説明

TDM−PONにおけるマルチキャストトラフィック共有を基盤とする公正な差等帯域幅の割り当て方法及びシステム

【課題】TDM−PON下向きデータ転送において、マルチキャストトラフィックの公正な帯域幅の割り当てを可能とする。
【解決手段】現在サービスされているマルチキャストグループの全体個数で、所定のONUが加入されたマルチキャストグループの個数を除し、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅に対する所定のONUの平均マルチキャスト帯域幅を求め、所定のONUの動的タイムスロット最大帯域幅を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割多重化パッシブ光ネットワーク(TDM−PON)に関し、OLT(optical line terminal)からONU(optical network unit)への下向きトラフィック転送においてマルチキャストトラフィックの共有を基盤として公正に差等帯域幅(differentiated bandwidth)を割り当てる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、インターネットトラフィックは、リアルタイムデータ転送を要求するビデオ基盤アプリケーション(application)サービスが持続的に成長し、通信放送統合型サービスが提供されるなどにしたがって、その総量が急激に増加している。このようなトラフィック増加に効率的に対処するために、網事業者は、大都市間においてのバックボーンネットワーク(backbone network)及びメトロ網におけるWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術を活用することによって、その転送帯域幅を持続的に増加させてきた。
【0003】
しかしながら、バックボーン網から転送されたトラフィックを最終加入者に分配する加入者網は、従来のVDSL及びケーブルモデム基盤の転送技術と高速イーサネット(登録商標)(Ethernet)(登録商標)基盤の技術が混在された状態で使われている。このような技術は、根本的に網布設領域が短くて、且つ現在活発に論議されている統合型サービスを安定的に提供するには、その転送帯域幅が極めて小さい。このような問題を解決するために、現在活発に開発されている光加入者網技術は、統合サービスに必要な転送帯域幅を最終加入者に効率的に提供することを目標とする。
【0004】
現在活発に議論されている光加入者網技術は、TDM−PON(Time Division Multiplexed Passive Optical Network)技術と、WDM−PON(Wavelength Division Multiplexed Passive Optical Network)技術とに分けられる。TDM−PONは、光転送ターミナル(OLT;optical line terminal)と多数の光通信網ユニット(ONU;optical network unit)がパッシブ型光分配器(Passive Optical Splitter)を介して連結され、単一の転送波長が多数のONUにより光階層で共有される点−対−多点構造を有する。このようなTDM−PONにおいての下向きデータ転送は、時分割多重化方式により行われ、反対に、上向きデータ転送は、帯域幅予約を基盤とするTDMA(Time Division Multiple Access)方式により行われる。
【0005】
一方、WDM−PONは、各ONUに個別転送波長を割り当てることによって、論理的な点−対−点構造をなす。そして、OLTとONU間のデータ転送は、時分割過程無しに、独自的に行われるので、より高い転送帯域幅を加入者に提供することができる。
【0006】
しかしながら、WDM−PONの場合、転送システムが高価なので、帯域幅当たり加入者料金が高くなり、これにより、実用化段階に至るまで多少時間がかかると予測される。これに対し、TDM−PONは、同じ波長を時分割により効率的に使用することができ、装置価格もやはり相対的に安価なので、次世代の光加入者網技術として注目されている。
【0007】
TDM−PON網技術は、転送階層のフレーム構造によってEthernet(登録商標)−PON、G−PON、及びB−PONに分けられるが、基本的な上・下向き転送制御概念は同一である。先ず、上向き転送の場合、多数のONU及び光通信網ターミナル(ONT;optical network terminal)から共通の目的地であるOLTまでのデータ転送は、共有されたリンクを介してなされるので、データ衝突を防止するために、適切な媒体接近制御(MAC)技術が必要である。このために、一般的にバッファに蓄積されたデータ総量を基準として、ONU及びONTが次の転送周期に必要な帯域幅を予約し、OLTがこのような予約を仲裁した後、転送タイムスロット、すなわち上向き帯域幅を割り当てる。したがって、高い網効率を維持すると共に、公正な帯域幅をONUに割り当てることができる。この際、各ONUからタイムスロット期間の間に転送されたデータフレームは、一次的な目的地がOLTである点−対−点通信であるから、タイムスロットを制御することで、容易に帯域幅割り当ての公正性を維持することができる。
【0008】
これに対し、下向きデータ転送は、次のように行われる。すなわち、OLTから転送された全てのデータフレームが光分配器を通じて光階層で分配され、全てのONU及びONTにブロードキャスティング(broadcasting)され、個別ONUは、受信されたフレームをMAC(Multiple Access Control)階層で目的地アドレスを基盤として必要なフレームのみをフィルタリングするようになる。この際、仮に、全てのトラフィックが上向き転送の場合と同様に、ユニキャスト(Unicast)トラフィック、すなわち単一の目的地のみに向くフレームであるとすれば、OLTは、下向き転送タイムスロットを各ONU別に公正に割り当てることによって、帯域幅割り当ての公正性を保証することができる。
【0009】
しかし、実際TDM−PONの下向き転送の場合、VoD及び放送型ビデオサービスなどにより多量のマルチキャストトラフィックが常に存在し、このようなマルチキャストトラフィックは、光分配を通じて多数のONUにより同時に共有される。したがって、下向き転送の場合、単純に転送タイムスロットを均等に割り当てる方式では公正な帯域幅割り当てを保証することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述のような従来技術に鑑みてなされたもので、その目的は、TDM−PON下向きデータ転送において、ONU別マルチキャストトラフィック共有度及びONU別サービス加重値に基づいて、ONU別に差等化された動的タイムスロット帯域幅を割り当てることができるマルチキャストトラフィック共有を基盤とする公正な差等帯域幅(differentiated bandwidth)の割り当て方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る差等帯域幅の割り当て方法は、TDM−PON (Time Division Multiplexed Passive Optical Network) 網の下向きトラフィック転送において、マルチキャストトラフィックの共有を基盤として公正に差等帯域幅を割り当てる方法であって、(a)現在サービスされているマルチキャストグループの全体個数と、所定のONU(optical network unit)が加入されたマルチキャストグループの個数を決定する段階と、(b)各マルチキャストグループでのマルチキャスト共有度及び全体マルチキャストグループでの所定のONUの総マルチキャスト共有度を算出する段階と、(c)所定のONUの総マルチキャスト共有度をマルチキャストグループの全体個数で除し、所定のONUの最終マルチキャスト共有度を算出する段階と、(d)最終マルチキャスト共有度を基礎として、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅に対する所定のONUの平均マルチキャスト帯域幅を算出する段階と、(e)ONU別サービス加重値を用いて、所定のONUの差等帯域幅を算出する段階と、(f)所定のONUの差等帯域幅から平均マルチキャスト帯域幅を差し引きして、所定のONUの動的タイムスロット最大帯域幅を算出する段階と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この際、(b)段階は、各マルチキャストグループでのマルチキャスト共有度を決定する段階と、所定のONUが加入された全体マルチキャストグループにおいて、各マルチキャスト共有度の逆数を取る段階と、各マルチキャスト共有度の逆数を全て加算する段階と、を備えることが好ましい。
【0013】
また、(d)段階において、所定のONUの平均マルチキャスト帯域幅は、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅と、最終マルチキャスト共有度とを乗算して算出されることが好ましい。
【0014】
(e)段階において、所定のONUの差等帯域幅は、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅と、全体ONUのサービス加重値の合計に対する所定のONUのサービス加重値の比率とを乗算して算出されることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る差等帯域幅割り当てシステムは、TDM−PON(Time Division Multiplexed Passive Optical Network)網の下向きトラフィック転送において、マルチキャストトラフィックの共有を基盤として公正に差等帯域幅を割り当てるシステムであって、ONUのサービス加重値値が記録されるサービス加重値テーブルブロックと、ONUの最終マルチキャスト共有度を算出するマルチキャスト共有運用ブロックと、ONUの最終マルチキャスト共有度が記録されるマルチキャストトラフィック共有テーブルブロックと、タイムスロット割り当て帯域幅情報、サービス加重値テーブルブロックから入力されたONU別サービス加重値情報、及びマルチキャストトラフィック共有テーブルブロックから入力された最終マルチキャスト共有度を用いて、各ONU別動的タイムスロット最大帯域幅を算出するタイムスロット仲裁ブロックと、ONU別動的タイムスロット最大帯域幅を転送制御ブロックに伝達するタイムスロット情報ブロックと、を備えることを特徴とする。
【0016】
この際、マルチキャスト共有運用ブロックは、マルチキャスト運用ブロックからマルチキャストグループ、所定のマルチキャストに加入された総メンバーONUの数、及び所定のマルチキャストに加入されたONUの情報を提供されることが好ましく、タイムスロット仲裁ブロックのタイムスロット割り当て帯域幅情報は、転送キュー管理者ブロックから入力されることが好ましい。
【0017】
マルチキャスト共有運用ブロックは、現在サービスされているマルチキャストグループの全体個数と、ONUが加入されたマルチキャストグループの個数を決定し、各マルチキャストグループでのマルチキャスト共有度及び全体マルチキャストグループでのONUの総マルチキャスト共有度を算出した後、ONUの総マルチキャスト共有度をマルチキャストグループの全体個数で除し、ONUの最終マルチキャスト共有度を算出することが好ましい。
【0018】
タイムスロット仲裁ブロックは、最終マルチキャスト共有度を基礎として、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅に対するONUの平均マルチキャスト帯域幅を算出し、ONU別サービス加重値を用いて、ONUの差等帯域幅を算出した後、ONUの差等帯域幅から平均マルチキャスト帯域幅を差し引きして、ONUの動的タイムスロット最大帯域幅を算出することが好ましい。
【0019】
TDM−PON網は、多数のONUと、少なくとも1つのOLT(Optical Line Terminal)とを含み、OLTから個別ONUへ転送される下向きトラフィックは、光分配器で分配され、OLTから個別ONUへ転送される下向きトラフィックは、TDM方式で動作することが好ましい。
【0020】
従って、本発明では、OLTの周期的な下向き帯域幅割り当て時点毎に、各ONUが加入したマルチキャストグループのトラフィック共有度及び管理者により制御されるONU別サービス加重値によって、動的にONU別最大割り当て可能な動的タイムスロットの帯域幅を決定する。また、これにより、下向きタイムスロットを割り当て、下向きトラフィックを転送することによって、ONU別差等帯域幅割り当てにおいて公正性が厳密に保証されることができるようにする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マルチキャストトラフィック共有を基盤としてONU別にトラフィック共有度を導き出し、サービス加重値に基づいて差等的に帯域幅を割り当てることによって、TDM−PONネットワーク性能の側面において次のような効果を発揮することができる。
【0022】
第一に、マルチキャストトラフィックをマルチキャストバッファ及び独立的なマルチキャストタイムスロット割り当てを通じて独立的に転送することによって、TDM−PONの下向きトラフィックにおいてマルチキャストサービスが効率的に提供されることができるようにし、マルチキャストトラフィック転送に必要な帯域幅及びOLTのマルチキャストパケットプロセシングを最小化することによって、高い網転送効率を維持することができる。
【0023】
第二に、個別ONUが実際割り当てられるマルチキャスト帯域幅を効率的に導き出し、これを全体帯域幅割り当てに反映することによって、特定のONUがマルチキャストサービスを通じて多くの帯域幅を独占する問題を防止することができる。
【0024】
第三に、本発明において、マルチキャストトラフィック共有度の算出に必要なマルチキャストグループの情報は、既存の常用スイッチでマルチキャストサービスを支援するために運用及び維持されるマルチキャスト情報を基盤として容易に獲得できるので、システム変更を最小化することができる。
【0025】
第四に、本発明において、ONUのサービス加重値は、網管理者により制御され得るので、帯域幅割り当てにおいてONU別差等サービスが管理者により動的に調節することができる。これにより、より効率的な網運営及びサービス提供を可能にする。
【0026】
第五に、本発明は、急激に変化する加入者のマルチキャスト及びユニキャストトラフィックサービスによって動的タイムスロット割り当て帯域幅の大きさを順応的に調節することによって、多数のマルチキャストサービスを効率的に収容すると共に、管理者により設定された全体的な比例帯域幅が常に維持されることができる。これにより、ONU間の公正な帯域幅割り当て及び効率的差等サービスが持続的になされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。下記の実施例は、当業者に本発明の思想が十分に伝達され得るようにするために一例として提示されるものである。したがって、本発明は、下記の実施例に限らず、様々な変形が可能である。
【0028】
(実施形態)
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0029】
図1は、一般的なFTTC(Fiber-to-the-Curb)タイプのパッシブ型TDM−PONネットワークの構成図を示す。
【0030】
TDM−PON網は、多数のONU101a、101b、…、101nと、下向きデータ転送を制御するOLT100とで構成される。OLT100から転送される下向きトラフィックは、光分配器102で分配され、全てのONU101a、101b、…、101nに一括的に転送される。下向きトラフィックは、多数のONUに転送されるべきマルチキャストトラフィックと、個別ONUに転送されるべきユニキャストトラフィックとに分けられる。
【0031】
OLT100から多数のONU101a、101b、…、101nへの下向きデータ転送は、光分配器102を通じて網内の全てのONU101a、101b、…、101nにブロードキャスティグ方式で伝達された後にフィルタリングされるTDM方式で動作する(103)。これと反対に、上向きデータトラフィック転送は、ONUの帯域幅予約及びOLTの帯域幅割り当てによる予約基盤のTDMA方式で制御される(104)。OLT100から光分配器102間の共通リンクは、最大15km程度の長距離(105)である。下向き転送は、論理的に点−対−多点構造、上向き転送の場合は、点−対−点構造をなす。ONUには、全二重通信(Full Dulplex)のために送受信モジュールが存在するので、上向き及び下向きデータ転送は、互いに独立して行われる。
【0032】
これらのうち、下向きデータ転送は、周期的な転送サイクルTcycle106と、内部タイムスロット(timeslot=TS)により行われる。各転送サイクルは、静的トラフィック転送サービスのためのタイムスロットTSstatic108と、マルチキャストトラフィック転送のためのタイムスロットTSmcast109と、個別ONUに動的に割り当てられるタイムスロットTS1、…、TSN107とで構成される。このような周期的下向きトラフィック転送は、個別ONUポート毎に独自的なタイムスロットを割り当てる方式のほかに、一括的なパケットスケジューリングで具現されることもできるが、その原理は同一である。
【0033】
TDM−PONの下向きトラフィック転送において保証されるべき重要な性能要素は、転送効率、サービス効率、帯域幅割り当てにおいてONU間の公正性、そしてONU間の制御可能な差等サービス提供などである。OLTは、基本的に下向きタイムスロットの公正な割り当てを通じて上記の事項を保証することができる。同じONUを目的地とするユニキャストフレーム間の差等サービスは、OLT内部のONU別に割り当てられた下向きデータバッファ内のトラフィックを、事前に定義された優先順位を基盤とするパケットスケジューリング方式により転送することによって保証することができる。このような下向きデータ転送の特徴は、上向きデータ転送の場合と同一である。したがって、単純にONU別ユニキャストトラフィックのみを考慮すれば、下向きタイムスロットは、各ONU別に規定されたサービス加重値に比例して割り当てることが妥当である。
【0034】
しかし、マルチキャストトラフィックは、既存のパケットスイッチングとは異なる方式でTDM−PONのOLTで処理される必要がある。すなわち、OLTが単一のマルチキャストフレームを下向きに転送しても、光分配器を通じて当該フレームは、全てのONUに伝達されることができ、マルチキャストサービスを要請したONUは、フィルタリングを通じてこれを選択的に受信できなければならない。したがって、TDM−PONの下向き転送の場合、ユニキャストトラフィック及びマルチキャストトラフィックが同じ下向き帯域幅を占有しても、実際ONU当たり割り当て帯域幅は、相当な差異が発生するようになる。これは、上向き転送とは対比される事項であって、TDM−PONが放送型サービス提供において魅力的に判断される点である。しかし、既存のパケットスイッチング方式では、フレーム転送問題を引き起こすことができる。例えば、多重フレーム転送、すなわち同じフレームが重複して目的地ノードに伝達される問題が発生する可能性がある。
【0035】
これを効率的に防止するためには、OLTがマルチキャストトラフィックを毎度の転送周期の中で特定領域において一括的に転送することが必要であり、これは、ONU別下向き転送ポートでマルチキャストトラフィックを選択的に処理する方式に比べて、システム混雑度を著しく低減することができる。公正な下向き帯域幅共有を保証するために、このようなマルチキャストトラフィック共有は、ユニキャストトラフィック転送のためのONU別タイムスロットの割り当て及び全体帯域幅割り当てに必ず反映されなければならない。すなわち特定のONUが多数のマルチキャストサービスに加入して高いマルチキャスト帯域幅を既に割り当てられた場合、当該ONUのユニキャスト帯域幅は、このような点を反映して決定されなければならない。この際、特定のマルチキャストストリーム転送に使われた帯域幅は、当該マルチキャストサービスに加入された全てのONUが共有したものなので、各ONU別に実際割り当てられたマルチキャスト転送帯域幅のみを考慮しならなければならない。反対に、特定のONUがマルチキャストサービスに全く加入していない場合、OLTは、サービス加重値に比例した帯域幅を完全に保証しなければならない。
【0036】
図2は、TDM−PONネットワークにおいて下向きデータ転送のためのOLTの動作を説明するブロック図である。
【0037】
メトロ網及びバックボーン網において、多様なマルチキャストトラフィック及びユニキャストトラフィック200がOLT100に流入される。すると、OLT100のスイッチ201は、多様なトラフィックをサーチエンジン(Search Engine)202とフォワードエンジン(Forward Engine)203により目的地アドレス及びデータパケットの種類によってスイッチングする。
【0038】
この際、マルチキャストパケットに関する情報は、OLTが運用するマルチキャスト運用ブロック(Multicast Management Block)204により維持され、これは、常用スイッチが基本的に提供するVLAN及びIGMP機能により具現される。また、スイッチング方式において、一般的なパケットスイッチング方式とは異なって、フォワードエンジン203は、マルチキャストパケットをコピーせずに、ただパケットがマルチキャストパケットであることをフォワーディングブロック205に通知する。
【0039】
すると、フォワーディングブロック205は、マルチキャストフレームを指定された下向きマルチキャストバッファにフォワーディングし、ユニキャストフレームを個別ONUのための下向きユニキャストバッファにフォワーディングする。具体的に、フレームは、各ポートの‘Egress rule’ブロック206において、各ポートの論理的‘Egress rule’により、該当ポートの正規化された転送規則と一致するかを検査する。その後、点−対−多点エミュレーション機能のためのSME(Shared Media Emulation)ブロック207において、下向き転送に必要な論理的リンク識別子であるLLID(Logical Link Identification)タグがユニキャスト及びマルチキャストによって事前に定義された方式で付着される。この際、論理的識別子付着方式は、TDM−PON技術によって若干の差異はあるが、基本的な目的は同様である。
【0040】
このような方式でバッファリングされたデータフレームは、図1に示されたように、Tcycleを周期とする周期的データ転送方式で個別ONUに転送される。この際、各転送周期毎にサーキット(Circuit)電話網水準の音声品質を保証するためのT1E1エミュレーションのためのTSstaticとマルチキャストトラフィックのためのTSmcastタイムスロットは、他の動的タイムスロットより先ず割り当てられ、該当トラフィックが転送される。また、各スロットで周期当たり転送された静的(static)及びマルチキャストトラフィックサービス総量情報であるAstaticとAmcastは、ONU別ユニキャスト動的タイムスロットの割り当てのために転送キュー管理者ブロック(Transmission queue manager)208からタイムスロット割り当てブロック(Timeslot allocation)209に伝達される。この際、1転送周期の総帯域幅をAcycleとすれば、ONUのユニキャスト及びマルチキャストトラフィック転送のために動的に割り当てられることができる総帯域幅Adyn+Amcastは、Acycle−Astaticと同一である。このようなサービス情報に基づいてタイムスロット割り当てブロック209は、割り当てアルゴリズムにより個別ONUの最大タイムスロット帯域幅であるAdyn、jを決定した後、この情報を転送制御ブロック(Transmission Controller)210に伝達する。
【0041】
これにより、各ONUバッファにバッファリングされたユニキャストフレームは、割り当てられたAdyn、jを越えない限度内で、事前に定義されたパケットスケジューリングアルゴリズムによりサービスされて転送される。この際、ONUバッファに蓄積されたフレームの総量が割り当てられた最大帯域幅より小さい場合、該当ONUのTSは、現在累積されたフレームのみを処理した後、待機せずに終了し、次の順次のONUのTSが始まる。これは、高い網転送効率を維持するための方式であって、これにより、ONUのサービス総量SWは、次の数式1で表すことができる。
【0042】
[数式1]
SW=min(Q、Adyn、j
【0043】
ここで、Qは、バッファリングされたデータの総量を意味する。
【0044】
図3は、図2に示されたタイムスロット割り当てブロック209の具体的な構成を示すブロック図である。
【0045】
タイムスロットの帯域幅割り当ては、制御可能な公正な差等帯域割り当てを目的とし、ONUの最終割り当て帯域幅は、本発明で提案されたマルチキャストトラフィック共有を基盤とする差等帯域幅割り当て(S−FDBA=Share−based Fair Differentiated Bandwidth Allocation)アルゴリズムによりなされる。
【0046】
まず、サービス加重値テーブル(Service weight table)ブロック300には、網管理者が動的に設定する各ONUのサービス加重値がメモリ配列の形態で記録される。
【0047】
マルチキャスト共有運用ブロック(Multicast Share Management Block)301は、図2で説明されたマルチキャスト運用ブロック204の情報がONUのマルチキャストサービス脱退及び加入により変更される時、これを反映してマルチキャストトラフィック共有テーブル情報を更新する機能を行う。すなわち、OLTのマルチキャスト運用ブロック204は、マルチキャストグループMG、該当マルチキャストの共有度、すなわち加入された総メンバーONUの数S[MG]、及び該当グループに加入されたONUの情報[Member ONUs]をマルチキャスト共有運用ブロック301に提供する。この情報に基づいてマルチキャスト共有運用ブロック301は、提案された共有基盤比例帯域幅割り当てアルゴリズムによりONU別トラフィック共有度を計算した後、この情報をマルチキャストトラフィック共有テーブルブロック302に記録する。
【0048】
タイムスロット仲裁ブロック303は、毎度の転送周期のTSstatic及びTSmcastが割り当てられた時点に、転送キュー管理者ブロック208から入力されたタイムスロット割り当て帯域幅情報Astatic、Amcast、サービス加重値テーブルブロック300から入力されたONU別サービス加重値情報W、W、…、W、及びマルチキャストトラフィック共有テーブルブロック302から入力されたマルチキャストトラフィック共有情報S、S、…、Sを用いて、S−FDBAのタイムスロット割り当て方式により、ONU別最大動的タイムスロット帯域幅Adyn、1、Adyn、2、…、Adyn、Nを計算する。計算された最大タイムスロット帯域幅情報Adyn、1、Adyn、2、…、Adyn、Nは、タイムスロット情報ブロック304を介して図2に示されたOLT転送制御ブロック210に伝達され、各ONUのバッファに蓄積されたデータフレーム転送に活用される。
【0049】
図4は、本発明の好ましい実施形態に係るマルチキャストトラフィック共有を基盤とする公正な差等帯域幅(differentiated bandwidth)の割り当て方法を説明するためのフローチャートである。
【0050】
まず、マルチキャスト共有運用ブロック301は、マルチキャスト運用ブロック204から提供される情報を基盤として現在サービスされているマルチキャストグループの全体個数Nmcastと特定ONUが加入されたマルチキャストグループの個数Nmcast、jを決定する(ステップ400)。
【0051】
その後、マルチキャスト共有運用ブロック301は、各マルチキャストグループでのONUのマルチキャスト共有度を決定し、これを用いてONUの総マルチキャスト共有度を算出する(ステップ401)。これは、各ONU別にマルチキャストタイムスロットで割り当てられた帯域幅を確認する過程であって、マルチキャスト運用ブロック204から伝達されたマルチキャストグループの共有度S[MG]を通じて獲得される。
【0052】
例えば、特定のマルチキャストグループにm個のONUが加入されている場合、グループのマルチキャスト共有度はmであり、これは、メンバーONU別に該当マルチキャストサービスに必要なマルチキャスト転送帯域幅の1/mの割合で帯域幅を割り当てられることとなる。したがって、マルチキャスト共有運用ブロック301は、ONUが加入された総Nmcast、j個のマルチキャストグループそれぞれの共有度の逆数を加算して、ONUの総マルチキャスト共有度を計算する。
【0053】
その後、ONUの総マルチキャスト共有度を、サービスされている全体マルチキャストグループの数Nmcastで除し、各転送周期毎にONUに割り当てられるマルチキャストトラフィック帯域幅の平均比率、すなわちONUの最終マルチキャスト共有度Sを導き出す(ステップ402)。このような過程により、Sは、次の数式2により求められる。
【0054】
[数式2]

【0055】
このようなマルチキャストトラフィック共有度を基盤として、タイムスロット仲裁ブロック303は、総Amcastの帯域幅がマルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた場合、平均的なONU別マルチキャスト帯域幅Amcast、jを次の数式3のように導き出すことができる(ステップ403)。
【0056】
[数式3]

【0057】
この際、仮に、異なる平均フレームサイズを有するいろいろな種類のマルチキャストサービスが同時になされる場合、上記の数式3によるマルチキャスト帯域幅は、ONUが属するマルチキャストサービス種類別に導き出され、ユニキャストタイムスロット値の算定に適用される。
【0058】
さらに、タイムスロット仲裁ブロック303は、網管理者が動的に設定したONU別サービス加重値を用いて差等帯域幅Aweight、jを次の数式4のように算出する(ステップ404)。
【0059】
[数式4]

【0060】
上記の差等帯域幅Aweight、jは、網管理者がトラフィック種類に関係なく設定したONU別下向き帯域幅の最大値であるから、S−FDBAアルゴリズムは、公正な比例帯域幅割り当てのために、数式4の静的差等帯域幅Aweight、jから数式3によるONU別マルチキャスト帯域幅Amcast、jを差し引きしたタイムスロット帯域幅を、各ONU別動的タイムスロット最大帯域幅Adyn、jとして割り当てる(ステップ405)。これにより決定される各ONU別動的タイムスロット最大帯域幅Adyn、jは、数学式5の通りである。
【0061】
[数式5]

【0062】
このように各ONU別に決定されたAdyn、j情報は、OLTの転送制御ブロック210に伝達され、前述したような数式1に記述された方式により各ONUのフレーム転送の基準として使われる。したがって、マルチキャスティング及びユニキャスティングトラフィック転送に必要な全体ONU別転送帯域幅は、S−FDBAアルゴリズムによりユーザが指定したサービス加重値に比例して常に一定に維持される。
【0063】
以上において説明した本発明は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であるので、上述した実施例及び添付された図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】一般的なFTTC(Fiber-to-the-Curb)タイプのパッシブ型TDM−PONネットワークの構成図である
【図2】TDM−PONネットワークにおいて下向きデータ転送のためのOLTの動作を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示されたタイムスロット割り当てブロック209の具体的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態に係るマルチキャストトラフィック共有を基盤とする公正な差等帯域幅の割り当て方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
100:OLT
102:光分配器
101a、101b、…、101n:ONU
201:スイッチ
202:サーチエンジン
203:フォワードエンジン
204:マルチキャスト運用ブロック
205:フォワーディングブロック
208:転送キュー管理者ブロック
209:タイムスロット割り当てブロック
210:転送制御ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDM−PON (Time Division Multiplexed Passive Optical Network) 網の下向きトラフィック転送において、マルチキャストトラフィックの共有を基盤として公正に差等帯域幅を割り当てる方法であって、
(a)現在サービスされているマルチキャストグループの全体個数と、所定のONU(optical network unit)が加入されたマルチキャストグループの個数を決定する段階と、
(b)各マルチキャストグループでのマルチキャスト共有度及び全体マルチキャストグループでの前記所定のONUの総マルチキャスト共有度を算出する段階と、
(c)前記所定のONUの総マルチキャスト共有度を前記マルチキャストグループの全体個数で除し、前記所定のONUの最終マルチキャスト共有度を算出する段階と、
(d)前記最終マルチキャスト共有度を基礎として、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅に対する前記所定のONUの平均マルチキャスト帯域幅を算出する段階と、
(e)ONU別サービス加重値を用いて、前記所定のONUの差等帯域幅を算出する段階と、
(f)前記所定のONUの差等帯域幅から平均マルチキャスト帯域幅を差し引きして、前記所定のONUの動的タイムスロット最大帯域幅を算出する段階と、を備えることを特徴とする差等帯域幅の割り当て方法。
【請求項2】
前記(b)段階は、各マルチキャストグループでのマルチキャスト共有度を決定する段階と、
前記所定のONUが加入された全体マルチキャストグループにおいて、前記各マルチキャスト共有度の逆数を取る段階と、
前記各マルチキャスト共有度の逆数を全て加算する段階と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の差等帯域幅の割り当て方法。
【請求項3】
前記(d)段階において、前記所定のONUの平均マルチキャスト帯域幅は、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅と、前記最終マルチキャスト共有度とを乗算して算出されることを特徴とする請求項1に記載の差等帯域幅の割り当て方法。
【請求項4】
前記(e)段階において、前記所定のONUの差等帯域幅は、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅と、全体ONUのサービス加重値の合計に対する前記所定のONUのサービス加重値の比率とを乗算して算出されることを特徴とする請求項1に記載の差等帯域幅の割り当て方法。
【請求項5】
所定のONUバッファに蓄積されたフレームの総量が所定のONUに割り当てられた動的タイムスロット最大帯域幅より小さい場合、所定のONUのタイムスロットは、現在累積されたフレームのみを処理した後、待機せずに終了することを特徴とする請求項1に記載の差等帯域幅の割り当て方法。
【請求項6】
TDM−PON(Time Division Multiplexed Passive Optical Network)網の下向きトラフィック転送において、マルチキャストトラフィックの共有を基盤として公正に差等帯域幅を割り当てるシステムであって、
ONUのサービス加重値値が記録されるサービス加重値テーブルブロックと、
ONUの最終マルチキャスト共有度を算出するマルチキャスト共有運用ブロックと、
ONUの最終マルチキャスト共有度が記録されるマルチキャストトラフィック共有テーブルブロックと、
タイムスロット割り当て帯域幅情報、サービス加重値テーブルブロックから入力されたONU別サービス加重値情報、及びマルチキャストトラフィック共有テーブルブロックから入力された最終マルチキャスト共有度を用いて、各ONU別動的タイムスロット最大帯域幅を算出するタイムスロット仲裁ブロックと、
ONU別動的タイムスロット最大帯域幅を転送制御ブロックに伝達するタイムスロット情報ブロックと、を備えることを特徴とする差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項7】
前記マルチキャスト共有運用ブロックは、マルチキャスト運用ブロックからマルチキャストグループ、所定のマルチキャストに加入された総メンバーONUの数、及び所定のマルチキャストに加入されたONUの情報を提供されることを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項8】
前記タイムスロット仲裁ブロックのタイムスロット割り当て帯域幅情報は、転送キュー管理者ブロックから入力されることを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項9】
前記マルチキャスト共有運用ブロックは、現在サービスされているマルチキャストグループの全体個数と、ONUが加入されたマルチキャストグループの個数を決定し、各マルチキャストグループでのマルチキャスト共有度及び全体マルチキャストグループでのONUの総マルチキャスト共有度を算出した後、ONUの総マルチキャスト共有度を前記マルチキャストグループの全体個数で除し、ONUの最終マルチキャスト共有度を算出することを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項10】
前記タイムスロット仲裁ブロックは、前記最終マルチキャスト共有度を基礎として、マルチキャストトラフィックサービスに割り当てられた全体帯域幅に対するONUの平均マルチキャスト帯域幅を算出し、ONU別サービス加重値を用いて、ONUの差等帯域幅を算出した後、ONUの差等帯域幅から平均マルチキャスト帯域幅を差し引きして、ONUの動的タイムスロット最大帯域幅を算出することを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項11】
前記TDM−PON網は、多数のONU(optical network unit)と、少なくとも1つのOLT(Optical Line Terminal)とを含むことを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項12】
前記OLTから個別ONUへ転送される下向きトラフィックは、光分配器で分配されること特徴とする請求項11に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項13】
前記OLTから個別ONUへ転送される下向きトラフィックは、TDM方式で動作することを特徴とする請求項12に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項14】
前記転送制御ブロックは、所定のONUバッファに蓄積されたフレームの総量が所定のONUに割り当てられた動的タイムスロット最大帯域幅より小さい場合、所定のONUのタイムスロットは、現在累積されたフレームのみを処理した後、待機せずに終了することを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。
【請求項15】
効率的に下向きマルチキャストトラフィックを収容するために、静的データバッファ、マルチキャストデータバッファ、及びONU別データバッファを含み、順次的な帯域幅割り当てを行うことによって、個別トラフィック転送を制御することを特徴とする請求項6に記載の差等帯域幅割り当てシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−318716(P2007−318716A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313974(P2006−313974)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(505144463)リサーチ アンド インダストリアル コーポレーション グループ (10)
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH AND INDUSTRIAL COOPERATION GROUP
【Fターム(参考)】