説明

TAB用テープ及びこれを用いた半導体装置

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明はTAB(Tape Automated Bonding)用テープ及びこのTAB用テープを用いた半導体装置に関する。
(従来技術)
通常用いられるTBA用テープは、電気的絶縁性を有するポリイミドなどからなるベースフィルムの片面に導体回路を形成したものであって、ベースフィルムに穿設したデバイスホールの内側にインナーリードを延出させ、半導体チップの周縁部のボンディング面にこのインナーリード一括してボンディングするように構成されている。このTAB用テープは、ベースフィルムに銅箔等の導体材を接合した後、エッチング等を行い導体回路を形成することにより製造される。
なお、上記のように半導体チップの周縁部のボンディング面にインナーリードをボンディングするものの他、チップの中央部にもボンディングできるように形成したエリアTABテープもある。このエリアTABテープは、チップ表面に設けた多数の電極に合わせてボンディング部を設けるからチップ表面上で導体回路が交錯しないようにする必要がある。そこで、エリアTABテープでは、導体回路が交錯する部分では透孔に導体材料を充填したビアで一方の面から他方の面に導体回路を逃がし、導体回路が交錯することを解消している。
(発明が解決しようとする課題)
従来のTAB用テープは上述したように、ベースフィルムの片面に導体回路を設けておくのが普通であるが、この方法ではTAB用テープに形成できるリード数、とくにインナーリードの本数はリード幅、リード間隔、配置スペースの関係から限界に近づいており、さらに高密度にリードを形成することはきわめて困難になっている。
また、この結果、TAB用テープを用いた半導体装置の多ピン化も限界に近づいている。
そこで、本発明は上記問題点を解消すべくなされたものであり、その目的とするところは、従来のTAB用テープにくらべてさらに多数のリードを形成でき、高密度実装を可能とするTAB用テープおよびこのTAB用テープを用いた半導体装置を提供するにある。
(課題を解決するための手段)
本発明は上記目的を達成するため、次の構成をそなえる。
すなわち、電気的絶縁性を有するベースフィルムの両面に導体回路が形成され、半導体チップと電気的に接続される前記各々の導体回路のボンディング部が前記ベースフィルムの半導体チップが搭載される一方の面にのみ設けられ、前記ベースフィルムの半導体チップが搭載される領域内にデバイスホールが設けられたTAB用テープであって、前記ベースフィルムの一方の面に形成された導体回路の一端にボンディング部が設けられるとともに、前記ベースフィルムの他方の面に形成された導体回路が前記デバイスホールの内壁面に密着して前記ベースフィルムの一方の面に延在されて形成され、該導体回路の一端のボンディング部が設けられたことを特徴とする。
また、半導体装置において、前記TAB用テープのベースフィルムの一方の面に形成された導体回路のボンディング部と半導体チップとがボンディングされ、前記ベースフィルムの両面に設けられた各々の導体回路の他端側に、実装用の基板と電気的に接続する接続部が設けられたことを特徴とする。
(作用)
本発明に係るTAB用テープはベースフィルムの両面に導体回路が形成されるとともに、半導体チップに接続されるボンディング部がTAB用テープの一方の面にのみ設けられていることから、半導体チップはTAB用テープの一方の面でのボンディングによりベースフィルムの両面に形成された導体回路と電気的に接続して搭載することができる。また、導体回路のボンディング部がベースフィルムに支持されていることにより、高精度のボンディングが可能となる。
(実施例)
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明に係るTAB用テープの構成とTAB用テープに半導体チップを搭載した状態を示す説明図である。
図で10はポリイミドからなるベースフィルム、12はベースフィルム10の上側の面(他方の面)に形成した導体回路、14はベースフィルム10の下側の面(一方の面)に形成した導体回路である。これらの導体回路12、14は銅箔等の導体材によって形成される。20はデバイスホールであり、半導体チップ22が搭載される領域内に設けられている。
本実施例のTAB用テープは、ベースフィルム10の上側の面に形成した導体回路12をベースフィルム10の下側の面にまで延在させ、半導体チップ22に接続される導体回路12、14のボンディング部をベースフィルム10の下側の面(一方の面)にのみ設けたことを特徴とする。
ベースフィルム10の上側の導体回路12はデバイスホール20の内壁面に密着して形成された導通回路13を介してベースフィルム10の下側の面に延在し、延在した導体回路12の端部で半導体チップ22と導体回路12とが接続される。
本実施例のTAB用テープは、第1図に示すようにベースフィルム10の下側の面(一方の面)に導体回路12、14のボンディング部が設けられているから、半導体チップ22はベースフィルム10の一方の面で導体回路12、14と電気的に接続することができる。
なお、TAB用テープに半導体チップ22を接続した半導体装置を実装基板等に実装する際には、実装側の基板に設けた接続用電極と導体回路の他端側に設けた接続部とを接続することによる。
以上のように、本実施例のTAB用テープでは、ベースフィルム10の上下両面に導体回路12、14を設け、導体回路12、14の各々の半導体チップ22と接続するボンディング部を設けたから、従来のTAB用テープの2倍程度のボンディング部を形成することが可能となる。
また、上記のように構成することによって、半導体チップ22にボンディングすることも容易にでき、基板等に実装することも容易にできるようになる。
なお、ベースフィルム10の下面に設ける導体回路14については、基板に接合する側についてはスペース的に余裕があるから、場合によっては導体回路14の接続電極側へのボンディング部を外方に延出させ、たとえば先端がアウターリードと交互に位置するように配置してもよい。このようにすれば、アウターリードと導体回路14とが中間にベースフィルム10を介在させることなく基板に的確にボンディングすることができる。
なお、半導体チップ等の内部回路を気密封止する場合は、従来のTAB用テープの場合と同様に、半導体チップをTAB用テープにボンディングした後、トランスファモールドによって樹脂封止する方法、溶融樹脂をポッティングして樹脂封止する方法などが適用できる。
次に、第2図(a)〜(f)にしたがって、ベースフィルム10の上側の面と下側の面に各々導体回路12、1が形成されたTAB用テープの製造例について説明する。
まず、第2図(a)に示すように、ベースフィルム10の下面に導体回路14をつくるための銅箔14aを貼着する。
次に、この銅箔14a上にレジストを塗布し、形成すべき導体回路14のパターンにしたがって銅箔14aをエッチングし、レジストを除去して所定パターンの導体回路を形成し、さらに、プレス打ち抜き加工を施して所要のデバイスホール20とスプロケットホール40等を形成する。第2図(b)はプレス打ち抜き加工を施した後の状態を示し、ベースフィルム10の下面に導体回路14が形成された状態を示す。
次いで、第2図(c)に示すように、ベースフィルム10の上面に導体回路12を形成するための銅箔12aを貼着する。
次に、銅箔12aにレジストを塗布し、所定の回路パターンにしたがってレジストパターン42を形成する。同時にベースフィルム10の下面側の導体回路14をレジストで保護し、デバイスホール20等の所要部分にレジスト44を埋めて銅箔12aを裏打ちする(第2図(d))。
次いで、銅箔12aを片面側からエッチングし、レジストを除去して導体回路12を形成する(第2図(e))。この後、形成した導体回路12、14に所要のめっきを施す。
最後に、ベースフィルム10などの不要部分を除去して、第2図(f)に示すように、ベースフィルム10の上下両面に導体回路12、14が形成されたTAB用テープを得る。
なお、ベースフィルム10などの不要部分を除去する前のTAB用テープの導体回路12、14にバンプを形成して半導体チップをボンディングするようにしてもよい。
以上、本発明について、好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されものではなく、種々のタイプの半導体装置に同様に適用できるものであって、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
(発明の効果)
本発明に係るTAB用テープは、上述したように、ベースフィルムの両面に導体回路が形成され、半導体チップにボンディングされるボンディング部はTAB用テープの一方の両面にのみ設けられているから、TAB用テープの一方の面でのボンディングによって半導体チップと容易にボンディングすることができ、このボンディングによりベースフィルムの両面に形成された導体回路と半導体チップとをベースフィルムの一方の面側で電気的に接続させた状態で搭載することができる。ベースフィルムの両面に導体回路が形成されたことにより、高密度実装が可能となり、高集積化された半導体チップを搭載することが容易であり、ボンディング部がベースフィルムに支持されていることから、高精度で確実なボンディングが可能となって、信頼性の高い半導体装置として提供することが可能になる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るTAB用テープとTAB用テープに半導体チップを搭載した構成を示す説明図、第2図はベースフィルムの両面に導体回路を有するTAB用テープの製造例を示す説明図である。
10……ベースフィルム、12、14……導体回路、12a、14a……銅箔、16……インナーリード、18……アウターリード、20……デバイスホール、22……半導体チップ、34……バンプ、42……レジストパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】電気的絶縁性を有するベースフィルムの両面に導体回路が形成され、半導体チップと電気的に接続される前記各々の導体回路のボンディング部が前記ベースフィルムの半導体チップが搭載される一方の面にのみ設けられ、前記ベースフィルムの半導体チップが搭載される領域内にデバイスホールが設けられたTAB用テープであって、前記ベースフィルムの一方の面に形成された導体回路の一端にボンディング部が設けられるとともに、前記ベースフィルムの他方の面に形成された導体回路が前記デバイスホールの内壁面に密着して前記ベースフィルムの一方の面に延在されて形成され、該導体回路の一端のボンディング部が設けられたことを特徴とするTAB用テープ。
【請求項2】請求項1記載のTAB用テープのベースフィルムの一方の面に形成された導体回路のボンディング部と半導体チップとがボンディングされ、前記ベースフィルムの両面に設けられた各々の導体回路の他端側に、実装用の基板と電気的に接続する接続部が設けられたことを特徴とする半導体装置。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2840293号
【登録日】平成10年(1998)10月16日
【発行日】平成10年(1998)12月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−144422
【出願日】平成1年(1989)6月7日
【公開番号】特開平3−9973
【公開日】平成3年(1991)1月17日
【審査請求日】平成8年(1996)5月24日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(999999999)新光電気工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭55−52250(JP,A)
【文献】実開 昭58−87360(JP,U)
【文献】実開 昭62−26046(JP,U)
【文献】実開 昭57−61853(JP,U)
【文献】実開 昭59−45929(JP,U)