説明

PET(PositronEmissionTomography)スキャナ

【課題】検出器を適切に配置することができるPET(Positron Emission Tomography)スキャナを提供することである。
【解決手段】実施形態に係るPET(Positron Emission Tomography)スキャナは、第1検出器と、第2検出器とを備える。第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む。第2検出器は、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む。第1検出器素子それぞれは、光電子増倍管を含み、第2検出器素子それぞれは、第1検出器素子とは異なる種類の光センサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、PET(Positron Emission Tomography)スキャナ(scanner)に関する。
【背景技術】
【0002】
医用イメージングの分野において、ポジトロン(Positron)放射断層撮影(以下、適宜「PET」)の利用が増えている。PETイメージングにおいて、放射性薬剤は、注入、吸入、又は経口摂取によって、画像化される被検体に投与される。放射性薬剤の投与後、物理的及び生体分子的な性質により、薬剤が人体内の特定部位に集中する。薬剤の実際の空間分布、薬剤の蓄積領域の濃度、及び投与から最終の排出までのプロセスの動態は、全て臨床的な重要性を持ち得る因子である。このプロセスにおいて、放射性薬剤に付着したポジトロン放射体は、半減期、分岐比などの同位元素の物理的な性質に応じてポジトロンを放射する。
【0003】
放射性核種はポジトロンを放射する。放射されたポジトロンが電子と衝突すると、消滅イベント(annihilation event)が発生し、ポジトロン及び電子は破壊される。多くの場合、消滅イベントは、略180度反対方向に511keVで飛翔する2つのガンマ線(gamma ray)を生成する。
【0004】
2つのガンマ線を検出し、これらの検出位置間に、直線、すなわちLOR(Line−Of−Response)を引くことによって、本来消滅したであろう位置を割り出すことができる。このプロセスは、相互作用(interaction)のあり得る線を識別するだけであるが、そのような線を多数蓄積することによって、断層撮影再構成プロセスを通して、本来の分布を推定できる。2つのシンチレーションイベント(scintillation event)の位置に加えて、正確なタイミング(数百ピコ秒以内の)を利用可能であれば、TOF(Time−Of−Flight)の計算によって、LORに沿ったイベントの推定位置に関する情報を更に加えることができる。PETスキャナの時間分解能の限界が、この線に沿った位置決めの精度を決定する。本来のシンチレーションイベントの位置を決定する際の限界が、PETスキャナの究極の空間分解能を決定する。一方で、同位元素の固有の特性(例えば、ポジトロンのエネルギー)もまた、(2つのガンマ線のポジトロン範囲及び共直線性によって)特定の薬剤の空間分解能の決定に寄与する。
【0005】
多数のイベントの収集によって、断層撮影再構成を通して推定される被検体の画像に必要な情報が創出される。対応する検出器素子においてほぼ同時に発生する2つの検出されたイベントは、投影位置又は再構成されるサイノグラム(sinogram)を画定するために、それらイベントの幾何学的特質に応じてヒストグラム化できるLORを形成する。イベントもまた、個々に画像に加えることができる。
【0006】
したがって、データ収集及び画像再構成の基本的要素は、LORである。LORは、システムと被検体との隙間(system-patient aperture)を横切る線である。イベントの位置に関して更なる情報を得ることができる。第1に、サンプリング及び再構成を通して、点を再構成又は位置付けるシステムの能力は、視野全体で空間不変ではなく、中央部で比較的良好であるが、周辺部に向かって徐々に低下していくことは周知である。この挙動を特徴付けるために、一般的に、PSF(Point−Spread−Function)を使用する。PSFを再構成プロセスに取り込むためにツールが開発されてきた。第2に、対になったガンマ線の検出に関与する各検出器のガンマ線の到着間の飛行時間又は時間差を使って、イベントが発生したであろう位置をLORに沿って決定できる。
【0007】
上記検出プロセスを多数の消滅イベントに対して繰り返さなければならない。イメージング症例ごとに解析して、イメージングタスクを支援するために何回のカウント(すなわち、対になったイベント)が必要になるかを決定しなければならないが、現在の慣例では、典型的な100cm長のフルオロデオキシグルコース(FDG(Fluoro−Deoxyglucose))の検査によって数億カウントは蓄積されるとされている。この数のカウントを蓄積するのに要する時間は、薬剤の注入量、スキャナの感度及びカウント性能によって決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,455,856号明細書
【特許文献2】米国特許第6,946,658号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、検出器を適切に配置することができるPETスキャナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るPETスキャナは、第1検出器と、第2検出器とを備える。前記第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む。前記第2検出器は、前記第1検出器に対向する第2角度の範囲に、前記円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む。前記第1検出器素子それぞれは、光電子増倍管を含み、前記第2検出器素子それぞれは、前記第1検出器素子とは異なる種類の光センサを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、従来のフルリングPETスキャナを示す図である。
【図2】図2は、一実施形態に係るPETスキャナの構造を示す図である。
【図3A】図3Aは、図2に示す実施形態の感度増大を示す図である。
【図3B】図3Bは、図2に示す実施形態の感度増大を示す図である。
【図3C】図3Cは、図2に示す実施形態の感度増大を示す図である。
【図4】図4は、ツーハーフスキャナの軸方向の感度を示す図である。
【図5】図5は、ツーハーフスキャナの他の実施形態を示す図である。
【図6】図6は、ツーハーフスキャナの他の実施形態を示す図である。
【図7】図7は、ツーハーフスキャナの他の実施形態を示す図である。
【図8】図8は、ツーハーフスキャナの他の実施形態を示す図である。
【図9】図9は、ツーハーフスキャナの他の実施形態を示す図である。
【図10A】図10Aは、平坦な上部スキャナが、スキャンされるべき対象部位に基づいて位置決めされる実施形態を示す図である。
【図10B】図10Bは、平坦な上部スキャナが、スキャンされるべき対象部位に基づいて位置決めされる実施形態を示す図である。
【図11】図11は、ツーハーフスキャナが組み込まれたPET/CT(Computed Tomography)システムの実施形態を示す図である。
【図12A】図12Aは、従来のPET/CTシステムの実施形態を示す図である。
【図12B】図12Bは、ツーハーフスキャナが組み込まれたPET/CTシステムの実施形態を示す図である。
【図12C】図12Cは、ツーハーフスキャナが組み込まれたPET/CTシステムの実施形態を示す図である。
【図13】図13は、実施形態に係るPET/CTシステムによって実行される制御方法のステップを示すフローチャートである。
【図14】図14は、一実施形態におけるPET/CTシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係るPETスキャナ、医用画像診断装置、及び制御方法を、同一又は対応する部に類似の参照番号を付した図面を参照しながら説明する。
【0013】
一実施形態に係るPETスキャナは、第1検出器部(以下、適宜「第1検出器」)と、第2検出器部(以下、適宜「第2検出器」)とを備える。第1検出器は、被検体を囲む円周に沿って設けられ、この円周の中心に対して第1角度の範囲に配置される。第2検出器は、この円周とは異なる曲率半径で設けられ、第1検出器に対向する第2角度の範囲に配置される。
【0014】
例えば、第1検出器は、被検体パレット(patient pallet、「寝台」などとも称する)の周囲に円周方向に設けられる。また、例えば、第1検出器は、軸方向(例えば、被検体の体軸方向)に一定の幅を有する。また、例えば、第1検出器の横断方向は、円周の中心(すなわち、この第1検出器によって確定されるPETスキャナの中心軸線)に対して、180度以上360度未満の角度の範囲である。また、例えば、第2検出器は、第1検出器と分離し、且つ第1検出器に対向して設けられる。また、例えば、第2検出器は、第1検出器の曲率半径より小さい曲率半径を有する。また、例えば、第2検出器の横断方向は、第1検出器によって確定されるPETスキャナの中心軸線に対して、180度未満の角度の範囲である。
【0015】
また、例えば、第2検出器は、第2角度の範囲として30度以上の範囲に配置される。また、例えば、第1検出器が配置される第1角度の範囲と、第2検出器が配置される第2角度の範囲との合計は、(実質的に)360度未満である。また、例えば、第1検出器が配置される第1角度の範囲と、第2検出器が配置される第2角度の範囲との合計は、(実質的に)360度以上でもよい。
【0016】
また、例えば、第2検出器は、第1検出器が設けられる円周に比較して、円周の中心との距離が近い位置に配置される。すなわち、第2検出器は、第1検出器に比較して、上記中心軸線により近接して設けられる。また、例えば、第2検出器は、第1検出器が設けられる円周と中心との距離に比較して、10%以上近い位置に配置される。すなわち、第2検出器は、第1検出器に比較して、第1検出器の半径の少なくとも10%分、中心軸線により近接して設けられる。
【0017】
また、例えば、第1検出器は、複数の第1検出器素子を含み、第2検出器は、複数の第2検出器素子を含み、第2検出器素子のそれぞれは、第1検出器素子に比較して小さい検出面(「表面領域」などとも称する)を有する。
【0018】
また、例えば、第2検出器は、平坦でもよい。
【0019】
また、例えば、PETスキャナは、第1検出器に対向する第2角度の範囲に配置される第3検出器を更に備えてもよい。例えば、第1検出器は、複数の第1検出器素子を含み、第2検出器は、平坦であり、且つ、複数の第2検出器素子を含み、第3検出器は、平坦であり、且つ、複数の第3検出器素子を含む。また、第2検出器素子及び第3検出器素子のそれぞれは、第1検出器素子に比較して小さい検出面を有する。
【0020】
また、例えば、第2検出器は、被検体が載置される寝台の下に接して配置されてもよい。すなわち、第2検出器は、寝台の下に接触するように設けられる。また、例えば、第2検出器は、被検体が載置される寝台の上方に配置されてもよい。また、例えば、第2検出器は、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動である。また、例えば、第1検出器及び第2検出器は、被検体を囲む円周方向に回転する。すなわち、第1検出器及び第2検出器は、寝台の周囲で、あらゆるアキシャルアングルで回転するように構成されてもよい。
【0021】
また、一実施形態に係るPETスキャナは、第1検出器と、第2検出器とを備える。第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む。第2検出器は、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む。
【0022】
ここで、例えば、第1検出器素子それぞれは、光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube)を含み、第2検出器素子それぞれは、第1検出器素子とは異なる種類の光センサを含む。例えば、第1検出器素子それぞれは、第1厚みと第1表面領域とを有するシンチレーション結晶を含む。例えば、第2検出器素子それぞれは、第1厚みとは異なる第2厚みを有するシンチレーション結晶を含む。また、例えば、第2検出器素子それぞれは、第1表面領域とは異なる第2表面領域を有するシンチレーション結晶を含む。また、例えば、第2検出器素子それぞれは、半導体(solid-state)光センサを含む。また、例えば、第2検出器素子それぞれは、シリコン光電子増倍管を含む。また、例えば、第2検出器素子それぞれは、APD(Avalanche Photodiode)を含む。
【0023】
すなわち、例えば、第1検出器素子それぞれは、光電子増倍管を含み、第2検出器素子のそれぞれは、第1検出器素子の光電子増倍管とは異なる種類の光センサを含む。例えば、第2検出器素子のそれぞれは、シリコン光電子増倍管や、半導体光センサ、あるいは、APDを含む。
【0024】
また、一実施形態に係るPETスキャナは、第1検出器と、第2検出器とを備える。第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む。第2検出器は、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む。第2検出器素子それぞれは、第1検出器素子とは異なる特性を有する。
【0025】
例えば、第2検出器素子それぞれは、時間分解能、エネルギー分解能、及び感度のうち、少なくとも1つが、第1検出器素子とは異なる。
【0026】
また、一実施形態に係るPETスキャナは、第1検出器と、第2検出器とを備える。第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置される。第2検出器は、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置される。また、第1検出器のエネルギーウィンドウと第2検出器のエネルギーウィンドウとは異なる。
【0027】
また、一実施形態に係る医用画像診断装置は、第1検出器と、第2検出器と、データ収集部とを備える。第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む。第2検出器は、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む。データ収集部は、第1検出器から第1イベントデータを収集し、第2検出器から第2イベントデータを収集し、第1イベントデータと第2イベントデータとを、イベントデータの処理を行うデータ処理部に送信する。例えば、データ処理部は、イベントデータの分析や再構成を行う。
【0028】
また、一実施形態に係る医用画像診断装置は、画像取得部と、制御部とを更に備える。画像取得部は、被検体の画像を取得する。例えば、画像取得部は、被検体に対してスキャンを行い、CT画像データを取得するCTスキャナを含む。制御部は、画像に基づき関心領域を特定し、特定した関心領域に基づき、第2検出器を円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に移動させる。例えば、制御部は、CT画像データから得られる投影データに基づき、関心領域の被検体の体軸方向の広がりを特定する。また、例えば、制御部は、CT画像データから得られる断面画像に基づき、関心領域の位置を特定する。そして、例えば、制御部は、特定した体軸方向の広がりに応じて被検体が載置される寝台を長手方向に移動させ、特定した位置に応じて第2検出器を円周方向及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に移動させる。
【0029】
また、例えば、制御部は、寝台及び第2検出器の移動後に、被検体に対してPETによるスキャンを行い、イベントデータを収集する。
【0030】
また、例えば、医用画像診断装置は、制御部からの制御信号に応じて寝台を移動する寝台移動機構を更に備える。また、例えば、医用画像診断装置は、制御部からの制御信号に応じて第2検出器を移動する検出器移動機構を更に備える。また、例えば、PET/CTシステムは、第3検出器を更に備えてもよい。第3検出器は、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、第1検出器素子とは異なる種類の複数の第3検出器素子を含む。この場合、データ収集部は、第3検出器から第3イベントデータを更に収集し、第1イベントデータと第2イベントデータと第3イベントデータとをデータ処理部に送信する。
【0031】
また、一実施形態に係る制御方法は、医用画像診断装置によって実行される制御方法である。制御方法は、第1検出器から第1イベントデータを収集し、第2検出器から第2イベントデータを収集し、第1イベントデータと第2イベントデータとをデータ処理部に送信する。第1検出器は、被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む。第2検出器は、第1イベントデータを収集し、第1検出器に対向する第2角度の範囲に、円周方向(若しくは円周の接線方向)及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む。データ処理部は、イベントデータの処理を行う。
【0032】
また、例えば、制御方法は、被検体の画像を取得し、取得した画像に基づき関心領域を特定し、特定した関心領域に基づき、第2検出器を円周方向及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に移動させる。
【0033】
また、一実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体に対してスキャンを行い、CT画像データを取得するCTスキャナを含む。また、制御方法は、被検体のCT画像データを取得し、取得したCT画像データから得られる投影データに基づき、関心領域の被検体の体軸方向の広がりを特定し、CT画像データから得られる断面画像に基づき、関心領域の位置を特定する。そして、制御方法は、特定した体軸方向の広がりに応じて被検体が載置される寝台を長手方向に移動させ、特定した位置に応じて第2検出器を円周方向及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に移動させる。
【0034】
図1は、従来のフルリング(full-ring)PETスキャナを示す図である。PETイメージングシステムは、被検体から放射されるガンマ線を検出するために、互いに対向する位置に配置された検出器を使用する。あらゆる角度から飛来するガンマ線を検出するために、一般的に検出器リングを使用する。したがって、PETスキャナは、できるだけ多くの放射線を収集できるように、一般的にほぼ円筒形状であり、当然のことながら、等方性である。欠けている角度を捕えるために部分リングを使用したり、検出器を回転させたりすることもまた可能であるが、これらの手法は、スキャナの全体的な感度に対して過酷な結果をもたらす。平面に含まれる全てのガンマ線が検出器と相互に作用する機会を有する円筒形の形状では、軸線方向の寸法を増加させることは、放射線を捕獲する感度すなわち能力に非常に有利な影響をもたらす。したがって、最高の構造は、全てのガンマ線が検出される機会を有する球体構造である。もちろん、人間に適用するためには、球面構造は、非常に大きくしなければならなので、非常に高価になる。したがって、円筒形の形状は、検出器の軸線領域が可変であることから、現代のPETスキャナの構造の現実的な出発点である。
【0035】
PETスキャナの全体的な形状が明らかになると、次の課題は、できるだけ多くのシンチレーション材料をガンマ線経路内に配置して、できるだけ多くのガンマ線を光に変換することである。必要なことは、このプロセスにおいて最適化の2つの重要性を考慮することである。一方では、「面内(in-plane)」感度には、検出器の円周の周りにできるだけ多くの結晶(結晶の厚み)が必要になる。他方では、所与の結晶の厚みに対して、検出器シリンダーの軸線長が、総システム感度を決定する。その感度は、軸線長の二乗(シリンダーの中央の点によって範囲が定まる立体角)にほぼ比例する。実際的なコストの検討が、不可避的に最適化プロセスの一部となる。結晶及び関連するセンサの最適分布は、全システムコストの中核を成す。それは、一般的にPETイメージングシステムの全コストの最高3分の2に相当する。
【0036】
従来、円筒形の形状は、PETスキャナのために選択する構造である。図1に示すように、円筒形の形状は、横断面で全てのイベントを捕えることができる。検出器の軸線方向範囲によって、どれだけ多くのそのような平面を定義できるか、並びにどれだけ多くの傾斜平面を利用できるかが決まる。
【0037】
図1に示すように、PETスキャナは、検出器素子を表す一連の小さなブロックによって形成される。単純にするために、2、3ダースの検出器素子だけを示す。実際は、形状を適切に抽出するために数百ピクセルが必要である。軸線方向についても同じことが言える。検出器素子は、一般的に両方向とも同じ所定の大きさであるが、両方の寸法が異なる大きさであってもよい。被検体が、スキャナ被検体パレット(寝台)に載っている場合、被検体の横断面は、胸部、肺、心臓、及び脊椎を示す。更に、図1は、「心臓」から円周方向及び軸線方向の両方に発し、PETスキャナ上の幾多の点で収集されるポジトロン消滅イベントを表す2、3の推定されるLORを示す。
【0038】
PETスキャナの全体的な寸法は、全人体を網羅するように、一般的に、直径70cmから90cmまで多様である。軸方向の寸法は、もっと変更できる。従来のPETスキャナには、少なくとも15cmの軸方向の有効範囲(少なくとも心臓を網羅する)があるが、より大きな規模が可能でありかつ望ましい。
【0039】
更に、現在の臨床診療では、被検体をおおよそPETスキャナの中央に置く。被検体が、一般的にPETスキャナ直径の50%以下を占めるとすると、被検体を中心よりわずかに低く置くことも望ましく、PETスキャナ開口部内に被検体のためのより広い「呼吸」空間を設けられる。
【0040】
それでも、PETスキャナの目標は、アキシャル面及び横断面の両方で、被検者からできるだけ多くのLORを収集することである。
【0041】
従来の構造は、ポジトロン消滅イベントの収集に効率的な形状を提供する一方で、PETスキャナを製造するための厳格な規則も定めている。したがって、そのコストを抑えるための選択肢はほとんど提供されていない。
【0042】
PETスキャナの軸方向範囲を増やす試みは提案されてきたが、横断面での完全な抽出に対する規則は変更されてこなかった。
【0043】
検出器素子の非常に高い相対的コストが与えられるならば、PETスキャナ開口部(すなわち、より大きな直径)又はその軸方向範囲を増やすあらゆる試みに著しいコスト増加が必要となる。85cm又はそれ以上であることが必要な治療用位置決め(固定化)ツール(放射線治療ユニットに合致)を収容し、更に、いまだに多くの被検体が経験する閉所恐怖的なストレスを低減して被検体の快適性を改善するために、PETスキャナの直径を大きくすることが望ましい。感度(収集されるイベントの数)を上げるため、また、より大きな器官又は身体部分を網羅するために、PETスキャナの軸方向範囲を延ばすことが望ましい。例えば、肺全体は、一般的に最高25〜30cmにわたり、頭部及び首部は、少なくとも30cmを必要とする。
【0044】
したがって、PETスキャナ設計者が直面している現実的課題は、PETスキャナの主たるコストを表す検出器材料の量が一定である場合、どのような形状にすればイベントカウントの数を最適化すると同時に、再構成のための適切な抽出を実現できるかということである。
【0045】
その上、従来の設計では、被検体の特定器官又は対象部位をスキャンするPETスキャナを変更又は最適化する方法が提供されず、最適化されるべき被検体又は被検体の部位に関係なく、全ての画像が同一の方法で取得される。
【0046】
図2は、一実施形態に係るPETスキャナの構造を示す図である。図2に示すように、一実施形態に係るPETスキャナは、ポジトロン消滅イベントの収集を最適化するために新しい形状を有する。具体的には、一実施形態に係るPETスキャナは、図2に示すように、分割された2つの検出器、すなわち、第1検出器10と第2検出器20とを備え、図2においては図示を省略しているが、その他、制御回路や支持物などを適宜含む構造物である。第1検出器10は、被検体Pを囲む円周のうち概ね上半分の範囲をカバーするように配置され、第2検出器20は、第1検出器10に対向し、概ね下半分の範囲をカバーするように配置される。一実施形態に係るPETスキャナは、いわばツーハーフスキャナ(two-half scanner)である。ここで、図2に示すように、PETスキャナの下半分(第2検出器20)は、被検体Pの寸法に合わせるために縮小されている。言い換えると、第2検出器20は、第1検出器10の曲率半径より小さい曲率半径を有する。一般に、被検体Pの寸法は、PETスキャナの直径(例えば、図2において第1検出器10の直径)の略半分である。図1に示す従来の構造と比較すると、被検体パレットaの下の空間は無用の空間であり、被検体Pの快適性にも役立っていない。
【0047】
なお、図2に示すように、図1に示す従来の構造で収集されたであろうLORは、全て依然としてPETスキャナのより小さな下半分(第2検出器20)によって収集される。更に、検出器リングの上半分(第1検出器10)と、第1検出器10及び第2検出器20の隙間とを通るLORは、被検体Pを横切らないので、被検体Pのスキャンにおいて収集される必要はない。第2に、直径の減少に比例してより小さくなる比較的小さな検出器素子を第2検出器20に用いることによって、第1検出器10と第2検出器20との間には、推測されるLORが同数存在する。注目点としては、新しいツーハーフスキャナは、従来のフルリングスキャナと同じ横断方向の感度と同じ抽出能力とを有し、その一方で、検出器のコストを最高20〜25%の節約を実現する点である。その上、ツーハーフスキャナの底の部分は、被検体Pに近接している。したがって、軸方向の立体角(3D)の増加、そして、性能の改善や結晶の厚みの量の低減に有益となる感度の増加、そして、更なるコストの節約が実現する。
【0048】
図3A〜3Cは、図2に示す実施形態の感度増大を示す図である。なお、図3A〜3C及び以下において、第1検出器10の一部を「第1検出器10´」と表現し、第2検出器20の一部を「第2検出器20´」と表現することがある。本実施形態の感度の増加は、図3A〜3Cについてアキシャル面を観察することによって明白となる。PETスキャナ(第1検出器10´及び第2検出器20´)の中央の点光源は、従来のリングに比較してより多くの同時発生イベントを生成することはない(図3Aにおいて正方形パターン部分で示した)。その理由は、その点光源からの更なるLORは、上部検出器(第1検出器10´)の範囲から外れるので、そのような更なるLORを引くために、より近い検出器(第2検出器20´)からの更なる立体角を使用できないからである(図3Aにおいて水平線パターンで示した)。しかし、他の放射点については、図3B及び図3Cの垂直線パターン部分に示すように、感度は、かなり増加する可能性がある。しかし、「ボリューム感度」の正確な計算には、より複雑なモデルツールが必要である。
【0049】
図4は、ツーハーフスキャナの軸方向の感度を示す図である。取得されたカウントの分布はまた、図2に示すツーハーフスキャナによって明らかに影響を受ける。従来の中央リング形状では、線源の軸方向の感度特性は、三角形である。これは、PETスキャナの軸方向の中心からFOV(Field Of View)の端部の方へ行くにつれて、図4の左側に示すように、同時発生イベントをつくる機会がだんだん少なくなるということを表している。全システム感度が、FOVの端部でゼロになるという事実は、再構成に問題を引き起こし、特に、一定の統計的特性を阻む。
【0050】
図4の右側に示した極端なケースでは、線、及び、光源と下部検出器(第2検出器20´)との間のゼロ距離によって、下方に進むガンマ線は、全て検出される。したがって、全システム感度は、単に上部検出器(第1検出器10´)の立体角であり、アキシャルFOVの中央にわずかな隆起だけを示す。中間の場合は、三角形形状からほとんど平坦な分布の方へ漸進的にそれていくと考えられる。
【0051】
更に、一定の数の推定されるLORは、適切な断層撮影の再構成を保証する。更に、より小さな検出器素子は、より小さな(すなわち、より良好な)最終の空間的分解能に対応する。空間的分解能は、「応答チューブ(tube of response)」、すなわち、2つの検出器素子の表面に隣接する容積(2つの検出器素子の中心に隣接する無次元の線とは対照的に)に多少比例している反復再構成を伴うモデルに基づいている。更に、より良好な空間的分解能を利用すれば、イメージング性能を改善できる。又は、より良好な空間的分解能を利用すれば、より少なく、より大きな結晶素子を用いることで、PETスキャナの上下両部品として、わずかに大きな検出器素子を利用できる。
【0052】
図5〜9は、ツーハーフスキャナの他の実施形態を示す図である。他の実施形態においては、図5に示すように、ツーハーフスキャナの分割比率は、必ずしも等しくない。例えば、第1検出器10は、第1検出器10の円周の中心に対して、180度以上360度未満の広い範囲の角度をカバーするように配置される。一方、第2検出器20は、180度未満の角度をカバーするように配置される。この場合、第2検出器20は、被検体の幅や被検体パレットの幅などに鑑みて、例えば30度以上の範囲をカバーするように配置されるのが望ましい。このように、被検体パレットの周りにより大きな開口部を提供するために、異なる比率を実施することもできる。図6に示すように、LORは、この新しい形状によっても、やはり全て捕獲される。所与のツーハーフ構造による「節約」量の効果は、上記方法で推定できる。
【0053】
ここで、図5に示すように、例えば、第2検出器20は、第1検出器10に比較して、被検体パレットにより近い位置に配置される。また、例えば、第2検出器20は、第1検出器10が設けられる円周と中心との距離に比較して、10%以上近い位置に配置される。すなわち、第2検出器は、第1検出器に比較して、第1検出器の半径の少なくとも10%分、中心軸線により近接して設けられる。
【0054】
別の実施形態において、より小さなリング部分(第2検出器20)は、図6において、湾曲したパレット(左側)や平坦なパレット(右側)として示すように、被検体パレットに接触でき、より一層高い感度/幾何学的な増加を提供できる。これらのパレットは両方とも、PETイメージング、特に、放射線療法で一般的に使用されるものである。
【0055】
2つの部分に分割されたリングが上下対称形である場合、上述した実施形態においては、より小さな第2検出器20が下半分の範囲をカバーし、被検体パレットに近接して配置された。これに対し、図7の左側に示すように、より小さな第2検出器20が上半分の範囲をカバーするように配置される場合、若干のLOR(例えば、図7に示す5本のLORのうち、最も右側の1本のLOR)は、形状によって捕獲されない。したがって、図7の右側に示すように、より小さな第2検出器20を上部に置く場合、ツーハーフの垂直位置には制約がある。
【0056】
図7の右側は、技術的には許容できる形状を示しているが、実際には、より小さな上部部分(第2検出器20)を下降させ(又は被検体パレットを同等に上昇させ)被検体に近付けることは、被検体に対して不快な状況を作り出すことになるであろう。それは特に、図7が検出器システムの残りの部分(光電子増倍管、電子機器回路、支持物、ケーブル、その他)を省略して検出器素子のみを示していることを認識すると明らかである。
【0057】
しかし、他の実施形態では、上部により小さな部分を有することは可能である。まず、検出器は、シリコン光電子倍増管(SiPM(Silicon Photomultiplier)又はアバランシェフォトダイオード(APD(Avalanche Photodiode))などの半導体センサで構成できる。そのようなセンサを用いれば、検出器の小型化によって目立たない大きさの検出器の使用が可能になるであろう。第2には、半導体ベースの検出器は、(リングの残部と異なり)可動であり、被検体Pをまず位置決めしてから、上部の検出器をイメージング位置に持ってくることが可能になる。第3には、リングの上部分は、実際、複数の部品に更に区分けでき、位置決めを容易にでき、イメージングしないときは格納できる。最後に、図7に示す実施形態に類似して、図8に示すように、検出器素子のいくつかを、1つ又は複数の平坦な線形部分に配置できる。
【0058】
例えば、図8に示すように、PETスキャナは、第1検出器10と、第2検出器20と、第3検出器30とを備えてもよい。第1検出器10は、円周に沿って設けられ、下半分の範囲をカバーするように配置される。また、第1検出器10は、被検体パレットに近接するように配置される。一方、第2検出器20及び第3検出器30は、平坦であり、上半分の範囲をカバーするように配置される。また、第2検出器20及び第3検出器30も、被検体パレットに近接するように配置されるが、上述したように、例えば半導体ベースの検出器を用いれば、検出器を小型化することができる。なお、「半分」とは、必ずしも180度の厳密な範囲を意味するものではない。他の実施形態においても同様である。
【0059】
また、注目すべき点は、上/下反転対称性を含む上記ツーパートスキャナの幾多の実施形態は、回転に関しては一様である点である。実際には、心臓、又は右(又は左)胸部などの局部イメージングを除いて、一般に、水平軸線の周りでは、対称性の他に(上/下分割及び反転)何も選択する理由はない。これらの場合、対象部位又は器官の近くでより良い空間的分解能の検出器を入手できれば、活用できる。
【0060】
上記PETスキャナの実施形態のそれぞれにおいては、実質的に(全く同じではないにしても)フルリング形状と同じ時間内に同じ画像が生成されるが、その結果、検出のための材料は20%〜50%の低減となる。そのような低減は、同じコストでシステム性能を改善する、又は同じイメージング性能に対してコストを下げるために重要なものである。
【0061】
注目点としては、上記ツーパート形状のそれぞれで、LORは、より大きな入射角(入射面に対して直角をなさない)でより小さな部分の検出器素子に入るので、更なる視差誤差によってより高い空間的不鮮明さをつくるという点がある。しかし、より高い視差誤差は、少なくとも部分的に、被検体に対してより小さなリング部分によって形成される非常に高い立体角のせいで結晶の厚みの低減によって補償される可能性があろう。
【0062】
同じ原理を用いてPETイメージングを最適化できるが、一方で、完全な抽出からの若干の逸脱が認められる。TOF情報は、若干の対象部位の準完全なイメージング状態及び再構成に対応する十分な「局部」特性を提供できるが、その一方で、イメージングは、部位から離れる方向に漸進的に劣化することになる。図10A及び10Bは、平坦な上部スキャナが、スキャンされるべき関心領域(region of interest、又は、対象部位)に基づいて位置決めされる実施形態を示す図である。例えば、いくつかの重要なイメージング作業、例えば、心臓又は胸部イメージングは、図10A及び図10Bに示すように、身体の比較的小さな部位から集まる情報に明らかに集中する。
【0063】
図10Aは、例示のように位置決めされた2つの平坦な上部検出器(第2検出器20及び第3検出器30)により、心臓が、ほとんど完全な角度抽出を受け入れ、最適又は準最適な再構成のための充分な情報を提供することを示す図である。図10Bに示すように、身体の対称的に反対側に位置する点は、著しく少ないLORしか受けず、この形状ではこの点にとって、右側の検出器(第3検出器30)は完全に無用であり、下の検出器(第1検出器10)の小さな部分しか使われ得ないことを示している。しかし、TOFイメージングは、本質的に2つの部位のより良い隔離を可能にする。更に、そのようなPETスキャナは、複合型PET/CTシステム又はPET/MR(Magnetic Resonance)システムの一部であるとき、CT又はMRの画像は、対象の部位又は器官の識別と、PET検出器の位置決めの最適化とに使用できる。
【0064】
別の実施形態では、1種類の検出器だけにTOFの能力がある。まず、注目点としては、不完全な抽出の場合、再構成のための十分な時間情報を得て、その付加的情報から利益を得るために、両方の検出器が明らかに必要である点である。しかし、完全な抽出の場合、大部分のイベントは、混交した検出器から来ることが分かる。
【0065】
例えば、有用なTOF情報を得るための最小限の総時間分解能を1nsであると想定する(商用システムは、現在、500〜600psを達成している)。システムが、2種類の検出器構造、すなわち、(1)300psの時間分解能の能力があるタイプAの検出器(検出器Aを、完全な、又は少なくとも極めて速い検出器とみなして測定した場合)と、(2)2ns(2000ps)の能力しかないタイプBの検出器とで構成されている場合、タイプAの検出器だけで構築されたシステムは、SQRT(300+300)又はおよそ425psの総システム時間分解能(古典的な二次組成を使って)を有するであろう。タイプBの検出器だけで構築されたシステムは、SQRT(2000+2000)又は2.8ns又は2,800psの総システム時間分解能を有するであろう。しかし、大部分のイベントがタイプA及びタイプBの複合型であるシステムは、実質的にタイプBの検出器によって2nsで制御され、前置の検出器電子機器回路及び画像品質に有用な利点を提供する。
【0066】
異なるタイプの検出器を使う場合、大部分の性能は、同じ二次組成に従う。しかし、エネルギー分解能の場合では、2つのタイプの違いが十分に大きい場合、異なる処理(例えば、受入ウィンドウ)を、異なる取得チェーンに適用しなければならないだろう。エネルギーウィンドウ調整は、2つのタイプの検出器の感度を調節する際の重要な要因である。それぞれの検出器の固有の挙動に合致するエネルギーウィンドウもまた、両方の検出器からの散乱受け入れが均衡していることを確認するために必要である。すなわち、第1検出器10のエネルギーウィンドウと第2検出器20のエネルギーウィンドウとは異なる場合がある。
【0067】
最後に、当業者には自明であるが、システム上で典型的なキャリブレーション作業を実行するためには、重要な修正が必要となるであろう。タイミング及びエネルギー分解能、並びにシステム正規化は、より複雑になるであろう。
【0068】
上述の実施形態によると、PETスキャナは、被検体パレットの周囲で円周方向に設けられた第1検出器と、第1検出器から切り離され、且つ対向して設けられた第2検出器とを含む。第1検出器は、複数の第1検出器素子を含むが、更に第2検出器部は、複数の第2検出器素子を含む。上で検討したように、第2検出器素子は、第1検出器素子とは異なる種類(type)のものであってもよい。
【0069】
例えば、一実施形態では、第1検出器素子のそれぞれは、光電子増倍管と、第1厚み及び第1画素表面領域(pixel surface area)を有するシンチレーション結晶とを含むが、その一方で、第2検出器素子のそれぞれは、第1厚みと異なる第2厚みと、第1画素表面領域と異なる第2画素表面領域とを有するシンチレーション結晶を有する。
【0070】
更に、一実施形態では、第2検出器素子のそれぞれは、第1検出器素子の光電子増倍管と異なる光センサを含む。例えば、一実施形態では、第2検出器素子のそれぞれは、シリコン光電子増倍管などの半導体光センサを含む。
【0071】
更に、第2検出器は、第1検出器とは異なるイメージング特性を有するように構成されるものである。例えば、一実施形態では、第1検出器及び第2検出器は、異なるエネルギー及び時間分解能を有する。更に、別の実施形態では、第1検出器のためのエネルギーウィンドウ(event acceptance window)は、第2検出器のためのエネルギーウィンドウとは異なる。
【0072】
(PET/CTシステム)
次に、実施形態に係る医用画像診断装置の一例として、PET/CTシステムを説明する。図11、図12B及び12Cは、ツーハーフスキャナが組み込まれたPET/CTシステムの実施形態を示す図である。上述したツーハーフ形状(two-half geometries)は、いくつかの方法によって既存のCTシステムに組み込むことができる。ある実施形態においては、図11に示すように、より小型、可動、半導体検出器を被検体パレットの上部に設け、既存のCTシステムの増設機器として一体型PET/CT装置を形成できる。上で検討したように、2台の上部検出器は可動であり、例えば、神経学的スキャン又は心血管スキャンの用途で、被検体の周りの、画像化される被検体の対象部位(「関心領域(region of interest)」とも称する)に依存する位置に配置できる。
【0073】
大口径PETシステムを造ることは、高価であるが、上記検出器形状によれば、新しい大口径システムを造ることができ、更に許容できる費用構成を維持できる。特に、同じ量の検出器材料が、様々に、かつ、より効率的に配分される。
【0074】
例えば、図12Aは、従来の手法を示す図であり、図12Bは、上の部分(第1検出器10)が、より大きな直径を有するリングの半分である一方、下の部分(第2検出器20)が、縮小された直径を有する実施形態を示す図である。図12Cに示す他の実施形態では、下部の検出器部分は平坦(第2検出器20)である。
【0075】
上述した実施形態においては、実質的に(全くではないにしても)フルリング形状と同じ時間内に同じ画像を生成するが、その結果、検出器材料の20%〜50%が削減される。この増大した効率を使用すれば、同じコストでシステム性能を向上させることか、同じイメージング性能に対してコストを削減することが可能になる。
【0076】
図13は、実施形態に係るPET/CTシステムによって実行される制御方法のステップを示すフローチャートである。すなわち、図13は、一実施形態において、CTスキャナとPETスキャナとを用いて、被検体パレット上に設けられた被検体のイメージングデータを取得する方法を示す図である。CTスキャナは、被検体をスキャンするように構成される。PETスキャナは、被検体パレットの周りで円周方向に設けられた第1検出器であって、所定の軸方向範囲を有し、スキャナの中心軸線に対して360度を下回る範囲を横断方向に定める第1検出器と、第1検出器から切り離され、且つ対向して設けられた第2検出器とを含む。ここで、第2検出器は、被検体の周りで半径方向及び円周方向に移動できるように構成される。
【0077】
ステップS1301では、PET/CTシステム1400の画像取得部(例えば、後述するCT装置1406)が、被検体のCT画像データを、CTスキャナを制御して取得する。あるいは、画像取得部は、前回取得されたCT画像データを記憶部(例えば、後述する記憶部1410)から取り出してもよい。
【0078】
ステップS1302では、制御部(例えば、後述するコントローラ1407)が、関心領域(例えば、被検体の心臓、胸部、又は他の器官など)の軸方向の広がりを、取得されたCT画像データから得られた投影画像に基づいて特定する。例えば、制御部は、サジタル又はコロナルのCT画像を使って、関心領域の軸方向(例えば、被検体の体軸方向)の範囲を特定する。
【0079】
ステップS1303では、制御部(例えば、後述するコントローラ1407)が、関心領域の位置(例えば、中心のxy座標)を、取得されたCT画像データから得られた横断CT画像に基づいて特定する。
【0080】
注目点としては、ステップS1302及び1303を、操作者が手動で実行できること、又はデータ処理部上で動作する画像処理ソフトウェアによって自動的に実行できることである。
【0081】
ステップS1304では、制御部(例えば、後述するコントローラ1407)が、ステップS1302において特定された関心領域の軸方向の広がりと、被検体パレット上の被検体の現在位置とに基づいて、被検体パレットを、長手方向に自動的に位置決めする。例えば、制御部は、関心領域の軸方向の中心が、検出器の軸方向の中心あたりに位置付けられるように、被検体パレットを、長手方向に自動的に位置決めする。そして、以下で検討するように、コントローラ1407が、命令(制御信号)を寝台移動機構(機械サブシステムであるパレット及びパレット位置決め部1402)に送信し、寝台移動機構が、被検体パレットを長手方向に移動させて、PETスキャンによる関心領域の良好な画像化を行うことができる。
【0082】
ステップS1305では、制御部(例えば、後述するコントローラ1407)が、ステップS1303において特定された関心領域の位置に基づいて、第2検出器20及び第3検出器30を、自動的に半径方向及び円周方向のうちの少なくとも一方に移動させる。そして、コントローラ1407が、命令(制御信号)を検出器移動機構(後述するPET検出器位置決め部1403)に送信し、検出器移動機構が、第2検出器20及び第3検出器30を移動させる。図9及び図10Aを参照。例えば、図9に示す例の場合、制御部は、第2検出器20及び第3検出器30を、被検体Pに近付くように半径方向に移動させるとともに、関心領域である心臓の部位に近付くように円周方向(又は、円周の接線方向)に沿って右側に移動させる。また、制御部は、第1検出器10についても、図9に示すように、円周方向に回転移動させてもよい。この場合、制御部は、例えば、第1検出器10と、移動後の第2検出器20及び第3検出器30とが対向するように、第1検出器10を円周方向に回転移動させればよい。どの器官をPETスキャンによって画像化するか、すなわち、関心領域の位置によって、制御部は、第2及び第3の検出器部の両方又は一方の再位置決めを行う。
【0083】
ステップS1306では、被検体パレットが長手方向に位置決めされ、第2検出器20及び第3検出器30が半径方向及び円周方向のうちの少なくとも一方に移動された後、データ収集部(例えば、後述するデータ取得システム1404)が、被検体のPETスキャンを実行して、第1検出器10から第1イベントデータ、第2検出器20から第2イベントデータ、及び第3検出器部30から第3イベントデータの全て又はいずれかを取得する。
【0084】
ステップS1307では、データ収処理部(例えば、後述するデータ処理部1405)が、被検体の対象部位のPET画像を、取得された第1、第2、及び第3イベントデータの全て又はいずれかに基づいて再構成する。
【0085】
図14は、一実施形態におけるPET/CTシステム1400の構成を示す図である。PET/CTシステム1400は、CT装置1406と、PET検出器装置1401とを備える。
【0086】
PET検出器装置1401は、例えば、図11、図12B、及び図12Cに示す検出器アレイを含む。更に、PET/CTシステム1400は、パレット位置決め部(寝台移動機構)を含む可動被検体パレット1402を含む。可動被検体パレット1402は、例えば、コントローラ1407から受信した命令(制御信号)に基づいて、PET検出器装置1401及びCT装置1406の内部に被検体パレットを位置決めするように構成される。
【0087】
コントローラ1407は、パレット位置決め部1402による被検体パレットの位置制御を含むPET/CTシステム1406の全機能を制御する。パレット位置決め部1402は、被検体パレットを少なくとも長手方向に移動させるように構成された機構を含む。
【0088】
コントローラ1407はまた、パレット上の被検体の周りで1つ又は複数のPET検出器部を位置決めするPET検出器位置決め部1403も制御する。例えば、図11に示すように、PET検出器位置決め部1403は、画像化される被検体の関心領域に基づいて、被検体の周りで円周方向及び半径方向の両方向に1つ又は複数の「上部」検出器アレイを移動させるように構成された機構を含む。
【0089】
上述した図13のフローチャートに示すように、コントローラ1407は、命令(制御信号)をパレット位置決め部1402及びPET検出器位置決め部1403へ送信し、被検体のCTスキャンから得られた位置決め情報と、パレット及び検出器の現在位置とに基づいて、PETスキャンより先に、パレットと検出器とを位置決めする。
【0090】
データ取得システム1404は、PETスキャンの間にPET検出器装置1401からPETイベントデータを得て、イベントデータをデータ処理部1405に送信して、PET画像の再構成を行う。データ取得システム1404は、データ処理部1405による処理より先に、PETイベントデータを記憶ユニット1410に格納もできる。
【0091】
操作者インタフェース部1408は、例えば、CTスキャン又はPETスキャンを開始する、又はCT画像上に関心領域を設定する操作者命令の受信、及びスキャンに関連するパラメータの受信の両方又は一方を行うように構成される。被検者のPET画像及びCT画像、並びにスキャンに関連する動作パラメータは、表示部1409に表示される。
【0092】
当業者には自明であるが、コントローラ1407及びデータ処理部1405は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又は他のCPLD(Complex Programmable Logic Device)のような不連続論理ゲートとして実装可能であるCPU(Central Processing Unit)を含むことができる。FPGA又はCPLDの実装は、VHDL(Very High Speed Integrated Circuit Hardware Description Language)、Verilog、又は他の任意のハードウェア記述言語にコード化してもよく、コードはFPGA又はCPLD内で電子メモリに直接格納してもよい、又は、別個の電子メモリとして格納してもよい。更に、記憶部1410は、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read−Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、又はフラッシュメモリなどの不揮発性であってもよい。また、記憶部1410は、スタティックRAM(Random−Access Memory)又はダイナミックラムなどの揮発性であってもよい。マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサなどのプロセッサを設けて、電子メモリや、FPGA又はCPLDと記憶ユニットとの間の相互作用を管理するとよい。
【0093】
あるいは、コントローラ1407又はデータ処理部1405内のCPUは、本明細書に記載の機能を実行する一組のコンピュータ可読命令を含むコンピュータープログラムを実行できる。ここで、プログラムは、任意の上記の非一過性電子メモリ及びハードディスク装置、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュドライブ(FLASH drive)又は他の任意の既知の記憶媒体の両方又は一方に格納されるものである。更に、コンピュータ可読命令を、アメリカのインテル社のキセノンプロセッサ(登録商標)、又はアメリカのAMD社(Advanced Micro Devices,Inc.)のオプテロンプロセッサ(登録商標)などのプロセッサ、及びマイクロソフトVISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple(登録商標)、MAC−OS(登録商標)などのオペレーティングシステム、及び当業者には周知の他のオペレーティングシステムとともに動作する実用向けアプリケーション、バックグラウンドデーモン、又はオペレーティングシステムの構成素子、又はそれらの組合せとして準備してもよい。
【0094】
一旦データ処理部1405で処理されたならば、処理された信号は、記憶部1410への格納、及び表示部1409での表示の両方又は一方が行われる。当業者には自明であるが、記憶部1410は、ハードディスク装置、CD−ROM装置、DVD装置、フラッシュ(FLASH)装置、RAM、ROM、又は当業界で周知の他の任意の電子格納装置であってよい。表示ユニット1409は、LCD(Liquid Crystal Display)表示装置、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置、プラズマ表示装置、有機発光ダイオード(OLED(Organic Light Emitting Diode))、発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))、又は当業界で周知の任意の他の表示装置として実装してよい。そのように、本明細書に提供した記憶部1410及び表示部1409の記載は、単なる具体例であり、本提案の範囲を限定するものではない。
【0095】
なお、上述した実施形態は、PET/CTシステムに限られず、PET装置とMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置との複合であるPET/MRシステムにも同様に適用することができる。この場合、制御部は、収集した磁気共鳴信号から再構成されたMR画像データに基づき、関心領域の被検体の体軸方向の広がりを特定すればよい。また、例えば、制御部は、同じくMR画像データに基づき、関心領域の位置を特定すればよい。そして、例えば、制御部は、特定した体軸方向の広がりに応じて被検体が載置される寝台を長手方向に移動させ、特定した位置に応じて検出器を円周方向及び円周の半径方向のうち少なくとも一方向に移動させればよい。なお、例えば、撮像に先行してシステムに入力される撮像条件などから対象部位が明らかになる場合、制御部は、画像からではなく、入力された撮像条件に基づいて、寝台や検出器を移動制御してもよい。
【0096】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のPETスキャナによれば、検出器を適切に配置することができる。
【0097】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1400 PET/CTシステム
1401 PET検出器装置
1402 パレット及びパレット位置決め部
1403 PET検出器位置決め部
1404 データ取得システム
1405 データ処理部
1406 CT装置
1407 コントローラ
1408 操作者インタフェース部
1409 表示部
1410 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器と、
前記第1検出器に対向する第2角度の範囲に、前記円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器とを備え、
前記第1検出器素子それぞれは、光電子増倍管を含み、
前記第2検出器素子それぞれは、前記第1検出器素子とは異なる種類の光センサを含む、PET(Positron Emission Tomography)スキャナ。
【請求項2】
前記第1検出器素子それぞれは、第1厚みと第1表面領域とを有するシンチレーション結晶を含む、請求項1に記載のPETスキャナ。
【請求項3】
前記第2検出器素子それぞれは、前記第1厚みとは異なる第2厚みを有するシンチレーション結晶を含む、請求項2に記載のPETスキャナ。
【請求項4】
前記第2検出器素子それぞれは、前記第1表面領域とは異なる第2表面領域を有するシンチレーション結晶を含む、請求項2に記載のPETスキャナ。
【請求項5】
前記第2検出器素子それぞれは、半導体光センサを含む、請求項1に記載のPETスキャナ。
【請求項6】
前記第2検出器素子それぞれは、シリコン光電子増倍管を含む、請求項1に記載のPETスキャナ。
【請求項7】
前記第2検出器素子それぞれは、APD(Avalanche Photodiode)を含む、請求項1に記載のPETスキャナ。
【請求項8】
被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置され、複数の第1検出器素子を含む第1検出器と、
前記第1検出器に対向する第2角度の範囲に、前記円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置され、前記第1検出器素子とは異なる種類の複数の第2検出器素子を含む第2検出器とを備え、
前記第2検出器素子それぞれは、前記第1検出器素子とは異なる特性を有する、PETスキャナ。
【請求項9】
前記第2検出器素子それぞれは、時間分解能、エネルギー分解能、及び感度のうち、少なくとも1つが、前記第1検出器素子とは異なる、請求項8に記載のPETスキャナ。
【請求項10】
被検体を囲む円周の中心に対して第1角度の範囲に配置される第1検出器と、
前記第1検出器に対向する第2角度の範囲に、前記円周方向及び前記円周の半径方向のうち少なくとも一方向に可動に配置される第2検出器とを備え、
前記第1検出器のエネルギーウィンドウと前記第2検出器のエネルギーウィンドウとは異なる、PETスキャナ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−225928(P2012−225928A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97129(P2012−97129)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】