説明

RNAの指数関数的増幅のための方法およびRNAリアクター

本発明は、プライマー非依存性のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を用いる、RNAの指数関数的増幅のための方法に関するものであり、本方法において、反応物質は予混合され、次に反応チャンバ内に移され、この反応チャンバにおいて、相補鎖の重合ステップおよび得られた二本鎖RNAの分離ステップが生じる。本発明はまた、指数関数的なRNA増幅を実行するためのRNAリアクターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を用いる、RNAの指数関数的増幅のための方法に関するものであり、本方法において、反応物質は予混合され、次に反応チャンバ内に移され、この反応チャンバにおいて、相補鎖の重合ステップおよび得られた二本鎖RNAの分離ステップが生じる。本発明はまた、指数関数的なRNA増幅を実行するためのRNAリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
PCRによるDNA増幅と比較して、既存のRNA増幅方法はいくつかの欠点を有し、すなわち、T7ポリメラーゼ(SMART(商標)mRNA Amplification Kit User Manual、Clontech Laboratories, Inc.、28 April 2008;US5,962,271、US5,962,272)を用いるmRNA増幅のためのプロトコルは、複雑で時間のかかる以下の酵素的ステップを含む:
1)増幅されるRNAから二本鎖cDNAを生成する逆転写ステップ。これは通常、プライマー依存性のRNA依存性DNAポリメラーゼ、すなわち、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)またはモロニーマウス白血病ウイルス(MuLV)に由来する前記ポリメラーゼによって生じる。
2)生成された二本鎖DNA鋳型は次に、T7ポリメラーゼによってRNAを合成するための鋳型として用いられる。T7ポリメラーゼは、プライマー依存性のDNA依存性RNAポリメラーゼであり、重合を開始するために、プライマー配列内のT7特異的プロモーター配列を必要とする。
【0003】
T7ポリメラーゼによるRNAの増幅は、直線的に生じる。
【0004】
RNA増幅のために提案されている別の酵素は、Qβレプリカーゼ(WO02/092774A2を参照されたい)である。Qβレプリカーゼは、RNAの重合を開始するために配列特異的認識部位を有するプライマーを必要とする、RNA依存性RNAポリメラーゼである。このタイプのプロトコルは、直線的なRNA増幅のみを達成する。
【0005】
さらに、バクテリオファージPhi-6からPhi-14(WO01/46396A1を参照されたい)から得ら得るポリメラーゼを用いるRNA増幅は、特異的プロモーター配列の存在を必要とする。Phi-6酵素からPhi-14酵素は、RNA依存性RNAポリメラーゼである。また、このケースにおいて、直線的増幅のみが、このような酵素で達成されている。
【0006】
WO2007/12329A2は、カリシウイルス科(Caliciviridae)の(RNA依存性RNAポリメラーゼ)RdRpを用いてRNAを調製および標識するための方法を開示している。著者は、RNA合成開始オリゴヌクレオチド(10nt未満の長さを有するオリゴプライマー)の存在下または非存在下での、一本鎖RNA(ssRNA)鋳型からの、デノボRNA合成の成功を示しており、また、RNA合成と二本鎖RNA(dsRNA)産物の分解との反復サイクル循環を想定している。指数関数的なRNA増幅は、WO2007/12329A2においては示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5,962,271
【特許文献2】US5,962,272
【特許文献3】WO02/092774A2
【特許文献4】WO01/46396A1
【特許文献5】WO2007/12329A2
【特許文献6】国際特許出願第PCT/EP2009/057119(WO-A-2009/150156)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】SMART(商標)mRNA Amplification Kit User Manual、Clontech Laboratories, Inc.、28 April 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底にある技術的課題は、RNAの指数関数的増幅のための効率的なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題の解決は、特許請求の範囲において特徴付けされる本発明の実施形態によって提供される。
【0011】
特に、本発明は、第1の態様によれば、
(a)一本鎖RNA(ssRNA)、プライマー非依存性のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、NTP(すなわち、リボヌクレオチドrATP、rCTP、rGTP、およびrUTP(rNTP)、および/または修飾および/もしくは標識されたrNTP、ならびに/または、デオキシリボヌクレオチド(dNTP)、および/または修飾および/もしくは標識されたdNTP)、反応緩衝液、および任意選択でRNA合成開始オリゴヌクレオチドを、混合チャンバ内で混合するステップ、
(b)ステップ(a)の混合物を反応チャンバ内に移すステップ、
(c)任意選択で、前記RNA合成開始オリゴヌクレオチドを前記ssRNAにアニーリングするステップ、
(d)プライマー非依存性のRdRpが、前記ssRNAに相補的なRNA鎖をデノボ合成するような、または任意選択で、前記RdRpが、前記ssRNAにハイブリダイズした前記RNA合成開始オリゴヌクレオチド(オリゴプライマー)を伸長して二本鎖RNA(dsRNA)を形成するような条件下で、前記混合物を反応チャンバ内でインキュベートするステップ、
(e)ステップ(d)において形成された前記dsRNAをssRNA鎖に分離するステップ、
(f)プライマー非依存性のRdRp、NTP、反応緩衝液、および任意選択でオリゴプライマーを、前記混合チャンバ内で混合するステップ、
(g)ステップ(f)の混合物を前記反応チャンバ内に移すステップ、
(h)ステップ(d)から(g)、または任意選択で(c)から(g)を、少なくとも5回、好ましくは5から100回、反復するステップ、
(i)最後のインキュベーションステップ(d)を行って、最終的なdsRNAを形成するステップ、および任意選択で、
(j)前記最終的なdsRNAを前記反応チャンバから回収するステップ
を包含する、RNAの指数関数的増幅のための方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、ステップ(f)および(g)はそれぞれ、各サイクル循環ステップ(h)において実行され得る。しかし、「新たな」反応物質、特にRdRpおよび/またはNTPが、一連の、例えば2から10サイクルの重合と鎖分離との後に添加される(すなわち、上記で定義したステップ(g)に従って、反応チャンバ内に移される)ことも考慮される。したがって、新たな反応物質は、本RNA増幅プロトコルにおける2サイクルから10サイクルごとに、好ましくは2サイクル、3サイクル、または4サイクルごとに添加され得る。当業者には明らかであるが、この実施形態において、新たな反応物質を混合する時点は、重合と鎖分離とのサイクルを実行する時間窓内で自由に選択され得る。
【0013】
RdRpが「右手の立体構造」を有し、前記タンパク質のアミノ酸配列が、
a. XXDYS
b. GXPSG
c. YGDD
d. XXYGL
e. XXXXFLXRXX
(D:アスパラギン酸、
Y:チロシン、
S:セリン、
G:グリシン、
P:プロリン、
L:ロイシン、
F:フェニルアラニン、
R:アルギニン、
X:任意のアミノ酸
という意味を有する)
の配列モチーフの、保存された配置を包含することが好ましい。
【0014】
本明細書において用いられる、いわゆる「右手の立体構造」は、タンパク質の三次構造(立体構造)が、ほとんどの鋳型依存性ポリメラーゼにおいて観察されるように、指、掌、および親指を有する右手のようにフォールディングすることを意味する。
【0015】
配列モチーフ「XXDYS」は、いわゆるAモチーフである。Aモチーフは、リボヌクレオシドとデオキシリボヌクレオシドとの間の区別の理由である。モチーフ「GXPSG」は、いわゆるBモチーフである。Bモチーフは、カリシウイルス科の対応するポリメラーゼの、全ての代表的なこのRdRpファミリーで保存されている。モチーフ「YGDD」(「Cモチーフ」)は、酵素の活性部位に相当する。このモチーフ、特に最初のアスパラギン酸残基(太字、YGDD)は、Mg2+/Mn2+依存性の触媒反応の際の金属イオンの配位において重要な役割を有する。モチーフ「XXYGL」は、いわゆるDモチーフである。Dモチーフは、鋳型依存性ポリメラーゼの特徴である。最後に、「XXXXFLXRXX」モチーフ(Eモチーフ)は、RNA依存性RNAポリメラーゼの特徴であり、これによりDNA依存性RNAポリメラーゼと区別される。
【0016】
上記のタイプのRdRpの典型的な代表は、カリシウイルス科(Caliciviridae)の対応する酵素である。カリシウイウルス科のRdRpは、異種ウイルス鋳型、真核生物鋳型、および真核生物鋳型を含む任意のssRNA鋳型を鋳型として用いて、インビトロで相補鎖を合成し得る。ssRNA鋳型は、プラス鎖またはマイナス鎖であり得る。
【0017】
上記で定義されたRdRpは、RNA合成開始オリゴヌクレオチドの伸長とRNA合成開始オリゴヌクレオチドの非存在下でのデノボ合成との両方によって、相補鎖を合成し得る。RNA合成開始オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、配列特異的なRNA合成開始オリゴヌクレオチドであってもよく、またはランダムなRNA合成開始オリゴヌクレオチドであってもよく、またはオリゴ-T-RNA-合成開始オリゴヌクレオチドであってもよい。カリシウイルスのRdRpおよびRNA合成開始オリゴヌクレオチド(オリゴプライマー)の特性のさらなる詳細は、WO2007/012329A2において見ることができる。
【0018】
本発明によれば、用語「プライマー」、「オリゴプライマー」、および「RNA合成開始オリゴヌクレオチド」は、ほぼ同じ意味で用いられ、RNA重合条件下で、RdRpが前記プライマーまたはRNA合成オリゴヌクレオチドをそれぞれ伸長し得るようなハイブリダイゼーション条件下で標的ssRNA分子にハイブリダイズし得る、短い一本鎖のRNAオリゴヌクレオチドまたはDNAオリゴヌクレオチド(例えば、典型的には、短めのRNA鋳型を増幅するための、5から10ヌクレオチド長;さらに長いオリゴプライマー(例えば、10から20以上のヌクレオチドを有する)を、大きめのRNA種を増幅するために用いることができる)を言う。他のRNA依存性RNAポリメラーゼ、例えば、QβタイプのレプリカーゼなどのRNA依存性RNAポリメラーゼとは対照的に、カリシウイルスのRNAポリメラーゼは、RNA合成を開始するために、ポリメラーゼについての特異的認識配列を有するプライマーを要しない。したがって、本明細書において用いられる「プライマー」、「オリゴプライマー」、または「RNA合成開始オリゴヌクレオチド」は、典型的には、このような認識配列、特にRNAポリメラーゼのこのような認識配列を有さないプライマーである。さらに、カリシウイウルスのRNAポリメラーゼは、特異的プロモーター配列が鋳型内に存在することを必要としないという点で、T7 RNAポリメラーゼなどの通常のDNA依存性RNAポリメラーゼと異なる。
【0019】
好ましくは、RNA依存性RNAポリメラーゼは、ヒトおよび/または非ヒトの病原性カリシウイルスのRdRpである。特に好ましいものは、ノロウイルス、サポウイルス、ベシウイルス、またはラゴウイルスのRdRp、例えば、ノロウイルス株HuCV/NL/Dresden174/1997/GE(GenBank受託番号AY741811)のRdRp、またはサポウイウルス株pJG-Sap01(GenBank受託番号AY694184)のRdRp、またはベシウイルス株FCV/Dresden/2006/GE(GenBank受託番号DQ424892)のRNA依存性RNAポリメラーゼである。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、RdRpは、配列番号1(ノロウイルス-RdRp)、配列番号2(サポウイルス-RdRp)、または配列番号3(ベシルイウス-RdRp)に従ったアミノ酸配列を有するタンパク質である。当業者であれば、このようなRdRpを、例えば、適切な発現ベクターおよび宿主生物を用いる組換え発現によって、容易に調製し得る(WO2007/012329A2を参照されたい)。組換え発現におけるRdRpの精製を容易にするために、RdRpを、対応する配列のN末端またはC末端にある適切な「タグ」(例えば、GSTまたは(His)6タグ)と共に発現させることが好ましい。例えば、ヒスチジンタグは、既知の様式での、ニッケルカラムまたはコバルトカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質の精製を可能にする。ヒスチジンタグに融合したRdRpの実施形態の例は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号7に従ったアミノ酸配列を有するタンパク質である。配列番号4は、ヒスチジンタグを有するノロウイルス-RdRpに対応する。配列番号5および配列番号6は、ヒスチジンタグ(配列番号5:C末端のHisタグ、配列番号6:N末端のHisタグ)を有するサポウイルス-RdRpのアミノ酸配列に対応する。配列番号7は、ヒスチジンタグを有するベシウイルス-RdRpのアミノ酸配列に対応する。
配列番号1:
【化1】

配列番号2:
【化2】

配列番号3:
【化3】

配列番号4:
【化4】

配列番号5:
【化5】

配列番号6:
【化6】

配列番号7:
【化7】

【0021】
本発明の方法は、全ての種類および長さの増幅されたRNAを提供するために適している。本方法は特に、アンチセンス技術またはRNA干渉による遺伝子サイレンシング用途のための短いRNA分子を提供するために有用である。
【0022】
したがって、本発明の方法において用いるためのssRNA鋳型は、好ましくは8から45ヌクレオチド、好ましくは15から30ヌクレオチド、好ましくは21から28ヌクレオチド、より好ましくは21から23ヌクレオチドの長さを有する。後者の長さのRNA分子は、siRNAの適用に特に有用である。
【0023】
RNA合成のデノボ開始(すなわち、プライマーの非存在下で)のために、鋳型が少なくとも1個、より好ましくは1個、2個、3個、4個、または5個、特に1から3個のCヌクレオチドを3'末端に含有することが好ましい。
【0024】
あるいは、本発明の方法はまた、長めのRNA分子を提供するために有用であり、すなわち、ssRNA鋳型は、30ヌクレオチドを超える長さを有する。本発明に関する方法の好ましい実施形態は、mRNA鋳型を用いる。
【0025】
ポリアデニル化されたRNA(特にmRNA)を増幅するケースにおいて、RNA合成開始オリゴヌクレオチド(オリゴプライマーまたはポリUプライマー)が必要である。それに応じて、ポリグアニル化されたRNAおよびポリウリジル化されたRNAの増幅は、オリゴC(またはポリC)プライマーおよびオリゴA(またはポリA)プライマーをそれぞれ要する。ポリシチジル化された鋳型のケースでは、RNA合成は、オリゴG(またはポリG)プライマーを用いて開始され得るか、または、それぞれATP、UTP、およびCTPより過剰な(好ましくは、2倍、3倍、4倍、または5倍多い)GTPを用いて、デノボ開始され得る(すなわち、RNA合成開始オリゴヌクレオチドの非存在下で)。
【0026】
本発明の方法はまた、特にsiRNA生成の背景において、修飾されたRNA分子を提供するために有用である。したがって、上記に定義したステップ(a)および/または(f)において、標識および/または修飾されたrNTPまたはNTP(例えば、2'-デオキシ修飾または3'-デオキシ修飾されたヌクレオチド)を含むことが想定される。
【0027】
本発明の方法の、化学的に修飾されたRNA産物は、好ましくは、修飾されていないdsRNAアナログと比較して安定性が増大している。
【0028】
特にこの目的では、RdRp活性によって相補鎖内に組み込まれる少なくとも1つの修飾されたリボヌクレオシド三リン酸の化学的修飾は、リボース部分、リン酸部分、および/または塩基部分に化学的修飾を有し得る。特にRNA分解酵素に関して安定性が増大した分子に関して、骨格、すなわちリボース部分および/またはリン酸部分での修飾が特に好ましい。
【0029】
リボースが修飾されたリボヌクレオシド三リン酸の好ましい例は、2'-OH基がH、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCN(式中、Rは、C1〜C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、またはIである)から選択される基によって置き換えられているアナログである。本発明の背景において明らかであるが、用語「修飾されたリボヌクレオシド三リン酸」または「修飾されたリボヌクレオチド」はまた、2'-デオキシ誘導体または3'-デオキシ誘導体を含み、これは、一部の場合では「デオキシヌクレオチド」とも呼ばれる。
【0030】
2'位に修飾されたリボースを有する、このようなリボヌクレオチドアナログの典型的な例には、2'-O-メチル-シチジン-5'-トリホスフェート、2'-アミノ-2'-デオキシ-ウリジン、2'-アジド-2'-デオキシ-ウリジン-5'-トリホスフェート、2'-フルオロ-2'-デオキシ-グアノシン-5'-トリホスフェート、および2'-O-メチル-5-メチル-ウリジン-5'-トリホスフェートが含まれる。本発明の方法を用いることによる化学的に修飾されたRNA種の提供に関するさらなる詳細については、同時係属の国際特許出願第PCT/EP2009/057119(WO-A-2009/150156として公開されている)を参照されたい。
【0031】
本発明の方法は、規模(反応物質の量、反応容量など)に関して、非常に柔軟である。例えば、本発明の方法は、μlからmlの規模で、例えば25μlから6mlで実行することができるが、産業的な容量である例えば最大5000リットルまで、規模を大きくすることができる。
【0032】
ステップ(f)における混合容量が、サイクルのそれぞれで、または一連のサイクルの後で(例えば、ステップ(f)が2サイクル、3サイクル、または4サイクルごとに実行される場合、2サイクル、3サイクル、または4サイクルの後)、倍加することが好ましく、例えば、25μlで開始し、1サイクルの後、50μlに増大し、続いて、次のサイクルで100μlに増大する、などである。反応チャンバにおける反応容量は、混合チャンバから反応チャンバへの反応物質または緩衝液の移動、重合、および反応物質を混合した後に混合チャンバ内に存在する容量ごとの鎖分離の、各サイクルの後に、または一連のサイクルの後に、増大する(好ましくは、容量が倍加する)。
【0033】
さらに、ステップ(a)および/または(f)における反応物質が冷却されること、好ましくは2から8℃の温度で、より好ましくは4℃で冷却されることが好ましい。
【0034】
重合ステップ(d)は、通常、28から42℃の温度で、好ましくは30℃で実行される。重合ステップ(c)は、通常、約15から約120分間、より好ましくは約30分間から約60分間、特に好ましくは90分間にわたり、実行される。
【0035】
重合ステップは、1分間当たり50から600回転で、好ましくは1分間当たり100から400回転で、最も好ましくは1分間当たり300回転での振とう下で実行され得る。
【0036】
鎖分離ステップ(e)は、熱によって、化学的に、または酵素的に実行され得る。酵素的に実行される場合、鎖分離ステップ(e)は、好ましくは、鎖転移活性および/または二本鎖巻き戻し活性および/または二本鎖分離活性を有する酵素によって実行される。
【0037】
分離ステップ(e)が熱変性ステップとして具現化されるケースでは、温度は通常、dsRNA産物の融解温度に依存し、この融解温度は、長さおよびGC含有量に依存する。概して、熱変性は、約65℃から約98℃の温度で、より好ましくは75℃から95℃の間で実行される。特に15から25ntの長さを有する、低分子干渉RNA種では、約85℃での熱変性で十分であり得る。
【0038】
分離(例えば、変性)ステップ(d)は、通常、約5分間から約90分間、より好ましくは約15分間から約30分間、特に好ましくは60分間にわたり実行される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、マイクロ波放射を、インキュベーションステップ(ステップ(d)および/もしくは(i)、ならびに/または分離ステップ(e))を実行するために用いることができる。したがって、本発明に従った方法のそれぞれのステップにおいて存在する反応組成物は、本明細書において定義するそれぞれの反応条件に達しそれを維持するために効果的で十分な量のマイクロ波放射に曝露される。
【0040】
用語「効果的な量のマイクロ波エネルギー」は、ステップ(a)および(i)において定義する、プライマー非依存性のRdRpを用いる、一本鎖ポリヌクレオチド鋳型への相補鎖のRNA重合に必要な、ならびに/またはステップ(e)において二本鎖産物を分離するために必要な、マイクロ波エネルギーの量である。所与の鋳型のためのマイクロ波エネルギーの具体的な量は、通常の実験を用いて、特に鋳型の長さおよびタイプに応じて、当業者によって決定され得る。重合ステップ(ステップ(d)および/または(i))では、マイクロ波エネルギーは、分離ステップ(b)において必要とされる条件と比較して低い可能性がある。本明細書において用いられる場合、用語「マイクロ波エネルギー」、「マイクロ波(ir)放射」、もしくは「マイクロ波での照射」、または単純に「マイクロ波」は、同義的に用いられ、電磁スペクトルの無線領域と赤外線領域との間で見られる、1から100ギガヘルツの周波数に対応する約0.3から30cmの波長を包含する、電磁スペクトルの部分に関連する。
【0041】
生存生物によって吸収される電磁エネルギーの量は、組織、細胞、および生体分子の誘電特性によって決定される。
【0042】
本発明の目的でのマイクロ波エネルギーの発生は、決定的なものではなく、当技術分野に知られている任意の手段によるものとすることができる。例えば、マイクロ波放射を本発明に従った反応組成物に適用するための適切な手段は、反応チャンバを中に入れることができる電子レンジである。このような電子レンジは、典型的には、約500Wから約1000Wの最大電力レベルを有する。最も小さい電子レンジであっても、本発明において用いるために十分なレベルのマイクロ波照射を提供し、したがって、出力が調節可能な電子レンジで低めの電力設定を用いることが、都合が良い。したがって、本明細書において開示される本発明に関する方法の好ましい実施形態によれば、組成物は、約1500MHzから約3500MHzの周波数を有し約50から約1000Wの電力を有するマイクロ波を照射される。
【0043】
本発明の他の実施形態によれば、低めの電力設定はまた、適用される電力をより長い時間間隔にわたり時間的に分散し、エネルギー取り込みの局在化の可能性およびその結果生じる分子の損傷を最小にするために用いられる。特に好ましい実施形態において、マイクロ波の電力は、一連の間隔にわたり試料に適用され、前記間隔は、マイクロ波の電力が試料に適用されない「休止」間隔を有する。電力適用間隔および休止間隔は、通常、それぞれ1から60秒間にわたり、15から60秒間の電力適用間隔および0.5から5秒間の休止間隔が好ましい。最も好ましくは、電力は、1から2秒間の休止間隔によって分離された約45秒間の間隔にわたり適用される。
【0044】
しかし、一本鎖ポリヌクレオチド鋳型の長さに特に依存して、照射ステップは、1秒間から5分間、より好ましくは3秒間から120秒間の期間のマイクロ波エネルギーの単一の適用(間隔)で実行され得る。後者の短い期間は、短めの長さの鋳型(例えば、siRNAなどの短いdsRNAを調製するための鋳型)を採用する場合に、特に有用である。
【0045】
本発明のさらなる対象は、
- 例えば、25μlから5000リットル(後者のケースでは、産業的な大規模適用のために設計されている)、より好ましくは250μlから500mlの容量の、反応物質を混合するための手段を有する混合チャンバ、および反応物質の混合物を冷却するための手段、
- 反応混合物を加熱するための、および/または反応混合物にマイクロ波放射を適用するための手段を有し、混合チャンバから反応物質を入れた後に倍加させることができる反応容量を有する、反応チャンバ、
- 前記混合チャンバを前記反応チャンバと接続するための導線、
- 冷却手段を有し、導線を介して前記混合チャンバに接続している、第1の保存チャンバ、
- それぞれが冷却手段を有し、共通の導線を介して前記混合チャンバに接続している、第2および第3の保存チャンバ、
- 前記第1、第2、および第3の保存チャンバから前記混合チャンバに反応物質を移すため、および前記混合チャンバから前記反応チャンバに反応混合物を移すための、ポンプ手段、
を包含する、RNAの大規模合成のためのRNAリアクターであって、混合チャンバの混合容量が、前記第1、第2、および第3の保存チャンバから反応物質を入れた後に倍加させることができる、RNAリアクターに関する。
【0046】
通常、反応チャンバは、pHおよび/または温度を測定するための手段、ならびに反応チャンバ内に存在する反応混合物から試料を回収するための手段を備えている。反応チャンバ内の反応容量は、μlからmlの容量に設計することができる。しかし、反応チャンバ内の反応容量はまた、最大5000リットルまたは10000リットルの容量を有する、産業的な大規模な適用のために設計することができる。反応チャンバは、好ましくは、反応チャンバ内に存在する反応混合物を振とうするための手段を備えており、前記手段は好ましくは、1分当たり50から600回転、より好ましくは1分当たり100から400回転、最も好ましくは1分当たり300回転の振とう能力を有する。
【0047】
反応混合物にマイクロ波照射を適用するための手段は、マイクロ波放射源を包含する。対応する装置は、当業者に知られている。マイクロ波放射を、反応混合物を所望の温度に加熱するためにも用いることができること、さらに、マイクロ波は、それ自体が(すなわち、反応混合物に対する、考えられる温度効果とは無関係に)、重合ステップおよび/または分離ステップにおいて生じる反応を加速および/誘発することに留意されたい。この点において、反応混合物にマイクロ波放射を適用するための手段はまた、反応チャンバを加熱するための手段としてもみなすことができる。
【0048】
好ましい実施形態によれば、第1の保存チャンバは、保存チャンバを-20℃以下に冷却するための冷却手段を備えている。第2および/または第3のチャンバは、好ましくは、それぞれの保存チャンバを2から8℃の温度、より好ましくは4℃に冷却するための冷却手段を有する。したがって、第1の保存チャンバは、RdRpを保存するために設計される。第2および第3の保存チャンバは、(上記に定義した)NTP、緩衝液、ならびに任意選択で、RNA合成開始オリゴヌクレオチド(第2および第3の保存チャンバの1つ)およびssRNA鋳型(第2および第3の保存チャンバの他方)を保存するために用いられる。もし存在するならば、RNA合成開始オリゴヌクレオチドのみを保存するために第4の保存チャンバを提供することも可能である。
【0049】
本発明のRNAリアクターは、RNA増幅反応を実行するために提供されるため、RNA増幅反応を実行する前に、全ての構成要素がRNaseを有さないようにすることが非常に好ましい。同一のことが、本発明の方法において用いられる全ての反応物質および液体に当てはまる。
【0050】
さらに、反応チャンバは、好ましくは、チャンバを28℃から98℃の温度に加熱するための加熱手段を有する。
【0051】
本発明のRNAリアクターは、好ましくは、マイクロ液体処理器具を採用するハイスループット装置として具現化される。対応するシステム構成要素は、市販されている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に従ったRNAリアクターの好ましい実施形態の概略図を示す図である。
【図2A】反応サイクルの数に応じた、本発明の方法によって生成されるRNAの量(μg)のグラフを示す図である。
【図2B】本発明に従った方法の9サイクルの結果生じる、RNAマーカー(17bp、21bp、および25bpのdsRNAに対応する;レーン1)およびdsRNA産物(レーン2)の非変性20%ポリアクリルアミドゲル分離の写真を示す図である。dsRNAの量を、TECAN Infinite 200で測定されるRiboGreen蛍光染料(Invitrogen)を用いて決定した。
【図3A】ssRNA鋳型(22nt)のイオン交換クロマトグラフィー分析の溶出プロファイルを示す図である。
【図3B】ssRNA鋳型を採用する本発明に従った指数関数的増幅の結果生じるdsRNA産物の溶出プロファイルを示す図である。
【図3C】(A)および(B)の重ね合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1を参照して、本発明に従った好ましいRNAリアクターは、以下のように特徴付けされる。
【0054】
RNAリアクターは、RdRpを提供するために-20℃以下に冷却された保存チャンバを有する。さらなる2つの保存チャンバは、NTP、緩衝液、ならびに任意選択で、RNA合成開始オリゴヌクレオチド(第2の保存チャンバ)およびssRNA(第3の保存チャンバ)を提供するために存在し、両者とも、冷却メカニズムによって4℃で維持されている。反応物質(RdRp、NTP/緩衝液、およびssRNA鋳型)は、混合チャンバを4℃に冷却するための冷却手段を有する、混合チャンバに移される。第1、第2、および保存チャンバは、導線を介して、好ましくはそれぞれの保存チャンバと同一の温度に冷却されている、混合チャンバに接続している。第2および第3の保存チャンバと混合チャンバとを接続している導線は、前記導線の部分が共通のラインとして形成されるように具現化される。混合チャンバ内に移された反応物質を混合し(例えば、1分間当たり300回転などで振とうすることによって)、次に、導線を介して反応チャンバに移す。反応チャンバを、RdRpの最適な活性のために適切な温度まで加熱する(例えば、30℃)。反応チャンバはまた(または、反応チャンバを加熱する代わりに)、マイクロ波放射源を備えており、その結果、重合ステップおよび/または鎖分離ステップのために、効果的な量のマイクロ波エネルギーを反応混合物に適用する。重合温度は、適切な期間(例えば、1から2時間、例えば1.5時間)にわたり保持することができる。特に、マイクロ波放射を提供することによって重合ステップを増強するケースでは、特に鋳型のタイプおよび長さならびに反応容量に応じて、重合時間を実質的に短くすることができ、例えば、数分またはさらに数秒間に短縮することができる。重合は、好ましくは、振とう条件下、例えば1分間当たり300回転での振とう条件下で生じる。次に、反応チャンバ内の反応混合物を、dsRNAの変性のために加熱する(例えば、65から96℃、30分間から1.5時間)。次に、(第1の保存チャンバから得られる)RdRpおよび(第2の保存チャンバから得られる)緩衝液/NTPのさらなるアリコートを、混合チャンバに移し(しかし、ssRNAは移さない)、混合し、次に、反応チャンバ内に移す。移動は、重合および鎖分離の各サイクルの後に、または一連のサイクル(例えば、3〜10サイクル)の
後に行ってよい。前述したように、さらなる、反応物質を混合するステップ、反応チャンバに移すステップ、重合ステップ、および変性ステップを、その後行う。このサイクル循環は、所望の量の産物RNAが得られるまで反復する。反応チャンバにおける温度条件およびpH条件は、対応する測定手段を介してモニタリングされる。反応混合物の試料は、既知の試料採取装置を介して、重合および変性の、全てのサイクルまたは選択されたサイクルの後に回収されてもよい。(最終的な)dsRNA産物を、導線を介して、反応チャンバから回収する。
【0055】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって、さらに例示される。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
指数関数的なRNA増幅のプロトコル
図1のRNAリアクターを用いて、以下のプロトコルの増幅を行った。
【0057】
混合チャンバにおいて鋳型(ssRNA)とRdRp、緩衝液、およびrNTPとを混合することによって、反応を開始させる。次に、反応物を、合成チャンバ(=反応チャンバ)に移し、ここで、二本鎖RNAの合成が生じる。手順は次の通りである:1)鋳型、RdRp、rNTP、緩衝液を、混合チャンバ内に移す、2)反応物を、4℃で、振とうすることによって(300rpmで30秒間)混合する、3)反応物を合成チャンバに移す、4)1.サイクル:30℃/1.5時間、300rpmで振とう、95℃/1時間、5) RdRp、rNTP、緩衝液を混合チャンバ内に移す(ssRNA鋳型は移さない)、6)反応物を、4℃で、振とうすることによって(300rpmで30秒間)混合する、7)反応物を合成チャンバに移す、8)2.サイクル: 30℃/1.5時間、300rpmでの振とう、95℃/1時間、9)RdRp、rNTP、緩衝液を混合チャンバ内に移す(ssRNA鋳型は移さない)、10)以下同様。サイクルの最後に、dsRNAを合成チャンバから回収する(アウト)。
【0058】
RNA合成を、サポウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)(配列番号2)を用いて、一本鎖RNA鋳型において行った。
【0059】
最初の反応混合物は、2μgの鋳型、7.5μMのRdRp、0.4mMの各ATP、CTP、UTP、および2mMのGTP、5μlの反応緩衝液(HEPES 250mM、MnCl2 25mM、DTT 5mM、pH7.6)、ならびにRNAse-DNAseを含まない水からなり、総容量は25μlであった。増幅反応は9回の連続するサイクルで行い、各サイクルは、30℃で90分間にわたる加熱、300rpmでの振とう、その後の95℃で60分間にわたる変性からなるものであった。各サイクルの後、反応物のアリコートを試料採取し、二本鎖RNAの量を、TECAN Infinite 200で測定されるRiboGreen蛍光染料(Invitrogen)を用いることによって決定し、9サイクルの後に、1151μgの二本鎖RNAを得た。各サイクルの開始時点で、RdRp、rNTP、および緩衝液を、最初に記載したものと同一の濃度で反応物に添加した。反応物の総容量は、各サイクルの後に倍加した。図2Aにおいて示されるように、産物RNAの量は指数関数的に増えている。したがって、2μgのssRNAのインプットから開始して、9サイクルの後に、1151μgの産物dsRNAの収量を得た(575.5倍の増幅)。
【0060】
先行技術のRNA増幅方法の欠点(上述の先行技術を参照されたい)を念頭に入れると、本発明に従ったRNA増幅反応が、確立されたPCRプロトコルと比較しても非常に効率的であることは注目に値し、PCRプロトコルは、典型的には、40サイクルの後に1から5μgをもたらすが、本発明のRNA増幅プロトコルは、わずか9サイクルの後に、1mgを超えるdsRNA産物をもたらす。
【0061】
(実施例2)
産物dsRNAの分析
実施例1に従って得られた二本鎖RNA産物を、電気泳動によって、非変性20%ポリアクリルアミドゲル上で視覚化した(図2B)。21bpのRNAマーカーと25bpのRNAマーカーとの間(レーン1)を移動するdsRNA産物(レーン2)を見ることができる。
【0062】
実施例1において概説したように合成された二本鎖RNAを、DNAPak PA100(Dionex)カラムを用いて、イオン交換クロマトグラフィーによって分析した。ssRNAおよび合成された二本鎖RNAの溶出プロファイルを、それぞれ図3Aおよび図3Bに示し、これらのプロファイルの重ね合わせを図3Cに示す。図3のパネルから見ることができるように、ssRNA鋳型は、産物dsRNAとは明らかに区別され得る。したがって、dsRNA産物は、イオン交換クロマトグラフィーによって、反応混合物からの調製に成功することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一本鎖RNA(ssRNA)、プライマー非依存性のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、NTP、反応緩衝液、および任意選択でRNA合成開始オリゴヌクレオチドを、混合チャンバ内で混合するステップ、
(b)ステップ(a)の混合物を反応チャンバ内に移すステップ、
(c)任意選択で、前記RNA合成開始オリゴヌクレオチドを前記ssRNAにアニーリングするステップ、
(d)プライマー非依存性のRdRpが、前記ssRNAに相補的なRNA鎖をデノボ合成するような、または任意選択で、前記RdRpが、前記ssRNAにハイブリダイズした前記RNA合成開始オリゴヌクレオチドを伸長して二本鎖RNA(dsRNA)を形成するような条件下で、前記混合物を前記反応チャンバ内でインキュベートするステップ、
(e)ステップ(d)において形成された前記dsRNAをssRNA鎖に分離するステップ、
(f)プライマー非依存性のRdRp、NTP、反応緩衝液、および任意選択でRNA合成開始オリゴヌクレオチドを、前記混合チャンバ内で混合するステップ、
(g)ステップ(e)の混合物を前記反応チャンバ内に移すステップ、
(h)ステップ(d)から(g)、または任意選択で(c)から(g)を、少なくとも5回反復するステップ、
(i)最後のインキュベーションステップ(d)を行って、最終的なdsRNAを形成するステップ、および任意選択で、
(j)前記最終的なdsRNAを前記反応チャンバから回収するステップ
を包含する、RNAの指数関数的増幅のための方法。
【請求項2】
ステップ(d)から(g)、または任意選択で(c)から(g)が、ステップ(h)において5から100回反復される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プライマー非依存性のRdRpが「右手の立体構造」を有し、前記RdRpのアミノ酸配列が、
a. XXDYS
b. GXPSG
c. YGDD
d. XXYGL
e. XXXXFLXRXX
(D:アスパラギン酸
Y:チロシン
S:セリン
G:グリシン
P:プロリン
L:ロイシン
F:フェニルアラニン
R:アルギニン
X:任意のアミノ酸
という意味を有する)
の配列モチーフの、保存された配置を包含する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プライマー非依存性のRdRpが、カリシウイルス科のRdRpである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プライマー非依存性のRdRpが、ノロウイルス、サポウイルス、ベシウイルス、またはラゴウイルスのRdRpである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プライマー非依存性のRdRpが、ノロウイルス株HuCV/NL/Dresden174/1997/GE(GenBank受託番号AY741811)のRdRp、サポウイウルス株pJG-Sap01(GenBank受託番号AY694184)のRdRp、およびベシウイルス株FCV/Dresden/2006/GE(GenBank受託番号DQ424892)のRdRpからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プライマー非依存性のRdRpが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ssRNA鋳型が、15から30ヌクレオチド、好ましくは21から28ヌクレオチド、より好ましくは21から23ヌクレオチドの長さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ssRNA鋳型が、30ヌクレオチドを超える長さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ssRNA鋳型がmRNAである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(d)および(f)における反応容量が、ステップ(h)の各サイクルにおいて倍加する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(f)および(g)が、ステップ(h)の2サイクルから10サイクルごとに実行される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)および(f)における反応容量が、前記ステップ(f)および(g)が実行されるステップ(h)の各サイクルにおいて倍加する、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)および/または(f)が、2から8℃の温度で、好ましくは4℃で実行される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)が、28から37℃の温度で、好ましくは30℃で実行される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(d)が振とう下で実行される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
振とうが、1分間当たり50から600回転で、好ましくは1分間当たり100から400回転で、最も好ましくは1分間当たり300回転で実行される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(e)が、熱変性によって、化学的に、または酵素的に実行される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
dsRNA鎖の酵素的分離が、二本鎖巻き戻し活性によって実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
熱変性が、65℃から98℃の温度で実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(d)および/または(e)および/または(i)が、マイクロ波照射下で実行される、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
- 反応物質を混合するための手段を有する混合チャンバ、
- 反応混合物を加熱するための、および/または反応混合物にマイクロ波放射を適用するための手段を有し、混合チャンバから反応物質を入れた後に倍加させることができる反応容量を有する、反応チャンバ、
- 前記混合チャンバを前記反応チャンバと接続するための導線、
- 冷却手段を有し、導線を介して前記混合チャンバに接続している、第1の保存チャンバ、
- それぞれが冷却手段を有し、共通の導線を介して前記混合チャンバに接続している、第2および第3の保存チャンバ、
- 前記第1、第2、および第3の保存チャンバから前記混合チャンバに反応物質を移すため、および前記混合チャンバから前記反応チャンバに反応混合物を移すための、ポンプ手段、
を包含する、RNAの大規模合成のためのRNAリアクターであって、混合チャンバが、前記第1、第2、および第3の保存チャンバから反応物質を入れた後に倍加させることができる反応容量を有する、RNAリアクター。
【請求項23】
反応チャンバが、pHおよび/または温度を測定するための手段を有する、請求項21に記載のRNAリアクター。
【請求項24】
反応チャンバが、前記反応チャンバ内に存在する反応混合物から試料を回収するための手段を有する、請求項21または22に記載のRNAリアクター。
【請求項25】
第1の保存チャンバが、前記保存チャンバを-20℃以下に冷却するための冷却手段を有する、請求項21から23のいずれか一項に記載のRNAリアクター。
【請求項26】
第2および第3の保存チャンバならびに混合チャンバが、前記チャンバを2から8℃、好ましくは4℃に冷却するための冷却手段を有する、請求項21から24のいずれか一項に記載のRNAリアクター。
【請求項27】
反応チャンバが、前記チャンバを28から98℃の温度に加熱するための加熱手段を有する、請求項21から25のいずれか一項に記載のRNAリアクター。
【請求項28】
反応チャンバが、前記反応チャンバ内に存在する反応混合物を振とうするための手段を有する、請求項21から26のいずれか一項に記載のRNAリアクター。

【図2B】
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【図1】
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【図2A】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2013−507943(P2013−507943A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534708(P2012−534708)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065912
【国際公開番号】WO2011/048198
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(509250010)リボックス・ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】