説明

S波を用いた3次元探査方法、S波発震装置、および3次元探査装置

【課題】 3次S波反射法探査において、探査精度を同等以上に維持しながら、作業効率を改善し、コストの削減を図る。
【解決手段】 本発明のS波を用いた3次元探査装置においては、受振ライン4本のベルト型受振器群13を用いる。ベルト型受振器群13は、受振器ユニット30が0.5[m]が取り付けられ、受振器30をほぼ格子状に設置する。また、発震点数を3とする。また、S波発震装置100では、2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から、逆向きで対称な衝撃力を発震板に与え、該発震板により、S波の振動を地表面に伝達する。また、受振器30で受振したS波の反射波の受振データをデータ収録装置11で収集して解析する。また、ベルト型受振器群13を展開移動するための牽引装置(例えば、小型バックホー40など)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川堤防の堤体盛土等の内部の状況を、弾性波(S波)を用いて間接的に診断する、S波を用いた3次元探査方法、S波発震装置、および3次元探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水から生命や財産を守る堤防やダム等の治水対策は、重要な社会的課題であるが、新規ダムの建設が困難になりつつある社会情勢の中にあって、河川堤防の役割はますます重要になってきている。このような社会的要請に応えるため、弾性波を用いた堤防内部状況把握のための探査技術の開発が進められている。この中で、とくに空洞等の密度異常体に対する3次元S波反射法探査の有効性が認められている。しかしながら、3次元探査に特有なコスト高という大きな課題が残されていた。
【0003】
堤防探査として、高密度電気探査、EM探査、表面波探査、2次元反射法探査等の物理探査手法の適用性が検討されてきたが、現状ではどの方法も効率的・効果的に実施可能な段階には達していない。
【0004】
高密度電気探査とEM探査は、主として含水比による地盤の比抵抗の違いから、盛土地盤や基礎地盤の内部構造を把握しようとする探査技術である。どちらの探査技術も、深度とともに分解能が低下し、良導体の埋設物等の悪影響を受けるといった探査原理上の問題点を有する。とりわけ、高密度電気探査は、多数の電極を地表面に打設する必要があるなど現場作業上の問題点が残されている。
【0005】
表面波探査は、弾性波のうち表面波に着目した探査技術である。堤防探査としては、空洞等の密度異常の検出能力は低く(深度の半分程度の大きさ)、また深度の精度が良くないために、ボーリング調査やサウンディングとの併用は必要不可欠である。しかし、探査費用が安価なため、目的によっては、堤防盛土地盤や基礎地盤表層部を概査的に把握するのに有効な場合が考えられる。なお、表面波探査の詳細については後述する。
【0006】
2次元S波反射法探査は、以上の調査法・探査法に比べれば精度が高く、地盤の内部構造を忠実に反映した解析結果が得られるが、2次元探査であるため測線側方からの反射データも含まれ、これがノイズとして作用するという欠点がある。しかし、解釈技術を蓄積することにより、一定程度の精度は確保できるので、概査的な堤防探査への適用が考えられる。
【0007】
3次元S波反射法探査は、堤防内部・基礎地盤の土層構造、堤防内部の空洞等密度異常体や緩み領域の把握を目的として行われ、深度15m程度まで高精度の探査が可能で、とくに堤防内空洞等の探査への実用化が図られてきた。
【0008】
3次元S波反射法探査は、地表で与えた水平動を3次元多チャンネルで受振し、データ処理により地下の反射面構造を解析する弾性波を用いた物理探査技術の一種である。現場データ取得は、堤防天端や小段で縦断方向に測線を設定するとともに、横断方向にも一定の幅を有する帯状の範囲が対象となるように、多数の受振器を3次元配列したベルトを牽引し、一定間隔で縦断方向および横断方向にS波を発震することにより行う。現場取得したデータは、反射法探査の方式でデータ処理・解析し、3次元可視化により地下構造を解釈する。
【0009】
従来の3次元S波反射法探査の例(非特許文献1)を図16に示す。図16に示すように、3次元探査装置は、観測車10に搭載されたデータ収録装置11、信号ケーブル12、3次元S波受振装置である受振器ユニット30、発震装置(小型バックホー41、S波発震装置100a)から構成されている。受振装置は、2本の非伸縮性の牽引ベルト20上に受振器ユニット30を50cm間隔で各24基ずつ配列設置した2本の受振ラインからなる。発震装置は小型バックホー41のバケットにS波発震装置100aを装着したもので、板叩き法により発震作業を行う。堤防縦断方向の展開移動間隔0.5mごとに、横断方向に×印で示した5点の発震を行いながら、48チャンネル分のデータを同時取得する。なお、受振器ユニット30が所定の間隔で配置された牽引ベルト20を複数本並列に固定したものを、ベルト型受振器群と呼ぶ。
【非特許文献1】持丸修一、他、「弾性波による堤防内部状況探査技術の開発について」、財団法人経済調査会発行の建設マネジメント技術、2001年5月号、54頁〜57頁
【0010】
また、牽引ベルト20は、牽引ワイヤー21により、小型バックホー41と連結されており、小型バックホー41により展開移動(0.5m間隔)される。なお、図17は、堤防上で、従来の3次元S波探査を実際に行っている様子を示したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、3次元S波反射法探査は、他の方法に比べて、精度や適用範囲の点で優れた手法であり、その将来性が期待されているが、作業コストが高いという問題点を抱えており、その改善が望まれていた。
【0012】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、3次S波反射法探査において、探査精度を同等以上に維持しながら、作業効率を改善し、コストの削減を図ることができる、S波を用いた3次元探査方法、S波発震装置、および3次元探査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のS波を用いた3次元探査方法は、河川の堤防上にS波の振動を受振する受振器を配置し、前記堤防上でS波による振動を発震し、前記受振器によりS波を受振して堤防の内部の状況を診断するS波を用いた3次元探査方法であって、S波の振動を検出する受振器が所定の間隔で配置された牽引ベルトを、同じ間隔を保って4本平行に堤防上に配置し、堤防上に受振器の受振ラインを4本平行に配置する手順と、前記4本の受振ラインの内側の2本の受振ライン間の真ん中を通り受振ラインに平行な線の延長線上にありかつ前記受振ラインから所定の距離離れた1点と、前記4本の受振器の受振ラインの外側の2本の受振ラインの延長線上にありかつ前記受振ラインから所定の距離離れた2点とで、Sによる振動を順次に発震する手順と、前記S波の地中からの反射波を前記受振器により受振し、該反射波の受振データを収録し解析する手順とを含むことを特徴とする。
これにより、測定精度を落とすことなく、発震点を3点に減らすことができる(従来は5点)。また、発震点を設定する際にはベルト型受振器群の位置(牽引ベルトの位置)を目印にでき、発震位置を容易に特定できる。このため、作業効率が高まり、結果として、効率的にデータ収集ができる。
【0014】
また、本発明のS波を用いた3次元探査方法は、前記4本の牽引ベルトの配置間隔を略α[m]とし、前記牽引ベルト上での受振器の配置間隔を略α[m]とし、各受振器を格子状に配置し、前記牽引ベルトの測線方向への展開移動距離を略2α[m]とする手順を含むことを特徴とする。
これにより、CMP重合の効果とあいまって、測定精度を落とすことなく、従来のほぼ2倍の作業効率とすることができる。
【0015】
また、本発明のS波を用いた3次元探査方法は、表面波探査により概略的な探査を行ない、精密探査が必要な領域を特定する第1の手順と、前記特定された領域についてS波を用いた3次元探査を行う第2の手順とを含むことを特徴とする。
これにより、より効率的な3次元探査を実現できる。
【0016】
また、本発明のS波を用いた3次元探査方法は、前記S波による振動を地表面で発震する際に、ピストンにより衝撃を与える2つのエアノッカーと、前記2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から逆向きで対称な衝撃力を受け取りS波の振動を地表面に伝達する発震板とを備えたS波発震装置を使用する手順を含むことを特徴とする。
これにより、従来のカケヤなどよりも強い打撃エネルギーを発生させることができ、発震点において、従来よりも強いS波を効率的にかつ自動的に発生させることができる。このため、測定精度を維持しつつ、作業効率の向上を図ることができる。
【0017】
また、本発明のS波発震装置は、水平面に対して所定の角度をなすように左右に対向して配置され、エア圧の供給によりピストを押し出して衝撃を与える2つのエアノッカーと、地表面上に水平に配置され、前記2つのエアノッカーにより左右斜め上の2方向から逆向きで対称な衝撃力を受け取り、S波の振動を地表面に伝達する発震板と、前記発震板の横滑りを抑制するために前記発震板の底面に設けられたゴムマットとを備えることを特徴とする。
これにより、従来のカケヤなどよりも強い打撃エネルギーを発生させることができ、発震点において、従来よりも強いS波を効率的にかつ自動的に発生させることができる。このため、測定精度を維持しつつ、作業効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明のS波発震装置は、前記エアノッカーへ供給する圧縮空気の流れを制御する電磁弁スイッチであって、前記エアノッカーからの排気の開放速度を調節して、ピストンの戻り速度を調整する機能を有する電磁弁スイッチを備えることを特徴とする。
これにより、エアノッカーのピストンが初期位置に戻る際に発生する振動ノイズの影響を抑制することができる。
【0019】
また、本発明のS波を用いた3次元探査装置は、河川の堤防上にS波の振動を受振する受振器を配置し、前記堤防上でS波による振動を発震し、前記受振器によりS波を受振して堤防の内部の状況を診断するS波を用いた3次元探査装置であって、S波の振動を検出する受振器が略α[m]の間隔で配置された牽引ベルトを、略α[m]の間隔を保って4本平行に配置し、受振器を格子状に配置したベルト型受振器群と、ピストンにより衝撃を与える2つのエアノッカーと、前記2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から逆向きで対称な衝撃力を受け取りS波の振動を地表面に伝達する発震板とを有するS波発震装置と、前記受振器により受振した地中からのS波の反射波の受振データを収録するデータ収録装置と、前記ベルト型受振器群を測線方向に牽引する牽引装置とを備えることを特徴とする。
これにより、同等の測定品質を維持しながら、S波の発震点数の削減、測線方向への展開移動間隔の拡大ができ、3次元探査において、効率的なデータ収集が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のS波を用いた3次元探査方法においては、受振器の受振ラインを4本(従来は2本)とし、また、S波の発震点数を3(従来は5)とする。また、発震点を、4本の受振ラインの中心線(内側の2本の受振ラインの真ん中を通る線)の延長線上に1点、4本の受振ラインの外側の2本の受振ラインの延長線上に2点設ける。
これにより、測定精度を落とすことなく、発震点数を3点に減らすことができる(従来は5点)。また、発震点を設定する際にはベルト型受振器群の位置(牽引ベルトの位置)を目印にでき、発震位置を容易に特定できる。このため、作業効率が高まり、結果として、効率的にデータ収集ができる。
【0021】
また、本発明のS波を用いた3次元探査方法においては、ベルト型受振器群を構成する4本の牽引ベルトの間隔を略α[m]とし、各牽引ベルト上に設置される受振器の間隔を略α[m]とし、各受振器を格子状に配置し、また、測線方向へのベルト型受振器群の展開移動距離を略2α[m]とする。
これにより、CMP重合の効果とあいまって、測定精度を落とすことなく、従来のほぼ2倍の作業効率とすることができる。
【0022】
また、本発明のS波を用いた3次元探査方法においては、表面波探査により概略的な探査を行ない、精密探査が必要な領域を特定し、特定された領域をS波により3次元探査をおこなう。
これにより、より効率的な3次元探査を実現できる。
【0023】
また、本発明のS波を用いた3次元探査方法においては、2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から、逆向きで対称な衝撃力を発震板に与え、該発震板により、S波の振動を地表面に伝達する。
これにより、従来のカケヤなどよりも強い打撃エネルギーを発生させることができ、発震点において、従来よりも強いS波を効率的にかつ自動的に発生させることができる。このため、測定精度を維持しつつ、作業効率の向上を図ることができる。
【0024】
また、本発明のS波発震装置においては、2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から、逆向きで対称な衝撃力を発震板に与え、該発震板により、S波の振動を地表面に伝達する。また、発震板の底面には、滑り止め(硬質ゴムマット)を設ける。
これにより、従来のカケヤなどよりも強い打撃エネルギーを発生させることができ、発震点において、従来よりも強いS波を効率的にかつ自動的に発生させることができる。このため、測定精度を維持しつつ、作業効率の向上を図ることができる。
【0025】
また、本発明のS波発震装置においては、エアノッカー内のシリンダーからの圧縮空気の開放速度を調節して、ピストンの戻り速度を調整する機能を有する電磁弁スイッチを使用し、ピストンの戻り速度を抑える。
これにより、エアノッカーのピストンが初期位置に戻る際に発生する振動ノイズの影響を抑制することができる。
【0026】
また、本発明のS波を用いた3次元探査装置においては、受振ライン4本からなるベルト型受振器群(ベルト間の間隔が略α[m]で、かつ、各ベルトに取り付けら得る受振器の間隔が略α[m])により、受振器をほぼ格子状に設置する。また、発震点を3点とする。また、2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から、逆向で対称な衝撃力を発震板に与え、該発震板により、S波の振動を地表面に伝達する。また、受振器で受振したS波の反射波の受振データをデータ収録装置で収集して解析する。また、ベルト型受振器群を展開移動するための牽引装置(例えば、小型バックホーなど)を備える。
これにより、同等の測定品質を維持しながら、S波の発震点数の削減、測線方向への展開移動間隔の拡大ができ、3次元探査において、効率的なデータ収集が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0028】
[本発明による3次元探査装置の概要の説明]
図1は、本発明によるS波を用いた3次元探査装置の概要を示す図である。図1に示すように、本発明の3次元探査装置は、観測車10に搭載されたデータ収録装置11、信号ケーブル12、ベルト型受振器群13、S波発震装置100から構成されている。ベルト型受振器群13は、4本の牽引ベルト20上に受振器ユニット30を50cm間隔で各24基ずつ配列設置した4本の受振ラインからなる。その結果、受振器ユニット30は格子状に配列されることになる。S波発震装置100は、地中に向かってS波を発震する。このS波発震機100の詳細については後述する。
【0029】
また、ベルト型受振器群13は、牽引ワイヤー21により、小型バックホー40と連結され、小型バックホー40により測線方向に展開移動(1.0m間隔)される。
【0030】
そして、ベルト型受振器群13とS波発震装置100により、堤防縦断方向の展開移動間隔1.0mごとに、横断方向に×印で示した3点で発震を行いながら、96チャンネル分のデータを同時取得する。
【0031】
なお、データ収録装置11の仕様は、例えば、「同時受振チャンネル数・・・96CH」、「サンプリング間隔・・・0.25ms」、「記録長・・・1s」、「A/D変換分解能・・・24bit」、「出力ファイル形式・・・SEG−2」、「最大CMP重合数・・・12」などである。また、受振器ユニット30の仕様は、例えば、「ジフォン2個構成」、「ジフォン:UM2・・・10Hz、水平1成分」などである。
【0032】
図1に示す3次元探査装置は、図16に示す3次元探査装置と比較して、受振ラインが4本(従来は2本)、発震点が3点(従来は5点)、展開移動間隔が1.0m(従来は0.5m)となっている点が異なっている。これにより、解析精度の向上と、作業の能率の向上(作業コストの削減)を図っている。
【0033】
また、図2は、本発明の3次元探査装置による測定方法の概念説明図であり、前述したように、受振ライン数が4列であり、受振ライン間隔が0.5m、受振点間隔が0.5m、受振点配列が24点×4列、全チャンネル数が96の例である。また、横断方向の発震点については、発震点数が3、発震点間隔が0.75mの例である。
【0034】
また、この例では、解析で鉛直断面が得られるCMPラインは、合計7本となるが、これについては後述する。
【0035】
なお、受振ライン間隔が0.5m、受振点間隔が0.5m、展開移動間隔1.0mは、一例を示すものであり、受振ライン間隔を略α[m]、受振点間隔を略α[m]、展開移動間隔を略2α[m]とし、αを任意の数値とすることができる。
【0036】
[S波発震置の構造と動作の説明]
次に、本発明の3次元探査装置で使用されるS波発震装置について説明する。
図3は、本発明の3次元探査装置で使用されるS波発震装置の構成例を示す図であり、図3(a)はS波発震装置の全体を示し、図3(b)は、S波発震装置の要部を示したものである。
【0037】
図3において、左右のエアノッカー101a、101bが、H型鋼を使用したエアノッカー固定金具102により、水平より30°傾斜して固定される。発震板103は、例えば、幅50cm、高さ20cm、奥行き30cmの硬質の木製の板である。発震板103の左右には、エアノッカー101a、101bの打撃軸(ピストン)に対向して打撃板104a、104bが、打撃板固定金具105により取り付けられている。打撃板104a、104bは、例えば、幅10cm、肉厚10mmの鋼鉄製の板である。なお、エアノッカー101a、101bは、空圧式であり、使用圧力0.5〜0.7MPa程度のものである。
【0038】
このS波発震装置100は、発震板103の横滑りを抑制し、地盤とのカップリング向上を図ることを目的として、発震板103を斜め上方(傾斜30°)から打撃するS波発震装置であり、上方斜め方向からの打撃により下方向き打撃成分が発生するため、発震板103の横滑り抑制に効果がある。
【0039】
また、発震板103の横滑り抑制のため、発震板103の底面に硬質ゴムマット106を打ちつける。これにより、アスファルト舗装面でも、発震板の横滑り抑制効果が期待できる。また、下方向きの打撃成分によりP波が発生するため、両打ち方式によりノイズとなるP波成分を消去する。
【0040】
なお、発震板103の横滑り防止のため、小型バックホーのバケットでS波発震装置100の全体を抑えつけるが、バケットアームに振動が伝わりノイズとして悪影響を及ぼす可能性があるので、バケットとエアノッカー固定金具102との間に、ノイズ遮断用の硬質ゴムマット(図示せず)を挿入する。
【0041】
また、図4は、エアノッカーの空圧制御系の構成例を示す図である。図4(a)に示すように、エアノッカー101(101a、101b)は、電磁弁スイッチ110内の電磁弁の制御により、シリンダー111への圧縮空気の出入が行われ、ピストン112が前後に移動する。
【0042】
エアノッカー101の起動前には、圧縮空気からシリンダー111内への空気のながれ(A→B)が遮断され、磁力によってピストン112の頭部がシリンダー111に密着している。
【0043】
図4(b)に示すように電磁弁スイッチ110をONすることにより、電磁弁110aが矢印の方向に移動し、A→Bへ空気回路が開き、ピストン112が起動して前に押し出される。
【0044】
また、図4(c)に示すように、電磁弁スイッチ110のOFFにより、電磁弁110aが矢印の方向に移動し、B→Cへ空気回路が開き、シリンダー111内より大気中に圧縮空気が開放され、ピストン112が元に戻る。なお、空気の開放速度はコック113にて調整される。
【0045】
このように、エアノッカー101a、101bは、ピストンがシリンダー外部に突出するロングピストンタイプであることから、ピストンの慣性質量が大きく打撃時のエネルギーも大きく、カケヤ叩きやワンパンチハンマーの場合よりも、打撃エネルギーが大きい。
【0046】
しかしながら、エアノッカー震源には一つの重要な問題点がある。図12の受振波形の比較図に示すように、エアノッカー震源とカケヤ震源とを比較したとき、エアノッカー震源には0.4s付近および0.6s付近に、顕著なノイズが入り込む。このノイズの原因は、初動付近の波形に似ていること、振幅の極性(+−)が反転していることから、エアノッカーのピストン112が戻ったときにシリンダー111の頭部を打撃するときに発生する振動であることが分かる。
【0047】
このノイズを除去することは不可能と考えられるので,ノイズの発生する時間を遅らせる工夫をしている。すなわち,3次元探査ではデータ取得時間はせいぜい1s間程度なので,ピストン112の戻りをこの時間より遅らすことができれば,その後にノイズが発生しても問題は無い。ピストン112の戻りを遅らせるため,打撃後にシリンダー111内に残された圧縮空気の開放を抑制するという方法を採用している。すなわち、コック113の調整により、ピストン112の戻り時間を延ばすことにより、ノイズ発生の問題を解決している。
【0048】
また、エアノッカー101の制御に電磁弁スイッチ110を採用したことにより、エアノッカー101の起動を観測本部側で行うことを可能にしている。電磁弁スイッチ110を使用しない場合は、観測本部からデータ収録装置の準備OK合図を受けて、発震装置側でエアノッカー101を起動させる必要がある。電磁弁スイッチ110を使用することにより、同一発震点でスタッキングを行う場合、待ち時間はデータ収録装置11のスタンバイに要する時間のみになるので、観測本部側から発震装置側にOKサインを送ること無しに、直接エアノッカー101を起動させることが可能になる。これにより、現場作業時間について、1日当たりの作業効率を改善することができる。例えば、1日当り30分程度の短縮を図ることができる。
【0049】
[展開移動間隔の拡大についての説明]
図16に示す従来の3次元探査装置では、測線方向に展開移動間隔0.5mで発震を行い、現場データ取得作業を行っていた。これを、本発明の3次元探査装置では、前述したように、1.0m間隔に広げている(図1参照)。これにより、発震点数が半減し、それにほぼ比例して現場作業量も減らすことができる。この改善は、浅層反射法探査のコスト縮減を図る上で極めて重要な鍵になる。
【0050】
図13は、展開移動間隔による解析断面の変化の例を示す図であり、上側の図が0.5m間隔の場合、下側の図が1.0m間隔の場合を示している。このように、3次元探査では、展開移動間隔が1.0mの場合でも、0.5mの場合とほぼ同等の品質をもつ結果が得られており、間隔を1.0mに拡大しても全く問題は生じないと判断されるので、本発明では、3次元S波反射法探査にこの方式を採用している。
【0051】
[3次元並列探査とCMPラインについての説明]
図16に示す、従来の3次元並列型探査では、受振ラインが2本であったため、同一測線距離において堤防横断方向に5点の発震点を設ける必要があった。本発明の3次元探査方法においては、受振ラインを4本に増設し、その見返りとして発震点を3点に減らしている。これにより、現場作業量を軽減しつつ、同等の品質を有するデータ取得を可能にしている。
【0052】
図5は、3次元並列探査の比較例を示す図である。図5(a)は、従来の並列探査の例を示しており、従来の3次元探査では受振点ライン数が2で、横断方向の発震点数が5であるから、これを[2×5型]と呼ぶ。詳細については後述する。
【0053】
また、図5(b)および図5(c)は、本発明による並列探査の例を示す図であり、本発明による並列探査は基本的に、図5(b)に示すように、[4×3型]ということなる(CMPライン8本、[2×5型]よりも解析幅拡大)。しかし、外側の発震点が受振ラインより25cm外寄りに設置しなければならないという問題点がある。そこで、外側の発震点を受振点ラインに合わせて設置した方が作業性に優れ実用的であるので、図5(c)に示す[4×3´型]も使用できる。
【0054】
[4×3´型]では、部分的にCMP間隔12.5cmのものが生じるが、これを[2×5型]と同様に、25cm間隔のCMPライン7本に集約することが可能である。ただし、[2×5型]に比べ、横断方向の重合数2のCMPラインが3本から5本に増大しており、解析精度の向上を図ることができる。詳細については後述する。
【0055】
また、図6は、従来の[2×5型]のCMP重合の説明図であり、堤防の横断方向に3次元探査方を行う場合の例である。図6において、発震点S1から発震されたS波は、地表面から地中に進行し反射面で反射される。発震点S1から発震されたS波は、経路a1→反射点F1→経路a2を通って受振点R1で受振される。また、発震点S1から発震されたS波は、経路a3→反射点F3→経路a4を通って受振点R2で受振される。
【0056】
以下、同様にして、各発震点S2〜S5で発震されたS波は、受振点R1、R2で観測され、その結果、反射点F1、F2、F6、F7については、1つの観測データが得られ、反射点F3、F4、F5については2つの観測データが得られる。これらの観測データはCMP重合されるので、反射点F1、F2、F6、F7については、CMP重合数が1となり、反射点F3、F4、F5についてはCMP重合数が2となる。
【0057】
また、図7は、[4×3型]のCMP重合の例を示す図であり、堤防の横断方向に3次元探査方を行う場合の例である。図7において、発震点S1から発震されたS波は、地表面から地中に進行し反射面で反射される。そして、発震点S1から発震されたS波は、経路a1→反射点F1→経路a2を通って受振点R1で受振される。また、経路a3→反射点F2→経路a4を通って受振点R2で、経路a5→反射点F3→経路a6を通って受振点R3で、経路a7→反射点F4→経路a8を通って受振点R4でそれぞれ受振される。
【0058】
以下、同様にして、各発震点S2〜S3で発震されたS波は、受振点R1〜R4で観測され、その結果、反射点F1、F2、F7、F8については、1つの観測データが得られ、反射点F3、F4、F5、F6については2つの観測データが得られる。これらの観測データはCMP重合されるので、反射点F1、F2、F7、F8については、CMP重合数が1となり、反射点F3、F4、F5、F6についてはCMP重合数が2となる。
【0059】
また、図8は、[4×3´型]のCMP重合の例を示す図であり、堤防の横断方向に3次元探査方を行う場合の例である。図8において、発震点S1から発震されたS波は、地表面から地中に進行し反射面で反射される。そして、発震点S1から発震されたS波は、経路a1を通り、直下の反射面F1で反射され受振点R1で受振される。また、発震点S1から発震されたS波は、経路a2→反射点F2→経路a3を通って受振点R2で受振される。また、経路a4→反射点F4→経路a5を通って受振点R3で、経路a6→反射点F6→経路a7を通って受振点R4でそれぞれ受振される。
【0060】
以下、同様にして、各発震点S2〜S3で発震されたS波は、受振点R1〜R4で観測され、その結果、反射点F1、F2、F3、F4、F5、F7、F8、F9、F10、F11については、1つの観測データが得られ、反射点F6については2つの観測データが得られる。また、図5(c)で説明したように、反射面F3の観測データは反射面F2の観測データに統合され、反射面F5の観測データは反射面F4の観測データに統合され、反射面F7の観測データは反射面F8の観測データに統合され、反射面F9の観測データは反射面F10の観測データに統合される。
【0061】
これにより、反射点F1、F11については、CMP重合数が1となり、反射点F2、F4、F6、F8、F10についてはCMP重合数が2となる。
【0062】
なお、CMP重合重合法の原理についてよく知られているが、ここで一応簡単にだけ説明しておく。地下からの反射波の信号は微弱なため、1回の発震に対して単一の受振点を設けるだけでは、信号がノイズに埋没して明瞭な反射記録が得られないことが多い。そこで、反射法探査では、1回の発震につき、多数の点で同時に受振記録をとり、S/N比の向上が図られている。このようにマルチチャネル方式で記録された受振記録は、CMP重合という方法を用いてデータ処理される。この原理の概要について、2次元探査を例にして説明する。
【0063】
受振点間隔および発震点間隔を一定に保った状態で取得された反射記録から、図15(a)に示すように、発震点をS1〜S6、受振点をR1〜R6とし、地下のある同一の反射点(共通中間点D)とすると、発震・受振点間距離(オフセット距離)の差に応じて、図15(b)に示す伝播速度経路の異なる複数の反射記録が抽出される(CMPアンサンブル)。次に、オフセット距離の違いによる走時を補正[NMO補正]することにより、オフセット距離ゼロ、すなわち共通中間点Dと直上の地表面とを結ぶ鉛直線上の記録に置き換えることができる(図(c))。最後に、これらの各記録をたし合わせることにより、反射波が強調されたCMPトレースと呼ばれる一つの記録に集約される(図(d))。このとき、CMPトレースを作るためにたし合わせたCMPアンサンブルの記録数を、CMP重合数という。
【0064】
3次元探査の場合のCMP重合法も、原理的には2次元探査のときと同様であるが、共通中間点Dに相当するものはビンとよばれ、一定の面積を有するところが2次元探査の場合と異なる。ビンは等間隔の格子状に区切られ、同一のビンに入る反射記録がCMPアンサンブルを構成し、その記録数がCMP重合数となる。
【0065】
[表面探査についての説明]
本発明の3次元探査方法においては、従来の表面探査法を利用することにより、調査対象となる対象(堤防など)の概略的な内部構造を把握した後に、精密探査が必要な領域を特定し、本発明の3次元探査方法を用いると、より効果的な3次元探査が行える。
表面探査法はよく知られた技術であるが、ここで、表面探査法について説明しておく。
【0066】
表面波探査は、弾性波のうち表面波に着目した探査技術である。堤防探査としては、空洞等の密度異常の検出能力は低く(深度の半分程度の大きさ)、また深度の精度が良くないために、ボーリング調査やサウンディングとの併用は必要不可欠である。しかし、探査費用が安価なため、目的によっては、堤防盛土地盤や基礎地盤表層部を概査的に把握するのに有効である。
【0067】
図9は、表面探査測定法の概念を説明するための図であり、表面波探査は、堤防内部・基礎地盤の土層構造を概略的に把握するため、また堤防内部の緩み領域等を推定するために用いることができ、経済性に優れ、基本的な地盤定数であるS波速度が直接得られるなどの特長をもつ。
【0068】
表面波探査は、カケヤにより地表面を打撃し、地表で与えた鉛直振動を多チャンネルで受振し、表面波を抽出することによりS波速度構造を解析する弾性波探査の一種である。現場データ取得は、図9に示すように、測線上に等間隔で受振器ユニット30を多数設置し、データ収録装置11により、一定間隔で起振した振動波形を多チャンネルで受振することにより行う。以上のデータを地点ごとの波形データ群に再編集し、鉛直方向のS波速度分布を求め、最終的に測線下の鉛直断面を逆解析し、地下構造を解釈する。
また、図10は、表面探査法におけるデータ処理手順を示す図である。以下、図10を参照して、その手順について説明する。
【0069】
最初に、ジオメトリを作成する(ステップS101)。
各ショットデータの起震点位置および受振点位置の情報を作成する。なお、ショットデータ内の各トレース(波形データ)の集まりをショットギャザーと呼ぶ。
【0070】
次に、CMPクロスコリレーションギャザーの作成を行う(ステップS102)。
反射法探査の場合のように、ショットギャザーをCMPギャザーへ単純に並べ替えるのではなく、トレースにクロスコリレーションと呼ばれる波形処理を施したものについて、CMP編集を行う。なお、クロスコリレーションとは、ショットギャザー内の全トレースから2本のトレースを抽出するすべての組み合わせを作り、これらトレースのペアに対してクロスコリレーション処理を施し、波形データに類似したトレースを求めるものである。同時データ取得チャンネル数24の場合には、一つのショットギャザーから、組み合わせ数「24=276」本のクロスコリレーションが得られる。このクロスコリレーションには、2本のトレースの受振点間隔、および受振点間の中点の座標(CMP)が属性値として与えられる。
【0071】
他のショットギャザーについて同様にクロスコリレーションを求め、これらのクロスコリレーションについて反射法の場合と同様にCMPギャザーへの並べ替えを行う。このとき、各CMPギャザー内で、受振点間隔が同一になるクロスコリレーションについては、これらを加算して1本のトレースに集約する。この結果、受振点間隔に一対一対応するクロスコリレーション・トレースの集合体が出来上がる。これをCMPクロスコリレーションギャザーという。クロスコリレーション・トレースを受振点間隔の狭いものから順に並べると、擬似共通起振点記録と呼ばれる波形表示が得られる。
【0072】
次に、分散解析を行う(ステップS103)。
CMPクロスコリレーションギャザーについて、まず個々のクロスコリレーション・トレースをそれぞれ周波数領域に変換する。つぎに、見かけの速度を設定し、受振点間隔に応じて位相をシフトさせ、受振点間隔方向に積分する。この結果から、周波数と位相速度とのグラフが得られ、分散曲線が求まる。このように、一つの分散曲線は、一つのCMPクロスコリレーションギャザーに対して得られる。得られた分散曲線については、ノイズや高次モードを消去し、深度方向および測線方向にスムージングを行う。
【0073】
次に、初期モデルの構築を行う(ステップS104)。
上記の手順で編集した分散曲線をもとにして、S波速度構造を計算する。求まったS波速度分布をプロットしたものを暫定解析断面とする。
【0074】
次に、N値を用いたインバージョン(ステップS105)を行う。
スウェーデン式サウンディング試験により得られた換算N値データと、その地点での表面波探査結果によるS波速度との相関関係(Vs = b・Na)を求める。この相関関係を測線方向に補間し、インバージョンを行う。求まったS波速度分布をプロットしたものを最終解析断面図とする。
【0075】
[3次元探査装置における処理手順についての説明]
図1および図2において、本発明の3次元探査装置による3次元探査方法の概要について説明し、図7および図8において、CMP重合と受振ラインについて説明したが、ここで、本発明の3次元探査装置におけるデータ処理の方法と手順について説明する。
【0076】
図11は、本発明の3次元探査装置おけるデータ処理手順を示す図である。以下、図11を参照して、その処理手順について説明する。
【0077】
最初に、データ収録装置11で収集した受振データのフォーマット変換(Format Conversion)を行う(ステップS201)。
現場取得データはSEG−2形式で収録されるので、これを以降の処理のためにソフトウェア専用の標準フォーマットに変換する。
【0078】
次に、ジオメトリ(Geometry)を作成する(ステップS202)。発震ごとに得られた波形データをCMP波形データに編集し、CMPギャザ―を作成する。この操作による情報は、各トレースのヘッダ部に記録され、後のデータ処理で参照される。
【0079】
次に、トレースエディット(Trace Edit)を行う(ステップS203)。
全ての発震記録の表示を行い、以降の処理に悪影響を及ぼすと思われる不良トレースの削除を行う。
【0080】
初動のミュート(Mute)を行う(ステップS204)。
トレースの最初に現れる直接波の切り取り(ミュート)を行う。とくに発震点に近い受振器のトレースに記録される直接波は、生データの中でも振幅が最大になるため、後述の振幅補償等に悪影響を及ぼす場合があるので、ミュート操作は重要なステップとなる。
【0081】
帯域通過フィルター(Band Pass Filter)の操作を施す(ステップS205)。
データ中から有意な高周波数成分を取り出すとともに、ノイズ除去のため低周波数成分を除去することを目的として、全トレースに対して帯域通過フィルター操作を施す。ローカット(Low Cut)、ローパス(Low Pass)、ハイパス(High Pass)、ハイカット(High Cut)の周波数は、データ処理全体の中で適切なものが選択される。例えば、それぞれ15Hz、20Hz、70Hz、80Hzを用いる。
【0082】
振幅補償(Amplitude Recovery)行う(ステップS206)。
震源から放出される弾性波は、種々の原因(幾何学的発散効果、多重反射効果、非弾性逸散等)により振幅が減少する。これらの効果を補償し、記録振幅の一様性(定常性)を回復するため、振幅補償を適用する。振幅補償にはいくつかの手法があるが、例えば、トレースデータからゲイン関数を求めるAGC(Automatic Gain Control)を用いる。
【0083】
速度解析(Velocity Analysis)行う(ステップS207)。速度解析は、まず概略の速度で重合を行い、全体の概要を把握した後、測線方向にほぼ一定間隔(例えば、12.5m)でCMPギャザーを選んで重合速度を決定する。
【0084】
NMO補正およびミュート(Normal Movement Correction、Mute)行う(ステップS208およびS209)。
速度解析によって求めた重合速度を用いNMO補正を行う(ステップS208)。同時に過伸長波形に対してミュートを施す(ステップS209)。速度解析(ステップS207)からNMO補正・ミュート(ステップS209)までは、繰り返しにより最も適切な断面を解析するステップであり、CMP重合法の心臓部分に相当する。
【0085】
CMP重合 (CMP Stack)を行う(ステップS210)。
ビンごとにCMPアンサンブルのトレースを重合する。重合後の振幅は重合トレース数の平方根で除すこと等により、規格化を図る。この段階で速度解析断面が得られる。
【0086】
振幅調整(Trace Balancing)行う(ステップS211)。AGCによる振幅調整を行う。例えば、回折波の影響が強い場合には、マイグレーションも施す(ステップS212)。この段階で時間断面図が得られる。
【0087】
深度変換(Depth Conversion)行う(ステップS213)。
重合速度から概算される変換速度を用いて深度変換を施し、時間断面図を深度断面図に変換する。なお、変換速度は一般に重合速度の8割程度といわれている。
【0088】
3次元可視化解析行う(ステップS214)。
3次元探査結果を解釈するとともに分かり易く表示するために、3次元可視化解析を行う。このステップでは、3次元可視化解析専用ソフトウェアとして、例えば、Landmark社製Seis Vision(登録商標)およびCRCソリューションズ社製e-GeoVR(登録商標)を用いる。この結果から、透過法解析図等の最終的な解析成果が得られる。
【0089】
なお、3次元解析結果を可視化する射影方式として、正射影と投視射影とがある。正射影は、視点を無限遠に置いて対象物を眺めるもので、視線はすべて平行になり対象物各部位の寸法目盛は等分になる。一方、投視射影は、人が見たイメージを再現するために視点を有限内に置くので、近くのものは大きく、遠くのものは小さく見え、遠近感を表現することができる。3次元探査方法の解析結果では、3次元といっても奥行き(堤防横断方向の解析幅)が小さいため、正射影では立体感が出ないので、投視射影の方を適用するほうがよい。
【0090】
データ処理・解析結果により得られた3次元可視化解析図のうち、投視射影による透過法解析図の例を図14に示す。透過法解析とは、振幅値がある一定値よりも小さい波形を切り落とし、その背後が透けて見えるような透過処理手法のことであり、図14では正の振幅のみを対象としている。なお図14では、視点の位置を、測線距離130m付近で左岸側堤防天端よりやや上方に置いている。
【0091】
以上説明したように、本発明の3次元探査装置および3次元探査方法においては、従来の3次元探査方法に比べて作業効率を向上することができ、また、解析精度も従来の3次元探査方法と比較して同等以上のものとなる。
【0092】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の3次元探査装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0093】
本実施の形態において、ベルト型受振器群13は、受振器ユニット30を複数備えた牽引ベルト20が4本で、その際のS波発震点が3点の例を示した。この例は、実用において効果的であるが、これに限定されるものではない。例えば、牽引ベルト20が4本より多く、S波発震点を牽引ベルト20の数とCMP重合との関係で適切な個数・位置を定めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、3次S波反射法探査において、探査精度を同等以上に保持しながら、作業コストの削減を図ることができるので、本発明は、S波を用いた3次元探査方法、S波発震装置、および3次元探査装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明によるS波を用いた3次元探査装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の3次元探査装置による測定方法の概念説明図である。
【図3】本発明によるS波発震装置の構成例を示す図である。
【図4】エアノッカーの空圧制御系の構成例を示す図である。
【図5】3次元並列探査の比較例を示す図である。
【図6】従来の[2×5型]のCMP重合の説明図である。
【図7】[4×3型]のCMP重合の説明図である。
【図8】[4×3´型]のCMP重合の説明図である。
【図9】表面探査測定法の概念を説明するための図である。
【図10】表面探査法におけるデータ処理手順を示す図である。
【図11】本発明の3次元探査装置おけるデータ処理手順を示す図である。
【図12】受振波形の比較図である。
【図13】展開移動間隔による解析断面の変化の例を示す図である。
【図14】3次元探査装置により得られた透過法解析図の例を示す図である。
【図15】CMP重合の原理説明図である。
【図16】従来の3次元S波反射法探査の例を示す図である。
【図17】堤防上で従来の3次元S波探査を行っている様子を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
10 観測車
11 データ収録装置
12 信号ケーブル
13 ベルト型受振器群
20 牽引ベルト
21 牽引ワイヤー
30 受振器ユニット
40 小型バックホー
100 S波発震装置
101a、101b エアノッカー
102 エアノッカー固定金具
103 発震板
104a、104b 打撃板
105 打撃板固定金具
106 硬質ゴムマット
110 電磁弁スイッチ
110a 電磁弁
111 シリンダー
112 ピストン
113 コック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の堤防上にS波の振動を受振する受振器を配置し、前記堤防上でS波による振動を発震し、前記受振器によりS波を受振して堤防の内部の状況を診断するS波を用いた3次元探査方法であって、
S波の振動を検出する受振器が所定の間隔で配置された牽引ベルトを、同じ間隔を保って4本平行に堤防上に配置し、堤防上に受振器の受振ラインを4本平行に配置する手順と、
前記4本の受振ラインの内側の2本の受振ライン間の真ん中を通り受振ラインに平行な線の延長線上にありかつ前記受振ラインから所定の距離離れた1点と、前記4本の受振器の受振ラインの外側の2本の受振ラインの延長線上にありかつ前記受振ラインから所定の距離離れた2点とで、S波による振動を順次に発震する手順と、
前記S波の地中からの反射波を前記受振器により受振し、該反射波の受振データを収録し解析する手順と
を含むことを特徴とするS波を用いた3次元探査方法。
【請求項2】
前記4本の牽引ベルトの配置間隔を略α[m]とし、前記牽引ベルト上での受振器の配置間隔を略α[m]とし、各受振器を格子状に配置し、前記牽引ベルトの測線方向への展開移動距離を略2α[m]とする手順を
含むことを特徴とする請求項1に記載のS波を用いた3次元探査方法。
【請求項3】
表面波探査により概略的な探査を行ない、精密探査が必要な領域を特定する第1の手順と、
前記特定された領域についてS波を用いた3次元探査を行う第2の手順と
を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のS波を用いた3次元探査方法。
【請求項4】
前記S波による振動を地表面で発震する際に、
ピストンにより衝撃を与える2つのエアノッカーと、前記2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から逆向きで対称な衝撃力を受け取りS波の振動を地表面に伝達する発震板とを備えたS波発震装置を使用する手順を
含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のS波を用いた3次元探査方法。
【請求項5】
水平面に対して所定の角度をなすように左右に対向して配置され、エア圧の供給によりピストを押し出して衝撃を与える2つのエアノッカーと、
地表面上に水平に配置され、前記2つのエアノッカーにより左右斜め上の2方向から逆向きで対称な衝撃力を受け取り、S波の振動を地表面に伝達する発震板と、
前記発震板の横滑りを抑制するために前記発震板の底面に設けられたゴムマットと
を備えることを特徴とするS波発震装置。
【請求項6】
前記エアノッカーへ供給する圧縮空気の流れを制御する電磁弁スイッチであって、前記エアノッカーからの排気の開放速度を調節して、ピストンの戻り速度を調整する機能を有する電磁弁スイッチを
備えることを特徴とする請求項5に記載のS波発震装置。
【請求項7】
河川の堤防上にS波の振動を受振する受振器を配置し、前記堤防上でS波による振動を発震し、前記受振器によりS波を受振して堤防の内部の状況を診断するS波を用いた3次元探査装置であって、
S波の振動を検出する受振器が略α[m]の間隔で配置された牽引ベルトを、略α[m]の間隔を保って4本平行に配置し、受振器を格子状に配置したベルト型受振器群と、
ピストンにより衝撃を与える2つのエアノッカーと、前記2つのエアノッカーにより、左右斜め上の2方向から逆向きで対称な衝撃力を受け取りS波の振動を地表面に伝達する発震板とを有するS波発震装置と、
前記受振器により受振した地中からのS波の反射波の受振データを収録するデータ収録装置と、
前記ベルト型受振器群を測線方向に牽引する牽引装置と
を備えることを特徴とするS波を用いた3次元探査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−17584(P2006−17584A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195774(P2004−195774)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(591137259)株式会社キンキ地質センター (3)
【出願人】(500457069)
【出願人】(504255445)