説明

T2*コントラストのためのフロー非感応性磁化プレパレーションパルス

磁気共鳴システムは、静磁場の方向に沿って方向合わせする静磁場バイアス核スピンを生成する主磁場(12)を有する磁気共鳴スキャナ(10)と、磁場勾配コイル(14)と、無線周波数コイル(16)と、(a)静磁場の方向から外れて短いT2*のスピンを支配的に、選択的に与えるように、無線周波数コイルを駆動する動作、(b)静磁場の方向から外れて与えられる短いT2*のスピンを支配的にディフェーズするように、磁場勾配コイル及び無線周波数コイルの少なくとも一を駆動する動作、(c)先行する無線周波数コイルを駆動する動作(a)及び磁場勾配コイル及び無線周波数コイルの少なくとも一を駆動する動作(b)のために重み付けされたT2*が支配的であるように磁気共鳴データを取得するように、磁場勾配コイル及び無線周波数コイルを駆動する動作を有する、制御器(20,22)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像、磁気共鳴スペクトロスコピー等の磁気共鳴技術に関する。
【背景技術】
【0002】
T2*強調を用いる磁気共鳴(MR)撮像は、血液酸素化レベル依存性(BOLD)コントラスト撮像、鉄過負荷撮像、分子MR撮像における超常磁性酸化鉄(SPIO)の検出及び撮像等の技術において強調されたコントラストを提供するように用いられる。BOLD撮像においては、コントラストは赤い血液細胞におけるデオキシヘモグロビンの常磁性からもたらされ、そのことは主磁場を摂動させて、主磁場の均一性の局所的低下及びT2*減衰(即ち、短いT2*)の増加に繋がる。他方、酸素は、常磁性ヘモグロビンを有効に遮蔽して、増加したT2*をもたらす。従って、酸素化血液と脱酸素化血液との間のコントラストが、T2*強調撮像により得られ、そのことにより局所的な組織の酸素消費が明らかになる。
【0003】
典型的な生体被検部内の種々の種は、T2*時間の範囲を示す。長いT2*時間を有する種は、BOLD及び一部の他のT2*強調撮像技術に関係している。既存のT2*強調画像は典型的には、長いエコー時間(TE)を用いて、長いT2*コントラストの強調に依存する。例えば、長いエコー時間又はエコープラナーイメージング(EPI:Echo−Planar Imaging)方法によるスポイルド勾配エコーシーケンス(SPGR)が、T2*強調撮像のために用いられる。
【0004】
しかしながら、それらのシーケンスは最適な信号対雑音比(SNR)を提供せず、長いエコー時間(TE)のためにフローアーティファクトの影響を受け易い。しかしながら、心臓BOLD撮像等のより速い血流領域のBOLD撮像については、フローアーティファクトはかなりはっきりしていて、成功裏のBOLD撮像が行われない可能性がある。
【0005】
従って、既存のT2*強調方法で行われるような長いエコー時間に依存することなく、長いT2*種を反映したT2*強調を提供することは有用である。
【0006】
以下に、上記の及び他の課題を克服する新規の改善された装置及び方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの開示されている特徴に従って、長いT2*種のスピンを実質的にディフェーズすることなく、短いT2*種のスピンを支配的にディフェーズする段階と、そのディフェーズする段階の後に、長いT2*種から磁気共鳴データを支配的に取得するように磁気共鳴取得を実行する段階と、その取得された磁気共鳴データからT2*強調画像を生成する段階とを有する磁気共鳴方法について開示されている。
【0008】
他の開示されている特徴に従って、記憶媒体は、上記の段落に記載している磁気共鳴方法を実行するように、実行可能な命令を記憶する。他の開示されている特徴に従って、磁気共鳴システムは、上記の段落に記載している磁気共鳴方法を実行する。
【0009】
他の開示されている特徴に従って、静主磁場の方向に沿って方向合わせする核スピンをバイアスする静主磁場を生成する主磁石を有する磁気共鳴スキャナと、(a)主磁場の方向から外れた短いT2*のスピンを支配的に選択的に与えるように、無線周波数コイルを駆動する動作と、(b)主磁場の方向から外れて与えられた短いT2*の前記スピンを支配的にディフェーズするように、磁場勾配コイル及び無線周波数コイルの少なくとも一のコイルを駆動する動作と、(c)前の動作(a)及び(b)のために、重み付けされたT2*が支配的である、強調された磁気共鳴データを取得するように、磁場勾配コイル及び無線周波数コイルを駆動する動作と、を有する、制御器と、を有する磁気共鳴システムについて開示されている。
【0010】
一有利点は、長いエコー時間を有する撮像シーケンスに依存することなく、T2*強調撮像を可能にすることにある。
【0011】
他の有利点は、T2*強調撮像における低減されたフローアーティファクトにある。
【0012】
更なるの有利点については、当業者は、以下の詳細説明を読んで、理解することにより明確になる。
【0013】
本発明は、種々の構成要素及びそれらの構成要素の組み合わせ、種々のステップ及びそれらのステップの組み合わせにより具現化される。添付図は、好適な実施形態の例示のみを目的としていて、本発明を限定すると解釈するべきでない。
【0014】
複数の図で用いられるときに対応する参照番号は、複数の図における対応する要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】T2*改善撮像についての例示としての磁気共鳴システムの模式図である。
【図2】T2*強調撮像を実行するパルスシーケンスの模式図である。
【図3】短いT2*種及び長いT2*種についての励起スペクトルのプロットである。
【図4】心臓の撮像結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照するに、図示している磁気共鳴(MR)システムは、第1方向に沿って配向付けられた静磁場(B)を発生させる主磁石12を有する磁気共鳴スキャナ10を有する。ボアタイプ又は水平磁石システムの場合、第1方向は、配向の長手方向である。容易に理解できるように、そして一実施例として、第1方向は、以下、図1に示している水平磁石システムに対応して、長手方向と称されている。しかしながら、主磁場Bは、何れかの他の方向に、例えば、鉛直方向に配向付けられ、第1方向は、主磁場Bの方向を意味するようにとられる。図示しているMRシステムにおいては、静磁場又は主磁場Bは、長手方向に沿った位置合わせのために核スピンをバイアスする。図示している主磁石12は、液体ヘリウムLH中に浸漬することにより超伝導温度に保たれる超伝導磁石である。MRスキャナ1010は、磁気共鳴の空間的励起で用いる静磁場B0に対して磁場勾配を選択的に重畳する磁場勾配コイル14を更に有する。無線周波数(RF)コイル16は、磁気共鳴を励起するように励起位相中にエネルギー供給され、磁気共鳴パルスシーケンスの読み出し位相中にその励起された磁気共鳴を検出する。図示している実施形態においては、単独のRFコイル16はバードケージコイルであるが、他の種類のコイル又はコイルアレイを送信又は受信用に用いることが可能である。一部の実施形態においては、別個の送信コイル及び受信コイル又はコイルアレイが備えられることが可能である。図示しているMRスキャナ10は水平ボア円筒型スキャナであるが、開示されているT2*強調撮像技術は、オープンMRスキャナ、鉛直MRスキャナ又は何れかの他の種類のMRスキャナにより実行される。
【0017】
MRスキャナ10は、MRデータメモリ24に記憶されているT2*強調磁気共鳴データを取得するように、図示しているT2*強調パルスシーケンス22等のパルスシーケンスに従ってMR制御器20により制御される。取得されたT2*強調磁気共鳴データが適切に空間的に符号化される場合、MRデータ再構成プロセッサ26は、取得された磁気共鳴からT2*強調画像を生成するように、取得されたT2*強調磁気共鳴データを任意に処理する。例えば、取得されたT2*強調磁気共鳴データは、フーリエ変換に基づく再構成アルゴリズムを用いて再構成プロセッサ26により適切に再構成されるk空間データの形式でT2*強調磁気共鳴データを取得するように、磁気共鳴励起位相中に適用されるスライス選択的勾配、読み出し位相中に適用される読み出し勾配、及び励起位相と読み出し位相との間で適用される位相符号化勾配を用いて、空間的に符号化されることが可能である。生成されたT2*強調MR画像は、MR画像メモリ28に適切に記憶される、ディスプレイ30に表示される、又は別のやり方で利用される。
【0018】
処理及びメモリ構成要素20、22、24、26、28は、前記ディスプレイ30を有するコンピュータとして、例示としての実施形態において、又はネットワークサーバ等の他のディジタル処理装置として、適切に具現化される。T2*強調パルスシーケンス22を実行するMR制御器20は、磁気共鳴データを取得するように、MRスキャナ10がT2*強調パルスシーケンス22を実行するようにするコンピュータ32又は他のディジタルプロセッサにより実行可能である命令を記憶する、磁気ディスク、光ディスク、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ)等の記憶媒体として実行されることが可能である。更に、撮像アプリケーションについて説明しているが、開示されているT2*準備シーケンスは、MRスペクトロスコピー等のMRデータ取得のために用いられることが可能である。
【0019】
図2を参照するに、T2*強調パルスシーケンス22の例示としての実施形態を示している。一部の既存のT2*強調パルスシーケンスは、T1、T2を可能にすることを目的としての長いエコー時間と、長いT2*時間を有する種に基づいて読み出し信号がT2*を強く強調されるように、実質的に減衰する短いT2*強調スピンとの使用に基づいて、動作する。T2*強調パルスシーケンス22は、基本的には異なる様式で、即ち、長いT2*種を実質的にディフェーズすることなしに短いT2*種のスピンを支配的にディフェーズする磁化プレパレーションパルスサブシーケンス40を用いて、何れかの種類のMR撮像シーケンス42によりこれを実質的に後続することにより、動作する。短いT2*種はディフェーズされるために、MR撮像シーケンス42は、そのシーケンスの種類に拘わらず、長いT2*コントラストのために強調されるT2*強調画像を生成する。磁化プレパレーションパルスサブシーケンスは、図2における例示としての実施形態におけるように、任意に空間的には非選択的であり、画像シーケンス42は短いエコー時間(即ち、短いTE)を任意に用い、その場合、得られるT2*強調画像には実質的にフローアーティファクトは存在しない。
【0020】
図2を継続して参照し、更に図3を参照するに、長いT2*種のスピンを実質的にディフェーズすることなしに短いT2*種のスピンを支配的にディフェーズする磁化プレパレーションパルスサブシーケンス40の動作は、図3(Fで印付けされた軸は周波数軸である)に示すように、長いT2*種が有するよりも短いT2*種が広い励起スペクトルを実質的に有するという観測に基づいている。その結果、短いT2*種励起スペクトルの帯域幅に等しい又はそれより大きい、広い帯域幅ΔFを有する励起パルスは、それらの種が短いT2*減衰時間を有するか又は長いT2*減衰時間を有するかに拘わらず、全ての核種を操作する。他方、長いT2*種のスペクトルの帯域幅に匹敵するか又はそれより小さい、狭い帯域幅ΔF2を有する励起パルスは、長いT2*種のみを操作する。この観測に基づいて、狭い帯域幅のRFパルス及び広い帯域幅のRFパルスの組み合わせは、長いT2*核種を励起することなしに、短いT2*核種を励起するように組み合わされる。以下では、何れかの磁気共鳴撮像パルスシーケンスが実質的に適用され、そのシーケンスは、長いT2*スピンによって撮像が支配的に得られるが、ディフェーズされた短いT2*スピンによってはそれは得られない。
【0021】
特に図2を参照するに、磁化プレパレーションシーケンス40は狭い帯域幅励起パルス50を有する。本実施例においては、90°の先端角を有する励起パルスが選択され、90°より大きい又は小さい他の先端角も同様に可能である。例えば、一部の実施形態においては、先端角は60°乃至120°の範囲内にあるが、この範囲外の先端角も検討された。狭い帯域幅を得るように、励起パルス50は、長い持続時間を有し、例えば、短いT2*種のT2*に略等しい又はそれより大きい持続時間を有する。狭い帯域幅90°の励起パルス50の効果は、長手方向を外れて、例えば、例示としての90°の励起パルス50の場合に90°の先端角に対して、長いT2*種のスピンを与えることである。他方、短いT2*種は、狭い帯域幅90°の励起パルス50によっては実質的に影響されない。図3から理解できるように、励起応答が狭い帯域幅90°の励起パルス50の狭い帯域幅の範囲内にある、短いT2*種の小さい部分が存在するが、励起スピンは長いT2*種が支配的である。
【0022】
狭い帯域幅90°の励起パルス50は、広い帯域幅のスピンリフォーカシングパルス52により後続される。本実施例においては、180°の先端角を有するリフォーカシングパルスが選択されているが、180°より大きい又は小さい他の先端角も同様に可能である。例えば、一部の実施形態においては、先端角は150°乃至210°の範囲内にあるが、この範囲外の先端角も検討された。広い帯域幅を得るように、リフォーカシングパルス52は適切に短い持続時間を有し、例えば、短いT2*種のT2*より短い持続時間を有する。広い帯域幅180°のスピンリフォーカシングパルス52の効果は、狭い帯域幅90°の励起パルス50により長手方向を外れて与えられた長いT2*種のスピンを支配的にリフォーカシングすることである。同時に、短いT2*種は、広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52によっても操作される。その効果は、長手方向から外れて、逆方向(即ち、長手方向と逆平行の)に180°の短いT2*種を与えることである。
【0023】
広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52が狭い帯域幅90°の励起パルス50の中心の後の時間間隔Δtに中心が置かれると、リフォーカシング効果は、広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52の中心の後の時間間隔Δtに中心に位置付けられる。換言すれば、狭い帯域幅90°の励起パルス50により長手方向から外れて与えられた長いT2*種のスピンが支配的に、広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52の中心の後の時間間隔Δtに最も強くリフォーカシングされる。
【0024】
リフォーカシング時間に(即ち、広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52の中心の後の時間間隔Δtに)、広い帯域幅90°の復元パルス54は、長いT2*種のリフォーカシングされたスピンを支配的に、長手方向に戻す。上記の励起パルス50と同様に、90°と異なる先端角を有する復元パルスが可能である。例えば、一部の実施形態においては、先端角は60°乃至120°の範囲内にあるが、この範囲外の先端角も検討された。また、広い帯域幅の復元パルス54は適切に、両方の長いT2*種及び短いT2*種に影響を与えるように十分広い帯域幅を有するように、持続時間を有する、例えば、短いT2*種のT2*より短い持続時間を有する。従って、その広い帯域幅の復元パルス54も、短いT2*種を操作することができる。それらの短いT2*種は、広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52により(先端角を180°)反転された。従って、90°の復元パルス54は、短いT2*種に対して90°の先端角を与える。
【0025】
要約すると、狭い帯域幅90°の励起パルス50、広い帯域幅180°のリフォーカシングパルス52及び広い帯域幅の復元パルス54が組み合わされた効果は、短いT2*種が支配的に90°の先端角にある間に、長いT2*種は支配的に長手方向にある、即ち、長手方向に対して横断する横断面に与えられることである。他方、クラッシャ(crusher)磁場勾配56は、長手方向に方向付けられ、故に、励起スピンではない長いT2*種には実質的に影響を及ぼさない。
【0026】
要約すれば、T2*コントラストプレパレーションパルスサブシーケンス40は、横断面に長いT2*(狭いスペクトルであって、図3を参照されたい)を有する種の磁化を与える、短い帯域幅を有する長い持続時間の90°の励起パルス50を有する。続いて、広い帯域幅を有する短い180°のリフォーカシングパルス52はそれらの長いT2*種の磁化を支配的にリフォーカシングし、他の(支配的に、短いT2*)種を反転する。広い帯域幅を有する90°の復元RFパルス54は、長手方向に長いT2*を支配的に有する種のリフォーカスド磁化を復元する一方、支配的に短いT2*を有する種の反転磁化が横断面に与えられて、勾配スポイラ56により損なわれる。図示されているパルスシーケンス50、52、54及び56は、長いT2*を有する支配的な種が撮像のために有効である一方、短いT2*を有する種は効果的に抑制される。結果として、続く撮像パルスサブシーケンス42は、強いT2*コントラストをもたらす。これは、続く撮像パルスサブシーケンス42が長いエコー時間を有しない場合であっても(即ち、撮像パルスサブシーケンス42が短いTEである場合であっても)、真である。強いT2*コントラストは、長いTEを用いることによっては得られないが、むしろ短いT2*を有する有効抑制種により得られる。(しかしながら、撮像パルスサブシーケンス42が長いTEを有し、その場合に、強いT2*コントラストが、プレパレーションサブシーケンス40及び長いTEの両方により提供される。)
有利に、磁化プレパレーションサブシーケンス40は空間的に選択的である、即ち、スライス選択勾配は採用されない。結果として、心臓領域等の速い血流の領域でさえフローアーティファクトを実質的に抑制又は削除する選択されたスライスのみにおいてではなく、全体的な励起ボリュームにおいて、短いT2*種は抑制される。プレパレーションサブシーケンス40はT2*コントラストを与えるため、磁気共鳴撮像データを収集するように用いられる続く撮像シーケンス42は、実質的に何れの種類も有することが可能である。例えば、MR撮像サブシーケンス42は、選択されたアプリケーションについて適切であるように、フローアーティファクトに対して最適なSNR及び低い磁化率を有する選択された高速MRシーケンスであることが可能である。
【0027】
一実施例においては、撮像サブシーケンス42は、予備シーケンス40により与えられる短いT2*ディフェージングがない、支配的なプロトン密度重み付け撮像を与えるのに有効な短いエコー時間を有することが可能である。予備シーケンス40と共に用いられるとき、その同じ撮像シーケンスは、プロトン密度重み付け画像ではなく、T2*重み付け画像を与える。これは、磁化プレパレーションサブシーケンス40による短いT2*種の抑制の結果である。
【0028】
RFパルス50、52、54の狭い帯域幅又は広い帯域幅は、パルス持続時間を調節することにより得られる。典型的には、狭い帯域幅に対する広い帯域幅の比が少なくとも約2であることが好ましく、そのことは、図3に模式的に示している短いT2*スペクトルの広い帯域幅と長いT2*スペクトルの狭い帯域幅との間の典型的な比を反映する。
【0029】
復元RFパルス54が印加されるときに、支配的な長いT2*種の励起スピンを適切にフォーカシングされるように維持するように、スピンのリフォーカシングを用いる点で、図2に示しているRFパルス50、52、54のシーケンスは有利である。しかしながら、他の磁化プレパレーションシーケンスも、長いT2*種に対する短いT2*種の好適な励起の望ましい最終的な結果を得るために、検討された。例えば、他の検討されたプレパレーションシーケンスは、横断面に長いT2*種を支配的に与えて、次いで、長手方向に横断面内にある支配的な長いT2*種のスピンを与える広い帯域幅270°のRFパルスが直接後続するようになっている一方、同時に、横断面に長手方向から短いT2*種を与えるように、図示されている狭い帯域幅90°の励起RFパルス50を用いるようになっている。このシーケンスは、支配的な短いT2*種の励起スピンを損なう又はディフェーズするように、例示としてのクラッシャ勾配56により再び後続されることが可能である。付加的に又は代替として、RFコイル16により適用される無線周波数(RF)のスポイリングは、勾配コイル14により適用されるスポイリング勾配56に代えられることが可能である。
【0030】
図4を参照するに、空間的に非選択的な磁化プレパレーションサブシーケンス40と、短いTEを有する後続の撮像サブシーケンス42との組み合わせは、良好な時間分解能を提供し、そして、従来、それらの技術が実用的でなかった状況下で、T2*重み付け撮像コントラスト技術が用いられることを可能にする。例えば、心臓のBOLD撮像は、従来、心臓領域の高速血流によりもたらされるフローアーティファクトによって実質的に制限されてきた。図4は、人間の心臓の撮像についての生体内の例(短軸像)を示している。図4の一番左の“[a]”とラベル付けされた画像においては、勾配エコーシーケンスは短いエコー時間(TE)と共に用いられ、小さいフリップ角が撮像のために用いられている。これは、支配的なプロトン密度重み付けを提供する。結果として、右心室(図4において“RV”でラベル付けされている)の脱酸素化血液と左心室(図4において“LV”でラベル付けされている)の脱酸素化血液との間のコントラストは、“[a]”とラベル付けされた図においては観測されていない。
【0031】
“[b]”とラベル付けされた図4の中央の画像においては、エコー時間は、T2*重みを与えることを目的として、TE=15msecに増加された。しかしながら、それらの心室のシグナルボイド及び位相符号化方向に沿ったフローアーティファクトが、非診断画像品質を生成する長いTEの結果として存在する。
【0032】
“[c]”とラベル付けされた図4の中央の画像においては、短いTEによる左側の画像“[a]”について用いられるのと同じシーケンスが用いられたが、この場合は、画像取得は、図2のT2*プレパレーションパルスシーケンス40により先行された。右心室(短いT2*を有する)においては脱酸素化血液は完全に抑制されたように現れている一方、左心室(長いT2*を有する)における脱酸素化血液からの信号は減衰されていない。実質的なフローアーティファクトは観測されていない。
【0033】
本発明について、上では好適な実施形態を参照して詳述している。上記の詳細な説明を読んで理解するときに、当業者は修正及び変形を考え得る。本発明は、それらの修正及び変形が同時提出の特許請求の範囲の範囲内に網羅されるように、それらの修正及び変形全てを含むとして解釈されるとして意図されている。表現“を有する”は、請求項に挙げられている要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除しない。単数の要素は、その要素の複数の存在を排除しない。開示されている実施形態は、複数の別個の要素を有するハードウェアにより、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実施されることが可能である。複数の手段を挙げている装置請求項においては、それらの手段の幾つかは、コンピュータ読み出し可能ソフトウェア又はハードウェアと同一のアイテムにより具現化されることが可能である。特定の手段が互いに異なる従属請求項に単に記載されていることだけで、それらの手段の組み合わせが有利に用いられないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長いT2*種の実質的にディフェージングするスピンを伴わずに短いT2*種のスピンを優先的にディフェージングする段階;
前記ディフェージングの後に、長いT2*種から磁気共鳴データを優先的に取得するように磁気共鳴取得を実行する段階;
前記取得された磁気共鳴データからT2*重み付け画像を生成する段階;
を有する磁気共鳴方法。
【請求項2】
前記ディフェージングする段階と協働して、前記磁気共鳴取得は、血液酸化レベル依存性コントラストを与える、請求項1に記載の磁気共鳴方法。
【請求項3】
前記磁気共鳴取得は、前記ディフェージングがないときにプロトン密度重み付け撮像を優先的に与えるのに有効である短いエコー時間を用いる、請求項1に記載の磁気共鳴方法。
【請求項4】
前記磁気共鳴取得は、前記長いT2*種のT2*と比較して短い短エコー時間を用いる、請求項1に記載の磁気共鳴方法。
【請求項5】
前記ディフェージングする段階は:
(a)主磁場の方向から外れて長いT2*種のスピンを支配的に与えるように、狭い帯域幅パルスを適用する段階;
(b)(i)前記主磁場の前記方向に戻るように長いT2*種のスピンを支配的に与え、(ii)前記磁場の前記方向から外れて短いT2*種のスピンを支配的に与えるように、1つ又はそれ以上の広い帯域幅パルスを適用する段階;並びに
(c)前記の狭い帯域幅パルスを適用する段階(a)及び広い帯域幅パルスを適用する段階(b)の後に、前記主磁場の前記方向から外れて与えられるスピンをディフェージングする段階;
を有する、請求項1に記載の磁気共鳴方法。
【請求項6】
(i)前記1つ又はそれ以上の広い帯域幅パルスの帯域幅と(ii)前記狭い帯域幅パルスの帯域幅との比が少なくとも約2である、請求項5に記載の磁気共鳴方法。
【請求項7】
前記1つ又はそれ以上の広い帯域幅パルスは前記短いT2*種のT2*より短い持続時間を有し;
前記狭い帯域幅パルスは、前記短いT2*種のT2*より長い又は該T2と略同じ持続時間を有する;
請求項5に記載の磁気共鳴方法。
【請求項8】
前記の1つ又はそれ以上の広い帯域幅パルスを適用する段階は:
前記狭い帯域幅パルスにより前記主磁場の前記方法から外れて与えられた長いT2*種のスピンを支配的にリフォーカシングする広い帯域幅スピンリフォーカシングパルスを適用する段階;
を有する、請求項5に記載の磁気共鳴方法。
【請求項9】
前記の1つ又はそれ以上の広い帯域幅パルスを適用する段階は:
前記の長いT2*種のリフォーカシングされたスピンを前記主磁場の前記方法に戻す、広い帯域幅復元パルスを適用する段階;
を更に有する、請求項8に記載の磁気共鳴方法。
【請求項10】
前記狭い帯域幅パルスは90°のフリップ角を有し、前記広い帯域幅スピンリフォーカシングパルスは180°のフリップ角を有し、前記広い帯域幅復元パルスは90°のフリップ角を有する、請求項9に記載の磁気共鳴方法。
【請求項11】
前記狭い帯域幅パルスは90°以外の、約60°乃至120°の範囲内のフリップ角を有し、前記広い帯域幅スピンリフォーカシングパルスは180°以外の、約150°乃至210°の範囲内のフリップ角を有し、前記広い帯域幅復元パルスは90°以外の、約60°乃至120°の範囲内のフリップ角を有する、請求項9に記載の磁気共鳴方法。
【請求項12】
前記ディフェージングする段階は空間的に非選択的である、請求項1に記載の磁気共鳴方法。
【請求項13】
請求項1に記載の磁気共鳴方法を実行するように実行可能である命令を記憶する記憶媒体。
【請求項14】
請求項1に記載の磁気共鳴方法を実行する磁気共鳴システム。
【請求項15】
静主磁場の方向に沿って方向合わせする静主磁場バイアス核スピンを生成する主磁場を有する磁気共鳴スキャナ;
磁場勾配コイル;
無線周波数コイル;並びに
(a)前記主磁場の前記方向から外れて短いT2*のスピンを支配的に、選択的に与えるように、前記無線周波数コイルを駆動する動作、(b)前記主磁場の前記方向から外れて与えられる前記の短いT2*のスピンを支配的にディフェーズするように、前記磁場勾配コイル及び前記無線周波数コイルの少なくとも一を駆動する動作、(c)先行する前記無線周波数コイルを駆動する動作(a)及び前記磁場勾配コイル及び前記無線周波数コイルの少なくとも一を駆動する動作(b)のために重み付けされたT2*が支配的である、磁気共鳴データを取得するように、前記磁場勾配コイル及び前記無線周波数コイルを駆動する動作を有する、制御器;
を有する磁気共鳴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公表番号】特表2012−505005(P2012−505005A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530604(P2011−530604)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054338
【国際公開番号】WO2010/043997
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】