説明

SOIウェーハの製造方法及びSOIウェーハ

【課題】高電圧用途に適応できる例えば1μm以上の厚いシリコン酸化膜(BOX層)を持ったSOIウェーハの製造方法及びSOIウェーハを提供する。
【解決手段】少なくとも、第1のシリコン基板上に1μm以上の厚さのCVD酸化膜を形成する工程と、前記第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを、前記CVD酸化膜を介して貼り合わせる工程とを具備し、前記CVD酸化膜形成工程後、前記貼り合わせ工程の前後の少なくとも一方で、1100℃〜1300℃のアニールを行うアニール工程を有することを特徴とするSOIウェーハの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOIウェーハの製造方法とその方法によって製造されたSOIウェーハに係り、更に詳しくは、絶縁物上の単結晶半導体層に作製される電子デバイス、集積回路に適するSOIウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁物上の単結晶Si半導体層の形成は、シリコン・オン・インシュレーター(SOI)技術として広く知られ、通常のSi集積回路を作製するシリコン単結晶基板では到達しえない数々の優位点があることから、多くの研究が成されてきた。すなわち、SOI技術を利用することで、
1.誘電体分離が容易で高集積化が可能、2.対放射線耐性に優れている、3.浮遊容量が低減され高速化が可能、4.ウエル工程が省略できる、5.ラッチアップを防止できる、6.薄膜化による完全空乏型電界効果トランジスタが可能、
等の優位点が得られる。
【0003】
このようなデバイス特性上の多くの利点を実現するために、ここ数十年に渡り、SOI構造の形成方法について数多くの研究がなされてきている。
また近年の環境問題、省エネルギーに対応した半導体素子が数多く開発されているが、この用途では高電圧を扱う必要があり、そのため厚い素子分離膜(埋め込み酸化膜(BOX層))をもつSOIウェーハの要求が非常に強くなってきている。
【0004】
古くは、単結晶サファイア基板上に、シリコンをCVD(化学気相法)でヘテロエピタキシーさせて形成するSOS(シリコン・オン・サファイア)が知られており、最も成熟したSOI技術として一応の成功を収めはした。
しかし、シリコン層と下地サファイア基板界面の格子不整合による大量の結晶欠陥、サファイア基板からのアルミニウムのシリコン層への混入、そして何よりも基板の高価格と大面積化への遅れにより、その応用の広がりが妨げられている。
【0005】
比較的近年には、サファイア基板を使用しないSOI構造が実現されている。
例えば、V型の溝が表面に異方性エッチングされたシリコン単結晶基板に酸化膜を形成し、該酸化膜上に多結晶シリコン層をシリコン単結晶基板と同じ程度厚く堆積させた後、シリコン単結晶基板を裏面から研磨して、厚い多結晶シリコン層上にV溝に囲まれて誘電分離されたシリコン単結晶領域を形成する方法がある。
この方法によれば、結晶性は良好なSOI構造とできるが、多結晶シリコンを数百μmも厚く堆積する工程、シリコン単結晶基板を裏面より研磨して分離したシリコン活性層のみを残す工程に制御性と生産性の問題があり、またデバイス工程よりも前の基板作製時にV溝を作製するため、その上に作製される素子設計に自由度がないという問題点がある。
【0006】
そして、サイモックス(SIMOX:Seperation by ion implanted oxygen)と称される、シリコン単結晶基板中に酸素イオン注入によりSiO層を形成する方法は、シリコンプロセスと整合性は良い。しかしSiO層を形成するためには、酸素イオンを1018ions/cm以上も注入する必要があり、その注入時間は極めて長く、生産性が高いとはいえない。また、ウエハコストが高く、更には、結晶欠陥が多く残存するので、工業的に見て少数キャリアデバイスを作製できる程度に充分な品質を達成できない。そして、イオン注入によって分離酸化膜を形成するために、高電圧用途に要求される厚い分離酸化膜を形成することが実質上不可能であるという問題点がある。
【0007】
また、上記のようなSOIウェーハの製造方法とは別に、多孔質シリコン上に単結晶シリコンを形成して、その上に酸化膜付シリコン基板を貼り合わせ、多孔質層から分離するELTRAN基板がある(例えば特許文献1等参照)。
更に、熱酸化膜を形成したシリコン基板に、もうひとつのシリコン基板を貼り合わせ、研磨によって薄膜化する方法、選択エッチングによって薄膜化する方法、イオン注入によりダメージ層を作製しておき、貼り合わせ後にダメージ層で分離して薄膜化する方法(スマートカット法(登録商標))がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許2608351号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.E.Deal et. al., J.Appl. Phys.,36, 3770 (1965)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、SOIウェーハの作製方法は数多く知られているが、分離酸化膜(BOX層)はSIMOXを除いて熱酸化膜であり、高電圧用途で使用されるような厚い分離酸化膜の形成には限界がある。何故なら熱酸化膜の厚さは酸化時間の1/2乗に比例するため、実用的には1μm程度が限界である。そして前述のようにSIMOXはイオン注入により分離酸化膜を形成する方法のため、厚い酸化膜の形成には不適である。
【0011】
ここで、実際に熱酸化膜単膜で厚さを変えてどのくらいの電圧まで破壊されないかを調べた。その結果(絶縁破壊耐圧)を図4に示す。横軸が酸化膜厚、縦軸が絶縁破壊電圧値(Vbd)である。
この図4から判るように、酸化膜厚が1μmであれば、絶縁破壊電圧値は900Vである。また、もっと大きな絶縁破壊電圧値、例えば約5000Vであれば、10μmという厚い酸化膜が最低でも要求されることになる。
【0012】
ところで、今後は電気自動車等のように高い電圧を扱うデバイスが増えてくることが予想され、電圧もますます大きくなってくることが考えられる。そのため、それに伴い酸化膜厚が数μm以上に厚くする要求が増えてくると考えられる。
しかしながら実際の酸化工程を考慮すると、酸化膜厚が酸化時間の1/2乗に比例することを考えると通常の熱処理炉では1μm程度が限界である。そして、これ以上は高温炉の中にシリコン基板をかなりの長時間の間投入しておくしかなく、生産性等を考慮すると問題が多い。例えば、1150℃でパイロ酸化を行う場合、10μmまで成長させるには2000分以上必要となる(例えば非特許文献1等参照)。
【0013】
また、高電圧にも耐えられるSOIウェーハを作製することは、分離のための酸化膜の絶縁破壊耐圧を向上させることが必須である。そこでシリコン酸化膜に変わる誘電率をもつ材料を採用することも考えられるが、シリコンプロセスとの適合性等を考慮すると厚いシリコン酸化膜を採用することが最も適した方法である。
しかし先ほど述べたように、厚い酸化膜を熱酸化法で形成するには長時間が必要であり、生産性の問題がある。そして、厚い熱酸化膜を成長させるには高温の熱処理が必要であり、シリコン基板への熱的ダメージ(スリップなど)、不純物汚染等も発生しやすくなる。このため、その後に作製されるデバイス性能への影響も懸念されるなど問題も多く、熱酸化法で厚い酸化膜を形成する方法を採用するのは困難である。
【0014】
そこで熱酸化膜に変えて、CVD酸化膜を使うことが考えられるが、図4に示したようにCVD酸化膜は熱酸化膜と比べて絶縁耐圧が悪く、またHFエッチングレートも熱酸化膜より大きい。そして、熱酸化膜とは構造的にも異なり、また性質上、分離酸化膜の形成には適していない。
ところで特開平9−205140号公報や特開2007−27557号公報には、分離構造として、V溝を使ったトレンチを使い、これをCVD酸化膜で埋める技術が公開されている。しかしこれらの技術は、いずれも縦方向の分離である。しかも、特開平9−205140号公報に記載の技術において、トレンチ構造を採用する場合は、SOIウェーハを利用することが前提であり、BOX層としての使用はしていない。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、高電圧用途に適応できる例えば1μm以上と非常に厚いシリコン酸化膜(BOX層)を持ったSOIウェーハの製造方法及びSOIウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明では、少なくとも、第1のシリコン基板上に1μm以上の厚さのCVD酸化膜を形成する工程と、前記第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを、前記CVD酸化膜を介して貼り合わせる工程とを具備し、前記CVD酸化膜形成工程後、前記貼り合わせ工程の前後の少なくとも一方で、1100℃〜1300℃のアニールを行うアニール工程を有することを特徴とするSOIウェーハの製造方法を提供する。
【0017】
このように、熱酸化膜の代わりにCVD酸化膜を形成することによって、その厚さが1μm以上、例えば10μm以上と厚い酸化膜であっても容易に形成することができる。また、CVD酸化膜の形成後に1100℃〜1300℃のアニールを行うことによって、CVD酸化膜を改質することができ、熱酸化膜と同等の品質を持った酸化膜とすることができる。
そしてこのような非常に厚く、熱酸化膜と同等の品質のCVD酸化膜を介して第1のシリコン基板と第2のシリコン基板を貼り合わせることによって、高品質かつ高絶縁性の高電圧用途に好適なBOX層の厚さが例えば1μm以上、好ましくは2μm以上と厚いSOIウェーハを容易かつ高歩留りで製造することができる。
【0018】
ここで、前記CVD酸化膜を形成する工程では、予め前記第1のシリコン基板の表面に熱酸化膜を形成しておくことが好ましい。
予め第1のシリコン基板の表面に熱酸化膜を形成し、その後にCVD酸化膜をデポジッションすることによって、第1のシリコン基板と酸化膜との界面に緻密で高品質の熱酸化膜が形成されたものとなり、作製したSOIウェーハの界面準位密度を低くでき、また絶縁破壊強度を改善することができる。よって、より高品質なBOX層の厚さが例えば1μm以上、好ましくは2μm以上と厚いSOIウェーハを製造することができる。
【0019】
また、前記熱酸化膜は、厚さを5nm以上100nm以下とすることが好ましい。
予め形成する熱酸化膜が5nmよりも薄いと、熱酸化膜は単体として直接トンネル電流が流れやすくなり、5nm以上の厚さの酸化膜と電気的特性が異なってしまうことや、酸化膜厚均一性などに問題がないわけではない。そこで熱酸化膜の厚さを5nm以上とすることがよい。また、100nm以下とすることによって、この熱酸化膜の形成時間が長時間になることを防ぐことができるため、生産効率が低下することもなく、好適である。
【0020】
そして、前記熱酸化膜を形成する温度を、700℃以上1000℃以下とすることが好ましい。
このように、熱酸化膜を形成する温度を700℃以上1000℃以下とすることによって、例えば5−100nmの薄くて高品質の熱酸化膜を再現性良く形成することができ、高品質厚膜BOX層のSOIウェーハを更に効率的に製造することができる。
【0021】
更に、前記アニール工程は、前記貼り合わせ工程の前だけで行うことが好ましい。
このように、貼り合わせ工程の前のみにアニール工程を行うことによって、予めアニール処理によって改質したCVD酸化膜を介して第1のシリコン基板と第2のシリコン基板を貼り合わせることができ、貼り合わせ界面が安定した、より高品質のSOIウェーハを製造することができる。
【0022】
また、前記アニール工程は、Ar雰囲気下で、20〜80分間行うことが好ましい。
このように、アニール工程として、Ar雰囲気下で20〜80分間のアニール処理を行うことによって、CVD酸化膜をより高品質に改質することができ、更に高品質なSOIウェーハを製造することができる。
【0023】
そして、前記貼り合わせ工程の後、前記第1のシリコン基板または前記第2のシリコン基板を、研磨によって薄膜化することができる。
このように、研磨によって第1のシリコン基板または第2のシリコン基板の薄膜化を行うことによって、厚膜のSOI層およびBOX層を有するSOIウェーハを容易に製造することができる。
【0024】
更に、前記貼り合わせ工程の前に、前記第2のシリコン基板に多孔質層を形成し、前記貼り合わせ工程の後、前記第2のシリコン基板を前記多孔質層で剥離して薄膜化することができる。
このように、第2のシリコン基板に多孔質層を形成し、第2のシリコン基板を多孔質層で剥離して薄膜化することによって、SOI層の膜厚が均一で、かつ結晶性の高いSOIウェーハを得ることができる。
【0025】
また、前記貼り合わせ工程の前に、前記第2のシリコン基板の表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してイオン注入層を形成し、前記貼り合わせ工程の後、前記第2のシリコン基板を前記イオン注入層で剥離して薄膜化することができる。
このような、所謂イオン注入剥離法によって第2のシリコン基板の薄膜化を行うことで、薄膜化するSOI層の膜厚を均一なものとすることができ、また剥離面の表面粗さを低いものとすることができ、よって高い平坦性を有したSOIウェーハを得ることができる。
【0026】
そして、前記薄膜化後の第2のシリコン基板上に、シリコン単結晶膜をエピタキシャル成長させることが好ましい。
このように、薄膜化後の第2のシリコン基板上に、シリコン単結晶膜をエピタキシャル成長させることによって、例えば1μm以上、好ましくは2μm以上の厚さの厚いBOX層と厚くて均一なSOI層を有するSOIウェーハを容易に製造することができる。
【0027】
また、本発明では、本発明に記載のSOIウェーハの製造方法で作製されたものであることを特徴とするSOIウェーハを提供する。
上述のように、本発明のSOIウェーハの製造方法によれば、CVD法で作製された厚く高品質なBOX層を有するSOIウェーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、従来作製することが非常に困難であった高い絶縁性を維持した厚い(例えば1μm以上、好ましくは2μm以上)BOX膜を備えた高品質SOIウェーハが安価で容易に作製可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のSOIウェーハの製造方法の一例を示した工程フローである。
【図2】本発明のSOIウェーハの製造方法の他の一例を示した工程フローである。
【図3】本発明のSOIウェーハの製造方法のその他の一例を示した工程フローである。
【図4】様々な酸化膜の、酸化膜厚と絶縁破壊電圧の関係を示したグラフである。
【図5】様々な酸化膜の、屈折率や膜厚の関係を示したグラフである。
【図6】CVD酸化膜のアニール温度と破壊電界強度の関係を示したグラフである。
【図7】CVD酸化膜のアニール温度と2%HFに対するエッチング速度の関係を示したグラフである。
【図8】膜厚1μmのCVD酸化膜を1200℃でアニールした時のアニール時間と絶縁破壊電界強度の関係を示したグラフである。
【図9】様々な酸化膜の、酸化膜形成方法と界面準位密度との関係を示したグラフである。
【図10】様々な酸化膜の、酸化膜形成方法と絶縁破壊強度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、高電圧用途に適応できる数μm以上の厚いシリコン酸化膜(BOX層)を持ったSOIウェーハの製造方法及びSOIウェーハの開発が待たれていた。
【0031】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、シリコン基板上に厚膜堆積に適したCVD法によって酸化膜を1μm以上厚く堆積させ、そしてそのCVD酸化膜を有するシリコン基板に高温アニールを行うことによってCVD酸化膜を改質させ、熱酸化膜と同等の品質のBOX層として用いることを発想した。
【0032】
そして、そのアニールの条件について更に鋭意検討を重ねた。
そこで、高温アニールの温度を変えてアニール処理されたCVD酸化膜や処理前のCVD酸化膜、熱酸化膜の絶縁破壊電圧や光学定数、HFエッチングレートを比較し、最適なアニール条件について更なる検討を行った。
【0033】
まず、酸化膜の形成条件やアニール温度と、膜厚や光学定数(ここでは屈折率)を評価した。その結果を図5に示す。
図5に示す様に、CVD酸化膜をアニールすると、アニール温度が高くなるほど膜厚が薄くなる傾向になった。これに対し、屈折率はアニール温度が高くなるほど熱酸化膜に近づいていった。
【0034】
また、酸化膜の形成条件やアニール温度と、絶縁破壊に至る電圧との関係を評価するために、絶縁破壊電界強度を評価した。その結果を図6に示す。
図6に示す様に、アニール温度が高くなればなるほど、絶縁破壊に至る電界の強さは強くなり、熱酸化膜に近くなっていった。
【0035】
更に、酸化膜の形成条件やアニール温度と、HFに対するエッチングレートとの関係を評価した。その結果を図7に示す。
図7に示す様に、アニール温度にさほど関係なく、CVD酸化膜をアニールすることで熱酸化膜と略同等のエッチングレートとなることが判った。
【0036】
従って、アニール温度が高くなるほど、酸化膜の光学定数、破壊電圧、HFエッチングレートの特性が熱酸化膜に近づき、これはCVD酸化膜が熱酸化膜に対して膜密度が小さく、膜中に有機不純物等を含んでいるためと考えられる。
そしてCVD酸化膜をアニールすることで、CVD膜の形成中に生じた有機不純物をアニールアウトすることができ、膜質が改善し、性質が熱酸化膜に近づくものと考えられる。
【0037】
また、CVD酸化膜や1200℃アニールCVD酸化膜の膜厚と絶縁破壊電圧の関係も評価した。その結果を図4に示す。
図4に示す様にアニール前のCVD酸化膜は熱酸化膜には絶縁破壊電圧は及ばない。しかしアニールしたCVD酸化膜は熱酸化膜とほぼ互角で、非常に良好な絶縁破壊電圧であることが判った。
【0038】
更に、様々な酸化膜の、酸化膜の形成方法と、界面準位密度及び絶縁破壊強度との関係について検討を行った。その詳細について以下説明する。
まず以下に示す様な7種類のシリコン基板を準備した。
サンプルA:熱酸化膜のみ(リファレンス)、
サンプルB:熱酸化膜+CVD酸化膜、
サンプルC:熱酸化膜+CVD酸化膜+1000℃アニール、
サンプルD:熱酸化膜+CVD酸化膜+1200℃アニール、
サンプルE:CVD酸化膜のみ、
サンプルF:CVD酸化膜+1000℃アニール、
サンプルG:CVD酸化膜+1200℃アニール、
尚、サンプルB〜Gのシリコン基板に形成した酸化膜は、熱酸化膜は厚さ10nm(形成温度700℃、パイロジェニック酸化)、CVD酸化膜の厚さは1μmとした。またサンプルAのリファレンスの熱酸化膜の厚さは1μm(1100℃、パイロジェニック酸化)とした。
【0039】
そして準備したサンプルA−Gの7種類のシリコン基板の界面準位密度、絶縁破壊強度を評価した。界面準位密度の評価結果を図9に、絶縁破壊強度の評価結果を図10にそれぞれ示す。
【0040】
図9に示すように、熱酸化膜+CVD酸化膜+1200℃アニールを行ったサンプルDの場合、リファレンスであるサンプルA(熱酸化膜のみ)と同等の界面準位を持っていることが判った。また、薄い熱酸化膜が形成されていなくても、高温アニール(1200℃)が行われた(サンプルG)ことによって、1000℃アニール(サンプルC,F)に比べて界面準位密度を改善できることが判った。
【0041】
また、図10に示すように、絶縁破壊特性についても、熱酸化膜+CVD酸化膜+1200℃アニールを行ったサンプルDの場合、サンプルA(熱酸化膜のみ)と同等の絶縁破壊強度であることが判った。また、1200℃のアニールを行ったサンプルGも、熱酸化膜が形成されたサンプルDや熱酸化のみにサンプルAには及ばないものの、1000℃アニール(サンプルC,F)のシリコン基板に比べて、十分な破壊絶縁強度を有していることが判った。
【0042】
以上の結果から、アニール温度が1100℃以上であれば、破壊電界強度は熱酸化膜に完全には追いつかないものの、エッチングレートは熱酸化膜と略同等の数値になるため、アニール温度の下限は1100℃がよいことが判った。
また、温度を高くするほど熱酸化膜の特性に近くなるが、1300℃より高温のアニールを行うには、設備的にも対応が難しくなってしまい、またシリコン基板の熱的ダメージや不純物汚染が大きくなって問題があるため、上限は1300℃がよいことが判った。
そして、CVD酸化膜を形成する前に、予め熱酸化膜を形成することによって、より高品質のBOX層となる酸化膜が得られることが判った。
【0043】
すなわち、好適には予め熱酸化膜を形成した後に、CVD酸化膜形成後の高温アニールの温度の温度範囲を1100℃〜1300℃とすることによって、熱酸化膜と同等の品質で厚い酸化膜が得られ、この酸化膜をBOX層として利用することによって、高電圧用途に好適な例えば1μm以上の厚いシリコン酸化膜を有し、欠陥や金属不純物等の問題が少ない高品質SOIウェーハを容易に製造できることを知見し、本発明を完成させた。
【0044】
以下、本発明について図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明のSOIウェーハの製造方法の一例を示した工程フローである。
【0045】
まず、図1の工程(a)に示す様に、第1のシリコン基板1と、第2のシリコン基板2を準備する。
この時準備するシリコン基板は、一般的に用いられているものであれば良く、例えばCZ法で育成したシリコン単結晶棒からスライスして作製したものを用いればよい。またその導電型や抵抗率などの電気特性値や結晶方位、結晶径等は、製造したSOIウェーハに作製される素子に適したものとなるように適宜選択することができる。
【0046】
ここで、この図1の工程(a)のCVD酸化膜を形成する工程では、予め第1のシリコン基板1の表面に、熱酸化膜を形成しておくことができる。
このようにCVD酸化膜を形成する前に予め熱酸化膜を形成しておくことによって、熱酸化膜の上にCVD酸化膜が形成され、第1のシリコン基板と酸化膜との界面には高品質な熱酸化膜がくることになり、作製したSOIウェーハは、界面準位密度がより低く、また絶縁破壊強度がより改善されることになる。そして後のアニール工程によってCVD酸化膜を改質するので、より高品質な厚膜BOX層を有するSOIウェーハを高歩留りで製造することができるようになる。
【0047】
また、この工程(a)において予め形成しておく熱酸化膜は、厚さを5nm以上100nm以下とすることができる。
第1のシリコン基板に予め形成する酸化膜の厚さを5nm以上とすることによって、電気特性や膜厚均一性に優れた酸化膜となり、更に高品質BOX層のSOIウェーハを得ることができる。また厚さを100nm以下とすることによって、熱酸化膜の形成に必要以上の時間がかかることを防止でき、高い生産性で高品質SOIウェーハを製造することができる。
【0048】
そして、この工程(a)において予め形成する熱酸化膜を、形成温度を700℃以上1000℃以下とすることができる。
このように、熱酸化膜を形成する温度を700℃以上1000℃以下とすることによって、電気特性や膜厚均一性、生産性に優れた例えば膜厚5−100nm程度の高品質な熱酸化膜を効率よく第1のシリコン基板上に形成することができ、高品質厚膜BOX層のSOIウェーハが更に効率的に得られる。
【0049】
次に、図1の工程(b)に示す様に、第1のシリコン基板1又は予め熱酸化膜が形成された第1のシリコン基板上に、厚さ1μm以上の酸化膜をCVD法によって堆積させ、CVD酸化膜3を形成する。
このCVD酸化膜の形成方法であるが、熱分解であっても、プラズマ成長であっても良
いが、生産性を考慮するとバッチ処理が可能な熱分解CVD法が最も好適である。
尚、CVD酸化膜は、堆積直後と比べてアニール後には膜厚が減少するために、あらかじめ減少分を見込んで厚めにCVD法で堆積させることが望ましい。
【0050】
そして、図1の工程(c)に示す様に、CVD酸化膜3形成後の第1のシリコン基板1に対し、1100℃〜1300℃のアニールを行う。
尚、上述のように、アニール温度が1100℃未満の場合、作製した酸化膜の絶縁破壊強度が低く、HFに対するエッチングレートが高く、CVD酸化膜とさほど変わらない水準となるため、アニール温度の下限は1100℃とする。また1300℃超となると、シリコン基板へのダメージ(スリップの発生や、アニール炉からの金属不純物の汚染)の影響が大きく、また設備負担が大きく非経済的であるため、上限は1300℃とする。
【0051】
その後、図1の工程(d)に示す様に、第1のシリコン基板1と第2のシリコン基板2とを、CVD酸化膜3を介して貼り合わせ、貼り合わせたウェーハ4とする。
【0052】
更に、図1の工程(e)に示す様に、貼り合わせたウェーハ4に対して、1100℃〜1300℃のアニールを行う。
尚、アニール工程(c)、(e)は、貼り合わせ工程(d)の前後の少なくとも一方で行うものである。従って、工程(c)のアニールのみであってもよいし、工程(e)のみであってもよく、更には工程(c)、(e)ともに行ってもよい。
【0053】
ここで、上述のように、この工程(e)のアニール処理は省略することができ、この場合、工程(c)のアニール処理のみを行うものとなる。
これによって、貼り合わせ前に、BOX層となるCVD酸化膜の膜質を改善することができ、貼り合わせ界面の結合状態を良好なものとすることができる。またアニールを複数回行う必要がなく、工程数を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0054】
尚、このアニール工程(c)、(e)は、Ar雰囲気下で、20〜80分間行うものとすることができる。アニール処理を工程(c)、(e)の一方のみを行う場合は、アニール時間を各々で20〜80分とすることが望ましい。また、工程(c)、(e)の両方を行う場合は、その熱処理時間の和が20〜80分となるようにすることが望ましい。
工程(c)、(e)の両方のタイミングで行うことによって、貼り合わせ前のアニールである工程(c)によってCVD酸化膜の膜質を改質し、貼り合わせ後のアニール工程(e)で更なる膜質の改質を図るとともに、2枚のシリコン基板の貼り合わせ強度を強いものとすることができる。
このアニール工程は、より好適には、温度は1150〜1250℃、時間は60分程度がより望ましい。
【0055】
アニール工程をこのような条件で行うことによって、CVD酸化膜の形成中に膜中に生じた有機不純物を膜外へ確実に放出することができ、CVD酸化膜の膜質をより確実に改善することができる。
尚、ここで、CVD酸化膜厚が1μm、アニール温度が1200℃の時のアニール時間と絶縁破壊電圧の関係を図8に示す。図8は膜厚1μmのCVD酸化膜を1200℃でアニールした時のアニール時間と破壊電界強度の関係を示したグラフである。
図8に示す様に、熱処理時間が長くなるほど、絶縁破壊電界強度が強くなり、膜質が改善するが、長時間になるほどスリップの発生や金属不純物汚染などの問題が発生する可能性が高くなるため、アニール時間は、破壊電界強度が高くなり始める20分から、飽和傾向にある80分までとすることがよい。
【0056】
その後、図1の工程(f)に示す様に、貼り合わせ工程の後、第2のシリコン基板2を研磨によって薄膜化することができ、これによって、(第2のシリコン基板を薄膜化した)SOIウェーハ5を得ることができる。または第1のシリコン基板1を研磨によって薄膜化することができ、(第1のシリコン基板を薄膜化した)SOIウェーハ6を得ることができる。
このように、研磨によって第1のシリコン基板または第2のシリコン基板を薄膜化することによって、SOI層が特に厚いSOIウェーハを安定かつ容易に製造することができる。
尚、薄膜化の方法は研磨に限られず、エッチング等の他の手法であってもよい。
【0057】
このような本発明のSOIウェーハの製造方法によって、熱酸化ではほぼ実現不可能なBOX層の厚さが例えば1μm以上と厚いSOIウェーハであっても、安定かつ容易に製造することができる。またその品質は熱酸化膜とほぼ同品質で非常に高品質であり、特に高電圧用途に好適なSOIウェーハを製造することができる。尚、前述のように、アニール後のBOX層の厚さを1μm以上とするためには、予め形成するCVD酸化膜の厚さを1μmより厚く堆積するようにする。
【0058】
また、本発明のSOIウェーハの製造方法は、上述の図1に示した方法に限られず、図2に示すSOIウェーハの製造方法によっても製造することができる。以下、図2を参照して、本発明のSOIウェーハの製造方法の他の一例について説明する。
【0059】
まず、図2の工程(a’)に示す様に、第1のシリコン基板1と、第2のシリコン基板2’を準備する。
この時準備するシリコン基板は、図1と同様に、SOIウェーハ上に作製される素子に適したものとなるように適宜選択することができる。
また、図1と同様に、予め、例えば厚さ5−100nmの熱酸化膜を、例えば700−1000℃の温度で形成しておくことができる。
【0060】
次に、図2の工程(b’)に示す様に、第1のシリコン基板1上に、厚さ1μm以上の酸化膜をCVD法によって堆積させ、CVD酸化膜3を形成する。
【0061】
そして、図2の工程(c’)に示す様に、CVD酸化膜3形成後の第1のシリコン基板1に対し、1100℃〜1300℃のアニールを行う。
【0062】
尚、本実施形態では、工程(a’)〜(c’)のいずれかの段階で、準備した第2のシリコン基板2’に対して、その表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入して、イオン注入層7の形成を行う。
【0063】
その後、図2の工程(d’)に示す様に、第1のシリコン基板1と第2のシリコン基板2’とを、CVD酸化膜3を介して貼り合わせ、貼り合わせたウェーハ4’とする。
【0064】
その後、図2の工程(f’)に示す様に、貼り合わせ工程の後、第2のシリコン基板2’を、イオン注入層7で剥離することによって薄膜化を行うことができ、SOIウェーハ5’を得ることができる。
【0065】
ここで、図2の工程(f’)の前に、貼り合わせたウェーハ4’に対して、1100℃〜1300℃のアニールを行うことができ、またその条件としてはAr雰囲気下で、20〜80分間行うものとすることができる。この場合、貼り合わせ後のCVD酸化膜の改質熱処理とイオン注入層7での剥離熱処理とを兼ねるものとすることができる。
【0066】
また、図2の工程(f’)の後に、薄膜化後の第2のシリコン基板上に、シリコン単結晶膜をエピタキシャル成長することができ、これによって、SOI層の膜厚が均一で、かつSOI層及びBOX層が厚い厚膜SOIウェーハを得ることができる。
【0067】
この図2に示す様なSOIウェーハの製造方法によって、SOI層の膜厚が均一なBOX層の厚さの厚いSOIウェーハを安定して製造することができる。
【0068】
更に、本発明のSOIウェーハの製造方法は、上述の図1,2に示した方法に限られず、図3に示すSOIウェーハの製造方法によっても製造することができる。以下、図3を参照して、本発明のSOIウェーハの製造方法のその他の一例について説明する。
【0069】
まず、図3の工程(a’’)に示す様に、第1のシリコン基板1と、第2のシリコン基板2’’を準備する。
この時準備するシリコン基板は、図1,2の時と同様に、SOIウェーハ上に作製される素子に適したものとなるように適宜選択することができる。
また、図1,2と同様に、予め、例えば厚さ5−100nmの熱酸化膜を、例えば700−1000℃の温度で形成しておくことができる。
【0070】
次に、図3の工程(b’’)に示す様に、第1のシリコン基板1上に、厚さ1μm以上の酸化膜をCVD法によって堆積させ、CVD酸化膜3を形成する。
【0071】
そして、図3の工程(c’’)に示す様に、CVD酸化膜3形成後の第1のシリコン基板1に対し、1100℃〜1300℃のアニールを行う。
【0072】
尚、本実施形態では、工程(a’’)〜(c’’)のいずれかの段階で、準備した第2のシリコン基板2’’に対して、陽極酸化等の方法によって多孔質層8を形成し、その表面上にエピタキシャル層9を形成する。
【0073】
その後、図3の工程(d’’)に示す様に、第1のシリコン基板1と第2のシリコン基板2’’とを、CVD酸化膜3を介して貼り合わせ、貼り合わせたウェーハ4’’とする。
【0074】
更に、ここで、図3の工程(f’’)の前に、貼り合わせたウェーハ4’’に対して、1100℃〜1300℃のアニールを行うことができ、またその条件としてはAr雰囲気下で、20〜80分間行うものとすることができる。更に、このアニール工程は省略することもできる。
【0075】
その後、図3の工程(f’’)に示す様に、貼り合わせ工程の後、第2のシリコン基板2’’を、多孔質層8で剥離することによって薄膜化を行うことができ、SOIウェーハ5’’を得ることができる。
【0076】
また、図3の工程(g’’)に示すように、薄膜化後の第2のシリコン基板上に、シリコン単結晶膜10をエピタキシャル成長することができ、SOI層の膜厚が均一で、かつSOI層及びBOX層が厚いSOIウェーハを得ることができる。
【0077】
この図3に示す様なSOIウェーハの製造方法によっても、SOI層の膜厚が均一なBOX層の厚さの厚いSOIウェーハを安定して製造することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1,2)
まず第1のシリコン基板として、導電型がN型で直径200mm、抵抗率10Ω・cmのシリコン単結晶ウェーハを3枚準備した。そのうち1枚は、予め700℃、180分のパイロジェニック酸化を行い、その表面に10nmの熱酸化膜が形成されたシリコン単結晶ウェーハ(実施例2)であり、残り2枚は熱酸化膜は形成されていない(実施例1)ものとした。
この第1のシリコン基板3枚をRCA洗浄し、その後、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置に投入して、TEOS(テトラエトキシシラン)を原料ガスとして、750℃/120minの条件で、CVD酸化膜を12μm堆積させた。
そして、CVD酸化膜付きの第1のシリコン基板3枚をアニール炉に入れて、1200℃/1hrs、Arガス雰囲気でアニールした。その後、CVD酸化膜の厚さを測定すると、10μmまで減少していた。
【0079】
また、アニール前後のCVD酸化膜の特性を評価するため、アニールまで行った実施例1,2の第1のシリコン基板の内の1枚に対して、光学定数、絶縁破壊電圧、HFエッチングレートの評価を行った。その特性の変化を以下の表1にまとめて示すが、表1に示す様に、アニールによってCVD酸化膜の膜質を改質できることが確認できた。
【0080】
【表1】

【0081】
その後、第2のシリコン基板(第1のシリコン基板と同規格のシリコン単結晶ウェーハ)を2枚準備した。
そして、CVD酸化膜を介して、実施例1と実施例2の第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを各々貼り合わせた。
その後、第2のシリコン基板を研磨して10μmの厚さまで研磨することでSOIウェーハを製造した。
【0082】
この製造したSOIウェーハのBOX耐圧を測定したところ、実施例1のSOIウェーハでは5200V、実施例2のSOIウェーハでは5400Vであり、実施例1,2ともにSOI構造とする前のアニール後CVD膜と同等の絶縁破壊電圧であり、また熱酸化膜と同レベルであった。
また、実施例2のSOIウェーハのほうが、光学定数・絶縁破壊電圧・界面準位密度が実施例1のSOIウェーハよりも優れており、予め熱酸化膜を形成することによって、より高品質の厚膜SOIウェーハが得られることが判った。
【0083】
(実施例3,4)
実施例1,2において、貼り合わせ前のアニール処理の条件を1200℃/0.5hrsとし、また貼り合わせ後に1200℃/0.5hrs、Arガス雰囲気の条件でアニール処理を行った以外は同様の方法でSOIウェーハを製造(実施例1に対応するのが実施例3、実施例2に対応するのが実施例4)し、同様の評価を行った。
【0084】
【表2】

【0085】
実施例3,4のSOIウェーハのBOX膜特性を測定したところ、表2に示すように、実施例3は実施例1と、実施例4は実施例2とほぼ同程度の評価結果となり、同等の膜質が得られることが判った。
また、実施例1,2と同様に、予め熱酸化膜を形成した実施例4のほうが、実施例3に比べて光学定数・絶縁破壊電圧・界面準位密度が優れており、より高品質の厚膜SOIウェーハであることが判った。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0087】
1…第1のシリコン基板、
2,2’、2’’…第2のシリコン基板、
3…CVD酸化膜、
4,4’,4’’…貼り合わせたウェーハ、
5,5’,5’’…(第2のシリコン基板を薄膜化した)SOIウェーハ、
6…(第1のシリコン基板を薄膜化した)SOIウェーハ、
7…イオン注入層、
8…多孔質層、
9…(多孔質層上の)エピタキシャル層、
10…シリコン単結晶膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
第1のシリコン基板上に1μm以上の厚さのCVD酸化膜を形成する工程と、
前記第1のシリコン基板と第2のシリコン基板とを、前記CVD酸化膜を介して貼り合わせる工程とを具備し、
前記CVD酸化膜形成工程後、前記貼り合わせ工程の前後の少なくとも一方で、1100℃〜1300℃のアニールを行うアニール工程を有することを特徴とするSOIウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記CVD酸化膜を形成する工程では、予め前記第1のシリコン基板の表面に熱酸化膜を形成しておくことを特徴とする請求項1に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記熱酸化膜は、厚さを5nm以上100nm以下とすることを特徴とする請求項2に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記熱酸化膜を形成する温度を、700℃以上1000℃以下とすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記アニール工程は、前記貼り合わせ工程の前だけで行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記アニール工程は、Ar雰囲気下で、20〜80分間行うものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記貼り合わせ工程の後、前記第1のシリコン基板または前記第2のシリコン基板を、研磨によって薄膜化することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記貼り合わせ工程の前に、前記第2のシリコン基板に多孔質層を形成し、前記貼り合わせ工程の後、前記第2のシリコン基板を前記多孔質層で剥離して薄膜化することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項9】
前記貼り合わせ工程の前に、前記第2のシリコン基板の表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一種類のガスイオンをイオン注入してイオン注入層を形成し、前記貼り合わせ工程の後、前記第2のシリコン基板を前記イオン注入層で剥離して薄膜化することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項10】
前記薄膜化後の第2のシリコン基板上に、シリコン単結晶膜をエピタキシャル成長することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法で作製されたものであることを特徴とするSOIウェーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−29594(P2011−29594A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91210(P2010−91210)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【出願人】(591037498)長野電子工業株式会社 (51)