説明

RI背圧の変化防止方法

【課題】 本発明の解決すべき課題は検出器に対する背圧を調整し、測定精度の一層の向上を図りえる廃液装置を提供することにある。
【解決手段】 大気に開放された廃液室14と、
液滴形成防止手段を有し、液体クロマトグラフの検出器より流出する廃液が流入し、該廃液を前記廃液室へ流出させる廃液流入孔16,18と、
を備えた液体クロマトグラフ用廃液装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体クロマトグラフ用廃液装置、特に検出器より流出する廃液を排出する廃液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフは、ポンプより送液されてくる移動相溶媒をカラムに供給し、分離された成分を各種検出器で検出する。通常の場合、検出器から流出する測定済廃液は廃液管を経由して単に廃液ボトルに排出されているのみであり、大気に開放されている(特開平08−021830,特開平07−229884等の図面参照)。したがって、検出器以降の構成による検出精度への影響は考えられていなかった。
しかしながら、示差屈折計などを検出器として用いた場合、屈折率自体が圧力の影響を受ける。特に最近の示差屈折計はきわめて高感度であり、廃液ボトルの配置、或いは廃液管端部の状態によっても検出結果が影響を受けることが明らかとなった。
【特許文献1】特開平08−021830
【特許文献2】特開平07−229884
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は検出器に対する背圧を調整し、測定精度の一層の向上を図りえる廃液装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明にかかる廃液装置は、大気に開放された廃液室と、
液滴形成防止手段を有し、液体クロマトグラフの検出器より流出する廃液が流入し、該廃液を前記廃液室へ流出させる廃液流入孔と、を備えたことを特徴とする。
また、前記廃液装置において、液滴形成防止手段は、廃液流入孔を廃液室の側壁面から突出させないように形成してなることが好適である。
また、前記廃液装置において、複数の流入孔を有し、前記複数の流入孔は同一高さに配置されていることが好適である。
また、前記廃液装置において、液体クロマトグラフは検出器として示差屈折計を有し、
前記流入孔は、示差屈折計のサンプルルートからの廃液流入孔と、リファレンスルートからの廃液流入孔を有することが好適である。
【発明の効果】
【0005】
本発明にかかる廃液装置は、前述したように検出器からの廃液を廃液室へ流出させる際に液滴を生じないようにしたので、液滴の形成、落下にともなう検出器背圧の変動が減少し、検出精度の向上を図ることができる。
また、廃液室への流入孔を複数個設置する場合、それらの高さを同じにすることにより、流入孔間、すなわち廃液管の間での液圧差及び気圧差を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる廃液装置の外観図、図2(A)はその上面図、(B)は正面図である。
同図に示す廃液装置10は、本体12に対し円筒状の廃液室14が設けられており、また本体12側壁には、廃液室14にまで貫通する廃液流入孔16,18が設けられている。
また、廃液室14の下部に設けられた排出孔20には排出パイプ22が接続され、その先端は廃液ボトル24に接続されている。
【0007】
一方、前記廃液流入孔16,18にはそれぞれ示差屈折計25より測定後に排出されるサンプル廃液およびリファレンス廃液の廃液管26,28が接続される。なお、廃液流入孔16,18の外側開口16a,18aには雌ネジが形成され、廃液管26,28の固定用ボルト30,32が螺合され、各廃液管26,28は廃液流入孔16,18にしっかりと固定される。
本発明において特徴的なことは、流入孔16(18)に液滴形成防止手段を設けたことであり、このために本実施形態においては図3に拡大して示されるように廃液流入孔16(18)の廃液室14側は廃液管26(28)よりも小径に形成され、廃液管26(28)は廃液室14内に突出しない。
【0008】
この結果、流入孔16(18)からの廃液34の流出は、図3に示されるとおり、廃液室14の内壁を伝わるように流下し、液滴を作ることがない。
これに対し、単に廃液ボトルの口部に廃液管を挿入しただけの場合には、図4に示すように廃液管26(28)の先端に表面張力による廃液滴34が形成され、この液滴が落下する。この際に廃液管26(28)を介して示差屈折計25の背圧に変化が生じ、これがベースラインのノイズとなって重畳してしまうのである。
【0009】
この状態が図5に示されている。図5は示差屈折計の廃液管を図3ないし図4に示す状態としたときのベースラインの変動を示しており、同図より明らかなように液滴が形成される構成では液滴の形成、落下に同期したノイズが重畳するが、液滴が形成されない構成ではノイズが大幅に低減する。
さらに本実施形態では、サンプル廃液管26およびリファレンス廃液管28の流入孔位置を廃液室に固定し、同一高さとしている。この結果、各廃液管の高さが異なった場合に生じる液体圧変化測定結果に影響を与えることを防止することができる。
【0010】
すなわち、図6に示すように、廃液管26先端を、
6cm上昇×2回
6.5cm上昇×1回
6.5cm下降×1回
12cm下降×1回
と高さを次々に変更したところ、この高さ変更にともない示差屈折率計の出力が変動した。このことから、廃液管26先端を廃液ボトル24の貯留廃液内に挿入した場合にはその液面変動により、検出結果に影響を与えてしまうのである。
【0011】
この点について、本実施形態によれば廃液流入孔16,18の高さを同一としており、しかも大気に開放しているので、廃液管26,28先端の高度差による影響も排除される。
さらに本実施形態においては、図2(B)に示すように示差屈折計25の廃液排出口よりも廃液流入孔26,28の位置を高くしており、廃液管26,28の最も高い位置としている。これは、廃液管26、28内で気泡を発生しにくくし、廃液管が太い場合に廃液が抜けてしまうことを防止するためである。
【0012】
なお、本発明においては液滴形成防止手段として廃液室壁面を用いたが、この場合廃液室壁面は濡れ性が高いことが好適である。
また、廃液室をサンプルルート廃液用、リファレンスルート廃液用に分割し、それぞれ分別して採取することにより、サンプルルート廃液は廃液ボトルに、またリファレンスルート廃液はリサイクルないし液体クロマトグラフ装置へ循環させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる廃液装置の説明図である。
【図2】図1に示した廃液装置の上面図及び正面図である。
【図3】図1に示した廃液装置の要部拡大図である。
【図4】一般的な廃液機構の問題点の説明図である。
【図5】本発明の効果の説明図である。
【図6】廃液管先端の高度と検出結果の相関を示す説明図である。
【符号の説明】
【0014】
10 廃液装置
12 本体
14 廃液室
16,18 廃液流入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気に開放された廃液室と、
液滴形成防止手段を有し、液体クロマトグラフの検出器より流出する廃液が流入し、該廃液を前記廃液室へ流出させる廃液流入孔と、
を備えた液体クロマトグラフ用廃液装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、液滴防止手段は、廃液流入孔を廃液室の側壁面から突出させないように形成してなることを特徴とする液体クロマトグラフ用廃液装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置において、複数の廃液流入孔を有し、前記複数の流入孔は同一高さに配置されていることを特徴とする液体クロマトグラフ用廃液装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、液体クロマトグラフは検出器として示差屈折計を有し、
前記流入孔は、示差屈折計のサンプルルートからの廃液流入孔と、リファレンスルートからの廃液流入孔を有することを特徴とする液体クロマトグラフ用廃液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−209156(P2008−209156A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44380(P2007−44380)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)