説明

SZスロットケーブルの製造装置

【目的】 スペーサ自体、あるいはその送り出しの過程でねじりがあっても支障なくSZスロットケーブルが製造できる。
【構成】 スペーサ1を送り出す送出ボビン3、各分線孔41に中空の案内導入チューブ42の一端が固着された分線板4、案内導入チューブ42の自由端をスペーサ1の各スロット1A内に収納包囲するように設けられる円環状の集合ダイス5を有するSZスロットケーブルの製造装置において、送出ボビン3は送り出されるスペーサ1の軸線の周りに回転駆動できるように設けられ、かつ送出ボビン3と分線板4の間にスロット1Aに係合する検知爪81を備えたスペーサのねじれ検知装置8が設けられることを特徴とする装置である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はSZスロットケーブルの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】SZスロットケーブルというのは、図1に示すように外周部に穿設されている複数本のつるまき線状のスロット1Aが1ないし1.5ピッチ程度の適宜大きさのピッチごとに巻き方向がS巻き,Z巻きに周期的に変化するスペーサ1のそのスロット1Aに、たとえばテープ心線のような光ファイバ線2が落とし込まれて成る光ファイバケーブルのことである。
【0003】このようなSZスロットケーブルの製造装置としては従来図5に示すものがよく知られている。図5R>5において符号3はSZスロットのスペーサ1を送り出す送出ボビン、同2はこのスペーサ1のスロット1A内に落とし込まれるテープ心線のような光ファイバ線、同4は固定されている分線板、同5は集合ダイス、同6は引取装置、しかして同7は製品のSZスロットケーブルを巻き取る巻取ボビンを示すものであり、集合ダイス5と引取装置6の間には図示していないが通常テープ巻き装置などが装備される。
【0004】この装置の特徴的な構成は分線板4と集合ダイス5の間に設けられる案内導入チューブ42である。これは図3に示すように分線板4の各分線孔41に一端が連通状態に固着された中空管状のものであり、その他端は自由端となって延び、スペーサ1の各スロット1A内に収納されて円環状の集合ダイス5によって押さえられる。この案内導入チューブ42は非常に曲がりやすく、しかも曲がったときに内部の中空部が潰れて光ファイバ線2が通りにくくならないように形成されたものである。
【0005】この装置によってSZスロットケーブルが製造される過程を説明すると、はじめにこの案内導入チューブ42を通して光ファイバ線2を各スロット1Aに落とし込んだ姿にセットしたスペーサ1を下流の引取装置6によって引き取ることによって、送りだされる光ファイバ線2はこの案内導入チューブ42を通って次々とスロット1A内に引き込まれ、製品のSZスロットケーブルが製造される。もちろんスロット1Aは周期的にS,Zの巻き方向を取るから、案内導入チューブ42の自由端は集合ダイス5の内側においてスペーサ1の引取りの進行とともにそのスペーサ1への絡みつきの方向が左、右に回転する(たとえば1ピッチごとにS,Zが変わるものであれば360度ごとに反転する)わけである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】既に説明したようにスペーサ1は図1に示すように適宜のピッチごとにそのスロット1Aのつる巻き方向が変化するけれども、中立点Nは図中XX線に沿うように角度変化することなく軸方向に真っ直ぐに延びた位置をとるように形成されている。このため上述したSZスロットケーブルの製造工程中において案内導入チューブ42の自由端はスロット1Aの形状に従って左、右の所定角度の回転を繰り返すけれども、スペーサ1はその軸線の周りに回転せずに引き取られるわけであるから、中立点Nの位置も図4のOP線に示すように不変に真っ直ぐに延びることになるのである。
【0007】以上が正しい形に作られ、ねじれなく送り出されたスペーサの場合であるが、実際の工程では必ずしもこのようにならずに、図4でOQ線に示すように中立点Nの位置が漸次ひとつの方向に偏ってしまうことがたびたび出現する。この結果固定された分線板4に一端が固着されている案内導入チューブ42の自由端もスロット1Aの角度変化に遂に対応しきれずにケーブル製造が不可能になってしまうおそれがある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は上述の課題を解決するためになされたものであって、スペーサを送り出す送出ボビン、各分線孔に中空の案内導入チューブの一端が固着された分線板、前記案内導入チューブの自由端を前記スペーサの各スロット内に収納包囲するように設けられる円環状の集合ダイスを有するSZスロットケーブルの製造装置において、前記送出ボビンは送り出される前記スペーサの軸線の周りに回転駆動できるように設けられ、かつ前記送出ボビンと分線板の間にねじれ検知装置が設けられることを特徴とするSZスロットケーブルの製造装置である。
【0009】
【作用】ねじれ検知装置がスペーサの中立点の進行経路の所定の直線からの角度的ずれを検知し、このねじれ検知信号によってスペーサの送出ボビンがその送り出されるスペーサの軸線のまわりに回転駆動されてそのねじれを修正する。
【0010】
【実施例】図1についてこの発明の一実施例装置を説明する。図1の装置では図5について説明した従来装置に使用されているのと同一の要素が多く含まれているが、それらについては説明を省略し、新しく出てきた符号の要素のみを説明する。
【0011】送出ボビン3は装架フレーム31に回転可能に取り付けられ、その装架フレーム31には回転駆動軸32が固着される。この回転駆動軸32は端部に設けられたチェインスプロケット、あるいはプーリーなどの伝動手段を介してモータ33から回転駆動される。駆動用のモータ33としてはパルスモータ、またはサーボモータのように、外部からの電気的指令によって小角度の回転駆動に適したものが好ましい。
【0012】送出ボビン3と分線板4との間にはねじれ検知装置8が設けられる。これはこれから突出する検知爪81をスペーサ1のいずれかのスロット1Aに差し込んだものであって、これによってスペーサ1のねじれ角度を検出する。実際の装置としてはいわゆるポテンショメータが多く使用される。これは一口に言えば、マグネットと磁気抵抗素子とを平行な平面状態に近接させておき、どちらか一方を角度的に変位させてこの両者間の抵抗変化を測定するものであり、本願装置の場合検知爪81を上記両者の一方に連結しておくわけである。
【0013】ねじれ検出装置としてはこの他に、基準位置からの角度のずれ量を光学変換してバイナリーコードで演算装置に伝達する光学式のロータリーエンコーダや、電磁誘導方式によってコイルとその内部に同軸的に配設される鉄心との間の相対的な角度変位を計測できる、いわゆるセルシン式の装置などが応用できる。
【0014】既に説明したSZスロットケーブルの製造工程から分かるように、検知爪81はスペーサ1の進行にしたがって、そのスロット1AのSZ反転周期に対応する角度だけ正、逆回転する。つまりスロット1Aが1ピッチ周期の反転ならば、360度ごとに正逆反転するわけである。
【0015】しかしながらスペーサ1にねじれがある場合は、上の例でたとえば(360+α)度正回転し、ついで逆方向に360度回転しても結局α度だけ残ることになる。このことはスペーサ1の中立点Nの位置が基準位置、たとえば真上の位置から角度的に+α度回転した位置にずれることを意味する。この発明のねじれ検知装置8はこのねじれ角度αを検知できるように構成される。
【0016】スペーサ1にこのようなねじれが検知されたときは随時か、あるいはそのねじれ角αが累積してある所定角度以上になったときにモータ33に検知信号を送るように構成される。この検知信号を受けたモータ33は所定角度回転し、装架フレーム31をそのスペーサ1のねじれを無くす方向に回転して中立点Nを所定の基準位置、この場合たとえば真上に戻すように調整することになる。
【0017】
【発明の効果】この発明によれば、ねじれ検知装置がスペーサの中立点の進行経路の所定の直線からの角度的ずれを検知できるから、このねじれ検知信号によってスペーサの送出ボビンをその送り出されるスペーサの軸線のまわりに所定角度だけ回転駆動してそのスペーサのねじれを容易に修正できる効果があり、したがってスペーサ自体に多少のねじれがあったり、その送出しの工程でねじれが発生することがあっても常に優れたSZスロットケーブルを製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に使用するSZスロットのスペーサを示す平面図である。
【図2】この発明の一実施例装置を示す側面図である。
【図3】SZスロットケーブルの製造装置において案内導入チューブによって光ファイバ線をスロット内に落とし込む状態を説明する側断面図である。
【図4】スペーサのねじれによってその中立点に漸次角度的ずれが発生する状況を説明する簡略説明図である。
【図5】従来の典型的なSZスロットケーブル製造装置を示す側面図である。
【符号の説明】
1 スペーサ
1A スロット
2 光ファイバ線
3 送出ボビン
31 装架フレーム
32 回転駆動軸
33 モータ
4 分線板
41 分線孔
42 案内導入チューブ
5 集合ダイス
6 引取装置
7 巻取ボビン
8 ねじれ検知装置
81 検知爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スペーサ(1)を送り出す送出ボビン(3)、各分線孔(41)に中空の案内導入チューブ(42)の一端が固着された分線板(4)、前記案内導入チューブ(42)の自由端を前記スペーサ(1)の各スロット(1A)内に収納包囲するように設けられる円環状の集合ダイス(5)を有するSZスロットケーブルの製造装置において、前記送出ボビン(3)は送り出される前記スペーサ(1)の軸線の周りに回転駆動できるように設けられ、かつ前記送出ボビン(3)と分線板(4)の間にスペーサのねじれ検知装置(8)が設けられることを特徴とするSZスロットケーブルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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