説明

PWTT換算血圧値でNIBP計測を起動する生体情報モニタ

【課題】 脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを併用し、脈波伝播時間に基づく推定(換算)血圧値が予め設定された判断基準値を越えた際、前記非観血血圧計測手段による血圧計測を起動させる血圧監視装置において、頻繁に非観血血圧計測手段が起動されることによる患者の負担を軽減することが可能な血圧監視装置を提供する。
【解決手段】 脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを備えた生体情報モニタであって、前記脈波伝播時間計測手段で計測した患者の脈波伝播時間に基づいて当該患者の換算血圧値を得る換算血圧取得手段と、非観血血圧計測手段の起動条件として閾値を設定する閾値設定手段と、前記非観血血圧計測起動判定部と、を備え、前記非観血血圧計測手段を予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより起動して患者の血圧を計測すると共に、前記換算血圧値が前記閾値を超えた際にも、前記非観血血圧計測手段を起動して患者の血圧を計測することを特徴とする生体情報モニタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを併用する生体情報モニタであって、前記非観血血圧計測手段によって、患者の血圧を予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより計測すると共に、前記脈波伝播時間計測手段で計測した当該患者の脈波伝播時間を血圧に換算した換算血圧値が所定の閾値を超えた際にも、患者の血圧を計測することを特徴とする生体情報モニタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の脈波伝播時間(PWTT)計測手段と非観血血圧(NIBP)計測手段とを併用する血圧監視装置としては以下のものが知られている。(特許文献1参照)
特許文献1には以下の記載がなされている。
図3において、血圧監視装置8は、ゴム製袋を布製帯状袋内に有して、たとえば患者の上腕部12に巻回されるカフ10と、このカフ10に配管20を介してそれぞれ接続された圧力センサ14、切換弁16、および空気ポンプ18とを備えている。この切換弁16は、カフ10内への圧力の供給を許容する圧力供給状態、カフ10内を徐々に排圧する徐速排圧状態、およびカフ10内を急速に排圧する急速排圧状態の3つの状態に切り換えられるように構成されている。
【0003】
圧力センサ14は、カフ10内の圧力を検出して、その圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路22および脈波弁別回路24にそれぞれ供給する。静圧弁別回路22はローパスフィルタを備え、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ圧を表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKをA/D変換器26を介して電子制御装置28へ供給する。脈波弁別回路24はバンドパスフィルタを備え、圧力信号SPの振動成分である脈波信号SM1 を周波数的に弁別してその脈波信号SM1 をA/D変換器30を介して電子制御装置28へ供給する。この脈波信号SM1 が表すカフ脈波は、患者の心拍に同期して図示しない上腕動脈から発生してカフ10に伝達される圧力振動波である。
【0004】
上記電子制御装置28は、CPU29、ROM31、RAM33、および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して切換弁16および空気ポンプ18を制御する。
【0005】
心電誘導装置34は、生体の所定の部位に貼り着けられる複数の電極36を介して心筋の活動電位を示す心電誘導波、所謂心電図を連続的に検出するものであり、その心電誘導波を示す信号SM2 を前記電子制御装置28へ供給する。なお、この心電誘導装置34は、心臓内の血液を大動脈へ向かって拍出開始する時期に対応する心電誘導波のうちのQ波或いはR波を検出するためのものであることから、第1脈波検出装置として機能している。
【0006】
パルスオキシメータ用光電脈波検出プローブ38(以下、単にプローブという)は、毛細血管を含む末梢動脈へ伝播した脈波を検出する第2脈波検出装置或いは末梢脈波検出手段として機能するものであり、例えば、被測定者のたとえば指尖部などの生体皮膚すなわち体表面40に図示しない装着バンド等により密着した状態で装着されている。プローブ38は、一方向において開口する容器状のハウジング42と、そのハウジング42の底部内面の外周側に位置する部分に設けられ、LED等から成る複数の第1発光素子44a および第2発光素子44b (以下、特に区別しない場合は単に発光素子44という)と、ハウジング42の底部内面の中央部分に設けられ、フォトダイオードやフォトトランジスタ等から成る受光素子46と、ハウジング42内に一体的に設けられて発光素子44及び受光素子46を覆う透明な樹脂48と、ハウジング42内において発光素子44と受光素子46との間に設けられ、発光素子44から前記体表面40に向かって照射された光のその体表面40から受光素子46に向かう反射光を遮光する環状の遮蔽部材50とを備えて構成されている。
【0007】
上記第1発光素子44a は、例えば660nm程度の波長の赤色光を発光し、第2発光素子44b は、例えば800nm程度の波長の赤外光を発光するものである。これら第1発光素子44a 及び第2発光素子44b は、一定時間づつ順番に所定周波数で発光させられると共に、それら発光素子44から前記体表面40に向かって照射された光の体内の毛細血管が密集している部位からの反射光は共通の受光素子46によりそれぞれ受光される。なお、発光素子44の発光する光の波長は上記の値に限られず、第1発光素子44a は酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの吸光係数が大きく異なる波長の光を、第2発光素子44b はそれらの吸光係数が略同じとなる波長、すなわち酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとにより反射される波長の光をそれぞれ発光するものであればよい。
【0008】
受光素子46は、その受光量に対応した大きさの光電脈波信号SM3 をローパスフィルタ52を介して出力する。受光素子46とローパスフィルタ52との間には増幅器等が適宜設けられる。ローパスフィルタ52は、入力された光電脈波信号SM3 から脈波の周波数よりも高い周波数を有するノイズを除去し、そのノイズが除去された信号SM3 をデマルチプレクサ54に出力する。この光電脈波信号SM3 が表す光電脈波は、患者の脈拍に同期して発生する容積脈波である。なお、この光電脈波は脈拍同期波に対応している。
【0009】
デマルチプレクサ54は、電子制御装置28からの信号に従って第1発光素子44a 及び第2発光素子44b の発光に同期して切り換えられることにより、赤色光による電気信号SMR をサンプルホールド回路56及びA/D変換器58を介して、赤外光による電気信号SMIRをサンプルホールド回路60及びA/D変換器62を介して、それぞれ電子制御装置28の図示しないI/Oポートに逐次供給する。サンプルホールド回路56、60は、入力された電気信号SMR 、SMIRをA/D変換器58、62へ出力する際に、前回出力した電気信号SMR 、SMIRについてのA/D変換器58、62における変換作動が終了するまでに、次に出力する電気信号SMR 、SMIRをそれぞれ保持するためのものである。
【0010】
電子制御装置28のCPU29は、RAM33の記憶機能を利用しつつROM31に予め記憶されたプログラムに従って測定動作を実行し、駆動回路64に制御信号SLVを出力して発光素子44a 、44b を順次所定の周波数で一定時間づつ発光させる一方、それら発光素子44a 、44b の発光に同期して切換信号SCを出力してデマルチプレクサ54を切り換えることにより、前記電気信号SMR をサンプルホールド回路56に、電気信号SMIRをサンプルホールド回路60にそれぞれ振り分ける。上記CPU29は、血中酸素飽和度を算出するために予め記憶された演算式から上記電気信号SMR 、SMIRの振幅値に基づいて生体の血中酸素飽和度を算出する。
【0011】
図4は、上記血圧監視装置8における電子制御装置28の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、血圧測定手段70は、カフ圧制御手段72によってたとえば生体の上腕に巻回されたカフ10の圧迫圧力が所定の目標圧力値PCM(たとえば、180mmHg程度の圧力値)まで急速昇圧させた後に3mmHg/sec程度の速度で徐速降圧させられる徐速降圧期間内において、順次採取される脈波信号SM1 が表す脈波の振幅の変化に基づきよく知られたオシロメトリック法を用いて最高血圧値BPSYS 、平均血圧値PMEAN、および最低血圧値BPDIA などを決定する。
【0012】
脈波伝播情報算出手段74は、図5に示すように心電誘導装置34により逐次検出される心電誘導波の周期毎に発生する所定の部位たとえばR波から、プローブ38により逐次検出される光電脈波の周期毎に発生する所定の部位たとえば立ち上がり点或いは下ピーク点までの時間差(脈波伝播時間)DTRP(PWTT)を逐次算出する時間差算出手段を備え、その時間差算出手段により逐次算出される時間差DTRPに基づいて、予め記憶される式1から、被測定者の動脈内を伝播する脈波の伝播速度VM (m/sec )を逐次算出する。尚、式1において、L(m)は左心室から大動脈を経て前記プローブ38が装着される部位までの距離であり、TPEP (sec)は心電誘導波形のR波から光電脈波の下ピーク点までの前駆出期間である。これらの距離Lおよび前駆出期間TPEP は定数であり、予め実験的に求められた値が用いられる。
【0013】
VM =L/(DTRP−TPEP ) (式1)
【0014】
対応関係決定手段76は、血圧測定手段70により測定された最高血圧値BPSYS とそれぞれの血圧測定期間内における脈波伝播時間DTRP或いは脈波伝播速度VM 、たとえばその期間内における脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM の平均値に基づいて、式2或いは式3で示される脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM と最高血圧値BPSYS との関係式における係数α及びβを、予め決定する。なお、上記最高血圧値BPSYS に代えて、血圧測定手段70により測定された平均血圧値BPMEAN或いは最低血圧値BPDIA と血圧測定期間内における脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM との関係が求められてもよい。要するに、監視(推定)血圧値EBPを最高血圧値とするか、平均血圧値とするか、最低血圧値とするかによって選択される。
【0015】
EBP=α(DTRP)+β(但し、αは負の定数、βは正の定数) (式2)
【0016】
EBP=α(VM )+β(但し、αは正の定数、βは正の定数) (式3)
【0017】
推定血圧値決定手段78は、生体の血圧値とその生体の脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM との間の上記対応関係(数式2および数式3)から、脈波伝播情報算出手段74により逐次算出される生体の実際の脈波伝播時間DTRP或いは伝播速度VM に基づいて推定血圧値EBPを逐次決定する。
【0018】
そして、推定血圧値決定手段78により決定された推定血圧値が予め設定された判断基準値を越えたことに基づいて前記血圧測定手段70による血圧測定を起動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3054084号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従来の脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを併用する血圧監視装置は、推定(換算)血圧値決定手段により決定された推定血圧値が予め設定された判断基準値を越えたことに基づいて前記非観血血圧計測手段による血圧計測を起動させるものであるが、推定血圧の変化に対する感度を上げるために、前記予め設定された判断基準値(検出閾値)を小さく設定すると、頻繁に非観血血圧計測手段が起動され患者に多くの負担をかけることになるので、適切な検出閾値を設定することが困難であった。
【0021】
本発明の課題(目的)は、脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを併用し、脈波伝播時間に基づく推定(換算)血圧値が予め設定された判断基準値を越えた際、前記非観血血圧計測手段による血圧計測を起動させる血圧監視装置において、頻繁に非観血血圧計測手段が起動されることによる患者の負担を軽減することが可能な血圧監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するために、本発明の生体情報モニタは、脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを備えた生体情報モニタであって、前記脈波伝播時間計測手段で計測した患者の脈波伝播時間に基づいて当該患者の換算血圧値を得る換算血圧取得手段と、非観血血圧計測手段の起動条件として閾値を設定する閾値設定手段と、前記非観血血圧計測起動判定部と、を備え、
前記非観血血圧計測手段を予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより起動して患者の血圧を計測すると共に、前記換算血圧値が前記閾値を超えた際にも、前記非観血血圧計測手段を起動して患者の血圧を計測することを特徴とする。
【0023】
また、前記閾値は、血圧の上限及び下限に対してそれぞれ異なる2つのレベルが設定されていることを特徴とする。
また、前記換算血圧値が、少なくとも前記異なる2つのレベルの内の内側の閾値を超えた際に、前記非観血血圧計測手段を起動して患者の血圧を計測することを特徴とする。
【0024】
また、前記換算血圧値が、前記異なる2つのレベルの内の内側の閾値を超えている期間が、所定の期間よりも短い場合には、前記非観血血圧計測手段を起動しないことを特徴とする。
また、前記換算血圧値が、前記異なる2つのレベルの内の外側の設定値を超えた際に、前記非観血血圧計測手段で患者の血圧を計測を起動し、その後、前記換算血圧値が前記内側の設定値を下回らない限り、外側の設定値を超えた際には、前記非観血血圧計測手段を起動しないことを特徴とする。
【0025】
また、前記換算血圧値(EBP)はEBP=α×PWTT+β (PWTT=脈波伝播時間、α,βは係数)であり、
前記非観血血圧計測手段による予め定めた時間毎、又は前記操作者の操作による患者の計測血圧値に前記換算血圧値が等しく成るように前記α及びβを更新することを特徴とする。
また、前記非観血血圧計測手段による予め定めた時間毎、又は前記操作者の操作による患者の血圧の計測中は、
前記脈波伝播時間計測手段で計測した当該患者の脈波伝播時間を血圧に換算する換算血圧値の算出を休止することを特徴とする。
また、設定された血圧の上限及び下限に対する異なるレベルの閾値と、患者の脈波伝播時間を血圧に換算した換算血圧値とを表示部に同時に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、脈波伝播時間計測手段で計測した患者の脈波伝播時間に基づいて当該患者の換算血圧値を得る換算血圧取得手段と、非観血血圧計測手段の起動条件として閾値を設定する閾値設定手段と、前記非観血血圧計測起動判定部とを備え、前記非観血血圧計測手段を予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより起動して患者の血圧を計測すると共に、前記換算血圧値が前記閾値を超えた際にも、前記非観血血圧計測手段を起動して患者の血圧を計測することによって、頻繁に非観血血圧計測手段が起動されることによる患者の負担を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の血圧監視装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明におけるNIBP第1閾値設定部で設定された設定値a1,b1及びNIBP第2閾値設定部で設定されたa2,b2と換算血圧値との比較によるNIBP計測部の起動との関係を示す図である。
【図3】従来の血圧監視装置の回路構成を説明するブロック図である。
【図4】従来の血圧監視装置における電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】心電誘導装置により逐次検出される心電誘導波の周期毎に発生する所定の部位たとえばR波から、プローブにより逐次検出される光電脈波の周期毎に発生する所定の部位たとえば立ち上がり点或いは下ピーク点までの時間差(脈波伝播時間)PWTTの関係を示す図である。
【図6】NIBP第1閾値と、PWTT血圧換算値を生体情報モニタの表示部に同時に表示する例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の構成を図1を用いて説明する。
図1において、本発明の生体情報モニタは、計測部として、患者の所定の部位に貼り着けられる複数の電極3を介して心筋の活動電位を示す心電図を検出する心電誘導(ECG)計測部4、患者の指等に装着された光電脈波検出プローブ4によって毛細血管を含む末梢動脈へ伝播した脈波を検出する脈波(SpO2)計測部5及び患者の上腕部に巻回されるカフ1により患者の血圧を計測する非観血血圧計測手段(NIBP計測部)6を備えている。
【0029】
また、図1の本発明の生体情報モニタは、前記ECG計測部及びSpO2計測部の計測信号を受けてECG計測部2により逐次検出される心電図の周期毎に発生する所定の部位たとえばR波から、プローブ4により逐次検出される光電脈波の周期毎に発生する所定の部位たとえば立ち上がり点或いは下ピーク点までの時間差(脈波伝播時間)PWTTを逐次算出するPWTT計測部7を備えている。
【0030】
また、図1のPWTT血圧換算部8は、前記PWTT計測部7で計測された患者の脈波伝播時間PWTTから患者の換算血圧値(EBP)を換算式 EBP=α×PWTT+β (α,βは係数)でその都度換算する。
また、図1のNIBP計測起動判定部9は、前記PWTT血圧換算部8で換算し得られた患者の換算血圧値をNIBP第1閾値設定部10(このNIBP第1閾値設定部は、通常は患者の血圧の監視における上限及び下限の警報(アラーム)設定値に設定されるが必ずしもその値である必要はない。)及びNIBP第2閾値設定部11で設定された設定条件値と比較して、前記NIBP計測部を起動する。NIBP第1閾値として、従来より生体情報モニタが有する上限及び下限の警報(アラーム)設定値を利用することで、新たな設定や部材を設ける必要がない。
【0031】
また、図1の本発明の生体情報モニタでは、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより計測された実際の血圧値に前記換算血圧値が等しく成るように、換算式 EBP=α×PWTT+βのα及びβを更新することによって、より換算血圧値の精度を高めることができる。
【0032】
また、図1の本発明の生体情報モニタでは、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による計測時には患者に負担がかかり、患者の脈波伝播時間を血圧に換算した換算血圧値の算出に影響を与える可能性があるので、前記非観血血圧計測手段による予め定めた時間毎、又は前記操作者の操作による計測中は、脈波伝播時間計測手段で計測した当該患者の脈波伝播時間を血圧に換算した換算血圧値の算出を休止して、より換算血圧値の精度を高めることができる。
【0033】
次に、図1のNIBP計測起動判定部9の、NIBP第1閾値設定部10で設定された設定値a1,b1及びNIBP第2閾値設定部11で設定されたa2,b2と換算血圧値との比較によるNIBP計測部の起動との関係を図2を用いて説明する。
【0034】
図2(a)は、第1閾値(a1,b1)と第2閾値(a2,b2)との設定例1におけるPWTT換算血圧値との関係を示す図である。
図2(a)において、第1閾値(a1,b1)は、従来の推定血圧値決定手段78により決定された推定血圧値が予め設定された判断基準値を越えたことに基づいて前記血圧測定手段70による血圧測定を起動させる時の予め設定された判断基準値に相当する血圧値であって、a1は上限値であり、b1は下限値に相当する。
図2(a)において、第2の閾値(a2,b2)は、本発明特有の閾値であって、図2(a)では第2の閾値は、前記第1の閾値の内側に設定されている。
【0035】
図2(a)の左側のグラフにおいて、PWTT換算値は、通常は第2の閾値(a2,b2)の内側で変化している。
PWTT換算値が、上限の第2閾値(a2)及び第1閾値(a1)を超えた時(t1,t2)には、いずれも非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧計測を起動する。
なお、図2(a)の左側のグラフでは、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測は、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行されている。
【0036】
図2(a)の右側のグラフも同様に、PWTT換算値は、通常は第2の閾値(a2,b2)の内側で変化している。
PWTT換算値が、下限の第2閾値(b2)及び第1閾値(b1)を超えた時(t1,t2)には、いずれも非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧計測を起動する。
なお、図2(a)の右側のグラフでも同様に、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測は、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行されている。
【0037】
上述の如く、図2(a)では、NIBP第1閾値設定部10は、患者の血圧の監視における上限及び下限の警報(アラーム)設定値に設定されると共に、NIBP第2閾値設定部11は、前記上限及び下限の警報(アラーム)設定値の内側に設定されているので、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測を、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行すると共に、患者の血圧の変化をPWTT換算値が上限の第2閾値(a2)及び第1閾値(a1)を超えた時(t1,t2)には、いずれも非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧を計測を起動するので、患者の血圧の急変に対応が可能になる。
【0038】
図2(b)は、第1閾値(a1,b1)と第2閾値(a2,b2)との設定例2におけるPWTT換算血圧値との関係を示す図である。
図2(b)において、第1閾値(a1,b1)は、従来の推定血圧値決定手段78により決定された推定血圧値が予め設定された判断基準値を越えたことに基づいて前記非観血血圧計測手段(NIBP計測部)6による血圧計測を起動させる時の予め設定された判断基準値に相当する血圧値であって、a1は上限値であり、b1は下限値に相当する。
図2(a)において、第2の閾値(a2,b2)は、本発明特有の閾値であって、図2(a)では第2の閾値は、前記第1の閾値の外側に設定されている。
【0039】
図2(b)の左側のグラフにおいて、PWTT換算値は、通常は第1の閾値(a1,b1)の内側で変化している。
PWTT換算値が、上限の第1閾値(a1)及び第1閾値(a2)を超えた時(t1,t2)には、いずれも非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動する。
なお、図2(b)左側のグラフでは、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測は、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行されている。
【0040】
図2(b)の右側のグラフも同様に、PWTT換算値は、通常は第1の閾値(a1,b1)の内側で変化している。
PWTT換算値が、下限の第1閾値(b1)及び第2閾値(b2)を超えた時(t1,t2)には、いずれも非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動する。
なお、図2(b)の右側のグラフでも同様に、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測は、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行されている。
図2(b)の設定例2では、(a)の設定例1に比較して、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測の回数を少なくすることによって、患者の負担を軽減することも可能である。
【0041】
図2(c)は、第1閾値(a1,b1)と第2閾値(a2,b2)との設定例3におけるPWTT換算血圧値との関係を示す図である。
図2(a)において、第1閾値(a1,b1)は、従来の推定血圧値決定手段78により決定された推定血圧値が予め設定された判断基準値を越えたことに基づいて前記血圧計測手段70による血圧計測を起動させる時の予め設定された判断基準値に相当する血圧値であって、a1は上限値であり、b1は下限値に相当する。
図2(c)において、第2の閾値(a2,b2)は、本発明特有の閾値であって、図2(c)では第2の閾値は、前記第1の閾値の内側に設定されている。
【0042】
図2(c)の左側のグラフにおいて、PWTT換算値は、通常は第2の閾値(a2,b2)の内側で変化している。
PWTT換算値が、上限の第2閾値(a2)を超えた時点では非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動しない。
しかし、PWTT換算値が第2閾値(a2)を超えた後に第1閾値(a1)を超えた時(t1)場合には、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動する。
t1における非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測後、PWTT換算値が上限の第2閾値(a2)を下回らない限りPWTT換算値が上限の第1閾値(a1)を再度(t2,t3)の時点で超えても、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動しない。
しかし、t1における非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測後、PWTT換算値が上限の第2閾値(a2)を下回わると、PWTT換算値が上限の第1閾値(a1)を再度(t4)の時点で非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動する。
なお、図2(c)の左側のグラフでも、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測は、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行されている。
【0043】
図2(c)の右側のグラフにおいて、PWTT換算値は、通常は第2の閾値(a2,b2)の内側で変化している。
PWTT換算値が、下限の第2閾値(a2)を超えた時点では非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動しない。
しかし、PWTT換算値が下限の第2閾値(b2)を超えた後に第1閾値(b1)を超えた時(t1)場合には、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動する。
t1における非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測後、PWTT換算値が下限の第2閾値(b2)を下回らない限りPWTT換算値が下限の第1閾値(b1)を再度(t2)の時点で超えても、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動しない。
しかし、t1における非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測後、PWTT換算値が下限の第2閾値(b2)を下回わると、PWTT換算値が下限の第1閾値(b1)を再度(t3)の時点で非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動する。
また、t3における非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測後、PWTT換算値が下限の第2閾値(b2)を下回らない限りPWTT換算値が下限の第1閾値(b1)を再度(t4)の時点で超えても、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)での患者の血圧の計測を起動しない。
なお、図2(c)の左側のグラフでも、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測は、予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより実行されている。
【0044】
図2(c)の設定例3では、(a)の設定例1及び(b)の設定例2に比較して、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測の頻繁な起動を少なくすることによって、患者の負担を軽減することも可能である。
【0045】
なお、図2の(a)、(b)及び(c)のいずれの場合でも、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測の実施時点(PWTT換算値が閾値を超えた場合と、所定時間毎又は操作者の操作による計測の両方を含む)から所定の時間が経過していない場合には、非観血血圧計測手段(NIBP計測部)による患者の血圧の計測を省略することによって、患者の負担を更に軽減することも可能である。
【0046】
さらにPWTTによる血圧開始を確認するため、例えば前記NIBP第1閾値と、PWTT血圧換算値を図6のように、生体情報モニタの表示部に同時に表示することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:カフ
2:心電誘導(ECG)計測器
3:電極
4:光電脈波検出プローブ
5:脈波(SpO2)計測部
6:非観血血圧(NIBP)計測部
7:PWTT計測部
8:PWTT血圧換算部
9:NIPB計測起動判定部
10:NIPB第1閾値設定部
11:NIPB第2閾値設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈波伝播時間計測手段と非観血血圧計測手段とを備えた生体情報モニタであって、
前記脈波伝播時間計測手段で計測した患者の脈波伝播時間に基づいて当該患者の換算血圧値を得る換算血圧取得手段と、
非観血血圧計測手段の起動条件として閾値を設定する閾値設定手段と、
前記非観血血圧計測起動判定部と、を備え、
前記非観血血圧計測手段を予め定めた時間毎、又は操作者の操作の少なくともいずれかにより起動して患者の血圧を計測すると共に、
前記換算血圧値が前記閾値を超えた際にも、前記非観血血圧計測手段を起動して患者の血圧を計測する、
ことを特徴とする生体情報モニタ。
【請求項2】
前記閾値は、血圧の上限及び下限に対してそれぞれ異なる2つのレベルが設定されていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報モニタ。
【請求項3】
前記換算血圧値が、少なくとも前記異なる2つのレベルの内の内側の閾値を超えた際に、前記非観血血圧計測手段を起動して患者の血圧を計測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の生体情報モニタ。
【請求項4】
前記換算血圧値が、前記異なる2つのレベルの内の内側の閾値を超えている期間が、所定の期間よりも短い場合には、前記非観血血圧計測手段を起動しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の生体情報モニタ。
【請求項5】
前記換算血圧値が、前記異なる2つのレベルの内の外側の設定値を超えた際に、前記非観血血圧計測手段で患者の血圧計測を起動し、その後、前記換算血圧値が前記内側の設定値を下回らない限り、外側の設定値を超えた際には、前記非観血血圧計測手段を起動しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の生体情報モニタ。
【請求項6】
前記換算血圧値(EBP)はEBP=α×PWTT+β (PWTT=脈波伝播時間、α,βは係数)であり、
前記非観血血圧計測手段による予め定めた時間毎、又は前記操作者の操作による患者の計測血圧値に前記換算血圧値が等しく成るように前記α及びβを更新する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体情報モニタ。
【請求項7】
前記非観血血圧計測手段による予め定めた時間毎、又は前記操作者の操作による患者の血圧の計測中は、
前記脈波伝播時間計測手段で計測した当該患者の脈波伝播時間を血圧に換算する換算血圧値の算出を休止する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体情報モニタ。
【請求項8】
設定された血圧の上限及び下限に対する異なるレベルの閾値と、患者の脈波伝播時間を血圧に換算した換算血圧値とを表示部に同時に表示する、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体情報モニタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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