説明

PCRにおける性能が向上したB型DNAポリメラーゼ変異体

【課題】 PCRにおける性能が向上したB型DNAポリメラーゼの熱安定性変異体を提供する。
【解決手段】 野生型のB型DNAポリメラーゼにはN末端の3'-5'-エキソヌクレアーゼドメインとC末端のポリメラーゼドメインとの間にY-GG/Aアミノ酸モチーフが存在するが、変異型の該DNAポリメラーゼでは該モチーフのアミノ酸、好ましくはチロシンが置換されていることを特徴とする、ポリメラーゼ連鎖反応に適している熱安定性のB型DNAポリメラーゼ変異体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱安定性のB型DNAポリメラーゼ変異体に関するものである。野生型の該DNAポリメラーゼはN末端の3'-5'-エキソヌクレアーゼドメインとC末端のポリメラーゼドメインとの間にY-GG/Aアミノ酸モチーフを有するが、変異型の該DNAポリメラーゼにおいては該モチーフのアミノ酸が置換されている。このような変異型DNAポリメラーゼはPCR反応に適している。本発明による熱安定性変異体は、野生型DNAポリメラーゼと比べて、PCR反応における性能が優れている。本発明はまた、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)やその他の核酸合成反応においてこれらB型DNAポリメラーゼの熱安定性変異体を使用することに関する。本発明はさらに、本発明の変異体を作製する方法、該変異体をコードする遺伝子を含むベクターならびに細胞系に関する。
【0002】
【従来の技術】プルーフリーディング(校正)活性をもつDNA依存性DNAポリメラーゼは、2つの触媒活性、すなわちDNAポリメラーゼ活性とエキソヌクレアーゼ活性を協調的に働かせる必要がある。I型DNAポリメラーゼ(大腸菌 Pol I)だけでなく、B型DNAポリメラーゼの場合にも、これらの触媒活性は構造的にはっきりと区別されるタンパク質ドメインに位置づけられている(Truniger, V., Lazaro, J., Salas, M. and Blanco, L. (1996) EMBO J., 15(13), 3430-3441; Pisani, F.M., De Felice, M. and Rossi, M. (1998) Biochemistry, 37(42), 15005-15012)。B型(真核生物型)DNAポリメラーゼでは、2つの触媒活性の協調がN末端の3'-5'-エキソヌクレアーゼドメインとC末端の重合ドメインの間にある保存されたY-GG/Aモチーフにおいて分子内で起こる、と提唱されている(Truniger, V., Lazaro, J., Salas, M. and Blanco, L. (1996) EMBO J., 15(13), 3430-3441; Pisani, F.M., De Felice, M. and Rossi, M. (1998) Biochemistry, 37(42), 15005-15012)。大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントについては、その校正が局所的状況に依存してDNAの解離および再会合を必要とする分子間または分子内プロセスでありうる、と報告されている(Joyce, C.M. (1989) JBC, 264(18), 10858-10866)。Trunigerらは、Y-GG/Aモチーフの突然変異が、野生型酵素と比べて、重合またはエキソヌクレオリシス(exonucleolysis)のいずれかを優先する表現型へと至らせることを、バクテリオファージφ29の中温菌複製DNAポリメラーゼに関して実証している(Truniger, V., Lazaro, J., Salas, M. and Blanco, L.(1996) EMBO J., 15(13), 3430-3441)。彼らは、この結果が変更された(ss)DNA結合パラメーターに関係していること、また、構造的役割と機能的役割の組合せにおいてポリメラーゼ活性部位とエキソヌクレアーゼ活性部位との連携のために前記モチーフが重要であることを示すことができた。
【0003】好熱性crenarchaeonのSulfolobus solfataricus (Sso)のDNAポリメラーゼに関しては、酵素−DNA相互作用に関与する70アミノ酸の領域(領域1)が決定された(Pisani, F.M., Manco, G., Carratore, V. and Rossi, M. (1996) Biochemistry, 35, 9158-9166)。それはエキソヌクレアーゼドメインとポリメラーゼドメインの間の連結部に位置づけられ、Y-GG/Aモチーフを含んでいる。Y-GG/Aモチーフ内のアミノ酸の突然変異解析により、上記酵素のこの部分のアミノ酸がプルーフリーディング機能のプロセシビティー(processivity)を決定することが示された(Pisani, F.M., De Felice, M. and Rossi, M. (1998) Biochemistry, 37(42), 15005-15012)。バクテリオファージRB69 DNAポリメラーゼの結晶構造に基づいて、Trunigerらは、鋳型として作用する1個のヌクレオチドに先行する2個のヌクレオチドの間のホスホジエステル結合とチロシンとの直接的相互作用を提案している(Truniger, V., Blanco, L. and Salas, M. (1999) J. Mol. Biol., 286,57-69)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、PCRにおける性能が向上した熱安定性DNAポリメラーゼ、特に、向上したPCR性能を示すB型DNAポリメラーゼの熱安定性変異体を提供することである。本発明によるB型DNAポリメラーゼの変異体は、Y-GG/Aアミノ酸モチーフ内に突然変異を有する。好ましい突然変異はY-GG/Aアミノ酸モチーフ内のチロシンの位置にある。このモチーフに影響を及ぼす他の突然変異もまた、PCRにおけるB型DNAポリメラーゼの性能に影響を与える可能性がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本明細書中において、PCRにおけるDNAポリメラーゼの性能の向上とは、より高収量のPCR産物、またはより長いDNA標的の増幅をもたらす性能として定義される。さらに、PCR性能の向上とは、増幅プロセスにおける忠実度の向上として定義される。
【0006】好ましいB型DNAポリメラーゼ変異体は、Y-GG/Aアミノ酸モチーフ内のチロシンの位置に突然変異を有する。本発明に従うB型DNAポリメラーゼの好ましい変異体は、チロシンの位置にフェニルアラニン、トリプトファンまたはヒスチジンを有する。本発明によるB型DNAポリメラーゼの他の好ましい変異体は、チロシンの位置にアスパラギンまたはセリンを有する。本明細書中に記載する、Y-GG/Aモチーフ内のチロシンが置換された変異型ポリメラーゼはPCR性能が向上している。
【0007】
【発明の実施の形態】好ましい実施の形態において、本発明のB型DNAポリメラーゼ変異体は、Euryarchaea、より好ましくはThermococcus aggregans (Tag)から得られるB型DNAポリメラーゼの変異体である。特に好ましいものは、ポリメラーゼ連鎖反応を行なう能力があり、至適温度が80℃以上で、サイズが約94 kDaの、Tag由来のB型DNAポリメラーゼの変異体である。
【0008】本発明に関しては、Thermococcus aggregans由来のB型DNAポリメラーゼについて詳細に説明するが、他のB型DNAポリメラーゼ、好ましくはThermococcus aggregans由来のDNAポリメラーゼに対して高度の相同性(80%以上)を示すB型DNAポリメラーゼにも適用することができる。
【0009】Thermococcus aggregans由来のB型DNAポリメラーゼは、他のThermococcus種由来のB型DNAポリメラーゼに対して高度のアミノ酸配列相同性を示す。DNAポリメラーゼの相同性はプログラムBlast 2を使って算出した(Tatusova, T.A. and Madden, T.L. (1999) FEMS Microbiol. Lett. 174, 247-250)。Thermococcus aggregansB型DNAポリメラーゼの他のThermococcus種由来の同族酵素に対する相同性は、93%(T. litoralis)、87%(T. gorgonarius)、86%(T. furiosus)、および87%(T. spec. 9N7)である。Tag DNAポリメラーゼのPyrococcus種由来のポリメラーゼに対する相同性は、86%(P. abysii)、86%(P. horikoshii)、86%(P.spec KOD)、および85%(P. furiosus)である。異なるeuryarchaeota由来の他のB型DNAポリメラーゼに対しては、より低い相同性、すなわち、59%(Methanococcus jannaschii)、56%(Methanococcus voltae)、51%(Metanobacterium thermoautotrophicum)、および56%(Archaeglobus fulgidus)であると算出される。crenarchaeotaおよびバクテリオファージ由来のB型DNAポリメラーゼに対する相同性は、46%(Sulfolobus solfataricus)、42%(Sulfolobus acidocaldarius)、41%(Sulfurisphera ohwakuensis)、51%(Aeropyrum pernix)、40%(Pyrodictiumoccultum)、43%(Cenarchaeum symbiosum)、38%(バクテリオファージT4)、および39%(バクテリオファージRB69)である。
【0010】上述したように、Y-GG/Aモチーフ内のいくつかの突然変異が、Sulfolobus solfataricus(Sso)およびφ29 DNAポリメラーゼに対して行なわれた。これらの突然変異がポリメラーゼ活性(pol)およびエキソヌクレアーゼ活性(exo)に及ぼした影響は、Tag DNAポリメラーゼについて得られた結果と完全に一致するわけではない。したがって、変異体のPCR性能に及ぼす突然変異の影響は予測不能である。
【0011】Tag DNAポリメラーゼの変異体Y387Fは、野生型のTag DNAポリメラーゼと比較して、より高いpol/exo比を示す。Ssoおよびφ29 DNAポリメラーゼについても同様の結果が得られた。変異体G389Aは、φ29 DNAポリメラーゼの対応する変異体とは正反対の作用を示す。すなわち、Tag DNAポリメラーゼにおけるG→Aがポリメラーゼ活性をほとんど消失させるのに対し、φ29 DNAポリメラーゼのG→A変異体ではポリメラーゼ活性が明らかに増強される。Sso DNAポリメラーゼの変異体の場合は、エキソヌクレアーゼプロセシビティーが変化した。このこともB型Tag DNAポリメラーゼの変異体には認められなかった。したがって、Y-GG/Aモチーフ内の突然変異が類似していても、それが及ぼす影響は予測することができない。
【0012】要するに、Y-GG/AモチーフはDNAポリメラーゼ活性とエキソヌクレアーゼ活性とを協調させるうえである役割を果たしていることが従来技術から知られているが、従来のDNAポリメラーゼにおいて認められるpol/exo比の変化は、本発明によるTag DNAポリメラーゼの変異体において観察される変化と厳密には相関していない。さらに、Y-GG/AモチーフがPCRにおけるB型DNAポリメラーゼの性能にとって重要であるということは、これまでに記載されていない。その上、pol/exo比の変化と、PCRにおけるDNAポリメラーゼ性能の向上と、の間には相関関係がない。例えば、変異体Y387Hは野生型に比してpol/exo比の変化を示さないものの、PCRにおけるその性能は向上している。さらに、Tag DNAポリメラーゼの変異体Y387NおよびY387Sについては、忠実度の顕著な向上が認められた。
【0013】Tag DNAポリメラーゼの変異体について得られた結果を以下に詳細に説明する。
【0014】野生型および変異型Tag DNAポリメラーゼの酵素活性Tag DNAポリメラーゼの野生型酵素と変異型酵素の酵素活性を測定し、分析した(図1)。DNAポリメラーゼ活性は実施例2に記載したように測定した。突然変異がポリメラーゼ活性に及ぼす影響により、変異体は次の3つのグループに大別された。すなわち、i) 野生型に比してDNAポリメラーゼ活性が増大している変異体(変異体Y387F)、ii) DNAポリメラーゼ活性が野生型と同様であるか、野生型よりわずかに低下している変異体(変異体Y387WおよびY387H)、およびiii) DNAポリメラーゼ活性が低下している変異体(変異体Y387N、Y387S 、G389A)である。
【0015】エキソヌクレアーゼ活性は実施例3に記載したように測定した。突然変異がエキソヌクレアーゼ活性に及ぼす影響により、変異体は次の2つのグループに大別された。すなわち、i) 野生型酵素と同様のエキソヌクレアーゼ活性を示す変異体(変異体Y387F、Y387W、Y387H)、およびii) 野生型酵素に比してエキソヌクレアーゼ活性が増大している変異体(変異体Y387NおよびY387S、G389A)である。
【0016】得られたポリメラーゼ活性とエキソヌクレアーゼ活性のデータから、両活性(pol/exo)の比をTag DNAポリメラーゼの野生型酵素と変異型酵素について求めた(図1)。3種の変異体(変異体Y387F、Y387W、Y387H)は野生型酵素(WT)より高いか、またはそれと同様のpol/exo比を示した。3種の変異体(変異体Y387NおよびY387S、G389A)は野生型酵素(WT)と比べて明らかに低下したpol/exo比を示した。
【0017】PCR性能PCR反応用に最適化したバッファー中で、野生型酵素と変異型酵素をλDNAに対するPCRに供した。変異体G389Aを除く全ての変異体がPCRを行なうことができたが、一定量(1pmol)の酵素を用いたにもかかわらず様々な量のPCR産物をもたらした。DNA標的の長さが増すにつれて、酵素の性能に差が生じた(図2)。1pmolの変異体Y387S、Y387NまたはG389Aを用いて3.3 kbフラグメントを増幅しようとしても、PCR産物はまったく得られなかった。1pmolの野生型DNAポリメラーゼは長さが5.0 kbのフラグメントを増幅することができなかった。一方、変異体Y387W、Y387FおよびY387Hは長さが7.5 kbのフラグメントを増幅することができた。対照として、Taq DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼおよびExpandTM High Fidelity PCR System (Roche Molecular Biochemicals)を使用した。
【0018】また、PCR実験において異なる伸長時間を用いて2kbフラグメントを増幅することによりPCR性能の差を明らかにした。これらの条件下では、変異体G389Aを除いて、試験した全酵素が伸長時間90秒/サイクルで2kbフラグメントを増幅することができた。変異体Y387F、Y387WおよびY387Hは短縮された伸長時間40秒/サイクルで該フラグメントを増幅し、変異体Y387Hは30秒/サイクルで標的を増幅することができた(図3)。
【0019】エキソヌクレアーゼプロセシビティー酵素のエキソヌクレアーゼプロセシビティーはヘパリントラップ(heparin trap)法に基づく実験で調べた(Reddy, M.K., Weitzel, S.E. and von Hippel, P.H.(1992) J. Biol. Chem., 267(20), 14157-14166; Pisani, F.M., De Felice, M. and Rossi, M. (1998) Biochemistry, 37(42), 15005-15012)。一定量(1pmol)のTag DNAポリメラーゼまたはその変異体を、ヌクレオチドの不在下で、5'-DIG標識24merオリゴヌクレオチドと共に68℃で4分間インキュベートした。ヘパリンの不在下では、該オリゴヌクレオチドはTag酵素によって連続的に分解された(陽性対照、図4、レーン「−」)。ヘパリントラップ法の機能は、酵素の結合前にヘパリンとMnCl2を添加することで実証された(陰性対照、図4、レーンB)。単一の代謝回転の条件(反応を開始させるために酵素の結合後にヘパリンとMnCl2を添加)により、Tag DNAポリメラーゼによるオリゴヌクレオチドのエキソヌクレオリシスが生じた(図4、レーンA)。これらの酵素は、分解されなかった残存オリゴヌクレオチドの量が異なることにより示されるように、エキソヌクレオリシス活性に差があった。しかし、試験した全ての酵素において、オリゴヌクレオチドは同程度(8 nt)に分解された。このことは、これらの酵素のエキソヌクレアーゼプロセシビティーが近似していることを示している。
【0020】Thermococcus gorgonarius DNAポリメラーゼは、強力なエキソヌクレアーゼ活性を示すので、陽性対照として使用した。この酵素はヘパリンの不在下で24merオリゴヌクレオチドを15塩基長より短いオリゴヌクレオチドへと分解した(図4、レーン「−」)。単一の代謝回転の条件下で、オリゴヌクレオチドの強力な分解(11 nt)が認められる(図4、レーン「A」)。
【0021】忠実度増幅の際のエラー率を、変異型酵素と野生型DNAポリメラーゼについて測定した。FreyとSuppmanにより報告された、PCRをベースとした忠実度アッセイを採用した(Frey, M. and Suppmann, B. (1995) Biochemica, 2, 34-35)。この方法は、pUC19誘導体であるpUCQ17(機能性lacIq対立遺伝子を含む)の増幅、環化および形質転換を基礎とするものである(Barnes, W.M. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 2216-2220)。PCRにより誘導されるlacIの突然変異は、lacZα発現の抑制解除とその後の機能性β-ガラクトシダーゼ酵素(X-Gal指示プレート上で検出できる)の形成をもたらす。
【0022】5回の別々の実験において、野生型Tag DNAについての平均エラー率は5.0×10-6であった。この数値は、同様の実験で測定したExpandTM High Fidelity PCR System (Roche Molecular Biochemicals)の平均エラー率1.8×10-6とTaq DNAポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals)の平均エラー率1.3×10-5の中間にある。データのより良い比較のために、Taq DNAポリメラーゼの測定されたエラー率を、Tag DNAポリメラーゼおよびその変異体の測定されたエラー率で割った商をプロットした。別個の実験において、Taq DNAポリメラーゼのエラー率は1.2〜3.05×10-5の範囲で変化した。
【0023】図5は、Tag DNAポリメラーゼの野生型酵素と変異型酵素のエラー率の商を示す。PCR性能の向上を示す変異体(Y387W、Y387F、Y387H)のエラー率は、野生型酵素について得られた数値と有意差がなかった。エキソヌクレアーゼ活性が増大した変異体(Y387N、Y387S)は忠実度が向上した(図5)。変異体Y387NおよびY387Sの平均エラー率は、それぞれ6.3×10-7および6.2×10-7であると測定された。
【0024】φ29 DNAポリメラーゼおよびSso DNAポリメラーゼと対照的に、Tag DNAポリメラーゼはPCRに適している。チロシンの位置に芳香族アミノ酸をもつ変異型酵素(Y387F、Y387W、Y387H)は、PCR性能の向上のほかに、同様のまたはほんのわずかに増大したDNAポリメラーゼ活性を示した。
【0025】忠実度アッセイにおいて、変異体Y387F、Y387WおよびY387Hのエラー率は有意に変化しないことがわかった。これに対して、変異体Y387NまたはY387Sはより高いエキソヌクレアーゼ活性を示し、忠実度が向上していた。
【0026】さらに、本発明の課題は、遺伝子のクローニングおよび突然変異誘発、その後のタンパク質の発現および精製の各ステップを含むことを特徴とする、本発明によるB型変異体の作製方法である。
【0027】また、本発明の主題は、野生型の熱安定性B型DNAポリメラーゼにはN末端の3'-5'-エキソヌクレアーゼドメインとC末端のポリメラーゼドメインとの間にY-GG/Aアミノ酸モチーフが存在するが、該DNAポリメラーゼの変異型酵素では該モチーフのチロシンが置換されていることを特徴とする、PCRに適したB型DNAポリメラーゼ変異体をコードするDNAである。
【0028】好ましくは、上記の野生型DNAはEuryarchaea、より好ましくはThermococcus aggregans(Tag)から得られるものである。本発明の主題はまた、本発明によるDNAを含有するベクターである。適当なベクターは例えば次のもの、pET14b/15b/16b/19b (Novagen); pRSET (Invitrogen); pTrcHis (Invitrogen); pHAT10/11/12 (Clontech); pPRO Tet.E/Lar.A (Clontech); pCALn/n-EK (Stratagene); pGEMEX-1/-2 (Promega)である。
【0029】さらに、本発明の主題は上記のベクターを含む細胞である。適当な細胞は例えば供給業者が推奨するベクターと組み合わせた大腸菌BL21、BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysE、DH5∝PRO、JM109(DE3)、TOP10である。個々の発現ベクターに応じて、遺伝子をサブクローニングしたり、タンパク質の精製法を改変する必要があるかもしれない。
【0030】Tag DNAポリメラーゼを発現する組換え菌株のサンプルは、Deutsche Sammlungvon Mikroorganismen und Zellkulturen (DSMZ) (Mascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig)に寄託し、受託番号DSM 13224を指定された。
【0031】本発明のさらなる主題は、本発明による変異型酵素を、例えばPCRにおいて、核酸の合成に使用することである。
【0032】好適な実施の形態の詳細な説明図面図1:二本鎖DNAに対する、Tag DNAポリメラーゼおよびその変異体の相対的ポリメラーゼ活性(Pol)および3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性(Exo)を示した図である。アッセイはそれぞれ実施例2および3に記載したように行なった。活性は、野生型Tag DNAポリメラーゼについて得られた活性のパーセントとして表してある。
【0033】図2:Tag DNAポリメラーゼ変異体を用いて行なったPCRを示した図である。Tag DNAポリメラーゼ変異体(1pmol)を、鋳型としての10ngのλDNA、表示した長さのフラグメントをもたらすように設計した30pmolのプライマーセット、200μMずつのdNTPおよび適当なPCRバッファーと共に総量50μl中でインキュベートした。反応は94℃で10秒、57℃で30秒、72℃で3.0分(A)、4.3分(B)または7.0分(C)の伸長時間を10サイクル、続いて伸長時間を20秒/サイクルだけ延長して20サイクル行なった。PCR後、5μlのサンプルを1%アガロースゲル電気泳動に供した。対照反応の場合は、2.5UのTaq DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼまたはExpandTMHigh Fidelity PCR Systemを用いた。各レーンの省略語については図6で説明する。
【0034】図3:時間依存的ポリメラーゼ連鎖反応。最小伸長時間を決定するために、異なる伸長時間(表示したように90秒、40秒、30秒)を用いて行なった反応からの2kb PCR産物を示す1%アガロースゲル電気泳動の図である。1pmolの各Tag DNAポリメラーゼ変異体または野生型酵素を、10ngのλDNAと、2kbのDNAフラグメントをもたらすように設計したプライマーセットの混合物に添加した。各レーンの表示については図6で説明する。各変異体について、反応を2回ずつ繰り返した。各ゲルの右側のレーンのPwoは、対照反応としての2.5UのPyrococcus woesei DNAポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals)である。各ゲルの左側のレーンは分子量マーカーVI(Roche Molecular Biochemicals)である。伸長時間40秒の反応においては、変異型GAを除外した。30秒の反応では、変異型YSについて1回の反応物のみをゲルに供した。
【0035】図4:3'-5'-エキソヌクレアーゼプロセシビティー。試験したTag DNAポリメラーゼ変異体を図の上部に示す。対照反応(30秒間インキュベーション)としてTgo DNAポリメラーゼを使用した。野生型および変異型のTag DNAポリメラーゼの反応は、68℃で1分間のプレインキュベーション後に68℃で4分間行なった。レーン「P」:対照反応(インキュベーションなしの24mer 5'-DIG標識プライマー);レーン「−」:ヘパリンの不在下での反応(陽性対照);レーン「B」:酵素の添加前にヘパリンとMnCl2を添加した反応(陰性対照);レーン「A」:酵素の添加後にヘパリンとMnCl2を添加した反応(単一の代謝回転の条件下での反応)。
【0036】図5:Tag DNAポリメラーゼ変異体の忠実度。Taq DNAポリメラーゼの忠実度に対してTag DNAポリメラーゼおよびその変異体の忠実度を表した図である。商1は、TagDNAポリメラーゼがTaq DNAポリメラーゼと同じエラー率をもつことを意味する(平均値 1.3×10-5)。1より大きい値は、その倍率だけポリメラーゼがTaq DNAポリメラーゼより低いエラーを示すことを反映している。棒は2〜5回の独立した実験から求めた平均値に相当し、誤差棒のないものは0.36より小さいものである。酵素の省略語については、図6で説明するとおりである。対照として、Pyrococcus woesei DNAポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals)およびExpandTM High Fidelity PCR System (Roche Molecular Biochemicals)を用いた(「Taq/Pwo」と「Taq/HiFi」)。
【0037】図6:精製した変異型タンパク質のSDS-PAGEゲル電気泳動分析。1μgの各変異体を10% SDS-PAGEゲルでの電気泳動に供した。左から、MW:分子量マーカー;WT:Thermococcus aggregans 野生型DNAポリメラーゼ;YF、YW、YS、YN、YHは、チロシン387の位置でそれぞれフェニルアラニン、トリプトファン、セリン、アスパラギン、ヒスチジンに置換されている対応の変異体であり、GAはThermococcus aggregans DNAポリメラーゼの遺伝子におけるグリシン389のアラニンへの突然変異である。全ての変異体は野生型酵素と同じクロマトグラフ挙動および溶解性を示した。
【0038】図7:定性的エキソヌクレアーゼアッセイ。エキソヌクレアーゼ活性を試験するための基質としてDNA分子量マーカーを用いた(DNA分子量マーカーII(MWII)、RocheMolecular Biochemicals)。1μgのMWIIを1pmolの各Tag DNAポリメラーゼ変異体と共に、200μMのdNTPの存在下(A)または不在下(B)に65℃で6時間インキュベートした。Tag変異体は図6で説明したとおりの省略語で示してある。エキソヌクレアーゼ活性に関する該タンパク質の定性的ランク付けは、GA>YN>YS>YH>YF=YW=WTである。
【0039】図8:euryarchaeaおよびcrenarchaeaのB型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の多重アライメントから誘導された、Thermococcales目(order)由来のB型DNAポリメラーゼのコンセンサス配列モチーフ。Y-GG/Aモチーフを含む24アミノ酸の領域をClustalW Softwareプログラム(Higgins, EMBL Heidelberg, Germany)により解析した。全てのarchaea B型DNAポリメラーゼにおいて保存されているアミノ酸(Y-GG/Aモチーフに類似)のほかに、コンセンサス配列「E--RR-R-----G(Y)-KE-EE--LWE-」を規定することができる。この配列はThermococcales目に属する全DNAポリメラーゼの配列中に見いだされ、これらのDNAポリメラーゼの80%を超える相同性と一致する。crenarchaea種であるSulfolobus solfataricus、Sulfolobus acidocaldarius、Pyrobaculum islandicum、Pyrodictium occultum、Aeropyrum pernix、Sulfurisphaera ohwakuensisの配列、およびいくつかのeuryarchaea種であるThermococcus(「T.」)、Pyrococcus(「P.」)、Methanococcus(「M.」)の配列のアライメントを行なった。
【0040】図9:組換え野生型Tag DNAポリメラーゼのDNA配列および推定アミノ酸配列。天然の遺伝子(受託番号Y13030)中に存在する3つのイントロンがPCRにより検出された(Niehaus, F., Frey, B., Antranikian, A. (1997) Gene, 204, 153-158)。PCRの間に、アミノ酸交換へと至らせる4つの突然変異が導入された。アミノ酸交換(天然→組換え)は、L3F、A404T、S410CおよびL492Hである。
【0041】
【実施例】実施例1部位特異的突然変異誘発およびTag DNAポリメラーゼ変異体の発現Tag DNAポリメラーゼ(polTY)の遺伝子のクローニングは以前に記載されている(Niehaus, F., Frey, B., Antranikian, A. (1997) Gene, 204, 153-158)。大腸菌でのTag DNAポリメラーゼの過剰発現は、それをコードする遺伝子を、精製のためのN末端Hisタグを含むIPTG誘導性pET15bベクター(Novagen)にサブクローニングすることにより行なった(得られたプラスミドはpET15b-TagPolと命名した)。
【0042】この研究で提供する変異体は、ミスマッチとして目的の突然変異を含むプライマーを使ってポリメラーゼ連鎖反応により作製した。フォワードプライマーは、普遍的に、突然変異部位の約100 bp上流の配列に一致する「Kpn-fw」であり、polTy遺伝子のKpnI制限部位を含んでいた。リバースプライマーはSnaBI制限部位とさらに目的の突然変異を含んでいた。オリゴヌクレオチドの配列は次のとおりである(突然変異誘発のためのミスマッチ部位には下線を引いてある)。
【0043】配列番号1

配列番号2

配列番号3

配列番号4

配列番号5

配列番号6

配列番号7

PCR反応は、ExpandTM High Fidelity PCR System (Roche Molecular Biochemicals)を用いて次のプログラムで実施した:94℃で2分後、94℃で10秒、55℃で30秒、72℃で30秒を30サイクル。得られた139 bpフラグメントを制限酵素KpnIとSnaBIで消化して101 bpフラグメントを得、これを制限酵素KpnIとSnaBIで消化して線状にしたpET15b-TagPolに連結させた。クローン化DNAフラグメントの配列を解析して、目的の突然変異が存在することを確認した。
【0044】タンパク質を発現させるため、大腸菌BL21(DE3)細胞を発現ベクターpET15b-TagPolで形質転換した。100μg/mlのアンピシリンを補充したLB培地15mlに3〜5個のコロニーを接種し、OD600nm=0.3となるまで増殖させた。予備培養物のアリコート(10ml)を500mlのLB培地に接種し、振盪しながら37℃でインキュベートした。OD600nm=0.6でIPTG(最終濃度:1mM)を添加して発現を誘導した。3時間のインキュベーション後、遠心分離により細胞を回収し、50mM Tris-HCl/pH7.5、10mM KCl、0.5mM EDTA、4mM MgCl2、5mM DTT中に懸濁した。細胞を氷上で超音波処理し、粗製抽出物を80℃へと15分間加熱した。細胞破片を遠心分離(30,000xg、4℃で30分)により取り除いた。上清を、バッファーA(50mM Tris-HCl/pH7.5、10mM KCl、4mM MgCl2)で平衡化したBlue Sepharose 3G-Aカラム(Pharmacia)にアプライした。タンパク質は0.01〜1.5M KClの勾配を用いて溶出した。活性画分をプールし、20mM Tris-HCl/pH7.9、5mM イミダゾール、500mM NaClに対して透析した。同じバッファーで平衡化したNi-キレートカラム(Novagene)にサンプルをアプライし、0.005〜1M イミダゾールの勾配を用いて溶出した。活性画分をプールし、保存バッファー(50mM Tris-HCl/pH7.5、100mM KCl、0.5mM EDTA、5mM DTT、50% グリセロール)に対して透析した。酵素はSDSゲル電気泳動から明らかなように純化されていた(図6)。
【0045】実施例2DNAポリメラーゼアッセイDNAポリメラーゼの活性は、DNA基質へのα-(32P)dCTPの取り込みを測定することで調べた。試験混合物(50μl)は、5μlの10x Tag反応バッファー(100mM Tris-HCl/pH8.9 、750mM KCl、15mM MgCl2、100mM CHAPS)、200μMずつのdATP、dGTP、dTTP、100μM dCTP、1mCi α-(32P)dCTP、1μgのM13mp9 ssDNA(0.3μgのM13プライマーをアニーリングさせたもの)を含んでいた。アッセイは2および3μlの酵素を3種類の希釈率(酵素の最終量 2.5〜15fmole)で用いて6反応を行ない、平均値を求めた。基準としてPwo DNAポリメラーゼを使用した。DNA/プライマー混合物を調製するには、277.2μgのM13mp9 ssDNA (Roche Molecular Biochemicals)と156μgのM13配列決定用プライマー(17merフォワードプライマー、Roche Molecular Biochemicals)とを55℃で30分間加熱し、次いでそれを室温へと30分間冷却した。
【0046】アッセイ反応を65℃で30分インキュベートし、氷上で500μlの10% TCA (4℃)を添加して停止させ、氷上にさらに10分置いた。サンプルをGFCフィルター(Whatman)で濾過し、フィルターを5% TCAで3回洗浄し、2mlのシンチレーション液体中でβカウンターにより計測した。1ユニットは、65℃、30分で酸不溶性物質に10nM dNTPを組み込むのに必要とされる酵素の量として定義される。
【0047】実施例3エキソヌクレアーゼアッセイ活性についてのアッセイ:3μl(300ng)の酵素(約5ユニットのポリメラーゼ活性)を、5μgの3H標識ウシ胸腺DNAと共に、10mM Tris-HCl/pH8.9、75mM KCl、1.5mM MgCl2、10mM CHAPSを含むバッファー中で65℃、4時間インキュベートした。ウシ胸腺DNAから放出された放射能をシンチレーションカウンターで計測した。
【0048】用いたアッセイでは、3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性と5'-3'-エキソヌクレアーゼ活性とを正しく区別することができない。ThermococcalesのB型ポリメラーゼには、5'-3'-エキソヌクレアーゼ活性が表現型的にも遺伝子型的にもこれまで検出されていない(Perler, F.B., Kumar, S. and Kong, H. (1996) Adv. Prot.Chem., 48, 377-435)。したがって、得られた値は3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性であると見なすことができる。
【0049】別のアッセイにおいては、1μgの分子量マーカーII (Roche Molecular Biochemicals)を、上記と同じバッファー中で、5Uの酵素と共に200μMずつのdNTPの存在下または不在下に、最終容量50μlにて65℃、6時間インキュベートした。反応産物は1%アガロースゲルでの電気泳動により分離した。
【0050】3'-5'-エキソヌクレアーゼプロセシビティーについてのアッセイ:以前に報告されたヘパリントラップ法を用いた(Reddy, M.K., Weitzel, S.E.and von Hippel, P.H. (1992) J. Biol. Chem., 267(20), 14157-14166; Pisani, F.M., De Felice, M. and Rossi, M. (1998) Biochemistry, 37(42), 15005-15012)。10mM Tris-HCl/pH8.9、75mM KCl、10mM CHAPSおよび0.5pmoleの5'-DIG標識24merオリゴヌクレオチドを含む反応混合物(10μl)をサーモサイクラー内で68℃、1分間予め温めておいた。特にことわらない限り、1pmolの酵素を基質と共に68℃で1分間プレインキュベートした。MnCl2(最終濃度 4mM)とヘパリン(最終濃度 1mg/ml)を添加して反応を開始させ、単一の代謝回転の条件を確実にした。4分のインキュベーション後、5μlのホルムアミドバッファー(80% ホルムアミド、10mM EDTA、1mg/ml ブロモフェノールブルー、1mg/ml キシレンキサノール)を添加して反応を停止させた。ヘパリントラップの有効性を調べるために、対照反応として酵素の添加前にヘパリンとMnCl2を添加した。サンプルを90℃で3分変性し、17.5% ポリアクリルアミド/8M 尿素ゲルでの変性ゲル電気泳動にかけた。ゲルを正に荷電したナイロン膜(Roche Molecular Biochemicals)にブロッティングし、ブロットを製造業者の説明書に従ってCPD-Star (Roche Molecular Biochemicals) により発色させた。
【0051】実施例4lacIをベースとしたPCR忠実度アッセイ本発明者らは、FreyとSuppmannにより報告された(Frey, M. and Suppmann, B.(1995) Biochemica, 2, 34-35)、lacIをベースとしたPCR忠実度アッセイを用いた。この方法は、pUC19誘導体であるpUCQ17(機能性lacIq対立遺伝子を含む)の増幅、環化および形質転換に基づくものである(Barnes, W.M. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 2216-2220)。PCRにより誘導されるlacIの突然変異は、lacZαの発現の抑制解除とその後の機能性β-ガラクトシダーゼ酵素の形成をもたらし、この酵素はX-Gal指示プレート上で簡単に検出することができる。
【0052】pUC19の末端切断lacI遺伝子をlacIqの機能性コピーで置換するために、178bpのPvuII-AflIIIフラグメントを、lacIqをコードする1121bpのDNAフラグメントで置き換えた。α-相補性大腸菌DH5α株は、得られたプラスミドpUCIQ17(3632bp)で形質転換すると、アンピシリン(100μg/ml)とX-Gal(0.004% w/v)を含むLBプレート上に白色(LACI+)コロニーを生ずる。PCRのために、pUCIQ17をDraIIで消化して線状となし、1または10ngの量で鋳型として用いた。両プライマーはその5'末端にClaI切断部位を有する。オリゴヌクレオチドCla33 (34mer、24個が一致:配列番号8:5'-AGC TTA TCG ATG GCA CTT TTC GGG GAA ATG TGC G-3')およびオリゴヌクレオチドCla55 (36mer、26個が一致:配列番号9:5'-AGC TTA TCG ATA AGC GGA TGC CGG GAG CAG ACA AGC-3')は3493bpのPCR産物をもたらした。反応は以下に記載するTagポリメラーゼPCRバッファー中で1または5pmolのタンパク質を用いて、また、対照反応として2.5Uの酵素を含む製造業者のPCRバッファー中で行なった。サイクル条件は94℃で10秒の変性、57℃で30秒のアニーリング、72℃で4分の伸長とし、酵素に応じて18、24または30サイクル行なった。
【0053】PCR後、増幅産物の収量をOD260nmでまたはアガロースゲルにて調べ、その後あらゆるタンパク質を排除するためにDNAフラグメントをフェノール/クロロホルム抽出にかけた。ClaIで消化した後、DNAフラグメントを分離用アガロースゲルで精製した。Rapid Ligation Kit (Roche Molecular Biochemicals) を使って連結反応を実施し、この反応は30ngのDNAを含んでいた。得られた環状プラスミドを用いて、Hanahanが報じたとおりに(Hanahan, D. (1983) J. Mol. Biol., 166,557-580)、大腸菌DH5αを形質転換し、上記のLB Amp/X-Galプレート上にまいた。37℃で一夜インキュベートした後、青色と白色のコロニーを数えた。KeohavongとThilly (Keohavong, P. and Thilly, W.G. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 86, 9253-9257)により発表された再配列方程式:f = -1nF / d x b bpを使って、bpあたりのエラー率(f)を求めた。ここで、F は白色コロニーの比率(白色コロニー/全コロニー)であり、d はDNA重複の数、すなわち、2d =アウトプットDNA/インプットDNAであり、b はlacI遺伝子の有効標的サイズ(1080bp)である。lacI遺伝子内には、179個のコドン(コード領域の約50%)で349の単一塩基置換(ナンセンスおよびミスセンス)が表現型的に(発色スクリーニングにより)確認された(Provost, G.S., Kretz, P.L., Harnner, R.T., Matthews, C.D., Rogers, B.J., Lundberg, K.S., Dycaico, M.J. and Short, J.M. (1993) Mut. Research, 288, 133-149)。lacIの1080bpオープンリーディングフレーム内のあらゆる位置で起こりうるフレームシフトエラーについては考慮に入れなかった。なぜなら、Taq DNAポリメラーゼを除いて、PCR系で用いる特定のポリメラーゼに関する情報はほとんど入手できないからである。
【0054】実施例5ポリメラーゼ連鎖反応PCRは、Tag DNAポリメラーゼおよびその変異体のために最適化したバッファー、すなわち、10mM Tris-HCl/pH8.9、75mM KCl、1.5mM MgCl2、10mM CHAPS、200μM dNTP中で行なった。10ngのλDNAを鋳型として使用し、30pmolずつのプライマー(20bp、所望の長さの産物を生成するように設計したもの):λ1(普遍的フォワードプライマー):5'-GAT GAG TTC GTG TCC GTA CAA CA-3'(配列番号10)、λ3.3:5'-CTC ATC AGC AGA TCA TCT TCA GG-3'(配列番号11)、λ8:5'-ACT CCA GCG TCT CAT CTT TAT GC-3'(配列番号12)、λ9:5'-GAT GGT GAT CCT CTC TCG TTT GC-3'(配列番号13)、を用いた。λ3.3、8および9は、それぞれ3.3kb、5kbおよび7.5kbのフラグメントを増幅するためのリバースプライマーである。
【0055】鋳型、プライマーおよびヌクレオチドを25μl容量の混合物1として調製した。次に、バッファーと酵素(1pmolの野生型および変異型Tag酵素、または2.5Uの対照酵素)を含む25μlの混合物2を加えた。すべての反応を2回反復して行なった。増幅は2400 GeneAmpサーモサイクラー(Perkin Elmer)で実施した。サイクル条件は、94℃で2分後、94℃で10秒の変性、58℃で30秒のアニーリング、72℃での伸長を10サイクルとした。伸長時間は産物の長さにより変えた(3.3kbの場合が3分、5kbの場合が4.3分、7.5kbの場合が7分)。伸長時間を20秒/サイクルだけ延ばして、別の20サイクルを実施した。最後に72℃で7分反応させた。1%アガロースゲル電気泳動で分離するまでチューブを4℃で保存した。
【0056】さらに、Tagポリメラーゼ変異体のPCR性能の向上については、「時間依存的PCR」でも調べた。上記のようにλDNAから2kbフラグメントを増幅させた。これらの実験では、PCRの伸長時間を段階的に(90秒、40秒、30秒)短縮し、各酵素について2kbフラグメントを増幅するのに十分な最小伸長時間を決定した。下記のプライマーを用いた:λ1(普遍的フォワードプライマー):5'-GAT GAG TTC GTG TCC GTA CAA CA-3'(配列番号14)、λ6(リバースプライマー):5'-CTT CAT CAT CGA GAT AGC TGT CG-3'(配列番号15)、温度プロフィールは上記のとおりとした。伸長時間は30サイクルにわたって一定に保った。
【0057】
【配列表】
SEQUENCE LISTING<110> Roche Diagnostics GmbH<120> Mutant B-type DNA polymerase exhibiting improved performance in PCR<130> PA01-077<140> <141> <150> 00105155.6<151> 2000‐3‐11<160> 34 <170> PatentIn Ver. 2.1<210> 1<211> 35<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 1gcaaccttgt agagtagagt ggtacctgtt aaggg 35 <210> 2<211> 44<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 2gcctctttcc ggctctttta cgtatcctcc caggaaagta gtcc 44 <210> 3<211> 44<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 3gcctctttcc ggctctttta cgtatcctcc caggtgagta gtcc 44 <210> 4<211> 44<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 4gcctctttcc ggctctttta cgtatcctcc caggttagta gtcc 44 <210> 5<211> 44<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 5gcctctttcc ggctctttta cgtatcctcc cagggaagta gtcc 44 <210> 6<211> 44<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 6gcctctttcc ggctctttta cgtatcctcc cagccaagta gtcc 44 <210> 7<211> 44<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 7gcctctttcc ggctctttta cgtatccagc caggtaagta gtcc 44 <210> 8<211> 34<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 8agcttatcga tggcactttt cggggaaatg tgcg 34 <210> 9<211> 36<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 9agcttatcga taagcggatg ccgggagcag acaagc 36 <210> 10<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 10gatgagttcg tgtccgtaca aca 23 <210> 11<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 11ctcatcagca gatcatcttc agg 23 <210> 12<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 12actccagcgt ctcatcttta tgc 23 <210> 13<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 13gatggtgatc ctctctcgtt tgc 23 <210> 14<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 14gatgagttcg tgtccgtaca aca 23 <210> 15<211> 23<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Artificial<400> 15cttcatcatc gagatagctg tcg 23 <210> 16<211> 25<212> PRT<213> T. aggregans<400> 16Glu Tyr Arg Arg Arg Leu Arg Thr Thr Tyr Leu Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Arg Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 17<211> 25<212> PRT<213> T. litoralis<400> 17Glu Tyr Lys Arg Arg Leu Arg Thr Thr Tyr Leu Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Lys Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 18<211> 25<212> PRT<213> T. fumicolans<400> 18Glu Leu Glu Arg Arg Xaa Arg Gly Gly Tyr Ala Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Arg Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 19<211> 25<212> PRT<213> T. spec. 9N7<400> 19Glu Leu Ala Arg Arg Xaa Arg Gly Gly Tyr Ala Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Arg Glu Arg Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 20<211> 25<212> PRT<213> T. gorgonarius<400> 20Glu Leu Ala Arg Arg Xaa Arg Glu Ser Tyr Ala Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Arg Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 21<211> 25<212> PRT<213> P. spec. KOD<400> 21Glu Leu Ala Arg Arg Xaa Arg Gln Ser Tyr Glu Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Arg Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 22<211> 25<212> PRT<213> P. abysii<400> 22Glu Tyr Glu Arg Arg Leu Arg Glu Ser Tyr Glu Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Lys Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 23<211> 25<212> PRT<213> P. furiosus<400> 23Glu Tyr Gln Arg Arg Leu Arg Glu Ser Tyr Thr Gly Gly Phe Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Lys Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 24<211> 25<212> PRT<213> P. horikoshii<400> 24Glu Tyr Glu Arg Arg Leu Arg Glu Ser Tyr Glu Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Lys Gly Leu Trp Glu Asn 20 25<210> 25<211> 25<212> PRT<213> M. jannaschii<400> 25Glu Tyr Arg Arg Arg Val Leu Thr Thr Tyr Glu Gly Gly Tyr Val Lys 1 5 10 15 Glu Pro Glu Lys Gly Met Phe Glu Asp 20 25<210> 26<211> 25<212> PRT<213> M. voltae<400> 26Ser Tyr Arg Glu Arg Ala Lys Phe Ser Tyr Glu Gly Gly Tyr Val Arg 1 5 10 15 Glu Pro Leu Lys Gly Ile Gln Glu Asn 20 25<210> 27<211> 25<212> PRT<213> S. solfataricus<400> 27Thr Ser Ala Leu Ile Lys Gly Lys Gly Tyr Lys Gly Ala Val Val Ile 1 5 10 15 Asp Pro Pro Ala Gly Ile Phe Phe Asn 20 25<210> 28<211> 25<212> PRT<213> S. acidocaldarius<400> 28Thr Ala Ala Val Ile Lys Gly Lys Lys Tyr Lys Gly Ala Val Val Ile 1 5 10 15 Asp Pro Pro Ala Gly Val Tyr Phe Asn 20 25<210> 29<211> 25<212> PRT<213> P. islandicum<400> 29Thr Lys Ala Ile Ile Lys Gly Lys Lys Tyr Ala Gly Ala Val Val Leu 1 5 10 15 Asp Pro Pro Leu Gly Ile Phe Phe Asn 20 25<210> 30<211> 25<212> PRT<213> P. occultum<400> 30Ser Glu Ala Leu Ile Lys Gly Lys Lys Tyr Gln Gly Ala Leu Val Leu 1 5 10 15 Asp Pro Pro Ser Gly Ile Tyr Phe Asn 20 25<210> 31<211> 25<212> PRT<213> A. pernix<400> 31Val Gly Ala Ile Ile Lys Asp Lys Lys Tyr Arg Gly Ala Ile Val Leu 1 5 10 15 Asp Pro Pro Val Gly Ile Phe Phe Arg 20 25<210> 32<211> 25<212> PRT<213> S. chwakuensis<400> 32Thr Ala Ala Ile Ser Lys Gly Lys Arg Tyr Lys Gly Ala Val Val Ile 1 5 10 15 Asp Pro Pro Ala Gly Val Phe Phe Asn 20 25<210> 33<211> 2325<212> DNA<213> T. aggregans<220> <221> CDS<222> (1)..(2325)<400> 33atg ata ttt gac act gac tac ata aca aag gac ggt aaa ccc ata att 48 Met Ile Phe Asp Thr Asp Tyr Ile Thr Lys Asp Gly Lys Pro Ile Ile 1 5 10 15 cga att ttc aag aaa gag aac ggg gaa ttt aaa ata gaa ctt gat cca 96 Arg Ile Phe Lys Lys Glu Asn Gly Glu Phe Lys Ile Glu Leu Asp Pro 20 25 30 cat ttt cag ccc tac att tac gct ctt ctc aaa gat gac tcc gct att 144 His Phe Gln Pro Tyr Ile Tyr Ala Leu Leu Lys Asp Asp Ser Ala Ile 35 40 45 gat gaa ata aaa gca ata aaa ggc gag aga cac gga aaa att gtg aga 192 Asp Glu Ile Lys Ala Ile Lys Gly Glu Arg His Gly Lys Ile Val Arg 50 55 60 gta gtc gat gca gtg aaa gtc aag aag aaa ttt ttg ggg aga gat gtt 240 Val Val Asp Ala Val Lys Val Lys Lys Lys Phe Leu Gly Arg Asp Val 65 70 75 80gag gtc tgg aag ctt ata ttt gag cat ccc caa gac gtc ccg gcc cta 288 Glu Val Trp Lys Leu Ile Phe Glu His Pro Gln Asp Val Pro Ala Leu 85 90 95 agg ggc aag ata agg gaa cat cca gct gtg att gac att tat gag tac 336 Arg Gly Lys Ile Arg Glu His Pro Ala Val Ile Asp Ile Tyr Glu Tyr 100 105 110 gac ata ccc ttt gcc aag cgc tac ctc ata gac aag ggc ttg atc cct 384 Asp Ile Pro Phe Ala Lys Arg Tyr Leu Ile Asp Lys Gly Leu Ile Pro 115 120 125 atg gag ggc gac gag gag ctt aag cta atg gcc ttc gac att gag acg 432 Met Glu Gly Asp Glu Glu Leu Lys Leu Met Ala Phe Asp Ile Glu Thr 130 135 140 ttt tac cac gag gga gac gag ttt ggg aag ggc gag ata ata atg ata 480 Phe Tyr His Glu Gly Asp Glu Phe Gly Lys Gly Glu Ile Ile Met Ile145 150 155 160agc tac gcc gat gag gaa gag gca agg gta att aca tgg aag aat att 528 Ser Tyr Ala Asp Glu Glu Glu Ala Arg Val Ile Thr Trp Lys Asn Ile 165 170 175 gat ctg ccc tac gtt gat gtt gta tcc aac gaa agg gag atg ata aag 576 Asp Leu Pro Tyr Val Asp Val Val Ser Asn Glu Arg Glu Met Ile Lys 180 185 190 cgg ttt gtg caa att gtc agg gaa aaa gac ccg gat gtc ctg ata act 624 Arg Phe Val Gln Ile Val Arg Glu Lys Asp Pro Asp Val Leu Ile Thr 195 200 205 tac aat gga gac aac ttt gat ttg ccg tac ctt ata aaa agg gca gag 672 Tyr Asn Gly Asp Asn Phe Asp Leu Pro Tyr Leu Ile Lys Arg Ala Glu 210 215 220 aag tta gga gtt act ctt ctc ttg ggg agg gac aaa gaa cac ccc gag 720 Lys Leu Gly Val Thr Leu Leu Leu Gly Arg Asp Lys Glu His Pro Glu225 230 235 240ccc aag att cac aga atg ggc gat agc ttt gcc gtg gaa att aaa ggc 768 Pro Lys Ile His Arg Met Gly Asp Ser Phe Ala Val Glu Ile Lys Gly 245 250 255 aga att cac ttt gat ctc ttc ccg gtt gtg cgg aga acc ata aac ctc 816 Arg Ile His Phe Asp Leu Phe Pro Val Val Arg Arg Thr Ile Asn Leu 260 265 270 cca aca tac acg ctt gag gca gtt tat gaa gcc gtc ttg gga aaa acc 864 Pro Thr Tyr Thr Leu Glu Ala Val Tyr Glu Ala Val Leu Gly Lys Thr 275 280 285 aaa agc aag ctg ggt gcg gag gaa atc gcc gcc atc tgg gaa aca gag 912 Lys Ser Lys Leu Gly Ala Glu Glu Ile Ala Ala Ile Trp Glu Thr Glu 290 295 300 gag agc atg aag aag ctg gcc cag tac tcg atg gaa gat gct agg gca 960 Glu Ser Met Lys Lys Leu Ala Gln Tyr Ser Met Glu Asp Ala Arg Ala305 310 315 320act tat gaa ctc gga aaa gag ttt ttc ccc atg gag gca gag cta gca 1008 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【図面の簡単な説明】
【図1】二本鎖DNAに対する、Tag DNAポリメラーゼおよびその変異体の相対的ポリメラーゼ活性(Pol)および3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性(Exo)を示した図である。
【図2】Tag DNAポリメラーゼ変異体を用いて行なったPCRを示した図である。
【図3】最小伸長時間を決定するために、異なる伸長時間(表示したように90秒、40秒、30秒)を用いて行なった反応からの2kb PCR産物を示す1%アガロースゲル電気泳動の図である。
【図4】野生型および変異型Tag DNAポリメラーゼの3'-5'-エキソヌクレアーゼプロセシビティーを示した図である。
【図5】Tag DNAポリメラーゼ変異体の忠実度を示した図である。
【図6】精製した変異型タンパク質のSDS-PAGEゲル電気泳動分析を示した図である。
【図7】Tag DNAポリメラーゼ変異体の定性的エキソヌクレアーゼアッセイを示した図である。
【図8】euryarchaeaおよびcrenarchaeaのB型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列の多重アライメントから誘導された、Thermococcales目に由来するB型DNAポリメラーゼのコンセンサス配列モチーフを示した図である。
【図9】組換え野生型Tag DNAポリメラーゼのDNA配列および推定アミノ酸配列を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 野生型のB型DNAポリメラーゼにはN末端の3'-5'-エキソヌクレアーゼドメインとC末端のポリメラーゼドメインとの間にY-GG/Aアミノ酸モチーフが存在するが、変異型の該DNAポリメラーゼでは該モチーフのアミノ酸、好ましくはチロシンが置換されていることを特徴とする、ポリメラーゼ連鎖反応に適している熱安定性のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項2】 チロシンの位置に芳香族側鎖をもつアミノ酸を有する、請求項1記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項3】 Y→F、Y→WまたはY→H突然変異を有する、請求項1記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項4】 チロシンの位置に親水性側鎖をもつアミノ酸を有する、請求項1記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項5】 Y→NまたはY→S突然変異を有する、請求項1記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項6】 野生型がEuryarchaeaから得られる、請求項1〜5のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項7】 野生型がThermococcus aggregansから得られる、請求項1〜6のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項8】 野生型のアミノ酸配列が野生型Tag DNAポリメラーゼのアミノ酸配列と80%以上相同である、請求項1〜6のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項記載の熱安定性B型DNAポリメラーゼ変異体をコードするDNA。
【請求項10】 請求項9記載のDNAを含むベクター。
【請求項11】 請求項10記載のベクターを含む形質転換宿主細胞。
【請求項12】 請求項1〜8のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体をコードする遺伝子のクローニングおよび突然変異誘発、その後のタンパク質の発現および精製の各ステップを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体の取得方法。
【請求項13】 核酸を合成するための、請求項1〜8のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体の使用。
【請求項14】 PCR反応のための、請求項1〜8のいずれか1項記載のB型DNAポリメラーゼ変異体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2001−269188(P2001−269188A)
【公開日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−61781(P2001−61781)
【出願日】平成13年3月6日(2001.3.6)
【出願人】(591215177)ロシュ ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー (8)