PIDパラメータ調整支援装置および方法
【課題】ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減する。
【解決手段】PIDパラメータ調整支援装置は、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整部20と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整部21と、知識型調整部20と分析型調整部21とによるPIDパラメータの推奨値を提示する調整情報提示部3とを備える。
【解決手段】PIDパラメータ調整支援装置は、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整部20と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整部21と、知識型調整部20と分析型調整部21とによるPIDパラメータの推奨値を提示する調整情報提示部3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PIDコントローラのPIDパラメータの調整を支援するPIDパラメータ調整支援装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PIDパラメータ調整支援ツールを利用してPIDコントローラのPIDパラメータを調整する場合、単一の調整手法あるいは単一の調整理論背景に基づく調整バリエーションに基づいて推奨PIDパラメータがセットで求められ、表示される(特許文献1参照)。
このようなPIDパラメータ調整支援ツールでは、予め定められた単一の調整手法、あるいは調整支援ツールやユーザによって選択された単一の調整手法に基づいてPIDパラメータがセットで求められる。調整手法としては、Ziegler−Nichols法やCHR(Chien,Hrones,Reswick)法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−116515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PIDパラメータ調整支援ツールなどで利用されているパラメータ算出機能では、多くの場合にZN法やCHR法のような知識型の調整手法が採用され、これら調整手法のバリエーションの中でPIDパラメータを選択できるようになっている。
【0005】
しかしながら、これらの調整手法のバリエーションは、オーバーシュート量の規定などの違いに対応するバリエーションに過ぎず、理論的な背景は類似しているもの、すなわち単一の調整理論背景に基づくものなので、制御対象の特性の都合が原因で想定通りのパラメータ調整ができなかった場合には、あらゆる選択肢について想定通りの調整ができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減することができるPIDパラメータ調整支援装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPIDパラメータ調整支援装置は、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整手段と、前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段による探索を継続するか否かを判断する継続判断手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記情報提示手段は、さらに、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することを特徴とするものである。
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記情報提示手段は、さらに、各調整手法のタイプの解説を提示することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記入力情報処理手段は、前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、前記経験則型調整手段が利用する制御課題を入力する制御課題情報入力手段とを有し、前記調整手順制御手段は、ユーザの指示に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするものである。
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記入力情報処理手段は、前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、前記経験則型調整手段が利用する制御課題をユーザから受ける制御課題情報入力手段とを有し、前記継続判断手段は、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御した結果から得られた特徴値とユーザが設定した制御目標とを比較することにより、前記PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かを、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段の各処理が終了する度に判断し、前記調整手順制御手段は、前記継続判断手段の判断に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記知識型の調整手法は、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC法、Cohen Coon法のいずれかにより前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであり、前記分析型の調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答と予め定められた理想の制御応答特性との近さを示す評価関数値を演算し、PIDパラメータを逐次変更しながらシミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値となるPIDパラメータの推奨値を探索するものであり、前記経験則型の再調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答に生じた制御課題をユーザに選択させ、選択された制御課題に応じて予め設定されている再調整規則に基づいて前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援方法は、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整ステップと、前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援方法は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援方法は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップと、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップによる探索を継続するか否かを判断する継続判断ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法の全ての手法あるいは少なくとも2種類の手法によるPIDパラメータの推奨値を提示することで、ユーザが認識するモデリングの精度や、初期調整あるいは再調整といったPIDパラメータ調整の場面に合わせて、妥当なPIDパラメータ推奨値をユーザが適宜選択できるようになる。その結果、本発明では、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減することができる。
【0017】
また、本発明では、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示するので、PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かをユーザに判断させることができ、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を更に低減することができる。
【0018】
また、本発明では、知識型調整手段、分析型調整手段、経験則型調整手段による探索を継続するか否かを判断する継続判断手段を設けることにより、ユーザの入力作業を軽減することができる。
【0019】
また、本発明では、PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することにより、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法の各調整手法によるPIDパラメータで予測される制御応答を制御動作実行前にユーザに確認させることができる。
【0020】
また、本発明では、各調整手法のタイプの解説を提示することにより、各調整手法の特徴をユーザに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における調整情報提示画面の1例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における知識型調整手法選択画面の1例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における調整情報提示画面の1例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における調整情報提示画面の1例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における制御目標設定画面の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の原理1]
特開2000−148204号公報に開示されているユーザインタフェースを備えた経験則型の再調整手法や、特開2005−070940号公報に開示されている分析型の調整手法のようなタイプの異なる調整手法をバックアップ的に備え、これらの手法をユーザが活用できるように誘導する機能を付加することで、PIDパラメータ調整の行き詰まり状態に至る確率が低減できることに着眼した。そして、下記のような使い分けを誘導することに想到した。
【0023】
例えば、知識型の調整手法、経験則型の再調整手法、分析型の調整手法の全ての手法あるいはいずれか2つの手法によるPIDパラメータの推奨値を提示することで、ユーザが認識するモデリングの精度や、初期調整あるいは再調整といったPIDパラメータ調整の場面に合わせて、妥当なPIDパラメータ推奨値をユーザが適宜選択できるようになる。各調整手法のタイプの解説も合わせて提示するのが、より好適である。ユーザが認識するモデリングの精度としては、例えば操作量MVステップ入力程度の1次遅れ近似のモデリング、設定値SP変更による制御動作の操作量MVを活用した時系列データマッチングという比較的高精度のモデリングなどがある。
【0024】
[発明の原理2]
下記のような使い分けを誘導することで、さらに課題解決が進むことに想到した。
(A)例えば、制御の安全面を優先するならば、操作量MVのステップ入力による単純で確実に安全な応答波形を取得し、制御対象を1次遅れ近似して一般的な知識型のPIDパラメータ調整をまずユーザに実施させる。操作量MVのステップ入力による応答波形は、PID制御を実施する場合の動作とは異なり、操作量MVや制御量PVの変動幅および変動の継続時間が想定外に大きくなることはあり得ない応答波形である。そして、知識型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。
【0025】
このPID制御による応答波形が不適切であっても、通常は安全な範囲の応答になる。つまり、P,I,Dのバランスが常識的なものとして確定している範囲にあるので、分析に利用できないほどの異常なPID制御動作は発生しない程度の応答波形になる。したがって、このときのPID制御による応答波形のデータは分析型のPIDパラメータ調整を実施するのに有用なデータになるので、引き続き、分析型のPIDパラメータ調整をユーザに実施させる。そして、分析型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。
【0026】
このPID制御による応答波形が不適切であっても、通常はオーバーシュートやハンチングなどの限られた範囲の不具合に収束してくる。したがって、引き続き、経験則型のPIDパラメータ再調整を実施させる。
【0027】
(B)一方、上記のように制御の安全面を優先するのではなく、例えば調整の手間の削減を優先するならば、PID制御を実際に実行して制御応答から制御量PVの特徴点のみを確認する手法、例えば特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法により、制御対象を1次遅れ近似して一般的な知識型のPIDパラメータ調整をまずユーザに実施させる。そして、知識型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。この調整で良好な制御結果が得られれば、最低限の手間で済む。
【0028】
PID制御による応答波形が不適切であっても、通常は安全な範囲の応答になる。したがって、このときのPID制御による応答波形のデータは分析型のPIDパラメータ調整を実施するのに有用なデータになるので、引き続き、分析型のPIDパラメータ調整をユーザに実施させる。そして、分析型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。
【0029】
このPID制御による応答波形が不適切であっても、通常はオーバーシュートやハンチングなどの限られた範囲の不具合に収束してくる。したがって、引き続き、経験則型のPIDパラメータ再調整を実施させる。
【0030】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応するものである。図1は本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャート、図2は本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【0031】
PIDパラメータ調整支援装置は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理部1と、PIDパラメータを探索する制御パラメータ調整部2と、制御パラメータ調整部2が探索したPIDパラメータの推奨値を提示する調整情報提示部3とから構成される。
【0032】
入力情報処理部1は、制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成するモデリング部10を有する。制御パラメータ調整部2は、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整部20と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整部21とを有する。
【0033】
以下、本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置の動作を図1を用いて説明する。まず、モデリング部10は、制御対象のモデルを生成する(図1ステップS1−1)。ここでは、モデリング部10が用いるモデリング手法として、特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法を用いる。
【0034】
特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法は、制御対象の数式モデルが持つ制御対象モデルパラメータの値を探索することにより制御対象モデルを生成するものであり、PIDコントローラを仮想的に生成するためのコントローラアルゴリズムと制御対象の数式モデルとを組み合わせて制御系モデルを仮想的に生成し、この制御系について制御応答を模擬するシミュレーションを実行して制御系モデルのモデル制御特徴量(例えば目標値到達時間、オーバーシュート量、ハンチング周期など)を算出し、実際の制御対象の制御結果から得られた既知の実制御特徴量とこれに対応するモデル制御特徴量との近さを示す評価関数値を演算し、制御対象のモデルに設定する制御対象モデルパラメータの値を逐次変更しながら前記シミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値(0もしくは0に近い最小値)となる制御対象モデルパラメータの値をモデルパラメータ探索結果として確定するようにしたものである。
【0035】
制御対象モデルパラメータの値としては、例えばゲインKp、むだ時間Lp、時定数T1がある。なお、特開2006−127079号公報では、制御対象を、1次遅れとむだ時間の要素を有するものとして1次遅れの伝達関数で表現しているが、制御対象は1次遅れには限定されない。
【0036】
次に、制御パラメータ調整部2の知識型調整部20は、モデリング部10が生成した制御対象モデルを対象として、特開2009−116515号公報に開示された知識型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3は、知識型調整部20が探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図1ステップS1−2)。このとき、調整情報提示部3は、知識型の調整手法によって得られたPIDパラメータであることがユーザに伝わるように提示する。知識型の調整手法としては、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC(Internal Model Control)法、Cohen Coon法などがある。なお、周知のとおり、PIDパラメータは、比例帯Pb、積分時間Ti、微分時間Tdの組からなる。
【0037】
続いて、制御パラメータ調整部2の分析型調整部21は、モデリング部10が生成した制御対象モデルを対象として、特開2005−070940号公報に開示された分析型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3は、分析型調整部21が探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図1ステップS1−3)。このとき、調整情報提示部3は、分析型の調整手法によって得られたPIDパラメータであることがユーザに伝わるように提示する。また、情報提示を行う画面は、ステップS1−2の情報が提示されている画面と同一であることが好ましい。
【0038】
特開2005−070940号公報に開示された分析型の調整手法は、PIDコントローラを仮想的に生成するためのコントローラアルゴリズムとモデリング部10が生成した制御対象モデルとを組み合わせて制御系モデルを仮想的に生成し、この制御系について制御応答を模擬するシミュレーションを、コントローラの動作上の制約条件(例えば操作量上下限値)に基づいて実行し、シミュレーションで得られた制御応答と予め定められた理想の制御応答特性との近さを示す評価関数値を演算し、コントローラアルゴリズムのPIDパラメータを逐次変更しながら前記シミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値(0もしくは0に近い最小値)となるPIDパラメータをPIDパラメータ探索結果として確定するようにしたものである。
【0039】
なお、本実施の形態では、知識型の調整手法と分析型の調整手法の組み合わせを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、分析型の調整手法と特開2000−148204号公報に開示された経験則型の再調整手法を組み合わせてもよいし、知識型の調整手法と経験則型の再調整手法を組み合わせてもよいし、知識型の調整手法と分析型の調整手法と経験則型の再調整手法を組み合わせてもよい。
【0040】
経験則型の再調整手法を用いる場合には、制御パラメータ調整部2に経験則型調整部を設ける。経験則型調整部は、特開2000−148204号公報に開示された経験則型の再調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3は、経験則型調整部が探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する。
【0041】
特開2000−148204号公報に開示された経験則型の再調整手法は、実際の制御応答で生じたトラブルパターン(例えばハンチングが発生している状況、応答が遅すぎる状況など)を、予め用意された代表的なトラブルパターンの中からユーザに選択させ、選択されたトラブルパターンに応じて経験則から予め設定されているPIDパラメータの再調整規則に基づいて、コントローラアルゴリズムのPIDパラメータの再調整値を算出するものである。
【0042】
本実施の形態では、PIDパラメータ調整に関する情報として、各調整手法のタイプの解説も合わせて提示するのが、より好適である。具体的には、知識型の調整手法については、「知識型の特徴:制御対象の簡易的な特性把握に基づく、標準的な初期調整に特に推奨する」といった情報を提示する。分析型の調整手法については、「分析型の特徴:制御対象の精密な特性把握に基づく、制御対象固有の調整に特に推奨する」といった情報を提示する。経験則型の再調整手法については、「経験則型の特徴:制御動作の不具合改善を目的とする、再調整に特に推奨する」といった情報を提示する。
【0043】
図3に調整情報提示部3が情報提示を行う調整情報提示画面の例を示す。図3に示す調整情報提示画面300には、知識型調整部20による調整結果(PIDパラメータ調整値)301と、分析型調整部21による調整結果302とが提示されている。調整結果301と共に知識型の調整手法の解説303が提示され、調整結果302と共に分析型の調整手法の解説304が提示されている。
【0044】
また、調整情報提示画面300には、モデル情報として、モデリング部10のモデリング手法の解説305が提示され、さらにモデリング部10が生成した制御対象モデルの伝達関数式の情報306が提示されている。さらに、調整情報提示画面300には、知識型調整部20による知識型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラによりモデリング部10が生成した制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である知識型調整予測応答と、分析型調整部21による分析型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラにより制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である分析型調整予測応答と、調整前の実際の制御動作を再現したモデル応答とを表す調整結果グラフ307が提示されている。知識型調整予測応答と分析型調整予測応答とモデル応答の演算は、調整情報提示部3で行われる。
【0045】
以上のように、本実施の形態では、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法の全ての手法あるいは少なくとも2種類の手法によるPIDパラメータの推奨値を提示することで、ユーザが認識するモデリングの精度や、初期調整あるいは再調整といったPIDパラメータ調整の場面に合わせて、妥当なPIDパラメータ推奨値をユーザが適宜選択できるようになる。その結果、本実施の形態では、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減することができる。
【0046】
なお、モデリング部10が用いるモデリング手法として、特開2004−38428号公報に開示されたモデリング手法を用いてもよい。特開2004−38428号公報に開示されたモデリング手法は、制御対象の数式モデルに操作量MVの時系列データを与え、この操作量MVに応じてモデルから出力される制御量PVの時系列データを取得し、実際の制御対象から収集された制御量PVの時系列データと前記モデルから出力される制御量PVの時系列データとを使って、Powell法などの最適化手法を用いて、制御対象の数式モデルが持つ制御対象モデルパラメータの値を確定するようにしたものである。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。図4は本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャート、図5は本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【0048】
本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置は、入力情報処理部1aと、制御パラメータ調整部2aと、調整情報提示部3aと、後述する知識型調整部、分析型調整部、経験則型調整部のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御部4とから構成される。
【0049】
入力情報処理部1aは、後述する知識型調整部が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング部11と、後述する分析型調整部が利用する制御対象のモデルを知識型調整部の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング部12と、後述する経験則型調整部が利用する制御課題を入力する制御課題情報入力部13とを有する。制御パラメータ調整部2aは、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整部20aと、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整部21aと、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整部22とを有する。
【0050】
以下、本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置の動作を図4を用いて説明する。まず、調整手順制御部4は、簡易モデリング部11にモデリングを実施させる。簡易モデリング部11は、特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法により、制御対象のモデルを生成する(図4ステップS4−1)。なお、特開2006−127079号公報では、制御対象を、1次遅れとむだ時間の要素を有するものとして1次遅れの伝達関数で表現しているが、制御対象は1次遅れには限定されない。
【0051】
続いて、調整手順制御部4は、モデリングのためのデータ収集プロセスが簡易であることを前提として、PIDパラメータのセットが特殊にならない(P,I,Dの比率が過去の専門知識から固定的な)知識型の調整手法を、まずユーザに選択させる(図4ステップS4−2)。図6に、調整手順制御部4がユーザに知識型調整手法の選択肢を提示する知識型調整手法選択画面600の例を示す。図6に示すように、知識型調整手法の選択肢としては、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC法、Cohen Coon法がある。
【0052】
モデリングのためのデータ収集プロセスが簡易ということは、比較的限られた情報のみでのモデリングになるということであり、プロセスゲイン、プロセス時定数、プロセスむだ時間の特定が暫定的なレベルに留まらざるを得ないということである。ただし、知識型の調整手法で良好な結果が得られれば、最低限の手間で済む。
【0053】
制御パラメータ調整部2aの知識型調整部20aは、簡易モデリング部11が生成した制御対象モデルを対象として、ステップS4−2でユーザが選択した知識型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3aは、知識型調整部20aが探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図4ステップS4−3)。知識型調整部20aの動作は、第1の実施の形態の知識型調整部20と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0054】
図7に調整情報提示部3aがステップS4−3で情報提示を行う調整情報提示画面の例を示す。図7に示す調整情報提示画面700には、知識型調整部20aによる調整結果(PIDパラメータ調整値)701が提示されている。また、調整情報提示画面700には、モデル情報として、簡易モデリング部11のモデリング手法の解説702が提示され、さらに簡易モデリング部11が生成した制御対象モデルの伝達関数式の情報703が提示されている。
【0055】
また、調整情報提示画面700には、知識型調整部20aによる知識型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラにより簡易モデリング部11が生成した制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である知識型調整予測応答と、知識型調整手法による調整前の実際の制御動作を再現したモデル応答とを表す調整結果グラフ704が提示されている。知識型調整予測応答とモデル応答の演算は、調整情報提示部3aで行われる。
【0056】
さらに、調整情報提示画面700には、調整完了を選択するための調整完了選択ボタン705と、知識型の調整手法で良好な制御結果が得られなかった場合に分析型の調整手法を選択するための分析型調整手法選択ボタン706とが表示される。
【0057】
ユーザは、調整情報提示画面700に提示された調整結果グラフ704を見て、知識型の調整手法によるPIDパラメータで予測される制御応答を確認し、調整結果であるPIDパラメータを実際のコントローラに設定して制御動作を実行する。この制御動作で良好な制御結果が得られていると判断すれば、調整完了選択ボタン705を選択して、調整を終える(図4ステップS4−4においてNO)。また、ユーザは、知識型の調整手法で良好な制御結果が得られなかったと判断した場合、分析型調整手法選択ボタン706を選択して、分析型の調整に進む(ステップS4−4においてYES)。
【0058】
調整手順制御部4は、分析型の調整手法が選択された場合、制御動作ベースモデリング部12にモデリングを実施させる。制御動作ベースモデリング部12は、特開2004−38428号公報に開示されたモデリング手法に基づくものであり、知識型の調整に基づく実際の制御対象の制御結果から操作量MVと制御量PVの時系列データを収集して、リアルな制御動作に基づくモデリングを行ない、制御対象モデルを生成する(図4ステップS4−5)。この制御動作ベースモデリング部12によるモデリングは、制御対象の特性を暫定的なレベルでも把握した上で、かつ標準的で無難な知識型の調整を施した制御動作に基づくモデリングなので、分析型の調整に有効なデータが収集される確率が高くなる。
【0059】
制御パラメータ調整部2aの分析型調整部21aは、制御動作ベースモデリング部12が生成した制御対象モデルを対象として、特開2005−070940号公報に開示された分析型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3aは、分析型調整部21aが探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図4ステップS4−6)。分析型調整部21aの動作は、第1の実施の形態の分析型調整部21と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0060】
図8に調整情報提示部3aがステップS4−6で情報提示を行う調整情報提示画面の例を示す。図8に示す調整情報提示画面800には、分析型調整部21aによる調整結果(PIDパラメータ調整値)801が提示されている。また、調整情報提示画面800には、モデル情報として、制御動作ベースモデリング部12のモデリング手法の解説802が提示され、さらに制御動作ベースモデリング部12が生成した制御対象モデルの伝達関数式の情報803が提示されている。
【0061】
また、調整情報提示画面800には、分析型調整部21aによる分析型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラにより制御動作ベースモデリング部12が生成した制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である分析型調整予測応答と、分析型調整手法による調整前の実際の制御動作を再現したモデル応答とを表す調整結果グラフ804が提示されている。分析型調整予測応答とモデル応答の演算は、調整情報提示部3aで行われる。
【0062】
さらに、調整情報提示画面800には、調整完了を選択するための調整完了選択ボタン805と、分析型の調整手法で良好な制御結果が得られなかった場合に経験則型の調整手法を選択するための経験則型調整手法選択ボタン806とが表示される。
【0063】
ユーザは、調整情報提示画面800に提示された調整結果グラフ804を見て、分析型の調整手法によるPIDパラメータで予測される制御応答を確認し、調整結果であるPIDパラメータを実際のコントローラに設定して制御動作を実行する。この制御動作で良好な制御結果が得られていると判断すれば、調整完了選択ボタン805を選択して、調整を終える(図4ステップS4−7においてNO)。また、ユーザは、分析型の調整手法で良好な制御結果が得られなかったと判断した場合、経験則型調整手法選択ボタン806を選択して、経験則型の調整に進む(ステップS4−7においてYES)。
【0064】
調整手順制御部4は、経験則型の調整手法が選択された場合、制御課題情報入力部13に制御課題(トラブルパターン)を収集させる。ユーザは、分析型の調整に基づく実際の制御対象の制御結果から、制御課題(例えばハンチングの発生や、応答の遅れなど)を入力する。制御課題情報入力部13は、ユーザから入力された制御課題を制御パラメータ調整部2aの経験則型調整部22に渡す。
【0065】
経験則型調整部22は、ユーザが選択した制御課題(トラブルパターン)に応じて予め設定されているPIDパラメータの再調整規則に基づいて、PIDパラメータの再調整値を算出し、調整情報提示部3aは、経験則型調整部22が算出したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図4ステップS4−8)。経験則型調整部22が実施する経験則型の再調整については、特開2000−148204号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0066】
このような経験則型の再調整手法が必要になる理由は、制御対象の不可避的な非線形性などにより完全なモデリングは不可能であることから、分析誤差分の制御不具合を最終調整することにある。経験則型の再調整は、経験則ゆえに対応できる制御状態の範囲は限られている。予め用意されている代表的なトラブルパターンのいずれかに当てはまるところまで、PIDパラメータが分析型の調整手法によって事前に調整されていなければならない。
【0067】
以上のように、本実施の形態では、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示するので、PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かをユーザに判断させることができ、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を更に低減することができる。
【0068】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。第2の実施の形態において、調整作業を終了するための判断基準となる制御目標をユーザが予め登録しておき、実際の制御結果において制御目標を満たさない場合に調整作業を継続するという継続判断ステップを追加した例を第3の実施の形態として示す。ここで、制御目標とは、例えば、オーバーシュート量や立ち上がり時間、ハンチングの振幅など、制御動作中の制御量PVおよび操作量MVの時系列データ(以下、制御データとする)から算出できる制御結果の特徴値とする。
【0069】
説明を簡単にするために、本実施の形態では、PIDパラメータ調整支援装置に制御データを自動で収集するロギング機能部を設け、ロギング機能部により収集した制御データからユーザが制御目標を設定した項目に対応する特徴値を取得し、この特徴値をユーザが設定した制御目標の設定値と比較することで調整作業の継続判断を行なうこととする。これにより、本実施の形態では、第2の実施の形態と比較してユーザの入力作業を軽減することができる。
【0070】
なお、前記ロギング機能部は説明を簡単にするためのものであり、調整の継続判断に利用する制御データがPIDパラメータ調整支援装置に入力されればよいのであって、装置外部で収集した制御データをユーザが入力してももちろん構わない。すなわち、ロギング機能部をPIDパラメータ調整支援装置内に設けることは必須の構成要件ではない。いずれにしろ、調整の継続判断に関わるユーザの入力作業は軽減される。
【0071】
図9は本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャート、図10は本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置は、入力情報処理部1aと、制御パラメータ調整部2aと、調整情報提示部3aと、調整手順制御部4と、後述する知識型調整部、分析型調整部、経験則型調整部による探索を継続するか否かを判断する調整継続判断部5とから構成される。
【0072】
入力情報処理部1aは、簡易モデリング部11と、制御動作ベースモデリング部12と、制御課題情報入力部13とを有する。制御パラメータ調整部2aは、知識型調整部20aと、分析型調整部21aと、経験則型調整部22とを有する。
【0073】
以下、本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置の動作を図9を用いて説明する。まず、調整継続判断部5は、制御目標を設定するようユーザに要求する。図11に、調整継続判断部5がユーザに制御目標の設定を要求する制御目標設定画面1100の例を示す。ユーザは、例えばオーバーシュート量の目標値として1℃、立ち上がり時間の目標値として180秒を設定する。ここで、調整継続判断部5が制御目標として提示する項目は、制御データから算出可能な特徴値の項目であればよく、オーバーシュート量や立ち上がり時間に限定されない。また、ユーザは最低1種類以上の項目に対して目標値の設定を行なえばよいのであって、例えば図11の例では、立ち上がり時間のみを設定しても構わない。
【0074】
図9のステップS10−2,S10−3,S10−4の処理は、それぞれ図4のステップS4−1,S4−2,S4−3と同様であるので、説明は省略する。ただし、本実施の形態では、調整継続判断部5が分析型の調整に進むかどうかを判断するので、調整情報提示部3aは、第2の実施の形態で説明した調整情報提示画面700のうち、調整完了選択ボタン705と分析型調整手法選択ボタン706とは表示しない。
【0075】
ユーザは、知識型の調整結果であるPIDパラメータをPIDコントローラに設定し、制御対象の制御を実施する。調整継続判断部5は、ロギング機能部(不図示)によって収集された、制御動作中の制御データ(操作量MVと制御量PV)を受け取り(図9ステップS10−5)、この制御データからユーザが制御目標を設定した項目に対応する特徴値(以下、実測特徴値)を取得し、この実測特徴値をユーザが設定した制御目標の設定値と比較して、制御目標を満足しているか否かを判定する(図9ステップS10−6)。
【0076】
調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていれば、制御目標を満足していると判断し(図9ステップS10−6においてYES)、実測特徴値と制御目標とを提示して調整を終了する(図9ステップS10−13)。例えば、制御データから取得したオーバーシュート量の実測特徴値が制御目標1℃以内であれば、制御目標を満足しているとし、立ち上がり時間の実測特徴値が制御目標180秒以下であれば制御目標を満足しているとする。この場合、例えば、オーバーシュート量の実測特徴値が0.5℃で、立ち上がり時間の実測特徴値が175秒であれば、制御目標を満足していると判断してステップS10−13に進むことになる。
【0077】
一方、調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていない場合、制御目標を満足していないと判断し(図9ステップS10−6においてNO)、調整手順制御部4に対して分析型の調整を指示する。
【0078】
図9のステップS10−7,S10−8の処理は、それぞれ図4のステップS4−5,S4−6と同様であるので、詳細な説明は省略する。ただし、本実施の形態では、調整継続判断部5が経験則型の調整に進むかどうかを判断するので、調整情報提示部3aは、第2の実施の形態で説明した調整情報提示画面800のうち、調整完了選択ボタン805と経験則型調整手法選択ボタン806とは表示しない。なお、図9のステップS10−7のモデリングの入力データとしては、図9のステップS10−5で収集した制御データを利用する。
【0079】
ユーザは、分析型の調整結果であるPIDパラメータをPIDコントローラに設定し、制御対象の制御を実施する。調整継続判断部5は、ロギング機能部によって収集された、制御動作中の制御データを受け取り(図9ステップS10−9)、この制御データから実測特徴値を取得し、この実測特徴値をユーザが設定した制御目標の設定値と比較して、制御目標を満足しているか否かを判定する(図9ステップS10−10)。
【0080】
調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていれば、制御目標を満足していると判断し(図9ステップS10−10においてYES)、実測特徴値と制御目標とを提示して調整を終了する(図9ステップS10−13)。また、調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていない場合、制御目標を満足していないと判断し(図9ステップS10−10においてNO)、調整手順制御部4に対して経験則型の調整を指示する。
【0081】
図9のステップS10−11の処理は、図4のステップS4−8と同様であるので、説明は省略する。
ユーザは、経験則型の調整結果であるPIDパラメータをPIDコントローラに設定し、制御対象の制御を実施する。調整継続判断部5は、ロギング機能部によって収集された、制御動作中の制御データを受け取り(図9ステップS10−12)、この制御データから実測特徴値を取得し、この実測特徴値と制御目標とを提示して調整を終了する(図9ステップS10−13)。
【0082】
なお、図9のステップS10−13の制御目標達成状況の提示では、実測特徴値と制御目標値の提示に加え、制御目標が達成されたか否かの判断結果や、直前に実施した調整タイプおよび調整手法に関する情報を同時に提示するのが好ましい。
以上のように、本実施の形態では、調整作業を継続するか否かを自動的に判断するようにしたので、第2の実施の形態と比較してユーザの入力作業を軽減することができる。
【0083】
第1〜第3の実施の形態におけるPIDパラメータ調整支援装置は、例えばCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、PIDコントローラのPIDパラメータの調整を支援する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,1a…入力情報処理部、2,2a…制御パラメータ調整部、3,3a…調整情報提示部、4…調整手順制御部、5…調整継続判断部、10…モデリング部、11…簡易モデリング部、12…制御動作ベースモデリング部、13…制御課題情報入力部、20,20a…知識型調整部、21,21a…分析型調整部、22…経験則型調整部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PIDコントローラのPIDパラメータの調整を支援するPIDパラメータ調整支援装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PIDパラメータ調整支援ツールを利用してPIDコントローラのPIDパラメータを調整する場合、単一の調整手法あるいは単一の調整理論背景に基づく調整バリエーションに基づいて推奨PIDパラメータがセットで求められ、表示される(特許文献1参照)。
このようなPIDパラメータ調整支援ツールでは、予め定められた単一の調整手法、あるいは調整支援ツールやユーザによって選択された単一の調整手法に基づいてPIDパラメータがセットで求められる。調整手法としては、Ziegler−Nichols法やCHR(Chien,Hrones,Reswick)法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−116515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PIDパラメータ調整支援ツールなどで利用されているパラメータ算出機能では、多くの場合にZN法やCHR法のような知識型の調整手法が採用され、これら調整手法のバリエーションの中でPIDパラメータを選択できるようになっている。
【0005】
しかしながら、これらの調整手法のバリエーションは、オーバーシュート量の規定などの違いに対応するバリエーションに過ぎず、理論的な背景は類似しているもの、すなわち単一の調整理論背景に基づくものなので、制御対象の特性の都合が原因で想定通りのパラメータ調整ができなかった場合には、あらゆる選択肢について想定通りの調整ができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減することができるPIDパラメータ調整支援装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPIDパラメータ調整支援装置は、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整手段と、前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段と、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段による探索を継続するか否かを判断する継続判断手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記情報提示手段は、さらに、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することを特徴とするものである。
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記情報提示手段は、さらに、各調整手法のタイプの解説を提示することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記入力情報処理手段は、前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、前記経験則型調整手段が利用する制御課題を入力する制御課題情報入力手段とを有し、前記調整手順制御手段は、ユーザの指示に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするものである。
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記入力情報処理手段は、前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、前記経験則型調整手段が利用する制御課題をユーザから受ける制御課題情報入力手段とを有し、前記継続判断手段は、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御した結果から得られた特徴値とユーザが設定した制御目標とを比較することにより、前記PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かを、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段の各処理が終了する度に判断し、前記調整手順制御手段は、前記継続判断手段の判断に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援装置の1構成例において、前記知識型の調整手法は、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC法、Cohen Coon法のいずれかにより前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであり、前記分析型の調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答と予め定められた理想の制御応答特性との近さを示す評価関数値を演算し、PIDパラメータを逐次変更しながらシミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値となるPIDパラメータの推奨値を探索するものであり、前記経験則型の再調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答に生じた制御課題をユーザに選択させ、選択された制御課題に応じて予め設定されている再調整規則に基づいて前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援方法は、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整ステップと、前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援方法は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のPIDパラメータ調整支援方法は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップと、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップによる探索を継続するか否かを判断する継続判断ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法の全ての手法あるいは少なくとも2種類の手法によるPIDパラメータの推奨値を提示することで、ユーザが認識するモデリングの精度や、初期調整あるいは再調整といったPIDパラメータ調整の場面に合わせて、妥当なPIDパラメータ推奨値をユーザが適宜選択できるようになる。その結果、本発明では、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減することができる。
【0017】
また、本発明では、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示するので、PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かをユーザに判断させることができ、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を更に低減することができる。
【0018】
また、本発明では、知識型調整手段、分析型調整手段、経験則型調整手段による探索を継続するか否かを判断する継続判断手段を設けることにより、ユーザの入力作業を軽減することができる。
【0019】
また、本発明では、PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することにより、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法の各調整手法によるPIDパラメータで予測される制御応答を制御動作実行前にユーザに確認させることができる。
【0020】
また、本発明では、各調整手法のタイプの解説を提示することにより、各調整手法の特徴をユーザに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における調整情報提示画面の1例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における知識型調整手法選択画面の1例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における調整情報提示画面の1例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における調整情報提示画面の1例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における制御目標設定画面の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の原理1]
特開2000−148204号公報に開示されているユーザインタフェースを備えた経験則型の再調整手法や、特開2005−070940号公報に開示されている分析型の調整手法のようなタイプの異なる調整手法をバックアップ的に備え、これらの手法をユーザが活用できるように誘導する機能を付加することで、PIDパラメータ調整の行き詰まり状態に至る確率が低減できることに着眼した。そして、下記のような使い分けを誘導することに想到した。
【0023】
例えば、知識型の調整手法、経験則型の再調整手法、分析型の調整手法の全ての手法あるいはいずれか2つの手法によるPIDパラメータの推奨値を提示することで、ユーザが認識するモデリングの精度や、初期調整あるいは再調整といったPIDパラメータ調整の場面に合わせて、妥当なPIDパラメータ推奨値をユーザが適宜選択できるようになる。各調整手法のタイプの解説も合わせて提示するのが、より好適である。ユーザが認識するモデリングの精度としては、例えば操作量MVステップ入力程度の1次遅れ近似のモデリング、設定値SP変更による制御動作の操作量MVを活用した時系列データマッチングという比較的高精度のモデリングなどがある。
【0024】
[発明の原理2]
下記のような使い分けを誘導することで、さらに課題解決が進むことに想到した。
(A)例えば、制御の安全面を優先するならば、操作量MVのステップ入力による単純で確実に安全な応答波形を取得し、制御対象を1次遅れ近似して一般的な知識型のPIDパラメータ調整をまずユーザに実施させる。操作量MVのステップ入力による応答波形は、PID制御を実施する場合の動作とは異なり、操作量MVや制御量PVの変動幅および変動の継続時間が想定外に大きくなることはあり得ない応答波形である。そして、知識型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。
【0025】
このPID制御による応答波形が不適切であっても、通常は安全な範囲の応答になる。つまり、P,I,Dのバランスが常識的なものとして確定している範囲にあるので、分析に利用できないほどの異常なPID制御動作は発生しない程度の応答波形になる。したがって、このときのPID制御による応答波形のデータは分析型のPIDパラメータ調整を実施するのに有用なデータになるので、引き続き、分析型のPIDパラメータ調整をユーザに実施させる。そして、分析型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。
【0026】
このPID制御による応答波形が不適切であっても、通常はオーバーシュートやハンチングなどの限られた範囲の不具合に収束してくる。したがって、引き続き、経験則型のPIDパラメータ再調整を実施させる。
【0027】
(B)一方、上記のように制御の安全面を優先するのではなく、例えば調整の手間の削減を優先するならば、PID制御を実際に実行して制御応答から制御量PVの特徴点のみを確認する手法、例えば特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法により、制御対象を1次遅れ近似して一般的な知識型のPIDパラメータ調整をまずユーザに実施させる。そして、知識型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。この調整で良好な制御結果が得られれば、最低限の手間で済む。
【0028】
PID制御による応答波形が不適切であっても、通常は安全な範囲の応答になる。したがって、このときのPID制御による応答波形のデータは分析型のPIDパラメータ調整を実施するのに有用なデータになるので、引き続き、分析型のPIDパラメータ調整をユーザに実施させる。そして、分析型のPIDパラメータ調整をした後のPID制御による応答をユーザに確認させる。
【0029】
このPID制御による応答波形が不適切であっても、通常はオーバーシュートやハンチングなどの限られた範囲の不具合に収束してくる。したがって、引き続き、経験則型のPIDパラメータ再調整を実施させる。
【0030】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応するものである。図1は本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャート、図2は本発明の第1の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【0031】
PIDパラメータ調整支援装置は、PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理部1と、PIDパラメータを探索する制御パラメータ調整部2と、制御パラメータ調整部2が探索したPIDパラメータの推奨値を提示する調整情報提示部3とから構成される。
【0032】
入力情報処理部1は、制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成するモデリング部10を有する。制御パラメータ調整部2は、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整部20と、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整部21とを有する。
【0033】
以下、本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置の動作を図1を用いて説明する。まず、モデリング部10は、制御対象のモデルを生成する(図1ステップS1−1)。ここでは、モデリング部10が用いるモデリング手法として、特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法を用いる。
【0034】
特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法は、制御対象の数式モデルが持つ制御対象モデルパラメータの値を探索することにより制御対象モデルを生成するものであり、PIDコントローラを仮想的に生成するためのコントローラアルゴリズムと制御対象の数式モデルとを組み合わせて制御系モデルを仮想的に生成し、この制御系について制御応答を模擬するシミュレーションを実行して制御系モデルのモデル制御特徴量(例えば目標値到達時間、オーバーシュート量、ハンチング周期など)を算出し、実際の制御対象の制御結果から得られた既知の実制御特徴量とこれに対応するモデル制御特徴量との近さを示す評価関数値を演算し、制御対象のモデルに設定する制御対象モデルパラメータの値を逐次変更しながら前記シミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値(0もしくは0に近い最小値)となる制御対象モデルパラメータの値をモデルパラメータ探索結果として確定するようにしたものである。
【0035】
制御対象モデルパラメータの値としては、例えばゲインKp、むだ時間Lp、時定数T1がある。なお、特開2006−127079号公報では、制御対象を、1次遅れとむだ時間の要素を有するものとして1次遅れの伝達関数で表現しているが、制御対象は1次遅れには限定されない。
【0036】
次に、制御パラメータ調整部2の知識型調整部20は、モデリング部10が生成した制御対象モデルを対象として、特開2009−116515号公報に開示された知識型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3は、知識型調整部20が探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図1ステップS1−2)。このとき、調整情報提示部3は、知識型の調整手法によって得られたPIDパラメータであることがユーザに伝わるように提示する。知識型の調整手法としては、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC(Internal Model Control)法、Cohen Coon法などがある。なお、周知のとおり、PIDパラメータは、比例帯Pb、積分時間Ti、微分時間Tdの組からなる。
【0037】
続いて、制御パラメータ調整部2の分析型調整部21は、モデリング部10が生成した制御対象モデルを対象として、特開2005−070940号公報に開示された分析型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3は、分析型調整部21が探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図1ステップS1−3)。このとき、調整情報提示部3は、分析型の調整手法によって得られたPIDパラメータであることがユーザに伝わるように提示する。また、情報提示を行う画面は、ステップS1−2の情報が提示されている画面と同一であることが好ましい。
【0038】
特開2005−070940号公報に開示された分析型の調整手法は、PIDコントローラを仮想的に生成するためのコントローラアルゴリズムとモデリング部10が生成した制御対象モデルとを組み合わせて制御系モデルを仮想的に生成し、この制御系について制御応答を模擬するシミュレーションを、コントローラの動作上の制約条件(例えば操作量上下限値)に基づいて実行し、シミュレーションで得られた制御応答と予め定められた理想の制御応答特性との近さを示す評価関数値を演算し、コントローラアルゴリズムのPIDパラメータを逐次変更しながら前記シミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値(0もしくは0に近い最小値)となるPIDパラメータをPIDパラメータ探索結果として確定するようにしたものである。
【0039】
なお、本実施の形態では、知識型の調整手法と分析型の調整手法の組み合わせを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、分析型の調整手法と特開2000−148204号公報に開示された経験則型の再調整手法を組み合わせてもよいし、知識型の調整手法と経験則型の再調整手法を組み合わせてもよいし、知識型の調整手法と分析型の調整手法と経験則型の再調整手法を組み合わせてもよい。
【0040】
経験則型の再調整手法を用いる場合には、制御パラメータ調整部2に経験則型調整部を設ける。経験則型調整部は、特開2000−148204号公報に開示された経験則型の再調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3は、経験則型調整部が探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する。
【0041】
特開2000−148204号公報に開示された経験則型の再調整手法は、実際の制御応答で生じたトラブルパターン(例えばハンチングが発生している状況、応答が遅すぎる状況など)を、予め用意された代表的なトラブルパターンの中からユーザに選択させ、選択されたトラブルパターンに応じて経験則から予め設定されているPIDパラメータの再調整規則に基づいて、コントローラアルゴリズムのPIDパラメータの再調整値を算出するものである。
【0042】
本実施の形態では、PIDパラメータ調整に関する情報として、各調整手法のタイプの解説も合わせて提示するのが、より好適である。具体的には、知識型の調整手法については、「知識型の特徴:制御対象の簡易的な特性把握に基づく、標準的な初期調整に特に推奨する」といった情報を提示する。分析型の調整手法については、「分析型の特徴:制御対象の精密な特性把握に基づく、制御対象固有の調整に特に推奨する」といった情報を提示する。経験則型の再調整手法については、「経験則型の特徴:制御動作の不具合改善を目的とする、再調整に特に推奨する」といった情報を提示する。
【0043】
図3に調整情報提示部3が情報提示を行う調整情報提示画面の例を示す。図3に示す調整情報提示画面300には、知識型調整部20による調整結果(PIDパラメータ調整値)301と、分析型調整部21による調整結果302とが提示されている。調整結果301と共に知識型の調整手法の解説303が提示され、調整結果302と共に分析型の調整手法の解説304が提示されている。
【0044】
また、調整情報提示画面300には、モデル情報として、モデリング部10のモデリング手法の解説305が提示され、さらにモデリング部10が生成した制御対象モデルの伝達関数式の情報306が提示されている。さらに、調整情報提示画面300には、知識型調整部20による知識型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラによりモデリング部10が生成した制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である知識型調整予測応答と、分析型調整部21による分析型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラにより制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である分析型調整予測応答と、調整前の実際の制御動作を再現したモデル応答とを表す調整結果グラフ307が提示されている。知識型調整予測応答と分析型調整予測応答とモデル応答の演算は、調整情報提示部3で行われる。
【0045】
以上のように、本実施の形態では、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法の全ての手法あるいは少なくとも2種類の手法によるPIDパラメータの推奨値を提示することで、ユーザが認識するモデリングの精度や、初期調整あるいは再調整といったPIDパラメータ調整の場面に合わせて、妥当なPIDパラメータ推奨値をユーザが適宜選択できるようになる。その結果、本実施の形態では、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を低減することができる。
【0046】
なお、モデリング部10が用いるモデリング手法として、特開2004−38428号公報に開示されたモデリング手法を用いてもよい。特開2004−38428号公報に開示されたモデリング手法は、制御対象の数式モデルに操作量MVの時系列データを与え、この操作量MVに応じてモデルから出力される制御量PVの時系列データを取得し、実際の制御対象から収集された制御量PVの時系列データと前記モデルから出力される制御量PVの時系列データとを使って、Powell法などの最適化手法を用いて、制御対象の数式モデルが持つ制御対象モデルパラメータの値を確定するようにしたものである。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。図4は本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャート、図5は本発明の第2の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
【0048】
本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置は、入力情報処理部1aと、制御パラメータ調整部2aと、調整情報提示部3aと、後述する知識型調整部、分析型調整部、経験則型調整部のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御部4とから構成される。
【0049】
入力情報処理部1aは、後述する知識型調整部が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング部11と、後述する分析型調整部が利用する制御対象のモデルを知識型調整部の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング部12と、後述する経験則型調整部が利用する制御課題を入力する制御課題情報入力部13とを有する。制御パラメータ調整部2aは、知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整部20aと、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整部21aと、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整部22とを有する。
【0050】
以下、本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置の動作を図4を用いて説明する。まず、調整手順制御部4は、簡易モデリング部11にモデリングを実施させる。簡易モデリング部11は、特開2006−127079号公報に開示された簡易モデリング手法により、制御対象のモデルを生成する(図4ステップS4−1)。なお、特開2006−127079号公報では、制御対象を、1次遅れとむだ時間の要素を有するものとして1次遅れの伝達関数で表現しているが、制御対象は1次遅れには限定されない。
【0051】
続いて、調整手順制御部4は、モデリングのためのデータ収集プロセスが簡易であることを前提として、PIDパラメータのセットが特殊にならない(P,I,Dの比率が過去の専門知識から固定的な)知識型の調整手法を、まずユーザに選択させる(図4ステップS4−2)。図6に、調整手順制御部4がユーザに知識型調整手法の選択肢を提示する知識型調整手法選択画面600の例を示す。図6に示すように、知識型調整手法の選択肢としては、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC法、Cohen Coon法がある。
【0052】
モデリングのためのデータ収集プロセスが簡易ということは、比較的限られた情報のみでのモデリングになるということであり、プロセスゲイン、プロセス時定数、プロセスむだ時間の特定が暫定的なレベルに留まらざるを得ないということである。ただし、知識型の調整手法で良好な結果が得られれば、最低限の手間で済む。
【0053】
制御パラメータ調整部2aの知識型調整部20aは、簡易モデリング部11が生成した制御対象モデルを対象として、ステップS4−2でユーザが選択した知識型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3aは、知識型調整部20aが探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図4ステップS4−3)。知識型調整部20aの動作は、第1の実施の形態の知識型調整部20と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0054】
図7に調整情報提示部3aがステップS4−3で情報提示を行う調整情報提示画面の例を示す。図7に示す調整情報提示画面700には、知識型調整部20aによる調整結果(PIDパラメータ調整値)701が提示されている。また、調整情報提示画面700には、モデル情報として、簡易モデリング部11のモデリング手法の解説702が提示され、さらに簡易モデリング部11が生成した制御対象モデルの伝達関数式の情報703が提示されている。
【0055】
また、調整情報提示画面700には、知識型調整部20aによる知識型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラにより簡易モデリング部11が生成した制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である知識型調整予測応答と、知識型調整手法による調整前の実際の制御動作を再現したモデル応答とを表す調整結果グラフ704が提示されている。知識型調整予測応答とモデル応答の演算は、調整情報提示部3aで行われる。
【0056】
さらに、調整情報提示画面700には、調整完了を選択するための調整完了選択ボタン705と、知識型の調整手法で良好な制御結果が得られなかった場合に分析型の調整手法を選択するための分析型調整手法選択ボタン706とが表示される。
【0057】
ユーザは、調整情報提示画面700に提示された調整結果グラフ704を見て、知識型の調整手法によるPIDパラメータで予測される制御応答を確認し、調整結果であるPIDパラメータを実際のコントローラに設定して制御動作を実行する。この制御動作で良好な制御結果が得られていると判断すれば、調整完了選択ボタン705を選択して、調整を終える(図4ステップS4−4においてNO)。また、ユーザは、知識型の調整手法で良好な制御結果が得られなかったと判断した場合、分析型調整手法選択ボタン706を選択して、分析型の調整に進む(ステップS4−4においてYES)。
【0058】
調整手順制御部4は、分析型の調整手法が選択された場合、制御動作ベースモデリング部12にモデリングを実施させる。制御動作ベースモデリング部12は、特開2004−38428号公報に開示されたモデリング手法に基づくものであり、知識型の調整に基づく実際の制御対象の制御結果から操作量MVと制御量PVの時系列データを収集して、リアルな制御動作に基づくモデリングを行ない、制御対象モデルを生成する(図4ステップS4−5)。この制御動作ベースモデリング部12によるモデリングは、制御対象の特性を暫定的なレベルでも把握した上で、かつ標準的で無難な知識型の調整を施した制御動作に基づくモデリングなので、分析型の調整に有効なデータが収集される確率が高くなる。
【0059】
制御パラメータ調整部2aの分析型調整部21aは、制御動作ベースモデリング部12が生成した制御対象モデルを対象として、特開2005−070940号公報に開示された分析型の調整手法によりPIDパラメータを探索し、調整情報提示部3aは、分析型調整部21aが探索したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図4ステップS4−6)。分析型調整部21aの動作は、第1の実施の形態の分析型調整部21と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0060】
図8に調整情報提示部3aがステップS4−6で情報提示を行う調整情報提示画面の例を示す。図8に示す調整情報提示画面800には、分析型調整部21aによる調整結果(PIDパラメータ調整値)801が提示されている。また、調整情報提示画面800には、モデル情報として、制御動作ベースモデリング部12のモデリング手法の解説802が提示され、さらに制御動作ベースモデリング部12が生成した制御対象モデルの伝達関数式の情報803が提示されている。
【0061】
また、調整情報提示画面800には、分析型調整部21aによる分析型のPIDパラメータ調整をしたPIDコントローラにより制御動作ベースモデリング部12が生成した制御対象モデルを制御するシミュレーションを実行した結果得られた制御応答である分析型調整予測応答と、分析型調整手法による調整前の実際の制御動作を再現したモデル応答とを表す調整結果グラフ804が提示されている。分析型調整予測応答とモデル応答の演算は、調整情報提示部3aで行われる。
【0062】
さらに、調整情報提示画面800には、調整完了を選択するための調整完了選択ボタン805と、分析型の調整手法で良好な制御結果が得られなかった場合に経験則型の調整手法を選択するための経験則型調整手法選択ボタン806とが表示される。
【0063】
ユーザは、調整情報提示画面800に提示された調整結果グラフ804を見て、分析型の調整手法によるPIDパラメータで予測される制御応答を確認し、調整結果であるPIDパラメータを実際のコントローラに設定して制御動作を実行する。この制御動作で良好な制御結果が得られていると判断すれば、調整完了選択ボタン805を選択して、調整を終える(図4ステップS4−7においてNO)。また、ユーザは、分析型の調整手法で良好な制御結果が得られなかったと判断した場合、経験則型調整手法選択ボタン806を選択して、経験則型の調整に進む(ステップS4−7においてYES)。
【0064】
調整手順制御部4は、経験則型の調整手法が選択された場合、制御課題情報入力部13に制御課題(トラブルパターン)を収集させる。ユーザは、分析型の調整に基づく実際の制御対象の制御結果から、制御課題(例えばハンチングの発生や、応答の遅れなど)を入力する。制御課題情報入力部13は、ユーザから入力された制御課題を制御パラメータ調整部2aの経験則型調整部22に渡す。
【0065】
経験則型調整部22は、ユーザが選択した制御課題(トラブルパターン)に応じて予め設定されているPIDパラメータの再調整規則に基づいて、PIDパラメータの再調整値を算出し、調整情報提示部3aは、経験則型調整部22が算出したPIDパラメータをユーザに対して提示する(図4ステップS4−8)。経験則型調整部22が実施する経験則型の再調整については、特開2000−148204号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0066】
このような経験則型の再調整手法が必要になる理由は、制御対象の不可避的な非線形性などにより完全なモデリングは不可能であることから、分析誤差分の制御不具合を最終調整することにある。経験則型の再調整は、経験則ゆえに対応できる制御状態の範囲は限られている。予め用意されている代表的なトラブルパターンのいずれかに当てはまるところまで、PIDパラメータが分析型の調整手法によって事前に調整されていなければならない。
【0067】
以上のように、本実施の形態では、知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示するので、PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かをユーザに判断させることができ、ユーザがPIDパラメータ調整の行き詰まりに至る確率を更に低減することができる。
【0068】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。第2の実施の形態において、調整作業を終了するための判断基準となる制御目標をユーザが予め登録しておき、実際の制御結果において制御目標を満たさない場合に調整作業を継続するという継続判断ステップを追加した例を第3の実施の形態として示す。ここで、制御目標とは、例えば、オーバーシュート量や立ち上がり時間、ハンチングの振幅など、制御動作中の制御量PVおよび操作量MVの時系列データ(以下、制御データとする)から算出できる制御結果の特徴値とする。
【0069】
説明を簡単にするために、本実施の形態では、PIDパラメータ調整支援装置に制御データを自動で収集するロギング機能部を設け、ロギング機能部により収集した制御データからユーザが制御目標を設定した項目に対応する特徴値を取得し、この特徴値をユーザが設定した制御目標の設定値と比較することで調整作業の継続判断を行なうこととする。これにより、本実施の形態では、第2の実施の形態と比較してユーザの入力作業を軽減することができる。
【0070】
なお、前記ロギング機能部は説明を簡単にするためのものであり、調整の継続判断に利用する制御データがPIDパラメータ調整支援装置に入力されればよいのであって、装置外部で収集した制御データをユーザが入力してももちろん構わない。すなわち、ロギング機能部をPIDパラメータ調整支援装置内に設けることは必須の構成要件ではない。いずれにしろ、調整の継続判断に関わるユーザの入力作業は軽減される。
【0071】
図9は本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援方法の処理の流れを示すフローチャート、図10は本発明の第3の実施の形態に係るPIDパラメータ調整支援装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置は、入力情報処理部1aと、制御パラメータ調整部2aと、調整情報提示部3aと、調整手順制御部4と、後述する知識型調整部、分析型調整部、経験則型調整部による探索を継続するか否かを判断する調整継続判断部5とから構成される。
【0072】
入力情報処理部1aは、簡易モデリング部11と、制御動作ベースモデリング部12と、制御課題情報入力部13とを有する。制御パラメータ調整部2aは、知識型調整部20aと、分析型調整部21aと、経験則型調整部22とを有する。
【0073】
以下、本実施の形態のPIDパラメータ調整支援装置の動作を図9を用いて説明する。まず、調整継続判断部5は、制御目標を設定するようユーザに要求する。図11に、調整継続判断部5がユーザに制御目標の設定を要求する制御目標設定画面1100の例を示す。ユーザは、例えばオーバーシュート量の目標値として1℃、立ち上がり時間の目標値として180秒を設定する。ここで、調整継続判断部5が制御目標として提示する項目は、制御データから算出可能な特徴値の項目であればよく、オーバーシュート量や立ち上がり時間に限定されない。また、ユーザは最低1種類以上の項目に対して目標値の設定を行なえばよいのであって、例えば図11の例では、立ち上がり時間のみを設定しても構わない。
【0074】
図9のステップS10−2,S10−3,S10−4の処理は、それぞれ図4のステップS4−1,S4−2,S4−3と同様であるので、説明は省略する。ただし、本実施の形態では、調整継続判断部5が分析型の調整に進むかどうかを判断するので、調整情報提示部3aは、第2の実施の形態で説明した調整情報提示画面700のうち、調整完了選択ボタン705と分析型調整手法選択ボタン706とは表示しない。
【0075】
ユーザは、知識型の調整結果であるPIDパラメータをPIDコントローラに設定し、制御対象の制御を実施する。調整継続判断部5は、ロギング機能部(不図示)によって収集された、制御動作中の制御データ(操作量MVと制御量PV)を受け取り(図9ステップS10−5)、この制御データからユーザが制御目標を設定した項目に対応する特徴値(以下、実測特徴値)を取得し、この実測特徴値をユーザが設定した制御目標の設定値と比較して、制御目標を満足しているか否かを判定する(図9ステップS10−6)。
【0076】
調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていれば、制御目標を満足していると判断し(図9ステップS10−6においてYES)、実測特徴値と制御目標とを提示して調整を終了する(図9ステップS10−13)。例えば、制御データから取得したオーバーシュート量の実測特徴値が制御目標1℃以内であれば、制御目標を満足しているとし、立ち上がり時間の実測特徴値が制御目標180秒以下であれば制御目標を満足しているとする。この場合、例えば、オーバーシュート量の実測特徴値が0.5℃で、立ち上がり時間の実測特徴値が175秒であれば、制御目標を満足していると判断してステップS10−13に進むことになる。
【0077】
一方、調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていない場合、制御目標を満足していないと判断し(図9ステップS10−6においてNO)、調整手順制御部4に対して分析型の調整を指示する。
【0078】
図9のステップS10−7,S10−8の処理は、それぞれ図4のステップS4−5,S4−6と同様であるので、詳細な説明は省略する。ただし、本実施の形態では、調整継続判断部5が経験則型の調整に進むかどうかを判断するので、調整情報提示部3aは、第2の実施の形態で説明した調整情報提示画面800のうち、調整完了選択ボタン805と経験則型調整手法選択ボタン806とは表示しない。なお、図9のステップS10−7のモデリングの入力データとしては、図9のステップS10−5で収集した制御データを利用する。
【0079】
ユーザは、分析型の調整結果であるPIDパラメータをPIDコントローラに設定し、制御対象の制御を実施する。調整継続判断部5は、ロギング機能部によって収集された、制御動作中の制御データを受け取り(図9ステップS10−9)、この制御データから実測特徴値を取得し、この実測特徴値をユーザが設定した制御目標の設定値と比較して、制御目標を満足しているか否かを判定する(図9ステップS10−10)。
【0080】
調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていれば、制御目標を満足していると判断し(図9ステップS10−10においてYES)、実測特徴値と制御目標とを提示して調整を終了する(図9ステップS10−13)。また、調整継続判断部5は、実測特徴値が制御目標を基準とする所定の範囲内に入っていない場合、制御目標を満足していないと判断し(図9ステップS10−10においてNO)、調整手順制御部4に対して経験則型の調整を指示する。
【0081】
図9のステップS10−11の処理は、図4のステップS4−8と同様であるので、説明は省略する。
ユーザは、経験則型の調整結果であるPIDパラメータをPIDコントローラに設定し、制御対象の制御を実施する。調整継続判断部5は、ロギング機能部によって収集された、制御動作中の制御データを受け取り(図9ステップS10−12)、この制御データから実測特徴値を取得し、この実測特徴値と制御目標とを提示して調整を終了する(図9ステップS10−13)。
【0082】
なお、図9のステップS10−13の制御目標達成状況の提示では、実測特徴値と制御目標値の提示に加え、制御目標が達成されたか否かの判断結果や、直前に実施した調整タイプおよび調整手法に関する情報を同時に提示するのが好ましい。
以上のように、本実施の形態では、調整作業を継続するか否かを自動的に判断するようにしたので、第2の実施の形態と比較してユーザの入力作業を軽減することができる。
【0083】
第1〜第3の実施の形態におけるPIDパラメータ調整支援装置は、例えばCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、PIDコントローラのPIDパラメータの調整を支援する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,1a…入力情報処理部、2,2a…制御パラメータ調整部、3,3a…調整情報提示部、4…調整手順制御部、5…調整継続判断部、10…モデリング部、11…簡易モデリング部、12…制御動作ベースモデリング部、13…制御課題情報入力部、20,20a…知識型調整部、21,21a…分析型調整部、22…経験則型調整部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整手段と、
前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項2】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、
分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、
経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項3】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、
分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、
経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段による探索を継続するか否かを判断する継続判断手段とを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記情報提示手段は、さらに、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記情報提示手段は、さらに、各調整手法のタイプの解説を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項6】
請求項2、4、5のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記入力情報処理手段は、
前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、
前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、
前記経験則型調整手段が利用する制御課題を入力する制御課題情報入力手段とを有し、
前記調整手順制御手段は、ユーザの指示に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記入力情報処理手段は、
前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、
前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、
前記経験則型調整手段が利用する制御課題をユーザから受ける制御課題情報入力手段とを有し、
前記継続判断手段は、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御した結果から得られた特徴値とユーザが設定した制御目標とを比較することにより、前記PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かを、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段の各処理が終了する度に判断し、
前記調整手順制御手段は、前記継続判断手段の判断に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記知識型の調整手法は、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC法、Cohen Coon法のいずれかにより前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであり、
前記分析型の調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答と予め定められた理想の制御応答特性との近さを示す評価関数値を演算し、PIDパラメータを逐次変更しながらシミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値となるPIDパラメータの推奨値を探索するものであり、
前記経験則型の再調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答に生じた制御課題をユーザに選択させ、選択された制御課題に応じて予め設定されている再調整規則に基づいて前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項9】
知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整ステップと、
前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項10】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、
前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項11】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、
前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップと、
前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップによる探索を継続するか否かを判断する継続判断ステップとを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記情報提示ステップは、さらに、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記情報提示ステップは、さらに、各調整手法のタイプの解説を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項14】
請求項10、12、13のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記入力情報処理ステップは、前記知識型調整ステップが利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリングステップ、前記分析型調整ステップが利用する制御対象のモデルを前記知識型調整ステップの調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリングステップ、前記経験則型調整ステップが利用する制御課題を入力する制御課題情報入力ステップのうち少なくとも1つを実行し、
前記調整手順制御ステップは、ユーザの指示に応じて前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップの順に少なくとも1つのステップに処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項15】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記入力情報処理ステップは、前記知識型調整ステップが利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリングステップ、前記分析型調整ステップが利用する制御対象のモデルを前記知識型調整ステップの調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリングステップ、前記経験則型調整ステップが利用する制御課題を入力する制御課題情報入力ステップのうち少なくとも1つを実行し、
前記継続判断ステップは、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御した結果から得られた特徴値とユーザが設定した制御目標とを比較することにより、前記PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かを、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップの各処理が終了する度に判断し、
前記調整手順制御ステップは、前記継続判断ステップの判断結果に応じて前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップの順に少なくとも1つのステップに処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項1】
知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整手段と、
前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項2】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、
分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、
経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段とを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項3】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理手段と、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整手段と、
分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整手段と、
経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のうち少なくとも1つに処理を実行させる調整手順制御手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段のいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示手段と、
前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段による探索を継続するか否かを判断する継続判断手段とを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記情報提示手段は、さらに、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記情報提示手段は、さらに、各調整手法のタイプの解説を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項6】
請求項2、4、5のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記入力情報処理手段は、
前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、
前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、
前記経験則型調整手段が利用する制御課題を入力する制御課題情報入力手段とを有し、
前記調整手順制御手段は、ユーザの指示に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記入力情報処理手段は、
前記知識型調整手段が利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリング手段と、
前記分析型調整手段が利用する制御対象のモデルを前記知識型調整手段の調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリング手段と、
前記経験則型調整手段が利用する制御課題をユーザから受ける制御課題情報入力手段とを有し、
前記継続判断手段は、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御した結果から得られた特徴値とユーザが設定した制御目標とを比較することにより、前記PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かを、前記知識型調整手段、前記分析型調整手段の各処理が終了する度に判断し、
前記調整手順制御手段は、前記継続判断手段の判断に応じて前記知識型調整手段、前記分析型調整手段、前記経験則型調整手段の順に少なくとも1つの手段に処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援装置において、
前記知識型の調整手法は、Ziegler−Nichols法、CHR法、IMC法、Cohen Coon法のいずれかにより前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであり、
前記分析型の調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答と予め定められた理想の制御応答特性との近さを示す評価関数値を演算し、PIDパラメータを逐次変更しながらシミュレーションを繰り返し実行して、評価関数値が最適値となるPIDパラメータの推奨値を探索するものであり、
前記経験則型の再調整手法は、シミュレーションで得られた制御応答に生じた制御課題をユーザに選択させ、選択された制御課題に応じて予め設定されている再調整規則に基づいて前記PIDパラメータの推奨値を探索するものであることを特徴とするPIDパラメータ調整支援装置。
【請求項9】
知識型の調整手法、分析型の調整手法、経験則型の再調整手法のうち少なくとも2種類のタイプの調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する調整ステップと、
前記PIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項10】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、
前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップとを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項11】
PIDパラメータの探索に必要な情報を獲得する入力情報処理ステップと、
知識型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する知識型調整ステップ、分析型の調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する分析型調整ステップ、経験則型の再調整手法を実行してPIDパラメータの推奨値を探索する経験則型調整ステップのうち少なくとも1つを実行させる調整手順制御ステップと、
前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップのいずれかによる処理を実行する度に、この処理で得られたPIDパラメータの推奨値を提示する情報提示ステップと、
前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップによる探索を継続するか否かを判断する継続判断ステップとを備えることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記情報提示ステップは、さらに、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御するシミュレーションを実行し、このシミュレーションの結果得られた制御応答を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記情報提示ステップは、さらに、各調整手法のタイプの解説を提示することを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項14】
請求項10、12、13のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記入力情報処理ステップは、前記知識型調整ステップが利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリングステップ、前記分析型調整ステップが利用する制御対象のモデルを前記知識型調整ステップの調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリングステップ、前記経験則型調整ステップが利用する制御課題を入力する制御課題情報入力ステップのうち少なくとも1つを実行し、
前記調整手順制御ステップは、ユーザの指示に応じて前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップの順に少なくとも1つのステップに処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【請求項15】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載のPIDパラメータ調整支援方法において、
前記入力情報処理ステップは、前記知識型調整ステップが利用する制御対象のモデルを簡易モデリング手法を用いて生成する簡易モデリングステップ、前記分析型調整ステップが利用する制御対象のモデルを前記知識型調整ステップの調整に基づく制御結果から生成する制御動作ベースモデリングステップ、前記経験則型調整ステップが利用する制御課題を入力する制御課題情報入力ステップのうち少なくとも1つを実行し、
前記継続判断ステップは、前記PIDパラメータの推奨値を設定したPIDコントローラにより制御対象を制御した結果から得られた特徴値とユーザが設定した制御目標とを比較することにより、前記PIDパラメータの推奨値の探索を継続するか否かを、前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップの各処理が終了する度に判断し、
前記調整手順制御ステップは、前記継続判断ステップの判断結果に応じて前記知識型調整ステップ、前記分析型調整ステップ、前記経験則型調整ステップの順に少なくとも1つのステップに処理を実行させることを特徴とするPIDパラメータ調整支援方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−232977(P2011−232977A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103103(P2010−103103)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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