説明

TIPシステムおよびTIP監視制御装置

【課題】TIP検出器の駆動時間、信号の伝達遅れやプロセス計算機のパルス信号のONを検出するタイミングの遅れなどに影響を受けないTIP監視制御装置を提供する。
【解決手段】TIP監視制御装置10は、プロセス計算機100、TIP制御盤200およびデータ伝送部300を有する。プロセス計算機100は、操作入力部101、TIP走査処理部110、プロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111およびTIPレベルデータ記憶部112を有する。TIP制御盤200は、TIP駆動制御部201、TIPレベル処理部202、TIP位置処理部203、TIPレベルデータ蓄積部204、TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉内核計装システムの一つであるTIP監視制御装置およびそれを含むTIPシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型(BWR)原子力発電所における原子炉内核計装システムの1つである移動式炉心内計装装置(以下「TIP(Traversing Incore Probe)システム」という)は、原子力発電所の運転中に、原子炉内の軸方向に検出器を移動させて中性子束レベルを測定し、炉心軸方向各高さでの原子炉出力分布を得て、原子炉出力分布計算の基礎データを与えるものである。
【0003】
図13は、原子炉を含み従来のTIPシステムの全体の構成を示すブロック図である。
【0004】
TIPシステムは、原子炉510の炉心520内に設置された複数のTIP案内管530にTIP検出器540を移動させ、炉心頂より炉心底にTIP検出器540を引き抜く時に移動距離に対応したTIP位置信号を発生させ、そのTIP位置信号に同期してTIPレベル信号、局部出力領域モニタ(以下「LPRM(Local Power Range Monitor)」という)からのLPRMレベル信号、平均出力領域モニタ(以下「APRM(Average Power Range Monitor)」という)からのAPRMレベル信号を読み取ることにより、炉心内軸方向の中性子束分布の測定を行っている。
【0005】
このTIP検出器540の移動は、プロセス計算機590とTIP制御盤580とが連携をとりながら、TIP駆動装置570に駆動信号(検出器の挿入/引抜信号)を出力することにより行われる。
【0006】
また、TIP検出器540は、中性子照射により感度が減衰するため、測定を行う時のみ原子炉内に挿入し、測定しない時には原子炉外の遮へい容器560に格納しておき、中性子照射を極力最小限にして検出器感度の減衰を防いでいる。
【0007】
図14は、従来のTIPシステムの信号処理を含めた構成を示すブロック図である。
【0008】
TIPシステムによる中性子束レベルの測定動作は次の様に行われる。
【0009】
プロセス計算機590には、表示部600および操作入力部611が設置され、運転員はこれらを用いて、TIP走査信号(TIP走査開始/中断信号)や中性子束レベルの測定を行うTIP案内管530(LPRMストリング)の指定を行う。
【0010】
運転員により入力された信号は、プロセス計算機590のTIP走査処理部612で処理され、TIP制御盤580のTIP駆動制御部613に渡される。
【0011】
また、TIP制御盤580にはTIP制御盤操作パネル581が設置され、運転員はこのTIP制御盤操作パネル581上のスイッチから駆動要求や検出器の引抜/挿入要求操作を行うこともでき、TIP駆動制御部613は、プロセス計算機590からのTIP走査信号を入力し、TIP駆動装置570に対して駆動信号(検出器の挿入/引抜信号)を出力する。
【0012】
そして、TIP駆動装置570は、駆動信号に対応した方向にTIP検出器540を駆動する。
【0013】
一方、TIP検出器540によって測定された中性子束レベルは、TIPレベル信号として、TIP制御盤580のTIPレベル処理部614を経由して、プロセス計算機590のTIPレベル読込部616に入力される。
【0014】
また、TIP検出器540の炉心頂から炉心底における高さは、TIP検出器540が炉心頂から炉心底に移動するときに発生するTIP位置信号として、TIP制御盤580のTIP位置処理部615を経由して、プロセス計算機590のTIPレベル読込部616に入力される。
【0015】
プロセス計算機590のTIPレベル読込部616は、TIP位置信号がONしたタイミング(1インチ毎)でTIPレベル信号を読み込み、また、炉心頂と炉心底のタイミングでLPRMレベル信号、炉心頂と炉心中央と炉心底のタイミングでAPRMレベル信号を読み込み、プロセス計算機590のTIPレベルデータ記憶部617に記憶する。
【0016】
そして、プロセス計算機590のTIPレベルデータ記憶部617に記憶されたTIPデータは、TIP走査処理部612により表示部600に表示、印字部618にログ印字されるとともに、炉心性能計算処理部619に渡され、原子炉出力分布計算の基礎データとなる。
【0017】
図15は、局所出力領域モニタ(Local Power Range Monitor:以下「LPRM」という。)集合体(以下「LPRMストリング」という。)の軸方向位置の概念図である。
【0018】
LPRMストリングは炉心内に設けられ、各LPRMストリングは各々1本のTIP案内管530を内蔵し、その軸方向に沿って各々4個のLPRM検出器A、B、C、Dが固定配置されている。
【0019】
図16は、LPRMストリングの炉心内配置の概念図である。
【0020】
炉心内には多数のLPRMストリングが配置されており、図16の例では、LPRMストリング660が5つのグループに分けられる。
【0021】
TIP検出器540は1個のTIP検出器540で全てのLPRMストリング660をカバーするのではなく、これに対応してTIP検出器540はA、B、C、D、Eの5台が備えら、各TIP検出器540はおよそ10本のLPRMストリング内を順次走行することになる。
【0022】
どのLPRMストリング660にTIP検出器540を挿入させるかは、図13の選択機構550の回転円筒を回転させることにより選択される。この際、同一のLPRMストリング660に複数のTIP検出器540を挿入するような選択はなされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特公平5−11278号公報
【特許文献2】特開2000−28782号公報
【特許文献3】特開2006−145417号公報
【特許文献4】特開平5−312991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従来のTIPシステムでは、TIP制御盤がアナログ回路であったため、データを蓄積しておくことができず、TIP制御盤からプロセス計算機にTIPレベル信号とTIP位置信号をそのまま出力していた。
【0025】
そして、プロセス計算機において、TIP位置信号(パルス信号)がONした時のTIPレベル信号(アナログ信号)を、その高さにおけるTIPレベルとして同期をとって読み込む処理を行っていたが、プロセス計算機のハードウェアの制約上、パルス信号のON時間は100ミリ秒程度必要であった。
【0026】
そのため、TIP検出器の駆動速度は3インチ/秒以上に高速化できず、全炉心のTIPレベルの測定を完了するのに(15分〜30分間程度で測定完了)、プラント起動時間を短縮出来ない原因となっていた。
【0027】
また、信号の伝達遅れやプロセス計算機がパルス信号のONを検出するタイミングの遅れにより、TIPレベルデータを十分な精度で読み込めないという課題があった。
【0028】
それに加え、原子炉出力分布計算の基礎データとしては、TIP位置信号と同期して、LPRMレベル信号とAPRMレベル信号を入力しなければならないが、TIP制御盤は、LPRM盤、APRM盤とは独立して存在するため、TIP制御盤においてLPRMレベル信号とAPRMレベル信号をTIP位置信号に同期して入力することは出来ないという課題があった。
【0029】
また、プロセス計算機に読み込まれたTIPレベルデータは、炉心性能計算における出力分布計算の精度向上のための基礎データとして使用されるが、従来のTIPシステムでは、炉心内の全てのLPRMストリングのTIPレベルを測定するのに1〜2時間の時間を要していたため、このTIPレベル測定中にプラント状態、例えば、原子炉熱出力や炉心流量、制御棒位置などが変化し、現在の出力分布を正しく反映したTIPレベルデータの入力できず、原子炉出力分布計算の精度悪化を招く可能性があるという課題があった。
【0030】
また、従来のTIPシステムでは、TIP制御盤において共通案内管(コモンストリング)のTIPレベルを機械式のペンレコーダでプロットし、ペンレコーダのチャートから目視でTIPレベルを読み取って、各TIP検出器のコモンストリング間のTIPレベルが同一になるようにTIP検出器の校正電流値の調整(ゲイン調整)を行っていたが、機械式ペンレコーダのチャートを目視で読み取るのではTIPレベルを十分な精度で読み取れず、また、運転員が手動で校正電流値の調整を行っていたため多大な時間と労力を費やしていたという課題があった。
【0031】
また、従来のTIPシステムでは、TIP制御盤における校正電流値を確認して、TIP検出器の劣化診断を行っていたため、TIP劣化の長期的な傾向を判断することが難しく、TIP検出器の交換時期の計画を十分な精度で立てることが出来ないという課題があった。
【0032】
さらに、従来のTIPシステムでは、TIP制御盤とプロセス計算機との間で、各TIPについて、TIPレベル信号、TIP位置信号、選択されたLPRMストリングの情報すなわちチャンネル番号、炉心底、炉心頂などの特定位置にあるか否かの接点信号等のためのI/Oケーブルが必要であり、5台のTIP検出器で合計たとえば135本が必要であり、TIP制御盤とプロセス計算機との間の距離を100mとすると約13kmとなり、大きな物量のケーブルを必要としていた。
【0033】
そこで、本発明は、従来と同等の精度を確保しながら、TIP検出器の駆動時間、信号の伝達遅れやプロセス計算機のパルス信号のONを検出するタイミングの遅れなどに影響を受けずに高速走行が可能で、かつ、ケーブル物量を削減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記目的を達成するために、本発明に係るTIP監視制御装置は、プロセス計算機、TIP制御盤およびデータ伝送部を有するTIP監視制御装置であって、前記プロセス計算機は、TIP走査要求指令を受けてTIP走査信号を出力するTIP走査処理部と、LPRMレベル信号およびAPRMレベル信号および前記TIP制御盤で蓄積されたTIPレベルデータをTIP位置信号と同期した形で入力するプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部と、前記TIPレベルデータを格納するTIPレベルデータ記憶部と、を備え、前記TIP制御盤は、前記TIP走査信号を入力としてTIP駆動装置に駆動信号を出力するTIP駆動制御部と、前記TIP駆動装置からのTIPレベル信号を入力するTIPレベル処理部と、前記TIP駆動装置からのTIP位置信号を入力するTIP位置処理部と、TIP位置信号に同期した形でTIPレベル信号を入力しTIPレベルデータを蓄積するTIPレベルデータ蓄積部と、データ伝送部を介して前記プロセス計算機に、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを送信するTIP制御盤TIPレベルデータ送受信部と、を備え、前記TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部は、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを前記プロセス計算機に、送信するものであること、を特徴とする。
【0035】
また、 上記目的を達成するために、本発明に係るTIPシステムは、TIP検出器、選択機構、遮へい容器、TIP駆動装置およびTIP監視制御装置を具備するTIPシステムであって、前記TIP監視制御装置は、プロセス計算機、TIP制御盤およびデータ伝送部を有し、前記プロセス計算機は、TIP走査要求指令を受けてTIP走査信号を出力するTIP走査処理部と、前記TIP制御盤で蓄積されたTIPレベルデータ、LPRMレベル信号およびAPRMレベル信号を、TIP位置信号と同期した形で入力するプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部と、前記TIPレベルデータを格納するTIPレベルデータ記憶部とを備えること、前記TIP制御盤は、前記TIP走査信号を入力としてTIP駆動装置に駆動信号を出力するTIP駆動制御部と、前記TIP駆動装置からのTIPレベル信号を入力するTIPレベル処理部と、前記TIP駆動装置からのTIP位置信号を入力するTIP位置処理部と、TIP位置信号に同期した形でTIPレベル信号を入力しTIPレベルデータを蓄積するTIPレベルデータ蓄積部とを備えること、前記TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部は、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを前記プロセス計算機に、送信するものであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、従来と同等の精度を確保しながら、TIP検出器の駆動時間、信号の伝達遅れやプロセス計算機のパルス信号のONを検出するタイミングの遅れなどに影響を受けずに高速走行が可能で、かつ、併せてケーブル物量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るTIPシステムの第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態におけるTIPレベルデータ蓄積部の処理の流れを示すフロー図。
【図3】第1の実施形態におけるTIPレベルデータの構造を示す説明図。
【図4】第1の実施形態におけるプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部のLPRMレベル信号とAPRMレベル信号の読み込み処理の流れを示すフロー図。
【図5】本発明に係るTIPシステムの第2の実施形態の構成を示すブロック図。
【図6】第2の実施形態におけるTIPレベル測定中のプラント状態監視の処理の流れを示すフロー図(測定開始/終了タイミングおよび各LPRMストリングでの監視)。
【図7】第2の実施形態におけるTIPレベル測定中のプラント状態監視の処理の流れを示すフロー図(TIPレベルの監視)。
【図8】第2の実施形態におけるTIPレベル測定中のプラント状態監視の処理の流れを示すフロー図(TIP検出器の駆動時間の監視)。
【図9】本発明に係るTIPシステムの第3の実施形態の構成を示すブロック図。
【図10】本発明に係るTIPシステムの第4の実施形態の構成を示すブロック図。
【図11】第4の実施形態における校正電流値データ記憶部の構造を示す説明図。
【図12】第4の実施形態におけるTIP検出器の劣化診断画面の例を示す説明図。
【図13】原子炉を含み従来のTIPシステムの全体の構成を示すブロック図。
【図14】従来のTIPシステムの信号処理を含めた構成を示すブロック図。
【図15】LPRMストリング(LPRM集合体とTIP案内管)の軸方向位置の概念を示す説明図。
【図16】LPRMストリングの炉心内配置の概念を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明に係るTIPシステムの実施形態について説明する。ここで、同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0039】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明に係るTIPシステムの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態によるTIPシステムは、TIP検出器540、選択機構550、遮へい容器560、TIP駆動装置570およびTIP監視制御装置10を具備する。
【0041】
また、TIP監視制御装置10は、プロセス計算機100、TIP制御盤200、およびデータ伝送部300を備える。
【0042】
先ず、プロセス計算機100について説明する。
【0043】
プロセス計算機100は、操作入力部101、表示部102、印字部103、TIP走査処理部110およびプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111およびTIPレベルデータ記憶部112を有する。
【0044】
操作入力部101は、運転員が対話操作を行う部分である。TIP走査処理部110では、運転員からのTIP走査要求に従いTIP走査処理を行いTIP制御盤200にTIP走査信号を出力する。
【0045】
運転員は、プロセス計算機100の操作入力部101で対話操作を行い、運転員からのTIP走査要求に従いTIP走査処理部110においてTIP走査処理が行われる。
【0046】
また、TIP制御盤200で蓄積されたTIPレベルデータ及び現在のTIP位置信号は、データ伝送部300を介してプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111に入力される。
【0047】
また、LPRMレベル信号とAPRMレベル信号もTIP位置信号と同期した形でプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111に入力され、TIPレベルデータ記憶部112に格納される。
【0048】
次に、TIP制御盤200について説明する。
【0049】
TIP制御盤200は、TIP駆動制御部201、TIPレベル処理部202、TIP位置処理部203、TIPレベルデータ蓄積部204およびTIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205を有する。
【0050】
プロセス計算機100からのTIP走査信号は、TIP駆動制御部201に入力され、TIP駆動制御部201はTIP駆動装置650に駆動信号を出力する。
【0051】
TIPレベル処理部202はTIP駆動装置650からTIPレベル信号を入力し、アナログ信号をディジタル信号に変換した後、このディジタル信号を記憶するTIPレベルデータ蓄積部204に出力する。
【0052】
TIP位置処理部203はTIP駆動装置650からTIP位置信号を入力し、アナログ信号をディジタル信号に変換した後、このディジタル信号を記憶するTIPレベルデータ蓄積部204に出力する。
【0053】
TIPレベルデータ蓄積部204は、TIP位置信号と、この信号に同期した形でTIPレベル信号とを入力し、ディジタル信号としてTIP位置データおよびTIPレベルデータを蓄積する。
【0054】
TIPレベルデータ蓄積部204は、ディジタル情報として保有する上記各情報を、TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205に出力する。
【0055】
TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205は、プロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111と相まって、TIPレベルデータ蓄積部204から出力された前記の各データを、ネットワーク構造を有するデータ伝送部300により伝送できるようにする、たとえば、イーサネット(商標)などである。
【0056】
また、図示していないが、上記のTIP位置信号とTIPレベル信号以外にも、TIP駆動装置570からTIP制御盤200へは、選択されたLPRMストリングの情報すなわちチャンネル番号、炉心底、炉心頂などの特定位置にあるか否かの接点信号等が出力される。これらの信号は、TIP駆動制御部201で受信した後に、TIP制御盤走査送受信部206と、プロセス計算機走査送受信部115の間で、データ送信部300を介して、ネットワークにより伝送される。
【0057】
次に、データ伝送部300について説明する。
【0058】
データ伝送部300は、TIP制御盤200のTIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205からの出力であるTIPレベルデータおよびTIP位置信号を受け、プロセス計算機100のプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111に伝達する信号伝送機能を有する。
【0059】
ディジタル信号であるTIPレベルデータおよびTIP位置信号を伝送するデータ伝送部300は、例えばハブ等を使用する。
【0060】
本実施の形態における通常時の動作を以下に説明する。
【0061】
プロセス計算機100には操作入力部101が備えられ、運転員はこれを用いて、TIP走査信号(走査開始/中断信号)の要求や、中性子束レベルの測定を行うTIP案内管530の指定を行う。
【0062】
運転員により要求/指定された信号は、プロセス計算機100のTIP走査処理部110で処理され、TIP制御盤200のTIP駆動制御部201に出力される。
【0063】
また、TIP制御盤200にはTIP制御盤操作パネル210が設置され、運転員はこのTIP制御盤操作パネル210上のスイッチから駆動要求や検出器の引抜/挿入要求操作を行うこともでき、TIP駆動制御部201はプロセス計算機100からのTIP走査信号、またはTIP制御盤操作パネル210からの指令に基づき、TIP駆動装置570に対して駆動信号(検出器の挿入/引抜信号)を出力する。
【0064】
そして、TIP駆動装置570は駆動信号に対応した方向にTIP検出器540を駆動する。
【0065】
一方、TIP検出器540によって測定された中性子束レベルは、TIPレベル信号として、TIP制御盤200のTIPレベル処理部202を経由して、TIP制御盤200のTIPレベルデータ蓄積部204に入力される。
【0066】
また、TIP検出器540の炉心頂から炉心底における高さは、TIP検出器540が炉心底から炉心頂に挿入される時、及び、炉心頂から炉心底に引き抜かれる時に発生するTIP位置信号として、TIP制御盤200のTIP位置処理部203を経由して、TIPレベルデータ蓄積部204に入力される。
【0067】
TIPレベルデータ蓄積部204は、TIP位置信号に同期した形でTIPレベル信号を読み込み、TIPレベルデータとして格納する。
【0068】
TIPレベルデータ蓄積部204に格納されたTIPレベルデータは、TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205から、データ伝送部300を経由して、プロセス計算機100のプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111に各ストリングの走査完了時に受け渡される。
【0069】
また、TIPレベルデータ蓄積部204で格納されたTIP位置信号は、LPRMレベル信号、APRMレベル信号との同期を取るためTIP制御盤200のTIP制御盤TIPレベルデータ送受信部205から、データ伝送部300を経由して、プロセス計算機100のプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111に常時受け渡される。
【0070】
プロセス計算機100のプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111に入力されたTIPレベルデータは、LPRMレベル信号とAPRMレベル信号との同期が取られプロセス計算機100のTIPレベルデータ記憶部112に記憶される。
【0071】
プロセス計算機100のTIPレベルデータ記憶部112に記憶された測定データは、TIP走査処理部110により表示部102に表示、印字部103にログ印字されるとともに、炉心性能計算処理部113に渡され、原子炉出力分布計算の基礎データとなる。
【0072】
ここで、TIP制御盤200のTIPレベルデータ蓄積部204は、TIP検出器540の駆動速度の高速化と、0.1インチ毎の高精度での位置検出を可能にするため、TIPレベルデータの蓄積処理を高速で行う必要があり、TIP制御盤200のTIP駆動制御部201とは独立した構成とする必要がある。以下、この点を説明する。
【0073】
図2は、本実施形態におけるTIPレベルデータ蓄積部の処理の流れを示すフロー図である。
【0074】
図3は、本実施形態におけるTIPレベルデータの構造を示す説明図である。
【0075】
TIPレベルデータ蓄積部204では、TIPレベルの測定が開始されると、TIP検出器540が炉心底から炉心頂に挿入される間と、TIP検出器540が炉心頂から炉心底に引き抜かれる間、現在の時刻とTIP位置とTIPレベルの入力を同時に行い、それら3つのデータを一組にパッケージ化して、TIPレベルデータに記憶する。
【0076】
すなわち図2に示すように、炉心底から測定を開始し、現在の時刻を入力し(S01)、TIP位置処理部203よりTIP位置信号を入力し(S02)、TIPレベル処理部202よりTIPレベル信号を入力し(S03)、以上の現在の時刻、TIP位置、TIPレベルを各一組にしてTIPレベルデータ蓄積部204に記憶(S04)させる。
【0077】
これを、図2に示すように、炉心底から炉心頂まで挿入後、炉心底から炉心頂までの間の挿入状態、または炉心頂から炉心底までの引抜状態のいずれかにあることを確認しながら(S05)TIP位置にして0.1インチ毎に繰り返し実施する。炉心底に戻ったことを判定し終了する。
【0078】
TIPレベルデータ蓄積部204にて記憶されるTIPレベルデータは、図3に示すように第1から第5の各TIP検出器毎に第01から第10チャンネルについて記憶される。
【0079】
また、プロセス計算機100のプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111は、TIP位置信号に同期した形でのLPRMレベル信号とAPRM信号の読み込みを可能にするため、データ伝送部300からのTIP位置信号の受信処理を高速で行う必要があり、プロセス計算機100のTIP走査処理部110とは独立した構成とする必要がある。
【0080】
図4は、本実施形態におけるプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111のLPRMレベル信号とAPRMレベル信号の読み込み処理の流れを示すフロー図である。
【0081】
データ伝送装置300より現在のTIP検出器540位置を入力し(S11)、TIP検出器540位置が炉心中央にあるか否かを判定し(S12)、YESであれば、APRMレベル信号をTIPレベルデータ記憶部112に記憶(S13)させた後に次のステップS14に移行する。ステップS12での判定がNOの場合は、そのまま次のステップS14に移行する。
【0082】
続いて、TIP検出器540位置が炉心底または炉心頂のいずれかにあるか否かを判定し(S14)、YESであれば、LPRMレベル信号、APRMレベル信号をTIPレベルデータ記憶部112に記憶させ(S15)、その後に次のステップS16に移行する。ステップS14での判定がNOの場合は、そのまま次のステップS16に移行する。
【0083】
以上を、TIP検出器540が、炉心底から炉心頂までの間の挿入状態、または炉心頂から炉心底までの引抜状態のいずれかにあることを確認(S16)しながら各TIP位置について高速で繰り返す。最終的に、炉心底に戻ったことを判定したら終了する。
【0084】
プロセス計算機TIPレベルデータ送受信部111では、現在のTIP位置信号から、TIP検出器540が炉心底、炉心中央、炉心頂のいずれかにいるかを判定し、それぞれの高さにおけるLPRMレベル信号とAPRMレベル信号を、TIPレベルデータ記憶部112に記憶する。この判定処理は高速で繰り返し実施され、TIPレベルデータ記憶部112に記憶されるLPRMレベルとAPRMレベルは、各TIP検出器540毎に全てのチャンネルについて記憶される。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、TIPレベル信号とTIP位置信号をTIP制御盤200のTIPレベルデータ蓄積部204で同期をとって収集するとともに、TIP制御盤200からプロセス計算機100に対してTIP位置信号を常時伝送することでプロセス計算機100においてもLPRMレベル信号とAPRM信号をTIP位置信号と同期をとって収集する。
【0086】
この結果、プロセス計算機100のハードウェアによるTIP検出器540の駆動時間の制約を受けない、また、信号の伝達遅れやプロセス計算機100のパルス信号のONを検出するタイミングの遅れなどに影響を受けない状態で、TIP駆動速度を高速化し、TIP位置信号に同期した形でTIPレベル信号を誤差なく測定することが可能となる。
【0087】
また、原子炉出力分布計算の基礎データとして必須であるLPRMレベル信号とAPRMレベル信号を、従来と同等の精度でTIP位置信号と同期して入力することが可能となる。
【0088】
効果の程度については、プロセス計算機は多くの機能を持ったマルチタスクすなわち種々のプログラムが実行されていることから、タスクのTIP位置パルスの高速読み込み性能に限界があり、1秒間に3インチ(76.2mm)の速度でしたTIP検出器を動かすことができなかった。
【0089】
一方、本実施形態では、専用装置であるTIP制御盤200でTIPレベル信号とTIP位置信号の同期を図りデータ化した後にプロセス計算機100に出力することにより、プロセス計算機のTIP位置パルスの高速読み込み性能の限界に影響を受けず、TIP制御装置側の性能でTIP検出器の速度を高速化できる。
【0090】
たとえば、基本的にTIP駆動装置570の駆動能力では1秒間に12インチ(304.8mm)の速度でTIP検出器を動かすことができるとすれば、従来のような制約を受けずにこの速度で駆動でき、簡単に見積もると4倍の高速化ができる。この場合、従来方式では全ストリングについての測定に1〜2時間を要していたのに対して、15分〜30分間程度で完了することができる。
【0091】
さらに、ストリング毎にTIP検出器540位置と同期したTIP読み取り値データパッケージを作成することが可能となり、伝送インターフェイスとしてたとえばハブとイーサネットによる伝送を備えることにより、プロセス計算機100とTIP制御盤200との間の、TIPレベル信号、TIP位置信号等の入出力に要していた約13kmのメタルI/Oケーブルに代えて、ネットワーク用ケーブルたとえばツイストペアケーブル1本のみとなり、ケーブル物量を大幅に削減することができる。
【0092】
〔第2の実施形態〕
図5は、本発明に係るTIPシステムの第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0093】
本実施形態によるTIPシステムは、第1の実施形態の変形であって、プロセス計算機100は、プラント状態監視処理部121を有する。プラント状態監視制御部121は、プラント状態信号およびTIPレベルデータ記憶部112からの出力を入力とし、演算処理結果をTIP走査処理部に出力する。
【0094】
その他の構成要素は、第1の実施形態とほぼ同様である。
【0095】
以下に、本実施形態の動作を説明する。
【0096】
プロセス計算機100の操作入力部101から運転員が入力した走査開始要求や走査終了要求は、プロセス計算機100のTIP走査処理部110で処理され、TIP制御盤200のTIP駆動制御部201に出力されるが、並行して、プラント状態監視処理部121にも出力される。
【0097】
プラント状態監視処理部121では、原子炉熱出力、炉心流量、制御棒位置などのプラント状態信号を取り込み、TIP走査処理部110から走査開始要求が入力されると監視を開始し、プラント状態の異常を検出すると、TIP走査処理部110に走査中断要求を出力するとともに、その検出情報を操作入力部101より運転員に通知する。
【0098】
プラント状態監視処理部121が、TIP走査処理部110から走査終了信号を受け取ると、監視を停止する。
【0099】
ここで、プラント状態監視処理部121における、TIPレベル測定中のプラント状態監視は、監視すべきプラント状態信号の種類により、幾通りか存在するためそれぞれの種類に対応した処理を用意する必要がある。
【0100】
図6は、本実施形態におけるTIPレベル測定中のプラント状態監視の処理の流れ、すなわち、測定開始から測定終了までの間、各LPRMストリングのTIPレベルを測定したタイミングでプラント状態を監視する処理の流れを示すフロー図である。プラント状態信号としては、原子炉熱出力、炉心流量、制御棒位置が相当する。
【0101】
以下順次、処理の流れを説明する。
【0102】
プラント状態監視処理部121では、運転員からの測定開始要求を入力すると、その時のプラント状態信号を開始時データとして記憶する(S21)。
【0103】
その後、1つのLPRMストリングのTIPレベルの測定が完了した時のプラント状態信号をストリング毎データとして記憶し(S22)、開始時データとストリング毎データの差があるしきい値以内であることを判定し(S23)、これらのステップS21、S22の動作を全てのLPRMストリングについて繰り返す。
【0104】
開始時データとストリング毎データの差があるしきい値を越えた場合かどうかを判定する(S23)。しきい値を超えた場合は、異常が発生したと判定し、TIP走査処理部110を経由して、運転員に通知するとともに、TIP走査を中断する(S24)。
【0105】
この診断処理は、図6に示すように全てのLPRMストリングのTIPレベルを測定するたびに実施し、測定中のプラント状態信号の変化を監視する。
【0106】
また、運転員から走査終了要求を入力すると、その時のプラント状態信号を終了時データとして記憶する(S25)。
【0107】
次に、開始時データとストリング毎データの差があるしきい値を越えたかどうかを判定し(S26)、しきい値を越えた場合は異常が発生したと診断し、TIP走査処理部110を経由して、運転員に通知する(S27)。
【0108】
尚、制御棒位置の監視においては、変化した制御棒座標と変化量に基づき、予め用意した影響度の評価テーブルにより、影響度を算出し、影響度によって異常と判断する様な方法も考えられる。
【0109】
本診断処理により、プラント全体の出力変動を捉えることができる。
【0110】
図7は、本実施形態におけるTIPレベル測定中のプラント状態監視処理部121における処理の流れを示すフロー図であり、TIPレベルの監視動作を示すものである。
【0111】
プラント状態監視処理部121では、TIPレベルデータ記憶部112の中の炉心底から炉心頂に挿入した時のTIPレベルデータを取出し(S31)、さらに炉心底から炉心頂に引き抜いた時のTIPレベルデータを取り出す(S32)。
【0112】
挿入時データと引抜時データの同じ高さにおけるTIPレベルの差がしきい値以内であることを判定し(S34)、しきい値以内であればステップS31からS33を繰り返す。
【0113】
この診断処理は、図7に示すように全てのLPRMストリングのTIPレベルを測定するたびに実施し、TIPレベルの異常の有無を監視する。
【0114】
挿入時データと引抜時データの同じ高さにおけるTIPレベルの差があるしきい値を超えた場合は、当該ストリングのTIPレベルの測定に異常が発生したと判定し、TIP走査処理部110を経由して、運転員に通知するとともに、TIP走査を中断する(S35)。
【0115】
本診断処理により、TIPレベルの異常を精度良く検出することができる。
【0116】
図8は本実施形態におけるTIPレベル測定中のプラント状態監視の処理の流れを示すフロー図であり、TIP検出器540の駆動時間を監視するものである。
【0117】
プラント状態監視処理部121では、TIPレベルデータ記憶部112の中の炉心底に到達した時のTIPレベルデータの時刻を取り出し(S41)、続いて、炉心底に到達した時のTIPレベルデータの時刻を取り出す(S42)。
【0118】
炉心底到達時刻と炉心頂到達時刻の差が規定時間内にあるか否かを判定(S43)しながら、全てのLPRMストリングについてステップS41、S42を繰り返す。
【0119】
規定時間を超えたと判定した場合は、当該ストリングのTIPレベルの測定に異常が発生したと判定し、TIP走査処理部110を経由して、運転員に通知するとともに、TIP走査を中断する(S44)。
【0120】
また、この他の監視パラメータとしては、TIP検出器を炉心頂から炉心底に引き抜く時間も考えられる。
【0121】
本診断処理により、TIP検出器の駆動状態の異常を捉えることができる。
【0122】
本実施形態によれば、プロセス計算機100におけるプラント状態監視処理部121が、TIPレベル測定中、数種類のプラント状態信号の監視を行い、原子炉熱出力や炉心流量、制御棒位置の変化があった場合は運転員に通知または異常データの破棄を行うことにより、現在の出力分布を正しく反映した形でのTIPレベルデータが収集でき、原子炉出力分布計算の精度悪化を防止することができる。
【0123】
また、本実施形態によれば、TIP検出器の駆動時間、信号の伝達遅れやプロセス計算機のパルス信号のONを検出するタイミングの遅れなどに影響を受けない高速のTIP監視制御装置を提供できることは、第1の実施形態と同様である。
【0124】
〔第3の実施形態〕
図9は、本発明に係るTIPシステムの第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0125】
本実施形態によるTIPシステムは、第1の実施形態の変形であって、プロセス計算機100は、校正電流値計算部131と、第1の校正電流値データ記憶部132aと、プロセス計算機校正電流値データ送受信部133と、を備える。また、本実施形態におけるTIP制御盤200は、TIP制御盤校正電流値データ送受信部231と、校正電流値設定部232を備える。
【0126】
その他の構成要素は、第1の実施形態とほぼ同様である。
【0127】
プロセス計算機100において、校正電流値計算部131は、TIPレベルデータ記憶部112に記憶されたコモンストリングのTIPレベルの値に基づき、TIP検出器540の校正電流値を計算する。また、第1の校正電流値データ記憶部132aは、プロセス計算機100に校正電流値計算部131で計算された校正電流値データを保存する。
【0128】
プロセス計算機校正電流値データ送受信部133は、校正電流値データをプロセス計算機100からデータ伝送部300を介してTIP制御盤200に送信する。
【0129】
TIP制御盤校正電流値データ送受信部231は、プロセス計算機100で計算された校正電流値データを受信する。また、校正電流値設定部232は、TIP制御盤200のTIP制御盤校正電流値データ送受信部231と、校正電流値に従いTIP検出器540のゲインを調整する。
【0130】
本実施形態によるTIP監視制御装置の通常時の動作を、以下に説明する。
【0131】
プロセス計算機100の校正電流値計算部131では、プロセス計算機100のTIPレベルデータ記憶部112のコモンストリングのTIPレベルを基に、TIP検出器540の校正電流値を計算する。
【0132】
ここで、コモンストリングとは、全てのTIP検出器540がTIPレベルを測定できる共通のTIP案内管530のことであり、図16LPRMストリングの炉心内配置の概念図におけるチャンネル10番(LPRMストリング座標32−33)である。
【0133】
また、校正電流値とは、TIP検出器540によって測定されるコモンストリングのTIPレベル信号の平均値が、原子炉出力100%において100となるような電流値であり、現在の原子炉出力に応じたTIPレベル信号となる様に、TIP検出器540のゲインを調整するための値である。
【0134】
また、校正電流値は、各TIP検出器540毎に設定する必要があり、検出器が劣化してくるとこれを補償するために校正電流値を大きくする必要がある。
【0135】
プロセス計算機100の校正電流値計算部131で計算された校正電流値データは、プロセス計算機100の第1の校正電流値データ記憶部132aに保存され、プロセス計算機100のプロセス計算機校正電流値データ送受信部133は校正電流値データをプロセス計算機100からデータ伝送部300を介してTIP制御盤200に出力する。
【0136】
TIP制御盤200のTIP制御盤校正電流値データ送受信部231は、プロセス計算機100から送信された校正電流値データを受信する。その校正電流値データはTIP制御盤の校正電流値設定部232に出力される。
【0137】
校正電流値設定部232では、TIPレベル処理部202で設定された校正電流値を用いたTIPレベルの処理を行い、TIP検出器のゲイン調整を行う。
【0138】
また、本実施形態によれば、TIP検出器の駆動時間、信号の伝達遅れやプロセス計算機のパルス信号のONを検出するタイミングの遅れなどに影響を受けない高速のTIP監視制御装置を提供できることは、第1の実施形態と同様である。
【0139】
〔第4の実施形態〕
図10は、本発明に係るTIPシステムの第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0140】
本実施形態によるTIPシステムは、第3の実施形態の変形である。
【0141】
図10に基づき本実施形態を説明する。
【0142】
図10において本実施の形態は、プロセス計算機100内に、TIP検出器劣化診断部140を備える。その他の構成は、第3の実施形態とほぼ同様である。
【0143】
TIPレベルの測定が行われると、プロセス計算機100の校正電流値計算部131においてTIP検出器540の校正電流値が計算され、プロセス計算機100の第2の校正電流値データ記憶部132bでは、その計算された校正電流値データに校正した日時を付加して格納、保存する。
【0144】
また、プロセス計算機100のTIP検出器劣化診断部140では、第2の校正電流値データ記憶部132bからTIP検出器540毎の校正電流値の長期的な劣化の傾向を判断し、運転員の要望に応じた書式で、表示部102に表示、印字部103にログ印字し、運転員に通知する。
【0145】
尚、運転員の要望に運応じた書式としては、例えば、TIPゲインデータを交換推奨ゲインと一緒にプロットし交換時期にきたことを運転員に自動的に通知できる機能、TIPマシン間のゲイン偏差が大きくなると該当のTIP検出器540の異常を運転員に通知する機能などが考えられる。
【0146】
図11は、本実施形態における第2の校正電流値データ記憶部132の構造を示す説明図である。
【0147】
また、図12は、本実施形態におけるTIP検出器劣化診断部140によるTIP検出器540の劣化診断画面の例を示す説明図である。
【0148】
プロセス計算機100の第2の校正電流値データ記憶部132bの構造は、図10に示すように、校正電流値データが計算された日時と校正電流値を一組のデータとして、全てのTIP検出器540について長期に保存する。
【0149】
TIP検出器劣化診断画面では、TIP検出器540の劣化の長期的な傾向が視覚的に分かりやすく確認できるようなトレンド画面、及び、TIP検出器540の交換時期の計画を立てるために役に立つような情報として、しきい値を超えた場合の警報や校正電流値の劣化率から計算した交換推奨時期などを表示する。
【0150】
本実施の形態によれば、第3の実施形態と同様の効果に加え、さらに、プロセス計算機100において、校正電流値データに日時データを付加した第2の校正電流値データ記憶部132bを長期間にわたり保存し、TIP検出器劣化診断部140で、運転員の要望に応じた書式で、TIPゲインを画面に表示、またはプリンタに印刷する機能を有することより、TIP検出器540の劣化の長期的な傾向を判断できる。
【0151】
これにより、TIP検出器540の交換時期の計画を精度良く立てることも可能となる。
【0152】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0153】
これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0154】
10・・・TIP監視制御装置、 100・・・プロセス計算機、 101・・・操作入力部、 102・・・表示部、 103・・・印字部、 110・・・TIP走査処理部、 111・・・プロセス計算機TIPレベルデータ送受信部、 112・・・TIPレベルデータ記憶部、 113・・・炉心性能計算処理部、 115・・・プロセス計算機走査送受信部、 121・・・プラント状態監視処理部、 131・・・校正電流値計算部、 132a・・・第1の校正電流値データ記憶部、 132b・・・第2の校正電流値データ記憶部、 133・・・プロセス計算機校正電流値データ送受信部、 140・・・TIP検出器劣化診断部、 200・・・TIP制御盤、 201・・・TIP駆動制御部、 202・・・TIPレベル処理部、 203・・・TIP位置処理部、 204・・・TIPレベルデータ蓄積部、 205・・・TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部、 206・・・TIP制御盤走査送受信部、 210・・・TIP制御盤操作パネル、 231・・・TIP制御盤校正電流値データ送受信部、 232・・・校正電流値設定部、 300・・・データ伝送部、 510・・・原子炉、 520・・・炉心、 530・・・TIP案内管、 540・・・TIP検出器、 550・・・選択機構、 560・・・遮へい容器、 570・・・TIP駆動装置、 580・・・TIP制御盤、 581・・・TIP制御盤操作パネル、 590・・・プロセス計算機、 600・・・表示部、 611・・・操作入力部、 612・・・TIP走査処理部、 613・・・TIP駆動制御部、 614・・・TIPレベル処理部、 615・・・TIP位置処理部、 616・・・TIPレベル読込部、 617・・・TIPレベルデータ記憶部、 618・・・印字部、 619・・・炉心性能計算処理部、 650・・・TIP駆動装置、 660・・・LPRMストリング、 661a、b、c、d・・・LPRM検出器A、B、C、D、 670・・・制御棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス計算機、TIP制御盤およびデータ伝送部を有するTIP監視制御装置であって、
前記プロセス計算機は、
TIP走査要求指令を受けてTIP走査信号を出力するTIP走査処理部と、
LPRMレベル信号およびAPRMレベル信号および前記TIP制御盤に蓄積されたTIPレベルデータを、TIP位置信号と同期した形で入力するプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部と、
前記TIPレベルデータを格納するTIPレベルデータ記憶部と、
を備え、
前記TIP制御盤は、
前記TIP走査信号を入力として前記TIP駆動装置に駆動信号を出力するTIP駆動制御部と、
前記TIP駆動装置からのTIPレベル信号を入力するTIPレベル処理部と、
前記TIP駆動装置からのTIP位置信号を入力するTIP位置処理部と、
TIP位置信号に同期した形でTIPレベル信号を入力してTIPレベルデータを蓄積するTIPレベルデータ蓄積部と、
前記データ伝送部を介して前記プロセス計算機に、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを送信するTIP制御盤TIPレベルデータ送受信部と、
を備え、
前記TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部は、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを前記プロセス計算機に、送信するものであること、
を特徴とするTIP監視制御装置。
【請求項2】
前記プロセス計算機は、プラント状態信号、およびTIPレベルデータ記憶部に記憶されたTIP位置信号とこれに同期したTIPレベル信号に基づき、周辺パラメータの安定性診断を行うプラント状態監視処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のTIP監視制御装置。
【請求項3】
前記プロセス計算機は、
TIPレベルデータ記憶部に記憶された各コモンストリングのTIPレベルデータに基づき、TIP検出器の校正電流値を計算するプロセス計算機の校正電流値計算部と、
前記校正電流値計算部で計算された校正電流値データを保存する第1の校正電流値データ記憶部と、
校正電流値データをプロセス計算機からデータ伝送部を介してTIP制御盤に送信するプロセス計算機のプロセス計算機校正電流値データ送受信部と、
をさらに備え、
前記TIP制御盤は、
プロセス計算機で計算された校正電流値データを、データ伝送部を介して受信するTIP制御盤校正電流値データ送受信部と、
校正電流値に従いTIP検出器のゲインを調整する校正電流値設定部と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のTIP監視制御装置。
【請求項4】
前記プロセス計算機は、
前記校正電流値計算部で計算された校正電流値データに、校正した時期を表わす情報を付加して格納するプロセス計算機の第2の校正電流値データ記憶部と、
校正電流値データ記憶部からTIP検出器の長期的な劣化の傾向を判断し運転員に提供するプロセス計算機のTIP検出器劣化診断部と、
をさら備えることを特徴とする請求項3記載のTIP監視制御装置。
【請求項5】
複数のTIP検出器と、前記TIP検出器それぞれについて複数のTIP案内管のうちの一つを順次選択する選択機構と、前記TIP検出器による測定期間以外は前記TIP検出器を収納する遮へい容器と、前記TIP検出器の前記TIP案内管への挿入および引き抜きを駆動するTIP駆動装置と、TIP監視制御装置とを具備するTIPシステムであって、
前記TIP監視制御装置は、プロセス計算機、TIP制御盤およびデータ伝送部を有し、
前記プロセス計算機は、
TIP走査要求指令を受けてTIP走査信号を出力するTIP走査処理部と、
LPRMレベル信号およびAPRMレベル信号および前記TIP制御盤に蓄積されたTIPレベルデータを、TIP位置信号と同期した形で入力するプロセス計算機TIPレベルデータ送受信部と、
前記TIPレベルデータを格納するTIPレベルデータ記憶部と、
を備え、
前記TIP制御盤は、
前記TIP走査信号を入力として前記TIP駆動装置に駆動信号を出力するTIP駆動制御部と、
前記TIP駆動装置からのTIPレベル信号を入力するTIPレベル処理部と、
前記TIP駆動装置からのTIP位置信号を入力するTIP位置処理部と、
TIP位置信号に同期した形でTIPレベル信号を入力してTIPレベルデータを蓄積するTIPレベルデータ蓄積部と、
前記データ伝送部を介して前記プロセス計算機に、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを送信するTIP制御盤TIPレベルデータ送受信部と、
を備え、
前記TIP制御盤TIPレベルデータ送受信部は、前記TIPレベルデータ蓄積部に蓄積されたTIPレベルデータを前記プロセス計算機に、送信するものであること、
を特徴とするTIPシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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