出が不正確になり、ガードインターバル以外の部分を重ね合わせてしまう問題が生じる。
【0047】
したがって、OFDM信号受信装置100の移動によりクロック誤差がかなり大きくなった場合に、加算平均処理を実施しないようにすれば、当該移動時における加算平均処理により、かえってCNRが劣化することを防止できる。
【0048】
また、本実施の形態では、OFDM信号受信装置100の移動を検知したときには、加算平均処理は実施しない。これに対して、OFDM信号受信装置100の移動を検知しないときには、加算平均処理を実施する。
【0049】
したがって、OFDM信号受信装置100の移動によりクロック誤差がかなり大きくなる場合に、加算平均処理を実施しないので、当該移動時における加算平均処理により、かえってCNRが劣化することを防止できる。他方、OFDM信号受信装置100が静止状態で、クロック誤差が小さい場合に、加算平均処理を実施するので、スタティック状態でのCNRが改善される。
【0050】
また、本実施の形態では、OFDM信号から得られるドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、OFDM信号受信装置が移動している判断する。他方、ドップラ周波数の所定の時間内における振幅の変動量が、所定量以下であるときに、OFDM信号受信装置が移動していないと判断する。
【0051】
したがって、ドップラ周波数を算出すれば、当該ドップラ周波数に基づいてOFDM信号受信装置100の移動が検出できる。このような、ドップラ周波数を算出する回路は、とても容易の構成できる。よって、簡略な回路構成により移動検出部10を設けることができる。
【0052】
<実施の形態2>
本実施の形態では、加算平均処理部1における加算平均処理の具体的な内容について説明する。
【0053】
図4に、GI信号全てと、当該GI信号の複製元である有効シンボル信号の後尾部分(以下、単に複製元部分と称する)との加算平均処理の模式図を示す。なお、図1と同じ符号については、図1の説明を参照されたい。また、図4において、上段が加算平均処理前のシンボルであり、下段が加算平均処理後のシンボルである。
【0054】
上記の通り、複製元部分は、有効シンボル信号の一部である。また、複製元部分をコピーして、有効シンボル信号の前段に付することにより、GI信号が設けられる。具体的に、有効シンボル信号の後尾端からシンボル長Tgまでの部分をコピーし、当該コピーした部分を有効シンボル信号の先頭部に設ける(図4の前段および図1参照)。
【0055】
図4のケースでは、加算平均処理部1は、GI信号における第一のシンボル範囲(GI信号の全部)と、有効シンボル信号における第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲(図4の複製元部分)とを加算する。次に、加算平均処理部1は、当該加算した部分のシンボルの平均化処理を行う。なお、図4に示すように、当該加算平均された部分のシンボル信号は、有効シンボル信号の一部として、当該有効シンボル信号の後尾に位置される。
【0056】
なお、当該加算平均化処理後のシンボルは、FFT処理のためFFT部へと送信される。なお、図4のケースの加算平均処理は、遅延回路と加算器とを用いて実現することができる。
【0057】
当該図4に示す加算平均処理を実施することにより、マルチパスが無い場合であって、有効シンボル期間Tuが1/8に設定されている場合には、CNRを例えば0.3dB程度改善させることができる。
【0058】
しかしながら、上述したように、当該GI信号の全てと上記複製元部分とを精度良く加算することは大変困難である。つまり、受信装置側のクロックと送信装置側のクロックとの間におけるクロック誤差が生じているので、当該GI信号の先頭部分と複製元部分の先頭部分とを正確に一致させることは、とても困難である。もし、前記のように正確に一致されないときには、シンボル間干渉により、かえってCNR特性が劣化する。
【0059】
そこで、本実施の形態では、加算平均処理部1では、次のような加算平均処理を実施する。図5は、本実施の形態に係る加算平均処理部1の構成を示す回路図である。
【0060】
図5に示すように、加算平均処理部1は、遅延回路21、加算器22、平均化処理回路23、およびセレクタ24により構成されている。図5に示す加算平均処理部1では、GI信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号の後尾から第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの第二のシンボル範囲との、加算平均処理を実施する。以下、図5を踏まえて、本実施の形態に係る加算平均処理について説明する。
【0061】
図5に示す「A」から、図1に示したOFDM信号が入力される。当該OFDM信号はノードN1で分岐した後、ノードN2においても分岐される。遅延回路21に入力されたOFDM信号は、1シンボル長だけ遅延させて、当該OFDM信号を出力する。加算器22では、遅延回路21を経た(1シンボル長分遅延した)OFDM信号と、遅延回路21を経ていないOFDM信号との加算処理が実施される(概念的に、図4参照)。加算器22における加算処理が実施されたOFDM信号は、平均化処理回路23において経金貨処理が実施される(概念的に、図4参照)。
【0062】
さて、セレクタ24の端子S1には、制御信号が入力されている。当該制御信号により、「1シンボル長+所定のシンボル長」の期間の間は、端子B1に入力されてきたOFDM信号を端子D1から出力させる。上記「1シンボル長+所定のシンボル長」の期間の経過後、制御信号により、セレクタ24の端子D1からは、端子B2に入力されてきたシンボル信号を出力する。つまり、セレクタ24からは、「1シンボル長+所定のシンボル長」の期間までは、各回路21〜23を経ていないOFDM信号が出力され、「1シンボル長+所定のシンボル長」の期間経過後、各回路21〜23を経たOFDM信号が出力される。
【0063】
当該図5の回路により、図6に示すような、加算平均化処理と同等の処理が実現できる。
【0064】
つまり、図6に示す加算平均処理では、GI信号の先頭から所定のシンボル範囲Tzを除いた第一のシンボル範囲Saと、有効シンボル信号の後尾から第一のシンボル範囲Saと同じシンボル長までの第二のシンボル範囲Sbとを、加算する。そして、当該加算後のシンボルに対して平均化処理を行う。
【0065】
図6に示す方法により生成されるOFDM信号が、図5のセレクタ24から出力される。したがって、「1シンボル長+所定のシンボル長」の「所定のシンボル長」は、図6に示す「所定のシンボル範囲Tz」であることが分かる。
【0066】
ここで、当該所定のシンボル範囲Tzを大きく取りすぎると、GI信号の上記加算平均化処理によるCNR性能が低下する。他方、当該所定のシンボル範囲Tzを小さくしすぎると、上述のようなクロック誤差に起因したシンボル間干渉に起因して、CNR性能が大幅に低下する。したがって、当該所定のシンボル範囲Tzは、これらのトレードオフの関係で決定される。
【0067】
発明者は、シミュレーション等の結果、CNR性能向上の観点から、当該所定のシンボル範囲Tzの最適値は、GI信号のシンボル長の10%程度であることを見出した。
【0068】
以上のように、本実施の形態では、GI信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた第一のシンボル範囲と、有効シンボル信号の後尾から第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの第二のシンボル範囲との、加算平均処理を実施する。
【0069】
したがって、OFDM信号受信装置100とOFDM信号送信装置との間のクロック誤差に起因して加算の開始位置がずれたとしても、当該加算平均処理によりシンボル間干渉が発生することを防止できる。換言すれば、たとえクロック誤差が発生したとしても、加算平均処理を正常に実施でき、CNRの改善を図ることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、所定のシンボル範囲は、ガードインターバル信号のシンボル長の10%程度である。したがって、上記トレードオフの関係により導かれた、最適な所定のシンボル範囲が提供される。
【0071】
なお、本実施の形態では、送信装置側のクロックと受信装置側のクロックとの間でクロック誤差が生じる場合においても、CNR特性の改善を図ることができるOFDM信号受信装置および受信方法を提供することを目的とする。したがって、本実施の形態に係る加算平均処理方法は、特許文献1とは異なり、GI信号がブロック間干渉に侵されている場合、および侵されてない場合においても実施される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】シンボル信号の時間方向の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係るOFDM信号受信装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係るOFDM信号の受信方法の動作を示すフローチャートである。
【図4】加算平均処理を説明するための図である。
【図5】実施の形態2に係る加算平均処理部の構成を示す回路図である。
【図6】実施の形態2に係る加算平均処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
1 加算平均処理部
2 FFT部
3 ドップラ周波数算出部
10 移動検出部
21 遅延回路
22 加算器
23 平均処理回路
24 セレクタ
100 OFDM信号受信装置
Tz 所定のシンボル範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガードインターバル信号および前記ガードインターバル信号に続く有効シンボル信号から成るOFDM信号を受信する受信部と、
前記ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号における前記第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施する、加算平均処理処理部とを、備えるOFDM信号受信装置であって、
前記OFDM信号受信装置の移動を検知する移動検出部を、さらに備えており、
前記加算平均処理部は、
前記移動検出部の検出結果に応じて、前記加算平均処理の実施の有無を切り替える、
ことを特徴とするOFDM信号受信装置。
【請求項2】
前記加算平均処理部は、
前記移動検出部が、前記OFDM信号受信装置の移動を検知したときには、前記加算平均処理は実施せず、
前記移動検出部が、前記OFDM信号受信装置の移動を検知しないときには、前記加算平均処理を実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項3】
前記移動検出部は、
前記OFDM信号から得られるドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、前記OFDM信号受信装置が移動している判断し、
前記ドップラ周波数の前記所定の時間内における前記振幅の変動量が、前記所定量以下であるときに、前記OFDM信号受信装置が移動していないと判断する、
ことを特徴とする請求項2に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項4】
前記加算平均処理部は、
前記ガードインターバル信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた前記第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号の後尾から前記第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの前記第二のシンボル範囲との、加算平均処理を実施する、
ことを特徴とする請求項2に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項5】
前記所定のシンボル範囲は、
前記ガードインターバル信号のシンボル長の10%程度である、
ことを特徴とする請求項4に記載のOFDM信号受信装置。
【請求項6】
ガードインターバル信号および前記ガードインターバル信号に続く有効シンボル信号から成るOFDM信号を受信する、OFDM信号受信装置におけるOFDM信号の受信方法であって、
(A)前記OFDM信号受信装置の移動を検知するステップと、
(B)前記ステップ(A)の検出結果に応じて、前記ガードインターバル信号における第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号における前記第一のシンボル範囲の複製元である第二のシンボル範囲との加算平均処理を実施するか否かを切り替えるステップとを、備えている、
ことを特徴とするOFDM信号の受信方法。
【請求項7】
前記ステップ(B)は、
(B−1)前記OFDM信号受信装置の移動を検知したときには、前記加算平均処理は実施せず、
(B−2)前記OFDM信号受信装置の移動を検知しないときには、前記加算平均処理を実施する、ステップである、
ことを特徴とする請求項6に記載のOFDM信号の受信方法。
【請求項8】
前記ステップ(A)は、
(A−1)前記OFDM信号から得られるドップラ周波数の所定時間内における振幅の変動量が、所定量より大きいときに、前記OFDM信号受信装置が移動している判断し、
(A−2)前記ドップラ周波数の前記所定の時間内における前記振幅の変動量が、前記所定量以下であるときに、前記OFDM信号受信装置が移動していないと判断する、ステップである、
ことを特徴とする請求項7に記載のOFDM信号の受信方法。
【請求項9】
前記加算平均処理は、
前記ガードインターバル信号の先頭から所定のシンボル範囲を除いた前記第一のシンボル範囲と、前記有効シンボル信号の後尾から前記第一のシンボル範囲と同じシンボル長までの前記第二のシンボル範囲との、加算平均処理である、
ことを特徴とする請求項7に記載のOFDM信号の受信方法。
【請求項10】
前記所定のシンボル範囲は、
前記ガードインターバル信号のシンボル長の10%程度である、
ことを特徴とする請求項9に記載のOFDM信号の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−164888(P2009−164888A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558(P2008−558)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】