説明

Pbフリー導電性組成物

【課題】電子部品の材料面から環境問題を考えたとき電極あるいは回路導体の成分としてPbフリーの組成物にすることが緊急の課題である。しかしながら低温で熱処理してメッキを施せる導電塗膜が得られていなかった。本発明は、そのような問題を解決した導電性組成物を提供することにある。
【構成】銀粉末と酸化タングステン及び酸化バナジウムの1種類以上とPbフリーガラスフリットとを有機ワニスに分散させた導電性組成物において、銀粉末と酸化タングステン及び酸化バナジウムとガラスフリットの合計重量を100重量%として
(1)比表面積0.5〜5m2/gの銀粉末が79〜94重量%
(2)粒径0.1〜10μmの酸化タングステンが0〜3重量%
(3)粒径0.1〜10μmの酸化バナジウムが0.5〜3重量%
(4)軟化点600℃以下、粒径10μm以下のPbフリーガラスフリットが5〜17重量%
の組成でなる固形分を有機ワニスに分散させたことを特徴とするPbフリー導電性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼成タイプの回路導体及び電極に関し、より詳細には600〜800℃で焼成しメッキを施すことを可能にするためのPbフリー導電性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軟化点が600℃以下のPbフリーガラスフリットを用いた導電性組成物ではPb系ガラスフリットに比して耐酸性が劣るため一般的な電解メッキを施すと導電性組成物が基板に対して十分な密着強度が得られず実使用に耐えるものが無く、又基板との密着強度を得るために耐酸性を得ようとすると焼成温度を800℃以上の高温にしなければ特性が得られないカ゛ラス組成物を使用する必要があり作業条件の制約があった。
【特許文献1】特開2003-257702号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の目的は、600〜800℃の焼成条件においてPbフリーガラスフリットを用いた場合でも耐酸性が良好でメッキ後の密着強度の高い焼成塗膜を形成するPbフリー導電性組成物を提供することにある。」
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを目的としてなされたものでメッキ性を向上するために焼成時にPbフリーガラスフリットと反応して耐酸性のある焼成塗膜を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の効果としてはPbフリーガラスフリットを用いているため環境汚染が少なく、従来より低温で処理できるため低エネルギーで焼成塗膜が形成でき、材料のリサイクル化も可能となる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の導電性組成物について詳細に説明する。
本発明の導電性組成物は、銀粉末と酸化タングステン及び酸化バナジウムの1種類以上と
Pbフリーガラスフリットとを有機ワニスに分散させた導電性組成物において、銀粉末と酸化タングステン及び酸化バナジウムとガラスフリットの合計重量を100重量%として
(1)比表面積0.5〜5m2/gの銀粉末が79〜94重量%%
(2)粒径0.1〜10μmの酸化タングステンが0〜3重量%
(3)粒径0.1〜10μmの酸化バナジウムが0.5〜3重量%
(4)軟化点600℃以下、粒径10μm以下のPbフリーガラスフリットが5〜17重量%
の組成でなる固形分を有機ワニスに分散させたことを特徴とするPbフリー導電性組成物である。また本発明の導電性組成物は銀粉末、酸化タングステン及び酸化バナジウムの1種類以上、Pbフリーガラスフリットの固形分の合計重量が、有機ワニスに対して50〜85重量%であることを特徴とするPbフリー導電性組成物である。
【0007】
本発明に用いる銀粉末は比表面積が0.5〜5m2/gの範囲にあることが好ましい。比表面
積が0.5m2/g以下では焼結性が悪く塗膜に空隙ができ易くメッキ後の密着強度が低くなる
ため好ましくない。比表面積が5m2/g以上の場合は扱いにくいため生産性が悪くなるので好ましくない。より好ましくは0.6〜3.0m2/gの範囲にあることが好ましい。
固形分中の銀粉末は79〜94重量%の範囲にあることが好ましく79重量%以下にすると体積抵抗率が大きくなり電気的信頼性を悪くする。又、94重量%以上にしても体積抵抗率を下げることができないため好ましくない。より好ましくは84〜92重量%の範囲にあることが好ましい。
【0008】
酸化タングステンの粒径は0.1〜10μmの範囲にあることが好ましく0.1μm以下の物は一般的に製造されていないため評価していない。10μm以上では焼成時の塗膜の均一性が無くなりメッキが不均一になり信頼性が悪くなるため好ましくない。より好ましくは0.5〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。固形分中の酸化タングステンは0〜3重量%が好ましく3重量%以上では体積抵抗率が大きくなるとともにメッキ性も悪くなるため好ましくない。
より好ましくは0.2〜1.5重量%の範囲にあることが好ましい。
【0009】
酸化バナジウムの粒径は0.1〜10μmの範囲にあることが好ましく0.1μm以下の物は一般的に製造されていないため評価していない。10μm以上では焼成時の塗膜の均一性が無くなりメッキが不均一になり信頼性が悪くなるため好ましくない。より好ましくは0.5〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。固形分中の酸化バナジウムは0.5〜3重量%が好ましく0.5重量%以下では耐酸性に効果が無くメッキ後の密着強度が低くなるため好ましくない。3重量%以上では体積抵抗率が大きくなるため好ましくない。より好ましくは0.6〜2重量%の範囲にあることが好ましい。
【0010】
Pbフリーガラスフリットの粒径は10μm以下が好ましく10μmより大きいと焼成時の塗膜の均一性が無くなりメッキが不均一になり信頼性が悪くなるため好ましくない。より好ましくは0.5〜5μmの範囲にあることが好ましい。固形分中のPbフリーガラスフリットは5〜17重量%が好ましく5重量%以下では基材との密着強度が低くなり好ましくない。17重量%以上では表面にガラスフリットが浮き出てメッキが不均一になるために好ましくない。より好ましくは7〜14重量%の範囲にあることが好ましい。
【0011】
また本発明の導電性組成物は銀粉末、酸化タングステン及び酸化バナジウムの1種類以上、Pbフリーガラスフリットの固形分の合計重量が、有機ワニスに対して50〜85重量%が好ましく50重量%以下では焼成時の塗膜が薄くなりメッキ後の密着強度がバラツキを生じるため好ましくない。85重量%以上では有機ワニスが少ないためペーストの粘度が高くなり印刷性に問題を生じ好適な焼成塗膜が得られないために好ましくない。より好ましくは60〜84重量%の範囲にあることが好ましい。
ここで用いる銀粉末の粒形はどの様な形状でも良いがファインライン塗膜を形成するためには球状粉を用いるのがより好ましい。
【実施例】
【0012】
以下実施例、比較例を例示して本発明を説明する。表1に示す実施例1から実施例20の組成及び比較例1から比較例11の組成の導電性組成物を次のようにして作製した。
【0013】
(導電性組成物ペーストの作製、印刷)銀粉末、酸化バナジウム、酸化タングステン、ガラスフリット及び有機ワニスを実施例のそれぞれにおいて表1に示す重量%の割合で、3本ロールミルを用いて均一に混合し導電組成物ヘ゜ーストとした。表1において、銀粉末、酸化バナジウム、酸化タングステン、ガラスフリットの4成分については、それらの総重量を100%とした重量%である。さらに有機ワニスの重量%は、銀粉末、酸化バナジウム、酸化タングステン、ガラスフリットの合計重量に有機ワニスの重量を合計した値100%とした時の値である。
【0014】
銀粉末には、純度99.0%の銀粉末を用い、酸化バナジウムには、五酸化バナジウムV2O5を用い、酸化タングステンには、三酸化タングステンWO3を用いた。又Pbフリーガラスフリットには、軟化点600℃のホウ珪酸ビスマス亜鉛系、軟化点550℃、420℃のホウ珪酸ビスマス系の組成でなるの物を用いた。
【0015】
さらに、表1には、実施例それぞれの、銀粉末の比表面積、酸化バナジウム及び酸化タングステンの粒径、Pbフリーガラスフリットの軟化点及び粒径も合わせて示してある。
実施例1から実施例までの組成で作成した導電性組成物ペーストを、10cm角の96%アルミナ基板及びガラス基板に幅1cm長さ8cm及び幅1mm長さ8cmのテストパターンをスクリーン印刷法により塗膜を形成し120℃で10分間加熱し乾燥した。
印刷性については、幅1mm長さ8cmのパターンがきれいに印刷できていることを確認した。
かすれ、欠落のない印刷ができている物を○、不良を×とした。
【0016】
(導電性組成物ペーストの焼付、メッキ)印刷乾燥した基板を焼成炉で700℃に加熱し焼付て、導電組成物試料とした。次に、幅1cm長さ8cmのテストパターンの塗膜に硫酸Cuメッキ浴を用いてCuをメッキした後、硫酸Niメッキ浴を用いてNiメッキを施した。
【0017】
(導電性組成物の性能評価)幅1mm長さ8mmのテストパターンに焼付けた導電性組成物試料の抵抗をデジタルテスターで測定し、膜厚を表面粗さ計で測定し体積抵抗率を算出した。
体積抵抗率が5μΩ・cm以下であることが好ましい。
幅1cm長さ8cmのテストパターンにメッキを施した導電性組成物試料に3mm角の面積にハンダ付けを施しショパー式引っ張り試験機を用いてハンダ付け強度を測定した。
ハンダ付け強度は15N以上が好ましい。
実施例1から実施例20は表2に示すとおり良好な結果が得られた。
【0018】
比較例1から比較例11は本発明とは異なるものであり性能評価において体積抵抗率、ハンダ付け強度、印刷性の1項目以上の好ましくない評価項目があった。但し、比較例1については性能評価において問題ないレベルのものが得られたがペースト作製上、作業性に問題があり工業生産が困難と判断した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、本発明の導電組成物は、低温焼成でも高接合力のあるメッキ付け性が良好な組成物であり回路導体や電極に使用することが可能な導電性組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粉末と酸化タングステン及び酸化バナジウムの1種類以上とPbフリーガラスフリットとを有機ワニスに分散させた導電性組成物において、銀粉末と酸化タングステン及び酸化バナジウムとガラスフリットの合計重量を100重量%として
(1)比表面積0.5〜5m2/gの銀粉末が79〜94重量%
(2)粒径0.1〜10μmの酸化タングステンが0〜3重量%
(3)粒径0.1〜10μmの酸化バナジウムが0.5〜3重量%
(4)軟化点600℃以下、粒径10μm以下のPbフリーガラスフリットが5〜17重量%
の組成でなる固形分を有機ワニスに分散させたことを特徴とするPbフリー導電性組成物
【請求項2】
銀粉末、酸化タングステン及び酸化バナジウムの1種類以上、Pbフリーガラスフリットの固形分の合計重量が、有機ワニスに対して50〜85重量%であることを特徴とする請求項1に記載のPbフリー導電性組成物