説明

PIVKA−IIアミノ酸13−27に結合する抗体

本発明は、例えば、肝細胞癌(HCC)、肝癌および関連の病状の診断、処置および予防において用いられ得る抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肝細胞癌(HCC)、肝癌および関連の病状の診断、処置および予防において用いられ得る抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
PIVKA−IIは、II因子に特異的なプロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニスト(PIVKA)である。プロトロンビンIIまたはII因子のGLAドメインは、ビタミンKの存在下、合成後修飾を受け、GLAドメインにおける10のグルタミン酸アミノ酸がg−カルボキシグルタミン酸にカルボキシル化されている。カルボキシル化のプロセスは、疾患状態にアブヘレント(abherent)である。それゆえに、PIVKAIIは、HCC患者の場合において上昇することが知られている(Liebmanら、The New England Journal of Medicine(1984年)、310巻(22)、1427−1431頁;Fujiyamaら、Hepato−gastroenterology(1986年)33巻、201−205頁;Marreoら、Hepatology(2003年)、37巻、1114−1121頁)。
【0003】
現在、生物マーカーの使用によってHCCまたは肝癌を検出する非効率的な方法が存在する(Koteishら、J.Vase.Interv.Radiol.、(2002年)、13巻、185−190頁;Yuenら、Best Practice&Research Clinical Gastroenterology(2005年)、19巻、91−99頁;Heraiら、Japanese Journal of Clinical Laboratory Automation(2007年)、32巻(2)、205−210頁;Durazoら、Journal of Gastroenterology and Hepatology(2008年)、23巻、1541−1548頁;Yamaguchiら、Clin.Chem.Lab.Med.(2008年)、46巻(3)、411−416頁も参照されたい)。さらに、このような病状を効率的に検出するための、またはこのような病状を処置するためのイムノアッセイにおいて用いられ得るモノクローナル抗体は殆んど存在しない(Narakiら、Biochemica at Biophysica Acta(2002年)、1586巻、287−298頁)。したがって、腫瘍学において、両方の目的で有効に用いられ得る抗体の開発が極めて必要とされている。
【0004】
本明細書に言及される特許および出版物は全て、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liebmanら、The New England Journal of Medicine(1984年)、310巻(22)、1427−1431頁
【非特許文献2】Fujiyamaら、Hepato−gastroenterology(1986年)、33巻、201−205頁
【非特許文献3】Marreoら、Hepatology(2003年)、37巻、1114−1121頁
【非特許文献4】Koteishら、J.Vase.Interv.Radiol.、(2002年)、13巻、185−190頁
【非特許文献5】Yuenら、Best Practice&Research Clinical Gastroenterology(2005年)、19巻、91−99頁
【非特許文献6】Heraiら、Japanese Journal of Clinical Laboratory Automation(2007年)、32巻(2)、205−210頁
【非特許文献7】Durazoら、Journal of Gastroenterology and Hepatology(2008年)、23巻、1541−1548頁
【非特許文献8】Yamaguchiら、Clin.Chem.Lab.Med.(2008年)、46巻(3)、411−416頁
【非特許文献9】Narakiら、Biochemica at Biophysica Acta(2002年)、1586巻、287−298頁)
【発明の概要】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、HCC、肝癌および関連の肝臓の病状の診断において用いられ得る結合性タンパク質またはモノクローナル抗体に関する。さらに、本発明は、これらの結合性タンパク質(すなわち、モノクローナル抗体)またはその部分を生成および使用する方法も提供する。
【0007】
とりわけ、本発明は、PIVKA−IIの1つ以上のエピトープに結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質または抗体を包含する(3C10と呼ばれる抗体を生成するハイブリドーマは、2008年11月25日にアメリカ培養細胞系統保存機関、10901 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110−2209に寄託されており、PTA−9638の受託番号を受けており、本発明の範囲内にやはり包含される)。
【0008】
より詳しくは、本発明は、PIVKA−IIの1つ以上のエピトープ、好ましくはPIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質(例えば、抗体)に関する。結合性タンパク質は、およそ1.0×10−9Mから1.0×10−11Mまでの範囲の解離定数を有する。
【0009】
本発明の一態様は、上記に開示した結合性タンパク質をコードする単離された核酸分子に関する。さらに、本発明は、上記に開示した単離された核酸を含むベクターを含む。ベクターは、例えば、pcDNA、pTT(Durocherら、Nucleic Acids Research 2002年、30巻、2号)、pTT3(さらなる複数のクローニング部位であるpEFBOS(Mizushima,S.およびNagata,S.、(1990年)Nucleic acids Research、18巻、17号)を有するpTT)、pBV、pJVおよびpBJからなる群から選択されてよい。
【0010】
さらに、本発明は、上記に開示したベクターに形質転換された宿主細胞を含む。宿主細胞が原核細胞であるのが好ましい。宿主細胞がエシェリキア・コリ(E.coli)であるのがより好ましい。宿主細胞は真核細胞であってもよい。真核細胞が、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞および真菌細胞からなる群から選択されるのが好ましい。宿主細胞が、それだけには限定されないがCHO細胞またはCOS細胞を含む哺乳動物細胞、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)などの真菌細胞、またはSf9などの昆虫細胞であるのが好ましい。
【0011】
本発明は、上記で言及したヌクレオチド配列、および抗体の可変重鎖によってコードされるアミノ酸配列も含み、この重鎖は、本明細書に記載する結合性タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0012】
さらに、本発明は、PIVKA−IIの少なくとも1つのエピトープ、好ましくはPIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する結合性タンパク質を生成するのに十分な時間および条件下、上記に開示した宿主細胞のいずれか1つを培地中で培養することを含む、PIVKA−IIの少なくとも1つのエピトープに結合する結合性タンパク質を生成する方法を包含する。
【0013】
また、本発明は、1)試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを有する第1の抗体と、第1の抗体/抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、2)検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物に付着している第2の抗体を含むコンジュゲートを、第1の抗体/抗原複合体に、第1の抗体/抗原/第2の抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、加えるステップ、ならびに3)前記試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、前記シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルの存在を検出するステップを含む、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法を含む。
【0014】
第1の抗体は、PIVKA−IIのアミノ酸13−27(例えば、3C10)に結合する抗原結合性ドメインを含むことができる。これはATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成され得る。
【0015】
さらに、本発明は、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する別の一方法も包含する。この方法は、a)PIVKA−II抗原を、検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物で標識されている、PIVKA−IIに対する抗体と、PIVKA−II抗原/抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、b)PIVKA−II抗原/抗体/抗原複合体を形成するのに十分な時間および条件下、試験試料を前記PIVKA−II抗原/抗体複合体に加えるステップ、ならびにc)試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルの存在を検出するステップを含む。やはり、PIVKA−II抗原に対する抗体は、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含むことができる。また、抗体は、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成され得る。
【0016】
さらに、本発明は、試験試料中のPIVKA−II抗原を検出するさらなる方法を含む。この方法は、1)試験試料を、検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物に付着しているPIVKA−IIレファレンス抗原、およびPIVKA−II抗原に対する抗体と、PIVKA−IIレファレンス抗原/抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、ならびにb)試験試料中に検出されるPIVKA−II抗原の量が、抗体に結合しているPIVKA−IIレファレンス抗原の量に逆比例する、前記シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルを検出するステップを含む。やはり、抗体は、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含むことができる。抗体は、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成され得る。
【0017】
さらに、本発明は、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法を含む。この方法は、1)GANPマウスを、PIVKA−IIのアミノ酸13−27を含む抗原で、マウスが抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、2)マウスの脾臓からB細胞を収集し、精製するステップ、3)ハイブリドーマを生成するために、脾臓細胞をミエローマ細胞と融合するステップ、ならびに4)PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップを含む。ハイブリドーマ細胞系統は、例えば、ATCC受託番号PTA−9638を有するものであってよい。
【0018】
さらに、本発明は、上記に記載した結合性タンパク質および薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物を含む。
【0019】
さらに、本発明は、肝細胞癌(HCC)または肝癌の病状の1つを有すると疑われる患者においてこれらの病状を診断する方法を含む。この方法は、1)患者から生物学的試料を単離するステップ、2)生物学的試料を、PIVKA−II抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下、PIVKA−II抗原のアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む抗体と接触させるステップ、3)試料中のPIVKA−II抗原/抗体複合体の存在を検出するステップ、4)複合体中に存在するPIVKA−II抗原を、複合体中に存在する抗体から解離するステップ、ならびに5)およそ40mAU/mLを超えるPIVKA−II抗原の量が、患者におけるHCCまたは肝癌の診断を示す、解離したPIVKA−II抗原の量を測定するステップを含む(解離したPIVKA−II抗原は、例えば、質量分析計によって測定され得る)。
【0020】
本発明は、HCCまたは肝癌のうちの1つの病状を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌を診断するさらなる方法を含む。この方法は、1)患者から生物学的試料を単離するステップ、2)生物学的試料を、PIVKA−II抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下、PIVKA−II抗原のアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む第1の抗体と接触させるステップ、3)検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物に付着している第2の抗体を含むコンジュゲートを、得られたPIVKA−II抗原/抗体複合体に、結合しているPIVKA−II抗原にコンジュゲートを結合させるのに十分な時間および条件下、加えるステップ、4)シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルを検出することによって、生物学的試料中に存在する可能性があるPIVKA−II抗原の存在を検出するステップ、ならびに5)およそ40mAU/mLを超えるPIVKA−II抗原の量が、前記患者におけるHCCまたは肝癌の診断を示す、シグナルの強度を測定することによって試験試料中に存在するPIVKA−II抗原の量を測定するステップを含む。
【0021】
本発明は、上記に記載した結合性タンパク質または上記に記載したハイブリドーマによって生成されたモノクローナル抗体を含んでいるキットも含む。キットは、指示書のほかに他の構成成分も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】各群において選択されたトップ5つのハイブリドーマに関連するPIVKA−IIおよびプロトロンビンの反応性を示す図である。特に、パネルは、GANPトランスジェニックマウスまたは野生型マウスからのハイブリドーマの、PIVKA−IIおよびプロトロンビンに対する反応性を示す。
【図2】実施例IIIにおいて発生された抗体のシグナルを示す図である。モノクローナル抗体3C10がPIVKA−II抗原に対して最も強い反応性を示した。
【図3】実施例IIにおいて記述した手順に関する、差し引かれたPIVKA−IIシグナルおよびバックグラウンドを示す図である。
【図4】直接結合性実験において測定した、抗原の平衡解離定数(K)を示す図である。Alexa−488標識化されたPIVKAII Glaドメインペプチド(13−27)を0.05nMに保ち、一方BHQ−mAbの濃度を50nMから0.0002nMに変化させた。Alexa488−ペプチドの蛍光シグナルの合計は、BHQ標識化された抗体が結合したときに30%消光された。結合曲線を単純適合モデルに適合させた。
【図5】直接結合性実験において測定した抗原の平衡解離定数(K)を示す図である。Alexa−488標識化されたPIVKAII Glaドメインペプチド(13−27)を0.2nMに保ち、一方mAbの濃度を1μMからナノモル未満に変化させた。異等方性における変化を用いて、リガンド結合の割合を計算する。結合曲線を単純適合モデルに適合させた(Tetin,S.Y.およびT.L.Hazlett、(2000年)、「Optical spectroscopy in studies of antibody−hapten interactions」、Methods、20巻(3)、341−361頁を参照されたい)。
【図6】個々の試料のFCS測定値を示す図である。特に、Alexa488−PIVKAIIペプチド(13−27cyc)2nMを、mAb 3C10 10nMと予備混合した。次いで、様々な量のGlu置換したペプチド(Gla14、Gla16、Gla19、Gla20、Gla25、Gla26)を、抗原−抗体複合体に加えた。一夜のインキュベート後、各試料に対してFCS測定を行った。Alexa488−PIVKAII(13−27)の拡散係数における変化を用いて、Glu置換したペプチドによって置換されているAlexa−488PIVKAIIペプチドの割合を計算した。
【図7】各試料のさらなるFCS測定を示す図である。特に、Alexa488−PIVKAIIペプチド(13−27cyc)2nMを、mAb 3C10 10nMと予備混合した。異なる調製物からの様々な量のPIVKAIIを抗原−抗体複合体に加えた。一夜のインキュベート後、各試料に対してFCS測定を行った。Alexa488−PIVKAII(13−27)の拡散係数における変化を用いて、PIVKAIIによって置換されているAlexa−488PIVKAIIペプチドの割合を計算した。
【図8】様々なPIVKAII Glaドメイン(13−27)類似体の、Alexa488−PIVKAII(13−27)およびmAb 3C10との競合的結合性の測定を用いてmAb 3C10との交差反応性を試験したときに得られた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な記述)
特定の一実施形態によると、本発明は抗体に関し、特に、PIVKA−IIの1つ以上のエピトープに、1×10−7Mまたはそれ未満のK、好ましくは1×10−7Mから1×10−11Mまでの範囲のKで結合するモノクローナル抗体に関する。特に、本発明の結合性タンパク質または抗体は、約1×10−9またはそれを超える、好ましくは約1×10−10またはそれを超える、より好ましくは約1×10−11Mまたはそれを超える、PIVKA−IIのアミノ酸領域13−27に対する解離定数(K)を有する。抗体は、PIVKA−IIを特異的に認識し結合することができる。抗体がPIVKA−IIに結合した後は、例えば、PIVKA−VII、PIVKA−タンパク質C、PIVKA−タンパク質S、PIVKA−タンパク質、およびPIVKA−IXなどの他のPIVKAによって置換されない。抗体がPIVKA−IIおよびPIVKA−Xに同時に曝露された場合、本発明の3C10抗体は、PIVKA−IIよりもPIVKA−Xに対して10倍低い親和性を有することは注目すべきことである。
【0024】
本発明は、本発明の抗体の可変軽鎖および可変重鎖をコードする単離されたヌクレオチド配列(およびそれらのフラグメント)、ならびにこれらのコードヌクレオチド配列に少なくとも約70%(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%もしくは79%)、好ましくは少なくとも約80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%)、より好ましくは少なくとも約90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%)同一な配列を含む、またはそれらに対応する、同一である、ハイブリダイズ可能である、もしくは相補的である配列を有するヌクレオチド配列(またはそれらのフラグメント)も含む。(70%と100%の間(これらの値を含む)の整数(およびこれらの部分)は全て、パーセント同一性に関して本発明の範囲内にあるとみなされる。)このような配列はあらゆる源に由来していてよい(例えば、天然の供給源から単離され、半合成的な経路によって生成され、または新規に合成され、のいずれか)。特に、このような配列は、例に記載されている以外の源(例えば、細菌、真菌、藻類、マウスもしくはヒト)から単離されてよく、または由来していてよい。
【0025】
上記に記載したヌクレオチド配列の他に、本発明は、本明細書に記載する抗体の可変軽鎖および可変重鎖のアミノ酸配列(またはこれらのアミノ酸配列のフラグメント)も含む。さらに、本発明は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列に、少なくとも約70%(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%もしくは79%)、好ましくは少なくとも約80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%もしくは89%)、より好ましくは少なくとも約90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%)同一である配列を含む、またはそれらに対応する、同一である、もしくは相補的であるアミノ酸配列(またはそれらのフラグメント)も含む。(やはり、70%と100%の間(これらの値を含む)の整数(およびこれらの部分)は全て、(上記に注目したヌクレオチド配列の同一性に関して列挙したのと同様)パーセント同一性に関して本発明の範囲内にあるとみなされる)。
【0026】
本発明の目的で、ヌクレオチド配列の「フラグメント」は、指定されるヌクレオチド配列の領域に対応する、少なくともおよそ6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドの近接する配列と定義される。
【0027】
「同一性」の語は、特定の比較ウインドウまたはセグメントにわたる、ヌクレオチドごとをベースとした2つの配列の関連性を意味する。したがって、同一性は、2つのDNAセグメント(もしくは2つのアミノ酸配列)の同じ鎖(センスもしくはアンチセンスのいずれか)間の酷似の度合い、一致の度合い、または同等性の度合いと定義される。「配列同一性のパーセント値」は、特定の領域にわたって最適にアラインされている2つの配列を比較し、マッチする位置の数をもたらすために両方の配列において生じる同一の塩基またはアミノ酸の位置の数を決定し、このような位置の数を比較されるセグメントにおける合計数によって除し、結果に100を乗じることによって算出される。配列の最適なアラインメントは、Smith&Waterman、Appl.Math.、2巻、482頁(1981年))のアルゴリズムによって、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.、48巻、443頁(1970年)のアルゴリズムによって、Pearson&Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、85巻、2444頁(1988年)の方法によって、および関連のアルゴリズムを実行するコンピュータプログラム(例えば、Clustal Macaw Pileup(http://cmgm.stanford.edu/biochem218/11Multiple.pdf;Higginsら、CABIOS.5L151−153頁(1989年))によって、FASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら、Nucleic Acids Research、25巻:3389−3402頁(1997年))、PILEUP(Genetics Computer Group、Madison、WI)またはGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release、7.0、Genetics Computer Group、Madison、WI)によって行われ得る。(米国特許第5,912,120号を参照されたい)。
【0028】
本発明の目的で、「相補性」は、2つのDNAセグメント間の関連性の度合いと定義される。これは、二重らせんを形成するのに好適な条件下、他のDNAセグメントのアンチセンス鎖とハイブリダイズするセンス鎖の1DNAセグメントの能力を測定することによって決定される。「コンプリメント(complement)」は、基準の塩基対ルールに基づいて所与の配列と対になる配列と定義される。例えば、1ヌクレオチド鎖における配列A−G−Tは、他の鎖におけるT−C−Aに「相補的」である。
【0029】
二重らせんにおいて、アデニンが一方の鎖に出現し、チミンが他方の鎖に出現する。同様に、一方の鎖においてグアニンが見出される場合はいつでも、他方にシトシンが見出される。2つのDNAセグメントのヌクレオチド配列間の関連性が大きいほど、2つのDNAセグメントの鎖間にハイブリッドの二本鎖を形成する能力が大きい。
【0030】
2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、両配列における、一連の同一で、保存されているアミノ酸残基の存在と定義される。2つのアミノ酸配列間の類似性の度合いが高いほど、2つの配列の一致性、同一性または同等性は高い。(2つのアミノ酸配列間の同一性は、両方の配列における一連の全く同様または不変のアミノ酸残基の存在と定義される。)「相補性」、「同一性」および「類似性」の定義は、当業者にはよく知られている。
【0031】
「によってコードされる」は、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を意味し、ポリペプチド配列またはその部分は、核酸配列によってコードされるポリペプチドから、少なくとも3個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも8個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15個のアミノ酸のアミノ酸配列を含んでいる。
【0032】
本明細書で用いられる「生物学的活性」は、PIVKA−IIの固有の生物学的性質全てを意味する。このような性質は、例えば、本明細書に記載する抗体に結合する能力を含む。
【0033】
本明細書で用いられる「機能的同等物」は、本発明の抗体と同じ特徴(例えば、結合親和性)を有するタンパク質(例えば、抗体)を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「ポリペプチド」の語は、アミノ酸のあらゆるポリマー鎖を意味する。「ペプチド」および「タンパク質」の語はポリペプチドの語と交換可能に用いられ、アミノ酸のポリマー鎖をやはり意味する。「ポリペプチド」の語は、天然のタンパク質または人工のタンパク質、タンパク質フラグメントおよびタンパク質配列のポリペプチド類似体を包含する。ポリペプチドはモノマー性でも、またはポリマー性でもよい。
【0035】
「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」の語は、その起源または由来の源によって、その天然の状態においてそれに付随する天然に関連する構成成分に関連しないタンパク質またはポリペプチドであり、同じ種からの他のタンパク質が本質的になく、異なる種からの細胞によって発現され、または天然に存在しない。したがって、化学的に合成されるポリペプチド、またはそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞のシステムにおいて合成されるポリペプチドは、その天然に関連する構成成分から「単離されて」いる。タンパク質は、また、当技術分野においてよく知られているタンパク質精製技術を用いて、単離することによって、天然に関連する構成成分が本質的にないようにされてよい。
【0036】
本明細書で用いられる「回収する」の語は、例えば、当技術分野においてよく知られているタンパク質精製技術を用いて、単離によって天然に関連する構成成分が本質的にないポリペプチドなどの化学種にするプロセスを意味する。
【0037】
本明細書で用いられる「特異的結合」または「特異的に結合する」の語は、抗体、タンパク質またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原性決定基もしくはエピトープ)の存在に依存することを意味し、例えば、抗体は、一般的にタンパク質よりもむしろ特異的なタンパク質構造を認識し、結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識化されている「A」および抗体を含む反応における、エピトープA(または遊離の、非標識のA)を含む分子の存在は、抗体に結合する標識化されているAの量を低減する。
【0038】
本明細書で用いられる「抗体」の語は、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖からなるあらゆる免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の本質的なエピトープ結合性の性質を保持している、あらゆる機能上のこれらのフラグメント、変異体、変形もしくは誘導を広く意味する。このような変異体、変形、または誘導体の抗体のフォーマットは、当技術分野において知られている。この非制限的な実施形態を以下に論じる。
【0039】
全長の抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインからなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域に散りばめられる、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。VHおよびVLは各々、以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番においてアミノ末端からカルボキシ末端まで配列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。免疫グロブリン分子はあらゆるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってよい。
【0040】
本明細書で用いられる、抗体の「抗原結合性部分」(または、単に「抗原部分」)の語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを意味する(例えば、PIVKA−IIの1つ以上のエピトープ)。抗体の抗原結合性の機能は、全長の抗体の1つ以上のフラグメントによって行われ得ることが示されている。このような抗体の実施形態は、二重特異性(bispecific)、二特異性(dual specific)、または多重特異性であってもよく、2つまたはそれを超える異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合性部分」の語の範囲内に包含される結合性フラグメントの例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる1価のフラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結されている2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)単一の可変ドメインを含むDAbフラグメント(Wardら、(1989年)Nature、341巻、544−546頁、本明細書に参照により組み込む、Winterら、国際出願公開番号WO90/05144 A1)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは組換え方法を用いて、VL領域およびVH領域の対が1価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されるのを可能にする合成のリンカーによって、連結され得る(単鎖Fv(scFv)として知られている、例えば、Birdら(1988年)Science、242巻、423−426頁、およびHustonら(1988年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85巻、5879−5883頁を参照されたい)。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合性部分」の語の範囲内に包含される。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは2価の、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現される二重特異性抗体であるが、非常に短いので同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするリンカーを用いて、それによってドメインを別の鎖の相補的なドメインと対を作らせ、2つの抗原結合性部位を作り出す(例えば、Holliger,P.ら(1993年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、6444−6448頁;Poljak,R.J.ら(1994年)Structure、2巻、1121−1123頁を参照されたい)。このような抗体結合性部分は当技術分野において知られている(KontermannおよびDubel編、Antibody Engineering(2001年)Springer− Verlag.、New York、790頁(ISBN3−540−41354−5)。本明細書で用いられる「抗体構築物」の語は、リンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインに連結している、本発明の抗原結合性部分を1つ以上含むポリペプチドを意味する。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合によって連結されている2つまたはそれを超えるアミノ酸残基を含み、1つ以上の抗原結合性部分に連結させるのに用いられる。このようなリンカーポリペプチドは当技術分野においてよく知られている(例えば、Holliger,P.ら(1993年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、6444−6448頁;Poljak,R.J.ら(1994年)Structure、2巻、1121−1123頁を参照されたい)。免疫グロブリン定常ドメインは、重鎖または軽鎖の定常ドメインを意味する。ヒトIgGの重鎖および軽鎖の定常ドメインのアミノ酸配列は当技術分野において知られている。
【0041】
その上さらに、抗体またはその抗原結合性部分は、抗体または抗体の部分の、1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合性または非共有結合性の会合によって形成される、より大型の免疫接着分子の部分であってよい。このような免疫接着分子の例は、四量体のscFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov、S.M.ら(1995年)Human Antibodies and Hybridomas、6巻、93−101頁)、ならびに2価のビオチン化したscFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov、S.M.ら(1994年)Mol.Immunol.、31巻、1047−1058頁)を含む。FabおよびF(ab’)2フラグメントなどの抗体の部分は、抗体全体から、抗体全体の、それぞれパパイン消化またはペプシン消化などの従来の技術を用いて調製され得る。さらに、抗体、抗体の部分および免疫接着分子は、本明細書に記載する標準の組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0042】
本明細書で用いられる「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体(例えば、本発明の抗体が反応性であるPIVKA−IIの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合し、PIVKA−II内に存在するもの以外の抗原またはエピトープに特異的に結合する抗体が本質的にない、単離された抗体)を意味するものとされる。
【0043】
「Kabatナンバリング」、「Kabatの定義」および「Kabatラべリング」は、本明細書において交換可能に用いられる。これらの語は、当技術分野において認められており、抗体の重鎖および軽鎖可変領域、またはその抗原結合性部分において、他のアミノ酸残基よりも可変性である(すなわち、超可変性である)アミノ酸残基を番号付けるシステムを意味する(Kabatら(1971年)Ann.NY Acad、Sci.、190巻、382−391頁、およびKabat,E.A.ら(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication、第91−3242)。
【0044】
本明細書で用いられる「CDR」の語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を意味する。重鎖および軽鎖の各可変領域において3個のCDRが存在し、これらは各可変領域に対してCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれている。本明細書で用いられる「CDRセット」の語は、抗原に結合することができる単一の可変領域中に生じる1グループの3個のCDRを意味する。これらCDRの正確な境界は、様々なシステムにしたがって様々に定義されている。Kabatによって記載されているシステムは(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、MD(1987年)および(1991年))、抗体のあらゆる可変領域に適用可能な明確な残基のナンバリングシステムを提供するだけでなく、3個のCDRを規定する正確な残基の境界も提供する。これらCDRはKabatのCDRと呼ばれることがある。Chothiaら(Chothia&Lesk、J.Mol.Biol.、196巻、901−917頁(1987年)、およびChothiaら、Nature、342巻、877−883頁(1989年))は、KabatのCDR内のあるサブ部分が、アミノ酸配列のレベルで際立った多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一のペプチドのバックボーンの高次構造を適用していることを見出した。これらサブ部分はL1、L2およびL3、またはH1、H2およびH3と呼ばれ、「L」および「H」はそれぞれ軽鎖および重鎖の領域をさす。これらの領域はChothiaのCDRと呼ばれることがあり、KabatのCDRと重複する境界を有する。KabatのCDRと重複するCDRを規定する他の境界はPadlan(FASEB J.、9巻、133−139頁(1995年))、およびMacCallum(J Mol Biol、262巻(5)、732−45頁(1996年))によって記載されている。さらに他のCDR境界の定義は、上記のシステムの1つに厳密に従わなくてもよいが、特定の残基もしくは残基のグループ、またはさらにCDR全体が抗原結合性に著しく影響を及ぼさないという予測または実験上の知見を考慮して短縮または延長され得るとはいえ、それにもかかわらずKabatのCDRと重複する。本明細書で用いられる方法は、あらゆるこれらのシステムにしたがって規定されるCDRを利用することがあるが、好ましい実施形態はKabatまたはCothiaが規定したCDRを用いるものである。
【0045】
本明細書で用いられる「基準の」残基の語は、Chothiaら(両方とも参照により本明細書に組み込む、J.Mol.Biol.、196巻、901−907頁(1987年);Chothiaら、J.Mol.Biol.、227巻、799頁(1992年))によって規定される特定の基準のCDR構造を規定するCDRまたはフレームワークにおける残基を意味する。Chothiaらによると、多くの抗体のCDRの決定的な部分は、アミノ酸配列のレベルで際立った多様性があるのにかかわらず、ほぼ同一のペプチドバックボーンの高次構造を有する。各々の基準の構造は、ループを形成するアミノ酸残基の近接するセグメントに対して1セットのペプチドバックボーンのねじれ角を主に特定する。
【0046】
本明細書で用いられる「主要な」残基の語は、抗体、とりわけヒト化抗体の結合特異性および/または結合親和性に対してより影響を有する可変領域内のある残基を意味する。主要な残基は、それだけには限定されないが、以下の1つ以上:CDRに隣接する残基、潜在的なグリコシル化部位(N−グリコシル化部位またはO−グリコシル化部位のいずれかであってよい)、稀な残基、抗原と相互作用することができる残基、CDRと相互作用することができる残基、基準の残基、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の接触残基、バーニヤゾーン(Vernier zone)内の残基、Cothiaの定義の可変重鎖CDR1とKabat定義の第1の重鎖フレームワークとの間の重複する領域における残基を含む。
【0047】
本明細書で用いられる「バーニヤ」ゾーンは、FooteおよびWinter(参照により本明細書に組み込む、1992年、J.Mol.Biol.、224巻、487−499頁)によって記載される、CDR構造に調節し、抗原に対する結合を微調整することができるサブセットのフレームワーク残基を意味する。バーニヤゾーン残基は、CDRの根底をなす層を形成し、抗体のCDRの構造および親和性に影響を及ぼすことがある。
【0048】
「活性」の語は、本発明の抗体が反応性である抗原または抗原(複数)などの、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性などの活性を含む。
【0049】
「エピトープ」の語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができるあらゆるポリペプチドの決定基を含む。ある実施形態において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖の側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面のグループ分けを含み、ある実施形態において、特異的な3次元構造の特徴、および/または特異的な電荷の特徴を有することがある。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。ある実施形態において、抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複合体混合物においてその標的抗原を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0050】
本明細書で用いられる「表面プラズモン共鳴法」の語は、例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度における変更を検出することによって、リアルタイムの生体分子特異的な相互作用を分析することができる光学的現象を意味する。更なる記載には、Jonsson、U.ら(1993年)Ann.Biol.Clin.、51巻、19−26頁;Jonsson、U.ら(1991年) Biotechniques、11巻、620−627頁;Johnsson,B.ら(1995年)J.Mol.Recognit.、8巻、125−131頁;およびJohnnson、B.ら(1991年)Anal.Biochem.、198巻、268−277頁を参照されたい。
【0051】
本明細書で用いられる「Kon」の語は、当技術分野において知られている、抗体が抗原に対して会合して抗体/抗原複合体を形成するオンの速度定数を意味するものとされる。
【0052】
本明細書で用いられる「Koff」の語は、当技術分野において知られている、抗体が抗体/抗原複合体から解離するオフの速度定数を意味するものとされる。
【0053】
本明細書で用いられる「K」の語は、当技術分野において知られている、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を意味するものとされる。
【0054】
本明細書で用いられる「標識化されている結合性タンパク質」の語は、結合性タンパク質の同定をもたらす、組み入れられている標識を有するタンパク質を意味する。好ましくは、標識は検出可能なマーカー、例えば、放射標識されたアミノ酸の組入れ、または標識化されているアビジンによって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドに対する付着である(例えば、光学的方法または比色法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)。ポリペプチドに対する標識の例は、それだけには限定されないが、以下:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Hoまたは153Sm)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド、リン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、2次レポーターによって認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、2次抗体に対する結合性部位、金属結合性ドメイン、エピトープタグ)、ならびにガドリニウムキレートなどの磁性物質を含む。
【0055】
「抗体コンジュゲート」の語は、治療物質または細胞毒性物質などの第2の化学部分に化学的に連結している、抗体などの結合性タンパク質を意味する。「物質」の語は、本明細書において、化学物質、化学物質の混合物、生物学的巨大分子、または生物学的材料から作られる抽出物を表すのに用いられる。好ましくは、治療物質または細胞毒性物質は、それだけには限定されないが、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシン、ならびにこれらの類似体またはホモログを含む。
【0056】
本明細書で用いられる「結晶」および「結晶化した」の語は、結晶の形態において存在する抗体またはその抗原結合性部分を意味する。結晶は、無定形な固体状態または液晶状態などの他の形態とは異なる、物質の固体状態の一形態である。結晶は、規則的な、繰り返しの、三次元の、原子、イオン、分子(例えば、抗体などのタンパク質)、または分子アセンブリ(例えば、抗原/抗体複合体)の配列からなる。これら3次元の配列は、当技術分野において十分理解されている特定の数学的関係にしたがって配列されている。結晶において繰り返される根本的な単位または構築ブロックは、非対称ユニットと呼ばれる。所与の、明確な、結晶学的な対称性に合致させる整列における非対称ユニットの繰返しが、結晶の「単位格子」を提供する。全ての3次元における規則的な翻訳による単位格子の繰返しが結晶を提供する。Giege,R.およびDucruix,A.Barrett、Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach、第2版、20頁、1−16、Oxford University Press、New York、New York、(1999年)を参照されたい。
【0057】
本明細書に言及される「ポリヌクレオチド」の語は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾型の、2つまたはそれを超えるヌクレオチドのポリマー型を意味する。この語は、一重鎖および二重鎖の形態のDNAを含むが、二重鎖DNAが好ましい。
【0058】
本明細書で用いられる「単離されたポリヌクレオチド」の語は、その起源のせいで、「単離されたポリヌクレオチド」が天然において見られるポリヌクレオチドの全部または部分と関連せず、天然において連結していないポリヌクレオチドに操作可能に連結しており、またはより大型の配列の部分として天然において存在しない、(例えば、ゲノム起源、cDNA起源、もしくは合成起源の、またはこれらのいくつかの組合せの)ポリヌクレオチドを意味する。
【0059】
本明細書で用いられる「ベクター」の語は、それに連結されている別の核酸を運搬することができる核酸分子を意味するものとされる。一タイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、その中にさらなるDNAセグメントがライゲートされ得る環状二重鎖DNAループを意味する。別の一タイプのベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。ある種のベクターは、その中にベクターが導入された宿主細胞において自主的に複製することができる(例えば、細菌の複製開始点およびエピソームの哺乳動物ベクターを有する細菌ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソームの哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入されたときに宿主細胞のゲノム中に組入れられ得、それによって宿主のゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、それに対して操作可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般的に、組換えDNA技術において有用性のある発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に用いられる形態のベクターであるとして、交換可能に用いられてよい。しかし、本発明は、等価の機能を供給するウイルスベクター(例えば、複製欠損のレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)など、このような他の形態の発現ベクターを含むものとされる。
【0060】
「操作可能に連結している」の語は並置を意味し、記載されている構成成分が意図されたやり方において機能するのを可能にする関係にある。コード配列に「操作可能に連結している」制御配列は、制御配列に適合する条件下、コード配列の発現が実現される方法でライゲートされている。「操作可能に連結している」配列は、対象の遺伝子と近接する発現制御配列、およびトランスにおいて、または対象の遺伝子を制御する距離で作用する発現制御配列の両方を含む。本明細書で用いられる「発現制御配列」の語は、それに対してライゲートしているコード配列の発現およびプロセシングをもたらすのに必要であるポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列は、好適な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質のmRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;ならびに所望の場合、タンパク質分泌を増強する配列を含む。このような制御配列の性質は宿主の生物体に応じて異なり;原核生物において、このような制御配列は一般的にプロモーター、リボソーム結合部位および転写終結配列を含み、真核生物において、このような制御配列は一般的にプロモーターおよび転写終結配列を含む。「制御配列」の語は、その存在が発現およびプロセシングに不可欠である構成成分を含むものとされ、リーダー配列および融合パートナー配列など、その存在が有利であるさらなる構成成分も含むことができる。
【0061】
本明細書において規定する「形質転換」は、それによって外来のDNAが宿主細胞に入るあらゆるプロセスを意味する。形質転換は、当技術分野においてよく知られている様々な方法を用いて、天然または人工的な条件下で生じ得る。形質転換は、外来の核酸配列の、原核生物または真核生物の宿主細胞中への挿入のためのあらゆる知られている方法によるものでよい。方法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、それだけには限定されないが、ウイルス感染、電気穿孔、リポフェクションおよび微粒子銃を含むことができる。このような「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが自己複製するプラスミドとして、または宿主の染色体の一部としてのいずれかで複製することができる、安定に形質転換された細胞を含む。これらはまた、限られた期間、挿入されたDNAまたはRNAを一過性に発現する細胞も含む。
【0062】
本明細書で用いられる「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)の語は、その中に外来のDNAが導入されている細胞を意味するものとされる。このような語は、特定の対象の細胞だけを意味するものとされるのではなく、このような細胞の子孫も意味するものとされることを理解すべきである。ある種の修飾は、変異または環境の影響のいずれかのせいで後世において生じることがあるので、このような子孫は、実際、親細胞と同じではないかもしれないが、本明細書で用いられる「宿主細胞」の語の範囲内に依然として含まれる。宿主細胞は、生命のあらゆる界から選択される原核細胞および真核細胞を含んでいるのが好ましい。好ましい真核細胞は、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞および動物細胞を含む。最も好ましくは、宿主細胞は、それだけには限定されないが、原核細胞系統エシェリキア・コリ;哺乳動物細胞系統CHO、HEK293およびCOS;昆虫細胞系統Sf9;および真菌細胞サッカロミセス・セレビシアエを含む。
【0063】
標準的な技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織の培養および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に用いられてよい。酵素反応および精製の技術は、製造元の規格にしたがって、または当技術分野において一般的に行われ、もしくは本明細書に記載される通りに行われてよい。前述の技術および手順は、一般的に、当技術分野においてよく知られている従来の方法にしたがって、および本明細書を通して引用され、論じられる様々な一般的でより詳しい参照に記載されている通りに行われてよい。例えば、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年))を参照されたい。
【0064】
当技術分野において知られており、本明細書で用いられる「トランスジェニック生物体」は、導入遺伝子を含む細胞を有する生物体を意味し、生物体(または、生物体の先祖)中に導入される導入遺伝子は、生物体において天然に発現されないポリペプチドを発現する。「導入遺伝子」は、それからトランスジェニック生物体が発生し、トランスジェニック生物体の1つ以上の細胞型または組織においてコードされた遺伝子産物の発現を指示する、細胞のゲノム中に安定に、操作可能に組み入れられるDNA構築物である。
【0065】
「調節する」および「モジュレートする」の語は交換可能に用いられ、本明細書で用いられる通り、対象の分子の活性における変化または変更を意味し、モジュレーションは対象の分子のある種の活性または機能の大きさにおける増大または低減であってよい。例示の分子の活性および機能は、それだけには限定されないが、結合性の性質、酵素活性、細胞受容体活性化およびシグナル伝達を含む。
【0066】
同様に、本明細書で用いられる「モジュレーター」の語は、対象の分子の活性または機能を変化または変更することができる化合物である。例えば、モジュレーターは、モジュレーターの非存在下で観察される活性または機能の大きさに比べて、分子のある種の活性または機能の大きさにおける増大または低減を引き起こすことができる。ある実施形態において、モジュレーターは、分子の活性または機能の少なくとも1つの大きさを低減するインヒビターである。例示のインヒビターは、それだけには限定されないが、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディ(peptibody)、炭水化物または有機小分子を含む。ペプチボディは、例えば、国際出願公開番号WO01/83525に記載されている。
【0067】
本明細書で用いられる「アゴニスト」の語は、対象の分子と接触させた場合、アゴニストの非存在下で観察される活性または機能の大きさに比べて、分子のある種の活性または機能の大きさにおける増大を引き起こすモジュレーターを意味する。
【0068】
本明細書で用いられる「アンタゴニスト」または「インヒビター」の語は、対象の分子と接触させた場合、アンタゴニストの非存在下で観察される活性または機能の大きさに比べて、分子のある種の活性または機能の大きさにおける低減を引き起こすモジュレーターを意味する。
【0069】
本明細書で用いられる「有効量」の語は、障害または1つ以上のその症状の重症度および/または期間を低減または改善し、障害の前進を予防し、障害の退行をもたらし、障害に伴う1つ以上の症状の再発、発症、開始または進行を予防し、障害を検出し、または別の治療(例えば、予防薬または治療薬)の予防効果または治療効果(1つ以上)を増強もしくは改善するのに十分である治療の量を意味する。
【0070】
本明細書で用いられる「試料」の語は、その最も広い意味において用いられる。本明細書で用いられる「生物学的試料」は、それだけには限定されないが、生存するものまたは以前に生存したものからのあらゆる量の物質を含む。このような生存するものは、それだけには限定されないが、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギおよび他の哺乳動物または非哺乳動物の動物を含む。このような物質は、それだけには限定されないが、血液、血清、尿、滑液、細胞、臓器、組織(例えば、脳)、骨髄、リンパ節、脳脊髄液および脾臓を含む。
【0071】
本明細書において別段の規定がなければ、本発明に関連して用いられる科学技術用語は、当業者によって通常理解される意味を有する。用語の意味および範囲は明確でなければならないが、あらゆる潜在的な不明確さの場合には、本明細書に提供される定義が、あらゆる辞書上の、または本質的でない定義を凌いで前例を取る。さらに、状況によって他の方法が必要とされなければ、単数の語は複数を含み、複数の語は単数を含む。本出願において、別段の記載がなければ、「または」の使用は「および/または」を意味する。さらに「含んでいる(including)」の語、ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は限定的なものではない。また、「エレメント」または「構成成分」などの語は、特に別段の記載がなければ、1つのユニットおよびエレメントを含むエレメントおよび構成成分、ならびに1つを超えるサブユニットを含むエレメントおよび構成成分の両方を包含する。
【0072】
一般的に、本明細書に記載する、細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸の化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名法および技術はよく知られており、当技術分野において一般的に用いられているものである。本発明の方法および技術は、一般的に、当技術分野においてよく知られている従来の方法にしたがって行われ、別段の指摘がなければ本明細書を通して引用され、論じられる様々な一般的な、より詳しい参照に記載される通りに行われる。酵素反応および精製技術は、製造元の規格にしたがって、当技術分野において一般的に達成される通り、または本明細書に記載される通りに行われる。本明細書に記載する、分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品化学および薬剤化学に関連して、またこれらの検査法および検査技術において用いられる命名法は、当技術分野においてよく知られており、一般的に用いられているものである。化学合成、化学分析、薬剤調製、調合および送達、ならびに患者の処置に、標準的技術が用いられる。
【0073】
本発明にしたがって、特に、本発明の抗体の結合親和性を評価する目的で、プロセスは、参照により本明細書に組み込む、国際出願公開番号WO2004/067561に記載されている通りに用いられてよい。前記プロセスは、天然の、組換えもしくは合成のペプチド、またはその誘導体をアンフォールディングし;少なくとも部分的にアンフォールディングされたペプチドまたはその誘導体を洗剤に曝し、洗剤の作用を低減し、インキュベートを続けることを含む。
【0074】
ペプチドをアンフォールディングする目的で、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)などの水素結合破壊剤(hydrogen bond−breaking agent)が、タンパク質に対して作用させられてもよい。作用温度が約20℃から50℃までである場合、とりわけ約35℃から40℃までである場合、約10分から60分までなど、数分の作用時間で十分である。蒸発乾固された残渣は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの水性バッファーと混和性の適切な有機溶媒中、好ましくは濃縮された形態において引き続き溶解され、少なくとも部分的にアンフォールディングされたペプチドまたはその誘導体の懸濁液がもたらされてこれが引き続き用いられてよい。必要であれば、懸濁貯蔵液は、約−20℃などの低温でしばらく貯蔵されてよい。
【0075】
別法として、ペプチドまたはその誘導体は、約10mMのHCl水溶液など、わずかに酸性の、好ましくは水溶液中に取り込まれてもよい。通常数分のインキュベート時間の後、不溶性成分は遠心分離によって除去される。10000gで数分が好都合である。これらの方法のステップは、室温、すなわち20℃から30℃までの範囲の温度で行うのが好ましい。遠心分離後に得られた上清は、ペプチドまたはその誘導体を含んでおり、しばらくの間、約−20℃などの低温で貯蔵してもよい。
【0076】
A.モノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはこれらの組合せの使用を含む、当技術分野において知られている広範囲の技術を用いて調製され得る。例えば、本発明のモノクローナル抗体は、当技術分野において知られており、教示されているものを含むハイブリドーマ技術、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas」、563−681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)(前記参照はその全文が参照により組み込まれる)を用いて生成されるのが好ましい。本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」の語は、ハイブリドーマ技術によって生成される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」の語は、あらゆる真核生物、原核生物、またはファージクローンを含めた単一のクローンに由来する抗体を意味し、それによってそれが生成される方法ではない。
【0077】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的な抗体を生成し、スクリーニングするための技術は、当技術分野において日常的であり、よく知られている。一実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体、および本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法によって生成される抗体を産生する方法を提供し、ハイブリドーマは、本発明の抗原で免疫化されたマウスから単離される脾細胞をミエローマ細胞と融合し、次いで本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに対して、融合物から得られるハイブリドーマをスクリーニングすることによって産生されるのが好ましい。簡潔に述べると、マウスは対象の抗原で免疫化され得る。好ましい一実施形態において、抗原は、免疫反応を刺激するためのアジュバントと一緒に投与される。このようなアジュバントは、フロイントの完全アジュバントもしくは不完全アジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激性複合体)を含む。このようなアジュバントは、局所沈着物中にポリペプチドを捕捉することによって速やかな分散からポリペプチドを保護することがあり、またはこれらはマクロファージおよび免疫系の他の構成成分に対して走化性である因子を分泌するように宿主を刺激する物質を含んでいることがある。好ましくは、ポリペプチドが投与される場合、免疫化のスケジュールは、数週間に渡って拡散される、ポリペプチドの2つまたはそれを超える投与を伴う。
【0078】
動物が抗原で免疫化された後、抗体および/または抗体産生細胞は動物から得ることができる。抗体を含有する血清は、動物から、動物を出血させ、または屠殺することによって得られる。血清は、動物からそれが得られたまま用いられてよく、免疫グロブリン分画は血清から得られてよく、または抗体は血清から精製されてよい。このやり方で得られた血清または免疫グロブリンはポリクローナルであり、したがって不均一な配列の性質を有する。
【0079】
例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されるなど、免疫反応が検出された後、マウスの脾臓を収集し、脾細胞を単離する。次いで、脾臓細胞を、よく知られている技術によって、アメリカ培養細胞系統保存機関(Manassas、VA)から入手できる細胞系統SP20からの細胞など、あらゆる適切なミエローマ細胞に融合する。ハイブリドーマを選択し、限外希釈法によってクローニングする。次いで、ハイブリドーマクローンを、対象のペプチドまたは抗原に結合することができる抗体を分泌する細胞に対して、当技術分野において知られている方法によってアッセイする。一般的に高レベルの抗体を含んでいる腹水は、ポジティブのハイブリドーマクローンで免疫化したマウスによって産生され得る。
【0080】
別の実施形態において、抗体生成性の不死化ハイブリドーマは、免疫化した動物から調製され得る。免疫化後、動物を屠殺し、当技術分野においてよく知られている通り、脾臓B細胞を不死化したミエローマ細胞と融合する。例えば、上述HarlowおよびLaneを参照されたい。好ましい一実施形態において、ミエローマ細胞は免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌性細胞系統)。融合および抗生物質選択の後、ハイブリドーマは、抗原もしくはその部分、または抗原を発現する細胞を用いてスクリーニングされる。好ましい一実施形態において、最初のスクリーニングは、酵素結合免疫測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを用いて行われる。ELISAスクリーニングの一例は、参照により本明細書に組み込む、国際出願公開番号WO00/37504に提供されている。
【0081】
抗体生成性ハイブリドーマが選択され、クローニングされ、ハイブリドーマの活発な成長、抗体の高生成性、および下記にさらに論じる所望の抗体の特徴を含めた望ましい性質に対してさらにスクリーニングされる。ハイブリドーマは、ヌードマウスなどの免疫系を欠く動物などの同質遺伝子的な動物においてインビボで、またはインビトロの細胞培養において培養および拡張されてもよい。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、拡張する方法は、当業者にはよく知られている。
【0082】
好ましい一実施形態において、ハイブリドーマは、上記に記載した通り、マウスのハイブリドーマである。別の好ましい一実施形態において、ハイブリドーマは、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマなどの非ヒトの、非マウスの種において生成される。別の一実施形態において、ハイブリドーマは、ヒトの非分泌性のミエローマが抗体を発現するヒトの細胞と融合しているヒトハイブリドーマである。
【0083】
B.本発明の抗体を生成する他の方法
上記に記述した通り、本発明の抗体は、当技術分野において知られているあらゆる数々の技術によって生成されてよい。例えば、抗体は、宿主細胞からの発現に基づいて生成されてよく、この場合、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(1つ以上)が、標準の技術によって宿主細胞中に形質転換される。様々な形態の「形質転換」の語が、外来のDNAを原核生物または真核生物の宿主細胞中に導入するのに一般的に用いられる広範囲の技術(例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈澱、DEAE−デキストラン形質転換など)を包含するものとされる。本発明の抗体を原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれかにおいて発現させるのは可能であるが、真核細胞における抗体の発現が好ましく、哺乳動物の宿主細胞におけるのが最も好ましい、というのはこのような真核細胞(特に、哺乳動物細胞)は、原核細胞よりも集合し、適切に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体を分泌する可能性が高いからである。
【0084】
本発明の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物の宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(DHFR選択可能マーカーと一緒に用いられるUrlaubおよびChasin、(1980年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77巻、4216−4220頁に記載されているdhfr−CHO細胞を含む(例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982年)Mol.Biol.、159巻、601−621頁に記載されている通り))、NS0ミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物の宿主細胞中に導入された場合、宿主細胞を、宿主細胞中で抗体の発現を可能にするのに十分な期間培養することによって、またはより好ましくは、宿主細胞を増殖させた培地中に抗体を分泌させることによって、抗体が生成される。抗体は、標準のタンパク質精製方法を用いて、培地から回収され得る。
【0085】
宿主細胞が、FabフラグメントまたはscFv分子などの機能的な抗体フラグメントを生成するのに用いられてもよい。上記の手順に対する変形も本発明の範囲内であることが理解される。例えば、本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖いずれかの機能的なフラグメントをコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトするのが望ましいことがある。組換えDNAの技術が、対象の抗原に結合するのに必要ではない軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAのいくつかまたは全てを除去するのに用いられてもよい。このような切断されたDNA分子から発現される分子も、本発明の抗体によって包含される。さらに、標準的な化学的架橋結合の方法によって本発明の抗体を第2の抗体に架橋結合することによって、一方の重鎖および一方の軽鎖が本発明の抗体であり、他方の重鎖および軽鎖が対象の抗原以外の抗原に特異的である、二機能性抗体が生成され得る。
【0086】
本発明の抗体またはその抗原結合性部分を組換え発現させるための好ましい一システムにおいて、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウムが媒介するトランスフェクションによってdhfr−CHO細胞中に導入される。組換え発現ベクター内で、抗体の重鎖および軽鎖の遺伝子は各々、遺伝子の高レベルの転写を駆動するように、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに操作的に連結している。組換え発現ベクターはまたDHFR遺伝子を保有しており、DHFR遺伝子は、メトトレキセート選択/増幅を用いてベクターにトランスフェクトされるCHO細胞の選択を可能にする。選択された形質転換体の宿主細胞を培養して、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にし、インタクトな抗体が培地から回収される。標準の分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。またさらに、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで適切な培地中で本発明の宿主細胞を培養することによって、本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。方法は、培地から組換え抗体を単離することをさらに含むことができる。
【0087】
C.診断および他の適用のための抗体の調製
上記に記述した通り、本発明の抗体を、例えば、当技術分野において知られているいくつかのインビトロおよびインビボアッセイのいずれか1つによって評価して、PIVKA−IIの1つ以上のエピトープに対して高い結合親和性を表すのが好ましい(例えば、下記の例を参照されたい)。
【0088】
ある実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域がIgG1重鎖定常領域またはIgG4重鎖定常領域であるのが好ましい。さらに、抗体は、カッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域のいずれかの軽鎖定常領域を含むことができる。抗体がカッパ軽鎖定常領域を含むのが好ましい。あるいは、抗体部分は、例えば、Fabフラグメントまたは単鎖Fvフラグメントであってよい。
【0089】
抗体のエフェクター機能を変更するためのFc部分におけるアミノ酸残基の置換は、当技術分野において知られている(Winterら、米国特許第5,648,260号および第5,624,821号)。抗体のFc部分は、いくつかの重要なエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)ならびに抗体および抗原−抗体複合体の半減期/クリアランス速度を媒介する。ある場合には、これらのエフェクター機能は治療用抗体には望ましいが、他の場合には、治療上の目的に応じて不必要であり、または有害でさえあることもある。ある種のヒトIgGイソ型、とりわけIgG1およびIgG3は、それぞれFcγRおよび補体のC1qに結合することによってADCCおよびCDCを媒介する。新生児のFc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する決定的な構成成分である。さらに別の一実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸残基が、抗体のエフェクター機能が変更されるように、抗体のFc領域などの抗体の定常領域において置換されている。
【0090】
一実施形態は、標識化された結合性タンパク質を提供するものであり、この場合、本発明の抗体または抗体の部分は誘導体化され、または別の機能的な分子(例えば、別のペプチドもしくはタンパク質)に連結している。例えば、本発明の標識化された結合性タンパク質は、本発明の抗体または抗体の部分を、別の抗体(例えば、二重特異性抗体もしくはダイアボディ)、検出可能な物質、細胞毒性物質、薬剤、および/または抗体もしくは抗体部分の別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域もしくはポリヒスチジンタグ)との会合を媒介することができるタンパク質またはペプチドなどの、1つ以上の他の分子実体に機能的に連結(化学的なカップリング、遺伝子融合、非共有結合性の連結もしくはその他の方法によって)することによって派生していてよい。
【0091】
本発明の抗体または抗体の部分が誘導体化され得る有用な検出可能な物質は、蛍光性の化合物を含む。例示の蛍光検出可能な物質は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリンなどを含む。抗体は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素で誘導体化されていてもよい。抗体が検出可能な酵素で誘導体化されている場合、検出可能な反応生成物を生成するのに酵素が用いられるさらなる試薬を加えることによって、抗体が検出される。例えば、検出可能な物質である西洋ワサビのペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加は着色した反応生成物をもたらし、これは検出可能である。抗体はまた、ビオチンで誘導体化され得、アビジンまたはストレプトアビジンの結合を間接的に測定することによって検出され得る。
【0092】
本発明の別の一実施形態は、結晶化した結合性タンパク質を提供する。好ましくは、本発明は、本明細書に開示する抗体全体およびそのフラグメントの結晶、ならびにこのような結晶を含む製剤および組成物に関する。一実施形態において、結晶化した結合性タンパク質は、結合性タンパク質の可溶性の対応物よりもインビボにおいて長い半減期を有する。別の一実施形態において、結合性タンパク質は、結晶化後、生物学的活性を保持している。
【0093】
本発明の結晶化した結合性タンパク質は、当技術分野において知られている方法、および参照により本明細書に組み込む、国際出願公開番号WO02/072636において開示されている方法にしたがって生成されてよい。
【0094】
本発明の別の一実施形態は、抗体またはその抗原結合性部分が1つ以上の炭水化物残基を含む、グリコシル化されている結合性タンパク質を提供する。発生期のインビボのタンパク質生成は、翻訳後修飾として知られているさらなるプロセシングを受けることがある。特に、糖(グリコシル)残基が酵素的に加えられてよく、これはグリコシル化として知られているプロセスである。共有結合性に連結しているオリゴ糖側鎖を有する得られたタンパク質は、グリコシル化されているタンパク質または糖タンパク質として知られている。抗体は、Fcドメインおよび可変ドメインにおいて1つ以上の炭水化物残基を有する糖タンパク質である。Fcドメインにおける炭水化物残基は、Fcドメインのエフェクター機能に対して重要な効果を有し、抗体の抗原結合性または半減期に対して最小の効果を有する(R.Jefferis、Biotechnol.Prog.、21巻(2005年)、11−16頁)。これとは対照的に、可変ドメインのグリコシル化は、抗体の抗原結合性活性に対して効果を有することがある。可変ドメインにおけるグリコシル化は、おそらく立体障害のおかげで、抗体結合性の親和性に対して負の効果を有することがあり、(Co、M.S.ら、Mol.Immunol.(1993年)30巻、1361−1367頁)、または抗原に対する親和性の増大をもたらすことがある(Wallick,S.C、ら、Exp.Med.(1988年)168巻、1099−1109頁;Wright,A.ら、EMBO J.(1991年)10巻、2717−2723頁)。
【0095】
本発明の一態様は、結合性タンパク質のO−連結またはN−連結したグリコシル化部位が変異されている、グリコシル化部位変異体の産生に対するものである。当業者であれば、標準的なよく知られている技術を用いてこのような変異体を産生することができる。生物学的活性を保持しているが増大または低減した結合性活性を有するグリコシル化部位変異体の作製は、本発明の別の一目的である。
【0096】
さらに別の一実施形態において、本発明の抗体または抗原結合性部分のグリコシル化は修飾されている。例えば、アグリコスレーテッド(aglycoslated)抗体(すなわち、グリコシル化を欠く抗体)が作製されてよい。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増大するように改変されてよい。このような炭水化物の修飾は、例えば、抗体配列内の1つ以上の部位のグリコシル化を改変することによって行われ得る。例えば、1つ以上の可変領域のグリコシル化部位の排除をもたらして、それによってその部位のグリコシル化を除去する、1つ以上のアミノ酸置換が行われてよい。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大することがある。このような取組みは、各々その全体を参照により本明細書に組み込む、国際出願公開番号WO03/016466A2、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号においてさらに詳しく記載されている。
【0097】
さらに、または別法として、低減された量のフコシル残基を有する低フコシル化(hypofucosylated)抗体、または増大する二分するGlcNAc構造を有する抗体などの改変されたタイプのグリコシル化を有する、本発明の修飾された抗体が作られてよい。このような改変されたグリコシル化のパターンは、抗体のADCC能力を増大することが実証されている。このような炭水化物の修飾は、例えば、改変されたグリコシル化の機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって行われ得る。改変されたグリコシル化の機構を有する細胞は、当技術分野において記載されており、本発明の組換え抗体を発現させて、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を生成する宿主細胞として用いられ得る。例えば、Shields,R.L.ら(2002年)J.Biol.Chem.、277巻、26733−26740頁;Umanaら(1999年)Nat.Biotech.、17巻、176−1頁、ならびに各々その全体を参照により本明細書に組み込む、欧州特許第1,176,195号;国際出願公開番号WO03/035835およびWO99/54342 80を参照されたい。
【0098】
タンパク質のグリコシル化は、対象のタンパク質のアミノ酸配列、およびタンパク質が発現される宿主細胞に依存する。異なる生物体は異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ)を生成することがあり、利用可能な異なる基質(ヌクレオチド糖)を有することがある。このような因子のおかげで、タンパク質のグリコシル化パターンおよびグリコシル残基の組成は、特定のタンパク質が発現される宿主のシステムに応じて異なることがある。本発明において有用であるグリコシル残基は、それだけには限定されないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n−アセチルグルコサミンおよびシアル酸を含むことができる。グリコシル化された結合性タンパク質は、グリコシル化のパターンがヒトのものとなるようにグリコシル残基を含むことが好ましい。
【0099】
当業者には、タンパク質のグリコシル化が異なれば、異なるタンパク質の性質をもたらし得ることが知られている。例えば、酵母などの微生物の宿主において生成され、酵母の内在性の経路を利用してグリコシル化された治療用タンパク質の有効性は、CHO細胞系統などの哺乳動物細胞において発現された同じタンパク質の有効性に比べて低減され得る。このような糖タンパク質はヒトにおいてやはり免疫原性であり、投与後インビボの半減期の低減を示すことがある。ヒトおよび他の動物における特異的な受容体は、特異的なグリコシル残基を認識し、血流からのタンパク質の速やかなクリアランスを促進することがある。他の有害作用は、タンパク質のフォールディング、可溶性、プロテアーゼに対する感受性、トラフィッキング、輸送、区画化、分泌、他のタンパク質もしくは因子による認識、抗原性、またはアレルゲン性における変化を含み得る。したがって、医師は、例えば、ヒト細胞において、または意図する対象の動物の種特異的な細胞において生成されるものに同一の、または少なくとも類似のグリコシル化の組成およびパターンなど、特異的なグリコシル化の組成およびパターンを有する治療用タンパク質を好むことがある。
【0100】
宿主細胞のものとは異なるグリコシル化タンパク質の発現は、異種性のグリコシル化酵素を発現する宿主細胞を遺伝子的に改変することによって達成されることがある。当技術分野において知られている技術を用いて、医師は、ヒトタンパク質のグリコシル化を示す抗体またはその抗原結合性部分を産生することができる。例えば、酵母系統は、天然に存在しないグリコシル化酵素を発現するように遺伝子的に改変されており、その結果これら酵母系統において生成されたグリコシル化されたタンパク質(糖タンパク質)は動物細胞、特にヒト細胞のタンパク質グリコシル化に同一のタンパク質グリコシル化を示す(米国特許出願公開第20040018590号および第20020137134号、ならびに国際出願公開番号WO05/100584 A2)。
【0101】
「多価結合性タンパク質」の語は、本明細書において用いられて、2つまたはそれを超える抗原結合性部位を含む結合性タンパク質を意味する。多価結合性タンパク質は3つまたはそれを超える抗原結合性部位を有するように構築されるのが好ましく、一般的に天然に存在する抗体ではない。「多重特異性結合性タンパク質」の語は、2つまたはそれを超える関連の標的または非関連の標的に結合することができる結合性タンパク質を意味する。本明細書で用いられる二重可変ドメイン(dual variable domain)(DVD)結合性タンパク質は、2つまたはそれを超える抗原結合性部位を含む結合性タンパク質であり、4価または多価の結合性タンパク質である。このようなDVDは単一特異性であってよく、すなわち1つの抗原に結合することができ、または多特異的であってよく、すなわち2つまたはそれを超える抗原に結合することができてよい。2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合性タンパク質は、DVDIgと呼ばれる。DVDIgの半分は各々、重鎖DVDポリペプチドおよび軽鎖DVDポリペプチド、ならびに2つの抗原結合性部位を含んでいる。各結合性部位は重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含んでおり、抗原結合性部位1個につき合計6個のCDRが抗原結合性に関与する。DVD結合性タンパク質およびDVD結合性タンパク質を作成する方法は米国特許出願第11/507,050号において開示されており、参照により本明細書に組み込む。
【0102】
本発明の一態様は、PIVKA−IIの1つ以上のエピトープに結合することができる結合性タンパク質を含むDVD結合性タンパク質に関する。DVD結合性タンパク質がエピトープおよび第2の標的に結合することができるのが好ましい。
【0103】
結合性タンパク質の他に、本発明は、本発明のこのような結合性タンパク質に特異的な抗イディオタイプの(抗Id)抗体に対するものでもある。抗Id抗体は、別の抗体の抗原結合性領域に一般的に付随する独特の決定基を認識する抗体である。抗Idは、結合性タンパク質またはその領域を含むCDRで動物を免疫化することによって調製され得る。免疫化された動物は、免疫化する抗体のイディオタイプの決定基を認識し、反応し、抗Id抗体を生成する。抗Id抗体をさらに別の動物における免疫反応を誘発するための「免疫原」としてやはり用いて、いわゆる抗−抗Id抗体を生成してもよい。
【0104】
さらに、当業者には、様々なグリコシル化酵素を発現するように遺伝子操作された宿主細胞のライブラリーを用いて、宿主細胞のメンバーのライブラリーが変異体のグリコシル化パターンを有する対象のタンパク質を生成するように、対象のタンパク質が発現され得ることが理解される。次いで、医師は、特定の新規なグリコシル化パターンを有する対象のタンパク質を選択し、単離することができる。特に選択された新規なグリコシル化パターンを有するタンパク質が、改善または改変された生物学的性質を示すのが好ましい。
【0105】
D.抗体の使用
PIVKA−II、またはそのエピトープもしくはその部分に結合する本発明の抗体の能力を考慮すると、本発明の抗体は、従来の競合的または非競合的なイムノアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫測定、サンドイッチアッセイもしくは免疫組織化学)を用いて、生物学的試料(例えば、血清、血液、組織もしくは血漿など)中のPIVKA−IIを検出するのに用いられ得る。次いで、このような検出は、生物学的試料が得られた患者に対するHCCまたは肝癌の診断をもたらし得る。
【0106】
したがって、本発明は、生物学的試料を、本発明の抗体または抗体の部分と接触させ、抗原/抗体複合体の形成を検出することによってPIVKA−IIまたは部分(例えば、そのエピトープ)を検出することを含む、生物学的試料中のPIVKA−IIを検出するための方法を提供する。抗体は結合または非結合の抗原(すなわち、PIVKA−II)の検出を促進するために検出可能な物質で、直接的または間接的に標識化されていてよい。適切な検出可能な物質は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質を含む。適切な酵素の例は、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み、適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリスリンを含み、発光物質の例はルミノールを含み、適切な放射性物質の例は、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Hoまたは153Smを含む。
【0107】
抗体の標識化の代替として、検出可能な物質および非標識の抗体で標識化された組換えの標準を利用して、競合的イムノアッセイ(competition immunoassay)によって生体液中の抗原がアッセイされ得る。このアッセイにおいて、生物学的試料、標識化された組換え抗原の標準および抗体が合わされ、非標識の抗体に結合した標識化されたペプチドの標準の量が測定される。生物学的試料中の抗原の量は、抗体に結合している標識化された抗原の標準の量に逆比例する。
【0108】
本発明に関連して上記のアッセイを説明するために、本発明の一実施形態において、3C10などのPIVKA−IIに対する(または全長のPIVKA−IIのエピトープもしくは部分に対する)抗体が、固相上でコーティングされる(または液相中に存在する)。次いで試験試料または生物学的試料(例えば、血清、血漿、尿など)が固相と接触させられる。PIVKA−II抗原が試料中に存在する場合、固相に結合している抗体はPIVKA−II抗原に結合し、次いでPIVKA−II抗原は直接的または間接的いずれかの方法によって検出され得る。直接的方法は、複合体自体の存在、したがってPIVKA−II抗原の存在を単に検出することを含む。間接的方法において、結合しているPIVKA−II抗原にコンジュゲートが加えられる。コンジュゲートは第2の抗体(通常、固相上にコーティングされている第1の抗体と異なる)を含み、第2の抗体がシグナル生成性の化合物または標識に付着している、結合しているPIVKA−II抗原に結合する。結合している抗原に第2の抗体が結合すると、シグナル産生性の化合物は測定可能なシグナルを産生する。次いで、このようなシグナルは、試験試料中の抗原の存在を示す。イムノアッセイにおいて用いられる(PIVKA−II抗原を検出するための)最初の捕捉抗体は、固相に共有結合性または非共有結合性に(例えば、イオン性、疎水性など)付着され得ることに留意すべきである。共有結合性付着のための連結剤は当技術分野において知られており、固相の部分であってよく、またはコーティング前に誘導体化されていてよい。
【0109】
診断用のイムノアッセイにおいて用いられる固相の例は、多孔性および非多孔性の材料、ラテックス粒子、磁性粒子、微粒子(米国特許第5,705,330号を参照されたい)、ビーズ、膜、マイクロタイターウエルおよびプラスチックチューブである。所望により、固相材料およびコンジュゲート中に存在する抗原または抗体を標識化する方法の選択は、所望のアッセイフォーマットの性能の特徴に基づいて決定される。
【0110】
上記に記述した通り、コンジュゲート(または指示薬)は、シグナル産生性化合物または標識に付着している抗体(または、アッセイに応じておそらく抗−抗体)を含む。このシグナル産生性化合物または「標識」はそれ自体検出可能であり、または1つ以上のさらなる化合物と反応して検出可能な生成物を産生することができる。シグナル産生性化合物の例は、色素原、放射性同位体(例えば、125I、131I、32P、3H、35Sおよび14C)、化学発光化合物(例えば、アクリジニウム)、粒子(可視もしくは蛍光)、核酸、錯化剤、または酵素などの触媒(例えば、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびリボヌクレアーゼ)を含む。酵素の使用の場合は(例えば、アルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビのペルオキシダーゼ)、色素生産性、蛍光発生的、またはルモジェニック(lumogenic)な基質の添加が検出可能なシグナルの産生をもたらす。時間分解蛍光、内部反射蛍光、増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)およびラマン分光法などの他の検出システムも有用である。
【0111】
上記のイムノアッセイによって試験され得る生体液の例は、血漿、尿、全血、乾燥全血、血清、脳脊髄液、唾液、涙液、鼻洗浄液または組織および細胞の水性抽出物を含む。
【0112】
別法として、生物学的試料中のPIVKA−IIの存在を検出するために、固相をPIVKA−II抗原でコーティングし、次いで固相をモノクローナル抗体3C10などのPIVKA−II抗原に対する標識化した抗体と、免疫化した抗原を標識化した抗体に結合させるのに十分な時間および条件下、接触させてもよい。その後、試験試料は抗原−抗体複合体に加えられてよい。PIVKA−IIが試験試料中に存在する場合、次いでそれは結合した標識化された抗体に結合する。次いで、検出可能なシグナルが標識によって産生され、これは試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示している。
【0113】
さらに、代替のアッセイフォーマットにおいて、検出可能な物質で標識化されたPIVKA−II組換え標準および3C10などの非標識の抗体を用いてもよい。このアッセイにおいて、生物学的試験試料、標識化された組換えPIVKA−II抗原標準および3C10モノクローナル抗体が合わされ、非標識の抗体に結合している標識化されたPIVKA−II標準の量が測定される。生物学的試料中のPIVKA−II抗原の量は、抗体に結合している標識化されたPIVKA−II抗原標準の量に逆比例する。
【0114】
抗原および抗体を同時に検出するために、本発明の目的に用いられ得る他のアッセイフォーマットは、デュアルアッセイストリップブロット(Dual assay strip blot)、迅速試験、ウエスタンブロット、およびArchitect(登録商標)アッセイなどにおける常磁性粒子の使用を含む(Frank Quinn、The Immunoassay Handbook、第2版、David Wild編、363−367頁、2001年)。このようなフォーマットは当業者には知られている。
【0115】
上記に記載したアッセイのエレメントは、キットの形態における使用に特に適することも留意すべきである。キットは、バイアルなどの容器を1個、ボトルまたはストリップをやはり含むことができ、各容器は予めセッティングした固相を有し、他の容器はそれぞれのコンジュゲートを含んでいる。これらのキットは、洗浄試薬、プロセシング試薬および指示薬など、アッセイを行うのに必要とされる他の試薬のバイアルまたは容器も含むことができる。
【0116】
もちろん、本明細書におけるあらゆる例示のフォーマット、および本発明によるあらゆるアッセイまたはキットは、米国特許第5,089,424号および第5,006,309号などに記載されている通り、ならびにそれだけには限定されないが、AbbottのARCHITECT(登録商標)、AxSYM、IMX、PRISMおよびQuantum IIプラットフォームおよび他のプラットフォームを含めてAbbott Laboratories(Abbott Park、IL)によって販売されている、自動化および半自動化のシステム(微粒子を含む固相が存在するシステムを含む)の使用に適用または最適化されていてよい。
【0117】
さらに、本発明のアッセイおよびキットはAbbott’s Point of Care(i−STAT(商標))電気化学的イムノアッセイシステムを含むポイントオブケアアッセイシステムに適用または最適化されていてよい。免疫センサー、および免疫センサーを製造し、使い捨ての試験装置において操作する方法は、例えば、米国特許第5,063,081号、ならびに公開されている米国特許出願第20030170881号、第20040018577号、第20050054078号および第20060160164号において記載されている(これらに関する教示に関して本明細書に参照により組み込む)。
【0118】
さらに、PIVKA−IIは腫瘍の悪性度を誘発し得ることが注目されている(Shiraha、J.Biol.Chem.、2005年2月25日、280巻(8)、6409−15頁)。したがって、本発明は、PIVKA−II活性が関連する疾患または障害(例えば、肝癌もしくはHCC)に罹患しているヒトにおける、PIVKA−II活性を低減するための方法も提供する。この方法は、本発明の抗体(すなわち、3C10)またはその部分(例えば、Fab’フラグメント)を対象に投与し、その結果対象におけるPIVKA−II活性が低減される(すなわち、受動免疫化)ことを含む。さらに、本発明の抗体(またはそのフラグメント)は、治療目的で、他の獣医学的目的で、またはヒトにおいて見られる病状を擬する病状を有する動物における抗体の効果を研究するために非ヒトの哺乳動物に投与されてよい。特に、このような動物モデルは、本発明の抗体の治療上の有効性を評価するのに有用であり得る(例えば、投与量および投与の時間経過の試験)。
【0119】
本発明の抗体で処置され得る障害の非限定的な例は、本発明の抗体の薬剤組成物に関する以下の段落において論じられる障害を含む。
【0120】
D.薬剤組成物
上記に記述した通り、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性部分、および薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物も提供する。本発明の抗体を含む薬剤組成物は、それだけには限定されないが、障害または1つ以上のその症状を予防し、処置し、管理し、または改善する上で、および/または調査において、障害の診断、検出、またはモニタリングにおける使用のためである。特定の実施形態において、組成物は1つ以上の本発明の抗体を含む。別の実施形態において、薬剤組成物は、1つ以上の本発明の抗体、およびPIVKA−II活性が有害である障害を処置するための本発明の抗体以外の1つ以上の予防薬または治療薬を含む。予防薬または治療薬が、障害または1つ以上のその症状の予防、処置、管理または改善において有用であり、またはこれまでに用いられていた、または現在用いられていることが知られているのが好ましい。これらの実施形態にしたがって、組成物は、担体、希釈剤または賦形剤をさらに含むことができる。
【0121】
本発明の抗体および抗体の部分は、対象に投与するのに適する薬剤組成物中に組み入れられ得る。典型的に、薬剤組成物は本発明の抗体または抗体の部分、および薬学的に許容される担体を含んでいる。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性であるあらゆる全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにこれらの組合せのうちの1つ以上を含む。多くの場合、組成物中に、マンニトール、ソルビトールなどの糖、多価アルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むのが好ましい。薬学的に許容される担体は、抗体または抗体の部分の保存期間または有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、保存剤またはバッファーなどの補助物質を少量さらに含むことができる。
【0122】
様々な送達系が知られており、1つ以上の本発明の抗体、あるいは障害または1つ以上のその症状を予防、管理、処置、または改善するのに有用な1つ以上の本発明の抗体および予防薬または治療薬の組合せを投与するのに用いられ得る(例えば、リポソーム中のカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、抗体または抗体フラグメントを発現することができる組換え細胞、受容体が媒介するエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、J.Biol.Chem.、262巻、4429−4432頁(1987年)を参照されたい)、レトロウイルスもしくは他のベクターの部分として核酸の構築など)。本発明の予防薬または治療薬を投与する方法は、それだけには限定されないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与ならびに粘膜投与(例えば、鼻腔内および経口の経路)を含む。さらに、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤との製剤の使用によって、経肺投与が用いられ得る。例えば、各々全文を参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,019,968号、第5,985,320号、第5,985,309号、第5,934、272号、第5,874,064号、第5,855,913号、第5,290,540号および第4,880,078号;ならびに国際出願公開番号WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346およびWO99/66903を参照されたい。一実施形態において、本発明の抗体、併用治療、または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)経肺薬物送達法(Alkermes,Inc.、Cambridge、MA)を用いて投与される。特定の実施形態において、本発明の予防薬または治療薬は、筋肉内、静脈内、腫瘍内、経口的、鼻腔内、経肺、または皮下投与される。予防薬または治療薬は、あらゆる従来の経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚の内膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与されてもよく、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与されてもよい。投与は全身性でも、または局所的でもよい。
【0123】
特定の実施形態において、本発明の予防薬または治療薬を、処置を必要とする領域に局所的に投与するのが望ましいことがあり、これは、例えば、限定によるものではないが、局所注入、注射、または埋め込みによって実現されてよく、前記埋め込みはシアラスティック(sialastic)膜、ポリマー、繊維状マトリクス(例えば、Tissuel(登録商標))またはコラーゲンマトリクスなどの膜およびマトリクスを含めた多孔性または非多孔性の材料である。一実施形態において、本発明のアンタゴニストの1つ以上の抗体の有効量を対象の罹患している領域に局所的に投与して、障害またはその症状を予防、処置、管理および/または改善する。別の一実施形態において、本発明の1つ以上の抗体の有効量が、本発明の抗体以外の1つ以上の治療(例えば、1つ以上の予防薬もしくは治療薬)の有効量と組み合わされて、障害または1つ以上のその症状を予防、処置、管理および/または改善するために、対象の罹患している領域に局所的に投与される。
【0124】
別の一実施形態において、予防薬または治療薬は、徐放または持続放出のシステムにおいて送達されてよい。一実施形態において、徐放または持続放出を達成するためにポンプが使用されてよい(Langer、上述;Sefton、1987年、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.、14巻、20頁;Buchwaldら、1980年、Surgery、88巻、507頁;Saudekら、1989年、N.Engl.J.Med.、321巻、574頁を参照されたい)。別の一実施形態において、ポリマー材料が本発明の治療の徐放または持続放出を達成するために用いられてよい(例えば、Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、FL(1974年);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編)、Wiley、New York(1984年);RangerおよびPeppas、1983年、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.、23巻、61頁を参照されたい;Levyら、1985年、Science、228巻、190頁;Duringら、1989年、Ann.Neural.、25巻、351頁;Howardら、1989年、J.Neurosurg.、7巻1、105頁も参照されたい);米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号、米国特許第5,912,015号、米国特許第5,989,463号、米国特許第5,128,326号、国際出願公開番号WO99/15154、および国際出願公開番号WO99/20253)。持続放出製剤において用いられるポリマーの例は、それだけには限定されないが、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルポロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)およびポリオルトエステルを含む。好ましい一実施形態において、持続放出製剤において用いられるポリマーは不活性であり、浸出性の不純物がなく、貯蔵時に安定であり、無菌で生分解性である。さらに別の一実施形態において、徐放または持続放出のシステムは予防または治療の標的の近くに配置されてよく、したがってわずかな全身投与量を必要とする(例えば、Goodson、「Medical Applications of Controlled Release」、上述、第2巻、115−138頁(1984年)を参照されたい)。
【0125】
徐放システムはLanger(1990、Science、249巻1527−1533頁)による再考において論じられている。当業者に知られているあらゆる技術が、本発明の治療薬を1つ以上含む持続放出製剤を生成するのに用いられてよい。例えば、各々全体を参照により本明細書に組み込む、米国特許第4,526,938号、国際出願公開番号WO91/05548、国際出願公開番号WO96/20698、Ningら、1996年、「Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained−Release Gel」、Radiotherapy&Oncology、39巻、179−189頁、Songら、1995年、「Antibody Mediated Lung Targeting of Long−Circulating Emulsions」、PDA Journal of Pharmaceutical Science&Technology、50巻、372−397頁、Cleekら、1997年、「Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application」、Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.、24巻、853−854頁、およびLamら、1997、「Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery」、Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.、24巻、759−760頁を参照されたい。
【0126】
特定の実施形態において、本発明の組成物が予防薬または治療薬をコードする核酸である場合、核酸を好適な核酸発現ベクターの部分として構築し、核酸が細胞内になるように投与することによって(例えば、レトロウイルスベクターの使用によって(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、または直接注射によって、または微粒子銃(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)の使用によって、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト試薬でコーティングすることによって、または核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドへ連結して投与することによって(例えば、Joliotら、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88巻、1864−1868頁を参照されたい)、核酸がコードする予防薬または治療薬の発現を促進するために、核酸(本発明の抗体をコードする)がインビボで投与されてよい。別法として、核酸は細胞内に導入され、相同的組換えによる発現用に宿主細胞のDNA内に組み入れられ得る。
【0127】
本発明の薬剤組成物は、意図される投与経路に適合性であるように調合される。投与経路の例は、それだけには限定されないが、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮(例えば、局所)、経粘膜および直腸投与を含む。特定の実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所の投与に適応された、薬剤組成物が日常的な手順にしたがって調合される。典型的に、静脈内投与用の組成物は、無菌の等張バッファーの水中溶液である。必要な場合には、組成物はまた可溶化剤、および注射部位の痛みを和らげるためのリドカインなどの局所麻酔薬も含むことができる。
【0128】
本発明の組成物が局所投与される場合、組成物は、軟膏剤、クリーム剤、経皮パッチ剤、ローション剤、ゲル剤、シャンプー剤、スプレー剤、エアロゾル剤、液剤、乳剤の形態、または当業者にはよく知られている他の形態において調合されてよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第19版、Mack Pub.Co.、Easton、Pa.(1995年)を参照されたい。スプレーできない局所剤形には、局所投与に適合する担体または1つ以上の賦形剤を含み、好ましくは水より大きな動的粘度を有する、粘稠性から半固体または固体の形態が典型的に用いられる。適切な製剤は、制限なく、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、散剤、リニメント剤、膏薬(salve)などを含み、これらは、所望により、滅菌され、または浸透圧などの様々な性質に影響を及ぼすための補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、バッファーもしくは塩)と混合される。他の適切な局所用剤形は噴霧可能なエアロゾル調製物を含み、この場合有効成分は、好ましくは固体または液体の不活性な担体と組み合わされて、加圧揮発剤(例えば、フレオンなどのガス噴射剤)との混合物において、または圧搾ボトル中に包装される。保湿剤または湿潤剤も、所望により薬剤組成物および剤形に加えられてよい。このようなさらなる成分の例は、当技術分野においてよく知られている。
【0129】
本発明の方法が組成物の鼻腔内投与を含む場合、組成物はエアロゾル形態、スプレー、ミストまたは液滴の形態において調合されてよい。特に、本発明にしたがって用いるための予防薬または治療薬は、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用して、加圧包装からのエアロゾルスプレーの体裁またはネブライザーの形態において好都合に送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定されてよい。吸入器または空気吸入器において用いるためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチンから構成される)は、化合物、およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の混合粉末を含んで調合されてよい。
【0130】
本発明の方法が経口投与を含む場合、組成物は錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ジェルカプセル剤、液剤、懸濁剤などの形態において経口用に調合されてよい。錠剤またはカプセル剤は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースもしくはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクもしくはシリカ)、崩壊剤(例えば、バレイショデンプンもしくはカルボキシメチルスターチナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と一緒に従来の手段によって調製されてよい。錠剤は当技術分野においてよく知られている方法によってコーティングされてよい。経口投与用の液体調製物は、それだけには限定されないが、液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形態をとることができ、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提示されてもよい。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム)、非水性のビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分留した植物油)および保存剤(例えば、メチル−p−ヒドロキシ安息香酸もしくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤と一緒に従来の手段によって調製され得る。調製物は、適宜、緩衝塩、香味剤、着色剤および甘味剤も含むことができる。経口投与用の調製物は、予防薬または治療薬(1つ以上)の緩効、徐放または持続性放出用に適切に調合されてよい。
【0131】
本発明の方法は、エアロゾル化剤と一緒に調合された組成物の、例えば、吸入器またはネブライザーの使用による、経肺投与を含むことができる。例えば、各々全体を参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,019,968号、第5,985,320号、第5,985,309号、第5,934,272号、第5,874,064号、第5,855,913号、第5,290,540号および第4,880,078号;ならびに国際出願公開番号WO92/19244、WO97/32572、WO97/44013、WO98/31346、およびWO99/66903を参照されたい。特定の実施形態において、本発明の抗体、併用治療および/または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)経肺薬物送達法(Alkermes,Inc.、Cambridge、MA)を用いて投与される。
【0132】
本発明の方法は、注射(例えば、ボーラス注射または持続的注入)による非経口投与用に調合された組成物の投与を含むことができる。注射用製剤は、保存剤を添加して、単位剤形において(例えば、アンプルにおいて、またはマルチドーズ容器において)提示され得る。組成物は、油性または水性のビヒクル中、懸濁剤、液剤または乳剤などの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤用薬剤(formulatory agent)を含むことができる。別法として、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェンフリー水)と一緒に構成するための粉末の形態に含めてもよい。本発明の方法は、デポー調製物として調合された組成物の投与をさらに含むことができる。このような長時間作用性の製剤は、埋め込みによって(例えば、皮下もしくは筋肉内に)または筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、組成物は適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)もしくはイオン交換樹脂と調合されてよく、またはやや溶けにくい誘導体として(例えば、やや溶けにくい塩として)調合されてよい。
【0133】
本発明の方法は、中性または塩の形態として調合された組成物の投与を包含する。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの陰イオンで形成された塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの陽イオンで形成された塩を含む。
【0134】
一般的に、組成物の成分は、例えば、有効薬剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの気密密閉された容器において、凍結乾燥した粉末または水を含まない濃縮物として、別々に、または単位剤形において一緒に混合されてのいずれかで提供される。投与様式が注入である場合、組成物は、無菌の製薬用グレードの水または食塩水を含む注入ボトルで分配されてよい。投与様式が注射による場合、成分が投与前に混合され得るように、滅菌の注射用水または食塩水のアンプルが提供されてよい。
【0135】
特に、本発明は1つ以上の予防薬もしくは治療薬も提供し、または本発明の薬剤組成物は、予防薬または治療薬の量を示すアンプルまたはサシェなどの気密密閉された容器中に包装される。一実施形態において、本発明の1つ以上の予防薬もしくは治療薬、または薬剤組成物は、気密密閉された容器において凍結乾燥した無菌の粉末または水を含まない濃縮物として提供され、(例えば、水もしくは食塩水で)対象に投与するのに好適な濃度に再構成されてよい。好ましくは、本発明の1つ以上の予防薬もしくは治療薬、または薬剤組成物は、少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mgまたは少なくとも100mgの単位投与量で気密密閉された容器において凍結乾燥した無菌の粉末として提供される。凍結乾燥された、本発明の予防薬もしくは治療薬、または薬剤組成物は、そのオリジナルの容器中2℃と8℃の間で貯蔵されなければならず、本発明の予防薬もしくは治療薬、または薬剤組成物は、再構成後1週間以内、好ましくは5日以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内または1時間以内に投与されなければならない。代替の一実施形態において、本発明の予防薬もしくは治療薬、または薬剤組成物の1つ以上は、薬剤の量および濃度を示す、気密密閉された容器中に液体の形態において提供される。好ましくは、液体形態の投与される組成物は、気密密閉された容器中少なくとも0.25mg/ml、より好ましくは少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/mlまたは少なくとも100mg/ml提供される。液体形態はそのオリジナルの容器中2℃と8℃の間で貯蔵されなければならない。
【0136】
本発明の抗体および抗体の部分は、非経口投与に適する薬剤組成物中に組み入れられてよい。好ましくは、抗体または抗体の部分は、抗体0.1−250mg/mlを含む注射用溶液として調製される。注射用溶液は、フリントガラスまたはアンバーガラスのバイアル中、アンプルまたはプレフィルシリンジにおいて、液体または凍結乾燥した剤形のいずれかから構成されてよい。バッファーは、pH5.0から7.0(最適にはpH6.0)のL−ヒスチジン(1−50mM)、最適には5−10mMであってよい。他の適切なバッファーは、それだけには限定されないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを含む。0−300mM(液体剤形に対して最適には150mM)の濃度の溶液の毒性を改変するのに、塩化ナトリウムが用いられてよい。凍結乾燥した剤形には、主にショ糖0−10%(最適には0.5−1.0%)の凍結保護物質が含まれていてよい。他の適切な凍結保護物質はトレハロースおよびラクトースを含む。凍結乾燥した剤形には、主にマンニトール1−10%(最適には2−4%)である増量剤が含まれてよい。液体および凍結乾燥した剤形の両方において、主にL−メチオニン1−50mM(最適には5−10mM)である安定化剤が用いられてよい。他の適切な増量剤は、グリシン、アルギニンを含み、ポリソルベート−80 0−0.05%(最適には0.005%−0.01%)として含まれてよい。さらなる界面活性剤は、それだけには限定されないが、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤を含む。非経口投与用の注射用液剤として調製される本発明の抗体および抗体の部分を含む薬剤組成物は、治療用タンパク質(例えば、抗体)の吸収または分散を増大するのに用いられるものなど、アジュバントとして有用な薬剤をさらに含むことができる。特に有用なアジュバントは、Hylenex(登録商標)(組換えヒトヒアルロニダーゼ)などのヒアルロニダーゼである。注射用液剤におけるヒアルロニダーゼの添加は、非経口投与、特に皮下投与の後のヒトのバイオアベイラビリティを改善する。これはまた注射部位の体積を大きくし(すなわち1mlを超える)痛みおよび不快感を低減し、注射部位の反応の発生を最小にする(参照により本明細書に組み込む、国際出願公開番号WO04/078140、および米国特許出願公開第US2006104968号を参照されたい)。
【0137】
本発明の組成物は様々な形態で含むことができる。これらは、例えば、液体、半固体および固体の剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射用および注入用溶液)、分散剤および懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤を含む。好ましい形態は意図される投与様式および治療の適用に依存する。典型的な好ましい組成物は、他の抗体でのヒトの受動免疫化に用いられるものと同様の組成物などの、注射用または注入用溶液の形態で含まれる。好ましい投与様式は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい一実施形態において、抗体は静脈内注入または静脈内注射によって投与される。別の好ましい一実施形態において、抗体は筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0138】
治療用組成物は、典型的に滅菌でなければならず、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならない。組成物は、高い薬物濃度に適する、液剤、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または他の指示された構造として調合されてよい。滅菌の注射用液剤は、必要とされる量の有効化合物(すなわち抗体または抗体の部分)を、所望により上記に列挙した成分の1つまたは組合せと一緒に好適な溶媒中に組み入れ、その後ろ過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散剤は、有効化合物を、基本的な分散媒体および上記に列挙したものからの必要とされる他の成分を含む滅菌のビヒクル中に組み入れることによって調製される。滅菌の注射用液剤を調製するための滅菌の凍結乾燥粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分プラス予め滅菌−ろ過したその溶液からのあらゆるさらなる所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥および噴霧乾燥である。例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤の使用によって、溶液の適切な流動性は維持され得る。注射用組成物の吸収の延長は、組成物中に、モノステアリン酸塩およびゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を含むことによってもたらされ得る。
【0139】
本発明の抗体および抗体の部分は当技術分野において知られている様々な方法によって投与され得るが、多くの治療用の適用に対して、好ましい投与経路/様式は皮下注射、静脈内注射または注入である。当業者であれば理解されるように、投与経路および/または様式は所望の結果に応じて変化する。ある実施形態において、有効化合物は、化合物を速やかな放出から保護する担体、例えば、埋め込みを含めた徐放製剤、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化した送達システムと一緒に調製されてよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの、生物分解性の、生体適合性のポリマーが用いられてよい。このような製剤を調製するための多くの方法が特許を得ており、または当業者に一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978年を参照されたい。
【0140】
ある実施形態において、本発明の抗体または抗体の部分は、例えば、不活性な希釈剤または消化される食用の担体と一緒に経口投与されてよい。化合物(および所望により他の成分)も、ハードまたはソフトシェルのゼラチンカプセル中に封入され、錠剤に圧縮され、または対象の食餌中に直接組み入れられてもよい。治療用の経口投与では、化合物は賦形剤と一緒に組み入れられ、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハーなどの形態において用いられてよい。本発明の化合物を非経口投与以外によって投与するために、不活性化を防ぐ材料で化合物をコーティングし、または不活性化を防ぐ材料と化合物を同時投与するのが必要であることがある。
【0141】
補足的な有効化合物が組成物中に組み入れられてもよい。ある実施形態において、本発明の抗体または抗体の部分は、PIVKA−II活性が有害である障害を処置するのに有用である1つ以上のさらなる治療薬と一緒に調合されおよび/または同時投与される。例えば、本発明の抗PIVKA−II抗体または抗体の部分は、他の標的に結合する1つ以上のさらなる抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体、または細胞表面分子に結合する抗体)と一緒に調合されおよび/または同時投与されてよい。さらに、本発明の1つ以上の抗体は、2つまたはそれを超える前述の治療薬と併用して用いられてもよい。このような併用治療は、低投与量の投与される治療薬を有利に利用し、したがって様々な単独療法に付随する可能な毒性または合併症を避けることができる。
【0142】
ある実施形態において、PIVKA−IIに対する抗体またはそのフラグメントは、当技術分野において知られている半減期を延長するビヒクルに連結されている。このようなビヒクルは、それだけには限定されないが、Fcドメイン、ポリエチレングリコールおよびデキストランを含む。このようなビヒクルは、例えば、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込む、米国特許出願第09/428,082号および国際出願公開番号WO99/25044において記載されている。
【0143】
特定の実施形態において、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列、または本発明の別の予防薬もしくは治療薬は、遺伝子治療によって、障害または1つ以上のその症状を処置、予防、管理または改善するために投与される。遺伝子治療は、対象に、発現されたまたは発現可能な核酸を投与することによって行われる治療を意味する。本発明のこの実施形態において、核酸は、核酸がコードする抗体、または予防効果もしくは治療効果を媒介する本発明の予防薬もしくは治療薬を生成する。
【0144】
当技術分野において利用可能な遺伝子治療のためのあらゆる方法が、本発明にしたがって用いられてよい。遺伝子治療の方法の一般的な再考には、Goldspielら、1993年、Clinical Pharmacy、12巻、488−505頁;WuおよびWu、1991年、Biotherapy、3巻、87−95頁;Tolstoshev、1993年、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.、32巻、573−596頁;Mulligan、Science、260巻、926−932頁(1993年);ならびにMorganおよびAnderson、1993年、Ann.Rev.Biochem.、62巻、191−217頁;1993年5月、TIBTECH、11巻(5):155−215頁を参照されたい。用いられ得る組換えDNA技術の技術分野において一般的に知られている方法は、Ausubelら(編集)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley &Sons、NY(1993年);およびKriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990年)において記載されている。遺伝子治療のさまざまな方法の詳しい記載は、参照により本明細書に組み込む、米国特許出願公開第20050042664 A1号に開示されている。
【0145】
本発明の抗体またはその抗原結合性部分は、肝臓に関連する疾患を処置するために単独または併用で用いられてよい。例えば、抗体はオートクラインの(autocline)癌の増殖を予防するための標的治療として用いられてよく、毒性の化学療法剤(すなわち毒性の性質を有する小分子または大分子)に付着していてよい。さらに、抗体は、画像化の目的で標識化されていてよい。
【0146】
本発明の抗体またはその抗原結合性部分は、単独、または1つ以上のさらなる薬剤、例えば、治療薬(例えば、小分子もしくは生物学的)と併用して用いられてよく、前記さらなる薬剤は当業者によってその意図される目的に選択される。さらなる薬剤は、治療用組成物に有益な特性を与える薬剤、例えば、組成物に粘性をもたらす薬剤であってもよい。
【0147】
本発明の範囲内に含まれるべき組合せは、これらの意図する目的に有用であるこれらの組合せであることをさらに理解すべきである。以下に記載する薬剤は説明の目的であって、限定的であることを意図するものではない。組合せは本発明の一部分であって、本発明の抗体、および以下のリストから選択される少なくとも1つのさらなる薬剤であってよい。組合せはまた、1つを超えるさらなる薬剤、例えば、組合せが、形成された組成物がその意図された機能を行うことができるようである場合は2つまたは3つのさらなる薬剤を含むことができる。
【0148】
本発明の薬剤組成物は「治療有効量」または「予防有効量」の、本発明の抗体または抗体の部分を含むことができる。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するのに、必要な投与量および期間、有効な量を意味する。抗体または抗体の部分の治療有効量は当業者によって決定されてよく、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに抗体または抗体の部分が個体における所望の反応を誘発する能力などの因子にしたがって変化することがある。治療有効量はまた、抗体または抗体の部分のあらゆる毒性作用または有害作用を、治療上有益な効果が上回るものである。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するのに、必要な投与量および期間、有効な量を意味する。典型的に、疾患の前または疾患の初期段階に予防投与量が対象において用いられるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0149】
投与量レジメンは、最適の所望の反応(例えば、治療上または予防上の反応)をもたらすように調節されてよい。例えば、単回のボーラスが投与されてよく、いくつかの分割投与量が経時的に投与されてよく、または投与量は治療状況の要件によって示されるように比例的に低減または増大されてよい。投与を容易にし、投与量を均一にするための投与単位形態において非経口の組成物を調合するのが特に有利である。本明細書で用いられる投与単位形態は、処置されるべき哺乳動物の対象に対する単位の投与量として適合された、物理的に別々の単位を意味し、各単位は、必要とされる薬剤上の担体に関連して所望の治療効果を生成するように計算されている有効化合物の予め決定された量を含んでいる。本発明の投与単位形態に対する規定は、(a)有効化合物の独特の特性および達成されるべき特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)個体における感受性を治療するためにこのような有効化合物を配合する当技術分野に固有の制限によって指示され、直接的にこれらに依存する。
【0150】
本発明の抗体または抗体の部分の治療有効量または予防有効量に対する例示の、非限定的な範囲は、0.1−20mg/kgであり、よりこのましくは1−10mg/kgである。投与量の値は、改善されるべき病状のタイプおよび重症度とともに変化し得ることに留意されたい。あらゆる特定の対象に対して、詳しい投与量レジメンは、個体の必要性および組成物を投与し、または組成物の投与を監督する人間の専門的な判断にしたがって経時的に調節されるべきであり、本明細書において記載する投与量の範囲は例示的なものにすぎず、特許請求する組成物の範囲または実践を制限することを意図するものではないことをさらに理解されたい。
【0151】
当業者であれば、本明細書に記載する本発明の方法の他の適切な変更および改変は明らかであり、本発明または本明細書に開示する実施形態の範囲から逸脱することなしに適切な同等物を用いて行われ得ることは容易に明らかである。今まで本発明を詳細に記載してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明はより明らかに理解される。以下の実施形態は、説明のみの目的で含まれるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0152】
実施例I
3C10細胞系統の開発
免疫原のデザイン:PIVKA−II(すなわち、血液凝固II因子の非存在下ビタミンKによって誘発されるタンパク質)特異的領域のPIVKA−II 13−27におけるアミノ酸長15個のペプチドを免疫原として選択した。PIVKA−IIにおけるアミノ酸長15個のペプチド中にグルタミン酸の脱炭酸されたアミノ酸が6個存在し、プロトロンビン(II因子)はアミノ酸長15個のペプチド中に脱炭酸されたグルタミン酸(GLA)6個を有していた。N末端にリンカーを有し、リンカーがキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とコンジュゲートしているw−LERECVEETCCSYEEA(2個のシステイン間にジスルフィド結合)(x=イプシロン−アミノカプロン酸)であった、PIVKA−II特異的なアミノ酸長15個のペプチドを免疫原としてデザインした。ペプチドの合成およびKLHへのコンジュゲートは標準方法で行った。ペプチドのN末端領域はKLHに結合していた。
【0153】
免疫化:ペプチドKLHを用いて野生型Balb/cマウス、野生型C57BL/6マウス、胚中心関連DNAプライマーゼ(GANP)トランスジェニックBalb/cマウスおよびGANPトランスジェニックC57BL/6マウスを免疫化した。GANPトランスジェニックマウスの生成方法および免疫化方法は、Sakaguchiら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485−4494頁において記載されている方法にしたがった。
【0154】
PIVKA−IIおよびプロトロンビンに対する反応性の決定:乾燥プロトロンビン粉末(Sigma F5132)を110℃で8時間加熱することによって、PIVKA−II抗原を調製した(Bajajら、J.Biol.Chem.(1982年4月10日)、257巻(7)、3726−31頁を参照されたい)。免疫化から8週間を超えた後、マウスの血清を出血させ、PIVKA−IIに対する反応性およびプロトロンビンに対する反応性を、以下の手順を用いて決定した。
【0155】
PIVKA−II 5ug/mLまたはプロトロンビン5ug/mLを、96ウエルのエンザイムイムノアッセイ(EIA)プレート中に加え、PIVKA−IIまたはプロトロンビンをウエル表面上にコーティングした。ブロッキング溶液(製造元および場所を与えよ?)によってブロックした後、マウス血清を希釈し、次いでウエルに加えた。洗浄ステップの後、西洋ワサビのペルオキシダーゼ(HRP)によって標識化した抗マウス抗体を加えた。洗浄ステップをさらに1回行った後、基質溶液を加え、次いで分光光度計によって吸光度を測定した。各群においてPIVKA−IIに対して最高の反応性を示し、プロトロンビンに対して最小の反応性を示したマウスを、次のステップ用に選択した。
【0156】
融合:野生型Balb/c、野生型C57BL/6、GANPトランスジェニックBalb/cおよびGANPトランスジェニックC57BL/6の各群から選択したマウス4匹からの脾臓細胞を、Sakaguchiら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485−4494頁において記載されている標準方法でミエローマ細胞に融合した。ハイブリドーマ細胞を限外希釈法によって希釈し、次いで培養上清をハイブリドーマのスクリーニングに用いた。
【0157】
ハイブリドーマのスクリーニング:以下の手順を用いることによってハイブリドーマのスクリーニングを行った:
PIVKA−II 1ug/mlまたはプロトロンビン5ug/mlを96ウエルのEIAプレート中に加え、PIVKA−IIまたはプロトロンビンをウエル表面上にコーティングした。BlockAceを含む溶液によってブロックした後、次いでハイブリドーマの上清をウエルに加えた。洗浄ステップの後、西洋ワサビのペルオキシダーゼによって標識化した抗マウス抗体を加えた。洗浄ステップをさらに1回行った後、基質溶液を加え、次いで分光光度計によって吸光度を測定した。各群においてトップ5つのハイブリドーマを以下の基準によって選択した:(1)プロトロンビンに対して反応性なし、次いで(2)PIVKA−IIに対してトップ5つの反応性(図1を参照されたい)。野生型マウスから、PIVKA−IIに強力に反応したハイブリドーマは得られなかった。GANPトランスジェニックC58BL/6からのハイブリドーマ番号3C10はPIVKA−IIに対して強力な反応性を示し、プロトロンビンに対して反応性を示さなかった。GANPトランスジェニックマウスを、免疫原としてPIVKA−IIペプチドと一緒に用いる方法により、野生型マウスよりPIVKA−IIに対して高い反応性を有し、プロトロンビンに対して反応性のない抗体を生成するクローンを生成することができた。
【0158】
クローンの確立:ハイブリドーマ番号3C10および番号2H4のクローニングを、Sakaguchiら、The Journal of Immunology、174巻(2005年)、4485−4494頁において記載されている標準方法を用いて行った。次いで3C10および2H4のクローンを確立した。
【0159】
同じ融合の手順を用いて、ハイブリドーマのスクリーニングおよびクローンの確立を、上記に記載した通り、GANPトランスジェニックBalb/cおよびGANPトランスジェニックC57BL/6マウス、GANPトランスジェニックC57BL/6マウスからのクローン番号12D6およびGANPトランスジェニックBalb/cマウスからのクローン番号7B10の各群の1つに対して確立した。これらのクローンはPIVKA−IIに対して強力な反応性を有し、プロトロンビンに対して反応性はなかった。
【0160】
実施例II
ARCHTECTシステムの自動化イムノアッセイでのハイブリドーマスクリーニング
自動化イムノアッセイ:各ハイブリドーマを無血清培地中培養した。培養上清中の抗体をProteinAカラムで精製した。抗体を、磁性微粒子にコーティングした。(カルボキシル基を、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて共有結合で微粒子(Abott Laboratories、IL)の表面に付着させた。)コーティングした微粒子を、ウシ血清アルブミン(BSA)を含むバッファー溶液中に分散し、次いで試薬Aを調製した。Hyphen Biomed(フランス)からの抗プロトロンビン抗体(コード番号PA150)を、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が活性化したアクリジニウムエステル(Abott Laboratories、IL)によって標識化した。標識化した抗体を、BSAを含むバッファー中に希釈し、次いで試薬Bを調製した。TritonX−100を含むバッファー溶液を試薬Cとして調製した。ARCHITECT i2000(Abott Laboratories、IL)の自動化イムノアッセイシステムを利用して、以下の手順でイムノアッセイを自動的に行った。具体的には、試薬A 50uLおよび試薬C 50uLを、試料50ulと混合した。混合物を37℃で18分間インキュベートして、試料中、磁性微粒子および反応性物質(PIVKA−II)上に抗体のコーティングを結合させた。磁性微粒子をマグネットによって引きつけ、次いで残余の溶液を除去した。磁性微粒子の表面上に非特異的に結合した不純物が除去されるように、磁性微粒子をリン酸緩衝食塩水(PBS)によって洗浄した。次いで、試薬B 50uLを微粒子に加え、次いで(抗体がコーティングした磁性微粒子)−(試料中PIVKA−II)−(アクリジニウム標識化した抗体)の複合体を形成させた。PBSによる洗浄ステップの後、アルカリ性条件においてペルオキシドを加え、次いでアクリジニウムエステルによって発光シグナルが生成され、これを光電子増倍管(PMT)によって検出した。
【0161】
PIVKA−II溶液を、磁性微粒子にコーティングした4つの抗体を用いてArchitectイムノアッセイで試験した(図2)。クローン3C10はPIVKA−II抗原に対して高い反応性を示した。これらの結果は3C10抗体がPIVKA−IIに対して高い特異性を示し、PIVKA−IIと高度に反応性であったことを示していた。
【0162】
実施例III
自動化イムノアッセイを用いた血漿物質に対するクローン3C10、2H4、7B10および12D6の反応性
23mAU/mLおよび23.5mAU/mLのPIVKA−II値を有することが知られている2つの正常血漿検体を、磁性微粒子上をコーティングしたクローン番号3C10、2H4、7B10および12D6からの抗体4つを用いてArchitectイムノアッセイで試験した。クローン3C10および7B10は、血漿からのシグナルを全く、または殆んど示さなかった(図3)。この結果は、3C10および7B10は、II因子(プロトロンビン)、IX因子、X因子、VII因子、タンパク質C、タンパク質Sおよびタンパク質Zを含む血漿物質に対して交差反応性がなかったことを示していた。特に、II因子はPIVKA−II HH因子の前駆物質であり、カルボキシル化されたグルタミン酸を含むGLAドメインを有しこれらのアミノ酸はPIVKA−II中に存在しないので、抗体3C10はこれらの変化に特異的であり、II因子/プロトロンビンを認識しない。IX因子、X因子およびVII因子などの他の凝固因子もGLAドメインを含んでおり、数個のアミノ酸が優先的に異なる(すなわち、相同タンパク質)。それゆえ、抗体3C10はこれらのいかなるタンパク質をも認識しないが、これらはPIVKA−IIに対するアミノ酸配列において非常によく似ている。
【0163】
実施例IV
抗体のキャラクタリゼーション
a)材料と方法
合成したペプチドの配列
【0164】
【化1】

【0165】
PIVKA−II 13−27:
ペプチドの長さのエピトープ特異性を評価するためにペプチドを合成した。
【0166】
【化2】

【0167】
【化3】

【0168】
ペプチドの同族列
可変残基を太字で示す。
LERECMEEKCSFEEA(Glaドメイン IX因子 配列11)
LERECMEETCSYEEA(Glaドメイン X因子 配列12)
LERECKEEQCSFEEA(Glaドメイン VII因子 配列13)
LERECIEEICDFEEA(Glaドメイン タンパク質C 配列14)
LERECIEELCNKEEA(Glaドメイン タンパク質S 配列15)
LEKECYEEICVYEEA(Glaドメイン タンパク質Z 配列16)
LERECVEETCSYEEA(PIVKA−II 配列)
【0169】
b)Biologyワークベンチを用いた配列相同分析の例:プロトロンビンのGLAドメインは、他の凝固タンパク質との配列相同性を有する。プロトロンビン、タンパク質Z、タンパク質S、タンパク質C、X因子およびIX因子のタンパク質配列を、Swiss−proデータベースから検索し、これらのタンパク質のGLAドメインを写し取り、配列アラインメント用にBiologyワークベンチソフトウエア(San Diego Supercomputer Center(SDSC)、La Jolla、CA)に提供した。配列アラインメントは、プロトロンビンのGLA領域中に埋め込まれた対象の領域(すなわち、13から27)において相同性を示した。
【0170】
c)ペプチド合成:ペプチドを、ABI(Foster City、CA)からのPioneer合成機上、またはCSBio合成機(Menlo Park、CA)を用いて、市販のFmocが保護するアミノ酸を用いて合成した。アミノ酸を、PyBOP(すなわち、ベンゾトリアゾール−1−イル−オシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(osytripyrrolidinophsphonium hexafluorophosphate))またはPyAOP(すなわち、7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−(ピロリドノ(pyrrolidono))ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)などのカップリング試薬で活性化した。Fmocの保護を機器上で除去し、N末端のアミンにはキャップ付けしなかった。ペプチドを、水2.5%、トリイソプロピルシラン2.5%、およびTFA(すなわち、トリフルオロ酢酸)95%試薬混合液を用いて、室温で1−2時間切断した。切断したペプチドをエーテルで沈澱させ、50%アセトニトリル水溶液中溶解し、凍結乾燥して必要とするペプチドを得た。これは、配列番号1から番号20に対するペプチド合成に利用した一般的手順である(下記を参照されたい)。
【0171】
d)PIVKA−IIの環化:diAcmPIVKA−IIペプチド(13−27)50mgを、酢酸(「AcOH」):HO混合液(1:1v/v)20mL中混合した。1N HCl 2mLを加え、その後ヨウ素30ミリグラムのメタノール(「MeOH」):AcOH(1:1v/v)溶液を加えた(Greg Fields編、Methods in Enzymology、289巻、198−221頁、1997年)。反応混合物を、暗条件下45分間撹拌した。反応混合物は、いかなる懸濁粒子もない澄明な褐色溶液であった。45分後、アスコルビン酸の10%溶液を加えることによって反応をクエンチした。特に、溶液が澄明になるまで、およそ100mgのアスコルビン酸溶液(すなわち、およそ10mL)(Aldrich、Milwaukee、WIから市販されている)を滴下添加した。溶液を水で4倍希釈し、分取HPLCによって精製した。60分間アセトニトリル水(10−40%)の勾配を用いて、Phenomenex Luna 10u、C18(2)250×50mmカラム(Phenomenex、Torrance、CA)を精製に用いた。ピークが立ち上がるときペプチドを分画中回収し、分画をHPLCによって確認した。最高純度(すなわち、>98%)の分画をプールし、凍結乾燥した。110mgの環化したPIVKA−IIペプチド(13−27)が得られた。
【0172】
e)PIVKA−IIペプチドの標識化:Alexa488PIVKA−IIペプチド(13−27)を調製するために、環化したPIVKA−II(13−27)4mgを4mLガラスバイアル中に秤量し、DMF(すなわち、ジメチルホルミド(dimethylformide))1mL中Alexa Flur488TFP活性エステル2mgで処理した。この混合物にDIEA(すなわち、ジイソプロピルエチルアミン)0.2mLを加え、混合物を2時間インキュベートした。Alexa488PIVKA−IIペプチド(13−27)を、60分間アセトニトリル水(10−40%)の勾配を用いて、Phenomenex Luna 10u、C18(2)250×50mmカラム(Phenomenex、Torrance、CA)上、精製した。ピークの純粋な分画をプールし、凍結乾燥して乾燥粉末0.6mgを得た。標識化したペプチドの濃度をΣ495=71000M−1cm−1を用いて1cmキュベット中の吸光度によって決定した。
【0173】
f)抗体の標識化:抗PIVKA−IImAb3C10を、Black Hole Quencher(BHQ、Biosearch Technologies,Inc.、Novato、CA)で選択的に標識化した。精製および標識化の手順は業者によって提供された。非標識のBHQ−10sを、PBSで平衡にしたG−25カラム上で除去した。標識化したmAbの濃度を、Σ280=218000M−1cm−1を用いて決定し、BHQからの寄与(Σ280=218000M−1cm−1)に対して補正した。モル取込み比(I.R.色素/タンパク質)を、タンパク質および発色団の濃度に基づいて計算した。mAb3C10に対するI.R.は2.3である。
【0174】
g)蛍光ベースの方法:蛍光異方性およびフェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)を用いて、Alexa−488標識化したPIVKA−IIGlaドメインペプチド(13−27)およびこのペプチドに対して発生されたモノクローナル抗体の解離定数を決定した。特に、蛍光相関分光法(FCS)を用いて、Gla置換したPIVKA−IIペプチド(13−27)変異体の結合強度を比較し、PIVKA−IIペプチド(13−27)のエピトープのGla残基を同定した。FCSは、蛍光分子の拡散係数を測定することができる、溶液相の、一分子レベルの蛍光技術である。遊離および抗体結合しているAlexa488−PIVKAII(13−27)の分子塊における大きな相違が拡散係数における実質的な変化をもたらし、次にこの変化を用いて分析物と抗体との相互作用をモニタリングすることができる。
【0175】
計測手段:平衡の蛍光測定は全て、SLM8100光子計数分光蛍光計(SLM;もはや存在しない)上で行った。異方性の測定には、試料を480nmで励起し、発光蛍光シグナルを偏光子および530/30nm干渉フィルタを通して回収した。各試料に対する異方性値を5回測定し、平均値を記録した。蛍光強度の測定には、試料を480nmで励起した。発光蛍光シグナルの合計を、530/30nm干渉フィルタを通して回収した(感度を改善するために偏光器は除去した)。各試料に対する蛍光シグナルの合計を5回測定し、平均値を記録した。
【0176】
Nikon EclipseTE300蛍光倒立顕微鏡(Nikon InsTech Co.,Ltd.、Kanagawa、日本)と一体化した2チャンネル蛍光相関分光計ALBA(ISS、Champaign、IL)を用いて、FSC実験を行った。詳しい情報はTetinら、Biochemistry、2006年、45巻、14155−65頁に記載されている。
【0177】
解離定数の決定:抗原(対象の抗体での)の平衡解離定数(K)を、直接結合実験において、蛍光異方性または蛍光強度における変化をモニタリングすることによって測定した。Alexa−488で標識化した抗原を、十分にK未満の濃度に維持し、抗体の濃度は15試料の連続において、ピコモル範囲からマイクロモル未満まで徐々に増大した。
【0178】
Alexa488−抗原が抗体に結合している場合、Alexa488−抗原の蛍光強度の消光が存在しないので、異方性における変化は、以下の通り、抗体に結合している抗原の割合(Fb)に直接比例する。
【0179】
【数1】

式中、A(i)は各抗体濃度でのAlexa488−抗原の異方性であり、AminはAlexa488−抗原単独の異方性であり、AmaxはAlexa488−抗原に結合している抗体の異方性である。未結合の抗体結合性部位の濃度[ABSfree]は、以下の式から計算され得る。
【0180】
【数2】

【0181】
次いで、結合性のデータを単純結合性モデルに適合させて平衡解離定数を計算した。
【0182】
【数3】

【0183】
高親和性モノクローナル抗体3C10(mAb3C10)に対して、結合性を測定するのに、異方性測定の感度未満である、低濃度のAlexa488−抗原(50pM)が必要とされる。したがって、異なる取組みが用いられる。特に、ブラックホールクエンチャー(蛍光発色団がない)をmAb3C10上に導入することによって、Alexa488−抗原の蛍光強度は、mAb3C10に結合したときに消光される。各抗体濃度での抗原(Ii)の蛍光強度の消光(Q)は、等式4から計算される。
【0184】
【数4】

式中、Imaxは、抗体の非存在における抗原の蛍光強度である。Iminは、抗体の最高濃度での抗原の蛍光強度である。Q/Qmax値がそのモノクローナル抗体に結合しているAlexa488−抗原の割合に直接転換され得ることを想定すると、未結合の抗体結合性部位の濃度[ABSfree]は以下の式から計算され得る。
【0185】
【数5】

式中、[ABStotal]および[Ttotal]はそれぞれ、抗体結合性部位およびAlexa488−ペプチドの合計濃度である。次いで、結合性のデータを単純結合性モデルに適合させて平衡解離定数を計算した。
【0186】
【数6】

【0187】
結合性の測定は全て、0.15M NaCl、3mM EDTAおよび0.005%界面活性剤P20を含む10mM HEPESバッファーpH7.4中で行った。
【0188】
Alexa−488が標識化したPIVKAII Glaドメインペプチド(13−27)およびmAbの結合滴定曲線を図4および5に示す。Alexa488−抗原がmAbに結合しているときの解離定数およびAlexa488−抗原の異方性における変化を以下の表Iに列挙する。
【0189】
【表1】

【0190】
蛍光相関分光法によるエピトープマッピング:Gluが置換しているペプチドの、Alexa488−PIVKA−II(13−27)およびmAb3C10との競合的結合性測定により、mAb3C10に対するエピトープ認識において決定的な役割を果たす13−27領域における特異的なGla残基が同定された。これらの各位置をGluで置換するとmAb3C10による認識を部分的または完全に排除するので、結果は残基Gla19、20および25はmAb3C10に対するエピトープ認識にかかわることを示していた(図6を参照されたい)。
【0191】
PIVKA−IIの様々な調製物の効力:PIVKA−IIの様々な調製物の、Alexa488−PIVKA−II(13−27)およびmAb3C10との競合的結合性測定を用いて、様々なロットのPIVKA−IIの効力を比較した。結果は、加熱4時間後、試料の効力はその最高値に到達し、4時間より長く加熱した場合に改善されないことを示していた(図7を参照されたい)。
【0192】
PIVKA−II Glaドメイン(13−27)類似体の交差反応性:様々なPIVKA−II Glaドメイン(13−27)類似体の、Alexa488−PIVKA−II(13−27)およびmAb3C10との競合的結合測定を用いて、mAb3C10とのこれらの交差活性を試験した。Alexa488−PIVKA−II(13−27)2nMおよびmAb3C10 10mMを予め混合して、Alexa488−PIVKA−II(13−27)の全てを確実に抗体に結合させた。次いで、様々なPIVKAII Glaドメイン(13−27)類似体を試料に加えた。PIVKAII(13−27)を陽性対照として加え、オリジナルの試料を陰性対照として用いた。一夜インキュベート後、FCS測定を各試料に対して行った。図8は、各試料からの自己相関曲線および拡散係数の計算値(D)を図示するものである。結果は、PIVKA−II(13−27)はmAb3C10からのAlexa488−PIVKAII(13−27)を置き換えることができ、高いD値をもたらすが、他のPIVKAIIペプチド類似体は全て、mAb3C10からのAlexa488−PIVKAII(13−27)を置き換えることができず、これらにはmAb3C10と交差反応性がないことを示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)受託番号PTA−9638によって表わされる、ハイブリドーマ細胞系統。
【請求項2】
請求項1の前記ハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体。
【請求項3】
プロトロンビン誘導ビタミンKアンタゴニストII(PIVKA−II)のアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む、単離された結合性タンパク質。
【請求項4】
約1.0×10−9Mまたはそれより低い解離定数(K)を有する、請求項3の単離された結合性タンパク質。
【請求項5】
約1.0×10−9Mから約1.0×10−11MまでのKを有する、請求項4の単離された結合性タンパク質。
【請求項6】
約1.5×10−10MのKを有する、請求項5の単離された結合性タンパク質。
【請求項7】
PIVKA−IIに結合する結合性タンパク質をコードする単離された核酸分子であって、前記結合性タンパク質の可変重鎖のアミノ酸配列が、請求項2の前記モノクローナル抗体のアミノ酸配列に少なくとも70%の同一性を有する、単離された核酸分子。
【請求項8】
前記結合性タンパク質がPIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する、請求項7の単離された核酸分子。
【請求項9】
請求項2の前記モノクローナル抗体のアミノ酸配列に少なくとも70%の同一性を有する、精製されたアミノ酸配列。
【請求項10】
請求項7の前記単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
請求項10の前記ベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項12】
PIVKA−IIに結合することができる結合性タンパク質を生成する方法であって、
a)調節エレメントに操作可能に連結している請求項7の前記核酸分子を含むベクターを構築するステップ、
b)得られた前記ベクターを宿主細胞中に形質転換で導入するステップ、および
c)前記結合性タンパク質を生成するのに十分な時間および条件下、前記宿主細胞を培養するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
請求項12の方法にしたがって生成される、単離された結合性タンパク質。
【請求項14】
試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、
a)試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを有する抗体と、抗体/抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、および
b)前記複合体の存在が前記試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、前記複合体の存在を検出するステップ、
を含む、方法。
【請求項15】
前記抗体が、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む、請求項14の方法。
【請求項16】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成されるモノクローナル抗体である、請求項15の方法。
【請求項17】
試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、
a)前記試験試料を、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを有する第1の抗体と、第1の抗体/抗原複合体の形成に十分な時間および条件下、接触させるステップ、
b)検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物に付着している第2の抗体を含むコンジュゲートを、第1の抗体/抗原/第2の抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、前記第1の抗体/抗原複合体に加えるステップ、ならびに
c)前記試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、前記シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルの存在を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項18】
前記第1の抗体が、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記第1の抗体が、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成される、請求項18の方法。
【請求項20】
試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、
a)PIVKA−II抗原を、検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物で標識されている、PIVKA−II抗原に対する抗体と、PIVKA−II抗原/抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、
b)PIVKA−II抗原/抗体/PIVKA−II試験試料抗原複合体を形成するのに十分な時間および条件下、前記試験試料を前記PIVKA−II抗原/抗体複合体に加えるステップ、ならびに
c)前記試験試料中のPIVKA−II抗原の存在を示す、前記シグナル産生性化合物によって産生される前記シグナルの存在を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項21】
前記PIVKA−II抗原に対する抗体が、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成される、請求項21の方法。
【請求項23】
試験試料中のPIVKA−II抗原を検出する方法であって、
a)前記試験試料を、1)検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物に付着しているPIVKA−IIレファレンス抗原、および2)PIVKA−II抗原に対する抗体と、PIVKA−IIレファレンス抗原/抗体複合体を形成するのに十分な時間および条件下、接触させるステップ、
b)前記試験試料中に検出されるPIVKA−II抗原の量が、前記抗体に結合しているPIVKA−IIレファレンス抗体の量に逆比例する、前記シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルを検出するステップ
を含む、方法。
【請求項24】
前記抗体が、PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−9638を有するハイブリドーマ細胞系統によって生成される、請求項24の方法。
【請求項26】
PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を生成する方法であって、
a)GANPマウスを、PIVKA−IIのアミノ酸13−27を含む抗原で、前記マウスが前記抗原に対する抗体を生成するのに十分な時間および条件下、免疫化するステップ、
b)前記マウスの脾臓からB細胞を収集しおよび精製するステップ、
c)ハイブリドーマを生成するために、前記脾臓細胞をミエローマと融合するステップ、ならびに
d)PIVKA−IIのアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む前記結合性タンパク質を発現するハイブリドーマ細胞系統を選択するステップ
を含む、方法。
【請求項27】
前記ハイブリドーマ細胞系統がATCC受託番号PTA−9638を有する、請求項26の方法。
【請求項28】
請求項3の結合性タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、薬剤組成物。
【請求項29】
HCCまたは肝癌の病状の1つを有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌を診断する方法であって、
a)前記患者から生物学的試料を単離するステップ、
b)前記生物学的試料を、PIVKA−II抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下、PIVKA−II抗原のアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む抗体と接触させるステップ、
c)前記PIVKA−II抗原/抗体複合体の存在を検出するステップ、
d)前記複合体中に存在する前記PIVKA−II抗原を、前記複合体中に存在する前記抗体から解離するステップ、ならびに
e)およそ40mAU/mLを超えるPIVKA−II抗原の量が、前記患者における肝細胞癌(HCC)または肝癌の診断を示す、解離したPIVKA−II抗原の量を測定するステップ
を含む、方法。
【請求項30】
HCCまたは肝癌のうちの1つの病状を有することが疑われる患者におけるHCCまたは肝癌を診断する方法であって、
a)前記患者から生物学的試料を単離するステップ、
b)前記生物学的試料を、PIVKA−II抗原/抗体複合体の形成に十分な時間および条件下、PIVKA−II抗原のアミノ酸13−27に結合する抗原結合性ドメインを含む第1の抗体と接触させるステップ、
c)検出可能なシグナルを産生することができるシグナル産生性化合物に付着している第2の抗体を含むコンジュゲートを、得られたPIVKA−II抗原/抗体複合体に、結合しているPIVKA−II抗原に前記コンジュゲートを結合させるのに十分な時間および条件下、加えるステップ
d)前記シグナル産生性化合物によって産生されるシグナルを検出することによって、前記生物学的試料中に存在する可能性があるPIVKA−II抗原の存在を検出するステップ、ならびに
e)およそ40mAU/mLを超えるPIVKA−II抗原の量が、前記患者におけるHCCまたは肝癌の診断を示す、前記シグナルの強度を測定することによって前記試験試料中に存在するPIVKA−II抗原の量を測定するステップ
を含む、方法。
【請求項31】
請求項2の前記モノクローナル抗体または請求項3の前記結合性タンパク質を含む容器を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−520075(P2012−520075A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554109(P2011−554109)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026599
【国際公開番号】WO2010/104815
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】