説明

RFID検査装置

【課題】ICタグ、ICラベル等のRFIDの通信検査を行うRFID検査装置に関し、連続シートの搬送制御に影響されずに複数種の電界強度で高精度の検査を可能とする。
【解決手段】アンテナ部12より発信される電波の当該発信位置からの距離で特定される同一レベルの電界強度となる球体面を含んだ相似形で、検査で設定される通信を行う電界強度に応じて膨張、収縮され、アンテナ部12と正対させる位置を含む球体面14A上を連続シート21に形成されたRFID22の搬送経路とさせる搬送経路形成治具14を設ける構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグ、ICラベル等のRFIDの通信検査を行うRFID検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)と称される非接触型のICタグ、ICラベル等が急速に普及し、その使用も多岐にわたっている。このようなRFIDは、製造上の効率性から連続シート上に形成されて個々にリーダライタによって対応周波数で通信検査することが一般的にが行われている。
【0003】
例えば、UHF帯のRFIDは、実環境ではリーダライタ(アンテナ)に対して7〜8mの距離で使用されることが多く、この実環境を再現した検査は困難であることから、短い距離の検査空間を設定して比例的な電界強度で検査が行われるものであるが、この検査空間での誤差は実環境では多大な誤差となることから、受信感度、応答における通信状態の良否を高精度に検査する必要がある。
【0004】
従来、特にUHF帯のRFIDを上記検査空間で検査を行う場合、定められた高精度な電界強度で通信状態を維持するために、搬送されるRFIDとリーダライタのアンテナとが正対する位置に開口部が形成されたシールド部を介在させ、当該開口部に位置されたRFIDに対して、アンテナから発信される電波の電界強度を常に一定とさせて検査を行うことが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載されているように、検査対象のRFIDを位置させる検査開口部が形成され、当該検査開口部に対向してアンテナ部を位置させた傘状電波反射部の上面を連続シートに形成されたRFIDを搬送させる検査用治具を用いることにより、アンテナ部と検査開口部上のRFIDとの正対位置を固定させて当該アンテナ部より発信される電波の電界強度を常に同一レベルとして検査することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−187318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術では、開口部が形成されたシールド部又は傘状電波反射部の上面をRFIDが形成された連続シートを搬送させて開口部の位置でRFIDを停止状態とさせて検査を行うことから、連続シートのテンションのかけ方や滑り等により搬送停止位置にバラツキを生じ、例えば2mmずれても良品が不良品とされて高精度な検査を行うことが困難であるという問題がある。
【0008】
また、リーダライタ(アンテナ部)やシールド部又は傘状電波反射部は固定配置されており、異なる電界強度で検査を行おうとする場合には、当該異なる電界強度毎に応じた形状のシールド部や傘状電波反射部を用意しなければならないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、連続シートの搬送制御に影響されずに複数種の電界強度で高精度の検査を可能とさせるRFID検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、検査対象となるICモジュール、アンテナを備えるRFIDが連続シートに形成され、搬送される連続シート上のRFIDに対してリーダライタがアンテナ部を介して通信を行い、良否を検査するRFID検査装置であって、充てん材の量により膨張、収縮する伸縮部材で形成され、膨張、収縮の形状が、前記アンテナ部より発信される電波の当該発信位置からの距離で特定される同一レベルの電界強度となる球体面を含む相似形であり、前記検査で設定される通信を行う電界強度に応じて膨張、収縮され、当該アンテナ部と正対させる位置を含む当該球体面上を前記連続シートに形成されたRFIDの搬送経路とさせる搬送経路形成治具と、前記搬送経路形成治具上での前記連続シートの搬送を誘導する所定数のガイド部と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナ部より発信される電波の当該発信位置からの距離で特定される同一レベルの電界強度となる球体面を含んだ相似形で、検査で設定される通信を行う電界強度に応じて膨張、収縮され、アンテナ部と正対させる位置を含む球体面上を連続シートに形成されたRFIDの搬送経路とさせる搬送経路形成治具を設ける構成とすることにより、RFIDを搬送経路形成治具の球体面上で搬送させている状態ではアンテナ部と常に同一レベルの電界強度で通信可能となることから検査時にRFIDを停止させる必要がなく、また、膨張、収縮させる形状で常に同一レベルの電界強度となる球体面とさせることから、当該球体面上を搬送されるRFIDは同一レベルの電界強度での通信を可能とすることができ、複数種の電界強度での検査を一の治具で行うことでコスト効果を良好とさせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るRFID検査装置の要部の構成図である。
【図2】図1の搬送経路形成治具上の連続シート搬送の説明図である。
【図3】図2のRFID検査における発信電波の電界強度の説明図である。
【図4】異なる電界強度での検査の説明図である。
【図5】搬送経路形成治具の他の形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
図1に本発明に係るRFID検査装置の要部の構成図を示すと共に、図2に図1の搬送経路形成治具上の連続シート搬送の説明図を示す。図1(A)は、検査対象となるICモジュール、アンテナを備えるRFIDが連続シートに形成され、搬送される連続シート上のRFIDに対してリーダライタがアンテナ部を介して通信を行い、良否を検査するというRFID検査装置の要部を示したもので、他の構成は一般のRFID検査装置と同様である。
【0014】
図1(A)において、RFID検査装置11の構成要素の一であるアンテナ部12が固定配置され、その周辺に搬送経路形成治具14を固定する治具固定部13が配置される。当該治具固定部13には、電波に対してシールド効果をもつ金属部材等のシールド部材で形成させてもよい。
【0015】
搬送経路形成治具14は、充てん材の量により膨張、収縮する、例えばブチルゴムなどの伸縮部材で形成される。充てん材としては、例えばエアーや誘電体材料がある。充てん口は、図示しないが、ここではアンテナ部12側の端部に形成されるが、後述の連続シートの搬送経路以外であれば何れでもよい。
【0016】
上記搬送経路形成治具14の形状は、アンテナ部12より発信される電波の当該発信位置からの距離で特定される同一レベルの電界強度となる球体面14Aを含む相似形で膨張、収縮する(図3で説明する)。球体面とは、ここでは、真球の球面に限らず、例えば逆涙形の膨らみ部分の面をも含むものである。すなわち、この形状は、平板のアンテナ部12から発信される指向的な電波の当該発信位置からの距離に対する等電界強度(等電位)の部分を形として表させたものである。
【0017】
当該搬送経路形成治具14は、検査で設定される通信を行う電界強度に応じて充てん材の充てん量によって膨張、収縮されるもので、当該アンテナ部12と正対させる位置を含む球体面14A上を連続シートに形成されたRFIDの搬送経路とさせるもので、その表面は摩擦を低減させる処理が施される(図示せず)。
【0018】
上記搬送経路形成治具14の上記球体面14A上で連続シートを搬送させる補助部材として、その前後に搬送を誘導するガイド部15,16が設けることによって搬送経路を確保している。なお、連続シートの搬送系は、通常の巻取駆動系機構、テンション系機構等で構成され、図示を省略する。
【0019】
連続シート21は、図1(B)に示すように、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の連続シート21上にRFID22が一列に連続して所定間隔で剥離自在に取着されたものであり、当該RFID22は、例えばPET上に銅箔をエポキシ系接着剤で接着し、エッチングにより平面状とした各アンテナを形成し、当該各アンテナ間にICモジュール(ICチップ若しくはICチップに所定の回路を形成したもの)をリフローはんだ付け若しくは導電性接着剤により実装させたもので、当該アンテナとリーダライタのアンテナ部12との間で所定周波数(RFIDのアンテナの形状等で定まるもので、ここではUHF帯としている)による通信が行われるものである。なお、RFID22は、アンテナ部の形状、長さ等により所定の共振周波数を有しており、リーダライタのアンテナ部12からの対応周波数の電波に反応して共振することにより受信を行うものである。
【0020】
そして、上記搬送経路形成治具14の球体面14A上を、上記RFID22が形成された連続シート21が搬送されている状態を斜視図として示したのが図2である。すなわち、上記RFID22が連設された連続シート21は、図2に示すように、搬送経路形成治具14の球体面14A上で搬送され、その頂部分でアンテナ部12と正対されるが、RFID22は、当該球体面14A上で接触状態であれば、アンテナ部12から常に同一の電界強度の電波を受信可能状態とされるものである。
【0021】
そこで、図3に、図2のRFID検査における発信電波の電界強度の説明図を示す。まず、搬送経路形成治具14は、破線で示すように、充てん材の充てん量に応じて相似形の形状(逆涙形)となる。ここでは、一の形状の状態として示しており、その球体面14A上ではアンテナ部12から発信される電波の電界強度が同一レベル(ここではL1とする)となる。
【0022】
そして、搬送経路形成治具14の球体面14A上で、搬送されてきた連続シート21に形成された各RFID22は、当該球体面14A上で接触状態のときに常にアンテナ部12からの電波を受信できるものであり、受信したRFID22は、受信コマンドに応じて所定情報をリーダライタのアンテナ部12に送信して当該RFID22の良否が検査されるものである。
【0023】
すなわち、検査対象のRFID22は、UHF帯のものであっても、搬送経路形成治具14の球体面14A上で接触状態であれば受信可能であるから、検査時にあえて連続シート21の搬送を停止させる必要はなく、検査時間の短縮が図られ、搬送機構系の搬送停止制御精度に影響されずに検査を行うことができるものである。
【0024】
続いて、図4に、異なる電界強度での検査の説明図を示す。図4(A)は、図3の検査形態に比べて電界強度の高い状態で検査を行う場合を示したもので、搬送経路形成治具14に対して充てん材の充てん量を少なくして所望の電界強度L2(L2>L1)の大きさとさせたものである。この搬送経路形成治具14の形状は、図3の形状と相似形として小さくなったもので、その球体面14A上では、アンテナ部12からの電波の電界強度(L2)は同一レベルである。
【0025】
従って、RFID22が連設された連続シート21は、図4(A)に示すように、搬送経路形成治具14の球体面14A上で搬送され、当該RFID22が当該球体面14A上で接触状態のときに、アンテナ部12から常に同一の電界強度の電波を受信可能状態とされるものである。
【0026】
また、図4(B)は、図4(A)の検査形態に比べて電界強度のさらに高い状態で検査を行う場合を示したもので、搬送経路形成治具14に対して充てん材の充てん量をさらに少なくして所望の電界強度L3(L3>L2>L1)の大きさとさせたものである。この搬送経路形成治具14の形状は、図3及び図4(A)の形状と相似形として小さくなったもので、その球体面14A上では、アンテナ部12からの電波の電界強度(L3)は同一レベルである。
【0027】
従って、搬送経路形成治具14がこのような形状であっても球体面14A上で搬送されているときに、同様に、当該RFID22が当該球体面14A上で接触状態のときに、アンテナ部12から常に同一の電界強度の電波を受信可能状態とされるものである。
【0028】
このように、膨張、収縮させる形状で常に同一レベルの電界強度となる球体面14Aとさせることから、当該球体面14A上を搬送されるRFID22は同一レベルの電界強度での通信を可能とさせることができ、複数種の電界強度での検査を一の治具で行うことでコスト効果を良好とさせることができるものである。
【0029】
ところで、上記搬送経路形成治具14を上記ブチルゴムなどの誘電体部材で形成することで、当該搬送経路形成治具14上に接触しているRFID22と接触していないRFID22とを通信周波数で通信状態を区別することができる。一般に、電波は誘電体の内部を通過する際、見た目の波長が短縮され、周波数が高周波側へずれる性質を有するもので、誘電率が高いほど周波数のずれる度合いが大きくなるという波長短縮効果を有する。すなわち、リーダライタによる検査対象周波数に対して搬送経路形成治具14の大きさを決定し、当該周波数を、搬送経路形成治具14が形成される誘電体部材による波長短縮効果の短縮分の周波数を加えた値としてアンテナ部12より発信させるものである。これによって、搬送経路形成治具14に接触していないRFID22は、接触しているRFID22に比べて周波数の低い電波を受けることとなって通信不可となるもので、換言すれば接触しているRFID22を検査対象として特定することができるものである。
【0030】
次に、図5に、搬送経路形成治具の他の形態の説明図を示す。この実施形態は、搬送経路形成治具14内に、誘電率の高い誘電体部材31を充てんさせるものである。このような誘電体部材31としては、例えば液状シリコンがある。すなわち、誘電率の高い誘電体部材31を充てんすることにより、当該誘電部材31を通過した周波数と通過しない周波数との差を大として、搬送経路形成治具14に接触していないRFID22に対する誤通信をより効果的に防止しようとするものである。
【0031】
この場合も上記同様に、リーダライタ側のアンテナ部12から発信される電波の周波数を、予め誘電体部材31の波長短縮効果で高周波側にシフトする分だけ低周波側にずらすことにより、球体面14A上に接触(誘電体部材31を介しての受信)しているRFID22のみが本来通信する周波数の電波を受けて通信可能とさせ、接触していない他のRFID22Aは電波の周波数が合致しないことにより通信不可とさせるものである。
【0032】
例えば、誘電体部材31の波長短縮効果が10MHzとすると、950MHzで受信するRFID22に対して、アンテナ部12から発信させる電波の周波数を940MHzで発信させことにより、誘電体部材31を介在されたRFID22は950MHzで通信可能であるが、誘電体部材31を介在させずに電波を受けたRFID22Aは940MHzで電波を受けることとなり通信不可となるものである。これによって、リーダライタのRFID22に対する読み取り範囲をより効果的に限定させることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のRFID検査装置は、RFIDの製造工程上若しくは出荷後のユーザ受入段階で行われる通信検査に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
11 RFID検査装置
12 アンテナ部
13 治具固定部
14 搬送経路形成治具
15,16 ガイド部
21 連続シート
22 RFID
31 誘電体充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となるICモジュール、アンテナを備えるRFIDが連続シートに形成され、搬送される連続シート上のRFIDに対してリーダライタがアンテナ部を介して通信を行い、良否を検査するRFID検査装置であって、
充てん材の量により膨張、収縮する伸縮部材で形成され、膨張、収縮の形状が、前記アンテナ部より発信される電波の当該発信位置からの距離で特定される同一レベルの電界強度となる球体面を含む相似形であり、前記検査で設定される通信を行う電界強度に応じて膨張、収縮され、当該アンテナ部と正対させる位置を含む当該球体面上を前記連続シートに形成されたRFIDの搬送経路とさせる搬送経路形成治具と、
前記搬送経路形成治具上での前記連続シートの搬送を誘導する所定数のガイド部と、
を有することを特徴とするRFID検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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