RFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラム
【課題】複数の通信規格に対応するRFタグRFタグ読み取り装置で、RFタグ検出時間が長くなることを抑制する。
【解決手段】プログラム記憶部7は異なる3つ以上の通信規格のRFタグ2のそれぞれの読み取り処理を行う複数の処理プログラム16a〜16nを記憶する。処理順序決定部13は、複数の処理プログラム16a〜16nについて、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の処理プログラムの実行順序を連続させて、処理プログラム16a〜16nの実行順序を設定する。制御部4のPCインタプリタ5およびプロトコル処理部6は、処理順序決定部13で設定した実行順序に従って、処理プログラム16a〜16nを順に実行する。
【解決手段】プログラム記憶部7は異なる3つ以上の通信規格のRFタグ2のそれぞれの読み取り処理を行う複数の処理プログラム16a〜16nを記憶する。処理順序決定部13は、複数の処理プログラム16a〜16nについて、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の処理プログラムの実行順序を連続させて、処理プログラム16a〜16nの実行順序を設定する。制御部4のPCインタプリタ5およびプロトコル処理部6は、処理順序決定部13で設定した実行順序に従って、処理プログラム16a〜16nを順に実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる複数の通信規格のRFタグの読み取りを行うRFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカード、非接触ICタグ、及びRF(Radio Frequency)タグ(以下、特に言及しない場合には、RFタグは、非接触ICカード、非接触ICタグを含む)には、パッシブ型とアクティブ型がある。パッシブ型は、電池を内蔵せずタグリーダからの電波を受けて反射波を返し、アクティブ型は、電池を内蔵しており自ら電波を出す。パッシブ型RFタグのアンテナは、タグリーダからの電波の一部を反射し、ID(Identification)情報をこの反射波に乗せて返す。
【0003】
パッシブ型RFタグの通信規格には、例えば、13.56MHz帯の周波数を使用するISO/IEC(International Standardization Organization / International Electrotechnical Commission)14443 Type A、Type B、ISO/IEC15693、FeliCa、ISO/IEC18000−3や、UHF帯の周波数を使用するISO/IEC18000−6 Type A、Type B、Type C、2.45GHz帯の周波数を使用するISO/IEC18000−4、μチップ等が存在する。
【0004】
関連する技術として、特許文献1には、異なる通信規格(TypeA,TypeB)に対応した使い勝手の良いICカード読み取り装置として、無線信号の種類に対応して、アンテナ回路に供給する電源電力をそれぞれの通信規格に対応して切り替える方法が記載されている。
【0005】
また、関連する技術として、通信規格が異なるRFタグに付与されたユニークなID(以下、UIDという)等を一度に読み取る非接触IDシステムが、特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の技術は、複数の通信規格を含めた要求コマンドを一度にリーダモジュールに送信し、リーダモジュールは複数の通信規格について順次ICカードに質問電波を送出して、各通信規格についての応答の有無を受信して、受信結果を纏めて上位システムに送信する。リーダモジュールと上位システム間の通信回数を削減して、システム全体の処理時間を短縮する。
【0006】
非接触ICカードとの通信時間を短縮する方法として、特許文献3には、上位機関から質問器への質問信号を一度に一括して送信する方法が記載されている。特許文献3の非接触IDシステムは、上位管理装置が、複数の各質問器に対して、相異なる通信規格を非接触ICカードに問い合わせる要求を含む質問要求を送信する際に、上記質問要求に、各質問器が質問信号を送信する際には、他の質問器が非接触ICカードへの質問信号の送信を停止するように要求する停止要求を含ませる。
【0007】
特許文献4のRFID通信装置は、送信ブロックとして、RFIDの周波数帯域ごとの波形パターンを保持しておき、その波形パターンを用いて送信データをエンコードしRF回路から送信し、RF回路で受信したデータを受信制御ブロックでサンプリングされた後に所定のフィルタを通して整形してコード検出することで、1つの装置で様々な通信規格に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−218020号公報
【特許文献2】特開2005−309726号公報
【特許文献3】特開2006−268380号公報
【特許文献4】特開2007−134941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のとおり、RFタグには複数の通信規格があり、1つの場所でRFタグを読み書きする複数の通信規格が混在する場合がある。関連する技術のRFタグリーダライタシステムでは、対応するRFタグの種類を追加するために、複数の通信規格の処理プログラムを順次実行するときに、アンテナモジュール等の切り替えを制御していた。1つのプログラムを実行するたびにアンテナモジュールをON/OFF制御するために、実行するプログラムが多くなると、アンテナモジュールを切り替えて通信をするための待ち時間が増大する問題があった。
【0010】
1つのRFタグリーダライタで読み書きする通信規格の種類を多くすると、RFタグを検出するまでの時間が長くなり、一度に検出できるRFタグの種類に限度を設ける必要があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の通信規格に対応するRFタグ読み取り装置で、RFタグ検出時間が長くなることを抑制するRFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るRFタグ読み取り装置は、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り手段と、
前記複数の読み取り手段について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定する順序設定手段と、
前記順序設定手段で設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り手段を順に実行する切り替え手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の観点に係るRFタグ読み取り方法は、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、コンピュータに、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、複数の通信規格に対応するRFタグ読み取り装置で、RFタグの読み取りを行うターンアラウンド時間を短縮することができる。その結果、一度に検出できるRFタグの種類を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るRFタグ読み取り装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】通信規格ごとの周波数帯域、チャネル番号および変調度の例を示す図である。
【図3】送受信部ごとの各安定時間の例を示す図である。
【図4A】記憶されている順序で処理プログラムを実行した場合の待ち時間の例を示す図である。
【図4B】処理順序決定部で並び替えた順序で処理プログラムを実行した場合の待ち時間の例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る読み取り処理順序決定の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1に係る読み取り処理切り替え動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置の作用を示す概念図である。
【図9】通信規格およびコマンドごとの受信待ち時間の例を示す図である。
【図10】実施の形態2の読み取り処理動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2の変形に係る応答遅延時間計測の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一または相当部分には同じ符号を付す。本発明のRFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラムは、RFタグの読み取りのみを行う装置だけでなく、RFタグにデータの書き込みを行う装置にも適用できる。通常、RFタグに書き込みを行う場合に、データが正しく書き込めたことを確認するために、読み取りを続けて行う。一般にはRFタグ書き込み装置はRFタグ読み書き装置である。以下の実施の形態では、代表してRFタグ読み取り装置について説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係るRFタグ読み取り装置の構成を示すブロック図である。RFタグ読み取り装置1は、複数の通信規格のRFタグ2の読み取りを行う。RFタグ読み取り装置1は、制御部4、プログラム記憶部7、信号処理部9、送受信バッファ10、A−D/D−A変換部11、RFセレクタ15、送受信部12a、12b、12c、および順序情報記憶部14を備える。
【0019】
制御部4は、PCインタプリタ5、プロトコル処理部6および処理順序決定部13を含む。プログラム記憶部7には、複数の通信規格ごとの処理プログラム16a〜16nが記憶される。以下、各処理プログラム16a〜16nを総称して、処理プログラム16という。
【0020】
制御部4は、CPU、メモリおよびI/Oを備えるプロセッサで構成される。制御部4は、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成することもできる。また、信号処理部9およびA−D/D−A変換部11を含めて、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)で構成することも可能である。
【0021】
プログラム記憶部7は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。または、揮発性メモリを用いて、RFタグ読み取り装置1を起動したときに、ホストコンピュータ3から各処理プログラム16をダウンロードしてもよい。読み取り処理の切り替えに比べてプログラム記憶部7のアクセス時間が長い場合には、各処理プログラム16を制御部4のメモリに常駐させて実行する。
【0022】
プログラム記憶部7に、後述する処理順序決定と読み取り処理切り替えの動作を実行する制御プログラム17を記憶し、制御部4のメモリにロードして実行させてもよい。その場合、制御プログラム17は制御部4のメモリにロードされて、PCインタプリタ5、プロトコル処理部6および処理順序決定部13の処理を実行する。
【0023】
PCインタプリタ5は、プログラム記憶部7から処理プログラム16を読み込んで、プロトコル処理部6に実行させる。また、ホストコンピュータ3から処理プログラム16をダウンロードする場合は、PCインタプリタ5が行う。その場合、処理プログラム16のダウンロード指示を受けると、引き続き送信されるプログラムデータを受信して、プログラム記憶部7に格納する。また、処理プログラム16の削除指示を受けると、プログラム記憶部7から該当するプログラムデータを削除する。
【0024】
また、PCインタプリタ5は、RFタグ2の識別符号(ID)の読み取り指示、ユーザデータの読み取り指示(もしくは書き込み指示)をホストコンピュータ3から受け取ると、プログラム記憶部7から処理プログラム16を読み出して、プロトコル処理部6へ送る。読み取り指示された対象のRFタグ2の通信規格が1つに指定されていれば、それに該当する処理プログラム16をプロトコル処理部6へ送る。通信規格が1つに指定されていなければ、指定された複数の処理プログラム16、またはプログラム記憶部7に記憶されているすべての処理プログラム16を、順にプロトコル処理部6に送って、順に実行させる。不特定の通信規格のRFタグ2の読み取りを繰り返し行う場合には、プログラム記憶部7に記憶されているすべての処理プログラム16を繰り返し順にプロトコル処理部6に実行させる。
【0025】
本実施の形態1では、読み取るRFタグ2の通信規格が不明であって、プログラム記憶部7に記憶されているすべての処理プログラム16を、順に実行する場合を想定する。PCインタプリタ5は、次に実行する処理プログラム16を処理順序決定部13に問い合わせる。処理順序決定部13はあらかじめ決定しておいた処理順序を順序情報記憶部14から読み出して、次に実行する処理プログラム16の識別番号をPCインタプリタ5に回答する。
【0026】
PCインタプリタ5は、処理順序記憶部13から受け取った処理プログラム16の識別番号に従って、処理プログラム16をプロトコル処理部6に指示し、処理プログラム16に合わせてRFセレクタ15に送受信部12a〜12c(以下、送受信部12と総称する)の選択を指示する。RFセレクタ15は、PCインタプリタ5の指示により、使用する送受信部12を選択する。
【0027】
プロトコル処理部6は、各処理プログラム16を実行し、信号処理部9を制御してRFタグ2との通信を行う。プロトコル処理部6は、送信するパケットの生成と受信したパケットの解読を行う。プロトコル処理部6は、生成した送信パケットに加えて、送信チャネル番号、変調度および信号データ速度などの情報を信号処理部9へ送る。
【0028】
信号処理部9は、RFタグ2との送受信におけるディジタル信号処理を行う。信号処理部9は、受け取った送信パケットを送受信バッファ10に格納し、送信チャネル番号と変調度をRFセレクタ15へ送る。そうして、A−D/D−A変換部11によりアナログ変換された信号速度が指示された信号データ速度になるように送信パケットを伸張して、A−D/D−A変換部11に送る。
【0029】
RFセレクタ15は、信号処理部9から受け取った送信チャネル番号と変調度を、選択した送受信部12にそのまま受け渡す。また、A−D/D−A変換部11からアナログ変換された送信パケットを送受信部12に渡す。
【0030】
送受信部12は、指示された送信チャネル番号になるように搬送波周波数を設定し、送信パケットを変調度に合わせて変調して、RFタグ2と交信する。送受信部12は、RFタグ2からの受信信号を中間周波数に変換して復調し、A−D/D−A変換部11に送る。
【0031】
A−D/D−A変換部11は、復調された受信信号をディジタル変換して信号処理部9に送る。信号処理部9は、受信信号を送受信バッファ10に蓄積する。送信パケットを送信してから所定の受信継続時間が経過すると、それまで送受信バッファ10に蓄積した受信信号をプロトコル処理部6へ通知する。
【0032】
プロトコル処理部6は、受信信号から応答信号を検出してRFタグ2の応答パケットを生成し、PCインタプリタ5に送る。プロトコル処理部6は、応答信号が検出できない場合は、その通信規格の応答がなかったことをPCインタプリタ5に伝える。PCインタプリタ5は、読み取り結果をホストコンピュータ3に通知する。続いてPCインタプリタ5は、処理順序決定部13の情報に従って次に実行する処理プログラム16を選択して、プロトコル処理部6に実行させる。
【0033】
上述したように、処理プログラム16、プロトコル処理部6、信号処理部9、A−D/D−A変換部11および送受信部12から読み取り手段が構成される。読み取り手段は、処理プログラム16によらずに、通信規格ごとの専用の回路から構成されてもかまわない。また、PCインタプリタ5、RFセレクタ15および制御プログラム17から切り替え手段が構成される。処理順序決定部13は順序設定手段である。
【0034】
読み取り手段のうち、プロトコル処理部6、信号処理部9、A−D/D−A変換部11(そのうちのD−A変換)、送受信部12および処理プログラム16は送信手段を構成する。また、応答信号を検出するまでを広義の復調と捉えると、復調手段は読み取り手段のうち、送受信部12、A−D/D−A変換部11(そのうちのA−D変換)、信号処理部9、プロトコル処理部6および処理プログラム16から構成される。
【0035】
処理順序決定部13はあらかじめ、プログラム記憶部7に記憶されている処理プログラム16のセットから、処理プログラム16を実行する順序を決定する。図2は、通信規格ごとの周波数帯域、チャネル番号および変調度の例を示す。図2の例では、変調方式はすべてASK(Amplitude Shift Keying)であって、変調方式で異なるのは変調度のみであることを想定している。通信規格ごとの周波数帯域、チャネル番号、変調度は処理プログラム16に記載されていてもよい。あるいは、図2に示すような対応づけデータが、例えば順序情報記憶部14に格納されていてもよい。
【0036】
処理順序決定部13は、プログラム記憶部7に記憶されている処理プログラム16ごとの、使用周波数帯域、使用チャネル番号および使用変調方式を取得する。処理順序決定部13は、処理プログラム16を使用周波数帯域および/または使用変調方式で分類し、さらに同じ使用周波数帯域の処理プログラム16をチャネル番号で分類する。
【0037】
図3は、送受信部12ごとの各安定時間の例を示す。処理順序決定部13は、送受信部12ごとの基準周波数安定時間、チャネル変更時間および変調度変更時間によって、処理プログラム16を安定待ち時間が短い順に並び替える。すなわち、図3の例では、処理プログラム16をまず、使用周波数帯域が連続するように並び替える。次に、使用周波数帯域が同じ処理プログラム16の中で、変調度が同じ処理プログラム16が連続するように並び替える。さらに、使用周波数帯域および変調度が同じ処理プログラム16の中で、使用チャネル番号が連続するように並び替える。言い換えれば、周波数帯域、変調度およびチャネル番号をその順序でキーにして、処理プログラム16をソートする。ただし、各キーのソートの順は、属性が同じ処理プログラム16が連続すればよいので、それぞれ昇順であるか降順であるかまたは任意の順であるかは問わない。
【0038】
図4Aは、記憶されている順序で処理プログラム16を実行した場合の待ち時間の例を示す。図4Aの例では、通信規格の処理実行順序は、A,E,F,B,Gである。実行順序の使用周波数帯域は連続していないので、各処理プログラム16を図4Aの順序で実行するときに図3に示す待ち時間がかかる。図4Aの安定待ち時間は、基準周波数安定時間、チャネル変更時間および変調度変更時間の合計である。図4Aに示す5つの通信規格の処理プログラム16をその順で実行した場合、安定待ち時間は合計で1080μ秒(最下段)である。
【0039】
図4Bは、処理順序決定部13で並び替えた順序で処理プログラム16を実行した場合の待ち時間の例を示す。図4Bの例では、通信規格の処理実行順序は、A,B,E,F,Gである。使用周波数帯域が連続しているので、通信規格Bおよび通信規格Gの処理では基準周波数安定時間がかからない。また、通信規格Bでは変調度が前の通信規格Aと同じなので、変調度変更時間がかからない。その結果、安定待ち時間の合計は660μ秒になる。
【0040】
図5は、実施の形態1に係る読み取り処理順序決定の動作の一例を示すフローチャートである。読み取り処理順序決定は、処理プログラム16が追加または削除されたときに起動される。処理順序決定部13は、PCインタプリタ5からプログラム記憶部7に記憶されている処理プログラム16の読み取り処理通信規格のリストを読み込む(ステップS11)。
【0041】
処理順序決定部13は、処理プログラム16の順序を、その使用周波数帯域を連続させた順序に変更する(ステップS12)。次に、同じ周波数帯域の中で、変調方式を連続させた順序に並べ替える(ステップS13)。さらに、同じ周波数帯域および変調方式の中で、チャネル番号を連続させて、処理順序を決定する(ステップS14)。処理順序決定部13は、決定した処理順序を順序情報記憶部14に記憶する(ステップS15)。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る読み取り処理切り替えの動作の一例を示すフローチャートである。PCインタプリタ5は、実行する順序の番号を示す変数iを1に初期化する(ステップS21)。PCインタプリタ5はi番の実行順序の処理プログラム16を処理順序決定部13に問い合わせて、実行順序がi番の処理プログラム16をプロトコル処理部6に実行させる(ステップS22)。
【0043】
PCインタプリタ5は、番号変数iに1を加算して(ステップS23)、変数iが実行する処理プログラム16の最大数を超えていなければ(ステップS24;NO)、次の実行順序であるi番の処理プログラム16を実行する(ステップS22)。変数iが実行する処理プログラム16の最大数を超えれば(ステップS24;YES)、一連の処理プログラム16の実行を終了する。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、複数の(3つ以上の)通信規格のRFタグ2のそれぞれの読み取り処理を連続して行う場合に、読み取る通信規格を切り替えるときの待ち時間を短縮することができる。その結果、1つのRFタグ2の読み取りを行うターンアラウンド時間を短縮することができる。
【0045】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態2のRFタグ読み取り装置1は、送信パケットを送信したのち、RFタグ2が応答信号の送信を開始するであろう点から応答信号の検出を行う。以下、実施の形態1との相違点について主に説明する。
【0046】
本実施の形態2のRFタグ読み取り装置1は、実施の形態1の構成に加えてタイマー8を備える。タイマー8は、受信待ち時間と受信継続時間を計測する計時手段である。受信待ち時間は、送信パケットを送信してから、RFタグ2が応答信号の送信を開始する直前の点までの時間である。受信継続時間は、RFタグ2が応答信号を送信している時間を含み、送信時間の変動などの余裕を見込んだ時間である。
【0047】
図8は、実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置1の作用を示す概念図である。図8の時間の進行を表す線の上はRFタグ読み取り装置1の動作を、線の下はRFタグ2の動作を表す。図8(a)は、送信パケットを送信してからすぐに応答信号の検出を行う場合を示す。図8(b)は、送信パケットを送信したのち受信待ち時間を経過した点から応答信号の検出を行う場合を示す。
【0048】
RFタグ読み取り装置1は、搬送波を送信してRFタグ2をチャージしながら起動する。RFタグ読み取り装置1は、読み取りまたは書き込みのコマンドを含む送信パケットを送信して、そののちも搬送波を送信し続ける。RFタグ2は、送信パケットを受信してコマンドを解析し、コマンドに合った応答信号を生成する。RFタグ2は、RFタグ読み取り装置1が送信する搬送波の反射波に応答信号を重畳することによって応答送信する。
【0049】
図8(a)では、コマンド(送信パケット)を送信し終わると同時に応答信号の検出を行う。それに対して、図8(b)では、コマンドを送信してから待ち時間を経過した点から応答信号の検出を行う。RFタグ2が応答信号を生成している間は、応答信号は送信されないので、その間の受信データから応答信号を検出する必要はない。図8(b)ではいわば無効な受信データの解析を行わないので、応答信号の解析を短縮できる。
【0050】
図9は、通信規格およびコマンドごとの受信待ち時間の例を示す。1つの通信規格において、RFタグ2の識別符号(ID)だけを読み取る場合(コマンド="Get ID")、記憶されている他のデータを読み取る場合(コマンド="ReadData")、およびデータを書き込む場合(コマンド="WriteData")でそれぞれ受信待ち時間および受信継続時間が異なる。データを書き込む場合を記載しているのは、書き込んだデータを読み取って正しく書き込めたことを確認するからである。また、通信規格ごとに受信待ち時間および受信継続時間は異なる。
【0051】
図7のプロトコル処理部6は、送信パケット、送信チャネル番号、変調度および信号データ速度に加えて受信待ち時間と受信継続時間の情報を信号処理部9へ送る。信号処理部9は、受け取った送信パケットを送受信バッファ10に格納し、受信待ち時間と受信継続時間の情報をタイマー8に送る。信号処理部9は、送信パケットをA−D/D−A変換部11に送ったのち、タイマー8を起動する。
【0052】
タイマー8は、信号処理部9に起動されて時間計測を開始し、受信待ち時間が経過したら信号処理部9に受信開始を指示する。そののち、受信継続時間を経過したときに、受信終了を信号処理部9に指示する。
【0053】
信号処理部9は、受信開始指示を受けると、A−D/D−A変換部11から送られる受信信号を送受信バッファ10に蓄積する。また、受信終了の指示を受けると受信信号の蓄積を終了して、それまで送受信バッファ10に蓄積した受信信号をプロトコル処理部6へ通知する。送受信バッファ10は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を蓄積しない。
【0054】
プロトコル処理部6は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過した点以降の受信信号から応答信号を検出してRFタグ2の応答パケットを生成し、PCインタプリタ5に送る。プロトコル処理部6は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を解析しない。
【0055】
図10は、実施の形態2に係るRFタグ読み取り処理の動作の一例を示すフローチャートである。図10のRFタグ読み取り処理の動作は、図6のステップ22の読み取り処理に相当する。
【0056】
信号処理部9は、RFタグ2を起動するために送受信部12から搬送波を送信し(ステップS31)、読み取り信号(送信パケット)を送信する(ステップS32)。タイマー8が受信待ち時間を計測して受信開始を指示すると(ステップS33)、信号処理部9は、受信信号の蓄積を開始する(ステップS34)。
【0057】
タイマー8が受信継続時間を計測して、その所定の時間が経過すると(ステップS35)、信号処理部9は受信信号の蓄積を終了し、プロトコル処理部6は蓄積された受信信号から応答信号を検出する(ステップS36)。
【0058】
プロトコル処理部6は、応答信号を検出できれば(ステップS37;YES)、このときの通信規格の応答信号をPCインタプリタ5に送って記憶する(ステップS38)。応答信号を検出できなければ(ステップS37;NO)、このときの通信規格のRFタグ2なしをセットする(ステップS39)。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2のRFタグ読み取り装置1によれば、送受信バッファ10は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を蓄積しない。また、プロトコル処理部6は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を解析しない。その結果、解析する受信信号の量が減少し、受信バッファの低容量化と応答信号検出の時間短縮を図ることができる。あるいは、応答信号検出の時間が同じでも、プロトコル処理のプロセッサの低速化と、それによる装置の低消費電力化を実現できる。また、受信待ち時間において、実施の形態1による通信規格の並び替え、もしくは次の送信パケットを送受信バッファ10へ蓄積することができる。
【0060】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2の変形例として、RFタグ読み取り装置1でRFタグ2の応答遅延時間を計測する場合を説明する。応答遅延時間は受信信号上の、送信パケットを送信してからRFタグ2の応答信号を検出する点までの経過時間である。実施の形態2の変形例では、計測した応答遅延時間から待ち時間を算出する。
【0061】
図11は、応答遅延時間を計測する動作の一例を示すフローチャートである。応答遅延時間計測は、読み取り動作ごとに常に行うのではなく、待ち時間を算出するために応答遅延時間を計測するモードでのみ実行する。図10の読み取り処理と同様に、搬送波を送信し(ステップS41)、読み取り信号を送信する(ステップS42)。時間の計測を開始する(ステップS43)と同時に、受信信号から応答信号の検出を開始する(ステップS44)。この場合、信号処理部9は、受信信号を蓄積せずに(または蓄積しながら)プロトコル処理部6に送る。プロトコル処理部6は、送信信号を送信した直後の受信信号の先頭から順次応答信号を検出する。
【0062】
応答信号を検出するまで、受信信号の先頭から探索する(ステップS45;NO、ステップS46;NO)。応答信号を検出できれば(ステップS45;YES)、応答信号先頭までの経過時間を応答遅延時間とする(ステップS47)。応答信号を検出する前に所定の最大時間を超えた場合(ステップS45;NO、ステップS46;YES)、この回では応答遅延時間を計測できなかったことをセットして(ステップS48)終了する。
【0063】
なお、信号処理部9は送信信号を送信した直後から受信信号を蓄積しておいて、プロトコル処理部6は蓄積された受信信号から応答信号を検出してもよい。その場合、受信信号の先頭から応答信号を検出した受信信号の位置までの経過時間を応答遅延時間とする。
【0064】
制御部4では、応答遅延時間を何回か計測し、その最小値を待ち時間とすることができる。さらに余裕を見込んで、待ち時間を応答遅延時間より短くしてもよい。実施の形態2の変形例によれば、RFタグ2の応答遅延時間を計測して、待ち時間を設定することができる。
【0065】
以上、好ましい実施の形態および具体例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも、上記実施の形態および具体例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。その他、前記の装置構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0066】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0067】
本発明の第1の観点に係るRFタグ読み取り装置について、
好ましくは、前記順序設定手段はさらに、前記周波数帯が同じ読み取り手段のうち、通信チャネルおよび/または変調方式が同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定する。
【0068】
好ましくは、前記読み取り手段は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信手段と、
前記送信手段で読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時手段と、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調手段と、
を備え、
前記復調手段は、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する。
【0069】
好ましくはさらに、前記送信手段で読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調手段で前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測手段を備え、
前記計時手段は、前記遅れ時間計測手段で計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する。
【0070】
本発明の第2の観点に係るRFタグ読み取り方法について、
好ましくは、前記順序設定ステップはさらに、前記周波数帯が同じ読み取り処理のうち、通信チャネルおよび/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する。
【0071】
好ましくは、前記読み取り処理は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップで読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時ステップと、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調ステップと、
を備え、
前記復調ステップは、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する。
【0072】
好ましくはさらに、前記送信ステップで読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調ステップで前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測ステップを備え、
前記計時ステップは、前記遅れ時間計測ステップで計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する。
【0073】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0074】
制御部4、プログラム記憶部7、信号処理部9、送受信バッファ10、A−D/D−A変換部11、RFセレクタ15、順序情報記憶部14およびタイマー8などから構成されるRFタグ読み取り処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するRFタグ読み取り装置1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでRFタグ読み取り装置1を構成してもよい。
【0075】
また、RFタグ読み取り装置1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0076】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 RFタグ読み取り装置
2 RFタグ
3 ホストコンピュータ
4 制御部
5 PCインタプリタ
6 プロトコル処理部
7 プログラム記憶部
8 タイマー
9 信号処理部
10 送受信バッファ
11 A−D/D−A変換部
12a、12b、12c 送受信部
13 処理順序決定部
14 順序情報記憶部
15 RFセレクタ
16a、16n 処理プログラム
17 制御プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる複数の通信規格のRFタグの読み取りを行うRFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカード、非接触ICタグ、及びRF(Radio Frequency)タグ(以下、特に言及しない場合には、RFタグは、非接触ICカード、非接触ICタグを含む)には、パッシブ型とアクティブ型がある。パッシブ型は、電池を内蔵せずタグリーダからの電波を受けて反射波を返し、アクティブ型は、電池を内蔵しており自ら電波を出す。パッシブ型RFタグのアンテナは、タグリーダからの電波の一部を反射し、ID(Identification)情報をこの反射波に乗せて返す。
【0003】
パッシブ型RFタグの通信規格には、例えば、13.56MHz帯の周波数を使用するISO/IEC(International Standardization Organization / International Electrotechnical Commission)14443 Type A、Type B、ISO/IEC15693、FeliCa、ISO/IEC18000−3や、UHF帯の周波数を使用するISO/IEC18000−6 Type A、Type B、Type C、2.45GHz帯の周波数を使用するISO/IEC18000−4、μチップ等が存在する。
【0004】
関連する技術として、特許文献1には、異なる通信規格(TypeA,TypeB)に対応した使い勝手の良いICカード読み取り装置として、無線信号の種類に対応して、アンテナ回路に供給する電源電力をそれぞれの通信規格に対応して切り替える方法が記載されている。
【0005】
また、関連する技術として、通信規格が異なるRFタグに付与されたユニークなID(以下、UIDという)等を一度に読み取る非接触IDシステムが、特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の技術は、複数の通信規格を含めた要求コマンドを一度にリーダモジュールに送信し、リーダモジュールは複数の通信規格について順次ICカードに質問電波を送出して、各通信規格についての応答の有無を受信して、受信結果を纏めて上位システムに送信する。リーダモジュールと上位システム間の通信回数を削減して、システム全体の処理時間を短縮する。
【0006】
非接触ICカードとの通信時間を短縮する方法として、特許文献3には、上位機関から質問器への質問信号を一度に一括して送信する方法が記載されている。特許文献3の非接触IDシステムは、上位管理装置が、複数の各質問器に対して、相異なる通信規格を非接触ICカードに問い合わせる要求を含む質問要求を送信する際に、上記質問要求に、各質問器が質問信号を送信する際には、他の質問器が非接触ICカードへの質問信号の送信を停止するように要求する停止要求を含ませる。
【0007】
特許文献4のRFID通信装置は、送信ブロックとして、RFIDの周波数帯域ごとの波形パターンを保持しておき、その波形パターンを用いて送信データをエンコードしRF回路から送信し、RF回路で受信したデータを受信制御ブロックでサンプリングされた後に所定のフィルタを通して整形してコード検出することで、1つの装置で様々な通信規格に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−218020号公報
【特許文献2】特開2005−309726号公報
【特許文献3】特開2006−268380号公報
【特許文献4】特開2007−134941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のとおり、RFタグには複数の通信規格があり、1つの場所でRFタグを読み書きする複数の通信規格が混在する場合がある。関連する技術のRFタグリーダライタシステムでは、対応するRFタグの種類を追加するために、複数の通信規格の処理プログラムを順次実行するときに、アンテナモジュール等の切り替えを制御していた。1つのプログラムを実行するたびにアンテナモジュールをON/OFF制御するために、実行するプログラムが多くなると、アンテナモジュールを切り替えて通信をするための待ち時間が増大する問題があった。
【0010】
1つのRFタグリーダライタで読み書きする通信規格の種類を多くすると、RFタグを検出するまでの時間が長くなり、一度に検出できるRFタグの種類に限度を設ける必要があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の通信規格に対応するRFタグ読み取り装置で、RFタグ検出時間が長くなることを抑制するRFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るRFタグ読み取り装置は、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り手段と、
前記複数の読み取り手段について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定する順序設定手段と、
前記順序設定手段で設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り手段を順に実行する切り替え手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の観点に係るRFタグ読み取り方法は、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、コンピュータに、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、複数の通信規格に対応するRFタグ読み取り装置で、RFタグの読み取りを行うターンアラウンド時間を短縮することができる。その結果、一度に検出できるRFタグの種類を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るRFタグ読み取り装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】通信規格ごとの周波数帯域、チャネル番号および変調度の例を示す図である。
【図3】送受信部ごとの各安定時間の例を示す図である。
【図4A】記憶されている順序で処理プログラムを実行した場合の待ち時間の例を示す図である。
【図4B】処理順序決定部で並び替えた順序で処理プログラムを実行した場合の待ち時間の例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る読み取り処理順序決定の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1に係る読み取り処理切り替え動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置の作用を示す概念図である。
【図9】通信規格およびコマンドごとの受信待ち時間の例を示す図である。
【図10】実施の形態2の読み取り処理動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2の変形に係る応答遅延時間計測の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一または相当部分には同じ符号を付す。本発明のRFタグ読み取り装置、RFタグ読み取り方法およびプログラムは、RFタグの読み取りのみを行う装置だけでなく、RFタグにデータの書き込みを行う装置にも適用できる。通常、RFタグに書き込みを行う場合に、データが正しく書き込めたことを確認するために、読み取りを続けて行う。一般にはRFタグ書き込み装置はRFタグ読み書き装置である。以下の実施の形態では、代表してRFタグ読み取り装置について説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態に係るRFタグ読み取り装置の構成を示すブロック図である。RFタグ読み取り装置1は、複数の通信規格のRFタグ2の読み取りを行う。RFタグ読み取り装置1は、制御部4、プログラム記憶部7、信号処理部9、送受信バッファ10、A−D/D−A変換部11、RFセレクタ15、送受信部12a、12b、12c、および順序情報記憶部14を備える。
【0019】
制御部4は、PCインタプリタ5、プロトコル処理部6および処理順序決定部13を含む。プログラム記憶部7には、複数の通信規格ごとの処理プログラム16a〜16nが記憶される。以下、各処理プログラム16a〜16nを総称して、処理プログラム16という。
【0020】
制御部4は、CPU、メモリおよびI/Oを備えるプロセッサで構成される。制御部4は、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成することもできる。また、信号処理部9およびA−D/D−A変換部11を含めて、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)で構成することも可能である。
【0021】
プログラム記憶部7は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成される。または、揮発性メモリを用いて、RFタグ読み取り装置1を起動したときに、ホストコンピュータ3から各処理プログラム16をダウンロードしてもよい。読み取り処理の切り替えに比べてプログラム記憶部7のアクセス時間が長い場合には、各処理プログラム16を制御部4のメモリに常駐させて実行する。
【0022】
プログラム記憶部7に、後述する処理順序決定と読み取り処理切り替えの動作を実行する制御プログラム17を記憶し、制御部4のメモリにロードして実行させてもよい。その場合、制御プログラム17は制御部4のメモリにロードされて、PCインタプリタ5、プロトコル処理部6および処理順序決定部13の処理を実行する。
【0023】
PCインタプリタ5は、プログラム記憶部7から処理プログラム16を読み込んで、プロトコル処理部6に実行させる。また、ホストコンピュータ3から処理プログラム16をダウンロードする場合は、PCインタプリタ5が行う。その場合、処理プログラム16のダウンロード指示を受けると、引き続き送信されるプログラムデータを受信して、プログラム記憶部7に格納する。また、処理プログラム16の削除指示を受けると、プログラム記憶部7から該当するプログラムデータを削除する。
【0024】
また、PCインタプリタ5は、RFタグ2の識別符号(ID)の読み取り指示、ユーザデータの読み取り指示(もしくは書き込み指示)をホストコンピュータ3から受け取ると、プログラム記憶部7から処理プログラム16を読み出して、プロトコル処理部6へ送る。読み取り指示された対象のRFタグ2の通信規格が1つに指定されていれば、それに該当する処理プログラム16をプロトコル処理部6へ送る。通信規格が1つに指定されていなければ、指定された複数の処理プログラム16、またはプログラム記憶部7に記憶されているすべての処理プログラム16を、順にプロトコル処理部6に送って、順に実行させる。不特定の通信規格のRFタグ2の読み取りを繰り返し行う場合には、プログラム記憶部7に記憶されているすべての処理プログラム16を繰り返し順にプロトコル処理部6に実行させる。
【0025】
本実施の形態1では、読み取るRFタグ2の通信規格が不明であって、プログラム記憶部7に記憶されているすべての処理プログラム16を、順に実行する場合を想定する。PCインタプリタ5は、次に実行する処理プログラム16を処理順序決定部13に問い合わせる。処理順序決定部13はあらかじめ決定しておいた処理順序を順序情報記憶部14から読み出して、次に実行する処理プログラム16の識別番号をPCインタプリタ5に回答する。
【0026】
PCインタプリタ5は、処理順序記憶部13から受け取った処理プログラム16の識別番号に従って、処理プログラム16をプロトコル処理部6に指示し、処理プログラム16に合わせてRFセレクタ15に送受信部12a〜12c(以下、送受信部12と総称する)の選択を指示する。RFセレクタ15は、PCインタプリタ5の指示により、使用する送受信部12を選択する。
【0027】
プロトコル処理部6は、各処理プログラム16を実行し、信号処理部9を制御してRFタグ2との通信を行う。プロトコル処理部6は、送信するパケットの生成と受信したパケットの解読を行う。プロトコル処理部6は、生成した送信パケットに加えて、送信チャネル番号、変調度および信号データ速度などの情報を信号処理部9へ送る。
【0028】
信号処理部9は、RFタグ2との送受信におけるディジタル信号処理を行う。信号処理部9は、受け取った送信パケットを送受信バッファ10に格納し、送信チャネル番号と変調度をRFセレクタ15へ送る。そうして、A−D/D−A変換部11によりアナログ変換された信号速度が指示された信号データ速度になるように送信パケットを伸張して、A−D/D−A変換部11に送る。
【0029】
RFセレクタ15は、信号処理部9から受け取った送信チャネル番号と変調度を、選択した送受信部12にそのまま受け渡す。また、A−D/D−A変換部11からアナログ変換された送信パケットを送受信部12に渡す。
【0030】
送受信部12は、指示された送信チャネル番号になるように搬送波周波数を設定し、送信パケットを変調度に合わせて変調して、RFタグ2と交信する。送受信部12は、RFタグ2からの受信信号を中間周波数に変換して復調し、A−D/D−A変換部11に送る。
【0031】
A−D/D−A変換部11は、復調された受信信号をディジタル変換して信号処理部9に送る。信号処理部9は、受信信号を送受信バッファ10に蓄積する。送信パケットを送信してから所定の受信継続時間が経過すると、それまで送受信バッファ10に蓄積した受信信号をプロトコル処理部6へ通知する。
【0032】
プロトコル処理部6は、受信信号から応答信号を検出してRFタグ2の応答パケットを生成し、PCインタプリタ5に送る。プロトコル処理部6は、応答信号が検出できない場合は、その通信規格の応答がなかったことをPCインタプリタ5に伝える。PCインタプリタ5は、読み取り結果をホストコンピュータ3に通知する。続いてPCインタプリタ5は、処理順序決定部13の情報に従って次に実行する処理プログラム16を選択して、プロトコル処理部6に実行させる。
【0033】
上述したように、処理プログラム16、プロトコル処理部6、信号処理部9、A−D/D−A変換部11および送受信部12から読み取り手段が構成される。読み取り手段は、処理プログラム16によらずに、通信規格ごとの専用の回路から構成されてもかまわない。また、PCインタプリタ5、RFセレクタ15および制御プログラム17から切り替え手段が構成される。処理順序決定部13は順序設定手段である。
【0034】
読み取り手段のうち、プロトコル処理部6、信号処理部9、A−D/D−A変換部11(そのうちのD−A変換)、送受信部12および処理プログラム16は送信手段を構成する。また、応答信号を検出するまでを広義の復調と捉えると、復調手段は読み取り手段のうち、送受信部12、A−D/D−A変換部11(そのうちのA−D変換)、信号処理部9、プロトコル処理部6および処理プログラム16から構成される。
【0035】
処理順序決定部13はあらかじめ、プログラム記憶部7に記憶されている処理プログラム16のセットから、処理プログラム16を実行する順序を決定する。図2は、通信規格ごとの周波数帯域、チャネル番号および変調度の例を示す。図2の例では、変調方式はすべてASK(Amplitude Shift Keying)であって、変調方式で異なるのは変調度のみであることを想定している。通信規格ごとの周波数帯域、チャネル番号、変調度は処理プログラム16に記載されていてもよい。あるいは、図2に示すような対応づけデータが、例えば順序情報記憶部14に格納されていてもよい。
【0036】
処理順序決定部13は、プログラム記憶部7に記憶されている処理プログラム16ごとの、使用周波数帯域、使用チャネル番号および使用変調方式を取得する。処理順序決定部13は、処理プログラム16を使用周波数帯域および/または使用変調方式で分類し、さらに同じ使用周波数帯域の処理プログラム16をチャネル番号で分類する。
【0037】
図3は、送受信部12ごとの各安定時間の例を示す。処理順序決定部13は、送受信部12ごとの基準周波数安定時間、チャネル変更時間および変調度変更時間によって、処理プログラム16を安定待ち時間が短い順に並び替える。すなわち、図3の例では、処理プログラム16をまず、使用周波数帯域が連続するように並び替える。次に、使用周波数帯域が同じ処理プログラム16の中で、変調度が同じ処理プログラム16が連続するように並び替える。さらに、使用周波数帯域および変調度が同じ処理プログラム16の中で、使用チャネル番号が連続するように並び替える。言い換えれば、周波数帯域、変調度およびチャネル番号をその順序でキーにして、処理プログラム16をソートする。ただし、各キーのソートの順は、属性が同じ処理プログラム16が連続すればよいので、それぞれ昇順であるか降順であるかまたは任意の順であるかは問わない。
【0038】
図4Aは、記憶されている順序で処理プログラム16を実行した場合の待ち時間の例を示す。図4Aの例では、通信規格の処理実行順序は、A,E,F,B,Gである。実行順序の使用周波数帯域は連続していないので、各処理プログラム16を図4Aの順序で実行するときに図3に示す待ち時間がかかる。図4Aの安定待ち時間は、基準周波数安定時間、チャネル変更時間および変調度変更時間の合計である。図4Aに示す5つの通信規格の処理プログラム16をその順で実行した場合、安定待ち時間は合計で1080μ秒(最下段)である。
【0039】
図4Bは、処理順序決定部13で並び替えた順序で処理プログラム16を実行した場合の待ち時間の例を示す。図4Bの例では、通信規格の処理実行順序は、A,B,E,F,Gである。使用周波数帯域が連続しているので、通信規格Bおよび通信規格Gの処理では基準周波数安定時間がかからない。また、通信規格Bでは変調度が前の通信規格Aと同じなので、変調度変更時間がかからない。その結果、安定待ち時間の合計は660μ秒になる。
【0040】
図5は、実施の形態1に係る読み取り処理順序決定の動作の一例を示すフローチャートである。読み取り処理順序決定は、処理プログラム16が追加または削除されたときに起動される。処理順序決定部13は、PCインタプリタ5からプログラム記憶部7に記憶されている処理プログラム16の読み取り処理通信規格のリストを読み込む(ステップS11)。
【0041】
処理順序決定部13は、処理プログラム16の順序を、その使用周波数帯域を連続させた順序に変更する(ステップS12)。次に、同じ周波数帯域の中で、変調方式を連続させた順序に並べ替える(ステップS13)。さらに、同じ周波数帯域および変調方式の中で、チャネル番号を連続させて、処理順序を決定する(ステップS14)。処理順序決定部13は、決定した処理順序を順序情報記憶部14に記憶する(ステップS15)。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る読み取り処理切り替えの動作の一例を示すフローチャートである。PCインタプリタ5は、実行する順序の番号を示す変数iを1に初期化する(ステップS21)。PCインタプリタ5はi番の実行順序の処理プログラム16を処理順序決定部13に問い合わせて、実行順序がi番の処理プログラム16をプロトコル処理部6に実行させる(ステップS22)。
【0043】
PCインタプリタ5は、番号変数iに1を加算して(ステップS23)、変数iが実行する処理プログラム16の最大数を超えていなければ(ステップS24;NO)、次の実行順序であるi番の処理プログラム16を実行する(ステップS22)。変数iが実行する処理プログラム16の最大数を超えれば(ステップS24;YES)、一連の処理プログラム16の実行を終了する。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、複数の(3つ以上の)通信規格のRFタグ2のそれぞれの読み取り処理を連続して行う場合に、読み取る通信規格を切り替えるときの待ち時間を短縮することができる。その結果、1つのRFタグ2の読み取りを行うターンアラウンド時間を短縮することができる。
【0045】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態2のRFタグ読み取り装置1は、送信パケットを送信したのち、RFタグ2が応答信号の送信を開始するであろう点から応答信号の検出を行う。以下、実施の形態1との相違点について主に説明する。
【0046】
本実施の形態2のRFタグ読み取り装置1は、実施の形態1の構成に加えてタイマー8を備える。タイマー8は、受信待ち時間と受信継続時間を計測する計時手段である。受信待ち時間は、送信パケットを送信してから、RFタグ2が応答信号の送信を開始する直前の点までの時間である。受信継続時間は、RFタグ2が応答信号を送信している時間を含み、送信時間の変動などの余裕を見込んだ時間である。
【0047】
図8は、実施の形態2に係るRFタグ読み取り装置1の作用を示す概念図である。図8の時間の進行を表す線の上はRFタグ読み取り装置1の動作を、線の下はRFタグ2の動作を表す。図8(a)は、送信パケットを送信してからすぐに応答信号の検出を行う場合を示す。図8(b)は、送信パケットを送信したのち受信待ち時間を経過した点から応答信号の検出を行う場合を示す。
【0048】
RFタグ読み取り装置1は、搬送波を送信してRFタグ2をチャージしながら起動する。RFタグ読み取り装置1は、読み取りまたは書き込みのコマンドを含む送信パケットを送信して、そののちも搬送波を送信し続ける。RFタグ2は、送信パケットを受信してコマンドを解析し、コマンドに合った応答信号を生成する。RFタグ2は、RFタグ読み取り装置1が送信する搬送波の反射波に応答信号を重畳することによって応答送信する。
【0049】
図8(a)では、コマンド(送信パケット)を送信し終わると同時に応答信号の検出を行う。それに対して、図8(b)では、コマンドを送信してから待ち時間を経過した点から応答信号の検出を行う。RFタグ2が応答信号を生成している間は、応答信号は送信されないので、その間の受信データから応答信号を検出する必要はない。図8(b)ではいわば無効な受信データの解析を行わないので、応答信号の解析を短縮できる。
【0050】
図9は、通信規格およびコマンドごとの受信待ち時間の例を示す。1つの通信規格において、RFタグ2の識別符号(ID)だけを読み取る場合(コマンド="Get ID")、記憶されている他のデータを読み取る場合(コマンド="ReadData")、およびデータを書き込む場合(コマンド="WriteData")でそれぞれ受信待ち時間および受信継続時間が異なる。データを書き込む場合を記載しているのは、書き込んだデータを読み取って正しく書き込めたことを確認するからである。また、通信規格ごとに受信待ち時間および受信継続時間は異なる。
【0051】
図7のプロトコル処理部6は、送信パケット、送信チャネル番号、変調度および信号データ速度に加えて受信待ち時間と受信継続時間の情報を信号処理部9へ送る。信号処理部9は、受け取った送信パケットを送受信バッファ10に格納し、受信待ち時間と受信継続時間の情報をタイマー8に送る。信号処理部9は、送信パケットをA−D/D−A変換部11に送ったのち、タイマー8を起動する。
【0052】
タイマー8は、信号処理部9に起動されて時間計測を開始し、受信待ち時間が経過したら信号処理部9に受信開始を指示する。そののち、受信継続時間を経過したときに、受信終了を信号処理部9に指示する。
【0053】
信号処理部9は、受信開始指示を受けると、A−D/D−A変換部11から送られる受信信号を送受信バッファ10に蓄積する。また、受信終了の指示を受けると受信信号の蓄積を終了して、それまで送受信バッファ10に蓄積した受信信号をプロトコル処理部6へ通知する。送受信バッファ10は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を蓄積しない。
【0054】
プロトコル処理部6は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過した点以降の受信信号から応答信号を検出してRFタグ2の応答パケットを生成し、PCインタプリタ5に送る。プロトコル処理部6は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を解析しない。
【0055】
図10は、実施の形態2に係るRFタグ読み取り処理の動作の一例を示すフローチャートである。図10のRFタグ読み取り処理の動作は、図6のステップ22の読み取り処理に相当する。
【0056】
信号処理部9は、RFタグ2を起動するために送受信部12から搬送波を送信し(ステップS31)、読み取り信号(送信パケット)を送信する(ステップS32)。タイマー8が受信待ち時間を計測して受信開始を指示すると(ステップS33)、信号処理部9は、受信信号の蓄積を開始する(ステップS34)。
【0057】
タイマー8が受信継続時間を計測して、その所定の時間が経過すると(ステップS35)、信号処理部9は受信信号の蓄積を終了し、プロトコル処理部6は蓄積された受信信号から応答信号を検出する(ステップS36)。
【0058】
プロトコル処理部6は、応答信号を検出できれば(ステップS37;YES)、このときの通信規格の応答信号をPCインタプリタ5に送って記憶する(ステップS38)。応答信号を検出できなければ(ステップS37;NO)、このときの通信規格のRFタグ2なしをセットする(ステップS39)。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2のRFタグ読み取り装置1によれば、送受信バッファ10は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を蓄積しない。また、プロトコル処理部6は、送信信号を送信したのち受信待ち時間が経過するまでの受信信号を解析しない。その結果、解析する受信信号の量が減少し、受信バッファの低容量化と応答信号検出の時間短縮を図ることができる。あるいは、応答信号検出の時間が同じでも、プロトコル処理のプロセッサの低速化と、それによる装置の低消費電力化を実現できる。また、受信待ち時間において、実施の形態1による通信規格の並び替え、もしくは次の送信パケットを送受信バッファ10へ蓄積することができる。
【0060】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2の変形例として、RFタグ読み取り装置1でRFタグ2の応答遅延時間を計測する場合を説明する。応答遅延時間は受信信号上の、送信パケットを送信してからRFタグ2の応答信号を検出する点までの経過時間である。実施の形態2の変形例では、計測した応答遅延時間から待ち時間を算出する。
【0061】
図11は、応答遅延時間を計測する動作の一例を示すフローチャートである。応答遅延時間計測は、読み取り動作ごとに常に行うのではなく、待ち時間を算出するために応答遅延時間を計測するモードでのみ実行する。図10の読み取り処理と同様に、搬送波を送信し(ステップS41)、読み取り信号を送信する(ステップS42)。時間の計測を開始する(ステップS43)と同時に、受信信号から応答信号の検出を開始する(ステップS44)。この場合、信号処理部9は、受信信号を蓄積せずに(または蓄積しながら)プロトコル処理部6に送る。プロトコル処理部6は、送信信号を送信した直後の受信信号の先頭から順次応答信号を検出する。
【0062】
応答信号を検出するまで、受信信号の先頭から探索する(ステップS45;NO、ステップS46;NO)。応答信号を検出できれば(ステップS45;YES)、応答信号先頭までの経過時間を応答遅延時間とする(ステップS47)。応答信号を検出する前に所定の最大時間を超えた場合(ステップS45;NO、ステップS46;YES)、この回では応答遅延時間を計測できなかったことをセットして(ステップS48)終了する。
【0063】
なお、信号処理部9は送信信号を送信した直後から受信信号を蓄積しておいて、プロトコル処理部6は蓄積された受信信号から応答信号を検出してもよい。その場合、受信信号の先頭から応答信号を検出した受信信号の位置までの経過時間を応答遅延時間とする。
【0064】
制御部4では、応答遅延時間を何回か計測し、その最小値を待ち時間とすることができる。さらに余裕を見込んで、待ち時間を応答遅延時間より短くしてもよい。実施の形態2の変形例によれば、RFタグ2の応答遅延時間を計測して、待ち時間を設定することができる。
【0065】
以上、好ましい実施の形態および具体例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも、上記実施の形態および具体例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。その他、前記の装置構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0066】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0067】
本発明の第1の観点に係るRFタグ読み取り装置について、
好ましくは、前記順序設定手段はさらに、前記周波数帯が同じ読み取り手段のうち、通信チャネルおよび/または変調方式が同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定する。
【0068】
好ましくは、前記読み取り手段は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信手段と、
前記送信手段で読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時手段と、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調手段と、
を備え、
前記復調手段は、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する。
【0069】
好ましくはさらに、前記送信手段で読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調手段で前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測手段を備え、
前記計時手段は、前記遅れ時間計測手段で計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する。
【0070】
本発明の第2の観点に係るRFタグ読み取り方法について、
好ましくは、前記順序設定ステップはさらに、前記周波数帯が同じ読み取り処理のうち、通信チャネルおよび/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する。
【0071】
好ましくは、前記読み取り処理は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップで読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時ステップと、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調ステップと、
を備え、
前記復調ステップは、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する。
【0072】
好ましくはさらに、前記送信ステップで読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調ステップで前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測ステップを備え、
前記計時ステップは、前記遅れ時間計測ステップで計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する。
【0073】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0074】
制御部4、プログラム記憶部7、信号処理部9、送受信バッファ10、A−D/D−A変換部11、RFセレクタ15、順序情報記憶部14およびタイマー8などから構成されるRFタグ読み取り処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するRFタグ読み取り装置1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでRFタグ読み取り装置1を構成してもよい。
【0075】
また、RFタグ読み取り装置1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0076】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 RFタグ読み取り装置
2 RFタグ
3 ホストコンピュータ
4 制御部
5 PCインタプリタ
6 プロトコル処理部
7 プログラム記憶部
8 タイマー
9 信号処理部
10 送受信バッファ
11 A−D/D−A変換部
12a、12b、12c 送受信部
13 処理順序決定部
14 順序情報記憶部
15 RFセレクタ
16a、16n 処理プログラム
17 制御プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り手段と、
前記複数の読み取り手段について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定する順序設定手段と、
前記順序設定手段で設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り手段を順に実行する切り替え手段と、
を備えることを特徴とするRFタグ読み取り装置。
【請求項2】
前記順序設定手段はさらに、前記周波数帯が同じ読み取り手段のうち、通信チャネルが同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定することを特徴とする請求項1に記載のRFタグ読み取り装置。
【請求項3】
前記読み取り手段は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信手段と、
前記送信手段で読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時手段と、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調手段と、
を備え、
前記復調手段は、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のRFタグ読み取り装置。
【請求項4】
前記送信手段で読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調手段で前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測手段を備え、
前記計時手段は、前記遅れ時間計測手段で計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する、
ことを特徴とする請求項3に記載のRFタグ読み取り装置。
【請求項5】
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を備えることを特徴とするRFタグ読み取り方法。
【請求項6】
前記順序設定ステップはさらに、前記周波数帯が同じ読み取り処理のうち、通信チャネルが同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定することを特徴とする請求項5に記載のRFタグ読み取り方法。
【請求項7】
前記読み取り処理は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップで読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時ステップと、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調ステップと、
を備え、
前記復調ステップは、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載のRFタグ読み取り方法。
【請求項8】
前記送信ステップで読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調ステップで前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測ステップを備え、
前記計時ステップは、前記遅れ時間計測ステップで計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する、
ことを特徴とする請求項7に記載のRFタグ読み取り方法。
【請求項9】
コンピュータに、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り手段と、
前記複数の読み取り手段について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定する順序設定手段と、
前記順序設定手段で設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り手段を順に実行する切り替え手段と、
を備えることを特徴とするRFタグ読み取り装置。
【請求項2】
前記順序設定手段はさらに、前記周波数帯が同じ読み取り手段のうち、通信チャネルが同じである通信規格の読み取り手段の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り手段の実行順序を設定することを特徴とする請求項1に記載のRFタグ読み取り装置。
【請求項3】
前記読み取り手段は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信手段と、
前記送信手段で読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時手段と、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調手段と、
を備え、
前記復調手段は、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のRFタグ読み取り装置。
【請求項4】
前記送信手段で読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調手段で前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測手段を備え、
前記計時手段は、前記遅れ時間計測手段で計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する、
ことを特徴とする請求項3に記載のRFタグ読み取り装置。
【請求項5】
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を備えることを特徴とするRFタグ読み取り方法。
【請求項6】
前記順序設定ステップはさらに、前記周波数帯が同じ読み取り処理のうち、通信チャネルが同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定することを特徴とする請求項5に記載のRFタグ読み取り方法。
【請求項7】
前記読み取り処理は、
RFタグに対して読み取り信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップで読み取り信号を送信したのち、所定の時間が経過するのを計測する計時ステップと、
受信信号を復調して前記RFタグの応答信号を検出する復調ステップと、
を備え、
前記復調ステップは、前記読み取り信号を送信したのち前記所定の時間が経過した点から前記応答信号の検出を開始する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載のRFタグ読み取り方法。
【請求項8】
前記送信ステップで読み取り信号を送信しおわったときの受信信号の時刻から、前記復調ステップで前記RFタグの応答信号を検出する受信信号の時刻までの経過時間を計測する遅れ時間計測ステップを備え、
前記計時ステップは、前記遅れ時間計測ステップで計測した経過時間から算出する所定の時間の経過を計測する、
ことを特徴とする請求項7に記載のRFタグ読み取り方法。
【請求項9】
コンピュータに、
異なる3つ以上の通信規格のRFタグのそれぞれの読み取り処理を行う複数の読み取り処理について、周波数帯および/または変調方式が同じである通信規格の読み取り処理の実行順序を連続させて、前記複数の読み取り処理の実行順序を設定する順序設定ステップと、
前記順序設定ステップで設定した実行順序に従って、前記複数の読み取り処理を順に実行する切り替えステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−239295(P2010−239295A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83319(P2009−83319)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
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